IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社堀場エステックの特許一覧

特許7137921気化システム及び気化システム用プログラム
<>
  • 特許-気化システム及び気化システム用プログラム 図1
  • 特許-気化システム及び気化システム用プログラム 図2
  • 特許-気化システム及び気化システム用プログラム 図3
  • 特許-気化システム及び気化システム用プログラム 図4
  • 特許-気化システム及び気化システム用プログラム 図5
  • 特許-気化システム及び気化システム用プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】気化システム及び気化システム用プログラム
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/448 20060101AFI20220908BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C23C16/448
H01L21/31 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017214381
(22)【出願日】2017-11-07
(65)【公開番号】P2019085611
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】田口 明広
(72)【発明者】
【氏名】姜山 亮一
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-122841(JP,A)
【文献】特開2005-307233(JP,A)
【文献】特開平11-286782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/448
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料を気化する気化器と、前記気化器への液体材料の供給量を制御する供給量制御機器と、前記気化器により生成された気化ガスの流量を調整する流量調整弁と、前記気化ガスの流量を測定する流量センサと、前記流量センサにより測定された測定流量が予め定められた設定流量となるように前記流量調整弁に駆動信号を出力して弁開度を制御する弁制御部とを具備する気化システムであって、
前記流量調整弁に出力される前記駆動信号の示す値である駆動信号値を取得する駆動信号値取得部と、
前記駆動信号値に基づき前記供給量制御機器に制御信号を出力して、前記液体材料の供給を制御する供給制御部とを備える気化システム。
【請求項2】
前記気化器に設けられた液面センサをさらに具備し、
前記供給制御部が、前記駆動信号値に加えて液面センサからの検出値に基づいて前記供給量制御機器に制御信号を出力する請求項1記載の気化システム。
【請求項3】
前記供給制御部が、前記駆動信号値が減少して予め定められた閾値を下回った場合、又は、前記駆動信号値が増加して予め定められた閾値を上回った場合に、前記供給量制御機器に制御信号を出力して前記液体材料の供給を開始する又は前記液体材料の供給を停止する請求項1又は2記載の気化システム。
【請求項4】
前記閾値が、所定の1つの値に設定されている請求項3記載の気化システム。
【請求項5】
液体材料を気化する気化器と、前記気化器への液体材料の供給量を制御する供給量制御機器と、前記気化器により生成された気化ガスの流量を調整する流量調整弁と、前記気化ガスの流量を測定する流量センサとを具備する気化システムに用いられるプログラムであって、
前記流量センサにより測定された測定流量が予め定められた設定流量となるように前記流量調整弁に駆動信号を出力して弁開度を制御する弁制御部と、
前記流量調整弁に出力される前記駆動信号の示す値である駆動信号値を取得する駆動信号値取得部と、
前記駆動信号値に基づき前記供給量制御機器に制御信号を出力して、前記液体材料の供給を制御する供給制御部としての機能をコンピュータに発揮させる気化システム用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体材料を気化する気化システム及び気化システムに用いられる気化システム用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば成膜プロセス等の半導体製造プロセスに用いられるガスを生成するものとして、特許文献1に示すように、液体材料を気化する気化システムが用いられている。
【0003】
