(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】感放射線性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/039 20060101AFI20220909BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20220909BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/038 601
G03F7/004 501
(21)【出願番号】P 2021527451
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2020018971
(87)【国際公開番号】W WO2020261784
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019117232
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】田中 匠
(72)【発明者】
【氏名】江副 博之
(72)【発明者】
【氏名】原田 憲一
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/181753(WO,A1)
【文献】特開2002-351060(JP,A)
【文献】特開2009-249425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00 - 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌槽に、少なくとも、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を投入する工程1と、
前記撹拌槽内において、不活性ガスの濃度が90体積%以上である気体の下、前記酸の作用により極性が増大する樹脂、前記光酸発生剤、及び、前記溶剤を撹拌混合して、感放射線性樹脂組成物を製造する工程2と、を有し、
前記工程2において、前記撹拌槽内の気圧が前記撹拌槽外の気圧よりも高く、
前記工程2において、前記撹拌槽内の気圧と前記撹拌槽外の気圧との差が2.0kPa以下である、感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記気体中の前記不活性ガスの濃度が95体積%以上である、請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記撹拌槽内の気圧と前記撹拌槽外の気圧との差が0.8kPa以下である、請求項1又は2に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記工程1の前に、前記撹拌槽内の気体を前記不活性ガスの濃度が90体積%以上である気体に置換する、請求項1~3のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記工程1において、前記撹拌槽内の気体を前記不活性ガスの濃度が90体積%以上である気体に置換する、請求項1~3のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記工程1と前記工程2との間に、前記撹拌槽内の気体を前記不活性ガスの濃度が90体積%以上である気体に置換する、請求項1~3のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記感放射線性樹脂組成物の固形分濃度が10質量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記酸の作用により極性が増大する樹脂が、ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit、集積回路)及びLSI(Large Scale Integrated circuit、大規模集積回路)等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、感放射線性樹脂組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。
リソグラフィーの方法としては、酸により極性を増大させる樹脂を含有する感放射線性樹脂組成物によりレジスト膜を形成した後、得られた膜を露光して、その後、現像する方法が挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載されるように、通常、感放射線性樹脂組成物は、各種成分を混合して製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、感放射線性樹脂組成物を用いたパターン(レジストパターン)の形成においては、形成されるパターンにおいて欠陥が少ないことが望ましい。なお、本明細書において、欠陥とは、現像処理を実施して得られるパターンにおいて、凹み、又は、欠けがある、及び、所定の大きさのパターンとなっていないこと等を意味する。
また、感放射線性樹脂組成物は所定期間保管した後に用いられる場合が多いため、所定期間保管した後に使用する際にも感度の変動が少ないことが望ましい。
本発明者らは、特許文献1を参考にして感放射線性樹脂組成物を製造して、その特性について検討を行ったところ、上述したパターンの欠陥の発生抑制、及び、長期保管後の感度の変動抑制の両立の点で更なる改良がある余地があることを知見した。
【0006】
本発明は、形成されるパターンの欠陥の発生が抑制され、かつ、長期保管後の感度の変動が抑制された感放射線性樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
(1) 撹拌槽に、少なくとも、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を投入する工程1と、
撹拌槽内において、不活性ガスの濃度が90体積%以上である気体の下、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を撹拌混合して、感放射線性樹脂組成物を製造する工程2と、を有し、
工程2において、撹拌槽内の気圧が撹拌槽外の気圧よりも高く、
工程2において、撹拌槽内の気圧と撹拌槽外の気圧との差が2.0kPa以下である、感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(2) 気体中の不活性ガスの濃度が95体積%以上である、(1)に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(3) 撹拌槽内の気圧と撹拌槽外の気圧との差が0.8kPa以下である、(1)又は(2)に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(4) 工程1の前に、撹拌槽内の気体を不活性ガスの濃度が90体積%以上である気体に置換する、(1)~(3)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(5) 工程1において、撹拌槽内の気体を不活性ガスの濃度が90体積%以上である気体に置換する、(1)~(3)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(6) 工程1と工程2との間に、撹拌槽内の気体を不活性ガスの濃度が90体積%以上である気体に置換する、(1)~(3)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(7) 感放射線性樹脂組成物の固形分濃度が10質量%以上である、(1)~(6)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(8) 酸の作用により極性が増大する樹脂が、ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位を有する、(1)~(7)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、形成されるパターンの欠陥の発生が抑制され、かつ、長期保管後の感度の変動が抑制された感放射線性樹脂組成物の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の感放射線性樹脂組成物の製造方法で用いられる装置の一実施形態の概略図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態の一例を説明する。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換又は無置換を記していない表記は、置換基を有していない基と共に置換基を有する基をも含む。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも含む。
【0012】
本明細書において表記される二価の基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「L-M-N」なる一般式で表される化合物中の、Mが-OCO-C(CN)=CH-である場合、L側に結合している位置を*1、N側に結合している位置を*2とすると、Mは、*1-OCO-C(CN)=CH-*2であってもよく、*1-CH=C(CN)-COO-*2であってもよい。
本明細書における、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを含む総称であり、「アクリル及びメタクリルの少なくとも1種」を意味する。同様に「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0013】
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布とも記載する)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶剤:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0014】
本明細書における「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書における「光」とは、放射線を意味する。
【0015】
本発明の感放射線性樹脂組成物(以下、単に「本発明の組成物」、「組成物」又は「レジスト組成物」とも記載する。)の製造方法の特徴点の一つとしては、後述する工程2で説明するように、不活性ガスの濃度が90体積%以上である気体(以下、単に「特定気体」とも記載する。)の下、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を撹拌混合して、感放射線性樹脂組成物を製造することが挙げられる。
本発明者らが従来技術の問題点について検討したところ、感放射線性樹脂組成物を製造する際に感放射線性樹脂組成物中に混入する水分及び酸素によって、感放射線性樹脂組成物を長期保管した後に感度の変動が生じることを知見している。本発明の製造方法では、このような水分及び酸素の混入を防ぐために、特定気体の下、感放射線性樹脂組成物を構成する各成分を撹拌混合する。その際、撹拌槽内の気圧を撹拌槽外の気圧よりも高くすることにより、撹拌槽外の空気中の水分及び酸素の撹拌槽内への混入を防いでいる。また、本発明者らは、撹拌槽内の気圧が撹拌槽外の気圧よりも高すぎる場合、言い換えれば、特定気体の気圧が高すぎる場合、感放射線性樹脂組成物に特定気体が溶け込み、形成されるパターンの欠陥につながることを知見している。そこで、撹拌槽内の気圧と撹拌槽外の気圧との差を2.0kPa以下に制御することにより、パターンの欠陥が抑制されることを見出している。
【0016】
本発明の製造方法は、以下の工程1及び工程2を有する。
工程1:撹拌槽に、少なくとも、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を投入する工程
工程2:撹拌槽内において、不活性ガスの濃度が90体積%以上である気体の下、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を撹拌混合して、感放射線性樹脂組成物を製造する工程
以下、各工程の手順について詳述する。
なお、本発明の製造方法は、クリーンルーム内で実施することが好ましい。クリーン度としては、国際統一規格ISO 14644-1におけるクラス6以下が好ましく、クラス5以下がより好ましく、クラス4以下が更に好ましい。
【0017】
<工程1>
工程1は、撹拌槽に、少なくとも、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を投入する工程である。
工程1で使用される酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤の詳細については後述する。
また、工程1では、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤以外の他の成分を撹拌槽内に投入してもよい。他の成分としては、例えば、酸拡散制御剤、疎水性樹脂、界面活性剤、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂、カルボン酸オニウム塩、及び、溶解阻止化合物が挙げられる。他の成分の詳細についても後述する。
【0018】
図1において、本発明の製造方法で用いられる装置の一実施形態の概略図を表す。
装置100は、撹拌槽10と、撹拌槽10内に回転可能に取り付けられた撹拌軸12と、撹拌軸12に取り付けられた撹拌翼14と、撹拌槽10の底部と一端が連結し、他端が撹拌槽10の上部に連結している循環配管16と、循環配管16の途中に配置されたフィルター18と、循環配管16と連結した排出配管20と、排出配管20の端部に配置された排出ノズル22とを有する。
装置内の接液部(液と接する個所)は、フッ素樹脂等でライニング、又は、コーティングされていることが好ましい。
また、本発明の製造方法を実施する前に、装置100は予め溶剤にて洗浄されることが好ましい。使用する溶剤及び洗浄方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、特開2015-197646号公報の溶剤及び洗浄方法が挙げられる。
【0019】
撹拌槽10としては、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を収容できる撹拌槽であれば特に制限されず、公知の撹拌槽が挙げられる。
撹拌槽10の底部の形状は特に制限されず、皿形鏡板形状、半楕円鏡板形状、平鏡板形状、及び、円錐鏡板形状が挙げられ、皿型鏡板形状、又は、半楕円鏡板形状が好ましい。
撹拌槽10内には、撹拌効率を高めるために、邪魔板を設置してもよい。
邪魔板の枚数は特に制限されず、2~8枚が好ましい。
