(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】光学式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20220912BHJP
G01D 5/244 20060101ALI20220912BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
G01D5/347 110M
G01D5/347 110T
G01D5/244 B
G01D5/245 110B
(21)【出願番号】P 2018120412
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-05-12
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ダニエル トバイアソン
(72)【発明者】
【氏名】ノーマン ラマン
(72)【発明者】
【氏名】木村 彰秀
(72)【発明者】
【氏名】平田 州
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-3438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に測定軸方向に平行なスケール面に配列され、前記測定軸方向に細く、前記測定軸方向と交差するスケール格子バー方向に長く、前記測定軸方向にスケールピッチP
SFで周期的に配列されたスケール格子バーで構成されるスケール格子を有する、前記測定軸方向に延在するスケールと、
光を出力する光源と、前記光が入力され、前記測定軸方向に細く、前記測定軸方向と交差する方向に向いた照明干渉縞方向に長い縞で構成される照明干渉縞パターンを有する構造化照明を、光源光経路SOLPを介して、前記スケール面の照明領域へ出力する構造化照明生成部と、を有する照明光源と、
前記測定軸方向と交差する検出干渉縞移動方向に検出器ピッチPDで配列されたN個の空間位相検出器からなるセットを有し、前記空間位相検出器のそれぞれは空間位相検出器信号を与えるように構成され、少なくとも過半数の前記空間位相検出器は、比較的長い寸法にわたって前記測定軸方向に延在し、前記測定軸方向と交差する前記検出干渉縞移動方向に比較的細く、前記N個の空間位相検出器からなるセットは、空間位相列に、前記検出干渉縞移動方向に沿って配列される、光検出器構造と、を備え、
前記スケール格子は、前記照明領域に前記照明干渉縞パターンが入力され、前記光検出器構造に干渉縞パターンを形成するスケール光を、スケール光経路SCLPを介して出力し、前記干渉縞パターンは、比較的長い寸法にわたって前記測定軸方向に延在し、前記測定軸方向と交差する前記検出干渉縞移動方向に比較的細く、かつ、検出干渉縞周期PDFの周期性を有する、周期的な高光強度及び低光強度のバンドで構成され、
前記スケール格子バーは、光源光経路SOLP及びスケール光経路SCLPによって定義されるリードヘッド面RHPに対して0以外のヨー角ψ
SCをなす方向に向いており、
前記構造化照明生成部は、
第1インデックス面に第1インデックスピッチP
1で周期的に配列され、前記測定軸方向に細く、前記測定軸方向と交差し、かつ、前記リードヘッド面RHPに対して角度ψ
1だけ回転している第1インデックス格子バー方向に延在する第1照明光源格子バーで構成される第1照明光源回折格子と、
前記第1インデックス面と平行な第2インデックス面に第2インデックスピッチP
2で周期的に配列され、前記測定軸方向に細く、前記測定軸方向と交差し、かつ、前記リードヘッド面RHPに対して角度ψ
2だけ回転している第2のインデックス格子バー方向に延在する第2照明光源格子バーで構成される第2照明光源回折格子と、を備え、
前記検出干渉縞周期PDFと前記測定軸方向と交差する前記検出干渉縞移動方向とは、少なくとも部分的に前記0以外のヨー角ψ
SCに依存し、
前記高光強度及び低光強度のバンドは、前記スケール格子が前記測定軸方向に変位するにつれて、前記測定軸方向と交差する前記検出干渉縞移動方向に移動し、
前記光検出器構造は、前記測定軸方向と交差する前記検出干渉縞移動方向での前記高光強度及び低光強度のバンドの変位を検出し、かつ、スケールの変位を示す空間位相変位信号を与える、
光学式エンコーダ。
【請求項2】
前記第1照明光源回折格子及び第2照明光源回折格子は、位相格子である、
請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項3】
前記検出干渉縞周期PDFは、40μm以上である、
請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、精密な位置又は変位の測定装置に関し、特に、スケールの汚染部分又は欠陥部分による誤差への耐性を有する信号処理を行うエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
光学式位置エンコーダは、リードヘッドにより検出されるパターンを有するスケールに対する、リードヘッドの変位を決定する。典型的には、位置エンコーダは、周期的パターンを有する少なくとも1つのスケールトラックを有する。スケールから生じる信号は、スケールトラックに沿う方向のリードヘッドの変位又は位置の関数として周期的である。アブソリュート型の位置エンコーダは、複数のスケールトラックを用いることで、アブソリュートスケールに沿う方向の各位置において特定の信号の組み合わせを与えることができる。
【0003】
光学式エンコーダは、インクリメンタル又はアブソリュート位置スケール構造を用いることができる。インクリメンタル位置スケール構造では、スケールに沿う方向の初期位置からスタートして、変位のインクリメンタル単位を累積することで、スケールに対するリードヘッドの変位を決定することができる。このようなエンコーダは、特定の用途、特に商用電力が使用できる場合に適している。低消費電力用途(例えば、バッテリーから電源供給を受けるゲージなど)では、アブソリュート位置スケール構造を用いことがより望ましい。アブソリュート位置スケール構造は、スケールに沿う方向の各位置において、特定の出力信号又は信号の組み合わせを与える。よって、アブソリュート位置スケール構造には、様々な電力節約方式が適用できる。特許文献1~11には、アブソリュート位置エンコーダに関する様々なエンコーダ構造及び信号処理技術の一方又は両方が開示されている。これらの文献を参照することで、これらの文献は全体的に本明細書に取り込まれる。
【0004】
照明部で照明光源回折格子を用いることで、特定の利点を実現するエンコーダ構造が存在する。特許文献12~15には、このようなエンコーダ構造が開示されている。これらの特許で開示された構造は、超解像モアレ結像を利用するもとのとして特徴づけることができる。
【0005】
様々な用途においては、スケールトラック上の埃や油などのスケールの製造欠陥又は汚染は、リードヘッドにより検出されるパターンを乱し、その結果として得られる位置又は変位測定結果には誤差が生じる。一般に、欠陥又は汚染による誤差の大きさは、欠陥又は汚染の大きさ、スケール上の周期的パターンの波長、リードヘッドの検出領域の大きさ、これらの大きさの間の関連性などの要素に依存する。エンコーダでの異常信号に対応する様々な手法が知られている。これらの方法のほぼ全ては、エンコーダ信号の無効化、ユーザに警告する「エラー信号」の提供、低レベルの信号を増幅するための光源強度の調整などに基づいている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第3,882,482号明細書
【文献】米国特許第5,965,879号明細書
【文献】米国特許第5,279,044号明細書
【文献】米国特許第5,886,519号明細書
【文献】米国特許第5,237,391号明細書
【文献】米国特許第5,442,166号明細書
【文献】米国特許第4,964,727号明細書
