(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】反応性シルセスキオキサン化合物を含む光導波路形成用組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20220907BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220907BHJP
C08F 230/08 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
G02B6/12 371
C08F290/06
C08F230/08
(21)【出願番号】P 2019514666
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2018017254
(87)【国際公開番号】W WO2018199305
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2017090221
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 偉大
(72)【発明者】
【氏名】田所 佐代子
(72)【発明者】
【氏名】菓子野 翼
(72)【発明者】
【氏名】大森 健太郎
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/129818(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/030090(WO,A1)
【文献】特開2013-133375(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069262(WO,A1)
【文献】特開2007-017481(JP,A)
【文献】特表2014-510159(JP,A)
【文献】特開2004-354547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0076391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
C08F 290/06
C08F 230/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式[1]で表されるアルコキシシラン化合物Aと、式[2]で表されるアルコキシシラン化合物Bとの重縮合物である反応性シルセスキオキサン化合物100質量部、及び(b)式[3]で表されるフルオレン化合物10~500質量部
を含む
波長850nm以上
1550nm以下の長波長域用光導波路を形成するための光導波路形成用組成物。
【化1】
(式中、Ar
1は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するフェニル基、重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するナフチル基、又は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するビフェニル基を表し、R
1はメチル基又はエチル基を表す。)
【化2】
(式中、Ar
2は炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよい縮合多環芳香族炭化水素基、又は複数の芳香環が単結合で直接結合している炭化水素環集合基(炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよい)を表し、R
2はメチル基又はエチル基を表す。)
【化3】
(式中、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、L
1及びL
2はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していて
もよいナフタレンジイル基を表し、L
3及びL
4はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、m及びnはm+nが0乃至40となる0又は正の整数を表す。)
【請求項2】
(c)前記(b)フルオレン化合物に属さない(メタ)アクリレート化合物を、前記(a)反応性シルセスキオキサン化合物及び前記(b)フルオレン化合物の総量100質量部に対して、さらに1~100質量部含む、請求項1に記載の光導波路形成用組成物。
【請求項3】
前記(c)(メタ)アクリレート化合物が、少なくとも芳香環含有(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項2に記載の光導波路形成用組成物。
【請求項4】
前記(c)(メタ)アクリレート化合物が、少なくともモノ(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項2又は請求項3に記載の光導波路形成用組成物。
【請求項5】
前記(c)(メタ)アクリレート化合物が、少なくとも芳香環含有モノ(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項2に記載の光導波路形成用組成物。
【請求項6】
前記(a)反応性シルセスキオキサン化合物が、式[1a]で表される化合物と式[2a]で表される化合物との重縮合物である、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の光導波路形成用組成物。
【化4】
(式中、R
1は前記と同じ意味を表す。)
【化5】
(式中、R
2は前記と同じ意味を表す。)
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の光導波路形成用組成物を硬化した、硬化物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の光導波路形成用組成物を用いて作製された、光導波路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長波長域においても低伝搬損失であり且つ高屈折率である光導波路形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クラウドコンピューティングの発展やスマートフォン使用者の増加により、通信トラフィックは増加の一途をたどっている。そのため、送信された情報データが集中するデータサーバーにて、膨大な電力使用量が発生する、さらには処理量の限界が近づいている、といった問題が顕在化しており、これらを改善するための技術進展が急務となっている。その中で、情報を高密度かつ高速に処理できる技術として、サーバーボード内の一部の電気配線を光配線へと変更する、光電気混載基板(光電気複合基板ともいう)という技術が精力的に検討されている。
【0003】
光電気混載基板では、光伝送路である光導波路とともに、電気信号を光信号へ変換する光電変換素子が必要となる。光電変換素子の光源としては、面発光レーザー(VCSEL)やシリコンフォトニクスといった技術が知られている。特に、CMOSやMEMSといった半導体プロセスの応用により発展したシリコンフォトニクスが、近年主流となっている。そのため、伝送される光の波長は、VCSELの波長850nmから、シリコンフォトニクスの波長1,310nmや波長1,550nmといった長波長域に変化している。
【0004】
これまで、波長1,310nmや波長1,550nmといった長波長域で高い透明性を示す光導波路としては、フッ素樹脂による光導波路が知られている(例えば、特許文献1)。これらは、当該長波長域に吸収を有するC-H結合をC-F結合に変更することで吸収波長域をシフトさせ、それにより低伝搬損失を実現している。
