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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】基板洗浄装置、及び基板洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220908BHJP
   B08B 1/00 20060101ALI20220908BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20220908BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01L21/304 644Z
H01L21/304 644A
B08B1/00
B08B3/02 B
B08B3/04 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018048217
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2019161107
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】高東 智佳子
(72)【発明者】
【氏名】福永 明
(72)【発明者】
【氏名】倉下 将光
(72)【発明者】
【氏名】宇野 恵
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 聡美
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-273058(JP,A)
【文献】特開平09-092633(JP,A)
【文献】特開平10-109074(JP,A)
【文献】特開2015-065379(JP,A)
【文献】特開平10-092781(JP,A)
【文献】特開2010-021457(JP,A)
【文献】特開2012-199407(JP,A)
【文献】特表2008-515171(JP,A)
【文献】特開2005-079216(JP,A)
【文献】特開2006-339434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 1/00 -13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に接触して当該基板を洗浄するための洗浄具と、
前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするためのセルフクリーニング部材と、
前記洗浄具を回転させるための洗浄具回転機構と、
前記洗浄具を保持する洗浄具保持機構であって、前記洗浄具を前記基板に押し付けることができると共に、前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に押し付けることができる、洗浄具保持機構と、
前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材と接触しているときに前記洗浄具回転機構が前記洗浄具を回転させるトルクが、前記洗浄具が前記基板を洗浄するときに前記洗浄具回転機構が前記洗浄具を回転させる基板洗浄時トルクより大きい所定トルクとなるように、前記洗浄具の前記セルフクリーニング部材への押付力を制御する制御部と、
を備える基板洗浄装置。
【請求項2】
基板の表面に接触して当該基板を洗浄するための洗浄具と、
前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするためのセルフクリーニング部材と、
前記洗浄具を回転させるための洗浄具回転機構と、
前記洗浄具を保持する洗浄具保持機構であって、前記洗浄具を前記基板に押し付けることができると共に、前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に押し付けることができる、洗浄具保持機構と、
前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材と接触しているときに、前記洗浄具が第1回転速度で回転しているときには前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材に第1押付力で押し付けられるように前記洗浄具保持機構を制御し、前記洗浄具が前記第1回転速度より大きい第2回転速度で回転しているときには前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材に前記第1押付力より大きい第2押付力で押し付けられるように前記洗浄具保持機構を制御する制御部と、
を備える基板洗浄装置。
【請求項3】
基板の表面に接触して当該基板を洗浄するための洗浄具と、
前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするためのセルフクリーニング部材と、
前記洗浄具を回転させるための洗浄具回転機構と、
前記洗浄具を保持する洗浄具保持機構であって、前記洗浄具を前記基板に押し付けることができると共に、前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に押し付けることができる、洗浄具保持機構と、
液体中で又は液体の供給を伴って前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材と接触しているときに、前記液体が第1温度であるときには前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材に第1押付力で押し付けられるように前記洗浄具保持機構を制御し、前記液体が前記第1温度より高い第2温度であるときには前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材に前記第1押付力より大きい第2押付力で押し付けられるように前記洗浄具保持機構を制御する制御部と、
を備える基板洗浄装置。
【請求項4】
基板の表面に接触して当該基板を洗浄するための洗浄具と、
第1の材料で形成され、前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするための第1のセルフクリーニング部材と、
第2の材料で形成され、前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするための第2のセルフクリーニング部材と、
を備え、
外部入力に基づいて前記第1のセルフクリーニング部材と前記第2のセルフクリーニング部材との一方を選択し、前記洗浄具を前記選択したセルフクリーニング部材と接触させることにより当該洗浄具をセルフクリーニングする、基板洗浄装置。
【請求項5】
基板の表面に接触して当該基板を洗浄するための洗浄具と、
第1の材料で形成され、前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするための第1のセルフクリーニング部材と、
第2の材料で形成され、前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするための第2のセルフクリーニング部材と、
を備え、
