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特許7139886孔を有するガラス基板の製造方法、およびアニール用ガラス積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】孔を有するガラス基板の製造方法、およびアニール用ガラス積層体
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/09 20060101AFI20220913BHJP
   C03B 25/02 20060101ALI20220913BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20220913BHJP
【FI】
C03B33/09
C03B25/02
B23K26/382
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018204276
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020070206
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】礒部 衛
(72)【発明者】
【氏名】森 重俊
(72)【発明者】
【氏名】堀内 浩平
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-107510(JP,A)
【文献】特開2015-213949(JP,A)
【文献】国際公開第2014/163130(WO,A1)
【文献】特開2017-066027(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129255(WO,A1)
【文献】特開2005-249372(JP,A)
【文献】特開2002-114537(JP,A)
【文献】国際公開第2012/161317(WO,A1)
【文献】特開2000-178036(JP,A)
【文献】特開2015-006959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/09
C03B 25/02
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する第1の表面と第2の表面を有するガラス基板を準備する工程と、
前記ガラス基板にレーザを用いて孔を形成する工程と、
前記ガラス基板を、前記ガラス基板との熱膨張係数の差が1ppm/K以下である熱膨張係数を備えた第1の支持基板の上に設置し、前記第1の支持基板を、熱膨張係数が10ppm/K以下である、第2の支持基板上に設置し、前記ガラス基板をアニールする工程と、
を備え
前記第1の支持基板は、前記第2の支持基板の平面の上に設置され、
前記第2の支持基板の前記平面は、前記第1の支持基板の下面よりも大きく、前記第1の支持基板の下面全体に接する、
孔を有するガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス基板にレーザを用いて孔を形成する工程は、
前記ガラス基板の前記第1の表面に、レーザを照射することにより、前記ガラス基板に孔を形成する、請求項1に記載の孔を有するガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記アニールする工程の後、前記ガラス基板をエッチングする工程を有する、請求項2に記載の孔を有するガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記孔を形成する工程の後、前記アニールする工程の前において、前記ガラス基板の、前記孔の周辺の残留応力が、50MPa以上である、請求項2又は3に記載の孔を有するガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス基板にレーザを用いて孔を形成する工程は、
前記ガラス基板の前記第1の表面に、1100nm以下の波長を有するパルスレーザを照射し、前記ガラス基板に改質部を形成する工程と、
前記改質部をエッチングにより除去することで、前記ガラス基板に孔を形成する工程を含む、請求項1に記載の孔を有するガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記孔を形成する工程の後、前記アニールする工程の前において、前記ガラス基板の、前記孔の周辺の残留応力が、30MPa以下である、請求項5に記載の孔を有するガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記第1の支持基板の、前記ガラス基板と接する第1の表面の、算術平均粗さRaが0.1μm以上、2.0μm以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1の支持基板は、前記ガラス基板より大きことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項9】
