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特許7139258銅微粒子、導電性材料、銅微粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】銅微粒子、導電性材料、銅微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20220912BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20220912BHJP
   B22F 9/22 20060101ALI20220912BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20220912BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20220912BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B22F1/00 L
B22F1/16
B22F9/22 F
H01B5/00 D
H01B1/22 A
H01B13/00 501Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019008521
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2020117753
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻本 裕二
(72)【発明者】
【氏名】細川 竜平
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 弘
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-121116(JP,A)
【文献】特開2018-127657(JP,A)
【文献】特開2007-220551(JP,A)
【文献】特開2014-185372(JP,A)
【文献】特許第6130616(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F1/00-1/18
B22F9/20-9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸銅及び亜酸化銅を含む被膜を表面の少なくとも一部に有し、
下記Dbと下記Dvとの比(Db/Dv)が0.50~0.90である、銅微粒子。
Dv:走査型電子顕微鏡を用いて、500個以上の銅微粒子についてSEM像を取得し、画像解析ソフトによって算出される銅微粒子の面積円相当径の平均値(nm)。
Db:比表面積計を用いて銅微粒子の比表面積:SSA(m/g)を測定し、下記式(1)によって算出される銅微粒子の粒子径(nm)。
Db=6/(SSA×ρ)×10・・・(1)
ただし、式(1)中、ρは銅の密度(g/m)である。
【請求項2】
前記Dvが50~500nmである、請求項1に記載の銅微粒子。
【請求項3】
前記Dbが25~500nmである、請求項1又は2に記載の銅微粒子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の銅微粒子と、前記銅微粒子が分散される分散媒とを含む導電性材料。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の銅微粒子を製造する方法であり、
バーナにより炉内に形成された還元性火炎中で銅又は銅化合物を加熱して、炭酸銅及び亜酸化銅を含む被膜を表面の少なくとも一部に有する微粒子を生成し、
前記微粒子と純水とを接触させて、前記被膜中の炭酸銅を溶解する、銅微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記バーナに供給する燃料ガス中の炭素量を調整することで、前記微粒子の炭素濃度を制御する、請求項に記載の銅微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記微粒子と純水とを接触させる前に、前記微粒子を二酸化炭素雰囲気中で熱処理する、請求項又はに記載の銅微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅微粒子、導電性材料、銅微粒子の製造装置、銅微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品に使用されるプリント配線基板等の高性能化、小型化、軽量化に伴い、高密度配線の分野における技術的進歩が著しい。高密度配線を形成するための導電性材料として、導電性インク、導電性ペースト等が知られている。
導電性材料としては、銀微粒子を含有するものが従来から知られている。しかし、銀は高コスト、マイグレーション等の問題がある。そのため、価格が安価であり、銀と同等の導電性を具備する銅微粒子を含有する導電性材料への代替が検討されている。
【0003】
一般に銅微粒子は焼結温度が相対的に高いため、銅微粒子を含有する導電性材料は、ポリイミド等の耐熱性の高い樹脂材料に適用される。しかし、ポリイミド等の耐熱性の高い樹脂材料は高価であるため、電子部品のコストが高くなる要因となっている。
