(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】EUVコレクタ
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220907BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20220907BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20220907BHJP
G02B 5/10 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
G02B5/02 C
G02B5/10 A
G02B5/10 C
(21)【出願番号】P 2018563063
(86)(22)【出願日】2017-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2017062639
(87)【国際公開番号】W WO2017207401
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-25
(31)【優先権主張番号】102016209359.2
(32)【優先日】2016-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】シュスター イングリッド
(72)【発明者】
【氏名】メルケル ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】メタリディス ゲオルゴ
(72)【発明者】
【氏名】キーリー ホルガー
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-515127(JP,A)
【文献】特表2013-542593(JP,A)
【文献】X. Bozec et al.,Cooled EUV collector optics for LPP and DPP sources,Proc. SPIE,米国,SPIE,2011年03月29日,7969,79690A
【文献】T. Feigl et al.,Optical performance of LPP multilayer collector mirrors,Proc. SPIE,米国,SPIE,2012年03月23日,8322,832217
【文献】D. A. Tichenor et al.,System integration and performance of the EUV engineering test stand,Proc. SPIE,米国,SPIE,2001年08月20日,4343,19-37
【文献】S. Schroder et al.,EUV reflectance and scattering of Mo/Si multilayers on differently polished substrates,OPTICS EXPRESS,米国,OSA,2007年10月11日,Vol. 15, No. 21,13997-14012
【文献】U. Dinger et al.,Mirror substrates for EUV lithography: progress in metrology and optical fabrication technology,Proc. SPIE,米国,SPIE,2000年11月08日,4146,35-46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00
G02B 5/00
H05G 2/00
SPIE Digital Library
OSA Publishing
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUV投影露光装置(1)で使用する
ためのEUVコレクタ(16)であって、
使用EUV光(3)の使用EUV波長(λ)を散乱させるための表面構造(24)を有する少なくとも1つの鏡面(20)を備え、
前記鏡面(20)は、下限空間波長(P
G)と上限空間波長(P
G’)の間に空間波長分布(26;34;35)を有する表面高さを有し、
前記下限空間波長(P
G)は、1μm~100μmの範囲にあり、
前記上限空間波長(P
G’)は、前記下限空間波長(P
G)の少なくとも10倍の大きさであり、
前記下限空間波長(P
G)未満の有効粗さ(rms
G)は次の関係、
(4π・rms
G・cos(θ)/λ)
2<0.1
を満たし、θは前記鏡面(20)における前記使用EUV光(3)の入射角を表し、
前記下限空間波長(P
G)と前記上限空間波長(P
G’)の間の有効粗さ(rms
GG’)に対して、以下、
1.5rms
G<rms
GG’<6rms
G
が適用され、
前記コレクタ(16)がミラー中心(31)を有し、前記空間波長分布(26;34;35)は、鏡面要素(28)が前記ミラー中心(31)に対する方位
散乱角分布(33a)からずれた前記ミラー中心(31)に対する半径方向散乱角分布(33r)を有するようになっている、EUVコレクタ。
【請求項2】
前記下限空間波長(P