前記第2の支持基板の前記平面の平面度が600μm以下である、請求項1~8のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1の支持基板は、前記ガラス基板と同組成のガラスである、請求項1~9のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項11】
孔を有するガラス基板と、
前記ガラス基板の下に設置された第1の支持基板と、
前記第1の支持基板の下に設置された第2の支持基板を備え、
前記第1の支持基板は、前記ガラス基板との熱膨張係数の差が1ppm/K以下の熱膨張係数を備え、
前記第2の支持基板の熱膨張係数は10ppm/K以下であり、
前記第1の支持基板は、前記第2の支持基板の平面の上に設置され、
前記第2の支持基板の前記平面は、前記第1の支持基板の下面よりも大きく、前記第1の支持基板の下面全体に接する、
アニール用ガラス積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔を有するガラス基板の製造方法、およびアニール用ガラス積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板に微細孔を形成する方法として、従来、レーザを用いる方法が知られている。例えば、特許文献1には、COレーザを用いる方法や、短パルスレーザを用いる方法が記載されている。
【0003】
COレーザを照射してガラス基板に孔を形成する方法では、ガラス基板がCOレーザを吸収し、熱溶融することにより孔が形成されるため、孔周辺の領域に熱溶融により残留応力が発生する。残留応力を緩和する方法として、孔を形成したガラス基板をアニールすることが知られている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-107510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ガラス基板をアニールする際に、ガラス基板を設置している支持基板と、ガラス基板の間に摩擦が生じることにより、ガラス基板の表面に傷が発生してしまうという課題があった。特に、アニール時にガラス基板が膨張、収縮することで、支持基板とこすれるため、放射状の傷が顕著であった。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、孔を有するガラス基板の製造方法において、ガラス基板表面に傷が発生しにくいアニール方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
相互に対向する第1の表面と第2の表面を有するガラス基板を準備する工程と、
前記ガラス基板にレーザを用いて孔を形成する工程と、
前記ガラス基板を、前記ガラス基板との熱膨張係数の差が1ppm/K以下である熱膨張係数を備えた第1の支持基板の上に設置し、前記第1の支持基板を、熱膨張係数が10ppm/K以下である、第2の支持基板上に設置し、前記ガラス基板をアニールする工程と、
を備え
前記第1の支持基板は、前記第2の支持基板の平面の上に設置され、
前記第2の支持基板の前記平面は、前記第1の支持基板の下面よりも大きく、前記第1の支持基板の下面全体に接する、
孔を有するガラス基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、ガラス基板表面への傷発生を抑制しつつ、アニールを行う事で、孔周辺の残留応力を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のアニール時のガラス基板の設置形態を模式的に示した側面図である。
図2】本発明のアニール時のガラス基板の熱収縮方向を示した上面図である。
図3】本発明の第1の実施形態による孔を有するガラス基板の製造フローを模式的に示した図である。
図4】本発明の第1の実施形態におけるレーザ照射装置を概略的に示した図である。
図5】本発明の第2の実施形態による孔を有するガラス基板の製造フローを模式的に示した図である。
図6】本発明の第2の実施形態におけるレーザ照射装置を概略的に示した図である。
図7】本発明の第2の実施形態においてガラス基板に改質部、孔が形成される様子を模式的に示した側面図である。
図8】本発明の実施例1におけるガラス基板表面全体の傷の図である。
図9】本発明の実施例1におけるガラス基板表面の傷の拡大図である。
図10】本発明の比較例1におけるガラス基板表面全体の傷の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
はじめに、本発明の製造方法におけるアニールする工程について図1図2を用いて説明する。
【0011】
