(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】熱伝導性複合テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 183/00 20060101AFI20220912BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20220912BHJP
C08K 5/541 20060101ALI20220912BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20220912BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20220912BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220912BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20220912BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220912BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220912BHJP
【FI】
C09J183/00
C08L83/05
C08K5/541
C08K5/14
C08K3/08
C08K3/22
C08K3/28
C08L83/04
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2019082836
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崇則
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晃洋
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204600(JP,A)
【文献】特開2018-193491(JP,A)
【文献】特開2014-034652(JP,A)
【文献】特開2014-062220(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185296(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/070351(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00ー201/10
C08L 83/04
C08L 83/05
C08K 5/541
C08K 5/14
C08K 3/08
C08K 3/22
C08K 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の熱伝導性接着層と、該第一熱伝導性接着層の一面に積層する補強層(A)と、該補強層(A)の上記一面と反対側の面に積層する第二の熱伝導性接着層とを有する熱伝導性複合体であって、
前記第一及び第二の熱伝導性接着層は互いに独立に、下記(a)~(e)成分を含有するシリコーン組成物から成ることを特徴とする、前記熱伝導性複合体
(a)直鎖または分岐状オルガノポリシロキサン:100質量部
(b)熱伝導性充填剤:1,000~3,000質量部
(c)シリコーンレジン:100~500質量部
(d)オルガノハイドロジェンポリシロキサン:1~10質量部、及び
(e)有機過酸化物:0.5~5質量部。
【請求項2】
(c)シリコーンレジンが、R
3SiO
1/2単位(Rは脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基を示す)とSiO
4/2単位とを含み、R
3SiO
1/2単位とSiO
4/2単位とのモル比が0.1~3.0である、請求項1記載の熱伝導性複合体。
【請求項3】
前記シリコーン組成物が更に(f)下記(f-1)成分及び(f-2)成分から選ばれる少なくとも1種を1~20質量部含有する、請求項1または2記載の熱伝導性複合体
(f-1)下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物
R
2
aR
3
bSi(OR
4)
4-a-b (1)
(式中、R
2は、互いに独立に、炭素原子数6~15のアルキル基であり、R
3は、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1~10の1価炭化水素基であり、R
4は、互いに独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、aは1~3の整数であり、bは0~2の整数であり、但しa+bは1~3の整数である)
(f-2)下記一般式(2)で表されるジメチルポリシロキサン
【化1】
(式中、R
5は、互いに独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは5~100の整数である)。
【請求項4】
前記補強層(A)が、合成樹脂またはガラスクロスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝導性複合体。
【請求項5】
前記合成樹脂が芳香族ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、及びフッ素系ポリマーから選ばれる1種以上である、請求項4記載の熱伝導性複合体。
