(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】セラミックス製造用顆粒の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/581 20060101AFI20220907BHJP
B01D 45/12 20060101ALI20220907BHJP
B04C 5/085 20060101ALI20220907BHJP
B28B 3/02 20060101ALI20220907BHJP
C04B 35/626 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C04B35/581
B01D45/12
B04C5/085
B28B3/02 P
C04B35/626 550
C04B35/626 950
(21)【出願番号】P 2018123425
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】藤本 宗寛
(72)【発明者】
【氏名】池田 剛
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-302081(JP,A)
【文献】特公平03-048123(JP,B2)
【文献】特開平03-155101(JP,A)
【文献】特開2002-293650(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104556988(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104628366(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
B28B 3/02
B01D 45/12
B04C 5/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化アルミニウムの粉末、結合剤および溶媒を含む混合物よりなるスラリーを調製するスラリー調製工程、
前記スラリーをスプレードライ装置に導入して、前記
窒化アルミニウムを含む顆粒物を形成する造粒工程、
前記スプレードライ装置内の雰囲気ガスを、表面がセラミックス製のサイクロンを経由させて排気する排気工程、
前記排気工程でサイクロンに回収された
前記顆粒物よりも粒径が小さい微粉を、前記造粒工程で得られた顆粒物に混合する工程、
を含む、ことを特徴とするセラミックス製造用顆粒の製造方法。
【請求項2】
前記微粉の粒径が40μm以下である請求項1に記載のセラミックス製造用顆粒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機化合物、例えば窒化アルミニウムを焼結用粒子として含むセラミックス製造用顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウムに代表される無機材料は、溶媒、さらには必要により結合剤等を含むスラリーをスプレードライにより顆粒状に成形し、これを焼成して固めた焼結体、即ち、セラミックスとされる。上記セラミックスは種々の用途に使用されている。例えば、窒化アルミニウム製セラミックスは、高熱伝導性、高絶縁性を示し、放熱材料や電気絶縁材料として、電気機器の放熱基板や電子回路基板などの用途に広く使用されている(特許文献1及び2)。
【0003】
特に、上記のような顆粒状成形体は、粒径が揃っているため、プレス成形により所定形状に成形するのに適しており、このような成形体を焼成することにより、目的とする形状のセラミックスを得ることができる。
【0004】
前記スプレードライによる顆粒の製造においては、造粒された顆粒はスプレードライ装置の下部から回収され、微粉は排気とともにスプレードライ装置から排出され、サイクロン、バッグフィルターで捕集される。
上記微粉はスプレードライ装置中での乾燥過程における顆粒同士の衝突、スラリーを噴霧する際に生成する微細な液滴の生成によって生成する。特に100μm以下の粒径の顆粒を作製しようとすると、その微粉の量は相対的に増え、得られる顆粒の収率を低下させるという問題があり、その改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3479160号
【文献】特許第2525074号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、前記顆粒の製造方法において、生産性に優れるセラミックス製造用顆粒の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
窒化アルミニウムの粉末および溶媒を含む混合物よりなるスラリーを調製するスラリー調製工程、
