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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20220909BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220909BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220909BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/06
C09J11/08
C09J175/08
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021502851
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 KR2019009229
(87)【国際公開番号】W WO2020022795
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0086342
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ジン・コ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ホ・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ア・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ミン・キュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ビュン・キュ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】テク・ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヨン・キム
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-545656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0130655(US,A1)
【文献】特開2015-108077(JP,A)
【文献】特表2009-506169(JP,A)
【文献】特表2010-530472(JP,A)
【文献】特表2013-503249(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0192643(US,A1)
【文献】国際公開第2016/163491(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/053289(WO,A1)
【文献】特表2010-507706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0138028(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2018-0055986(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一つ以上のエポキシ樹脂;
(b)重量平均分子量Mwが30,000以下であり、ポリテトラヒドロフラン単位を有するウレタン樹脂;
(c)1次粒子形態のコアシェルラバーが2以上凝集した2次粒子形態のコアシェルラバー;および
(d)一つ以上のエポキシ硬化剤を含み、
前記ポリテトラヒドロフランは、400~2,200の範囲のOH当量を有し、
前記コアシェルラバー全体含量に対して1次粒子の重量比率は、1wt%以下である、接着剤組成物。
【請求項2】
ビスフェノールA系エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記ビスフェノールA系エポキシ樹脂は、エポキシ当量が180~500の範囲である、請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ビスフェノールF系エポキシ樹脂をさらに含む、請求項2または3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記ビスフェノールF系エポキシ樹脂は、エポキシ当量が180未満である、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリテトラヒドロフランは、400~1,100の範囲のOH当量を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記ポリテトラヒドロフランは、1,100以下のOH当量を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記ウレタン樹脂(b)は、非芳香族イソシアネート単位、ポリオール単位、ポリテトラヒドロフラン単位を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記ウレタン樹脂(b)は、イソシアネート末端のうち少なくとも一つがアミン系化合物、フェノール系化合物、オキシム系化合物、またはビスフェノール系化合物で終結した、請求項8に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記ウレタン樹脂(b)は、イソシアネート末端がポリテトラヒドロフランにより終結した単位を含む、請求項8または9に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
接着剤組成物の全体含量を基準として前記ウレタン樹脂(b)を5~25重量部含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記1次粒子形態のコアシェルラバーは、250nm~500nmの平均粒径を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