G)が5μmより大きい、ことを特徴とする請求項1に記載のEUVコレクタ。
【請求項3】
前記半径方向散乱角分布(33r)が前記方位
散乱角分布(33a)より大きい散乱角範囲を覆う、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のEUVコレクタ。
【請求項4】
前記方位
散乱角分布が前記半径方向散乱角分布より大きい散乱角範囲を覆う、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のEUVコレクタ。
【請求項5】
前記鏡面(20)の少なくとも一部が
回折格子構造(21)を有し、
前記回折格子構造(21)は、前記使用EUV波長からずれている
波長を有する外部光(19)を回折する働きをする、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のEUVコレクタ。
【請求項6】
前記空間波長分布の前記下限空間波長(P
G)に対して、以下、
P
G≒(2L/dIF)・λ・1/cosθ
の関係が適用され、Lは、一方で前記表面構造を持つ鏡面要素(28)と、他方でソース領域(15)が前記EUVコレクタ(16)によってその中へ伝達される中間焦点(23)との間の距離であって、
dIFは前記中間焦点(23)の許容可能な直径を表す、
請求項1から5のいずれか1項に記載のEUVコレクタ
(16)。
【請求項7】
全空間波長にわたって初期粗さ(25)を有する未加工コレクタ基板を用意するステップと、
有効粗さ(rms
G)が前記下限空間波長(P
G)未満でのみ1.5分の1未満に低減するように、前記未加工コレクタ基板の表面を処理するステップと、
を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のEUVコレクタ(16)を製造する方法。
【請求項8】
前記未加工コレクタ基板の前記表面を前記処理するステップが研磨ステップを備える、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1項に記載のEUVコレクタ(16)を備え、
前記EUVコレクタ(16)から、結像する物体(10)が配置可能な物体平面(5)内の物体視野(4)に向かって前記照明光(3)を導くための照明光学ユニット(6)を備える、照明システム。
【請求項10】
前記EUVコレクタ(16)が、前記物体平面(5)と共役な視野平面に対して近視野方式に配置される、ことを特徴とする請求項9に記載の照明システム。
【請求項11】
前記物体視野(4)を基板(11)が配置可能な像視野(8)に結像させるための投影光学ユニット(7)を特徴とする、請求項9又は10に記載の照明システム。
【請求項12】
EUV投影露光装置(1)で使用する
ためのEUVコレクタ(16)を備え、
使用EUV光(3)の使用EUV波長(λ)を散乱させるための表面構造(24)を有する少なくとも1つの鏡面(20)を備え、
前記鏡面(20)は、下限空間波長(P
G)と上限空間波長(P
G’)の間に空間波長分布(26;34;35)を有する表面高さを有し、
前記下限空間波長(P
G)は、1μm~100μmの範囲にあり、
前記上限空間波長(P
G’)は、前記下限空間波長(P
G)の少なくとも10倍の大きさであり、
前記下限空間波長(P
G)未満の有効粗さ(rms
G)は次の関係、
(4π・rms
G・cos(θ)/λ)
2<0.1
を満たし、θは前記鏡面(20)における前記使用EUV光(3)の入射角を表し、
前記下限空間波長(P
G)と前記上限空間波長(P
G’)の間の有効粗さ(rms
GG’)に対して、以下、
1.5rms
G<rms
GG’<6rms
G
が適用され、
前記EUVコレクタ(16)から、結像する物体(10)が配置可能な物体平面(5)内の物体視野(4)に向かって前記照明光(3)を導くための照明光学ユニット(6)を備え、
前記EUVコレクタ(16)が、前記物体平面(5)と共役な視野平面に対して近視野方式に配置される、照明システム。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の照明システムを備え、及びEUV光源(2)を備える投影露光装置(1)。
【請求項14】
レチクル(10)及びウェハ(11)を用意するステップと、
請求項13に記載の前記投影露光装置を用いて、前記レチクル(10)上の構造を前記ウェハ(11)の感光層の上に投影するステップと、
前記ウェハ(11)上にマイクロ構造及び/又はナノ構造を作り出すステップと、
を含む、構造化構成要素を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明出願は、独国特許出願第102016209359.2号の優先権を主張するものであり、その内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、EUV投影露光装置で使用するEUVコレクタに関する。
【背景技術】
【0003】
このようなコレクタを備えた照明光学ユニットは、独国特許第102013002064(A1)号から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願第102016209359.2号明細書
