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特許7137156細長い粒子形状を有するシリカゾルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】細長い粒子形状を有するシリカゾルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/142 20060101AFI20220907BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220907BHJP
【FI】
C01B33/142
B82Y40/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020501086
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2019007109
(87)【国際公開番号】W WO2019163992
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2018032123
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 智
(72)【発明者】
【氏名】福岡 拓也
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 和也
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-118008(JP,A)
【文献】国際公開第2008/093422(WO,A1)
【文献】米国特許第9783702(US,B1)
【文献】特開2007-153672(JP,A)
【文献】特開2010-143784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)および(b)の工程を含むシリカゾルの製造方法であって、該シリカゾルの動的光散乱法による平均粒子径(Dnm)と窒素ガス吸着法による一次粒子径(Dnm)との比D/Dが2.5以上であり、該Dは30nm乃至300nmであり、かつ、電子顕微鏡観察による50nm乃至1000nmの範囲内の長さの粒子長を有する、細長い形状の非晶質コロイダルシリカ粒子が液状媒体に分散してなるSiO濃度が6質量%乃至30質量%のシリカゾルの製造方法;
(a)工程:SiO濃度が1質量%乃至30質量%であり、かつ、pHが2乃至5である原料となるシリカゾルに、SiOに対して質量比0.5%乃至1.9%となる量の無機酸、有機酸、及びそのアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオン源となる化合物と、アンモニアとを加える事とを含む原料液を作製する工程、
(b)工程:(a)工程により得られた原料液を80℃乃至200℃で0.5時間乃至20時間加熱して、シリカゾルを製造する工程。
【請求項2】
(a)工程に用いる原料となるシリカゾルは、活性珪酸のコロイド水溶液がSiO/MOモル比(ただしMはナトリウム又はカリウムを表す。)1乃至4.5の珪酸アルカリ水溶液を、強酸型陽イオン交換樹脂、又は強酸型陽イオン交換樹脂及び強塩基型陰イオン交換樹脂に接触させる事により得られた活性珪酸のコロイド水溶液から製造されたものである請求項1に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項3】
(a)工程に用いる原料となるシリカゾルは、活性珪酸のコロイド水溶液が、前記珪酸アルカリ水溶液に更に強酸を加えて1℃乃至98℃の温度で処理した後に、該処理した水溶液を強酸型陽イオン交換樹脂、又は強酸型陽イオン交換樹脂及び強塩基型陰イオン交換樹脂に接触させる事により得られた活性珪酸のコロイド水溶液から製造されたものである請求項2に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項4】
(a)工程に用いる原料となるシリカゾルは、活性珪酸のコロイド水溶液が、前記珪酸アルカリ水溶液又は前記処理した水溶液を、強酸型陽イオン交換樹脂、又は強酸型陽イオン交換樹脂及び強塩基型陰イオン交換樹脂に接触する前又は後に更にカルボン酸型キレー
ト樹脂、水酸基型キレート樹脂、及び/又はアミン型キレート樹脂に接触させる事により得られた活性珪酸のコロイド水溶液から製造されたものである請求項2又は請求項3に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項5】
(a)工程に使用するアニオン源となる化合物が、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸、塩酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、及びそれらのアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種のアニオン源となる化合物である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項6】
(a)工程に用いる原料となるシリカゾルのコロイド粒子の一次粒子径(DまたはDnm)が5nm乃至50nmである請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項7】
(a)工程で加えられるアンモニアが、アンモニアガス又はアンモニア水溶液の形態で加えられるものである、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項8】
(a)工程が原料となるシリカゾルに上記アニオン源となる化合物を加え、その後に前記アンモニアを加える工程を含む請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項9】
(a)工程が原料となるシリカゾルに前記アンモニアを加え、その後に前記アニオン源となる化合物を加え、その後に前記アンモニアを加える工程を含む請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項10】
(a)工程で得られる原料液のpHが8乃至12である請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項11】
