(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07H 21/04 20060101AFI20220913BHJP
C07H 19/073 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C07H21/04 A
C07H19/073
(21)【出願番号】P 2019518838
(86)(22)【出願日】2018-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2018018924
(87)【国際公開番号】W WO2018212236
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2017097154
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】菅原 祐大
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/077292(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/122236(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/141262(WO,A1)
【文献】UPADHYAYA,K. et al,Identification of gallic acid based glycoconjugates as a novel tubulin polymerization inhibitors,Organic & Biomolecular Chemistry,2016年,Vol.14, No.4,pp.1338-1358
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 1/00- 99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)
【化1】
[式中、*は、核酸塩基との結合位置を示し、
R
1は、それぞれ独立して、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基又はC2-40アルキニル基であり、sは、1から5の整数であり、
L
1及びL
3は、それぞれ独立して、単結合、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基又はC2-6アルキニレン基であり、
L
2及びL
4は、それぞれ独立して、単結合、-COO-若しくは-OCO-、-CON(R
2)-若しくは-N(R
2)CO-(式中R
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基又はC2-6ハロアルケニル基を示す)、-C(O)-又は-O-であり、
L
5及びL
6は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6ハロアルケニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である]で表される保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、
5’位又は3’位がヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの当該5’-ヒドロキシ基又は3’-ヒドロキシ基を、
3’位又は5’位が反応性リン含有基で置換されたヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドと反応させるカップリング工程を含む、オリゴヌクレオチドの製造方法。
【請求項2】
前記カップリング工程の前に、前記式(II)で表される保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、5’位又は3’位に一時保護基で置換されたヒドロキシ基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの当該一時保護基を除去して、前記5’位又は3’位がヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを生成する反応を含む、脱一時保護基工程を更に含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記式(II)で表される保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、5’位又は3’位がヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドが、3’位又は5’位に基本保護基で置換されたヒドロキシ基を有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記3’位又は5’位が反応性リン含有基で置換されたヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドが、5’位又は3’位に一時保護基で置換されたヒドロキシ基を有する、請求項1から3のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項5】
前記カップリング工程において、前記式(II)で表される保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、5’位がヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの当該5’-ヒドロキシ基を、
3’位が反応性リン含有基で置換されたヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドと反応させる、請求項1から4のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項6】
前記カップリング工程において、前記式(II)で表される保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、3’位がヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの当該3’-ヒドロキシ基を、
5’位が反応性リン含有基で置換されたヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドと反応させる、請求項1から4のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項7】
前記反応性リン含有基が、ヒドロキシホスフィニル基であり、カップリング工程が亜リン酸ジエステル結合を形成する、請求項1から6のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項8】
前記カップリング工程の後に、前記亜リン酸ジエステル結合を、リン酸ジエステル結合、チオリン酸ジエステル結合、ボラノリン酸ジエステル結合、アミノリン酸ジエステル結合、リン酸トリエステル結合又はチオリン酸-O,O,S-トリエステル結合に変換する反応を含む、亜リン酸ジエステル結合の変換工程を更に含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記反応性リン含有基が、置換されたヒドロキシ(ジアルキルアミノ)ホスフィノ基であり、カップリング工程が亜リン酸トリエステル結合を形成する、請求項1から6のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項10】
前記カップリング工程の後に、前記亜リン酸トリエステル結合を、リン酸トリエステル結合又はチオリン酸トリエステル結合に変換する反応を含む、亜リン酸トリエステル結合の変換工程を更に含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
少なくとも1つの工程の反応後に、反応液と極性溶媒とを混合して沈殿物を生成させ、生成した沈殿物を固液分離により取得する精製工程を更に含む、請求項1から10のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項12】
前記極性溶媒が炭素数1から6のアルコール溶媒又は炭素数1から6のニトリル溶媒である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記一時保護基が、tert-ブチルジメチルシリル基、トリチル基、モノメトキシトリチル基又はジメトキシトリチル基であり、前記基本保護基が、レブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基である、請求項3から12のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項14】
前記一時保護基が、レブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基であり、前記基本保護基が、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリチル基、モノメトキシトリチル基又はジメトキシトリチル基である、請求項3から12のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項15】
前記式(II)で表される保護基、並びに存在する場合は、前記基本保護基及び前記一時保護基を除去する、全脱保護工程を更に含む、請求項1から14のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項16】
下記式(II)
【化2】
[式中、*は、核酸塩基との結合位置を示し、
R
1は、それぞれ独立して、
C10-30アルキル基又はC10-30アルケニル基であり、sは、1から5の整数であり、
L
1及びL
3は、それぞれ独立して、単結合、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基又はC2-6アルキニレン基であり、