図1はアニールする工程におけるガラス基板20の設置形態を示した側面図である。図1に示すように、ガラス基板20は、ガラス基板20と熱膨張係数の差が1ppm/K以下である熱膨張係数を備えた第1の支持基板110の上に設置され、第1の支持基板110は、熱膨張係数が10ppm/K以下である第2の支持基板120の上に設置される。本明細書において、ガラスの熱膨張係数としては、50℃から200℃までの温度範囲における平均値を採用する。50℃から200℃までの温度範囲は、ガラスの熱膨張係数を測定するときの温度範囲として一般的なものである。また、ガラスの温度が200℃を超えると、ガラスの熱膨張が抑制される傾向にある。第1の支持基板110は、第1の表面110bと第2の表面110cを有し、第2の支持基板120は、第1の表面120bと第2の表面120cを有する。第1の支持基板110の第1の表面110bは、ガラス基板20の第2の表面20cと変位可能に接し、第1の支持基板110の第2の表面110cは、第2の支持基板120の第1の表面120bと変位可能に接している。
【0012】
第1の支持基板110は、ガラス基板20との熱膨張係数の差が1ppm/K以下である熱膨張係数を備えたものが選択される。熱膨張係数の差がこの範囲にあることで、室温からアニール温度まで昇温する過程において、ガラス基板20の第2の表面20cと第1の支持基板110の第1の表面110bとの摩擦を抑制できる。また、アニール温度から室温に向けて降温する過程において、ガラス基板20の第2の表面20cと第1の支持基板110の第1の表面110bとの摩擦を抑制できる。その結果、摩擦によるキズの発生を有意に抑制できる。熱膨張係数の差は、好ましくは0.1ppm/K以下、より好ましくは0.05ppm/K以下であると、より一層傷の発生を抑制できる。
【0013】
第1の支持基板110が上記の条件を満たすことで、特に放射状傷の抑制に効果を奏する。ガラス基板20は、アニール時に熱膨張を起こす。図2は、ガラス基板20の熱膨張方向を模式的に示した上面図である。ガラス基板20は、室温からアニール温度まで昇温される過程で、図2の矢印の方向に熱膨張する。従って、ガラス基板20の第2の表面20cと第1の支持基板110の第1の表面110bの間の摩擦が、特に図2中の矢印の方向に発生するため、ガラス基板20の第2の表面20cに放射状の傷が発生する。ガラス基板20と熱膨張係数の差が小さい第1の支持基板110を用いることで、この傷を有意に抑制できる。
【0014】
第1の支持基板110の材質は、アニール温度において形状が保たれるものであれば、特に限られない。例えば金属、セラミックス、ガラスなどであってよい。好ましくはガラスが選択されると、ガラス基板20と組成や物性が近く、傷の発生を抑制しやすいだけでなく、高温下でガラス基板と支持基板との化学反応による表面の変質を抑制しやすい。より好ましくはガラス基板20と同組成のガラスが選択される。ガラス基板20と同組成のガラスを用いることで、熱膨張係数の差をほとんど無くすことができる。
【0015】
第1の支持基板110の第1の表面110bには、粗面化処理が施されても良い。好ましくは、表面粗さは、算術平均粗さRaで0.1μm以上であると、ガラス基板20の第2の表面20cと密着し、剥離が困難になる現象を抑制できるため、好ましい。より好ましくは、Raが0.2μm以上、更に好ましくはRaが0.3μm以上であると、効果的である。一方、Raが2.0μm以下であると、ガラス基板20の第2の表面20cに傷が発生することを抑制できるため、好ましい。より好ましくはRaが1.5μm以下、更に好ましくはRaが1.0μm以下であると、効果的である。
【0016】
前記粗面化処理の方法は、特に限られない。例えばサンドブラストによる処理やヘアライン形成などによる機械的な方法であっても良く、薬液処理などの化学的な方法であっても良い。また、機械的な方法と化学的な方法を組み合わせてもよい。
【0017】
また、第1の支持基板110とガラス基板20の密着防止のためには、上記粗面化処理以外の方法を用いても良い。例えば、第1の支持基板110の第1の表面110bには、粗面化処理の代わりにコーティングが施されても良く、第1の支持基板110とガラス基板20の間に保護膜が設置されても良い。
【0018】
第1の支持基板110は、ガラス基板20よりも大きなものが選定されることが好ましい。このようにすることで、支持基板により支持されていないガラス基板20の外周部が、加熱により軟化し、自重により垂れ下がり歪むことを回避できる。
【0019】
第1の支持基板110の第1の表面110bの辺は、面取りされていても良い。面取りすることで、第1の支持基板の角や辺と衝突することによりガラス基板20の表面に傷が生じることや、第1の支持基板の角や辺が欠け、破片によりガラス基板20の表面に傷が生じることを抑制できる。
【0020】
第2の支持基板120は熱膨張係数が10ppm/K以下のものが選択される。熱膨張がこの範囲にある支持基板を選択することで、第2の支持基板は室温からアニール温度まで昇温される過程およびアニール温度から室温に向けて降温される過程においてほとんど変形しない。繰り返しの使用(つまり加熱と冷却の繰り返し)による第2の支持基板120の変形を抑制できるので、第1の支持基板110、及びガラス基板20をサポートし、これらの形状が歪むことを抑制できる。第2の支持基板120の熱膨張係数は、好ましくは5ppm/K以下、より好ましくは1ppm/K以下であると、より変形が少なく、効果的である。
【0021】
