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特許7138182サンプル表面への斜入射角での検査光整形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】サンプル表面への斜入射角での検査光整形
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/09 20060101AFI20220908BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20220908BHJP
   H01L 21/66 20060101ALN20220908BHJP
   G01N 21/956 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
G02B27/09
G01N21/84 E
H01L21/66 J
G01N21/956 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020543377
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 US2019017406
(87)【国際公開番号】W WO2019160781
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】62/631,128
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/258,543
(32)【優先日】2019-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シウ チーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】フアン チャンシェン
(72)【発明者】
【氏名】リ シン
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-525956(JP,A)
【文献】特開2006-343367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0061952(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0310670(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0377878(US,A1)
【文献】特開2009-031684(JP,A)
【文献】特表2008-508559(JP,A)
【文献】特開2015-031955(JP,A)
【文献】特表2015-537218(JP,A)
【文献】特開2000-352507(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033394(WO,A1)
【文献】特表2013-504206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0024632(US,A1)
【文献】特開2003-043904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/09
G01N 21/84,21/956
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームをターゲット上に斜入射角で収束させるための焦点レンズと、
前記光ビームが前記ターゲット上に前記斜入射角で収束されるときに、前記ターゲットの平面内での前記光ビームのトップを実質的にフラットにするための位相変調器であって、対称位相項と非対称位相項との畳み込みをインスタンス化して、前記光ビームが前記ターゲット上に前記斜入射角で収束されるときに前記ターゲットの前記平面内で実質的に対称なビームプロファイルを生成する回折光学素子(DOE)を備える、位相変調器と、
を備えることを特徴とする、光学検査器具用のビーム整形装置。
【請求項2】
請求項1に記載のビーム整形装置であって、前記ターゲットが装着されることになるチャックを更に備え、前記焦点レンズは前記光ビームの光経路内で前記位相変調器と前記チャックの間に配置されていることを特徴とするビーム整形装置。
【請求項3】
請求項2に記載のビーム整形装置であって、前記位相変調器に入射する前記光ビームは実質的にガウシアンであることを特徴とするビーム整形装置。
【請求項4】
請求項2に記載のビーム整形装置であって、前記位相変調器と前記焦点レンズの間に光学要素が存在しないことを特徴とするビーム整形装置。
【請求項5】
請求項1に記載のビーム整形装置であって、前記位相変調器は、前記光ビームが前記ターゲット上に前記斜入射角で収束されるときに、前記ターゲットの前記平面内での検査トラックに対応する幅にわたる前記光ビームの強度の変化が10パーセント以下になるようにして、前記光ビームの前記トップをフラットにするように構成されていることを特徴とするビーム整形装置。
【請求項6】
請求項1に記載のビーム整形装置であって、前記光ビームの半径方向軸に対して垂直な前記DOEの断面は実質的にくさび形状となっていることを特徴とするビーム整形装置。
【請求項7】
請求項1に記載のビーム整形装置であって、前記DOEは前記DOEの個別のスライスに対して個別の位相を有するそれぞれのビームプロファイルを生成するように成形されており、前記個別のスライスは前記光ビームの入射平面に対して垂直であり、前記個別の位相同士を組み合わせることによって前記ビームの前記トップのスパイクが平滑化されることを特徴とするビーム整形装置。