(b)工程における原料液の加熱は、オートクレーブ装置内で原料液を100℃乃至180℃で加熱する方法によりなされる請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項12】
(b)工程で得られたシリカゾルを強酸性イオン交換樹脂及び/又は強塩基性イオン交換樹脂に接触させる工程を更に含む請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項13】
(b)工程で得られたシリカゾルを、強酸性イオン交換樹脂及び/又は強塩基性イオン交換樹脂に接触させる前又は後に、カルボン酸型キレート樹脂、水酸基型キレート樹脂、及び/又はアミン型キレート樹脂と接触させる工程を更に含む請求項12に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項14】
得られたシリカゾルの水性媒体を有機媒体に溶媒置換する工程を更に有する、請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項15】
前記シリカゾルにおいて、SiOに対するCa及びMgの質量比がそれぞれ0.01ppm乃至50ppmである請求項1乃至請求項14の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項16】
前記シリカゾルにおいて、SiOに対するNaの質量比が0.1ppm乃至50pp
m及びKの質量比が0.1ppm乃至50ppmである請求項1乃至請求項15の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項17】
前記非晶質コロイダルシリカ粒子は、動的光散乱法による平均粒子径(Dnm)と窒素ガス吸着法による一次粒子径(Dnm)との比D/Dが3乃至30である請求項1乃至請求項16の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項18】
前記シリカゾルが、酸性シリカゾル又はアンモニア型アルカリ性シリカゾルである請求項1乃至請求項17の何れか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細長い形状の非晶質コロイダルシリカ粒子が液状媒体に分散してなるシリカゾルの製造方法に関し、特にアルカリ金属やアルカリ土類金属の含有量が低いシリカゾルを効率的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コロイダルシリカの形状は球状に近い形状と、非球状の2つのタイプに大別される。非球状タイプはその形状をコントロールすることにより、種々の効果(例えば、結合力、吸着力、光透過性)が期待でき、各種コーティング剤のマイクロフィラー、結合剤、改質剤、触媒担体、電子材料用研磨剤(例えばシリコンウエハー用研磨剤、シリコン酸化膜や銅、アルミニウム等の金属を研磨するためのデバイスウエハー用CMP研磨剤)等の用途に用いられている。
【0003】
球状に近い形状のシリカ粒子が鎖状もしくは数珠状につながった細長い形状を有するシリカ粒子も非球状タイプのシリカ粒子であり、このシリカ粒子が水性媒体や有機媒体に安定に分散したシリカゾルが存在する。
【0004】
例えば、細長い形状を有するコロイダルシリカ粒子が液状媒体に分散してなるシリカゾルの製造方法については、SiO濃度1質量%乃至6質量%の活性珪酸のコロイド水溶液に、水溶性のカルシウム塩、マグネシウム塩又はこれらの混合物を含有する水溶液を活性珪酸のSiO(シリカ)に対してCaO(酸化カルシウム)、MgO(酸化マグネシウム)又はその両者の質量比が1500乃至8500ppmとなる量で添加し、更にアルカリ金属水酸化物、有機塩基又はそれらの水溶液の珪酸塩を添加し、SiO/MOで表される式(但し、SiOは上記活性珪酸に由来するシリカ分と上記水溶性珪酸塩のシリカ分を合わせた総含有量を表し、そしてMは上記アルカリ金属原子又は有機塩基の分子を表す。)に換算したモル比を20乃至300とした後、60乃至300℃で0.5乃至40時間加熱する方法が開示されている(特許文献1参照。)。
【0005】
また、鎖状につながったシリカ粒子であって還元粘度とシリカ濃度との関係が特定の関数で示されるシリカゾルが開示されていて、その製造方法はアルカリ金属ケイ酸塩水溶液にケイ酸を添加する前にCa、Mg、Al、In、Ti、Zr、Sn、Si、Sb、Fe、Cu、又は希土類金属等の多価金属イオンを添加し、60℃以上の温度に加熱し、再度ケイ酸を加える方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、カリウムイオンの存在下で活性珪酸を原料として製造されるコロイダルシリカであって、カリウムイオンを含有し且つ透過型電子顕微鏡観察による長径/短径比が1.2乃至10の範囲にある非球状の異形シリカ粒子群を含有するコロイダルシリカが開示されていて、活性珪酸水溶液にカリウムイオンの供給源となる化合物と、アルカリ剤とを添加しアルカリ性にした後に加熱してシリカ粒子を形成し、加熱下に活性珪酸水溶液とアルカリ剤とカリウムイオン供給減となる化合物を添加するコロイダルシリカの製造方法が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平1-317115号公報
【文献】特開平4-187512号公報
【文献】特開2011-098859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、シリカゾル中に含まれる金属不純物により、用途によってはそれらのシリカゾルは使用不可となる事がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金属不純物の含有量が低い非球状シリカが溶媒に分散したシリカゾルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、原料となるシリカゾルにアニオン源となる化合物とアルカリ源としてアンモニアを加え、所定の温度で加熱する事で容易に、金属不純物の少ない、細長い粒子形状のコロイダルシリカが溶媒に分散したシリカゾルを製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、第1観点として、下記(a)および(b)の工程を含むシリカゾルの製造方法であって、該シリカゾルの動的光散乱法による平均粒子径(Dnm)と窒素ガス吸着法による一次粒子径(Dnm)との比D/Dが2.5以上であり、該Dは30nm乃至300nmであり、かつ、電子顕微鏡観察による50nm乃至1000nmの範囲内の長さの粒子長を有する、細長い形状の非晶質コロイダルシリカ粒子が液状媒体に分散してなるSiO濃度が6質量%乃至30質量%のシリカゾルの製造方法に関する;