攪拌層10の水平方向における邪魔板の幅は特に制限されず、撹拌槽の径の1/8~1/2が好ましい。
撹拌槽の高さ方向における邪魔板の長さは特に制限されないが、撹拌槽の底部から投入される成分の液面までの高さの1/2以上が好ましく、2/3以上がより好ましく、3/4以上が更に好ましい。
【0020】
撹拌軸12には、図示しない駆動源(例えばモータ等)が取り付けられていることが好ましい。駆動源により撹拌軸12が回転することで、撹拌翼14が回転し、撹拌槽10内に投入された各成分が撹拌される。
撹拌翼14の形状は特に制限されないが、例えば、パドル翼、プロペラ翼、及び、タービン翼が挙げられる。
【0021】
なお、撹拌槽10は、各種材料を撹拌槽内に投入するための材料投入口を有していてもよい。
また、撹拌槽10は、その内部に気体を導入するための気体導入口を有していてもよい。
また、撹拌槽10は、その内部の気体を撹拌槽外に排出するための気体排出口を有していてもよい。
【0022】
撹拌槽10に、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を投入する手順は特に制限されない。
例えば、撹拌槽10の図示しない材料投入口から、上記成分を投入する方法が挙げられる。上記成分を投入する際には、成分を順次投入してもよいし、一括して投入してもよい。また、1種の成分を投入する際、複数回に分けて投入してもよい。
また、撹拌槽10内に各成分を順次投入する場合、投入順番は特に制限されない。例えば、酸の作用により極性が増大する樹脂(表1及び2中では、「ポリマー」と表記)、光酸発生剤、溶剤、酸拡散制御剤、及び、添加剤の5種を撹拌槽10内に投入する場合、以下の表1及び2に示すように120通りの投入方法が挙げられる。
なお、表1及び表2では、上記5種を撹拌槽10に投入する順番(1~5)を示す。
【0023】
【0024】
【0025】
また、溶剤以外の成分を撹拌槽内に投入する際には、成分を溶剤中に溶解させた溶液として撹拌槽10内に投入してもよい。その際、溶液中の不溶物を除去するために、上記溶液をフィルターろ過した後、撹拌槽10内に投入してもよい。
また、溶剤を撹拌槽10内に投入する際には、溶剤をフィルターろ過した後、撹拌槽10内に投入してもよい。
なお、各種成分を撹拌槽10内に投入する際には、送液ポンプを利用してもよい。
上記成分を溶解させた溶液中の成分濃度は特に制限されないが、溶液全質量に対して、10~50質量%が好ましい。
【0026】
上記フィルターろ過の際に使用されるフィルターの種類は特に制限されず、公知のフィルターが用いられる。
フィルターの孔径(ポアサイズ)としては、0.20μm以下が好ましく、0.10μmがより好ましく、0.05μm以下が更に好ましい。
フィルターの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、並びに、ナイロン6及びナイロン66等のポリアミド樹脂が好ましい。
フィルターは、有機溶剤で予め洗浄したものを用いてもよい。
フィルターでろ過する際には、複数のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数のフィルターを用いる場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、フィルターでろ過する際には、循環ろ過を実施してもよい。循環ろ過の方法としては、例えば、特開2002-62667号に開示されるような手法が好ましい。
フィルターとしては、特開2016-201426号に開示されるような溶出物が低減されたものが好ましい。
なお、上記フィルターろ過の後、更に、吸着材による不純物の除去を行ってもよい。
【0027】
通常、撹拌槽に、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を投入する際には、撹拌槽内に空間が生じるように投入することが好ましい。より具体的には、
図1に示すように、撹拌槽10内において、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を少なくとも含有する混合物Mによって占有されていない空間S(空隙S)が生じるように、撹拌槽内に各成分を投入することが好ましい。
【0028】
撹拌槽内における、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を少なくとも含有する混合物の占有率は特に制限されないが、50~95体積%が好ましく、80~90体積%がより好ましい。
なお、上記混合物の占有率は、以下の式(1)によって求められる。
式(1):占有率={(撹拌槽内の混合物の体積/撹拌槽の容器体積)}×100
また、撹拌槽内における空隙率(空間(空隙)が占める割合)は、5~50体積%が好ましく、10~20体積%がより好ましい。
上記空隙率は、以下の式(2)によって求められる。
式(1):空隙率={1-(撹拌槽内の混合物の体積/撹拌槽の容器体積)}×100
【0029】
<工程2>
工程2は、撹拌槽内において、特定気体の下、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を撹拌混合して、感放射線性樹脂組成物を製造する工程である。より具体的には、工程2においては、
図1で示した空間Sが上記特定気体で満たされた状態(充填された状態)において、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を撹拌混合する。
【0030】
特定気体中において、不活性ガスの濃度は、特定気体全体積中、90体積%以上である。なかでも、形成されるパターンの欠陥の発生がより抑制される点、及び、長期保管後の感度の変動がより抑制される点の少なくとも一方が得られる点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」とも記載する。)で、95体積%以上が好ましい。上限は特に制限されないが、100質量%が挙げられる。
不活性ガスとしては、例えば、窒素、並びに、ヘリウム及びアルゴン等の希ガスが挙げられる。
特定気体中の不活性ガス以外のガスとしては、例えば、酸素、及び、水蒸気が挙げられる。
【0031】
工程2では、特定気体の存在下、各種成分を撹拌混合できればよく、撹拌槽内の気体を特定気体に置換する時期(タイミング)は特に制限されない。
例えば、上述した工程1の前に、撹拌槽内の気体を特定気体に置換する工程3を実施する方法が挙げられる。つまり、撹拌槽内に酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を投入する前に、撹拌槽内の気体を特定気体に置換する方法が挙げられる。置換する方法としては、撹拌槽内に不活性ガスを供給(導入)する方法が挙げられる。上記工程3を実施する場合、攪拌槽内の気体が特定気体である状態を維持するために、撹拌槽内に特定気体を導入しながら工程1及び工程2を実施することが好ましい。つまり、工程1の前に、撹拌槽内に特定気体を導入し始めて、特定気体の存在下(撹拌槽の空間が特定気体で満たされた状態下)、工程1及び工程2を実施することが好ましい。
また、上述した工程1において、撹拌槽内の気体を特定気体に置換する工程4を実施する方法が挙げられる。つまり、撹拌槽内に酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を投入する際に、同時に、撹拌槽内の気体を特定気体に置換する方法が挙げられる。置換する方法としては、撹拌槽内に不活性ガスを供給(導入)する方法が挙げられる。上記工程4を実施する場合、攪拌槽内の気体が特定気体である状態を維持するために、撹拌槽内に特定気体を導入しながら工程2を実施することが好ましい。つまり、工程1において、撹拌槽内に特定気体を導入し始めて、特定気体の存在下(撹拌槽の空間が特定気体で満たされた状態下)、工程2を実施することが好ましい。
また、上述した工程1と工程2との間に、撹拌槽内の気体を特定気体に置換する工程5を実施する方法が挙げられる。つまり、撹拌槽内に酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を投入した後に、撹拌槽内の気体を特定気体に置換する方法が挙げられる。置換する方法としては、撹拌槽内に不活性ガスを供給(導入)する方法が挙げられる。上記工程5を実施する場合、攪拌槽内の気体が特定気体である状態を維持するために、撹拌槽内に特定気体を導入しながら工程2を実施することが好ましい。つまり、工程1の後に、撹拌槽内に特定気体を導入し始めて、特定気体の存在下(撹拌槽の空間が特定気体で満たされた状態下)、工程2を実施することが好ましい。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、工程3を実施することが好ましい。
なお、撹拌槽内に不活性ガスを供給(導入)する際には、不活性ガス用又は圧縮空気用のガスフィルターを通して供給してもよい。
【0032】
工程2においては、撹拌槽内の気圧が撹拌槽外の気圧よりも高くなるように調整される。この状態が維持されることにより、撹拌槽外の水分及び酸素を含有する気体が撹拌槽内に混入することを抑制できる。
上記状態を維持する方法としては、撹拌槽内に特定気体を導入し続ける方法が挙げられる。
【0033】
また、工程2においては、撹拌槽内の気圧と撹拌槽外の気圧との差が2.0kPa以下となるように調整される。言い換えれば、撹拌槽内の空間の特定気体の気圧と撹拌槽外の気圧との差が2.0kPa以下となるように調整される。この状態が維持されることにより、撹拌槽内の混合物中への特定気体の溶け込みを抑制でき、結果として、形成されるパターンの欠陥の発生を抑制できる。
上記差は、本発明の効果がより優れる点で、1.8kPa以下が好ましく、1.5kPa以下がより好ましく、0.8kPa以下がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、0.1kPa以上が好ましい。
なお、撹拌槽内の気圧及び撹拌槽外の気圧の測定方法は特に制限されず、市販の気圧計を用いて実施される。
【0034】
工程2においては、特定気体の下、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤の撹拌混合を実施する。撹拌混合の方法は特に制限されないが、上述した撹拌翼によって実施することが好ましい。なお、撹拌混合を行う際には、液が十分に撹拌されるよう、撹拌翼の形状、大きさ、設置箇所、及び、撹拌回転数などを考慮し、撹拌を行うことが好ましい。
撹拌混合する際の酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤を含有する混合物の温度は特に制限されないが、15~32℃が好ましく、20~24℃がより好ましい。
また、撹拌混合する際には混合物の温度は一定に保たれていることが好ましく、設定温度から±10℃以内が好ましく、±5℃以内がより好ましく、±1℃以内が更に好ましい。
撹拌混合時間は特に制限されないが、得られる感放射線性樹脂組成物の均一性、及び、生産性のバランスの点から、1~48時間が好ましく、15~24時間がより好ましい。
撹拌混合の際の撹拌翼の回転速度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、20~500rpmが好ましく、40~350rpmがより好ましく、50~300rpmが更に好ましい。
なお、撹拌混合を停止する際には、各種成分が溶剤に溶解していること確認することが好ましい。
撹拌混合時には、混合物に超音波をかけてもよい。
【0035】
本発明の製造方法にて製造された感放射線性樹脂組成物中における水分の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、0.10質量%以下が好ましく、0.06質量%以下がより好ましく、0.04質量%以下が更に好ましい。上記水分の含有量の下限は特に制限されないが、0.01質量%以上の場合が多い。
感放射線性樹脂組成物中における水分の含有量の測定方法としては、カールフィッシャー水分測定装置を用いる方法が挙げられる。
【0036】
本発明の製造方法にて製造された感放射線性樹脂組成物中における酸素の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、0.030μg/μL以下が好ましく、0.027μg/μL以下がより好ましい。上記水分の含有量の下限は特に制限されないが、0.001μg/μL以上の場合が多い。
本発明の製造方法にて製造された感放射線性樹脂組成物中における溶存ガスの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、0.210μg/μL以下が好ましく、0.190μg/μL以下がより好ましい。上記溶存ガスの含有量の下限は特に制限されないが、0.001μg/μL以上の場合が多い。
感放射線性樹脂組成物中における溶存ガスの含有量の測定方法としては、TCD(Thermal Conductivity Detector)検出器を有するガスクロマトグラフィー(ジーエルサイエンス社製GC390)を用いる方法が挙げられる。
なお、本明細書において、溶存ガスの含有量は、窒素の含有量と酸素の含有量の合計に該当する。
【0037】
工程2を実施した後、製造された感放射線性樹脂組成物に対してろ過処理を施してもよい。
例えば、
図1に示す装置100においては、撹拌槽10内に製造された感放射線性樹脂組成物を循環配管16に送液し、フィルター18でろ過する方法が挙げられる。なお、撹拌槽10から循環配管16に感放射線性樹脂組成物を送液する際には、図示しないバルブを開放して、感放射線性樹脂組成物を循環配管16内に送液することが好ましい。
上記循環ろ過は、複数回連続して実施してもよい。つまり、感放射線性樹脂組成物を連続して循環配管に送液して、フィルター18を複数回通液させてもよい。
撹拌槽10から循環配管16に感放射線性樹脂組成物を送液する方法は特に制限されず、重力を利用した送液方法、感放射線性樹脂組成物の液面側から圧力を加える方法、循環配管16側を負圧にする方法、及び、これらを2つ以上組み合わせた方法が挙げられる。
感放射線性樹脂組成物の液面側から圧力を加える方法の場合、送液で生じる流液圧を利用する方法、及び、ガスを加圧する方法が挙げられる。
流液圧は、例えば、ポンプ(送液ポンプ、及び、循環ポンプ等)等により発生させることが好ましい。ポンプとしては、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ、定量ポンプ、ケミカルポンプ、プランジャーポンプ、ベローズポンプ、ギアポンプ、真空ポンプ、エアーポンプ、及び、液体ポンプの使用が挙げられ、そのほかにも適宜、市販のポンプが挙げられる。ポンプが配置される位置は特に制限されない。
加圧に用いるガスとしては、感放射線性樹脂組成物に対し不活性又は非反応性のガスが好ましく、具体的には、窒素、ならびに、ヘリウム及びアルゴン等の希ガス等が挙げられる。なお、循環配管16側は減圧せず、大気圧であることが好ましい。
