(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】光学積層フィルムロールの製造方法、および、光学積層フィルムロール
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220909BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220909BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2020558401
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2019045165
(87)【国際公開番号】W WO2020110816
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2018222309
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】渥美 匡広
(72)【発明者】
【氏名】西川 秀幸
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-215360(JP,A)
【文献】特開2005-283670(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173647(WO,A1)
【文献】特開2014-170061(JP,A)
【文献】特開2007-57607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00-43/00
G02F 1/13
G02F 1/13363
G02F 1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーと、光配向性ポリマーとを含有するバインダー組成物を用いて形成される、バインダー層と、前記バインダー層上に設けられる光学異方性層とを有し、
前記光学異方性層が、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を用いて形成され、
前記バインダー層と前記光学異方性層とが互いに隣接して積層されている、光学積層フィルムのロール状物を作製する、光学積層フィルムロールの製造方法であって、
搬送される長尺な支持体上に、バインダーと、光配向性ポリマーとを含有するバインダー組成物を塗布し、第1の塗膜を形成する第1塗布工程と、
前記第1塗布工程の後に、バインダー層を形成するバインダー層形成工程と、
光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種を作用させる作用工程と、
偏光または無偏光を照射する光照射工程と、
前記バインダー層上に、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を直接塗布し、前記バインダー層の幅よりも広い幅となる第2の塗膜を形成する第2塗布工程と、
前記第2塗布工程の後に、前記バインダー層の幅よりも広い幅となる光学異方性層を形成し、光学積層フィルムを作製する光学異方性層形成工程と、
前記光学異方性層形成工程の後に、前記光学積層フィルムをロール状に巻き取り、光学積層フィルムロールを作製する巻取工程と、を有し、
前記作用工程が、前記バインダー層形成工程と前記第2塗布工程との間、または、前記バインダー層形成工程もしくは前記第2塗布工程と同時、に行う工程であり、
前記光照射工程が、前記バインダー層形成工程と前記第2塗布工程との間、または、前記バインダー層形成工程もしくは前記第2塗布工程と同時、に行う工程であり、
前記光配向性ポリマーが、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により分解して極性基を生じる開裂基を含む繰り返し単位Aを有する光配向性ポリマーであって、
前記繰り返し単位Aが、側鎖に前記開裂基を有し、かつ、前記側鎖の前記開裂基よりも末端側にフッ素原子またはケイ素原子を有し、
以下に示す条件1または条件2を満たす、光配向性ポリマーである、光学積層フィルムロールの製造方法。
条件1:前記繰り返し単位Aとは別に、更に光配向性基を含む繰り返し単位Bを有する。
条件2:前記繰り返し単位Aが、前記側鎖の前記開裂基よりも主鎖側に光配向性基を含む。
【請求項2】
前記作用工程が、光を作用させ、バインダー層形成工程と同時に行う工程であり、
前記光照射工程が、前記バインダー層形成工程と前記第2塗布工程との間に行う工程である、請求項1に記載の光学積層フィルムロールの製造方法。
【請求項3】
バインダーと、光配向性ポリマーとを含有するバインダー組成物を用いて形成される、バインダー層と、前記バインダー層上に設けられる光学異方性層とを有し、
前記光学異方性層が、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を用いて形成され、
前記バインダー層と前記光学異方性層とが互いに隣接して積層された光学積層フィルムのロール状物であって、
前記光学異方性層が、前記バインダー層の表面および端面を覆うように積層されている、光学積層フィルムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層フィルムロールの製造方法および光学積層フィルムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
光学異方性材料からなる位相差板は、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示装置、タッチパネル、輝度向上膜などの表示装置に使用されている。
これらの表示装置は、屈折率の異なる層を積層する構造を有するため、外光が各層の界面で反射し、コントラスト低下や映り込みの問題などを生じることが知られている。
そこで、これらの表示装置(特に、液晶表示装置や有機EL表示装置など)には、従来から、外光反射による悪影響を抑制するために、位相差板と偏光膜とから構成される円偏光板が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「液晶性化合物と、液晶性を有さず光および酸の少なくとも一つの作用により極性基を生成するポリマーとを含有する液晶組成物。」が記載されており([請求項1])、また、この液晶組成物から形成される少なくとも1層の光学異方性層を有する位相差板、(円)偏光板および画像表示装置が記載されている([請求項7]~[請求項12])。
また、特許文献1には、液晶組成物に含まれる極性基を生成するポリマー(極性変換ポリマー)について、「液晶組成物中に含まれる極性変換ポリマーは、液晶組成物を支持体上に塗布して位相差板とする際に表面を平滑化するレベリング機能と、複数層の光学異方性層を有する位相差板を作製する際に光学異方性層間に別途形成される配向膜の代わりに、下層光学異方性層の空気界面側に移行して極性変換ポリマーを多く含む表面濃縮層を形成する機能を有する。さらに紫外線などの光の作用や酸の作用により、極性変換ポリマー中に極性基を生成させ、この表面濃縮層にラビングなどによって配向機能を付与し、上層光学異方性層となる液晶性化合物を配向させる配向膜機能を有する。また、極性基を生成させることで、表面べたつきを抑えたり、上層光学異方性層塗布時のハジキを低減することが可能である。さらには、液晶性化合物や用いる塗布溶剤などに対して溶解耐性を付与したり、液晶性化合物との相互作用を高めることが可能となり、著しく配向膜機能を向上させることができる。」と記載されている([0055])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載された液晶組成物について確認したところ、上述した通り、極性変換ポリマーを多く含む表面濃縮層が配向膜として利用できることが確認できたが、配向機能を付与するためには、この表面濃縮層にラビング処理を施す必要があることを明らかとした。
そこで、本発明者らは、極性変換ポリマーに更に光配向性基を導入した新規ポリマーを用い、表面濃縮層に光配向処理を施すことにより、配向機能(規制力)を付与することを検討した。
検討の結果、本発明者らは、新規ポリマーを含有する組成物を用いて形成した下層(バインダー層)の表面に、上層(光学異方性層)を形成して光学積層フィルムを作製した場合、下層の表面が露出した部分が残存していると、得られた光学積層フィルムをロール状に巻き取った際に、露出部分が、1周前に存在する支持体などの裏面と接着してしまい、使用時に光学積層フィルムを送り出すことができないという問題があることを明らかにした。
【0006】
そこで、本発明は、光学積層フィルムの送り出し操作に優れた光学積層フィルムロールを作製する光学積層フィルムロールの製造方法、および、光学積層フィルムロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、バインダー層の幅よりも、バインダー層の上層に隣接して形成される光学異方性層の幅を広くすることにより、光学積層フィルムの送り出し操作に優れた光学積層フィルムロールを作製できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] バインダーと、光配向性ポリマーとを含有するバインダー組成物を用いて形成される、バインダー層と、バインダー層上に設けられる光学異方性層とを有し、
光学異方性層が、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を用いて形成され、
バインダー層と光学異方性層とが互いに隣接して積層されている、光学積層フィルムのロール状物を作製する、光学積層フィルムロールの製造方法であって、
搬送される長尺な支持体上に、バインダーと、光配向性ポリマーとを含有するバインダー組成物を塗布し、第1の塗膜を形成する第1塗布工程と、