前記洗浄具を前記第1のセルフクリーニング部材に接触させた後に当該洗浄具を前記第2のセルフクリーニング部材に接触させることにより当該洗浄具をセルフクリーニングする、基板洗浄装置。
【請求項6】
前記第1の材料は、前記洗浄具をセルフクリーニングする際に、前記第2の材料に比して表面自由エネルギーの水素結合性成分が多く分散力成分が少ない材料である、請求項4又は5に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記第1の材料は、無機酸化物系材料または分子構造内に極性基を有する第1の有機高分子系材料であり、
前記第2の材料は、非極性の第2の有機高分子系材料である、
請求項4から6の何れか1項に記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄具のセルフクリーニングは、第1時間における短時間セルフクリーニングと、前記第1時間より長い第2時間における長時間セルフクリーニングとがあり、
前記短時間セルフクリーニングにおいては超純水が使用され、前記長時間セルフクリーニングにおいては薬液処理ののち超純水リンスが使用されるか、あるいは、超純水処理のみが行われる
請求項1から7の何れか1項に記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
液体が貯められ、前記セルフクリーニング部材を収容する液槽と、
前記液体に超音波振動を与える振動部と、
を備える請求項1から8の何れか1項に記載の基板洗浄装置。
【請求項10】
前記洗浄具をセルフクリーニングするときに当該洗浄具に向けて気体または液体を噴出する噴出部を更に備える、
請求項1から9の何れか1項に記載の基板洗浄装置。
【請求項11】
洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を基板の表面に接触させて当該基板を洗浄する基板洗浄ステップと、
前記洗浄具を回転させると共に前記洗浄具をセルフクリーニング部材に接触させて当該洗浄具をセルフクリーニングするセルフクリーニングステップと、
を含み、
前記セルフクリーニングステップでは、前記洗浄具を回転させるトルクが、前記基板洗浄ステップにおいて前記洗浄具を回転させる基板洗浄時トルクより大きい所定トルクとなるように、前記洗浄具の前記セルフクリーニング部材への押付力を制御する、
基板洗浄方法。
【請求項12】
洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を基板の表面に接触させて当該基板を洗浄する基板洗浄ステップと、
前記洗浄具を回転させると共に前記洗浄具をセルフクリーニング部材に接触させて当該洗浄具をセルフクリーニングするセルフクリーニングステップと、
を含み、
前記セルフクリーニングステップでは、前記洗浄具が第1回転速度で回転しているときには前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に第1押付力で押し付け、前記洗浄具が前記第1回転速度より大きい第2回転速度で回転しているときには前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に前記第1押付力より大きい第2押付力で押し付ける、
基板洗浄方法。
【請求項13】
洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を基板の表面に接触させて当該基板を洗浄する基板洗浄ステップと、
前記洗浄具を回転させると共に液体中で又は液体の供給を伴って前記洗浄具をセルフクリーニング部材に接触させて当該洗浄具をセルフクリーニングするセルフクリーニングステップと、
を含み、
前記セルフクリーニングステップでは、前記液体が第1温度であるときには前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に第1押付力で押し付け、前記液体が前記第1温度より高い第2温度であるときには前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に前記第1押付力より大きい第2押付力で押し付ける、
基板洗浄方法。
【請求項14】
洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を基板の表面に接触させて当該基板を洗浄する基板洗浄ステップと、
外部入力に基づいて、第1の材料で形成された第1のセルフクリーニング部材と、第2の材料で形成された第2のセルフクリーニング部材との一方を選択する選択ステップと、
前記洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を前記選択ステップで選択されたセルフクリーニング部材に接触させて当該洗浄具をセルフクリーニングするセルフクリーニングステップと、
を含む基板洗浄方法。
【請求項15】
洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を基板の表面に接触させて当該基板を洗浄する基板洗浄ステップと、
前記洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を第1の材料で形成された第1のセルフクリーニング部材に接触させて当該洗浄具をセルフクリーニングする第1のセルフクリーニングステップと、
前記第1のセルフクリーニングステップの後に、前記洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を第2の材料で形成された第2のセルフクリーニング部材に接触させて当該洗浄具をセルフクリーニングする第2のセルフクリーニングステップと、
を含む基板洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄装置、及び基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、シリコン基板上に物性の異なる様々な膜が形成され、これら膜に様々な加工が施されることで微細な金属配線が形成される。例えば、ダマシン配線形成工程においては、膜に配線溝を形成し、この配線溝にCuなどの金属を埋め込む。その後、化学機械研磨(CMP)により余分な金属を除去することで金属配線が形成される。一般に、基板を研磨するCMP装置(研磨装置)は、研磨された基板を洗浄する基板洗浄装置を備えている。基板の洗浄は、基板を回転させながら、ロールスポンジまたはペンスポンジなどの洗浄具を基板に接触させることによって行われる。
【0003】
洗浄具で基板を洗浄するにつれて、CMPで使用された砥粒または研磨屑(以下、合わせて「処理屑」ともいう)が洗浄具の表面および内部に蓄積される。そこで、このような処理屑を洗浄具から取り除くために、定期的に洗浄具をセルフクリーニングすることが行われている。この洗浄具のセルフクリーニングは、洗浄具を回転させながら、ブラシまたはプレートといったセルフクリーニング部材に接触させることによって行われる。また、新規に交換したブラシで研磨後の基板を洗浄する前に、当該ブラシをイニシャライズする目的で、ブレークインと称する上記セルフクリーニングと同様の処理を行うことも行われる。以下、これらを合わせてセルフクリーニングと称する。
【0004】