【0038】
循環配管16側を負圧にする方法としては、ポンプによる減圧が好ましく、真空にまで減圧することがより好ましい。
【0039】
フィルター18としては、工程1で説明したフィルターろ過の際に使用されるフィルターが挙げられる。
フィルター18にかかる差圧(上流側と下流側との圧力差)は200kPa以下が好ましく、100kPa以下がより好ましい。
また、フィルター18でろ過する際には、ろ過中における差圧の変化が少ないことが好ましい。フィルターに通液を開始した時点から、ろ過される溶液の90質量%の通液が終了する時点までの、ろ過前後の差圧を、通液を開始した時点のろ過前後の差圧の±50kPa以内に維持することが好ましく、±20kPa以内に維持することがより好ましい。
フィルター18でろ過する際には、線速度は3~150L/(hr・m
2)の範囲が好ましく、5~120L/(hr・m
2)がより好ましく、10~100L/(hr・m
2)が更に好ましい。
なお、
図1に記載の装置10には、フィルター18の下流側にろ過された感放射線性樹脂組成物が貯留されるバッファタンクが配置されていてもよい。
【0040】
撹拌槽10にて製造された感放射線性樹脂組成物は、
図1に示すように、排出配管20に送液して、排出配管20の端部に配置された排出ノズル22から排出して、所定の容器に収容してもよい。
感放射線性樹脂組成物を容器へ充填する際、例えば0.75L以上5L未満の容器であれば、充填速度としては0.3~3L/minが好ましく、0.4~2.0L/minがより好ましく、0.5~1.5L/minが更に好ましい。
排出ノズルは、充填効率を上げるために、並列に複数並べ、同時に充填してもよい
容器としては、例えば、ブルーム処理されたガラス容器、及び、接液部がフッ素樹脂となるよう処理された容器が挙げられる。
容器内に感放射線性樹脂組成物に収容された場合、容器内の空間部(感放射線性樹脂組成物が占有していない容器内の領域)を所定のガスで置換してもよい。ガスとしては感放射線性樹脂組成物に対して不活性又は非反応性のガスが好ましく、例えば、窒素、ならびに、ヘリウム及びアルゴンなどの希ガスが挙げられる。
なお、容器中に感放射線性樹脂組成物を収容する前に、感放射線性樹脂組成物中の溶存ガスを除去するための脱気処理を実施してもよい。脱気方法としては、超音波処理、及び、脱泡処理が挙げられる。
【0041】
<パターン形成方法>
上述した製造方法によって製造された感放射線性樹脂組成物は、パターン形成に用いられる。
より具体的には、本発明の組成物を用いたパターン形成方法の手順は特に制限されないが、以下の工程を有することが好ましい。
工程A:本発明の組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程
工程B:レジスト膜を露光する工程
工程C:現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程
以下、上記それぞれの工程の手順について詳述する。
【0042】
(工程A:レジスト膜形成工程)
工程Aは、本発明の組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程である。
本発明の組成物については、上述のとおりである。
【0043】
組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する方法としては、組成物を基板上に塗布する方法が挙げられる。
なお、塗布前に組成物を必要に応じてフィルターろ過することが好ましい。フィルターのポアサイズとしては、0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。また、フィルターは、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又は、ナイロン製が好ましい。
【0044】
組成物は、集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン、二酸化シリコン被覆)上に、スピナー又はコーター等の適当な塗布方法により塗布できる。塗布方法としては、スピナーを用いたスピン塗布が好ましい。
組成物の塗布後、基板を乾燥し、レジスト膜を形成してもよい。なお、必要により、レジスト膜の下層に、各種下地膜(無機膜、有機膜、又は、反射防止膜)を形成してもよい。
【0045】
乾燥方法としては、加熱する方法(プレベーク:PB)が挙げられる。加熱は通常の露光機、及び/又は、現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましい。
加熱時間は30~1000秒が好ましく、40~800秒がより好ましい。
【0046】
レジスト膜の膜厚は特に制限されないが、KrF露光用のレジスト膜の場合、0.2~12μmが好ましく、0.3~5μmがより好ましい。
また、ArF露光用又はEUV露光用のレジスト膜の場合、30~700nmが好ましく、40~400nmがより好ましい。
【0047】
なお、レジスト膜の上層にトップコート組成物を用いてトップコートを形成してもよい。
トップコート組成物は、レジスト膜と混合せず、更にレジスト膜上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートの膜厚は、10~200nmが好ましく、20~100nmがより好ましい。
トップコートについては、特に制限されず、従来公知のトップコートを、従来公知の方法によって形成でき、例えば、特開2014-059543号公報の段落0072~0082の記載に基づいてトップコートを形成できる。
【0048】
(工程B:露光工程)
工程Bは、レジスト膜を露光する工程である。
露光の方法としては、形成したレジスト膜に所定のマスクを通して放射線を照射する方法が挙げられる。
放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、及び、EB(Electron Beam)が挙げられ、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、特に好ましくは1~200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、EUV(13nm)、X線、及び、EBが挙げられる。
【0049】
露光後、現像を行う前にベーク(ポストベーク:PEB)を行うことが好ましい。
加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましい。
加熱時間は10~1000秒が好ましく、10~180秒がより好ましい。
加熱は通常の露光機、及び/又は現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
この工程は露光後ベークとも記載する。
【0050】
(工程C:現像工程)
工程Cは、現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程である。
【0051】
現像方法としては、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静置することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)が挙げられる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶剤に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂が十分に溶解する時間であれば特に制限はなく、10~300秒が好ましく、20~120秒がより好ましい。
現像液の温度は0~50℃が好ましく、15~35℃がより好ましい。
【0052】
現像液としては、アルカリ現像液、及び、有機溶剤現像液が挙げられる。
アルカリ現像液としては、アルカリを含有するアルカリ水溶液を用いることが好ましい。中でも、アルカリ現像液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)に代表される4級アンモニウム塩の水溶液であることが好ましい。アルカリ現像液には、アルコール類、界面活性剤等を適当量添加してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常、0.1~20質量%である。また、アルカリ現像液のpHは、通常、10.0~15.0である。
【0053】
有機溶剤現像液とは、有機溶剤を含有する現像液である。
有機溶剤現像液に用いられる有機溶剤としては、公知の有機溶剤が挙げられ、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び、炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0054】
(他の工程)
上記パターン形成方法は、工程Cの後に、リンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、例えば、純水が挙げられる。なお、純水には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
リンス液には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0055】
また、形成されたパターンをマスクとして、基板のエッチング処理を実施してもよい。つまり、工程Cにて形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)を加工して、基板にパターンを形成してもよい。
基板(又は、下層膜及び基板)の加工方法は特に制限されないが、工程Cで形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)に対してドライエッチングを行うことにより、基板にパターンを形成する方法が好ましい。
ドライエッチングは、1段のエッチングであっても、複数段からなるエッチングであってもよい。エッチングが複数段からなるエッチングである場合、各段のエッチングは同一の処理であっても異なる処理であってもよい。
エッチングは、公知の方法をいずれも用いることができ、各種条件等は、基板の種類又は用途等に応じて、適宜、決定される。例えば、国際光工学会紀要(Proc.of SPIE)Vol.6924,692420(2008)、特開2009-267112号公報等に準じて、エッチングを実施できる。また、「半導体プロセス教本 第四版 2007年刊行 発行人:SEMIジャパン」の「第4章 エッチング」に記載の方法に準ずることもできる。
中でも、ドライエッチングとしては、酸素プラズマエッチングが好ましい。
【0056】
本発明の製造方法及び組成物において使用される各種材料(例えば、溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物等)は、金属等の不純物を含有しないことが好ましい。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、1質量ppm以下が好ましく、10質量ppb以下がより好ましく、100質量ppt以下が更に好ましく、10質量ppt以下が特に好ましく、1質量ppt以下が最も好ましい。ここで、金属不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Al、Li、Cr、Ni、Sn、Ag、As、Au、Ba、Cd、Co、Mo、Zr、Pb、Ti、V、W、及び、Zn等が挙げられる。
【0057】
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いたろ過が挙げられる。フィルター孔径としては、0.20μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.01μm以下が更に好ましい。
フィルターの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等のフッ素樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6及びナイロン66等のポリアミド樹脂が好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数又は複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回ろ過してもよく、複数回ろ過する工程が循環ろ過工程であってもよい。循環ろ過工程としては、例えば、特開2002-62667号明細書に開示されるような手法が好ましい。
フィルターとしては、特開2016-201426号明細書に開示されるような溶出物が低減されたものが好ましい。
フィルターろ過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルターろ過と吸着材とを組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は、活性炭等の有機系吸着材を使用できる。金属吸着剤としては、例えば、特開2016-206500号明細書に開示されるものが挙げられる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、又は、装置内をフッ素樹脂等でライニング若しくはコーティングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルターろ過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、特開2015-123351号明細書、特開2017-13804号明細書等に記載された容器に保存されることが好ましい。
各種材料は組成物に使用する溶剤により希釈し、使用してもよい。
【0058】
<酸の作用により極性が増大する樹脂>
酸の作用により極性が増大する樹脂(以下、単に「樹脂(A)」とも記載する。)は、酸分解性基を有する繰り返し単位(A-a)(以下、単に「繰り返し単位(A-a)」とも記載する)を有することが好ましい。
酸分解性基とは、酸の作用により分解し、極性基を生じる基をいう。酸分解性基は、酸の作用により脱離する脱離基で極性基が保護された構造を有することが好ましい。つまり、樹脂(A)は、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位(A-a)を有する。この繰り返し単位(A-a)を有する樹脂は、酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少する。
【0059】
極性基としては、アルカリ可溶性基が好ましく、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
中でも、極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましい。
