(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】凝集沈殿装置及びその起動方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/30 20060101AFI20220913BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20220913BHJP
B01D 21/02 20060101ALI20220913BHJP
B01D 21/06 20060101ALI20220913BHJP
B01D 21/08 20060101ALI20220913BHJP
B01D 21/24 20060101ALI20220913BHJP
B01D 21/26 20060101ALI20220913BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B01D21/30 K
B01D21/30 H
B01D21/30 A
B01D21/01 B
B01D21/01 C
B01D21/01 H
B01D21/01 Z
B01D21/02 E
B01D21/06 A
B01D21/08 A
B01D21/24 H
B01D21/24 R
B01D21/24 S
B01D21/26
C02F1/52 Z
(21)【出願番号】P 2018151718
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】田中 一平
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237122(JP,A)
【文献】特開2013-078715(JP,A)
【文献】特開2000-317220(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0036772(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0127220(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0339158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
C02F 1/52- 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が導入され、第1凝集剤により凝集処理する第1凝集槽と、該第1凝集槽から排出された第1凝集処理水が導入され、第2凝集剤と沈降促進材により凝集処理する第2凝集槽と、該第2凝集槽から排出された第2凝集処理水が導入され、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽と、該沈殿槽から抜き出したスラリーを分離汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を該第2凝集槽に戻すサイクロンとを備え、
該サイクロンの汚泥出口からの分離汚泥ラインが汚泥排出ラインと汚泥循環ラインとに分岐され、該汚泥循環ラインが前記第1凝集槽に接続されている
凝集沈殿装置の起動方法において、
該凝集沈殿装置の起動時には
、該サイクロンからの分離汚泥のSS濃度が所定値に上昇するまで、該サイクロンからの分離汚泥
の全量を該汚泥循環ラインを通じて該第1凝集槽に返送し、該凝集沈殿装置の起動終了後には該サイクロンからの分離汚泥の少なくとも一部を連続的又は間欠的に系外排出するように切り替える
ことを特徴とする凝集沈殿装置の起動方法。
【請求項2】
前記所定値は10~50g/Lである請求項1に記載の凝集沈殿装置の起動方法。
【請求項3】
原水が導入され、第1凝集剤により凝集処理する第1凝集槽と、該第1凝集槽から排出された第1凝集処理水が導入され、第2凝集剤と沈降促進材により凝集処理する第2凝集槽と、該第2凝集槽から排出された第2凝集処理水が導入され、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽と、該沈殿槽から抜き出したスラリーを分離汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を該第2凝集槽に戻すサイクロンとを備え、