L
2及びL
4は、それぞれ独立して、単結合、-COO-若しくは-OCO-、-CON(R
2)-若しくは-N(R
2)CO-(式中R
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基又はC2-6ハロアルケニル基を示す)、-C(O)-又は-O-であり、
L
5及びL
6は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6ハロアルケニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である]で表される保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、
5’位又は3’位が、ヒドロキシ基又は一時保護基で置換されたヒドロキシ基である、ヌクレオシド又はオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
下記式(I):
【化3】
[式中、nは、1以上の任意の整数であり、
Base
Zは、それぞれ独立して、核酸塩基、基本保護基で置換された核酸塩基又は下記式(II)で表される保護基で置換された核酸塩基であり、少なくとも1つのBase
Zは、下記式(II)で表される保護基で置換された核酸塩基であり、
Xは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、無置換若しくは置換されたヒドロキシ基又は4’位炭素原子に架橋する有機基であり、
Yは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換されたヒドロキシ基、無置換若しくは置換されたスルファニル基、水素化ホウ素基、又は置換されたアミノ基であり、
Rは、水素原子、基本保護基又は一時保護基であり、
Zは、水素原子、基本保護基又は一時保護基であり、
Vは、それぞれ独立して、酸素原子又は硫黄原子であり、
式(II)が
【化4】
(式中、*は、核酸塩基部との結合位置を示し、
R
1は、それぞれ独立して、
C10-30アルキル基又はC10-30アルケニル基であり、sは、1から5の整数であり、
L
1及びL
3は、それぞれ独立して、単結合、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基又はC2-6アルキニレン基であり、
L
2及びL
4は、それぞれ独立して、単結合、-COO-若しくは-OCO-、-CON(R
2)-若しくは-N(R
2)CO-(式中R
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基又はC2-6ハロアルケニル基を示す)、-C(O)-又は-O-であり、
L
5及びL
6は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6ハロアルケニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である)で表され、
2以上の前記式(II)で表される保護基を有する場合、それぞれの式(II)で表される保護基は同一でも異なっていてもよい]で表される化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項18】
nが、1から30の整数である、請求項17に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項19】
前記式(II)で表される保護基が置換する核酸塩基が、それぞれ独立して、ピリミジン塩基又はプリン塩基である、請求項17又は18に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項20】
前記式(II)で表される保護基が置換する核酸塩基が、それぞれ独立して、シトシン、ウラシル、チミン、5-メチルシトシン、アデニン又はグアニンである、請求項17又は18に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項21】
前記式(II)で表される保護基が置換する核酸塩基が、それぞれ独立して、ピリミジン塩基である、請求項17又は18に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項22】
前記式(II)で表される保護基が置換する核酸塩基が、それぞれ独立して、チミン又はウラシルである、請求項17又は18に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項23】
Xが、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、又は基本保護基で置換されたヒドロキシ基である、請求項17から
22のいずれか1つに記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項24】
Xが、水素原子である、請求項
23に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項25】
Yが、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又は基本保護基で置換されたヒドロキシ基である、請求項17から
24のいずれか1つに記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項26】
Yが、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又はシアノ基で置換されたC1-6アルキル基で置換されたヒドロキシ基である、請求項
25に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項27】
Rが、水素原子又は一時保護基であり、Zが、基本保護基である、請求項17から
26のいずれか1つに記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項28】
前記一時保護基が、tert-ブチルジメチルシリル基、トリチル基、モノメトキシトリチル基又はジメトキシトリチル基であり、前記基本保護基が、レブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基である、請求項
27に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項29】
Zが、水素原子又は一時保護基であり、Rが、基本保護基である、請求項17から
26のいずれか1つに記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項30】
前記一時保護基が、レブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基であり、前記基本保護基が、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリチル基、モノメトキシトリチル基又はジメトキシトリチル基である、請求項
29に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【請求項31】
核酸塩基部にヒドロキシ基又はアミノ基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを、
下記式(X-1)
【化6】
(式中、Wは、ハロゲン原子であり、
R
1は、それぞれ独立して、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基又はC2-40アルキニル基であり、sは、1から5の整数であり、
L
1及びL
3は、それぞれ独立して、単結合、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基又はC2-6アルキニレン基であり、
L
2及びL
4は、それぞれ独立して、単結合、-COO-若しくは-OCO-、-CON(R
2)-若しくは-N(R
2)CO-(式中R
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基又はC2-6ハロアルケニル基を示す)、-C(O)-又は-O-であり、
L
5及びL
6は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基又はC2-6ハロアルケニル基である)で表されるハロゲン化アルキル化合物と反応させ、
核酸塩基部に、下記式(II)
【化7】
(式中、*は、ヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの核酸塩基部との結合位置を示し、
R
1、L
1及びL
3、L
2及びL
4、L
5及びL
6、は上記と同じである)で表される擬似固相保護基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規オリゴヌクレオチドの製造方法、並びに安定性が高い擬似固相保護基を核酸塩基部に有するヌクレオシド化合物及びオリゴヌクレオチド化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム創薬や遺伝子診断・治療などの最先端バイオ関連研究の急速な進歩・発展に伴い、近年、DNAプローブ、siRNA、アンチセンスDNA及びアンチセンスRNAなどのオリゴヌクレオチドが盛んに利用されている。このようなオリゴヌクレオチドの化学合成方法として、ホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法などが知られている。
現在では、ホスホロアミダイト法による固相合成法のプロセス最適化及び自動化が進んでいるため、該合成法がスピード面で有利であり、最も汎用されている。しかし、固相合成法は、設備制約上スケールアップに制限があり、試薬及び原料を過剰に必要とする。また、固相合成法では、反応の進行状況の確認、中間体構造の解析等が困難である。
【0003】
工業的なスケール(例えば数kg)でオリゴヌクレオチドを供給するために、液相合成法が検討されている。例えば、5’方向にヌクレオチドを伸長する、擬似固相保護基等を用いる液相合成法が報告されている(例えば、特許文献1、2参照)。