【文献】米国特許第4,414,754号明細書
【文献】米国特許第4,109,389号明細書
【文献】米国特許第5,773,820号明細書
【文献】米国特許第5,010,655号明細書
【文献】米国特許第8,941,052号明細書
【文献】米国特許第9,018,578号明細書
【文献】米国特許第9,029,757号明細書
【文献】米国特許第9,080,899号明細書
【文献】特開2003-65803号公報
【文献】米国特許第8,493,572号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記したような方法は、ある種のスケールの欠陥や汚染に起因する異常信号にかかわらず正確な測定動作を継続できる手段を与えるものではない。よって、これらの方法は、用途に制限がある。スケールの汚染や欠陥による測定精度への影響を軽減する既知の手法が、特許文献16に開示されている。特許文献16は、複数の光検出器が同じ位相を有する周期的な信号を出力する手法を提案しており、これらの信号のそれぞれは、信号安定度判定手段に入力される。信号安定度判定手段は、「正常」と判定された信号のみを出力し、「正常」な信号は合成されて、位置測定の基礎となる。「異常」な信号は、位置測定演算から取り除かれる。しかし、特許文献16に開示された「正常」及び「異常」な信号を判定する手法には、特許文献16の開示の利用が制限されるという欠点を有する。
【0008】
特許文献17には、汚染の影響を受けていない光検出器からの信号を選択する手段を与える、耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造が開示されている。しかし、特許文献17の構造は、用途によっては望ましくない複雑な信号処理に依存している。
【0009】
複雑な信号処理を要することなく、ある種のスケールの欠陥や汚染に起因する異常信号を防止又は緩和する高精度な測定動作をもたらす改良手法が望まれる。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様である光学式エンコーダは、
実質的に測定軸方向に平行なスケール面に配列され、前記測定軸方向に細く、前記測定軸方向と交差するスケール格子バー方向に長く、前記測定軸方向にスケールピッチPSFで周期的に配列されたスケール格子バーで構成されるスケール格子を有する、前記測定軸方向に延在するスケールと、
光を出力する光源と、前記光が入力され、前記測定軸方向に細く、前記測定軸方向と交差する方向に向いた照明干渉縞方向に長い縞で構成される照明干渉縞パターンを有する構造化照明を、光源光経路SOLPを介して、前記スケール面の照明領域へ出力する構造化照明生成部と、を有する照明光源と、
前記測定軸方向と交差する検出干渉縞移動方向に検出器ピッチPDで配列されたN個の空間位相検出器からなるセットを有し、前記空間位相検出器のそれぞれは空間位相検出器信号を与えるように構成され、少なくとも過半数の前記空間位相検出器は、比較的長い寸法にわたって前記測定軸方向に延在し、前記測定軸方向と交差する前記検出干渉縞移動方向に比較的細く、前記N個の空間位相検出器からなるセットは、空間位相列に、前記検出干渉縞移動方向に沿って配列される、光検出器構造と、を有し、
前記スケール格子は、前記照明領域に前記照明干渉縞パターンが入力され、前記光検出器構造に干渉縞パターンを形成するスケール光を、スケール光経路SCLPを介して出力し、前記干渉縞パターンは、比較的長い寸法にわたって前記測定軸方向に延在し、前記測定軸方向と交差する前記検出干渉縞移動方向に比較的細く、かつ、検出干渉縞周期PDFの周期性を有する、周期的な高光強度及び低光強度のバンドで構成され、
前記スケール格子バーは、光源光経路SOLP及びスケール光経路SCLPによって定義されるリードヘッド面RHPに対して0以外のヨー角ψSCをなす方向に向いており、
前記構造化照明生成部は、
第1インデックス面に第1インデックスピッチP1で周期的に配列され、前記測定軸方向に細く、前記測定軸方向と交差し、かつ、前記リードヘッド面RHPに対して角度ψ1だけ回転している第1インデックス格子バー方向に延在する第1照明光源格子バーで構成される第1照明光源回折格子と、
前記第1インデックス面と平行な第2インデックス面に第2インデックスピッチP2で周期的に配列され、前記測定軸方向に細く、前記測定軸方向と交差し、かつ、前記リードヘッド面RHPに対して角度ψ2だけ回転している第2のインデックス格子バー方向に延在する第2照明光源格子バーで構成される第2照明光源回折格子と、を備え、
前記検出干渉縞周期PDFと前記測定軸方向と交差する前記検出干渉縞移動方向とは、少なくとも部分的に前記0以外のヨー角ψSCに依存し、
前記高光強度及び低光強度のバンドは、前記スケール格子が前記測定軸方向に変位するにつれて、前記測定軸方向と交差する前記検出干渉縞移動方向に移動し、
前記光検出器構造は、前記測定軸方向と交差する前記検出干渉縞移動方向での前記高光強度及び低光強度のバンドの変位を検出し、かつ、スケールの変位を示す空間位相変位信号を与える、ものである。
【0012】
本発明によれば、耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダを提供することができる。
【0013】
本発明の上述及び他の目的、特徴、及び長所は以下の詳細な説明及び付随する図面からより完全に理解されるだろう。付随する図面は図解のためだけに示されたものであり、本発明を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】変位信号を与える耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造100の部分的かつ模式的な立体分解図である。
【
図2】変位信号を与える耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造200の部分模式図である。
【
図3】耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造300の光検出器構造360の部分模式図である。
【
図4A】耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造400Aの光検出器構造460Aの部分模式図である。
【
図4B】耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造400Bの光検出器構造460Bの部分模式図である。
【
図5】変位信号を与える耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造500の追加実施例の部分模式図である。
【
図6A】
図5の光検出器構造560に類似する光検出器構造660の近傍での、検出器干渉縞パターン535と類似の又は同じ検出器干渉縞パターン635を形成するスケール光成分SL1及びSL2の模式的な第1の図である。
【
図6B】干渉縞パターン635を形成するスケール光成分SL1及びSL2の模式的な第2の図である。
【
図7】
図5及び
図6に示した光学式エンコーダ構造500に類似する耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダの特性のグラフ700である。
【
図8】
図5及び
図6に示した光学式エンコーダ構造500に類似する耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダにおいて使用可能な例示的な光検出器構造860の模式
図800である。
【
図9A】
図8に示した光検出器構造に類似する耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ900Aの他の例示的な光検出器構造960Aの断面を示す模式図である。
【
図9B】