前記スラリーをスプレードライ装置に導入して、前記窒化アルミニウムを含む顆粒物を形成する造粒工程、
前記スプレードライ装置内の雰囲気ガスを、表面がセラミックス製のサイクロンを経由させて排気する排気工程、
前記排気工程でサイクロンに回収された前記顆粒物よりも粒径が小さい微粉を、前記造粒工程で得られた顆粒物に混合する工程、
を含む、上記のセラミックス製造用顆粒の製造方法が提供される。
【0008】
本発明において、前記微粉の粒径が40μm以下であることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の前記製造方法によれば、前記顆粒の製造方法において、微粉として除外される生成物を回収し、得られる顆粒に混合して製品とすることにより、収率が著しく向上したセラミックス製造用顆粒の製造法を提供することが可能である。
本発明の製造方法においては、微粉の回収技術と、回収された微粉を顆粒に混合することが最大の特徴である。
本発明者らは、上記微粉の回収に使用されるサイクロンによる微粉の汚染に着目し、上記サイクロンの内面をセラミックスで構成することにより汚染が極めて少ない微粉の回収に成功した。更に、スプレードライにより得られる顆粒物に添加した際の影響について検討した結果、得られるセラミックス製造用顆粒の重装嵩密度の上昇が見られ、成形型への充填性の向上となるばかりでなく、成形後に焼結して得られる焼結体の特性や外観に殆ど影響を与えないことを確認した。また、微粉に含まれる鉄を中心とする金属不純物量が少ないため、微粉混合後の顆粒中の鉄含有量を20ppm以下に維持することを可能とした。
このようなセラミックスス製造用顆粒は、金属不純物の混入による焼結性の低下や外観の悪化を有効に回避でき、しかも、微粒子成分を多く含んでいるため、重装嵩密度が高められている。この結果、この顆粒をプレス成形に供した時、得られるプレス成形体は、粒子間隙が小さな緻密なものとなっている。従って、このようなプレス成形体を高温に加熱しての焼結によりセラミックスを作製したとき、粒子間隙による焼結性のバラツキが有効に抑制されており、安定した物性のセラミックスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のセラミックス製造用顆粒の製造方法のプロセスを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1のフローチャートを参照して、本発明のセラミックス製造用顆粒の製造工程は、大まかに言って、焼結材料である無機化合物の粉末、溶媒及び適宜使用される任意材料を原材料として用意し、これらの原材料を用いてスラリーを調製し(スラリー調製工程)、得られたスラリーをスプレードライ装置に供給して造粒し(造粒工程)、必要に応じて、得られた顆粒物を流動化する(流動化工程)という工程を有しており、さらに、サイクロンを用いての微粒分回収及び前記顆粒物への混合工程が設けられている。
【0012】
原材料;
本発明において、原材料として使用される無機化合物は、焼結材料であり、最終的に製造されるセラミックスの骨格を形成する成分であり、目的とするセラミックスの種類に応じた無機化合物が使用される。
【0013】
このような無機化合物としては、焼結体の特性や外観の悪化のおそれがある金属不純物の少ない、中でも、その一つである鉄の含量量が20ppm以下に抑制された高純度のものが使用され、このような高純度である限り、種々の無機化合物を使用することができるが、電子機器等の電子回路基板等に使用される窒化アルミニウムを使用することが最も好適である。中でも、金属不純物の少ない無機化合物として、還元窒化法により製造した窒化アルミニウムが好適に使用される。
【0014】
また、スプレードライに供するスラリーの調製に用いる無機化合物の粉末は、一般に、平均粒子径が5μm以下、特に0.5~3μm程度の範囲にあることが、均一な粒度分布を有する顆粒を得る上で好適である。この平均粒径は、例えば、レーザー回折法による粒度分布測定装置により測定される。
【0015】
上記の無機化合物粉末と共に使用される溶媒は、スラリー調製及びスプレードライによる造粒に必須の成分であり、無機化合物の種類により、水或いは揮発性の有機溶媒が使用される。
このような有機溶媒としては、これに限定されるものではないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;エタノール、プロパノール及びブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;あるいはトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及びブロムクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;などを例示することができ、これらの有機溶媒は、2種以上を混合して使用することもできる。