該サイクロンの汚泥出口からの分離汚泥ラインが汚泥排出ラインと汚泥循環ラインとに分岐され、該汚泥循環ラインが前記第1凝集槽に接続されている
凝集沈殿装置の起動方法において、
該凝集沈殿装置の起動時には、前記第1凝集槽への原水供給開始後、所定時間が経過するまで、該サイクロンからの分離汚泥の全量を該汚泥循環ラインを通じて該第1凝集槽に返送し、該凝集沈殿装置の起動終了後には該サイクロンからの分離汚泥の少なくとも一部を連続的又は間欠的に系外排出するように切り替える
ことを特徴とする凝集沈殿装置の起動方法。
【請求項4】
前記所定時間は、前記凝集沈殿装置のHRTの0.5~4倍である請求項3に記載の凝集沈殿装置の起動方法。
【請求項5】
前記凝集沈殿装置の起動時に、前記第1凝集槽への第1凝集剤添加量および第2凝集槽への第2凝集剤の添加量を増加させる、請求項
1~4のいずれか1項に記載の凝集沈殿装置の起動方法。
【請求項6】
前記原水がヤード排水である、請求項
1~5のいずれか1項に記載の凝集沈殿装置の起動方法。
【請求項7】
前記凝集沈殿装置の起動前に、該凝集沈殿装置の前記第1凝集槽、第2凝集槽、及び沈殿槽の各槽に清水を張る、請求項1~6のいずれか1項に記載の凝集沈殿装置の起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁物質を含む原水に沈降促進材と凝集剤を添加して凝集沈殿させて汚泥と処理水とに分離する凝集沈殿装置およびその制御方法に関し、とくに沈殿槽から抜き出したスラリーをサイクロンにより汚泥と沈降促進材とに分離し、沈降促進材を凝集槽に返送するよう構成された凝集沈殿装置およびその起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
懸濁物質(以下、SS[Suspended Solid] と称することもある。)を原水中から凝集沈殿により分離除去する凝集沈殿装置として、原水に粒径10~200μm程度の粒状物(砂など)よりなる沈降促進材と凝集剤とを添加して凝集フロックを形成させる凝集槽と、凝集槽から流出する凝集フロックを沈降分離する沈殿槽と、沈殿槽から引き抜いたスラリーを粒状物と汚泥に分離するサイクロンとを備え、粒状物を凝集槽に返送し、汚泥を排出するよう構成された装置が知られている(特許文献1~3)。
【0003】
特許文献1~3の凝集沈殿装置にあっては、凝集槽に導入された原水に無機凝集剤を添加して攪拌機で攪拌し、次いで高分子凝集剤を添加して凝集槽に導入し、攪拌機で攪拌して粒状物(砂など)とともに凝集フロックを形成させる。この凝集処理水を沈殿槽に導入して沈降分離し、沈殿槽上部から処理水を流出させる。また、沈殿槽の下部からポンプによりスラリーを抜き出し、サイクロンに送る。サイクロンでは、汚泥と粒状物とに遠心分離し、分離された汚泥が凝集沈殿装置外に排出される。サイクロンで分離された粒状物は凝集槽に返送され、再度沈殿分離に利用される。
【0004】
特許文献3には、サイクロンから排出される汚泥の少なくとも一部を凝集槽に戻す汚泥返送ラインに流量コントロール弁を設け、原水のSS濃度が低い場合には汚泥返送量を多くし、該SS濃度が高い場合には汚泥返送量を少なくするよう制御することが記載されている(0072段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-317220号公報
【文献】特開2002-355507号公報
【文献】特開2014-237122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製鉄所やセメント工場など、敷地面積が大きいヤードの降雨排水を処理する施設に設置された凝集沈殿装置の場合、装置立ち上げ時やメンテナンス後の装置再立ち上げ時は、凝集沈殿装置の各槽に水張りがされておらず、また凝集沈殿層を可搬式とする場合は非降雨時は各槽内の水を抜くと共に沈殿促進材を抽出しておき、降雨時にはまず凝集沈殿装置の各槽に水を張り、次にヤードからの排水(以下、ヤード排水という。)を受け入れて運転再開する。
【0007】