【請求項6】
厚み150~500μmを有する、請求項1~5のいずれか1項記載の熱伝導性複合体。
【請求項7】
(b)熱伝導性充填剤が、金属、金属酸化物、及び金属窒化物からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝導性複合体。
【請求項8】
前記第一又は第二の熱伝導性接着層の、補強層(A)が接合していない面に、離型剤で表面処理された基材の離型処理面が更に積層されている、請求項1~7のいずれか1項記載の熱伝導性複合体。
【請求項9】
前記離型剤が、フッ素置換基が主鎖に結合しているフッ素変性シリコーンである、請求項8記載の熱伝導性複合体。
【請求項10】
前記第一及び第二の熱伝導性接着層を室温圧着もしくは熱圧着により補強層(A)の両面に積層して前記熱伝導性複合体を得る工程を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱伝導性複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特には発熱性素子の冷却のために、発熱性素子の熱境界面とヒートシンク又は回路基板などの放熱部材との間に介装し得る熱伝導性硬化物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバーターや、電源などの電子機器に使用されるトランジスタやダイオード、照明やディスプレイの光源となるLED素子などの半導体は、高性能化・高速化・小型化・高集積化に伴い、それ自身が大量の熱を発生するようになり、その熱による機器の温度上昇は動作不良、破壊を引き起こす。そのため、動作中の半導体の温度上昇を抑制するための多くの熱放散方法及びそれに使用する熱放散部材が提案されている。
【0003】
従来、電子機器等においては、動作中の半導体の温度上昇を抑えるために、アルミニウムや銅等熱伝導率の高い金属板を用いたヒートシンクや筐体などの冷却部材に熱伝導性材料を介して半導体から発生する熱を伝え雰囲気との温度差により外部に放熱させていた。熱伝導性材料としては絶縁性を有する熱伝導性シートが多く用いられている。そして冷却部材と半導体を固定する場合、ビスやクリップなどが用いられている。またその間に介在する熱伝導性シートもビスやクリップによる押圧で固定されている。しかし、ビスやクリップを用いる固定方法はビスやクリップを準備し、筐体、半導体素子、基板などにビス止めのための穴を開けて、固定するという工程を経なければならず、部品点数、工程ともに増えてしまい、製造効率を考えた場合、非常に不利である。またビスやクリップといった部品のせいで電子機器自体の小型化や薄型化が阻まれてしまい、製品設計上でも非常に不利である。
【0004】
そこで、冷却部材と半導体との間に介在させる熱伝導性シートに粘着性を付与し、筐体と半導体素子を固定する方法が考えられる。具体的には熱伝導性シートの両面に粘着剤を塗布して粘着剤付き熱伝導性シートにする方法があるが、粘着剤自体には熱伝導性がないため、粘着剤付き熱伝導性シートは熱の伝わりが著しく悪くなる。そこで、例えば特許文献1、2、及び3に記載されるような、粘着材に熱伝導性充填材を充填した熱伝導性粘着テープが知られている。また、特許文献4には、その耐熱性、耐寒性、及び耐久性から、シリコーンをポリマーとして用いた熱伝導性シリコーン粘着テープが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-34652号公報
【文献】特開2014-62220号公報
【文献】特開2002-121529号公報
【文献】特許第5283346号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし従来の粘着テープは一般的な接着材料と比較して接着強度に乏しく、ネジレス化の面で課題があった。また単層の粘着テープである場合、作業性や絶縁性、強度の面でも改良の余地があった。また、シート状ではない加熱硬化型の接着剤によっては、塗布時の作業工程が頻雑になるため、粘着(接着)シートよりも作業性に劣り、ボイドの混入するリスクもあることから絶縁を担保する上でも課題があった。
【0007】
従って、本発明は、シート状であるため取り扱い性が良好であり、さらに強度及び絶縁性に優れ、かつ、自身を素子又は放熱部材に容易に固定することができ、さらに放熱部材との接着強度に優れる、熱伝導性複合テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、シリコーン樹脂及び熱伝導性充填剤を含有し、接着性を有する熱伝導性接着層を外層として補強層の両面に積層してなることを特徴とする熱伝導性複合テープであり、前記熱伝導性接着層を与えるシリコーン組成物に含まれるシリコーン樹脂の組成及び熱伝導性充填剤の配合量を特定することにより、強度及び絶縁性、並びに取り扱い性が良好であり、かつ発熱性素子と良好な接着強度を有する接着層を与えることを見出し、本発明を成すに至った。
【0009】
また、付加反応型接着剤組成物を用いると、接着層の製造後、補強層と積層する間に、室温下でも経時で硬化が進行する恐れがあり、複合テープの製造条件が安定しない。さらに、複合テープの製造後も、室温で接着層の硬さが上がるおそれがあり、保管安定性に劣るおそれがある。そこで本発明では、過酸化物硬化型のシリコーン組成物とすることにより、これらの問題点も解決することを目指した。
【0010】