図8に示した光検出器構造860に類似する耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ900Bの他の例示的な光検出器構造960Bの断面を示す模式図である。
【
図10】変位信号を与える耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造1000の追加実施例の部分模式図である。
【
図11A】第1照明光源回折格子1040の模式図である。
【
図11B】第2照明光源回折格子1050の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0016】
以下では、変位信号を与える、耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造が開示されている。以下では、耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造は、耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダの構造を示すものとして理解されるべきである。
【0017】
図1は、変位信号を与える耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造100の部分的かつ模式的な立体分解図である。エンコーダ構造100は、スケール格子110、照明部120及び光検出器構造160を有する。
【0018】
図1には、慣習に則り、互いに直交するX方向、Y方向及びZ方向を表示している。X方向及びY方向はスケール格子110の面に対して平行であり、X方向は測定軸方向MAに対して平行である(例えば、X方向は、スケール格子110の細長のパターン要素に対して直交している)。Z方向は、スケール格子110の面に対して垂直である。
【0019】
図1に示す実施例では、スケール格子110は透過回折格子である。スケール格子110は、測定軸方向MAに延在している。スケール格子110は、測定軸方向MAに周期的に配置された、測定軸方向MAに細く、かつ、測定軸方向MAに直交する方向(すなわち、Y方向)に長いバーで構成される周期的パターンを有する。
【0020】
照明部120は、照明光源130、第1の照明格子140及び第2の照明格子150を有する。照明光源130は、光源131及びコリメートレンズ132を有する。光源131は、コリメートレンズ132へ光源光134を出力するように構成される。コリメートレンズ132は、光源光134を受け取り、コリメートされた光源光134’を第1の照明格子140へ出力するように構成される。第1の照明格子140は、光源光134’を受け取り、第2の照明格子150へ向けて光源光134’を回折させる。第2の照明格子150は、光源光134’を受け取り、光源光経路SOLPへ沿う経路を介して、スケール格子110へ向けて、光源光134’をさらに回折させる。スケール格子110は、光源光経路SOLPに沿った光源光134’を入力とし、周期的スケール光パターン135を有するスケール光を、スケール光経路SCLPに沿う経路を介して、光検出器構造160へ出力する。光検出器構造160は、スケール光経路SCLPに沿う経路を介して、スケール格子110から周期的スケール光パターン135を受け取る。周期的スケール光パターン135は、スケール格子110と光検出器構造160との間の測定軸方向MAでの相対的変位に応じて、光検出器構造160上を移動する。光検出器構造160に類似する光検出器構造の例を、
図3に詳細に示す。光検出器構造160は、空間位相列に、測定軸方向MAと交差する方向(すなわち、Y方向)に沿って配列された、N個の空間位相検出器からなるセットを有する。但し、Nは、6以上の整数である。空間位相列は、測定軸方向MAと交差する方向の始まり及び終わりに位置する2つの外側空間位相検出器と、2つの外側空間位相検出器の間に位置する空間位相検出器の内側の群と、を有する。
図1に示す実施例では、N個の空間位相光検出器からなるセットは、同じサブセット空間位相列を有する3つの空間位相検出器のサブセットS
1、S
2及びS
3を有する。
【0021】
空間位相検出器のそれぞれの少なくとも過半数は、測定軸方向MAに比較的長く、測定軸方向MAに直交する方向(すなわちY方向)に比較的細い。空間位相検出器のそれぞれの少なくとも過半数は、周期的なスケール光パターンに応じた空間位相検出器の空間位相のそれぞれに対応して配置された、測定軸方向MAに沿って空間周期的なスケール光受光領域を有し、かつ、それぞれ空間位相検出器信号を与えるように構成される。空間位相列内では、内側の群の空間位相検出器のそれぞれは、当該空間位相検出器とは異なる空間位相を有する空間位相検出器によって先行され、かつ、後続される。先行及び後続する空間位相検出器は、それぞれ異なる空間位相を有する。換言すれば、1つの空間位相検出器に注目した場合、注目した空間位相検出器は、測定軸方向MAと交差する方向で、後続する1又は複数の空間位相検出器と、先行する1又は複数の空間位相検出器とによって挟まれている。但し、内側の群において測定軸方向MAと交差する方向の端部に設けられた空間位相検出器に注目した場合、注目した空間位相検出器は、1つの外側位相検出と、内側の群に属するその他の空間位相検出器とによって挟まれることとなる。
【0022】
様々な用途においては、光検出器構造160及び照明部120は、例えばリードヘッド又はゲージハウジング(不図示)内で、互いに固定的な関係を有するように実装されてもよい。既知の技術により、光検出器構造160及び照明部120は、ベアリングシステムによってスケール格子110に対して測定軸方向MAにガイドされる。スケール格子110は、様々な用途において、可動ステージやゲージスピンドルなどに取り付けられてもよい。
【0023】
耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造100は、本明細書で開示する原理に応じた耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造の一例に過ぎないことは、言うまでもない。変形例においては、テレセントリック結像システム及び開口絞りなどの各種の光学部品を利用してもよい。変形例においては、照明部は、1つの照明格子のみを有していてもよい。
【0024】
図2は、変位信号を与える耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造200の部分模式図である。耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造200は、エンコーダ構造100と同様である。近似した符号である
図2の2XX及び
図1の1XXは、特に断らない限り、同様の要素を示すものとする。
図2に示すエンコーダ構造200は、反射型構造である。スケール210は、反射型スケール格子である。
【0025】
