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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】ゲートバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/18 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
F16K3/18 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018133861
(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公開番号】P2020012493
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】狩俣 努
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-102879(JP,U)
【文献】特開2012-241766(JP,A)
【文献】特開2012-251621(JP,A)
【文献】実開昭58-195158(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口部を有する第1のプレートと、
第2の開口部を有し、前記第1のプレートに対向して配置される第2のプレートと、
前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に形成される弁体ガイド空間と、
前記弁体ガイド空間内に配置され、弁体開口部を有する弁体プレートと、
を備え、
前記第1のプレートには、前記弁体プレートを前記第1のプレートから離れる方向に向けて押圧する第1の押圧部が設けられ、
前記第2のプレートには、前記弁体プレートを前記第1のプレートに近づく方向に向けて押圧する第2の押圧部が設けられ、
前記弁体プレートは、
前記第1の押圧部に押圧されて前記第1のプレートから離間した状態では、前記弁体ガイド空間内において、前記弁体開口部が前記第1の開口部からずれる方向に沿ってスライド可能であり、
前記第2の押圧部に押圧されて前記第1のプレートに接触した状態では、前記弁体ガイド空間内において、前記第1のプレートに対して位置が固定され、
前記第1の押圧部および前記第2の押圧部は、複数の金属製の薄板が互いに拡散接合されることによって形成されたベローズ構造を有し、
前記第1のプレートに設けられる前記第1の押圧部の数は、前記第2のプレートに設けられる前記第2の押圧部の数より多いことを特徴とするゲートバルブ。
【請求項2】
前記第1の押圧部は、第1の制御部によって制御され、
前記第1のプレートには、少なくとも3つの前記第1の押圧部が設けられ、前記少なくとも3つの第1の押圧部は、環状に配置されており、
前記第1の制御部は、前記第1の押圧部によって前記弁体プレートを前記第1のプレートから離れる方向に向けて押圧するときに、前記環状に配置された第1の押圧部を所定の回転方向に沿って順に作動させる、請求項1に記載のゲートバルブ。
【請求項3】
前記第2の押圧部は、第2の制御部によって制御され、
前記第2のプレートには、少なくとも2つの前記第2の押圧部が設けられ、
前記第2の制御部は、前記第2の押圧部によって前記弁体プレートを前記第1のプレートに近づく方向に向けて押圧するときに、前記第2の押圧部を同時に作動させる、請求項1または請求項2に記載のゲートバルブ。
【請求項4】
前記弁体プレートには、前記弁体開口部が前記第1の開口部からずれる方向にスライドされたときに前記第1の開口部を囲むように配置される環状のシーリング部材が設けられている、請求項1~請求項のいずれか一項に記載のゲートバルブ。
【請求項5】
前記シーリング部材は、前記第1のプレートに対して密着性と剥離性を有する材料で構成されている、請求項に記載のゲートバルブ。
【請求項6】
前記第1のプレートには、前記弁体開口部の周辺に配置される壁部材が設けられ、
前記第1のプレートと前記弁体プレートと前記壁部材は、導電性を有する材料で構成されており、