こうした洗浄具のセルフクリーニングは、例えば、基板間(1枚の基板の洗浄毎)に比較的短い時間でなされ、ロット間(所定数の基板の洗浄毎)並びにブレークイン処理時に比較的長い時間でなされる。また、基板間のセルフクリーニングでは洗浄液として超純水が使用されることが多く、ロット間のセルフクリーニング並びにブレークイン処理時では洗浄液として薬液が使用される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-12238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
洗浄具のセルフクリーニングは基板の処理工程中ないし工程間に実行されるため、セルフクリーニングにかかる時間が長くなると、基板の処理全体の時間効率が低下してしまう。一方、セルフクリーニングを短時間にすることによって洗浄具のセルフクリーニング効果が低下すると、洗浄具に残った処理屑が基板を汚染する。
【0007】
セルフクリーニングの効果を高めるために、洗浄具の回転速度、又は洗浄液の温度などを調整することが考えられる。つまり、洗浄具の回転速度が大きいほど、洗浄具とセルフクリーニング部材との接触部の接触頻度が大きくなり、洗浄具のセルフクリーニング効果が高くなると考えられる。また、洗浄液の温度が高いほど、研磨屑が洗浄液に排出されやすくなり、洗浄具のセルフクリーニング効果が高くなると考えられる。
【0008】
また、セルフクリーニングの効果は、洗浄具とセルフクリーニングとの摩擦に影響される。洗浄具とセルフクリーニング部材との摩擦が不足すると、洗浄具から処理屑が排出されず十分なセルフクリーニング効果が得られない。一方、洗浄具とセルフクリーニング部
材との摩擦が過度に大きいと、洗浄具の摩耗劣化の原因となり得る。そして、本発明者の研究により、洗浄具の押圧、回転速度、及び洗浄液の温度は、洗浄具とセルフクリーニング部材との摩擦に様々な形で影響することが判明した。
【0009】
本発明は上記課題の少なくとも一部に鑑みてなされたものであり、短時間で効果の高い洗浄具のセルフクリーニングを行うことができる基板洗浄装置または基板洗浄方法を提供することを目的の1つとする。また、本発明は、洗浄具を好適な押付力でセルフクリーニング部材に押し付けて洗浄具をセルフクリーニングすることができる基板洗浄装置または基板洗浄方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(形態1)形態1によれば、基板洗浄装置が提案され、前記基板洗浄装置は、基板の表面に接触して当該基板を洗浄するための洗浄具と、前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするためのセルフクリーニング部材と、前記洗浄具を回転させるための洗浄具回転機構と、前記洗浄具を保持する洗浄具保持機構であって、前記洗浄具を前記基板に押し付けることができると共に、前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に押し付けることができる、洗浄具保持機構と、前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材と接触しているときに前記洗浄具回転機構が前記洗浄具を回転させるトルクが、前記洗浄具が前記基板を洗浄するときに前記洗浄具回転機構が前記洗浄具を回転させる基板洗浄時トルク以上の所定トルクとなるように、前記洗浄具の前記セルフクリーニング部材への押付力を制御する制御部と、を備える。形態1によれば、洗浄具をセルフクリーニング部材に好適な押付力で押し付けて、洗浄具をセルフクリーニングすることができる。
【0011】
(形態2)形態2によれば、基板洗浄装置が提案され、基板の表面に接触して当該基板を洗浄するための洗浄具と、前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするためのセルフクリーニング部材と、前記洗浄具を回転させるための洗浄具回転機構と、前記洗浄具を保持する洗浄具保持機構であって、前記洗浄具を前記基板に押し付けることができると共に、前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に押し付けることができる、洗浄具保持機構と、前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材と接触しているときに、前記洗浄具が第1回転速度で回転しているときには前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材に第1押付力で押し付けられるように前記洗浄具保持機構を制御し、前記洗浄具が前記第1回転速度より大きい第2回転速度で回転しているときには前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材に前記第1押付力より大きい第2押付力で押し付けられるように前記洗浄具保持機構を制御する制御部と、を備える。形態2は、洗浄具の回転速度が大きいほど、洗浄具とセルフクリーニング部材との摩擦が小さくなる傾向があるという発見に基づく。形態2によれば、洗浄具をセルフクリーニング部材に好適な押付力で押し付けて、洗浄具をセルフクリーニングすることができる。
【0012】
(形態3)形態3によれば、基板洗浄装置が提案され、前記基板洗浄装置は、基板の表面に接触して当該基板を洗浄するための洗浄具と、前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするためのセルフクリーニング部材と、前記洗浄具を回転させるための洗浄具回転機構と、前記洗浄具を保持する洗浄具保持機構であって、前記洗浄具を前記基板に押し付けることができると共に、前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に押し付けることができる、洗浄具保持機構と、液体中で又は液体の供給を伴って前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材と接触しているときに、前記液体が第1温度であるときには前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材に第1押付力で押し付けられるように前記洗浄具保持機構を制御し、前記液体が前記第1温度より高い第2温度であるときには前記洗浄具が前記セルフクリーニング部材に前記第1押付力より大きい第2押付力で押し付けられるように前記洗浄具保持機構を制御する制御部と、を備える。形態3は、セルフクリーニングに使用する液体の温度が高いほど、洗浄具とセルフクリーニング部材との摩擦が小さくな
るという発見に基づく。形態3によれば、洗浄具をセルフクリーニング部材に好適な押付力で押し付けて、洗浄具をセルフクリーニングすることができる。
【0013】
(形態4)形態4によれば、基板洗浄装置が提案され、前記基板洗浄装置は、基板の表面に接触して当該基板を洗浄するための洗浄具と、第1の材料で形成され、前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするための第1のセルフクリーニング部材と、第2の材料で形成され、前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするための第2のセルフクリーニング部材と、を備え、外部入力に基づいて前記第1のセルフクリーニング部材と前記第2のセルフクリーニング部材との一方を選択し、前記洗浄具を前記選択したセルフクリーニング部材と接触させることにより当該洗浄具をセルフクリーニングする。形態4によれば、外部入力に基づいてセルフクリーニング部材を選択して、洗浄具のセルフクリーニングを行うことができる。これにより、短時間で効果の高い洗浄具のセルフクリーニングを行うことができる。
