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特許7139892積層体及びその製造方法、ならびに複合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法、ならびに複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/082 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
B32B15/082 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018206870
(22)【出願日】2018-11-01
(65)【公開番号】P2019084826
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2017212123
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細田 朋也
(72)【発明者】
【氏名】山邊 敦美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】尾澤 紀生
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/030190(WO,A1)
【文献】特開2016-056363(JP,A)
【文献】特開平06-126889(JP,A)
【文献】特開平05-185557(JP,A)
【文献】特開2014-224249(JP,A)
【文献】特開平09-019512(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0010772(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0323208(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101439605(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
B05D 1/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン、チタン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材と、
前記金属基材の表面に接する、下記含フッ素共重合体を含む樹脂層とを有し、
前記樹脂層の前記金属基材とは反対側の表面の1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの最大高さ粗さRzが、50.0nm以上である、積層体を製造する方法であり、
前記金属基材の表面に、下記液状組成物を塗布し、乾燥させて前記樹脂層を形成し、
前記樹脂層の前記金属基材とは反対側の表面をプラズマ処理又はコロナ処理する、積層体の製造方法
含フッ素共重合体:カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単位と、テトラフルオロエチレンに基づく単位とを有する含フッ素共重合体。
液状組成物:液状媒体と、樹脂パウダーとを含み、前記樹脂パウダーが前記液状媒体に分散し、前記樹脂パウダーのD50が0.3~6μmであり、D90が8μm以下であり、樹脂パウダーが、前記含フッ素共重合体を含む樹脂材料からなる液状組成物。
【請求項2】
前記樹脂層の厚さが、10μm未満である、請求項1に記載の積層体の製造方法
【請求項3】
前記樹脂層中の前記含フッ素共重合体の割合が、80質量%以上である、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法
【請求項4】
前記樹脂層の下記熱膨張変化比又は熱収縮変化比が、1.0~1.3である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法
熱膨張変化比又は熱収縮変化比:前記積層体から分離された前記樹脂層について、前記積層体の連続製造時の長さ方向MD、及びMDに直交する方向TDの熱膨張率又は熱収縮率を、熱機械分析装置を用い、測定モード:引張モード、測定温度:30℃から100℃、測定荷重:19.6mN、昇温速度:5℃/分、測定雰囲気:窒素ガスの条件下で測定する。30℃から100℃に推移したときのMDの熱膨張率又は熱収縮率及びTDの熱膨張率又は熱収縮率のうち大きい方の熱膨張率又は熱収縮率xと小さい方の熱膨張率又は熱収縮率yとの比(x/y)を熱膨張変化比又は熱収縮変化比とする。
【請求項5】
前記金属基材が、シート状である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体の製造方法
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体の製造方法により得られた積層体と、前記積層体の前記樹脂層に接する他の基材とを有する複合体を製造する方法であり、
前記積層体と前記他の基材又はその前駆体とを、前記樹脂層と前記他の基材又はその前駆体とが接するように重ねて熱接着して前記複合体を得る、複合体の製造方法。
【請求項7】
前記熱接着の温度が、前記含フッ素共重合体の融点未満である、請求項に記載の複合体の製造方法。
【請求項8】
前記積層体と前記他の基材の前駆体とを、前記樹脂層と前記他の基材の前駆体とが接するように重ねて熱接着して前記複合体を得る方法であり、
前記他の基材の前駆体が、強化繊維と、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方とを含むプリプレグであり、
前記他の基材が、強化繊維と、熱硬化性樹脂の硬化物及び熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方とを含む繊維強化樹脂基材である、請求項に記載の複合体の製造方法。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂の硬化温度が、前記含フッ素共重合体の融点未満であり、
前記熱可塑性樹脂の融点が、前記含フッ素共重合体の融点未満である、請求項に記載の複合体の製造方法。
【請求項10】
前記他の基材の前駆体が、強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むプリプレグであり、
前記他の基材が、強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む繊維強化樹脂基材であり、
前記熱接着の温度が、前記含フッ素共重合体の融点未満である、請求項に記載の複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造方法、ならびに積層体と他の基材とを有する複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン、チタン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金は、機械特性(比強度、比弾性率等)、耐食性等に優れることから、航空機、車両(自動車、鉄道車両等)、スポーツ用具部材等の用途に用いられる。
また、強化繊維及びマトリックス樹脂を含む繊維強化樹脂は、機械特性(比強度、比弾性率、耐衝撃性等)、耐候性、耐薬品性等に優れることから、航空機、車両(自動車、鉄道車両等)、建築、電子機器、スポーツ用具部材等の用途に用いられる。
【0003】
チタン、チタン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金と、繊維強化樹脂とを組み合わせた複合体は、それぞれが単独では発現し得ない高い特性や異なる特性を発現することが期待される。複合体がこのような特性を発揮するためには、チタン、チタン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金と、繊維強化樹脂との接着性が重要となる。
【0004】
チタン又はチタン合金と繊維強化樹脂との接着性に優れた複合体としては、下記のものが提案されている。
(1)イミダゾール化合物によって表面処理されたチタン又はチタン合金と、繊維強化樹脂の前駆体であるプリプレグとが、接着用樹脂を介して接着された複合体(特許文献1)。
【0005】
しかし、(1)の複合体は、接着用樹脂における難燃性、耐薬品性等が不充分である。
接着部分における難燃性、耐薬品性等に優れた複合体としては、下記のものが提案されている。
(2)チタン箔と、接着性官能基を有する含フッ素共重合体のフィルムと、プリプレグとを積み重ねたものを、接着性官能基を有する含フッ素共重合体の融点以上で熱プレスして得られた複合体(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2005/031037号
【文献】国際公開第2017/030190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複合体を製造する際には、熱による複合体の特性の低下を抑えるために、できるだけ低温で熱プレスすることが要求されることがある。しかし、(2)の複合体を製造する際の熱プレスの温度を、接着性官能基を有する含フッ素共重合体の融点未満とすると、層間の接着性が不充分となることがある。
【0008】
本発明は、チタン、チタン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材と、接着性官能基を有する含フッ素共重合体を含む樹脂層とを有する積層体であって、積層体と他の基材又はその前駆体とを含フッ素共重合体の融点未満で熱接着しても樹脂層と他の基材との接着性に優れる積層体を提供する。