第1塗布工程の後に、バインダー層を形成するバインダー層形成工程と、
光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種を作用させる作用工程と、
偏光または無偏光を照射する光照射工程と、
バインダー層上に、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を直接塗布し、バインダー層の幅よりも広い幅となる第2の塗膜を形成する第2塗布工程と、
第2塗布工程の後に、バインダー層の幅よりも広い幅となる光学異方性層を形成し、光学積層フィルムを作製する光学異方性層形成工程と、
光学異方性層形成工程の後に、光学積層フィルムをロール状に巻き取り、光学積層フィルムロールを作製する巻取工程と、を有し、
作用工程が、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間、または、バインダー層形成工程もしくは第2塗布工程と同時、に行う工程であり、
光照射工程が、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間、または、バインダー層形成工程もしくは第2塗布工程と同時、に行う工程であり、
光配向性ポリマーが、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により分解して極性基を生じる開裂基を含む繰り返し単位Aを有する光配向性ポリマーであって、
繰り返し単位Aが、側鎖に開裂基を有し、かつ、側鎖の開裂基よりも末端側にフッ素原子またはケイ素原子を有し、
以下に示す条件1または条件2を満たす、光配向性ポリマーである、光学積層フィルムロールの製造方法。
条件1:繰り返し単位Aとは別に、更に光配向性基を含む繰り返し単位Bを有する。
条件2:繰り返し単位Aが、側鎖の開裂基よりも主鎖側に光配向性基を含む。
【0009】
[2] 作用工程が、光を作用させ、バインダー層形成工程と同時に行う工程であり、
光照射工程が、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間に行う工程である、[1]に記載の光学積層フィルムロールの製造方法。
【0010】
[3] バインダーと、光配向性ポリマーとを含有するバインダー組成物を用いて形成される、バインダー層と、バインダー層上に設けられる光学異方性層とを有し、
光学異方性層が、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を用いて形成され、
バインダー層と光学異方性層とが互いに隣接して積層された光学積層フィルムのロール状物であって、
光学異方性層が、バインダー層の表面および端面を覆うように積層されている、光学積層フィルムロール。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光学積層フィルムの送り出し操作に優れた光学積層フィルムロールを作製する光学積層フィルムロールの製造方法、および、光学積層フィルムロールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本願明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
[光学積層フィルムロールの製造方法]
本発明の光学積層フィルムロールの製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも略す。)は、バインダーと、光配向性ポリマーとを含有するバインダー組成物を用いて形成される、バインダー層と、バインダー層上に設けられる光学異方性層とを有し、光学異方性層が、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を用いて形成され、バインダー層と光学異方性層とが互いに隣接して積層されている、光学積層フィルムのロール状物を作製する、光学積層フィルムロールの製造方法である。
【0014】
そして、本発明の製造方法は、
搬送される長尺な支持体上に、バインダーと、光配向性ポリマーとを含有するバインダー組成物を塗布し、第1の塗膜を形成する第1塗布工程と、
第1塗布工程の後に、バインダー層を形成するバインダー層形成工程と、
光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種を作用させる作用工程と、
偏光または無偏光を照射する光照射工程と、
バインダー層上に、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を直接塗布し、バインダー層の幅よりも広い幅となる第2の塗膜を形成する第2塗布工程と、
第2塗布工程の後に、バインダー層の幅よりも広い幅となる光学異方性層を形成し、光学積層フィルムを作製する光学異方性層形成工程と、
光学異方性層形成工程の後に、光学積層フィルムをロール状に巻き取り、光学積層フィルムロールを作製する巻取工程と、
を有する。
ここで、作用工程は、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間、または、バインダー層形成工程もしくは第2塗布工程と同時、に行う工程であり、光照射工程は、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間、または、バインダー層形成工程もしくは第2塗布工程と同時、に行う工程である。
【0015】
また、本発明の製造方法においては、光配向性ポリマーが、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により分解して極性基を生じる開裂基を含む繰り返し単位Aを有する光配向性ポリマーであって、繰り返し単位Aが、側鎖に開裂基を有し、かつ、側鎖の開裂基よりも末端側にフッ素原子またはケイ素原子を有し、以下に示す条件1または条件2を満たす、光配向性ポリマーである。
条件1:繰り返し単位Aとは別に、更に光配向性基を含む繰り返し単位Bを有する。
条件2:繰り返し単位Aが、側鎖の開裂基よりも主鎖側に光配向性基を含む。
【0016】
本発明においては、上述した通り、バインダー層の幅よりも、バインダー層の上層に隣接して形成される光学異方性層の幅を広くすることにより、光学積層フィルムの送り出し操作に優れた光学積層フィルムロールを作製することができる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
まず、本発明の製造方法においては、バリア層の上層に設ける光学異方性層用の組成物の塗布性(以下、「上層塗布性」ともいう。)を考慮して、バリア層の空気界面側に偏在した光配向性ポリマーに対して、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種を作用させ、極性基を生じさせている。
そのため、光学異方性層の形成後において、バリア層の表面が露出した部分が残存していると、上述した極性基の存在により、ロール状に巻き取った際に、1周前に存在する支持体などの裏面と接着しやすくなり、その結果、光学積層フィルムの送り出し操作が劣ると考えられる。
よって、本発明の製造方法においては、バインダー層の幅よりも光学異方性層の幅を広くすることにより、極性基を有するバインダー層の表面の露出を防ぎ、その結果、ロール状に巻き取った際の接着を抑制することができたと考えられる。
【0017】
以下に、本発明の製造方法が有する第1塗布工程、バインダー層形成工程、作用工程、光照射工程、第2塗布工程、光学異方性層形成工程および巻取工程、ならびに、任意の工程を説明する。
【0018】
〔第1塗布工程〕
第1塗布工程は、搬送される長尺な支持体上に、バインダーと、光配向性ポリマーとを含有するバインダー組成物を塗布し、第1の塗膜を形成する工程である。
【0019】
<支持体>
支持体としては、例えば、バックアップロールに巻きかけることが可能なポリマーフィルムが挙げられる。
ポリマーフィルムの材料としては、セルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ラクトン環含有重合体等のアクリル酸エステル重合体を有するアクリル系ポリマー;熱可塑性ノルボルネン系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー;、塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;またはこれらのポリマーを混合したポリマーが挙げられる。
【0020】
上記支持体の厚みについては特に限定されないが、5~200μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましく、20~90μmであることが更に好ましい。
【0021】
<バインダー組成物>
上述した支持体上に塗布するバインダー組成物は、バインダーと、後述する光配向性ポリマーとを含有する組成物であれば特に限定されないが、重合開始剤、光酸発生剤および溶媒などを含有していてもよい。
【0022】
(バインダー)
バインダー組成物に含まれるバインダーは、特に限定されず、それ自体は重合反応性のない樹脂のみから構成されるような単に乾燥固化する樹脂(以下、「樹脂バインダー」ともいう。)であってもよく、重合性化合物であってもよい。
【0023】
{樹脂バインダー}
樹脂バインダーとしては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アイオノマー樹脂、エチレンエチルアクリレート樹脂、アクリロニトリルアクリレートスチレン共重合樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリロニトリル塩化ポリエチレンスチレン共重合樹脂、エチレン酢ビ樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、ポリスチレンマレイン酸共重合樹脂、ポリスチレンアクリル酸共重合樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート樹脂、ブチラール樹脂、ホルマール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、および、これらの共重合樹脂などが挙げられる。