前記1次粒子形態のコアシェルラバーのコアは、180~495nmの平均粒径を有する、請求項12に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
前記1次粒子形態のコアシェルラバーのコアは、280~490nmの平均粒径を有する、請求項12または13に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
前記1次粒子形態のコアシェルラバーは、コアシェルの全体粒径に対するコアの粒径比率が0.8~0.99を満たす、請求項12から14のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項16】
前記コアシェルラバーは、ブタジエン系コアを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項17】
接着剤組成物の全体含量を基準として前記コアシェルラバー(c)を5~35重量部を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項18】
液状ラバーをさらに含み、接着剤組成物の全体含量を基準として総ラバー含量が10重量部以上である、請求項16に記載の接着剤組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに規定の接着剤組成物の硬化物;および前記硬化物と接触する基材を含む構造体。
【請求項20】
請求項1~18のいずれかに規定の組成物を基材の表面に塗布する段階;および前記基材の表面に塗布された前記組成物を硬化する段階;を含む構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年7月25日付け韓国特許出願第10-2018-0086342号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
エポキシ樹脂を含む接着剤、すなわちエポキシ樹脂系接着剤は、高い耐熱性および優れた接着強度を有することから、多様な種類の基材を接着または接合するために使用される。例えば、最近では、金属-金属接合や金属-プラスチック接合などにエポキシ樹脂系接着剤が使用されている。特に、エポキシ樹脂系接着剤を自動車産業に使用する場合には、車体フレームの製作に必要な溶接数を減少させて費用を節減し、車体の重さを減少させることができるという長所がある。これにより、宇宙航空や風力発電分野においてもエポキシ樹脂系接着剤を応用することに対する期待が増加している。
【0004】
衝突などの事故を考慮すると、自動車に使用されるエポキシ樹脂系接着剤には、優れた接着強度だけでなく、耐衝撃強度などが要求される。そして、このような特性は、自動車が実際使用される広い範囲の温度、例えば、約-40~80℃でも均一に維持されなければならない。しかし、従来技術によるエポキシ樹脂系接着剤は、-40℃のような低温条件に対し十分な強度を提供しないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の目的は、エポキシ樹脂系接着剤組成物を提供することにある。
【0006】
本出願の他の目的は、広い温度範囲にわたって優れた接着強度、衝撃強度およびせん断強度などを発揮する接着剤組成物を提供することにある。
【0007】
本出願の前記目的およびその他の目的は、以下に詳細に説明される本出願によって全部解決され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願に関する一例において、本出願は、エポキシ系樹脂を含む接着剤組成物に関する。前記接着剤組成物は、硬化後に、同種または異種の基材を接着するために使用され得る。例えば、前記基材は、金属成分またはプラスチック成分を含むことができ、これにより前記接着剤組成物は、金属-金属接合、金属-プラスチック接合、またはプラスチック-プラスチック接合などに使用され得る。このような基材の接合体(以下、複合体または構造体と呼ぶことがある)は、例えば自動車などの部品に使用され得る。
【0009】
本出願で、前記接着剤組成物は、(a)一つ以上のエポキシ樹脂、(b)重量平均分子量Mwが30,000以下であり、ポリテトラヒドロフラン単位を有するウレタン樹脂、 (c)1次粒子形態のコアシェルラバーが2以上凝集した2次粒子形態のコアシェルラバー、および(d)一つ以上のエポキシ硬化剤を含むことができる。これらの構成を全部含む本出願の接着剤組成物は、前記接着剤組成物の硬化物を利用して形成された構造体に対して、優れた接着強度、耐衝撃強度およびせん断強度を-40℃のような低温から80℃のような高温に至るまで均一に提供することができる。
【0010】
(a)エポキシ樹脂
前記構成(a)~(d)を全部含む場合、本出願の接着剤組成物に使用されるエポキシ樹脂の具体的な構造は、特に制限されない。例えば、前記エポキシ樹脂は、飽和または不飽和基を有するエポキシ樹脂であり得、環式構造または非環式構造を含むエポキシ樹脂でありうる。また、本出願に使用されるエポキシ樹脂の具体的な種類も、特に制限されない。例えば、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA系やビスフェノールF系のようなビスフェノール系エポキシ樹脂;ノボラック系エポキシ樹脂;またはオキサゾリドン含有エポキシ樹脂などを含むことができる。
【0011】
一例において、前記接着剤組成物は、ビスフェノールA系エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF系エポキシ樹脂を含むことができる。具体的なビスフェノールA系またはビスフェノールF系エポキシ樹脂の種類や構造は、特に制限されず、公知または市販のエポキシ樹脂が制限なしに使用され得る。例えば、KUKDO化学の商品名YD-128、YDF-170またはYD-011等が使用され得る。
【0012】
一例において、前記エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が互いに異なる2以上の樹脂が使用され得る。例えば、150~600の範囲のエポキシ当量の範囲内で、互いに当量が異なる2以上のエポキシ樹脂が使用され得る。