【文献】独国特許第102013002064(A1)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1796147(A1)号明細書
【文献】独国特許出願公開第102012209882(A1)号明細書
【文献】国際公開第2013/174644(A1)号明細書
【文献】独国特許第102009045096(A1)号明細書
【文献】独国特許第102012202675(A1)号明細書
【文献】国際公開第2009/024164(A)号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】John C.Stover著 「光散乱:測定と解析」 SPIE 第2版 1995年及び第3版 2012年
【文献】論文「パワースペクトル密度(PSD)」(インタネットペ―ジ www.nanophys.kth.se)
【文献】Dupatte他著 「光学部品の二乗平均粗さ及びパワースペクトル密度を決定するための表面特徴付け技法」 Applied Optics 第41巻 1号 2002年1月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特にコレクタ上の欠陥及び汚染により生じる局所的な反射率の差異が、コレクタ全体にわたって導かれる使用されたEUV光の遠視野強度分布に望ましくない影響を及ぼさないような方法で、最初に記載したタイプのEUVコレクタを構築することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項1に明記された特徴を備えたEUVコレクタ、及び請求項6に明記された特徴を備えたEUVコレクタ、更に請求項12に明記された特徴を備えたEUVコレクタを有する照明システムによって達成される。
【0008】
EUVコレクタは、EUV光源のソース領域以降のビーム経路において、使用EUV光(used EUV light)を導く第1の構成要素とすることができる。遠視野強度分布は、コレクタの遠視野に存在し、該遠視野には、投影露光装置の使用EUV光を導く次の構成要素が配置可能である。遠視野平面は、コレクタと共役な像平面とすることができる。EUVコレクタの鏡面は、使用EUV光を反射する働きをする。鏡面の表面構造での散乱のせいで、理想的な反射、詳細には鏡面反射からのずれが生じる。コレクタは、楕円面、双曲面、放物面又は球の少なくとも1つの面部分とすることができる。多部品式コレクタも実施可能である。
【0009】
EUVコレクタは、特定の使用波長(使用EUV光)を有する光を反射することにより識別される。EUVコレクタは、使用EUV光を少なくとも1つの中間焦点に集める。コレクタを収容するソースモジュールは、僅か数ミリメートルの寸法を有する開口(所謂、中間焦点開口)によって残りの光学系から分離することができる。点状光源の場合、コレクタは、点状像が中間焦点面に生じるように設計することができる。拡張光源は、おそらく存在する中間焦点面における光分布の広がりをもたらす。製造上の理由から、実際のコレクタは表面粗さを有し、これが光の散乱に繋がり、ひいては像の更なる広がりをもたらす。この場合、あまりに大きい散乱角は、光が中間焦点開口の外側に導かれ、その結果として使用光としてもはや利用できなくなる。このことから生じる伝達損失は望ましいものではない。空間波長分布(spatial wavelength distribution)又は粗さによって導入された散乱角分布は、遠視野における強度分布の局所的な均質化をもたらす。
【0010】
コレクタ面の散乱角分布は、中間焦点開口での光損失が最小化されて、遠視野において望ましい均質化効果を使用するためにこの開口内で光が単に再分布されるように、設計することができる。
【0011】
特定の角度範囲に散乱した光の成分は、コレクタ面の表面構造の対応する空間波長範囲における有効粗さ(effective roughness)に関係する。面によって導入される散乱角分布は、表面構造の空間波長に依存するように予め決定される粗さに影響される。
【0012】
特定の空間波長未満の粗さは、中間焦点開口での損失をもたらす。この下限空間波長未満では、有効粗さは、教科書「光散乱:測定と解析(Optical Scattering: Measurement and Analysis)」(John C.Stover著 SPIE 第2版 1995年、詳細には式(3.46)を参照されたい)においてレイリーの平滑面判定基準として記載される条件を満たさなければならない。
【0013】
例えば、望ましくない波長を抑制する回折格子の縁部の影響など、製造に起因する表面構造の望ましくない影響はまた、空間波長分布の適切な事前決定によって低減又は回避することができる。空間波長分布は、EUVコレクタの基材表面に存在するとすることができる。代わりとして又はそれに加えて、空間波長分布はまた、反射面の下方に、詳細にはEUVコレクタの反射多重層の下方に存在する場合がある。
【0014】
