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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】薄膜形成装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20220907BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/44 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018188481
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2020057715
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克昌
(72)【発明者】
【氏名】村田 逸人
(72)【発明者】
【氏名】土渕 岳
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-223430(JP,A)
【文献】特開2017-183603(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0133697(US,A1)
【文献】特開2012-054541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜を形成する反応炉と、
前記反応炉内に原料ガスを供給する1以上の原料ガス供給経路と、
前記原料ガス供給経路に設けられた1以上の原料ガス流量制御装置と、
前記反応炉内から排出された排ガスを搬送する排気経路と、
前記排気経路に設けられた真空ポンプと、
前記排気経路に設けられた1以上のハロゲン含有ガス導入口と、
前記ハロゲン含有ガス導入口から前記排気経路内にハロゲン含有ガスを供給する1以上のハロゲン含有ガス供給経路と、
前記ハロゲン含有ガス供給経路に設けられた1以上のハロゲン含有ガス流量制御装置と、
1以上の前記原料ガス流量制御装置及び前記ハロゲン含有ガス流量制御装置と電気的に接続された制御装置と、を備え
前記原料ガスが、ケイ素及びゲルマニウムのうち、少なくとも1以上の金属原子を含み、
前記制御装置は、前記原料ガスに含まれる前記金属原子の積算供給原子数Aを演算するとともに、前記ハロゲン含有ガスに含まれるハロゲン原子の積算供給原子数Bが前記積算供給原子数Aの3~5倍の範囲となるように、前記ハロゲン含有ガスの供給時間を演算する、薄膜形成装置。
【請求項2】
前記排気経路が、前記真空ポンプの二次側に少なくとも1以上の前記ハロゲン含有ガス導入口を有する、請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記排気経路が、前記真空ポンプの一次側に少なくとも1以上の前記ハロゲン含有ガス導入口を有する、請求項1又は2に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記ハロゲン含有ガスが、フッ素原子を含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の薄膜形成装置の運転方法であって、
排気経路内にハロゲン含有ガスと反応する成分が存在している間のみ、前記排気経路内に前記ハロゲン含有ガスを供給する、薄膜形成装置の運転方法。
【請求項6】
反応炉内に供給する原料ガスの供給量から、前記排気経路内への前記ハロゲン含有ガスの供給時間を算出する、請求項に記載の薄膜形成装置の運転方法。
【請求項7】
前記原料ガスが、ケイ素及びゲルマニウムのうち、少なくとも1以上の金属原子を含み、
前記ハロゲン含有ガスが、フッ素原子を含む場合において、