【請求項8】
請求項1に記載のビーム整形装置であって、
前記ターゲットは半導体ウエハであり、
前記位相変調器は、前記光ビームが収束される前記半導体ウエハの表面に対応する平面内での前記光ビームの前記トップを実質的にフラットにするように構成されていることを特徴とするビーム整形装置。
【請求項9】
光ビームをターゲット上に斜入射角で収束させるための焦点レンズと、
前記光ビームが前記ターゲット上に前記斜入射角で収束されるときに、前記ターゲットの平面内での前記光ビームのトップを実質的にフラットにするための回折光学素子(DOE)であって、対称位相項と非対称位相項との畳み込みをインスタンス化して、前記ターゲットの前記平面内で実質的に対称なビームプロファイルを生成するDOEと、
前記ターゲットが装着されることになるチャックと、を備え、
前記焦点レンズは、前記光ビームの光経路内で前記DOEと前記チャックの間に配置されており、
前記DOEに入射する前記光ビームは実質的にガウシアンであり、
前記光ビームの半径方向軸に対して垂直な前記DOEの断面は実質的にくさび形状となっている
ことを特徴とする、光学検査器具用のビーム整形装置。
【請求項10】
対称位相項と非対称位相項との畳み込みをインスタンス化することによってターゲットの平面内で実質的に対称なビームプロファイルを生成する回折光学素子(DOE)を使用して光ビームを位相変調することと、
前記光ビームを前記ターゲット上に斜入射角で収束させることと、を含み、
位相変調され前記ターゲット上に前記斜入射角で収束された前記光ビームは、前記ターゲットの平面内で実質的にフラットになったトップを有する、
ことを特徴とする、ビーム整形方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記位相変調は前記収束の前に前記DOEを使用して行われ、
前記方法は前記光ビームを前記DOEに提供することを更に含み、前記DOEに提供される前記光ビームは実質的にガウシアンであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記DOEは、前記DOEの個別のスライスに対して個別の位相を有するそれぞれのビームプロファイルを生成するように成形されており、前記個別のスライスは前記光ビームの入射平面に対して垂直であり、
前記個別の位相同士を組み合わせることによって前記ビームの前記トップのスパイクが平滑化されることを特徴とする方法。
【請求項13】
光ビームをターゲット上に斜入射角で収束させるための焦点レンズと、
光軸に対して偏心して位置付けられ、前記光ビームが前記ターゲット上に前記斜入射角で収束されるときに、前記ターゲットの平面内での前記光ビームのトップを実質的にフラットにし、かつ前記ターゲットの前記平面内で実質的に対称なビームプロファイルを生成するための位相変調器と、
備え、
前記位相変調器が、非球面レンズとロッドレンズとパウエルレンズとから成る群から選択される要素を備えることを特徴とする、光学検査器具用のビーム整形装置。
【請求項14】
請求項13に記載のビーム整形装置であって、前記要素が前記非球面レンズであることを特徴とするビーム整形装置。
【請求項15】
請求項13に記載のビーム整形装置であって、前記要素が前記ロッドレンズまたは前記パウエルレンズであることを特徴とするビーム整形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は(例えば半導体検査用の)光学検査器具に関し、より詳細には、光学検査器具におけるビーム整形に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本願は、2018年2月15日に出願された「Methods and Systems of Shaping Inspection Beam on a Sample Surface at Oblique Incident Angle」と題する米国特許仮出願第62/631,128号の優先権を主張し、同出願は、参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0003】
照射ビームとも呼ばれるターゲットから散乱していく光ビームを提供することによる、半導体ウエハなどのターゲットの検査が、光学検査器具を使用して行われる。光ビームによって照射されるトラック内(すなわち「検査トラック」内)にあるターゲットの表面上の欠陥、例えば微粒子の存在は、光ビームの散乱の態様に影響することになり、この結果その欠陥の検出が可能になる。しかしながら、光ビームの形状により光学検査器具の感度が限定される。例えば、光ビームが、検査トラックの縁部に向かって強度が低下するような近似的なガウシアンである場合には、この強度の低下によって、トラック内の欠陥を検出するために使用される感度閾値が限定される。あるいは、所望の感度を達成するために、光学器具のビーム強度を大きくする必要があり得る。また更に、光ビームはターゲットに対する入射角が斜めである場合があり、このとき入射角は直角ではない(すなわち、光ビームがターゲットに傾斜して入射する)。