(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】成膜装置、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20220909BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20220909BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220909BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220909BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
C23C14/50 A
C23C14/04 A
H01L21/68 R
H05B33/10
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2021161810
(22)【出願日】2021-09-30
(62)【分割の表示】P 2018200156の分割
【原出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2017-0162002
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 一史
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-065959(JP,A)
【文献】特表平10-270539(JP,A)
【文献】特開2016-195155(JP,A)
【文献】特開2008-235900(JP,A)
【文献】特開2010-141352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/50
C23C 14/04
H01L 21/683
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを介して基板に成膜を行うための成膜装置であって、
基板を吸着するための電圧が印加される電極部を有する静電チャックと、
前記電極部に前記電圧を印加する電圧印加部と、を備え、
基板を前記静電チャックに吸着させる時に、前記電圧印加部は第1電圧を前記電極部に印加し、
基板が前記静電チャックに吸着された後であって、吸着された基板に対する蒸着による成膜が開始される前に、前記電圧印加部は前記第1電圧よりも低い第2電圧を前記電極部に印加し、
吸着された基板に対する成膜が終了した後に、前記電圧印加部は基板を前記静電チャックから剥離するための第3電圧を前記電極部に印加する
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記静電チャックに吸着された基板とマスクとの、成膜面に沿った方向の相対的位置を調整するためのアライメント手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記アライメント手段が基板とマスクとの相対的位置の調整を開始する前に、前記電圧印加部が前記第2電圧を前記電極部に印加する
ことを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記静電チャックへの基板の吸着が完了した直後に、前記電圧印加部が前記第1電圧よりも低い第2電圧を前記電極部に印加する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記電極部は、複数のサブ電極部を含む
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記電圧印加部は、前記複数のサブ電極部に対して、異なる時点で前記第2電圧を印加する
ことを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記電圧印加部は、前記複数のサブ電極部に対して、異なる大きさの電圧を前記第2電圧として印加する
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記静電チャックは、内部に前記電極部が埋設された誘電体マトリックスを有する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記静電チャックに吸着される前の基板を保持する基板保持手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記基板保持手段は、それぞれが弾性体部を含んで構成された複数の基板支持部を有する
ことを特徴とする請求項9に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記基板保持手段の保持している基板と前記静電チャックとを近接させるように、前記基板保持手段及び前記静電チャックの少なくとも一方を移動させる移動手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記移動手段が前記基板保持手段の保持している基板と前記静電チャックとを近接させた後に、前記電圧印加部は第1電圧を前記電極部に印加する
