(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】ケイ素含有膜の堆積のための組成物及びそれを用いた方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20220912BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20220912BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220912BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/31 C
H01L21/318 C
C23C16/42
(21)【出願番号】P 2021028584
(22)【出願日】2021-02-25
(62)【分割の表示】P 2018551904の分割
【原出願日】2016-12-21
【審査請求日】2021-03-12
(32)【優先日】2015-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】チエンホン リー
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ゴードン リッジウェイ
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ニコラス バーティス
(72)【発明者】
【氏名】マンチャオ シアォ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ホー
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0142585(US,A1)
【文献】特表2013-515355(JP,A)
【文献】特表2010-507259(JP,A)
【文献】特開2003-082464(JP,A)
【文献】特表2011-504651(JP,A)
【文献】特表2010-516723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/318
H01L 21/31
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性化学気相堆積を使用して、少なくとも、表面特徴部を含む基材上にケイ素含有膜を堆積するための組成物であって、
以下の式II:
【化1】
から選択され、式中、Rが分枝状C
4~C
10アルキル基から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4が、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状C
1~C
10アルキル基、分枝状C
3~C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルキニル基、C
6~C
10アリール基、電子求引基、C
3~C
10環状アルキル基、及びハライド原子から選択される化合物を含
み、
前記膜が、前記表面特徴部中に又は前記表面特徴部上にボイドを含まない、組成物。
【請求項2】
エーテル、有機アミン、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素、及び3級アミノエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの溶媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
オクタン、エチルシクロヘキサン、シクロオクタン、及びトルエンからなる群より選択される少なくとも1つの溶媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
流動性化学気相堆積を使用して、酸化ケイ素及び炭素ドープ酸化ケイ素の膜から選択される膜を堆積するための方法であって、
反応器中に表面特徴部を含む基材を設置する工程であって、前記基材が-20~400℃の範囲の1つ又は複数の温度で維持され、前記反応器の圧力が100torr以下で維持される工程と、
以下の式II:
【化2】
からなる群より選択され、式中、Rが分枝状C
4~C
10アルキル基から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4が、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状C
1~C
10アルキル基、分枝状C
3~C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルキニル基、C
6~C
10アリール基、電子求引基、C
3~C
10環状アルキル基、及びハライド原子から選択される少なくとも1つの化合物を導入する工程であって、前記少なくとも1つの化合物が、前記表面特徴部の少なくとも一部を覆う種を形成する工程と、
500~1000℃の範囲の1つ又は複数の温度で、前記種を酸素源で処理して、前記表面特徴部の少なくとも一部上に前記膜を形成する工程とを含
み、
前記膜が、前記表面特徴部中に又は前記表面特徴部上にボイドを含まない、方法。
【請求項5】
前記酸素源が、水(H
2O)、酸素(O
2)、酸素プラズマ、オゾン(O
3)、NO、N
2O、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO
2)、N
2Oプラズマ、一酸化炭素(CO)プラズマ、二酸化炭素(CO
2)プラズマ、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
流動性化学気相堆積を使用して、堆積プロセスにおいて、酸化ケイ素及び炭素ドープ酸化ケイ素の膜から選択される膜を堆積するための方法であって、
-20~400℃の範囲の1つ又は複数の温度で維持された反応器中に、表面特徴部を有する基材を設置する工程と、
以下の式II:
【化3】
からなる群より選択され、式中、Rが分枝状C
4~C
10アルキル基から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4が、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状C
1~C
10アルキル基、分枝状C
3~C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルキニル基、C
6~C
10アリール基、電子求引基、C
4~C
10アリール基、及びハライド原子から選択される少なくとも1つの化合物と、窒素源とを前記反応器中に導入する工程であって、前記少なくとも1つの化合物が前記窒素源と反応して、前記表面特徴部の少なくとも一部上に窒化物含有膜を形成する工程と、
100~1000℃の範囲の1つ又は複数の温度で、前記基材を酸素源で処理して、前記表面特徴部の少なくとも一部上に酸化ケイ素膜を形成して、前記膜を提供する工程とを含
み、
前記膜が、前記表面特徴部中に又は前記表面特徴部上にボイドを含まない、方法。
【請求項7】
前記窒素源が、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素プラズマ、窒素及び水素を含むプラズマ、窒素及びヘリウムを含むプラズマ、窒素及びアルゴンを含むプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア及びヘリウムを含むプラズマ、アンモニア及びアルゴンを含むプラズマ、アンモニア及び窒素を含むプラズマ、NF
3、NF
3プラズマ、有機アミンプラズマ、並びにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記堆積プロセスがプラズマ化学気相堆積であり、プラズマがその場で生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記堆積プロセスがプラズマ化学気相堆積であり、プラズマがリモートで生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記酸素源が、水(H
2O)、酸素(O
2)、酸素プラズマ、オゾン(O
3)、NO、N
2O、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO
2)、N
2Oプラズマ、一酸化炭素(CO)プラズマ、二酸化炭素(CO
2)プラズマ、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記膜があるウェットエッチ速度を有し、前記ウェットエッチ速度が、希釈HF中で、熱酸化物膜のウェットエッチ速度に対して2.2倍未満である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