下限空間波長と上限空間波長の間では、有効粗さは、標的化方式におけるレイリーの平滑面判定基準に対して、少なくとも1.5倍であるが6倍未満で増大する。限界空間波長を超える増大した有効粗さを持つ特定の表面粗さを備えた表面構造は、一方で鏡面の散乱効果が極めて大きいためにコレクタの遠視野における望ましくない強度のスミアが生じ、他方では極めて小さいためにEUVコレクタ以降の使用光ビーム経路に沿って望ましくない使用光損失をもたらすという鏡面の散乱効果を引き起こす。詳細には、生じた散乱角は極めて小さいので、EUVコレクタが使用光を中間焦点に伝達する限り、望ましくない損失をすることなく散乱光が中間焦点絞りを通過する。下限空間波長未満にある特定の粗さと比較すると、下限空間波長と上限空間波長の間にある有効粗さは、少なくとも1.75倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、或いはまた5.5倍だけ増大することがある。代わりとして又はそれに加えて、下限空間波長未満の有効粗さと比較すると、下限空間波長と上限空間波長の間にある有効粗さは、5.5倍未満、5倍未満、4.5倍未満、4倍未満、3.5倍未満、3倍未満、2.5倍未満、或いはまた2倍未満だけ増大することがある。
【0015】
EUVコレクタの散乱鏡面は、45°未満の入射角θを有するNI(垂直入射)鏡面、又は45°を超える入射角θを有するGI(かすめ入射)鏡面とすることができる。EUVコレクタは、使用するEUV波長を散乱させるために対応する表面構造を持つ、複数の鏡面を有することができる。これらの鏡面は、全てNI鏡面として構成することができ、全てGI鏡面として構成することができ、或いは、NI鏡面及びGI鏡面から混在させて構成することができる。NI入射角θは、有意に45°より小さい、35°より小さい、30°より小さい、25°より小さい、20°より小さい、更にまた一層小さいとすることができる。GI入射角θは、有意に45°より大きい、55°より大きい、60°より大きい、70°より大きい、75°より大きい、80°より大きい、85°より大きい、更にまた一層大きいとすることができる。
【0016】
投影露光装置における散乱光学部品は、欧州特許出願公開第1796147(A1)号、独国特許出願公開第102012209882(A1)号及び国際公開第2013/174644(A1)号から公知である。
【0017】
コレクタは、ミラー中心を有し、空間波長分布は、鏡面要素がミラー中心に対する方位角方向散乱角分布からずれたミラー中心に対する半径方向散乱角分布を有するようになっている。このような散乱角分布は、光学部品の設計のため、及び/又は使用EUV光のビーム誘導のために生じる散乱要件に適合させることができる。詳細には、標的化方式でもたらされる非等方的散乱角分布によって、光学部品の製造特有の散乱機能を補償する又は補正することが可能である。例えば、使用EUV波長からずれた波長をフィルタリングするために適用される(超)格子の縁などにおける製造特有の又は設計関連の強度調整もまた、対応する非等方的散乱角分布によって補償する又は補正することができる。
【0018】
請求項2に記載の限界空間波長は、実際にその価値を示した。
【0019】
散乱角分布に関して上述された利点は、詳細には請求項3に記載の散乱角分布に適用される。代わりに、請求項4に記載の散乱角分布も可能である。
【0020】
請求項5に記載の付加的な回折格子構造は、回折による外部光の抑制を可能にする。
【0021】
請求項7に記載する製造方法の利点は、本発明によるコレクタに関連して既に上述した利点と一致する。表面を処理する際に、下限空間波長と上限空間波長の間に、或いは代わりに、一般に下限空間波長を超えて、標的化された有効粗さの増大を付加的にもたらすことができる、すなわち、これらの空間波長の領域に標的化方式で、付加的な表面構造を導入することができる、又は付加的な表面粗さを作り出すことができる。代わりに、いずれの場合にも存在する初期粗さと比べて、有効粗さにおいてこのような標的化増大を一切作り出さないことも考えられる。
【0022】
未加工コレクタ基板の表面処理は、研磨によって実施することができる。代わりとして又はそれに加えて、イオンビームフィギュアリング(IBF)、サンドブラスト、ダイヤモンド旋削、フライカット、スピン塗布、被覆、エッチング、成型、或いはまた所定サイズの混合粒子を備えた流体、詳細には平滑化流体の付与を、未加工コレクタ基板の表面を処理するために実施することができる。流体の付与による、この最後の表面処理の変形形態では、粒子のサイズによって及び/又はその分布によって、光散乱の挙動を決定することができる。
【0023】
この製造方法の範囲内で処理された未加工コレクタ基板の表面が、光の散乱特性を決定する表面である。ここでは、これは、例えばMoSi多重層などの多重層とすることができる。代わりとして、詳細にはかすめ入射用コレクタミラーを用いる際には、処理されるミラーはRu層とすることができる。このような層の粗さは、処理方法によって直接的に影響されることがあり、或いはまた、例えばより下方に横たわる隣接界面の処理に影響されることがある。代わりとして又はそれに加えて、事実上使用光に対する位相オフセットを導入しない更に別の層を反射層(複数可)の上方に付与することができる。このような別層の粗さは、正式には何の役割も果たさない。未加工コレクタ基板の表面を処理するステップはまた、未加工コレクタ基板が初期には少なくとも1つの層で被覆され、その後で少なくとも1つの付与層が処理されることを意味すると理解される。