3’方向へも、5’方向へもヌクレオチドを伸長できる液相合成法として、擬似固相保護基を核酸塩基部に導入した合成法が報告されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012-157723号
【文献】特許第5548852号
【文献】国際公開第2014-077292号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に報告されている擬似固相保護基は、アミド結合によりヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの核酸塩基部に結合しているが、核酸塩基の種類によって安定性が低い場合がある。ヌクレオチドを伸長する製造において、核酸塩基部から擬似固相保護基が脱離した場合、目的とするオリゴヌクレオチドの収率は低下するため、より安定で大量製造可能な新規なオリゴヌクレオチドの製造方法が求められていた。
【0006】
本発明の目的は、新規オリゴヌクレオチドの製造方法、並びに安定性が高い擬似固相保護基を核酸塩基部に有するヌクレオシド化合物及びオリゴヌクレオチド化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために本発明者らは鋭意研究した結果、核酸塩基部の窒素原子若しくは酸素原子への、擬似固相保護基の結合部分を、メチレンオキシ基とすることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は以下を含む。
【0009】
1. 下記式(II)
【化1】
[式中、*は、核酸塩基との結合位置を示し、
R
1は、それぞれ独立して、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基又はC2-40アルキニル基であり、sは、1から5の整数であり、
L
1及びL
3は、それぞれ独立して、単結合、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基又はC2-6アルキニレン基であり、
L
2及びL
4は、それぞれ独立して、単結合、-COO-若しくは-OCO-、-CON(R
2)-若しくは-N(R
2)CO-(式中R
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基又はC2-6ハロアルケニル基を示す)、-C(O)-又は-O-であり、
L
5及びL
6は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6ハロアルケニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である]で表される保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、
5’位又は3’位がヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの当該5’-ヒドロキシ基又は3’-ヒドロキシ基を、
3’位又は5’位が反応性リン含有基で置換されたヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドと反応させるカップリング工程を含む、オリゴヌクレオチドの製造方法。
【0010】
2. 前記カップリング工程の前に、前記式(II)で表される保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、5’位又は3’位に一時保護基で置換されたヒドロキシ基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの当該一時保護基を除去して、前記5’位又は3’位がヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを生成する反応を含む、脱一時保護基工程を更に含む、1.に記載の製造方法。
【0011】
3. 前記式(II)で表される保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、5’位又は3’位がヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドが、3’位又は5’位に基本保護基で置換されたヒドロキシ基を有する、1.又は2.に記載の製造方法。
【0012】
4. 前記3’位又は5’位が反応性リン含有基で置換されたヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドが、5’位又は3’位に一時保護基で置換されたヒドロキシ基を有する、1.から3.のいずれか1つに記載の製造方法。
【0013】
5. 前記カップリング工程において、前記式(II)で表される保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、5’位がヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの当該5’-ヒドロキシ基を、
3’位が反応性リン含有基で置換されたヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドと反応させる、1.から4.のいずれか1つに記載の製造方法。
【0014】
6. 前記カップリング工程において、前記式(II)で表される保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、3’位がヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの当該3’-ヒドロキシ基を、
5’位が反応性リン含有基で置換されたヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドと反応させる、1.から4.のいずれか1つに記載の製造方法。
【0015】
7. 前記反応性リン含有基が、ヒドロキシホスフィニル基であり、カップリング工程が亜リン酸ジエステル結合を形成する、1.から6.のいずれか1つに記載の製造方法。
【0016】
8. 前記カップリング工程の後に、前記亜リン酸ジエステル結合を、リン酸ジエステル結合、チオリン酸ジエステル結合、ボラノリン酸ジエステル結合、アミノリン酸ジエステル結合、リン酸トリエステル結合又はチオリン酸-O,O,S-トリエステル結合に変換する反応を含む、亜リン酸ジエステル結合の変換工程を更に含む、7.に記載の製造方法。
【0017】
9. 前記反応性リン含有基が、置換されたヒドロキシ(ジアルキルアミノ)ホスフィノ基であり、カップリング工程が亜リン酸トリエステル結合を形成する、1.から6.のいずれか1つに記載の製造方法。
【0018】
10. 前記カップリング工程の後に、前記亜リン酸トリエステル結合を、リン酸トリエステル結合又はチオリン酸トリエステル結合に変換する反応を含む、亜リン酸トリエステル結合の変換工程を更に含む、9.に記載の製造方法。
【0019】
11. 少なくとも1つの工程の反応後に、反応液と極性溶媒とを混合して沈殿物を生成させ、生成した沈殿物を固液分離により取得する精製工程を更に含む、1.から10.のいずれか1つに記載の製造方法。
【0020】
12. 前記極性溶媒が炭素数1から6のアルコール溶媒又は炭素数1から6のニトリル溶媒である、11.に記載の製造方法。
【0021】
13. 前記一時保護基が、tert-ブチルジメチルシリル基、トリチル基、モノメトキシトリチル基又はジメトキシトリチル基であり、前記基本保護基が、レブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基である、3.から12.のいずれか1つに記載の製造方法。
【0022】
14. 前記一時保護基が、レブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基であり、前記基本保護基が、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリチル基、モノメトキシトリチル基又はジメトキシトリチル基である、3.から12.のいずれか1つに記載の製造方法。
【0023】
15.前記式(II)で表される保護基、並びに存在する場合は、前記基本保護基及び前記一時保護基を除去する、全脱保護工程を更に含む、1.から14.のいずれか1つに記載の製造方法。
【0024】
【0025】
[式中、nは、1以上の任意の整数であり、
Base
Zは、それぞれ独立して、核酸塩基、基本保護基で置換された核酸塩基又は下記式(II)で表される保護基で置換された核酸塩基であり、少なくとも1つのBase
Zは、下記式(II)で表される保護基で置換された核酸塩基であり、
Xは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、無置換若しくは置換されたヒドロキシ基又は4’位炭素原子に架橋する有機基であり、
Yは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換されたヒドロキシ基、無置換若しくは置換されたスルファニル基、水素化ホウ素基、又は置換されたアミノ基であり、
Rは、水素原子、基本保護基又は一時保護基であり、
Zは、水素原子、基本保護基又は一時保護基であり、
Vは、それぞれ独立して、酸素原子又は硫黄原子であり、
式(II)が、
【化3】
(式中、*は、核酸塩基部との結合位置を示し、
R
1は、それぞれ独立して、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基又はC2-40アルキニル基であり、sは、1から5の整数であり、
L
1及びL
3は、それぞれ独立して、単結合、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基又はC2-6アルキニレン基であり、
L
2及びL
4は、それぞれ独立して、単結合、-COO-若しくは-OCO-、-CON(R
2)-若しくは-N(R
2)CO-(式中R
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基又はC2-6ハロアルケニル基を示す)、-C(O)-又は-O-であり、