かかる溶媒は、例えば、得られるスラリーの20℃での粘度が0.02~2000mPa・sの範囲となるような量で使用されることが好適であり、例えば、前述した無機化合物粉末100質量部当り、20~200質量部の量で使用される。
【0016】
また、適宜使用される他の成分としては、セラミックスの成形に使用される公知の配合剤、例えば、結合剤(バインダー)、界面活性剤、焼結助剤などを挙げることができる。
【0017】
結合剤は、顆粒を用いてのセラミックスの成形に使用されるものであり、焼結に先立って、粒子がばらばらにならずに所定形状の成形体を成形するために使用されるものであり、従来公知の配合剤である。
このような結合剤の例としては、これに制限されるものではないが、一般に、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ2-エチルヘキシルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリレート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンオキサイド及びポリプロピレンオキサイド等の含酸素有機高分子体;石油レジン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の炭化水素系合成樹脂;ポリ塩化ビニール;ワックス及びそのエマルジョン等の有機高分子体を使用することができ、これらは、2種以上を混合して使用することもできる。
かかる結合剤は、一般に、無機化合物粉末100質量部当り、0.1~30重量部の量で使用することが、焼結前の成形を効果的に行う上で好ましい。
【0018】
界面活性剤は、スラリー中に無機化合物粉末を均一に分散させるために使用するものであり、それ自体公知のものを使用することができるが、一般には、HLBが4.5~18、特に6.0~10.0の範囲にあるノニオン系界面活性剤が好適に使用される。
このようなノニオン界面活性剤の例としては、カルボキシル化トリオキシエチレントリデシルエーテル、ジグセリンモノオレート、ジグリセリンモノステアレート、カルボキシル化ヘプタオキシエチレントリデシルエーテル、テトラグリセリンモノオレート、ヘキサグリセリンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等をあげることができ、これらは、2種以上を混合して使用することも可能である。
かかる界面活性剤の使用量は、一般に、無機化合物粉末100質量部当り、0.01~10質量部、特に0.02~3.0質量部の範囲であることが好ましい。
【0019】
さらに、焼結助剤は、セラミックスを製造する際の焼結を促進させるために使用されるものであり、無機化合物粉末の種類に応じて、それ自体公知のものを使用することができる。例えば、窒化アルミニウム粉末を使用する場合には、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム等のアルカリ土類金属酸化物;酸化イットリウム、酸化ランタン等の希土類酸化物;アルミン酸カルシウム等の複合酸化物;などが焼結助剤として好適であり、窒化アルミニウム粉末との合計量中に占める割合で0.1~10質量%の範囲で使用される。
【0020】
スラリー調製;
上述した各種の原材料は、公知の混合装置を使用して混合することができ、かかる混合装置としては、ボールミルを代表とする回転ミルが一般的である。これにより、無機化合物粉末が均一に分布したスラリーが得られる。
得られたスラリーは、必要に応じて、濾過され、スラリー中の粗粒分を除去した後、スラリータンクに一時的に保存される。
【0021】
尚、上記の濾過は、一般に、スラリーを目開きが10~100μmの濾材を通すことにより行われる。
このようにして、好適には20℃での粘度が0.02~2000Pa・sの範囲にあるスラリーが得られる。
【0022】
スプレードライによる造粒;
上記のようにして得られたスラリーは、スプレードライ装置により導入されて造粒されるが、無機金属化合物として窒化アルミニウムを使用する場合には、このスラリーを、マグネットフィルターを通してスプレードライ装置に供給することが好適である。
即ち、窒化アルミニウム粉末は、非常に硬質であり、このため、この窒化アルミニウム粉末を含む材料の搬送配管が摩耗し、摩耗粉が不純物として混入するおそれがある。例えば、搬送配管としては、ステンレススチール製のものが使用されているが、この結果、Fe,Ni,Cr等を含む摩耗粉がスラリー中に混入しているおそれがある。このため、上記スラリーをマグネットフィルターを通して供給することにより、このような摩耗粉をスラリー中から好適に除去することができ、例えば、得られる顆粒中に金属不純物含量が20ppmを超えてしまうという不都合を有効に回避できる。
