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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】光学式角度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/26 20060101AFI20220912BHJP
【FI】
G01B11/26 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018135742
(22)【出願日】2018-07-19
(65)【公開番号】P2020012753
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 彰秀
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-097975(JP,A)
【文献】特開平7-306060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/26
G01D 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射する光源と、所定の軸を測定軸として回動するとともに前記光源から照射された光を反射する反射手段と、前記光源から照射された光を検出する検出手段と、前記検出手段から検出された信号に基づき角度を演算する演算手段と、を備える光学式角度センサであって、
前記検出手段は、
前記光を複数の回折光に回折する複数の回折格子と、
前記光源から照射された光を受光する受光手段と、を備え、
前記受光手段は、
前記複数の回折光における所定の回折光を受光する第1受光部と、
前記第1受光部が受光する前記所定の回折光以外の回折光を受光する第2受光部と、を備え、
前記演算手段は、
前記第1受光部から受光した光に基づき角度を算出するための信号を検出する信号検出部と、
前記第2受光部から受光した光に基づき角度を算出する際の基準となる基準角度を特定する特定部と、
前記信号検出部にて検出された前記信号と前記特定部にて特定された前記基準角度とに基づき角度の絶対値を算出する角度算出部と、を備え
前記反射手段は、
回動する測定対象に取付けられ、前記光を複数の回折光に回折する回折格子を有しない反射面を備え、所定の位置に固定されて配置される前記光源および前記検出手段に対して相対的に前記測定対象の回動に応じて回動することを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載された光学式角度センサにおいて、
前記第1受光部が受光する前記所定の回折光は、2本の回折光であることを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された光学式角度センサにおいて、
前記第2受光部は、
前記反射手段にて反射された光を受光することを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された光学式角度センサにおいて、
前記第1受光部と前記第2受光部とは、
ハーフミラーを介した光を受光することを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された光学式角度センサにおいて、
前記反射手段は、
光を反射する反射部と、光を複数の回折光に回折する回折格子部と、を備えることを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項6】
請求項5に記載された光学式角度センサにおいて、
前記回折格子部は、
前記測定軸と平行な方向に沿って並設される複数の格子を有することを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項7】
請求項5に記載された光学式角度センサにおいて、
前記回折格子部は、
前記反射手段の反射面において前記測定軸と直交する方向に沿って並設される複数の格子を有することを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載された光学式角度センサにおいて、
前記第2受光部は、
前記反射手段にて反射された光が収束する位置に配置されていることを特徴とする光学式角度センサ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載された光学式角度センサにおいて、
前記特定部は、
前記基準角度を特定するための基準角度特定値を記憶し、前記第2受光部の受光面に照射された光の位置と、前記基準角度特定値と、を照合することで前記基準角度を特定することを特徴とする光学式角度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式角度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を照射する光源と、所定の軸を測定軸として回動するとともに光源から照射された光を反射する反射手段と、光源から照射された光を検出する検出手段と、検出手段から検出された信号に基づき角度を演算する演算手段と、を備える光学式角度センサが知られている。
このような光学式角度センサは、検出できる角度が高分解能であり、かつ、1度以上の広い範囲の角度の検出が可能であり、スケールを有さず、基準角度に基づき角度を検出できることが好ましい。ここで、基準角度とは、角度を検出する際に基準となる原点(絶対値)に相当する所定の角度である。
【0003】
角度の検出方式としては、インクリメンタル方式(INC方式)と、アブソリュート方式(ABS方式)と、が知られている。
INC方式は、例えばスケールに設けられた一定ピッチのインクリメンタルパターン(INCパターン)を連続的に検出し、通過したINCパターンの数をカウントアップまたはカウントダウンすることで、測定対象における角度の変位を検出する方式である。