L
5及びL
6は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6ハロアルケニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である)で表され、
2以上の前記式(II)で表される保護基を有する場合、それぞれの式(II)で表される保護基は同一でも異なっていてもよい]で表される化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【0026】
17. nが、1から30の整数である、16.に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【0027】
18. 前記式(II)で表される保護基が置換する核酸塩基が、それぞれ独立して、チミン又はウラシルである、16.又は17.に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【0028】
19. Xが、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、又は基本保護基で置換されたヒドロキシ基である、16.から18.のいずれか1つに記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【0029】
20. Xが、水素原子である、19.に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【0030】
21. Yが、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又は基本保護基で置換されたヒドロキシ基である、16.から20.のいずれか1つに記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【0031】
22. Yが、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又はシアノ基で置換されたC1-6アルキル基で置換されたヒドロキシ基である、21.に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【0032】
23. Rが、水素原子又は一時保護基であり、Zが、基本保護基である、16.から22.のいずれか1つに記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【0033】
24. 前記一時保護基が、tert-ブチルジメチルシリル基、トリチル基、モノメトキシトリチル基又はジメトキシトリチル基であり、前記基本保護基が、レブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基である、23.に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【0034】
25. Zが、水素原子又は一時保護基であり、Rが、基本保護基である、16.から22.のいずれか1つに記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【0035】
26. 前記一時保護基が、レブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基であり、前記基本保護基が、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリチル基、モノメトキシトリチル基又はジメトキシトリチル基である、25.に記載の化合物、該化合物の互変異性体又はその塩。
【0036】
27.下記式(II)
【化4】
[式中、*は、ヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの核酸塩基部との結合位置を示し、
R
1は、それぞれ独立して、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基又はC2-40アルキニル基であり、sは、1から5の整数であり、
L
1及びL
3は、それぞれ独立して、単結合、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基又はC2-6アルキニレン基であり、
L
2及びL
4は、それぞれ独立して、単結合、-COO-若しくは-OCO-、-CON(R
2)-若しくは-N(R
2)CO-(式中R
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基又はC2-6ハロアルケニル基を示す)、-C(O)-又は-O-であり、
L
5及びL
6は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6ハロアルケニル基、又は置換基を有していてもよいベンゼン環である]で表される擬似固相保護基。
【0037】
28. 核酸塩基部にヒドロキシ基又はアミノ基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを、
下記式(X-1)
【化5】
【0038】
(式中、Wは、ハロゲン原子であり、
R
1は、それぞれ独立して、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基又はC2-40アルキニル基であり、sは、1から5の整数であり、
L
1及びL
3は、それぞれ独立して、単結合、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基又はC2-6アルキニレン基であり、
L
2及びL
4は、それぞれ独立して、単結合、-COO-若しくは-OCO-、-CON(R
2)-若しくは-N(R
2)CO-(式中R
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基又はC2-6ハロアルケニル基を示す)、-C(O)-又は-O-であり、
L
5及びL
6は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基又はC2-6ハロアルケニル基である)で表されるハロゲン化アルキル化合物と反応させ、
核酸塩基部に、下記式(II)
【化6】
(式中、*は、ヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの核酸塩基部との結合位置を示し、
R
1、L
1及びL
3、L
2及びL
4、L
5及びL
6、は上記と同じである)で表される擬似固相保護基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを製造する方法。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、より安定性が高い擬似固相保護基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを提供することが可能となった。また該ヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの大量合成に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】試験例1で評価した、実施例1で得られた化合物3(チミン3位に擬似固相保護基が結合したデオキシチミジン)の安定性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明について詳細に説明する。
特に記述がない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと同様又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。
「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0042】
尚、本明細書中「n-」はノルマル、「i-」はイソ、「s-」及び「sec-」はセカンダリー、「t-」及び「tert-」はターシャリーを意味し、「Ph」はフェニル、「Py」はピリジル又はピリジン、「Me」はメチル、「Et」はエチル、「Bu」はブチル、「Bn」はベンジル、「Boc」はターシャリーブトキシカルボニル、「TBS」はターシャリーブチルジメチルシリル、「TIPS」はトリイソプロピルシリル、「TBDPS」は、ターシャリーブチルジフェニルシリル、「DMTr」は4,4’-ジメトキシトリチルを意味し、「r.t.」は室温を意味する。
【0043】
「-COO-」、「-OCO-」、「-CON(R2)-」、「-N(R2)CO-」、「-CO-」、「-CS-」、「-OCON(R12)-」、「-CON(R13)-」及び「-CSN(R14)-」は、それぞれ、「-C(O)O-」、「-OC(O)-」、「-C(O)N(R2)-」、「-N(R2)C(O)-」、「-C(O)-」、「-C(S)-」、「-OC(O)N(R12)-」、「-C(O)N(R13)-」及び「-C(S)N(R14)-」と同義である。
【0044】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。
【0045】
本発明において「アルキル基」は、直鎖若しくは分岐状の、飽和脂肪族炭化水素の1価の基を意味する。「C1-6アルキル基」とは、炭素数が1から6のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基が挙げられる。「C1-40アルキル基」とは、炭素数が1から40のアルキル基を意味し、上記「C1-6アルキル基」の例に加え、デシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ドコシル基、トリアコンチル基、テトラコンチル基、及びそれらの異性体等が挙げられる。
同様に「C10-30アルキル基」とは、炭素数が10から30のアルキル基を意味し、「C15-25アルキル基」とは、炭素数が15から25のアルキル基を意味し、「C15-20アルキル基」とは、炭素数が15から20のアルキル基を意味し、それらの具体例は、上記「C1-40アルキル基」の例に含まれる。