この種の気化システムとしては、気化器により生成された気化ガスの流路上に圧力センサを設けて、気化器内の圧力を監視するようにしたものがある。これにより、気化器内の液体材料の減少に伴い気化器内の圧力が低下して閾値を下回った場合に、気化器に液体材料を供給することで、気化器内の液体材料が枯渇することを防いだり、気化器への液体材料の供給に伴い気化器内の圧力が上昇して閾値を上回った場合に、液体材料の供給を停止して、液体材料が気化器から溢れ出ることを防いだりしている。
【0004】
しかしながら、気化ガスの流路上に圧力センサを設ける場合、圧力センサを高温に耐え得るものにする必要があり、このようものは高価であったり大きかったりするので、低コスト化やコンパクト化の妨げとなる。
さらに、圧力センサの例えばゼロ点補正等の校正を行う場合は、気化器を空にする必要があり、メンテナンス性が悪いという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-211021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであって、圧力センサを用いることなく、液体材料の供給を適切に制御できるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る気化システムは、液体材料を気化する気化器と、前記気化器への液体材料の供給量を制御する供給量制御機器と、前記気化器により生成された気化ガスの流量を調整する流量調整弁と、前記気化ガスの流量を測定する流量センサと、前記流量センサにより測定された測定流量が予め定められた設定流量となるように前記流量調整弁に駆動信号を出力して弁開度を制御する弁制御部とを具備する気化システムであって、前記駆動信号の示す値である駆動信号値を取得する駆動信号値取得部と、前記駆動信号値に基づき前記供給量制御機器に制御信号を出力して、前記液体材料の供給を制御する供給制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
ここで、気化器内の圧力と駆動信号値との関係について説明する。
気化器内の液体材料の減少に伴い気化器内の圧力が低下すると、流量調整弁に流入する気化ガスの圧力が低下することから、測定流量が設定流量となるようにするためには、弁開度を大きくする必要がある。従って、気化器内の圧力が低下すると、弁制御部は、例えばノーマルオープンタイプの流量調整弁に対しては、印加電圧や印加電流などの駆動信号値を小さくして弁開度を大きくし、ノーマルクローズタイプの流量調整弁に対しては、印加電圧や印加電流などの駆動信号値を大きくして弁開度を大きくする。
【0009】
一方、気化器への液体材料の供給に伴い気化器内の圧力が上昇すると、流量調整弁に流入する気化ガスの圧力が上昇することから、測定流量が設定流量となるようにするためには、弁開度を小さくする必要がある。従って、気化器内の圧力が上昇すると、弁制御部は、例えばノーマルオープンタイプの流量調整弁に対しては、印加電圧や印加電流などの駆動信号値を大きくして弁開度を小さくし、ノーマルクローズタイプの流量調整弁に対しては、印加電圧や印加電流などの駆動信号値を小さくして弁開度を小さくする。
【0010】
つまり、流量調整弁がノーマルオープンタイプの場合、駆動信号値が小さくなれば、それは気化器内の液体材料の減少し、気化器内の圧力が低下していることを示しており、駆動信号値が大きくなれば、それは気化器内の液体材料が増加し、気化器内の圧力が上昇していることを示している。
一方、流量調整弁がノーマルクローズタイプの場合は、駆動信号値が大きくなれば、それは気化器内の液体材料の減少し、気化器内の圧力が低下していることを示しており、駆動信号値が小さくなれば、それは気化器内の液体材料が増加し、気化器内の圧力が上昇していることを示している。
【0011】
これにより、上述した気化システムであれば、流量調整弁への駆動信号の値に基づき供給量制御機器に制御信号を出力して液体材料の供給を制御することで、液体材料が枯渇する前に気化器へ液体材料を供給したり、気化器から液体材料が溢れ出る前に液体材料の供給を停止したりすることができるので、圧力センサを用いることなく液体材料の供給を適切に制御することが可能となる。
【0012】
ところで、設定流量が小さい場合、図5に示すように、気化器内の液体材料の減少に伴う圧力の低下は、液体材料が殆どなくなるまであまり見られない。これは、設定流量が小さい場合、気化器から導出される気化ガスを、気化器内で液体材料が気化した気化ガスにより補うことができるので、気化器内に液体材料が存在していれば、気化器内の圧力は液体材料の温度に応じた蒸気圧と等しくなるからである。
このことから、弁制御部は、液体材料が殆どなくなるまでは弁開度を大きくしようとしないので、設定流量が小さい場合に駆動信号値に基づいて液体材料の供給を制御すると、液体材料が枯渇する恐れがある。
【0013】