ABS方式は、例えば所定の方法にて原点となる基準角度を特定し、INC方式にて検出した角度と基準角度とを組み合わせることで、測定対象における角度の変位の絶対値を検出する方式である。また、他のABS方式として、例えばスケールにランダムに設けられたアブソリュートパターン(ABSパターン)を検出しABSパターンを解析することで、測定対象における角度の変位の絶対値を検出する方式もある。
【0004】
例えば特許文献1に記載の光学式ロータリエンコーダでは、回転スリット板(スケール)と、固定スリット板と、複数のLEDと、複数の受光素子と、を備える。回転スリット板および固定スリット板は、INC方式にて角度を検出するための角度検出スリットであるA相信号用スリットおよびB相信号用スリットと、ロータ磁極位置検出のためのスリットであるC相信号用スリットと、光学式ロータリエンコーダの光軸1回転中における所定回転角度、すなわち基準角度(原点)検出用スリットであるZ相信号用スリットと、を備える。光学式ロータリエンコーダは、A相信号用スリットおよびB相信号用スリットから検出された信号に基づいて高分解能の角度を検出することができ、回転スリット板の周方向の長さの分だけ角度を検出することができる。また、Z相信号用スリットから検出された信号に基づいて基準角度を特定することができる。光学式ロータリエンコーダは、この基準角度と、A相信号用スリットおよびB相信号用スリットから検出された信号と、を組み合わせることで測定対象における角度の変位の絶対値を検出することができる。
【0005】
また、例えば特許文献2に記載の回転角度検出装置は、短波長レーザー光源(光源)から照射された発散レーザー光をコリメートして生成したコリメート光束を、被測定物に搭載された反射部(反射手段)に入射し、反射部から反射された測定光束を対物レンズにより集光して角度の測定をする測定用受光素子を備える。測定用受光素子は、測定光束を集光して得られた光スポットの中心が、測定用受光素子の感応帯と非感応帯との境目上に位置するように配置されているとともに、位置決めステージに搭載されている。回転角度検出装置は、被測定物(測定対象)が回転したとき、光スポットの中心が測定用受光素子の感応帯と非感応帯との境目上に位置し続けるように、位置決めステージにより測定用受光素子の位置制御を行い、当該位置制御の情報に基づき被測定物の回転角度を求める。回転角度検出装置は、測定用受光素子の感応帯と非感応帯との境目を基準角度とし、この基準角度に基づいて、スケールを用いることなく高分解能な角度検出をすることができる。
【0006】
また、例えば特許文献3に記載の形状測定装置は、被測定面(反射手段)に対して相対的に略平行移動する測定ヘッド部と、測定ヘッド部の対向位置における被測定面の形状が測定ヘッド部と被測定面との平行移動にともなって変化する量を測定する信号処理部(演算手段)と、を備える。測定ヘッド部は、同位相の多光束からなる光を被測定面に向けて照射させる照射光形成手段(光源)と、被測定面からの反射光を回折させて干渉縞を形成させる干渉縞形成手段と、干渉縞の光を受光して受光信号を出力する受光素子アレイ(受光手段)と、を備える。信号処理部は、受光素子アレイからの受光信号に基づく干渉縞の変位から被測定面の形状変化を検出する。これにより、形状測定装置は、広い範囲の角度の検出が可能であり、スケールを用いることなく高分解能な角度検出をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-11362号公報
【文献】特開2017-133892号公報
【文献】特開2005-274429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の光学式ロータリエンコーダは、基準角度を得るために円盤状のスケールである回転スリット板が必要となる。これにより、光学式ロータリエンコーダは、回転スリット板の製造にコストがかかるとともに、回転スリット板をサーボモータの出力軸に取り付ける際にアライメントのミスが発生する可能性があるという問題がある。また、特許文献2に記載の回転角度検出装置は、許容される被測定物の回転角度は1度以内であり、検出できる範囲が非常に狭いという問題がある。さらに、特許文献3に記載の形状測定装置は、被測定面に対する基準角度を特定することができないという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、検出できる角度が高分解能であるとともに、広い範囲の角度の検出が可能であり、スケールを有さず、かつ、基準角度を特定することができる光学式角度センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光学式角度センサは、光を照射する光源と、所定の軸を測定軸として回動するとともに光源から照射された光を反射する反射手段と、光源から照射された光を検出する検出手段と、検出手段から検出された信号に基づき角度を演算する演算手段と、を備える光学式角度センサであって、検出手段は、光を複数の回折光に回折する複数の回折格子と、光源から照射された光を受光する受光手段と、を備え、受光手段は、複数の回折光における所定の回折光を受光する第1受光部と、第1受光部が受光する所定の回折光以外の回折光を受光する第2受光部と、を備え、演算手段は、第1受光部から受光した光に基づき角度を算出するための信号を検出する信号検出部と、第2受光部から受光した光に基づき角度を算出する際の基準となる基準角度を特定する特定部と、信号検出部にて検出された信号と特定部にて特定された基準角度とに基づき角度の絶対値を算出する角度算出部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、演算手段は、第1受光部から受光した光に基づき信号検出部にて角度を算出するための信号を検出し、第2受光部から受光した光に基づき特定部にて角度を算出する際の基準となる基準角度を特定し、信号検出部にて検出された信号と特定部にて特定された基準角度とに基づき角度算出部にて角度の絶対値を算出するため、スケールを用いずに、基準角度を特定し、測定対象の角度変位について高精度に検出することができる。したがって、光学式角度センサは、検出できる角度が高分解能であるとともに、広い範囲の角度の検出が可能であり、スケールを有さず、かつ、基準角度を特定することができる。