【0046】
本発明において「アルケニル基」は、任意の位置に1以上の二重結合を有する、直鎖若しくは分岐状の、不飽和脂肪族炭化水素の1価の基を意味する。「C2-6アルケニル基」とは、炭素数が2から6のアルケニル基を意味し、例えば、エテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基(ホモアリル基)、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基等が挙げられる。「C2-40アルケニル基」とは、炭素数が2から40のアルケニル基を意味し、上記「C2-6アルケニル基」の例に加え、2-デセニル基、10-デセニル基、18-オクタデセニル基、20-イコセニル基、30-トリアコンテニル基、40-テトラコンテニル基、及びそれらの異性体等が挙げられる。
同様に「C10-30アルケニル基」とは、炭素数が10から30のアルケニル基を意味し、それらの具体例は、上記「C2-40アルケニル基」の例に含まれる。
【0047】
本発明において「アルキニル基」は、任意の位置に1以上の三重結合を有する、直鎖若しくは分岐状の、不飽和脂肪族炭化水素の1価の基を意味する。「C2-6アルキニル基」とは、炭素数が2から6のアルキニル基を意味し、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、4-ペンチニル基、5-ヘキシニル基等が挙げられる。「C2-40アルキニル基」とは、炭素数が2から40のアルキニル基を意味し、上記「C2-6アルキニル基」の例に加え、10-デシニル基、18-オクタデシニル基、20-イコシニル基、30-トリアコンチニル基、40-テトラコンチニル基等が挙げられる。
【0048】
「C1-6アルキレン基」とは、前記「C1-6アルキル基」から任意の位置の水素原子を1個取り除いた2価の基を意味し、例えば、メチレン基、エチレン基(エタンジイル基)、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、2,2-ジメチル-プロパン-1,3-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、3-メチルブタン-1,2-ジイル基などが挙げられる。
【0049】
「C2-6アルキレン基」とは、前記「C1-6アルキレン基」のうち、炭素数が2から6の直鎖又は分枝状の2価の基を意味し、例えば、エチレン基(エタンジイル基)、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、3-メチルブタン-1,2-ジイル基などが挙げられる。
【0050】
「C2-6アルケニレン基」とは、前記「C2-6アルケニル基」から任意の位置の水素原子を1個取り除いた2価の基を意味し、例えば、エテン-1,1-ジイル基、エテン-1,2-ジイル基、プロペン-1,1-ジイル基、プロペン-1,2-ジイル基、プロペン-1,3-ジイル基、ブタ-1-エン-1,4-ジイル基、ブタ-1-エン-1,3-ジイル基、ブタ-2-エン-1,4-ジイル基、ブタ-1,3-ジエン-1,4-ジイル基、ペンタ-2-エン-1,5-ジイル基、ヘキサ-3-エン-1,6-ジイル基、ヘキサ-2,4-ジエン-1,6-ジイル基などが挙げられる。
【0051】
「C2-6アルキニレン基」とは、前記「C2-6アルキニル基」から任意の位置の水素原子を1個取り除いた2価の基を意味し、例えば、エチン-1,2-ジイル基、プロピン-1,3-ジイル基、ブタ-1-イン-1,4-ジイル基、ブタ-1-イン-1,3-ジイル基、ブタ-2-イン-1,4-ジイル基、ペンタ-2-イン-1,5-ジイル基、ペンタ-2-イン-1,4-ジイル基、ヘキサ-3-イン-1,6-ジイル基などが挙げられる。
【0052】
「C1-6ハロアルキル基」とは、1以上の前記「ハロゲン原子」で前記「C1-6アルキル基」の任意の位置の水素原子が置換された基を意味し、例えば、モノフルオロメチル基、モノフルオロエチル基、モノフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、モノクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、1,2-ジブロモエチル基及び1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル基等が挙げられる。
【0053】
「C2-6ハロアルケニル基」とは、1以上の前記「ハロゲン原子」で前記「C2-6アルケニル基」の任意の位置の水素原子が置換された基を意味する。
【0054】
「C3-6シクロアルキル基」とは、環を構成する炭素原子数が3乃至6個である、単環式、縮合多環式、橋架け環式又はスピロ環式の脂肪族炭化水素から任意の位置の水素原子を1個取り除いた1価の基を意味し、具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0055】
「C1-6アルコキシ基」とは、前記「C1-6アルキル基」が、オキシ基(-O-)に結合した基を意味する。
【0056】
「C1-6ハロアルコキシ基」とは、前記「C1-6ハロアルキル基」が、オキシ基(-O-)に結合した基を意味する。
【0057】
「モノC1-6アルキルアミノ基」とは、1つの前記C1-6アルキル基がアミノ基に結合した基を意味し、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、n-ヘキシル基アミノ及びイソヘキシルアミノ基等が挙げられる。
【0058】
「ジC1-6アルキルアミノ基」とは、同一又は異なる2個の前記「C1-6アルキル基」がアミノ基に結合した基を意味し、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジ-n-ペンチルアミノ基、ジ-n-ヘキシルアミノ基、N-エチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-n-プロピルアミノ基、N-イソプロピル-N-メチルアミノ基、N-n-ブチル-N-メチルアミノ基、N-イソブチル-N-メチルアミノ基、N-t-ブチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-n-ペンチルアミノ基、N-n-ヘキシル-N-メチルアミノ基、N-エチル-N-n-プロピルアミノ基、N-エチル-N-イソプロピルアミノ基、N-n-ブチル-N-エチルアミノ基、N-エチル-N-イソブチルアミノ基、N-t-ブチル-N-エチルアミノ基、N-エチル-N-n-ペンチルアミノ基、N-エチル-N-n-ヘキシルアミノ基などが挙げられる。
【0059】
「C1-6アルコキシカルボニル基」、「モノC1-6アルキルアミノカルボニル基」及び「ジC1-6アルキルアミノカルボニル基」等は、それぞれ前記「C1-6アルコキシ基」、「モノC1-6アルキルアミノ基」及び「ジC1-6アルキルアミノ基」が、カルボニル基(-C(O)-)に結合した基を意味する。
【0060】
「C1-6アルコキシC1-6アルキル基」とは、1つの前記C1-6アルコキシ基が、前記「C1-6アルキル基」の任意の位置に置換した基を意味し、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基等が挙げられる。
【0061】
「C1-6アルキルスルホニル基」及び「C1-6ハロアルキルスルホニル基」は、それぞれ前記「C1-6アルキル基」及び「C1-6ハロアルキル基」が、スルホニル基に結合した基を意味する。
【0062】
「C6-10アリール基」とは、環を構成する原子が全て炭素原子であり、炭素原子数が6乃至10個である、単環式又は二環式の芳香族炭化水素から任意の位置の水素原子を1個取り除いた1価の基を意味し、具体例としては、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
【0063】
「5-10員ヘテロアリール基」とは、環を構成する原子の数が5乃至10個であり、環を構成する原子中に1乃至5個のヘテロ原子(該へテロ原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を意味し、2個以上の場合は、同一でも異なっていてもよい。)を含有する単環式又は縮合多環式の芳香族複素環化合物から任意の位置の水素原子を1個取り除いた1価の基を意味する。
【0064】
単環式の「5-10員ヘテロアリール基」としては、2-チエニル基、3-チエニル基、2-フリル基、3-フリル基、2-ピラニル基、3-ピラニル基、4-ピラニル基、1-ピロリル基、2-ピロリル基、3-ピロリル基、1-イミダゾリル基、2-イミダゾリル基、4-イミダゾリル基、1-ピラゾリル基、3-ピラゾリル基、4-ピラゾリル基、5-ピラゾリル基、2-チアゾリル基、4-チアゾリル基、5-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、4-イソチアゾリル基、5-イソチアゾリル基、1,2,4-トリアゾール-1-イル基、1,2,4-トリアゾール-3-イル基、1,2,4-トリアゾール-5-イル基、1,2,3-トリアゾール-1-イル基、1,2,3-トリアゾール-4-イル基、1,2,3-トリアゾール-5-イル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、4-イソオキサゾリル基、5-イソオキサゾリル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ピラジニル基、2-ピリミジニル基、4-ピリミジニル基、5-ピリミジニル基、3-ピリダジニル基、4-ピリダジニル基、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル基、1,3,4-チアジアゾール-2-イル基、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル基、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル基、1,2,4-チアジアゾール-3-イル基、1,2,4-チアジアゾール-5-イル基、1,2,5-オキサジアゾール-3-イル基及び1,2,5-チアジアゾール-3-イル基等が挙げられる。