ことを特徴とする請求項11に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記基板保持手段の保持している基板と前記静電チャックとの近接を開始する前、または、近接させている途中に、前記電圧印加部は第1電圧を前記電極部に印加する
ことを特徴とする請求項11に記載の成膜装置。
【請求項14】
マスクを支持するマスク支持手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項15】
マスクを支持するマスク支持手段と、
前記静電チャックに吸着された基板と前記マスク支持手段とを近接させるように、前記マスク支持手段及び前記静電チャックの少なくとも一方を移動させる移動手段と、
前記静電チャックに吸着された基板とマスクとの、成膜面に沿った方向の相対的位置を調整するためのアライメント手段と、をさらに備え、
前記移動手段が前記静電チャックに吸着された基板と前記マスク支持手段とを近接させた後であって、前記アライメント手段が基板とマスクとの相対的位置の調整を開始する前に、前記電圧印加部が前記第2電圧を前記電極部に印加する
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項16】
前記第2電圧は、前記第1電圧とは逆極性の電圧である、または、ゼロ電圧である
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項17】
前記第1電圧は、前記静電チャックに基板を吸着させる最小静電引力よりも大きい静電引力が作用する大きさである
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項18】
前記静電チャックの上方に設けられ、マスクに磁力を印加するための磁力印加手段をさ
らに備える
ことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項19】
前記静電チャックと前記磁力印加手段との間に設けられた冷却部材をさらに備える
ことを特徴とする請求項18に記載の成膜装置。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の成膜装置によって基板に成膜する工程を有する
ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜装置に関するもので、特に、成膜装置において静電チャックに電圧を印加して基板を吸着した後、基板を静電チャックから容易に脱着するための電圧制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、フラットパネル表示装置として有機EL表示装置が脚光を浴びている。有機EL表示装置は自発光ディスプレイであり、応答速度、視野角、薄型化などの特性が液晶パネルディスプレイより優れており、モニタ、テレビ、スマートフォンに代表される各種携帯端末などで既存の液晶パネルディスプレイを速いスピードで代替している。また、自動車用ディスプレイ等にも、その応用分野を広げている。
【0003】
有機EL表示装置の素子は2つの向かい合う電極(カソード電極、アノード電極)の間に発光を起こす有機物層が形成された基本構造を持つ。有機EL表示装置素子の有機物層及び電極層は、成膜装置の真空チャンバーの下部に設けられた蒸着源を加熱することで蒸発された蒸着材料を画素パターンが形成されたマスクを通じて真空チャンバー上部に置かれた基板(の下面)に蒸着させることで形成される。
【0004】
このような上向蒸着方式の成膜装置の真空チャンバー内において基板は基板ホルダによって保持されるが、基板(の下面)に形成された有機物層/電極層に損傷を与えないように基板の下面の周縁を基板ホルダの支持部によって支持する。この場合、基板のサイズが大きくなるにつれて、基板ホルダの支持部によって支持されない基板の中央部が、基板の自重によって撓み、蒸着精度を落とす要因となっている。
【0005】
基板の自重による撓みを低減するための方法として静電チャックを使う技術が検討されている。すなわち、基板の上部に静電チャックを設け、基板ホルダの支持部によって支持された基板の上面を静電チャックに吸着させて、基板の中央部が静電チャックの静電引力によって引っ張られるようにすることで、基板の撓みを低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、静電チャックと基板間の静電引力によって基板を静電チャックに吸着した後、静電チャックから基板を分離する際に、基板吸着時に加えた電圧により誘導された電荷が放電するまでに時間がかかり、基板を静電チャックから分離するのに時間がかかる問題がある。静電チャックからの基板分離に時間がかかると、工程全体的に時間(Tact)が増加し、生産性が低下する問題がある。