従って、本発明は、第一の熱伝導性接着層と、該第一熱伝導性接着層の一面に積層する補強層(A)と、該補強層(A)の上記一面と反対側の面に積層する第二の熱伝導性接着層とを有する熱伝導性複合体であって、
前記第一及び第二の熱伝導性接着層は互いに独立に、下記(a)~(e)成分を含有するシリコーン組成物から成ることを特徴とする、前記熱伝導性複合体を提供する。
(a)直鎖または分岐状オルガノポリシロキサン:100質量部
(b)熱伝導性充填剤:1,000~3,000質量部
(c)シリコーンレジン:100~500質量部
(d)オルガノハイドロジェンポリシロキサン:1~10質量部、及び
(e)有機過酸化物:0.5~5質量部。
【0011】
また本発明は、前記シリコーン組成物が更に(f)下記(f-1)成分及び(f-2)成分から選ばれる少なくとも1種を1~20質量部含有する、前記熱伝導性複合体を提供する。
(f-1)下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物
R
2
aR
3
bSi(OR
4)
4-a-b (1)
(式中、R
2は、互いに独立に、炭素原子数6~15のアルキル基であり、R
3は、互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1~10の1価炭化水素基であり、R
4は、互いに独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、aは1~3の整数であり、bは0~2の整数であり、但しa+bは1~3の整数である)
(f-2)下記一般式(2)で表されるジメチルポリシロキサン
【化1】
(式中、R
5は、互いに独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは5~100の整数である)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱伝導性複合テープは、強度、取り扱い性、及び絶縁性が良好であり、また発熱性素子や放熱部材に対して容易に転写できる。また、熱伝導性接着層は、発熱素子と放熱部材の間に好ましい熱伝導性を与え、且つ、良好な接着強度を発現することで、部材間の固定が可能となる。本発明の熱伝導性複合テープは、発熱性素子と放熱部材との間に介在して発熱性素子から発生する熱を放熱部材に伝え、かつ固定を行う熱伝導部材として非常に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[(A)補強層]
本発明の複合シートにおける補強層は、ガラスクロス、又は、耐熱性及び電気絶縁性に優れると共に柔軟で機械的強度が高い合成樹脂フィルム層であるのが好ましく、公知の基材から適宜選択して用いることができる。
【0014】
ガラスクロスは、厚み10μm以上50μm以下を有するのがよく、重量45g/m2以下が好ましい。さらに好ましくは20μm以上40μm以下であり、重量30g/m2以下が好ましい。ガラスクロスは熱伝導率が比較的低いので熱伝導を考慮すると薄い方が好ましい。しかし薄くなりすぎると強度が低下してしまい破れやすくなる、または成型性に乏しくなるため、上述した範囲の厚みであるのが好ましい。ガラスクロスは、後述する熱伝導性接着層を形成するシリコーン組成物により予め目止めされていてもよい。または予め目止めせずに、直接熱伝導性接着層を張り付けてもよい。後者の場合、熱圧着を行うことで、クロスの目が熱伝導性接着層により埋まりやすくなるため好ましい。
【0015】
合成樹脂フィルム層は、通常2~30μmの厚さを有し、好ましくは5~20μmの範囲である。合成樹脂フィルム層が厚すぎると、本発明の複合シートの熱伝導性に支障が生じることとなる。逆に、薄すぎると補強層として発揮すべき強度が不足し、また、耐電圧特性が劣化して電気絶縁性能が不十分となる場合がある。更に、該合成樹脂フィルム層は、耐電圧特性を低下させるような孔がないフィルム層であるのが好ましい。
【0016】
前記合成樹脂としては、例えば、芳香族ポリイミド;ポリアミド;ポリアミドイミド;ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等の、フッ素系ポリマーを挙げることができる。合成樹脂として上記フッ素系ポリマーを用いる場合には、使用するフィルムの表面に対し、金属Na/ナフタレン系の処理液を用いて化学エッチング処理を施すことが、接着性を向上させる観点から好ましい。
【0017】
前記合成樹脂フィルムは、熱変形によって機械的強度の低下が生じないように、融点200℃以上、好ましくは250℃以上を有する耐熱性フィルムであることが特に好ましい。融点250℃以上の耐熱性を有する合成樹脂フィルムとしては、例えば、芳香族ポリイミド系フィルムであるカプトン(登録商標)MT(商品名、東レデュポン(株)製)が挙げられる。
【0018】
[(B)熱伝導性接着層]
本発明の熱伝導性シリコーン複合シートは、上記補強層(A)の両側に第一の熱伝導性接着層と第二の熱伝導性接着層とを有する。第一の熱伝導性接着層と第二の熱伝導性接着層とは、組成が同一であっても異なっても良い。該熱伝導性接着層は、下記(a)成分~(e)成分を含むシリコーン組成物を乾燥させて薄層を形成することで得られる。
(a)オルガノポリシロキサン:100質量部
(b)熱伝導性充填剤:1,000~3,000質量部
(c)シリコーンレジン:100~500質量部
(d)オルガノハイドロジェンポリシロキサン:1~10質量部
(e)有機過酸化物:0.5~5質量部
【0019】
以下、各成分について詳細に説明する。
(a)オルガノポリシロキサン