【0012】
ここで、光学式角度センサは、スケールを用いずに、角度を算出するための信号を検出し、角度を算出する際の基準となる基準角度を特定するためには、それぞれに対応する複数の光源を備える必要がある。また、光学式角度センサは、複数の光源を備える場合、各光源の発熱による温度特性や、光量の強弱による光量特性などが異なることがある。このため、複数の光源は、受光手段が備える各受光部が受光する光の特性に、誤差の要因となる変化を生じさせることがある。
【0013】
しかしながら、本発明によれば、光学式角度センサにおける検出手段は、光源から照射された光を複数の回折光に回折する複数の回折格子を備え、受光手段は、複数の回折光における所定の回折光を受光する第1受光部と、第1受光部が受光する所定の回折光以外の回折光を受光する第2受光部と、を備えるため、複数の光源を備えることなく、1つの光源で角度を算出するための信号を検出し、角度を算出する際の基準となる基準角度を特定することができる。したがって、光学式角度センサは、コスト削減を図ることができるとともに、省スペース化を図ることができる。また、1つの光源を用いることで、複数の光源を備える場合に生じる温度特性や光量特性による誤差の要因が生じないため、受光手段が備える第1受光部および第2受光部により光学特性を均一化することができる。
【0014】
この際、第1受光部が受光する所定の回折光は、2本の回折光であることが好ましい。
【0015】
ここで、第1受光部が1本の回折光を受光する場合、信号検出部は、1本の回折光から角度を算出するための信号を検出することとなる。1本の回折光の光量が小さい場合、信号検出部は、角度を算出するための信号を検出できないことがある。また、第1受光部が2本以上の回折光を受光する場合、信号検出部は、複数の回折光から角度を算出するための信号を検出することとなる。信号検出部が複数の回折光から角度を算出するための信号を検出する場合、角度を算出するための信号にはノイズが発生することがある。
【0016】
しかしながら、このような構成によれば、演算手段における信号検出部は、2本の回折光に基づき角度検出をすることができるため、1本の回折光から角度を算出するための信号を検出する場合に生じ得る信号を検出することができないという問題や、複数の回折光から角度を算出するための信号を検出する場合のノイズの発生を抑制することができる。したがって、光学式角度センサは、1本の回折光や複数の回折光に基づき角度を算出するための信号を検出する場合と比較して、高精度に角度の絶対値を算出することができる。
【0017】
この際、第2受光部は、反射手段にて反射された光を受光することが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、反射手段は例えば測定対象に設置されている場合、測定対象の回動にともなって回動するため、反射手段を反射してない光に基づいて基準角度を特定する場合と比較して、より確実に基準角度を特定することができる。
【0019】
この際、第1受光部と第2受光部とは、ハーフミラーを介した光を受光することが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、ハーフミラーにより、例えば光源から照射された光は2つの光に分割される。これにより、一方の光を第1受光部に受光させて信号検出部で角度を算出するための信号の検出に用い、他方の光を第2受光部に受光させて特定部で基準角度を特定することができる。したがって、光学式角度センサは、設計の自由度を向上させることができる。また、ハーフミラーにより光源から照射された光は2つに分割されるため、光源を複数備えることなく、1つの光源により、角度を算出するための信号を検出し、基準角度を特定することができる。
【0021】
この際、反射手段は、光を反射する反射部と、光を複数の回折光に回折する回折格子部と、を備えることが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、反射手段は、光を反射する反射部と、光を複数の回折光に回折する回折格子部と、を備えることで、第1受光部または第2受光部が受光する光を調整することができる。ここで、光の調整とは、光を多方向に発散させたり、光を一方向に収束させたりすることである。したがって、光学式角度センサは、第1受光部や第2受光部の配置に応じて光を調整することができるため、設計の自由度を向上させることができる。
【0023】
この際、回折格子部は、測定軸と平行な方向に沿って並設される複数の格子を有することが好ましい。
【0024】
このような構成によれば、反射手段における回折格子部は、測定軸と平行な方向に沿って並設される複数の格子を有することで、第1受光部または第2受光部が受光する光を所定の方向に向かって収束させることができる。したがって、光学式角度センサは、第1受光部や第2受光部の配置に応じて光を収束させることができるため、設計の自由度を向上させることができる。
【0025】
また、回折格子部は、反射手段の反射面において測定軸と直交する方向に沿って並設される複数の格子を有することが好ましい。
【0026】
このような構成によれば、反射手段における回折格子部は、反射手段の反射面において測定軸と直交する方向に沿って並設される複数の格子を有することで、第1受光部または第2受光部が受光する光を所定の方向に向かって発散させることができる。したがって、光学式角度センサは、第1受光部や第2受光部の配置に応じて光を発散させることができるため、設計の自由度を向上させることができる。
【0027】
この際、第2受光部は、反射手段にて反射された光が収束する位置に配置されていることが好ましい。
【0028】