前記第1のプレートまたは前記弁体プレートは、接地されている、請求項1または請求項2に記載のゲートバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型のゲートバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子顕微鏡や電子線検査装置などの装置には、電子ビームを発生させる電子銃が配置される空間と、電子ビームが照射される検査対象(サンプル)が配置される空間とを、2つの空間に仕切るたのゲートバルブが設けられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
ゲートバルブは、以下のような場合に使用される。例えば、サンプルに電子ビームが照射された結果、サンプルからガスが発生して真空度が悪化してしまった場合に、電子銃を保護するためにゲートバルブが閉じられる。また、サンプル交換を行う場合、サンプルが配置される空間の真空度が悪化するため、電子銃を保護するためにゲートバルブが閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-200709号公報
【文献】特開2008-116016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子顕微鏡や電子線検査装置などの装置も小型化が進み、装置内部の空間が少なくなってきている。それに伴い、ゲートバルブを小型化する技術も開発されているが、従来のゲートバルブにおいては、10数mmまでの薄型化が限度であった。従来のゲートバルブは、小型の電子顕微鏡や電子線検査装置の場合、ある程度の空間的な余裕のある電子銃の近傍であれば何とか配置することが可能であるものの、ほとんど空間的な余裕のないサンプルの近傍には配置することが不可能であった(図10参照)。そのため、小型の電子顕微鏡や電子線検査装置であっても、サンプルの近傍に配置できるような薄型のゲートバルブの開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、薄型のゲートバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のゲートバルブは、第1の開口部を有する第1のプレートと、第2の開口部を有し、前記第1のプレートに対向して配置される第2のプレートと、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に形成される弁体ガイド空間と、前記弁体ガイド空間内に配置され、弁体開口部を有する弁体プレートと、を備え、前記第1のプレートには、前記弁体プレートを前記第1のプレートから離れる方向に向けて押圧する第1の押圧部が設けられ、前記第2のプレートには、前記弁体プレートを前記第1のプレートに近づく方向に向けて押圧する第2の押圧部が設けられ、前記弁体プレートは、前記第1の押圧部に押圧されて前記第1のプレートから離間した状態では、前記弁体ガイド空間内において、前記弁体開口部が前記第1の開口部からずれる方向に沿ってスライド可能であり、前記第2の押圧部に押圧されて前記第1のプレートに接触した状態では、前記弁体ガイド空間内において、前記第1のプレートに対して位置が固定され、前記第1の押圧部および前記第2の押圧部は、複数の金属製の薄板が互いに拡散接合されることによって形成されたベローズ構造を有している。
【0008】
この構成によれば、複数の金属製の薄板を互いに拡散接合させることによって、第1の押圧部および第2の押圧部のベローズ構造が形成されているので、ゲートバルブを薄型化することができる。これにより、従来のゲートバルブでは実現することが極めて困難であった厚さ(2~3mm)まで、ゲートバルブを薄型化することが可能になる。
【0009】
また、本発明のゲートバルブでは、前記第1のプレートに設けられる前記第1の押圧部の数は、前記第2のプレートに設けられる前記第2の押圧部の数より多くてもよい。
【0010】
この構成によれば、第1の押圧部が多く設けられる。第1のプレートと接触した状態の弁体プレートは、第1のプレートと密着して引き離しにくい。そのため、弁体プレート(第1のプレートに密着した弁体プレート)を第1のプレートから引き離すためには、より大きい力が必要となる。この場合、第1の押圧部が多く設けられているので、弁体プレートを第1のプレートから容易に引き離すことができる。
【0011】
また、本発明のゲートバルブでは、前記第1の押圧部は、第1の制御部によって制御され、前記第1のプレートには、少なくとも3つの前記第1の押圧部が設けられ、前記少なくとも3つの第1の押圧部は、環状に配置されており、前記第1の制御部は、前記第1の押圧部によって前記弁体プレートを前記第1のプレートから離れる方向に向けて押圧するときに、前記環状に配置された第1の押圧部を所定の回転方向に沿って順に作動させてもよい。