【0013】
一例において、所定当量のビスフェノールA系エポキシ樹脂が使用され得る。例えば、前記接着剤組成物に使用されるビスフェノールA系エポキシ樹脂のエポキシ当量は、180以上でありうる。具体的に、前記ビスフェノールA系エポキシ樹脂のエポキシ当量は、190以上、200以上または210以上でありうる。前記当量を満たす場合、本出願の目的を具現するために適切である。特に制限されるものではないが、ビスフェノールA系エポキシ樹脂のエポキシ当量の上限は、500以下または400以下でありうる。より具体的に、ビスフェノールA系エポキシ樹脂のエポキシ当量の上限は、300以下、290以下、280以下、270以下、260以下、または250以下でありうる。
【0014】
一例において、前記接着剤組成物は、ビスフェノールF系エポキシ樹脂をさらに含むことができる。すなわち、本出願で前記接着剤組成物は、2以上のエポキシ樹脂が混合されたエポキシ樹脂の混合物(a)を含むことができる。ビスフェノールA系エポキシ樹脂とビスフェノールF系エポキシ樹脂を混合使用する場合、温度範囲に関係なく、均一でかつ優れた強度特性を提供するために有利になり得る。
【0015】
一例において、前記接着剤組成物に使用されるビスフェノールF系エポキシ樹脂のエポキシ当量は、180未満でありうる。具体的に、前記ビスフェノールF系エポキシ樹脂のエポキシ当量は、175以下、170以下、165以下、160以下、155以下、または150以下でありうる。
【0016】
エポキシ当量が高くなる場合、一般的に粘度が増加するに伴い、架橋密度は、減少することができ、組成物が硬化した後、観察される強度が多少不良になりえる。また、エポキシ当量が低くなる場合には、エポキシ系接着剤の使用効果を十分に期待できない問題がある。しかし、上記のように、所定のエポキシ当量を有する樹脂を混合使用する場合には、前記のような問題を解消できる利点がある。
【0017】
一例において、エポキシ当量が前記範囲を満たすエポキシ樹脂は、接着剤全体組成物の含量に対して、30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上、または45重量部以上使用され得る。その上限は、特に制限されないが、例えば、80重量部以下または75重量部以下でありうる。
【0018】
別の例において、2以上のエポキシ樹脂が使用される場合、目的とする効果を考慮するとき、ビスフェノールA系樹脂の含量W1とビスフェノールF系樹脂の含量W2の間の比率W1/W2は、0.50以上でありうる。具体的に、前記比率W1/W2は、0.55以上、0.60以上、0.65以上、または0.70以上でありうる。そして、前記比率W1/W2の上限は、例えば、3.0以下、2.5以下、2.0以下または1.5以下の範囲、具体的には、1.4または1.3以下に調節され得る。
【0019】
本出願で、前記接着剤組成物は、モノエポキシ樹脂を含むことができる。本出願でモノエポキシ樹脂とは、分子内に一つのエポキシ官能基を有する成分を意味する。前記モノエポキシ樹脂は、接着剤の粘度を低減することができ、架橋密度を調節して、濡れ性(wetting)、衝撃特性または接着(剥離)特性の改善に寄与することができる。
【0020】
一例において、前記モノエポキシ樹脂は、接着剤全体組成物の含量に対して、10重量部以下で使用され得る。具体的に、前記モノエポキシ樹脂の含量は、例えば、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下または5重量部以下で使用され得る。その下限は、特に制限されないが、例えば、0.5重量部以上でありうる。
【0021】
(b)ウレタン樹脂
本出願で使用されるウレタン樹脂は、ポリテトラヒドロフラン由来の単位を有する変性ウレタン樹脂であって、以下に説明されるように、ウレタン樹脂の末端であるイソシアネート基のうち少なくとも一つが所定の化合物で終結した構造(キャッピング構造)を有することができる。
【0022】
前記ウレタン樹脂は、イソシアネート単位、ポリオール単位、ポリテトラヒドロフラン単位を含むことができる。本出願でウレタン樹脂が所定の単位を含むというのは、一つ以上の化合物が反応して形成された樹脂構造(主鎖や側鎖)に前記化合物が重合されて、それに由来する単位が樹脂構造内に含まれている状態を意味する。
【0023】
前記ウレタン樹脂に使用されるイソシアネートの具体的な種類は、特に制限されず、公知の芳香族または非芳香族イソシアネートが使用され得る。非制限的な例において、前記イソシアネートは、非芳香族でありうる。すなわち、前記変性ウレタン樹脂の形成時に脂肪族または脂環族系のイソシアネートが使用され得る。非芳香族イソシアネートを使用する場合、耐衝撃性や接着剤組成物の粘度特性が改善され得る。
【0024】
使用可能な非芳香族イソシアネートの種類は、特に制限されない。例えば、脂肪族ポリイソシアネートまたはその変性物が使用され得る。具体的に、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネートまたはテトラメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンジイソシアネートまたはジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族環式ポリイソシアネート;または前記のうちいずれか一つ以上のカルボジイミド変性ポリイソシアネートやイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;などが使用され得る。また、前記列挙された化合物のうち2以上の混合物が使用され得る。
【0025】
前記ウレタン樹脂の形成時に使用されるポリオールの種類は、特に制限されない。例えば、ペンタエリスリトールのような4官能ポリオール;グリセリンやトリメチロールプロパンのような3官能ポリオール;またはグリコールのような2官能ポリオールが使用され得る。一例において、グリコールとしては、ポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコールが使用され得る。
【0026】