プラズマ、紫外線、赤外線、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つで前記膜を処理する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
流動性化学気相堆積を使用して、ケイ素含有膜を堆積するための方法であって、
反応器中に表面特徴部を含む基材を設置する工程であって、前記基材が-20~400℃の範囲の1つ又は複数の温度で維持され、前記反応器の圧力が100torr以下で維持される工程と、
以下の式II:
【化4】
からなる群より選択され、式中、Rが分枝状C
4~C
10アルキル基から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4が、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状C
1~C
10アルキル基、分枝状C
3~C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルキニル基、C
6~C
10アリール基、電子求引基、C
3~C
10環状アルキル基、及びハライド原子から選択される少なくとも1つの化合物を導入する工程であって、前記少なくとも1つの化合物が、前記表面特徴部の少なくとも一部を覆う種を形成する工程と、
100~1000℃の範囲の1つ又は複数の温度で、前記種をプラズマ源で処理して、前記表面特徴部の少なくとも一部上に前記膜を形成する工程とを含
み、
前記膜が、前記表面特徴部中に又は前記表面特徴部上にボイドを含まない、方法。
【請求項14】
前記プラズマ源が、窒素プラズマ、窒素及びヘリウムを含むプラズマ、窒素及びアルゴンを含むプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア及びヘリウムを含むプラズマ、アンモニア及びアルゴンを含むプラズマ、ヘリウムプラズマ、アルゴンプラズマ、水素プラズマ、水素及びヘリウムを含むプラズマ、水素及びアルゴンを含むプラズマ、アンモニア及び水素を含むプラズマ、有機アミンプラズマ、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ケイ素含有膜が、窒化ケイ素、炭素ドープ窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、及び炭素ドープ酸窒化ケイ素の膜からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が、1,3-ビス(tert-ブトキシ)-1,3-ジメチルジシロキサンを含む、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年12月21日に出願された米国特許出願第62/270259号の利益を主張する。米国特許出願第62/270259号の開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書で説明されるのは、電子デバイスの製作のためのプロセスである。より具体的には、本明細書で説明されるのは、堆積プロセス、例えば、限定されないが、流動性化学気相堆積で、ケイ素含有膜を形成するための組成物である。本明細書で説明される組成物及び方法を使用して堆積することができる例示のケイ素含有膜としては、限定されないが、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素又は炭素ドープ窒化ケイ素の膜が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
流動性酸化物の堆積方法は、典型的に、制御された加水分解及び縮合反応により堆積されるケイ素含有膜のための前駆体として、アルコキシシラン化合物を使用する。そのような膜は、例えば、酸化剤とアルコキシシランとの混合物、並びに、任意選択で溶媒及び/又は界面活性剤及びポロゲンのような他の添加剤を基材上に適用することで、基材上に堆積することができる。これらの混合物の適用のための典型的な方法としては、限定されないが、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、スクリーン印刷、共縮合、及びインクジェット印刷が挙げられる。基材への適用の後、並びに、1つ又は複数のエネルギー源、例えば、限定されないが、熱、プラズマ、及び/又は他の源の適用の際、混合物内の水をアルコキシシランと反応させて、アルコキシド基及び/又はアリールオキシド基を加水分解し、シラノール種を生成することができ、それは、他の加水分解した分子でさらに縮合され、オリゴマー又はネットワーク構造を形成する。
【0004】
例えば、米国特許第8,481,403号;同第8,580,697号;同第8,685,867号;米国特許出願公開第2013/0230987号;米国特許第7,498,273号;同第7,074,690号;同第7,582,555号;同第7,888,233号;及び同第7,915,131号において、基材への前駆体の物理的な堆積又は適用に加えて、流動性誘電体堆積(FCVD)のためのケイ素含有蒸気源及び酸化剤を使用した気相堆積プロセスが記載されている。典型的な方法は、一般的に、ギャップ中に流動性膜を形成することで、基材上のギャップを固体誘電体材料で充填することに関する。流動性膜は、Si-C結合を有することがある誘電体前駆体を酸化剤と反応させて誘電体材料を形成することによって形成される。幾つかの実施形態において、誘電体前駆体は縮合して、その後酸化剤と反応し、誘電体材料を形成する。幾つかの実施形態において、気相反応剤が反応して、縮合した流動性膜を形成する。Si-C結合が、水との反応に対して比較的不活性であるため、得られるネットワークは、得られる膜に所望の化学的及び物理的特性を付与する有機官能基で有益に官能化されることができる。例えば、ネットワークへの炭素の追加は、得られる膜の誘電率を下げることができる。
【0005】
流動性化学気相堆積プロセスを使用して酸化ケイ素膜を堆積するための別のアプローチは、気相重合である。例えば、従来技術では、トリシリルアミン(TSA)のような化合物を使用して、Si、H、N含有オリゴマーを堆積し、その後オゾン照射を用いてSiOx膜に酸化することが注目されてきた。そのようなアプローチの例としては、米国特許出願公開第第2014/073144号;同第2013/230987号;米国特許第7,521,378号、同第7,557,420号及び同第8,575,040号;並びに同第7,825,040号が挙げられる。
【0006】
H.Kimらによる参考文献「サブ20nm層間誘電体のための新規の流動性CVDプロセス技術(Novel Flowable CVD Process Technology for sub-20nm Interlayer Dielectric)」(Interconnect Technology Conference(IITC),2012 IEEE International,San Jose,CA)では、低温堆積中のリモートプラズマと、オゾン処理とを使用して膜を安定化させる流動性CVDプロセスが記載されている。その参考文献においてまた記載されるのは、酸化又は拡散バリアとしてのSi3N4停止膜の除去がもたらされるSi又は電極を酸化しない流動性CVDプロセスである。20nmのDRAM ILDに流動性CVDを適用した後、著者によれば、ビットライン負荷容量が15%低減できるだけでなく、同等の生産性を促進することもできる。サブ20nmのDRAM ILDギャップ充填プロセスの成功した開発を通じて、流動性CVDを、サブ20nm次世代デバイスにおいて大量生産できるILDのための有力候補として実証することに成功した。
【0007】
米国特許出願公開第2013/0217241号明細書では、Si-C-N含有流動層の堆積及び処理を開示している。Si及びCは、Si-C含有前駆体由来であることができ、NはN含有前駆体由来であることができる。初期のSi-C-N含有流動層は、流動性を可能にする成分を除去するために処理される。これらの成分の除去は、エッチング耐性を増加させ、収縮を低減し、膜張力及び電気特性を調整する。後処理は、熱アニール、UV照射、又は高密度プラズマであることができる。
【0008】