第2の支持基板120の、第1の支持基板110と接する第1の表面120bの、平面度は、600μm以下であることが好ましい。第2の支持基板120の平面度が上記範囲にあることで、第2の支持基板120上に設置された第1の支持基板110及びガラス基板20の平面度を保つことができるため、孔を有するガラス基板を歪みなく製造できる。
【0022】
第2の支持基板120は、第1の支持基板110より大きなものが選択される。このようにすることで、第1の支持基板110、ガラス基板20の外周部が、第2の支持基板からはみ出し、加熱により軟化し垂れ下がることを防ぎ、平面確保できる。
【0023】
第2の支持基板120の材質は、アニール温度において変形が小さいものあれば、特に限られない。例えば、石英ガラスや、セラミックスなどは、アニール温度における変形が小さく、好ましい。
【0024】
第2の支持基板が石英ガラスなどのガラス体の場合、その歪点がアニール温度以上のものが選択されることが好ましい。
【0025】
以上のような構成で、ガラス基板20をアニールする。ガラス基板20は、歪点以上、軟化点以下の温度で、100分以上保持されることが好ましい。より好ましくは、保持時間は300分以上であると良い。更に、40℃まで200分以上の時間で降温されることが好ましく、400分以上の時間で降温されることがより好ましい。このようにすることで、ガラス基板20の孔22周辺の残留応力を十分に取り除くことができる。
【0026】
アニールする工程を以上のように行う事で、傷の発生を抑制し、孔を有するガラス基板を製造できる。
【0027】
加えて、以上のようなアニールする工程を行う事で、後の工程で熱収縮が発生しにくくなる効果を奏する。本発明により製造される孔を有するガラス基板を、インターポーザにする場合、後の工程で孔22に導電材料を充填し、熱処理する工程が設けられる。しかし、この熱処理時に、ガラス基板20が熱収縮を起こし歪んでしまうという課題があった。これは、ガラス基板の製造後に再加熱することにより、ガラスの微小な構造変化が発生することが原因であった。しかし、本発明のようなアニールする工程を設けることで、アニール時に前記構造変化が発生するため、後の工程で熱処理を行った場合には構造変化を起こさず、ガラス基板が熱収縮しにくくなる。
【0028】
次に、本発明の製造方法における各工程についての詳細を説明する。第1の実施形態は、どのような種類のレーザを用いて孔を形成する場合にも適用可能な方法である。特に、第1の実施形態は、ガラス基板への熱的影響が大きなレーザを用いて孔を形成する場合に有効である。一方、第2の実施形態は、ガラス基板への熱的影響が小さなレーザを用いて孔または改質部を形成した場合に有効であり、第1の実施形態より更に傷の影響を小さくできる。
【0029】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態による孔を有するガラス基板の製造方法について、図3図4を参照にしながら説明する。第1の実施形態におけるレーザ照射では、使用するレーザは特に限られないが、以下では、ガラス基板の熱的影響が比較的大きなCOレーザを使用する場合について説明する。
【0030】
図3には、本発明の第1の実施形態による孔を有するガラス基板の製造方法のフローを模式的に示す。
【0031】
図3に示すように、本発明の第1の実施形態における、孔を有するガラス基板の製造方法では、
(工程S310)相互に対向する第1および第2の表面を有するガラス基板を準備する工程(ガラス基板準備工程と)、
(工程S320)前記ガラス基板の第1の表面に、COレーザを照射することにより、孔を形成する工程(孔形成工程)と、
(工程S330)前記ガラス基板を、前記ガラス基板との熱膨張係数の差が1ppm/K以下である熱膨張係数を備えた第1の支持基板の上に設置し、前記第1の支持基板を、熱膨張係数が10ppm/K以下である、第2の支持基板上に設置し、前記ガラス基板をアニールする工程(アニール工程)と、
(工程S340)前記ガラス基板をエッチングする工程(エッチング工程)と、
を有する。
【0032】
なお、工程S340(エッチング工程)は任意の工程であり、実施されなくても良い。
【0033】
以下、図4を参照して、各工程について説明する。
【0034】
(工程S310)
まず、被加工用のガラス基板20が準備される。ガラス基板は相互に対向する第1の表面20bおよび第2の表面20cを有する。
【0035】
(工程S320)
次に、レーザを用いてガラス基板に孔を形成する。孔形成工程には、例えば図4に示すレーザ照射装置を使用できる。図4に示すように、レーザ照射装置400は、ステージ410、レーザ発振器430、集光レンズ440を有する。ガラス基板20は、第2の表面20cをステージの側にして設置される。ガラス基板は、ステージに固定されても良い。固定方法は特に限られないが、冶具などで抑えられても良く、吸着固定または接着固定されても良い。吸着は、例えば真空吸着、または静電吸着等である。
【0036】
次に、レーザ発振器430からレーザビーム435が発振される。レーザは連続発振されても良く、パルス発振されても良い。
【0037】