前記フッ素原子の積算供給原子数Bが前記金属原子の積算供給原子数Aの3~5倍の範囲内なるように、前記ハロゲン含有ガスの供給時間を制御する、請求項に記載の薄膜形成装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積デバイスや液晶パネルなどの電子デバイスの製造では、PVD(物理的気相堆積)法やCVD(化学的気相堆積)法などの方法によって、基板上に様々な材質の膜が成膜される。例えば、CVD法による成膜プロセスでは、SiH、Si(OC(以下、「TEOS」と記す)、WF(六フッ化タングステン)を始めとする様々な材料が使用され、反応室内の基板等の上に酸化膜や窒化膜等が成膜される。このような成膜プロセスでは、未分解の材料あるいは副生成物が反応室の下流側に排出され、特にドライポンプ下流側の大気圧へと圧力上昇する箇所で、低沸点成分の堆積が生じる。
【0003】
また、成膜材料の一部は、基板等の上の薄膜形成に有効利用されず、反応室の内壁や電極面などに付着する。特に付着物が多く発生するプロセスでは、成膜品質の維持を目的として、反応性ガスを導入して付着物を除去するドライ洗浄プロセスが行われることがある。例えば、SiHとNHを用いるシリコン窒化膜形成CVDや、TEOSとOを用いるシリコン酸化膜形成CVDでは、NFやパーフルオロカーボンなどのフッ素系ガスによるドライ洗浄プロセスがしばしば行われている。このようなドライ洗浄プロセスでは、未分解の材料あるいは副生成物が反応室の下流側に排出され、特にドライポンプ下流側の大気圧へと圧力上昇する箇所で、低沸点成分の堆積が生じる。
【0004】
上述したように、排気配管の内壁面上に堆積する反応副生成物としては、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、珪フッ化アンモニウム(別名:ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、化学式:SiF(NH)などの様々なケイ素化合物が挙げられる。これらの堆積物は排気配管の閉塞といった重大トラブルを引き起こすこともある。このため、適宜、排気配管を取り外し、洗浄した後再利用あるいは交換などの対処が不可欠となっている。このようなメンテナンス作業を行うには装置を停止する必要があり、生産性への影響だけでなく、停止・再起動に伴うドライポンプへの過負荷が発生するという課題がある。
【0005】
このような課題の解決方法として、特許文献1および特許文献2には、半導体製造装置と排ガス処理装置の間の排気配管を加熱することで、堆積物の付着を抑制する方法が開示されている。特に、特許文献2には、排気配管の全てを連続的に120~160℃に加熱することが記載されている。
【0006】
近年、従来よりも低い温度での薄膜形成が求められている。これを受け、従来よりも蒸気圧が低く、かつ反応性が高い成膜材料が広く使用されている。具体的には、SiH(N(CH(以下、3DMASと記す)、SiH(N(C(以下、BDEASと記す)、SiH(NH(C))(以下、DiPASと記す)など、常温で液体である成膜材料である。上述した特許文献1および特許文献2に記載された排気配管の加熱により、これらの低蒸気圧材料の未分解成分が排気配管上に吸着することは抑制される。しかしながら、一方で、低蒸気圧材料と酸素や水分との反応、すなわち酸化ケイ素などのケイ素化合物の生成を促進してしまうという課題がある。
【0007】
このような課題の解決方法として、特許文献3および特許文献4には、フッ素含有インタハロゲンガスを排気配管に導入して堆積物を反応除去する方法が開示されている。しかしながら、成膜プロセスとは独立したプロセスであるため、反応性の高いガスを過剰に導入して排気配管の腐食を引き起こしてしまうなどの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4210395号公報
【文献】特開2011-058033号公報
【文献】特開2001-189277号公報
【文献】特許第3007032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、排気配管内での堆積物の発生を防ぐとともに、排気配管の腐食を防ぐことが可能な薄膜形成装置及びその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 薄膜を形成する反応炉と、
前記反応炉内に原料ガスを供給する1以上の原料ガス供給経路と、