上で特定された特許、特許出願及び文献の開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当技術分野における近年の活動は、流動性化学気相堆積及び他の膜堆積プロセスに関するものであるにかかわらず、課題がまた残っている。これらの課題の1つは、膜組成に関する。例えば、気相重合プロセスで前駆体トリシリルアミン(TSA)から堆積された流動性酸化物膜は、高品質の熱酸化物より2.2~2.5倍速い希釈HF溶液中でのウェットエッチ速度を有する膜をもたらす。したがって、代替的な前駆体化合物を提供して、より低い膜エッチ速度を持つケイ素含有膜を製造するニーズが存在している。また、炭素ドープ窒化ケイ素膜を堆積し、膜安定性及び膜のウェットエッチ速度を改善するための新規の前駆体についてニーズが存在している。しかしながら、これらの前駆体の多くは、除去することが容易でない相当量の炭素を含有している。過剰な酸素の除去は、常にボイドの形成をもたらす。したがって、新規の前駆体は、ボイドをもたらすことなく過剰な炭素を除去することができるように、設計され合成される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、新規の前駆体化合物、膜を堆積するための方法、及び得られるケイ素含有膜を提供することで、従来の有機ケイ素化合物及び方法が持つ課題を解決する。本発明に係るケイ素含有膜は、プラズマ、熱及びUV処理により容易に除去されるtert-ブチル基、tert-ブトキシ基又は他の類似の結合を有することができる。得られる膜は、異なる特徴部において優れたギャップ-充填を生み出す。
【0011】
本明細書で説明される組成物又は配合物並びにそれらを使用した方法は、基材表面の少なくとも一部上にケイ素含有膜を堆積し、酸素含有源での後堆積処理の際に望ましい膜特性を提供することで、従来技術における課題を解決する。幾つかの実施形態において、基材は、表面特徴部を含む。「表面特徴部」という用語は、本明細書で使用される場合、基材が、以下:孔、トレンチ、シャロートレンチアイソレーション(STI)、ビア、リエントラント特徴部などのうち1つ又は複数を含むことを意味する。組成物は、事前混合された組成物、事前混合物(堆積プロセスで使用される前に混合される)、又はその場混合物(堆積プロセス中に混合される)であることができる。したがって、本開示において、「混合物」、「配合物」及び「組成物」は互いに交換可能である。
【0012】
本発明の1つの態様において、本発明に係るケイ素含有膜は、(例えば、より詳細には以下で説明されるSEMにより決定されるように)ボイド又は欠陥を含まない。本発明に係るケイ素含有膜は、表面特徴部をボイド又は欠陥を含まない膜に接触させることができ、必要に応じて、ギャップを少なくとも部分的に充填し、ビアや他の表面特徴部を覆うことができる。
【0013】
1つの態様において、ケイ素含有膜を堆積するための方法であって、
-20~約400℃の範囲の温度で維持された反応器中に、表面特徴部を有する基材を設置する工程と、
以下の式I又はII:
【化1】
からなる群より選択され、式中、Rが分枝状C
4~C
10アルキル基から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4が、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状C
1~C
10アルキル基、分枝状C
3~C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルキニル基、C
1~C
6ジアルキルアミノ基、C
6~C
10アリール基、電子求引基、C
3~C
10環状アルキル基、及びハライド原子から選択される少なくとも1つの化合物と、窒素源とを反応器中に導入する工程であって、少なくとも1つの化合物が窒素源と反応して、表面特徴部の少なくとも一部上に窒化物含有膜を形成する工程と、
約100~約1000℃の範囲の1つ又は複数の温度で基材を酸素源で処理して、表面特徴部の少なくとも一部上に膜を形成する工程と
を含む方法が提供される。1つの実施形態において、ケイ素含有膜は、酸化ケイ素又は炭素ドープ酸化ケイ素の膜から選択される。この又は別の実施形態において、膜は、約100~約1000℃の範囲の温度で、UV照射にさらされる時間の少なくとも一部の間に、酸素源にさらされる。方法の工程は、表面特徴部が膜で充填されるまで繰り返すことができる。
【0014】
別の態様において、ケイ素含有膜を堆積するための方法であって、
表面特徴部を含む基材を反応器中に設置する工程であって、基材が約-20~約400℃の範囲の1つ又は複数の温度で維持され、反応器の圧力が100torr以下で維持される工程と、
以下の式I又はII:
【化2】
からなる群より選択され、式中、Rが分枝状C
4~C
10アルキル基から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4が、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状C
1~C
10アルキル基、分枝状C
3~C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルキニル基、C
1~C
6ジアルキルアミノ基、C
6~C
10アリール基、電子求引基、C
3~C
10環状アルキル基、及びハライド原子から選択される少なくとも1つの化合物を導入する工程と、
反応器中に酸素源を提供して、少なくとも1つの化合物と反応させ、膜を形成し、表面特徴部の少なくとも一部を覆う工程と、
約100~1000℃の1つ又は複数の温度で膜をアニールして、表面特徴部の少なくとも一部をコーティングする工程と、
約20~約1000℃の範囲の1つ又は複数の温度で基材を酸素源で処理して、表面特徴部の少なくとも一部上にケイ素含有膜を形成する工程とを含む方法が提供される。幾つかの実施形態において、酸素源は、水蒸気、水プラズマ、オゾン、酸素、酸素プラズマ、酸素/ヘリウムプラズマ、酸素/アルゴンプラズマ、窒素酸化物プラズマ、二酸化炭素プラズマ、過酸化水素、有機過酸化物、及びそれらの混合物からなる群より選択される。この又は他の実施形態において、方法の工程は、表面特徴部がケイ素含有膜で充填されるまで繰り返される。水蒸気が酸素源として用いられる実施形態において、基材の温度は、約-20~約40℃又は約-10~約25℃の範囲である。
【0015】
別の態様において、窒化ケイ素、炭素ドープ窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、及び炭素ドープ酸窒化ケイ素の膜からなる群より選択されるケイ素含有膜を堆積するための方法であって、
-20~約400℃の範囲の温度に加熱され、100torr以下の圧力で維持された反応器中に、表面特徴部を含む基材を設置する工程と、
以下の式I又はII:
【化3】
からなる群より選択され、式中、Rが分枝状C
4~C
10アルキル基から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4が、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状C
1~C
10アルキル基、分枝状C
3~C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルキニル基、C
1~C
6ジアルキルアミノ基、C
6~C
10アリール基、電子求引基、C
3~C
10環状アルキル基、及びハライド原子から選択される少なくとも1つの化合物を反応器中に導入する工程と、
反応器中にプラズマ源を提供し、化合物と反応させて、表面特徴部の少なくとも一部上にコーティングを形成する工程と、
約100~1000℃又は約100~400℃の範囲の1つ又は複数の温度でコーティングをアニールする工程とを含む方法が提供される。1つの特定の実施形態において、プラズマ源は、窒素プラズマ、窒素及びヘリウムを含むプラズマ、窒素及びアルゴンを含むプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア及びヘリウムを含むプラズマ、アンモニア及びアルゴンを含むプラズマ、ヘリウムプラズマ、アルゴンプラズマ、水素プラズマ、水素及びヘリウムを含むプラズマ、水素及びアルゴンを含むプラズマ、アンモニア及び水素を含むプラズマ、有機アミンプラズマ、及びそれらの混合物からなる群より選択される。流動性プラズマCVD法については、工程は、表面特徴部が1つ又は複数の高密度化膜で充填されるまで繰り返すことができる。
本発明の1つの態様は、化合物が1,3-ビス(tert-ブチル)-2-メチルシクロジシラザンを含む、前述の態様のいずれかに関する。
本発明の別の態様は、化合物が1,3-ビス(tert-ブトキシ)-1,3-ジメチルジシロキサンを含む、前述の態様のいずれかに関する。
本発明の更なる態様は、方法のいずれかにより形成されたケイ素含有膜に関する。