入射角が斜めであるとき、ターゲットの平面内の光ビームの形状は、半径方向平面内の光ビームの形状とは異なることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2014/0139829号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ターゲットに対するビームの入射角が斜めである場合に、ターゲットの平面内のビームのトップがフラットになるように光ビームを整形する方法およびシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態では、光学検査器具用のビーム整形装置は、光ビームをターゲット上に斜入射角で収束させるための焦点レンズと、光ビームがターゲット上に斜入射角で収束されるときにターゲットの平面内での光ビームのトップを実質的にフラットにするための位相変調器と、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、ビーム整形方法は、光ビームを位相変調することと、光ビームをターゲット上に斜入射角で収束させることと、を含む。位相変調されターゲット上に斜入射角で収束された光ビームは、ターゲットの平面内で実質的にフラットになったトップを有する。
【0008】
記載される様々な実装形態をより良く理解するために、下記「発明を実施するための形態」を、正確な縮尺ではない以下の図面と併せて参照するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】いくつかの実施形態に係る、ターゲットの平面内での光ビームのトップが実質的にフラットになるように光ビームを整形する、ビーム整形装置の概略図である。
図2】いくつかの実施形態に係る、図1のビーム整形装置の様々な例のシミュレーションを使用してターゲットの平面内で生成された、シミュレーションされたビームプロファイルを示す図である。
図3】いくつかの実施形態に係る、図1のビーム整形装置中の回折光学素子(DOE)位相変調器において対称位相項と非対称位相項の畳み込みの結果得られる、ターゲットの平面内でのシミュレーションされたビームプロファイルを示す図である。
図4】いくつかの実施形態に係る、図1の光ビームの経路内にある表面がリソグラフィによって成形されその結果複数の段を有するDOEを示す図である。
図5】いくつかの実施形態に係る、図4のDOEの断面を示す図である。
図6】いくつかの実施形態に係る、DOEが関与するシミュレーションを使用してターゲットの平面内で生成された、シミュレーションされたビームプロファイルを示す図である。
図7】いくつかの実施形態に係るビーム整形方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面および明細書の全体にわたって、同様の参照符号は対応している部分を指す。
【0011】
ここで、添付の図面に実施例が示されている様々な実施形態を詳細に参照する。以下の詳細な説明には、記載される様々な実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、記載されている様々な実施形態はこれらの具体的な詳細を伴わなくても実践できることが、当業者には明らかであろう。他の例では、実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように、周知の方法、手順、構成要素、回路、およびネットワークについては詳細に記載していない。
【0012】
図1は、いくつかの実施形態に係る、ターゲット108(例えば半導体ウエハ)の平面内(例えば表面上)で光ビーム102のトップが実質的にフラットになるように光ビーム102を整形する、ビーム整形装置100の概略図である。ビーム整形装置100は、光学検査器具(例えば半導体光学検査器具)の照射システムの一部である。光ビーム102は、ビームウエスト半径wを有するビームウエストを有し、照射システム中の照射源(例えばレーザ)によって提供される。ビーム整形装置100は、位相変調器104(例えば、光ビーム102の経路内に配置されている位相変調プレート)および焦点レンズ106を含む。位相変調器104は位相変調関数Φを実装しており、これにより光ビーム102の位相を変調する。焦点レンズ106は、光ビーム102を、斜入射角(ターゲット108についての法平面から測定したとき)で、ターゲット108上へと収束させる。ターゲット108はチャック110上に装着されてもよい。
【0013】
位相変調器104の位相変調関数Φは、ターゲット108の平面内(例えばターゲット108の表面上)での光ビーム102のトップが実質的にフラットになる(例えば10パーセント以内で均一になる)ように、光ビーム102を位相変調する。いくつかの実施形態によれば、ビーム整形装置100は強度変調器を含まず、したがってビームを整形するために強度変調を使用しない。強度変調を使用しないことによって、ビーム整形装置100が光ビーム102の強度を低下させることがなくなるが、このことは光子の少ない繊細な用途で望ましい。照射システムの光損失の低減により、光ビーム102のエネルギーの閉じ込めが向上する。
【0014】
いくつかの実施形態では、位相変調器104は焦点レンズ106の手前に配置され、この場合焦点レンズ106は、光ビーム102の光経路内で位相変調器104とチャック110の間に配置されている。いくつかの実施形態では、位相変調器104と焦点レンズ106の間には光学要素が存在しない。照射システムは、位相変調器104の手前に追加の光学要素(例えばアパーチャ、拡大鏡、偏光器、レンズ、ミラー、等)を含み得る。照射システムはまた、焦点レンズ106の後ろに(すなわち、焦点レンズ106とチャック110の間に)、追加の光学要素(例えば、光ビーム102をターゲット108へと導くための1つ以上のミラー)を含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、光ビーム102の形状は実質的にガウシアンである。例えば、光ビーム102は実質的にガウシアンであるモードによって支配される。ビーム強度の断面プロファイル(すなわち、光軸に対して垂直な半径方向においての)はこの場合、ガウス分布に似ることになる(例えば、断面プロファイル中の各点の強度と、ガウス分布において予想される強度との差は、10パーセント以内または5パーセント以内となる)。