前記原料ガス供給経路に設けられた1以上の原料ガス流量制御装置と、
前記反応炉内から排出された排ガスを搬送する排気経路と、
前記排気経路に設けられた真空ポンプと、
前記排気経路に設けられた1以上のハロゲン含有ガス導入口と、
前記ハロゲン含有ガス導入口から前記排気経路内にハロゲン含有ガスを供給する1以上のハロゲン含有ガス供給経路と、
前記ハロゲン含有ガス供給経路に設けられた1以上のハロゲン含有ガス流量制御装置と、
1以上の前記原料ガス流量制御装置及び前記ハロゲン含有ガス流量制御装置と電気的に接続された制御装置と、を備える薄膜形成装置。
[2] 前記排気経路が、前記真空ポンプの二次側に少なくとも1以上の前記ハロゲン含有ガス導入口を有する、[1]に記載の薄膜形成装置。
[3] 前記排気経路が、前記真空ポンプの一次側に少なくとも1以上の前記ハロゲン含有ガス導入口を有する、[1]又は[2]に記載の薄膜形成装置。
[4] 前記原料ガスが、ケイ素及びゲルマニウムのうち、少なくとも1以上の金属原子を含む、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の薄膜形成装置。
[5] 前記ハロゲン含有ガスが、フッ素原子を含む、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の薄膜形成装置。
[6] 前記制御装置は、前記原料ガスに含まれる前記金属原子の積算供給原子数Aを演算するとともに、前記ハロゲン含有ガスに含まれるハロゲン原子の積算供給原子数Bが前記積算供給原子数Aの3~5倍の範囲となるように、前記ハロゲン含有ガスの供給時間を演算する、[4]又は[5]に記載の薄膜形成装置。
[7] [1]乃至[6]のいずれか一項に記載の薄膜形成装置の運転方法であって、
排気経路内にハロゲン含有ガスと反応する成分が存在している間のみ、前記排気経路内に前記ハロゲン含有ガスを供給する、薄膜形成装置の運転方法。
[8] 反応炉内に供給する原料ガスの供給量から、前記排気経路内への前記ハロゲン含有ガスの供給時間を算出する、[7]に記載の薄膜形成装置の運転方法。
[9] 前記原料ガスが、ケイ素及びゲルマニウムのうち、少なくとも1以上の金属原子を含み、
前記ハロゲン含有ガスが、フッ素原子を含む場合において、
前記フッ素原子の積算供給原子数Bが前記金属原子の積算供給原子数Aの3~5倍の範囲内なるように、前記ハロゲン含有ガスの供給時間を制御する、[8]に記載の薄膜形成装置の運転方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の薄膜形成装置及びその運転方法は、排気配管内での堆積物の発生を防ぐとともに、排気配管の腐食を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用した一実施形態である薄膜形成装置の構成を示す系統図である。
図2】実施例1における原料ガス及びハロゲン含有ガスの供給のタイミングを示す図である。
図3】実施例2における原料ガス及びハロゲン含有ガスの供給のタイミングを示す図である。
図4】実施例3における原料ガス及びハロゲン含有ガスの供給のタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態である薄膜形成装置について、その運転方法とともに図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0014】
<薄膜形成装置>
先ず、本発明を適用した一実施形態である薄膜形成装置の構成について、説明する。図1は、本発明を適用した一実施形態である薄膜形成装置の構成の一例を模式的に示す系統図である。
図1に示すように、本実施形態の薄膜形成装置1は、反応炉2、原料ガス供給経路L1、原料ガス流量制御装置3、排気経路L4、真空ポンプ6、ハロゲン含有ガス導入口7,8、ハロゲン含有ガス供給経路L5,L6、ハロゲン含有ガス流量制御装置9,10、及び制御装置11を備えて、概略構成されている。本実施形態の薄膜形成装置1は、排気経路L4内を清浄に保つための装置である。
【0015】