一例において、前記ポリオールとしては、直鎖状ポリオールが使用され得る。例えば、ポリプロピレングリコールのような直鎖状が使用され得る。直鎖状ポリオールとは、分子中に2個の水酸基を有するポリオールであって、通常、分子の両側の末端に水酸基を有するものを意味する。反対に、分子中に3個以上の水酸基を有するポリオールは、分岐状ポリオールといえる。分岐鎖状を使用する場合と比較するとき、直鎖状ポリオールを使用する場合が、ウレタン樹脂の分子量を以下に説明される範囲に調節することが容易であり、接着剤の耐衝撃特性の改善に有利になり得る。
【0027】
一例において、前記ポリオールは、OH当量が300以上のポリオールでありうる。例えば、前記ポリオールのOH当量の下限は、400以上、500以上、600以上、700以上、800以上、または900以上でありうる。ポリオールのOH当量の上限は、特に制限されないが、例えば、2,000以下、1,900以下、1,800以下、1,700以下、1,600以下、1,500以下、1,400以下、1,300以下、1,200以下または1,100以下でありうる。前記当量の範囲を満たす場合、接着剤の耐衝撃特性、接着強度特性および剥離特性の改善に有利である。
【0028】
前記説明したように、前記ウレタン樹脂は、そのイソシアネート末端のうち一つ以上が所定化合物により終結した構造を有することができる。ウレタン樹脂のイソシアネート末端をいわゆるキャッピングする方法は、特に制限されない。公知の技術が使用され得る。例えば、前記変性ウレタン樹脂の製造時に、イソシアネート末端をキャッピングすることができる化合物を共に投入して重合する方法が使用され得る。イソシアネート末端をキャッピングすることができる化合物の種類は、特に制限されず、例えば、アミン系化合物、フェノール系化合物、オキシム系化合物、またはビスフェノール系化合物が使用され得る。
【0029】
一例において、前記ウレタン樹脂は、イソシアネートの末端がポリテトラヒドロフランにより終結した単位を含むことができる。ポリテトラヒドロフランも、OH基を有するため、いわゆるワン-ポット合成(one-pot synthesis)により本件のウレタン樹脂を合成する場合、前記ウレタン樹脂は、イソシアネートの末端がポリテトラヒドロフランにより終結した単位をさらに含むことができる。
一例において、前記ポリテトラヒドロフランの重量平均分子量Mwは、500以上でありうる。本出願で「重量平均分子量Mw」は、GPCで測定したポリスチレン換算分子量でありうる。例えば、前記ポリテトラヒドロフランの重量平均分子量は、550以上、600以上、650以上、700以上、750以上、800以上または850以上でありうる。一例において、前記ポリテトラヒドロフランの重量平均分子量の上限は、4,000以下であり得る。具体的に、前記ポリテトラヒドロフランの重量平均分子量は、3,000以下または2,000以下であり得、より具体的には、1,500以下、1,400以下、1,300以下または1,200以下でありうる。
【0030】
一例において、ポリテトラヒドロフランは、そのOH当量が400~2,200でありうる。OH当量が前記範囲を外れる場合、接着剤の耐衝撃特性が低下することがある。耐衝撃特性を考慮するとき、前記ポリテトラヒドロフランは、例えば、450以上または500以上のOH当量を有することができ、そして、1,100以下または1,000以下のOH当量を有することができる。
【0031】
一例において、前記構成を有するウレタン樹脂の重量平均分子量は、5,000~30,000の範囲内でありうる。前記範囲を満たす場合、本出願の接着剤の用途に適合した物性を提供することができる。
【0032】
一例において、前記接着剤組成物は、接着剤全体組成物の含量を基準として、前記変性ウレタン樹脂を5重量部以上含むことができる。具体的に、前記変性ウレタン樹脂の含量は、6重量部以上、7重量部以上、8重量部以上、9重量部以上、または10重量部以上でありうる。特に制限されないが、前記ウレタン樹脂の含量の上限は、例えば25重量部以下でありうる。より具体的に、前記ウレタン樹脂は、20重量部以下、19重量部以下、18重量部以下、17重量部以下、16重量部以下または15重量部以下で使用され得る。ウレタン樹脂が前記範囲より少なく使用される場合、衝撃強度の改善が十分でなく、前記範囲を超過して使用される場合には、せん断強度が低くなり、高温衝撃強度が低下する問題がある。
【0033】
(c)ラバー
前記接着剤組成物は、1次粒子形態のコアシェルラバーが2以上凝集した2次粒子形態のコアシェルラバーを含む。
【0034】
本出願で「コアシェルラバー」は、コア部分にゴム成分を有し、シェル物質が前記コアにグラフトもしくは架橋結合された構造を有する粒子状(固体状)物質を意味する。
【0035】
そして、本出願で「1次粒子形態のコアシェルラバー」とは、前記コアシェル構造を有する各単位体を意味し、「2次粒子形態のコアシェルラバー」とは、前記1次粒子形態のコアシェルラバー(粒子)が2個以上凝集して形成された凝集体(または集合体)を意味する。前記コアシェルラバーは、接着剤組成物内で分散して存在することができる。
【0036】
一例において、1次形態のコアシェルラバー粒子と2次形態のコアシェルラバー粒子は、以下の実施例で説明される方法によって製造され得る。この場合、重合反応により製造される2次形態の凝集ラバーは、プラネタリーミキサーのような混練機を用いてさらに小さいサイズの凝集ラバーに分離され得る。一例において、凝集粒子全てが完全な1次粒子形態に分離されないことがあり、2次粒子のうち一部の粒子が1次粒子に分離されて1次および2次粒子が混合された形態で存在することができる。例えばコアシェルラバー全体含量に対して1次粒子の重量比率は、50wt%以下、40wt%以下、30wt%以下、20wt%以下、10wt%以下、5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、1wt%以下、または0.5wt%以下でありうる。一例において、前記1次粒子の重量比率は、実質的に0wt%でありうる。または、前記1次粒子の重量比率は、例えば、0.01wt%以上、0.1wt%以上または1wt%以上でありうる。
【0037】