レーザビーム435は、集光レンズ440に入射し、集光されてレーザビーム445となる。なお、レーザ照射装置400の構成は、これに限られず、例えばレーザ発振器430と集光レンズ440の間にビーム調整光学系を有しても良い。
【0038】
レーザビーム445は、ガラス基板20の第1の表面20bに入射し、孔22を形成する。
【0039】
ここで、第1の実施形態におけるレーザ発振器430には例えばCOレーザが選択される。なお、上述のように、レーザ発振器430は、これに限られない。レーザ発振器430は、例えばHe-Neレーザ、Arイオンレーザ、エキシマXeFレーザ、Er:YAGレーザ、Nd:YAGレーザ、Nd:YAGレーザの第2高周波、第3高周波、ルビーレーザ、ファイバーレーザなどであって良い。
【0040】
COレーザ等、赤外領域の波長を有するレーザは、ガラス基板に吸収されるという特徴がある。このようなレーザを用いて加工を行う場合、レーザビーム445の入射により、ガラス基板20が熱溶融することで孔22が形成される。また熱溶融したことにより、加工後のガラス基板20の孔22の周辺には残留応力が発生する。形成後の孔22の周辺の残留応力は、例えば50MPa以上である。
【0041】
(工程S330)
そこで、前記ガラス基板を、前記ガラス基板との熱膨張係数の差が1ppm/K以下である熱膨張係数を備えた第1の支持基板の上に設置し、前記第1の支持基板を、熱膨張係数が10ppm/K以下である、第2の支持基板上に設置し、前記ガラス基板をアニールする。
ガラス基板20をアニールすることで、孔22周辺の残留応力を取り除くことができる。孔22周辺の残留応力を取り除くことで、開口部周辺の割れ欠け、クラック発生を抑制することができる。
【0042】
加えて、アニール工程にはガラス基板20が後の工程で熱収縮することを抑制する効果を奏する。本発明により製造される孔を有するガラス基板を、インターポーザにする場合、後の工程で孔22に導電材料を充填し、熱処理する工程が設けられる。しかし、この熱処理時に、ガラス基板20が熱収縮を起こし歪んでしまうという課題があった。これは、ガラス基板を再加熱することにより、ガラスの微小な構造変化が発生することが原因であった。しかし、本発明におけるアニール工程を実施することで、アニール時に上記構造変化が発生するため、後の工程で熱処理を行った場合には構造変化を起こさず、ガラス基板が熱収縮しにくくなる。
【0043】
また、孔内壁を平滑化する目的や、孔径を拡大する目的で、レーザによる孔形成工程に続いてエッチング工程を設ける場合、アニール工程はエッチング工程の前に行われることが好ましい。
このようにすることで、孔周辺の残留応力によりエッチングの進行がばらつき、孔内壁が凹凸になることを防ぐことができる。
【0044】
本発明におけるアニール工程では、上述のように、ガラス基板の孔周辺の残留応力を緩和し、後の工程でガラス基板が熱収縮することを防止しつつも、傷の発生を抑制することができる。
【0045】
(工程S340)
アニール工程後、ガラス基板20をエッチングしても良い。なお、この工程は必要が無ければ省略されても良い。エッチングすることにより、孔22の内壁を平滑化し、デブリを除去することができる。エッチング時間を調整することで、必要に応じて孔径を拡大することもできる。アニール工程をエッチング工程の前に実施したことにより、エッチングの進行が不均一になることを抑制できる。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による孔を有するガラス基板の製造方法について、図5図7を用いて説明する。第2の実施形態は、ガラス基板に与える熱影響が比較的小さなレーザ照射工程を有する場合に有効である。特に、第2の実施形態ではエッチング工程を実施するが、第1の実施形態の工程S340でエッチングする場合に比べ、更に傷を抑制することができる。
【0047】
図5には、本発明の第2の実施形態による孔を有するガラス基板の製造方法のフローを模式的に示す。図7は、ガラス基板にレーザ照射工程で改質部が形成され(b)、エッチング工程で孔が形成される(c)様子を模式的に示したガラス基板の断面図である。
【0048】
図5に示すように、本発明の第2の実施形態における、孔を有するガラス基板の製造方法では、
(工程S510)相互に対向する第1および第2の表面を有するガラス基板を準備する工程(ガラス基板準備工程と)、
(工程S520)前記ガラス基板の第1の表面に、1100nm以下の波長を有するパルスレーザを照射し、ガラス基板に改質部を形成する工程(レーザ照射工程)と、
(工程S530)前記改質部をエッチングにより除去することで、前記ガラス基板に孔を形成する工程(エッチング工程)と、
(工程S540)前記ガラス基板を、前記ガラス基板との熱膨張係数の差が1ppm/K以下である熱膨張係数を備えた第1の支持基板の上に設置し、前記第1の支持基板を、熱膨張係数が10ppm/K以下である、第2の支持基板上に設置し、前記ガラス基板をアニールする工程(アニール工程)と、
を有する。
【0049】
(工程S510)
まず、ガラス基板20が準備される。ガラス基板20は相互に対向する第1の表面20bおよび第2の表面20cを有する。
【0050】