本発明の様々な態様は、単独で又は互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】例1で堆積される炭窒化ケイ素膜上の断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を提供する。
【
図2】例2で堆積される炭窒化ケイ素膜上の断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を提供する。
【
図3】(a)及び(b)は、例3で堆積されるケイ素炭素酸化物膜上の断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で説明されるのは、化学気相堆積(CVD)プロセスにより、基材の少なくとの一部上に流動性膜を堆積するための前駆体、及びそれを使用する方法である。幾つかの実施形態において、基材は、1つ又は複数の表面特徴部を含む。1つ又は複数の表面特徴部は、1μm以下の幅、又は500nm以下の幅、又は50nm以下の幅、又は10nm以下の幅を有する。この又は他の実施形態において、表面特徴物のアスペクト比(深さ:幅の比)は、存在する場合は、0.1:1以上、又は1:1以上、又は10:1以上、又は20:1以上、又は40:1以上である。
【0018】
幾つかの従来のプロセスでは、前駆体トリシリルアミン(TSA)を使用し、それは、ガスとして反応チャンバー中に運ばれ、アンモニアと混合され、そしてリモートプラズマ反応器中で活性化されて、NH2、NH、H及び/又はNラジカル若しくはイオンを生成する。TSAは、プラズマ活性化アンモニアと反応して、オリゴマー化し始めて、より高い分子量のTSAダイマー及びトリマー又はSi、N及びHを含有する他の種を形成する。基材は、反応器中に設置され、特定のチャンバー圧力において、約0~約50℃の範囲の1つ又は複数の温度に冷却され、TSA/活性化アンモニア混合物のオリゴマーは、それらがトレンチ表面特徴部を充填するために「流れる」ことができるようにウエハ表面上で縮合し始める。このように、Si、N及びHを含有する材料が、ウエハ上に堆積され、トレンチを充填する。しかしながら、このような従来のプロセスは、オゾンを用いて高密度膜を完全に酸化することは一般的に難しく、残留Si-H含有量はまたウェットエッチ速度の増加を引き起こすことからSi-H含有量を最小にする必要があるため、望ましくない。したがって、当技術分野において、膜収縮を最小化し、引張応力を低減し、Si-H含有量を最小化し、及び/又は膜のウェットエッチ速度に悪影響を与えない方法及び組成物を提供するニーズが存在している。
【0019】
本明細書で説明される方法及び組成物は、以下の対象の1つ又は複数を達成する。幾つかの実施形態において、本明細書で説明される方法及び組成物は、Si-C結合が窒化ケイ素膜を形成するための工程において完全に除去するのが難しいため、最小数のSi-C結合を有する前駆体化合物を含み、重要なことに、有機断片に関連する任意の残留Si-C結合は、高密度化工程において膜収縮を引き起こすことがあり、及び/又は、高密度化膜中に欠陥又はボイドを引き起こすことがある。この又は他の実施形態において、本明細書で説明される方法及び化合物は、前駆体中の水素に対するケイ素の比を増加する環構造又はシロキサンを導入することで、ケイ素に対するヘテロ原子(すなわち酸素又は窒素)の比を増加させることによって、膜のSi-H含有量をさらに低減する。窒化ケイ素又は炭窒化ケイ素の堆積のための幾つかの実施形態において、本明細書で説明される方法及び組成物は、窒化ケイ素又は酸化ケイ素膜の形成中に除去することが容易である、tert-ブチル又はtert-ペンチルのような良好な有機脱離基を有する前駆体化合物を含む。また、本明細書で説明される方法及び組成物は、モノマーとしてウエハ表面上に縮合して、次いで、例えば、アンモニアNH3のような窒素系プラズマ又は水素及び窒素を含むプラズマを使用して、表面上でポリマー化されることがあるTSAより高い沸点を有する前駆体化合物を使用することによって、オリゴマー化プロセス(例えば、窒化ケイ素膜が形成される方法の導入工程)を制御するのを助ける。本発明に係る前駆体化合物は、約100℃超、典型的には少なくとも約100~約150℃、及び幾つかの場合は約150~約200℃の沸点を有することができる。
【0020】
酸化ケイ素膜の堆積の幾つかの実施形態において、本明細書で説明される方法及び組成物は、流動性化学気相堆積プロセスの間に酸化ケイ素ネットワークの形成を助けることができるSi-O-Si結合を有する前駆体化合物を含む。
【0021】
方法の幾つかの実施形態において、パルス化プロセスを使用して、縮合とプラズマポリマー化を交互に行うことで、窒化ケイ素の膜の厚さをゆっくり成長させることができる。これらの実施形態において、パルス化プロセスは、処理工程において、より高密度のケイ素含有膜を生成することができる、より薄い膜(例えば10ナノメートル(nm)以下)を成長させる。
【0022】
幾つかの実施形態において、本明細書で説明される組成物は、以下の式I又はII:
【化4】
からなる群より選択され、式中、Rが分枝状C
4~C
10アルキル基から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4が、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状C
1~C
10アルキル基、分枝状C
3~C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルキニル基、C
1~C
6ジアルキルアミノ基、C
6~C
10アリール基、電子求引基、C
3~C
10環状アルキル基、及びハライド原子から選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【0023】
上記の式中及び説明を通じて、「直鎖状アルキル」という用語は、1~10個、3~10個又は1~6個の炭素原子を有する直鎖状の官能基を示す。上記の式中及び説明を通じて、「分枝状アルキル」という用語は、3~10個又は1~6個の炭素原子を有する分枝状の官能基を示す。例示の直鎖状アルキル基としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシル基が挙げられる。例示の分枝状アルキル基としては、限定されないが、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル(But)、イソペンチル、tert-ペンチル(アミル)、イソへキシル、及びネオヘキシルが挙げられる。幾つかの実施形態において、アルキル基は、限定されないが、それらに付着したアルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はそれらの組み合わせのような1つ又は複数の官能基を有することができる。他の実施形態において、アルキル基は、それらに付着した1つ又は複数の官能基を有さない。アルキル基は、飽和、又は代替的に不飽和であることができる。
【0024】
上記の式中及び説明を通じて、「ハライド」という用語は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、又はフッ化物イオンを示す。
【0025】
上記の式中及び説明を通じて、「環状アルキル」という用語は、3~10個又は5~10個の炭素原子を有する環状基を示す。例示の環状アルキル基としては、限定されないが、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチル基が挙げられる。幾つかの実施形態において、環状アルキル基は、1つ又は複数のC1~C10直鎖状、分枝状置換基、又は酸素若しくは窒素原子を含有する置換基を有することができる。この又は他の実施形態において、環状アルキル基は、置換基として、1つ又は複数の直鎖状又は分枝状アルキル基あるいはアルコキシ基、例えば、メチルシクロヘキシル基又はメトキシシクロヘキシル基を有することができる。
【0026】
上記の式中及び説明を通じて、「アリール」という用語は、3~10個の炭素原子、5~10個の炭素原子、又は6~10個の炭素原子を有する芳香族環状官能基を示す。例示のアリール基としては、限定されないが、フェニル、ベンジル、シクロベンジル、トリル、及びo-キシリルが挙げられる。
【0027】
上記の式中及び説明を通じて、「アルケニル基」という用語は、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を有し、2~12個、2~10個又は2~6個の炭素原子を有する基を示す。例示のアルケニル基としては、限定されないが、ビニル又はアリル基が挙げられる。
【0028】
