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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-06
(45)【発行日】2022-09-14
(54)【発明の名称】電子ビーム照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/305 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
H01J37/305 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019120613
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021007073
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】田島 涼
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-098294(JP,A)
【文献】特開平07-192682(JP,A)
【文献】特開平05-275322(JP,A)
【文献】米国特許第05384463(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカラムが隣接して配置されるマルチカラム式の電子ビーム照射装置であって、
各カラムは、電子ビームを発生させる電子ビーム発生装置と、前記電子ビームを偏向させる偏向器と、前記偏向器を制御するビームスキャナとを、それぞれ備えており、
前記電子ビーム照射装置は、
各カラムについて、当該カラムが電子ビームを照射可能な照射エリアのうち、前記照射エリアの中央部に設定されるメイン照射エリアの情報と、前記照射エリアの周辺部に設定され当該カラムと隣接するカラムのメイン照射エリアと重複するサブ照射エリアの情報とを記憶する記憶部と、
電子ビームを照射すべきターゲット照射エリアの情報が入力されると、前記複数のカラムのうち前記メイン照射エリアが前記ターゲット照射エリアに含まれないカラムをヘルプ可能カラムとして決定するヘルプ可能カラム決定部と、
決定された前記ヘルプ可能カラムについて、前記複数のカラムのうち前記メイン照射エリアが前記ターゲット照射エリアに含まれるカラムであって、当該ヘルプ可能カラムと隣接するカラムをヘルプ先カラムとして決定するヘルプ先カラム決定部と、
を備え、
前記ヘルプ可能カラムのビームスキャナが、当該ヘルプ可能カラムのサブ照射エリアでの電子ビームの照射をするヘルプ照射制御を行うことによって、前記ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアへの電子ビームの照射が行われ
前記ヘルプ先カラム決定部は、一のヘルプ可能カラムについて複数の前記ヘルプ先カラムが存在する場合に、前記ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアのドーズ量に基づいて、前記ヘルプ先カラムを決定する、電子ビーム照射装置。
【請求項2】
前記ヘルプ先カラム決定部は、一のヘルプ可能カラムについて複数の前記ヘルプ先カラムが存在する場合には、前記ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアの面積と、当該ヘルプ先カラムに隣接する前記ヘルプ可能カラムの数とに基づいて、前記複数のヘルプ先カラムの中から一のヘルプ先カラムを決定する、請求項1に記載の電子ビーム照射装置。
【請求項3】
前記ヘルプ先カラム決定部は、一のヘルプ可能カラムについて複数の前記ヘルプ先カラムが存在する場合に、当該ヘルプ可能カラムと平面視で斜めに隣接するヘルプ先カラムより上下左右に隣接するヘルプ先カラムを優先して、前記ヘルプ先カラムを決定する、請求項2に記載の電子ビーム照射装置。
【請求項4】
前記ヘルプ先カラム決定部は、前記複数のカラムの中に故障しているカラムが存在する場合には、当該故障しているカラムを前記ヘルプ先カラムとして決定する、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の電子ビーム照射装置。
【請求項5】
複数のカラムが隣接して配置されるマルチカラム式の電子ビーム照射装置の制御方法あって、
各カラムは、電子ビームを発生させる電子ビーム発生装置と、前記電子ビームを偏向させる偏向器と、前記偏向器を制御するビームスキャナとを、それぞれ備えており、
前記電子ビーム照射装置の記憶部には、
各カラムについて、当該カラムが電子ビームを照射可能な照射エリアのうち、前記照射エリアの中央部に設定されるメイン照射エリアの情報と、前記照射エリアの周辺部に設定され当該カラムと隣接するカラムのメイン照射エリアと重複するサブ照射エリアの情報とが記憶されており、
前記制御方法は、
電子ビームを照射すべきターゲット照射エリアの情報が入力されると、前記複数のカラムのうち前記メイン照射エリアが前記ターゲット照射エリアに含まれないカラムをヘルプ可能カラムとして決定するステップと、