(a)成分は直鎖又は分岐状オルガノポリシロキサンであり、下記平均組成式(3)で示されるのが好ましい。
R1
nSiO(4-n)/2 (3)
(式中、R1は互いに独立に、非置換又は置換の1価炭化水素基であり、nは1.98~2.02の正数である)
【0020】
上記式中、R1は互いに独立に、非置換又は置換の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~8の、非置換又は置換の1価炭化水素基である。該1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。より好ましくは、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基であり、R1の50モル%以上、特に80モル%以上がメチル基であることが好ましい。
また、好ましくは、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びヘキセニル基等のアルケニル基を分子中に2個以上、より好ましくは2~20となる個数、より好ましくは2~10となる個数で有しているのがよい。
【0021】
(a)オルガノポリシロキサンは、直鎖状であることが好ましいが、熱伝導性接着層としてのゴム強度を損なわない範囲で多少の分岐を有していてもよく、また分子構造や重合度の異なる2種類以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。さらに、上記オルガノポリシロキサンは平均重合度100~20,000、特に3,000~10,000を有することが好ましい。なお、平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均重合度として求めることができる。
【0022】
(b)熱伝導性充填剤
(b)熱伝導性充填剤は、熱伝導性組成物に含まれる公知の充填剤であってよいが、好ましくは、金属、金属酸化物、及び金属窒化物からなる群から選ばれる1種以上である。非磁性の銅、及びアルミニウム等の金属、アルミナ、シリカ、マグネシア、ベンガラ、ベリリア、チタニア、及びジルコニア等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及び窒化ホウ素等の金属窒化物、人工ダイヤモンドあるいは炭化ケイ素等、公知の熱伝導性充填剤であればよい。該熱伝導性充填剤は、平均粒径0.1~50μm、好ましくは0.5~40μm、更に好ましくは1~30μmを有するのがよい。該熱伝導性充填剤は、1種単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。また、平均粒径の異なる粒子を2種以上用いてもよい。なお、本発明において、平均粒径は体積平均粒径であり、マイクロトラック粒度分布測定装置MT3300EX(日機装株式会社)による測定値である。
【0023】
熱伝導性充填剤の配合量は、(a)成分100質量部に対して1,000~3,000質量部、好ましくは1,500~2,500質量部である。熱伝導性充填剤の配合量が多すぎるとテープのタック感が損なわれ、作業性が低下する。少なすぎると所望の熱伝導性を得ることができない。
【0024】
(c)シリコーンレジン
(c)シリコーンレジンは、本シリコーン組成物(即ち、熱伝導性接着層)の硬化物に接着性を付与するために添加される。
【0025】
(c)成分はR3SiO1/2単位(M単位)と、SiO4/2単位(Q単位)との共重合体であり、M単位とQ単位の比(モル比)がM/Q=0.5~3.0、好ましくは0.7~1.4、更に好ましくは0.9~1.2であることを特徴とする。M/Qが0.5未満の場合、あるいはM/Qが3.0を超える場合、所望の粘着力が得られなくなる。
【0026】
上記M単位において、Rは、互いに独立に、脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、炭素原子数1~10、好ましくは炭素原子数1~6の非置換又は置換の一価炭化水素基であるのがよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2-ブロモエチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。中でも、炭素原子数1~3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及びシアノエチル基等がより好ましい。また、Rは上述したR1と同一であっても異なっていてもよいが、R1と同じ置換基であることが望ましい。また、Rは、上述したR1と同様に、耐溶剤性などの特殊な特性を要求されない限り、コスト、その入手のし易さ、化学的安定性、環境負荷などの理由により、全てメチル基であることが最も好ましい。該シリコーンレジンは、60%トルエン溶液の25℃における粘度が3~20mPa・s、好ましくは6~12mPa・sであればよい。粘度は回転粘度計により測定することができる。
【0027】
(c)成分の量は、(a)成分100質量部に対して、100~500質量部、好ましくは150~400質量部、更に好ましくは200~350質量部である。(c)成分の添加量が、前記下限値未満である場合、熱伝導性複合テープが所望の接着強度を得ることができない。また前記上限値を超える場合は、テープのタック感が非常に強くなり、テープ本体を基材から剥がす際の作業性が低下する。尚、(c)成分そのものは室温で固体又は粘稠な液体であり、溶剤に溶解した状態で使用することも可能である。その場合、組成物への添加量は、溶剤分を除いた樹脂分量が上記範囲を満たすように調整されればよい。