【0024】
{重合性化合物}
重合性化合物としては、例えば、エポキシ系モノマー、アクリル系モノマー、オキセタニル系モノマーなどが挙げられ、なかでも、エポキシ系モノマーおよびアクリル系モノマーが好ましい。
また、本発明においては、重合性化合物として、重合性液晶化合物を用いてもよい。
【0025】
エポキシ系モノマーであるエポキシ基含有モノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0026】
アクリル系モノマーである、アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーとしては、3官能モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO(プロピレンオキサイド)変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO(エチレンオキサイド)変性トリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートが挙げられる。また、4官能以上のモノマー、オリゴマーとして、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等を例示することができる。
【0027】
重合性液晶化合物は、特に限定されず、例えば、ホメオトロピック配向、ホモジニアス配向、ハイブリッド配向およびコレステリック配向のいずれかの配向が可能な化合物を用いることができる。
ここで、一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできるが、棒状液晶化合物(以下、「CLC」とも略す。)またはディスコティック液晶化合物(円盤状液晶化合物)(以下、「DLC」とも略す。)を用いることが好ましく、また、モノマーであるか、重合度が100未満の比較的低分子量な液晶化合物を用いることが好ましい。
また、重合性液晶化合物が有する重合性基としては、具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ビニル基等が挙げられる。
このような重合性液晶化合物を重合させることにより、液晶化合物の配向を固定することができる。なお、液晶化合物が重合によって固定された後においては、もはや液晶性を示す必要はない。
【0028】
棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1や特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものを好ましく用いることができ、ディスコティック液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]や特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものを好ましく用いることができるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明においては、上記重合性液晶化合物として、逆波長分散性の液晶化合物を用いることができる。
ここで、本明細書において「逆波長分散性」の液晶化合物とは、これを用いて作製された位相差フィルムの特定波長(可視光範囲)における面内のレターデーション(Re)値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が同等または高くなるものをいう。
【0030】
逆波長分散性の液晶化合物は、上記のように逆波長分散性のフィルムを形成できるものであれば特に限定されず、例えば、特開2008-297210号公報に記載の一般式(I)で表される化合物(特に、段落番号[0034]~[0039]に記載の化合物)、特開2010-84032号公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落番号[0067]~[0073]に記載の化合物)、および、特開2016-081035公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落番号[0043]~[0055]に記載の化合物)等を用いることができる。
更に、特開2011-6360号公報の段落番号[0027]~[0100]、特開2011-6361号公報の段落番号[0028]~[0125]、特開2012-207765号公報の段落番号[0034]~[0298]、特開2012-77055号公報の段落番号[0016]~[0345]、WO12/141245号公報の段落番号[0017]~[0072]、WO12/147904号公報の段落番号[0021]~[0088]、WO14/147904号公報の段落番号[0028]~[0115]に記載の化合物を用いることができる。
【0031】
(光配向性ポリマー)
バインダー組成物に含まれる光配向性ポリマー(以下、本明細書においては「本発明の光配向性ポリマー」ともいう。)は、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種の作用により分解して極性基を生じる開裂基を含む繰り返し単位Aを有する光配向性ポリマーである。
また、本発明の光配向性ポリマーは、繰り返し単位Aが、側鎖に開裂基を有し、かつ、側鎖の開裂基よりも末端側にフッ素原子またはケイ素原子を有する。
更に、本発明の光配向性ポリマーは、以下に示す条件1または条件2を満たす態様で光配向性基を有する。
条件1:繰り返し単位Aとは別に、更に光配向性基を含む繰り返し単位Bを有する。
条件2:繰り返し単位Aが、側鎖の開裂基よりも主鎖側に光配向性基を含む。
【0032】
ここで、繰り返し単位Aが含む「極性基」とは、ヘテロ原子またはハロゲン原子を少なくとも1原子以上有する基をいい、具体的には、例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシ基、アミノ基、ニトロ基、アンモニウム基、シアノ基などが挙げられる。なかでも、水酸基、カルボキシ基が好ましい。
また、「極性基を生じる開裂基」とは、開裂によって上述した極性基を生じる基をいうが、本発明においては、ラジカル開裂後に酸素分子と反応し、極性基を生成する基も含む。
【0033】
本発明の光配向性ポリマーは、条件1を満たす場合、乾燥時の乾燥風で引き起こされるバインダー層の膜厚ムラ(以下、「風ムラ」ともいう。)をより抑制することができる理由から、繰り返し単位Aが、下記式(1)で表される繰り返し単位、または、下記式(2-1)もしくは(2-2)で表される繰り返し単位であり、繰り返し単位Bが、下記式(3)で表される繰り返し単位、または、下記式(4-1)もしくは(4-2)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
これらのうち、繰り返し単位Aが、下記式(1)で表される繰り返し単位であり、繰り返し単位Bが、下記式(3)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化1】
【0034】
上記式(1)および(2-1)ならびに(3)および(4-1)中、R1は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、式(1)および(3)中の複数のR1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
R1としては、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0035】
また、上記式(1)、(2-1)および(2-2)中、X1およびX2は、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表し、RKは、開裂基を表し、RLは、フッ素原子またはケイ素原子を含む1価の有機基を表す。
【0036】
上記式(1)、(2-1)および(2-2)中のX1およびX2が示す2価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1~10の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基、エーテル基(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、および、置換基を有していてもよいイミノ基(-NH-)からなる群から選択される少なくとも1以上の基が挙げられる。
【0037】
ここで、アルキレン基、アリーレン基およびイミノ基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはエチル基であるのが特に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であるのが特に好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、なかでも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
【0038】
炭素数1~10の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基について、直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、デシレン基などが挙げられる。
また、分岐状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、2-エチル-2-メチルプロピレン基などが挙げられる。