図3は、耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造300の光検出器構造360の部分模式図である。耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造300は、耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造100又は耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造200と同様であってもよい。光検出器構造360は、空間位相列に、測定軸方向MAと交差する方向に沿って配列された、N個の空間位相検出器からなるセットを有する。但し、Nは、6以上の整数である。空間位相列は、測定軸方向MAと交差する方向の始まり及び終わりに位置する2つの外側空間位相検出器と、2つの外側空間位相検出器の間に位置する空間位相検出器の内側の群と、を有する。空間位相検出器のそれぞれの過半数は、測定軸方向MAに比較的長く、測定軸方向MAに直交する方向に比較的細い。空間位相検出器のそれぞれの少なくとも過半数は、周期的なスケール光パターンに応じた空間位相検出器の空間位相のそれぞれに対応して配置された、測定軸方向MAに沿って空間周期的なスケール光受光領域を有し、かつ、それぞれ空間位相検出器信号を与えるように構成される。空間位相列内では、内側の群の空間位相検出器のそれぞれは、当該空間位相検出器とは異なる空間位相を有する空間位相検出器によって先行され、かつ、後続される。先行及び後続する空間位相検出器は、それぞれ異なる空間位相を有する。換言すれば、1つの空間位相検出器に注目した場合、注目した空間位相検出器は、測定軸方向MAと交差する方向で、後続する1又は複数の空間位相検出器と、先行する1又は複数の空間位相検出器とによって挟まれている。但し、内側の群において測定軸方向MAと交差する方向の端部に設けられた空間位相検出器に注目した場合、注目した空間位相検出器は、1つの外側位相検出と、内側の群に属するその他の空間位相検出器とによって挟まれることとなる。
【0026】
実施例においては、N個の空間位相光検出器からなるセットは、少なくとも空間位相検出器のM個のサブセットを有してもよい。但し、Mは、2以上の整数である。M個のサブセットのそれぞれは、それぞれの空間位相を与える、N個の空間位相光検出器からなるセットに含まれる空間位相検出器を有する。実施例においては、Mは3以上としてもよい。実施例においては、Mは6以上としてもよい。実施例においては、空間位相検出器のM個のサブセットのそれぞれは、同じ空間位相列サブセットに配列された、同じ空間位相を与える空間位相検出器を含んでもよい。
図3は、S
1~S
Mで示される空間位相検出器のM個のサブセットの実施例を示す。サブセットS
1は、空間位相検出器SPD
1A、SPD
1B、SPD
1C及びSPD
1Dを有する。サブセットS
2は、空間位相検出器SPD
2A、SPD
2B、SPD
2C及びSPD
2Dを有する。サブセットS
Mは、空間位相検出器SPD
MA、SPD
MB、SPD
MC及びSPD
MDを有する。
図3の空間位相検出器のそれぞれは、K個のスケール光受光領域を有するものとして表されている。スケール光受光領域の例として、空間位相検出器SPD
MDは、スケール光受光領域SLRA
M1及びSLRA
MKでラベルリングされている。実施例においては、Kは偶数値であってもよい。
【0027】
図3に示す実施例においては、空間位相列は、下付文字A、B、C及びDを含む空間位相検出器(例えば、空間位相検出器SPD
1A、SPD
1B、SPD
1C及びSPD
1D)で表されている。下付文字A及びDが付された空間位相検出器は、空間位相列の各例の始まり及び終わりに位置する2つの外側空間位相検出器である。下付文字B及びCが付された空間位相検出器は、内側の群である。
【0028】
空間位相検出器SPD1A、SPD1B、SPD1C及びSPD1Dは、それぞれ空間位相検出器信号A1、B1、C1及びD1を出力する。空間位相検出器SPD2A、SPD2B、SPD2C及びSPD2Dは、それぞれ空間位相検出器信号A2、B2、C2及びD2を出力する。空間位相検出器SPDMA、SPDMB、SPDMC及びSPDMDは、それぞれ空間位相検出器信号AM、BM、CM及びDMを出力する。
【0029】
本明細書に開示された原理にかかる耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造は、100μmの大きさの汚染(例えば、ワイヤボンディング汚染)や300μmの大きさのスケール欠陥を許容できる、単純な設計を提供する。スケール上の汚染又は欠陥は、典型的には、信号処理(例えば、直交処理)で相殺し得る、隣接する空間位相検出器でのコモンモード誤差成分を生じる。測定軸方向MAに比較的長く、測定軸方向MAに直交する方向に比較的細い空間位相検出器は、より良好な耐汚染性及び耐欠陥性をもたらす。測定軸方向MAでの空間位相検出器の構造周波数を減少させることで、信号レベルの変化をより緩やかにすることができる。また、このようなエンコーダは、耐汚染性及び耐欠陥性を与えるための複雑な信号処理を行う必要が無い。N個の空間位相検出器からなるセットにより与えられる信号は、当業者に知られている標準的な技術に基づいて処理してもよい。
【0030】
図3に示すような実施例においては、Nは8以上であり、空間位相検出器サブセットのそれぞれは、それぞれ90度ずつ離れた空間位相を有する4つの空間位相検出器を有してもよい。変形例においては、空間位相検出器サブセットのそれぞれは、それぞれ120度ずつ離れた空間位相を有する3つの空間位相検出器を有してもよい。
【0031】
図3に示す実施例では、光検出器構造360は、同じ空間位相に対応する空間位相検出器信号を合成し、かつ、合成した信号のそれぞれを空間位相位置信号として出力するように構成された接続部を有する。光検出器構造360は、90度ずつ離れた空間位相に対応する4つの空間位相位置信号を出力するように構成される。同じ文字表記が付された空間位相信号(例えば、A
1、A
2及びA
M)は、空間位相信号ΣA、ΣB、ΣC及びΣDを与えるように合成(例えば加算)される。変形例においては、光検出器構造は、120度ずつ離れた空間位相に対応する3つの空間位相位置信号を出力するように構成されてもよい。他の場合においては、更に、空間位相位置信号は、例えば直交信号処理又は三相信号処理よって変位信号を決定するのに用いられてもよい。
【0032】
変形例においては、空間位相検出器のそれぞれは、測定軸方向MAに比較的長く、測定軸方向MAに直交する方向に比較的細い。空間位相検出器のそれぞれの少なくとも過半数は、周期的なスケール光パターンに応じた空間位相検出器の空間位相のそれぞれに対応して配置された、測定軸方向MAに沿って空間周期的なスケール光受光領域を有し、かつ、それぞれ空間位相検出器信号を与えるように構成される。
【0033】
実施例においては、N個の空間位相検出器それぞれのスケール光受光領域のY方向の寸法YSLRAは、最大で250μmとすることができる。実施例においては、YSLRAは、5μm以上であってもよい。
【0034】
実施例においては、N個の空間位相検出器の隣接ペアにおけるスケール光受光領域間のY方向の距離YSEPは、最大で25μmとすることができる。
【0035】
実施例においては、N個の空間位相検出器のそれぞれのスケール光受光領域の寸法YSLRAは、Y方向で同じである。実施例においては、N個の空間位相検出器の隣接ペアにおけるスケール光受光領域間のY方向の距離YSEPは、同じである。
【0036】
Nの値を大きくすることで汚染に対してより耐性が増す一方で、Nの値を大きくすることで空間位相検出器のそれぞれの信号レベルが小さくなってしまうトレードオフの関係が存在することは、言うまでもない。
【0037】
図4Aは、耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造400Aの光検出器構造460Aの部分模式図である。簡略化のため、
図4Aは、2つの空間位相検出器SPD
1A及びSPD
1Bを有する、1つの空間位相検出器サブセットS
1のみを示している。光検出器構造460Aは、本明細書で開示される原理に基づいた少なくとも6つの空間位相検出器を有しているが、簡略化のため2つしか表されていないことは、言うまでもない。
図4Aに示す実施例では、N個の空間位相検出器(例えば、空間位相検出器SPD
1A及びSPD
1B)のそれぞれは、空間位相マスク(例えば、位相マスクPM
1A及びPM
1B)で覆われた光検出器(例えば、破線で示されるPD
1A及びPD
1B)を有する。空間位相マスクは、空間位相マスクに設けられた開口を通るものを除いて、光検出器が周期的なスケール光パターンを受光しないように、スケール光パターンを遮断する。この場合、スケール光受光領域は、空間位相マスク(例えば、空間位相マスクPM
1A及びPM