(a)工程:SiO濃度が1質量%乃至30質量%であり、かつ、pHが2乃至5である原料となるシリカゾルに、SiOに対して質量比0.5%乃至1.9%となる量の無機酸、有機酸、及びそのアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオン源となる化合物と、アンモニアとを加える事とを含む原料液を作製する工程、
(b)工程:(a)工程により得られた原料液を80℃乃至200℃で0.5時間乃至20時間加熱して、シリカゾルを製造する工程。
第2観点として、(a)工程に用いる原料となるシリカゾルは、活性珪酸のコロイド水溶液がSiO/MOモル比(ただしMはナトリウム又はカリウムを表す。)1乃至4.5の珪酸アルカリ水溶液を、強酸型陽イオン交換樹脂、又は強酸型陽イオン交換樹脂及び強塩基型陰イオン交換樹脂に接触させる事により得られた活性珪酸のコロイド水溶液から製造されたものである第1観点に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
第3観点として、(a)工程に用いる原料となるシリカゾルは、活性珪酸のコロイド水溶液が、上記珪酸アルカリ水溶液に更に強酸を加えて1℃乃至98℃の温度で処理した後に、該処理した水溶液を強酸型陽イオン交換樹脂、又は強酸型陽イオン交換樹脂及び強塩基型陰イオン交換樹脂に接触させる事により得られた活性珪酸のコロイド水溶液から製造されたものである第2観点に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
第4観点として、(a)工程に用いる原料となるシリカゾルは、活性珪酸のコロイド水溶液が、上記珪酸アルカリ水溶液又は前記処理した水溶液を、強酸型陽イオン交換樹脂、又は強酸型陽イオン交換樹脂及び強塩基型陰イオン交換樹脂に接触する前又は後に更にカルボン酸型キレート樹脂、水酸基型キレート樹脂、及び/又はアミン型キレート樹脂に接触させる事により得られた活性珪酸のコロイド水溶液から製造されたものである第2観点又は第3観点に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
第5観点として、(a)工程に使用するアニオン源となる化合物が、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸、塩酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、及びそれらのアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種のアニオン源となる化合物である第1観点乃至第4観点のいずれか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
第6観点として、(a)工程に用いる原料となるシリカゾルのコロイド粒子の一次粒子径(DまたはDnm)が5nm乃至50nmである第1観点乃至第5観点の何れか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
第7観点として、(a)工程で加えられるアンモニアが、アンモニアガス又はアンモニア水溶液の形態で加えられるものである、第1観点乃至第6観点の何れか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
第8観点として、(a)工程が原料となるシリカゾルに上記アニオン源となる化合物を加え、その後に上記アンモニアを加える工程を含む第1観点乃至第7観点の何れか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
第9観点として、(a)工程が原料となるシリカゾルに上記アンモニアを加え、その後に上記アニオン源となる化合物を加え、その後に上記アンモニアを加える工程を含む第1観点乃至第7観点の何れか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
第10観点として、(a)工程で得られる原料液のpHが8乃至12である第1観点乃至第9観点の何れか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
【0012】
第11観点として、(b)工程における原料液の加熱は、オートクレーブ装置内で原料液を100℃乃至180℃で加熱する方法によりなされる第1観点乃至第10観点の何れか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
第12観点として、(b)工程で得られたシリカゾルを強酸性イオン交換樹脂及び/又は強塩基性イオン交換樹脂に接触させる工程を更に含む第1観点乃至第11観点の何れか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
第13観点として、(b)工程で得られたシリカゾルを、強酸性イオン交換樹脂及び/又は強塩基性イオン交換樹脂に接触させる前又は後に、カルボン酸型キレート樹脂、水酸基型キレート樹脂、及び/又はアミン型キレート樹脂と接触させる工程を更に含む第12観点に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
第14観点として、得られたシリカゾルの水性媒体を有機媒体に溶媒置換する工程を更に有する、第1観点乃至第13観点の何れか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
【0013】
第15観点として、上記シリカゾルにおいて、SiOに対するCa及びMgの質量比がそれぞれ0.01ppm乃至50ppmである第1観点乃至第14観点の何れか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
第16観点として、上記シリカゾルにおいて、SiOに対するNaの質量比が0.1ppm乃至50ppm及びKの質量比が0.1ppm乃至50ppmである第1観点乃至第15観点の何れか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
【0014】