このような構成によれば、第2受光部は、反射手段にて反射された光が収束する位置に配置されているため、複数の第2受光部を有することなく特定部が基準角度を特定するための光を受光することができる。したがって、光学式角度センサは、複数の第2受光部を有する場合と比較して容易に設計することができる。また、光学式角度センサは、複数の第2受光部を有する必要がないため、複数の第2受光部を有する場合と比較して、コスト削減を図ることができる。
【0029】
この際、特定部は、基準角度を特定するための基準角度特定値を記憶し、第2受光部の受光面に照射された光の位置と、基準角度特定値と、を照合することで基準角度を特定することが好ましい。
【0030】
このような構成によれば、特定部は第2受光部の受光面に照射された光の位置と、例えばあらかじめ特定部に記憶された基準角度を特定するための基準角度特定値と、を照合することで基準角度を特定するため、第2受光部に照射された光に基づいて基準角度を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態に係る光学式角度センサを示す斜視図
図2】前記光学式角度センサを示すブロック図
図3】第2実施形態に係る光学式角度センサを示す斜視図
図4】前記光学式角度センサを示すブロック図
図5】第3実施形態に係る光学式角度センサを示す斜視図
図6】前記光学式角度センサを示すブロック図
図7】第4実施形態に係る光学式角度センサを示す斜視図
図8】前記光学式角度センサを示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図1図2に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る光学式角度センサを示す斜視図である。
光学式角度センサ1は、図1に示すように、光を照射する光源2と、所定の軸を測定軸として回動するとともに光源2から照射された光を反射する反射手段3と、光源2から照射された光を検出する検出手段4と、を備える。検出手段4は、光源2から照射された光を複数の回折光に回折する複数の回折格子5,6と、光源2から照射された光を受光する受光手段7と、を備える。複数の回折格子5,6は、第1回折格子5と、第2回折格子6と、を有する。
光学式角度センサ1は、回動する物体を測定する測定器の内部に設けられている。
【0033】
光源2は、一定の幅を有する平行光を第1回折格子5の一面に向かって照射する。光源2は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。なお、光源2はLEDに限らず、任意の光源であってもよい。
反射手段3は、回動する測定対象に取付けられ、Y軸を測定軸として回動する。反射手段3は、検出手段4と対向する反射面30を有する。反射面30は、光源2から照射された光を反射するミラーである。なお、反射面30は、光を反射することができれば、ミラーでなくてもよく、どのようなものであってもよい。
【0034】
また、以下の説明において、測定軸(Y軸)と平行な方向である測定軸方向をY方向として説明し、反射手段3の反射面30においてY軸と直交する方向をX軸とし、X軸と平行な方向を直交方向(X方向)とし、X方向とY方向と直交する方向をZ方向とする場合がある。
【0035】
検出手段4は、反射手段3が取付けられた測定対象の回動に応じて変化する複数の回折光から、反射手段3の傾斜角度の絶対値を検出する。
ここで、複数の回折光は、光源2から照射された光の光軸と同じ方向に進行する回折光と、光軸の両側を所定の回折角度で進行する回折光と、光軸の両側を所定の回折角度よりも大きな回折角度で進行する回折光と、を有する。
複数の回折光は、光軸と同じ方向に進行する回折光を0次回折光とすると、0次回折光を基準として回折角度が大きくなる方向に向かって±1次回折光、±2次回折光と順序づけることができる。
検出手段4は、主に±1次回折光により生成される干渉縞から信号を検出する。なお、以下の説明において、±1次回折光を信号回折光111とし、0次回折光または±1次回折光以外の光を基準角度特定光100として説明することがある。
【0036】
第1回折格子5および第2回折格子6は、透光性のガラスにて形成される。なお、第1回折格子5および第2回折格子6は、ガラスに限らず、任意の透光性の部材により形成されていてもよい。
第1回折格子5は、X方向に沿って並設される複数の格子50を有する透過型の回折格子である。第1回折格子5は、反射手段3に向かう光源2からの平行光を回折するとともに透過させる。
【0037】
第2回折格子6は、X方向に沿って並設される複数の格子60を有する反射型の回折格子である。第2回折格子6は、反射手段3から反射した光を回折するとともに反射手段3に向かって複数の回折光を反射させる。また、第2回折格子6は、略中央部に略矩形状の開口部61を有する。開口部61は、本実施形態において基準角度特定光100となる0次回折光を、回折させることなく受光手段7(後述の第2受光部72)に向かって照射させる。なお、開口部61は、基準角度特定光100を第2受光部72に向かって照射させることができればよく、略中央部に配置されていなくてもよいし、略矩形状に形成されていなくてもよい。また、開口部61に相当する構成を設けるために、複数の格子60を有する複数の回折格子により第2回折格子6を構成してもよい。
【0038】
受光手段7は、複数の回折光における所定の回折光を受光する第1受光部71と、第1受光部71が受光する所定の回折光以外の回折光を受光する第2受光部72と、を備える。
検出手段4における第1回折格子5と、第2回折格子6と、第1受光部71とは、反射手段3と対向し反射手段3から長さLだけZ方向(紙面上方向)に離間した位置に配置されている。第2受光部72は、反射手段3と対向し、第2回折格子6の開口部61上(紙面上方向)に配置されている。また、第2受光部72は、第1回折格子5と第2回折格子6と第1受光部71よりも、反射手段3から離間した位置に配置されている。
【0039】