【0014】
(形態5)形態5によれば、基板洗浄装置が提案され、前記基板洗浄装置は、基板の表面に接触して当該基板を洗浄するための洗浄具と、第1の材料で形成され、前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするための第1のセルフクリーニング部材と、第2の材料で形成され、前記洗浄具に接触して当該洗浄具をセルフクリーニングするための第2のセルフクリーニング部材と、を備え、前記洗浄具を前記第1のセルフクリーニング部材に接触させた後に当該洗浄具を前記第2のセルフクリーニング部材に接触させることにより当該洗浄具をセルフクリーニングする。形態5によれば、2つのセルフクリーニング部材を使用して、洗浄具のセルフクリーニングが行われる。これにより、洗浄具のセルフクリーニングの効果を高めることができる。
【0015】
(形態6)形態6によれば、形態4又は5の基板洗浄装置において、前記第1の材料は、前記洗浄具をセルフクリーニングする際に、前記第2の材料に比して表面自由エネルギーの水素結合性成分が多く分散力成分が少ない材料である。形態6によれば、先ず第1のセルフクリーニング部材を使用して砥粒のように表面自由エネルギーの水素結合性成分が多い処理屑を洗浄具から取り除くことができ、続いて第2のセルフクリーニング部材を使用して有機錯体のように表面自由エネルギーの分散力成分が多い処理屑を洗浄具から取り除くことができる。
【0016】
(形態7)形態7によれば、形態4から6の何れかの基板洗浄装置において、前記第1の材料は、無機酸化物系材料または分子構造内に極性基を有する第1の有機高分子系材料であり、前記第2の材料は、非極性の第2の有機高分子系材料である。
【0017】
(形態8)形態8によれば、形態1から7の何れかの基板洗浄装置において、前記洗浄具のセルフクリーニングは、第1時間における短時間セルフクリーニングと、前記第1時間より長い第2時間における長時間セルフクリーニングとがあり、前記短時間セルフクリーニングにおいては超純水が使用され、前記長時間セルフクリーニングにおいては薬液を使用してもよく、薬液を使用した場合は超純水によるリンス処理が引き続いて行われる。いずれにおいても液温を上げて洗浄効果を高めることを行っても良い。なお、薬液を使用したのち超純水でリンスする場合に、その前後で洗浄トルクが変化することがあるが、その場合もウエハ洗浄時のトルクと同等以上になるよう押圧ないし回転数を加減する。
【0018】
(形態9)形態9によれば、形態1から8の何れかの基板洗浄装置において、液体が貯められ、前記セルフクリーニング部材を収容する液槽と、前記液体に超音波振動を与える振動部と、を備える。
【0019】
(形態10)形態10によれば、形態1から9の何れかの基板洗浄装置において、前記洗
浄具をセルフクリーニングするときに当該洗浄具に向けて気体または液体を噴出する噴出部を更に備える。
【0020】
(形態11)形態11によれば、基板洗浄方法が提案され、前記基板洗浄方法は、洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を基板の表面に接触させて当該基板を洗浄する基板洗浄ステップと、前記洗浄具を回転させると共に前記洗浄具をセルフクリーニング部材に接触させて当該洗浄具をセルフクリーニングするセルフクリーニングステップと、を含み、前記セルフクリーニングステップでは、前記洗浄具を回転させるトルクが、前記基板洗浄ステップにおいて前記洗浄具を回転させる基板洗浄時トルク以上の所定トルクとなるように、前記洗浄具の前記セルフクリーニング部材への押付力を制御する。形態11によれば、洗浄具をセルフクリーニング部材に好適な押付力で押し付けて、洗浄具をセルフクリーニングすることができる。
【0021】
(形態12)形態12によれば、基板洗浄方法が提案され、前記基板洗浄方法は、洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を基板の表面に接触させて当該基板を洗浄する基板洗浄ステップと、前記洗浄具を回転させると共に前記洗浄具をセルフクリーニング部材に接触させて当該洗浄具をセルフクリーニングするセルフクリーニングステップと、を含み、前記セルフクリーニングステップでは、前記洗浄具が第1回転速度で回転しているときには前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に第1押付力で押し付け、前記洗浄具が前記第1回転速度より大きい第2回転速度で回転しているときには前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に前記第1押付力より大きい第2押付力で押し付ける。形態12によれば、洗浄具をセルフクリーニング部材に好適な押付力で押し付けて、洗浄具をセルフクリーニングすることができる。
【0022】
(形態13)形態13によれば、基板洗浄方法が提案され、前記基板洗浄方法は、洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を基板の表面に接触させて当該基板を洗浄する基板洗浄ステップと、前記洗浄具を回転させると共に液体中で又は液体の供給を伴って前記洗浄具を液槽内のセルフクリーニング部材に接触させて当該洗浄具をセルフクリーニングするセルフクリーニングステップと、を含み、前記セルフクリーニングステップでは、前記液体が第1温度であるときには前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に第1押付力で押し付け、前記液体が前記第1温度より高い第2温度であるときには前記洗浄具を前記セルフクリーニング部材に前記第1押付力より大きい第2押付力で押し付ける。形態13によれば、洗浄具をセルフクリーニング部材に好適な押付力で押し付けて、洗浄具をセルフクリーニングすることができる。
【0023】
(形態14)形態14によれば、基板洗浄方法が提案され、前記基板洗浄方法は、洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を基板の表面に接触させて当該基板を洗浄する基板洗浄ステップと、外部入力に基づいて、第1の材料で形成された第1のセルフクリーニング部材と、第2の材料で形成された第2のセルフクリーニング部材との一方を選択する選択ステップと、前記洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を前記選択ステップで選択されたセルフクリーニング部材に接触させて当該洗浄具をセルフクリーニングするセルフクリーニングステップと、を含む。形態14によれば、外部入力に基づいてセルフクリーニング部材を選択して、洗浄具のセルフクリーニングを行うことができる。これにより、短時間で効果の高い洗浄具のセルフクリーニングを行うことができる。
【0024】