本発明は、チタン、チタン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材と、接着性官能基を有する含フッ素共重合体を含む樹脂層とを有する積層体であって、積層体と他の基材又はその前駆体とを含フッ素共重合体の融点未満で熱接着しても樹脂層と他の基材との接着性に優れる積層体を製造できる方法を提供する。
本発明は、チタン、チタン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材と、接着性官能基を有する含フッ素共重合体を含む樹脂層と、他の基材とを順に有する複合体であって、樹脂層と他の基材との接着性に優れる複合体を製造できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の態様を有する。
<1>チタン、チタン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材と、前記金属基材の表面に接する、下記含フッ素共重合体を含む樹脂層とを有し、前記樹脂層の前記金属基材とは反対側の表面の1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの最大高さ粗さRzが、50.0nm以上である、積層体。
含フッ素共重合体:カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単位と、テトラフルオロエチレンに基づく単位とを有する含フッ素共重合体。
<2>前記樹脂層の厚さが、10μm未満である、前記<1>の積層体。
<3>前記樹脂層中の前記含フッ素共重合体の割合が、80質量%以上である、前記<1>又は<2>の積層体。
<4>前記樹脂層の下記熱膨張変化比又は熱収縮変化比が、1.0~1.3である、前記<1>~<3>のいずれかの積層体。
熱膨張変化比又は熱収縮変化比:前記積層体から分離された前記樹脂層について、前記積層体の連続製造時の長さ方向MD、及びMDに直交する方向TDの熱膨張率又は熱収縮率を、熱機械分析装置を用い、測定モード:引張モード、測定温度:30℃から100℃、測定荷重:19.6mN、昇温速度:5℃/分、測定雰囲気:窒素ガスの条件下で測定する。30℃から100℃に推移したときのMDの熱膨張率又は熱収縮率及びTDの熱膨張率又は熱収縮率のうち大きい方の熱膨張率又は熱収縮率xと小さい方の熱膨張率又は熱収縮率yとの比(x/y)を熱膨張変化比又は熱収縮変化比とする。
<5>前記金属基材が、シート状である、前記<1>~<4>のいずれかの積層体。
<6>前記<1>~<5>のいずれかの積層体を製造する方法であり、前記金属基材の表面に前記樹脂層を設け、前記樹脂層の前記金属基材とは反対側の表面をプラズマ処理又はコロナ処理する、積層体の製造方法。
<7>前記金属基材の表面に、下記液状組成物を塗布し、乾燥させて前記樹脂層を形成する、前記<6>の積層体の製造方法。
液状組成物:液状媒体と、樹脂パウダーとを含み、前記樹脂パウダーが前記液状媒体に分散し、前記樹脂パウダーのD50が0.3~6μmであり、D90が8μm以下であり、樹脂パウダーが、前記含フッ素共重合体を含む樹脂材料からなる液状組成物。
<8>前記<1>~<5>のいずれかの積層体と、前記積層体の前記樹脂層に接する他の基材とを有する複合体を製造する方法であり、前記積層体と前記他の基材又はその前駆体とを、前記樹脂層と前記他の基材又はその前駆体とが接するように重ねて熱接着して前記複合体を得る、複合体の製造方法。
<9>前記熱接着の温度が、前記含フッ素共重合体の融点未満である、前記<8>の複合体の製造方法。
<10>前記積層体と前記他の基材の前駆体とを、前記樹脂層と前記他の基材の前駆体とが接するように重ねて積重物を得て、前記積重物を熱接着して前記複合体を得る方法であり、前記他の基材の前駆体が、強化繊維と、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方とを含むプリプレグであり、前記他の基材が、強化繊維と、熱硬化性樹脂の硬化物及び熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方とを含む繊維強化樹脂基材である、前記<8>の複合体の製造方法。
<11>前記熱硬化性樹脂の硬化温度が、前記含フッ素共重合体の融点未満であり、前記熱可塑性樹脂の融点が、前記含フッ素共重合体の融点未満である、前記<10>の複合体の製造方法。
<12>前記他の基材の前駆体が、強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むプリプレグであり、前記他の基材が、強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む繊維強化樹脂基材であり、前記熱接着の温度が、前記含フッ素共重合体の融点未満である、前記<8>の複合体の製造方法。
<13>前記積層体と前記他の基材の前駆体とを、前記樹脂層と前記他の基材の前駆体とが接するように重ねて熱接着して前記複合体を得る方法であり、前記樹脂層が、前記金属基材の表面に、下記液状組成物を塗布し、乾燥させて前記樹脂層を形成する製造方法により得られたものであり、前記積層体が、前記金属基材の表面に前記樹脂層を設け、前記樹脂層の前記金属基材とは反対側の表面をプラズマ処理又はコロナ処理する製造方法により得られたものであり、前記他の基材の前駆体が、強化繊維と、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方とを含むプリプレグであり、前記他の基材が、強化繊維と、熱硬化性樹脂の硬化物及び熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方とを含む繊維強化樹脂基材である、前記<8>の複合体の製造方法。
液状組成物:液状媒体と、樹脂パウダーとを含み、前記樹脂パウダーが前記液状媒体に分散し、前記樹脂パウダーのD50が0.3~6μmであり、D90が8μm以下であり、樹脂パウダーが、前記含フッ素共重合体を含む樹脂材料からなる液状組成物。
<14>前記他の基材の前駆体が、強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むプリプレグであり、前記他の基材が、強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む繊維強化樹脂基材であり、前記熱接着の温度が、前記含フッ素共重合体の融点未満である、前記<13>の複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層体は、積層体と他の基材又はその前駆体とを含フッ素共重合体の融点未満で熱接着しても樹脂層と他の基材との接着性に優れる。
本発明の積層体の製造方法によれば、積層体と他の基材又はその前駆体とを含フッ素共重合体の融点未満で熱接着しても樹脂層と他の基材との接着性に優れる積層体を製造できる。
本発明の複合体の製造方法によれば、樹脂層と他の基材との接着性に優れる複合体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
図2】本発明の積層体の他の例を示す断面図である。
図3】本発明における複合体の一例を示す断面図である。
図4】本発明における複合体の他の例を示す断面図である。
図5】本発明における複合体の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「最大高さ粗さRz」及び「算術平均粗さRa」は、原子間力顕微鏡を用いて測定された粗さ曲線からJIS B 0601:2013(対応国際規格ISO 4287:1997,Amd.1:2009)に基づいて求めた粗さパラメータである。
「樹脂パウダーのD50」は、レーザー回折・散乱法によって求められる体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
「樹脂パウダーのD90」は、レーザー回折・散乱法によって求められる体積基準累積90%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が90%となる点の粒子径である。
「融点」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「溶融成形可能」であるとは、溶融流動性を示すことを意味する。
「溶融流動性を示す」とは、荷重49Nの条件下、樹脂の融点よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が0.1~1000g/10分となる温度が存在することを意味する。
「溶融流れ速度」は、JIS K 7210-1:2014(対応国際規格ISO 1133-1:2011)に規定されるメルトマスフローレイト(MFR)である。
「単量体に基づく単位」は、単量体1分子が重合して直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。本明細書において、単量体に基づく単位を、単に、単量体単位とも記す。
「カルボニル基含有基」とは、構造中にカルボニル基(-C(=O)-)を有する基を意味する。
「酸無水物残基」とは、-C(=O)-O-C(=O)-で表される基を意味する。
図1図5における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
【0013】
<積層体>
本発明の積層体は、金属基材と、金属基材の表面に接する樹脂層とを有する。
本発明の積層体は、樹脂層が金属基材の表面に接しかつ積層体の最外層に位置している限りは、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の層を有していてもよい。
【0014】
図1は、本発明の積層体の一例を示す断面図である。
積層体10は、金属基材12と、金属基材12の第1の表面に設けられた樹脂層14とを有する。
【0015】
図2は、本発明の積層体の他の例を示す断面図である。
積層体10は、金属基材12と、金属基材12の第1の表面及び第2の表面にそれぞれに設けられた樹脂層14とを有する。
【0016】