第1受光部71は、光を受光して信号に変換する複数の受光素子70を備える。複数の受光素子70は、複数の格子50,60の配置ピッチに対応して、X方向に沿って所定の配置ピッチにて並設されている。複数の受光素子70には、PDA(Photo Diode Array)が用いられる。PDAは、複数の干渉縞を一度に測定することができる性質を持つ受光器である。なお、複数の受光素子70は、PDAに限らず、PSD(Position Sensitive Detector)やCCD(Charge-Coupled Device)等の任意の受光器を用いてもよい。
【0040】
第1受光部71は、第1回折格子5にて±1次回折光として回折されるとともに、第2回折格子6にて±1次回折光として回折された信号回折光111となる2本の回折光を受光する。具体的には、第1受光部71は、第1回折格子5と第2回折格子6と反射手段3を介した光源2からの光のうち、信号回折光111によって複数の受光素子70上に生成された干渉縞を受光する。
【0041】
光源2が第1回折格子5に照射した平行光は、第1回折格子5を透過し回折されると、複数の回折光となって反射手段3に照射され、反射手段3にて反射し反射光となる。反射光は、第2回折格子6によりさらに複数の回折光に回折される。第2回折格子6にて回折された複数の回折光は、再び反射手段3に照射され反射光となり、受光手段7に照射される。第1回折格子5と、第2回折格子6と、反射手段3とを介した反射光は、受光手段7において干渉することにより、X方向に沿って複数の格子50,60の配置ピッチに対応した周期で明暗を繰り返す干渉縞を生成する。
【0042】
光学式角度センサ1において、光源2から照射された平行光は、反射手段3の傾斜角が変化すると、第2回折格子6へ反射する反射光の方向が変化する。したがって、光源2から照射された平行光は、反射手段3が回動することで第2回折格子6および受光手段7における光の到達点が変化する。これにより、第1回折格子5から受光手段7までの光学距離(光路)が変化するため、受光手段7の受光面上での干渉縞が変位する。光学式角度センサ1は、この干渉縞の移動である変位から反射手段3の傾斜角の変化を検出する。
【0043】
第2受光部72は、第1受光部71が受光する2本の回折光である信号回折光111以外の回折光であり、基準角度特定光100を受光する。第2受光部72は、反射手段3における基準角度を特定するために、PSDにて構成されている。なお、第2受光部72は、PSDに限らず、CCDやPDA、CMOS等の任意の受光器を用いてもよい。
具体的には、第2受光部72は、第1回折格子5にて0次回折光となり反射手段3にて反射された光を受光する。
なお、図1では、説明の便宜上、第1受光部71が受光する信号回折光111である±1次回折光と、第2受光部72が受光する基準角度特定光100である0次回折光と、について矢印にて光路を示している。
【0044】
図2は、前記光学式角度センサを示すブロック図である。
光学式角度センサ1は、図2に示すように、検出手段4から検出された光に基づき角度を演算する演算手段8をさらに備え、演算手段8は、信号検出部81と、特定部82と、角度算出部83と、を備える。
【0045】
信号検出部81は、第1受光部71から受光した光に基づき反射手段3の傾斜角度を算出するための信号を検出する。
特定部82は、第2受光部72から受光した光に基づき角度を算出する際の基準となる基準角度を特定する。特定部82は、基準角度を特定するための基準角度特定値をあらかじめ記憶している。
角度算出部83は、信号検出部81にて検出された角度を算出するための信号と特定部82にて特定された基準角度とに基づき角度の絶対値を算出する。
【0046】
光学式角度センサ1は、以下のように基準角度を特定する。
先ず、光学式角度センサ1が設けられた測定器は、電源が投入されると、反射手段3(図1参照)を傾ける動作を実行する。この際、測定器は、反射手段3をフルストロークで傾ける。そして、光学式角度センサ1は、測定器による反射手段3を傾ける動作とともに、基準角度を特定するための平行光を光源2から照射する。これにより、反射手段3の傾きに応じて第1受光部71および第2受光部72に光が照射される。
【0047】
次に、第1受光部71は、信号回折光111である±1次回折光を受光し、信号検出部81は、信号回折光111により生じる干渉縞を解析することにより反射手段3の傾斜角度を算出するための信号を検出する。
続いて、特定部82は、第2受光部72の受光面に照射された光の位置と、記憶されている基準角度特定値と、を照合する。この際、第2受光部72は、基準角度特定光100が照射された位置であり、第2受光部72の受光面において最も光量が大きい位置を重心位置として受光する。特定部82は、この重心位置と、基準角度特定値と、を照合する。特定部82は、基準角度特定光100が照射された位置である重心位置と、基準角度特定値と、が合致した場合、その位置を基準角度として特定する。そして、角度算出部83は、干渉縞から解析された角度を算出するための信号と基準角度とを組み合わせることにより、反射手段3の傾斜角度の変位の絶対値を算出する。
【0048】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)演算手段8は、第1受光部71から受光した光に基づき信号検出部81にて角度を算出するための信号を検出し、第2受光部72から受光した光に基づき特定部82にて角度を算出する際の基準となる基準角度を特定し、信号検出部81にて検出された信号と特定部82にて特定された基準角度とに基づき角度算出部83にて角度の絶対値を算出するため、スケールを用いずに、基準角度を特定し、測定対象の角度変位について高精度に検出することができる。したがって、光学式角度センサ1は、検出できる角度が高分解能であるとともに、広い範囲の角度の検出が可能であり、スケールを有さず、かつ、基準角度を特定することができる。
【0049】