「アルキニル基」という用語は、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を有し、2~12個又は2~6個の炭素原子を有する基を示す。
【0029】
上記の式中及び説明を通じて、「ジアルキルアミノ基」という用語は、窒素原子に付着した2つのアルキル基を有し、1~10個又は2~6個又は2~4個の炭素原子を有する基を示す。
【0030】
「良好な脱離基」又は「炭化水素脱離基」という用語は、本明細書で使用される場合、堆積プロセス中に容易に崩壊して安定した炭化水素ラジカルを形成するができ、したがって少ない炭素含有量を有する窒化ケイ素又は酸化ケイ素膜(例えば、約1at%以下の炭素含有量)をもたらす、窒素原子に結合した炭化水素基を言い表す。炭化水素ラジカルの安定性は、ビニルラジカル>ベンジルラジカル>tert-ブチルラジカル>イソプロピルラジカル>メチルラジカルである。良好な脱離基又は置換基の例としては、限定されないが、tert-ブチル又はtert-アミル基が挙げられ、その両方は、イソプロピルより良好な脱離基である。式I又はIIの幾つかの実施形態において、Rはtert-ブチル又はtert-アミル基から選択される。
【0031】
「電子求引基」という用語は、本明細書で使用される場合、Si-N結合から電子を取り出すように作用する原子又はその基を言い表す。適切な電子求引基又は置換基としては、限定されないが、ニトリル(CN)が挙げられる。幾つかの実施形態において、電子求引置換基は、式Iの任意の1つのNに隣接又は近接することができる。電子求引基の更なる非限定の例としては、F、Cl、Br、I、CN、NO2、RSO、及び/又はRSO2が挙げられ、式中、RはC1~C10アルキル基、例えば、限定されないが、メチル基又は別の基であることができる。
【0032】
上記の式中及び説明を通じて、「不飽和」という用語は、本明細書で使用される場合、官能基、置換基、環又はブリッジが1つ又は複数の炭素二重結合又は炭素三重結合を有することを意味する。不飽和環の例は、限定されないが、芳香族環、例えばフェニル環であることができる。「飽和」という用語は、官能基、置換基、環又はブリッジが、1つ又は複数の炭素二重結合又は炭素三重結合を有さないことを意味する。
【0033】
幾つかの実施形態において、式中のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及び/又は環状アルキル基のうち1つ又は複数は、「置換される」ことができるか、又は、例えば水素原子の位置で置換された1つ又は複数の原子又は原子群を有することができる。例示の置換基としては、限定されないが、酸素、硫黄、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、I又はBr)、窒素、アルキル基、及びリンが挙げられる。他の実施形態において、式中のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族及び/又はアリール基のうちの1つ又は複数は非置換であることができる。
【0034】
幾つかの実施形態において、上で説明した式中の置換基R1、R2、R3及びR4のうち任意の1つ又は複数は、それらが水素でない場合は、上述した式中のC-C結合と結合して環構造を形成することができる。当業者は、その置換基は、直鎖状又は分枝状C1~C10アルキレン部;C2~C12アルケニレン部;C2~C12アルキニレン部;C4~C10環状アルキル部;及びC6~C10アリーレン部から選択することができることを理解する。これらの実施形態において、環構造は不飽和、例えば環状アルキル環であることができ、又は飽和、例えばアリール環であることができる。さらに、これらの実施形態において、環構造はまた、置換されることができるか又は置換されないことができる。別の実施形態において、置換基R1、R2、及びR3の任意の1つ又は複数は結合していない。
【0035】
前駆体化合物が、式Iを有する化合物を含む実施形態において、前記体の例としては、以下の表1に示されるものが挙げられる。
【表1】
【表2】
【0036】
前駆体化合物が、式IIを有する化合物を含む実施形態において、前記体の例としては、以下の表2に示されるものが挙げられる。
【表3】
【0037】
上述した式を有する化合物の例としては、限定されないが、1,3-ビス(tert-ブチル)シクロジシラザン及び1,3-ビス(tert-ブチル)-2-メチルシクロジシラザンが挙げられる。如何なる理論又は解釈により拘束されることを望まないが、分子内のtert-ブチル基は、堆積プロセス中にリモートプラズマを用いて、より容易に除去することができると考えられており、なぜならば、tert-ブチルラジカルは最も安定なラジカルであるからである。さらに、後の分子の1,3-ビス(tert-ブチル)-2-メチルシクロジシラザンは、ゼロ未満の比較的より低い融点を有する。重要なことに、これらの化合物の両方は、1:1のSi/N比を提供する。1,3-ビス(tert-ブトキシ)ジシロキサンは、tert-ブチルがメチル基よりも安定なラジカルとしての良好な脱離基であるため、固体のケイ素含有膜の更なる形成を促進することができるO-Si-O-Si結合が存在することを利用して、流動性酸化ケイ素の堆積のために使用することができる。
【0038】
本明細書で説明されるケイ素前駆体化合物を、様々な方法で、CVD又はALD反応器のような反応チャンバーに送ることができる。1つの実施形態において、液体輸送システムを用いることができる。代替的な実施形態において、複合液体輸送及びフラッシュ気化プロセスユニット、例えば、Shoreview,MNのMSP Corporationにより製造されるターボ気化装置を用いて、低揮発性材料を容量的に輸送することができ、それによって、前駆体の熱分解なく再現可能な輸送及び堆積をもたらす。液体輸送配合物において、本明細書で説明される前駆体を原液形態で送ることができ、又は代替的に、それを含む溶媒配合物又は組成物中で用いることができる。したがって、幾つかの実施形態において、前駆体配合物は、基材上に膜を形成するための最終使用用途において望ましく有利であることができるように、適切な特徴の1つ又は複数の溶媒成分を含むことができる。
【0039】
堆積は、直接プラズマ又はリモートプラズマ源のいずれかを使用して行うことができる。リモートプラズマ源については、デュアルプレナムシャワーヘッドを使用して、ケイ素前駆体の蒸気とシャワーヘッドの内側のラジカルとの間の混合を防止することができ、したがって、粒子が生成するのを防ぐことができる。ラジカルの寿命とラジカルの移動を最大化するためにテフロン(登録商標)コーティングを施すことができる。
【0040】
ケイ素前駆体化合物は、好ましくは、塩化物のようなハライドイオン、又はアルミニウム、鉄、ニッケル、クロムのような金属イオンを実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という用語は、それが塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物のようなハライドイオン(又はハライド)、Al3+イオン、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+に関する場合は、10ppm(重量)未満、又は5ppm(重量)未満、好ましくは3ppm未満、より好ましくは1ppm未満、最も好ましくは0ppm未満(例えば、約0ppm超~約1ppm未満)を意味する。塩化物又は金属イオンは、ケイ素前駆体に対して分解触媒として作用することが知られている。最終製品中の有意なレベルの塩化物は、ケイ素前駆体の分解をもたらす場合がある。ケイ素前駆体の段階的な分解は、膜堆積プロセスに直接影響を与えることがあり、半導体製造業者が膜仕様を満たすのを難しくさせる。また、保存可能期間又は安定性が、ケイ素前駆体のより高い分解速度により悪影響を受け、それにより、1~2年間の保存可能期間を保証するのが困難になる。さらに、ケイ素前駆体の幾つかは、分解の際に引火性及び/又は自然発火性のガス、例えば水素及びシランを形成することで知られている。したがって、ケイ素前駆体の加速した分解は、これらの引火性及び/又は自然発火性のガス状副産物の形成に関する安全性及び性能の懸念を示す。
【0041】