(金属基材)
金属基材は、チタン、チタン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。
金属基材の形状としては、シート状、板状、立体形状、メッシュ状等が挙げられる。金属基材の形状としては、樹脂層の塗工性や均一性の点から、シート状が好ましい。シート状の金属基材としては、金属箔等が挙げられる。
【0017】
チタンは、いわゆる純チタンである。
純チタンとしては、JIS H 4600:2012に記載の1種~4種等が挙げられる。
【0018】
チタン合金としては、いわゆるα合金、β合金、α+β合金等が挙げられる。
α合金としては、Ti-5Al-2.5Sn、Ti-8Al-V-Mo、Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo-0.1Si、Ti-6Al-5Zr-0.5Mo-0.25Si等が挙げられる。
β合金としては、Ti-13V-11Cr-3Al、Ti-11.5Mo-4.5Sn-6Zr、Ti-4Mo-8V-6Cr-3Al-4Zr、Ti-15Mo-5Zr、Ti-15Mo-5Zr-3Al、Ti-8Mo-8V-2Fe-3Al、Ti-15V-3Cr-3Al-3Sn等が挙げられる。
α+β合金としては、Ti-6Al-4V、Ti-6Al-2Sn-4Zr-6Mo、Ti-6Al-6V-2Sn、Ti-11Sn-5Zr-2.5Al-Mo-1.25Si等が挙げられる。
【0019】
純チタン及びチタン合金としては、通常の使用温度範囲で強度が高い点から、β合金のTi-15V-3Cr-3Al-3Sn、α+β合金のTi-6Al-4Vが好ましい。
【0020】
アルミニウムは、いわゆる純アルミニウムである。
純アルミニウム及びアルミニウム合金としては、JIS H 4000:2014(対応国際規格ISO 209:2007、ISO 6361-1:2011、ISO 6361-2:2011、ISO 6361-3:2011、ISO 6361-4:2011、ISO 6361-5:2011)に記載のアルミニウム及びアルミニウム合金等が挙げられる。
【0021】
(樹脂層)
樹脂層は、後述する含フッ素共重合体Aを含む層である。
樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて含フッ素共重合体A以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0022】
樹脂層中の含フッ素共重合体Aの割合は、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。樹脂層中の含フッ素共重合体Aの割合が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂層と金属基材又は他の基材との接着性がさらに優れる。また、積層体や複合体に難燃性、耐薬品性、耐候性、耐高温高湿性等を充分に付与できる。樹脂層中の含フッ素共重合体Aの割合は、高ければ高いほどよく、上限値は100質量%である。
【0023】
樹脂層の厚さは、積層体や複合体の反りを抑える点及び積層体や複合体の機械強度に優れる点から、50μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下が特に好ましい。樹脂層の厚さは、積層体や複合体に難燃性、耐薬品性、耐候性、耐高温高湿性等を充分に付与できる点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。
【0024】
樹脂層の金属基材とは反対側の表面の1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの最大高さ粗さRzは、50.0nm以上であり、60nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましい。最大高さ粗さRzが前記範囲の下限値以上であれば、樹脂層と他の基材との接着性に優れる。
【0025】
樹脂層の金属基材とは反対側の表面の1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの算術平均粗さRaは、樹脂層と他の基材との接着性がさらに優れる点から、2nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましい。
【0026】
樹脂層の表面の微小範囲を原子間力顕微鏡で測定して得られる粗さ曲線は、通常の触針式表面粗さ計で測定される粗さ曲線とは異なる。通常の触針式表面粗さ計で測定される粗さ曲線は、樹脂層の表面のうねりが加味されたものであるのに対し、原子間力顕微鏡で測定される粗さ曲線は、樹脂層の表面のうねりが加味されることなく、接着性に寄与する純粋な凹凸が反映されている。
【0027】
樹脂層の下記熱膨張変化比又は熱収縮変化比は、1.0~1.3が好ましく、1.0~1.1がより好ましい。熱膨張変化比又は熱収縮変化比が前記範囲内であれば、積層体の反りが抑えられる。
熱膨張変化比又は熱収縮変化比:積層体から分離された樹脂層について、積層体の連続製造時の長さ方向MD、及びMDに直交する方向TDの熱膨張率又は熱収縮率を、熱機械分析装置を用い、測定モード:引張モード、測定温度:30℃から100℃、測定荷重:19.6mN、昇温速度:5℃/分、測定雰囲気:窒素ガスの条件下で測定する。30℃から100℃に推移したときのMDの熱膨張率又は熱収縮率及びTDの熱膨張率又は熱収縮率のうち大きい方の熱膨張率又は熱収縮率xと小さい方の熱膨張率又は熱収縮率yとの比(x/y)を熱膨張変化比又は熱収縮変化比とする。
【0028】
(含フッ素共重合体A)
含フッ素共重合体Aは、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、「接着性官能基」とも記す。)を有する単位(以下、「接着性官能基含有単位」とも記す。)と、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位とを有する。含フッ素共重合体Aは、接着性官能基含有単位及びTFE単位以外の他の単位を有していてもよい。
【0029】
含フッ素共重合体Aとしては、積層体の製造が容易である点から、溶融成形可能なものが好ましい。
含フッ素共重合体Aの融点は、150~320℃が好ましく、260~320℃がより好ましく、280~320℃がさらに好ましく、295~315℃が一層好ましく、295~310℃が特に好ましい。含フッ素共重合体Aの融点が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂層の耐熱性に優れる。含フッ素共重合体Aの融点が前記範囲の上限値以下であれば、含フッ素共重合体Aの溶融成形性に優れる。
含フッ素共重合体Aの融点は、含フッ素共重合体Aを構成する単位の種類や割合、含フッ素共重合体Aの分子量等によって調整できる。例えば、TFE単位の割合が多くなるほど、融点が上がる傾向がある。
なお、150~220℃、好ましくは170~200℃程度の比較的低い融点を有する含フッ素共重合体Aを用いると、熱接着の温度を低くしても本発明の積層体と他の基材との接着性が良好になる。
【0030】
含フッ素共重合体Aの融点よりも20℃以上高い温度における含フッ素共重合体Aの溶融流れ速度は、0.1~1000g/10分が好ましく、0.5~100g/10分がより好ましく、1~30g/10分がさらに好ましく、5~20g/10分が特に好ましい。溶融流れ速度が前記範囲の下限値以上であれば、含フッ素共重合体Aの溶融成形性に優れ、樹脂層の外観に優れる。溶融流れ速度が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂層の機械特性に優れる。
溶融流れ速度は、含フッ素共重合体Aの分子量の目安であり、溶融流れ速度が大きいと分子量が小さく、溶融流れ速度が小さいと分子量が大きいことを示す。
含フッ素共重合体Aの溶融流れ速度は、含フッ素共重合体Aの製造条件によって調整できる。例えば、単量体の重合時に重合時間を短縮すると溶融流れ速度が大きくなる傾向がある。
【0031】
接着性官能基含有単位における接着性官能基としては、樹脂層と金属基材又は他の基材との接着性がさらに優れる点から、カルボニル基含有基が好ましい。
カルボニル基含有基としては、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物残基、ポリフルオロアルコキシカルボニル基、脂肪酸残基等が挙げられる。カルボニル基含有基としては、樹脂層と金属基材又は他の基材との接着性がさらに優れる点から、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基及び酸無水物残基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、カルボキシ基及び酸無水物残基のいずれか一方又は両方がより好ましい。
【0032】
炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基における炭化水素基としては、炭素数2~8のアルキレン基等が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、カルボニル基を構成する炭素を含まない状態での炭素数である。アルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
ハロホルミル基は、-C(=O)-X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。
【0033】
接着性官能基含有単位としては、接着性官能基含有単量体に基づく単位が好ましい。
接着性官能基含有単量体が有する接着性官能基は、1個であっても2個以上であってもよい。2個以上の接着性官能基を有する場合、2個以上の接着性官能基は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