【0065】
縮合多環式の「5-10員ヘテロアリール基」としては、2-ベンゾフラニル基、3-ベンゾフラニル基、4-ベンゾフラニル基、5-ベンゾフラニル基、6-ベンゾフラニル基、7-ベンゾフラニル基、1-イソベンゾフラニル基、4-イソベンゾフラニル基、5-イソベンゾフラニル基、2-ベンゾチエニル基、3-ベンゾチエニル基、4-ベンゾチエニル基、5-ベンゾチエニル基、6-ベンゾチエニル基、7-ベンゾチエニル基、1-イソベンゾチエニル基、4-イソベンゾチエニル基、5-イソベンゾチエニル基、2-ベンゾチアゾリル基、4-ベンゾチアゾリル基、5-ベンゾチアゾリル基、6-ベンゾチアゾリル基、7-ベンゾチアゾリル基、2-クロメニル基、3-クロメニル基、4-クロメニル基、5-クロメニル基、6-クロメニル基、7-クロメニル基、8-クロメニル基、1-インドリジニル基、2-インドリジニル基、3-インドリジニル基、5-インドリジニル基、6-インドリジニル基、7-インドリジニル基、8-インドリジニル基、1-イソインドリル基、2-イソインドリル基、4-イソインドリル基、5-イソインドリル基、1-インドリル基、2-インドリル基、3-インドリル基、4-インドリル基、5-インドリル基、6-インドリル基、7-インドリル基、1-インダゾリル基、2-インダゾリル基、4-インダゾリル基、5-インダゾリル基、6-インダゾリル基、7-インダゾリル基、2-プリニル基、6-プリニル基、7-プリニル基、8-プリニル基、2-キノリル基、3-キノリル基、4-キノリル基、5-キノリル基、6-キノリル基、7-キノリル基、8-キノリル基、1-イソキノリル基、3-イソキノリル基、4-イソキノリル基、5-イソキノリル基、6-イソキノリル基、7-イソキノリル基、8-イソキノリル基、1-フタラジニル基、5-フタラジニル基、6-フタラジニル基、2,7-ナフチリジン-1-イル基、2,7-ナフチリジン-3-イル基、2,7-ナフチリジン-4-イル基、2,6-ナフチリジン-1-イル基、2,6-ナフチリジン-3-イル基、2,6-ナフチリジン-4-イル基、1,8-ナフチリジン-2-イル基、1,8-ナフチリジン-3-イル基、1,8-ナフチリジン-4-イル基、1,7-ナフチリジン-2-イル基、1,7-ナフチリジン-3-イル基、1,7-ナフチリジン-4-イル基、1,7-ナフチリジン-5-イル基、1,7-ナフチリジン-6-イル基、1,7-ナフチリジン-8-イル基、1,6-ナフチリジン-2-イル基、1,6-ナフチリジン-3-イル基、1,6-ナフチリジン-4-イル基、1,6-ナフチリジン-5-イル基、1,6-ナフチリジン-7-イニル基、1,6-ナフチリジン-8-イル基、1,5-ナフチリジン-2-イル基、1,5-ナフチリジン-3-イル基、1,5-ナフチリジン-4-イル基、2-キノキサリニル基、5-キノキサリニル基、6-キノキサリニル基、2-キナゾリニル基、4-キナゾリニル基、5-キナゾリニル基、6-キナゾリニル基、7-キナゾリニル基、8-キナゾリニル基、3-シンノリニル基、4-シンノリニル基、5-シンノリニル基、6-シンノリニル基、7-シンノリニル基、8-シンノリニル基、2-プテリジニル基、4-プテリジニル基、6-プテリジニル基及び7-プテリジニル基等が挙げられる。
【0066】
「アラルキル基」とは、前記「C1-6アルキル基」の任意の位置の水素原子が、前記「C6-10アリール基」によって置き換えられた1価の基を意味する。
【0067】
「ヘテロアラルキル基」とは、前記「C1-6アルキル基」の任意の位置の水素原子が、前記「5-10員ヘテロアリール基」によって置き換えられた1価の基を意味する。
【0068】
「C6-10アリールメチル基」とは、1つの前記「C6-10アリール基」がメチル基に結合した基を意味する。
「ジC6-10アリールメチル基」とは、2つの前記「C6-10アリール基」がメチル基に結合した基を意味する。
【0069】
「アシル基」とは、1つの前記「C1-6アルキル基」、「C6-10アリール基」又は「アラルキル基」がカルボニル基(-CO-)に結合した基を意味する。ここで、前記「C1-6アルキル基」又は「アラルキル基」のメチレン基は、置き換えられていないか、又は-O-、-NR11-(R11は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCONR12-(R12は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)、-CONR13-(R13は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)及び-CSNR14-(R14は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)から選ばれる基で置き換えられている。「アシル基」としては、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、レブリニル基、3-ベンゾイルプロピオニル基等が挙げられる。
【0070】
「C6-10アリールスルホニル基」は、前記「C6-10アリール基」が、スルホニル基に結合した基を意味する。
【0071】
「C6-10アリールアミノカルボニル基」、「5-10員ヘテロアリールアミノカルボニル基」、「C6-10アリールスルホニルアミノカルボニル基」及び「アラルキルアミノカルボニル基」は、それぞれ前記「C6-10アリール基」、「5-10員ヘテロアリール基」及び「C6-10アリールスルホニル基」及び「アラルキル基」が、アミノカルボニル(H2N-C(O)-)基の窒素原子に置換した基を意味する。
また「アミノカルボニル基」は、本明細書において「カルバモイル基」と互換可能に使用され、例えば「モノC1-6アルキルカルバモイル基」及び「ジC1-6アルキルカルバモイル基」は、それぞれ上記「モノC1-6アルキルアミノカルボニル基」及び「ジC1-6アルキルアミノカルボニル基」と同義であり、「N-(C6-10アリール)カルバモイル基」、「N-(5-10員ヘテロアリール)カルバモイル基」、「N-(C6-10アリールスルホニル)カルバモイル基」及び「N-アラルキルカルバモイル基」は、それぞれ上記「C6-10アリールアミノカルボニル基」、「5-10員ヘテロアリールアミノカルボニル基」、「C6-10アリールスルホニルアミノカルボニル基」及び「アラルキルアミノカルボニル基」と同義である。
【0072】
「3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基」とは、少なくとも1個以上の窒素原子を含有する、環を構成する原子数が3乃至11個である単環式、縮合多環式(該縮合多環式では、非芳香族環が非芳香族環又は芳香族環に縮合していてもよい。)、橋架け環式又はスピロ環式の非芳香族性の複素環化合物から、任意の位置の水素原子を1個取り除いた1価の基を意味し、アゼチジニル基、ピロリジニル基、2-オキソピロリジニル基、ピペリジニル基、3-オキソピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ホモモルホリノ基、ホモピペラジノ基等が挙げられる。
【0073】
「反応性リン含有基」とは、リン原子を含有する基であり、リン酸ジエステル構造、チオリン酸ジエステル構造、リン酸トリエステル構造又はチオリン酸トリエステル構造が含まれるヌクレオシド間結合を形成するために有用な基を意味し、例えば、ヒドロキシホスフィニル基、置換されたヒドロキシ(ジアルキルアミノ)ホスフィノ基等が挙げられる。当該分野で公知の反応性リン含有基を本発明に用いることができる。
【0074】
前記「ヒドロキシ(ジアルキルアミノ)ホスフィノ基」とは、ヒドロキシ基及び前記「ジC1-6アルキルアミノ基」により、ホスフィノ基の水素原子が置き換えられている基を意味する。ここで、該ジC1-6アルキルアミノ基は、それらが結合する窒素原子と一緒に3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基を形成していてもよい。
【0075】
「置換されたヒドロキシ(ジアルキルアミノ)ホスフィノ基」とは、前記「ヒドロキシ(ジアルキルアミノ)ホスフィノ基」が有する、リン原子に結合したヒドロキシ基の水素原子が、C1-6アルキル基等により置き換えられていることを意味する。
ここで、前記C1-6アルキル基等は、無置換であるか又はハロゲン原子及びシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基により、置換されている。
「置換されたヒドロキシ(ジアルキルアミノ)ホスフィノ基」としては、例えば、シアノエトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィノ基等が挙げられる。
【0076】
「C1-40アルキルチオ基」、「C3-6シクロアルキルチオ基」、「C6-10アリールチオ基」、「5-10員ヘテロアリールチオ基」、「アラルキルチオ基」及び「ヘテロアラルキルチオ基」等は、それぞれ前記「C1-40アルキル基」、「C3-6シクロアルキル基」、「C6-10アリール基」、「5-10員ヘテロアリール基」、「アラルキル基」及び「ヘテロアラルキル基」が、チオ基(-S-)に結合した基を意味する。
【0077】
本明細書において、オリゴヌクレオチドの構成単位となる「ヌクレオシド」とは、核酸塩基が糖(例えば、リボース、2’-デオキシリボース、2’位と4’位が架橋したリボース、2’位と3’位が架橋したリボース等)の1’位にN-グリコシド化により結合された化合物を意味する。当業者は、オリゴヌクレオチドの構成単位となる「ヌクレオシド」に使用される糖を、認識できる。