別の例において、1次形態のコアシェルラバー粒子と2次形態のコアシェルラバー粒子は、別の過程を経て製造され得る。
【0038】
前記コアは、ジエン系単量体の重合体を含むことができ、またはジエン系単量体と(ジエン系でない)異種単量体成分の共重合体を含むことができる。特に制限されるものではないが、例えばジエン系単量体としては、ブタジエンまたはイソプレンが使用され得る。
【0039】
一例において、前記コアは、ブタジエン系コアでありうる。例えば、前記コアは、ブタジエンの重合体を含むことができる。また、前記コアは、ブタジエンおよびその他エチレン性不飽和単量体の共重合体を含むことができる。コアの形成時に使用されるエチレン性不飽和単量体としては、ビニル系芳香族単量体、(メチル)アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレートなどが例示され得るが、これに特に制限されるものではない。
【0040】
一例において、アルキル(メタ)アクリレートがコアの形成時にさらに使用される場合、以下に説明されるシェルの形成に使用されるアルキル(メタ)アクリレートとは異なる種類のアルキル(メタ)アクリレートがコアに使用され得る。
【0041】
前記コアにグラフトまたは架橋されるシェルは、アルキル(メタ)アクリレート単位を含むことができる。シェルがアルキル(メタ)アクリレート単位を含むというのは、コアに架橋またはグラフトされるシェル重合体の形成時にアルキル(メタ)アクリレート単量体が使用され得ることを意味する。一例において、前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、またはt-ブチルメタクリレートのように、炭素数が1~6のアルキル基を有する低級アルキル(メタ)アクリレートが使用され得るが、前記列挙された単量体に制限されるものではない。
【0042】
前記シェルは、ビニリデン系単量体単位をさらに含むことができる。例えば、スチレンのような芳香族ビニル単量体、ビニルアセテートまたはビニルクロリドの単位をさらに含むことができる。特に制限されるものではないか、一例において、前記シェルは、アルキル(メタ)アクリレート単位および芳香族ビニル単量体単位を含むことができる。
【0043】
一例において、前記コアおよびシェルは、所定のガラス転移温度Tgを有することができる。例えば、前記コアのガラス転移温度Tgの下限は、-60℃以上、-50℃以上または-40℃以上でありうる。特に制限されるものではないが、前記コアのガラス転移温度の上限は、-20℃以下、-25℃以下、-30℃以下または-35℃以下でありうる。また、前記シェルは、例えば、50℃以上、60℃以上または70℃以上のガラス転移温度Tgを有することができる。特に制限されるものではないが、前記シェルのガラス転移温度の上限は、120℃以下でありうる。前記ガラス転移温度は、公知の方式によって測定され得、例えば示差走査型熱量分析(DSC)を利用して測定され得る。
【0044】
一例において、前記1次粒子形態のコアシェルラバーは、コアシェルの全体粒径に対するコアの粒径比率(=コアシェルのうちコアの厚さ比率、R)が0.80以上でありうる。
【0045】
本出願で「粒径」は、粒子形状(例:球形または楕円球形)のコアシェルラバーまたはその構成の直径を意味することに使用され得、コアシェルラバーの形状が、完全な球形や楕円球形でない場合には、最も長い次元の長さを意味する。粒径に関連した特徴は、公知の装備を利用して測定され得、例えば、dynamic lighting scatteringまたはlaser diffraction装備などが粒径に関連した特徴を確認するために使用され得る。特に定義しない以上、粒子の粒径または粒子のサイズは、以下に説明される平均粒径の意味で使用され得る。
【0046】
例えば、前記コアシェルの全体粒径に対するコアの粒径比率は、0.81以上、0.82以上、0.83以上、0.84以上、0.85以上、0.86以上、0.87以上、0.88以上、0.89以上、0.90以上でありうる。前記比率の上限は、例えば、0.99であり得、具体的には、0.98以下、0.97以下、0.96以下、0.95以下、0.94以下、0.93以下または0.92以下でありうる。商用化されたコアシェル製品の場合、前記範囲を満たさない場合が多いので、ラバーによる衝撃吸収機能が十分でないが、前記範囲を満たす前記コアシェルラバーは、構造体に加えられる衝撃を十分に吸収することができる。特に、コアの比率が0.99を超過する場合には、シェルの厚さが薄くなってコア部分を取り囲むことが難しくなり、これによりエポキシ樹脂との相溶性の低下や分散性の低下が発生し得る。また、コアの比率が0.8未満の場合には、衝撃強度の改善効果が不十分である。
【0047】
例えば、前記1次粒子形態のコアシェルラバーが250nm以上、260nm以上、270nm以上、280nm以上、290nm以上または300nm以上の平均粒径を有し、例えばその上限が600nm以下または500nm以下、具体的には、450nm以下、440nm以下、430nm以下、420nm以下、410nm以下または400nm以下である場合、前記1次粒子形態のコアシェルラバーのコアは、前記比率Rを満足できるサイズを有することができる。この際、「平均粒径」とは、粒度分布曲線で累積重量(質量)50%粒子が有する(通過する)直径を意味する。例えば、前記1次粒子形態のコアシェルラバーのコアは、180nm以上、200nm以上、220nm以上、240nm以上、260nm以上、280nm以上または300nm以上の平均粒径を有することができ、その上限は、例えば、500nm以下、495nm以下、490nm以下、具体的には、450nm以下、400nmまたは350nm以下でありうる。商用化されたコアシェル製品の場合、対応する粒径のサイズと比率Rが前記範囲を満たさない場合が多いので、ラバーによる衝撃吸収機能が十分でない。
【0048】
別の例において、前記1次粒子形態のコアシェルラバーは、250nm以下の平均粒径を有することができる。この場合、その下限は、例えば10nm以上、20nm以上、または30nm以上でありうる。このような粒径を有する場合にも、前記1次粒子形態のコアシェルラバーは、コアシェルの全体粒径に対するコアの粒径比率Rが前記範囲を満たすことができる。商用化されたコアシェル製品の場合、対応する粒径のサイズが前記範囲を満たさない場合が多いので、ラバーによる衝撃吸収機能が十分でない。