(形態15)形態15によれば、基板洗浄方法が提案され、前記基板洗浄方法は、洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を基板の表面に接触させて当該基板を洗浄する基板洗浄ステップと、前記洗浄具を回転させると共に前記洗浄具を第1の材料で形成された第1のセルフクリーニング部材に接触させて当該洗浄具をセルフクリーニングする第1のセルフクリーニングステップと、前記第1のセルフクリーニングステップの後に、前記洗浄具を回
転させると共に前記洗浄具を第2の材料で形成された第2のセルフクリーニング部材に接触させて当該洗浄具をセルフクリーニングする第2のセルフクリーニングステップと、を含む。形態15によれば、2つのセルフクリーニング部材を使用して、洗浄具のセルフクリーニングが行われる。これにより、洗浄具のセルフクリーニングの効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態にかかる基板洗浄装置を含む基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
図2】実施形態にかかる基板洗浄装置の概略構成を示す斜視図である。
図3】別の一例にかかる基板洗浄装置の概略構成を示す斜視図である。
図4】ペン部材のセルフクリーニングを模式的に示す図である。
図5】ロール部材のセルフクリーニングを模式的に示す図である。
図6】第1実施形態の制御部により実行されるセルフクリーニング時目標押付力設定処理の一例を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態の制御部により実行されるセルフクリーニング時目標押付力設定処理の一例を示すフローチャートである。
図8】回転数Ns及び温度Tcと目標押付力Pp*との関係の一例を示す図である。
図9】第3実施形態における液槽とセルフクリーニング部材との一例を示す図である。
図10】第3実施形態の制御部により実行されるセルフクリーニング部材選択処理の一例を示すフローチャートである。
図11】第4実施形態の制御部により実行されるセルフクリーニング処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。本実施形態の基板洗浄装置は、半導体ウエハ等の基板を処理する基板処理装置の一部として利用することができる。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、実施形態にかかる基板洗浄装置を含む基板処理装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、基板処理装置は10、ハウジング110と、ハウジング110に隣接して配置されたロードポート112と、を有している。ロードポート112には、多数の基板Wf(図2等参照)をストックするためのオープンカセット、SMIF(Standard
Manufacturing Interface)ポッド、又はFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができる。SMIFポッド及びFOUPは、内部に基板カセットを収納し、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。
【0028】
ハウジング110の内部には、複数(図1に示す態様では4つ)の研磨ユニット114a~114dと、研磨後の基板Wfを洗浄する第1洗浄ユニット116及び第2洗浄ユニット118と、洗浄後の基板Wfを乾燥させる乾燥ユニット120とが収容されている。図1に示す例では、研磨ユニット114a~114dが基板処理装置10の長手方向に沿って配列され、洗浄ユニット116、118、及び乾燥ユニット120が研磨ユニット114a~114dと並列に配置されている。
【0029】
ロードポート112と、ロードポート112側に位置する研磨ユニット114a及び乾燥ユニット120との間には、第1搬送ロボット122が配置されている。また、研磨ユ
ニット114a~114dと、洗浄ユニット116、118及び乾燥ユニット120との間に、搬送ユニット124が配置されている。第1搬送ロボット122は、研磨前の基板Wfをロードポート112から受け取って搬送ユニット124に受け渡したり、乾燥ユニット120から取り出された乾燥後の基板Wfを搬送ユニット124から受け取ったりする。
【0030】
研磨ユニット114a~114dは、基板Wfの研磨(平坦化)が行われる領域である。研磨ユニット114a~114dについては、本発明の中核をなさないため詳細な説明を省略する。
【0031】
第1洗浄ユニット116と第2洗浄ユニット118との間に、これら第1洗浄ユニット116と第2洗浄ユニット118の間で基板Wfの受け渡しを行う第2搬送ロボット126が配置されている。また、第2洗浄ユニット118と乾燥ユニット120との間に、これら第2洗浄ユニット118と乾燥ユニット120の間で基板Wfの受け渡しを行う第3搬送ユニット128が配置されている。さらに、ハウジング110の内部には、基板処理装置10の各機器の動きを制御する制御部50が配置されている。本実施形態では、ハウジング110の内部に制御部50が配置されている。ただし、こうした例に限られることはなく、ハウジング110の外部に制御部50が配置されてもよい。本実施形態では、制御部50は、外部入力を受け入れる入力部52を有している。ここで、外部入力には、ユーザによる機械的な操作、並びに有線または無線による外部装置からの信号の入力が含まれ得る。
【0032】
本実施形態の洗浄ユニット116、118は、後述の洗浄具を自転させながら基板Wfの表面に接触させることにより、基板Wfを洗浄する。また、洗浄ユニット116、118は、洗浄具と合わせて、二流体ジェットにより基板Wfの表面を洗浄する二流体ジェット洗浄装置を使用してもよい。
【0033】
乾燥ユニット120は、一例として、回転する基板Wfに向けて、図示しないノズルからIPA蒸気を噴出することにより基板Wfを乾燥させる。また乾燥ユニット120は、基板Wfを高速で回転させて遠心力によって基板Wfを乾燥させてもよい。
【0034】
図2は、実施形態にかかる基板洗浄装置の概略構成を示す斜視図であり、図3は、別の一例にかかる基板洗浄装置の概略構成を示す斜視図である。図示するように、基板洗浄装置20(基板洗浄ユニット116、118)は、基板Wfを保持して回転させる基板回転機構(本実施形態では後述する支持部材40を参照)と、基板Wfに洗浄液を供給する洗浄液供給部42と、を有している。本実施の形態の洗浄液には、超純水(DIW)等のリンス液と、アンモニア過酸化水素(SC1)、塩酸過酸化水素(SC2)、硫酸過酸化水素(SPM)、硫酸加水、フッ酸等の薬液が含まれている。本実施の形態で特に断りのない限り、洗浄液は、リンス液又は薬液のいずれかを意味している。
【0035】
基板Wfは、その中心軸(中心Oを通って基板Wfの表面に垂直な軸)を回転軸として回転する。本実施形態では、主に、基板Wfの表面が水平方向に沿って延在し、回転軸が鉛直方向に延びた態様を用いて説明するが、これに限られることはない。本実施形態の基板回転機構は、基板Wfの外周を支持する4つの支持部材40を有する。支持部材40は例えばスピンドル、チャック等である。このスピンドル、チャック等の回転により、基板Wfを回転させることができる。
【0036】