また、環状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロデシレン基、アダマンタン-ジイル基、ノルボルナン-ジイル基、exo-テトラヒドロジシクロペンタジエン-ジイル基などが挙げられ、なかでも、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0039】
炭素数6~12のアリーレン基としては、具体的には、例えば、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、2,2’-メチレンビスフェニル基などが挙げられ、なかでも、フェニレン基が好ましい。
【0040】
上記式(1)、(2-1)および(2-2)中のRKが示す開裂基としては、例えば、下記式(rk-1)~(rk-13)のいずれかで表される開裂基(結合)が挙げられる。
【化2】
【0041】
上記式(rk-1)~(rk-13)中、*1は、式(1)、(2-1)および(2-2)中のX1およびX2のいずれか一方との結合位置を表し、*2は、式(1)、(2-1)および(2-2)中のX1およびX2のうち*1と結合していない側との結合位置を表し、Rは、それぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。
ここで、Rが示す1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状または環状のアルキル基、置換基を有していていてもよい炭素数6~20のアリール基等が挙げられる。
【0042】
また、上記式(rk-10)および(rk-11)中のアニオン部は、開裂に影響を及ぼさないため特に限定されず、無機のアニオンでも有機のアニオンでも使用することが可能である。
無機のアニオンとしては、具体的には、例えば、塩化物イオン、臭化物イオンなどのハロゲン化物イオン;スルホン酸アニオン;等が挙げられる。
有機のアニオンとしては、具体的には、例えば、酢酸アニオンなどのカルボン酸アニオン;メタンスルホン酸アニオン、パラトルエンスルホン酸アニオンなどの有機スルホン酸アニオン;等を挙げることができる。
【0043】
本発明においては、これらの開裂基のうち、光を利用して開裂させる場合においては、量子効率の観点から、上記式(rk-1)で表される開裂基が好ましく、また、酸を利用して開裂させる場合においては、開裂速度の観点から、上記式(rk-9)で表される開裂基が好ましい。
【0044】
上記式(1)、(2-1)および(2-2)中のRLが示す、フッ素原子またはケイ素原子を含む1価の有機基としては、例えば、少なくとも1つの炭素原子がフッ素原子を置換基として有する、炭素数1~20のアルキル基または炭素数2~20のアルケニル基が挙げられる。
【0045】
また、上記式(3)、(4-1)および(4-2)中、X1は、単結合または2価の連結基を表し、ROは、光配向性基を表す。
【0046】
上記式(3)、(4-1)および(4-2)中のX1が示す2価の連結基としては、例えば、上記式(1)、(2-1)および(2-2)中のX1と同様のものが挙げられる。
【0047】
上記式(3)、(4-1)および(4-2)中のROが示す光配向性基とは、異方性を有する光(例えば、平面偏光など)の照射により、再配列や異方的な化学反応が誘起される光配向機能を有する基をいい、配向の均一性に優れ、熱的安定性や化学的安定性も良好となる理由から、光の作用により二量化および異性化の少なくとも一方が生じる光配向性基が好ましい。
【0048】
ここで、光の作用により二量化する光配向性基としては、具体的には、例えば、桂皮酸誘導体(M. Schadt et al., J. Appl. Phys., vol. 31, No. 7, page 2155 (1992))、クマリン誘導体(M. Schadt et al., Nature., vol. 381, page 212 (1996))、カルコン誘導体(小川俊博他、液晶討論会講演予稿集,2AB03(1997))、マレイミド誘導体、および、ベンゾフェノン誘導体(Y. K. Jang et al., SID Int. Symposium Digest, P-53(1997))からなる群から選択される少なくとも1種の誘導体の骨格を有する基などが好適に挙げられる。
一方、光の作用により異性化する光配向性基としては、具体的には、例えば、アゾベンゼン化合物(K. Ichimura et al.,Mol.Cryst.Liq.Cryst .,298,221(1997))、スチルベン化合物(J.G.Victor and J.M.Torkelson,Macromolecules,20,2241(1987))、スピロピラン化合物(K. Ichimura et al., Chemistry Letters, page 1063 (1992) ;K.Ichimura et al., Thin Solid Films, vol. 235, page 101 (1993) )、桂皮酸化合物(K.Ichimura et al.,Macromolecules,30,903(1997))、および、ヒドラゾノ-β-ケトエステル化合物(S. Yamamura et al., Liquid Crystals, vol. 13, No. 2, page 189 (1993))からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の骨格を有する基などが好適に挙げられる。
【0049】
これらのうち、光配向性基が、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体、カルコン誘導体およびマレイミド誘導体、アゾベンゼン化合物、スチルベン化合物およびスピロピラン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の誘導体の骨格を有する基であることが好ましく、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体骨格を有する基であることがより好ましい。
【0050】
本発明の光配向性ポリマーは、条件1を満たす場合、酸を用いて開裂させる場合においては、開裂速度および合成の容易さの観点から、繰り返し単位Aが、下記式(7)で表される繰り返し単位であり、繰り返し単位Bが、下記式(8)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【化3】
【0051】
上記式(7)中、R1は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは、水素原子または1価の有機基を表し、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(7)中、Xは、水素原子またはフッ素原子を表し、maおよびnaは、それぞれ独立に1~20の整数を表す。
ここで、Rが示す1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の鎖状または環状のアルキル基、置換基を有していていてもよい炭素数6~20のアリール基等が挙げられる。
一方、上記式(8)中、R1は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、L1は、2価の連結基を表す。R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、R2、R3、R4、R5およびR6のうち、隣接する2つの基が結合して環を形成していてもよい。
【0052】
上記式(7)中のR1としては、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
また、上記式(7)中のRとしては、水素原子であることが好ましい。
また、上記式(7)中のmaは、1または2であることが好ましく、naは、3~7であることが好ましい。
また、上記式(7)中のXは、フッ素原子であることが好ましい。
【0053】
上記式(7)で表される繰り返し単位Aとしては、例えば、下記式(7-1)~(7-6)で表されるいずれかの単量体を重合することにより得られる繰り返し単位が挙げられる。
【0054】
【0055】
上記式(8)中のR1としては、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
また、上記式(8)中のL1が示す2価の連結基としては、光配向性基が液晶化合物と相互作用しやすくなり、上層として形成される光学異方性層の配向性(以下、「液晶配向性」ともいう。)がより良好となる理由から、置換基を有していてもよい炭素数1~18の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリーレン基、エーテル基(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、および、置換基を有していてもよいイミノ基(-NH-)からなる群から選択される少なくとも2以上の基を組み合わせた2価の連結基であることが好ましい。
【0056】
ここで、アルキレン基、アリーレン基およびイミノ基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基および水酸基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはエチル基であるのが特に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であるのが特に好ましい。
アリール基としては、例えば、炭素数6~12のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、α-メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ、ナフトキシ、イミダゾイルオキシ、ベンゾイミダゾイルオキシ、ピリジン-4-イルオキシ、ピリミジニルオキシ、キナゾリニルオキシ、プリニルオキシ、チオフェン-3-イルオキシなどが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。