【0024】
請求項9に記載する照明システム及び請求項12に記載する照明システムの利点は、EUVコレクタ及びその製造方法に関連して既に上述した利点と一致する。
【0025】
初めに述べた利点は、請求項10に記載するEUVコレクタの近視野配置の場合に特に良く結実するようにされる。用語「近視野」を特徴付けるために、国際公開第2009/024164(A)号と関連して定義されるパラメータPを利用することができる。
【0026】
請求項11に記載の照明システム、請求項13に記載の投影露光装置、請求項14に記載の製造方法、及び請求項15に記載のマイクロ構造(microstructured)又はナノ構造(nanostructured)の構成要素の利点は、EUVコレクタ、その製造方法並びに照明システムに関連して既に上述した利点と一致する。
【0027】
詳細には、例えばメモリチップなどの半導体部品を、投影露光装置を用いて製造することができる。
本発明の例示的な実施形態は、図面を参照して以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】EUVマイクロリソグラフィ用の投影露光装置の概略図である。
【
図2】
図1による投影露光装置のEUV光源のプラズマソース領域との間の光路を示し、詳細には、EUVコレクタミラーの回折的な外部光抑制効果が示され、EUVコレクタミラーがEUVソース領域以降の第1の使用EUV光誘導構成要素を表す、メリジオナル断面図である。
【
図3】
図2と比べてより概略的にEUVコレクタを示し、使用EUV光用のEUVコレクタの鏡面要素の散乱効果が、使用EUV光のビーム経路の中間焦点に至るまで誇張された散乱角で示されている図である。
【
図4】空間波長及び傾斜角を説明するために、極めて概略的にEUVコレクタの鏡面の表面構造を示す図である。
【
図5】
図2において視線方向Vから見たコレクタであって、鏡面要素に対する2次元散乱角分布が説明され、その2次元散乱角分布は半径方向において方位角方向
(azimuthal direction)と同程度の大きさであることを示す概略図である。
【
図6】
図5に従う散乱角分布において、散乱強度の散乱角に関する依存性を示す図である。
【
図7】
図5に類似した図解において鏡面要素の2次元散乱角分布の別の実施形態を示し、半径方向
散乱角分布
(radial scattering angle distribution)が方位
散乱角分布
(azimuthal scattering angle distribution)からずれることを示す図である。
【
図8】
図6に類似した図解で、
図7に従う散乱角分布における散乱強度の散乱角に関する依存性を示す図である。
【
図9】EUVコレクタの製造方法の範囲内で、スペクトルパワー密度の空間波長に関する依存性を示す図である。
【
図10】EUVコレクタの製造方法の別の変形形態に対する、スペクトルパワー密度の空間波長に関する依存性の別の実施形態を示す図である。
【
図11】EUVコレクタの製造方法の別の変形形態に対する、スペクトルパワー密度の空間波長に関する依存性の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
マイクロリソグラフィ用の投影露光装置1は、照明光及び/又は結像光3用の光源2を備え、その光源2を以下で更に詳細に説明する。光源2はEUV光源であり、例えば、5nm~30nm、詳細には5nm~15nmの波長範囲にある光を生成する。照明光及び/又は結像光3はまた、以下では使用EUV光と呼ぶ。
【0030】
詳細には、光源2は、13.5nmの使用EUV波長を備えた光源、或いは6.9nm又は7nmの使用EUV波長を備えた光源とすることができる。他の使用EUV波長も可能である。照明光3のビーム経路は、
図1に極めて概略的に描かれている。
【0031】
照明光学ユニット6は、光源2から物体平面5内の物体視野4へ照明光3を導く働きをする。照明光学ユニットは、
図1に極めて概略的に示された視野ファセットミラーFFと、照明光3のビーム経路において下流側に配置され、同様に極めて概略的に示された瞳ファセットミラーPFとを備える。かすめ入射用の視野形成ミラー6b(GIミラー;かすめ入射ミラー)は、照明光3のビーム経路において、照明光学ユニットの瞳面6a内に配置された瞳ファセットミラーと、物体視野4との間に配置される。このようなGIミラー6bは、必須ではない。
【0032】
瞳ファセットミラーPFの瞳ファセット(詳細には示されない)は、視野ファセットミラーFFの視野ファセット(同様に示されない)を物体視野4に互いに重ね合わせるように伝達する、詳細には結像させる、伝達光学ユニットの一部である。一方で視野ファセットミラー及び他方では瞳ファセットミラーのために、従来技術から公知の実施形態を使用することができる。一例として、このような照明光学ユニットは、独国特許第102009045096(A1)号から公知である。
【0033】