【0012】
この構成によれば、第1のプレートには、少なくとも3つの第1の押圧部が環状に配置されており、第1の押圧部によって弁体プレートを第1のプレートから引き離すときに、環状に配置された第1の押圧部が所定の回転方向に沿って順に作動する。これにより、環状に配置された第1の押圧部から所定の回転方向に沿って順に弁体プレートに力が加えられるので、弁体プレートを第1のプレートから円滑に引き離すことができる。
【0013】
また、本発明のゲートバルブでは、前記第2の押圧部は、第2の制御部によって制御され、前記第2のプレートには、少なくとも2つの前記第2の押圧部が設けられ、前記第2の制御部は、前記第2の押圧部によって前記弁体プレートを前記第1のプレートに近づく方向に向けて押圧するときに、前記第2の押圧部を同時に作動させてもよい。
【0014】
この構成によれば、第2の押圧部によって弁体プレートを第1のプレートに押し付けるときに、複数の第2の押圧部が同時に作動する。これにより、複数に配置された第2の押圧部から弁体プレートに均等に力が加えられるので、弁体プレートを第1のプレートに適切に押し付けることができ、弁体プレートと第1のプレートとの間の気密性を適切に保つことができる。
【0015】
また、本発明のゲートバルブでは、前記弁体プレートには、前記弁体開口部が前記第1の開口部からずれる方向にスライドされたときに前記第1の開口部を囲むように配置される環状のシーリング部材が設けられてもよい。
【0016】
この構成によれば、弁体開口部が第1の開口部からずれている状態では、シーリング部材によって第1の開口部が囲われて、弁体プレートと第1のプレートとの間の気密性を良好に確保することができる。
【0017】
また、本発明のゲートバルブでは、前記シーリング部材は、前記第1のプレートに対して密着性と剥離性を有する材料で構成されてもよい。
【0018】
この構成によれば、シーリング部材が密着性を有しているので、弁体プレートが第1のプレートに押し付けられたときに、弁体プレートと第1のプレートとの間の気密性を良好に確保することができる。また、シーリング部材が剥離性を有しているので、弁体プレートを第1のプレートから容易に引き離すことができる。
【0019】
また、本発明のゲートバルブでは、前記第1のプレートには、前記弁体開口部の周辺に配置される壁部材が設けられ、前記第1のプレートと前記弁体プレートと前記壁部材は、導電性を有する材料で構成されており、前記第1のプレートまたは前記弁体プレートは、接地されてもよい。
【0020】
この構成によれば、弁体開口部の周辺に壁部材が配置されており、第1のプレートと弁体プレートと壁部材が導電性を有しているので、弁体開口部が第1の開口部に対応する位置に配置された状態で、第1の開口部と弁体開口部を荷電粒子ビーム(例えば電子ビーム)が通過した場合に、発生した迷走電子によるチャージを、壁部材から接地された第1のプレートや弁体プレートから逃がすことができる。これにより、ゲートバルブをGND電極として利用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ゲートバルブを薄型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態におけるゲートバルブの斜視図である。
図2】本発明の実施の形態におけるゲートバルブの分解斜視図である。
図3】本発明の実施の形態におけるベローズ構造(拡散接合前)の説明図である。
図4】本発明の実施の形態におけるベローズ構造(拡散接合後)の説明図である。
図5】本発明の実施の形態における弁体プレートの上面図である。
図6】本発明の実施の形態における弁体プレートの下面図である。
図7】本発明の実施の形態におけるゲートバルブの動作の説明図である。
図8】本発明の実施の形態におけるゲートバルブの動作の説明図である。
図9】本発明の実施の形態におけるゲートバルブの動作の説明図である。
図10】小型の電子顕微鏡の装置内部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態のゲートバルブについて、図面を用いて説明する。本実施の形態では、小型の電子顕微鏡や電子線検査装置等に用いられるゲートバルブの場合を例示する。
【0024】