【0057】
炭素数1~18の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基について、直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などが挙げられる。
また、分岐状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、2-エチル-2-メチルプロピレン基などが挙げられる。
また、環状のアルキレン基としては、具体的には、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロデシレン基、アダマンタン-ジイル基、ノルボルナン-ジイル基、exo-テトラヒドロジシクロペンタジエン-ジイル基などが挙げられ、中でも、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0058】
炭素数6~12のアリーレン基としては、具体的には、例えば、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、2,2’-メチレンビスフェニル基などが挙げられ、中でも、フェニレン基が好ましい。
【0059】
これらのうち、上記式(8)中のL1が示す2価の連結基としては、液晶配向性がより良好となる理由から、窒素原子とシクロアルカン環とを含む2価の連結基であることが好ましい。なお、本発明においては、シクロアルカン環を構成する炭素原子の一部は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子で置換されていてもよい。また、シクロアルカン環を構成する炭素原子の一部が窒素原子で置換されている場合は、シクロアルカン環とは別に窒素原子を有していなくてもよい。
【0060】
また、シクロアルカン環は、炭素数6以上のシクロアルカン環であることが好ましく、その具体例としては、シクロヘキサン環、シクロペプタン環、シクロオクタン環、シクロドデカン環、シクロドコサン環等が挙げられる。
【0061】
本発明においては、液晶配向性がより良好となる理由から、上記式(8)中のL
1が、下記式(11)~(20)のいずれかで表される2価の連結基であることが好ましい。
【化5】
上記式(11)~(20)中、*1は、上記式(8)中の主鎖を構成する炭素原子との結合位置を表し、*2は、上記式(8)中のカルボニル基を構成する炭素原子との結合位置を表す。
【0062】
上記式(11)~(20)のいずれかで表される2価の連結基のうち、バインダー層を形成する際に用いる溶媒に対する溶解性と、得られるバインダー層の耐溶剤性とのバランスが良好となる理由から、上記式(12)、(13)、(17)および(18)のいずれかで表される2価の連結基であることが好ましい。
【0063】
次に、上記記式(8)中のR2、R3、R4、R5およびR6の一態様が表す置換基について説明する。なお、上記式(8)中のR2、R3、R4、R5およびR6が、置換基ではなく水素原子であってもよいことは上述した通りである。
【0064】
上記式(8)中のR
2、R
3、R
4、R
5およびR
6の一態様が表す置換基は、光配向性基が液晶化合物と相互作用しやすくなり、液晶配向性がより良好となる理由から、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、シアノ基、アミノ基、または、下記式(10)で表される基であることが好ましい。
【化6】
ここで、上記式(10)中、*は、上記式(8)中のベンゼン環との結合位置を表し、R
9は、1価の有機基を表す。
【0065】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
【0066】
炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基について、直鎖状のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基などが挙げられる。
分岐状のアルキル基としては、炭素数3~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、イソプロピル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
環状のアルキル基としては、炭素数3~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0067】
炭素数1~20の直鎖状のハロゲン化アルキル基としては、炭素数1~4のフルオロアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基などが挙げられ、中でも、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0068】
炭素数1~20のアルコキシ基としては、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数6~18のアルコキシ基がより好ましく、炭素数6~14のアルコキシ基が更に好ましい。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基などが好適に挙げられ、中でも、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基がより好ましい。
【0069】
炭素数6~20のアリール基としては、炭素数6~12のアリール基が好ましく、具体的には、例えば、フェニル基、α-メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
【0070】
炭素数6~20のアリールオキシ基としては、炭素数6~12のアリールオキシ基が好
ましく、具体的には、例えば、フェニルオキシ基、2-ナフチルオキシ基などが挙げられ、中でも、フェニルオキシ基が好ましい。
【0071】
アミノ基としては、例えば、第1級アミノ基(-NH2);メチルアミノ基などの第2級アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、含窒素複素環化合物(例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンなど)の窒素原子を結合手とした基などの第3級アミノ基;が挙げられる。
【0072】
上記式(10)で表される基について、上記式(10)中のR9が表す1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の直鎖状または環状のアルキル基が挙げられる。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基などが挙げられ、中でも、メチル基またはエチル基が好ましい。
環状のアルキル基としては、炭素数3~6のアルキル基が好ましく、具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、中でも、シクロヘキシル基が好ましい。
なお、上記式(10)中のR9が表す1価の有機基としては、上述した直鎖状のアルキル基および環状のアルキル基を直接または単結合を介して複数組み合わせたものであってもよい。
【0073】
本発明においては、光配向性基が液晶化合物と相互作用しやすくなり、液晶配向性がより良好となる理由から、上記式(8)中のR2、R3、R4、R5およびR6のうち、少なくともR4が上述した置換基を表していることが好ましく、更に、得られる光配向性共重合体の直線性が向上し、液晶化合物と相互作用しやすくなり、液晶配向性が更に良好となる理由から、R2、R3、R5およびR6がいずれも水素原子を表すことがより好ましい。
【0074】
本発明においては、得られるバインダー層に光照射した際に反応効率が向上する理由から、上記式(8)中のR4が電子供与性の置換基であることが好ましい。
ここで、電子供与性の置換基(電子供与性基)とは、ハメット値(Hammett置換基定数σp)が0以下の置換基のことをいい、例えば、上述した置換基のうち、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
これらのうち、アルコキシ基であることが好ましく、膜厚ムラ(風ムラ)をより抑制でき、液晶配向性がより良好となる理由から、炭素数が6~16のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数7~10のアルコキシ基であることが更に好ましい。
【0075】
上記式(8)で表される繰り返し単位Bとしては、例えば、下記式(8-1)~(8-6)で表されるいずれかの単量体を重合することにより得られる繰り返し単位が挙げられる。
【0076】
【0077】
本発明の光配向性ポリマーは、条件1を満たす場合、上述した繰り返し単位Aおよび繰り返し単位B以外に、他の繰り返し単位を有していてもよい。
このような他の繰り返し単位を形成するモノマー(ラジカル重合性単量体)としては、例えば、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
【0078】
条件1を満たす本発明の光配向性ポリマーとしては、具体的には、例えば、上記式(7-1)~(7-6)で表されるいずれかの単量体と、上記式(8-1)~(8-6)で表されるいずれかの単量体と、任意の他の繰り返し単位とを用いた共重合体が挙げられ、なかでも、下記式C-1~C-5で表される共重合体が好適に挙げられる。
【化8】
【0079】