本実施形態の薄膜形成装置1は、基板等の被対象物の表面に薄膜を成膜する装置であれば、特に限定されない。薄膜形成装置1としては、プラズマCVD(PECVD:plasma-enhanced chemical vapor deposition)装置、熱CVD装置、原子層堆積(ALD:Atomic layer deposition)装置などが挙げられる。
【0016】
反応炉2は、被対象物となる基板(例えば、シリコン基板)等を内側の空間に収納して、被対象物の表面に酸化膜、窒化膜や金属薄膜等の薄膜を形成するものである。
反応炉2には、原料ガス供給経路L1、各種プロセスガス供給経路L2、不活性ガス供給経路L3がそれぞれ1以上接続されている。これにより、反応炉2内に、原料ガス、各種プロセスガス及び不活性ガスを適宜供給可能とされている。
また、反応炉2には、排気経路L4が接続されている。これにより、反応炉2内の排ガスを反応炉2の外側に排出できる。
【0017】
原料ガス供給経路L1は、反応炉2内に原料ガスを供給するために設けられた供給配管である。なお、原料ガスとしては、特に限定されないが、ケイ素及びゲルマニウムのうち、少なくとも1以上の金属原子を含むものが好ましく、ケイ素を含むものがより好ましい。
【0018】
ケイ素を含む原料ガスとしては、SiH、Si、Si、TEOS、3DMAS、BDEAS、DiPAS等が挙げられる。
ゲルマニウムを含む原料ガスとしては、GeH、Ge、Ge(CH、Ge(C、((CHCHCH)GeH、(イソブチルゲルマン/IBGe)等が挙げられる。
【0019】
原料ガス供給経路(供給配管)L1の材質は、原料ガスによって腐食しないものであれば、特に限定されない。このような材質としては、ステンレス、チタン等の金属、塩化ビニル等の樹脂などが挙げられる。
【0020】
原料ガス供給経路L1の本数は、特に限定されるものではなく、反応炉2内に供給する原料の種類に応じて適宜選択することができる。
【0021】
原料ガス流量制御装置3は、原料ガス供給経路L1内を流れる原料ガスの流量を測定、及び制御するために、原料ガス供給経路L1に設けられた装置である。原料ガス流量制御装置3としては、市販のマスフローコントローラ(MFC)を用いることができる。
【0022】
原料ガス流量制御装置3は、電気的に制御装置11と接続されている。すなわち、原料ガス流量制御装置3と制御装置11とは、有線又は無線信号により、互いに信号を送受信可能とされている。具体的には、原料ガス流量制御装置3は、原料ガス供給経路L1を介して反応炉2内へ供給される原料ガスの流量および供給時間を制御装置11に送信するとともに、制御装置11から当該原料ガス流量制御装置3の制御信号を受信することができる。
【0023】
プロセスガス供給経路L2、及び不活性ガス供給経路L3の材質及び本数は、上述した原料ガス供給経路L1と同様とすることができる。また、プロセスガス供給経路L2、及び不活性ガス供給経路L3にはそれぞれ流量制御装置4,5が設けられている。流量制御装置4,5としては、原料ガス流量制御装置3と同様に市販のマスフローコントローラを用いることができる。
【0024】
排気経路L4は、反応炉2内から排出された排ガスを図示略の排ガス処理装置へ搬送するために設けられた排気配管である。換言すると、排気経路L4は、反応炉2と図示略の排ガス処理装置との間にわたって設けられた排気配管である。
なお、排ガス経路L4内を通過する排ガスには、反応炉2内に供給された各種ガス、すなわち、未反応の原料ガス、各種プロセスガス、及び不活性ガス、並びに反応炉2内の反応で生成した反応副生成ガスが含まれる。
また、排気経路L4には、真空ポンプ6、及びハロゲン含有ガス導入口7,8がそれぞれ設けられている。
【0025】
排気経路(排気配管)L4の材質は、前記排ガスを周辺環境に漏洩することなく除害装置に導けるものであれば、特に限定されない。このような材質としては、ステンレス、チタン等の金属、塩化ビニル等の樹脂などが挙げられる。これらの中でも、耐食性の観点から、ステンレスが好ましい。また、ハロゲンガスに対する耐食性を向上させられる内面コーティングが施されても良い。
【0026】