そこで、前記気化器に設けられた液面センサをさらに具備し、前記供給制御部が、前記駆動信号値に加えて液面センサからの検出値に基づいて前記供給量制御機器に制御信号を出力することが好ましい。
このような構成であれば、液面センサの検出値に基づいて液体材料の供給を制御することができるので、設定流量が小さい場合であっても液体材料の供給を適切に制御することができる。
【0014】
前記供給制御部が、前記駆動信号値が減少して予め定められた閾値を下回った場合、又は、前記駆動信号値が増加して予め定められた閾値を上回った場合に、前記供給量制御機器に制御信号を出力して前記液体材料の供給を開始する又は前記液体材料の供給を停止することが好ましい。
このような構成であれば、液体材料が枯渇する前に気化器へ液体材料を供給したり、気化器から液体材料が溢れ出る前に液体材料の供給を停止したりすることができる。
【0015】
前記閾値が、所定の1つの値に設定されていることが好ましい。
このような構成であれば、例えば設定流量が最大値に設定されている場合など、液体材料の枯渇が生じる恐れが高い条件に応じて閾値を設定しておくことで、互いに異なる設定流量に対する閾値の調整や、互いに異なる設定流量に対する閾値を供給制御部に読み込ませる動作など不要にすることができる。
【0016】
また、本発明に係る気化システム用プログラムは、液体材料を気化する気化器と、前記気化器への液体材料の供給量を制御する供給量制御機器と、前記気化器により生成された気化ガスの流量を調整する流量調整弁と、前記気化ガスの流量を測定する流量センサとを具備する気化システムに用いられるプログラムであって、前記流量センサにより測定された測定流量が予め定められた設定流量となるように前記流量調整弁に駆動信号を出力して弁開度を制御する弁制御部と、前記駆動信号の示す値である駆動信号値を取得する駆動信号値取得部と、前記駆動信号値に基づいて前記供給量制御機器に制御信号を出力して、前記液体材料の供給を制御する供給制御部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とするプログラムである。
このようなプログラムを用いれば、上述した気化システムと同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、圧力センサを用いることなく、液体材料の供給を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の気化システムの全体構成を模式的に示す図。
図2】同実施形態の制御装置の機能を示す機能ブロック図。
図3】同実施形態の制御装置の制御内容を説明するための図。
図4】同実施形態の制御装置の第1制御態様と第2制御態様とを説明するための図。
図5】気化器内の液体材料の貯留量と気化器内の圧力との関係を示す図。
図6】同実施形態の制御装置の動作を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る気化システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態の気化システム100は、例えば半導体製造ライン等に組み込まれて半導体製造プロセスを行うチャンバに所定流量のガスを供給するためのものであり、図1に示すように、液体原料を気化する気化部2と、気化部2により気化されたガスの流量を制御するマスフローコントローラ3と、気化部2やマスフローコントローラ3の動作を制御する制御装置4とを具備している。
なお、本実施形態では気化部2を構成する各部が第1筐体C1に収容されており、マスフローコントローラ3を構成する各部が第1筐体C1とは別体の第2筐体C2に収容されているが、気化部2を構成する各部及びマスフローコントローラ3を構成する各部を同一の筐体に収容させても構わない。
【0021】
気化部2は、液体材料を例えばベーキング方式により気化する気化器21と、気化器21への液体材料の供給量を制御する供給量制御機器22と、気化器21に供給される液体材料を所定の温度に予熱する予熱器23とを備えている。
【0022】
これらの気化器21、供給量制御機器22及び予熱器23は、内部に流路が形成されたマニホールドブロックであるボディブロックB1(以下、第1ボディブロックB1という)の一面に設定された機器取り付け面B1xに取り付けられている。ここで第1ボディブロックB1は、例えばステンレス鋼等の金属製であり、長手方向を有する概略直方体形状をなすものであり、前記機器取り付け面B1xは、長手方向を有する矩形状をなす面である。なお、本実施形態の第1ボディブロックB1は、その長手方向が上下方向(鉛直方向)を向くように半導体製造ライン等に設置される。
【0023】