本実施の形態のゲートバルブの構成を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態のゲートバルブの斜視図であり、図2は、本実施の形態のゲートバルブの分解斜視図である。図1および図2に示すように、ゲートバルブ1は、電子ビームの光源側(図1および図2における上側)に配置される第1のプレート2と、第1のプレート2に対向してサンプル側(図1および図2における下側)に配置される第2のプレート3と、第2のプレート3の上面に固定される中間プレート4と、中間プレート4の中央部に形成された弁体ガイド空間5の内部に配置される弁体プレート6を備えている。第1のプレート2、第2のプレート3、中間プレート4、弁体プレート6は、いずれも金属製(例えば、第1のプレート2と第2のプレート3と中間プレート4はステンレス製、弁体プレート6はチタン製)である。また、第1のプレート2と第2のプレート3は、GNDに接地されている。
【0025】
第1のプレート2と中間プレート4の間には、第1のガスケット7が配置されており、第2のプレート3と中間プレート4の間には、第2のガスケット8が配置されている。第1のガスケット7と第2のガスケット8は、いずれも気密性を有する樹脂製(例えばシリコーン製)である。なお、中間プレート4は、第2プレートと一体に製造することもできる。その場合には、第2のガスケット8は不要である。
【0026】
第1のプレート2には、電子ビームの光軸に対応する位置に第1の開口部9が設けられている。また、第2のプレート3には、第1の開口部9に対応する位置(電子ビームの光軸に対応する位置)に第2の開口部10が設けられている。また、弁体プレート6には、電子ビームを通過させるための弁体開口部11が設けられている。
【0027】
第1のプレート2と第2のプレート3は、ボルト12によって固定される。このとき、中間プレート4は、第2のプレート3に固定される。このとき、弁体プレート6は、第2のプレート3に固定された中間プレート4の弁体ガイド空間5の内部を移動可能である。具体的には、弁体プレート6は、電子ビームの光軸に沿う方向(図1および図2における上下方向)に上下移動可能である。また、弁体プレート6は、電子ビームの光軸に交差する方向(図1および図2における左右方向)にスライド移動可能である。
【0028】
第1のプレート2の下面には、弁体プレート6を第1プレートから離れる方向(図1および図2における下方向)に向けて押圧する第1の押圧部13が設けられている。本実施の形態では、4つの第1の押圧部13が四角環状に配置されている。第1の押圧部13にはそれぞれエア供給路14が接続されており、エア供給路14から空気が供給されることによって、第1の押圧部13は、弁体プレート6を第1プレートから離れる方向に向けて押圧するように構成されている。第1の押圧部13への空気の供給は、第1の制御部15によって制御されている(図7図9参照)。
【0029】
第2のプレート3の上面には、弁体プレート6を第1プレートに近づく方向(図1および図2における上方向)に向けて押圧する第2の押圧部16が設けられている。本実施の形態では、2つの第2の押圧部16が並んで配置されている。第1の押圧部13と同様、第2の押圧部16にもそれぞれエア供給路14が接続されており、エア供給路14から空気が供給されることによって、第2の押圧部16は、弁体プレート6を第1プレートに近づく方向に向けて押圧するように構成されている。第2の押圧部16への空気の供給は、第2の制御部17によって制御されている(図7図9参照)。
【0030】
ここで、図3および図4を参照しながら、第1の押圧部13と第2の押圧部16の構造を説明する。本実施の形態では、第1の押圧部13と第2の押圧部16は、同一の構造を有している。図3および図4は、第1の押圧部13と第2の押圧部16の構造の説明図である。図3および図4に示すように、第1の押圧部13と第2の押圧部16は、複数の金属製の薄板が互いに拡散接合されることによって形成されたベローズ構造を有している。
【0031】
この場合、第1の薄板18と第2の薄板19を交互に重ね合わせてベローズ構造が形成される。第1の薄板18は、中央が開口している円板状(円環状)の本体と、本体上面の外側に設けられる円環状の上面外側凸部20と、本体下面の内側に設けられる円環状の下面内側凸部21を備えている。また、第2の薄板19は、中央が開口している円板状(円環状)の本体と、本体上面の内側に設けられる円環状の上面内側凸部22と、本体下面の外側に設けられる円環状の下面外側凸部23を備えている。