真空ポンプ6は、排気経路L4に設けられている。この真空ポンプ6を稼働して反応炉2内を排気することで、反応炉2内を真空にすることができる。真空ポンプ6の規格は、特に限定されるものではなく、反応炉2の容積や反応炉2に導入されるガス流量、およびプロセスの圧力条件等によって適宜選択することができる。真空ポンプ6としては、荏原製作所製EV-Mシリーズや樫山工業製SDEシリーズ等を用いることができる。なお、真空ポンプ6には、不活性ガス供給経路(不活性ガス供給配管)L7が接続されていてもよい。
【0027】
ハロゲン含有ガス導入口7,8は、排気経路L4内にハロゲン含有ガスを供給するために設けられた導入口(開口部、合流部ともいう)である。ハロゲン含有ガス導入口7,8から排気経路L4内にハロゲン含有ガスを供給することにより、排気経路L4内の未反応の原料ガス等と反応させることができる。
【0028】
ハロゲン含有ガス導入口7は、真空ポンプ6の二次側の排気経路L4に設けられている。ここで、排気経路Lでは、真空ポンプ6の二次側の圧力が高くなるため、より多くの堆積物が生じやすい。この場所にハロゲン含有ガス導入口7を設けることにより、排気配管内での堆積物の発生をより効果的に防ぐことができる。
【0029】
ハロゲン含有ガス導入口8は、真空ポンプ6の一次側の排気経路L4に設けられている。真空ポンプ6の一次側(すなわち、反応炉2の出口側)にハロゲン含有ガス導入口8を設けることにより、真空ポンプ6内での堆積物の発生を防ぐことができる。
【0030】
なお、本実施形態の薄膜形成装置1では、真空ポンプ6の一次側及び二次側の排気経路L4にそれぞれ一つずつのハロゲン含有ガス導入口7,8が設けられた構成を一例として説明したが、これに限定されるものではない。排気経路L4には、少なくとも1つ以上のハロゲン含有ガス導入口が設けられていれば、本発明の効果を奏することができる。また、排気経路L4には、真空ポンプ6の二次側のみに2以上のハロゲン含有ガス導入口が設けられていてもよいし、真空ポンプ6の一次側のみに2以上のハロゲン含有ガス導入口が設けられていてもよい。これらの中でも、真空ポンプ6の一次側及び二次側に、それぞれ1つ以上のハロゲン含有ガス導入口を設けることが好ましい。
【0031】
ハロゲン含有ガス供給経路L5は、ハロゲン含有ガスを図示略のハロゲン含有ガス供給源から排気経路L4内へ供給するために設けられた供給配管である。ハロゲン含有ガス供給経路L5は、図示略のハロゲン含有ガス供給源と排気経路L4との間にわたって設けられている。具体的には、ハロゲン含有ガス供給経路L5は、ハロゲン含有ガス導入口7において排気経路L4と接続されている。
【0032】
ハロゲン含有ガスとしては、特に限定されないが、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素のうち、少なくとも1以上を含むものが好ましく、フッ素を含むものがより好ましい。
【0033】
フッ素を含むハロゲン含有ガスとしては、フッ化水素(HF)、フッ素(F)、二フッ化カルボニル(COF)、三フッ化塩素(CLF)等が挙げられる。
【0034】
なお、本実施形態に適用する原料ガスとハロゲン含有ガスとの組み合わせは、特に限定されるものではない。原料ガスとハロゲン含有ガスとの組み合わせとしては、排気経路L4内において反応した際に、堆積物となる固形成分が生じない組み合わせを用いることが好ましい。具体的には、原料ガスとしてケイ素やゲルマニウムを含むガスを用いた際に、ハロゲン含有ガスとしてフッ素を含むガスを用いることが好ましく、原料ガスとしてアルミニウムやガリウムを含むガスを用いた際に、ハロゲン含有ガスとして塩素を含むガスを用いることが好ましい。
【0035】
ハロゲン含有ガス供給経路(供給配管)L5の材質は、ハロゲン含有ガスによって腐食しないものであれば、特に限定されない。このような材質としては、ステンレス、チタン等の金属、塩化ビニル等の樹脂などが挙げられる。
【0036】
ハロゲン含有ガス流量制御装置9は、ハロゲン含有ガス供給経路L5内を流れるハロゲン含有ガスの流量を測定、及び制御するために、ハロゲン含有ガス供給経路L5に設けられた装置である。ハロゲン含有ガス流量制御装置9としては、市販のマスフローコントローラ(MFC)を用いることができる。