接着性官能基含有単量体としては、接着性官能基を1個有し、重合性炭素-炭素二重結合を1個有する化合物が好ましい。
【0034】
接着性官能基含有単量体としては、カルボニル基含有基を有する単量体、ヒドロキシ基含有単量体、エポキシ基含有単量体、イソシアネート基含有単量体等が挙げられる。接着性官能基含有単量体としては、樹脂層と金属基材又は他の基材との接着性に優れる点から、カルボニル基含有基を有する単量体が好ましい。
カルボニル基含有基を有する単量体としては、酸無水物残基含有環状単量体、カルボキシ基含有単量体、ビニルエステル、(メタ)アクリレート、CF=CFORf1CO(ただし、Rf1は、炭素数1~10のペルフルオロアルキレン基、又は炭素数2~10のペルフルオロアルキレン基の炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、Xは、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基である。)等が挙げられる。
【0035】
酸無水物残基含有環状単量体としては、不飽和ジカルボン酸無水物等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸無水物としては、無水イタコン酸(以下、「IAH」とも記す。)、無水シトラコン酸(以下、「CAH」とも記す。)、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(別称:無水ハイミック酸。以下、「NAH」とも記す。)、無水マレイン酸等が挙げられる。
カルボキシ基含有単量体としては、不飽和ジカルボン酸(イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、マレイン酸等)、不飽和モノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸等)等が挙げられる。
ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニル等が挙げられる。
(メタ)アクリレートとしては、(ポリフルオロアルキル)アクリレート、(ポリフルオロアルキル)メタクリレート等が挙げられる。
【0036】
カルボニル基含有基を有する単量体としては、樹脂層と金属基材又は他の基材との接着性がさらに優れる点から、酸無水物残基含有環状単量体が好ましく、IAH、CAH及びNAHからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。IAH、CAH及びNAHからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いると、無水マレイン酸を用いた場合に必要となる特殊な重合方法(特開平11-193312号公報参照)を用いることなく、酸無水物残基を有する含フッ素共重合体Aを容易に製造できる。カルボニル基含有基を有する単量体としては、樹脂層と金属基材又は他の基材との接着性がさらに優れる点から、NAHが特に好ましい。
【0037】
ヒドロキシ基含有単量体としては、ヒドロキシ基含有ビニルエステル、ヒドロキシ基含有ビニルエーテル、ヒドロキシ基含有アリルエーテル、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、クロトン酸ヒドロキシエチル、アリルアルコール等が挙げられる。
エポキシ基含有単量体としては、不飽和グリシジルエーテル(アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等)、不飽和グリシジルエステル(アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等)等が挙げられる。
イソシアネート基含有単量体としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
接着性官能基含有単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
接着性官能基含有単位及びTFE単位以外の他の単位としては、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、「PAVE」とも記す。)に基づく単位、ヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」とも記す。)に基づく単位、接着性官能基含有単量体、TFE、PAVE及びHFP以外の他の単量体に基づく単位等が挙げられる。
【0039】
PAVEとしては、CF=CFORf2(ただし、Rf2は、炭素数1~10のペルフルオロアルキル基、又は炭素数2~10のペルフルオロアルキル基の炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。)が挙げられる。
f2におけるペルフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rf2の炭素数は、1~3が好ましい。
CF=CFORf2としては、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF、CF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)、CF=CFOCFCFCFCF、CF=CFO(CFF等が挙げられ、PPVEが好ましい。
PAVEは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
他の単量体としては、他の含フッ素単量体(ただし、接着性官能基含有単量体、TFE、PAVE及びHFPを除く。)、他の非含フッ素単量体(ただし、接着性官能基含有単量体を除く。)等が挙げられる。
【0041】
他の含フッ素単量体としては、TFE及びHFPを除くフルオロオレフィン(フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下、「VdF」とも記す。)、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」とも記す。)等)、CF=CFORf3SO(ただし、Rf3は、炭素数1~10のペルフルオロアルキレン基、又は炭素数2~10のペルフルオロアルキレン基の炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、Xはハロゲン原子又はヒドロキシ基である。)、CF=CF(CFOCF=CF(ただし、pは1又は2である。)、CH=CX(CF(ただし、Xは水素原子又はフッ素原子であり、qは2~10の整数であり、Xは水素原子又はフッ素原子である。)、ペルフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)等が挙げられる。他の含フッ素単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
他の含フッ素単量体としては、VdF、CTFE及びCH=CX(CFからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
CH=CX(CFとしては、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH等が挙げられ、CH=CH(CFF、CH=CH(CFFが好ましい。
【0043】
他の非含フッ素単量体としては、炭素数3以下のオレフィン(エチレン、プロピレン等)等が挙げられ、エチレン、プロピレンが好ましく、エチレンが特に好ましい。他の非含フッ素単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他の単量体として、他の含フッ素単量体と他の非含フッ素単量体とを併用してもよい。
【0044】
含フッ素共重合体Aは、主鎖末端基として接着性官能基を有していてもよい。主鎖末端基としての接着性官能基としては、アルコキシカルボニル基、カーボネート基、カルボキシ基、フルオロホルミル基、酸無水物残基、ヒドロキシ基が好ましい。主鎖末端基としての接着性官能基は、含フッ素共重合体Aの製造時に用いられる、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等を適宜選定して導入できる。
【0045】
含フッ素共重合体Aとしては、樹脂層の耐熱性に優れる点から、含フッ素共重合体A1、含フッ素共重合体A2が好ましく、含フッ素共重合体A1が特に好ましい。
含フッ素共重合体A1:接着性官能基含有単位と、TFE単位と、PAVE単位とを有する共重合体。
含フッ素共重合体A2:接着性官能基含有単位と、TFE単位と、HFP単位とを有する共重合体。
【0046】
含フッ素共重合体A1は、必要に応じてHFP単位及び他の単量体単位のいずれか一方又は両方をさらに有してもよい。すなわち、含フッ素共重合体A1は、接着性官能基含有単位とTFE単位とPAVE単位とからなる共重合体であってもよく、接着性官能基含有単位とTFE単位とPAVE単位とHFP単位とからなる共重合体であってもよく、接着性官能基含有単位とTFE単位とPAVE単位と他の単量体単位とからなる共重合体であってもよく、接着性官能基含有単位とTFE単位とPAVE単位とHFP単位と他の単量体単位とからなる共重合体であってもよい。
【0047】
含フッ素共重合体A1としては、樹脂層と金属基材又は他の基材との接着性がさらに優れる点から、カルボニル基含有基を有する単量体に基づく単位とTFE単位とPAVE単位とを有する共重合体が好ましく、酸無水物残基含有環状単量体に基づく単位とTFE単位とPAVE単位とを有する共重合体が特に好ましい。含フッ素共重合体A1の好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
TFE単位とPPVE単位とNAH単位とを有する共重合体、
TFE単位とPPVE単位とIAH単位とを有する共重合体、