【0032】
そして、第1の薄板18と第2の薄板19が交互に重ね合わせられた状態で、第1の薄板18の上面外側凸部20と第2の薄板19の下面外側凸部23とが拡散接合され、第1の薄板18の下面内側凸部21と第2の薄板19の上面内側凸部22とが拡散接合されることによって、ベローズ構造が形成される。
【0033】
つぎに、図5および図6を参照しながら、弁体プレート6の構成について説明する。図5は、弁体プレート6の上面図であり、図6は、弁体プレート6の下面図である。図5に示すように、弁体プレート6の上面(第1のプレート2側の面、図1および図2における上側の面)には、第1のプレート2の第1の押圧部13が収納される第1の凹部24が形成されている。また、図6に示すように、弁体プレート6の下面(第2のプレート3側の面、図1および図2における下側の面)には、第2のプレート3の第2の押圧部16が収納される第2の凹部25が形成されている。
【0034】
また、図5に示すように、弁体プレート6の上面には、弁体開口部11が第1の開口部9からずれる方向にスライドされたときに第1の開口部9を囲むように配置される環状のシーリング部材26が設けられている。シーリング部材26は、第1のプレート2に対して密着性と剥離性を有する樹脂製(例えばシリコーン製)である。さらに、弁体プレート6の上面には、弁体開口部11の周辺に配置される一対の直線状の壁部材27が設けられている。壁部材27は、導電性を有する樹脂製(例えばカーボン入りシリコーン製)である。
【0035】
以上のように構成されたゲートバルブ1について、図7図9を参照してその動作を説明する。
【0036】
例えば電子ビームをサンプルに照射する場合など、ゲートバルブ1を開いた状態にする場合には、図7(a)に示すように、弁体プレート6の弁体開口部11を、第1のプレート2の第1の開口部9(と第2のプレート3の第2の開口部10)に対応する位置(電子ビームの光軸の位置)に配置する。そして、図7(b)に示すように、第2の制御部17によって第2の押圧部16を作動させ、第2の押圧部16によって弁体プレート6を第1のプレート2に近づく方向に向けて押圧する。このとき、2つの第2の押圧部16を同時に作動させる。弁体プレート6は、第2の押圧部16に押圧されて第1のプレート2に接触した状態では、弁体ガイド空間5内において第1のプレート2に対して位置が固定される。
【0037】
つぎに、サンプルを交換する場合など、ゲートバルブ1を閉じた状態にする場合には、図8(b)に示すように、第2の制御部17の作動を停止し、弁体プレート6に対する第2の押圧部16による押圧(第1のプレート2に近づく方向に向けた押圧)を停止する。その後、第1の制御部15を作動させ、第1の押圧部13によって弁体プレート6を第1のプレート2から離れる方向に向けて押圧する。このとき、4つの第1の押圧部13を所定の回転方向に沿って順に(例えば時計回りに)作動させる。
【0038】
そうすると、弁体プレート6は、図8(a)に示すように、第1の押圧部13に押圧されて第1のプレート2から離間した状態になる。その後、弁体プレート6が第1のプレート2から離間した状態になったら、第1の押圧部13の作動を停止し、弁体プレート6に対する第1の押圧部13による押圧(第1のプレート2から離れる方向に向けた押圧)を停止する。この状態では、弁体プレート6は、第1の押圧部13と第2の押圧部16のいずれからも押圧されていない。その後、弁体ガイド空間5内において、弁体プレート6を弁体開口部11が第1の開口部9からずれる方向に沿ってスライド移動させ、弁体プレート6のシーリング部材26を、第1のプレート2の第1の開口部9に対応する位置に配置する。
【0039】
そして、図9(a)(b)に示すように、第2の制御部17によって第2の押圧部16を作動させ、第2の押圧部16によって弁体プレート6を第1のプレート2に近づく方向に向けて押圧する。このとき、2つの第2の押圧部16を同時に作動させる。弁体プレート6は、第2の押圧部16に押圧されて第1のプレート2に接触した状態では、弁体ガイド空間5内において第1のプレート2に対して位置が固定される。
【0040】
このような本実施の形態のゲートバルブ1によれば、複数の金属製の薄板18、19を互いに拡散接合させることによって、第1の押圧部13および第2の押圧部16のベローズ構造が形成されているので、ゲートバルブ1を薄型化することができる。これにより、従来のゲートバルブ1では実現することが極めて困難であった厚さ(2~3mm)まで、ゲートバルブ1を薄型化することが可能になる。