(2)検出手段4は、光源2から照射された光を複数の回折光に回折する複数の回折格子5,6を備え、受光手段7は、信号回折光111を受光する第1受光部71と、第1受光部71が受光する信号回折光111以外の基準角度特定光100(0次回折光)を受光する第2受光部72と、を備えるため、複数の光源を備えることなく、1つの光源2で角度を算出するための信号を検出し、角度を算出する際の基準となる基準角度を特定することができる。したがって、光学式角度センサ1は、コスト削減を図ることができるとともに、省スペース化を図ることができる。また、1つの光源2を用いることで、複数の光源を備える場合に生じる温度特性や光量特性による誤差の要因が生じないため、受光手段7が備える第1受光部71および第2受光部72により光学特性を均一化することができる。
【0050】
(3)信号検出部81は、2本の回折光に基づき角度検出をすることができるため、1本の回折光、または複数の回折光に基づき角度検出をする場合と比較して、高精度に角度の絶対値を算出することができる。
(4)反射手段3は、測定対象に設置され、測定対象の回動にともなって回動するため、反射手段3を反射してない光に基づいて基準角度を特定する場合と比較して、光学式角度センサ1は、より確実に基準角度を特定することができる。
(5)特定部82は第2受光部72の受光面に照射された光の位置と、あらかじめ特定部82に記憶された基準角度を特定するための基準角度特定値と、を照合することで基準角度を特定するため、第2受光部72に照射された光に基づいて基準角度を特定することができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図3図4に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図3は、第2実施形態に係る光学式角度センサを示す斜視図である。また、図4は、前記光学式角度センサを示すブロック図である。
前記第1実施形態では、反射手段3は反射面30を備えていた。本実施形態では、図3図4に示すように、光学式角度センサ1Aにおける反射手段3Aは、光を反射する反射部31と、光を複数の回折光に回折する回折格子部32と、を備える点で前記第1実施形態と異なる。
【0053】
反射部31は、前記第1実施形態における反射手段3の反射面30と同様に光源2から照射された光を反射するミラーである。なお、反射部31は、光を反射することができれば、ミラーでなくてもよく、どのようなものであってもよい。
回折格子部32は、図3に示すように、反射型の回折格子であり、測定軸と平行な方向(Y方向)に沿って並設される複数の格子300を有する。これにより、第2回折格子6にて回折した±1次回折光は、回折格子部32にて複数の回折光に回折される。
【0054】
具体的には、複数の回折光は、±1次回折光から回折されたY方向±1次回折光である。このうち、回折格子部32にて回折されたY方向+1次回折光は信号回折光111Aとして第1受光部71にて受光され、Y方向-1次回折光は基準角度特定光100Aとして第2受光部72にて受光される。回折格子部32にて回折された基準角度特定光100Aは、第2受光部72に向かって収束するように回折される。この際、基準角度特定光100Aとして±1次回折光によるY方向-1次回折光が照射されるため、2本の回折光により第2受光部72の受光面には干渉縞が生成される。しかし、本実施形態においても、第2受光部72は、基準角度特定光100Aが照射された位置であり、干渉縞において最も光量が大きい位置を重心位置として受光する。
【0055】
また、第2受光部72は、反射手段3Aにて反射された光が収束する位置に配置されている。すなわち、第2受光部72は、回折格子部32にて収束し回折した基準角度特定光100Aを受光できる位置に配置されている。また、第1受光部71および第2受光部72は、回折格子部32にて回折した回折光を受光するため、互いに近傍する位置に配置することができる。したがって、光学式角度センサ1Aは、複数の第2受光部を備えなくてよいため、省スペース化を図ることができる。
【0056】
そして、図4に示すように、前記第1実施形態と同様に、第1受光部71で受光した信号回折光111Aに基づき信号検出部81にて角度を算出するための信号を検出し、第2受光部72で受光した基準角度特定光100Aに基づき特定部82にて基準角度を特定することができる。そして、角度算出部83は、信号回折光111Aによる信号と、基準角度と、を組み合わせることにより、反射手段3Aの傾斜角度の絶対値を算出することができる。
なお、図3では、反射手段3Aにおける反射部31の領域と回折格子部32の領域とは、同じ面積になるように配置されているが、反射部は光を反射することができ、回折格子部は光を複数の回折光に回折することができれば、反射手段の反射面上にどのように配置されていてもよい。
【0057】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(5)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(6)反射手段3Aは、光を反射する反射部31と、光を複数の回折光に回折する回折格子部32と、を備えることで、第1受光部71または第2受光部72が受光する光を調整することができる。したがって、光学式角度センサ1Aは、第1受光部71や第2受光部72の配置に応じて光を調整することができるため、設計の自由度を向上させることができる。
【0058】
(7)反射手段3Aにおける回折格子部32は、測定軸と平行な方向に沿って並設される複数の格子300を有することで、第1受光部71または第2受光部72が受光する光を所定の方向に向かって収束させることができる。したがって、光学式角度センサ1Aは、第1受光部71や第2受光部72の配置に応じて光を収束させることができるため、設計の自由度を向上させることができる。
【0059】
(8)第2受光部72は、反射手段3Aにて反射された光が収束する位置に配置されているため、複数の第2受光部72を有することなく特定部82が基準角度を特定するための光を受光することができる。したがって、光学式角度センサ1Aは、複数の第2受光部72を有する場合と比較して容易に設計することができる。