【0007】
本発明は、静電チャックに吸着された基板を分離するのにかかる時間を減らすための静電チャックの電圧制御方法を提供することを主な目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による成膜装置は、マスクを介して基板に成膜を行うための成膜装置であって、基板を吸着するための電圧が印加される電極部を有する静電チャックと、前記電極部に前記電圧を印加する電圧印加部と、を備え、基板を前記静電チャックに吸着させる時に、前記電圧印加部は第1電圧を前記電極部に印加し、基板が前記静電チャックに吸着された後であって、吸着された基板に対する蒸着による成膜が開始される前に、前記電圧印加部は前記第1電圧よりも低い第2電圧を前記電極部に印加し、吸着された基板に対する成膜が終了した後に、前記電圧印加部は基板を前記静電チャックから剥離するための第3電圧を前記電極部に印加することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様による成膜方法は、マスクを介して基板に成膜を行う成膜方法であって、基板を成膜装置の真空チャンバー内に搬入する段階、搬入された基板を基板保持ユニットの支持部上に載置する段階、前記支持部上の基板を静電チャックに吸着させる段階、前記静電チャックに吸着された基板をマスクに対して位置調整するアライメント段階、位置調整された基板をマスク上に載置する段階、マグネットによってマスクとマスク上の基板を密着させる段階、蒸着源から蒸発された蒸着材料をマスクを介して基板上に成膜する段階、蒸着材料が成膜された基板を成膜装置の真空チャンバーから搬出する段階を含み、基板を静電チャックに吸着させる前記段階は、前記静電チャックに静電引力を発生させるための第1電圧を印加する段階を含み、基板上に蒸着材料を成膜する前記段階の開始前に、前記静電チャックに印加される電圧を前記第1電圧から前記第1電圧よりも低い第2電圧に下げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、基板を静電チャックに吸着させた後、基板を静電チャックから分離する前に(特に、成膜工程の開始前に)、静電チャックに加える電圧を、基板を静電チャックに吸着させるために印加した電圧(吸着開始電圧)よりも低い電圧(吸着維持電圧)に下げることで、基板を静電チャックから分離するのにかかる時間を短縮することができる。これにより、工程時間を短縮し、全体的な生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は有機EL表示装置の製造ラインの一部の模式図である。
【
図3】
図3は本発明の静電チャックのブロック図である。
【
図4】
図4は本発明の静電チャックと基板保持ユニットの模式図である。
【
図5】
図5は本発明の静電チャックへの電圧制御方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は本発明の成膜方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は有機EL表示装置の構造を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
本発明は、基板の表面に真空蒸着によってパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に望ましく適用することができる。基板の材料としては、硝子、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選択することができ、また、蒸着材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択することができる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、有機EL表示装置の製造装置においては、蒸着材料を蒸発させてマスクを介して基板に蒸着させることで有機EL表示素子を形成しており、本発明の望ましい適用例の一つである。
【0014】
<電子デバイス製造ライン>
図1は、電子デバイスの製造ラインの構成の一部を模式的に示す上視図である。
図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用い
られる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば約1800mm×約1500mmのサイズの基板に有機ELの成膜を行った後、該基板を切出して複数の小サイズのパネルが作製される。
【0015】
電子デバイスの製造ラインは、一般に、