第17観点として、上記非晶質コロイダルシリカ粒子は、動的光散乱法による平均粒子径(Dnm)と窒素ガス吸着法による一次粒子径(Dnm)との比D/Dが3乃至30である第1観点乃至第16観点の何れか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
【0015】
第18観点として、上記シリカゾルが、酸性シリカゾル又はアンモニア型アルカリ性シリカゾルである第1観点乃至第17観点の何れか一に記載のシリカゾルの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシリカゾルの製造方法は(a)工程に用いる原料となるシリカゾルに無機酸、有機酸、及びそのアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオン源となる化合物と、アルカリ源としてのアンモニアとを加えて調製された原料液を得て、それを加熱(好ましくはオートクレーブ処理)する事により、金属不純物の少ない高純度化された、細長い形状のシリカゾルを得る事ができるという効果を奏する。
【0017】
非球状のシリカ粒子が分散してなるシリカゾルはその粒子形状に起因して、種々の効果(例えば、結合力、吸着力、光透過性)が期待でき、各種コーティング剤のマイクロフィラー、結合剤、改質剤、触媒担体、電子材料用研磨剤(例えばシリコンウエハー用研磨剤、シリコン酸化膜や銅、アルミニウム等の金属を研磨するためのデバイスウエハー用CMP研磨剤)等の用途に用いられているが、これらの用途には金属不純物の含有量が厳しく制限されている分野があり、本発明のシリカゾルの製造方法で得られるシリカゾルは金属不純物含有量が少なく高純度化されたものであり、それらの用途に適用する事ができるという効果を奏する。
【0018】
上記の高純度化はシリカゾルを準備する(a)工程で行われる場合、又はシリカゾルを形成する(b)工程で行われる場合、又はその両工程で行われる場合が挙げられるが、該高純度化は(a)工程の原料となるシリカゾルの製造に用いられる活性珪酸のコロイド水溶液、若しくは(b)工程で得られるシリカゾルを、強酸型陽イオン交換樹脂及び/又は強塩基型陰イオン交換樹脂、更に弱酸型(カルボン酸型)キレート樹脂及び/又は弱塩基型(アミン型)キレート樹脂に接触させる事により、活性珪酸液のコロイド水溶液及びシリカゾルから金属不純物を取り除く事が可能であるという効果を奏する。
【0019】
また、(a)工程の原料となるシリカゾルの製造に用いられる活性珪酸のコロイド水溶液は、強酸を加えて室温乃至加熱による処理を行って、活性珪酸のコロイド中に取り込まれた金属不純物を水溶液中に溶出(リーチング)させ、強酸型陽イオン交換樹脂や強塩基型陰イオン交換樹脂、更に弱酸型(カルボン酸型)キレート樹脂や弱塩基型(アミン型)キレート樹脂に接触させる事により、その溶出物を取り除き、高純度化させることが可能であるという効果を奏する。
【0020】
上記金属不純物はNa、K、Ca、Mg、Ni、Cu、Fe、Co、Zn、Ti等であり、本発明のシリカゾルの製造方法ではNaやKに基づくアルカリ金属を用いるものではなく、アルカリ源としてアンモニアを用いるためにNa及びKの含有量が低く、また細長い形状に調整するためにCa及びMg源を用いない事により、Ca及びMgの含有量が低いシリカゾルの製造方法を提供する事ができるという効果を奏する。またイオン交換樹脂やキレート樹脂を併用する事でシリカゾルから多価金属を除去することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施例1で得られたシリカ粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真(倍率25万倍)である。
図2図2は、実施例2で得られたシリカ粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真(倍率25万倍)である。
図3図3は、実施例3で得られたシリカ粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真(倍率25万倍)である。
図4図4は、実施例4で得られたシリカ粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真(倍率25万倍)である。
図5図5は、実施例5で得られたシリカ粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真(倍率25万倍)である。
図6図6は、実施例6で得られたシリカ粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真(倍率25万倍)である。
図7図7は、実施例7で得られたシリカ粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真(倍率25万倍)である。
図8図8は、実施例8で得られたシリカ粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真(倍率25万倍)である。
図9図9は、比較例1で得られたシリカ粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真(倍率25万倍)である。
図10図10は、連結した一続きのシリカ粒子の粒子長(L)を示すTEM(透過型電子顕微鏡)写真(倍率25万倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は下記(a)および(b)の工程を含むシリカゾルの製造方法であって、該シリカゾルの動的光散乱法による平均粒子径(Dnm)と窒素ガス吸着法による一次粒子径(Dnm)との比D/Dが2.5以上であり、該Dは30nm乃至300nmであり、かつ、電子顕微鏡観察による50nm乃至1000nmの範囲内の長さの粒子長を有する、細長い形状の非晶質コロイダルシリカ粒子が液状媒体に分散してなるSiO濃度が6質量%乃至30質量%のシリカゾルの製造方法;
(a)工程:SiO濃度が1質量%乃至30質量%であり、かつ、pHが2乃至5である原料となるシリカゾルに、SiOに対して質量比0.5%乃至1.9%となる量の無機酸、有機酸、及びそのアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオン源となる化合物と、アンモニアとを加える事とを含む原料液を作製する工程、
(b)工程:(a)工程により得られた原料液を80℃乃至200℃で0.5時間乃至20時間加熱して、シリカゾルを製造する工程。