【0060】
酸の作用により脱離する脱離基としては、例えば、式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられる。
式(Y1):-C(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y2):-C(=O)OC(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38)
式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
【0061】
式(Y1)及び式(Y2)中、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)又はシクロアルキル基(単環もしくは多環)を表す。なお、Rx1~Rx3の全てがアルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)である場合、Rx1~Rx3のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
中でも、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
Rx1~Rx3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)又は式(Y2)で表される基は、例えば、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0062】
式(Y3)中、R36~R38は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
【0063】
式(Y3)としては、下記式(Y3-1)で表される基が好ましい。
【0064】
【0065】
ここで、L1及びL2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とアリール基とを組み合わせた基)を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、ヘテロ原子を有していてもよいアルキル基、ヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を有していてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
アルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
なお、L1及びL2のうち一方は水素原子であり、他方はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、アルキレン基とアリール基とを組み合わせた基であることが好ましい。
Q、M、及び、L1の少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員又は6員環)を形成してもよい。
パターンの微細化の点では、L2が2級又は3級アルキル基であることが好ましく、3級アルキル基であることがより好ましい。2級アルキル基としては、イソプロピル基、シクロヘキシル基、及び、ノルボルニル基が挙げられ、3級アルキル基としては、tert-ブチル基、及び、アダマンタン環基が挙げられる。これらの態様では、Tg(ガラス転移温度)及び活性化エネルギーが高くなるため、膜強度の担保に加え、かぶりの抑制ができる。
【0066】
式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
【0067】
繰り返し単位(A-a)としては、式(A)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0068】
【0069】
L1は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基を表し、R1は水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表し、R2は酸の作用によって脱離し、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい脱離基を表す。ただし、L1、R1、及び、R2のうち少なくとも1つは、フッ素原子又はヨウ素原子を有する。
L1は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基を表す。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基としては、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等)、及び、これらの複数が連結した連結基等が挙げられる。中でも、本発明の効果がより優れる点で、L1としては、-CO-、-アリーレン基-フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキレン基-が好ましい。
アリーレン基としては、フェニレン基が好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキレン基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、2以上が好ましく、2~10がより好ましく、3~6が更に好ましい。
【0070】
R1は、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、フッ素原子もしくはヨウ素原子が有していてもよいアルキル基、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表す。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキル基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1以上が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
上記アルキル基は、ハロゲン原子以外の酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよい。
【0071】
R2は、酸の作用によって脱離し、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい脱離基を表す。
脱離基としては、式(Z1)~(Z4)で表される基が挙げられる。
式(Z1):-C(Rx11)(Rx12)(Rx13)
式(Z2):-C(=O)OC(Rx11)(Rx12)(Rx13)
式(Z3):-C(R136)(R137)(OR138)
式(Z4):-C(Rn1)(H)(Ar1)
【0072】
式(Z1)及び式(Z2)中、Rx11~Rx13は、それぞれ独立に、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基(単環もしくは多環)を表す。なお、Rx11~Rx13の全てがアルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)である場合、Rx11~Rx13のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx11~Rx13は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい点以外は、上述した式(Y1)及び式(Y2)中のRx1~Rx3と同じであり、アルキル基及びシクロアルキル基の定義及び好適範囲と同じである。
【0073】
式(Z3)中、R136~R138は、それぞれ独立に、水素原子、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基を表す。R137とR138とは、互いに結合して環を形成してもよい。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基としては、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアリール基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアラルキル基、及び、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)が挙げられる。
なお、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基には、フッ素原子及びヨウ素原子以外に、酸素原子等のヘテロ原子が含まれていてもよい。つまり、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
【0074】
式(Z3)としては、下記式(Z3-1)で表される基が好ましい。
【0075】
【0076】
ここで、L11及びL12は、それぞれ独立に、水素原子;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいアリール基;又は、これらを組み合わせた基(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよい、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
M1は、単結合又は2価の連結基を表す。
Q1は、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいアリール基;アミノ基;アンモニウム基;メルカプト基;シアノ基;アルデヒド基;又は、これらを組み合わせた基(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよい、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
【0077】
式(Z4)中、Ar1は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい芳香環基を表す。Rn1は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表す。Rn1とAr1とは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。
【0078】
繰り返し単位(A-a)としては、一般式(AI)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0079】
【0080】
一般式(AI)において、
Xa1は、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
Tは、単結合、又は、2価の連結基を表す。
Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状、又は、分岐鎖状)、又は、シクロアルキル基(単環、又は、多環)を表す。ただし、Rx1~Rx3の全てがアルキル基(直鎖状、又は、分岐鎖状)である場合、Rx1~Rx3のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して、シクロアルキル基(単環もしくは多環)を形成してもよい。
【0081】
Xa1により表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基又は-CH2-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基又は1価の有機基を表し、例えば、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアシル基、及び、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素数3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Xa1としては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシメチル基が好ましい。
【0082】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、芳香環基、-COO-Rt-基、及び、-O-Rt-基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-基が好ましい。Tが-COO-Rt-基を表す場合、Rtは、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CH2-基、-(CH2)2-基、又は、-(CH2)3-基がより好ましい。
【0083】
Rx1~Rx3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基が好ましく、その他にも、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
一般式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0084】
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。
【0085】
一般式(AI)で表される繰り返し単位としては、好ましくは、酸分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位(Xa1が水素原子又はメチル基を表し、かつ、Tが単結合を表す繰り返し単位)である。
【0086】
樹脂(A)は、繰り返し単位(A-a)を1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
繰り返し単位(A-a)の含有量(2種以上の繰り返し単位(A-a)が存在する場合は合計含有量)は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、15~80モル%が好ましく、20~70モル%がより好ましい。
【0087】
樹脂(A)は、繰り返し単位(A-a)として、下記一般式(A-VIII)~(A-XII)で表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも1つの繰り返し単位を有することが好ましい。
【0088】
【0089】
一般式(A-VIII)中、R5は、tert-ブチル基、-CO-O-(tert-ブチル)基を表す。
一般式(A-IX)中、R6及びR7は、それぞれ独立に、1価の有機基を表す。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。
一般式(A-X)中、pは、1又は2を表す。