一方、本発明の光配向性ポリマーは、条件2を満たす場合、上層に形成される光学異方性層の液晶配向性の観点から、繰り返し単位Aが、下記式(5)で表される繰り返し単位、または、下記式(6-1)もしくは(6-2)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
これらのうち、繰り返し単位Aが、下記式(5)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化9】
【0080】
上記式(5)および(6-1)中、R1は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、式(5)中の複数のR1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
R1としては、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0081】
また、上記式(5)、(6-1)および(6-2)中、X1、X2およびX3は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。
ここで、上記式(5)、(6-1)および(6-2)中のX1、X2およびX3が示す2価の連結基としては、例えば、上記式(1)、(2-1)および(2-2)中のX1と同様のものが挙げられる。
【0082】
また、上記式(5)、(6-1)および(6-2)中、RKは、開裂基を表す。
ここで、上記式(5)、(6-1)および(6-2)中のRKが示す開裂基としては、例えば、上記式(1)、(2-1)および(2-2)中のRKと同様、上述した式(rk-1)~(rk-13)のいずれかで表される開裂基(結合)が挙げられる。なお、上述した式(rk-1)~(rk-13)中、*1は、上記式(5)、(6-1)および(6-2)中のX3およびX2のいずれか一方との結合位置を表し、*2は、上記式(5)、(6-1)および(6-2)中のX3およびX2のうち*1と結合していない側との結合位置を表し、Rは、それぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表す。
【0083】
また、上記式(5)、(6-1)および(6-2)中、ROは、光配向性基を表す。
ここで、光配向性基としては、上記式(3)、(4-1)および(4-2)中のROが示す光配向性基と同様のものが挙げられる。
【0084】
条件2を満たす本発明の光配向性ポリマーとしては、具体的には、例えば、下記式H-1~H-3で表される重合体が好適に挙げられる。
【化10】
【0085】
本発明の光配向性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1000~500000が好ましく、1500~400000がより好ましく、2000~300000が特に好ましい。
また、本発明の光配向性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、500~250000が好ましく、1000~200000がより好ましく、1500~150000が特に好ましい。
また、本発明の光配向性ポリマーの分散度(Mw/Mn)は、1.00~20.00が好ましく、1.00~18.00がより好ましく、1.00~16.00が特に好ましい。
なお、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって下記の条件で測定された値である。
[溶離液]テトラヒドロフラン(THF)
[装置名]Ecosec HLC-8220GPC(東ソー株式会社製)
[カラム]TSKgel SuperHZM-H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZM200(東ソー株式会社製)
[カラム温度]40℃
[流速]50ml/min
【0086】
(重合開始剤)
バインダー組成物は、バインダーとして重合性化合物を用いた場合には、重合開始剤を含有することが好ましい。
このような重合開始剤は特に限定されないが、重合反応の形式に応じて、熱重合開始剤および光重合開始剤が挙げられる。
本発明においては、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報、特開平10-29997号公報記載)等が挙げられる。
【0087】
(光酸発生剤)
バインダー組成物は、上述した光配向性ポリマーが、酸の作用により分解して極性基を生じる開裂基を含む1価の特定基を有する重合体である場合、光酸発生剤を含有していることが好ましい。
【0088】
光酸発生剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造に制限されるものではない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。本発明で使用される光酸発生剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光酸発生剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光酸発生剤がより好ましく、2以下の酸を発生する光酸発生剤が最も好ましい。なお本発明において、pKaは、基本的に25℃の水中におけるpKaを指す。水中で測定できないものは、測定に適する溶剤に変更し測定したものを指す。具体的には、化学便覧等に記載のpKaが参考にできる。pKaが3以下の酸としては、スルホン酸またはホスホン酸であることが好ましく、スルホン酸であることがより好ましい。
【0089】
光酸発生剤の例として、オニウム塩化合物、トリクロロメチル-s-トリアジン類、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、第四級アンモニウム塩類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、および、オキシムスルホネート化合物などを挙げることができる。これらの中でも、オニウム塩化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物が好ましく、オニウム塩化合物、オキシムスルホネート化合物が特に好ましい。光酸発生剤は、1種単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
(溶媒)
バインダー組成物は、バインダー層を形成する作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、具体的には、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
(塗布方法)
上述した支持体上にバインダー組成物を塗布する方法は特に限定されず、塗布方法としては、具体的には、例えば、スピンコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0092】
〔バインダー層形成工程〕
バインダー層形成工程は、第1塗布工程の後に、バインダー層を形成する工程であり、第1塗布工程で得られた第1の塗膜に対して硬化処理(紫外線の照射(光照射処理)または加熱処理)を施すことにより形成することができる。
また、硬化処理の条件は特に限定されないが、光照射による重合においては、紫外線を用いることが好ましい。照射量は、10mJ/cm2~50J/cm2であることが好ましく、20mJ/cm2~5J/cm2であることがより好ましく、30mJ/cm2~3J/cm2であることが更に好ましく、50~1000mJ/cm2であることが特に好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
【0093】
〔作用工程〕
作用工程は、光、熱、酸および塩基からなる群から選択される少なくとも1種を作用させる工程である。
また、作用工程は、上層としての光学異方性層を形成する際の塗布性を担保する観点から、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間、または、バインダー層形成工程または第2塗布工程と同時に行う工程である。
ここで、「バインダー層形成工程と第2塗布工程との間」とは、バインダー層形成工程(例えば、熱重合)で形成したバインダー層に対して、第2塗布工程を施す前に、作用工程(例えば、光を作用させる工程)を行うことをいう。
また、「バインダー層形成工程と同時」とは、バインダー層を形成する工程、例えば、光ラジカル発生によるオレフィン系モノマーの重合、および、光酸発生によるエポキシモノマーの重合などによりバインダー層を形成する工程と、作用工程(例えば、光を作用させる工程)とを同時に行うことをいう。すなわち、バインダー層の重合に用いる光と、開裂に用いる光が、同時に2つの作用を引き起こすことを意味する。
また、「第2塗布工程と同時」とは、バインダー層形成工程(例えば、光重合)で形成したバインダー層に対して、第2塗布工程を施す際に、作用工程(例えば、熱を作用させる工程)を同時に行うことをいう。
このうち、光を作用させ、バインダー層形成工程と同時に行う工程であることが、プロセス簡略化の観点から好ましい。
【0094】
また、光を作用させる方法としては、例えば、バインダー層に紫外線を照射する方法などが挙げられる。光源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等の紫外線を発光するランプ等を用いることが可能である。また、照射量は、10mJ/cm2~50J/cm2であることが好ましく、20mJ/cm2~5J/cm2であることがより好ましく、30mJ/cm2~3J/cm2であることが更に好ましく、50~1000mJ/cm2であることが特に好ましい。
また、熱を作用させる方法としては、例えば、バインダー層を加熱する方法などが挙げられる。加熱する温度としては、50~200℃であることが好ましく、60~150℃であることがより好ましく、70~130℃であることが特に好ましい。