TFE単位とPPVE単位とCAH単位とを有する共重合体。
【0048】
含フッ素共重合体A1における接着性官能基含有単位の割合は、含フッ素共重合体A1を構成する全単位のうち、0.01~3モル%が好ましく、0.03~2モル%がより好ましく、0.05~1モル%がさらに好ましい。接着性官能基含有単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂層と金属基材又は他の基材との接着性がさらに優れる。接着性官能基含有単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂層の耐熱性、色目等に優れる。
【0049】
含フッ素共重合体A1におけるTFE単位の割合は、含フッ素共重合体A1を構成する全単位のうち、90~99.89モル%が好ましく、95~99.47モル%がより好ましく、96~98.95モル%がさらに好ましい。TFE単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、含フッ素共重合体A1の耐熱性、耐薬品性等に優れる。TFE単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、含フッ素共重合体A1の溶融成形性等に優れる。
【0050】
含フッ素共重合体A1におけるPAVE単位の割合は、含フッ素共重合体A1を構成する全単位のうち、0.1~9.99モル%が好ましく、0.5~9.97モル%がより好ましく、1~9.95モル%がさらに好ましい。PAVE単位の割合が前記範囲内であれば、含フッ素共重合体A1の溶融成形性に優れる。
含フッ素共重合体A1における接着性官能基含有単位、TFE単位及びPAVE単位の合計は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。接着性官能基含有単位、TFE単位及びPAVE単位の合計の上限値は、100モル%である。
【0051】
含フッ素共重合体A2は、必要に応じてPAVE単位及び他の単量体単位のいずれか一方又は両方をさらに有してもよい。すなわち、含フッ素共重合体A2は、接着性官能基含有単位とTFE単位とHFP単位とからなる共重合体であってもよく、接着性官能基含有単位とTFE単位とHFP単位とPAVE単位とからなる共重合体であってもよく、接着性官能基含有単位とTFE単位とHFP単位と他の単量体単位とからなる共重合体であってもよく、接着性官能基含有単位とTFE単位とHFP単位とPAVE単位と他の単量体単位とからなる共重合体であってもよい。
【0052】
含フッ素共重合体A2としては、樹脂層と金属基材又は他の基材との接着性がさらに優れる点から、カルボニル基含有基を有する単量体に基づく単位とTFE単位とHFP単位とを有する共重合体が好ましく、酸無水物残基含有環状単量体に基づく単位とTFE単位とHFP単位とを有する共重合体が特に好ましい。含フッ素共重合体A2の好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
TFE単位とHFP単位とNAH単位とを有する共重合体、
TFE単位とHFP単位とIAH単位とを有する共重合体、
TFE単位とHFP単位とCAH単位とを有する共重合体。
【0053】
含フッ素共重合体A2における接着性官能基含有単位の割合は、含フッ素共重合体A2を構成する全単位のうち、0.01~3モル%が好ましく、0.02~2モル%がより好ましく、0.05~1.5モル%がさらに好ましい。接着性官能基含有単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂層と金属基材又は他の基材との接着性がさらに優れる。接着性官能基含有単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂層の耐熱性、色目等に優れる。
【0054】
含フッ素共重合体A2におけるTFE単位の割合は、含フッ素共重合体A2を構成する全単位のうち、90~99.89モル%が好ましく、91~98モル%がより好ましく、92~96モル%がさらに好ましい。TFE単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、含フッ素共重合体A2の耐熱性、耐薬品性等に優れる。TFE単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、含フッ素共重合体A2の溶融成形性等に優れる。
【0055】
含フッ素共重合体A2におけるHFP単位の割合は、含フッ素共重合体A2を構成する全単位のうち、0.1~9.99モル%が好ましく、1~9モル%がより好ましく、2~8モル%がさらに好ましい。HFP単位の割合が前記範囲内であれば、含フッ素共重合体A2の溶融成形性に優れる。
含フッ素共重合体A2における接着性官能基含有単位、TFE単位及びHFP単位の合計は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。接着性官能基含有単位、TFE単位及びHFP単位の合計の上限値は、100モル%である。
【0056】
含フッ素共重合体Aにおける各単位の割合は、溶融核磁気共鳴(NMR)分析等のNMR分析、フッ素含有量分析、赤外吸収スペクトル分析等によって求めることができる。例えば、特開2007-314720号公報に記載のように、赤外吸収スペクトル分析等の方法を用いて、含フッ素共重合体Aを構成する全単位中の接着性官能基含有単位の割合(モル%)を求めることができる。
【0057】
含フッ素共重合体Aには、酸無水物残基含有環状単量体に基づく単位における酸無水物残基の一部が加水分解し、その結果、酸無水物残基含有環状単量体に対応するジカルボン酸(イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、マレイン酸等)に由来する単位が含まれる場合がある。ジカルボン酸に由来する単位が含まれる場合、ジカルボン酸に由来する単位の含有量は、酸無水物残基含有環状単量体に基づく単位の含有量に含まれるものとする。
【0058】
含フッ素共重合体Aの製造方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
・接着性官能基含有単量体及びTFE、必要に応じてPAVE、FEP、他の単量体を重合させる方法。
・熱により分解して接着性官能基を生成する官能基を有する単位とTFE単位とを有する含フッ素共重合体を加熱し、接着性官能基を生成する官能基を熱分解して、接着性官能基(例えばカルボキシ基)を生成させる方法。
・TFE単位を有する含フッ素共重合体に、接着性官能基を有する単量体をグラフト重合する方法。
含フッ素共重合体Aの製造方法としては、接着性官能基含有単量体及びTFE、必要に応じてPAVE、FEP、他の単量体を重合させる方法が好ましい。
【0059】
重合方法としては、ラジカル重合開始剤を用いる重合方法が好ましい。
重合時には、含フッ素共重合体Aの分子量や溶融粘度を制御するために、連鎖移動剤を用いてもよい。
ラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤の少なくとも一方に、接着性官能基を有する化合物を用いてもよい。接着性官能基を有する化合物を用いることによって、含フッ素共重合体Aの主鎖末端に接着性官能基を導入できる。
【0060】
重合法としては、塊状重合法、有機溶媒を用いる溶液重合法、水性媒体と必要に応じて適当な有機溶媒とを用いる懸濁重合法、水性媒体と乳化剤とを用いる乳化重合法が挙げられ、溶液重合が好ましい。
溶液重合で用いる有機溶媒としては、ペルフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル等が挙げられる。
【0061】
重合温度は、0~100℃が好ましく、20~90℃がより好ましい。
重合圧力は、0.1~10MPaが好ましく、0.5~3MPaがより好ましい。
重合時間は、1~30時間が好ましい。
接着性官能基含有単量体として酸無水物残基含有環状単量体を用いる場合、重合中の酸無水物残基含有環状単量体の割合は、全単量体のうち、0.01~5モル%が好ましく、0.1~3モル%がより好ましく、0.1~2モル%がさらに好ましい。酸無水物残基含有環状単量体の割合が前記範囲内であれば、重合速度が適度である。酸無水物残基含有環状単量体の割合が高すぎると、重合速度が低下する傾向がある。酸無水物残基含有環状単量体が重合で消費されるにしたがって、消費された量を連続的又は断続的に重合槽内に供給し、酸無水物残基含有環状単量体の割合を前記範囲内に維持することが好ましい。
【0062】
(他の成分)
他の成分としては、含フッ素共重合体A以外の他の樹脂、無機フィラー、ゴム等が挙げられる。他の樹脂としては、含フッ素共重合体A以外の他のフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。
【0063】
(作用機序)
以上説明した本発明の積層体にあっては、樹脂層が接着性官能基を有する含フッ素共重合体Aを含むため、樹脂層と金属基材との接着性に優れるとともに、積層体を他の基材とを熱接着したときの樹脂層と他の基材との接着性にも優れる。
また、本発明の積層体にあっては、樹脂層の金属基材とは反対側の表面の1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの最大高さ粗さRzが50.0nm以上であるため、積層体を他の基材又はその前駆体とを含フッ素共重合体Aの融点未満で熱接着しても樹脂層と他の基材との接着性に優れる。
本発明において、表面の最大高さ粗さRzが50.0nm以上の樹脂層と他の基材との接着性が優れる理由は、Rzが50.0nm以上であることで、接着界面でアンカー効果が得られるうえ、樹脂層と他の基材との接着面の表面積が増大し、それに伴って接着性官能基の密度が増加するためであると考えられる。