【0049】
また、本出願で前記コアシェルラバーは、所定の粒度分布を有することができる。
【0050】
一例において、前記1次粒子形態のコアシェルラバーは、粒径分布のD10、すなわち粒度分布の測定による粒径のうち、小さい側から重量(質量)を基準として累積10%粒子までの直径が180~220nmの範囲でありうる。
【0051】
別の例において、前記1次粒子形態のコアシェルラバーは、粒径分布のD50、すなわち粒度分布の測定による粒径のうち、小さい側から重量(質量)を基準として累積50%粒子までの直径が250~350nmの範囲でありうる。
【0052】
別の例において、前記1次粒子形態のコアシェルラバーは、粒径分布のD90、すなわち粒度分布の測定による粒径のうち、小さい側から重量(質量)を基準として累積90%粒子までの直径が450~510nmの範囲でありうる。
【0053】
一例において、前記1次粒子形態のコアシェルラバーは、下記式1によって求められる粒度分布の幅が2.0以下または1.5以下でありうる。その下限は、特に制限されず、例えば、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上または1.0以上でありうる。
【0054】
[式1]
(D90-D10)/(D50
【0055】
上記のように、粒度分布の幅が狭い1次粒子形態のコアシェルラバーを使用する場合、優れた接着強度、剥離強度および耐衝撃強度を広い温度範囲で均一に確保するために有利である。
【0056】
前記のような粒径特性は、例えば、コアまたはシェルの形成時に使用される単量体の種類や含量を適切に調節する方法、または単量体を様々な段階に分けて投入する、またコアやシェルの重合時間やその他重合条件を適切に調節するなどの方法を通じて得られることができる。
【0057】
一例において、2次粒子の形成のために凝集する1次粒子の個数は、特に制限されない、例えば、前記コアシェルラバー集合体(凝集体)、すなわち2次粒子の直径が0.1~10μmの範囲になり得るように1次粒子が凝集して2次粒子が形成され得る。一例において、重合後にプラネタリーミキサーのような混練機を用いて混練過程を経た2次粒子形態のコアシェルラバー(凝集粒子)は、2μm以下、1.5μm以下、1μm以下、または0.5μm以下のサイズを有することができる。2次粒子と関連してサイズというのは、前記説明した粒径または最も長い次元のサイズに相当する意味で使用され得る。
【0058】
一例において、前記2次粒子形態のコアシェルラバーが有する平均粒径は、1.5μm以下または1μm以下でありうる。具体的に、前記コアシェルラバーの平均粒径は、900nm以下、800nm以下、700nm以下または600nm以下でありうる。特に制限されるものではないが、前記2次粒子形態のコアシェルラバーの平均粒径の下限は、100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、または500nm以上でありうる。
【0059】
前記説明された特性を満たす2次粒子形態のコアシェルラバーは、接着剤組成物の全体含量を基準として5重量部以上でありうる。具体的に、その含量の下限は、6重量部以上、7重量部以上、8重量部以上、9重量部以上または10重量部以上でありうる。また、前記コアシェルラバー集合体の含量は、35重量部以下でありうる。具体的に、その含量の上限は、34重量部以下、33重量部以下、32重量部以下、31重量部以下または30重量部以下であり得、より具体的には、25重量部以下または20重量部以下でありうる。前記含量より少なく使用される場合には、衝撃強度の改善効果が十分でなく、前記範囲を超過して使用される場合には、せん断強度および高温衝撃強度が低下することがあるので、好ましくない
【0060】
一例において、前記接着剤組成物は、液状ラバーをさらに含むことができる。
【0061】
一例において、前記液状ラバーは、ジエン系単量体の単独重合体またはジエン系単量体と異種単量体の共重合体である液状ラバーの末端にエポキシ基を有する構成でありうる。すなわち、前記液状ラバーは、エポキシ終結した液状ラバーでありうる。
【0062】
例えば、前記液状ラバーは、ブタジエンまたはイソブタジエンから誘導される反復単位を有する単一重合体または共重合体を含むことができる。液状ラバーには、例えばブタジエンまたはイソブタジエンとアクリレートおよび/またはアクリロニトリルの共重合体が含まれ得る。
【0063】
一例において、液状ラバーの含量は、前記説明されたコアシェルラバーのそれと同一であり得る。
【0064】
一例において、前記接着剤組成物は、接着剤組成物の全体含量を基準として、少なくとも5重量部または10重量部以上のラバー(コアシェルラバーおよび/または液状ラバー)を含むことができる。例えば、前記接着剤組成物がコアシェルラバーだけを含む場合、前記接着剤組成物は、接着剤組成物の全体含量を基準として、少なくとも5重量部または10重量部以上のコアシェルラバーを含むことができる。または、前記接着剤組成物がコアシェルラバーと液状ラバーを全部含む場合、前記接着剤組成物は、接着剤組成物の全体含量を基準としてコアシェルラバーと液状ラバーを5重量部以上または10重量部含むことができる。前記のような場合にも、せん断強度および高温衝撃強度を考慮して、ラバー成分は、35重量部以下で使用され得る。一例において、前記接着剤組成物は、接着剤組成物の全体含量を基準として、10重量部以上、12重量部以上または14重量部以上、そして30重量部以下、25重量部以下、または22重量部以下のラバー(コアシェルラバーおよび/または液状ラバー)を含むことができる。
【0065】
(d)エポキシ硬化剤
前記接着剤組成物は、約80℃以上または約100℃以上の温度で硬化し得るように所定の硬化剤を含むことができる。前記温度範囲で硬化が起こることができると、硬化剤の種類は、特に制限されない。例えば、硬化剤としては、ジシアンジアミド、メラミン、ジアリルメラミン、グアナミン(例:アセトグアナミン、ベンゾグアナミン)、アミノトリアゾール(3-アミノ-1,2,4トリアゾール)、ヒドラジッド(アジピン酸ジヒドラジド、ステアリン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド)、シアノアセトアミドまたは芳香族ポリアミン(例:ジアミノジフェニルスルホン)等が使用され得る。