(工程S520)
次に、ガラス基板に1100nm以下の波長を有するパルスレーザを照射することにより、ガラス基板20に改質部21を形成する。例えば、パルスレーザの照射には、例えば、図6に示すようなレーザ照射装置を使用できる。図6に示すように、レーザ照射装置600は、ステージ610、ファンクションジェネレータ620、レーザ発振器630、集光レンズ640を有する。ガラス基板20は、第2の表面20cをステージの側にして設置される。ガラス基板は、ステージに固定されても良い。固定方法は特に限られないが、冶具などで抑えられても良く、吸着固定または接着固定されても良い。吸着は、例えば真空吸着、または静電吸着等である。
【0051】
まず、ファンクションジェネレータ620にゲート信号が入力される。ファンクションジェネレータ620は、入力されたゲート信号に対して、所定の矩形波信号を出力する。矩形波信号は、レーザ発振器630に入力され、レーザ発振器630は矩形波信号に基づきパルスレーザビーム635を発振する。
【0052】
パルスレーザビーム635は、集光レンズ640に入射し、集光されてパルスレーザビーム645となる。なお、レーザ照射装置600の構成は、これに限られず、例えばレーザ発振器630と集光レンズ640の間にビーム調整光学系を有しても良い。
【0053】
パルスレーザビーム645は、ガラス基板20の第1の表面20bに入射し、改質部21を形成する。図7(b)は、パルスレーザビーム645の照射により、ガラス基板20に改質部21が形成される様子を模式的に示している。
【0054】
なお、レーザの照射条件によっては、改質部の代わりに孔が形成されても良く、改質部の中心付近に微細な孔が形成されてもよい。孔はガラス基板20を貫通していても、不連続な空洞部が形成されたボイド状であってもよい。改質部を伴う加工であると、熱影響が特に少なく、好ましい。
【0055】
ここで、レーザは、ガラス基板20への吸収率が低い波長を有するものを、パルス発振して使用することで、上記改質部や孔を形成できる。
【0056】
パルスレーザビーム645の波長は、好ましくは1100nm以下であり、より好ましくは850nm以下であり、更に好ましくは360nm以下である。ガラスへの吸収率が低い波長域のレーザを用いて加工を行う事により、孔形成時のガラス基板の熱溶融を抑制できるため、孔周辺の応力を小さくでき、好ましい。また、紫外光をはじめとした短波長レーザは高いエネルギーを有するため、ガラスでの多光子吸収現象が発生しやすく、ガラス基板への孔や改質部形成に好適である。従って、パルスレーザビーム645の波長が上記のような範囲であると、熱影響が少なく、改質部や孔を形成できる。
【0057】
1100nm以下の波長を有するレーザとして、例えば、Nd:YAGレーザ(波長約1064nm)、Nd:YAGレーザの第2高周波(波長約532nm)、第3高周波(波長約355nm)、第4高周波(波長約266nm)、エキシマXeFレーザ(波長約351nm)、エキシマXeClレーザ(波長約308nm)、エキシマKrFレーザ(波長約248nm)、エキシマArFレーザ(波長約193nm)、ファイバーレーザ(波長約1060nm)などがあげられる。なお、これらのレーザは一例であって、その他の種類のレーザを用いても良い。
【0058】
パルスレーザビーム645のパルス幅は、好ましくは1nsec未満であり、より好ましくは100psec以下であり、更に好ましくは10psec以下である。パルス幅が上記範囲であると、1パルス内のレーザビームのピークが、ガラス内に多光子吸収現象を発生させるのに十分な強度であるため、改質部や孔が形成しやすく、熱影響が小さい。また、パルス幅は、一般的に100fsec以上のものが用いられる。これは汎用レーザ技術の下限値である。
【0059】
(工程S530)
次に、改質部21をエッチングにより除去することで、ガラス基板20に孔22を形成、拡大する。
【0060】
第2の実施形態では、ガラス基板への熱影響が小さい方法でレーザ照射を行っているため、エッチング工程の前にアニール工程を行う必要がない。レーザ照射後の、改質部または孔周辺の残留応力は、例えば30MPa以下であり、より好ましくは20MPa以下である。残留応力がこの範囲であると、アニール工程を設けずにエッチング工程を行った場合にもエッチングが均一に進む。
【0061】
図7(c)には、エッチングにより改質部21が除去され、孔22が形成された様子を模式的に示す。図7(c)中の点線は、エッチング前のガラス基板20と、改質部21の境界を示しており、実線は、エッチング後のガラス基板20と、改質部21が除去され形成された孔22の境界を示している。
【0062】
ガラス基板20が改質部21を有する場合、改質部21のエッチングレートが非改質部よりも高いため、改質部21が選択的に除去されガラス基板に孔22が形成される。また、ガラス基板に孔22が形成された後、エッチングを継続することで孔22の直径が拡大する。
【0063】
エッチング液は、ガラスに対するエッチングレートよりも改質部に対するエッチングレートが早いものが選択される。例えば、フッ酸、硫酸、硝酸、塩酸などの化合物、前記化合物の水溶液、または前記化合物のうち2種類以上を混合した溶液であってもよい。