【0028】
(d)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(d)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基、すなわちヒドロシリル基)を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、被着体界面との良好な濡れ性を発現させ、接着強度を高めるために機能する。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは公知の化合物であればよいが、分子中にケイ素原子に結合した水酸基(即ち、シラノール基)を実質的に含有しないものであるのがよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(4)で表すことができる。
R8
aHbSiO(4-a-b)/2 (4)
【0030】
上記式(4)中、R8は互いに独立に、好ましくは炭素原子数1~10、より好ましくは炭素原子数1~8の、非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。但し、アルケニル基等の脂肪族不飽和結合を有さない。非置換もしくは置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。中でも、アルキル基又はアリール基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、aは0.7~2.1の正数であり、bは0.001~1.0の正数であり、かつa+bが0.8~3.0の範囲を満たす数である。好ましくは、aは1.0~2.0の正数であり、bは0.01~1.0の正数であり、且つa+bが1.5~2.5の範囲を満たす数である。
【0031】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個(通常、2~200個)、好ましくは3個以上(例えば、3~100個)、より好ましくは4~50個のSiH基を有する。該SiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐鎖状、及び三次元網状構造のいずれであってもよい。1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、通常2~300個、好ましくは3~150個、より好ましくは4~100個である。なお、重合度は、例えば、トルエンを展開溶媒としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(数平均分子量)として求めることができる。
【0032】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、及び、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、上記各化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換されたもの、式:R2
3SiO1/2(式中のR2はアルケニル基以外の1価炭化水素基であり、前記R1と同様の基である。)で示されるシロキサン単位と式:R2
2HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R2
2HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R2HSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:R2SiO3/2で示されるシロキサン単位もしくは式:HSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体が挙げられる。これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは2種以上を併用してもよい。
【0033】
(d)成分の配合量は、(a)成分100質量部に対して1~10質量部であり、好ましくは2~9質量部である。(d)成分の量が下限値未満であると、被着体に対する接着性が低下する。また、上限値超では、接着層が脆弱になるため接着強度が低下する。
【0034】
(e)有機過酸化物
(e)成分は、特定の条件下で分解して遊離ラジカルを生じる有機過酸化物であり、高温下で熱伝導性接着層の硬化を促進し、接着強度を高めるために機能する。有機過酸化物は従来公知のものでよく、特に制限されるものでなく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジスクシン酸パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネートが挙げられる。特には、分解温度が比較的高いパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステルの使用が、取扱い性や保存性の観点から好ましい。またこれらの有機過酸化物は、任意の有機溶剤や炭化水素、流動パラフィンや不活性固体等で希釈されたものを用いてもよい。
【0035】