よって、銅微粒子を含む導電性材料にあっては、ポリエチレンテレフタレート等のように安価であり、相対的に耐熱性が低い樹脂材料に適用可能であることが求められている。
【0004】
導電性材料に適用可能な銅微粒子の製造方法としては、特許文献1、2に記載の製造方法が提案されている。
特許文献1、2には、炉内でバーナによる還元性火炎を形成し、還元性火炎中に金属を吹き込む等して銅微粒子を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4304212号公報
【文献】特許第4304221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2に記載の製造方法で得られる銅微粒子にあっては、焼結可能な温度域が170℃以上であるため、ポリエチレンテレフタレート等のような耐熱性が低い樹脂材料への適用が困難である。
ここで、特許文献1、2に記載の製造方法で、焼結可能な温度域を低くすることを目的として、銅微粒子の粒子径を相対的に小さく(例えば40nm等程度)することも可能である。ところが、銅微粒子の粒子径を小さくすると、比表面積の増大に伴って、銅微粒子の凝集性が高くなる。そのため、焼結温度を低くするために銅微粒子の粒子径を小さくすると、銅微粒子をペーストにしたときの分散性が低下する可能性がある。
本発明は、ペーストにしたときの分散性が充分であり、150℃以下で焼結が可能である銅微粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の態様を有する。
[1] 炭酸銅及び亜酸化銅を含む被膜を表面の少なくとも一部に有し、下記Dbと下記Dvとの比(Db/Dv)が0.50~0.90である、銅微粒子。
Dv:走査型電子顕微鏡を用いて、500個以上の銅微粒子についてSEM像を取得し、画像解析ソフトによって算出される銅微粒子の面積円相当径の平均値(nm)。
Db:比表面積計を用いて銅微粒子の比表面積:SSA(m/g)を測定し、下記式(1)によって算出される銅微粒子の粒子径(nm)。
Db=6/(SSA×ρ)×10・・・(1)
ただし、式(1)中、ρは銅の密度(g/m)である。
[2] 前記Dvが50~500nmである、[1]の銅微粒子。
[3] 前記Dbが25~500nmである、[1]又は[2]の銅微粒子。
[4] [1]~[3]のいずれかの銅微粒子と前記銅微粒子が分散される分散媒とを含む導電性材料。
[5] [1]~[3]のいずれかの銅微粒子を製造する装置であり、還元性火炎を形成するバーナと前記バーナを収容する炉とを有し、前記還元性火炎中で銅又は銅化合物を加熱して、炭酸銅及び亜酸化銅を含む被膜を表面の少なくとも一部に有する微粒子を製造する第1の処理部と、前記微粒子と純水とを接触させて、前記被膜中の炭酸銅を溶解する第2の処理部とを備える、銅微粒子の製造装置。
[6] [1]~[3]のいずれかの銅微粒子を製造する方法であり、バーナにより炉内に形成された還元性火炎中で銅又は銅化合物を加熱して、炭酸銅及び亜酸化銅を含む被膜を表面の少なくとも一部に有する微粒子を生成し、前記微粒子と純水とを接触させて、前記被膜中の炭酸銅を溶解する、銅微粒子の製造方法。
[7] 前記バーナに供給する燃料ガス中の炭素量を調整することで、前記微粒子の炭素濃度を制御する、[6]の銅微粒子の製造方法。
[8] 前記微粒子と純水とを混合する前に、前記微粒子を二酸化炭素雰囲気中で熱処理する、[6]又は[7]の銅微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ペーストにしたときの分散性が充分であり、150℃以下で焼結が可能である銅微粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る銅微粒子の製造装置の概略構成を示す模式図である。
図2図1に示すバーナの先端の平面図である。
図3図2に示すバーナの先端のB-B線断面を示す図である。
図4図1に示す炉及び不活性ガス供給部のA-A線断面を示す図である。
図5】実施例1の銅微粒子のSEM写真(倍率:5万倍)を示す図である。
図6】比較例1の銅微粒子のSEM写真(倍率:5万倍)を示す図である。
図7】微粒子の炭素濃度と銅微粒子のDb/Dvとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において下記用語の意味は以下の通りである。
銅微粒子とは、平均粒子径が1μm未満である銅粒子のことをいう。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値が下限値及び上限値として含まれることを意味する。
【0011】
<銅微粒子>
本発明の銅微粒子は、炭酸銅及び亜酸化銅を含む被膜を表面の少なくとも一部に有する。本発明の銅微粒子においては、炭酸銅及び亜酸化銅を含む被膜が酸化銅をさらに含んでもよい。
【0012】
本発明の銅微粒子の表面の少なくとも一部は、炭酸銅及び亜酸化銅を含む被膜で被覆されている。そして、本発明の銅微粒子の表面には凹凸が形成されている。この凹凸の程度の指標として、本発明においては、下記Dbと下記Dvとの比(Db/Dv)を使用する。
Dv:走査型電子顕微鏡を用いて、500個以上の銅微粒子についてSEM像を取得し、画像解析ソフトによって算出される銅微粒子の面積円相当径の平均値(nm)。
Db:比表面積計を用いて銅微粒子の比表面積:SSA(m/g)を測定し、下記式(1)によって算出される銅微粒子の粒子径(nm)。