【0037】
ハロゲン含有ガス流量制御装置9は、電気的に制御装置11と接続されている。すなわち、ハロゲン含有ガス流量制御装置9と制御装置11とは、有線又は無線信号により、互いに信号を送受信可能とされている。具体的には、ハロゲン含有ガス流量制御装置9は、ハロゲン含有ガス供給経路L5を介して排気経路L4内へ供給されるハロゲン含有ガスの流量および供給時間を制御装置11に送信するとともに、制御装置11から当該ハロゲン含有ガス流量制御装置9の制御信号を受信することができる。
【0038】
ハロゲン含有ガス供給経路L6の材質は、上述したハロゲン含有ガス供給経路L5と同様とすることができる。また、ハロゲン含有ガス供給経路L6にはハロゲン含有ガス流量制御装置10が設けられている。ハロゲン含有ガス流量制御装置10としては、ハロゲン含有ガス流量制御装置9と同様に市販のマスフローコントローラを用いることができる。
【0039】
なお、ハロゲン含有ガス供給経路の本数は、特に限定されるものではなく、排気経路L4に設けられたハロゲン含有ガス導入口の数(本実施形態では二つ)に応じて適宜選択することができる。
【0040】
制御装置11は、原料ガス流量制御装置3及びハロゲン含有ガス流量制御装置9,10と電気的に接続されている。これにより、制御装置11は、原料ガス流量制御装置3から送信される「反応炉2内へ供給される原料ガスの流量」の信号、及びハロゲン含有ガス流量制御装置9,10から送信される「排気経路L4内へ供給されるハロゲン含有ガスの流量」の信号をそれぞれ受信するとともに、原料ガス流量制御装置3及びハロゲン含有ガス流量制御装置9,10に対して、それぞれ制御信号を送信することができる。
【0041】
<薄膜形成装置の運転方法>
次に、本実施形態の薄膜形成装置1の運転方法、すなわち、薄膜の形成方法及び排気配管L4内の清浄化方法について説明する。なお、本実施形態の薄膜形成装置1の運転方法では、薄膜形成装置1がALD装置である場合を一例として説明する。
【0042】
(薄膜の形成方法)
先ず、薄膜の形成方法について説明する。
反応炉2内に、薄膜を形成させたい基板(例えば、シリコン基板)を設置する。次に、不活性ガス供給経路L3と真空ポンプ6とを用いて、反応炉2内をパージする。次いで、反応炉2内に、原料ガスと、酸化性ガスや還元性ガスからなる反応性ガス(プロセスガス)と、を交互に供給して、基板上に薄膜を形成する。
【0043】
基板上に所望の膜厚の薄膜が形成されたら、反応炉2内の基板を入れ替えて、薄膜形成処理を行う。薄膜形成を行うと、反応炉2内の基板以外のところに、副生成物が堆積するため、適宜、反応炉2内のクリーニングを行う。
【0044】
ところで、一般的にALD法では、原料ガスを反応炉2内に供給した後、基板の表面吸着せずに気相中に漂っている原料ガスを排出するため、未反応の原料ガスが排気経路(排気配管)L4内に導出される。その後、反応性ガスを反応炉2内に供給するが、こちらも全てが反応炉内で消費されるわけではなく、排気経路L4内に導出される。このため、排気経路L4内でも反応が生じて、排気配管内に堆積物が生じる。また、堆積物によって排気配管内の閉塞が始まると、堆積物の発生が加速度的に早くなってしまう。
【0045】
(排気配管内の清浄化方法)
そこで、本実施形態の薄膜形成装置1の運転方法では、反応炉2内への原料ガスの供給と連動させて、反応炉2の排気側(すなわち、排気経路L4内)にハロゲン含有ガスを供給することで、堆積物の発生を予防する。一方で、排気配管の腐食を予防することも重要である。したがって、本実施形態の薄膜形成装置1の運転方法では、排気経路L4内にハロゲン含有ガスと反応する成分(堆積物や未反応の原料ガスなど)が存在している間のみ、排気経路L4内にハロゲン含有ガスを供給する。
【0046】
具体的には、制御装置11によって、以下のようにハロゲン含有ガス流量制御装置9,10を制御する。
(1)反応炉2内への原料ガスの供給開始から、所定の待ち時間を経た後、排気経路L4内へのハロゲン含有ガスの供給を開始する。