決定された前記ヘルプ可能カラムについて、前記複数のカラムのうち前記メイン照射エリアが前記ターゲット照射エリアに含まれるカラムであって、当該ヘルプ可能カラムと隣接するカラムをヘルプ先カラムとして決定するステップと、
を含み、
前記ヘルプ可能カラムのビームスキャナが、当該ヘルプ可能カラムのサブ照射エリアでの電子ビームの照射をするヘルプ照射制御を行うことによって、前記ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアへの電子ビームの照射が行われ
前記ヘルプ先カラムとして決定するステップでは、一のヘルプ可能カラムについて複数の前記ヘルプ先カラムが存在する場合に、前記ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアのドーズ量に基づいて、前記ヘルプ先カラムを決定する、電子ビーム照射装置の制御方法。
【請求項6】
複数のカラムが隣接して配置されるマルチカラム式の電子ビーム照射装置で実行される制御プログラムあって、
各カラムは、電子ビームを発生させる電子ビーム発生装置と、前記電子ビームを偏向させる偏向器と、前記偏向器を制御するビームスキャナとを、それぞれ備えており、
前記電子ビーム照射装置の記憶部には、
各カラムについて、当該カラムが電子ビームを照射可能な照射エリアのうち、前記照射エリアの中央部に設定されるメイン照射エリアの情報と、前記照射エリアの周辺部に設定され当該カラムと隣接するカラムのメイン照射エリアと重複するサブ照射エリアの情報とが記憶されており、
前記制御プログラムは、前記電子ビーム照射装置に、
電子ビームを照射すべきターゲット照射エリアの情報が入力されると、前記複数のカラムのうち前記メイン照射エリアが前記ターゲット照射エリアに含まれないカラムをヘルプ可能カラムとして決定する処理と、
決定された前記ヘルプ可能カラムについて、前記複数のカラムのうち前記メイン照射エリアが前記ターゲット照射エリアに含まれるカラムであって、当該ヘルプ可能カラムと隣接するカラムをヘルプ先カラムとして決定する処理と、
を実行させるものであり、
前記ヘルプ可能カラムのビームスキャナが、当該ヘルプ可能カラムのサブ照射エリアでの電子ビームの照射をするヘルプ照射制御を行うことによって、前記ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアへの電子ビームの照射が行われ
前記ヘルプ先カラムとして決定する処理では、一のヘルプ可能カラムについて複数の前記ヘルプ先カラムが存在する場合に、前記ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアのドーズ量に基づいて、前記ヘルプ先カラムを決定する、電子ビーム照射装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカラムが隣接して配置されるマルチカラム式の電子ビーム照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム照射装置は、例えば半導体デバイスの製造工程において、マスクに電子ビームを照射して、マスクのエッチング耐性を向上させる目的などで使用される。従来の電子ビーム照射装置は、電子ビームを発生させる電子ビーム発生装置と、電子ビームを偏向させる偏向器と、電子ビームを制御する電子ビーム制御部を備えている。例えば、偏向器は、電極などで構成される。また、電子ビーム制御部は、偏向器を制御するビームスキャナや、偏向器に電力を供給する偏向器電源などで構成される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
電子ビーム発生装置と偏向器と電子ビーム制御部は、まとめて「カラム」と呼ばれることがあり、複数のカラムが隣接して配置される電子ビーム照射装置は、「マルチカラム式の電子ビーム照射装置」と呼ばれることもある。マルチカラム式の電子ビーム照射装置では、カラムが1つしか設けられていない電子ビーム照射装置(シングルカラム式の電子ビーム照射装置)に比べて、電子ビームの照射時間を短縮することが可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-133243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電子ビーム照射装置に対する要求はさらに高まり、マルチカラム式の電子ビーム照射装置においても、電子ビームの照射時間をさらに短縮する技術の開発が求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、電子ビームの照射時間を短縮することのできるマルチカラム式の電子ビーム照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子ビーム照射装置は、複数のカラムが隣接して配置されるマルチカラム式の電子ビーム照射装置であって、各カラムは、電子ビームを発生させる電子ビーム発生装置と、前記電子ビームを偏向させる偏向器と、前記偏向器を制御するビームスキャナとを、それぞれ備えており、前記電子ビーム照射装置は、各カラムについて、当該カラムが電子ビームを照射可能な照射エリアのうち、前記照射エリアの中央部に設定されるメイン照射エリアの情報と、前記照射エリアの周辺部に設定され当該カラムと隣接するカラムのメイン照射エリアと重複するサブ照射エリアの情報とを記憶する記憶部と、電子ビームを照射すべきターゲット照射エリアの情報が入力されると、前記複数のカラムのうち前記メイン照射エリアが前記ターゲット照射エリアに含まれないカラムをヘルプ可能カラムとして決定するヘルプ可能カラム決定部と、決定された前記ヘルプ可能カラムについて、前記複数のカラムのうち前記メイン照射エリアが前記ターゲット照射エリアに含まれるカラムであって、当該ヘルプ可能カラムと隣接するカラムをヘルプ先カラムとして決定するヘルプ先カラム決定部と、を備え、前記ヘルプ可能カラムのビームスキャナが、当該ヘルプ可能カラムのサブ照射エリアでの電子ビームの照射をするヘルプ照射制御を行うことによって、前記ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアへの電子ビームの照射が行われる。
【0008】
この構成によれば、複数のカラムが隣接して配置されるマルチカラム式の電子ビーム照射装置において、ヘルプ可能カラムおよびヘルプ先カラムが適切に決定され、ヘルプ可能カラムのサブ照射エリアでの電子ビームの照射を行うことにより、ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアへの電子ビームの照射が行われる。これにより、メイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれるカラムだけでなく、メイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれないカラムも利用して、ターゲット照射エリアへの電子ビームの照射を行うことができる。その結果、電子ビームの照射時間を短縮することができ、電子ビーム発生装置の寿命を延ばすことも可能になる。
【0009】
また、本発明の電子ビーム照射装置では、前記ヘルプ先カラム決定部は、一のヘルプ可能カラムについて複数の前記ヘルプ先カラムが存在する場合には、前記ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアの面積と、当該ヘルプ先カラムに隣接する前記ヘルプ可能カラムの数とに基づいて、前記複数のヘルプ先カラムの中から一のヘルプ先カラムを決定してもよい。
【0010】
この構成によれば、一のヘルプ可能カラムについて複数のヘルプ先カラムが存在する場合であっても、ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアの面積とヘルプ先カラムに隣接するヘルプ可能カラムの数を考慮して、複数のヘルプ先カラムの中から一のヘルプ先カラムを適切に決定することができる。
【0011】
また、本発明の電子ビーム照射装置では、前記ヘルプ先カラム決定部は、一のヘルプ可能カラムについて複数の前記ヘルプ先カラムが存在する場合に、当該ヘルプ可能カラムと平面視で斜めに隣接するヘルプ先カラムより上下左右に隣接するヘルプ先カラムを優先して、前記ヘルプ先カラムを決定してもよい。
【0012】
この構成によれば、一のヘルプ可能カラムについて複数のヘルプ先カラムが存在する場合であっても、ヘルプ可能カラムとヘルプ先カラムとの位置関係を考慮して、複数のヘルプ先カラムの中から一のヘルプ先カラムを適切に決定することができる。
【0013】
また、本発明の電子ビーム照射装置では、前記ヘルプ先カラム決定部は、一のヘルプ可能カラムについて複数の前記ヘルプ先カラムが存在する場合に、前記ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアのドーズ量に基づいて、前記ヘルプ先カラムを決定してもよい。
【0014】
この構成によれば、一のヘルプ可能カラムについて複数のヘルプ先カラムが存在する場合であっても、ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアのドーズ量を考慮して、複数のヘルプ先カラムの中から一のヘルプ先カラムを適切に決定することができる。
【0015】
また、本発明の電子ビーム照射装置では、前記ヘルプ先カラム決定部は、前記複数のカラムの中に故障しているカラムが存在する場合には、当該故障しているカラムを前記ヘルプ先カラムとして決定してもよい。
【0016】
この構成によれば、故障しているカラムをヘルプ先カラムとして決定することにより、複数のカラムの中に故障しているカラムが存在する場合にも対応することができる。
【0017】
本発明の電子ビーム照射装置の制御方法は、複数のカラムが隣接して配置されるマルチカラム式の電子ビーム照射装置の制御方法あって、各カラムは、電子ビームを発生させる電子ビーム発生装置と、前記電子ビームを偏向させる偏向器と、前記偏向器を制御するビームスキャナとを、それぞれ備えており、前記電子ビーム照射装置の記憶部には、各カラムについて、当該カラムが電子ビームを照射可能な照射エリアのうち、前記照射エリアの中央部に設定されるメイン照射エリアの情報と、前記照射エリアの周辺部に設定され当該カラムと隣接するカラムのメイン照射エリアと重複するサブ照射エリアの情報とが記憶されており、前記制御方法は、電子ビームを照射すべきターゲット照射エリアの情報が入力されると、前記複数のカラムのうち前記メイン照射エリアが前記ターゲット照射エリアに含まれないカラムをヘルプ可能カラムとして決定するステップと、決定された前記ヘルプ可能カラムについて、前記複数のカラムのうち前記メイン照射エリアが前記ターゲット照射エリアに含まれるカラムであって、当該ヘルプ可能カラムと隣接するカラムをヘルプ先カラムとして決定するステップと、を含み、前記ヘルプ可能カラムのビームスキャナが、当該ヘルプ可能カラムのサブ照射エリアでの電子ビームの照射をするヘルプ照射制御を行うことによって、前記ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアへの電子ビームの照射が行われる。