Db=6/(SSA×ρ)×10・・・(1)
ただし、式(1)中、ρは銅の密度(g/m)である。
【0013】
本発明の銅微粒子の比(Db/Dv)は0.50~0.90であり、0.50~0.80が好ましく、0.50~0.70がより好ましい。銅微粒子の比(Db/Dv)が前記下限値以上であることにより、ペーストにしたときの銅微粒子の分散性が充分である。銅微粒子の比(Db/Dv)が前記上限値以下であることにより、銅微粒子の焼結温度が低下し、150℃以下で焼結が可能である。
【0014】
Dvは例えば、50~500nmでもよく、70~200nmでもよい。
Dbは例えば、25~500nmでもよく、35~200nmでもよい。
Dv又はDbが前記下限値以上であると、銅微粒子の凝集が抑えられ、ペーストにしたときの分散性が向上する。Dv又はDbが前記上限値以下であれば、焼結温度がさらに低下し、150℃以下で焼結しやすくなる。
銅微粒子表面の被膜の厚みは特に限定されない。例えば、本発明の銅微粒子の被膜の厚みは、数nm程度でもよい。
【0015】
本発明の銅微粒子の被膜中の亜酸化銅の含有量は80質量%以上100質量%未満が好ましい。
本発明の銅微粒子の被膜中の炭酸銅の含有量は、0質量%超20質量%以下が好ましい。
被膜中の亜酸化銅の含有量が80質量%以上100質量%未満であり、かつ、被膜中の炭酸銅の含有量が0質量%超20質量%以下であると、焼結温度が150℃より低くなる効果がより顕著に得られる。
さらに、銅微粒子の表面の被膜中の炭酸銅の含有量は、上記範囲内において低めの含有量であることが好ましく、例えば、0質量%超10質量%以下がより好ましく、0質量%超5質量%以下がさらに好ましい。
銅微粒子の被膜中の亜酸化銅の含有量及び炭酸銅の含有量は、分析装置(ULVAC-PHI社製「PHI Quantum2000」)を使用して、XPS分析により測定される値である。
【0016】
(作用効果)
以上説明した本発明の銅微粒子にあっては、表面に凹凸が形成されているため、銅微粒子の比表面積が増大し、銅微粒子の反応活性が上がる。その結果、150℃以下の温度域でも焼結可能となる。
より具体的には、銅微粒子の表面の凹凸の程度の指標である比(Db/Dv)が0.50~0.90であるため、後述の実施例で示すように、ペーストにしたときの分散性が充分であり、150℃以下で焼結が可能である。
【0017】
(用途)
本発明の銅微粒子は、例えば、導電性材料の調製に適用可能である。
導電性材料は例えば、本発明の銅微粒子と分散媒とを含むものであってもよい。
分散媒としては、例えば、エタノール、プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリオール;α-テルピネオール、β-テルピネオール等のモノテルペンアルコールが挙げられる。導電性材料は導電性ペーストの形態でも、導電性インクの形態でもよい。
前記導電性材料にあっては、本発明の銅微粒子を含むため、銅微粒子の分散性が充分であり、150℃以下で焼結可能である。
【0018】
<銅微粒子の製造装置>
本発明の銅微粒子の製造装置は、上述の本発明の銅微粒子を製造する装置である。
以下、本発明の銅微粒子の製造装置の一実施形態について図面を参照して、詳述する。
【0019】
図1は、本実施形態の銅微粒子の製造装置10の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、製造装置10は、第1の処理部1と第2の処理部2とを備える。
第1の処理部1は、燃料ガス供給源11と、原料フィーダー12と、バーナ13と、支燃性ガス供給源15と、炉17と、複数の不活性ガス供給部18と、不活性ガス供給源19と、冷却ガス供給源20と、バグフィルター21と、ブロワー22とを有する。第2の処理部2は混合器40と固液分離機41とを有する。
【0020】
(第1の処理部)
第1の処理部1は、炭酸銅及び亜酸化銅を含む被膜を表面の少なくとも一部に有する微粒子を製造する。
燃料ガス供給源11は、原料フィーダー12と接続されている。燃料ガス供給源11から供給された燃料ガスは、原料フィーダー12から供給される原料粉体とともに、バーナ13に供給される。燃料ガスは、原料粉体を輸送するキャリアガスとしても機能する。燃料ガスとしては、例えば、メタン、プロパン、ブタン等が挙げられる。
【0021】
原料フィーダー12は、燃料ガス供給源11及びバーナ13と接続されている。原料フィーダー12はバーナ13に原料粉体を供給する。
原料粉体としては、銅の粒子又は銅化合物(酸化銅、硝酸銅等、水酸化銅等)の粒子を用いてもよい。銅化合物としては、加熱によって酸化銅が生成し、かつ、20%以上の純度で銅を含む化合物であれば、特に限定されない。
原料粉体の粒子径は特に限定されない。通常、原料粉体の粒子径は、1~50nmである。
【0022】
バーナ13は、酸素又は酸素富化空気を支燃性ガスとして燃料ガスを燃焼させることで火炎を形成する。この際、燃料ガスの完全燃焼する酸素量よりも少ない量の酸素(支燃性ガス)を供給することで、火炎中に水素及び一酸化炭素が残る還元性の火炎(以下、「還元性火炎」と記載する。)を形成する。
【0023】
バーナ13は、バーナ13の延在方向がY方向と一致するように、炉17の頂部(上端)に配置されている。還元性火炎を形成するバーナ13の先端は、炉17の上端に収容されている。これにより、バーナ13は、炉17内の上部に還元性火炎を形成する。