【0023】
上記液状媒体は水性媒体(水)又は有機媒体(有機溶媒)である。
【0024】
アニオン源となる化合物を、SiOに対して質量比0.5乃至1.9%、又は0.5乃至1.9、又は0.5乃至1.5の範囲で調製する事ができる。
【0025】
動的光散乱法による平均粒子径(Dnm)の測定は、測定原理が動的光散乱法によるものであり、例えば動的光散乱法粒子径測定装置(スペクトリス社製 ゼーターサイザー
ナノ)で測定する事ができる。動的光散乱法による平均粒子径(Dnm)は30nm乃至300nmの範囲にある。
【0026】
一次粒子径(Dnm)は、窒素ガス吸着法(BET法)によって測定された比表面積Sm/gから、(Dnm)=2720/Sの式によって計算される一次粒子径であり、細長い形状のシリカ粒子の比表面積と同じ比表面積を有する仮想の球状シリカ粒子の直径を意味する。従って、D/Dはシリカ粒子の伸長度を意味すると考えられる。細長い形状のシリカ粒子は粒子同士が3次元に凝集したものではなく、3次元網目構造を有するものではない。粒子同士が数珠状又は鎖状につながった構造を示し、粒子同士は同一粒径及び/又は異なる粒径のシリカ粒子が数珠状又は鎖状に連結したものであると考えられる。
【0027】
本発明ではD/D比が2.5以上であって、例えば2.5乃至50.0、又は3.0乃至30.0、又は3.0乃至15.0とする事ができる。
【0028】
これらのシリカ粒子の粒子長は電子顕微鏡(透過型電子顕微鏡)観察によって粒子形状を観察することにより確認でき、その長さは50nm乃至1000nm、又は100nm乃至700nmである。
【0029】
(a)工程に用いる原料となるシリカゾルは、活性珪酸のコロイド水溶液がSiO/MOモル比(ただしMはナトリウム又はカリウムを表す。)1乃至4.5の珪酸アルカリ水溶液を、強酸型陽イオン交換樹脂、又は強酸型陽イオン交換樹脂及び強塩基型陰イオン交換樹脂等のイオン交換樹脂に接触させる事により得られた活性珪酸のコロイド水溶液から製造されたものを用いることができる。
【0030】
上記珪酸アルカリ水溶液を、固形分1質量%乃至10質量%に調製しイオン交換樹脂に接触させることにより、活性珪酸のコロイド水溶液を製造する事ができる。本明細書において、固形分とは水溶液又はシリカゲルの全成分から水性媒体又は有機媒体成分を除いたものである。また、珪酸アルカリ水溶液としては、市販の1号珪曹、2号珪曹、3号珪曹を純水等で希釈したものを用いることができる。
【0031】
強酸型陽イオン交換樹脂は水素型陽イオン交換樹脂であり、カラム中に装填された陽イオン交換樹脂に強酸水溶液を通液して水素型に変換した陽イオン交換樹脂を用いる事ができる。強酸型陽イオン交換樹脂の具体例としては、アンバーライトIR-120B、アンバージェット1020、DOWEX MARATHON GH(ダウ・ケミカル社製)、ダイヤイオンSK104、ダイヤイオンPK208(三菱ケミカルホールディングス社製)、デュオライトC20J(住化ケムテック社製)等が挙げられる。
【0032】
強塩基型イオン交換樹脂は水酸基型イオン交換樹脂であり、カラム中に装填された陰イオン交換樹脂に強アルカリ水溶液を通液して水酸基型に変換した陰イオン交換樹脂を用いる事ができる。強塩基型陰イオン交換樹脂の具体例としては、アンバーライトIRA400J、アンバーライトIRA410J、アンバージェット4400(ダウ・ケミカル社製)、ダイヤイオンSA10A、ダイヤイオンSA20A(三菱ケミカルホールディングス社製)、デュオライトUBA120(住化ケムテック社製)等が挙げられる。
【0033】
上記活性珪酸のコロイド水溶液は、SiOの固形分濃度が1質量%乃至10質量%、好ましくは1質量%乃至6質量%の範囲のものを用いる事ができる。
【0034】
また(a)工程に用いる原料となるシリカゾルは、活性珪酸のコロイド水溶液を、更にカルボン酸型キレート樹脂、水酸基型キレート樹脂、及び/又はアミン型キレート樹脂に接触させる事により得られた活性珪酸のコロイド水溶液から製造されたものを用いる事ができる。
【0035】
これらキレート樹脂はN、S、O、P等の電子供与性原子を2個以上含んだものが使われ、N-O系、S-N系、N-N系、O-O系のキレート樹脂が挙げられ、例えば、イミノ二酢酸型(-N(CHCOO-))、ポリアミン型(-NH(CHCHNH)nH)のものが挙げられる。上記のキレート樹脂の具体例としては、ダイヤイオンCR11、ダイヤイオンCR20、ダイヤイオンCRB03、ダイヤイオンCRB05(三菱ケミカルホールディング社製)が挙げられる。また、金属イオンが吸着したキレート樹脂は、砿酸水溶液(塩酸水溶液、硫酸水溶液)を用いて金属イオンを取り除くことで、再生して使用する事ができる。
【0036】
(a)工程に用いる原料となるシリカゾルは、活性珪酸のコロイド水溶液を上記イオン交換樹脂やキレート樹脂に繰り返し接触する事で、更に高純度化された活性珪酸のコロイド水溶液から製造されたものを用いる事ができる。
【0037】
上記イオン交換樹脂やキレート樹脂をカラムに充填し、上記水溶液を1h-1乃至30h-1、又は1h-1乃至15h-1の空間速度で通液することができる。
【0038】
(a)工程に用いる原料となるシリカゾルは、活性珪酸のコロイド水溶液に、更に強酸を加え1℃乃至98℃の温度で処理した後に、強酸型陽イオン交換樹脂、又は強酸型陽イオン交換樹脂及び強塩基型陰イオン交換樹脂に接触させ得られた活性珪酸のコロイド水溶液から製造する事により高純度化させることができる。活性珪酸のコロイド水溶液は水溶液中で微小なコロイド粒子(例えば、粒子径が5nm以下、又は3nm以下、又は1nm以下である。)を形成していると考えられ、それらコロイド粒子中に金属不純物が取り込まれている場合がある。コロイド粒子中の金属不純物をイオン交換樹脂やキレート樹脂では取り除くことが出来ない場合は、活性珪酸のコロイド水溶液に酸水溶液を添加して1℃乃至98℃、好ましくは室温で処理することにより、コロイド粒子内部から水溶液中に金属不純物を溶出することができる。これらの金属不純物は上記イオン交換樹脂やキレート樹脂に接触させる事で水溶液中から吸着分離されるので、活性珪酸のコロイド水溶液を高純度化する事ができる。それにより最終的に得られるシリカゾルも高純度化する事ができる。
【0039】
(a)工程に用いる原料となるシリカゾルは、一次粒子径(DまたはDnm)が5nm乃至50nm、又は5nm乃至30nm、又は5nm乃至10nmの範囲にあるシリカゾルを用いる事ができる。
【0040】