1B)のそれぞれの開口を通じて暴露された光検出器(例えば、光検出器PD
1A及びPD
1B)を有する。
図4Aに示す実施例では、位相マスクPM
1Bのスケール光受光領域(すなわち、開口)は、位相マスクPM
1Aのスケール光受光領域に対して、測定軸方向MAに90度オフセットされている。
図4Aでは空間位相マスクPM
1A及びPM
1Bが模式的に離隔した部分として表示されているが、実施例においては、潜在的な位置決め誤差を無くすため、適宜、同じ材料及び同じ工程で作製されてもよいことは、言うまでもない。
【0038】
図4Bは、耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造400Bの光検出器構造460Bの部分模式図である。簡略化のため、
図4Bは、2つの空間位相検出器SPD
1A’及びSPD
1B’を有する、1つの空間位相検出器サブセットS
1’のみを示している。光検出器構造460Bは、本明細書で開示される原理に基づいた少なくとも6つの空間位相検出器を有しているが、簡略化のため2つしか表されていないことは、言うまでもない。
図4Bに示す実施例では、N個の空間位相検出器(例えば、空間位相検出器SPD
1A’及びSPD
1B’)のそれぞれは、周期的なスケール光パターンを受け取る電気的かつ相互的に接続された光検出器領域の周期的なアレイを有する。この場合、スケール光受光領域は、光検出器の周期的なアレイである光検出器領域を有する。
図4Bに示す実施例では、空間位相検出器 SPD
1B’の光検出器領域は、空間位相検出器 SPD
1A’の光検出器領域に対して、測定軸方向MAに90度オフセットされている。
【0039】
図5は、変位信号を与える耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造500の追加実施例の部分模式図である。エンコーダ構造500では、検出対象である周期的スケール光パターン535は、検出器干渉縞パターン535で構成される。検出器干渉縞パターン535は、比較的長い寸法にわたって測定軸方向MAに延在するように配置されたバンドで構成され、光学式エンコーダが変位している間に、検出干渉縞移動方向DFMDに沿って、測定軸方向と交差するように移動する。
【0040】
光学式エンコーダ構造500はスケール510、照明光源520及び光検出器構造560を有する。スケール510は、測定軸方向MAに延在する。スケール510は、スケール面SPにおいて測定軸方向MAと実質的に平行に配列された格子バーGBで構成されるスケール格子を有する。格子バーGBは、測定軸方向MAに細く、測定軸方向MAと交差する格子バー方向GBDに長く、測定軸方向MAにスケールピッチPSFで周期的に配列されている。照明光源520は、光源530と構造化照明生成部533とを有する。光源530は、光534’を出力する。構造化照明生成部533は、光534’が入力され、スケール面SPの照明領域IRへ構造化照明534’’を出力する。構造化照明534’’は、測定軸方向MAに細く、格子バー方向GBDに対して0以外の照明干渉縞ヨー角ψをなし、かつ、測定軸方向MAと交差する照明干渉縞方向IFDに長い干渉縞からなる照明干渉縞パターンIFPで構成される。光源530は、点光源531及びコリメートレンズ532を有する。点光源531は、コリメートレンズへ光534を出力し、コリメートレンズは光534を光534’にコリメートする。様々な実施例においては、0以外の照明干渉縞ヨー角ψは、構造化照明生成部533の1以上の要素(例えば、要素540及び550の一方)を、Y軸に対して所望の角度だけ、Z軸回りに回転させることで実現してもよい。実施例においては、0以外の照明干渉縞ヨー角ψは、格子バー方向GBDを、Y軸に対して所望の角度だけ、Z軸回りに回転させることで、実現又は増加させてもよい。
【0041】
図8、9A及び9Bを参照してより詳細に後述するが、光検出器構造560は、測定軸方向MAと交差する検出干渉縞移動方向DFMDに検出器ピッチPD(
図6参照)で周期的に配列されたN個の空間位相検出器からなるセットを有する。空間位相検出器のそれぞれは、空間位相検出器信号を与えるように構成される。少なくとも過半数の空間位相検出器は、比較的長い寸法にわたって測定軸方向MAに延在し、かつ、測定軸方向MAと交差する検出干渉縞移動方向DFMDに比較的細い。N個の空間位相検出器からなるセットは、空間位相列に、検出干渉縞移動方向DFMDに沿って配列される。
【0042】
スケール510は、照明領域IRに照明干渉縞パターンが入力され、スケール光成分を、スケール光経路SCLPを介して出力する。これにより、光検出器構造560に検出器干渉縞パターン535が形成される。詳細には
図6を参照して後述するように、検出器干渉縞パターン535は、比較的長い寸法にわたって測定軸方向MAに延在し、測定軸方向MAと交差する検出干渉縞移動方向DFMDに比較的に細く、かつ、検出干渉縞移動方向DFMDに検出干渉縞周期PDFの周期性を有する高光強度及び低光強度のバンドで構成される。これらの方向性を示すため、ここでは、バンドは比較的長い寸法にわたって測定軸方向MAに延在しているが、様々な実施例において、バンドが測定軸方向MAに沿うように配列されなければならないことを意味するものではない。以下で
図6を参照して説明するように、様々な例示的な実施例では、バンドは測定軸方向MAに対して適度な又は小さな角度で配列されてもよい。
【0043】
図7を参照して後述するが、検出干渉縞周期PDF及び測定軸方向MAと交差する検出干渉縞移動方向DFMDは、部分的ではあるものの、0以外の照明干渉縞ヨー角ψに依存する。スケール510が測定軸方向MAに変位するにつれて、高光強度及び低光強度のバンドは、測定軸方向MAと交差する検出干渉縞移動方向DFMDに移動する。光検出器構造560は、測定軸方向MAと交差する検出干渉縞移動方向DFMDでの高光強度及び低光強度のバンドの変位を検出し、スケールの変位を示す空間位相変位信号を与えるように構成される。
【0044】
図5に示す実施例では、構造化照明生成部533は、第1照明光源回折格子540と第2照明光源回折格子550とを有する。実施例においては、第1照明光源回折格子540及び第2照明光源回折格子550は、位相格子であってもよい。位相格子は、光のロスを低減することで、より高い出力効率を与える。
【0045】
図5~
図9Bについて説明する原理にかかる耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造は、100μmの大きさの汚染(例えば、ワイヤボンディング汚染)や300μmの大きさのスケール欠陥に耐性を有する単純な設計を提供する。検出干渉縞周期と同じ又はそれよりも大きなサイズのスケール上の汚染又は欠陥は、典型的には、信号処理(例えば、直交処理)で相殺し得る、隣接する空間位相検出器でのコモンモード誤差成分を生じる。すなわち、測定軸方向に沿って移動する汚染の影響は、隣接する空間位相検出器間で共有され、スケール又はリードヘッド構造が測定軸方向に変位するにつれて、隣接する空間位相検出器間を測定軸方向に移動する。汚染の影響は隣接する空間位相検出器間のコンモードの影響であるため、かつ、空間位相検出器は、汚染の影響よりも実質的に大きな、比較的長い寸法にわたって測定軸方向MAに延在しているため、変位信号の精度に対する汚染の影響は、実質的に緩和される。未処理の非コモンモードエラーの場合には、光検出器構造560がスケール510に対して変位するにつれて、検出器干渉縞パターン535の欠陥に対応する部分は、ある空間位相検出器から他の空間位相検出器へたいへんゆっくりと移動し、これにより空間位相変位信号をより効率的に補償できることが、他の利点として挙げられる。このようなエンコーダは、複雑な信号処理を要することなく、汚染や欠陥に対する耐性を提供できる。N個の空間位相検出器からなるセットにより与えられる空間位相変位信号は、当業者に知られた標準的な技術に応じて処理さてもよい。