【0024】
図2は、図1に示すバーナ13の先端の平面図であり、図3は、図2に示すバーナ13の先端のB-B線断面を示す図である。
図2及び図3に示すように、バーナ13は、原料供給管31と、原料供給路32と、複数の原料噴出孔34と、一次支燃性ガス供給管36と、一次支燃性ガス供給路37と、複数の一次支燃性ガス噴出孔39と、冷却ジャケット管42と、二次支燃性ガス供給路43と、複数の二次支燃性ガス噴出孔45とを有する。
【0025】
原料供給管31は、バーナ13の軸方向に延在しており、バーナ13の中心に配置されている。原料供給管31の中心軸は、バーナ13の中心軸13Aと一致している。
原料供給路32は、原料供給管31の内部に設けられた空間であり、バーナ13の軸方向に延在している。原料供給路32は、原料フィーダー12と接続されている。
原料供給路32は、原料粉体及びキャリアガス(燃料ガスを含む)をバーナ13の先端側に輸送する。キャリアガスは、単体の燃料ガスでもよく、該燃料ガスと図示していない供給設備から供給される不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)との混合ガスでもよい。
【0026】
複数の原料噴出孔34は、原料供給管31の端部(還元性火炎が形成される側の端部)を貫通するように設けられている。複数の原料噴出孔34は、バーナ13の中心軸13Aに対して放射状に同一円周上に等間隔で配置されている。複数の原料噴出孔34は、バーナ13の中心軸13Aに対して、例えば、15~50°外側に向いて傾斜するように設けることができる。
【0027】
一次支燃性ガス供給管36は、バーナ13の軸方向に延在しており、その内部に原料供給管31を収容している。一次支燃性ガス供給管36の中心軸は、バーナ13の中心軸13Aと一致している。一次支燃性ガス供給管36は、その内部にリング状の突出部36Aを有する。突出部36Aは、原料供給管31の外面と接触している。
【0028】
一次支燃性ガス供給管36は、バーナ13の先端側に配置されたフロントプレート部36Bを有する。フロントプレート部36Bは、原料供給管31の先端面31aから突出するように配置されている。また、フロントプレート部36Bの内壁は、フロントプレート部36Bの先端から原料供給管31の先端面31aに向かうにつれて、開口径が小さくなるような傾斜面である。
これにより、原料供給管31の先端面31a側には、すり鉢形状とされた空間である燃焼室Cが形成されている。
【0029】
一次支燃性ガス供給路37は、原料供給管31と一次支燃性ガス供給管36との間に形成された環状の空間である。一次支燃性ガス供給路37は、支燃性ガス供給源15と接続されている。一次支燃性ガス供給路37は、支燃性ガス供給源15から供給される一次支燃性ガス(例えば、酸素又は酸素富化空気)を輸送する。
【0030】
複数の一次支燃性ガス噴出孔39は、突出部36Aを貫通するように設けられており、円周上等間隔に配置されている。複数の一次支燃性ガス噴出孔39を通過する円の中心は、バーナ13の中心軸13Aと一致している。
複数の一次支燃性ガス噴出孔39は、一次支燃性ガス供給路37が輸送した一次支燃性ガスをバーナ13の中心軸13Aに対して平行に噴出する。
【0031】
冷却ジャケット管42は、円筒状とされており、一次支燃性ガス供給管36を収容するように、一次支燃性ガス供給管36の外側に設けられている。冷却ジャケット管42の中心軸は、バーナ13の中心軸13Aと一致している。
冷却ジャケット管42は、冷却水が流通可能な二重管構造とされている。これにより、冷却ジャケット管42は、該冷却水によりバーナ13を冷却する。
【0032】
二次支燃性ガス供給路43は、一次支燃性ガス供給管36と冷却ジャケット管42との間に形成された環状の空間である。二次支燃性ガス供給路43は、支燃性ガス供給源15と接続されている。二次支燃性ガス供給路43は、支燃性ガス供給源15から供給される二次支燃性ガス(例えば、酸素又は酸素富化空気)を燃焼室C側に輸送する。
【0033】
複数の二次支燃性ガス噴出孔45は、フロントプレート部36Bを貫通するように設けられている。複数の二次支燃性ガス噴出孔45は、平面視した状態において円周上に等間隔で配置されている。
複数の二次支燃性ガス噴出孔45を通過する円の中心は、バーナ13の中心軸13Aと一致している。複数の二次支燃性ガス噴出孔45は、いずれもその噴射方向がバーナ13の中心軸13Aに向かうように傾斜して配置されている。
複数の二次支燃性ガス噴出孔45は、二次支燃性ガス供給路43に輸送された二次支燃性ガスを燃焼室Cに向けて噴射する。
【0034】
原料噴出孔34、一次支燃性ガス噴出孔39及び二次支燃性ガス噴出孔45の数、位置関係(レイアウト)等は、適宜選択できる。
原料噴出孔34、一次支燃性ガス噴出孔39及び二次支燃性ガス噴出孔45の噴出角度も適宜選択できる。
バーナ13の形態は、図2又は図3に示す原料噴出孔34、一次支燃性ガス噴出孔39及び二次支燃性ガス噴出孔45の数、位置関係(レイアウト)に限定されない。
【0035】
図1に示すように、支燃性ガス供給源15は、バーナ13(具体的には、図3に示す一次支燃性ガス供給路37及び二次支燃性ガス供給路43)と接続されている。支燃性ガス供給源15は、一次支燃性ガス供給路37に一次支燃性ガスを供給するとともに、二次支燃性ガス供給路43に二次支燃性ガスを供給する。