ハライドを実質的に含まない本発明に係る組成物は、(1)化学合成の間に塩化物源を低減又は除去する、及び/又は(2)最終精製製品が塩化物を実質的に含まないように粗生成物から塩化物を除去するための効果的な精製プロセスを実行することで得ることができる。ハライド、例えば、クロロジシラン、ブロモジシラン、又はヨードジシランを含有しない反応剤を使用することで合成中に塩化物源を低減することができ、それによって、ハライドイオンを含有する副産物の生成を防止する。また、上述した反応剤は、得られる粗生成物が塩化物不純物を実質的に含まないように塩化物不純物を実質的に含まないべきである。同様に、合成は、ハライド系溶媒、触媒、又は許容できない高レベルのハライド汚染物質を含有する溶媒を使用しないべきである。粗生成物はまた、最終生成物が塩化物のようなハライドを実質的に含まないようにする様々な精製方法により処理することができる。そのような方法は、当技術分野でよく説明されてきており、そのような方法として、限定されないが、蒸留又は吸着のような精製プロセスを挙げることができる。蒸留は、沸点の違いを利用することで所望の製品から不純物を分離するために一般的に使用される。吸着はまた、成分の異なる吸着特性を利用して、最終生成物がハライドを実質的に含まないように分離を達成するために使用することができる。吸着材、例えば、商業的に入手可能なMgO-Al2O3配合物を使用して、塩化物のようなハライドを除去することができる。
【0042】
1つ又は複数の溶媒と、本明細書で説明される少なくとも1つの化合物とを含む組成物に関する実施形態において、選択される溶媒又はその混合物は、ケイ素化合物と反応しない。組成物中の重量パーセントにおける溶媒の量は、0.5~99.5wt%、又は10~75wt%の範囲である。この又は他の実施形態において、溶媒は、式I及びIIの前駆体の沸点(b.p.)と同様のb.p.を有するか、又は溶媒のb.p.と式IIのケイ素前駆体のb.p.の差が40℃以下、30℃以下、又は20℃以下、10℃以下、又は5℃以下である。代替的に、沸点間の差は、以下の端点:0、10、20、30又は40℃のうちの任意の1つ又は複数からの範囲であることができる。b.p.差の適切な範囲の例としては、限定されないが、0~40℃、20~30℃、又は10~30℃が挙げられる。組成物中の適切な溶媒の例としては、限定されないが、エーテル(例えば、1,4-ジオキサン、ジブチルエーテル)、3級アミン(例えば、ピリジン、1-メチルピペリジン、1-エチルピペリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)、ニトリル(例えば、ベンゾニトリル)、アルキル炭化水素(例えば、オクタン、ノナン、ドデカン、エチルシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、メシチレン)、3級アミノエーテル(例えば、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル)、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0043】
本明細書で説明される膜又はコーティングを形成するために使用される方法は、流動性化学堆積プロセスである。本明細書で開示される方法のための適切な堆積プロセスの例としては、限定されないが、熱化学気相堆積(CVD)又はプラズマ周期的CVD(PECCVD)プロセスが挙げられる。本明細書で使用される場合、「流動性化学気相堆積プロセス」という用語は、基材を1つ又は複数の揮発性前駆体にさらして、それを基材表面上で反応及び/又は分解させて、流動性オリゴマーケイ素含有種を提供し、次いで、更なる処理の際に固体の膜又は材料を作り出す任意のプロセスを言い表す。本明細書で使用される前駆体、反応剤及び源は、時々、「ガス状」と説明されることがあるが、前駆体は、不活性ガスを用いるか又は用いずに、直接気化、バブリング、又は昇華により反応器中に輸送される液体又は固定のいずれかであることができることが理解される。幾つかの場合において、気化した前駆体は、プラズマ生成器を通過することができる。1つの実施形態において、膜は、プラズマ系(例えば、リモートで生成されるか又はその場)CVDプロセスを使用して堆積される。「反応器」という用語は、本明細書で使用される場合、限定されないが、反応チャンバー又は堆積チャンバーを含む。
【0044】
幾つかの実施形態において、基材は、1つ又は複数の事前堆積処理、例えば、限定されないが、プラズマ処理、熱処理、化学処理、紫外線照射、電子ビーム照射、及びそれらの組み合わせにさらされて、膜の1つ又は複数の特性に影響を及ぼすことができる。これらの事前堆積処理は、不活性、酸化、及び/又は還元から選択される雰囲気の下で行われることがある。
【0045】
化合物、窒素含有源、酸素源、他の前駆体又はそれらの組み合わせにエネルギーを適用して、反応を誘導し、基材上にケイ素含有膜又はコーティングを形成する。そのようなエネルギーは、限定されないが、熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、電子ビーム、光子、リモートプラズマ法、及びそれらの組み合わせにより提供することができる。幾つかの実施形態において、二次RF周波数源を使用して、基材表面でプラズマ特性を改質することができる。堆積がプラズマを伴う実施形態において、プラズマ生成プロセスは、プラズマが反応器中で直接生成される直接プラズマ生成プロセス、又は代替的に、プラズマが反応器の外で生成され、反応器中に供給されるリモートプラズマ生成プロセスを含むことができる。
【0046】
上述したように、方法は、表面特徴部を含む基材の表面の少なくとも一部に膜を堆積する。基材は、反応器中に設置され、基材は、約-20~約400℃の範囲の1つ又は複数の温度で維持される。1つの特定の実施形態において、基材の温度は、チャンバーの壁未満である。基材温度は、100℃未満の温度、好ましくは25℃未満の温度、最も好ましくは10℃未満かつ-20℃超の温度で保持される。
【0047】
上述したように、基材は、1つ又は複数の表面特徴部を含む。1つの特定の実施形態において、1つ又は複数の表面特徴部は、100μm以下、1μm以下、又は0.5μm以下の幅を有する。この又は他の実施形態において、表面特徴部のアスペクト比(深さ:幅の比)は、存在する場合は、0.1:1以上、又は1:1以上、又は10:1以上、又は20:1以上、又は40:1以上である。基材は、単結晶シリコンウエハ、炭化ケイ素のウエハ、アルミニウム酸化物(サファイア)のウエハ、ガラスシート、金属箔、有機ポリマー膜であることができ、又はポリマーガラス、シリコン又は金属3次元物品であることができる。基材は、当技術分野で周知の様々な材料、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、アモルファス炭素、酸炭化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、ガリウムヒ素、ガリウム窒化物などでコーティングされることができる。これらのコーティングは、基材を完全にコーティングすることができ、複数の層の様々な材料であることができ、部分的にエッチングされて材料の下地層をさらすことができる。表面はまた、その上に、パターンが露出し、基材を部分的にコーティングするために成長されるフォトレジスト材料を有することができる。
【0048】
幾つかの実施形態において、反応器は、大気圧未満の圧力又は750torr(105パスカル(Pa))以下、又は100torr(13332Pa)以下である。他の実施形態において、反応器の圧力は、約0.1(13Pa)~約10torr(1333Pa)の範囲で維持される。
【0049】
1つの特定の実施形態において、少なくとも1つの化合物及び窒素源が反応器中に導入される導入工程は、-20~1000℃、又は約400~約1000℃、又は約400~約600℃、450℃~約600℃、又は約-20~約400℃の範囲の1つ又は複数の温度で行われる。これらの又は他の実施形態において、基材は、表面特徴部を含む半導体基材を含む。窒素含有源は、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマ、窒素/ヘリウムプラズマ、窒素/アルゴンプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア/ヘリウムプラズマ、アンモニア/アルゴンプラズマ、アンモニア/窒素プラズマ、NF3、NF3プラズマ、有機アミンプラズマ、及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。少なくとも1つの化合物と窒素源は反応して、基材及び表面特徴部の少なくとも一部上に窒化ケイ素膜(非化学量論的である)を形成する。
【0050】
別の実施形態において、前駆体を酸素含有源と共に送ることで、酸化ケイ素膜又は炭素ドープ酸化ケイ素膜を堆積することができる。酸素含有源は、水(H2O)、酸素(O2)、酸素プラズマ、オゾン(O3)、NO、N2O、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、N2Oプラズマ、一酸化炭素(CO)プラズマ、二酸化炭素(CO2)プラズマ、及びそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。