投影光学ユニット又は結像光学ユニット7を用いると、物体視野4は、既定の縮小倍率で像平面9の像視野8に結像される。このために使用可能な投影光学ユニットは、独国特許第102012202675(A1)号から公知である。
【0034】
投影露光装置1並びに投影光学ユニット7の様々な実施形態の説明を容易にするために、図面にはデカルトxyz座標系が表示され、この座標系から、図に示される構成要素のそれぞれの位置関係が明らかである。
図1では、x方向は、図面の平面と垂直に図面に向かう。y方向は
図1で左方へ延び、z方向は
図1で上方へ延びる。物体平面5はxy平面と平行に広がる。
【0035】
物体視野4及び像視野8は矩形である。代わりに、物体視野4及び像視野8が、曲がった又は曲線状の実施形態、つまり、詳細には部分的なリング形状を有することも可能である。物体視野4及び像視野8は、1より大きいx/yアスペクト比を有する。それゆえ、物体視野4は、x方向により長い物体視野と、y方向により短い物体視野とを有する。これらの物体視野寸法は、視野座標x及びyに沿って広がる。
【0036】
従来技術から公知の例示的な実施形態の内の1つを投影光学ユニット7に用いることができる。この事例で物体として結像されるものは、レチクルとも呼ばれ、物体視野4と一致する反射マスク10の一部分である。レチクル10は、レチクルホルダ10aによって支持される。レチクルホルダ10aは、レチクル変位ドライブ10bによって変位させられる。
【0037】
投影光学ユニット7での結像は、基板ホルダ12により支持されるウェハの形での基盤11の表面上で実施される。基板ホルダ12は、ウェハによって又は基板変位ドライブ12aによって変位させられる。
【0038】
図1は、レチクル10と投影光学ユニット7の間に、投影光学ユニット7に入る照明光3の光線ビーム13と、投影光学ユニット7と基板11の間に、投影光学ユニット7から出てくる照明光3の光線ビーム14とを概略的に示す。投影光学ユニット7の像視野側開口数(NA)は、
図1には一定の縮尺で再現されていない。
【0039】
投影露光装置1は、スキャナ型である。投影露光装置1の運転中、レチクル10と基板11の両方がy方向に走査される。基板の個々の露光間にy方向へのレチクル10及び基板のステップ的な変位が実施される投影露光装置1のステッパ型も、可能である。これらの変位は、変位ドライブ10b及び12aの適切な作動によって互いに同期して実施される。
【0040】
図2は、EUV光源2のソース領域15との間のビーム経路を示し、詳細には、EUVコレクタ16の外部光抑制効果を示す。
【0041】
例えば、CO2レーザの放射などのポンプ光17は、ソース領域15に集束して、詳細には示されないターゲット媒体と相互作用し、そのターゲット媒体は、まず第1に、例えば6.9nm又は13nmなどの使用EUV波長を持つ使用EUV光3を、そして使用EUV波長からずれた波長を持つ外部光19を放射する。
【0042】
使用EUV光3と外部光19の両方が、EUVコレクタ16の鏡面20で反射される。
【0043】
鏡面20は回折格子構造21を有するが、
図2には縮尺どおりに示されていない。回折格子21は、使用EUV光3だけが中間焦点絞り21aを通過するように回折によって外部光19を偏向させる働きをし、その中間焦点絞り21aは中間焦点面22に配置されている。中間焦点面22は、ソース領域15の像平面を表す。従って、EUVコレクタ16の鏡面20は、円錐曲線型表面の基本形で具体化される。
図2に示す実施形態では、鏡面20は楕円面の基本形で具体化され、ソース領域15はその鏡面の1つの焦点に配置され、中間焦点面22内の中間焦点23はその鏡面のもう一方の焦点にある。
【0044】
回折格子構造21に加えて、鏡面20は表面構造24を有し、
図4に極めて概略的に示されている。表面構造は、鏡面20の表面高さ又は表面粗さの変動として記述することができる。表面構造24は、使用光3の使用EUV波長を散乱する働きをする。これらの表面構造24のために、鏡面20は表面粗さを有する。この表面粗さは、限界空間P
G(例えば、
図9参照)を超える空間波長P(例えば、
図4参照)に依存した表面構造分布をもたらす。限界空間P
G未満の空間波長を持つ表面構造は、適切な表面処理によって、詳細には平滑化又は研磨によって大きく低減し、従って下記の式、
(4π・rms
G・cos(θ)/λ)
2<0.1
が、限界空間P
G未満の空間波長Pに対する有効粗さrms
Gに適用される:
【0045】
ここで、λは使用EUV波長である。ここで、θは鏡面20における使用EUV光3の入射角である。
【0046】
入射角θを別にすると、有効粗さrmsGに対する関係は使用光波長λにのみ依存する。λ=13.5nm及びθ=0に対して、以下、
rmsG≦0.35nm
が適用される。
【0047】
有効粗さrmsは、2つの異なる空間波長間の範囲の積分として明らかになる。下限空間波長PGより大きくて上限空間波長PG’より小さい、すなわち下限空間波長と上限空間波長の間での鏡面20の有効粗さrmsGG’は、下限空間波長PGの少なくとも1.5倍大きいが、6倍を超えない。
【0048】