図1に示すように、複数の成膜室11、12と、搬送室13とを有する。搬送室13内には、基板10を保持し搬送する搬送ロボット14が設けられている。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板を保持するロボットハンドが取り付けられた構造をもつロボットであり、各成膜室への基板10の搬入/搬出を行う。
【0016】
各成膜室11、12にはそれぞれ成膜装置(蒸着装置とも呼ぶ)が設けられている。搬送ロボット14との基板10の受け渡し、基板10とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板10の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動で行われる。
【0017】
以下、成膜室の成膜装置の構成について説明する。
<成膜装置>
図2は成膜装置2の構成を概略的に示す断面図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を使う。成膜時に基板が水平面(XY平面)と平行に固定された場合、基板の短辺に平行な方向をX方向、長辺に平行な方向をY方向とする。またZ軸周りの回転角をθで表示する。
【0018】
成膜装置2は成膜工程が成り立つ空間を定義する真空チャンバー20を具備する。真空チャンバー20の内部は真空雰囲気、或いは、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気で維持される。
【0019】
成膜装置2の真空チャンバー20内の上部には、基板を保持する基板保持ユニット21、マスクを保持するマスク台22、基板を静電引力によって吸着させる静電チャック23、金属製のマスクに磁力を印加するためのマグネット24などが設けられ、成膜装置の真空チャンバー20内の下部には、蒸着材料が収納される蒸着源25などが設けられる。
【0020】
基板保持ユニット21は搬送室13の搬送ロボット14から基板10を受け取り、保持及び搬送する。基板保持ユニット21は基板ホルダとも呼ぶ。基板保持ユニット21は基板の下面の周縁部を支持する支持部211,212を含む。
【0021】
支持部211、212は、基板の対向する二辺(例えば、長辺)のうち一方を支持するように配置される複数の第1支持部材211、及び対向する二辺のうち他方を支持するように配置される複数の第2支持部材212を含む。
【0022】
各支持部材は、基板の下面の周縁部を支持する基板支持面部213と、基板支持面部213を弾性的に支持する弾性体部214を含む。基板支持面部213上には、基板の損傷を防止するためにフッ素コーティングされたパッド(不図示)が設けられる。支持部材の弾性体部214は、コイルばね、板ばね、シリコーンゴムなどの弾性体を含み、基板を静電チャックに吸着させる際に静電チャックからの加圧力によって弾性変位することで基板が静電チャックと支持部材の間で破損することを防止する。
【0023】
第1支持部材211の基板支持面部213は、基板を静電チャックに全体的に平らに付着するために、第2支持部材212の基板支持面部213よりも高さが高く設置されることができる。また、第1支持部材211の弾性体部214の弾性係数を第2支持部材212の弾性体部214の弾性係数よりも大きくしたり、弾性体部214の長さを長くしたり
することによって、第1支持部材211が基板を支持する支持力を第2支持部材212が基板を支持する支持力よりも大きくすることができる。
【0024】
基板保持ユニット21の下にはフレーム状のマスク台22が設置され、マスク台には基板10上に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンを有するマスク221が置かれる。特に、スマートフォン用の有機EL素子を製造するのに使われるマスクは微細な開口パターンが形成された金属製のマスクであり、FMM(Fine Metal Mask)とも呼ぶ。
【0025】
基板保持ユニット21の支持部211、212の上方には、基板を静電引力によって吸着し固定させるための静電チャック23が設けられる。静電チャックは誘電体(例えば、セラミック材質)マトリックス内に金属電極などの電気回路が埋設された構造を有する。金属電極にプラス(+)及びマイナス(-)の電圧が印加されると、誘電体マトリックスを通じて基板に金属電極と反対極性の分極電荷が誘導され、これら間の静電引力によって基板が静電チャック23に吸着固定されることができる。静電チャック23は一つのプレートで形成されることもでき、複数のサブプレートを持つように形成されることもできる。また、一つのプレートで形成される場合にもその内部の電気回路を複数含んで、一つのプレート内で位置によって静電引力を異なるように制御することができる。
【0026】
本発明では後述のように、静電チャック23が基板を吸着している間に静電チャックにずっと同じ電圧を印加し維持するのではなく、吸着開始以降は、吸着開始の時に印加された電圧よりも低い電圧を印加し、基板分離の時にかかる時間を短縮する。
【0027】