(e)成分の配合量は、(a)成分100質量部に対し0.5~5質量部であり、1~3質量部が好ましい。(e)成分の量が上記下限値未満であると、発熱素子と熱圧着した際に熱伝導性接着層の硬化が満足に進行せず接着強度が低下する。また上記上限値を超えると、熱圧着した際に、多量に発生する分解残渣によって接着層の強度が低下し、接着強度も低下する。
【0036】
(f)表面処理剤
上記シリコーン組成物はさらに(f)表面処理剤を含むことが好ましい。該(f)成分は組成物調製の際に、(b)熱伝導性充填材を(a)オルガノポリシロキサンから成るマトリックス中に均一に分散させるために機能する。該(f)成分は、下記(f-1)成分で表されるアルコキシシラン化合物及び(f-2)成分で表される分子鎖片末端トリアルコキシ基含有ジメチルポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種である。(f-1)成分と(f-2)成分はいずれか一方でも併用であってもよい。
【0037】
(f-1)下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン
R
2
aR
3
bSi(OR
4)
4-a-b (1)
(式中、R
2は互いに独立に、炭素原子数6~15のアルキル基であり、R
3は互いに独立に、非置換または置換の炭素原子数1~10の1価炭化水素基であり、R
4は互いに独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、aは1~3の整数であり、bは0~2の整数であり、但しa+bは1~3の整数である)
(f-2)下記一般式(2)で表されるジメチルポリシロキサン
【化2】
(式中、R
5は互いに独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは5~100の整数である)
【0038】
上記一般式(1)において、R2で表されるアルキル基としては、例えばヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、及びテトラデシル基等が挙げられる。R2で表されるアルキル基の炭素原子数が6~15の範囲を満たすと、上述した(C)成分の濡れ性が十分向上し、取り扱い性がよく、組成物の低温特性が良好なものとなる。
【0039】
R3は、非置換または置換の、炭素数1~10の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数1~8であり、特に好ましくは炭素原子数1~6の1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、ならびにこれらの基に炭素原子が結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2-ブロモエチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1~3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基が挙げられる。
【0040】
R4及びR5は、互いに独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、好ましくは炭素数1~4のアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等が挙げられる。より好ましくは、メチル基である。
【0041】
(f)成分の量は、上記(a)成分100質量部に対して1~20質量部が好ましく、より好ましくは2~15質量部であり、さらに好ましくは3~10質量部である。(f)成分の添加量が1質量部未満の際は、(b)成分を(a)成分に充填することができず、また20質量部を超える場合には、複合テープとした際の接着強度が低下してしまう。
【0042】
上記シリコーン組成物には、上述した(a)~(f)成分の他に、熱伝導性充填剤の表面処理剤、着色のための顔料・染料、難燃性付与剤、その他機能を向上させるための様々な添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することが可能である。
【0043】
上記シリコーン組成物は、上記した(a)~(e)成分及び任意の(f)成分、並びにその他の成分を均一に混合して調整する。混合方法は従来公知の方法に従えばよい。好ましくは、(a)、(b)及び(c)成分、並びに任意の(f)成分を混合した後に、(d)成分及び(e)成分を混合するのがよい。該シリコーン組成物を基材(即ち、上述した補強層(A))の両面上に薄膜テープ状に塗工、成形し、乾燥させることにより、本発明の熱伝導性接着層を得ることができる。乾燥条件は、60~100℃で5~15分間、好ましくは、70℃~90℃で5~10分間である。乾燥条件が上記範囲外である場合、溶剤の残留により熱伝導性が低下したり、組成物の硬化が進行してしまうことにより、発熱素子に貼り付けて実装する際に、転写性の低下がみられる。熱伝導性接着層は未硬化状態のシリコーン組成物であり、放熱部材と発熱部材の間に実装される際に、発熱素子による熱で硬化すればよい。
【0044】
熱伝導性接着層の厚さは、好ましくは50~300μmであり、更に好ましくは75~200μmである。接着層の厚さが50μm未満では、テープの取り扱いが悪く、かつ接着力が低下してしまう。一方、接着層の厚さが300μmを超えると所望の熱伝導性が得られなくなる。また、塗工成形する際には、粘度調整のためにトルエンやキシレン等の溶剤を添加することも可能である。
【0045】