【0016】
照射システム内でのガウシアンビームの伝播は以下の式で記述できる:
【数1】
【数2】
F=FFT(G) (3)
【数3】
【数4】
上式で、Pは電界であり、wはビームスポットサイズ(すなわち電界スポットサイズ)であり、wはビームウエスト(すなわち、ウエストスポットサイズ)であり、λはビーム波長(例えばレーザ波長)であり、kは波数であり、Φは位相変調器104の位相変調関数であり、Fは焦点レンズ106の焦点距離であり、dは焦点レンズ106からターゲット108までの距離であり、yはウエハ上の面内位置であり、yは半径方向の(すなわち光軸に対して垂直な平面内での)位置であり、FFTは高速フーリエ変換であり、Iはターゲット108におけるビーム強度である。位相変調関数Φは、光ビーム102がターゲット108の平面内で実質上のフラットトップを有するように選ばれる。
【0017】
ターゲットに垂直に入射する光ビームの場合、斜角での入射とは対照的に、十分な開口数(NA)を想定すれば、位相変調関数Φについての以下の解により実質上のフラットトップビームが得られる:
【数5】
【数6】
【数7】
上式で、wFTはフラットトップの幅、erfは誤差関数、他の全ての変数は式1~5について上で定義したものと同様である。式8に従って位相変調器を実装することができる。例えば、ロッドレンズまたはパウエルレンズは式8の解の低次近似を提供でき、非球面レンズは式8の解のより高次の近似を提供するように設計することができ、回折光学素子(DOE)は式8の解を個別に実現するように設計することができる。式8の位相変調は光軸に関して対称である。
【0018】
しかしながら、ターゲット108に対して斜入射角を有する光ビーム102では、対称位相変調の結果、ターゲット108の平面内で非対称なビームプロファイルとなる。この非対称性が生じる理由は、ビームプロファイルのトップの2つの端部に対する光経路112および114が図1に示すように非対称だからである。垂直入射用に最適化された位相変調器はこのように、斜めの入射の場合にはターゲット108の平面内で非対称のビームプロファイルを生成することになる。
【0019】
いくつかの実施形態では、非対称補償は、位相変調器104(例えばロッドレンズ、パウエルレンズ、非球面レンズ、または対称DOE)を光軸から偏心させて位置付けることによって提供される。非対称補償は、ビームプロファイル中にある程度の非対称性が存在したままとなるように、部分的にのみ有効であってもよい。例えば、図2はターゲット108の平面内での光ビーム102のそれぞれの場合についてシミュレーションされたビームプロファイル200および202を示しており、これらは、位相変調器104が偏心位置合わせされた(すなわち偏心させて位置付けられた)それぞれの対称DOEであるシミュレーションを使用して生成されたものである。(ビーム幅は実装形態が異なれば異なり得る)。ビームプロファイル200は、位相変調器104が偏心位置合わせされた対称正位相DOEである、ビーム整形装置100のシミュレーションによって生成される。ビームプロファイル202は、位相変調器104が偏心位置合わせされた対称負位相DOEである、ビーム整形装置100のシミュレーションによって生成される。ビームプロファイル200および202のトップはウエハ平面(または別のターゲット108の平面)内で実質的にフラットであり、その平面内で厳密には対称ではないがほぼ対称である。
【0020】
他の実施形態では、光経路112と114(図1)の間の非対称性(の全体または一部)を補償するために、非対称DOEが使用される。シミュレーションされたビームプロファイル204(図2)は、位相変調器104が非対称DOEであるシミュレーションを使用して生成された、光ビーム102のそれぞれの場合のビームプロファイルの例である。ビームプロファイル204を達成するために、DOEは、その位相変調関数Φが非対称位相項を含むように設計される:
【数8】
上式で、c、c、およびcは、ビームトップのフラットさが改善(例えば最適化)されるように数値調整可能な係数であり、その他の変数および関数は上で定義したものと同様であり、c項が非対称である。非対称位相項は、式9の関連項の形態、その多項式近似の形態、または別の実質上等価な形態をとることができる。
【0021】
ターゲット108の平面内での非対称DOEのビームプロファイルはこの場合、対称位相項と非対称位相項の畳み込みの結果得られる:
【数9】
上式で、GsymDOEは対称位相項に相当し、GasymDOEは非対称位相項に相当する。図3は、いくつかの実施形態に係るこの畳み込みのシミュレーション結果を示す:シミュレーションされたウエハ平面または別のターゲット108の平面内でのビームプロファイル304は、対称位相項300と非対称位相項304の畳み込みの結果得られる(位相項300の対称性および位相項302の非対称性は、光軸に関するものである)。図3が示すように、ターゲット108の平面内でのビームプロファイル304は、ターゲット108の平面内において実質的に対称(実際にはほぼ精確に対称)である。したがって、DOEは、対称位相項と非対称位相項の畳み込みの実例(インスタンス化)となって、光ビーム102がターゲット108上に斜入射角で収束されているときに、ターゲット108の平面内で実質的に対称なビームプロファイルを生成することができる。