【0064】
エッチング時間は、改質部の大きさや、目的とする孔径に応じて選択される。エッチング時間を調節することで、孔径を制御できる。
【0065】
(工程S540)
次に、孔22が形成されたガラス基板20をアニールする。従来、短波長のパルスレーザ用いて改質部21を形成する方法では、上述のように熱溶融による孔周辺の残留応力が発生しにくいため、アニールが不要なプロセスとして知られていた。しかし、このプロセスであっても、上述のように、インターポーザ製造過程において導電性材料を孔に充填し熱処理を行う工程で、ガラス基板が熱収縮し、歪むという問題が生じる。そのため、短波長のパルスレーザを用いる方法であっても、ガラス基板をアニールする工程を設けることにより、後の熱処理工程で熱収縮を抑制できる。
【0066】
更に、第2の実施形態では、エッチング工程の後にアニール工程を行うことで、ガラス基板表面への深い傷の発生を抑制できる。このことについて、以下で説明する。
【0067】
第1の実施形態のように、COレーザなどの熱加工を利用してガラス基板に孔を形成する方法では、レーザ照射によって孔周辺に生じた残留応力を、アニール工程により緩和することで、エッチング工程において孔内壁に対するエッチング進行のばらつきを抑制する必要があった。一方、第2の実施形態では、短波長のパルスレーザを用いて、熱影響の小さい方法により改質部を形成するため、残留応力が小さく、アニール工程をエッチング工程の後に行う事が出来る。
【0068】
エッチング工程の後にアニール工程を行うので、アニール工程の後にエッチング工程を行う場合とは異なり、アニール工程においてハンドリングや支持基板との摩擦によってできた傷がエッチング工程により深化・拡大することを防止できる。これにより、(1)アニール工程後には浅く、問題にならない程度であった傷が、その後のエッチング工程により顕在化することを防げるため、傷の数を減らすことができる。エッチング工程の後にアニール工程を行うからである。
【0069】
更に、(2)アニール工程後に顕在化している傷が、その後のエッチング工程により深化、拡大することも防止できる。エッチング工程の後にアニール工程を行うからである。ガラス基板をインターポーザとして使用する場合、ガラス基板上の傷は、ガラス基板上に形成される配線に断線などの不具合が生じさせる虞があるため望ましくない。特に、大きな傷や深い傷では不具合を生じさせる可能性が高い。従って、傷の数を減らすだけではなく、傷の深化、拡大を抑制することは、インターポーザ生産において製品品質を向上させる、または一定の品質を満たす製品の歩留りを向上させる上で重要である。
【0070】
このように、第2の実施形態ではアニール工程をエッチング工程の後に行う事により、顕在化する傷の数を減らし、更に傷の深化、拡大を防ぐことができるため、より傷影響の少ないガラス基板を製造できる。
【0071】
(アニール用ガラス積層体)
本発明体のアニール用ガラス積層体は、図1に示した構成のガラス積層体であり、第1、第2の実施形態におけるアニール工程で用いられる。図1に示すように、孔を有するガラス基板20と、前記ガラス基板の下に設置された第1の支持基板110と、前記第1の支持基板110の下に設置された第2の支持基板120を備え、前記第1の支持基板110は、前記ガラス基板20との熱膨張係数の差が1ppm/K以下の熱膨張係数を備え、前記第2の支持基板120の熱膨張係数は10ppm/K以下である。
【実施例
【0072】
(実施例1)
前述の第1の実施形態に記載の方法を用いて、以下の手順で孔を有するガラス基板を製造した。
【0073】
まず、対向する表面を有するガラス基板を準備した。ガラス基板には、400mm×300mm×厚さ0.4mmの矩形状の無アルカリガラスを用いた。ガラス基板の熱膨張係数は3.8ppm/Kであった。歪点は、670℃、軟化点は、950℃であった。
【0074】
次に、図4に示す構成のレーザ照射装置を使用し、ガラス基板にレーザを照射して、複数の貫通孔を形成した。レーザ発振器には、波長10.6μmのCOレーザ用い、レーザは連続発振させた。
【0075】
次に、アニール工程を行った。アニール工程は徐冷炉を使用して行われた。ガラス基板は、図1に示したような構成で設置し、アニールを行った。すなわち、ガラス基板は第1の支持基板上に設置され、第1の支持基板は、第2の支持基板上に設置された。ガラス基板は、第2の表面を第1の支持基板の側にして設置され、第1の支持基板は、第2の表面を第2の支持基板の側にして設置された。
【0076】
第1の支持基板には、孔を形成したガラス基板と同一組成のガラスを用いた。そのため、ガラス基板と第1の支持基板の熱膨張係数に差はなかった。第1の支持基板の寸法は、830mm×700mm×厚さ0.6mmであった。第1の支持基板の、ガラス基板と接する第1の表面は、エッチングにより粗面化されており、表面粗さはRaが0.45μmであった。
【0077】
第2の支持基板には、熱膨張係数が0.55ppm/Kである石英ガラスを用いた。また、第2の支持基板の寸法は、940mm×750mm×厚さ3mmであった。
【0078】