【0005】
また、基板内に高密度に光導波路を実装するため、曲げ半径の小さい曲線光導波路や、光電変換素子と接続する基板面に対して垂直方向の光導波路が考案されている。これらは、コア・クラッド間の屈折率差を高めて導波する光の閉じ込め効果を高める必要があり、高屈折率なコア形成用材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、長波長域で低伝搬損失を発現するフッ素樹脂は、屈折率が1.3~1.5と低く、上記のような高密度光導波路への適用には十分な屈折率を有していない。このように、長波長域においても低伝搬損失であり、かつ波長1,550nmにおける屈折率が高い(例えば1.56以上)光導波路形成材料は未だなく、その開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、特定の反応性シルセスキオキサン化合物と特定のフルオレン化合物を含有する組成物が、長波長域においても低い伝播損失と高い屈折率を実現する光導波路の形成に好適な材料となることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、第1観点として、
(a)式[1]で表されるアルコキシシラン化合物Aと、式[2]で表されるアルコキシシラン化合物Bとの重縮合物である反応性シルセスキオキサン化合物100質量部、及び
(b)式[3]で表されるフルオレン化合物10~500質量部
を含む光導波路形成用組成物に関する。
【化1】
(式中、Ar
1は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するフェニル基、重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するナフチル基、又は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するビフェニル基を表し、R
1はメチル基又はエチル基を表す。)
【化2】
(式中、Ar
2は炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよい縮合多環芳香族炭化水素基、又は複数の芳香環が単結合で直接結合している炭化水素環集合基(炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよい)を表し、R
2はメチル基又はエチル基を表す。)
【化3】
(式中、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、L
1及びL
2はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいナフタレンジイル基を表し、L
3及びL
4はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、m及びnはm+nが0乃至40となる0又は正の整数を表す。)
第2観点として、(c)前記(b)フルオレン化合物に属さない(メタ)アクリレート化合物を、前記(a)反応性シルセスキオキサン化合物及び前記(b)フルオレン化合物の総量100質量部に対して、さらに1~100質量部含む、第1観点に記載の光導波路形成用組成物に関する。
第3観点として、前記(c)(メタ)アクリレート化合物が、少なくとも芳香環含有(メタ)アクリレート化合物を含む、第2観点に記載の光導波路形成用組成物に関する。
第4観点として、前記(c)(メタ)アクリレート化合物が、少なくともモノ(メタ)アクリレート化合物を含む、第2観点又は第3観点に記載の光導波路形成用組成物に関する。
第5観点として、前記(c)(メタ)アクリレート化合物が、少なくとも芳香環含有モノ(メタ)アクリレート化合物を含む、第2観点に記載の光導波路形成用組成物に関する。
第6観点として、前記(a)反応性シルセスキオキサン化合物が、式[1a]で表される化合物と式[2a]で表される化合物との重縮合物である、第1観点乃至第5観点のうち何れか一に記載の光導波路形成用組成物に関する。
【化4】
(式中、R
1は前記と同じ意味を表す。)
【化5】
(式中、R
2は前記と同じ意味を表す。)
第7観点として、第1観点乃至第6観点の何れか一に記載の光導波路形成用組成物を硬化した、硬化物に関する。
第8観点として、第1観点乃至第6観点の何れか一に記載の光導波路形成用組成物を用いて作製された、光導波路に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光導波路形成用組成物は、高い屈折率及び例えば1,550nm程度の長波長域においても光伝搬損失が低いという優れた光学特性を有し、光導波路の形成材料として有用である。
また本発明の光導波路形成用組成物は、フォトリソグラフィーにより光導波路を形成可能であり、また基板表面に対して所望の傾斜角を有する所謂光ピンと呼ばれる光導波路も作製できる。
そして本発明は、長波長域での非常に高い透明性(低伝搬損失)を有する光導波路の提供が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例2で得られた光導波路のSEM観察画像を示す図である。
【
図2】
図2は、実施例3で得られた光導波路のマイクロスコープによる観察画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<<光導波路形成用組成物>>
本発明の光導波路形成用組成物は、成分(a)として特定の反応性シルセスキオキサン化合物、及び、成分(b)として特定のフルオレン化合物を含む光導波路形成用組成物である。
以下、各成分の詳細を説明する。
【0013】
<(a)反応性シルセスキオキサン化合物>
本発明に用いられる(a)反応性シルセスキオキサン化合物は、後述する特定構造のアルコキシシラン化合物Aと特定構造のアルコキシシラン化合物Bとの重縮合物であり、詳細には、これら化合物A及び化合物Bを、酸又は塩基の存在下重縮合して得られる化合物である。
【0014】
[アルコキシシラン化合物A]
前記アルコキシシラン化合物Aは、下記式[1]で表される化合物である。
【化6】
上記式[1]中、Ar
1は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するフェニル基、重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するナフチル基、又は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するビフェニル基を表し、R
1はメチル基又はエチル基を表す。
【0015】
Ar1が表す重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するフェニル基としては、例えば、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基、4-ビニルオキシフェニル基、4-アリルフェニル基、4-アリルオキシフェニル基、4-イソプロペニルフェニル基等が挙げられる。
Ar1が表す重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するナフチル基としては、例えば、4-ビニルナフタレン-1-イル基、5-ビニルナフタレン-1-イル基、6-ビニルナフタレン-2-イル基、4-アリルオキシナフタレン-1-イル基、5-アリルオキシナフタレン-1-イル基、8-アリルオキシナフタレン-1-イル基、5-ビニルオキシナフタレン-1-イル基、4-アリルナフタレン-1-イル基、5-アリルナフタレン-1-イル基、5-イソプロペニルナフタレン-1-イル基等が挙げられる。