基板洗浄装置20は、基板Wfと接触して基板Wfを洗浄する洗浄具11、洗浄具11を回転させる洗浄具回転機構31、及び洗浄具11を保持する洗浄具保持機構32を備えている。洗浄具11としては、基板Wfの表面に対して略垂直な回転軸回りに自転するペ
ン部材11A(図2参照)を用いることができる。また、洗浄具11としては、基板Wfの直径のほぼ全長にわたって直線状に延びるロール部材11B(図2図3参照)を用いることができる。
【0037】
洗浄具回転機構31は、洗浄具11としてペン部材11Aが用いられている場合には洗浄具11を基板Wfの表面に対して略垂直な回転軸回りに回転させる。また、洗浄具回転機構31は、洗浄具11としてロール部材11Bが用いられている場合には洗浄具11を基板Wfの表面に平行な回転軸回りに回転させる。洗浄具回転機構31としては、種々の機構を採用することができ、一例としてDCモータ及びリンク機構を採用することができる。
【0038】
洗浄具保持機構32は、洗浄具11及び洗浄具回転機構31を基板Wfの表面に対して垂直に移動させて、洗浄具11を基板Wfに押し付けたり基板Wfから離間させたりすることができる。洗浄具保持機構32としては、種々の機構を採用することができ、一例としてボールねじを用いたモータ駆動機構、又はエアシリンダ等を採用することができる。また、洗浄具保持機構32は、洗浄具11及び洗浄具回転機構31を基板Wfの表面に対して平行に移動させて、洗浄具11と基板Wfとの接触部を変更したり、洗浄具11を図示しない待機位置へと移動させたりすることができる。
【0039】
なお、図2に示す例では、ペン部材11Aが、基板Wfの上面(図2の上面)を洗浄し、ロール部材11Bが基板Wfの下面(図2の下面)を洗浄する。また、図3に示す例では、ロール部材11Bが基板Wfの表面および裏面を洗浄する。ただし、洗浄具11が基板Wfの表面に接触することにより基板Wfが洗浄されればよく、基板洗浄装置20は、図2または図3の例に限定されるものではない。
【0040】
洗浄具11が交換される等、新規な洗浄具11が使用される場合、洗浄具11のブレークインが行われる。洗浄具11は初期状態では乾燥している場合もあり、このまま洗浄処理に使用すると、基板Wfを損傷させるおそれがある。また、湿潤状態で供される場合であっても、スポンジ自体に汚染の原因となるパーティクルが付着している場合がある。このため、水を浸みこませて揉み解したり、パーティクルを除去するように初期慣らし(ブレークイン)が行われる。このブレークインが行われた洗浄具11を用いて洗浄処理が実行し、基板Wfに対して洗浄後の逆汚染チェックが行われる。逆汚染とは、清浄な基板Wfが洗浄具11によって汚染されてしまうことである。逆汚染が生じる場合、以後の処理プロセスに重大な悪影響を与えるので、この逆汚染チェックは重要である。
【0041】
また、洗浄具11で基板Wfを洗浄するにつれて、基板Wfの研磨の際の処理屑が洗浄具11の表面および内部に蓄積される。このため、定期的に洗浄具11のセルフクリーニングが行われる。このセルフクリーニングは、洗浄具11をセルフクリーニング部材60に接触させることによって行われる。洗浄具11のセルフクリーニングは、基板間(1枚の基板の洗浄毎)に比較的短い時間(第1時間)でなされ、ロット間(所定数の基板の洗浄毎)に比較的長い時間(第2時間)でなされる。また、本実施形態では、基板間のセルフクリーニングでは、セルフクリーニングに使用する液体として純水(DIW)等が使用される。一方、ロット間のセルフクリーニングでは、アンモニア過酸化水素(SC1)、塩酸過酸化水素(SC2)、硫酸過酸化水素(SPM)、硫酸加水、フッ酸等の薬液が使用された後に、超純水が使用される。ただし、こうした例に限定されず、基板間のセルフクリーニングにおいて薬液が使用されてもよいし、ロット間のセルフクリーニングにおいて薬液が使用されなくてもよい。なお、以下では、「セルフクリーニング」は、「ブレークイン」を含むものとする。
【0042】
図4は、ペン部材11Aのセルフクリーニングを模式的に示す図であり、図5は、ロー
ル部材11Bのセルフクリーニングを模式的に示す図である。図4及び図5に示すように、セルフクリーニング部材60が液槽62内に配置されている。セルフクリーニング部材60は、例えば石英板、サファイア板といった無機酸化物系材料、又はPTFE,PVDF,PFA,PPS,PEEK,PMMAといった耐薬品性、低溶出性の良好な有機高分子系材料により形成される。また、液槽62には、超純水(DIW)、又は、アンモニア過酸化水素(SC1)、塩酸過酸化水素(SC2)、硫酸過酸化水素(SPM)、硫酸加水、若しくはフッ酸等の薬液といった液体64が貯められている。液槽62では、液体移送機構65によって、清浄な液体が供給される、又は内部の液体が清浄されながら循環されることが好ましい。また、液槽62に貯められる液体64は、温度調節機構66によって温度が調節できることが好ましい。温度調節機構66としては、例えばヒータを用いることができる。さらに、基板洗浄装置20は、洗浄具11のセルフクリーニングの際に液槽62内に超音波振動を与える振動部67を備えるとよい。また、基板洗浄装置20は、洗浄具11のセルフクリーニングの際に洗浄具11に向けて気体または液体を噴出する噴出部68を備えるとよい。
【0043】
なお、図4及び図5に示す例では、セルフクリーニング部材60が液槽62内に配置されるものとした。しかし、こうした例に限定されず、液槽62が備えられなくてもよい。ただし、液槽62が備えられない場合であっても、液体移送機構65による液体64の供給を伴って、つまり例えば液体64が連続的に掛け流されながら、洗浄具11のセルフクリーニングが行われてもよい。また、こうした場合においても、温度調節機構66によって液体64の温度が調節できるとよい。
【0044】
図4に示すように、ペン部材11Aをセルフクリーニングするときには、洗浄具回転機構31がペン部材11Aを回転させると共に、洗浄具保持機構32がペン部材11Aをセルフクリーニング部材60に押し付ける。なお、図4では、セルフクリーニング部材60の表面がペン部材11Aの回転軸に対して垂直な例を示しているが、こうした例に限定されるものではない。また、図5に示すように、ロール部材11Bをセルフクリーニングするときには、洗浄具回転機構31がロール部材11Bを回転させると共に、洗浄具保持機構32がロール部材11Bをセルフクリーニング部材60に押し付ける。なお、図5に示す例では、セルフクリーニング部材60の表面が鉛直方向に対して傾斜しており、ロール部材11Bが鉛直方向に移動してセルフクリーニング部材に接触するものとしているが、こうした例に限定されるものではない。
【0045】
図6は、実施形態の制御部50により実行されるセルフクリーニング時目標押付力設定処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、洗浄具11をセルフクリーニング部材60と接触させるとき、つまり洗浄具11をセルフクリーニングするときに所定時間毎(例えば、数十msec毎)に実行される。
【0046】
この処理が開始されると、まず制御部50は、洗浄具回転機構31の出力トルクTrを読み込む(S12)。出力トルクTrは、洗浄具11とセルフクリーニング部材60とが接触しているときに洗浄具回転機構31が洗浄具11を回転させるトルクであり、例えば洗浄具回転機構31の図示しないモータに流れる電流値に基づいて検出することができる。また、出力トルクTrは、制御部50による洗浄具回転機構31へのトルク指令を使用してもよい。