上記のシリカゾルの一次粒子径は、シアーズ滴定法や窒素吸着法などの一般的な方法により測定することができる。
【0041】
(a)工程に用いる原料となるシリカゾルは、SiO濃度1質量%乃至30質量%のシリカゾルを用いることができ、又は3質量%乃至25質量%、又は10質量%乃至25質量%の範囲にあるシリカゾルを用いる事ができる。
【0042】
(a)工程に使用するアニオン源となる化合物としては、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸、塩酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、及びそれらのアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種のアニオン源となる化合物を用いることができる。例えば、硝酸、硫酸、シュウ酸等の水溶液を用いることができる。これらのアニオン源はアンモニウム塩として添加する事も、pH調整に用いるアンモニアによってアンモニウム塩に変換されて用いることもできる。水溶液の濃度は例えば0.1質量%乃至50質量%、又は0.1質量%乃至10質量%、又は0.1質量%乃至5質量%、又は0.1質量%乃至1質量%、又は0.1質量%乃至0.2質量%の範囲で用いることができる。
【0043】
(a)工程でpH調整に用いるアンモニアとしては、アンモニアガス又はアンモニア水溶液の形態で用いることができる。pH調整の方法は、原料となるシリカゾルに直接、アンモニアガスを導入する方法、又は原料となるシリカゾルにアンモニア水溶液を添加する方法が挙げられる。アンモニア水溶液は濃度28質量%で用いることも、純水で濃度1質量%乃至28質量%未満に希釈して用いることもできる。
【0044】
(a)工程の例として原料となるシリカゾルに上記アニオン源となる化合物を加え、その後に上記アンモニアを加える工程を含む方法が挙げられる。
【0045】
また(a)工程の例として原料となるシリカゾルに上記アンモニアを加え、その後に上記アニオン源となる化合物を加え、その後に上記アンモニアを加える工程を含む方法が挙げられる。
【0046】
(a)工程で得られる原料液(原料となるシリカゾル)のpHは8乃至12、又は9乃至11、又は9乃至10に調製することができる。
【0047】
(b)工程は(a)工程により得られた原料液(原料となるシリカゾル)を攪拌下に80℃乃至200℃、又は100℃乃至180℃、又は120℃乃至150℃で0.5時間乃至20時間加熱してシリカゾルを得る工程である。オートクレーブ装置を用いる事により100℃乃至200℃、又は100℃乃至180℃の温度に加熱して、異形度の高い細長い形状のシリカゾルを製造することができる。(b)工程ではpHが8乃至11、又は9乃至11の範囲にあるアンモニア型アルカリ性シリカゾルが得られる。
【0048】
(b)工程で得られたシリカゾルを強酸性イオン交換樹脂及び/又は強塩基性イオン交換樹脂に接触させて高純度のシリカゾルを得る事ができる。例えば、(b)工程で得られたシリカゾルを強酸性イオン交換樹脂、又は強酸性オン交換樹脂及び強塩基性イオン交換樹脂に接触させて高純度のシリカゾルを得る事ができる。
【0049】
更に、(b)工程で得られたシリカゾルを強酸性イオン交換樹脂及び/又は強塩基性イオン交換樹脂との接触させる前又は後に、カルボン酸型キレート樹脂、水酸基型キレート樹脂、及び/又はアミン型キレート樹脂に接触させ高純度のシリカゾルを得る事ができる。例えば、(b)工程で得られたシリカゾルを強酸性イオン交換樹脂、又は強酸性オン交換樹脂及び強塩基性イオン交換樹脂に接触させた後に、カルボン酸型キレート樹脂、水酸基型キレート樹脂、及び/又はアミン型キレート樹脂に接触させ高純度のシリカゾルを得る事ができる。
【0050】
(b)工程で得られたシリカゾルは、必要に応じて限外ろ過膜を使用した濃縮、又は減圧下若しくは常圧下での蒸発濃縮により、SiO濃度を6質量%乃至30質量%に調整するこができる。
【0051】
(b)工程で得られたシリカゾルは強酸性イオン交換樹脂と接触させる事により酸性シリカゾルを製造する事ができる。
そして上記酸性シリカゾルはその水性媒体を有機媒体(有機溶媒)に置換してオルガノシリカゾルを製造することができる。この溶媒置換はロータリーエバポレーター等の装置を用いた蒸発法で行う事ができる。溶媒置換によってもコロイダルシリカ粒子のD/D 比に変化はない。
【0052】
有機溶媒としては、アルコール、グリコール、エステル、ケトン、含窒素溶媒、芳香族系溶媒を使用する事ができる。これらの溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、トルエン、キシレン、ジメチルエタン等の有機溶媒を例示する事ができる。また、ポリエチレングリコール、シリコーンオイル、ラジカル重合性のビニル基やエポキシ基を含む反応性希釈溶剤等も用いる事ができる。
【0053】
更にシリカ粒子の表面をテトラエトキシシラン、トリメチルモノエトキシシラン、ヘキサメチルジシラン等のシランカップリング剤で処理する事ができる。
【0054】
得られたシリカゾルは金属不純物としてCaをSiOに対する質量比0.01ppm乃至100ppm、又は0.01ppm乃至50ppmで含有し、MgをSiOに対する質量比0.01ppm乃至100ppm、又は0.01ppm乃至50ppmで含有する事ができる。
そして、シリカゾルは、NaをSiOに対する質量比0.1ppm乃至1000ppm、又は0.1ppm乃至500ppmで含有し、KをSiOに対する質量比0.1ppm乃至100ppm、又は0.1ppm乃至50ppmで含有する事ができる。
【0055】
(b)工程で得られたシリカゾルは強酸性イオン交換樹脂と接触させ酸性シリカゾルとした後、高純度アンモニアガス又はアンモニア水溶液を添加してアンモニア型アルカリ性シリカゾルとすることができる。
【実施例
【0056】
[シリカゾル物性評価]
1)pH
pHメーター(東亞ディーケーケー(株)製)を用いて測定した。
2)電気伝導率
電気伝導率計(東亞ディーケーケー(株)製)を用いて測定した。
3)SiO濃度
質量法を用いて測定した。
シリカゾルを1000℃で焼成した際の焼成残分の質量と、下記8)の金属元素分析により測定される金属元素のうち、シリカゾル中に1ppm以上含有する金属元素の酸化物換算した際の質量との差をSiO質量とし、SiO濃度を算出した。
4)D粒子径(動的光散乱法により測定される平均粒子径)