Ar1が表す重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するビフェニル基としては、例えば、4'-ビニル-[1,1'-ビフェニル]-2-イル基、4'-ビニル-[1,1'-ビフェニル]-3-イル基、4'-ビニル-[1,1'-ビフェニル]-4-イル基、4'-ビニルオキシ-[1,1'-ビフェニル]-4-イル基、4'-アリル-[1,1'-ビフェニル]-4-イル基、4'-アリルオキシ-[1,1'-ビフェニル]-4-イル基、4'-イソプロペニル-[1,1'-ビフェニル]-4-イル基等が挙げられる。
【0016】
上記式[1]で表される化合物の具体例としては、例えば、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(4-ビニルフェニル)シラン、(4-イソプロペニルフェニル)トリメトキシシラン、トリメトキシ(4-ビニル-1-ナフチル)シラン、トリメトキシ(4'-ビニル-[1,1'-ビフェニル]-4-イル)シラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
[アルコキシシラン化合物B]
前記アルコキシシラン化合物Bは、下記式[2]で表される化合物である。
【化7】
上記式[2]中、Ar
2は炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよい縮合多環芳香族炭化水素基、又は複数の芳香環が単結合で直接結合している炭化水素環集合基(炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよい)を表し、R
2はメチル基又はエチル基を表す。
【0018】
Ar2が表す炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基等が挙げられる。
Ar2が表す縮合多環芳香族炭化水素基としては、例えば、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ビフェニレン、フルオレンから誘導される1価の基等が挙げられる。
また複数の芳香環が単結合で直接結合している炭化水素環集合基としては、例えば、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、ビナフタレン、フェニルナフタレン、フェニルフルオレン、ジフェニルフルオレンから誘導される1価の基等が挙げられる。
なお上記フェニル基、縮合多環芳香族炭化水素基及び炭化水素環集合基において、置換基として有し得る炭素原子数1乃至6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
上記Ar2としては、中でも、炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表す基であることが好ましい。
【0019】
上記式[2]で表される化合物の具体例としては、例えば、トリメトキシ(フェニル)シラン、トリエトキシ(フェニル)シラン、トリメトキシ(p-トリル)シラン、トリメトキシ(1-ナフチル)シラン、トリエトキシ(1-ナフチル)シラン、トリメトキシ(2-ナフチル)シラン、トリエトキシ(2-ナフチル)シラン、トリメトキシ(2-フェナントリル)シラン、トリメトキシ(3-フェナントリル)シラン、トリメトキシ(9-フェナントリル)シラン、トリエトキシ(9-フェナントリル)シラン、[1,1'-ビフェニル]-4-イルトリメトキシシラン、[1,1'-ビフェニル]-4-イルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
中でも(a)成分の反応性シルセスキオキサン化合物としては、下記式[1a]で表される化合物と、下記式[2a]で表される化合物とを、酸又は塩基の存在下重縮合して得られる反応性シルセスキオキサン化合物が好ましい。
【化8】
上記式[1a]中、R
1は前記と同じ意味を表す。
【化9】
上記式[2a]中、R
2は前記と同じ意味を表す。
【0021】
[アルコキシシラン化合物Aとアルコキシシラン化合物Bの配合割合]
(a)成分の反応性シルセスキオキサン化合物に用いる、式[1]で表されるアルコキシシラン化合物Aと式[2]で表されるアルコキシシラン化合物Bの重縮合反応にかかる配合モル比は特に限定されないが、硬化物の物性を安定させる目的から、通常、アルコキシシラン化合物A:アルコキシシラン化合物B=5:1~1:5の範囲が好ましい。より好ましくは3:1~1:3の間で配合される範囲である。アルコキシシラン化合物Bの配合モル数に対するアルコキシシラン化合物Aの配合モル比を5以下とすることで、より高屈折率を有する硬化物を得ることができる。また、アルコキシシラン化合物Bの配合モル数に対するアルコキシシラン化合物Aの配合モル比を1/5以上とすることで、十分な架橋密度が得られ、熱に対する寸法安定性がより向上する。
上述のアルコキシシラン化合物A及びアルコキシシラン化合物Bは、必要に応じて適宜化合物を選択して用いることができ、またそれぞれ複数種の化合物を併用することもできる。この場合の配合モル比も、アルコキシシラン化合物Aのモル量の総計と、アルコキシシラン化合物Bのモル量の総計の比が、上記の範囲となる。
【0022】
[酸又は塩基性触媒]
上記式[1]で表されるアルコキシシラン化合物Aと、上記式[2]で表されるアルコキシシラン化合物Bとの重縮合反応は、酸又は塩基性触媒の存在下で好適に実施される。
上記重縮合反応に用いる触媒は、後述の溶媒に溶解する、又は均一分散する限りにおいては特にその種類は限定されず、必要に応じて適宜選択して用いることができる。
用いることのできる触媒としては、例えば、酸性化合物として、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸などの有機酸等;塩基性化合物として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化アンモニウム、第四級アンモニウム塩、アミン類等;フッ化物塩として、NH4F、NR4F等が挙げられる。なお、ここでRは、水素原子、炭素原子数1乃至12の直鎖状アルキル基、炭素原子数3乃至12の分枝状アルキル基、及び炭素原子数3乃至12の環状アルキル基からなる群から選ばれる一種以上の基である。
これら触媒は、一種単独で、又は複数種を併用することもできる。
【0023】
上記酸性化合物としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、シュウ酸、ホウ酸等が挙げられる。
【0024】
上記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0025】
上記フッ化物塩としては、例えば、フッ化アンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム等を挙げることができる。
【0026】
これら触媒のうち、好ましく用いられるのは、塩酸、酢酸、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム及び水酸化テトラエチルアンモニウムからなる群から選ばれる一種以上である。
触媒の使用量は、上記アルコキシシラン化合物Aとアルコキシシラン化合物Bとの合計質量に対し、0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%である。触媒の使用量を0.01質量%以上とすることで反応がより良好に進行する。また、経済性を考慮すれば、10質量%以下の使用で十分である。
【0027】
[重縮合反応]
本発明にかかる反応性シルセスキオキサン化合物は、アルコキシシラン化合物Aの構造が一つの特徴となっている。本発明に用いられるアルコキシシラン化合物Aに含まれる反応性基(重合性二重結合)は、ラジカル又はカチオンによって容易に重合し、重合後(硬化後)は高い耐熱性を示す。