【0023】
尚、マグネットフィルターによる摩耗粉の除去は、造粒後に行うこともできるが、造粒後では、除去効率が低いため、スプレードライ装置にスラリーを供給する直前にマグネットフィルターを通して摩耗粉の除去を行うことが好適である。即ち、粒状物をマグネットフィルターに通すよりも、スラリーをマグネットフィルターに通す方が、マグネットフィルターに密に接触させることができるからである。
【0024】
本発明において、スプレードライ装置では、その上部から前記調製されたスラリーが適宜加熱された乾燥気流(例えば空気や窒素ガス)中に噴霧され、これにより溶媒が除去され、無機化合物を含む粒状物が得られる。
【0025】
スプレードライ装置内で噴霧する方法には、ノズル方式、またはディスク方式があるが、本発明の比較的粒径の小さいセラミックス顆粒では、ディスク方式が好適である。
また、本発明において、造粒された顆粒はスプレードライ装置の下部から回収され、微粉は排気とともにスプレードライ装置から排出され、サイクロン、バッグフィルターで捕集される。
尚、サイクロンを介さずに直接バッグフィルターで生成物を全量回収する方法も考えられるが、本発明者らの確認によれば、得られる顆粒が型崩れしたり、微粉が表面に強固に付着して重装嵩密度が低下した物が得られたりするという問題を有する。
前記サイクロンに捕集される微粉は、スプレードライヤー下で捕集される顆粒物よりも小さい粒径のものであり、その粒径は、40μm以下の物であることが好ましい。サイクロンで補修されないさらに小さな粒径のものはバグフィルターで捕集される。
【0026】
また、この微粉は、スプレードライにより得られた粒状物に混合されるものである。サイクロン内では微粉が遠心分離され、壁面に衝突しその後重力により落下、下に溜まる仕組みであるため、サイクロンの内面は摩耗しやすい。このため、サイクロンとしては、その内面がセラミックスコーティングされたものが使用される。これにより、サイクロンにより回収される微粉中への金属不純物の混入を確実に防止し、この微粉を、造粒により得られた粒状物に混合したときの金属不純物の混入を有効に回避することができる。前記無機化合物として、窒化アルミニウムを使用する場合、窒化アルミニウムセラミックスやアルミナセラミックスでコーティングするのが好適である。
【0027】
また、スプレードライ装置から排出された粒状物は、篩(例えば振動篩など)を通して粗粒分(例えば粒径が300μm以上の粒子)を除去することが好ましい。
【0028】
微粉の混合;
本発明では、前記の用にして得られた顆粒物に、上述したサイクロンで回収された微粉を混合するが、粒子径が40μm以下の微粒子成分が占める割合が10~25質量%の範囲となるように、微粉を混合することが好ましい。この混合方法については制限されないが、後述する流動化処理と兼ねて行うことが好ましい。
【0029】
流動化処理;
上記のようにして微粉が混合された粒状物は、乱流の気体中に顆粒を滞留させる工程(流動化工程)に供給し、流動性の向上、顆粒物の強度向上及び顆粒物とサイクロンで回収された微粉との更なる均一化を図ることが好ましい。
セラミックス製造用顆粒として、窒化アルミニウム顆粒を例に取ると、この流動化に用いる気体は、窒化アルミニウム粉末や結合剤等の添加剤と実質的に反応しない気体であることが好ましく、例えば、空気、酸素、窒素などが挙げられる。また、供給される気体の風速は、顆粒の流動化に必要な風速であれば良い。顆粒の流動化に必要な風速は、例えば、化学工学協会編「化学工学便覧改訂4版」の176頁記載の流動化開始速度の式と1056頁記載の終末速度の式で計算される値の範囲から任意に選択される。また、顆粒物の滞留時間は、1分~36時間の範囲から選ぶことが好ましい。供給される気体の温度は、任意の温度が採用されるが、適当な破壊強度を有する窒化アルミニウム顆粒を得る為に、0~250℃の範囲から選択することが好ましい。この流動化工程により、スプレードライヤー下から補修された顆粒とサイクロンで捕集された微粉が均一に混合される。また、顆粒物の流動性、強度を調整することができる。
上記流動化工程は、流動床を備えた装置を使用し、バッチで行うことが一般的であるが、上記流動化工程に顆粒物を供給するスプレードライによる造粒工程においては、装置の操作上、連続で運転を行うことが好ましい。このような場合、造粒工程における運転を流動化工程に合わせてバッチで行うことを避けるため、造粒工程と流動化工程との間に、バッファーとなるホッパー、或いはタンクを設けて、造粒工程を連続して行いながら、前記流動化工程をバッチで行うことも可能であり、且つ、好ましい態様である。