(2)原料ガスに含まれる金属原子の積算供給原子数を演算し、演算結果とハロゲン含有ガスの供給流量とに基づいて、排気経路L4内へのハロゲン含有ガスの供給時間をハロゲン含有ガス導入口7,8ごとに決定し、ハロゲン含有ガス流量制御装置9,10の動作を制御する。
【0047】
ここで、原料ガスが、ケイ素及びゲルマニウムのうち、少なくとも1以上の金属原子を含み、ハロゲン含有ガスが、フッ素原子を含む場合、制御装置11は、フッ素原子の積算供給原子数Bが金属原子の積算供給原子数Aの3~5倍の範囲内なるように、ハロゲン含有ガスの供給時間を決定し、ハロゲン含有ガス流量制御装置9,10の動作を制御する。積算供給原子数Bが積算供給原子数Aに対して3~5倍の範囲内とすることで、排気経路(排気配管)L4内での堆積物の発生を防ぐとともに、排気配管の腐食を防ぐことができる。
【0048】
なお、本実施形態の薄膜形成装置1では、真空ポンプ6の一次側(上流側)および二次側(下流側)にそれぞれハロゲン含有ガス導入口7,8を設けているが、薄膜形成プロセス中は導入口8からハロゲン含有ガスを導入しないことが望ましい。これにより、排気経路L4内へ供給したハロゲン含有ガスが反応炉2側に逆拡散することを防ぐことができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の薄膜形成装置1及びその運転方法は、排気経路(排気配管)L4内での堆積物の発生を防ぐとともに、排気配管の腐食を防ぐことができる。したがって、薄膜形成装置1のメンテナンス頻度を低くし、薄膜形成装置1の稼働率を向上できる。
【0050】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した実施形態の薄膜形成装置1では、反応炉2内へ導入する原料ガスが1種類である場合を一例として説明したが、これに限定されるものではない。いずれの供給経路にも流量制御装置を設けることにより、原料ガスが2種類以上であってもよい。
【0051】
また、真空ポンプ6の二次側に設けられたハロゲン含有ガス導入口7から排気経路L4内へ供給するハロゲン含有ガスと、真空ポンプ6の一次側に設けられたハロゲン含有ガス導入口8から排気経路L4内へ供給するハロゲン含有ガスとは、同一種であってもよいし、異なる種類であってもよい。また、同一種であっても、濃度が異なっていてもよい。
【0052】
以下、本発明の効果について実施例を用いて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
以下の実施例1~3は、図1に示す薄膜形成装置1と同様の構成を持つALD装置を用いて行った。
【0053】
(実施例1)
ALD装置において、原料ガスとしてトリスジメチルアミノシラン(3DMAS)を用いてシリコン酸化膜を形成した。また、真空ポンプ6の下流側に設けたハロゲン含有ガス導入口7からハロゲン含有ガスとしてフッ化水素(HF)を供給し、排気配管内の清浄化を行った。
なお、3DMASの供給流量は10sccm、HFの供給流量は40sccmとした。
また、3DMASを供給開始してから、HFを供給開始するまでの待機時間は1秒とした。
【0054】
図2は、実施例1における原料ガス及びハロゲン含有ガスの供給のタイミングを示す図である。なお、図2中、上段は原料ガスのグラフを、下段はハロゲン含有ガスのグラフをそれぞれ示す。また、図2中、X軸は成膜開始からの時間を、Y軸は供給量をそれぞれ示す。
【0055】
図2に示すように、原料ガスである3DMASの供給形態は、2秒供給と2秒停止の繰り返しとした。ここで、3DMAS分子1つに含まれるSi原子数が1つ、HF分子に含まれるF原子数が1つであり、HF流量を3DMAS流量の4倍としている為、ハロゲン含有ガスであるHFの供給形態も、2秒供給と2秒停止の繰り返しとした。
結果、排気経路(排気配管)L4内で効率よく、SiFを副生成することができ、排気経路L4内におけるケイ素含有堆積物の発生を予防できた。また、本プロセスのALD工程を100時間繰り返した後の排気配管には腐食は確認されなかった。
【0056】
(実施例2)
ALD装置において、原料ガスとしてトリスジメチルアミノシラン(3DMAS)を用いてシリコン酸化膜を形成した。また、真空ポンプ6の下流側に設けたハロゲン含有ガス導入口7からハロゲン含有ガスとして三フッ化塩素(CLF)を供給し、排気配管内の清浄化を行った。