アルコキシシラン化合物Aとアルコキシシラン化合物Bの加水分解重縮合反応は、無溶媒下で行うことも可能だが、後述するテトラヒドロフラン(THF)などの両アルコキシシラン化合物に対して不活性な溶媒を反応溶媒として用いることも可能である。反応溶媒を用いる場合は、反応系を均一にしやすく、より安定した重縮合反応を行えるという利点がある。
【0028】
反応性シルセスキオキサン化合物の合成反応は、前述のように無溶媒で行ってもよいが、反応をより均一化させるために溶媒を使用しても問題ない。溶媒は、両アルコキシシラン化合物と反応せず、その重縮合物を溶解するものであれば特に限定されない。
このような反応溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール等のグリコールエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類などが挙げられる。これら溶媒は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
本発明で用いる反応性シルセスキオキサン化合物は、式[1]で表されるアルコキシシラン化合物Aと式[2]で表されるアルコキシシラン化合物Bとを、酸又は塩基性触媒の存在下で、加水分解重縮合を行うことにより得られる。加水分解重縮合にかかる反応温度は20~150℃、より好ましくは30~120℃である。
反応時間は、重縮合物の分子量増加が終了し、分子量分布が安定するのに必要な時間以上なら、特に制限は受けず、より具体的には数時間から数日間である。
重縮合反応の終了後、得られた反応性シルセスキオキサン化合物をろ過、溶媒留去等の任意の方法で回収し、必要に応じて適宜精製処理を行うことが好ましい。
【0030】
また、上記式[1]で表されるアルコキシシラン化合物Aと式[2]で表されるアルコキシシラン化合物Bとを、塩基の存在下で重縮合し、陽イオン交換樹脂を用いて塩基を除去することによっても、反応性シルセスキオキサン化合物を得ることができる。
上記塩基並びにその使用量は、上述した塩基性化合物及びフッ化物塩からなる群から選択される一種以上の化合物、またその使用量を採用し得、好ましくは水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム及び水酸化テトラエチルアンモニウムからなる群から選ばれる一種以上のものを塩基として使用できる。
また重縮合反応に用いる反応条件や反応溶媒等は上述したものを採用できる。
そして反応終了後、塩基の除去に使用する陽イオン交換樹脂としてはスルホ基をイオン基として有するイオン交換樹脂が好ましく用いられる。
【0031】
このような反応によって得られた重縮合物(反応性シルセスキオキサン化合物)は、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが500~100,000、好ましくは500~30,000であり、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.0~10である。
なお、上記(a)反応性シルセスキオキサン化合物は、[Ar1SiO3/2]及び[Ar2SiO3/2]で表されるシロキサン単位を少なくとも有する、架橋構造を持つ化合物である。
【0032】
<(b)フルオレン化合物>
本発明に用いられる(b)フルオレン化合物は、式[3]で表される化合物である。
【化10】
上記式[3]中、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、L
1及びL
2はそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいナフタレンジイル基を表し、L
3及びL
4はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、m及びnはm+nが0乃至40となる0又は正の整数を表す。
【0033】
L1及びL2が表す置換基を有していてもよいフェニレン基としては、例えば、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、2-メチルベンゼン-1,4-ジイル基、2-アミノベンゼン-1,4-ジイル基、2,4-ジブロモベンゼン-1,3-ジイル基、2,6-ジブロモベンゼン-1,4-ジイル基等が挙げられる。
また、L1及びL2が表す置換基を有していてもよいナフタレンジイル基としては、1,2-ナフタレンジイル基、1,4-ナフタレンジイル基、1,5-ナフタレンジイル基、1,8-ナフタレンジイル基、2,3-ナフタレンジイル基、2,6-ナフタレンジイル基等が挙げられる。
【0034】
L3及びL4が表す炭素原子数1乃至6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、1-メチルエチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、1-エチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、1,1-ジメチルテトラメチレン基、1,2-ジメチルテトラメチレン基、2,2-ジメチルテトラメチレン基、1-エチルテトラメチレン基、1,1,2-トリメチルトリメチレン基、1,2,2-トリメチルトリメチレン基、1-エチル-1-メチルトリメチレン基、1-エチル-2-メチルトリメチレン基等が挙げられる。
【0035】
式[3]で表される化合物において、m及びnは、m+nが0乃至30となる場合が好ましく、m+nが2乃至20となる場合がより好ましい。
【0036】
上記式[3]で表される化合物の具体例としては、例えば、9,9-ビス(4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)-9H-フルオレン、オグソール(登録商標)EA-0200、同EA-0300、同EA-F5003、同EA-F5503、同EA-F5510、同EA-F5710、同GA-5000[以上、大阪ガスケミカル(株)製]、NKエステルA-BPEF[新中村化学工業(株)製]等が挙げられるが、これらに限定されるものではない(なお、本明細書において(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の双方を指す。)。
【0037】
本発明の光導波路形成用組成物において、(b)成分の含有量は、(a)成分100質量部に対し10~500質量部である。中でも、30~250質量部が好ましい。
【0038】
<(c)前記(b)フルオレン化合物に属さない(メタ)アクリレート化合物>
本発明の光導波路形成用組成物は、さらに(c)成分として、前記(b)フルオレン化合物に属さない(メタ)アクリレート化合物を含み得る。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を指す。
中でも、(c)成分として、少なくとも芳香環含有(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましく、あるいはまた、少なくともモノ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。特に、(c)成分として、少なくとも芳香環含有モノ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0039】