一般式(A-X)~(A-XII)中、R8は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、R9は、炭素数1~3のアルキル基を表す。
一般式(A-XII)中、R10は、炭素数1~3のアルキル基又はアダマンチル基を表す。
【0090】
(酸基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位を有してもよい。
酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(B)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0091】
【0092】
R3は、水素原子、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基を表す。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基としては、-L4-R8で表される基が好ましい。L4は、単結合、又は、エステル基を表す。R8は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基、又は、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0093】
R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基を表す。
【0094】
L2は、単結合、又は、エステル基を表す。
L3は、(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基、又は、(n+m+1)価の脂環式炭化水素環基を表す。芳香族炭化水素環基としては、ベンゼン環基、及び、ナフタレン環基が挙げられる。脂環式炭化水素環基としては、単環であっても、多環であってもよく、例えば、シクロアルキル環基が挙げられる。
R6は、水酸基、又は、フッ素化アルコール基(好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノール基)を表す。なお、R6が水酸基の場合、L3は(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基であることが好ましい。
R7は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が挙げられる。
mは、1以上の整数を表す。mは、1~3の整数が好ましく、1~2の整数がより好ましい。
nは、0又は1以上の整数を表す。nは、1~4の整数が好ましい。
なお、(n+m+1)は、1~5の整数が好ましい。
【0095】
酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(I)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0096】
【0097】
一般式(I)中、
R41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はAr4と結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
X4は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
L4は、単結合又はアルキレン基を表す。
Ar4は、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
【0098】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基が更に好ましい。
【0099】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のシクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。中でも、シクロプロピル基、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の炭素数3~8個で単環型のシクロアルキル基が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42、R43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0100】
Ar4は、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、及び、アントラセニレン基等の炭素数6~18のアリーレン基、又は、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、及び、チアゾール環等のヘテロ環を含む芳香環基が好ましい。
【0101】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除してなる基が挙げられる。(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
【0102】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基、及び、(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、及び、ブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基;等が挙げられる。
X4により表わされる-CONR64-(R64は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、炭素数8以下のアルキル基が好ましい。
X4としては、単結合、-COO-、又は、-CONH-が好ましく、単結合、又は、-COO-がより好ましい。
【0103】
L4におけるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、及び、オクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
Ar4としては、炭素数6~18の芳香環基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、ビフェニレン環基がより好ましい。
【0104】
以下、一般式(I)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに制限されるものではない。式中、aは1又は2を表す。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
(ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位(A-1))
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位として、ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位(A-1)を有することが好ましい。
ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位(A-1)としては、下記一般式(1)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0109】
【0110】
一般式(1)中、
Aは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。
Rは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表し、複数個ある場合には同じであっても異なっていてもよい。複数のRを有する場合には、互いに共同して環を形成していてもよい。Rとしては水素原子が好ましい。
aは1~3の整数を表し、bは0~(5-a)の整数を表す。
【0111】
繰り返し単位(A-1)としては、下記一般式(A-I)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0112】
繰り返し単位(A-1)を有する樹脂(A)を含有する組成物は、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用として好ましい。この場合の繰り返し単位(A-1)の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、30~100モル%が好ましく、40~100モル%がより好ましく、50~100モル%が更に好ましい。
【0113】
(ラクトン構造、スルトン構造、カーボネート構造、及びヒドロキシアダマンタン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位(A-2))
樹脂(A)は、ラクトン構造、カーボネート構造、スルトン構造、及びヒドロキシアダマンタン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位(A-2)を有していてもよい。
【0114】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位におけるラクトン構造又はスルトン構造は、特に制限されないが、5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造が好ましく、5~7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は5~7員環スルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものがより好ましい。
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、WO2016/136354号の段落0094~0107に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0115】
樹脂(A)は、カーボネート構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。カーボネート構造は、環状炭酸エステル構造であることが好ましい。
カーボネート構造を有する繰り返し単位としては、WO2019/054311号の段落0106~0108に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0116】
樹脂(A)は、ヒドロキシアダマンタン構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。ヒドロキシアダマンタン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0117】
【0118】
一般式(AIIa)中、R1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。R2c~R4cは、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基を表す。但し、R2c~R4cのうちの少なくとも1つは、水酸基を表す。R2c~R4cのうちの1つ又は2つが水酸基で、残りが水素原子であることが好ましい。
【0119】
(フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位を有していてもよい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位としては、特開2019-045864号の段落0080~0081に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0120】
(光酸発生基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、上記以外の繰り返し単位として、放射線の照射により酸を発生する基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位としては、特開2019-045864号の段落0092~0096に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0121】
(アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
アルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール基(例えば、ヘキサフロロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。樹脂(A)がアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有することにより、コンタクトホール用途での解像性が増す。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸及びメタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、又は、連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位が挙げられる。なお、連結基は、単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸又はメタクリル酸による繰り返し単位が好ましい。
【0122】
(酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位)
樹脂(A)は、更に、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を有してもよい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位は、脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
【0123】
酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位としては、例えば、米国特許出願公開第2016/0026083号明細書の段落0236~0237に記載された繰り返し単位、及び、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0433に記載された繰り返し単位が挙げられる。
【0124】
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、解像力、耐熱性、及び、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有していてもよい。
【0125】
(樹脂(A)の特性)
