(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-07
(45)【発行日】2022-09-15
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220908BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20220908BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/318 B
C23C16/52
(21)【出願番号】P 2021508411
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2019012443
(87)【国際公開番号】W WO2020194434
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中谷 一夫
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-046847(JP,A)
【文献】特開2016-122795(JP,A)
【文献】特開2009-252953(JP,A)
【文献】特開2009-106810(JP,A)
【文献】特開2011-100786(JP,A)
【文献】国際公開第2008/001688(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/318
C23C 16/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、第2の圧力調整弁を備えた排気ラインと、第1の圧力調整弁を備えたバイパスラインと、前記第1の圧力調整弁及び前記第2の圧力調整弁を制御する圧力制御コントローラと、を備え、
前記圧力制御コントローラは、
前記第1の圧力調整弁を全開にして、前記処理室の圧力を大気圧から第2所定圧力まで減圧し、
前記第1の圧力調整弁の開度を調整して、前記第2所定圧力を維持し、
前記第1の圧力調整弁を全開にして、前記処理室の圧力を前記第2所定圧力よりも更に低い第1所定圧力まで減圧し、
前記第1所定圧力に到達した時点で第1所定時間少なくとも前記第1の圧力調整弁及び前記第2の圧力調整弁を閉じた状態で、前記処理室の圧力を検出し、
前記第2の圧力調整弁を全開にして、前記処理室の圧力を前記第2所定圧力よりも更に低い第3所定圧力まで減圧し、
前記第2の圧力調整弁の開度を調整して、前記基板を処理する処理圧力に維持するように構成されている基板処理装置。
【請求項2】
前記圧力制御コントローラは、前記処理圧力を、前記第1所定圧力及び前記第3所定圧力よりも高く前記第2所定圧力よりも低くするように構成されている請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記圧力制御コントローラは、前記処理圧力に第2所定時間維持された後、前記第1の圧力調整弁及び前記第2の圧力調整弁を閉じた状態で、前記処理室の圧力が前記大気圧以上に昇圧するよう構成されている請求項1記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記圧力制御コントローラは、前記第1所定圧力に到達した時点で第1所定時間少なくとも前記第1の圧力調整弁及び前記第2の圧力調整弁を閉じた状態で、前記処理室の圧力を検出した結果、リークが発生していると判定すると、再度前記処理室を前記第1所定圧力に到達させ、前記第1の圧力調整弁及び前記第2の圧力調整弁を閉じた状態で前記処理室のリークをチェックするように構成されている請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
更に、前記処理室の温度を制御する温度制御コントローラを備え、
前記温度制御コントローラは、前記第2所定圧力で維持される所定時間で、前記基板を処理する処理温度まで昇温させるように構成されている請求項1記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第2の圧力調整弁が設けられる排気ラインの配管の径は、前記第1の圧力調整弁が設けられる排気ラインの配管の径よりも大きく構成される請求項1記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の圧力調整弁が設けられる排気ラインの配管の径は、前記第1の圧力調整弁を全開にしたときに所定の固定レートで排気可能になるように構成される請求項1記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記圧力制御コントローラは、前記第1の圧力調整弁及び前記第2の圧力調整弁の開度を調整して、