【0036】
図4は、図1に示す炉及び不活性ガス供給部のA-A線断面を示す図である。図4において、図1に示す構成と同一の構成部分には、同一符号を付す。
図1及び図4に示すように、炉17は、円筒状とされており、鉛直方向に延在している。X方向における炉17の切断面(A-A線で切断した際の断面)は、真円とされている。炉17内は、外気とは遮断されている。
炉17の頂部(上端)には、バーナ13の先端が下向きとなるように、バーナ13が取り付けられている。
炉17の側壁17Aには、図示していない水冷構造(例えば、水冷ジャケット)が設けられている。
炉17内の内径Dは、例えば、0.8mでもよい。
【0037】
炉17の下部17-2のうち、複数の不活性ガス供給部18の配設領域よりも下方に位置する部分には、炉17からガス(具体的には、燃焼排ガスと不活性ガスの混合ガス等)及び微粒子を取り出すための取り出し口17Bが設けられている。取り出し口17Bは、輸送経路23を介してバグフィルター21と接続されている。
【0038】
図1及び図4に示すように、複数の不活性ガス供給部18(例えば、ポート)は、炉17の側壁17Aに設けられており、炉17の側壁17Aの外面17aから突出している。
複数の不活性ガス供給部18は、炉17の側壁17Aの周方向及び炉17の延在方向(鉛直方向)に配置されている。
複数の不活性ガス供給部18は、不活性ガス供給源19と接続されており、不活性ガス供給源19から供給された不活性ガス(例えば、窒素)を炉17内に噴出させる。
【0039】
図4に示すように、複数の不活性ガス供給部18は、その延在方向が炉17の側壁17Aの接線方向と同じ方向となるように配置されている。これにより、炉17内に噴出された不活性ガスによって、炉17内に均一な旋回流Eを形成できる。
本実施形態では、旋回流Eによって連結粒子の生成を低減できる。その結果、良好な球形の微粒子を生成させることができ、得られる銅微粒子の分散性がさらに向上する。
【0040】
本実施形態では、水冷構造を有した炉17を一例として説明したが、これに替えて、側壁17Aが耐火物(例えば、煉瓦、不定形キャスタブル等)で構成された炉を用いてもよい。
本実施形態では図1に示すように、炉17の延在方向に3段の不活性ガス供給部18が配置された形態を一例として説明したが、炉17の延在方向における不活性ガス供給部18の段数は、図1に限定されない。
本実施形態では図4に示すように、炉17の側壁17Aの周方向に、4つの不活性ガス供給部18が設けられた形態を一例として説明したが、炉17の側壁17Aの周方向に配置する不活性ガス供給部18の数は、必要に応じて適宜選択することができ、図4に限定されない。
本実施形態では図4に示すように、複数の不活性ガス供給部18としてポートを用いた形態を一例として説明したが、複数の不活性ガス供給部18としてスリットを用いてもよい。
【0041】
冷却ガス供給源20は、冷却ガス経路24を介して輸送経路23に冷却ガスを供給する。冷却ガスは空気、窒素ガス、アルゴン等が挙げられるが、不活性ガスであれば特に限定されない。冷却ガスによって、炉17の取り出し口17Bからバグフィルター21に輸送される微粒子及びガスを冷却できる。
【0042】
バグフィルター21は、ブロワー22と接続されたガス排出部21Aと、微粒子回収部21Bとを有する。ガス排出部21Aは、バグフィルター21の上部に設けられている。微粒子回収部21Bは、バグフィルター21の下端に設けられている。
バグフィルター21は、炉17の取り出し口17Bと接続されている。バグフィルター21には、取り出し口17Bを介して、ガス及び微粒子が輸送される。
【0043】
バグフィルター21は、炉17から輸送されたガス及び微粒子のうち、微粒子回収部21Bから微粒子を回収する。
ブロワー22は、ガス排出部21Aを介して、バグフィルター21内のガスを吸引し、該ガスを排ガスとして排出する。
【0044】
(第2の処理部)
第2の処理部2は、第1の処理部1から輸送された微粒子と純水とを接触させて、前記被膜中の炭酸銅を溶解する。
混合器40は、微粒子と純水とを接触させることができる形態であれば特に限定されない。混合器40としては、超音波攪拌器、自公転式ミキサー、ミル攪拌器、スターラー攪拌器等が挙げられる。
微粒子回収部21Bから混合器40に微粒子を輸送する態様は特に限定されない。
【0045】
固液分離機41は、純水を混合した後の微粒子と炭酸銅を溶解した後の水とを分離できる形態であれば特に限定されない。例えば、吸引ろ過機、フィルタープレス、遠心分離機等が挙げられる。
【0046】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の銅微粒子の製造装置は、炭酸銅及び亜酸化銅を含む被膜を表面の少なくとも一部に有する微粒子を生成する第1の処理部と、微粒子と純水とを接触させて、前記被膜中の炭酸銅を溶解する第2の処理部とを備えるため、炭酸銅の溶解によって銅微粒子の表面に凹凸を形成できる。その結果、銅微粒子の比表面積が増大し、銅微粒子の反応活性が上がるため、低温の温度域でも焼結可能となる。
【0047】
<銅微粒子の製造方法>
本実施形態の銅微粒子の製造方法では、バーナにより炉内に形成された還元性火炎中で銅又は銅化合物を加熱して、炭酸銅及び亜酸化銅を含む被膜を表面の少なくとも一部に有する微粒子を生成する。