【0066】
特に制限されないが、前記硬化剤は、例えば、接着剤組成物の全体含量を基準として、1重量部以上、2重量部以上、3重量部以上または4重量部以上使用することができる。特に制限されないが、硬化剤の含量の上限は、15重量部以下、14重量部以下、13重量部以下、12重量部以下、11重量部以下または10重量部以下でありうる。
【0067】
(e)その他成分
前記接着剤組成物は、硬化剤による硬化反応の速度および温度を調節するために触媒を含むことができる。触媒の種類は、特に制限されず、公知の多様な種類の触媒が適切に使用され得る。
【0068】
非制限的な一例において、前記触媒としては、p-クロロフェニル-N,N-ジメチルウレア、3-フェニル-1,1-ジメチルウレア、3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチルウレアのようなウレア類;3級アクリル類;ベンジルジメチルアミンのようなアミン類;ピペリジンまたはこれらの誘導体;またはイミダゾール誘導体が使用され得る。
【0069】
特に制限されないが、前記触媒は、例えば、接着剤組成物の全体含量を基準として、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上または0.4重量部以上使用することができる。特に制限されないが、触媒含量の上限は、2重量部以下でありうる。
【0070】
一例において、前記接着剤組成物は、粒子状の無機充填剤、すなわち無機粒子をさらに含むことができる。無機充填剤を使用する場合、接着剤の機械的特性、レオロジー特性などを調節することができる。無機充填剤の形態は、角状、球状、板状、または針状であり得、特に制限されない。
【0071】
無機充填剤としては、例えば、酸化カルシウム、石英粉末、アルミナ、カルシウムカーボネート、カルシウムオキシド、アルミニウムヒドロキシド、炭酸マグネシウムカルシウム、バライト、親水性または疎水性シリカ粒子、またはアルミニウムマグネシウムカルシウムシリケートを使用することができる。シリカ粒子の使用時には、疎水性がさらに好ましい。
【0072】
特に制限されないが、前記無機充填剤は、例えば、接着剤組成物の全体含量を基準として、1重量部以上、2重量部以上、3重量部以上または4重量部以上使用することができる。特に制限されないが、無機充填剤の含量の上限は、15重量部以下または10重量部以下でありうる。
【0073】
一例において、前記組成物は、多様な種類の添加剤をさらに含むことができる。例えば、公知の可塑剤、反応性または非反応性希釈剤、カップリング剤、流動性調節剤、揺変性付与剤、着色剤などが接着剤組成物にさらに含まれ得る。前記添加剤の具体的な種類は、特に制限されず、公知の物質または市販製品が制限なしに使用され得る。
【0074】
特に制限されないが、前記添加剤は、例えば、接着剤組成物の全体含量を基準として、0.1重量部以上、1重量部以上、2重量部以上または3重量部以上使用され得る。特に制限されないが、添加剤含量の上限は、15重量部以下、14重量部以下、13重量部以下、12重量部以下、11重量部以下または10重量部以下でありうる。
【0075】
本出願に関する他の一例において、本出願は、前記接着剤組成物の硬化物を含む構造体に関する。前記構造体は、基材および前記基材上に塗布された後、硬化した接着剤組成物の硬化物を含むことができる。前記基材は、金属成分、プラスチック成分、木材、ガラス繊維含有基材などを含むことができる。
【0076】
一例において、前記構造体は、硬化物を介して2以上の基材が接合された形態を有することができる。例えば、前記構造体は、金属と金属が硬化物を介して接合された形態、金属とプラスチックが硬化物を介して接合された形態、またはプラスチックとプラスチックが硬化物を介して接合された形態を有することができる。前記構造体は、宇宙航空、風力発電、船舶または自動車用構造材料として使用され得る。
【0077】
本出願に関する他の一例において、本出願は、構造体の製造方法に関する。前記方法は、前記説明された構成の組成物を基材の表面上に塗布する段階、および基材の表面に塗布された前記組成物を硬化する段階を含むことができる。前記塗布は、基材と接着組成物の物理的な接触が起こるように行われ得る。
【0078】
前記接着組成物を構造体の表面に塗布する方式は、特に制限されない。例えば、押出方式による機械的塗布、スワール(swirl)またはストリーミング(streaming)のようなジェット噴霧法が利用され得る。前記塗布は、接合しようとする一つ以上の基材に対して行われ得る
【0079】
硬化温度は、特に制限されない。例えば、80℃以上または100℃以上で硬化が行われ得る。特に制限されないが、耐熱安定性を考慮するとき、220℃以下の温度で硬化を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0080】
本出願の一例によれば、優れた接着強度、剥離強度および耐衝撃強度を、広い温度範囲で均一に提供する接着剤組成物が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1図1は、本出願の一具体例によって製造されたコアシェルラバー(1次粒子形態)の粒度分布を示す。横軸は、粒径を、縦軸は、相対的なラバーの個数を意味する。
図2図2は、本出願の一具体例によって製造されたコアシェルラバーがエポキシ樹脂内で分散した様子を撮影したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下、実施例および比較例を通じて本出願を説明する。しかし、本出願の範囲が以下に提示された範囲によって制限されるものではない。
【0083】
製造例
*製造例1:コアシェルラバー集合体の製造