前記処理室の圧力を前記大気圧から前記第2所定圧力まで、及び/又は、前記処理室の圧力を前記第2所定圧力から前記第2所定圧力より低い前記第1所定圧力までを一定レートで減圧させるように構成される請求項1記載の基板処理装置。
【請求項9】
処理室の圧力を大気圧から第2所定圧力まで減圧させる工程と、
前記第2所定圧力を維持させる工程と、
前記処理室の圧力を前記第2所定圧力よりも更に低い第1所定圧力まで減圧させる工程と、
前記第1所定圧力に到達した時点で第1所定時間少なくとも第1の圧力調整弁及び第2の圧力調整弁を閉じた状態で、前記処理室の圧力を検出する工程と、
前記処理室の圧力を前記第2所定圧力よりも更に低い第3所定圧力まで減圧させる工程と、
基板を処理する処理圧力に維持させる工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記処理室の圧力が前記第2所定圧力で、前記処理室の温度を処理温度まで制御する工程と、
前記処理温度を維持した状態で、前記処理室の圧力を前記第2所定圧力より低い処理圧力に制御する工程と、
前記処理温度、前記処理圧力を維持しつつ、処理ガスを前記処理室に供給して前記基板を処理する工程と、
を更に有する請求項9記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
処理室の圧力を大気圧から第2所定圧力まで減圧させる手順と、
前記第2所定圧力を維持させる手順と、
前記処理室の圧力を前記第2所定圧力よりも更に低い第1所定圧力まで減圧させる手順と、
前記第1所定圧力に到達した時点で第1所定時間少なくとも第1の圧力調整弁及び第2の圧力調整弁を閉じた状態で、前記処理室の圧力を検出する手順と、
前記処理室の圧力を前記第2所定圧力よりも更に低い第3所定圧力まで減圧させる手順と、
基板を処理する処理圧力に維持させる手順と、
をコンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板を処理する反応炉と、該反応炉内で基板を保持する基板保持具と、反応炉内の基板を加熱するヒータと、基板の温度を処理温度に上昇させるように制御する制御手段とを有する基板処理装置において、基板と該基板を支持する支持部との接触部で摩擦によりウエハの裏面が掻取られ傷が発生することがある。このような傷に起因するパーティクルの付着は、歩留りの悪化、製品品質の低下を招いてしまうことがある。
【0003】
そこで、特許文献1、特許文献2及び特許文献3によれば、基板と該基板を支持する支持部との摩擦を低減し、パーティクルの付着を防止する技術が記載されている。
【0004】
一方、近年、従来よりも高真空での成膜が要求されており、装置に大口径の排気ラインを設け、大口径に対応する圧力制御バルブ(以後、APCバルブともいう)の制御が必要となることがある。但し、大口径対応のAPCバルブは広帯域の圧力制御に対応しておらず、高真空域での圧力制御にしか対応していない。従い、今後のデバイスの微細化に伴う成膜条件の厳格化に対応できなくなる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-183837号公報
【文献】特開2003-100645号公報
【文献】特開2007-043187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の課題は、広帯域および高真空域での圧力制御が可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、第2の圧力調整弁を備えた排気ラインと、第1の圧力調整弁を備えたバイパスラインと、前記第1の圧力調整弁及び前記第2の圧力調整弁を制御する圧力制御コントローラと、を備え、
前記圧力制御コントローラは、
前記第1の圧力調整弁を全開にして、前記処理室の圧力を大気圧から第2所定圧力まで減圧させ、
前記第1の圧力調整弁の開度を調整して、前記第2所定圧力を維持させ、
前記第1の圧力調整弁を全開にして、前記処理室の圧力を前記第2所定圧力よりも更に低い第1所定圧力まで減圧させ、
前記第1所定圧力に到達した時点で第1所定時間少なくとも前記第1の圧力調整弁及び前記第2の圧力調整弁を閉じた状態で、前記処理室の圧力を検出し、