本発明の熱伝導性複合体は、さらに離型剤で表面処理された基材をセパレーターフィルム(以下、離型処理フィルムということもある)として有することができる。即ち、熱伝導性接着層の補強層(A)と接合しない面上に前記基材の離型処理面を積層してもよい。当該離型処理フィルムを熱伝導性接着層に積層する工程は、熱伝導性接着層を補強層両面に積層した後に行ってもよいし、予め離型処理フィルムの離型処理面に予め積層した熱伝導性接着層の接着面、を補強層上に積層してもよい。接着面上にセパレーターフィルムを貼り合せることで、輸送、定尺カット等の取り扱いを容易にすることができる。この際、離型剤の処理量や種類、フィルムの材質を変えて、セパレーターフィルムの剥離力の軽重をつけることも可能である。
【0046】
該セパレータフィルムとしては、紙やPETフィルムの少なくとも一面にフッ素変性ジメチルシリコーン系ポリマーにて離型処理を施したものが好ましい。フッ素変性ジメチルシリコーン系ポリマーとしては、パーフロロアルキル基や、パーフロロポリエーテル基等のフッ素置換基が主鎖に結合しているフッ素変性ジメチルシリコーンオイル(以下、フッ素変性シリコーンという)を挙げることができる。上記パーフロロポリエーテル基は、下記式(5)~(7)で表すことができる。
【化3】
(pは1~5であり、qは3~10である)
【0047】
該フッ素変性シリコーンの市販品として、例えば、信越化学工業(株)製のX-70-201、X-70-258、X-41-3035などを使用することができる。基材上への成形方法は、バーコーター、ナイフコーター、コンマコーター、スピンコーターなどを用いて基材上に液状の材料を塗布すること等が挙げられるが、上記記載方法に限定されるものではない。
【0048】
〔熱伝導性複合体の製造方法〕
次に、本発明に係る熱伝導性複合体の製造方法についてさらに詳細に説明する。本発明の熱伝導性複合体の製造方法は、補強層(A)の両面に、上述した第一及び第二の熱伝導性接着層を、各々外層として、室温圧着もしくは熱圧着により積層するものである。積層方法は特に制限されるものでなく、従来公知の複合テープの製造方法に従い適宜行えばよい。
【0049】
室温圧着の場合、例えば、補強層(A)の両面に、予め上記セパレーターフィルム上に形成された熱伝導性接着層を転写すればよい。熱圧着の場合は、プレス治具を80~120℃に加熱して同様に圧着転写する。圧着はプレス圧着の他、ロール圧着等を用いてもよい。また、熱伝導性接着層の組成物を溶剤により希釈したものを補強層(A)の両面に塗布し、乾燥させることで、熱伝導性複合体を製造してもよい。
【0050】
また、ガラスクロスを補強層とする場合は、予め上述したシリコーン組成物によりガラスクロスを目止めしてもよい。シリコーン組成物をガラスクロスに塗布する際、乾燥炉、加熱炉および巻き取り装置を備えたコンマコーター、ナイフコーター、キスコーター等のコーティング装置を用いて、連続的にガラスクロスに塗布した後、溶剤等を乾燥・蒸散させた後に、100~180℃、好ましくは120~150℃程度に、2~10分間程加熱硬化することにより、シリコーン組成物で目止めされたガラスクロスを得ることができる。
【0051】
更には、目止めしていないガラスクロスを用い、上記セパレーターフィルム上に形成した熱伝導性接着層を転写させることで、熱伝導性接着層を積層すると同時に目止めをしてもよい。その際は、プレス治具を80~120℃に加熱して転写させる方が好ましい。圧着はプレス圧着の他、ロール圧着等を用いてもよい。転写温度が80℃より低い場合、熱伝導性接着層がガラスクロスに対してうまく密着せず、クロスの目が埋まらないことで絶縁性や熱伝導性の低下がみられる。また、120℃を超える場合、熱伝導性接着層の硬化も進行しやすく、発熱素子に貼り付けて実装する際に接着力の低下が生じやすい。熱伝導性複合体全体の厚さは150~500μmであるのがよく、好ましくは200~400μmである。
【0052】
本発明の熱伝導性複合体は、薄いテープ又はシート状であるにもかかわらず容易に所望の箇所に配置することができ、優れた熱伝導特性を発揮することができる。また、上述したセパレーターフィルムを有することにより、一方のセパレーターフィルムを剥離した後、発熱性電子部品又は放熱部材に貼り付け、その後、残りのセパレーターフィルムを剥離して冷却部材等に貼り合せることにより、冷却部材と発熱性電子部品又は放熱部材との間に介在させることができる。さらには、補強層(A)を有することで絶縁破壊電圧や強度に優れる両面接着テープとなる。熱伝導性接着層を両面に有することで、発熱素子による発熱もしくは、実施時に加熱圧着を施すことにより、部材間に良好な接着性をもたらし、固定が可能となる。貼り付け後の加熱処理については、100℃~170℃で5分~60分、好ましくは120℃~150℃で10分~30分である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
下記実施例および比較例に用いられた補強層(A)、および第一及び第二の熱伝導性接着層(B)を構成する(a)~(f)成分は以下の通りである。
【0054】
[補強層(A)]
(X)ガラスクロス:ユニチカ製生機クロス H28F103 30μm,28g/m2
(Y)ポリイミド:カプトン製 30EN 7.5μm
【0055】
[熱伝導性接着層(B)]
(a)成分:平均重合度8000を有し、両末端にジメチルビニル基を有するジメチルポリシロキサン生ゴム
(b)成分:
(b-1)体積平均粒径:1μmを有する粒状アルミナ
(b-2)体積平均粒径:10μmを有する球状アルミナ
(b-3)体積平均粒径:15μmを有する粒状窒化ホウ素