【0064】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法は、金属基材の表面に樹脂層を設け、樹脂層の金属基材とは反対側の表面をプラズマ処理又はコロナ処理する方法である。
【0065】
(樹脂層の形成)
金属基材の表面に樹脂層を設ける方法としては、例えば、下記の方法が好ましい。
・金属基材の表面に、液状媒体と含フッ素共重合体Aとを含む後述する液状組成物を塗布し、乾燥させて樹脂層を形成する方法。
・金属基材の表面に含フッ素共重合体Aを含むフィルムをラミネートする方法。
金属基材の表面に樹脂層を設ける方法としては、樹脂層と金属基材との接着性がさらに優れる点から、金属基材の表面に液状組成物を塗布し、乾燥させて樹脂層を形成する方法がさらに好ましい。
【0066】
塗布方法としては、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、バーコート法、スピンフローコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法、ディップコート法等が挙げられる。
乾燥温度は、35~250℃が好ましく、70~220℃がより好ましい。
乾燥時間は、0.1~30分間が好ましく、0.5~20分間がより好ましい。
【0067】
液状組成物を乾燥して形成された樹脂層を加熱処理し、含フッ素共重合体Aを溶融させることが好ましい。含フッ素共重合体Aを溶融させることによって金属基材との接着性がさらに優れる樹脂層が形成される。
加熱処理の温度は、270~400℃が好ましく、310~370℃がより好ましい。
加熱時間は、1~300分間が好ましく、3~60分間がより好ましい。
【0068】
樹脂層の金属基材とは反対側の表面を処理して、樹脂層の金属基材とは反対側の表面の1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの最大高さ粗さRzを50.0nm以上とする。
【0069】
(プラズマ処理)
プラズマ処理に用いるプラズマ照射装置としては、高周波誘導方式、容量結合型電極方式、コロナ放電電極-プラズマジェット方式、平行平板型、リモートプラズマ型、大気圧プラズマ型、ICP型高密度プラズマ型等を採用した装置が挙げられる。
【0070】
プラズマ処理に用いるガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、希ガス(アルゴンガス等)、水素ガス、アンモニアガス等が挙げられ、希ガス又は窒素ガスが好ましく、アルゴンガスがより好ましい。ガスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0071】
樹脂層の金属基材とは反対側の表面の1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの最大高さ粗さRzを50.0nm以上とするためには、プラズマ処理における電極間ギャップ、装置の出力等を調節して発生する電子のエネルギーを制御し、処理時間を設定する。
【0072】
(コロナ処理)
コロナ処理の電極として、例えば、ワイヤー電極、平面電極、ロール電極のものが好ましく用いられる。放電を均一にするために、基材フィルムと電極との間に誘電体を挟んで処理を行うことが好ましい。
電極の材質としては、鉄、銅、アルミ、ステンレス鋼等の金属が挙げられる。
電極形状としては、薄板状、ナイフエッジ状、ブラシ状等が挙げられる。
樹脂層の金属基材とは反対側の表面の1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの最大高さ粗さRzを50.0nm以上とするためには、コロナ処理の出力、フィルムとのギャップ、処理時間を調整する。
【0073】
(液状組成物)
液状組成物としては、金属基材との接着性がさらに優れる樹脂層が形成される点から、液状媒体と、後述する樹脂パウダーとを含むものが好ましい。また、後述する樹脂パウダーが液状媒体に分散しているものが好ましい。
液状組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて樹脂パウダー以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、無機フィラー、界面活性剤、消泡剤等が挙げられる。
【0074】
液状媒体としては、水、アルコール(メタノール、エタノール等)、含窒素化合物(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等)、含硫黄化合物(ジメチルスルホキシド等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジオキサン等)、エステル(乳酸エチル、酢酸エチル等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン等)、グリコールエーテル(エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等)、セロソルブ(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)等が挙げられる。液状媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。液状媒体としては、含フッ素共重合体Aと反応しないものが好ましい。
【0075】
樹脂パウダーは、含フッ素共重合体Aを主成分とする樹脂材料からなる。
含フッ素共重合体Aを主成分とする樹脂材料とは、樹脂材料中の含フッ素共重合体Aの割合が80質量%以上であることを意味する。含フッ素共重合体Aの割合は、樹脂材料のうち85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。含フッ素共重合体Aが主成分であれば、樹脂層と金属基材又は他の基材との接着性がさらに優れる。また、積層体や複合体に難燃性、耐薬品性、耐候性、耐高温高湿性等を充分に付与できる。
樹脂材料に含まれる含フッ素共重合体Aは、1種であっても2種以上であってもよい。
【0076】
樹脂材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて含フッ素共重合体A以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、含フッ素共重合体A以外の他の樹脂、無機フィラー、ゴム等が挙げられる。他の樹脂としては、含フッ素共重合体A以外の他のフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。
【0077】
樹脂パウダーのD50は、0.3~6μmが好ましく、0.4~5μmがより好ましく、0.5~4.5μmがさらに好ましく、0.7~4μmが特に好ましく、1~3.5μmが最も好ましい。樹脂パウダーのD50が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂パウダーの流動性が充分で、取り扱いが容易である。また、樹脂層の厚さを薄くできる。樹脂パウダーのD50が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂パウダーの液状媒体への分散性に優れる。
【0078】
樹脂パウダーのD90は、8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましく、1.5~5μmがさらに好ましい。樹脂パウダーのD90が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂パウダーの液状媒体への分散性に優れる。樹脂パウダーのD90は、積層体の樹脂層の均一性に優れる点から、D50に近づけることが好ましい。
【0079】
樹脂パウダーの疎充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.05~0.5g/mLがより好ましく、0.08~0.5g/mLがさらに好ましい。
樹脂パウダーの密充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.05~0.8g/mLがより好ましく、0.1~0.8g/mLがさらに好ましい。
疎充填嵩密度又は密充填嵩密度が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂パウダーのハンドリング性がさらに優れる。疎充填嵩密度又は密充填嵩密度が前記範囲の上限値以下であれば、汎用的なプロセスで用いることが。
【0080】
樹脂パウダーは、例えば、下記の方法によって製造できる。
・溶液重合法、懸濁重合法又は乳化重合法によって含フッ素共重合体Aを得て、有機溶媒又は水性媒体を除去して粒状の含フッ素共重合体Aを回収し、必要に応じて粒状の含フッ素共重合体Aを粉砕し、必要に応じて粉砕物を分級する方法。
・含フッ素共重合体A、必要に応じて他の成分を溶融混練し、混練物を粉砕し、必要に応じて粉砕物を分級する方法。
【0081】
液状組成物中の液状媒体の含有量は、固形分の100質量部に対して、30~400質量部が好ましく、50~200質量部がより好ましく、70~150質量部がさらに好ましい。液状組成物中の液状媒体の含有量が前記範囲内であれば、樹脂層を形成する際の塗布性が良好となる。また、加熱により樹脂層への液状媒体の残分が少なくなる。
【0082】
液状組成物が界面活性剤を含む場合、液状組成物中の界面活性剤の含有量は、樹脂パウダーの100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、1~20質量部がより好ましく、3~15質量部がさらに好ましい。界面活性剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂パウダーの分散性がさらに優れる。界面活性剤の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂層の各種特性を阻害しにくい。また、加熱時に界面活性剤が熱分解又は揮発した際に、樹脂層の外観を荒らしにくい。