次いで、本実施形態の銅微粒子の製造方法では、前記微粒子と純水とを接触させて、前記被膜中の炭酸銅を溶解する。
【0048】
本実施形態の銅微粒子の製造方法では、バーナに供給する燃料ガス中の炭素量を調整することで、前記微粒子の炭素濃度を制御してもよく、前記微粒子と純水とを接触させる前に、前記微粒子を二酸化炭素雰囲気中で熱処理してもよい。
次に、図1を参照して、本実施形態の銅微粒子の製造方法について説明する。
先ず、バーナ13に、燃料ガス及び原料粉体(銅又は銅化合物を含む粉体)と、一次支燃性ガス及び二次支燃性ガスとを供給することで、炉17内の上部17-1に支燃性ガス及び燃料ガスにより高温の還元性火炎を形成し、高温の還元性火炎中で原料粉体を加熱及び蒸発させて、原料粉体を還元する。
具体的には炉17内の上部17-1は、微粒子の生成領域として使用される。すなわち、炉17内の上部17-1では、原料粉体である銅又は銅化合物が加熱されて蒸発して、還元される。この高温の還元性火炎中における原料粉体の加熱、蒸発及び還元によって、亜酸化銅を含む被膜を表面の少なくとも一部に有する微粒子が生成する。微粒子の粒径は、原料粉体の粒径より小さく、通常サブミクロン以下である。
【0049】
本実施形態では、バーナ13に供給する燃料ガス中の炭素量を調整することで、微粒子の炭素濃度を制御することが好ましい。
バーナに供給する燃料ガス中の炭素量を調整して、微粒子の質量炭素濃度の割合(C/SSA)を制御することで、微粒子の表面に余剰に付着する炭素量を抑制できる。その結果、微粒子の表面の被膜が炭酸銅を含み、焼結温度が低く抑えられた銅微粒子の製造に適用可能な微粒子を製造しやすくなる。
【0050】
ここで、バーナに供給する燃料ガス中の炭素量を調整する際の「炭素量」とは、燃料に含まれる炭素元素濃度の割合である。この炭素量は、例えば、燃料がメタン+50%水素である場合には、メタン(CH):1.175m/h、水素(H):3.9m/hの混合ガスであり、このときの炭素量は、次式{(1.175×1)/(1.175×(1+4)+3.9×2)×100=8.6%}となる。
【0051】
還元性火炎中で銅又は銅化合物を加熱する際には、炉17の側壁17Aの接線方向から不活性ガス(例えば、窒素)を噴出させることで、炉17内の下部17-2に旋回流Eを形成してもよい。
本実施形態では、旋回流Eによって、微粒子の粒度分布を調整し、得られる銅微粒子の粒度分布を所望の範囲に制御してもよい。微粒子の粒度分布を調整することで、銅微粒子の分散性がさらに向上する。
【0052】
微粒子の粒度分布の調整に際しては、例えば、旋回流Eの強さを調節してもよい。旋回流Eの強さは、不活性ガス供給部18から噴出される不活性ガスの噴出量(言い換えれば、炉17の側壁17Aから炉17の接線方向へ噴出する不活性ガスの噴出量)を変えることで調節可能である。
【0053】
具体的には、下記式(2)に示す炉17内の旋回流Eの強度(気流の旋回強度)を規定するS値を制御することで、旋回流Eの強度を調節できる。
S=(Fs/Fz)/(D/d)・・・(2)
ただし、式(2)において、「Fs」は、炉17内の旋回ガス(不活性ガス供給部18から噴出される不活性ガス等)の運動量であり、「Fz」は、バーナ13からの噴出ガス(バーナ13の原料噴出孔34から原料を噴出するキャリアガス等)の運動量であり、「D」は、炉17の内径、「d」は、バーナ13の出口径である。
【0054】
式(2)において、旋回流Eの強度を規定するS値は、0.1より大きい値が好ましい。旋回流Eの強度を規定するS値が0.1より大きい値である場合、炉17で生成される微粒子に含まれる連結粒子の数を低減できるため、真球形状とされた銅微粒子が求められる電子部品分野に適用しやすくなる。
【0055】
例えば、本実施形態において、狭い(シャープな)粒度分布を得る場合、S値が小さくなるような操作をすればよい。ただし、S<0.1となると、連結粒子が多数発生する傾向がある。例えば、広い粒度分布を得る場合、S値を大きくするような操作をすればよい。
S値を小さくする操作としては、炉17内の旋回ガスの運動量を小さくする(すなわち、不活性ガス供給部18から噴出する不活性ガスの噴出量を少なくする)操作、バーナ13からの噴出ガスの運動量を大きくする(すなわち、バーナ13からの噴出する各ガスの噴出量を多くする)操作が挙げられる。
【0056】
このように本実施形態では、炉17内の旋回流Eの強度(気流の旋回強度)を変化させることで、微粒子の粒度分布を制御できる。
つまり、炉17内の上部17-1において原料粉体を加熱及び蒸発させて還元し、その後、同一炉内の下部において発生させた旋回流Eの強度(気流の旋回強度)を調節することで、粒度分布が制御された微粒子を生成できる。その結果、得られる銅微粒子の粒度分布を所望の範囲に制御できる。
【0057】
このため、同一の炉内における連続的な処理により、微粒子の粒度分布を制御できるため、別々の場所で微粒子を生成する工程と、生成した微粒子を分級する工程とを行う方法と比較して、簡便に所望の粒度分布とされた銅微粒子を生成できる。
また、湿式の分級工程を用いなくとも微粒子の粒度分布を制御であるため、微粒子の粒度分布を制御することで、凝集しにくく、ハンドリング性に優れる銅微粒子を製造できる。
【0058】
次いで、炉17の下部17-2に移動した粉体は、旋回流Eのある流れ場を通過し、旋回流Eにより、微粒子が生成される。その後、微粒子は、ガスとともに、炉17の取り出し口17Bを介して、冷却ガス供給源20から供給される冷却ガスによって冷却され、バグフィルター21に輸送される。