0.53nmの領域にある有効粗さrmsGG’は、0.53nmがこの有効粗さに対する下限を表すならば、下限空間波長PGの領域に存在するとすることができる。2.1nmの領域にある有効粗さrmsGG’は、2.1nmがこの有効粗さの上限を表すならば、上限空間波長PG’の領域に存在するとすることができる。
【0049】
下限空間波長PG未満の空間波長に鏡面20を研磨することにより、これらの空間波長がスペクトルパワー密度(PSD)に事実上寄与しないようにすることができる。
【0050】
スペクトルパワー密度PSDは、
図9において単位[nm
4]で明確に記されている。スペクトルパワー密度の定義に関する詳細は、教科書「光散乱:測定と解析」(John C.Stover著 SPIE 第2版 1995年及び第3版 2012年)並びに論文「パワースペクトル密度(PSD)」(インタネットペ―ジ www.nanophys.kth.se)に見出される。
【0051】
まず第1にスペクトルパワー密度PSD、第2に有効粗さrmsに対する測定方法は、論文「光学部品の二乗平均粗さ及びパワースペクトル密度を決定するための表面特徴付け技法」(Dupatte他著 Applied Optics 第41巻 1号 2002年1月1日)から得ることができる。様々な測定器具は、本稿の第3節「計器」で説明される。本稿の第4節「パワースペクトル密度及びrms粗さの計算」は、第1にスペクトルパワー密度PSDと、第2に、そこではσrmsと呼ぶ有効粗さrmsとが、取得された測定データからどのように計算されるかを明記する。
【0052】
図9では、PSDと空間波長の両方に関して対数目盛が存在する。有効粗さに対するそれぞれのrms値は、
図9によるPSD表現から、以下の関係に基づいて明らかになる。
【0053】
下限空間波長PG未満の有効粗さrms
Gは、この関係から以下の積分限界を選ぶによって明らかになる。
f1=1/P
G
並びに、
f2=1/λ
EUV
ここで、λ
EUVは使用EUV波長である。
図9において、rms
Gは、実線を用いて陰影を付けた領域によって再現される。下限空間波長P
Gと上限空間波長P
G’の間の有効粗さrms
GG’は、限界f1=1/P
G’、並びにf2=1/P
Gを挿入することにより上記の関係から出てくる。
図9において、rms
GG’は、実線と破線を交互に用いて陰影を付けた領域によって再現される。
【0054】
図9は、このような空間波長分布がEUVコレクタ16の鏡面20上にどのように生成されるかを示す。まず最初に、未加工コレクタ基板が用意され、未加工コレクタ基板は、全空間波長にわたって
図9に破線で示される初期粗さ25を有する。その後に、例えば、下限空間波長P
G未満のみの有効粗さrmsが、初期粗さ25と比べて1/2未満に低減するように、未加工コレクタ基板の表面が処理される、すなわちその基板表面が研磨される。その結果が標的粗さ26であり、
図9に実線として示されている。下限空間波長P
Gを超える初期粗さ25の表面構造を研磨しない、或いは高々少ししか研磨しないので、これらの表面構造は、少なくとも最大部分に対しては維持される。
【0055】
この製造方法は、限界空間波長P
G’まで研磨することにより初期粗さ25が除去される典型的な鏡面研磨とは異なる。この典型的な鏡面研磨の結果が、
図9に一点鎖線27(通常粗さ)で示されている。典型的な粗さ27の限界空間波長P
G’は10μmを超えるとすることができ、詳細には50μmを超えるとすることができる。一例として。上限空間波長P
G’は、100μmの領域にある。
【0056】
標的粗さ26の場合の限界空間波長PGは、1μm~100μmの範囲にある。この限界空間波長PGは、2μmより大きい、5μmより大きい、6μmの領域にある、8μmより大きい、10μmより大きい、15μmより大きい、20μmより大きい、及び50μmより大きい場合がある。この限界空間波長PGは、90μmより小さい、80μmより小さい、70μmより小さい、50μmより小さい、20μmより小さい、及び10μmより小さい場合がある。
【0057】
図3及び4は、それを用いて空間波長Pを見積もることのできる典型的な量を示す。
図3において、Lは、それぞれの散乱鏡面要素28と中間焦点23との間の距離を表す。中間焦点23の最大許容直径はdIFで表され、その直径は中間焦点絞り21aの開口に対応する。
図3において、αは鏡面要素28の典型的な散乱角を表す。この散乱角αは、
図3に誇張して示されている。
図4において、29は円錐曲線型表面を表し、それに対して、鏡面要素28を備えた鏡面20が最も良く適合している。円錐曲線型表面29は、回転対称な関数によって記述可能である。FNは、鏡面要素28の法線を表す。FNBは、円錐曲線型表面29の法線を表す。傾斜角γが、2つの法線FNとFNBの間に存在する。
【0058】
以下の関係が適用される。
sin(α)=λ/(Pcosθ)
ここで、αは散乱角、λは使用EUV波長、並びにPは表面構造の空間波長である。θは、鏡面要素28における照明光3の入射角である。
【0059】
更に、以下の関係が適用される。
sin(αG)≒dIF/2L
ここで、αG又はαmaxは最大許容散乱角、dIFは中間焦点23の許容可能な直径(=中間焦点絞り21aの開口幅)、並びにLは鏡面要素28と中間焦点23の間の距離である。αGに関する前述の関係は、dIF/L<1に対して近似的に適用される。