前記第2の圧力調整弁を全開にして、前記処理室の圧力を前記第3所定圧力まで減圧させ、
前記第2の圧力調整弁の開度を調整して、前記基板を処理する処理圧力に維持させるように構成されている技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、広帯域および高真空域での圧力制御が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本開示の実施形態における基板処理装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は
図1のAPCバルブユニットの構成を示す図である。
【
図3】
図3は成膜レシピのステップ設定を説明する図である。
【
図4】
図4(a)は広帯域用APCバルブを制御する場合を説明する図であり、
図4(b)は高真空用APCバルブを制御する場合を説明する図である。
【
図5】
図5(a)は設定不可の成膜レシピのステップを説明する図であり、
図5(b)は設定可の成膜レシピのステップを説明する図である。
【
図6】
図6は成膜レシピのステップ設定例を示す図である。
【
図7】
図7は
図6の成膜レシピのステップに基づく圧力制御による処理室の圧力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態および変形例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。
【0011】
(基板処理装置)
本開示の実施形態における基板処理装置の構成について
図1を用いて説明する。
【0012】
図1に示すように、実施形態における基板処理装置100の反応管1は炉口フランジ2に立設されており、炉口フランジ2には反応管1と同心に内管3が支持されている。また、反応管1を囲む様に円筒状のヒータ4が設けられている。ヒータ4、反応管1、炉口フランジ2により反応炉が構成される。
【0013】
反応管1の内部は気密な処理室5となっており、処理室5には気密な予備室6が連通し、予備室6は炉口フランジ2に連設された搬送筐体7によって画成されている。搬送筐体7には炉入出手段であるボートエレベータ(図示せず)が設けられ、該ボートエレベータによって基板保持具であるボート8が処理室5に装入、引出される。また、ボート8の装入時には炉口蓋9によって処理室5が気密に閉塞される様になっている。
【0014】
搬送筐体7にはゲート弁(図示せず)が設けられ、搬送筐体7の外部にはウエハ移載機(図示せず)が設けられ、ボート8が搬送筐体7に収納されている状態で、該ウエハ移載機により該ゲート弁を通してボート8にウエハ等の基板10が移載される様になっている。
【0015】
炉口フランジ2にはガス導入ライン11が連通され、内管3の下方からガスを処理室5に導入する様になっており、また、予備室6にはガス導入ライン12が連通されている。また、炉口フランジ2には排気ライン13が連通され、排気ライン13は、自動圧力制御(APC:Auto Pressure Controller)バルブユニット15を介して真空ポンプ23に接続されている。
【0016】
排気ライン13に圧力検知器17が設けられ、圧力検知器17の圧力検知結果はコントローラ19に入力される。
【0017】
ガス導入ライン11には流量制御器20が設けられ、流量制御器20はコントローラ19からの指令によりガス導入ライン11から処理室5に供給されるガスの流量を制御する。また、ガス導入ライン12から予備室6に供給されるガスの流量を制御するよう構成してもよい。
【0018】
コントローラ19により、流量制御器20を閉塞し、ガスの供給を停止し、APCバルブユニット15に設けられるAPCバルブを開き、真空ポンプ23により真空引することで、処理室5を真空状態または減圧状態とすることができる。
【0019】
また、APCバルブユニット15に設けられるAPCバルブを開き、真空ポンプ23により真空引した状態で、圧力検知器17からの圧力検知信号はコントローラ19にフィードバックされ、コントローラ19では圧力検知器17が検知する圧力が設定圧力となる様、流量制御器20を制御し、ガス導入流量を調整する。
【0020】
上述したように、処理室5の圧力はコントローラ19により、処理室5に導入されるガス流量、処理室5から排気されるガス排気量が制御され、所要の圧力(例えば、設定圧力)に制御される。また、処理室5の温度はコントローラ19によりヒータ4の発熱量が制御され、所定の温度に制御される。なお、このときガス導入ライン11を介して供給されるガスは、不活性ガス、例えば窒素ガスが用いられる。