動的光散乱法粒子径測定装置(スペクトリス社製 ゼーターサイザー ナノ)により測定した。
5)D粒子径(窒素吸着法により測定される一次粒子径)
水素型強酸性陽イオン交換樹脂と水性シリカゾルを接触させ、シリカゾルの表面に吸着しているナトリウムを除去した後に、300℃で乾燥し、その後粉砕して粉末試料を調製した。調製した粉末試料は、窒素吸着法比表面積測定装置(ユアサアイオニクス社製 Monosorb MS-16)にてBET法による比表面積S(m/g)を測定して、D粒子径(nm)を求めた。
なお、計算式はコロイダルシリカ粒子を球状粒子に換算して得られる下記の式(II)を用いた。
(nm)=2720/S(m/g) (II)
6)D粒子径(シアーズ滴定法により測定される一次粒子径)
固形分として1.50gのシリカゲルを200mlビーカーに採取し、約100mlの純水を加えてスラリーとした後、30gのNaClを添加して溶解した。次に、1N-HClを添加してスラリーのpHを約3に調整した後、スラリーが150mlになるまで純水を加えた。このスラリーに対して25℃で0.1N-NaOHでpH滴定を行い、pHを4.00から9.00に上げるのに必要な0.1N-NaOH溶液の容量V(ml)を測定し、シアーズ滴定法による比表面積(S)を求め、下記の式(III)及び式(IV)を用いて1次粒子径(D)を算出した。
(m/g)=32×V(ml)-25 (III)
(nm)=2720/S(m/g) (IV)
7)電子顕微鏡観察
透過型電子顕微鏡(日本電子社製 JEM-1010)を用いて、加速電圧100kVにて粒子の撮影を行った。シリカ粒子の粒子長(L)の測定方法は、シリカ粒子が数珠上及び鎖状に連結した一続きの粒子を1個の粒子とみなし、その粒子を平面上に投影した像に接する、面積を最小とする外接長方形の長辺を粒子長とした(図10参照)。
8)金属元素分析
原子吸光分光光度計(アジレントテクノロジー社製 Spectra AA)、およびICP発光分光分析装置(リガク社製CIROS120 E0P)を使用して金属元素分析を行った。
測定された金属(Si、Na、K、Mg、Ca)量より、SiOに対する金属の質量比を算出した。
【0057】
[異形化の判定]
○:D粒子径/D粒子径=2.5以上
透過型電子顕微鏡観察よりシリカ粒子が細長く成長していることを判定する。
×:D粒子径/D粒子径=2.5未満
シリカ粒子が十分に細長く成長していない。
ゲル化:ゲル化した場合はゲル化と表記した。
【0058】
〔実施例1〕
500mlのスチロール瓶に撹拌子を入れ、水性シリカゾル[日産化学(株)製スノーテックス(登録商標)ST-OXS、シアーズ法による粒子径(Dnm)=5.0nm、動的光散乱法による平均粒子径(Dnm)=9.0nm、SiO濃度10.5質量%、SiO/NaOモル比=3.1乃至3.3の珪酸ナトリウム水溶液を用いて製造]363.2gを投入した。続いて、マグネチックスターラーで撹拌しながら、アニオン源となる10質量%硝酸水溶液3.0gを投入し、次いで28質量%アンモニア水溶液3.7gを加え、1時間撹拌して原料液を調整した。
上記原料液260gを内容積300mlのSUS製オートクレーブに入れ、140℃で8時間加熱した後、室温まで冷却してシリカゾルを取り出した。得られたシリカゾルは、シリカゾル物性評価、異形化の判定に従って評価した。
【0059】
〔実施例2〕
500mlのスチロール瓶に撹拌子を入れ、水性シリカゾル[日産化学(株)製スノーテックス(登録商標)ST-OXS、シアーズ法による粒子径(Dnm)=5.0nm、動的光散乱法による平均粒子径(Dnm)=9.0nm、SiO濃度10.5質量%、SiO/NaOモル比=3.1乃至3.3の珪酸ナトリウム水溶液を用いて製造]361.4gを投入した。続いて、マグネチックスターラーで撹拌しながら、アニオン源となる10質量%硝酸水溶液4.5gを投入し、次いで28質量%アンモニア水溶液4.1gを加え、1時間撹拌して原料液を調整した。
上記原料液260gを内容積300mlのSUS製オートクレーブに入れ、140℃で8時間加熱した後、室温まで冷却してシリカゾルを取り出した。得られたシリカゾルは、シリカゾル物性評価、異形化の判定に従って評価した。
【0060】
〔実施例3〕
ナトリウム安定型アルカリ性水性シリカゾル[日産化学(株)製スノーテックス(登録商標)ST-14K、窒素ガス吸着法による一次粒子径(Dnm)=7.2nm、動的光散乱法による平均粒子径(Dnm)=16.0nm、SiO濃度18.0質量%、SiO/NaOモル比=3.1乃至3.3の珪酸ナトリウム水溶液を用いて製造]を水素型強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR-120B、ダウ・ケミカル社製)を充填したカラムに通した後、水酸基型強塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA-410J、ダウ・ケミカル社製)を充填したカラムに通すことにより、SiO濃度13.2質量%、pH3.9の酸性水性シリカゾルを得た。続いて該酸性水性シリカゾル21325gに、28質量%アンモニア水溶液132.2gを投入してアンモニア安定型原料シリカゾルを得た。
500mlのスチロール瓶に撹拌子を入れ、純水71.6gを投入した。マグネチックスターラーで撹拌しながら先ほど作製したアンモニア安定型原料シリカゾル294.3gを投入し、10分間撹拌して均一にした。続いてアニオン源となる10質量%硝酸水溶液3.3gを投入し、次いで28質量%アンモニア水溶液0.8gを投入した後、1時間撹拌して原料液を調整した。
上記原料液260gを内容積300mlのSUS製オートクレーブに入れ、140℃で8時間加熱した後、室温まで冷却してシリカゾルを取り出した。得られたシリカゾルは、シリカゾル物性評価、異形化の判定に従って評価した。
【0061】
〔実施例4〕
純水を71.8g、10質量%硝酸水溶液の投入量を3.0g、28質量%アンモニア水溶液を1.0gとした以外は、実施例3と同じ操作で実施例4の原料液を製造した。
該原料液260gを内容積300mlのSUS製オートクレーブに入れ、140℃で8時間加熱した後、室温まで冷却してシリカゾルを取り出した。得られたシリカゾルは、シリカゾル物性評価、異形化の判定に従って評価した。
【0062】
〔実施例5〕