樹脂(A)としては、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系モノマーに由来する繰り返し単位で構成されることが好ましい。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系モノマーに由来するもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系モノマーに由来するもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系モノマー及びアクリレート系モノマーに由来するもののいずれの樹脂でも用いることができる。アクリレート系モノマーに由来する繰り返し単位が、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して50モル%以下であることが好ましい。
【0126】
組成物がフッ化アルゴン(ArF)露光用であるとき、ArF光の透過性の観点から、樹脂(A)は実質的には芳香族基を有さないことが好ましい。より具体的には、芳香族基を有する繰り返し単位が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、理想的には0モル%、すなわち芳香族基を有する繰り返し単位を有さないことが更に好ましい。
また、組成物がArF露光用であるとき、樹脂(A)は、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましく、また、フッ素原子及び珪素原子のいずれも含まないことが好ましい。
【0127】
組成物がフッ化クリプトン(KrF)露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)は芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位を有することが好ましく、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、上記ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位(A-1)、及び、ヒドロキシスチレン(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位を挙げることができる。
また、組成物が、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)は、フェノール性水酸基の水素原子が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有する繰り返し単位を有することも好ましい。
組成物が、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)に含まれる芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、30~100モル%が好ましく、40~100モル%がより好ましく、50~100モル%が更に好ましい。
【0128】
樹脂(A)は、常法(例えばラジカル重合)に従って合成できる。
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、1,000~200,000が好ましく、3,000~20,000がより好ましく、5,000~15,000が更に好ましい。樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)を、1,000~200,000とすることにより、耐熱性及びドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、更に、現像性の劣化、及び、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。なお、樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、上述のGPC法により測定されたポリスチレン換算値である。
樹脂(A)の分散度(分子量分布)は、通常1~5であり、1~3が好ましく、1.1~2.0がより好ましい。分散度が小さいものほど、解像度、及び、レジスト形状が優れ、更に、パターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0129】
本発明の組成物において、樹脂(A)の含有量は、組成物の全固形分に対して、50~99.9質量%が好ましく、60~99.0質量%がより好ましい。
また、樹脂(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、固形分とは溶剤を除いたレジスト膜を構成し得る成分を意味する。上記成分の性状が液状であっても、固形分として扱う。
【0130】
<光酸発生剤(P)>
本発明の組成物は、光酸発生剤(P)を含有する。光酸発生剤(P)は、放射線の照射により酸を発生する化合物であれば特に制限されない。
光酸発生剤(P)は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤(P)が、低分子化合物の形態である場合、重量平均分子量(Mw)が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましい。
光酸発生剤(P)が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、樹脂(A)の一部に組み込まれてもよく、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
本発明において、光酸発生剤(P)は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
光酸発生剤(P)としては、公知のものであれば特に制限されないが、放射線の照射により、有機酸を発生する化合物が好ましく、分子中にフッ素原子又はヨウ素原子を有する光酸発生剤がより好ましい。
上記有機酸として、例えば、スルホン酸(脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、及び、カンファースルホン酸等)、カルボン酸(脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、及び、アラルキルカルボン酸等)、カルボニルスルホニルイミド酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド酸、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチド酸等が挙げられる。
【0131】
光酸発生剤(P)より発生する酸の体積は特に制限されないが、露光で発生した酸の非露光部への拡散を抑制し、解像性を良好にする点から、240Å3以上が好ましく、305Å3以上がより好ましく、350Å3以上が更に好ましく、400Å3以上が特に好ましい。なお、感度又は塗布溶剤への溶解性の点から、光酸発生剤(P)より発生する酸の体積は、1500Å3以下が好ましく、1000Å3以下がより好ましく、700Å3以下が更に好ましい。
上記体積の値は、富士通株式会社製の「WinMOPAC」を用いて求める。上記体積の値の計算にあたっては、まず、各例に係る酸の化学構造を入力し、次に、この構造を初期構造としてMM(Molecular Mechanics)3法を用いた分子力場計算により、各酸の最安定立体配座を決定し、その後、これら最安定立体配座についてPM(Parameterized Model number)3法を用いた分子軌道計算を行うことにより、各酸の「accessible volume」を計算できる。
【0132】
光酸発生剤(P)より発生する酸の構造は特に制限されないが、酸の拡散を抑制し、解像性を良好にする点で、光酸発生剤(P)より発生する酸と樹脂(A)との間の相互作用が強いことが好ましい。この点から、光酸発生剤(P)より発生する酸が有機酸である場合、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、カルボニルスルホニルイミド酸基、ビススルホニルイミド酸基、及び、トリススルホニルメチド酸基等の有機酸基、以外に、更に極性基を有することが好ましい。
極性基としては、例えば、エーテル基、エステル基、アミド基、アシル基、スルホ基、スルホニルオキシ基、スルホンアミド基、チオエーテル基、チオエステル基、ウレア基、カーボネート基、カーバメート基、ヒドロキシル基、及び、メルカプト基が挙げられる。
発生する酸が有する極性基の数は特に制限されず、1個以上であることが好ましく、2個以上であることがより好ましい。ただし、過剰な現像を抑制する観点から、極性基の数は、6個未満であることが好ましく、4個未満であることがより好ましい。
【0133】
中でも、本発明の効果がより優れる点で、光酸発生剤(P)は、アニオン部及びカチオン部からなる光酸発生剤であることが好ましい。
光酸発生剤(P)としては、特開2019-045864号の段落0144~0173に記載の光酸発生剤が挙げられる。
【0134】
光酸発生剤(P)の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、組成物の全固形分に対して、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、10~35質量%が更に好ましい。
光酸発生剤(P)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。光酸発生剤(P)を2種以上併用する場合は、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0135】
<酸拡散制御剤(Q)>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤(Q)を含有していてもよい。
酸拡散制御剤(Q)は、露光時に光酸発生剤(P)等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用するものである。酸拡散制御剤(Q)としては、例えば、塩基性化合物(DA)、放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、光酸発生剤(P)に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)、及び、カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)等が使用できる。
本発明の組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167号明細書の段落[0627]~[0664]、米国特許出願公開2015/0004544号明細書の段落[0095]~[0187]、米国特許出願公開2016/0237190号明細書の段落[0403]~[0423]、及び、米国特許出願公開2016/0274458号明細書の段落[0259]~[0328]に開示された公知の化合物を、酸拡散制御剤(Q)として好適に使用できる。
【0136】
塩基性化合物(DA)としては、特開2019-045864号の段落0188~0208に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0137】
本発明の組成物では、光酸発生剤(P)に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)を酸拡散制御剤(Q)として使用できる。
光酸発生剤(P)と、光酸発生剤(P)から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により光酸発生剤(P)から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散を制御できる。
【0138】
光酸発生剤(P)に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、特開2019-070676号の段落0226~0233に記載のオニウム塩が挙げられる。
【0139】
本発明の組成物に酸拡散制御剤(Q)が含まれる場合、酸拡散制御剤(Q)の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分に対して、0.1~10.0質量%が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましい。
本発明の組成物において、酸拡散制御剤(Q)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0140】
<疎水性樹脂(E)>
本発明の組成物は、疎水性樹脂(E)として、上記樹脂(A)とは異なる疎水性の樹脂を含有していてもよい。
疎水性樹脂(E)は、レジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性物質及び非極性物質を均一に混合することに寄与しなくてもよい。
疎水性樹脂(E)を添加することの効果として、水に対するレジスト膜表面の静的及び動的な接触角の制御、並びに、アウトガスの抑制等が挙げられる。
【0141】
疎水性樹脂(E)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含まれたCH3部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することがより好ましい。また、疎水性樹脂(E)は、炭素数5以上の炭化水素基を有することが好ましい。これらの基は樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0142】
疎水性樹脂(E)が、フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合、疎水性樹脂における上記フッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0143】
疎水性樹脂(E)がフッ素原子を有している場合、フッ素原子を有する部分構造としては、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基が好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、及び、ナフチル基等のアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子又は珪素原子を有する繰り返し単位の例としては、US2012/0251948の段落0519に例示されたものが挙げられる。
【0144】
また、上記したように、疎水性樹脂(E)は、側鎖部分にCH3部分構造を有することも好ましい。