【0018】
この方法によっても、上記の装置と同様に、メイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれるカラムだけでなく、メイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれないカラムも利用して、ターゲット照射エリアへの電子ビームの照射を行うことができる。その結果、電子ビームの照射時間を短縮することができ、電子ビーム発生装置の寿命を延ばすことも可能になる。
【0019】
本発明の電子ビーム照射装置の制御プログラムは、複数のカラムが隣接して配置されるマルチカラム式の電子ビーム照射装置で実行される制御プログラムあって、各カラムは、電子ビームを発生させる電子ビーム発生装置と、前記電子ビームを偏向させる偏向器と、前記偏向器を制御するビームスキャナとを、それぞれ備えており、前記電子ビーム照射装置の記憶部には、各カラムについて、当該カラムが電子ビームを照射可能な照射エリアのうち、前記照射エリアの中央部に設定されるメイン照射エリアの情報と、前記照射エリアの周辺部に設定され当該カラムと隣接するカラムのメイン照射エリアと重複するサブ照射エリアの情報とが記憶されており、前記制御プログラムは、前記電子ビーム照射装置に、電子ビームを照射すべきターゲット照射エリアの情報が入力されると、前記複数のカラムのうち前記メイン照射エリアが前記ターゲット照射エリアに含まれないカラムをヘルプ可能カラムとして決定する処理と、決定された前記ヘルプ可能カラムについて、前記複数のカラムのうち前記メイン照射エリアが前記ターゲット照射エリアに含まれるカラムであって、当該ヘルプ可能カラムと隣接するカラムをヘルプ先カラムとして決定する処理と、を実行させるものであり、前記ヘルプ可能カラムのビームスキャナが、当該ヘルプ可能カラムのサブ照射エリアでの電子ビームの照射をするヘルプ照射制御を行うことによって、前記ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアへの電子ビームの照射が行われる。
【0020】
このプログラムによっても、上記の装置と同様に、メイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれるカラムだけでなく、メイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれないカラムも利用して、ターゲット照射エリアへの電子ビームの照射を行うことができる。その結果、電子ビームの照射時間を短縮することができ、電子ビーム発生装置の寿命を延ばすことも可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、マルチカラム式の電子ビーム照射装置において、電子ビームの照射時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態における電子ビーム照射装置の構成を示す説明図である。
図2】本発明の実施の形態におけるカラムの照射エリアの一例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態におけるターゲット照射エリアの一例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における電子ビーム照射装置の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態の電子ビーム照射装置について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、半導体デバイスの製造工程等で用いられる電子ビーム照射装置の場合を例示する。
【0024】
本発明の実施の形態の電子ビーム照射装置の構成を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の電子ビーム照射装置のを示す説明図である。図1に示すように、電子ビーム照射装置1は、複数のカラム2が隣接して配置されるマルチカラム式の電子ビーム照射装置1である。各カラム2は、電子ビームを発生させる電子ビーム発生装置3と、電子ビームを偏向させる偏向器と、偏向器4を制御するビームスキャナ5とを、それぞれ備えている。偏向器4は、例えば、電極6と偏向器電源7で構成される。
【0025】
また、電子ビーム照射装置1は、電子ビーム照射のための種々の情報が記憶される記憶部10と、ヘルプ可能カラムを決定するヘルプ可能カラム決定部11と、ヘルプ先カラムを決定するヘルプ先カラム決定部12を備えている。ヘルプ可能カラム決定部11とヘルプ先カラム決定部12は、電子ビームを制御するための制御部として機能する。