【0022】
位相変調器104として使用されるDOE(例えば非対称DOE)はリソグラフィ工程を使用して製作してもよく、この場合、位相変調プロファイルに複数の段が存在する。図4は、いくつかの実施形態に係る、光ビームの経路102(図1)内にある表面402がリソグラフィによって成形されその結果複数の段を有するDOE400を示す。光軸406はDOE400を通過して延び、表面402および反対側の表面404の両方と交わっている。図4の例では、光軸406は、表面402の最小点(すなわち、表面402の段状局面の最小点)を通っている。
【0023】
DOE400の段サイズはプログラム可能である。DOE400の品質、および結果的な光ビーム102のトップのフラットさの度合は、段サイズによって決まる。小さい段サイズはDOEの品質およびしたがって光ビーム102のトップのフラットさを向上させるが、製造コストを押し上げる。しかしながら、過度に粗い段サイズは、ビームトップのフラットさを低下させる位相誤差をもたらす。図6は、段サイズがπ/4であるときの、シミュレーションされたターゲット108の平面内での光ビーム102のビームプロファイル600を示す。この粗い段サイズは、図6に示すように、ターゲット108の平面内での光ビーム102のトップがスパイクを有し、実質的にフラットではないという結果をもたらす。
【0024】
いくつかの実施形態では、表面402の粗い段サイズから生じる不均等なビームプロファイルを緩和するために、表面404は、いくつかの実施形態に係る図5に示すように、光軸406と斜めの角度で交わる。図5は、図4においてその紙面から真っ直ぐ出て来る、光軸406と平行で(または一致し)、半径方向軸yに対して垂直な平面における、DOE400の断面を示す。いくつかの実施形態では、そのようなDOE400の断面の各々が、図5に示すような形状を有する。DOE400はこの場合、接線方向(すなわち、半径方向軸yに対して垂直である、光軸406の方向)においてウェッジ角を有し得、実質的にくさび形状である断面を有し得る(この例では頂点を有さない断面であるため、断面は厳密なくさび形状とはなっていない)。図4の紙面と平行な(または紙面内にある)(したがって光ビームの入射平面に対して垂直な)それぞれの平面内にある、接線方向におけるDOEのそれぞれのスライスは、組み合わせることでビームプロファイル600中のスパイクが平滑化される、それぞれのビームプロファイルを生成する。(図4はそのようなスライスの例を示す)。表面404の傾斜は、表面402と404の間の距離408がスライスごとに異なっていることを意味する。実質的にフラットトップである、ターゲット108の平面内でのシミュレーションされた結果的な光ビーム102のビームプロファイル602が、図6に示されている。図5の幾何形状はこの場合、段の比較的粗い(例えばπ/4の段サイズの)DOEを位相変調器104として使用して、ターゲット108の平面内でのフラットトップの光ビームを実現できる。
【0025】
図7は、いくつかの実施形態に係るビーム整形方法700のフローチャートである。方法700は、ビーム整形装置100(図1)を使用して実行できる。
【0026】
方法700のいくつかの実施形態では、光ビーム102が位相変調器104に提供される(702)。位相変調器104に提供される光ビーム102は実質的にガウシアンである。
【0027】
光ビームは(例えば位相変調器104を使用して)位相変調される(704)。いくつかの実施形態では、位相変調は、DOE、非球面レンズ、ロッドレンズ、またはパウエルレンズを使用して行われる(706)。例えば、対称位相項300と非対称位相項302の畳み込みの実例(インスタンス化)となることでターゲットの平面内で実質的に対称なビームプロファイル304(図3)を生成するDOEが使用される(708)。DOEは、光ビームの入射平面に対して垂直な(例えば図5に従う)DOEの個別のスライスに対して、個別の位相を有するそれぞれのビームプロファイルが得られるように成形されてもよい(710)。個別の位相同士を組み合わせることによってビームのトップのスパイクが平滑化される。
【0028】
別の例では、位相変調は、光軸から偏心して位置付けられている対称DOEを使用して行われる(712)。更に別の例では、位相変調は、光軸から偏心して位置合わせされている非球面レンズ、ロッドレンズ、またはパウエルレンズを使用して行われる(714)。
【0029】
光ビーム102は、ターゲット108(例えば半導体ウエハ)上に、斜入射角で収束される(716)。位相変調されターゲット108上に斜入射角で収束された光ビーム102は、ターゲット108の平面内(例えば表面上)で実質的にフラットになったトップを有する。
【0030】
方法700のステップのうち順序に依存しないものは、その順序を変えることができる。
【0031】
上述の説明は、説明の目的で、特定の実施形態を参照して説明されている。しかしながら、上記の例示的な論考は、網羅的であること、または請求項の範囲を開示される厳密な形態に限定することを意図するものではない。上記の教示に照らして、多くの変形および変更が可能である。これらの実施形態は、特許請求の範囲の基礎を成す原理およびその実際的な応用を最も良く説明し、それによって他の当業者が企図される特定の用途に適した様々な変形と共にそれらの実施形態を最良の形で使用できるように選択された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7