【0021】
基板10がボート8に所定数装填された状態で、ボート8は処理室5に装入され(ボートロード工程)、処理室5が真空引されつつ、ヒータ4により加熱されて、所定の減圧状態及び所定の温度維持状態で、ガス導入ライン11より処理ガスが導入されつつ、排気され、処理ガスが基板10に供給されることで、薄膜の生成等所要のウエハ処理(基板処理)がなされる(基板処理工程)。処理が完了するとボート8が降下(ボートアンロード工程)され、処理済の基板10が払出される。薄膜としては、例えば、SiN(シリコン窒化膜)が形成される。
【0022】
APCバルブユニット15に設けられるAPCバルブは、真空ポンプ23を作動させた状態で内部に設けられた弁を開閉することで、処理室5の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ23を作動させた状態で、圧力検知器17により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室5の圧力を調整することができるように構成されている。
【0023】
コントローラ19は、CPU(Central Processing Unit)、当該CPUによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されているRAM(Random Access Memory)、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する圧力制御の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている記憶装置等を備えたコンピュータとして構成されている。
【0024】
プロセスレシピは、半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ19に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピ及び制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。
【0025】
(APCバルブ)
次に、排気ライン13に接続されるAPCバルブユニット15の構成について
図2~5を用いて説明する。
【0026】
図2に示すように、APCバルブユニット15は、排気ライン13をバイパスするバイパスライン13aに接続される広帯域用のAPCバルブ(APC1、第1の圧力調整弁)151aおよびバルブ152aと、排気ライン13に接続される高真空用のAPCバルブ(APC2、第2の圧力調整弁)151bおよびバルブ152bと、を備える。排気ライン13の配管の径はバイパスライン13aの配管の径よりも大きく構成される。
【0027】
コントローラ19に含まれる圧力制御コントローラ191はシリアル通信経由で圧力制御用コマンドを広帯域用のAPCバルブ151aおよび高真空用のAPCバルブ151bに指示する。シリアル通信に代えてイーサキャット(自動制御システムにおけるコントローラとI/Oデバイス間のデータ通信ネットネットワーク)等のデジタル回線で接続するようにしてもよい。
【0028】
図3に示すように、コントローラ19の主操作部192からの成膜レシピのレシピステップ指示が圧力制御コントローラ191によって排気ライン13、バイパスライン13aを切替える仕組みを有し、ステップ毎に圧力制御指示先の広帯域用のAPCバルブ151aと高真空用のAPCバルブ151bとの切替えを可能とする。レシピステップには圧力制御コマンドとして、広帯域用のAPCバルブ151a対象の指示か高真空用のAPCバルブ151b対象の指示かを指定する項目192a(APC指示コマンド)及びコマンド種別、コマンド毎のパラメータを指定する項目192b(圧力コマンド)を有する。また、排気ライン13のバルブ152b、バイパスライン13aのバルブ152aへの指示は、レシピステップのバルブ制御コマンドで行う。
【0029】
図4(a)に示すように、大気圧から1330Pa(10Torr)までの圧力制御は、圧力制御コマンドの「APC指示コマンド」により「APC1向け」とし、バルブ制御コマンド(OPEN)により、バイパスライン13aのバルブ152aを開き、圧力制御コマンドの圧力コマンド(SlowVac,1.0)により広帯域用のAPCバルブ151aにレート1Pa/Secでスロー排気を指示する。このとき、バルブ制御コマンド(CLOSE)により、排気ライン13のバルブ152bは閉じられている。