静電チャック23の上部には、金属製のマスク221に磁力を印加してマスクの撓みを防止し、マスク221と基板10を密着させるためのマグネット24が設けられる。マグネット24は永久磁石または電磁石からなることができ、複数のモジュールに区画されることができる。
【0028】
図2には図示しなかったが、静電チャック23とマグネット24の間には基板を冷却するための冷却板が設けられる。冷却板はマグネット24と一体に形成されることもできる。
【0029】
蒸着源25は、基板に成膜される蒸着材料が収納されるるつぼ(不図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)、蒸着源からの蒸発レートが一定になるまで蒸着材料が基板に飛散することを阻むシャッタ(不図示)などを含む。蒸着源25は、点(point)蒸着源、線形(linear)蒸着源、リボルバ蒸着源などの用途によって多様な構成を持つことができる。
図2に図示しなかったが、成膜装置2は基板に蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び膜厚算出ユニット(不図示)を含む。
【0030】
成膜装置2の真空チャンバー20の外部上面には、基板保持ユニット21、静電チャック23、マグネット24などを鉛直方向(Z方向)に移動させるための駆動機構、及び基板とマスクのアライメントのために水平面に平行に(X方向、Y方向、θ方向に)静電チャック23や基板保持ユニット21などを移動させるための駆動機構などが設けられる。また、マスクと基板のアライメントのために真空チャンバー20の天井に設けられた窓を通じて基板及びマスクに形成されたアライメントマークを撮影するアライメント用カメラ(不図示)も設けられる。
【0031】
成膜装置は制御部26を具備する。制御部26は基板10の搬送及びアライメント、蒸着源の制御、成膜の制御などの機能を有する。制御部26は、例えば、プロセッサ、メモ
リ、ストレージ、I/Oなどを持つコンピュータによって構成可能である。この場合、制
御部26の機能はメモリまたはストレージに格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては汎用のパーソナルコンピュータを使用しても、組込み型のコンピュータまたはPLC(programmable logic controller)を使用してもよい。または、制御部26の機能の一部または全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。また、成膜装置ごとに制御部26が設置されていてもよいし、一つの制御部26が複数の成膜装置を制御するものとしてもよい。
【0032】
成膜装置内で行われる成膜プロセスでは、まず、搬送室13の搬送ロボット14によって基板が真空チャンバー20内に搬入されて基板保持ユニット21に置かれる。続いて、基板10とマスク221との相対的位置の測定及び調整を行うアライメント工程が行われる。アライメント工程が完了すれば、基板保持ユニット21が駆動機構によって降りて基板10をマスク221上に置き、その後マグネット24が降りて基板10とマスク221を密着させる。このようなアライメント工程、基板をマスク上に置くための下降工程、マグネットによる基板とマスクの密着工程などにおいて、基板は基板保持ユニット21の支持部211,212と静電チャック23によって固定される。
この状態で、蒸着源25のシャッタが開かれて、蒸着源25のるつぼから蒸発された蒸着材料がマスクの微細パターン開口を通して基板に蒸着される。
【0033】
基板に蒸着された蒸着材料の膜厚が所定の厚さに到逹すれば、蒸着源25のシャッタを閉じ、その後、搬送ロボット14が基板を真空チャンバー20から搬送室13に搬出する。
【0034】
<静電チャックの電圧制御>
以下、
図3~
図5を参照して本発明の静電チャック23の構成、基板の吸着及び脱着工程において静電チャックに印加される電圧の制御について説明する。
【0035】
本発明の静電チャック23は、
図3に示すように、誘電体部30、電極部31、電圧制御部32、電源部33を含む。電源部33は、静電チャック23の電極部31にプラス(+)電圧及びマイナス(-)電圧を印加する。電圧制御部32は、成膜装置2の成膜工程の進行に応じて、電源部33から電極部31に加えられる電圧の大きさなどを制御する。電圧制御部32は成膜装置2の制御部26に統合され、成膜装置2の制御部26によって、静電チャック23の電圧制御が行われてもよい。
【0036】
電極部31は、複数のサブ電極部を含むことができる。例えば、本発明の電極部31は、
図4(a)に示すように、第1サブ電極部311及び第2サブ電極部312に分けて設置されることができる。第1サブ電極部311及び第2サブ電極部312は、静電チャック23の短辺中央を基準に対向する二つの長辺側に設置されることができる。例えば、
図4(b)に示すように、第1サブ電極部311は、基板保持ユニット21の第1支持部材211側に対応するように設けられ、第2サブ電極部312は、基板保持ユニット21の第2支持部材212側に対応するように設けられる。