ここで、前記リボース及び2’-デオキシリボースは、無置換であるか又は、C1-6アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、基本保護基で置換されたヒドロキシ基、基本保護基で置換されたアミノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されている。また、前記C1-6アルキル基は、無置換であるか、ハロゲン原子、C1-6アルコキシカルボニル基、モノC1-6アルキルアミノカルボニル基及びジC1-6アルキルアミノカルボニル基等から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されている。前記C1-6アルコキシカルボニル基、モノC1-6アルキルアミノカルボニル基及びジC1-6アルキルアミノカルボニル基等は、無置換であるか又は、モノアルキルアミノ基、ジC1-6アルキルアミノ基、C6-10アリール基、5-10員ヘテロアリール基又は3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基により置換されている。また、リボースの2’位ヒドロキシ基は、無置換であるか又は基本保護基で置換されている。前記基本保護基で置換されたアミノ基の基本保護基としては、後述する核酸塩基における「アミノ基の基本保護基」と同様の基が挙げられる。
2’位と4’位が架橋したリボースとは、ヌクレオシドの2’位と4’位とが架橋基を介して架橋されている限り限定されないが、例えば、2’位と4’位とが、C2-6アルキレン基[該アルキレン基は無置換であるか、又はC1-6アルキル基で置換されている。また、該アルキレン基の1若しくは2つのメチレン基は、置き換えられていないか、又は-O-、-NR11-(R11は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCONR12-(R12は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)、-CONR13-(R13は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)及び-CSNR14-(R14は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)から選ばれる基で置き換えられている]で架橋されたリボースが挙げられる。具体例としては、下記式の化合物が挙げられる。
【0078】
【0079】
ヌクレオシドの糖は、好ましくは、リボース又は2’-デオキシリボースであり、特に好ましくは2’-デオキシリボースである。
【0080】
本明細書において、「核酸塩基」とは、核酸の合成に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、シトシル基、ウラシル基、チミニル基、5-メチルシトシル基等のピリミジン塩基、アデニル基、グアニル基等のプリン塩基を挙げることができる。また、「基本保護基で置換された核酸塩基」とは、例えば、アミノ基を有する核酸塩基であるアデニル基、グアニル基、又はシトシル基において、アミノ基が基本保護基で置換されていること、ヒドロキシ基を有する核酸塩基である場合においてヒドロキシ基が基本保護基で置換されていること、スルファニル基を有する核酸塩基である場合においてスルファニル基が基本保護基で置換されていること、又はカルボニル基を有する核酸塩基において、その環に置換されているアミノ基又はヒドロキシ基と共役してカルボニル基がヒドロキシ基の形になって該ヒドロキシ基が基本保護基で置換されていること等を意味し、3’位又は5’位における一時保護基の脱保護条件に耐え得る保護基により保護されている核酸塩基が好ましい。
【0081】
前記核酸塩基における「アミノ基の基本保護基」としては、特に限定されず、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY & SONS)出版(1999年)等に記載されている保護基を挙げることができる。かかる「アミノ基の基本保護基」の具体例としては、例えば、ピバロイル基、ピバロイロキシメチル基、トリフルオロアセチル基、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、4-tert-ブチルフェノキシアセチル基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、ジメチルホルムアミジニル基、ジメチルアセトアミジニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基等を挙げることができる。これらの中でも、フェノキシアセチル基、4-イソプロピルフェノキシアセチル基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、及びジメチルホルムアミジニル基が好ましい。
【0082】
また、前記核酸塩基における「アミノ基の基本保護基」の具体例としては、C6-10アリールアミノカルボニル基、5-10員ヘテロアリールアミノカルボニル基、C6-10アリールスルホニルアミノカルボニル基、モノC1-6アルキルアミノカルボニル基、アラルキルアミノカルボニル基等のアミノカルボニル型保護基を挙げることができる。
【0083】
C6-10アリールアミノカルボニル基としては、フェニルアミノカルボニル基(ここで、フェニルアミノカルボニル基は、無置換であるか、又はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1-6アルキルスルホニル基、C1-6ハロアルキルスルホニル基、C1-6アルコキシ基、C1-6ハロアルコキシ基、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C1-6ハロアルキル基及びC2-6ハロアルケニル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されている)等が挙げられる。
前記アミノカルボニル型保護基のC6-10アリールは、好ましくは、フェニル、2-ニトロフェニル、2-トリフルオロメチルフェニル、3-トリフルオロメチルフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、2-クロロフェニル、2-フルオロフェニル、2-メチルフェニル、2-シアノフェニル、2-トリフルオロメトキシフェニル、2-クロロ-6-トリフルオロメチルフェニル、2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニル、2,6-ジクロロフェニル、2,6-ジフルオロフェニル、2,6-ジメチルフェニル、ペンタフルオロフェニル、2-メトキシフェニル、2,3-ジメトキシフェニル、2,4-ジメトキシフェニル、2,5-ジメトキシフェニル、2,6-ジメトキシフェニル、3,4,5-トリメトキシフェニル、2,3,4-トリメトキシフェニル、2,4,5-トリメトキシフェニル、2,4,6-トリメトキシフェニルである。
【0084】
前記5-10員ヘテロアリールアミノカルボニル基は、好ましくは、2-ピリジルアミノカルボニル基、3-ピリジルアミノカルボニル基、4-ピリジルアミノカルボニル基である。
【0085】
前記C6-10アリールスルホニルアミノカルボニル基は、好ましくは、N-(p-トルエンスルホニル)アミノカルボニル基、ベンゼンスルホニルアミノカルボニル基である。
前記モノC1-6アルキルアミノカルボニル基は、好ましくは、エチルアミノカルボニル基である。
前記アラルキルアミノカルボニル基は、好ましくは、ベンジルアミノカルボニル基等を挙げることができる。
【0086】
アデニル基のアミノ基の保護基は、好ましくは、フェニルアミノカルボニル基(該フェニルアミノカルボニル基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1-6アルキルスルホニル基、C1-6ハロアルキルスルホニル基及びC1-6ハロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されている)又は、ピリジルアミノカルボニル基であり、さらに好ましくは、2-ニトロフェニルアミノカルボニル基、2-トリフルオロメチルフェニルアミノカルボニル基、ペンタフルオロフェニルアミノカルボニル基、2-クロロ-6-トリフルオロメチルフェニルアミノカルボニル基、2-クロロ-4-トリフルオロメチルフェニルアミノカルボニル基、3-ピリジルアミノカルボニル基、又は4-ピリジルアミノカルボニル基であり、特に好ましくは、2-クロロ-6-トリフルオロメチルフェニルアミノカルボニル基である。
【0087】
シトシル基及び5-メチルシトシル基のアミノ基の保護基は、好ましくは、フェニルアミノカルボニル基(該フェニルアミノカルボニル基は、無置換であるか、又は少なくとも1つのC1-6アルコキシ基若しくはC1-6ハロアルコキシ基で置換されている)又はピリジルアミノカルボニル基であり、より好ましくは、フェニルアミノカルボニル基、2,3-ジメトキシフェニルアミノカルボニル基、2,4-ジメトキシフェニルアミノカルボニル基、2,5-ジメトキシフェニルアミノカルボニル基、3-ピリジルアミノカルボニル基、又は4-ピリジルアミノカルボニル基であり、さらに好ましくは、フェニルアミノカルボニル基、2,3-ジメトキシフェニルアミノカルボニル基、2,4-ジメトキシフェニルアミノカルボニル基又は2,5-ジメトキシフェニルアミノカルボニル基であり、特に好ましくは、フェニルアミノカルボニル基である。
【0088】
前記核酸塩基における「ヒドロキシ基の基本保護基」としては、特に限定されず、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY & SONS)出版(1999年)等に記載されている任意の保護基を挙げることができる。具体的には、C1-6アルキル基(メチル基、tert-ブチル基等)、C6-10アリールメチル基(ベンジル基、p-メトキシベンジル基等)、C1-6アルコキシC1-6アルキル基(メトキシメチル基、メトキシエチル基、シアノエトキシメチル基、エトキシエチル基等)、2-テトラヒドロピラニル基、シアノエチル基、カルバモイル基(フェニルカルバモイル基、1,1-ジオキソチオモルホリン-4-チオカルバモイル基等)、アシル基(アセチル基、ピバロイル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、フェノキシアセチル基、レブリニル基、3-ベンゾイルプロピオニル基等)、シリル基(トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基等)、[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル基(Tom基)、1-(4-クロロフェニル)-4-エトキシピペリジン-4-イル基(Cpep基)等を挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基又はp-メトキシベンジル基が好ましい。