ここで、疎水性樹脂中の側鎖部分が有するCH3部分構造は、エチル基、及び、プロピル基等を有するCH3部分構造を含む。
一方、疎水性樹脂(E)の主鎖に直接結合しているメチル基(例えば、メタクリル酸構造を有する繰り返し単位のα-メチル基)は、主鎖の影響により疎水性樹脂(E)の表面偏在化への寄与が小さいため、本発明におけるCH3部分構造に含まれないものとする。
【0145】
疎水性樹脂(E)に関しては、特開2014-010245号公報の段落[0348]~[0415]の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0146】
なお、疎水性樹脂(E)としては、特開2011-248019号公報、特開2010-175859号公報、特開2012-032544号公報に記載された樹脂も、好ましく用いることができる。
【0147】
本発明の組成物が疎水性樹脂(E)を含有する場合、疎水性樹脂(E)の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましい。
【0148】
<溶剤(F)>
本発明の組成物は、溶剤(F)を含有してもよい。
本発明の組成物がEUV用の感放射線性樹脂組成物である場合、溶剤(F)は、(M1)プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、並びに、(M2)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、及び、アルキレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1つの少なくとも一方を含有していることが好ましい。この場合の溶剤は、成分(M1)及び(M2)以外の成分を更に含有していてもよい。
成分(M1)又は(M2)を含有する溶剤は、上述した樹脂(A)とを組み合わせて用いると、組成物の塗布性が向上すると共に、現像欠陥数の少ないパターンが形成可能となるため、好ましい。
【0149】
また、本発明の組成物がArF用の感放射線性樹脂組成物である場合、溶剤(F)としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を含有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0150】
本発明の組成物中の溶剤(F)の含有量は、固形分濃度が0.5~40質量%となるように定めることが好ましい。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、固形分濃度は10質量%以上であることが好ましい。
【0151】
<界面活性剤(H)>
本発明の組成物は、界面活性剤(H)を含有してもよい。界面活性剤(H)を含有することにより、密着性により優れ、現像欠陥のより少ないパターンを形成できる。
界面活性剤(H)としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落[0276]に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301又はEF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431又は4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120又はR08(DIC(株)製);サーフロンS-382、SC101、102、103、104、105又は106(旭硝子(株)製);トロイゾルS-366(トロイケミカル(株)製);GF-300又はGF-150(東亞合成化学(株)製)、サーフロンS-393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802又はEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320又はPF6520(OMNOVA社製);KH-20(旭化成(株)製);FTX-204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D又は222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0152】
また、界面活性剤(H)は、上記に示すような公知の界面活性剤の他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤(H)として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002-90991号公報に記載された方法によって合成できる。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、及び、ポリ(オキシブチレン)基が挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)等同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。更に、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマー、及び、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)等を同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
例えば、市販の界面活性剤としては、メガファックF178、F-470、F-473、F-475、F-476、F-472(DIC(株)製)、C6F13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C3F7基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落[0280]に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
【0153】
これら界面活性剤(H)は、1種を単独で用いてもよく、又は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0154】
界面活性剤(H)の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
【0155】
<その他の添加剤>
本発明の組成物は、架橋剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び/又は、現像液に対する溶解性を促進させる化合物を更に含有していてもよい。
【実施例】
【0156】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
【0157】
<樹脂(A)の合成>
実施例及び比較例において、樹脂(A)として、以下に例示する樹脂A-1~A-51を用いた。樹脂A-1~A-51はいずれも、公知技術に基づいて合成したものを用いた。
表3に、樹脂(A)中の各繰り返し単位の組成比(モル比;左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)を示す。
なお、樹脂A-1~A-51の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、上述のGPC法(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定したポリスチレン換算値である。また、樹脂中の繰り返し単位の組成比(モル%比)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
<光酸発生剤>
実施例及び比較例において光酸発生剤として使用した化合物P-1~P-55の構造を以下に示す。
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
<酸拡散制御剤(Q)>
実施例及び比較例において酸拡散制御剤として使用した化合物Q-1~Q-23の構造を以下に示す。
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
<疎水性樹脂(E)>
実施例及び比較例において疎水性樹脂(E)として使用した樹脂E-1~E-17の構造を以下に示す。樹脂E-1~E-17はいずれも、公知技術に基づいて合成したものを用いた。
表4に、疎水性樹脂(E)中の各繰り返し単位の組成比(モル比;左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)を示す。
なお、樹脂E-1~E-17の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、上述のGPC法(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定したポリスチレン換算値である。また、樹脂中の繰り返し単位の組成比(モル%比)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
<溶剤>
実施例及び比較例において使用した溶剤を以下に示す。
PEGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
EL:エチルラクテート
BA:酢酸ブチル
MAK:2-ヘプタノン
MMP:3-メトキシプロピオン酸メチル
γ-BL:γ-ブチロラクトン
CyHx:シクロヘキサノン
【0203】
<界面活性剤(H)>
実施例及び比較例において使用した界面活性剤を以下に示す。
H-1:メガファックR-41(DIC(株)製)
H-2:メガファックF176(DIC(株)製)
H-3:メガファックR08(DIC(株)製)
【0204】
<添加剤(X)>
実施例及び比較例において使用した添加剤を以下に示す。
【0205】
【0206】
X-5:ポリビニルメチルエーテルルトナールM40(BASF社製)
X-6:KF-53(信越化学工業株式会社製)
X-7:サリチル酸
【0207】
<実施例及び比較例>
温度22.0℃、湿度58%、気圧102.6kPaである、クラス1000のクリーンルーム内において後述する操作を実施して、後述する表5~7に示すようなレジスト組成物を調製し、表9~11に示す実施例及び比較例にそれぞれ適用した。
まず、クリーンルーム内に配置された撹拌槽に、表5~7に記載のレジスト組成物(レジスト1~48)の組成となるように、各成分を投入して、上述した工程1を実施した。その際、溶剤の投入に関しては、溶剤をポアサイズ0.01μmのポリエチレンフィルターに通液させて、撹拌槽に投入した。また、溶剤以外の成分の投入に関しては、まず、各レジスト組成物の調製に使用される溶剤の一部をポアサイズ0.01μmのポリエチレンフィルターに通液させ、通液された溶剤に各成分を予め溶解させて希釈溶液をそれぞれ調製した。その後、得られた希釈溶液をフィルターを通液させて、撹拌槽に投入した。
各成分が投入された後の撹拌槽内の空隙率(空間(空隙)が占める割合)は15体積%であった。言い換えれば、撹拌槽内の混合物の占有率は85体積%であった。
なお、上記希釈溶液の希釈濃度及びフィルターの種類は、調製するレジスト組成物に応じて変更した。
具体的には、表5中のレジスト組成物(レジスト1~15)を調製する際には、樹脂を溶解させた希釈溶液の希釈濃度は50質量%であり、その他の材料(光酸発生剤、酸拡散制御剤、添加剤1、添加剤2)を溶解させた希釈溶液の希釈濃度は20質量%であり、樹脂を溶解させた希釈溶液に対して用いるフィルターとしてはポアサイズ0.1μmのポリエチレンフィルターを、その他の材料(光酸発生剤、酸拡散制御剤、添加剤1、添加剤2)を溶解させた希釈溶液に対して用いるフィルターとしてはポアサイズ0.05μmのポリエチレンフィルターを用いた。なお、後述するように、レジスト1~15は、KrF露光用に用いた。
表6中のレジスト組成物(レジスト16~31)を調製する際には、希釈濃度は10質量%であり、フィルターとしてはポアサイズ0.02μmのポリエチレンフィルターを用いた。なお、後述するように、レジスト16~31は、ArF露光用に用いた。
表7中のレジスト組成物(レジスト32~48)を調製する際には、希釈濃度は5質量%であり、フィルターとしてはポアサイズ0.01μmのポリエチレンフィルターを用いた。なお、後述するように、レジスト32~48は、EUV露光用に用いた。
【0208】
なお、表9~11に示す各実施例及び比較例において、撹拌槽内の気体の置換を表8に示す方法にて実施した。
例えば、表8に記載の製造法1においては、上記工程1と後述する工程2との間に、窒素ガスを撹拌槽内に導入して、撹拌槽内の気体を置換した。その際、撹拌槽内の気圧と撹拌槽外の気圧との差(撹拌槽内の気圧-撹拌槽外の気圧)は1.5kPaであり、特定気体中(撹拌槽内の気体中)の窒素ガスの含有量は91体積%であった。
また、例えば、表8に記載の製造法2においては、上記工程1を実施する際(言い換えれば、各成分を撹拌槽内に投入する際)に、撹拌槽内に窒素ガスを撹拌槽内に導入して、撹拌槽内の気体を置換した。その際、撹拌槽内の気圧と撹拌槽外の気圧との差(撹拌槽内の気圧-撹拌槽外の気圧)は1.5kPaであり、特定気体中(撹拌槽内の気体中)の窒素ガスの含有量は91体積%であった。
また、例えば、表8に記載の製造法3においては、上記工程1を実施する前(言い換えれば、各成分を撹拌槽内に投入する前)に、撹拌槽内に窒素ガスを撹拌槽内に導入して、撹拌槽内の気体を置換した。その際、撹拌槽内の気圧と撹拌槽外の気圧との差(撹拌槽内の気圧-撹拌槽外の気圧)は1.5kPaであり、特定気体中(撹拌槽内の気体中)の窒素ガスの含有量は91体積%であった。
上記のように、表8に示す「ガス充填開始タイミング」欄は、撹拌槽内の気体の置換を実施するタイミングを表す。なお、比較製造法1においては、置換を実施していない。なお、撹拌槽内の気体の置換を実施した後は、その後の処理においても、撹拌槽内の状態は表8に示す不活性ガス濃度及び差圧が維持されるように、所定の気体が導入し続けられた。例えば、工程1の前に気体の置換を実施した場合、その後の工程1及び2においても、撹拌槽内の不活性ガス濃度及び差圧が維持されていた。
また、表8に示す「種類」欄は、撹拌槽内に導入される不活性ガスの種類を表し、「不活性ガス濃度(体積%)」欄は、撹拌槽内に導入される気体中の不活性ガスの濃度(体積%)を表す。
また、表8に示す「差圧(kPa)」欄は、撹拌槽内の気圧と撹拌槽外の気圧との差(撹拌槽内の気圧-撹拌槽外の気圧)を表す。つまり、表8に示す、製造法1~7、及び、比較製造法2~5においては、撹拌槽内の気圧が撹拌槽外の気圧よりも高かった。
【0209】
次に、
図1に示すような、撹拌槽内に配置された、撹拌翼が取り付けられた撹拌軸を回転させて、各成分を撹拌混合させて工程2を実施した。撹拌混合時の混合物の温度は、22℃であった。