【0060】
これらの公式は、特に、入射ビームの方向と、コレクタ面、すなわち鏡面要素28の法線によって規定される平面での散乱方向に関して代表的なものである。適合された公式がこの平面からの散乱に適用され、この点については、教科書「光散乱:測定と解析」(John C.Stover著 SPIE 第2版 1995年及び第3版 2012年)を参照している。
【0061】
散乱角αを消去することによって、上記の2つの公式から以下の関係が明らかになる。
下限空間波長PGに対して、
PG≒(2L/dIF)・λ・1/cosθ
上限空間波長PG’は、下限空間波長PGの少なくとも10倍の大きさであり、例えば15倍大きい場合がある。従って、下限空間波長PGにおける散乱角αGは、上限空間波長PG’における散乱角αG’のおよそ15倍の大きさである。上記に明示した公式は、小散乱角αに対して近似的に適用される。
【0062】
図2に示されるように、ポンプ光17は、EUVコレクタ16の鏡面20のミラー中心31の領域にある通路開口部30を通過する(
図5及び6も参照)。ポンプ光はまた、異なるように放射される場合があり、例えば、別の偏向ミラーを介して
図2の図面の平面と垂直な方向から放射される。
【0063】
図5は、鏡面要素28の2次元散乱角分布32を説明する。この散乱角分布は、半径方向rにおいて方位角方向aとちょうど同じ大きさである。詳細には、
図5による散乱角32は等方的である。
【0064】
2次元散乱角分布32のこの等方性は、散乱強度Iの散乱角依存性を説明する
図6にも同様に示されている。この依存性は、半径方向r(
図6の実線;散乱角分布32r)に対して、方位角方向a(
図6の破線;散乱角分布32a)とちょうど同じ大きさである。
【0065】
図7及び8を用いて、鏡面要素28の別の2次元散乱角分布33を説明する。この散乱角分布33は非等方的であり、半径方向rにおいて方位角方向aの何倍も大きい。従って、散乱角αにわたる散乱強度Iの分布の幅は、散乱角分布33において、半径方向r(
図8の実線;散乱角分布32r)で方位角方向a(
図8の破線;散乱角分布32a)の何倍も大きい。次の関係が、I(α)曲線32r及び32aの幅FWHM(半値全幅)の比に対して適用可能である: FWHM(Ir(α))/FWHM(Ia(α))≧2。この比はまた、3より大きい、4より大きい、並びに更に一層大きいことがある。
【0066】
非等方的な2次元散乱角分布33を利用して、例えば、鏡面20の製造方法から生じることのある回転対称性欠陥を平滑化することが可能である。
【0067】
EUVコレクタ16の鏡面20を製造する方法の2つの更なる実施形態を
図10及び11に基づいて提示する。
図9による製造方向に関連して既に上述したものに対応する構成要素、関数及び変数は、同じ参照符号で表され、再度詳細には説明されない。
【0068】
図10による製造方法では、初期粗さ25と比べて付加的な表面粗さが、標的化方式で限界空間波長P
GとP
G’の間に作り出されるので、界空間波長P
GとP
G’の間の範囲における標的粗さ34は、初期粗さ25より有意に大きい。有効粗さrmsに関して成り立つのは、それが初期粗さ25と比べて、限界空間波長P
GとP
G’の間の範囲において10%を超えて、20%を超えて、30%を超えて、或いはまた50%を超えて大きいということである。
【0069】
標的粗さ34は、典型的なミラー製造方法の限界空間波長PG’を超えて初期粗さ25に合わさる。
【0070】
図11による製造方法では標的粗さ35が作り出され、その標的粗さは全体にわたって、限界空間波長P
Gを超えて初期粗さ25より大きい、すなわち、典型的なミラー製造方法の限界空間波長P
G’を超えても成り立つ。
【0071】
物体平面5と共役であり、
図3において平面36に位置することのできる視野平面に対して、例えば、EUVコレクタ16は近視野方式に配置される。
【0072】
視野平面36に対してコレクタ16の「近視野」位置決めを特徴付けるために、パラメータPが使用され、以下の式がそのパラメータに適用される。
P(M)=D(SA)/(D(SA)+D(CR))
ここで、D(SA)は副開口の直径である、すなわち、照明光線は、コレクタ16の鏡面上で正確に一視野点に属し、D(CR)は主光線の最大間隔であり、コレクタ16の鏡面上で視野平面から発する。パラメータPのこの定義は、例えば、国際公開第2009/024164(A)号に見出される。
【0073】
コレクタ16が視野平面36において正確に配置されるとすれば、その場合にD(CR)はゼロに等しくなくD(SA)はゼロに等しいので、P=0が適用される。コレクタ16が瞳平面に配置されるならば、その場合にはD(CR)はゼロに等しくなくD(SA)はゼロに等しいので、P=1が適用されることになる。
【0074】
マイクロ構造又はナノ構造の構成要素を製造するために、投影露光装置1は以下のように使用される:まず最初に、反射マスク10又はレチクルと基板又はウェハ11が用意される。続いて、投影露光装置1を用いて、レチクル10上の構造がウェハ11の感光層の上に投影される。次に、感光層を現像することにより、ウェハ11上のマイクロ構造又はナノ構造、ひいてはマイクロ構造の構成要素が作り出される。