気化器21は、内部に液体材料を貯留する空間を有する気化タンクである貯留容器211と、当該貯留容器211に設けられて液体材料を気化させるための気化ヒータ212とを有する。貯留容器211には、貯留された液体材料の貯留量を検知するための液面センサ213が設けられている。本実施形態の液面センサ213は、貯留容器211の上壁から内部に差し込まれて設けられており、具体的には当該液面センサ213周囲の熱抵抗を測定する所謂自己発熱式のものである。なお、液面センサ213としては、液温測定式、磁気式、静電容量式、超音波式など、種々のタイプのものを用いることができる。
【0024】
供給量制御機器22は、気化器21への液体材料の供給流量を制御する制御弁であり、本実施形態では、電磁開閉弁である。具体的には、電磁開閉弁22の図示しない弁体が、第1ボディブロックB1に形成された内部流路の開口を開放又は閉塞して、液体材料を気化器21へ供給する又はその供給を停止するように構成されている。
このように、供給流量制御機器22として開閉弁を用いることで、供給流量制御機器22としてマスフローコントローラを用いる場合に比べて、気化部2を小型化することができる。さらに、供給流量制御機器22として電磁開閉弁22を用いているので、開閉時の動作を緩やかにすることで気化器21内の急激な圧力変動を軽減することができる。
ただし、供給量制御機器22は、必ずしも開閉弁である必要はない。その一例として、供給量制御機器22は、例えばピエゾバルブ等の制御弁や、この制御弁を備えたマスフローコントローラなどであっても良い。この場合、上述した液面センサ213の検出値や、後述する流量調整弁32への駆動信号値を用いて制御弁の弁開度を制御することで、気化器21へ供給される液体材料の供給量を制御することができる。
【0025】
予熱器23は、内部に液体材料が流れる流路が形成された予熱ブロック231と、当該予熱ブロック231に設けられて液体材料を予熱するための予熱ヒータ232とを有する。この予熱器23によって、液体材料は気化直前の温度(沸点未満)まで加熱される。
【0026】
以上のように構成した気化部2により、液体材料導入ポートP1から導入された液体材料は、予熱器23の予熱ブロック231の流路を流れることにより、所定温度まで予熱される。この予熱器23により予熱された液体材料は、供給量制御機器である電磁開閉弁22を制御することにより、気化器21に導入される。そして、気化器21では液体材料が常時貯留された状態となり、当該液体材料が気化されてその気化ガスが連続的に生成されて、マスフローコントローラ3に連続的に導出される。
【0027】
次に、マスフローコントローラ3について説明する。
マスフローコントローラ3は、流路を流れる気化ガスを検知する流体検知機器31と、流路を流れる気化ガスの流量を制御する流量調整弁32とを備えている。なお、流体検知機器31は、流路の上流側に設けられた第1発熱抵抗体311及び流路の下流側に設けられた第2発熱抵抗体312である。また、流量調整弁32は、上述した気化器21により生成された気化ガスの流量を制御する制御弁であり、本実施形態では、所謂ノーマルオープンタイプのピエゾバルブである。
【0028】
これらの流体検知機器31及び流量調整弁32は、内部に流路が形成されたマニホールドブロックであるボディブロックB2(以下、第2ボディブロックB2という。)の一面に設定された機器取り付け面B2xに取り付けられている。ここで第2ボディブロックB2は、例えばステンレス鋼等の金属製であり、長手方向を有する概略直方体形状をなすものであり、前記機器取り付け面B2xは、長手方向を有する矩形状をなす面である。なお、第2ボディブロックB2の機器取り付け面B2xの幅寸法は、前記第1ボディブロックB1の機器取り付け面B1xの幅寸法と同一である。
【0029】
そして、マスフローコントローラ3の第2ボディブロックB2は、前記気化部2の第1ボディブロックB1とねじ等により連結されて本体ブロックBが形成される。この本体ブロックBは、液体材料導入ポートP1が下側に位置し、気化ガス導出ポートP2が上側に位置するように、その長手方向が上下方向(鉛直方向)を向くように半導体製造ライン等に設置される。なお、第2ボディブロックB2は、必ずしも第1ボディブロックB1と直接連結されている必要はなく、例えば配管継手等を介して流体的に接続されていれば良い。このように第2ボディブロックB2を第1ボディブロックB1と間接的に接続することで、マスフローコントローラ3を気化部2から取り外して別構成にすることができる。これにより、マスフローコントローラ3が気化部2の温度の影響を受けずに安定する。
【0030】
次に、制御装置4について説明する。
制御装置4は、上述した電磁開閉弁22を制御することにより、気化運転時において、液体材料を気化器21に供給するように構成されたものである。
【0031】