各槽内に張られた水(槽内水)は、SS濃度が著しく低いため、降雨開始当初にヤード排水が凝集沈殿装置に流入した場合、ヤード排水が槽内水で希釈されるので、各槽内のSS濃度が低い。また、たとえ水張りを行わず直接ヤード排水が流入したとしても未濃縮のため、SS濃度は十分ではない。そのため、凝集沈殿装置から排出される汚泥濃度が低いものとなる。
なお、従来の沈殿槽ではSSの濃縮を促進するために、沈殿槽からの引抜を間欠で運転することがある。しかし、本発明のように汚泥中に沈降促進材を含む場合は沈殿槽底部ピットや引抜ライン中に沈降促進材が蓄積し、固着する懸念があるため、引抜は原則連続運転することが通常である。
【0008】
本発明は、可搬式の凝集沈殿装置や、各凝集槽に水を張った状態の凝集沈殿装置に被処理水が流入する凝集沈殿装置の起動時における低濃度汚泥の排出を防止し、早期にSS濃度を上昇させることで、立ち上げ時間を短縮することができる凝集沈殿装置及びその起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の凝集沈殿装置は、原水が導入され、第1凝集剤により凝集処理する第1凝集槽と、該第1凝集槽から排出された第1凝集処理水が導入され、第2凝集剤と沈降促進材により凝集処理する第2凝集槽と、該第2凝集槽から排出された第2凝集処理水が導入され、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽と、該沈殿槽から抜き出したスラリーを分離汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を該第2凝集槽に戻すサイクロンとを備え、該サイクロンの汚泥出口からの分離汚泥ラインが汚泥排出ラインと汚泥循環ラインとに分岐され、該汚泥循環ラインが前記第1凝集槽に接続されており、該汚泥循環ラインと汚泥排出ラインとの切替手段を有する凝集沈殿装置において、該凝集沈殿装置の起動時には該分離汚泥ラインを該汚泥循環ラインに接続して該サイクロンからの分離汚泥を該汚泥循環ラインを通じて該第1凝集槽に返送し、該凝集沈殿装置の起動終了後には連続的または間欠的に該分離汚泥ラインを該汚泥排出ラインに接続するかまたは該汚泥排出ライン及び汚泥循環ラインに分岐して該サイクロンからの分離汚泥の少なくとも一部を連続的又は間欠的に系外排出するように前記切替手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様では、前記制御手段として、前記分離汚泥ラインまたは前記汚泥循環ラインに設けられたSS計と、該SS計の検出SS濃度が所定濃度に上昇するまで前記サイクロンからの分離汚泥を前記第1凝集槽に返送するように前記切替手段を制御する制御器とを備える。
【0011】
本発明の一態様では、前記SS計の検出SS濃度が所定濃度に上昇するまでの期間の少なくとも一部において、前記第1凝集槽への第1凝集剤の添加量および第2凝集槽への第2凝集剤の添加量を増大させる凝集剤添加量制御部が設けられている。
【0012】
本発明の一態様では、前記制御手段として、前記第1凝集槽への原水供給開始後、所定時間、前記サイクロンからの分離汚泥を前記第1凝集槽に返送するように前記切替手段を制御するタイマーを備える。
【0013】
本発明の一態様では、前記第1凝集槽への原水供給開始後、所定時間が経過するまでの期間の少なくとも一部において、前記第1凝集槽への第1凝集剤の添加量および第2凝集槽への第2凝集剤の添加量を増大させる凝集剤添加量制御部が設けられている。
【0014】
本発明の凝集沈殿装置の制御方法は、原水が導入され、第1凝集剤により凝集処理する第1凝集槽と、該第1凝集槽から排出された第1凝集処理水が導入され、第2凝集剤と沈降促進材により凝集処理する第2凝集槽と、該第2凝集槽から排出された第2凝集処理水が導入され、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽と、該沈殿槽から抜き出したスラリーを分離汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を該第2凝集槽に戻すサイクロンとを備え、該サイクロンの汚泥出口からの分離汚泥ラインが汚泥排出ラインと汚泥循環ラインとに分岐され、該汚泥循環ラインが前記第1凝集槽に接続されている凝集沈殿装置の起動方法において、該凝集沈殿装置の起動時には該サイクロンからの分離汚泥を該汚泥循環ラインを通じて該第1凝集槽に返送し、該凝集沈殿装置の起動終了後には該サイクロンからの分離汚泥の少なくとも一部を連続的又は間欠的に系外排出するように切り替えることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様では、前記凝集沈殿装置の起動時に、前記第1凝集槽への第1凝集剤添加量および第2凝集槽への第2凝集剤の添加量を増加させる。