このような(c)成分の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1-フェニルエチル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、9-アントリル(メタ)アクリレート、9-アントリルメチル(メタ)アクリレート、9-フェナントリル(メタ)アクリレート、9-フェナントリルメチル(メタ)アクリレート、1-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、3-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、4-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、2-(2-ビフェニリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-ビフェニリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-ビフェニリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートなどのモノ(メタ)アクリレート化合物;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2-(5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン-2-イル)-2-メチルプロパン-1-オール=ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性2-(5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン-2-イル)-2-メチルプロパン-1-オール=ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性2-(5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン-2-イル)-2-メチルプロパン-1-オール=ジ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、3-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、4-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、2-(2-ビフェニリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-ビフェニリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-ビフェニリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、3-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、2-(2-ビフェニリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートがより好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより一層好ましい。
また、2-(5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン-2-イル)-2-メチルプロパン-1-オール=ジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0041】
また、これらの(メタ)アクリレート化合物は、市販品として容易に入手が可能であり、例えば、HEA、HPA、4-HBA、AIB、TBA、ビスコート3F、4F、8F、8FM、#295、#300、#802、#160、#192、#700HV、#540[以上、大阪有機化学工業(株)製];ライトアクリレートNP-A、TMP-A、PE-3A、PE-4A、DPE-6A、PO-A、P2H-A、P-200A、BA-104、BP-4EAL、BP-4PA、ライトエステルE、NB、IB、TB、M-3F、HOA(N)、HO-250(N)、HOP(N)、HOP-A(N)、HOB(N)、NP、TMP、BZ、PO、BP-2EMK[以上、共栄社化学(株)製];NKエステルNPG、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT、A-TMMT、AD-TMP、A-9550、A-DPH、AMP-20GY、PHE-1G、A-LEN-10、ABE-300、A-BPE-4、A-BPE-10、A-BPE-20、A-BPE-30、A-BPP-3、A-B1206PE、BPE-80N、BPE-100、BPE-200、BPE-500、BPE-900、BPE-1300N、A-9300、A-9300-1CL、A-DOG[以上、新中村化学工業(株)製];アロニックス(登録商標)M-309、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450、M-408、M-403、M-400、M-402、M-404、M-406、M-405、M-101A、M-102、M-106、M-110、M-111、M-113、M-117、M-5700、M-208、M-211B、M-215、M-313、M-315[以上、東亞合成(株)製];ブレンマー(登録商標)AAE-300、PAE-100、43PAPE-600B、ANP-300、75ANEP-600、PDBE-200、PDBE-250、PDBE-450、PDBE-1300、PDBPE[以上、日油(株)製];KAYARAD NPGDA、TMPTA、PET-30、T-1420(T)、D-310、DPHA、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120、R-128H、R-551、R-712[以上、日本化薬(株)製]等が挙げられる。
【0042】
(c)前記(b)フルオレン化合物に属さない(メタ)アクリレート化合物を添加する場合、(メタ)アクリレート化合物は一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。また、その添加量としては、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して1~50質量部、好ましくは1~25質量部、さらに好ましくは5~25質量部である。
【0043】
<その他添加剤>
さらに本発明の光導波路形成用組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、シランカップリング剤等の接着補助剤、顔料、染料、消泡剤などを含有することができる。またその他重合可能な化合物を含んでいてもよい。
【0044】
上記重合開始剤としては、光重合開始剤及び熱重合開始剤の何れも使用できる。
光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルホスフィンオキシド類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート類、オキシムエステル類、テトラメチルチウラムモノスルフィド類、チオキサントン類等が挙げられる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(159頁、発行人:高薄一弘、発行所:(株)技術情報協会、1991年発行)に記載されているものが挙げられる。
市販されている光ラジカル重合開始剤としては、例えば、IRGACURE(登録商標)184、同369、同651、同500、同819、同907、同784、同2959、同CGI1700、同CGI1750、同CGI1850、同CG24-61、同TPO、Darocur(登録商標)1116、同1173[以上、BASFジャパン(株)製]、ESACURE KIP150、同KIP65LT、同KIP100F、同KT37、同KT55、同KTO46、同KIP75[以上、ランベルティ社製]等を挙げることができる。