具体的に制御装置4は、CPU、メモリ、AC/DCコンバータ、入力手段等を有した所謂コンピュータであり、前記メモリに格納されたプログラムをCPUによって実行することによって、図2に示すように、設定流量受付部41、流量算出部42、弁制御部43、駆動信号値取得部44、及び供給制御部45としての機能を有するものである。
以下、各部について説明する。
【0032】
設定流量受付部41は、例えばキーボード等の入力手段によるユーザの入力操作や他機器から送信された設定流量を示す設定流量信号を受け付けるものである。
【0033】
流量算出部42は、流体検知機器31からの出力信号を取得して、第2ボディブロックB2の内部流路に流れる気化ガスの流量を算出するものである。ここでは、この流量算出部42と上述した流体検知機器31とが、気化ガスの流量を測定する流量センサを構成しており、本実施形態の流量センサは熱式のものである。なお、流量センサは圧力式のものであっても良い。
【0034】
弁制御部43は、設定流量と流量算出部42により算出された測定流量とに基づいて流量調整弁32を制御するものであり、ここでは測定流量が設定流量となるように流量調整弁32に駆動信号を出力して弁開度を制御する。駆動信号は、流量調整弁32に印加する印加電圧や印加電流(以下、駆動信号値ともいう)を示す信号であり、この駆動信号を流量調整弁32に出力することにより、ここでは弁開度をフィードバック制御している。
【0035】
より具体的に説明すると、例えば気化器21内の液体材料の減少に伴い気化器21内の圧力が低下すると、流量調整弁32に流入する気化ガスの圧力が低下することから、測定流量が設定流量となるようにするためには、流量調整弁32の弁開度を大きくする必要がある。このとき弁制御部43は、弁開度が大きくなるように、流量調整弁32に出力する駆動信号値を変動させる。
一方、例えば気化器内21に液体材料を供給して気化器内21の圧力が上昇すると、流量調整弁32に流入する気化ガスの圧力が上昇することから、測定流量が設定流量となるようにするためには、流量調整弁32の弁開度を小さくする必要がある。このとき弁制御部43は、弁開度が小さくなるように、流量調整弁32に出力する駆動信号値を変動させる。
【0036】
本実施形態では、上述したように流量調整弁32がノーマルオープンタイプのものであるので、図3に示すように、気化器21内の圧力が低下した場合(すなわち、気化器21内の液体材料が減少し、液面レベルが低下した場合)、弁制御部43は駆動信号値を小さくして弁開度を大きくする。一方、気化器21内の圧力が上昇した場合(すなわち、気化器内の液体材料が増加し、液面レベルが上昇した場合)は、弁制御部43は駆動信号値を大きくして弁開度を小さくする。
なお、流量調整弁32がノーマルクローズタイプのものであれば、弁制御部43は、気化器21内の圧力が低下した場合、弁制御部43は駆動信号値を大きくして弁開度を大きくし、気化器21内の圧力が上昇した場合、弁制御部43は駆動信号値を小さくして弁開度を小さくすることになる。
【0037】
駆動信号値取得部44は、弁制御部43から流量調整弁32に出力される駆動信号値を取得するものであり、その駆動信号値を後述する供給制御部45に送信する。
【0038】
供給制御部45は、駆動信号値取得部44により取得された駆動信号値に基づいて上述した電磁開閉弁22を制御するものである。
具体的に供給制御部45は、図3に示すように、駆動信号値と予め設定された閾値とを比較して、電磁開閉弁22を制御する。本実施形態では、上述したように、気化器21内の液体材料の減少に伴い気化器21内の圧力が低下すると、弁制御部43から流量調整弁32に出力される駆動信号値も小さくなることから、駆動信号値が減少して閾値を下回った場合に、供給制御部45が電磁開閉弁22に制御信号を出力して液体材料の供給を開始する。
【0039】
その後、供給制御部45は、液体材料の供給を開始してから所定時間経過後に電磁開閉弁22に制御信号を出力して液体材料の供給を停止する。
【0040】
一方、上述したように、気化器21内への液体材料の供給に伴い気化器21内の圧力が上昇すると、弁制御部43から流量調整弁32に出力される駆動信号値も大きくなることから、駆動信号値が増加して閾値を上回った場合に、供給制御部45が電磁開閉弁22に制御信号を出力して液体材料の供給を停止する。なお、駆動信号値が減少した場合に対して設定した閾値と、駆動信号値が増加した場合に対して閾値とは、ここでは同じ値であるが、互いに異なる値であっても良い。
【0041】
本実施形態では、図4に示すように、設定流量が変わった場合に、その変化前後の互いに異なる設定流量に対して、駆動信号値の閾値は変わらず同じ値のままである。ただし、駆動信号値の閾値は、設定流量によって異なる値に設定しても良い。
【0042】