【0016】
本発明の一態様では、前記原水がヤード排水である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の凝集沈殿装置及びその起動方法では、凝集沈殿装置の起動時に、サイクロンから排出される分離汚泥を第1凝集槽に返送するので、低濃度汚泥の排出が防止される。これにより、早期に系内のSS濃度が上昇し、立ち上げ時間が短縮される。
【0018】
本発明の一態様では、凝集沈殿装置の起動時に、第1凝集剤の添加量を多くすることにより、凝集作用が強化され、さらに低濃度汚泥の排出が防止される。また第1凝集剤に対して不足しないよう第2凝集剤の添加量を多くすることにより、凝集不良が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係る凝集沈殿装置の構成図である。
【
図2】実施の形態に係る凝集沈殿装置の構成図である。
【
図3】実施の形態に係る凝集沈殿装置の構成図である。
【
図4】実施の形態に係る凝集沈殿装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る凝集沈殿装置1を示している。この凝集沈殿装置1は、第1凝集槽2と、第2凝集槽3と、それに隣接配置された沈殿槽4を備えている。第1凝集槽2には、原水導入ライン5を介して原水が導入され、第1凝集剤として無機凝集剤(
図1ではPAC)が第1薬注装置6によって添加されて、攪拌機7によって攪拌される。第1凝集槽2においては、無機凝集剤が懸濁物質を凝集させて微細なフロックが生成する。図示は省略するが、第1凝集槽2には、pH計及びpH調整剤(苛性ソーダ、硫酸、塩酸など)の添加装置が設けられており、第1凝集槽2内のpHを所定範囲に維持できるよう構成されている。
【0021】
第1凝集槽2からの第1凝集処理水は移流口8を介して第2凝集槽3に導入され、第2凝集剤として高分子凝集剤(ポリマー)が第2薬注装置9によって添加される。第2凝集槽3内には、砂などの沈降促進材が添加されており、攪拌機10による攪拌により、微細フロックが高分子凝集剤を介して沈降促進材に取り込まれて、比重の大きい凝集フロックに成長する。
【0022】
沈降促進材としては、砂のほか、各種スラグの破砕物なども用いることができる。沈降促進材の平均粒径は0.01~0.5mm程度が好ましく、真比重は2以上特に2.5以上で4以下が好ましいが、これに限定されない。
【0023】
成長した凝集フロックを含む第2凝集処理水は、越流堰12を越流して沈殿槽4に導入される。沈殿槽4では、第2凝集処理水中の凝集フロックが沈殿する。沈殿槽4内の上部には、複数の傾斜板13よりなるセパレータが設置されており、凝集フロックの沈殿分離が促進される。セパレータを通り抜けた処理水は、流出室15を経て流出配管16から取り出される。沈殿槽4にレーキ14が設けられている。
【0024】
沈殿槽4の底部には、沈殿した凝集フロックを含むスラリーを抜き出すための引抜ライン17が接続されており、引抜ライン17には、抜き出したスラリーをサイクロン20に引抜ポンプ18が設けられている。サイクロン20は、軸心方向を鉛直方向として設置されている。
【0025】
サイクロン20では、送られてきたスラリーを遠心分離により、サイクロン軸心部に集まる汚泥と、サイクロン側周面に集まる沈降促進材とに分離する。分離された沈降促進材は、サイクロン20の底部から、配管19によって再び第2凝集槽3内に戻されて循環使用される。
【0026】
サイクロン20で軸心側に集められた分離汚泥は、サイクロン20の上面中央部の汚泥出口に接続された配管21(分離汚泥ライン)に流出する。該配管21は、配管22,25に分岐している。