【0030】
流動化工程を経て得られた顆粒は、適宜、篩にかけられ、これにより、さらに粗粒分が除去され、例えば、所定の平均粒径及び微粒子含量を有する本発明のセラミックス製造用顆粒として回収される。
【0031】
セラミックス製造用顆粒;
本発明の方法により製造されるセラミックス製造用顆粒は、無機化合物当りの金属不純物含量が0.1質量%以下の極めて高純度である。中でも、金属不純物の一つである鉄の含有量を元素換算で20ppm以下に抑制することができるため、このような金属不純物による焼結体の特性や外観の悪化を有効に防止することが可能となる。
また、本発明のセラミックス製造用顆粒の平均粒子径は、60~100μmの範囲となるように、前記顆粒物の製造条件の調整、前記微粉の混合割合の範囲内での混合量の調整等を行うことが、プレス成形に好適なセラミックス製造用顆粒とするために好ましい。即ち、顆粒物と共に含まれている微粉が、粒径の小さい顆粒として機能し、この微粒子成分が大きな粒子の間隙を埋めているため、プレス成形を経ての焼結に極めて適している。即ち、この顆粒を所定の型内に充填してプレス成形を行ったとき、得られるプレス成形体は、粒子同士が密に接合しているため、引き続いて行われる高温加熱により焼結に際して、空隙の存在による焼結性の低下を有効に回避することができる。
尚、本発明において、顆粒等の粒子の平均粒径や微粒子成分含量は、レーザー回折散乱法により測定される。
【0032】
本発明のセラミックス製造用顆粒は、例えば、所定の型内に充填されてのプレス成形により所望の形状に成形され、次いで、用いた無機化合物の種類に応じての加熱により焼結され(例えば窒化アルミニウムの場合で600℃以上)、焼結不良による各種特性の低下が有効に介され、安定した特性を有するセラミックスを得ることができる。
従って、原材料の無機化合物粉末として窒化アルミニウム粉末を用いた場合、最終製品であるセラミックスは極めて高品質であり、各種電子機器の回路基板や放熱板として、広く使用される。
【実施例】
【0033】
本発明をさらに具体的に説明するために、以下に実施例及び比較例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例における各種の物性の測定は次の方法により行った。
【0034】
(1)窒化アルミニウム粉末の平均粒子径
酸化アルミニウム粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化アルミニウムと未反応原料酸化アルミニウムの混合粉末の平均粒径は、試料をホモジナイザーにてピロリン酸ソーダ水溶液中に分散させ、日機装株式会社製 MICROTRAC HRAを用いてレーザー回折法により測定した。
(2)比表面積
窒化アルミニウム粉末の比表面積は、(株)島津製作所製流動式表面積自動測定装置フローソーブ2300形を用いてBET法により測定した。
(3)酸素含有量
窒化アルミニウム粉末中の全酸素含有量は、(株)堀場製作所製セラミックス中酸素窒素分析装置EMGA-620Wを用いて測定した。
(4)炭素含有量
窒化アルミニウム粉末中の炭素含有量は、(株)堀場製作所製金属中炭素分析装置「EMIA-110」を使用して、粉末を酸素気流中で燃焼させ、発生したCO、CO2ガス量から定量した。
(5)窒化アルミニウム粉末の金属元素含有量
窒化アルミニウム粉末のアルミニウム以外の金属元素含有量は、試料0.8gに硝酸2mL、りん酸10mLを加えて380℃、20分間加熱分解し、(株)島津製作所製ICPS-1000-IIを用いてICP発光分光分析法により測定した。
(6)顆粒の平均粒子径
日機装株式会社製 MICROTRAC MT3300EXを用いて、レーザー回折法により、測定した。
(7)窒化アルミニウム顆粒の金属不純物量
窒化アルミニウム顆粒中の金属元素含有量は、顆粒を600℃、5時間加熱、脱脂したものを試料とした。試料0.8gに硝酸2mL、りん酸10mLを加えて380℃、20分間加熱分解し、(株)島津製作所製ICPS-1000-IIを用いてICP発光分光分析法により測定した。
(8)重装嵩密度
筒井理化学機械(株)製「A・B・D粉体特性測定器」を用いて重装嵩密度を測定した。
(9)プレス成形体密度
プレス成形体の寸法と重量とから、プレス成形体密度を計算して求めた。
(10)焼結体密度
(株)東洋精機製作所製「高精度比重計D-H」を使用して、アルキメデス法により求めた。
(11)体積抵抗率
JIS C2141に準拠した方法で、体積抵抗率測定装置(株)アドバンテスト製R8340にて測定を行った。
(12)熱伝導率
作製したAlN焼結体の熱伝導率は京都電子工業(株)製LFA-502を用いてレーザーフラッシュ法により測定した。
【0035】
<実施例1>