第1段階(Coreの製造):イオン交換水70重量部、単量体である1,3ブタジエン60重量部、乳化剤であるナトリウムドデシルベンゼンスルホネート1.0重量部、炭酸カルシウム0.85重量部、3級ドデシルメルカプタン0.28重量部、開始剤である過硫酸カリウム0.28重量部を窒素置換された重合反応器に投入し、75℃で重合転換率が30~40%である時点まで反応させた。以後、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート0.3重量部を投入し、1.3ブタジエン20重量部をさらに投入し、80℃まで昇温して重合転換率が95%である時点で反応を終了した。製造された重合体のラテックスゲルの含量は、73%であった。この際、ラテックスゲルの含量は、ゴムラテックスを薄い酸や金属塩を利用して凝固させた後に洗浄し、60℃の真空オーブンで24時間の間乾燥させ、得られたゴム1gをトルエン100gに入れて48時間の間室温の暗室で保管した後、ゾルとゲルを分離して測定した。
【0084】
第2段階:製造されたゴムラテックス70重量部を密閉された反応器に投入し、窒素で充填された反応器の温度を75℃に昇温した。以後、前記反応器にピロリン酸ナトリウム0.1重量部、デキストロース0.2重量部および硫化第1鉄0.002重量部を一括投入した。
【0085】
別の混合装置でメチルメタクリレート25.5重量部、スチレン4.5重量部、乳化剤としてナトリウムドデシルベンゼンスルホネート0.5重量部、クメンヒドロペルオキシド0.1重量部、イオン交換水20重量部を混合して、単量体乳化液を製造した。
【0086】
ゴムラテックスが投入された反応器に、前記乳化液を3時間にわたって連続的に投入した後、30分後にヒドロペルオキシド0.03重量部を投入し、同一温度で1時間の間熟成させて重合転換率が98%である時点で反応を終了した。
【0087】
前記過程のうち適当な時点にNicomp N300 dynamic light scattering装備を通じて測定されたコアの平均粒径は、320nmであり、コアシェルラバー樹脂ラテックスの平均粒径は、345nmであった。
【0088】
また、製造された1次粒子形態のコアシェルラバーの粒度分布を測定し、その結果は、図1に記載した。
【0089】
以後、前記反応物に酸化防止剤を投入し、マグネシウムサルフェートで凝集させた後、脱水および乾燥して、凝集形態のコアシェルラバーを製造した。
【0090】
*製造例2:変性ウレタン樹脂の製造
窒素置換された重合反応器にOH当量が500のポリテトラヒドロフラン109.76gとヘキサメチレンジイソシアネート36.92g、プロピレングリコール2.51g、t-ブチルフェノール22.75g、スズ触媒0.1gを投入して混合し、75℃で反応させて、ウレタン樹脂を製造した。
【0091】
*製造例3:変性ウレタン樹脂の製造
窒素置換された重合反応器にOH当量が2,250のポリテトラヒドロフラン493.92gとヘキサメチレンジイソシアネート36.92g、プロピレングリコール2.51g、t-ブチルフェノール22.75g、スズ触媒0.1gを投入して混合し、75℃で反応させて、ウレタン樹脂を製造した。
【0092】
*製造例4:構造用接着剤の製造
以下の表1のような成分を所定含量(重量比率:重量部)で含む実施例および比較例の組成物を接着剤材料として準備した。具体的に、コアシェルラバー集合体とエポキシ樹脂をプラネタリーミキサーに入れ、80℃で5時間混合した。コアシェルラバーがエポキシ樹脂内で分散した様子は、図2に示された通りである。以後、「ウレタン樹脂、硬化剤および触媒を除いた」残りの成分をプラネタリーミキサーに入れ、80℃で3時間撹拌した。最後に、温度を40℃に下げ、「ウレタン樹脂、硬化剤および触媒」をプラネタリーミキサーに入れ、1時間の間混合した後、常温(約23℃)に下げて、混練を終了した。
【0093】
物性測定方法
*衝撃剥離強度
実施例および比較例に対してそれぞれ5個の試験片を製作し、DIN ISO 11343に準じて重さ45kgの物体を高さ1.5mより2m/sの速度で自由落下させ、80℃、23℃、および-40℃それぞれで衝撃剥離強度(単位:N/mm)を測定し、その平均値を取った。
【0094】
試験片の場合、90mm×25mm×1.6mm(長さ×幅×厚さ)のサイズを有し、強度が440MPaの冷間圧延鋼を2個準備し、前記冷間圧延鋼の接着面積が25mm ×30mmになるように接着剤を冷間圧延鋼の所定領域に塗布し、180℃で20分間硬化した。ガラスビーズを利用して、接着層の厚さを0.2mmに均一に維持した。測定結果は、表2に記載した。
【0095】
*せん断強度実験
実施例および比較例と関連して製造された試験片に対して、DIN EN 1465に準じて5回のせん断強度の測定を行い、その平均値を取った。この際、せん断強度(単位:Mpa)の測定は、10mm/分および23℃の条件で行われた。
【0096】
試験片の場合、100mm×25mm×1.6mm(長さ×幅×厚さ)のサイズを有し、強度が440MPaの冷間圧延鋼板を2個準備し、前記冷間圧延鋼板の接着面積が25mm×10mmになるように接着剤を冷間圧延鋼の所定領域に塗布し、180℃で20分間硬化した。ガラスビーズを利用して、接着層の厚さを0.2mmに均一に維持した。測定結果は、表2に記載した。
【0097】
実験結果
【0098】
【表1】
1.第1エポキシ樹脂1):エポキシ当量が約180以上であるビスフェノールA系エポキシ樹脂
2.第2エポキシ樹脂2):エポキシ当量が約180未満のビスフェノールF系エポキシ樹脂
3.コアシェルラバー3):製造例1のコアシェルラバー
4.コアシェルラバー4):Dow paralloid EXL2600
5.液状ラバー5):Struktol Polydis6401
6.変性ウレタン樹脂6):製造例2のウレタン樹脂
7.変性ウレタン樹脂7):Huntzman DY965
8.変性ウレタン樹脂8):製造例3のウレタン樹脂
9.モノエポキシ樹脂9):CardoliteのNC513
10.着色剤10):Pigment violet 23
11:硬化剤11):Airproduct 1200G
12:触媒12):Evonik Amicure UR7/10
13:Fumed silica13):Cabo TS720
14:シランカップリング剤14):GE Advanced material A-187
【0099】
【表2】
図1
図2