配管22は、バルブ23を介して配管24に接続されている。配管22,24及びバルブ23によって汚泥排出ラインが構成されている。
【0027】
配管25は、バルブ26及び配管27を介して分離汚泥を第1凝集槽2に返送可能となっている。配管25,27及びバルブ26によって汚泥循環ラインが構成されている。バルブ23,26によって切替手段が構成されている。
【0028】
この配管27に光学式濁度計などよりなるSS計28が設置されており、その検出信号が制御器30に入力される。制御器30によってバルブ23,26が制御され、ON/OFF切替または流量調整される。
【0029】
この凝集沈殿装置1を運転開始する際は、まず各槽2,3,4に上水、井水、河川水、雨水、浄化処理水など比較的清澄度の高い清水が規定水位まで水張りされる。これは、各槽2~4や部材の破損がないか確認するためである。
【0030】
この凝集沈殿装置にヤード排水などの原水が流入開始すると、第1凝集槽2に無機凝集剤が添加されると共に、第2凝集槽3に高分子凝集剤(ポリマー)が添加される。また、第2凝集槽3には、所定量の沈降促進材が添加される。
【0031】
原水は、第1凝集槽2内の清水と混ざり合い、希釈されて凝集処理され、第2凝集槽3を経て沈殿槽4に流入し、凝集フロックの沈降分離が行われ、処理水(清澄水)が配管16から排出される。
【0032】
このように、凝集沈殿装置1の起動時にあっては、原水が各凝集槽2,3内の清水で希釈されるので、各凝集槽2,3内のSS濃度が低く、沈殿槽4内で沈殿したスラリーのSS濃度も小さい。そのため、サイクロン20で分離された分離汚泥のSS濃度が低く、そのまま排出することは適切ではない。
【0033】
そこで、この実施の形態では、凝集沈殿装置1の起動時にはバルブ23を閉とし、バルブ26を開とし、サイクロン20からの分離汚泥の全量を配管27から第1凝集槽2に返送する。
【0034】
この配管27内を流れる分離汚泥のSS濃度がSS計28で計測され、その検出信号が制御器30に入力される。制御器30は、SS計28の検出SS濃度が、予め設定した所定濃度(ヤード排水を処理する凝集沈殿装置の場合、10~50g/L特に15~30g/L程度)になるまで、バルブ23を閉、バルブ26を開とし、分離汚泥の全量を第1凝集槽2に返送する。
【0035】
この状態を維持すると、第1及び第2凝集槽2,3内のSS濃度が次第に上昇し、SS計28の検出SS濃度も次第に上昇する。SS計28の検出SS濃度が上記所定濃度にまで上昇すると、制御器30がバルブ23を開、バルブ26を閉とし、サイクロン20からの分離汚泥の全量を配管24から排出する。
【0036】
このようにして、凝集沈殿装置1の起動時に配管24から低SS濃度の汚泥が排出されることが防止される。
【0037】
なお、上記説明では、SS計28の検出SS濃度が所定値にまで上昇した後は、汚泥の全量を配管24から排出するものとしたが、サイクロン20からの分離汚泥の一部を配管27から第1凝集槽2に返送してもよい。また、分離汚泥の排出を連続的でなく間欠的に行ってもよい。
【0038】
なお、この第1の実施の形態では、第1及び第2薬注装置6,9による凝集剤添加量は一定とされている(定量添加方式)。ただし、原水のSS濃度を検出し、その検出結果に応じて凝集剤添加量を制御するようにしてもよい。
【0039】
図2は、第2の実施の形態に係る凝集沈殿装置1Aを示している。この凝集沈殿装置1Aでは、制御器30は第1及び第2薬注装置6,9も後述のように制御するよう構成されている。凝集沈殿装置1Aのその他の構成は凝集沈殿装置1と同じであり、同一符号は同一部分を示している。
【0040】
制御器30は、凝集沈殿装置1Aの起動時に、SS計28の検出濃度が所定値にまで上昇するまでは第1の実施の形態と同一の起動方法に従って、バルブ23,26の開閉を制御する。この実施の形態にあっては、制御器30は、さらに、SS計28の検出濃度が所定値にまで上昇するまでは、第1及び第2薬注装置6,9による無機凝集剤及び高分子凝集剤の添加量を定常運転時の標準添加量よりも多く(例えばそれぞれ標準添加量の1.5~5倍量特に2~5倍量)する。これにより、第1及び第2凝集槽2,3での凝集効果が増大し、沈殿槽4で沈殿したスラリーのSS濃度が高くなる。これにより、サイクロン20で分離される汚泥濃度が早期に所定値まで上昇する。