(9)光学式角度センサ1Aは、複数の第2受光部72を有する必要がないため、複数の第2受光部を有する場合と比較して、省スペース化やコスト削減を図ることができる。
【0060】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態を図5図6に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図5は、第3実施形態に係る光学式角度センサを示す斜視図である。また、図6は、前記光学式角度センサを示すブロック図である。
前記第2実施形態では、回折格子部32は、測定軸と平行な方向に沿って並設される複数の格子300を有していた。本実施形態では、図5図6に示すように、光学式角度センサ1Bにおける反射手段3Bの回折格子部32Bは、反射手段3Bの反射面において測定軸と直交する方向(X方向)に沿って並設される複数の格子311を有する点で前記第2実施形態と異なる。
【0062】
また、前記各実施形態では、受光手段7における第2受光部72は、検出手段4内において1つだけ設けられていた。本実施形態では、受光手段7Bは、第2受光部72と同様に機能し、±1次回折光以外の回折光である基準角度特定光を受光する第3受光部73をさらに備え、検出手段4B内に、基準角度特定光を受光する第2受光部が2つ設けられている点で前記各実施形態と異なる。
【0063】
回折格子部32Bは、第2回折格子6にて回折した±1次回折光を複数の回折光に回折する。具体的には、複数の回折光は、±1次回折光から回折されたX方向0次回折光や、X方向±1次回折光などである。このうち、回折格子部32Bが回折したX方向+1次回折光である信号回折光111Bは、第1受光部71にて受光され、X方向0次回折光である基準角度特定光100Bは、発散するように回折されるとともに、第2受光部72と第3受光部73にて受光される。
第2受光部72と第3受光部73は、回折格子部32Bにて発散するように回折した基準角度特定光100Bを受光できる位置に配置されている。これにより、光学式角度センサ1Bは、基準角度特定光100Bが複数生じたとしても、基準角度を特定するために必要な回折光を複数箇所から受光することができる。
【0064】
また、前記各実施形態では、演算手段8における特定部82は、1つの第2受光部72から受光した光に基づいて基準角度を特定していた。本実施形態では、図6に示すように、演算手段8Bにおける特定部82Bは、第2受光部72と第3受光部73とが受光した基準角度特定光100Bに基づいて基準角度を特定する点で前記各実施形態と異なる。このような構成によれば、特定部8Bは、基準角度特定光100Bが複数生じたとしても、基準角度を特定することができる。
【0065】
さらに、1つの基準角度特定光100Bに基づき基準角度を特定した場合と、複数の基準角度特定光100Bに基づき基準角度を特定した場合とでは、複数の基準角度特定光100Bに基づき基準角度を特定した方が、第2受光部72と第3受光部73とで受光した光に基づき特定された基準角度をそれぞれ照合し、誤差の有無を確認することができる。したがって、光学式角度センサ1Bは、ノイズが発生したとしても、誤差の少ない基準角度を特定することができる。なお、図5では、反射手段3Bにおける反射部31の領域と回折格子部32Bの領域とは、同じ面積になるように配置されているが、反射部は光を反射することができ、回折格子部は光を複数の回折光に回折することができれば、反射手段の反射面上にどのように配置されていてもよい。
【0066】
このような本実施形態においても、前記実施形態における(1)~(6)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(10)反射手段3Bにおける回折格子部32Bは、反射手段3Bの反射面において測定軸と直交する方向に沿って並設される複数の格子311を有することで、第1受光部71や第2受光部72、第3受光部73が受光する光を所定の方向に向かって発散させることができる。したがって、光学式角度センサ1Bは、第1受光部71や第2受光部72、第3受光部73の配置に応じて光を発散させることができ、設計の自由度を向上させることができる。
【0067】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態を図7図8に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0068】
図7は、第4実施形態に係る光学式角度センサを示す斜視図である。また、図8は、前記光学式角度センサを示すブロック図である。
本実施形態では、前記第1実施形態と異なり、光学式角度センサ1Cは、ハーフミラー10を備えている。このため、第1受光部71と第2受光部72とは、ハーフミラー10を介した光を受光する。
また、前記第1実施形態では、光学式角度センサ1の第1回折格子5は、透過型の回折格子であった。本実施形態における光学式角度センサ1Cの第1回折格子5Cは、反射型の回折格子である点で前記第1実施形態と異なる。
【0069】
本実施形態において、光源2は、図7に示すように、ハーフミラー10に向かって平行光を照射する。ハーフミラー10に照射された光は、光源2と対向するハーフミラー10の一面にて反射する反射光と、ハーフミラー10内を進行する透過光と、に分割される。
ハーフミラー10にて反射された反射光は、第1回折格子5Cにて複数の回折光に回折される。なお、図7では、説明の便宜上、第1受光部71が受光する±1次回折光である信号回折光111Cと、第2受光部72が受光する±1次回折光以外の光(0次回折光)である基準角度特定光100Cと、について矢印にて光路を示している。
【0070】
第1回折格子5Cにて回折された複数の回折光のうち、±1次回折光は、反射手段3の反射面30にて反射し、第2回折格子6にてさらに複数の回折光に回折される。第2回折格子6にて回折された複数の回折光のうち、±1次回折光である信号回折光111Cは、反射手段3の反射面30にて反射し、第1受光部71にて受光される。