(b-4)体積平均粒径:30μmを有する球状アルミナ
(c)成分:
MQシリコーンレジンのトルエン溶液(不揮発分60%、25℃における粘度8mPa・s、M/Q(モル比)=0.95であり、M単位のケイ素原子に結合する置換基は全てメチル基である)
(d)成分:下記式で表される、環状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化4】
(e)成分:下記式で表される、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン
【化5】
(f)成分:(f-2)平均重合度30を有し、片末端にトリメトキシシリル基を有するジメチルポリシロキサン
【0056】
上記(a)、(b)、(c)、及び(f)成分を下記表1又は2に記載の配合量にて品川式万能撹拌機に仕込み、60分間混合した。次いで、(d)及び(e)成分を下記表1又は2に記載の配合量にて添加し、均一に混合することで均一な熱伝導性シリコーン組成物を得た。
【0057】
[熱伝導性接着層の成型]
上記で得た熱伝導性シリコーン組成物に対して、トルエンを適量添加した。該トルエン溶液をフッ素処理PETフィルム(セパレーターフィルム)上に塗工し、70℃でトルエンを揮発させ、厚さ100μmを有する熱伝導性接着層を形成した。尚、厚さ100μmは、熱伝導性接着層のみの厚さであり、セパレーターフィルムの厚みは含まない。尚、フッ素処理PETフィルム(セパレーターフィルム)の表面処理に用いた離型剤はX-41-3035(信越化学工業株式会社製)である。
【0058】
[熱伝導性複合体(テープ)の成型]
上記で得た、セパレーターフィルムと熱伝導性接着層との積層体を二つ用いて、下記の方法で熱伝導性複合体を形成した。
ガラスクロス(補強層(X))を用いた複合体は、該ガラスクロスの両側に、上記セパレーターフィルム上に形成した熱伝導性接着層を100℃で圧着して熱伝導性複合体(テープ)とした。
ポリイミド(補強層(Y))を用いた複合体は、該ポリイミドの両側に、上記セパレーターフィルム上に形成した熱伝導性接着層を室温で圧着して熱伝導性複合体(テープ)とした。
熱伝導性複合体(テープ)全体の厚さは表1及び2に記載の通りである。該テープのサイズは200×300mmであった。
尚、実施例及び比較例において、第一及び第二の熱伝導性接着層の組成は同じであり、表1又は2に記載の通りである。
【0059】
[評価方法]
(1)転写性:放熱部材(アルミヒートシンク)に対して、熱伝導性複合体の接着層面を張り付けた際に、所望の密着性が得られるかを評価した。
片面のセパレーターフィルムを剥がし、接着層面をアルミヒートシンクに貼り付けた後に、もう片側のセパレーターフィルムを剥がす際に、貼り付けた接着層がヒートシンクからズレないで固定されるか否かで評価をした。ずれないで固定できていたものを○、ずれが生じたものを×として、表中に記載した。
(2)熱伝導率:両面のセパレーターフィルムを剥がした熱伝導性複合体をアルミプレートに挟み込み、室温/20psi/1h圧着後、レーザーフラッシュ法で熱抵抗を測定した。厚みと熱抵抗の関係から熱伝導率を算出した。
(3)対アルミせん断接着強度:表に記載の厚みを有する熱伝導性粘着体を10x10mm角のアルミプレートに挟み込み、120℃/20psi/1h圧着後、室温下での剥離せん断応力を測定した。
(4)絶縁破壊電圧:JIS K6249にもとづき、両面のセパレーターフィルムを剥がした熱伝導性複合体の絶縁破壊電圧を測定した。
(5)引っぱり強度:JIS K6249にもとづき、オートグラフで、両面のセパレーターフィルムを剥がした熱伝導性複合体の引っぱり強度を測定した。
【0060】
【0061】
【0062】
表2に示す通り、(d)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの量が少なすぎると、被着体界面との濡れ性が低下し、所望の接着力を得る事ができない(比較例1)。(d)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの量が多すぎると、複合テープの強度が低下し、所望の接着力を得る事ができない(比較例2)。(c)シリコーンレジンの量が少ないと、複合テープの凝集力が不足し、転写性に難がある(比較例3)。(c)シリコーンレジンの量が多すぎると、複合テープをセパレーターフィルムから剥がしにくく、転写性に難がある(比較例4)。(e)有機過酸化物の量が少ないと、複合テープを加熱圧着する際に硬化が満足に進行せず、接着強度が低下する(比較例5)。(e)成分である有機過酸化物の量が多いと、分解残渣が多量に発生することで複合テープの強度が低下し、所望の接着力を得る事ができない(比較例6)。補強層を用いずに、熱伝導性接着層を単層として使用すると、機械的強度や絶縁性の面で難があった(比較例7)。また、(b)熱伝導性充填材の量が少なすぎると熱伝導性が不足してしまう(比較例8)。
これに対し、表1に示す通り、本発明の熱伝導性接着層を有する複合テープは、転写性及び取扱い性に優れ、かつ熱伝導率および接着強度にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の熱伝導性複合体は、取り扱い性、機械的強度、絶縁性、及び熱伝導性に優れ、部材へ容易に転写することができ、かつ発熱部材に対して良好な接着強度を与える。従って、半導体装置や電子機器等において発熱性素子と放熱部材との間に介在させる熱伝導性接着部材(熱伝導性複合テープ又はシート等)として好適である。