【0041】
図3は、第3の実施の形態に係る凝集沈殿装置1Bを示している。
【0042】
この実施の形態にあっては、バルブ23,26の開閉を制御するために、制御器30の代りにタイマー31が設置されている。また、SS計28は省略されている。その他の構成は
図1の凝集沈殿装置1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0043】
この実施の形態にあっては、凝集沈殿装置1Bの起動時に、凝集沈殿装置1Bへの原水流入開始から所定時間が経過するまでは、バルブ26を開、バルブ23を閉とし、サイクロン20からの分離汚泥の全量を第1凝集槽2に返送する。そして、所定時間が経過した後は、バルブ26を閉、バルブ23を開とし、サイクロン20からの分離汚泥の全量を配管24から排出する。なお、この場合も、サイクロン20からの分離汚泥の一部を配管27から第1凝集槽2に返送してもよいし、連続処理でなく間欠処理としてもよい。所定時間は凝集沈殿装置1BのHRTの0.5~4倍程度が好ましい。
【0044】
この実施の形態においても、沈殿槽4で沈殿したスラリーのSS濃度が早期に上昇する。これにより、サイクロン20で分離される汚泥濃度が早期に上昇する。
【0045】
図4は、第4の実施の形態に係る凝集沈殿装置1Cを示している。この凝集沈殿装置1Cは、
図3の凝集沈殿装置1Bと同じくタイマー31を備えていると共に、さらに第1及び第2薬注装置6,9による凝集剤添加量を制御する制御器32を備えている。
【0046】
タイマー31は、
図3の凝集沈殿装置1Bと同じく、凝集沈殿装置1Cへの原水流入開始(原水ポンプの運転開始)から所定時間が経過するまでは、バルブ26を開、バルブ23を閉とし、サイクロン20からの分離汚泥の全量を第1凝集槽2に返送する。そして、所定時間が経過した後は、バルブ26を閉、バルブ23を開とし、サイクロン20からの分離汚泥の全量を配管24から排出する。なお、この場合も、サイクロン20からの分離汚泥の一部を配管27から第1凝集槽2に返送してもよいし、連続処理でなく間欠処理としてもよい。
【0047】
制御器32は、凝集沈殿装置1Cの起動(タイマー31のスタート(原水ポンプの運転開始))から所定時間経過するまでは、第1及び第2薬注装置6,9による無機凝集剤及び高分子凝集剤の添加量を定常運転時の標準添加量よりも多く(例えばそれぞれ標準添加量の1.5~5倍量)する。これにより、凝集槽2,3での凝集効果が増大し、沈殿槽4で沈殿したスラリーのSS濃度が上昇する。これにより、サイクロン20で分離される汚泥濃度が早期に所定値まで上昇する。
第3,4の実施の形態のようなタイマーによる制御は、特に原水中のSS濃度が安定している(変動幅が比較的小さい)場合に有効である。
【0048】
本発明に係る凝集沈殿装置およびその起動方法は、ヤード排水の処理に好適であるが、その他の各種排水の処理にも適用可能である。
本発明によける凝集沈殿装置の「起動」とは、新設装置の運転開始時だけでなく、メンテナンスや搬送など各槽の水を一旦抜いた後の初回の運転開始時も含まれる。
【0049】
本発明において使用する無機凝集剤や高分子凝集剤の種類はとくに限定されず、無機凝集剤としては、たとえばポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄などを使用できる。高分子凝集剤としては、たとえばノニオン性、カチオン性、アニオン性あるいは両性の高分子凝集剤を用いることができる。
【0050】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の態様とされてもよい。例えば、
図1,2の実施の形態では、SS計は配管27に設けられているが、配管21又は25に設けられてもよい。また、
図2、
図4の態様において、各種凝集剤の添加量を増大させる期間は、バルブ26を開としている期間の一部であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,1A,1B,1C 凝集沈殿装置
2 第1凝集槽
3 第2凝集槽
4 沈殿槽
6 第1薬注装置
9 第2薬注装置
20 サイクロン
23,26 バルブ
28 SS計
30,32 制御器
31 タイマー