また、酸を作用させる方法としては、例えば、バインダー層に予め酸を添加しておく方法、バインダー層に光酸発生剤を添加しておき、光をトリガーとして酸を発生させる方法、バインダー層に熱酸発生剤を添加しておき、熱をトリガーとして酸を発生させる方法などが挙げられる。これらのうち、光酸発生剤および熱酸発生剤を用いる方法が好ましい。
また、塩基を作用させる方法としては、例えば、バインダー層に予め塩基を添加しておく方法、バインダー層に光塩基発生剤を添加しておき、光をトリガーとして塩基を発生させる方法、バインダー層に熱塩基発生剤を添加しておき、熱をトリガーとして塩基を発生させる方法などが挙げられる。これらのうち、光塩基発生剤および熱塩基発生剤を用いる方法が好ましい。
【0095】
〔光照射工程〕
光照射工程は、偏光または無偏光を照射する工程、すなわち、配向規制力が付与されたバインダー層を形成する工程である。
また、光照射工程は、上層としての光学異方性層を形成する際の塗布性を担保する観点から、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間、または、バインダー層形成工程または第2塗布工程と同時に行う工程である。
ここで、「バインダー層形成工程と第2塗布工程との間」とは、バインダー層形成工程(例えば、熱重合)で形成したバインダー層に対して、第2塗布工程を施す前に、照射工程(例えば、偏光を照射する工程)を行うことをいう。
また、「バインダー層形成工程と同時」とは、バインダー層を形成する工程、例えば、光ラジカル発生によるオレフィン系モノマーの重合、および、光酸発生によるエポキシモノマーの重合などによりバインダー層を形成する工程と、照射工程(例えば、偏光を照射する工程)とを同時に行うことをいう。すなわち、バインダー層の重合に用いる光と、配向に用いる光が、同時に2つの作用を引き起こすことを意味する。
また、「第2塗布工程と同時」とは、バインダー層形成工程(例えば、光重合)で形成したバインダー層に対して、第2塗布工程を施す際に、照射工程(例えば、偏光を照射する工程)を同時に行うことをいう。
このうち、バインダー層形成工程と第2塗布工程との間に行う工程であることが好ましい。
【0096】
光照射工程において、照射する偏光は特に限定されず、例えば、直線偏光、円偏光、および、楕円偏光が挙げられ、直線偏光が好ましい。
また、照射する無偏光は、非偏光ともいい、塗膜表面に対して斜め方向から照射されることが好ましい。なお、「斜め方向」とは、塗膜表面の法線方向に対して極角θ(0<θ<90°)傾けた方向である限り、特に限定されず、目的に応じて適宜選択できるが、θが20~80°が好ましい。
【0097】
光照射する方法としては、例えば、紫外線を偏光照射する方法が好ましく挙げられ、具体的には、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板、ワイヤーグリッド偏光板など)を用いる方法;プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズムなど)やブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法;偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法;などが挙げられる。
ここで、紫外線照射に用いる光源としては、紫外線を発生する光源であれば特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0098】
〔第2塗布工程〕
第2塗布工程は、バインダー層上に、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を直接塗布し、バインダー層の幅よりも広い幅となる第2の塗膜を形成する工程である。
ここで、重合性液晶化合物としては、例えば、上述したバインダー組成物のバインダー成分として記載したものと同様のものが挙げられる。
また、「バインダー層の幅」とは、支持体上に形成されたバインダー層の幅をいい、支持体の搬送方向に対して直交する方向の幅をいう。
重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を塗布する方法は特に限定されず、第1塗布工程と同様の方法が挙げられる。
【0099】
〔光学異方性層形成工程〕
光学異方性層形成工程は、第2塗布工程の後に、バインダー層の幅よりも広い幅となる光学異方性層を形成し、光学積層フィルムを作製する工程であり、第2塗布工程で得られた第2の塗膜に対して硬化処理(紫外線の照射(光照射処理)または加熱処理)を施すことにより形成することができる。
また、硬化処理の条件は特に限定されないが、光照射による重合においては、紫外線を用いることが好ましい。照射量は、10mJ/cm2~50J/cm2であることが好ましく、20mJ/cm2~5J/cm2であることがより好ましく、30mJ/cm2~3J/cm2であることが更に好ましく、50~1000mJ/cm2であることが特に好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
【0100】
〔巻取工程〕
巻取工程は、光学異方性層形成工程の後に、光学積層フィルムをロール状に巻き取り、光学積層フィルムロールを作製する工程である。
ここで、ロール状に巻き取る方法は特に限定されず、例えば、搬送ローラを用い、巻芯に巻き付ける方法などが挙げられる。
【0101】
〔他の処理工程〕
本発明の製造方法は、上述した任意の作用工程とともに、第2塗布工程の前に、バインダー層の表面に対してプラズマ処理またはコロナ放電処理を施す処理工程を有していてもよい。
プラズマ処理としては、真空グロー放電、大気圧グロー放電等によるものがあり、その他の方法としてフレームプラズマ処理等の方法があげられる。これらは、例えば特開平6-123062号公報、特開平11-293011号公報、同11-5857号公報等に記載された方法を用いることが出来る。
コロナ放電処理は、従来公知のいずれの方法、例えば特公昭48-5043号公報、同47-51905号公報、特開昭47-28067号公報、同49-83767号公報、同51-41770号公報、同51-131576号公報、特開2001-272503号公報等に開示された方法により達成することができる。
【0102】
[光学積層フィルムロール]
本発明の光学積層フィルムロール(以下、「本発明のフィルムロール」とも略す。)は、バインダーと、光配向性ポリマーとを含有するバインダー組成物を用いて形成されるバインダー層と、バインダー層上に設けられる光学異方性層とを有し、光学異方性層が、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を用いて形成され、バインダー層と光学異方性層とが互いに隣接して積層された光学積層フィルムのロール状物であって、光学異方性層が、バインダー層の表面および端面を覆うように積層されている、光学積層フィルムロールである。
【0103】
〔バインダー層〕
本発明のフィルムロールが有するバインダー層は、バインダーと、光配向性ポリマーとを含有するバインダー組成物を用いて形成される層である。
ここで、バインダー組成物およびバインダー層の形成方法は、上述した本発明の製造方法において説明したものと同様である。
また、バインダー層は、光学異方性層の下層として有するものであるため、上述した本発明の製造方法において説明した作用工程および光照射工程後の状態である。
そのため、バインダー層に含まれる光配向性ポリマーは、極性基および光配向性基を含む繰り返し単位を有する単独重合体、または、極性基を含む繰り返し単位と光配向性基を含む繰り返し単位とを有する共重合体である。
【0104】
本発明においては、上記バインダー層の厚みについては特に限定されないが、0.1~10μmであるのが好ましく、0.5~5μmであるのがより好ましい。
【0105】
〔光学異方性層〕
本発明のフィルムロールが有する光学異方性層は、上述したように、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を用いて形成され、上述したバインダー層の表面および端面を覆うように積層されている。
ここで、光学異方性層を形成するための重合性液晶組成物としては、例えば、上述したバインダー組成物において任意成分として記載した重合性液晶化合物、重合開始剤および溶媒などを配合した組成物が挙げられる。
また、光学異方性層の形成方法は、上述した本発明の製造方法において説明したものと同様である。
更に、バインダー層の表面および端面とは、重合性液晶組成物を塗布する際に露出している面を意図しており、例えば、支持体上にバインダー層が形成されている場合には、バインダー層の裏面、すなわち、支持体との界面以外の表面全域をいう。
【0106】
本発明においては、光学異方性層の厚みについては特に限定されないが、0.1~10μmであるのが好ましく、0.5~5μmであるのがより好ましい。
【実施例】
【0107】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0108】
[実施例1]
〔支持体の作製〕
<セルロースアシレートフィルム1の作製>
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
─────────────────────────────────
コア層セルロースアシレートドープ
─────────────────────────────────
・アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
・特開2015-227955号公報の実施例に
記載されたポリエステル化合物B 12質量部
・下記化合物F 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
・メタノール(第2溶剤) 64質量部
─────────────────────────────────