内容積500Lの回転ボールミルに鉄心入りナイロンボールを入れ、次いで、表1に示す還元窒化法で製造された窒化アルミニウム粉末((株)トクヤマ製HグレードNo.1)120kg、酸化イットリウム6kg、ヘキサグリセリンモノオレート0.1kg、ポリメタクリル酸ブチル4kg、トルエン溶媒120kgを投入して、十分にボールミル混合した後、白色のスラリーを得た。
こうして得られたスラリーをスプレードライヤーにより、アトマイザー回転数5000rpmで造粒した。造粒終了後、スプレードライヤー下で捕集された顆粒100kgと、造粒中にサイクロンに捕集された顆粒25kgを流動乾燥機に導入し、室温で2時間流動化処理を行い、窒化アルミニウム顆粒を作製した。サイクロンの内部は、アルミナセラミックスでコーティングしてものを用いた。スプレードライヤー下で捕集された顆粒、サイクロンに捕集された顆粒の粒径、金属不純物(Fe、Cr、Ni)を測定した。それらを混合して得られた顆粒については、粒径、金属不純物(Fe、Cr、Ni)、重装嵩密度を測定した。結果を表2に示す。
この顆粒30gをφ100mmの金型に導入し、100MPaの圧力でプレス成形し、厚さ約2mmのプレス成形体を作製し、プレス成形密度を測定した。その後、そのプレス成形体を空気中580℃で5時間の条件下で脱脂した。次いで、内面に窒化ホウ素を塗布厚さ約したカーボン製るつぼに入れ、窒素雰囲気下1800℃で5時間焼成し、焼結体を得た。その焼結体表面を研磨後、外観の確認(金属不純物混入による変色の有無)、焼結体の密度、体積抵抗率、熱伝導率を測定した。結果を表2に示す。
【0036】
<実施例2>
実施例1において、アトマイザー回転数を8000rpmとする以外は、実施例1と同様にして造粒した。造粒終了後、スプレードライヤー下で捕集された顆粒88kgと、造粒中にサイクロンに捕集された顆粒35kgを流動乾燥機に導入し、室温で2時間流動化処理を行い、窒化アルミニウム顆粒を作製した。スプレードライヤー下で捕集された顆粒、サイクロンに捕集された顆粒の粒径、金属不純物(Fe、Cr、Ni)を測定した。それらを混合して得られた顆粒については、粒径、金属不純物(Fe、Cr、Ni)、重装嵩密度を測定した。結果を表1に示す。
この顆粒30gをφ100mmの金型に導入し、100MPaの圧力でプレス成形し、厚さ約2mmのプレス成形体を作製し、プレス成形密度を測定した。その後、そのプレス成形体を空気中580℃で5時間の条件下で脱脂した。次いで、内面に窒化ホウ素を塗布厚さ約したカーボン製るつぼに入れ、窒素雰囲気下1800℃で5時間焼成し、焼結体を得た。その焼結体表面を研磨後、外観の確認(金属不純物混入による変色の有無)、焼結体の密度、体積抵抗率、熱伝導率を測定した。結果を表2に示す。
【0037】
<比較例1>
実施例1において、サイクロンの内部をアルミナセラミックスでコーティングしていないステンレス製のものを用いた以外は実施例1と同様にして造粒した。
造粒終了後、スプレードライヤー下で捕集された顆粒101kgと、造粒中にサイクロンに捕集された顆粒24kgを流動乾燥機に導入し、室温で2時間流動処理を行い、窒化アルミニウム顆粒を作製した。スプレードライヤー下で捕集された顆粒、サイクロンに捕集された顆粒の粒径、金属不純物を測定した。それらを混合して得られた顆粒については、粒径、金属不純物(Fe、Cr、Ni)、重装嵩密度を測定した。結果を表1に示す。
この顆粒30gをφ100mmの金型に導入し、100MPaの圧力でプレス成形し、厚さ約2mmのプレス成形体を作製し、プレス成形密度を測定した。その後、そのプレス成形体を空気中580℃で5時間の条件下で脱脂した。次いで、内面に窒化ホウ素を塗布厚さ約したカーボン製るつぼに入れ、窒素雰囲気下1800℃で5時間焼成し、焼結体を得た。その焼結体表面を研磨後、外観の確認(金属不純物混入による変色の有無)、焼結体の密度、体積抵抗率、熱伝導率を測定した。結果を表2に示す。
【0038】
<参考例1>
実施例1と同様にして造粒後、スプレードライヤー下で捕集された顆粒100kgを流動乾燥機に導入し、室温で2時間流動化処理を行い、窒化アルミニウム顆粒を作製した。得られた顆粒については、粒径、金属不純物(Fe、Cr、Ni)、重装嵩密度を測定した。結果を表1に示す。
この顆粒30gをφ100mmの金型に導入し、100MPaの圧力でプレス成形し、厚さ約2mmのプレス成形体を作製し、プレス成形密度を測定した。その後、そのプレス成形体を空気中580℃で5時間の条件下で脱脂した。次いで、内面に窒化ホウ素を塗布厚さ約したカーボン製るつぼに入れ、窒素雰囲気下1800℃で5時間焼成し、焼結体を得た。その焼結体表面を研磨後、外観の確認(金属不純物混入による変色の有無)、焼結体の密度、体積抵抗率、熱伝導率を測定した。結果を表2に示す。
【0039】
【0040】