【0083】
液状組成物が消泡剤を含む場合、液状組成物中の消泡剤の割合は、液状組成物のうち1質量%以下が好ましい。
液状組成物が無機フィラーを含む場合、液状組成物中の無機フィラーの含有量は、含フッ素共重合体Aの100質量部に対して、0.1~100質量部が好ましく、0.1~60質量部がより好ましい。
【0084】
(作用機序)
以上説明した本発明の積層体の製造方法にあっては、金属基材の表面に、接着性官能基を有する含フッ素共重合体Aを含む樹脂層を設けているため、樹脂層と金属基材との接着性に優れるとともに、積層体を他の基材とを熱接着したときの樹脂層と他の基材との接着性にも優れる積層体を製造できる。
また、本発明の積層体の製造方法にあっては、樹脂層の金属基材とは反対側の表面をプラズマ処理しているため、樹脂層の金属基材とは反対側の表面の1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの最大高さ粗さRzを50.0nm以上にできる。そのため、積層体と他の基材又はその前駆体とを含フッ素共重合体の融点未満で熱接着しても樹脂層と他の基材との接着性に優れる積層体を製造できる。
【0085】
<複合体>
本発明における複合体は、本発明の積層体と、積層体の樹脂層に接する他の基材とを有する。
本発明における複合体は、本発明の積層体を複数有していてもよく、他の基材を複数有していてもよい。
本発明における複合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて本発明の積層体に接しない他の基材をさらに有していてもよい。
【0086】
図3は、本発明における複合体の一例を示す断面図である。
複合体20は、他の基材22と、他の基材22の第1の表面に設けられた積層体10と有する。積層体10は、片面に樹脂層14を有するものであり、積層体10の樹脂層14は、他の基材22に接する。
【0087】
図4は、本発明における複合体の他の例を示す断面図である。
複合体20は、他の基材22と、他の基材22の第1の表面及び第2の表面にそれぞれに設けられた積層体10と有する。積層体10は、片面に樹脂層14を有するものであり、積層体10の樹脂層14は、他の基材22に接する。
【0088】
図5は、本発明における複合体の他の例を示す断面図である。
複合体20は、3層の他の基材22と、他の基材22間に設けられた2層の積層体10と有する。積層体10は、両面に樹脂層14を有するものであり、積層体10の樹脂層14は、他の基材22に接する。
【0089】
他の基材の材料としては、繊維強化樹脂、ガラス、セラミックス、金属等が挙げられる。他の基材の材料としては、複合体の軽量化と機械強度の両立の点から、繊維強化樹脂が好ましい。
【0090】
繊維強化樹脂基材は、強化繊維と、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方とを含むプリプレグを熱接着して形成される基材であり、強化繊維と、熱硬化性樹脂の硬化物及び熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方とを含む。
【0091】
強化繊維の形態としては、複数の強化繊維からなる強化繊維束、強化繊維束を織成してなるクロス、複数の強化繊維が一方向に引き揃えられた一方向性強化繊維束、一方向性強化繊維束から構成された一方向性クロス、これらを組み合わせたもの、複数の強化繊維束を積み重ねたもの等が挙げられる。
強化繊維としては、長さが10mm以上の連続した長繊維が好ましい。強化繊維は、強化繊維シートの長さ方向の全長又は幅方向の全幅にわたり連続している必要はなく、途中で分断されていてもよい。
【0092】
強化繊維としては、無機繊維、金属繊維、有機繊維等が挙げられる。
無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維等が挙げられる。
金属繊維としては、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス鋼繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維等が挙げられる。
強化繊維は、表面処理が施されているものであってもよい。
強化繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
強化繊維としては、比重が小さく、高強度、高弾性率である点から、炭素繊維が好ましい。
【0093】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられ、炭素繊維との親和性、機械特性の発現性の点から、エポキシ樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂は、添加剤(硬化剤等)を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン等)、スチレン系樹脂(ポリスチレン等)、ポリカーボネート、ポリイミド(芳香族ポリイミド等)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン(ポリエーテルスルホン等)、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル、ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
【0095】
<複合体の製造方法>
本発明の複合体の製造方法は、本発明の積層体と他の基材又はその前駆体とを、樹脂層と他の基材又はその前駆体とが接するように重ねて熱接着して複合体を得る方法である。
【0096】
本発明の複合体の製造方法に用いられる他の基材としては、熱接着の温度でも状態が変化しない基材が挙げられる。他の基材の材料としては、繊維強化樹脂、ガラス、セラミックス、金属等が挙げられる。
本発明の複合体の製造方法に用いられる他の基材の前駆体としては、熱接着の温度で状態が変化し、最終的に他の基材となる材料が挙げられ、具体的には、繊維強化樹脂の前駆体であるプリプレグ、一方向に引き揃えられた強化繊維束に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸したUDテープを短冊状に切り出しランダムに積層したランダムシート等が挙げられる。
【0097】
本発明の複合体の製造方法としては、設備面の汎用性の点から、本発明の積層体とプリプレグとを、樹脂層とプリプレグとが接するように重ねて熱接着して、本発明の積層体と、積層体の樹脂層に接する繊維強化樹脂基材とを有する複合体を得る方法が好ましい。
【0098】
熱接着の方法としては、熱プレスによる方法、真空熱プレスやオートクレープによる方法等が挙げられる。熱プレスの際に、本発明の積層体及びプリプレグを熱成形して所望の形状の複合体としてもよい。
【0099】
熱接着の温度は、含フッ素共重合体Aの融点未満が好ましく、120~250℃がより好ましく、140~240℃がさらに好ましく、160~220℃がさらに好ましい。熱接着温度が前記範囲内であれば、他の基材の熱劣化を抑制しつつ、樹脂層と他の基材との接着性がさらに優れる複合体を製造できる。
【0100】
積層体とプリプレグとを含フッ素共重合体Aの融点未満で熱接着する場合で、かつマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である場合、熱硬化性樹脂の硬化温度は、含フッ素共重合体Aの融点未満であることが好ましい。
積層体とプリプレグとを含フッ素共重合体Aの融点未満で熱接着する場合で、かつマトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である場合、熱可塑性樹脂の融点は、含フッ素共重合体Aの融点未満であることが好ましい。
本発明の複合体としては、板形状、パイプ形状だけでなく、用途に応じ様々な形状の複合体を製造することができる。
【0101】
(作用機序)
以上説明した本発明の複合体の製造方法にあっては、本発明の積層体と他の基材又はその前駆体とを、樹脂層と他の基材又はその前駆体とが接するように重ねて熱接着しているため、樹脂層と他の基材との接着性に優れる複合体を製造できる。
本発明の製造方法で得られた複合体における樹脂層と他の基材との界面の剥離強度は、5N/10mm以上が好ましく、7N/10mm以上がより好ましく、8N/10mm以上がさらに好ましい。
【0102】
本発明の積層体及び複合体は、自動車、二輪車、航空機等の輸送機器の外装や内装部品、産業機械、ロボット、医療機器、家電製品の筐体や部品、建築資材、スポーツ用品、繊維強化材料への強度付与層、ガスバリア性付与層等として好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例
【0103】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0104】
(含フッ素共重合体における各単位の割合)
NAH単位の割合は、赤外吸収スペクトル分析によって求めた。NAH単位以外の単位の割合は、溶融NMR分析及びフッ素含有量分析によって求めた。
【0105】
(赤外吸収スペクトル分析)
含フッ素共重合体をプレス成形して厚さ200μmのフィルムを得た。フィルムを赤外分光法によって分析して赤外吸収スペクトルを得た。赤外吸収スペクトルにおいて、含フッ素共重合体中のNAH単位の吸収ピークは1778cm-1に現れる。この吸収ピークの吸光度を測定し、NAHのモル吸光係数20810mol-1・L・cm-1を用いて、含フッ素共重合体におけるNAH単位の割合を求めた。
【0106】
(融点)
示差走査熱量計(セイコーインスツル社製、DSC-7020)を用い、含フッ素共重合体を10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度(℃)を融点とした。
【0107】
(溶融流れ速度)