【0045】
また熱重合開始剤としては、例えば、アゾ類、有機過酸化物類等が挙げられる。
市販されているアゾ系熱重合開始剤としては、例えば、V-30、V-40、V-59、V-60、V-65、V-70[以上、富士フイルム和光純薬(株)(旧和光純薬工業(株))製]等を挙げることができる。
また市販されている有機過酸化物系熱重合開始剤としては、例えば、パーカドックス(登録商標)CH、同BC-FF、同14、同16、トリゴノックス(登録商標)22、同23、同121、カヤエステル(登録商標)P、同O、カヤブチル(登録商標)B[以上、化薬アクゾ(株)製]、パーヘキサ(登録商標)HC、パークミル(登録商標)H、パーオクタ(登録商標)O、パーヘキシル(登録商標)O、同Z、パーブチル(登録商標)O、同Z[以上、日油(株)製]等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
重合開始剤を添加する場合、重合開始剤は一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。また、その添加量としては、重合性成分、すなわち上記(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、また(c)成分を含む場合には(a)成分乃至(c)成分の総量100質量部に対して、0.1~20質量部、さらに好ましくは0.3~10質量部である。
【0047】
上記連鎖移動剤としては、例えば、チオール化合物として、メルカプト酢酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、3-メルカプトプロピオン酸3-メトキシブチル、3-メルカプトプロピオン酸n-オクチル、3-メルカプトプロピオン酸ステアリル、1,4-ビス(3-メルカプトプロピオニルオキシ)ブタン、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2-(3-メルカプトブチリルオキシ)エチル]イソシアヌレート等のメルカプトカルボン酸エステル類;エタンチオール、2-メチルプロパン-2-チオール、n-ドデカンチオール、2,3,3,4,4,5-ヘキサメチルヘキサン-2-チオール(tert-ドデカンチオール)、エタン-1,2-ジチオール、プロパン-1,3-ジチオール、ベンジルチオール等のアルキルチオール類;ベンゼンチオール、3-メチルベンゼンチオール、4-メチルベンゼンチオール、ナフタレン-2-チオール、ピリジン-2-チオール、ベンゾイミダゾール-2-チオール、ベンゾチアゾール-2-チオール等の芳香族チオール類;2-メルカプトエタノール、4-メルカプト-1-ブタノール等のメルカプトアルコール類;3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-チオール、3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-チオール等のシラン含有チオール類など:ジスルフィド化合物として、ジエチルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、ジイソプロピルジスルフィド、ジブチルジスルフィド、ジ-tert-ブチルジスルフィド、ジペンチルジスルフィド、ジイソペンチルジスルフィド、ジヘキシルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ジデシルジスルフィド、ビス(2,3,3,4,4,5-ヘキサメチルヘキサン-2-イル)ジスルフィド(ジ-tert-ドデシルジスルフィド)、ビス(2,2-ジエトキシエチル)ジスルフィド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジスルフィド、ジベンジルジスルフィド等のアルキルジスルフィド類;ジフェニルジスルフィド、ジ-p-トリルジスルフィド、ジ(ピリジン-2-イル)ピリジルジスルフィド、ジ(ベンゾイミダゾール-2-イル)ジスルフィド、ジ(ベンゾチアゾール-2-イル)ジスルフィド等の芳香族ジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ビス(ペンタメチレン)チウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類など:α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0048】
連鎖移動剤を添加する場合、連鎖移動剤は一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。また、その添加量としては、重合性成分、すなわち上記(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、また(c)成分を含む場合には(a)成分乃至(c)成分の総量100質量部に対して0.01~20質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部である。
【0049】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、スルフィド系酸化防止剤等が挙げられるが、中でもフェノール系酸化防止剤が好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、IRGANOX(登録商標)245、同1010、同1035、同1076、同1135[以上、BASFジャパン(株)製]、スミライザー(登録商標)GA-80、同GP、同MDP-S、同BBM-S、同WX-R[以上、住友化学(株)製]、アデカスタブ(登録商標)AO-20、同AO-30、同AO-40、同AO-50、同AO-60、同AO-80、同AO-330[以上、(株)ADEKA製]等が挙げられる。
【0050】
酸化防止剤を添加する場合、酸化防止剤は一種単独で、又は二種以上を混合して用いてもよい。また、その添加量としては、重合性成分、すなわち上記(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、また(c)成分を含む場合には(a)成分乃至(c)成分の総量100質量部に対して0.01~20質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部である。
【0051】
<光導波路形成用組成物の調製方法>
本発明の光導波路形成用組成物の調製方法は、特に限定されず、例えば、(a)成分及び(b)成分、そして必要に応じて(c)成分を所定の割合で混合し、所望によりその他添加剤をさらに添加して混合し、均一な溶液とする方法、これら各成分のうち、例えば(a)成分乃至(c)成分のうち少なくとも二種の成分のうち少なくとも一部を混合して均一な溶液とした後、残りの各成分を加え、所望によりその他添加剤をさらに添加して混合し、均一な溶液とする方法、又はこれらの成分に加えさらに慣用の溶媒を使用する方法等が挙げられる。
溶媒を使用する場合、本発明の光導波路形成用組成物における固形分の割合は、各成分が溶媒に均一に溶解している限りは特に限定はないが、例えば1~50質量%であり、又は1~30質量%であり、又は1~25質量%である。ここで固形分とは、光導波路形成用組成物の全成分から溶媒成分を除いたものである。
また、光導波路形成用組成物の溶液は、孔径が0.05~5μmのフィルタなどを用いてろ過した後、使用することが好ましい。
【0052】
<<硬化物>>
本発明の光導波路形成用組成物を露光(光硬化)又は加熱(熱硬化)によって硬化して得られる硬化物もまた本発明の対象である。