通常、取り出し口17Bから排出されるガスの温度は、200~700℃である。本実施形態では、冷却ガスによって冷却後のガスの温度が100℃以下となるように冷却ガスを混入させてもよい。
バグフィルター21では、ガスと微粒子とが分離され、微粒子回収部21Bから微粒子を取得する。これにより、微粒子の製造が完了する。
【0059】
次に、本実施形態の銅微粒子の製造方法では、微粒子と純水とを接触させて、前記被膜中の炭酸銅を溶解する。具体的には微粒子回収部21Bから微粒子が混合器40に輸送される。
このように、微粒子を純水で処理することにより、微粒子の表面の被膜中の炭酸銅が溶解する。その結果、得られる銅微粒子の表面に凹凸が形成される。
微粒子と純水を接触させる方法は特に限定されない。例えば超音波攪拌、自公転式ミキサー、ミル攪拌、スターラー攪拌等を用いることができる。
純水としては、銅微粒子の150℃以下における焼結を阻害し得る成分(例えば、ナトリウム、塩素等)を含まないものが好ましい。ただし、本発明の効果を損なわない範囲であれば、不純物成分を含んでもよい。
【0060】
純水の使用量は、混合液中の微粒子の濃度が0.1~500g/Lとなるように調整することが好ましい。
微粒子の濃度が500g/L以下であると、微粒子の表面の被膜の炭酸銅が充分に溶解しやすく、凹凸を形成しやすくなり、Db/Dvを所定の範囲に制御しやすい。微粒子の濃度が0.1g/L以上であると、廃液の処理費等を考慮してコスト面で工業的に有利である。
【0061】
次いで混合器40から固液分離機41に粒子が輸送される。固液分離機41では炭酸銅が溶解した水と銅微粒子とが分離され、水が除去される。水の除去により、銅微粒子の製造が完了する。
水を除去する方法は特に限定されない。例えば、前記混合液を固液分離し、乾燥させ、銅微粒子を得てもよい。分離する手法は特に限定されないが、例えば、吸引ろ過、フィルタープレス等を用いてもよい。
乾燥する場合、銅微粒子の酸化を抑制する点から、例えば窒素等の不活性雰囲気中で乾燥することが好ましい。
【0062】
本実施形態では、微粒子と純水とを接触させる前に、微粒子を二酸化炭素雰囲気中で熱処理することが好ましい。微粒子と純水とを接触させる前に、微粒子を二酸化炭素雰囲気中で熱処理して、微粒子の質量炭素濃度の割合(C/SSA)を制御でき、微粒子の表面に余剰に付着する炭素量を抑制できる。その結果、微粒子の表面の被膜が炭酸銅を含み、焼結温度が低く抑えられた銅微粒子の製造に適用可能な微粒子を製造しやすくなる。
【0063】
熱処理に際しては熱処理装置として、例えば、ヒーターを備えるバッチ式の反応炉を使用できる。バッチ式の反応炉にガスを流入させて、反応炉内の雰囲気を制御する。反応炉に流入させるガスは、二酸化炭素等の炭素元素を有する化合物の酸化性ガスを含んでいればよく、二酸化炭素と不活性ガス(アルゴン等)との混合ガスでもよい。
反応炉は、反応炉内の雰囲気を攪拌する部材を備えてもよい。また、コンベア等の搬送部材を備えた連続式の反応炉でもよい。
【0064】
熱処理の方法は、バーナなどの火炎を使用してもよく、加熱したガスを反応炉内に流入させてもよい。バーナを加熱手段として用いる場合は、反応炉の雰囲気を制御する観点から間接加熱方式が好ましい。
【0065】
熱処理温度は例えば、40~200℃でもよい。
熱処理時間は、熱処理温度によるが、例えば、10分~100時間でもよい。処理時間が10分以上であれば充分な熱処理の効果が得られ、100時間以下であれば反応が過度に進行しにくいからである。
【0066】
他の実施形態において、混合器40の代わりに使用する場合、接触させた後の純水を乾燥させやすい。この場合、固液分離機41による水の除去は省略可能である。
【0067】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の銅微粒子の製造方法では、炭酸銅及び亜酸化銅を含む被膜を表面の少なくとも一部に有する微粒子を生成し、微粒子と純水とを接触させて、被膜中の炭酸銅を溶解するため、炭酸銅の溶解によって銅微粒子の表面に凹凸を形成できる。その結果、銅微粒子の比表面積が増大し、銅微粒子の反応活性が上がるため、低温の温度域でも焼結可能となる。また、旋回流Eによって微粒子の粒子径を制御することで銅微粒子の粒子径を任意に調整できるため、ペーストにしたときの分散性が充分である銅微粒子が得やすくなる。
【0068】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されない。また、本発明は特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が加えられてよい。
【0069】
<実施例>
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0070】
(銅微粒子の表層に含まれる炭酸銅及び亜酸化銅の含有量)
XPS分析装置(ULVAC-PHI社製「PHI Quantum2000」)を使用して、XPS分析により測定した。
【0071】
(焼結温度)
焼結体の比抵抗を4端子法により測定し、比抵抗が100μΩ・cm以下となったときの温度を焼結温度とした。
【0072】
(実施例1~3)
表1に示すように燃料ガスの燃料種を変更することで、燃料ガス中の炭素量を変更し、図1に示す製造装置10を使用して微粒子を製造した。以下に具体的条件を示す。