【0030】
図4(b)に示すように、スロー排気により1330Pa(10Torr)以下に到達した場合、圧力制御コマンドの「APC指示コマンド」により「APC2向け」とし、バルブ制御コマンド(OPEN)により、大口径の排気ライン13のバルブ152bを開き、圧力制御コマンドの圧力コマンド「Press,1,20.0」により高真空用のAPCバルブ151bに20Paでの圧力制御を指示する。このとき、バルブ制御コマンド(CLOSE)により、バイパスライン13aのバルブ152aは閉じられている。
【0031】
図5(a)に示すように、成膜レシピステップにおいて広帯域用のAPCバルブ151aへの圧力制御(自動制御)に続いて高真空用のAPCバルブ151bへの圧力制御(自動制御)を指示すると、広帯域用のAPCバルブ151aと高真空用のAPCバルブ151bとが同時に制御状態となるため、それぞれの圧力制御に悪影響を与える。このようなコマンドの組合せが成膜レシピ中に存在する場合、成膜実行を未然に防止するため、成膜レシピの保存を不可とする。
図5(b)に示すように、成膜レシピステップにおいて広帯域用のAPCバルブ151aへの圧力制御(自動制御)に続いて高真空用のAPCバルブ151bを完全に閉じる指示(FULL CLOSE)等一方のバルブ開度が固定される組合せは保存可能とする。
【0032】
(圧力制御)
圧力制御の詳細について
図6、7を用いて説明する。尚、
図6,7は、圧力制御に特化した図面であるため、レシピステップ「B.LOAD」(ステップS0)で表すボートロードステップ及びレシピステップ「B.UNLOAD」(ステップS8)で表すボートアンロードステップは省略している場合がある。
【0033】
まず、基板10がボート8に所定数装填された状態で、ボート8は処理室5に装入される(ステップS0)。そして、圧力制御コントローラ191は、ステップNo.1のレシピステップ「APC1スロー排気」に基づいて広帯域用のAPCバルブ151aに圧力コマンド「SLOW VAC」を指示し、バイパスライン13aのバルブ152aを開いた状態(OPEN)に指示して、処理室5の圧力を初期状態の大気圧以上から第2所定圧力(P2)まで減圧させる(ステップS1)。このとき、排気ライン13のバルブ152bは閉じた状態である。APCバルブ151aを全開にして、例えば1Pa/secの一定レートで排気可能なようにバイパスライン13aの配管の径が調整されている。このように、一定レートで徐々に減圧することにより、処理室5の急激な圧力変動がなく、パーティクルの巻上げおよび逆流を少なくすることが可能になる。ここで、ボート8を処理室5に装填した直後の圧力(略大気圧)から一定レートでゆっくり圧力を減圧していくが、後述する処理圧力(P3)まで一気に減圧すると、レシピを実行する時間がかかるため、第2所定圧力(P2)は、処理圧力(P3)より高い所定の圧力に設定される。更に、基板10の材質(シリコン)とボート8の保持溝(基板10を保持する支持部)の材質(石英ガラス)との間の摩擦力はきわめて大きく、この摩擦力は処理室5の圧力が低いほど大きくなる。他方、基板10の温度が上昇すると、熱膨張が発生することにより、基板10と保持溝との接触面間には擦れが発生する。従い、処理室5が減圧状態で昇温されると、基板10と保持溝とはきわめて大きな摩擦力をもって擦れ合うため、パーティクルが発生する。特に、1330Pa(10Torr)未満で処理室5の温度を昇温させると、パーティクルが顕著に発生することが分かっており、少なくとも第2所定圧力(P2)は、1330Pa(10Torr)以上の圧力に設定される。
【0034】
次に、圧力制御コントローラ191は、ステップNo.2のレシピステップ「APC1 Press」に基づいて広帯域用のAPCバルブ151aに圧力コマンド「PRESS」を指示し、広帯域用のAPCバルブ151aの開度を調整して、第2所定圧力(P2)を所定時間(T3)維持させる(ステップS2)。このとき、バイパスライン13aのバルブ152aは開いた状態であり、排気ライン13のバルブ152bは閉じた状態である。なお、コントローラ19に含まれ、処理室5の温度を制御する温度制御コントローラ(不図示)は、第2所定圧力(P2)で維持される所定時間(T3)内に、基板10を処理する処理温度まで昇温させる。
【0035】
次に、圧力制御コントローラ191は、ステップNo.3のレシピステップ「APC1スロー排気(2段階目)」に基づいて広帯域用のAPCバルブ151aに圧力コマンド「SLOW VAC」を指示し、バイパスライン13aのバルブ152aを開いた状態(OPEN)に指示して処理室5の圧力を第2所定圧力(P2)よりも更に低い圧力(例えば、