露光する光線としては、紫外線、電子線、X線等が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV-LED等が使用できる。また、露光後、硬化物の物性を安定化させるためにポストベークを施してもよい。ポストベークの方法としては、特に限定されないが、通常、ホットプレート、オーブン等を使用して、50~260℃、1~120分間の範囲で行われる。
熱硬化における加熱条件としては、特に限定されないが、通常、50~300℃、1~120分間の範囲から適宜選択される。また、加熱手段としては、特に限定されないが、例えばホットプレート、オーブン等が挙げられる。
【0053】
上記本発明の光導波路形成用組成物を硬化した硬化物は、波長1,550nmにおける屈折率が1.57以上と高い硬化物となり、光導波路形成材料として好適である。
【0054】
<<光導波路>>
本発明の光導波路形成用組成物を用いて作製された光導波路もまた、本発明の対象である。
本発明の光導波路において、上述の光導波路形成用組成物は、光導波路のクラッド部を形成するクラッド形成材料、並びに、コア部を形成するコア形成材料のいずれにも適用可能であるが、特にその硬化物が高屈折率であることからコア形成材料に好適である。
また本発明の光導波路には、従来の光導波路のクラッド部及びコア部の形成に用いられてきた各種の材料、すなわち、光照射や加熱処理により硬化する材料であって、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリノルボルネン樹脂等を主成分とする材料等を、クラッド形成材料及びコア形成材料として適宜選択採用することができる。具体的には、上述の光導波路形成用組成物及び従来の各種材料から、クラッド形成材料より形成されるクラッド部が、コア形成材料より形成されるコア部の中心部よりも低屈折率となるように、夫々の形成材料を選択採用すればよい。またクラッド形成材料には、例えばカーボンブラック等の光を吸収する素材を含有させてもよい。
【0055】
本発明が対象とする光導波路において、その作製方法は特に限定されず、例えば本発明の光導波路形成用組成物や上記従来の各種材料を露光(光硬化)又は加熱(熱硬化)によって硬化する工程を経て、光導波路を形成可能である。代表的な一例として、フォトマスクを用いたリソグラフィー技術を用い、エッチング工程や現像工程を経て、光導波路を形成可能である。
【0056】
また、光導波路の一形態である基板表面に対して所望の傾斜角を有する光導波路(所謂“光ピン”)についても、上記光導波路形成用組成物を用いて好適に作製され得る。
こうした所望の傾斜角を有する光導波路は、例えば国際公開第2015/060190号に記載の製造方法を用いて好適に作製され得、具体的には、
(1)支持体上に反射防止膜を具備する工程、
(2)前記反射防止膜上に前記光導波路形成用組成物を配し、フォトマスクを介して該光導波路形成用組成物を前記支持体表面に対し非垂直の方向から入射する光線で以って露光し硬化せしめる工程、及び
(3)現像により未露光の光導波路形成用組成物を除去する工程
を含む方法にて、製造され得る。
上記反射防止膜は特に限定されないものの、好ましいものとして、上記国際公開第2015/060190号に記載の反射防止膜形成組成物(特定構造のジアリールケイ酸化合物と特定構造のアルコキシシラン化合物とを、酸又は塩基の存在下、重縮合して得られる反応性シリコーン化合物と、紫外線吸収剤とを含む重合性組成物)から形成された反射防止膜が挙げられる。
【0057】
また、例えば国際公開第2013/002013号に記載の製造方法、すなわち、クラッドとなる硬化性樹脂の中に、コアとなる硬化性樹脂をディスペンサにて配線描画するインジェクション法(所謂モスキート法)を用いた、グレーデッドインデックス型(GI型)光導波路についても、上記光導波路形成用組成物を用いて好適に作製され得る。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0059】
(1)撹拌脱泡機
装置:(株)シンキー製 自転・公転ミキサー あわとり練太郎(登録商標)ARE-310
(2)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:(株)島津製作所製 Prominence(登録商標)GPCシステム
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF-804L及びGPC KF-803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
検量線:標準ポリスチレン
(3)ガスクロマトグラフィー(GC)
装置:(株)島津製作所製 GC-2010
カラム:ジーエルサイエンス(株)製 TC-17(内径0.25mm、膜厚0.25μm、長さ30m)
カラム温度:40℃(5分)-5℃/分-120℃-30℃/分-250℃(5分)
検出器:FID
キャリアガス:窒素(全流量68.3mL/分)
(4)伝搬損失
装置:(株)島津製作所製 紫外可視近赤外分光光度計UV-3600
(5)屈折率
装置:メトリコン社製 プリズムカプラ モデル2010/M
測定温度:室温(およそ23℃)
(6)UV露光
装置:アイグラフィックス(株)製 バッチ式UV照射装置(高圧水銀灯2kW×1灯)
(7)マスクアライナ
装置:ズースマイクロテック社製 MA6
ランプ:高圧水銀灯
フィルタ:i線バンドパスフィルタ
照度:16mW/cm2(365nm検出)
(8)走査型電子顕微鏡(SEM)
装置:(株)日立ハイテクノロジーズ製 電界放出形走査電子顕微鏡S-4800
(9)UVスポット光源
装置:朝日分光(株)製 300Wキセノン光源MAX-302
フィルタ:朝日分光(株)製 狭帯域バンドパスフィルタLX0365(中心波長365nm)
(10)マイクロスコープ
装置:(株)ハイロックス製 デジタルマイクロスコープKH-7700
【0060】
また、略記号は以下の意味を表す。
STMS:トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン[信越化学工業(株)製]
PTMS:トリメトキシ(フェニル)シラン[信越化学工業(株)製]
TEAH:35質量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液[アルドリッチ社製]
ACSQ:3-アクリロイルオキシプロピル基含有シルセスキオキサン[東亞合成(株)製 AC-SQ TA-100、アクリル等量:165g/eq]
FDA:ビスアリールフルオレンジアクリレート[大阪ガスケミカル(株)製 オグソール(登録商標)EA-F5503]
BnA:ベンジルアクリレート[大阪有機化学工業(株)製 ビスコート#160]
DDT:n-ドデカンチオール[花王(株)製 チオカルコール20]
I1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート][BASFジャパン(株)製 IRGANOX(登録商標)1010]
I184:1-ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)184]
TPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)TPO]
DPSD:ジフェニルシランジオール[東京化成工業(株)製]
DVB:ジビニルベンゼン[新日鐵住金化学(株)製 DVB-810]
T3842:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤[BASFジャパン(株)製 TINUVIN 384-2]
IPA:イソプロピルアルコール
MIBK:メチルイソブチルケトン
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
THF:テトラヒドロフラン
【0061】