原料粉体として、銅化合物の一例である酸化銅(II)の粉体(平均粒子径:10μm)を用いた。
支燃性ガスとして、酸素ガスを使用した。
燃焼条件としては、供給燃料低位発熱量を84108(kJ/h)とし、酸素比を0.9とし、原料粉体の供給速度を0.36(kg/h)とした。
【0073】
【表1】
【0074】
可燃性ガスとともに酸化銅(II)の粉体を炉17に供給し、バーナ13で形成される還元性火炎中で酸化銅(II)の粉体を過熱して、蒸発させて還元して、サブミクロン以下の微粒子を炉17の内部で生成した。
次に、得られた微粒子と純水とを混合して接触させた。ここで、微粒子濃度が50g/Lとなるように純水を加え、超音波バスを用いて、混合した。
微粒子と純水とを含む混合液を、吸引ろ過により固液分離し、得られた銅微粒子を常温、窒素雰囲気中で乾燥して水を除去し、実施例1~3の銅微粒子を得た。
実施例1~3の銅微粒子に、銅微粒子の濃度が63質量%となるように2-プロパノールを添加し、混練器(あわとり練太郎)で2000rpm、1minの条件で攪拌し、ペースト状の各例の導電性材料を得た。この導電性材料をガラス基板に塗布し、窒素に水素を3体積%添加した還元性雰囲気において、一定温度で1時間焼成し、焼結体を得た。
【0075】
(比較例1)
微粒子と純水とを接触させず、実施例1と同条件で得られる微粒子をそのまま比較例1の銅微粒子とした。
【0076】
(実施例4~7)
実施例4~7においては、まず、実施例1と同様の条件で微粒子を製造した。
次いで、二酸化炭素雰囲気中で微粒子に熱処理を施した。実施例4~7では、二酸化炭素ガス雰囲気中において、処理温度80℃で、表2に示す処理時間で熱処理した。次いで、実施例1~3と同様にして純水と接触させたのち、水を除去し、実施例4~7の銅微粒子を得た。
実施例4~7の銅微粒子を用いた以外は、実施例1~3と同様にして焼結体を製造した。
【0077】
(比較例2)
比較例2においては、まず、実施例1と同様の条件で微粒子を製造した。
次いで、二酸化炭素雰囲気中で微粒子に熱処理を施した。比較例2では二酸化炭素ガス雰囲気中において、処理温度80℃で、100時間、熱処理した。次いで、実施例1~3と同様にして純水と接触させたのち、水を除去し、比較例2の銅微粒子を得た。
比較例2では、焼結体の製造において、2-プロパノールを添加した銅微粒子がペースト状にならず、焼結体の製造が困難であった。
【0078】
【表2】
【0079】
図5に実施例1で得られた銅微粒子のSEM写真を示す。図6に比較例1で得られた銅微粒子のSEM写真を示す。
図5に示すように、実施例1で得られた銅微粒子にあっては、銅微粒子の表層に凹凸の形成が確認された。また、銅微粒子の球形が維持されている。そのため、実施例1ではペーストにしたときの分散性が充分であり、かつ、低温で焼結可能な銅微粒子が得られたと考えられる。
図6に示すように、比較例1の銅微粒子にあっては、表層が滑らかな粒子が観察された。また、比較例1ではペーストにしたときの分散性は良好であるが、表面の活性が不十分であり、150℃以下の低温域で焼結が困難であったと考えられる。
【0080】
表1、表2に示すように、銅微粒子のDb/Dvが本発明で規定する範囲内である実施例1~7では、ペースト状の導電性材料が得られ、従来品より低い温度域(120~150℃)で焼結可能であることが判った。
表1の結果から、燃料中の炭素濃度を調整することで、銅微粒子の炭素濃度(炭酸濃度)が制御可能でき、Db/Dvを所定の範囲内に制御できることを確認できた。純水処理前の微粒子の炭素濃度を0~1.5%の範囲で調整することで、純水処理後の銅微粒子において、分散性が良好であり、焼結温度を制御できることが判明した。
【0081】
図7に実施例1~7の純水処理前の微粒子の炭素濃度と純水処理後の銅微粒子のDb/Dvの関係を示す。純水処理前の微粒子の炭素濃度が高ければ高いほど、純水処理後の銅微粒子のDb/Dvは小さくなることが判明した。
一方、純水処理前の微粒子の炭素濃度が1.5%を超えると、比較例2のようにDb/Dvが0.5以下となり、分散性が低下し、ペースト化が困難であった。
比較例2では、熱処理による反応が過度に進行したと考えられる。そのため、純水との接触による微粒子の表層の炭酸銅の溶解により、得られた銅微粒子の球形が損なわれ、分散性が低下したと考えられる。
【符号の説明】
【0082】
1…第1の処理部、2…第2の処理部、10…製造装置、11…燃料ガス供給源、12…原料フィーダー、13…バーナ、13A…中心軸、15…支燃性ガス供給源、17…炉、17a…外面、17A…側壁、17B…取り出し口、17-1…上部、17-2…下部、18…不活性ガス供給部、19…不活性ガス供給源、20…冷却ガス供給源、21…バグフィルター、21A…ガス排出部、21B…微粒子回収部、22…ブロワー、23…輸送経路、31…原料供給管、31a…先端面、32…原料供給路、34…原料噴出孔、36…一次支燃性ガス供給管、36A…突出部、36B…フロントプレート部、37…一次支燃性ガス供給路、39…一次支燃性ガス噴出孔、40…混合器、41…固液分離機、42…冷却ジャケット管、43…二次支燃性ガス供給路、45…二次支燃性ガス噴出孔、C…燃焼室、D…内径、E…旋回流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7