なお、表5中のレジスト組成物(レジスト1~15)を調製する際には、撹拌翼の回転速度は300rpmであった。また、表6中のレジスト組成物(レジスト16~31)を調製する際には、撹拌翼の回転速度は60rpmであった。また、表7中のレジスト組成物(レジスト32~48)を調製する際には、撹拌翼の回転速度は60rpmであった。
なお、各実施例及び比較例においては、上記工程2を実施している間、撹拌槽内に表8に記載の気体の導入を続けて、所定の差圧条件を維持した。例えば、表9の実施例A1においては、製造法1によってレジスト1を調製しており、各成分を撹拌混合する工程2の際には製造方法1の差圧1.5kPaが維持され、窒素ガス濃度が91体積%の特定気体となるように、撹拌槽に窒素ガスを導入した。
【0210】
撹拌終了後、
図1に示すような、撹拌槽に連結した循環配管に、撹拌槽内の混合物を送液ポンプによって送液した。なお、循環配管は、撹拌槽の底部に一端が連結し、他端が撹拌槽の上部に連結した配管であって、その途中にフィルターが配置されており、循環配管を循環することによりフィルターによるろ過が実施される。上記循環は、混合物がフィルターを通過した際の液量が、配管の総液量の4倍量となるまで実施した。
なお、上記フィルターの種類は、調製するレジスト組成物に応じて変更した。
具体的には、表5中のレジスト組成物(レジスト1~15)を調製する際には、ポアサイズ0.02μmのナイロン66からなるフィルターと、ポアサイズ0.01μmのポリエチレンフィルターとから構成される2段フィルターを用いた。
表6中のレジスト組成物(レジスト16~31)を調製する際には、ポアサイズ0.01μmのナイロン6からなるフィルターと、ポアサイズ0.003μmのポリエチレンフィルターとから構成される2段フィルターを用いた。
表7中のレジスト組成物(レジスト32~48)を調製する際には、ポアサイズ0.005μmのナイロン6からなるフィルターと、ポアサイズ0.003μmのポリエチレンフィルターとから構成される2段フィルターを用いた。
【0211】
上記循環ろ過処理終了後、
図1に示すような、排出配管及び排出ノズルを経由して、得られたレジスト組成物を評価用の容器に充填した。なお、容器中の気体は、各実施例及び比較例で撹拌槽に充填した特定気体で置換されていた。
【0212】
表5~7中、「TMAH(2.38%)」は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの含有量が2.38質量%である水溶液を表す。
「TMAH(1.00%)」は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの含有量が1.00質量%である水溶液を表す。
「TMAH(3.00%)」は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの含有量が3.00質量%である水溶液を意味する。
「nBA」は、酢酸ブチルを表す。
表5~7中、各成分の「含有量」欄は、各成分のレジスト組成物中の全固形分に対する含有量(質量%)を表す。
表5~7中、「溶剤」欄の数値は、各成分の含有質量比を表す。
表5~7中、「固形分」欄は、レジスト組成物中の全固形分濃度(質量%)を表す。
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
上記表中「<70」とは、70体積%未満を意味する。
【0218】
<水分評価>
調製したレジスト組成物中の水分測定には、カールフィッシャー水分測定装置(製品名「MKC-710M」、京都電子工業社製、カールフィッシャー電量滴定式)を用いた。
【0219】
<ガス評価>
調製したレジスト組成物中に溶存ガス濃度(μg/μL)を、TCD検出器を有するガスクロマトグラフィー(ジーエルサイエンス社製GC390)とモレキュラーシーブ5Aを充填したカラムを用い、測定した。検量線はエアーを用い、25℃、1気圧の条件下、酸素濃度及び窒素濃度の合計値を求めた。
なお、表9~11中の「溶存ガス」欄は、酸素濃度及び窒素濃度の合計値を表す。
【0220】
<実施例A1~A21、比較例A1~A33:KrF露光実験>
(パターン形成1)
東京エレクトロン株式会社製スピンコーター「ACT-8」を用いて、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を施したシリコンウエハ(8インチ口径)上に、反射防止膜を設けることなく、表9に示すように、調製したレジスト組成物(レジスト1~15)をそれぞれ塗布し、表5に示す各レジスト組成物に対応するPB条件でベークして、表5に示す各レジスト組成物に対応する膜厚のレジスト膜を形成した。
得られたレジスト膜に対して、KrFエキシマレーザースキャナー(ASML製;PAS5500/850C、波長248nm、NA=0.60、σ=0.75)を用いて、パターンのスペース幅が5μm、ピッチ幅が20μmとなるような、ラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して、パターン露光を行った。
露光後のレジスト膜を表5に示す各レジスト組成物に対応するPEB条件でベークした後、表5に示す各レジスト組成物に対応する現像液で30秒間現像し、これをスピン乾燥してスペース幅が5μm、ピッチ幅が20μmの孤立スペースパターンを得た。
なお、パターンサイズの測定は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製9380II)を用いた。
【0221】
(欠陥評価)
KLA2360(ケー・エル・エー・テンコール社製)を用いて、シリコンウエハ上における欠陥分布を検出し、SEMVisionG3(AMAT社製)を用いて、欠陥の形状を観察した。観察した欠陥の内、パターン部に凹みがあるモード及びパターンエッジ部分が欠けているモードの欠陥の数をカウントし、欠陥検査の走査面積で割った欠陥の発生密度(count/cm2)で集計し、下記基準に従って評価した。結果を表9に示す。
A:発生密度が0.05count/cm2未満。
B:発生密度が0.05count/cm2以上0.10count/cm2未満。
C:発生密度が0.10count/cm2以上。
【0222】
(長期保管後の感度評価)
上記で製造した直後のレジスト組成物、及び、室温で3か月保存したレジスト組成物を用いて、以下の手順に従って感度を評価した。
感度の評価方法としては、上記(パターン形成1)の手順において、スペース幅が5μm、ピッチ幅が20μmのラインアンドスペースパターンを仕上げるときの照射エネルギーを感度とした。
製造した直後のレジスト組成物を用いた場合の感度と、室温で3か月保存したレジスト組成物を用いた場合の感度との差を以下の基準に従って評価した。結果を表9に示す。
A:感度の差が0mJ/cm2以上0.2mJ/cm2未満。
B:感度の差が0.2mJ/cm2以上0.4mJ/cm2未満。
C:感度の差が0.4mJ/cm2以上0.6mJ/cm2未満。
D:感度の差が0.6mJ/cm2以上。
【0223】
【0224】
表9に示すように本発明の製造方法によれば、所望の効果が得られることが確認された。
なかでも、実施例A1~A3の比較より、上記工程3を実施する場合、より優れた効果が得られることが確認された。
また、実施例A3及びA4の比較より、撹拌槽内の気圧と撹拌槽外の気圧との差が0.8kPa以下の場合、より優れた効果が得られることが確認された。
また、実施例A3とA5の比較、実施例A4とA6の比較より、気体中の不活性ガスの濃度が95体積%以上である場合、より優れた効果が得られることが確認された。
【0225】
<実施例B1~B22、比較例B1~B35:ArF露光実験>
(パターン形成2)
東京エレクトロン株式会社製スピンコーター「ACT-12」を用いて、シリコンウエハ(12インチ口径)上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚98nmの反射防止膜を形成した。
得られた反射防止膜上に、同装置を用いて表10に示すレジスト組成物(レジスト16~31)を塗布し、表6に示す各レジスト組成物に対応するPB条件でベークして、表6に示す各レジスト組成物に対応する膜厚のレジスト膜を形成した。
得られたレジスト膜に対して、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.900、インナーシグマ0.812、XY偏向)を用いて、ホール部分が45nmであり且つホール間のピッチが90nmである正方配列の6%ハーフトーンマスクを介して、パターン露光を行った。液浸液は、超純水を使用した。
露光後のレジスト膜を表6に示す各レジスト組成物に対応するPEB条件でベークした後、表6に示す各レジスト組成物に対応する現像液で30秒間現像し、次いで純水で30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥して孔径45nmのホールパターンを得た。
なお、パターンサイズの測定は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製9380II)を用いた。
【0226】
(パターン欠陥評価)
UVision5(AMAT社製)を用いて、シリコンウエハ上における欠陥分布を検出し、SEMVisionG4(AMAT社製)を用いて、欠陥の形状を観察した。観察した欠陥の内、ホールパターンの形状が正常ではなく、隣接するホールとつながったものや、目的のパターンサイズよりも大きいものの数をカウントし、欠陥検査の走査面積で割った欠陥の発生密度(count/cm2)で集計し、下記基準に従って評価した。結果を表10に示す。
A:発生密度が0.05count/cm2未満。
B:発生密度が0.05count/cm2以上0.10count/cm2未満。
C:発生密度が0.10count/cm2以上。
【0227】
(長期保管後の感度評価)
上記で製造した直後のレジスト組成物、及び、室温で3か月保存したレジスト組成物を用いて、以下の手順に従って感度を評価した。
感度の評価方法としては、上記(パターン形成2)の手順において、孔径45nmのホールパターンを仕上げるときの照射エネルギーを感度とした。
製造した直後のレジスト組成物を用いた場合の感度と、室温で3か月保存したレジスト組成物を用いた場合の感度との差を以下の基準に従って評価した。結果を表10に示す。
A:感度の差が0mJ/cm2以上0.2mJ/cm2未満。
B:感度の差が0.2mJ/cm2以上0.4mJ/cm2未満。
C:感度の差が0.4mJ/cm2以上0.6mJ/cm2未満。
D:感度の差が0.6mJ/cm2以上。
【0228】
【0229】
表10に示すように本発明の製造方法によれば、所望の効果が得られることが確認された。
なかでも、実施例B1~B3の比較より、上記工程3を実施する場合、より優れた効果が得られることが確認された。
また、実施例B3及びB4の比較より、撹拌槽内の気圧と撹拌槽外の気圧との差が0.8kPa以下の場合、より優れた効果が得られることが確認された。
また、実施例B3とB5の比較、実施例B4とB6の比較より、気体中の不活性ガスの濃度が95体積%以上である場合、より優れた効果が得られることが確認された。
【0230】
<実施例C1~C23、比較例C1~C37:EUV露光実験>
(パターン形成3)
東京エレクトロン株式会社製スピンコーター「ACT-12」を用いて、シリコンウエハ(12インチ口径)上に有機反射防止膜形成用組成物AL412(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚200nmの反射防止膜を形成した。
得られた反射防止膜上に、同装置を用いて表11に示すレジスト組成物(レジスト32~48)を塗布し、表7に示す各レジスト組成物に対応するPB条件でベークして、表7に示す各レジスト組成物に対応する膜厚のレジスト膜を形成した。
得られたレジスト膜に対して、EUV露光装置(Exitech社製、Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadrupol、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用いて、ホール部分が28nmであり且つホール間のピッチが55nmである正方配列のマスクを介して、パターン露光を行った。
露光後のレジスト膜を表7に示す各レジスト組成物に対応するPEB条件でベークした後、表7に示す各レジスト組成物に対応する現像液で30秒間現像し、次いで純水で30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥して孔径28nmのホールパターンを得た。
なお、パターンサイズの測定は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製9380II)を用いた。
【0231】
(パターン欠陥評価)
UVision5(AMAT社製)を用いて、シリコンウエハ上における欠陥分布を検出し、SEMVisionG4(AMAT社製)を用いて、欠陥の形状を観察した。観察した欠陥の内、ホールパターンの形状が正常ではなく、隣接するホールとつながったものや、目的のパターンサイズよりも大きいものの数をカウントし、欠陥検査の走査面積で割った欠陥の発生密度(count/cm2)で集計し、下記基準に従って評価した。結果を表11に示す。
A:発生密度が0.05count/cm2未満。
B:発生密度が0.05count/cm2以上0.10count/cm2未満。
C:発生密度が0.10count/cm2以上。
【0232】
(長期保管後の感度評価)
上記で製造した直後のレジスト組成物、及び、室温で3か月保存したレジスト組成物を用いて、以下の手順に従って感度を評価した。
感度の評価方法としては、上記(パターン形成3)の手順において、孔径28nmのホールパターンを仕上げるときの照射エネルギーを感度とした。
製造した直後のレジスト組成物を用いた場合の感度と、室温で3か月保存したレジスト組成物を用いた場合の感度との差を以下の基準に従って評価した。結果を表11に示す。
A:感度の差が0mJ/cm2以上0.2mJ/cm2未満。
B:感度の差が0.2mJ/cm2以上0.4mJ/cm2未満。
C:感度の差が0.4mJ/cm2以上0.6mJ/cm2未満。
D:感度の差が0.6mJ/cm2以上。
【0233】
【0234】
表11に示すように本発明の製造方法によれば、所望の効果が得られることが確認された。
なかでも、実施例C1~C3の比較より、上記工程3を実施する場合、より優れた効果が得られることが確認された。
また、実施例C3及びC4の比較より、撹拌槽内の気圧と撹拌槽外の気圧との差が0.8kPa以下の場合、より優れた効果が得られることが確認された。
また、実施例C3とC5の比較、実施例C4とC6の比較より、気体中の不活性ガスの濃度が95体積%以上である場合、より優れた効果が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0235】
10 撹拌槽
12 撹拌軸
14 撹拌翼
16 循環配管
18 フィルター
20 排出配管
22 排出ノズル