[製造例1]反応性シルセスキオキサン化合物1(SQ1)/BnA溶液の製造
凝縮器を備えた200mLの反応フラスコに、TEAH2.97g(7.1mmol)、イオン交換水9.52g(528mmol)、及びTHF90gを仕込み、窒素バルーンを用いてフラスコ中の空気を窒素で置換した。ここへ、STMS39.6g(177mmol)、及びPTMS35.0g(177mmol)の混合物を、10分間で滴下した後、40℃で16時間撹拌した。次いで、この反応混合物に、予めTHFで洗浄した陽イオン交換樹脂[ダウ・ケミカル社製 アンバーリスト(登録商標)15JWET]7.9gを加え、1時間撹拌して反応を停止させた。これを室温(およそ23℃)に冷却した。その後、孔径0.2μmのメンブレンフィルタで陽イオン交換樹脂をろ過し、さらに酢酸エチル15gで洗い流した。このろ液及び洗浄液を併せた溶液に、BnA9.3gを加え、均一に混合した。その後、ロータリーエバポレーターを用いて、THF、酢酸エチル、残存した水、及びその他の揮発分を減圧留去し、反応性シルセスキオキサン化合物1(以下、SQ1と略記することもある)/BnA溶液を得た。
GPCによるポリスチレン換算で測定されるSQ1の重量平均分子量Mwは4,000、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.8であった。また、得られた溶液のGC定量分析によるSQ1の含有率は75質量%、BnAの含有率は25質量%であった。
【0062】
[参考例1]反応性シリコーン化合物の製造
冷却器を備えた1Lのナス型フラスコに、DPSD177g(0.80mol)、STMS179g(0.80mol)、及びトルエン141gを仕込み、窒素バルーンを用いてフラスコ中の空気を窒素で置換した。この反応混合物を50℃に加熱後、水酸化バリウム一水和物[アルドリッチ社製]0.303g(1.6mmol)を添加し、さらに50℃で2日間撹拌して脱アルコール縮合を行った。反応混合物を室温(およそ23℃)まで冷却し、孔径0.2μmのメンブレンフィルタを用いて不溶物を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて、この反応混合物からトルエン及び副生成物のメタノールを50℃で減圧留去することで、無色透明油状物の反応性シリコーン化合物305gを得た。
得られた反応性シリコーン化合物の、GPCによるポリスチレン換算で測定されるMwは1,600、分散度:Mw/Mnは1.3であった。
【0063】
[実施例1]光導波路形成用組成物1の調製
(a)反応性シルセスキオキサン化合物及び(c)(メタ)アクリレート化合物の混合物として製造例1で製造したSQ1/BnA溶液54.3質量部(SQ1 40.7質量部、BnA13.6質量部)、(b)フルオレン化合物としてFDA42.7質量部、(c)(メタ)アクリレート化合物としてBnA3.0質量部(上記SQ1/BnA溶液に含まれるBnAと併せて16.6質量部)、連鎖移動剤(反応促進剤)としてDDT0.5質量部、酸化防止剤としてI1010 0.5質量部、並びに重合開始剤としてI184 2質量部及びTPO 0.5質量部を、50℃で3時間撹拌混合した。さらに10分間撹拌脱泡することで光導波路形成用組成物1を調製した。
【0064】
[比較例1~2]光導波路形成用組成物51~52の調製
各組成を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様に操作し、光導波路形成用組成物51~52を調製した。なお、表1中、「部」は「質量部」を表す。
【0065】
【0066】
[光導波路形成用組成物の伝搬損失評価]
各組成物を、予め孔径0.2μmのフィルタでろ過した同体積のトルエンで希釈し、各組成物の50体積%トルエン溶液を調製した。光路長1cmのガラスセルを使用しこの溶液の吸光度Aを、光路長0.5cmのガラスセルを使用しトルエンの吸光度Atolを、それぞれ測定し、以下の式に従って伝搬損失を算出した。結果を表2に示す。
伝搬損失[dB/cm]=(A-Atol)×2×10
A:光路長1cmでの光導波路形成用組成物トルエン溶液の吸光度
Atol:光路長0.5cmでのトルエンの吸光度
【0067】
[硬化物の作製及び屈折率評価]
各組成物をシリコンウエハ上に滴下し、50μm厚のシリコーンゴム製スペーサーとともに、離型処理したガラス基板で挟み込んだ。この挟み込んだ組成物を、窒素雰囲気下、ガラス基板側から20mW/cm2で150秒間UV露光した後、ガラス基板を剥がし、厚さ50μmの硬化物を得た。
得られた硬化物の、波長850nm、1,310nm、1,550nmにおける屈折率を評価した。結果を表2に併せて示す。なお、850nmにおける屈折率については、Cauchyの分散公式によって算出した。
【0068】
【0069】
表2に示すように、反応性シルセスキオキサン化合物としてSQ1を配合した組成物(実施例1)は、1,310nmや1,550nmといった長波長域でも低い伝搬損失であることが確認された。一方、ACSQを配合した組成物(比較例1)は、1,550nmの伝搬損失が高くなる結果となった。これは、ACSQの構造単位中の置換アルキル基に起因するものと推測される。また、実施例1の組成物から得られた硬化物は、何れの波長でも1.57以上と高い屈折率を示したのに対し、比較例1~2では何れも1.57未満と屈折率が低かった。
【0070】
[実施例2]光導波路の製造1
実施例1で調製した光導波路形成用組成物1を、表面に熱酸化膜(膜厚2μm)を有するシリコンウエハ上にスピンコート(1,500rpm×30秒間)により塗布し、100℃のホットプレートで1分間加熱した。この塗膜を、マスクアライナ(マスク幅60μm)を用いて16mW/cm
2で125秒間パターン露光した。未露光の組成物を、PGMEA/PGME混合液(質量比7:3)で洗い流した。その後110℃のホットプレートで1分間、さらに150℃で20分間加熱し、幅48μm×高さ31μm×長さ7cmの線状の光導波路を得た。得られた光導波路のSEM観察画像を
図1に示す。
【0071】
[実施例3]光導波路の製造2
参考例1で製造した反応性シリコーン化合物80質量部にDVB20質量部を加え、撹拌脱泡機を使用して均一に混合した。ここへ、紫外線吸収剤としてT3842 3質量部、及び重合開始剤としてTPO3質量部を添加し、50℃で3時間撹拌混合した。さらに10分間撹拌脱泡することで反射防止膜形成用組成物を得た。この反射防止膜形成用組成物を、シリコンウエハ上にスピンコート(2,000rpm×30秒間)により塗布した。この塗膜を、窒素雰囲気下、20mW/cm
2で150秒間UV露光した後、150℃のホットプレートで10分間加熱し、厚さ10μmの反射防止膜を形成した。
次に、実施例1で調製した光導波路形成用組成物1 100mgを、上記反射防止膜上に滴下した。この光導波路形成用組成物の上部に、直径50μmの円形開口を3つ有するフォトマスクを、300μm厚のシリコーンゴムをスペーサーとして挟み込み配置した。このフォトマスク上方から、UVスポット光源のライトガイドを鉛直方向から10度傾け、10mW/cm
2で3分間露光した。未露光の組成物を、MIBK/IPA混合液(質量比1:1)で洗い流すことにより、直径50μm×高さ300μmの傾斜した柱状の光導波路を得た。得られた光導波路のマイクロスコープによる観察画像を
図2に示す。得られた光導波路の傾斜角(シリコンウエハ面とのなす角)は80度であった。
【0072】
以上の通り、本発明の光導波路形成用組成物は、1,550nmといった長波長域においても光伝搬損失が低く、またその硬化物は1.57以上の高い屈折率を示し、光学特性に優れることが確認された。
また本発明の光導波路形成用組成物は、フォトリソグラフィーにより光導波路を形成可能であり、基板表面に対して所望の傾斜角を有する光導波路も作製可能であることが確認された。