【0051】
1つの特定の実施形態において、流動性化学基礎堆積プロセスにおいて酸化ケイ素又は炭素ドープ酸化ケイ素の膜を堆積するための方法は、
-20~約400℃の範囲の温度で維持された反応器中に、表面特徴部を有する基材を設置する工程、
以下の式I又はII:
【化5】
からなる群より選択され、式中、Rが分枝状C
4~C
10アルキル基から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4が、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状C
1~C
10アルキル基、分枝状C
3~C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルキニル基、C
1~C
6ジアルキルアミノ基、C
6~C
10アリール基、電子求引基、C
3~C
10環状アルキル基、及びハライド原子から選択される少なくとも1つの化合物を反応器中に導入する工程、及び/又は
約100~約1000℃の範囲の1つ又は複数の温度で基材を酸素源で処理して、表面特徴部の少なくとも一部上に酸化ケイ素膜を形成して、酸化ケイ素膜を提供する工程を含む。代替的に、膜を、約100~約1000℃の範囲の温度でUV照射にさらしながら、酸素源にさらすことができる。プロセスの工程は、膜収縮を低減するために、特徴部が高品質の酸化ケイ素膜で充填されるまで繰り返すことができる。
【0052】
本明細書で説明される方法の更なる実施形態において、膜は、流動性CVDプロセスを使用して堆積される。この実施形態において、方法は、
-20~約400℃の範囲の温度に加熱され、100torr以下の圧力で維持された反応器中に、表面特徴部を含む1つ又は複数の基材を設置する工程、
以下の式I又はII:
【化6】
からなる群より選択され、式中、Rが分枝状C
4~C
10アルキル基から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4が、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状C
1~C
10アルキル基、分枝状C
3~C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルキニル基、C
1~C
6ジアルキルアミノ基、C
6~C
10アリール基、電子求引基、C
3~C
10環状アルキル基、及びハライド原子から選択される少なくとも1つの化合物を導入する工程、
反応器中に酸素源を提供して、少なくとも1つの化合物と反応させて、膜を形成し、表面特徴部の少なくとも一部を覆う工程、
約100~1000℃、好ましくは100~400℃の1つ又は複数の温度で膜をアニールして、ケイ素含有膜が表面特徴部の少なくとも一部上をコーティングすることを可能とする工程を含む。この実施形態の酸素源は、水蒸気、水プラズマ、オゾン、酸素、酸素プラズマ、酸素/ヘリウムプラズマ、酸素/アルゴンプラズマ、窒素酸化物プラズマ、二酸化炭素プラズマ、過酸化水素、有機過酸化物、及びそれらの混合物からなる群より選択される。プロセスは、表面特徴部がケイ素含有膜で充填されるまで繰り返すことができる。この実施形態において水蒸気を酸素源として用いる場合、基材の温度は、好ましくは-20~40℃、最も好ましくは-10~25℃である。
【0053】
本明細書で説明される方法のまた更なる実施形態において、窒化ケイ素、炭素ドープ窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、及び炭素ドープ酸窒化ケイ素の膜からなる群より選択されるケイ素含有膜は、流動性プラズマCVDプロセスを使用して堆積される。この実施形態において、方法は、
-20~約400℃の範囲の温度に加熱され、100torr以下の圧力で維持された反応器中に、表面特徴部を含む1つ又は複数の基材を設置する工程、
以下の式I又はII:
【化7】
からなる群より選択され、式中、Rが分枝状C
4~C
10アルキル基から選択され、R
1、R
2、R
3、R
4が、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状C
1~C
10アルキル基、分枝状C
3~C
10アルキル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルケニル基、直鎖状又は分枝状C
2~C
6アルキニル基、C
1~C
6ジアルキルアミノ基、C
6~C
10アリール基、電子求引基、C
3~C
10環状アルキル基、及びハライド原子から選択される少なくとも1つの化合物を導入する工程、
反応器中にプラズマ源を提供して、化合物と反応させて、表面特徴部の少なくとも一部上にコーティングを形成する工程、及び
約100~1000℃、好ましくは約100~400℃の範囲の1つ又は複数の温度でコーティングをアニールして、表面特徴部の少なくとも一部上にケイ素含有膜を形成する工程を含む。この実施形態のためのプラズマは、窒素プラズマ、窒素及びヘリウムを含むプラズマ、窒素及びアルゴンを含むプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア及びヘリウムを含むプラズマ、アンモニア及びアルゴンを含むプラズマ、ヘリウムプラズマ、アルゴンプラズマ、水素プラズマ、水素及びヘリウムを含むプラズマ、水素及びアルゴンを含むプラズマ、アンモニア及び水素を含むプラズマ、有機アミンプラズマ、及びそれらの混合物からなる群より選択される。流動性プラズマCVDについて、プロセスは、ビア又はトレンチが1つ又は複数の高密度膜で充填されるまで複数回繰り返すことができる。
【0054】
上記の工程は、本明細書で説明される方法についての1サイクルを規定する。サイクルは、所望の厚さのケイ素含有膜が得られるまで繰り返すことができる。この又は他の実施形態において、本明細書で説明される方法の工程は様々な順序で行うことができ、連続して又は同時に(例えば、別の工程の少なくとも一部の間に)、及びそれらの組み合わせで行うことができることが理解される。化合物及び他の反応剤を供給する各々の工程は、得られるケイ素含有膜の化学量論的組成を変えるために、それらを供給するための時間を変更することで行うことができる。
【0055】
幾つかの実施形態において、得られるケイ素含有膜又はコーティングは、後堆積処理、例えば、限定されないが、プラズマ処理、化学処理、紫外線照射、赤外線照射、電子ビーム照射、及び/又は膜の1つ又は複数の特性に影響を及ぼす他の処理にさらすことができる。
【0056】
説明を通じて、「有機アミン」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの窒素原子を有する有機化合物を示す。有機アミンの例としては、限定されないが、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、tert-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-アミルアミン、エチレンジアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、ピロール、2,6-ジメチルピペリジン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、N-メチルアニリン、ピリジン、及びトリエチルアミンが挙げられる。
【0057】
説明を通じて、「アルキル炭化水素」という用語は、直鎖状又は分枝状C6~C20炭化水素、環状C6~C20炭化水素を言い表す。例示の炭化水素としては、限定されないが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンが挙げられる。
【0058】
説明を通じて、「芳香族炭化水素」という用語は、C6~C20芳香族炭化水素を言い表す。例示の芳香族炭化水素としては、限定されないが、トルエン、メシチレンが挙げられる。
【0059】
説明を通じて、「窒化ケイ素」という用語は、本明細書で使用される場合、化学量論的又は非化学量論的な窒化ケイ素、炭窒化ケイ素(炭素ドープ窒化ケイ素)、炭酸窒化ケイ素、及びそれらの混合物からなる群より選択される、窒素及びケイ素を含む膜を言い表す。
【0060】