ガラス基板は、徐冷炉内に、711℃で2時間保持された後、12℃/hで650℃まで降温され、その後自然放冷された。
【0079】
以上の工程により、孔を有するガラス基板を製造した。アニール工程後のガラス基板の第2の表面の写真を図8に示した。図9には、傷の拡大写真を示した。
【0080】
(実施例2)
実施例1において得られた孔を有するガラス基板について、エッチング工程を実施する。孔が形成されガラス基板を、フッ酸溶液に浸漬し、エッチングを行う。アニール工程の後にエッチング工程を実施することにより、孔内壁が凸凹になるのを防ぎつつ、孔内壁を平滑化し、孔径を拡大できる。
【0081】
(実施例3)
次に、第2の実施形態に記載の製造方法で、孔を有するガラス基板を製造する方法について説明する。
【0082】
ガラス基板は、実施例1と同様のものを準備する。
【0083】
次に、図6に示すレーザ照射装置を用いて、ガラス基板にレーザを照射し、複数の改質部を形成した。レーザには、波長532nmのパルスレーザを使用し、パルス幅は10psとする。
【0084】
次に、エッチング工程を行う。改質部が形成されたガラス基板を、5パーセント濃度のフッ酸溶液に浸漬し、エッチングを行う。これにより、改質部が除去され、ガラス基板に孔が形成される。
【0085】
次に、アニール工程を行う。アニール工程は、実施例1と同様の条件下で行う。
【0086】
これにより、孔を有するガラス基板が製造される。
【0087】
(実施例4)
実施例4では、実施例3と同様にレーザ照射工程により改質部を形成した後、実施例3とは異なりエッチング工程の前にアニール工程を行う。アニール工程は、実施例1と同様の条件下で行う。
【0088】
アニール工程の後、エッチング工程を行う。エッチング工程は実施例2と同様の条件下で行う。
【0089】
これにより、孔を有するガラス基板が製造される。
【0090】
(比較例1)
次に、比較例について説明する。まず、実施例1と同様のガラス基板を準備し同様のレーザ照射工程を実施することで、ガラス基板に複数の貫通孔を形成した。
【0091】
次に、アニール工程を行った。ガラス基板は第2の支持基板の上に直接設置された。ガラス基板は、第2の表面を第2の支持基板の側にして設置された。
【0092】
第2の支持基板には、実施例1と同じものを用いた。すなわち、熱膨張係数が0.55ppm/K、寸法940mm×750mm×厚さ3mmの石英ガラス基板であった。従って、ガラス基板と第2の支持基板の熱膨張係数の差は、3.25ppm/Kであった。
【0093】
ガラス基板は、徐冷炉内で711℃で2時間保持された後、12℃/hで650℃降温され、その後自然放冷された。
【0094】
アニール工程後の孔を有するガラス基板の第2の表面の写真を、図10に示した。
【0095】
実施例1の結果(図8)、比較例1の結果(図10)を比較すると、実施例1では、比較例1に比べ、ガラス基板の第2の表面の傷の数が減少したことが分かる。特に、放射状の傷が顕著に抑制されたことが分かる。このように、本発明による製造方法では、ガラス基板の表面の傷を有意に抑制できた。
【0096】
実施例2~4で製造されるガラス基板の第2の表面を比較例1で製造されるガラス基板の第2の表面と比較すると、実施例2~4で製造されるガラス基板の第2の表面では、傷が大幅に減少する。
【0097】
また、実施例3で製造されるガラス基板の第2の表面と、実施例2、実施例4で製造されるガラス基板の第2の表面を比較すると、実施例3の方が、実施例2、実施例4に比べて傷の数が少なく、また深く大きな傷が少ない。実施例3の方が、実施例2、4に比べて傷の数が少なく、また深く大きな傷が少ない理由は、実施例3と実施例2、4とではエッチング工程とアニール工程との順番が異なるからである。実施例3ではエッチング工程の後にアニール工程が行われ、実施例2、4ではアニール工程の後にエッチング工程が行われる。
【0098】
このように、本発明に記載の製造方法によると、ガラス基板表面への傷の発生を抑制しつつ、アニールにより孔周辺やガラス基板全面の残留応力を緩和し、後の工程で熱収縮や歪みが起きにくいガラス基板を製造することができる。
【0099】
更に、アニール工程をエッチング工程の後に行う事で、傷の深化、拡大を抑制し、より顕在化した傷の数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0100】
20 ガラス基板
20b ガラス基板の第1の表面
20c ガラス基板の第2の表面
21 改質部
22 孔
110 第1の支持基板
110b 第1の支持基板の第1の表面
110c 第1の支持基板の第2の表面
120b 第1の支持基板の第1の表面
120c 第1の支持基板の第2の表面
400 レーザ照射装置
410 ステージ
430 レーザ発振器
435 レーザビーム
440 集光レンズ
445 レーザビーム
600 レーザ照射装置
610 ステージ
620 ファンクションジェネレータ
630 レーザ発振器
635 レーザビーム
640 集光レンズ
645 レーザビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10