【0046】
図6Aに、
図5の光検出器構造560に類似する光検出器構造660の近傍での、検出器干渉縞パターン535と類似の又は同じ検出器干渉縞パターン635を形成するスケール光成分SL1及びSL2の第1の図を模式的に示す。検出器干渉縞パターン635は、
図5を参照して概説した光学式エンコーダ構造500と類似の光学式エンコーダにより与えられてもよい。
図5を参照して既述したように、
図6Aは、測定軸方向MAとスケール光経路SCLPとで定義される面に検出器干渉縞パターン635を形成するスケール光の断面を示している。
図6Aに示すように、スケール光成分は、第1スケール光成分SL1と第2スケール光成分SL2(高光強度バンドを表す破線で示されている)を含む。第1スケール光成分SL1と第2スケール光成分SL2は、それぞれ平行な光線を含み、第1スケール光成分SL1の平行光線は、スケール光経路SCLPに対して反対の角度の方向に沿っている。第1スケール光成分SL1及び第2スケール光成分SL2は、既知の原理により、重複することで検出器干渉縞パターン635を形成する。第1スケール光成分SL1及び第2スケール光成分SL2は、構造化照明生成部からの異なる回折次数の回折光によって形成されてもよい。検出器干渉縞パターン635は、破線で表される暗又は低光強度のバンド635Dと、太線で表される明又は高光強度のバンド635Lとで構成される。
【0047】
図6Bに、干渉縞パターン635を形成するスケール光成分SL1及びSL2の第2の図を模式的に示す。
図6Bは、
図5について既述した、測定軸方向MAとY方向とで定義される面での検出器干渉縞パターン635の、光検出器構造660近傍での断面を示している。
図6Bに示すように、検出器干渉縞パターン635は、太線で表される暗又は低光強度のバンド635Dと、破線で表される明又は高光強度のバンド635Lとで構成される。暗又は低光強度のバンド635Dと明又は高光強度のバンド635Lとは、検出干渉縞移動方向DFMDに検出干渉縞周期PDFの周期性を有する。一般に、検出干渉縞移動方向は、Y方向に対して0以外の照明干渉縞ヨー角ψと等しい僅かな回転伴って、干渉バンド635D及び635Lの方向と交差する。
【0048】
図7は、
図5及び
図6に示した光学式エンコーダ構造500に類似する耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダの特性のグラフ700である。このグラフは、照明干渉縞ヨー角ψに対する検出干渉縞周期PDFを示している。グラフ700は、格子ピッチP
1の第1照明光源回折格子、格子ピッチP
2の第2照明光源回折格子及びスケールピッチP
SFのスケールを有する構造化照明生成部を有する耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダのデータを示している。上記のピッチP
1、P
2及びP
SFは、以下の式を満たす。
【数1】
【0049】
以下の式により、検出干渉縞周期PDFは、照明干渉縞ヨー角ψと結びつけられる。
【数2】
【0050】
一般に、耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダにとっては、検出干渉縞周期PDFが大きくなる(例えば、7μmよりも大きい、又は、実施例によっては40μmよりも大きい)ように構成されることが望ましい。この場合には、照明干渉縞ヨー角ψは、小さな値(例えば、7μm未満)である必要がある。大きな値の検出干渉縞周期PDFは、スケール、光検出器構造及び照明光源間の位置ズレに起因する測定誤差に対する良好な耐性を与える。照明光源及び光検出器構造の一方又は両方に対するスケールのピッチングやローリングに起因する誤差は、検出干渉縞周期PDFに反比例する。よって、大きな値の検出干渉縞周期PDFは、スケールのうねりによって生じる測定誤差に対する良好なロバスト性を与える。
【0051】
図8は、
図5及び
図6に示した光学式エンコーダ構造500に類似する耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダにおいて使用可能な例示的な光検出器構造860の模式
図800である。ここでは、光検出器構造は、測定軸方向に近接して、又は、概ね測定軸方向に沿って延在し、測定軸方向と交差して周期的に配列された空間位相検出器を有する。類似の符号である
図8の8XXと
図5の5XXとは、特に断らない限り、類似の要素を示すものとする。
【0052】
光検出器構造860は、空間位相列に検出干渉縞移動方向DFMDに沿って配列されたN個の空間位相検出器からなるセットを有する。Nは、6以上の整数である。空間位相列は、測定軸方向MAと交差する方向の始まり及び終わりに位置する2つの外側空間位相検出器と、2つの外側空間位相検出器の間に位置する空間位相検出器の内側の群と、を有する。内側の群の空間位相検出器のそれぞれは、空間位相列において、当該空間位相検出器とは異なる空間位相を有する空間位相検出器によって先行され、かつ、後続される。先行及び後続する空間位相検出器は、それぞれ異なる空間位相を有する。換言すれば、1つの空間位相検出器に注目した場合、注目した空間位相検出器は、測定軸方向MAと交差する方向で、後続する1又は複数の空間位相検出器と、先行する1又は複数の空間位相検出器とによって挟まれている。但し、内側の群において測定軸方向MAと交差する方向の端部に設けられた空間位相検出器に注目した場合、注目した空間位相検出器は、1つの外側位相検出と、内側の群に属するその他の空間位相検出器とによって挟まれることとなる。空間位相検出器のそれぞれは、検出干渉縞移動方向DFMDの空間周期性を有し、かつ、周期的なスケール光パターンに応じた空間位相検出器の空間位相のそれぞれに対応して配置された、スケール光受光領域を有する。
【0053】
実施例においては、N個の空間位相光検出器からなるセットは、少なくとも空間位相検出器のM個のサブセットを有してもよい。但し、Mは、2以上の整数である。M個のサブセットのそれぞれは、それぞれの空間位相を与える、N個の空間位相光検出器からなるセットに含まれる空間位相検出器を有する。実施例においては、Mは4以上としてもよい。実施例においては、Mは6以上としてもよい。実施例においては、空間位相検出器のM個のサブセットのそれぞれは、同じ空間位相列サブセットに配列された、同じ空間位相を与える空間位相検出器を含んでもよい。
図8は、S
1~S
Mで示される空間位相検出器のM個のサブセットの実施例を示す。サブセットS
1は、空間位相検出器SPD
1A、SPD
1B、SPD
1C及びSPD
1Dを有する。サブセットS
2は、空間位相検出器SPD
2A、SPD
2B、SPD
2C及びSPD
2Dを有する。サブセットS
Mは、空間位相検出器SPD
MA、SPD
MB、SPD
MC及びSPD
MDを有する。
【0054】
図8に示す実施例においては、空間位相列は、下付文字A、B、C及びDを含む空間位相検出器(例えば、空間位相検出器SPD
1A、SPD
1B、SPD
1C及びSPD
1D)で表されている。下付文字A及びDが付された空間位相検出器は、空間位相列の各例の始まり及び終わりに位置する2つの外側空間位相検出器である。下付文字B及びCが付された空間位相検出器は、内側の群である。
【0055】
空間位相検出器SPD1A、SPD1B、SPD1C及びSPD1Dは、それぞれ空間位相検出器信号A1、B1、C1及びD1を出力する。空間位相検出器SPD2A、SPD2B、SPD2C及びSPD2Dは、それぞれ空間位相検出器信号A2、B2、C2及びD2を出力する。空間位相検出器SPDMA、SPDMB、SPDMC及びSPDMDは、それぞれ空間位相検出器信号AM、BM、CM及びDMを出力する。
【0056】
図8に示すような実施例においては、Nは8以上であり、空間位相検出器サブセットのそれぞれは、それぞれ90度ずつ離れた空間位相を有する4つの空間位相検出器を有してもよい。変形例においては、空間位相検出器サブセットのそれぞれは、それぞれ120度ずつ離れた空間位相を有する3つの空間位相検出器を有してもよい。