【0041】
また、本実施の形態では、第1の押圧部13が(第2の押圧部16より)多く設けられている。第1のプレート2と接触した状態の弁体プレート6は、第1のプレート2と密着して引き離しにくい。そのため、弁体プレート6(第1のプレート2に密着した弁体プレート6)を第1のプレート2から引き離すためには、より大きい力が必要となる。この場合、第1の押圧部13が多く設けられているので、弁体プレート6を第1のプレート2から容易に引き離すことができる。
【0042】
また、本実施の形態では、第1のプレート2には、少なくとも3つの第1の押圧部13が環状に配置されており、第1の押圧部13によって弁体プレート6を第1のプレート2から引き離すときに、環状に配置された第1の押圧部13が所定の回転方向に沿って順に作動する。これにより、環状に配置された第1の押圧部13から所定の回転方向に沿って順に弁体プレート6に力が加えられるので、弁体プレート6を第1のプレート2から円滑に引き離すことができる。
【0043】
また、本実施の形態では、第2の押圧部16によって弁体プレート6を第1のプレート2に押し付けるときに、複数の第2の押圧部16が同時に作動する。これにより、複数に配置された第2の押圧部16から弁体プレート6に均等に力が加えられるので、弁体プレート6を第1のプレート2に適切に押し付けることができ、弁体プレート6と第1のプレート2との間の気密性を適切に保つことができる。
【0044】
また、本実施の形態では、弁体開口部11が第1の開口部9からずれている状態では、シーリング部材26によって第1の開口部9が囲われて、弁体プレート6と第1のプレート2との間の気密性を良好に確保することができる。
【0045】
また、本実施の形態では、シーリング部材26が密着性を有しているので、弁体プレート6が第1のプレート2に押し付けられたときに、弁体プレート6と第1のプレート2との間の気密性を良好に確保することができる。また、シーリング部材26が剥離性を有しているので、弁体プレート6を第1のプレート2から容易に引き離すことができる。
【0046】
また、本実施の形態では、第1のプレート2(と第2のプレート3)が接地されており、弁体プレート6も第1のプレート2(または第2のプレート3)を介して接地されている。そして、弁体開口部11の周辺に壁部材27が配置されており、第1のプレート2(と第2のプレート3)と弁体プレート6と壁部材27が導電性を有しているので、弁体開口部11が第1の開口部9に対応する位置に配置された状態で、第1の開口部9と弁体開口部11を荷電粒子ビーム(例えば電子ビーム)が通過した場合に、発生した迷走電子によるチャージを、壁部材27から接地された第1のプレート2や弁体プレート6から逃がすことができる。これにより、ゲートバルブ1をGND電極として利用することができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0048】
例えば、上記の実施の形態では、第1のプレート2に第1の押圧部13が4つ設けられ、第2のプレート3に第2の押圧部16が2つ設けられた例について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されない。第1の押圧部13は、3つ以下でもよく5つ以上でもよい。また、第2の押圧部16は、1つでもよく3つ以上でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明にかかるゲートバルブは、ゲートバルブを薄型化することができるという効果を有し、小型の電子顕微鏡や電子線検査装置などに適用され、有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 ゲートバルブ
2 第1のプレート
3 第2のプレート
4 中間プレート
5 弁体ガイド空間
6 弁体プレート
7 第1のガスケット
8 第2のガスケット
9 第1の開口部
10 第2の開口部
11 弁体開口部
12 ボルト
13 第1の押圧部
14 エア供給路
15 第1の制御部
16 第2の押圧部
17 第2の制御部
18 第1の薄板
19 第2の薄板
20 上面外側凸部
21 下面内側凸部
22 上面内側凸部
23 下面外側凸部
24 第1の凹部
25 第2の凹部
26 シーリング部材
27 壁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10