【0037】
以下、
図5を参照して静電チャック23に基板10を吸着させる工程における電圧制御について説明する。
成膜装置2の真空チャンバー20内に基板が搬入され、基板保持ユニット21の支持部211、212に載置される(
図5(a)参照)。
【0038】
続いて、静電チャック23が降下し、基板保持ユニット21の支持部211、212上に載置された基板に近接するように移動する。静電チャック23が基板10に十分近接ま
たは接触すると、
図5(b)に示すように、静電チャック23の電源部33によって電極部31に第1電圧(V1)が印加される。第1電圧(V1)は基板10を静電チャック23に確実に吸着させるために十分な大きさの電圧に設定される。静電チャック23に第1電圧(V1)が印加される時点をt1とする。
【0039】
静電チャック23の電極部31に加えられた第1電圧(V1)によって基板の上面には、第1電圧(V1)の大きさに比例する反対極性の分極電荷が誘導される。この基板に誘導された分極電荷と静電チャック23の電極部31との間の静電引力によって、基板は静電チャックに平らに吸着される。本実施形態においては、静電チャック23が基板10に近接或いは接触した状態で第1電圧(V1)を印加すると説明したが、静電チャック23が基板10に向かって下降を始める前に、或いは、下降の途中に第1電圧(V1)を印加してもいい。
【0040】
その後の所定の時点(t=t2)で、静電チャック23の電圧制御部32は、静電チャック23の電極部31に印加される電圧を、第1電圧(V1)から第1電圧よりも小さい第2電圧(V2)に下げる。第2電圧(V2)は、一旦静電チャック23に吸着された基板10を静電チャック23に吸着された状態に維持するための吸着維持電圧であり、基板10を静電チャック23に吸着させる時の第1電圧(V1)よりも低い電圧である。静電チャック23に印加される電圧が第2電圧(V2)まで低くなると、これに対応して基板10に誘導される分極電荷量も
図5(c)に示すように、第1電圧(V1)が加えられた場合に比べて減少するが、基板10が一旦第1電圧(V1)によって静電チャック23に吸着された以後は、第1電圧(V1)よりも低い第2電圧(V2)を印加しても基板の吸着状態を維持することができる。
【0041】
第2電圧(V2)は第1電圧(V1)の大きさを考慮して決めるのが好ましく、基板を脱着させるのにかかる時間を考慮し、ゼロ(0)電圧または逆極性の電圧にすることもできる。つまり、第1電圧(V1)が十分に大きければ、第2電圧をゼロ電圧または逆極性の電圧にしても基板に誘導された分極電荷が放電するのに時間がかかるため、当該時間の間に静電チャック23に基板10を吸着させた状態を維持することができる。
【0042】
静電チャック23に印加される電圧を第1電圧(V1)から第2電圧(V2)に下げる時期は、基板への蒸着開始時点の以前であることが望ましい。これは静電チャック23から基板10を分離することができる程度に基板と静電チャックとの間の静電引力が低くなるのにかかる時間を確保するためである。つまり、静電チャック23から基板10を分離しようとする時、静電チャック23の電極部31に加えられる電圧をゼロ(0)にしても、直ちに静電チャック23と基板10との間の静電引力が消えるのではなく、静電チャック23と基板10との界面に誘導された電荷が消えるのに相当な時間(場合によっては、数分程度)がかかる。特に、静電チャック23に基板10を吸着させる際は、通常、その吸着を確実にするために、静電チャック23に基板を吸着させるのに必要な最小静電引力(Fth)よりも十分大きい静電引力が作用するように第1電圧を設定するが(
図5(f)参照)、このような第1電圧から基板の分離が可能な状態になるまでは相当な時間がかかる。
【0043】
本発明では、このような静電チャック23からの基板10の分離・脱着にかかる時間により全体的な工程時間(Tact)が増加してしまうことを防止するために、蒸着工程の開始前に静電チャック23に印加される電圧を第2電圧に下げる。
【0044】
特に、基板と静電チャック23間の静電引力の大きさが第1電圧による静電引力から、基板と静電チャック23間の吸着を維持するための最小限の静電引力(Fth)に減少する時間と、第2電圧による静電引力から基板と静電チャックを分離できる程度に静電引力
が減少する時間とのバランスを考慮し(
図5(e)及び
図5(f)参照)、安定的に基板の吸着状態を維持しながらも、基板脱着にかかる時間を十分確保することができる時点で、静電チャック23の電圧を第2電圧に下げることが好ましい。
静電チャック23に印加する電圧を第2電圧(V2)に下げる具体的な時点については、
図6を参照し、後述する。
【0045】
本発明の他の実施形態では、静電チャック23の電極部31を第1サブ電極部311と第2サブ電極部312を含むように形成し、各サブ電極部に加える電圧を第1電圧から第2電圧に下げる時点を互いに異なるようにするか、第2電圧の大きさを互いに異なるようにする。
【0046】
例えば、
図4(b)及び