図7では第1所定圧力(P1))まで減圧させる(ステップS3)。このとき、排気ライン13のバルブ152bは閉じた状態である。APCバルブ151aを全開にして、例えば1Pa/secの一定レートで排気する。処理室5は処理温度で維持されている。
【0036】
次に、圧力制御コントローラ191は、ステップNo.4のレシピステップ「LEAK CHECK」に基づいて広帯域用のAPCバルブ151aに圧力コマンド「FULL CLOSE」を指示し、真空ポンプ23で真空引き可能な限界圧力(
図7では、第1所定圧力(P1))に到達した時点で第1所定時間(T1)少なくとも広帯域用のAPCバルブ151a、バイパスライン13aのバルブ152a及び排気ライン13のバルブ152bを閉じた状態で、処理室5の圧力を検出する(ステップS4)。ステップS4では、制御しなくなる側のAPCである広帯域用のAPCバルブ151aや高真空用のAPCバルブ151bをそれぞれ閉じて、処理室5のリークチェックが行われる。尚、リークチェック中、処理室5は処理温度で維持されている。圧力制御コントローラ191は、処理室5にリークが発生していると判定すると、圧力制御コントローラ191は、リークチェックエラーが発生していることをコントローラ19に通知する。コントローラ19は、次のステップS5へ移行させずに再度リークチェックを行わせる(ステップS3及びステップS4を繰返す)か、または、レシピを強制的に終了させる。再度リークチェックする場合、圧力制御コントローラ191は、APCバルブ151aを全開にして、例えば1Pa/secの一定レートで排気させ、第1所定圧力(P1))まで減圧させ (ステップS3)、そして、広帯域用のAPCバルブ151aや高真空用のAPCバルブ151b等を閉じて、処理室5のリークチェックを行う。また、予め回数を決めておき、決められた回数連続してリークチェックエラーを圧力制御コントローラ191から通知を受けると、コントローラ19はリークチェック異常が発生したと判定し、レシピを強制終了させる。具体的には、コントローラ19は、圧力制御コントローラ191に、バイパスライン13aのバルブ152a、排気ライン13のバルブ152bおよび高真空用のAPC151bを閉じた状態で、ガス導入ライン11から不活性ガスを処理室5に供給して、処理室5の圧力が大気圧以上になるまで昇圧させ(ステップS7)、レシピを終了させる。
【0037】
リークチェック工程(ステップS4)で異常が無ければ、次に、圧力制御コントローラ191は、ステップNo.5のレシピステップ「APC2 Full Open」に基づいて高真空用のAPCバルブ151bに圧力コマンド「FULL OPEN」を指示し、排気ライン13のバルブ152bを開いた状態にして、高真空用のAPCバルブ151bを全開にして、処理室5の圧力を第3所定圧力(例えば、第1所定圧力(P1))まで減圧させる(ステップS5)。このとき、バイパスライン13aのバルブ152aは閉じた状態である。ここで、排気ライン13の配管の径は、高真空用のAPCバルブ151bを全開にしたときに所定の固定レートで排気可能になるように構成される。所定の固定レートは、例えば50Pa/secから100Pa/secである。上述のように、このステップS5は、APCバルブ151aからAPCバルブ151bに制御バルブを切替えるためのAPCバルブ切替ステップである。よって、第3所定圧力が、第1所定圧力(P1)または限界圧力に到達するまで、ステップS5のステップ時間を設ける必要が無い。但し、排気ライン13の配管の径は、バイパスライン13aの配管の径よりも大きいため、APCバルブ151aを全開の時の到達圧力よりもAPCバルブ151bを全開の時の到達圧力が低くなる。そこで、第3所定圧力が、第1所定圧力(P1)よりも低い圧力、例えば、APCバルブ151bを全開の時の到達圧力になるまでの時間を、ステップS5のステップ時間として設定するようにしてもよい。この第3所定圧力は、ステップS4のリークチェック終了時の圧力より低い、本実施形態では第1所定圧力(P1)まで減圧されるが、この圧力に限定されず、例えば、第1所定圧力(P1)より低くても高くても構わない。但し、第3所定圧力は、第1所定圧力(P1)または処理圧力よりも低い方が好ましい。更に、ステップS4のリークチェックと同様に、ステップS5でもAPCバルブ151bを全開の時の到達圧力(第3所定圧力)でリークチェックを行うようにしてもよい。そして、このステップ(ステップS5)でリークチェックを行う場合、ステップS4におけるリークチェックを省略してもよいし、両方のステップで実行するようにしてもよい。また、ステップS5でのリークチェックの場合、リークチェックエラーとして、APCバルブ151bを開くことができない程度までリーク量があれば、このレシピを強制終了(ステップS7)させる。なお、処理室5は処理温度で維持されている。