500mlのスチロール瓶に撹拌子を入れ、純水170.8gを投入した。マグネチックスターラーで撹拌しながら水性シリカゾル[日産化学(株)製スノーテックス(登録商標)ST-OS、窒素ガス吸着法による一次粒子径(Dnm)=9.2nm、動的光散乱法による平均粒子径(Dnm)=15.2nm、SiO濃度20.5質量%、SiO/NaOモル比=3.1乃至3.3の珪酸ナトリウム水溶液を用いて製造]190.6gを投入し、10分間撹拌して均一にした。続いてアニオン源となる10質量%硝酸水溶液5.2gを投入し、次いで28質量%アンモニア水溶液3.4gを投入した後、1時間撹拌して原料液を調整した。
上記原料液260gを内容積300mlのSUS製オートクレーブに入れ、140℃で8時間加熱した後、室温まで冷却してシリカゾルを取り出した。得られたシリカゾルは、シリカゾル物性評価、異形化の判定に従って評価した。
【0063】
〔実施例6〕
純水を73.1g、アニオン源の10質量%硝酸をシュウ酸・2水和物に変更して投入量を0.3g、28質量%アンモニア水溶液を2.3gとした以外は、実施例3と同じ操作で実施例6の原料液を製造した。
上記原料液260gを内容積300mlのSUS製オートクレーブに入れ、140℃で8時間加熱した後、室温まで冷却してシリカゾルを取り出した。得られたシリカゾルは、シリカゾル物性評価、異形化の判定に従って評価した。
【0064】
〔実施例7〕
純水を70.1g、アニオン源の10質量%硝酸を8質量%硫酸に変更して投入量を3.8g、28質量%アンモニア水溶液を1.9gとした以外は、実施例3と同じ操作で実施例7の原料液を製造した。
上記原料液260gを内容積300mlのSUS製オートクレーブに入れ、140℃で8時間加熱した後、室温まで冷却してシリカゾルを取り出した。得られたシリカゾルは、シリカゾル物性評価、異形化の判定に従って評価した。
【0065】
〔実施例8〕
純水を72.7g、アニオン源の10質量%硝酸をエチレンジアミン四酢酸(キレスト(株)製キレスト3N-50、EDTA・H・3(NH)、50.4質量%EDTA含有)に変更して投入量を1.3g、28質量%アンモニア水溶液を1.7gとした以外は、実施例3と同じ操作で実施例9の原料液を製造した。
上記原料液260gを内容積300mlのSUS製オートクレーブに入れ、140℃で8時間加熱した後、室温まで冷却してシリカゾルを取り出した。得られたシリカゾルは、シリカゾル物性評価、異形化の判定に従って評価した。
【0066】
〔実施例9〕
実施例6で得られた異形シリカゾル130gを、水素型強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR-120B、ダウ・ケミカル社製)、水酸基型強塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA-410J、ダウ・ケミカル社製)、水素型強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR-120B、ダウ・ケミカル社製)を充填したカラムに順番に通すことによりSiO濃度10.5質量%、pH5.1の酸性シリカゾルを得た。次いで、得られた酸性シリカゾル63gに、28質量%アンモニア水溶液0.28gを加えて、pH9.6のアンモニア安定型シリカゾルを作製した。
【0067】
〔実施例10〕
実施例7で得られたシリカゾル130gを、水素型強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR-120B、ダウ・ケミカル社製)、水酸基型強塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA-410J、ダウ・ケミカル社製)、水素型強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR-120B、ダウ・ケミカル社製)を充填したカラムに順番に通すことによりSiO濃度10.5質量%、pH4.9の酸性シリカゾルを得た。次いで、得られた酸性シリカゾル68gに、28質量%アンモニア水溶液0.29gを加えて、pH9.6のアンモニア安定型シリカゾルを作製した。
【0068】
〔比較例1〕
純水を72.5g、10質量%硝酸の投入量を1.5g、28質量%アンモニア水溶液を1.7gとした以外は、実施例3と同じ操作で比較例2の原料液を製造した。
上記原料液260gを内容積300mlのSUS製オートクレーブに入れ、140℃で8時間加熱した後、室温まで冷却してシリカゾルを取り出した。得られたシリカゾルは、シリカゾル物性評価、異形化の判定に従って評価した。
【0069】
〔比較例2〕
純水を63.9g、10質量%硝酸の投入量を7.8g、28質量%アンモニア水溶液を4.0gとした以外は、実施例3と同じ操作で比較例2の原料液を製造した。
上記原料液260gを内容積300mlのSUS製オートクレーブに入れ、140℃で8時間加熱した後、室温まで冷却して取り出した内容物はゲル化していた。
【0070】
実施例1乃至実施例8、比較例1及び比較例2の原料液の製造に用いた水性シリカゾルのシリカ源、SiO濃度及びpH、並びに添加したアニオン源及びその添加量を夫々下記表1乃至表3に示す。
また、実施例1乃至実施8、比較例1及び比較例2で得られた原料液の物性値及び加熱条件を夫々下記表4乃至表6に示す。
また、実施例1乃至実施例10、比較例1及び比較例2で得られたシリカゾルの物性評価及び異形化の判定評価を夫々下記表7乃至表10に示す。
また、実施例1乃至実施例8、比較例1で得られたシリカゾル中のシリカ粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真(倍率25万倍)を夫々図1乃至図9に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
【表6】
【0077】
【表7】
【0078】
【表8】
【0079】
【表9】
【0080】
【表10】
【産業上の利用可能性】
【0081】
シリカゾルにアニオン源となる化合物とアルカリ源としてアンモニアを加え、所定の温度で加熱する事で容易に、金属不純物の少ない細長い粒子形状のコロイダルシリカが溶媒に分散したシリカゾルを製造することができる。
非球状のシリカ粒子からなるシリカゾルはその粒子形状に起因して、種々の効果(例えば、結合力、吸着力、光透過性)が期待でき、各種コーティング剤のマイクロフィラー、結合剤、改質剤、触媒担体、電子材料用研磨剤(例えばシリコンウエハー用研磨剤、シリコン酸化膜や銅、アルミニウム等の金属を研磨するためのデバイスウエハー用CMP研磨剤)等の用途に用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10