ところで、設定流量が小さい場合、図5に示すように、気化器21内の液体材料の減少に伴う圧力の低下は、液体材料が殆どなくなるまであまり見られない。これは、設定流量が小さい場合、気化器21から導出される気化ガスを、気化器21内で液体材料が気化した気化ガスにより補うことができるので、気化器21内の圧力は、液体材料が存在していれば、その温度に応じた蒸気圧と等しくなるからである。これにより、弁制御部43は、液体材料が殆どなくなるまでは弁開度を大きくしようと働かない。つまり、設定流量が小さい場合は、液体材料が殆どなくなるまでは弁制御部43から流量調整弁32に出力される駆動信号値があまり変動しないので、駆動信号値に基づいて液体材料の供給を制御しようとすると、液体材料が枯渇する恐れがある。
【0043】
これに対して、本実施形態の制御装置4は、液面取得部46としての機能をさらに備えており、弁制御部43が、上述した駆動信号値に加えて液面センサ213により検出された検出値に基づいて液体材料の供給を制御するように構成されている。
【0044】
液面取得部46は、上述した液面センサ213から出力された検出値信号を取得するものであり、その検出値信号が示す検出値(ここでは液面レベル)を上述した供給制御部45に送信する。
【0045】
そして、本実施形態の供給制御部45は、図4に示すように、液面センサ213により検出された液面レベルが、所定の最低レベルを下回った場合、又は、所定の最高レベルを上回った場合、そのことを示す異常信号が液面取得部46から供給制御部45に出力され、供給制御部45は駆動信号値に関わらず電磁開閉弁22を強制的にON又はOFFする。
具体的には、例えば液面センサ213により検出された液面レベルが最低レベルを下回った場合に、供給制御部45が電磁開閉弁22に制御信号を出力して、気化器21への液体材料の供給を開始し、液面センサ213により検出された液面レベルが最高レベルを上回った場合に、液体材料の供給を停止する。
【0046】
次に、本実施形態の気化システム100の動作について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0047】
まず、気化システム100の動作が開始すると、液面取得部46が、液面センサにより検出された液面レベルを取得して、液面レベルが最高レベルを上回っているか、最低レベルを下回っているか、最高レベルと最低レベルとの間に位置しているかを判断する(S1)。
【0048】
液面レベルが最低レベルを下回っている場合、そのことを示す異常信号が液面取得部46から供給制御部45に出力され、供給制御部45は電磁開閉弁22を開ける(S2)。また、液面レベルが最高レベルを上回っている場合、そのことを示す異常信号が液面取得部46から供給制御部45に出力され、供給制御部45は電磁開閉弁22を閉じる(S3)。
【0049】
一方、液面レベルが最高レベルと最低レベルとの間に位置している場合、駆動信号値取得部44が弁制御部43から駆動信号値を取得するとともに、その駆動信号値に基づいて供給制御部45が電磁開閉弁22に制御信号を出力する。
【0050】
具体的には、供給制御部43が駆動信号値と所定の閾値とを比較して、駆動信号値が閾値を下回ったか、或いは、駆動信号値が閾値を上回ったかを判断する(S4)。
そして、駆動信号値が減少して閾値を下回った場合、供給制御部45が電磁開閉弁22に制御信号を出力して電磁開閉弁22を開け(S2)、液体材料の供給を開始する。
一方、駆動信号値が閾値を上回った場合、供給制御部45が電磁開閉弁22に制御信号を出力して電磁開閉弁を閉じ(S3)、液体材料の供給を停止する。
【0051】
その後、S1に戻り、気化システム100の動作を終了させるための動作終了信号が制御装置4に入力されるまで上述した動作を繰り返す。
【0052】
このように構成された本実施形態に係る気化システム100によれば、供給制御部45が、弁制御部43から流量調整弁32に出力される駆動信号値に基づいて、電磁開閉弁22に制御信号を出力しているので、気化器21内の圧力を検出するための圧力センサを設けることなく、気化器21内の液体材料が枯渇する前の適切なタイミングで液体材料を気化器21へ供給したり、気化器21から液体材料が溢れ出る前に液体材料の供給を停止したりすることができる。
その結果、圧力センサを不要になった分、コスト削減やシステムの小型化を図れるうえ、圧力センサの校正時に必要であった気化器21を空にする作業が不要となり、メンテナンス性の向上をも図れる。
なお、駆動信号値の他に例えば温度等の種々のパラメータを用いて弁制御部43の弁開度を算出し、この弁開度を用いて電磁開閉弁22を制御する態様も考えられるが、種々の
パラメータを含む為に制御が複雑となり利用するのは難しい。
【0053】