【0109】
【0110】
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
─────────────────────────────────
マット剤溶液
─────────────────────────────────
・平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
・メタノール(第2溶剤) 11質量部
・上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
─────────────────────────────────
【0111】
(セルロースアシレートフィルム1の作製)
上記コア層セルロースアシレートドープおよび上記外層セルロースアシレートドープを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープと、その両側に配置される外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した(バンド流延機)。
その後、溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。
次いで、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み40μm、幅1340mmのセルロースアシレートフィルム1を作製した。
【0112】
作製したセルロースアシレートフィルム1を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m
2で塗布し、110℃に加熱した。
次いで、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。
次いで、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m
2塗布した。
次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製して支持体とした。
【0113】
〔配向層Y1の形成〕
上記のように鹸化処理した長尺状のセルロースアセテートフィルムに、下記組成の配向層塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。塗布後、60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥した。なお、下記組成中、「重合開始剤(IN1)」は、光重合開始剤(IRGACURE2959、BASF社製)を表す。
【0114】
(下記構造式中、割合はモル比率である)
【化12】
【0115】
〔バインダー層(液晶層)の作製〕
下記棒状液晶化合物A(80質量部)、下記棒状液晶化合物B(20質量部)、光重合開始剤(IRGACURE819、BASF社製)(3質量部)、下記垂直配向剤A(1質量部)、下記垂直配向剤B(0.5質量部)、および、下記光配向性ポリマーA(3.0質量部)をメチルエチルケトン215質量部に溶解して、バインダー層(液晶層)形成用溶液を調製した。調製したバインダー層形成用溶液を、上記配向層上に、#3.0のワイヤーバーで塗布し、第1の塗膜を形成した。
その後、搬送を再開し、下記表1に示す通り、70℃で60秒間加熱し、第1の塗膜を乾燥させた(乾燥処理)。
次いで、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、下記表1に示す通り、365nmのUV(ultraviolet)-LED(light emitting diode)を用いて、表面温度が40℃の条件で、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射した(紫外線照射処理1)。
次いで、下記表1に示す通り、作用工程を兼ねる工程として、313nmのUV-LEDを用いて、表面温度が25℃の条件で、照射量1000mJ/cm2の紫外線を照射した(紫外線照射処理2)。
これらの処理により、膜厚が約1μm、幅が1284mmのバインダー層を形成した。
【0116】
【0117】
〔光照射工程〕
得られたバインダー層に、室温で、ワイヤーグリッド偏光子を通したUV光(超高圧水銀ランプ;UL750;HOYA製)を25mJ/cm2(波長:313nm)照射し、配向規制力を付与した。
【0118】
〔光学異方性層(上層)の作製〕
下記棒状液晶化合物A(80質量部)、下記棒状液晶化合物B(20質量部)、光重合開始剤(イルガキュア907、BASF社製)(3質量部)、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)(1質量部)、および、下記水平配向剤(0.3質量部)をメチルエチルケトン(193質量部)に溶解して、光学異方性層形成用溶液を調製した。上記配向機能を付与したバインダー層上に、上記の光学異方性層形成用溶液をワイヤーバーコーター#2.2で塗布し、バインダー層の幅よりも広い幅の第2の塗膜を形成し、60℃で2分間加熱し、60℃に維持したまま、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して光学異方性層(幅:1318mm)を形成し、光学積層フィルムを作製した。
その後、作製した光学積層フィルムをロール状に巻き取り、光学積層フィルムロールを作製した。
【0119】
【0120】
[実施例2]
紫外線照射処理1における照射量を下記表1に示す値に変更し、紫外線照射処理2を施さなかった以外は、実施例1と同様の方法で、光学積層フィルムロールを作製した。
【0121】
[実施例3]
光配向性ポリマーAに代えて、下記光配向性ポリマーBを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、光学積層フィルムロールを作製した。
【化15】
【0122】
[実施例4]
光配向性ポリマーAに代えて、下記光配向性ポリマーCを用い、熱酸発生剤(サンエイドSI-B3A、三新化学工業製)を更に3質量部配合したバインダー層(液晶層)形成用溶液を用い、また、紫外線照射処理2に代えて、表面温度が120℃の条件で30秒アニーリングする加熱処理(加熱処理2)を施した以外は、実施例1と同様の方法で、光学積層フィルムロールを作製した。
【化16】
【0123】
[実施例5]
実施例4と同様のバインダー層(液晶層)形成用溶液を用い、以下に示す処理を施してバインダー層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で、光学積層フィルムロールを作製した。
まず、下記表1に示す通り、70℃で60秒間加熱し、第1の塗膜を乾燥させた(乾燥処理)。
次いで、作用工程を兼ねる工程として、表面温度が120℃の条件で30秒アニーリングする加熱処理を施した(加熱処理1)。
次いで、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、下記表1に示す通り、365nmのUV(紫外線)-LED(発光ダイオード)を用いて、表面温度が40℃の条件で、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射した(紫外線照射処理1)。
これらの処理により、膜厚が約1μmのバインダー層を形成した。
【0124】
[実施例6]
以下の方法でバインダー層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で、光学積層フィルムロールを作製した。
〔バインダー層の作製〕
エポキシモノマー(CEL2021P;(株)ダイセル製)(100質量部)、熱酸発生剤(サンエイドSI-B3A、三新化学工業製)(3.0質量部)、上記光配向性ポリマーC(2.0質量部)をメチルエチルケトン(300質量部)に溶解して、バインダー層形成用溶液を調製した。調製したバインダー層形成用溶液を、上記配向層上に、#3.0のワイヤーバーで塗布し、第1の塗膜を形成した。
その後、搬送を再開し、下記表1に示す通り、70℃で60秒間加熱し、第1の塗膜を乾燥させた(乾燥処理)。
次いで、作用工程を兼ねる工程として、表面温度が130℃の条件で60秒アニーリングする加熱処理を施し、膜厚が約1μmのバインダー層を形成した。
【0125】
[実施例7]
熱酸発生剤(サンエイドSI-B3A、三新化学工業製)に代えて、下記光酸発生剤(B-1-1)を用いた以外は、実施例4と同様の方法で、光学積層フィルムロールを作製した。
【化17】
【0126】
[実施例8]
熱酸発生剤(サンエイドSI-B3A、三新化学工業製)に代えて、上記光酸発生剤(B-1-1)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で、光学積層フィルムロールを作製した。
【0127】
[実施例9]
光配向性ポリマーCに代えて、下記光配向性ポリマーDを用いた以外は、実施例7と同様の方法で、光学積層フィルムロールを作製した。
【化18】
【0128】
[比較例1]
光学異方性層の形成時に、バインダー層の幅よりも狭い幅の第2の塗膜を形成して光学異方性層(幅:1270mm)を作製した以外は、実施例1と同様の方法で光学積層フィルムロールを作製した。
【0129】
〔送り出し操作〕
巻き取った光学積層フィルムロールの端部から、光学積層フィルムを送り出して搬送し、この際の接着性を評価した。
<評価基準>
A:送り出し時に、光学積層フィルムの接着が見られなかった。
B:送り出し時に、バリア層の表面が露出した部分と、支持体の裏面との接着が見られ、搬送に影響がでた。
【0130】
【0131】
表1に示す結果から、バインダー層の幅よりも狭い幅となる光学異方性層を形成した場合には、送り出し操作が劣ることが分かった(比較例1)。
これに対し、バインダー層の幅よりも広い幅となる光学異方性層を形成した場合には、送り出し操作が優れることが分かった(実施例1~9)。