図4(c)に示すように、基板支持面の高い第1支持部材211によって基板が支持される側に形成された第1サブ電極部311に印加する電圧を第1電圧から第2電圧に下げた後、第2サブ電極部312に印加される電圧を第1電圧から第2電圧に下げる。第1支持部材211によって支持される基板の周縁部は静電チャック23に先に吸着されるので、誘導される分極電荷量が第2支持部材212によって支持される基板の周縁部側よりも多く、これにより基板分離にかかる時間(分極電荷の放電にかかる時間)もより長くなる。相対的に基板分離にかかる時間が長い、第1支持部材211によって支持される基板周縁部側が吸着された第1サブ電極部311の電圧を、先に第2電圧に下げて、基板分離にかかる時間を充分に確保することができる。
【0047】
第1支持部材211によって支持される基板周縁部側の電荷放電時間を減らすために、第1サブ電極部311に印加する第2電圧を第2サブ電極部312に印加する第2電圧よりも低くすることもできる。つまり、相対的に多くの分極電荷が誘導された第1サブ電極部311側に印加する第2電圧をより低くすることで、第2サブ電極部312側よりもより多くの誘導電荷をあらかじめ放電させ、第2サブ電極部312側の基板上に誘導された分極電荷の放電時間とのバランスを取ることで、最終的に基板脱着に必要な時間のバランスを合わせることができる。
【0048】
第1サブ電極部311及び第2サブ電極部312に印加する電圧を第1電圧から第2電圧に下げる時点及び第2電圧の大きさは、両サブ電極部に当接した基板上に誘導される電荷を放電させるのに必要な時間のバランスを考慮し、多様な組み合わせを選択することができる。
【0049】
<成膜プロセス>
以下、本発明の静電チャック電圧制御を採用した成膜方法について
図6を参照して説明する。
【0050】
真空チャンバー20内のマスク台22にマスク221が置かれた状態で、搬送室13の搬送ロボット14によって成膜装置2の真空チャンバー20内に基板が搬入される(
図6(a))。
【0051】
真空チャンバー20内に進入した搬送ロボット14のハンドが降下し、基板10を基板保持ユニット21の支持部211、212上に載置する(
図6(b))。
【0052】
続いて、静電チャック23が基板10に向かって降下し、基板10に十分近接或いは接触した後に、静電チャック23に第1電圧(V1)を印加し、基板10を吸着させる(図
6(c))。
【0053】
本発明の一実施形態においては、基板を静電チャック23から脱着させるのに必要な時
間を最大限に確保するため、基板の静電チャック23への吸着が完了した直後に静電チャック23に加えられる電圧を第1電圧(V2)から第2電圧(V2)に下げる。基板の吸着が完了した直後に静電チャック23に加えられる電圧を第2電圧(V2)に下げても、第1電圧(V1)によって基板に誘導された分極電荷が放電されるまでに時間がかかるため、以降の工程で静電チャック23による基板への吸着力を維持することができる。
【0054】
静電チャック23に基板10が吸着された状態で、基板のマスクに対する相対的な位置ずれを計測するため、基板(10)をマスク(221)に向かって下降させる(
図6(d))。本発明の他の実施形態においては、静電チャック23に吸着された基板の下降の過程で基板が静電チャック23から脱落することを確実に防止するため、基板の下降の過程が完了した後(つまり、後述するアライメント工程が開始される前)に、静電チャック23に加える電圧を第2電圧(V2)に下げる。
【0055】
基板10が計測位置まで下降すると、アライメント用カメラで基板(10)とマスク(221)に形成されたアライメントマークを撮影して、基板とマスクの相対的な位置ずれを計測する(
図6(e)参照)。本発明の他の実施形態では、基板とマスクの相対的位置の計測工程の精度をより確保するため、アライメントのための計測工程が完了した後(アライメント工程中)に、静電チャック23に加えられる電圧を第2電圧に下げる。つまり、静電チャック23に基板を第1電圧(V1)によって強く吸着させた状態(基板をより平らに維持した状態)での基板とマスクのアライメントマークを撮影することにより、基板とマスク間の距離を確保することができ、アライメントマークのより鮮明な撮影イメージを得られるようになる。
【0056】
計測の結果、基板のマスクに対する相対的位置ずれが閾値を超えることが判明した場合、静電チャック23に吸着された状態の基板10を水平方向(XYθ方向)に移動させて、基板をマスクに対して、位置調整(アライメント)する(
図6(f)参照)。本発明の他の実施形態においては、このような位置調整の工程が完了した後に、静電チャック23に加えられる電圧を第2電圧(V2)に下げる。これによって、アライメント工程全体(相対的な位置計測や位置調整)にわたって精度をより高めることができる。
【0057】
アライメント工程後、静電チャック23に吸着された基板10をマスク221上に載置し、マグネット24を降下させて、基板とマスクを密着させる(
図6(g))。本発明の