【0026】
記憶部10には、各カラム2について、そのカラム2が電子ビームを照射可能な照射エリアのうち、照射エリアの中央部に設定されるメイン照射エリアの情報と、照射エリアの周辺部に設定され、そのカラム2と隣接するカラム2のメイン照射エリアと重複するサブ照射エリアの情報とが記憶される。
【0027】
図2は、カラム2の照射エリアの一例を示す図である。図2には、電子ビーム照射装置1が、3行3列の9つのカラム2(カラムA~I)を有する例が示されている。図2に示すように、例えば、各カラム2の面積を4(=2×2)とし、各カラム2の電子ビームを照射可能な照射エリアの面積を16(=4×4)とする。この場合、各カラム2のメイン照射エリアは、照射エリアの中央部(カラム2の面積に対応する部分)に設定され、サブ照射エリアは、照射エリアの周辺部(メイン照射エリアを囲む、照射エリアの残りの部分)に設定される。サブ照射エリアは、そのカラム2(例えばカラムA)と隣接するカラム2(例えばカラムB)のメイン照射エリアと重複している。図2の例では、メイン照射エリアの面積は4(=2×2)であり、サブ照射エリアの面積は12(=16-4)である。
【0028】
ヘルプ可能カラム決定部11は、電子ビームを照射すべきターゲット照射エリアの情報が入力されると、複数のカラム2のうちメイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれないカラム2をヘルプ可能カラムとして決定する。
【0029】
ヘルプ先カラム決定部12は、決定された前記ヘルプ可能カラムについて、複数のカラム2のうちメイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれるカラム2であって、そのヘルプ可能カラムと隣接するカラム2をヘルプ先カラムとして決定する。このヘルプ先カラム決定部12は、一のヘルプ可能カラムについて複数のヘルプ先カラムが存在する場合には、ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアの面積と、そのヘルプ先カラムに隣接するヘルプ可能カラムの数と、ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアのドーズ量に基づいて、複数のヘルプ先カラムの中から一のヘルプ先カラムを決定する。
【0030】
また、ヘルプ先カラム決定部12は、一のヘルプ可能カラムについて複数のヘルプ先カラムが存在する場合に、そのヘルプ可能カラムと平面視で斜めに隣接するヘルプ先カラムより上下左右に隣接するヘルプ先カラムを優先して、ヘルプ先カラムを決定する。さらに、ヘルプ先カラム決定部12は、複数のカラム2の中に故障しているカラム2が存在する場合には、当該故障しているカラム2をヘルプ先カラムとして決定する。
【0031】
図3は、ターゲット照射エリアの一例を示す図である。例えば、図3のようなターゲット照射エリアの情報が入力されると、ヘルプ可能カラム決定部11は、複数のカラム2(カラムA~I)のうちメイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれないカラム2(カラムF、G、H、I)をヘルプ可能カラムとして決定する。
【0032】
ヘルプ先カラム決定部12は、これらのヘルプ可能カラム(カラムF、G、H、I)が、それぞれのサブ照射エリアでの電子ビームの照射をするヘルプ先カラムを決定する。例えば、カラムFについては、複数のヘルプ先カラムの候補(カラムB、C、E)が存在する。この場合、カラムFと平面視で斜めに隣接するカラムBより、カラムFと平面視で上下左右に隣接するカラムC、Eが優先される(図3参照)。
【0033】
ヘルプ先カラム決定部12は、複数のヘルプ先カラムの候補(カラムC、E)について、以下の決定基準値を計算し、決定基準値の最も大きいカラム2をヘルプ先カラムとして決定する。
決定基準値=(M×D)/(N+1)
ここで、Mは、ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアの面積であり、Dは、ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアのドーズ量である。また、Nは、ヘルプ先カラムと平面視で上下左右に隣接するヘルプ可能カラムの数である。
【0034】
カラムCのターゲット照射エリアの面積Mは1(=1×1)であり、カラムCのターゲット照射エリアのドーズ量Dは10である。また、カラムCと平面視で上下左右に隣接するヘルプ可能カラムの数Nは1(カラムFのみ)である。したがって、カラムCの決定基準値は5=(1×10)/(1+1)と算出される。
【0035】
一方、カラムEのターゲット照射エリアの面積Mは4(=2×2)であり、カラムEのターゲット照射エリアのドーズ量Dは2である。また、カラムEと平面視で上下左右に隣接するヘルプ可能カラムの数Nは2(カラムFとH)である。したがって、カラムCの決定基準値は2.6=(4×2)/(2+1)と算出される。
【0036】