【0057】
図8に示す実施例では、光検出器構造860は、同じ空間位相に対応する空間位相検出器信号を合成し、かつ、合成した信号のそれぞれを空間位相位置信号として出力するように構成された接続部を有する。光検出器構造860は、90度ずつ離れた空間位相に対応する4つの空間位相位置信号を出力するように構成される。同じ文字表記が付された空間位相信号(例えば、A
1、A
2及びA
M)は、空間位相信号ΣA、ΣB、ΣC及びΣDを与えるように合成(例えば加算)される。変形例においては、光検出器構造は、120度ずつ離れた空間位相に対応する3つの空間位相位置信号を出力するように構成されてもよい。他の場合においては、更に、空間位相位置信号は、例えば直交信号処理又は三相信号処理よって変位信号を決定するのに用いられてもよい。
【0058】
実施例においては、N個の空間位相検出器の隣接ペアのそれぞれのスケール光受光領域間の検出干渉縞移動方向DFMDの距離YSEPは、25μm以下としてもよい。実施例においては、N個の空間位相検出器の隣接ペアのそれぞれのスケール光受光領域間の検出干渉縞移動方向DFMDの距離YSEPは、同じである。
【0059】
図8では、さらに、測定軸方向MAに対する検出器軸DAを示している。検出器軸は、空間位相検出器の特定の伸長方向と平行な方向である。一般に、検出器軸DAは、検出干渉縞移動方向DFMDと直交(実質的に直交)することが望ましい。しかしながら、良好な変位信号が得られるならば、厳密にこの例に限られるものではない。よって、実施例においては、特に検出干渉縞移動方向DFMDが測定軸方向MAと直交していない場合、検出器軸は、測定軸方向MAに対して角度αだけ回転していてもよい。(
図7について説明したように)小さな照明干渉縞ヨー角ψを用いることが望ましいので、角度αは相当に小さくてもよい。照明干渉縞ヨー角ψがきわめて小さな値である場合には、検出器軸DAを測定軸方向MAに対して回転させる必要すらない。
【0060】
図9Aは、
図8に示した光検出器構造に類似する耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ900Aの他の例示的な光検出器構造960Aの断面を示す模式図である。簡略化のため、
図9Aは、2つの空間位相検出器SPD
1A及びSPD
1Bを有する、1つの空間位相検出器サブセットS
1のみを示している。光検出器構造960Aは、本明細書で開示される原理に基づいたより多くの空間位相検出器を有しているが、簡略化のため2つしか表されていないことは、言うまでもない。
図9Aに示す実施例では、N個の空間位相検出器(例えば、空間位相検出器SPD
1A及びSPD
1B)のそれぞれは、空間位相マスク(例えば、位相マスクPM
1A及びPM
1B)で覆われた光検出器(例えば、破線で示されるPD
1A及びPD
1B)を有する。空間位相マスクは、空間位相マスクに設けられた開口を通るものを除いて、光検出器が周期的なスケール光パターンを受光しないように、スケール光パターンを遮断する。この場合、スケール光受光領域は、空間位相マスク(例えば、空間位相マスクPM
1A及びPM
1B)のそれぞれの開口を通じて暴露された光検出器領域(例えば、光検出器PD
1A及びPD
1B)を有する。
図9Aに示す実施例では、位相マスクPM
1Bのスケール光受光領域(すなわち、開口)は、位相マスクPM
1Aのスケール光受光領域に対して、検出干渉縞移動方向DFMDに90度オフセットされている。
図9Aでは空間位相マスクPM
1A及びPM
1Bが模式的に離隔した部分として表示されているが、実施例においては、潜在的な位置決め誤差を無くすため、適宜、同じ材料及び同じ工程で作製されてもよいことは、言うまでもない。
【0061】
図9Bは、
図8に示した光検出器構造860に類似する耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ900Bの他の例示的な光検出器構造960Bの断面を示す模式図である。簡略化のため、
図9Bは、2つの空間位相検出器SPD
1A’及びSPD
1B’を有する、1つの空間位相検出器サブセットS
1’のみを示している。光検出器構造960Bは、本明細書で開示される原理に基づいたより多くの空間位相検出器を有しているが、簡略化のため2つしか表されていないことは、言うまでもない。
図9Bに示す実施例では、N個の空間位相検出器(例えば、空間位相検出器SPD
1A’及びSPD
1B’)のそれぞれは、周期的なスケール光パターンを受け取る電気的かつ相互的に接続された光検出器領域の周期的なアレイを有する。この場合、スケール光受光領域は、光検出器の周期的なアレイである光検出器領域を有する。
図9Bに示す実施例では、空間位相検出器 SPD
1B’の光検出器領域は、空間位相検出器 SPD
1A’の光検出器領域に対して、検出干渉縞移動方向DFMDに90度の空間位相シフトによってオフセットされている。
【0062】
光検出器構造960A及び960Bに類似する光検出器構造の実施例においては、N個の空間位相検出器のそれぞれが、偶数個のスケール光受光領域を有することが有利である。スケール光の0次回折光成分は、スケール光に交互に現れる縞の光強度を変動させうる。よって、スケール光受光領域を偶数個とすることで、この変動を平均化する。
【0063】
図10は、変位信号を与える耐汚染性及び耐欠陥性を有する光学式エンコーダ構造1000の追加実施例の部分模式図である。エンコーダ構造1000では、検出対象である周期的スケール光パターンは、検出器干渉縞パターン1035で構成される。検出器干渉縞パターン1035は、比較的長い寸法にわたって測定軸方向MAに延在するように配置されたバンドで構成され、光学式エンコーダが変位する間に、測定軸方向と交差する方向である検出干渉縞移動方向DFMDに沿って移動する。
【0064】
エンコーダ構造1000はスケール1010、照明光源1020及び光検出器構造1060を有する。スケール1010は、測定軸方向MAと実質的に平行なスケール面SPに配列された格子バーGBで構成されるスケール格子を有する。スケール格子バーGBは、測定軸方向MAに細く、測定軸方向MAに直交するスケール格子バー方向SGBDに長く、測定軸方向MAにスケールピッチPSFで周期的に配列されている。照明光源1020は、光源1030と構造化照明生成部1033とを有する。光源1030は、光1034’を出力する。構造化照明生成部1033は、光1034’が入力され、光源光経路SOLPを介して、スケール面SPの照明領域IRへ構造化照明1034’’を出力する。構造化照明1034’’は、測定軸方向MAに細く、測定軸方向MAと交差する方向に向いており、照明干渉縞方向IFDに長い縞からなる照明干渉パターンIFPで構成される。光源1030は、点光源1031及びコリメートレンズ1032を有する。点光源1031は、コリメートレンズへ光1034を出力し、コリメートレンズは光1034を光1034’にコリメートする。
【0065】
図8、9A及び9Bを参照して詳細に既述したように、光検出器構造1060は、測定軸方向MAと交差する検出干渉縞移動方向DFMDに検出器ピッチPD(
図6A及び
図6B参照)で周期的に配列されたN個の空間位相検出器からなるセットを有する。空間位相検出器は、それぞれ位相検出信号を与えるように構成される。少なくとも過半数の空間位相検出器は、それぞれ比較的長い寸法にわたって測定軸方向MAに延在し、かつ、測定軸方向MAと交差する検出干渉縞移動方向DFMDに比較的細い。N個の空間位相検出器からなるセットは、空間位相列に、検出干渉縞移動方向DFMDに沿って配列される。
【0066】
エンコーダ構造500の場合と同様に、スケール1010は、照明領域IRに照明干渉縞パターンが入力され、スケール光成分を、スケール光経路SCLPを介して出力する。これにより、光検出器構造1060に検出器干渉縞パターン1035が形成される。以下、