メルトインデクサー(テクノセブン社製)を用い、372℃、49N荷重下で、直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間に流出する含フッ素共重合体の質量(g)を測定して溶融流れ速度とした。
【0108】
(粒状の含フッ素共重合体のD50)
上から順に、2.000メッシュ篩(目開き2.400mm)、1.410メッシュ篩(目開き1.705mm)、1.000メッシュ篩(目開き1.205mm)、0.710メッシュ篩(目開き0.855mm)、0.500メッシュ篩(目開き0.605mm)、0.250メッシュ篩(目開き0.375mm)、0.149メッシュ篩(目開き0.100mm)、受け皿を重ねた。一番上の篩に粒状の含フッ素共重合体を入れ、30分間振とう器で篩分けした。各篩の上に残った粒状の含フッ素共重合体の質量を測定し、各目開き値に対する通過質量の累計をグラフに表し、通過質量の累計が50%となる粒子径を求め、これを粒状の含フッ素共重合体のD50とした。
【0109】
(樹脂パウダーのD50及びD90)
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用い、樹脂パウダーを水中に分散させ、粒度分布を測定し、D50及びD90を算出した。
【0110】
(疎充填嵩密度及び密充填嵩密度)
樹脂パウダーの疎充填嵩密度及び密充填嵩密度は、A.B.D粉体特性測定器(筒井理化学器械社製、ABD-100型)を用い、容量100mLの試料容器を用いて測定した。具体的には、疎充填嵩密度については、下記方法Iで測定した試料容器(試料容器+樹脂粒子)の質量と、樹脂パウダーを供給する前に測定しておいた試料容器の質量とから試料容器内の樹脂パウダーの質量を算出し、その値から密度(g/mL)を算出し、その値を疎充填嵩密度とした。密充填嵩密度については、方法Iで測定した試料容器の質量の代わりに、下記方法IIで測定した試料容器の質量を用いた以外は、前記と同様にして密度(g/mL)を算出し、その値を密充填嵩密度とした。
【0111】
方法I:樹脂パウダーを試料容器に、30~60秒で試料容器がいっぱいになるように供給し、試料容器の上端を超えて山になった部分の樹脂パウダーをヘラですり切り、試料容器の周りに付着した樹脂粒子を払落し、試料容器の質量を電子天秤にて計量した。
方法II:樹脂パウダーを試料容器に、30~60秒で試料容器がいっぱいになるように供給し、180回タッピングした後に、試料容器の上端を超えて山になった部分の樹脂パウダーをヘラですり切り、試料容器の周りに付着した樹脂粒子を払落し、試料容器の質量を電子天秤にて計量した。
【0112】
(熱膨張変化比又は熱収縮変化比)
積層体をエッチングしてチタン箔を除去し、樹脂層を単離した。樹脂層を形成したときの塗布方向MD、及びMDに直交する方向TDの熱膨張率又は熱収縮率を、熱機械分析装置(NETZSCH社製、TMA402 F1 Hyperion)を用い、測定モード:引張モード、測定温度:30℃から100℃、測定荷重:19.6mN、昇温速度:5℃/分、測定雰囲気:窒素ガスの条件下で測定した。表中、熱膨張率を「+」、熱収縮率を「-」で表す。30℃から100℃に推移したときのMDの熱膨張率又は熱収縮率及びTDの熱膨張率又は熱収縮率のうち大きい方の熱膨張率又は熱収縮率xと小さい方の熱膨張率又は熱収縮率yとの比(x/y)を熱膨張変化比又は熱収縮変化比とした。
【0113】
(算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRz)
原子間力顕微鏡(Oxford Instruments社製)を用い、下記の条件にて、積層体の樹脂層のチタン箔とは反対側の表面の1μm内における算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzを測定した。
プローブ:AC160TS-C3(先端R:<7nm、バネ定数:26N/m)、
測定モード:AC-Air、
Scan Rate:1Hz。
【0114】
(樹脂層と繊維強化樹脂基材との界面の剥離強度)
複合体から長さ100mm、幅10mmの矩形状の試験片を切り出した。試験片の長さ方向の一端から50mmの位置まで樹脂層から繊維強化樹脂基材を剥離した。試験片の長さ方向の一端から50mmの位置を中央にして、引張り試験機(オリエンテック社製)を用いて、引張り速度50mm/分で90度剥離し、最大荷重を剥離強度(N/10mm)とした。剥離強度が大きいほど、樹脂層と繊維強化樹脂基材との接着性が優れていることを示す。
【0115】
(樹脂パウダーの製造)
NAH(日立化成社製、無水ハイミック酸)、PPVE(旭硝子社製)を用いて、国際公開第2016/017801号の段落[0123]に記載の手順で含フッ素共重合体A-1を製造した。
含フッ素共重合体A-1における各単位の割合は、NAH単位/TFE単位/PPVE単位=0.1/97.9/2.0モル比であった。含フッ素共重合体A-1の融点は300℃であり、溶融流れ速度は17.6g/10分であり、D50は1554μmであった。
【0116】
ジェットミル(セイシン企業社製、シングルトラックジェットミル FS-4型)を用い、粉砕圧力:0.5MPa、処理速度:1kg/hrの条件で、粒状の含フッ素共重合体A-1を粉砕して樹脂パウダーを得た。樹脂パウダーのD50は2.58μmであり、D90は7.1μmであった。樹脂パウダーの疎充填嵩密度は0.278g/mLであり、密充填嵩密度は0.328g/mLであった。
【0117】
(実施例1)
樹脂パウダーの120g、ノニオン性界面活性剤(ネオス社製、フタージェント710FL)の12g及びメチルエチルケトンの234gを横型ボールミルポットに投入し、15mm径のジルコニアボールにて分散処理し、液状組成物を得た。
液状組成物をチタン箔(ニラコ社製、TI-453252、厚さ:50μm)の表面にバーコーター14番を用いて塗布し、窒素雰囲気下、100℃で15分間乾燥し、350℃で15分間加熱した。チタン箔の表面に厚さ5μmの樹脂層を有する積層体を得た。
【0118】
積層体の樹脂層のチタン箔とは反対側の表面を、プラズマ処理装置(NORDSON MARCH社、AP-1000)を用い、下記条件にてプラズマ処理した。
RF出力:300W、
電極間ギャップ:2インチ、
導入ガス:アルゴンガス、
導入ガス流量:50cm/分、
圧力:13Pa、
処理時間:2分間。
樹脂層の熱膨張変化比又は熱収縮変化比、積層体の反り率、樹脂層のチタン箔とは反対側の表面のRa及びRzを表1に示す。
【0119】
プラズマ処理を実施してから72時間以内の積層体とプリプレグ(三菱ケミカル社製、TR3110 381GMX、厚さ:223μm、強化繊維:炭素繊維、マトリックス樹脂:熱硬化性樹脂)を、樹脂層とプリプレグが接するように重ね、熱プレスの温度:180℃、熱プレスの圧力:3.0MPa、熱プレスの時間:60分の条件で真空熱プレスして複合体を得た。複合体における樹脂層と繊維強化樹脂基材との界面の剥離強度を表1に示す。
なお、今回はプラズマ処理を実施してから72時間以内に積層体とプリプレグとを積層したが、プラズマ処理の効果は3週間継続する。
【0120】
(実施例2)
実施例1と同様にして積層体を得た。樹脂層の熱膨張変化比又は熱収縮変化比、積層体の反り率、樹脂層のチタン箔とは反対側の表面のRa及びRzを表1に示す。
熱プレスの温度を230℃に変えた以外は実施例1と同様にして複合体を得た。複合体における樹脂層と繊維強化樹脂基材との界面の剥離強度を表1に示す。
【0121】
(比較例1)
チタン箔とプリプレグとを重ね、実施例1と同じ条件で真空熱プレスして複合体を得た。複合体における樹脂層と繊維強化樹脂基材との界面の剥離強度を表1に示す。
【0122】
(比較例2)
樹脂層のチタン箔とは反対側の表面のプラズマ処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。樹脂層の熱膨張変化比又は熱収縮変化比、積層体の反り率、樹脂層のチタン箔とは反対側の表面のRa及びRzを表1に示す。
比較例2の積層体を用いた以外は実施例1と同様にして複合体を得た。複合体における樹脂層と繊維強化樹脂基材との界面の剥離強度を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
ポリアミド樹脂(宇部興産社製、UBEナイロン 1013B、融点224℃。)を単軸押出機(田辺プラスチックス機械社製、VS-30)及び400mm幅Tダイを用い、設定樹脂温度:260℃、回転数50rpm、ライン速度:2.0m/分にて押出成形し、厚さ50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを30cm×30cmに切り出した。フィルムと、炭素繊維クロス(サンライト社製、CF3000)とを、フィルム、炭素繊維クロス、フィルムの順番で重ね、メルト熱プレス機(テスター産業社製)を用い、温度:240℃、圧力:1MPa、プレス時間:3分間の条件でプレス成形し、プリプレグ1を得た。
【0125】
(実施例3)
プリプレグ1を10枚重ね、最上層に実施例1と同様にプラズマ処理をして得た積層体の、樹脂層とプリプレグ1が接するように重ねたのち、メルト熱プレス機(テスター産業社製)を用い、温度:260℃、予熱:10分、圧力:10MPa、プレス時間:5分間の条件でプレス成形し、複合体を得た。複合体における樹脂層と繊維強化樹脂基材との界面の剥離強度は5Nであった。
【0126】
(比較例3)
積層体のプラズマ処理をしない他は実施例3と同様に複合体を得た。複合体における樹脂層と繊維強化樹脂基材との界面の剥離強度は1N未満であった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の積層体及び複合体は、航空機、車両(自動車、鉄道車両等)、スポーツ用具部材等の各種部材として有用である。
【符号の説明】
【0128】
10 積層体、
12 金属基材、
14 樹脂層、
20 複合体、
22 他の基材。
図1
図2
図3
図4
図5