他の実施形態においては、基板10をマスク221上に載置した状態で、静電チャック23に印加される電圧を第2電圧(V2)に下げる。これによって、基板の撓みの程度をマスクの撓みの程度に合わせることができるようになり、以降の工程での基板とマスク間の密着性が向上する。本発明の他の実施形態によると、マグネット24によって基板とマスクを密着させる工程以降に、静電チャック23に加えられる電圧を第2電圧(V2)に下げる。これによって、基板とマスクのマグネットによる密着時までに基板をより平らに維持することができ、基板とマスクの密着度をさらに向上させることができる。
続いて、蒸着源25のシャッタを開け、蒸着材料をマスクを介して基板10に蒸着させる(
図6(h))。
【0058】
基板10上に所望の厚さの膜が蒸着完了した後、蒸着源25のシャッタを閉じる、その後、マグネット24が上昇し、静電チャックと基板保持ユニットによって基板が上昇する(
図6(i))。
【0059】
続いて、搬送ロボットのハンドが成膜装置の真空チャンバー内に進入し、静電チャック23にゼロ(0)または逆極性の電圧が印加され(t=t3)、静電チャック23が基板から分離されて上昇する(
図6(j))。その後、蒸着が完了した基板を搬出する。
【0060】
尚、本発明はこれに限定されず、例えば、
図6(h)の時点で基板を、静電チャック23から分離してマスク221に沿う状態にし、この状態で、蒸着源25のシャッタを開けて蒸着材料をマスクを介して基板10に蒸着させてもよい。前述したとおり、本発明においては、静電チャック23に印加される電圧を第1電圧から第2電圧に下げる時点を蒸着工程の開始前にし、必要に応じて、静電チャック23への基板の吸着工程完了後、アライメント工程の開始前(基板の下降工程完了後)、アライメント工程の途中(計測工程完了後)、アライメント工程完了後、基板のマスク上への載置工程完了後、またはマグネットによる基板とマスクの密着工程完了後にすることができる。
【0061】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図7(a)は有機EL表示装置60の全体図、
図7(b)は1画素の断面構造を表している。
【0062】
図7(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0063】
図7(b)は、
図7(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0064】
図7(b)では正孔輸送層65や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、第1電極64と正孔輸送層65との間には第1電極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極68と電子輸送層67の間にも電子注入層を形成することができる。
【0065】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板63を準備する。
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0066】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、基板保持ユニット及び静電チャックにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0067】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、基板保持ユニット及び静電チャックにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
電子輸送層67まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置に移動させて第2電極68を成膜する。
【0068】
本発明によると、有機EL表示素子の製造のため多様な有機材料及び金属性材料を基板上に蒸着するにあたって、基板を静電チャック23に吸着させた後、所定の時点で静電チャック23に印加する電圧をあらかじめ下げておくことによって、基板を静電チャック23から分離するのにかかる時間を短縮し、工程時間を減らすことができる。
その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0069】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
上記実施例は本発明の一例を示すことで、本発明は上記実施例の構成に限定されないし、その技術思想の範囲内で適切に変形してもよい。
【符号の説明】
【0070】
21:基板保持ユニット
22:マスク台
23:静電チャック
24:マグネット
30:誘電体部
31:電極部
32:電圧制御部
33:電源部
211:第1支持部材
212:第2支持部材
311:第1サブ電極部
312:第2サブ電極部