図6を参照して既述したように、検出器干渉縞パターン1035は、比較的長い寸法にわたって測定軸方向MAに延在し、測定軸方向MAに直交する検出干渉縞移動方向DFMDに比較的細く、かつ、検出干渉縞周期PDFで周期的な高強度及び低強度のバンドを有する。
【0067】
スケール格子バー方向SGBDは、光源光経路SOLPとスケール光経路SCLPとで定義されるリードヘッドの面RHPに対して0ではないヨー角ψSCをなす方向に向いている。
【0068】
構造化照明生成部1033は、第1照明光源回折格子1040及び第2照明光源回折格子1050を有する。これらについては、
図11A及び
図11Bにてより詳細に示す。実施例においては、第1照明光源回折格子1040及び第2照明光源回折格子1050は、位相格子であってもよい。
【0069】
図7を参照して既述したように、検出干渉縞周期PDF及び測定軸方向MAと交差する検出干渉縞移動方向DFMDは、部分的ではあるものの、0ではない照明干渉縞ヨー角ψ
SCに依存する。スケール1010が測定軸方向MAに変位するにつれて、高強度及び低強度のバンドは、測定軸方向MAと交差する検出干渉縞移動方向DFMDに移動する。光検出器構造1060は、測定軸方向MAと交差する検出干渉縞移動方向DFMDでの高強度及び低強度のバンドの変位を検出するように構成され、それぞれスケールの変位を示す空間位相変位信号を与える。
【0070】
図11Aは、第1照明光源回折格子1040の模式図である。
図11Bは、第2照明光源回折格子1050の模式図である。様々な実施例においては、光学式エンコーダ1000は、スケール1010、照明光源1020及び光検出器構造1060間のギャップの変動によって生じる変位信号の誤差を最小化するように構成されることが望ましい。
【0071】
図11Aに示すように、第1照明光源回折格子1040は、第1インデックス面に第1インデックスピッチP
1で周期的に配列された第1インデックス格子バーで構成される。第1インデックス格子バーは、測定軸方向に細く、測定軸方向と交差し、かつ、リードヘッド面RHPに対して角度ψ
1だけ回転している第1インデックス格子バー方向に長い。
図11Bに示すように、第2照明光源回折格子1050は、第1インデックス面と平行な第2インデックス面に第2インデックスピッチP
2で周期的に配列された第2インデックス格子バーで構成される。第2インデックス格子バーは、測定軸方向に細く、測定軸方向と交差し、かつ、リードヘッド面RHPに対して角度ψ
2だけ回転している第2インデックス格子バー方向に長い。
【0072】
光学式エンコーダ500のような様々な実施の形態においては、動的なギャップ誤差は、照明部520とスケール510との間の光源光経路SOLPに沿う方向の距離の変動であるスケールのうねりによって生じる。スケール光経路SCLPに沿う方向の光路長が変化すると、検出器干渉縞パターン1035を形成する干渉光ビームの相対的な位相が変化する。
様々な実施例においては、ψ
1及びψ
2は、同じ大きさで異なる符号の動的ギャップエラーを与えるように選択されてもよい。検出器干渉縞パターン1035を形成する干渉光ビームの2つの干渉光の位相は、Φ
+及びΦ
-で表されてもよい。光源1030から出力された光の波長は、λである。動的なギャップ誤差DGEは、測定軸方向MAとスケール格子バー方向SGBD(すなわち、Z方向)とに垂直な方向のギャップ変動Δgに関係する。動的なギャップ誤差DGEは、以下の式で表される。
【数3】
【0073】
より具体的には、上式の微分項は、以下の式で表される。
但し、係数Ωは、以下の式で定義される。
【数4】
【数5】
【0074】
式4では、第1項の
【数6】
は、第1照明光源回折格子1040 及び第2照明光源回折格子1050のそれぞれのヨーイングに起因する誤差成分である。
第2項の
【数7】
は、ヨー角ψ
SCに起因する誤差成分である。角度ψ
1及びψ
2で規定される誤差を意図的に導入することで、第2項に起因する誤差を補償することができる。
【0075】
実施例においては、スケール1010は、反射型格子からなるスケール格子で格子される。
図10に示すように、光源光経路SOLPは、スケール面に垂直な方向に対して角度Vをなす方向に向いていてもよい。所望の検出干渉縞周期PDFを与えるため、ヨー角ψ
SCは以下の式を満たす。
【数8】
【0076】
式3に示した動的なギャップ誤差DGEをキャンセルするため、角度ψ
1及びψ
2は、以下の式を満たす。
【数9】
【0077】
光学式エンコーダ構造500と同様に構成された、PSFが2μm、P1が2μm、P2が1μm、Vが30°、λが660nm、PDFが120μmの光学式エンコーダの典型例では、ψSCは0.48°としてもよい。この場合、位置測定誤差には、1μmのギャップ変動Δgあたり4.8nmの動的なギャップ誤差が生じる。光学式エンコーダ構造1000と同様に構成された、上記と同様のパラメータを有する光学式エンコーダの典型例では、ψSCは0.94°としてもよく、ψ1は-0.46°としてもよく、かつ、ψ2は0.0°としてもよい。ヨー角ψ1は、位置測定誤差において、1μmのギャップ変動Δgあたり-9.4nmの動的なギャップ誤差を生じさせる。ヨー角ψ2は、位置測定誤差において、1μmのギャップ変動Δgあたり9.4nmの動的なギャップ誤差を生じさせる。この2つの動的なギャップ誤差のバランスをとることで、動的なギャップ誤差は正味でゼロとなる。
【0078】
本開示の望ましい実施例について図示、説明したが、図示、説明した構成要素の配置及びプロセスの順序の様々な変形については、本開示に基づいて当業者にとって明らかであろう。ここで開示した原理を実現するため、様々な変形形態を用いてもよい。さらに、上述した様々な実施例を組み合わせて、更なる実施例を与えることが可能である。本明細書で参照する特許文献は、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。必要に応じて、実施例の態様は、様々な特許及び特許出願の概念を適用して、さらなる実施例を与えるために変形することができる。
【0079】
これらの及び他の変形は、上記の詳細な説明に照らして、実施例に適用することができる。一般に、以下の特許請求の範囲では、用いられる用語は、明細書及び特許請求の範囲に開示された特定の実施例に特許請求の範囲が限定されるものとして解釈されるべきではなく、クレームの均等物と解される全ての範囲と共に、すべての可能な実施例を含むと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0080】
100、200、300、400A、400B、500、900A、900B、1000 光学式エンコーダ構造
110 スケール格子
120 照明部
130 照明光源、
131 光源
132 コリメートレンズ
134 光源光
135 周期的スケール光パターン
140 第1の照明格子
150 第2の照明格子
160、360、460A、460B、560、660、860、960A、960B、1060 光検出器構造
210、510、1010 スケール
520、1020 照明光源
530、1030 光源
531、1031 点光源
532、1032 コリメートレンズ
533、1033 構造化照明生成部
534、534’、1034、1034’ 光
534’’、1034’’ 構造化照明
535、635 検出器干渉縞パターン
540、1040 第1照明光源回折格子
550、1050 第2照明光源回折格子
635D 暗又は低光強度のバンド
635L 明又は高光強度のバンド
A1~AM 空間位相検出器信号
DA 検出器軸
DFMD 検出干渉縞移動方向
GB 格子バー
GBD 格子バー方向
IFD 照明干渉縞方向
IFP 照明干渉縞パターン
IR 照明領域
SL1、SL2 スケール光成分
MA 測定軸方向
SP スケール面
S1~SM サブセット
SCLP スケール光経路
SOLP 光源光経路