【0071】
ハーフミラー10にて分割され、ハーフミラー10内を進行する透過光は、反射手段3の反射面にて反射し、第2受光部72にて受光される。すなわち、第2受光部72は、反射手段3にて反射された光を基準角度特定光100Cとして受光する。
そして、図8に示すように、前記第1実施形態と同様に、信号検出部81は、第1受光部71で受光した信号回折光111Cに基づき角度を算出するための信号を検出し、特定部82は、ハーフミラー10を透過し反射手段3にて反射するとともに第2受光部72で受光された反射光(基準角度特定光100C)に基づき基準角度を特定する。角度算出部83は、信号回折光111Cに基づく信号と、基準角度と、を組み合わせることにより、反射手段3の傾斜角度の絶対値を算出することができる。
【0072】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(5)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(11)ハーフミラー10により、光源2から照射された光は2つの光に分割される。これにより、一方の光を第1受光部71に受光させて信号検出部81で角度を算出するための信号の検出に用い、他方の光を第2受光部に受光させて特定部82で基準角度を特定することができる。したがって、光学式角度センサ1Cは、設計の自由度を向上させることができる。
(12)光学式角度センサ1Cは、ハーフミラー10により光源2から照射された光は2つに分割されるため、光源2を複数備えることなく、1つの光源2により、角度を算出するための信号を検出し、基準角度を特定することができる。
【0073】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、光学式角度センサ1,1A~1Cは測定器に設けられていたが、測定器ではなく、その他のものに設けられていてもよく、どのようなものに設けられるかは特に限定されるものではない。
【0074】
前記第1実施形態から前記第3実施形態の光学式角度センサ1,1A~1Bは、ハーフミラー10を有していなかったが、光学式角度センサ1,1A~1Bは、ハーフミラー10を有する構成であってもよい。
【0075】
前記各実施形態では、第1受光部71が受光する所定の回折光は、±1次回折光であり、2本の回折光に基づいていたが、第1受光部71は2本の回折光ではなく、2本以上の回折光を受光してもよいし、1本の回折光を受光してもよく、±1次回折光でなくてもよい。
要するに、信号検出部が第1受光部から受光した光に基づき角度を算出するための信号を検出することができれば、第1受光部は、どのような回折光を受光してもよい。
また、各実施形態では、第1受光部は±1次回折光を受光し、第2受光部は0次回折光を受光していたが、第1受光部は、所定の回折光を受光し、第2受光部は、第1受光部が受光する所定の回折光以外の回折光を受光すれば、どのような光を受光してもよい。
【0076】
前記第1実施形態から前記第3実施形態では、第2受光部72は、反射手段3,3A~3Bにて反射された光を受光していたが、第2受光部は、例えば前記第4実施形態のように反射手段を介さずハーフミラー10にて分割した光を受光してもよい。要するに、特定部が第2受光部から受光した光に基づき基準角度を特定することができれば、第2受光部はどのような光路を経由した光を受光してもよい。
【0077】
前記第2実施形態では、回折格子部32は、測定軸と平行な方向に沿って並設される複数の格子300を有し、前記第3実施形態では、回折格子部32Bは、反射手段3Bの反射面において測定軸と直交する方向に沿って並設される複数の格子311を有していたが、反射手段は、前記第1実施形態や第4実施形態のように、回折格子部を備えていなくてもよい。
【0078】
前記第2実施形態では、第2受光部72は、反射手段3にて反射された光が収束する位置に配置されていたが、第2受光部は、第1受光部が受光する所定の回折光以外の回折光を受光することができれば、どのような位置に配置されていてもよい。
前記第3実施形態では、受光手段7Bは、第2受光部72と同様に機能し、第1受光部71が受光する所定の回折光以外の回折光を受光する第3受光部73を備えていたが、光学式角度センサは、第2受光部と同様の機能を有する受光部をさらに備えていてもよい。第1受光部が受光する所定の回折光以外の回折光を受光することができれば、第2受光部の数は任意である。
【0079】
前記各実施形態では、複数の回折格子として、第1回折格子5,5Cと、第2回折格子6と、を備えていたが、複数の回折格子は、第3回折格子を備えていてもよいし、それ以上の回折格子を備えていてもよい。要するに、光学式角度センサは、複数の回折格子を備えていればよい。
【0080】
前記各実施形態では、特定部82,82Bは、基準角度を特定するための基準角度特定値を記憶し、第2受光部72(第3受光部73)の受光面に照射された光の位置と、記憶した基準角度特定値と、を照合することで基準角度を特定していたが、特定部は、第2受光部から受光した光に基づき角度を算出する際の基準となる基準角度を特定することができれば、どのような方法で基準角度を特定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明は、光学式角度センサに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0082】
1,1A~1C 光学式角度センサ
2 光源
3,3A~3B 反射手段
4,4B 検出手段
5,5C 第1回折格子(複数の回折格子)
6 第2回折格子(複数の回折格子)
7,7B 受光手段
71 第1受光部
72 第2受光部
8,8B 演算手段
81 信号検出部
82,82B 特定部
83 角度算出部
10 ハーフミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8