【0038】
次に、圧力制御コントローラ191は、ステップNo.6のレシピステップ「APC2 Press」に基づいて高真空用のAPCバルブ151bに圧力コマンド「PRESS」を指示し、高真空用のAPCバルブ151bの開度を調整して、基板10を処理する処理圧力(P3)に第2所定時間(T2)維持させる(ステップS6)。このとき、バイパスライン13aのバルブ152aは閉じた状態であり、排気ライン13のバルブ152bは開いた状態である。ここで、処理室5の温度も処理温度で維持されている。つまり、ステップS6は、処理圧力、及び、処理温度で維持しつつ基板10が処理される基板処理ステップである。また、処理圧力(P3)は、第1所定圧力(P1)及び第3所定圧力よりも高く第2所定圧力(P2)よりも低く設定される。なお、処理圧力(P3)は膜種にもよるが、10数Pa程度~100Pa程度の範囲に維持される。また、処理温度は、ステップS2で処理温度まで昇温されてからステップS3からステップS6まで維持されるため、少なくともステップS3からステップS6のステップ時間は短いほうが好ましい。
【0039】
ステップS6の基板処理ステップが終了後、圧力制御コントローラ191は、ステップNo.7のレシピステップ「APC2 Full Close)」に基づいて高真空用のAPCバルブ151bに圧力コマンド「CLOSE」を指示し、バイパスライン13aのバルブ152a、排気ライン13のバルブ152bおよび高真空用のAPC151bを閉じた状態で、処理室5の圧力が大気圧以上になるまで昇圧させる(ステップS7)。図示しないステップS8において、処理済の基板10が処理室5から搬出される(ボートアンロード)工程が実行される。なお、本実施形態において、基板処理工程は、ステップS6だけではなく、ステップS2からステップS7までをいい、更に、ボートロード工程(ステップS0)とボートアンロード工程(ステップS8)を含むように構成してもよいのは言うまでもない。
【0040】
本実施形態によれば、広帯域用および高真空用の圧力制御が可能になる。広帯域用の圧力制御により緩やかに減圧することが可能であり、パーティクルの発生を抑制することが可能になる。また、高真空用の圧力制御により高真空での安定的な成膜が可能であり、例えば、低ストレスSiNプロセスが可能である。ここで、低ストレスSiNとは通常のSiNよりも膜ストレス(膜応力によるウエハの反り)を下げたSiN膜であり、通常のSiNの成膜時よりも低い圧力(高真空圧)で成膜される。
【0041】
(変形例)
実施形態では、バイパスライン13aの配管の径は、広帯域用のAPCバルブ151aを全開にしたときに所定の固定レートで排気可能になるように構成され、広帯域用のAPCバルブ151aと高真空用のAPC151bとを並行して制御しないようにしているが、これに限定されるものではない。
【0042】
例えば、圧力制御コントローラ191は、広帯域用のAPCバルブ151a及び高真空用のAPC151bの開度を調整して、処理室5の圧力を大気圧から第2所定圧力(P2)まで、及び/又は、処理室5の圧力を第2所定圧力(P2)から第2所定圧力(P2)より低い第1所定圧力(P1)までを一定レートで減圧させるようにしてもよい。これにより、配管の径の選択の自由度が増す。特に径を大きくできる。これにより、一つのAPCバルブでも対応できる。また、大気圧から第2所定圧力(P2)までのレートと第2所定圧力(P2)から第2所定圧力(P2)より低い第1所定圧力(P1)までのレートを異ならせることができる。結果、細かい緻密な圧力制御が可能となる。
【0043】
本開示は、半導体製造装置だけでなくLCD装置のようなガラス基板を処理する装置でも適用できる。
【0044】
以上、本実施形態および変形例に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0045】
100 基板処理装置
5 処理室
10 基板
13 排気ライン
13a バイパスライン
151a APCバルブ(第1の圧力調整弁)
151b APCバルブ(第2の圧力調整弁)
191 圧力制御コントローラ