説明を通じて、「酸化ケイ素膜」という用語は、本明細書で使用される場合、化学量論的又は非化学量論的な酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、炭酸窒化ケイ素、及びそれらの混合物からなる群より選択される、酸素及びケイ素を含む膜を言い表す。本明細書で説明されるプロセス及び式I又はIIを有するケイ素前駆体を使用して形成されるケイ素含有膜又は窒化ケイ素膜の例は、式SixOyCzNvHwを有し、式中、Siは約10~約50原子wt%の範囲であり、Oは約0~約70原子wt%であり、Cは約0~約40原子wt%であり、Nは約10~約75原子wt%の範囲であるか又は約10~60原子wt%であり、Hは約0~約10原子wt%であり、x+y+z+v+w=100原子wt%であり、これらは、例えばX線光電子分光法(XPS)又は二次イオン質量分析法(SIMS)により決定される。
【0061】
説明を通じて、「特徴部」という用語は、本明細書で使用される場合、ビア、トレンチなどを有する半導体基材又は部分的に製作された半導体基材を言い表す。
【0062】
以下の例は、本発明の幾つかの態様を例示するために提供され、添付の特許請求の範囲に記載の範囲を限定しない。
【実施例】
【0063】
一般的な堆積条件
流動性化学気相堆積(FCVD)膜を、中抵抗率(8~12Ωcm)の単結晶シリコンウエハ基材及びSiパターンウエハ上に堆積した。パターンウエハについては、好ましいパターン幅は50~100nmであり、5:1~20:1のアスペクト比を持つ。
【0064】
デュアルプレナムシャワーヘッドを使用して、Applied Materials Precision 5000 Systemにおいて、堆積を改質FCVDチャンバーで行った。チャンバーは、直接液体注入(DLI)輸送の能力を備えていた。前駆体は、その前駆体の沸点に依存する輸送温度を持つ液体であった。初期の流動性窒化物膜を堆積するために、典型的な液体前駆体の流量は、約100~約5000mg/分の範囲であり、チャンバー圧力は、約0.75~12Torrであった。特に、リモート電力を、2.455GHzの周波数を持つ0~3000WのMKSマイクロ波生成器により供給し、2~8Torrで操作した。膜の幾つかを、0.25~3.5W/cm2の電力密度と、0.75~12Torrの圧力とで、その場プラズマを用いて堆積した。堆積した流動性膜を高密度化するために、100~1000℃、好ましくは300~400℃で、改質PECVDチャンバーを使用して、膜を真空中でUV硬化し、及び/又は熱アニールした。UV硬化を、H+バルブを持つFusion UVシステムを使用することで提供した。UVシステムの最大電力は6000Wである。
【0065】
幾つかの実施形態において、初期の堆積した流動性窒化物を酸化物に変換するために、膜を、約25~約300℃の範囲の温度で、オゾンを含む酸素源にさらした。堆積した膜を、25~400℃でUV硬化及び熱アニールすることで高密度化した。
【0066】
他の実施形態において、初期の流動性酸化物膜を高品質の酸化物膜に変換するために、膜を、室温~400℃でのO3照射又はO2プラズマ、及びUV硬化で処理した。
【0067】
上記の工程は、流動プロセスについての1サイクルを規定する。サイクルを、所望の膜厚が得られるまで繰り返した。厚さ及び632nmでの反射率(RI)を、SCI反射率計又はWoolamエリプソメーターにより測定した。典型的な膜厚は約10~約2000nmであった。ケイ素系膜の水素含有物の結合特性(Si-H、C-H及びN-H)を、Nicolet透過型フーリエ変換赤外線分光(FTIR)ツールにより測定及び分析した。全ての密度の測定を、X線反射計(XRR)を使用して行った。X線光電子分光(XPS)及び二次イオン質量分光(SIMS)分析を行い、膜の元素組成を決定した。ウェットエッチ速度(WER)を、100:1希釈HF液中で測定した。水銀プローブを、誘電率、漏れ電流及び絶縁破壊電場を含む電気特性測定のために採用した。Alパターン化ウエハ上の流動性及びギャップ充填効果を、2.0nmの分解能を持つ、Hitachi S-4800システムを使用して、断面の走査型電子顕微鏡(SEM)により観測した。
【0068】
例1:その場プラズマを用い、1,3-ビス(tert-ブチル)-2-メチルシクロジシラザン(式I)を使用した炭窒化ケイ素膜の堆積
その場流動性CVD堆積を、実験計画法(DOE)を使用して行った。実験計画には、100~5000mg/分、好ましくは1000~2000mg/分の前駆体流;100~3000sccm、好ましくは500~1500sccmのNH3流;0.75~12Torr、好ましくは4~8Torrのチャンバー圧力;100~1000W、好ましくは150~300Wのその場プラズマ電力;及び0~550℃、好ましくは0~30℃の範囲の堆積温度を含んでいた。
【0069】
前駆体として1,3-ビス(tert-ブチル)-2-メチルシクロジシラザンを使用して、多くのSiCN膜を8インチシリコン基材及びパターン化基材上に堆積して、流動性、膜密度、及びウェットエッチ速度を比較した。
【0070】
最も好ましい流動性堆積条件は以下の通りであった;1,3-ビス(tert-ブチル)-2-メチルシクロジシラザン流=1000~2000mg/分、NH
3流=500sccm、He流=200sccm、圧力=5Torr、プラズマ電力=300~400W、及び温度=30~40℃。300℃で5分間の熱アニールの後、
図1に示されるように、1-メチル-N,N’-ジ-tert-ブチルシクロジシラザンを使用した流動性SiCN膜により、ボトムアップ、シームレス及びボイドのないギャップ充填をパターンウエハ上で得た。600nmの深さを持ち、アスペクト比は10:1であるギャップ中にはボイドは観測されなかった。
【0071】
例2:リモートプラズマを用い、1,3-ビス(tert-ブチル)-2-メチルシクロジシラザン(式I)を使用した炭窒化ケイ素膜の堆積
前駆体として1,3-ビス(tert-ブチル)-2-メチルシクロジシラザンと、反応ガスとしてN2、NH3若しくはH2又はN2、NH3、H2の組み合わせとを使用して、多くのSiCN膜を8インチのシリコン基材及びパターン化基材上に堆積して、流動性、膜密度、及びウェットエッチ速度を比較した。
【0072】
最も好ましい流動性堆積条件は、1,3-ビス(tert-ブチル)-2-メチルシクロジシラザン流=1000~2000mg/分、NH
3(又はN
2、H
2)流=1500~3000sccm、He流=50sccm、圧力=0.5~2Torr、リモートプラズマ電力=3000W、及び温度=10~20℃を含んでいた。300℃で5分間の熱アニールの後、
図2に示されるように、前駆体としての1,3-ビス(tert-ブチル)-2-メチルシクロジシラザンと反応ガスとしてのH
2とを使用し、リモートプラズマ化学気相堆積技術を使用した流動性SiCN膜により、ボトムアップ、シームレス及びボイドのないギャップ充填をパターンウエハ上で得た。600nmの深さを持ち、アスペクト比は10:1であるギャップ中にはボイドは観測されなかった。
【0073】
例3:リモートプラズマを用い、1,3-ビス(tert-ブトキシ)-1,3-ジメチルジシロキサン(式II)を使用した酸化ケイ素膜の堆積
前駆体として1,3-ビス(tert-ブトキシ)-1,3-ジメチルジシロキサンを使用して、多くの酸化ケイ素膜を8インチシリコン基材及びパターン化基材上に堆積して、流動性、膜密度、及びウェットエッチ速度を比較した。
【0074】
多くの流動性堆積条件は以下のようであった:1,3-ビス(tert-ブトキシ)-1,3-ジメチルジシロキサン流=2000mg/分、O
2流=1500~4500sccm、Heキャリア流=50sccm、圧力=0.5~2Torr、リモートプラズマ電力=3000W、及び温度=10~20℃。ウェット及びソフト膜をブランケットウエハ上に堆積した。堆積した膜を、300℃で5分間熱アニールし、400℃で10分間UV硬化した。
図3(a)及び(b)に示されるように、1,3-ビス(tert-ブトキシ)-1,3-ジメチルジシロキサンと酸素とを使用し、リモートプラズマ化学気相堆積技術を使用した流動性SiCO膜により、ボトムアップ、シームレス及びボイドのないギャップ充填をパターンウエハ上で得た。600nmの深さを持ち、アスペクト比は10:1であるギャップ中にはボイドは観測されなかった。
【0075】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、等価物でその要素を置換することができることが当業者により理解される。また、本発明の不可欠な範囲から逸脱することなく、多くの改変を行い、特定の状況又は材料を本発明の教示に採用することができる。したがって、本発明は、本発明を実行するために考慮された最良のモードとして開示された特定の実施形態に限定されないが、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲内にある全ての実施形態を包含することが意図される。