なお、3DMAS及び三フッ化塩素の供給流量はそれぞれ5sccmとした。
【0057】
図3は、実施例2における原料ガス及びハロゲン含有ガスの供給のタイミングを示す図である。なお、図3中、上段は原料ガスのグラフを、下段はハロゲン含有ガスのグラフをそれぞれ示す。また、図3中、X軸は成膜開始からの時間を、Y軸は供給量をそれぞれ示す。
【0058】
図3に示すように、原料ガスである3DMASの供給形態は、2秒供給と2秒停止を30回繰り返した(図中は、3回で表示)。ここで、3DMAS分子1つに含まれるSi原子数が1つ、CLF分子に含まれるF原子数が3つであり、CLF流量と3DMAS流量を同じ流量としている為、ハロゲン含有ガスであるCLFは原料ガスの供給停止後に80秒(=2秒×30回×4倍÷3)の供給とした。
結果、排気経路(排気配管)L4内で効率よく、SiFを副生成することができ、排気経路L4内におけるケイ素含有堆積物の発生を予防できた。また、本プロセスのALD工程を100時間繰り返した後の排気配管には腐食は確認されなかった。
【0059】
(実施例3)
ALD装置において、原料ガスとしてビスジエチルアミノシラン(BDEAS)を用いてシリコン酸化膜を形成した。また、真空ポンプ6の下流側に設けたハロゲン含有ガス導入口7、及び真空ポンプ6の上流側に設けたハロゲン含有ガス導入口8からハロゲン含有ガスとしてフッ化水素(HF)をそれぞれ供給し、排気配管内の清浄化を行った。
なお、BDEASの供給流量は20sccm、ハロゲン含有ガス導入口7,8からのHFの供給流量はそれぞれ10sccm,40sccmとした。
【0060】
図4は、実施例3における原料ガス及びハロゲン含有ガスの供給のタイミングを示す図である。なお、図4中、上段は原料ガスのグラフを、中段はハロゲン含有ガス導入口7からのハロゲン含有ガスのグラフを、下段はハロゲン含有ガス導入口8からのハロゲン含有ガスのグラフをそれぞれ示す。また、図4中、X軸は成膜開始からの時間を、Y軸は供給量をそれぞれ示す。
【0061】
図4に示すように、原料ガスであるBDEASの供給形態は、2秒供給と2秒停止を30回繰り返した(図中は、3回で表示)。その後、120秒間の待機時間を経て、再度、2秒供給と2秒停止を30回繰り返した(図中は、3回で表示)。
ハロゲン含有ガスであるHFの供給形態は、真空ポンプ6の下流側に設けたハロゲン含有ガス導入口7からは、BDEASの供給開始後、HFを供給開始するまでの待機時間を1秒とし、その後、連続で480秒間供給した。
一方、真空ポンプ6の上流側に設けたハロゲン含有ガス導入口8からは、原料ガスの供給が停止している2回の待機時間中のそれぞれで60秒間供給した。
結果、排気経路(排気配管)L4内で効率よく、SiFを副生成することができ、排気経路L4内におけるケイ素含有堆積物の発生を予防できた。また、排気配管の腐食を防ぐことができた。さらに、原料ガスの供給中、真空ポンプ6の上流側に設けたハロゲン含有ガス導入口8からのハロゲン含有ガスの供給を停止したため、ハロゲン含有ガスの反応炉2側への逆拡散を防ぐことができた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の薄膜形成装置は、半導体集積デバイスや液晶パネルなどの製造で用いられる物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)等を利用する薄膜形成装置、薄膜加工装置等の排気ガスを処理する装置に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0063】
1…薄膜形成装置、2…反応炉、3…原料ガス流量制御装置、4,5…流量制御装置、6…真空ポンプ、7,8…ハロゲン含有ガス導入口、9,10…ハロゲン含有ガス流量制御装置、11…制御装置、L1…原料ガス供給経路、L2…各種プロセスガス供給経路、L3…不活性ガス供給経路、L4…排気経路(排気配管)、L5,L6…ハロゲン含有ガス供給経路、L7…不活性ガス供給経路
図1
図2
図3
図4