【0047】
続いて、制御部50は、出力トルクTrと所定の目標トルクTr*とに基づいて、洗浄具11をセルフクリーニング部材60に押し付ける目標押付力Pp*を設定して(S14)、本処理を終了する。ここで、目標トルクTr*は、予め決められた所定トルクであり、洗浄具11が基板Wfを洗浄するときに洗浄具11に作用するトルク(基板洗浄時トルク)以上のトルクである。目標トルクTr*は、外部入力によって設定可能としてもよい
。また、目標押付力Pp*の設定は、一例として、出力トルクTrと目標トルクTr*の差に基づいて、比例ゲインGp、及び積分ゲインGiを用いたPI演算、もしくは、比例ゲインGp、積分ゲインGi、及び微分ゲインGdを用いたPID演算により行うことができる。本処理を終了すると、制御部50は、洗浄具11が目標押付力Pp*でセルフクリーニング部材60に押し付けられるように洗浄具保持機構32を制御する。
【0048】
洗浄具11とセルフクリーニング部材60との摩擦は、洗浄具11のセルフクリーニング部材60への押付力Ppのみならず、洗浄具11の摩耗、洗浄具11の回転速度(回転数Ns)、液体64の種類および温度Tc、並びに、セルフクリーニング部材60の材質および形状などの条件によって変化する。洗浄具11とセルフクリーニング部材60との摩擦が不足すると、洗浄具11のセルフクリーニングにおいて十分な効果が得られなくなるおそれがある。こうした場合には、洗浄具11のセルフクリーニング不足により基板Wfの逆汚染が生じて以降の処理プロセスに悪影響を及ぼしたり、ブレークインのチェックにかかる時間およびコストが大きくなったりする。一方、洗浄具11とセルフクリーニング部材60との摩擦が過度に大きくなると、摩耗により洗浄具11が劣化する原因となる。これに対して、本実施形態の基板洗浄装置20では、洗浄具11とセルフクリーニング部材60とが接触しているときの洗浄具回転機構31の出力トルクTrが、基板洗浄時トルク以上の所定トルクとなるように、洗浄具11のセルフクリーニング部材60への押付力が制御される。そして、この所定トルクとして洗浄具11が劣化しないようなトルクが採用されることにより、洗浄具をセルフクリーニング部材60に好適な押付力で押し付けて、洗浄具11をセルフクリーニングすることができる。
【0049】
また、本実施形態の基板洗浄装置20によれば、目標トルクTr*が基板洗浄時トルク以上のトルクとされている。つまり、目標トルクTr*は、洗浄具11に処理屑が蓄積されるときに洗浄具11に作用しているトルク以上のトルクである。こうした目標トルクTr*を用いることにより、短時間で洗浄具11から処理屑を好適に取り除くことができる。
【0050】
(第2実施形態)
第2実施形態の基板処理装置10は、第1実施形態の基板処理装置10と同一の構成を備えており、重複する説明は省略する。第2実施形態の基板処理装置10は、図6に示す処理に代えて、図7に示すセルフクリーニング時目標押付力設定処理を実行する点で、第1実施形態の基板処理装置10と異なる。この図7に示す処理は、洗浄具11をセルフクリーニング部材60と接触させるとき、つまり洗浄具11をセルフクリーニングするときに、制御部50により所定時間毎(例えば、数十msec毎)に実行される。
【0051】
本処理が開始されると、制御部50は、洗浄具11の回転数Ns及び液体64の温度Tcを読み込む(S22)。洗浄具11の回転数Nsは、洗浄具11の回転数Nsを検出する図示しないセンサによる検出値、又は洗浄具回転機構31の回転数を検出する図示しないセンサによる検出値を使用することができる。また、洗浄具11の回転数Nsは、洗浄具回転機構31への回転数指令を使用してもよい。液体64の温度Tcは、液槽62に設けられた図示しない温度センサによる検出値を使用することができる。また、液体64の温度は、温度調節機構66による温度指令を使用してもよい。
【0052】
続いて、制御部50は、回転数Nsと温度Tcとに基づいて、洗浄具11をセルフクリーニング部材60に押し付ける目標押付力Pp*を設定して(S24)、本処理を終了する。このS24の処理では、回転数Nsが大きいほど目標押付力Pp*が大きくなる傾向に、且つ、液体64の温度Tcが高いほど目標押付力Pp*が大きくなる傾向に、目標押付力Pp*が設定される。図8は、回転数Ns及び温度Tcと目標押付力Pp*との関係の一例を示す図である。なお、図8では、回転数Ns又は温度Tcが大きくなるほど目標
押付力Pp*が線形で大きくなる例が示されているが、この例に限定されない。例えば、回転数Ns又は温度Tcが大きくなるほど目標押付力Pp*が段階的に大きくなってもよいし、回転数Ns又は温度Tcと目標押付力Pp*との関係が曲線状に示されてもよい。S24の処理は、一例として、回転数Nsと温度Tcと目標押付力Pp*との関係を実験等により予めマップとして定めておき、このマップと読み込んだ回転数Ns及び温度Tcとに基づいて行うことができる。ただし、こうした例に限定されず、制御部50は、回転数Nsと温度Tcとに基づいて、種々の方法で目標押付力Pp*を設定してもよい。本処理を終了すると、制御部50は、洗浄具11が目標押付力Pp*でセルフクリーニング部材60に押し付けられるように洗浄具保持機構32を制御する。
【0053】
本発明者の研究により、洗浄具11の回転数Nsが大きいほど、洗浄具11とセルフクリーニング部材60との摩擦が小さくなる傾向があることが発見された。このため、第2実施形態の基板洗浄装置20によれば、洗浄具11が第1回転速度Ns1で回転しているときには、洗浄具11がセルフクリーニング部材60に第1押付力Pp1で押し付けられる。また、洗浄具11が第1回転速度Ns1より大きい第2回転速度Ns2(Ns2>Ns1)で回転しているときには、洗浄具11がセルフクリーニング部材60に第1押付力Pp1より大きい第2押付力Pp2(Pp2>Pp1)で押し付けられる。これにより、洗浄具11の回転数Nsが大きいときに、洗浄具11とセルフクリーニング部材60との摩擦が不足して十分な効果が得られなくなることを抑制することができる。つまり、第2実施形態の基板洗浄装置20によれば、洗浄具11をセルフクリーニング部材60に好適な押付力で押し付けて、洗浄具11をセルフクリーニングすることができる。
【0054】
また、本発明者の研究により、液体64の温度Tcが高いほど、洗浄具11とセルフクリーニング部材60との摩擦が小さくなる傾向があることが発見された。このため、第2実施形態の基板洗浄装置20によれば、液体64の温度Tcが第1温度Tc1であるときには、洗浄具11がセルフクリーニング部材60に第1押付力Pp1で押し付けられる。また、液体64の温度Tcが第1温度Tc1より高い第2温度Tc2(Tc2>Tc1)であるときには、洗浄具11がセルフクリーニング部材60に第1押付力Pp1より大きい第2押付力Pp2(Pp2>Pp1)で押し付けられる。これにより、液体64大きいときに、洗浄具11とセルフクリーニング部材60との摩擦が不足して十分な効果が得られなくなることを抑制することができる。つまり、第2実施形態の基板洗浄装置20によれば、洗浄具11をセルフクリーニング部材60に好適な押付力で押し付けて、洗浄具11をセルフクリーニングすることができる。
【0055】