したがって、ヘルプ先カラム決定部12は、決定基準値の大きいカラムCを、カラムFのヘルプ先カラムとして決定する。同様に、ヘルプ先カラム決定部12は、カラムG、H、Iのヘルプ先カラムも決定する。なお、決定基準値の最大値が同じであるカラム2が複数ある場合には、それらのカラム2の中からランダムでヘルプ先カラムを決定してもよい。あるいは、それらのカラム2の中から所定のルール(例えば時計回り順など)に従ってヘルプ先カラムを決定してもよい。
【0037】
本実施の形態の電子ビーム照射装置1では、ヘルプ可能カラムのビームスキャナ5が、そのヘルプ可能カラムのサブ照射エリアでの電子ビームの照射をするヘルプ照射制御を行うことによって、ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアへの電子ビームの照射が行われる。
【0038】
以上のように構成された電子ビーム照射装置1について、図4のフロー図を参照してその動作を説明する。
【0039】
本実施の形態の電子ビーム照射装置1を用いて電子ビームの照射を行う場合には、電子ビームを照射すべきターゲット照射エリアの情報が入力されると(S1)、メイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれないカラム2がヘルプ可能カラムとして決定される(S2)。次に、決定されたヘルプ可能カラムについて、メイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれるカラム2であって、そのヘルプ可能カラムと隣接するカラム2をヘルプ先カラムとして決定する(S3)。そして、各カラム2の照射エリアを決定した後(S4)、各カラム2のビームスキャナ5に電子ビームの照射指令が送信される(S5)。各カラム2では、この照射指令に基づいて電子ビームの照射が行われる。
【0040】
その後、各カラム2のビームスキャナ5から電子ビームの照射結果を受信する(S6)。照射結果から、故障カラム(故障したカラム2)があり電子ビームの照射が行われなかったことが判明した場合には(S7)、その故障カラム(ヘルプ先カラム)に隣接するカラム2(ヘルプ可能カラム)を決定し、その隣接するカラム2の照射エリアを決定して(S8)、その隣接カラムのビームスキャナ5に電子ビームの照射指令が送信される(S9)。故障カラムに隣接するカラム2では、この照射指令に基づいて故障カラムへの電子ビームの照射が行われる。その後、隣接カラムのビームスキャナ5から電子ビームの照射結果を受信して(S10)、故障カラムへの電子ビームの照射が行われたことを確認する。
【0041】
このような本実施の形態の電子ビーム照射装置1によれば、複数のカラム2が隣接して配置されるマルチカラム式の電子ビーム照射装置1において、ヘルプ可能カラムおよびヘルプ先カラムが適切に決定され、ヘルプ可能カラムのサブ照射エリアでの電子ビームの照射を行うことにより、ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアへの電子ビームの照射が行われる。これにより、メイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれるカラム2だけでなく、メイン照射エリアがターゲット照射エリアに含まれないカラム2も利用して、ターゲット照射エリアへの電子ビームの照射を行うことができる。その結果、電子ビームの照射時間を短縮することができ、電子ビーム発生装置3の寿命を延ばすことも可能になる。
【0042】
本実施の形態では、一のヘルプ可能カラムについて複数のヘルプ先カラムが存在する場合であっても、ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアの面積とヘルプ先カラムに隣接するヘルプ可能カラムの数を考慮して、複数のヘルプ先カラムの中から一のヘルプ先カラムを適切に決定することができる。
【0043】
また、本実施の形態では、一のヘルプ可能カラムについて複数のヘルプ先カラムが存在する場合であっても、ヘルプ可能カラムとヘルプ先カラムとの位置関係を考慮して、複数のヘルプ先カラムの中から一のヘルプ先カラムを適切に決定することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、一のヘルプ可能カラムについて複数のヘルプ先カラムが存在する場合であっても、ヘルプ先カラムのターゲット照射エリアのドーズ量を考慮して、複数のヘルプ先カラムの中から一のヘルプ先カラムを適切に決定することができる。
【0045】
また、本実施の形態では、故障しているカラム2をヘルプ先カラムとして決定することにより、複数のカラム2の中に故障しているカラム2が存在する場合にも対応することができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明にかかる電子ビーム照射装置は、電子ビームの照射時間を短縮することができるという効果を有し、半導体デバイスの製造工程等で用いられ、有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 電子ビーム照射装置
2 カラム
3 電子ビーム発生装置
4 偏向器
5 ビームスキャナ
6 電極
7 偏向器電源
10 記憶部
11 ヘルプ可能カラム決定部
12 ヘルプ先カラム決定部
図1
図2
図3
図4