また、従来のように圧力センサにより検出される気化タンク211内の圧力と閾値とを比較して液体材料の供給を制御する場合、マスフローコントローラ3の設定流量に応じて必要な気化タンク211内の圧力が異なることから、各設定流量に応じて圧力の閾値を設定する必要が生じる。さらに、設定流量が大きい場合は、気化タンク211内で気化する気化ガスの流量が、気化タンク211から導出される気化ガスの流量に追いつかないことがあり、そうすると気化タンク211内の圧力が変動(低下)してしまうので、閾値の適切な設定が非常に困難である。加えて、圧力センサにより検出される圧力は、マスフローコントローラ3の二次側(下流側)の圧力の影響を受けるため、マスフローコントローラの二次側に別途圧力センサを設けるなどして、二次側圧力に対応させた閾値の設定や二次側圧力を考慮した補正などが必要なる。
これに対して、本実施形態に係る気化システム100は、上述したように圧力センサを不要にすることができるので、圧力センサを用いた制御に伴う上述した種々の問題を解決することができる。
【0054】
また、駆動信号値の閾値が、互いに異なる設定流量に対して同じ値に設定されているので、互いに異なる設定流量に対する閾値の調整や、互いに異なる設定流量に対する閾値を供給制御部45に読み込ませる動作など不要にすることができる。
【0055】
さらに、供給制御部45が、駆動信号値に加えて液面センサ213からの検出値に基づいて電磁開閉弁22に制御信号を出力するように構成されているので、設定流量が小さい場合であっても、液面センサの検出値に基づいて液体材料の供給を制御することができ、種々の設定流量に対して液体材料の供給を適切に制御することができる。
【0056】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0057】
例えば、前記実施形態では、流量調整弁32がノーマルオープンタイプのものである場合について説明したが、流量調整弁32がノーマルクローズタイプのものである場合、気化器21内の液体材料の減少に伴い気化器21内の圧力が低下すると、弁制御部43から流量調整弁32に出力される駆動信号値は大きくなる。この場合、供給制御部45の機能としては、駆動信号値が増加して閾値を上回った場合に、電磁開閉弁22に制御信号を出力して液体材料の供給を開始する態様が挙げられる。
【0058】
また、制御装置4は、設定流量に基づいて、供給制御部45による電磁開閉弁22の制御態様を、駆動信号値に基づいて電磁開閉弁22に制御信号を出力する第1制御態様と、液面センサ213からの検出値に基づいて電磁開閉弁22に制御信号を出力する第2制御態様とに切り替える制御態様切替部を備えていても良い。なお、設定流量の代わりに流量算出部42により算出された測定流量を用いても良い。
具体的にこの制御態様切替部は、設定流量と予め設定された第1流量とを比較して、設定流量が第1流量よりも大きい場合には、供給制御部45を第1制御態様にするとともに、設定流量が第1流量よりも小さい場合には、供給制御部45の制御態様を第1制御態様から第2制御態様にするように構成されたものが挙げられる。
さらに制御態様切替部としては、第1流量よりも大きい所定の第2流量よりも、設定流量がさらに大きい場合は、供給制御部45の制御態様を第1制御態様から第2制御態様に切り替えるように構成されていても良い。
【0059】
前記実施形態では、マスフローコントローラ3の動作を制御するための設定流量受付部41、流量算出部42、及び弁制御部43としての機能と、気化器21への液体材料の供給を制御するための駆動信号値取得部44、供給制御部45、及び液面取得部46としての機能とを共通の制御装置4が備えていたが、これらを互いに異なる2又はそれ以上の制御装置が備えていても良い。
【0060】
加えて、第1ボディブロックB1や第2ボディブロックB2を、その長手方向が上下方向(鉛直方向)を向くように配置していたが、第1ボディブロックB1や第2ボディブロックB2を、その長手方向が水平方向を向くように配置しても構わない。さらに加えて、第1ボディブロックB1と第2ボディブロックB2とは一体のブロックであっても良い。
【0061】
また、流量調整弁への印加電圧や印加電流などの駆動信号値に基づいて流量調整弁の上流側における流体の流量や圧力を制御する方法は、気化システムに限らず種々の流体制御システムに適用可能であり、これにより圧力センサを用いることなく流体を制御することができるようになる。
【0062】
さらに、前記実施形態の気化システムは液体材料を気化するために用いられていたが、固体材料を例えば溶かして液体にしたものを気化するために用いても良い。
【0063】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
100・・・気化システム
21 ・・・気化器
22 ・・・供給量制御機器
32 ・・・流量調整弁
43 ・・・弁制御部
44 ・・・駆動信号値取得部
45 ・・・供給制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6