なお、第2実施形態の基板洗浄装置20では、洗浄具11の回転数Nsと液体64の温度Tcとに基づいて目標押付力Pp*が設定されるものとしたが、回転数Nsと温度Tcとの一方に基づいて目標押付力Pp*が設定されてもよい。また、これらに代えて、または加えて、他のパラメータに基づいて、目標押付力Pp*が設定されてもよい。一例として、洗浄具11による基板Wfの洗浄回数が多いほど大きくなるように目標押付力Pp*が設定されてもよい。また、液体64として界面活性剤入りの薬液が用いられているときには、液体64として超純水が使用されているときよりも、目標押付力Pp*が大きい値に設定されてもよい。また、セルフクリーニング部材60の材質に基づいて目標押付力Pp*が設定されてもよい。また、洗浄具11とセルフクリーニング部材60との接触時間が長いほど大きくなるように又は小さくなるように目標押付力Pp*が設定されてもよい。
【0056】
(第3実施形態)
第3実施形態の基板洗浄装置20は、セルフクリーニング部材60として、第1の材料で形成された第1部材(第1のセルフクリーニング部材)60Aと、第2の材料で形成された第2部材(第2のセルフクリーニング部材)60Bと、を有する点で第1実施形態の
基板洗浄装置20と異なり、その他の構成は第1実施形態の基板洗浄装置20と同一である。ここで、第1の材料は、例えば、無機酸化物系材料、または分子構造内に極性基を有するがために表面自由エネルギーの水素結合性成分が相対的に大きい有機高分子系材料(第1の有機高分子系材料)である。また、第2の材料は、例えば、分子構造内に極性基を有さないため表面自由エネルギーの分散力成分が相対的に大きい有機高分子系材料(第2の有機高分子系材料)である。
【0057】
図9は、第3実施形態における液槽とセルフクリーニング部材との一例を示す図である。図示するように、第3実施形態では、液槽62に第1部材60Aと第2部材60Bとが配置されている。ただし、こうした例に限定されず、第1部材60Aと第2部材60Bとは、別々の液槽62に配置されてもよい。また、液槽62が備えられなくてもよい。ただし、液槽62が備えられない場合であっても、液体移送機構65による液体64の供給を伴って、つまり例えば液体64が連続的に掛け流されながら、洗浄具11のセルフクリーニングが行われてもよい。
【0058】
図10は、第3実施形態の制御部50により実行されるセルフクリーニング部材選択処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、一例として、基板洗浄装置20の起動時、または入力部52に外部入力がなされたタイミングで実行される。本処理が実行されると、制御部50は、外部入力によって第1部材60Aが選択されているか否かを判定する(S42)。この処理は、一例として、制御部50の図示しないメモリの所定領域を参照することにより行うことができる。そして、制御部50は、第1部材60Aが選択されているときには(S42:Yes)、第1部材60Aをセルフクリーニング部材として設定して本処理を終了する。一方、制御部50は、第1部材60Aが選択されていないときには(S42:No)、第2部材60Bをセルフクリーニング部材として設定して本処理を終了する。そして、制御部50は、本処理によって選択されたセルフクリーニング部材60を使用して、洗浄具11のセルフクリーニングを実行する。
【0059】
洗浄具11をセルフクリーニングするセルフクリーニング部材60は、洗浄具11に蓄積された処理屑によって好適な素材が異なることが想定される。例えば、砥粒のように表面自由エネルギーの水素結合性成分が多い処理屑を対象とする場合には、無機酸化物系材料ないし分子構造内に極性基を有する有機高分子系材料で形成された第1部材60Aをセルフクリーニング部材60として用いることが好ましいと考えられる。また、有機錯体のように表面自由エネルギーの分散力成分が多い処理屑を対象とする場合には、分子構造内に極性基を有さない有機高分子系材料で形成された第2部材60Bをセルフクリーニング部材60として用いることが好ましいと考えられる。これに対して、第3実施形態の基板洗浄装置20によれば、外部入力に基づいてセルフクリーニング部材60が選択されるため、好適なセルフクリーニング部材60によって洗浄具11のセルフクリーニングを実行することができる。これにより、短時間で効果の高い洗浄具のセルフクリーニングを行うことができる。
【0060】
なお、例えば石英のように、温度が上がるにつれて上記表面自由エネルギーの水素結合性成分が大きく減少する無機酸化物系材料も有る。このため、液体64の加温を併用する場合は、例えばPMMAのように有機高分子系材料でありながらも分子構造内に極性基を有するため高温でも水素結合性成分が比較的大きい材料を、水素結合性成分が多い処理屑を対象とする洗浄具に適用すると良い。換言すると、第1部材60Aは、洗浄具11をセルフクリーニングする際に、第2部材60Bに比して、表面自由エネルギーの水素結合性成分が多く分散力成分が少ない材料で形成されるとよい。
【0061】
(第4実施形態)
第4実施形態の基板洗浄装置20は、第3実施形態の基板洗浄装置20と同一の構成を
有する。第4実施形態の基板洗浄装置20では、洗浄具11を第1部材60Aと第2部材60Bとの双方に接触させる点で、第3実施形態の基板洗浄装置20と異なる。
【0062】
図11は、第4実施形態の制御部50により実行されるセルフクリーニング処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、洗浄具11をセルフクリーニングするときに実行される。セルフクリーニング処理が実行されると、制御部50は、まず洗浄具11を回転させながら第1部材60Aに接触させることにより、第1部材60Aによるセルフクリーニング処理を実行する(S52)。続いて、制御部50は、洗浄具11を回転ながら第2部材60Bに接触させることにより、第2部材60Bによるセルフクリーニング処理を実行して(S54)、本処理を終了する。
【0063】
第4実施形態によれば、洗浄具11を回転させながら無機酸化物系材料ないし分子構造内に極性基を有する有機高分子系材料で形成された第1部材60Aに接触させ、その後に、洗浄具11を回転させながら分子構造内に極性基を有さない有機高分子系材料で形成された第2部材60Bに接触させることにより、洗浄具11のセルフクリーニングが実行される。これにより、先ず、洗浄具11から砥粒のように表面自由エネルギーの水素結合性成分が多い処理屑を取り除くことができ、続いて洗浄具11から有機錯体のように表面自由エネルギーの分散力成分が多い処理屑を取り除くことができる。こうした方法により、短時間で効果の高い洗浄具のセルフクリーニングを行うことができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0065】
10…基板処理装置
11…洗浄具
11A…ペン部材
11B…ロール部材
20…基板洗浄装置
31…洗浄具回転機構
32…洗浄具保持機構
40…支持部材
42…洗浄液供給部
50…制御部
52…入力部
60…セルフクリーニング部材
60A…第1部材(第1のセルフクリーニング部材)
60B…第2部材(第2のセルフクリーニング部材)
62…液槽
64…液体
65…液体移送機構
66…温度調節機構
67…振動部
68…噴出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11