前記核酸塩基における「スルファニル基の基本保護基」としては、「ヒドロキシ基の基本保護基」と同様の保護基に加えて、ジスルフィド結合を形成する保護基を挙げることができる。
【0089】
また、核酸塩基のカルボニル基が共役してヒドロキシ基の形になって保護されているとき、例えば、フェノール、2,5-ジクロロフェノール、3-クロロフェノール、3,5-ジクロロフェノール、2-ホルミルフェノール、2-ナフトール、4-メトキシフェノール、4-クロロフェノール、2-ニトロフェノール、4-ニトロフェノール、4-アセチルアミノフェノール、ペンタフルオロフェノール、4-ピバロイロキシベンジルアルコール、4-ニトロフェネチルアルコール、2-(メチルスルホニル)エタノール、2-(フェニルスルホニル)エタノール、2-シアノエタノール、2-(トリメチルシリル)エタノール、ジメチルカルバミン酸クロリド、ジエチルカルバミン酸クロリド、エチルフェニルカルバミン酸クロリド、1-ピロリジンカルボン酸クロリド、4-モルホリンカルボン酸クロリド、ジフェニルカルバミン酸クロリド等を反応させて、カルボニル基を保護することが出来る。
【0090】
また、該「核酸塩基」には、上記の基の他に、核酸塩基が任意の置換基(例えば、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、アラルキル基、C1-6アルコキシ基、アシル基、C1-6アルコキシC1-6アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、モノC1-6アルキルアミノ基、ジC1-6アルキルアミノ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基等)により任意の位置に1から3個置換されている修飾核酸塩基(例えば、8-ブロモアデニル基、8-ブロモグアニル基、5-ブロモシトシル基、5-ヨードシトシル基、5-ブロモウラシル基、5-ヨードウラシル基、5-フルオロウラシル基、5-メチルシトシル基、8-オキソグアニル基、ヒポキサンチニル基等)及びデメチル化された修飾核酸塩基(例えば、チミンの5-デメチル化)等も包含される。また、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリ-(2016年、59巻、21号、9645-9667頁)、メディシナル・ケミストリー・コミュニケーションズ(2014年、5巻、1454-1471頁)、フューチャー・メディシナル・ケミストリー(2011年、3巻、3号、339-365頁)等に、ヌクレオチドにおける塩基部分の修飾の例が開示されており、これらを用いることができる。
【0091】
〔伸長反応サイクル〕
本明細書中「伸長反応サイクル」は、擬似固相保護基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの3’-ヒドロキシ基又は5’-ヒドロキシ基を、反応性リン含有基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドと反応させ、擬似固相保護基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドと、反応性リン含有基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドとの結合体を得る反応サイクルを意味する。
【0092】
伸長反応サイクルは、例えば、擬似固相保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、3’位又は5’位に一時保護基で置換されたヒドロキシ基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの一時保護基を除去して3’位又は5’位がヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを生成する反応を含む工程と、生成したヒドロキシ基を、反応性リン含有基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドと反応させ、これらが亜リン酸ジエステル結合又は亜リン酸トリエステル結合等を介して結合したオリゴヌクレオチドを得る工程と、を含む。
【0093】
〔擬似固相保護基〕
本発明に使用される擬似固相保護基とは、該保護基を反応基質が有することにより、反応基質及び反応生成物が低極性溶媒に可溶化し、液相中の反応が可能であると共に、一定以上の極性溶媒の添加により反応生成物又は反応基質が沈殿し、固液分離が可能となる保護基であって、5’位ヒドロキシ基若しくは3’位ヒドロキシ基の下記一時保護基を除去する条件では安定な保護基である。擬似固相保護基を有する反応基質を使用することにより、反応性と後処理の簡便性とを両立することができる。
【0094】
本発明に使用される擬似固相保護基としては、下記式(II)で表される基が挙げられる。
【化8】
[式中、*は、核酸塩基との結合位置を示し、
R
1は、それぞれ独立して、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基又はC2-40アルキニル基であり、sは、1から5の整数であり、
L
1及びL
3は、それぞれ独立して、単結合、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基又はC2-6アルキニレン基であり、
L
2及びL
4は、それぞれ独立して、単結合、-COO-若しくは-OCO-、-CON(R
2)-若しくは-N(R
2)CO-(式中R
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基又はC2-6ハロアルケニル基を示す)、-C(O)-又は-O-であり、
L
5及びL
6は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6ハロアルケニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。]
ここで、L
2が、-COO-又は-O-であり、L
4が、-OCO-又は-O-であるとき、L
3は、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基又はC2-6アルキニレン基であることが好ましい。また、L
1が、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基又はC2-6アルキニレン基であり、L
2が、単結合であるとき、L
3は、単結合であることが好ましい。
【0095】
本発明に使用される擬似固相保護基の代表的な例としては、例えば、
{[3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンゾイル]オキシ}メチル基、及び
2-[N-メチル-3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンズアミド]エトキシスクシニルオキシメチル基([(3-{2-[N-メチル-3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)ベンズアミド]エトキシカルボニル}プロパノイル)オキシ]メチル基)
などが挙げられる。
【0096】
〔一時保護基〕
本発明に使用される一時保護基とは、5’位ヒドロキシ基若しくは3’位ヒドロキシ基を保護する保護基であり、前記「伸長反応サイクル」において脱保護される保護基である。脱保護された5’位ヒドロキシ基若しくは3’位ヒドロキシ基は、伸長反応サイクルにおいて、別のヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの反応性リン含有基との結合に利用される。一時保護基は、例えば、以下の文献に記載されるような保護基が挙げられる。
Protective Groups in Organic Synthesis, Greene T. W. and Wuts P.G.M., published by Wiley Interscience, 1999及びProtecting Groups, Kocienski P. J., 1994, Georg Thieme Verlag。
【0097】
〔基本保護基〕
本発明に使用される基本保護基とは、核酸塩基中のアミノ基、カルボニル基、ヒドロキシ基若しくはスルファニル基、又は2’位ヒドロキシ基若しくはアミノ基、3’位ヒドロキシ基若しくは5’位ヒドロキシ基、又はリン酸ジエステル結合、チオリン酸ジエステル結合若しくは亜リン酸ジエステル結合のヒドロキシ基、又はチオリン酸ジエステル結合のスルファニル基を保護する保護基であり、前記「伸長反応サイクル」においては脱保護されず、かつ前記「擬似固相保護基」が有する機能は有さない一般的な保護基である。基本保護基は、例えば、以下の文献に記載される保護基が挙げられる。
Protective Groups in Organic Synthesis, Greene T. W. and Wuts P.G.M., published by Wiley Interscience, 1999及びProtecting Groups, Kocienski P. J., 1994, Georg Thieme Verlag。
【0098】
擬似固相保護基、一時保護基、又は基本保護基により置換された官能基(ヒドロキシ基、アミノ基、スルファニル基等)とは、官能基が有する水素原子が当該保護基により置き換えられた基を意味する。
【0099】
擬似固相保護基又は基本保護基により置換された核酸塩基とは、核酸塩基が有する官能基(ヒドロキシ基、アミノ基、スルファニル基等)の水素原子が当該保護基により置き換えられた核酸塩基を意味する。前記核酸塩基が有する官能基には、共役することにより生成する官能基も含まれる。
【0100】
「基本保護基で置換されたリン酸ジエステル結合」は、リン酸ジエステル結合がヒドロキシ基を有するとき、当該ヒドロキシ基が基本保護基で置換されていることを意味し、「リン酸トリエステル結合」に包含される。
「基本保護基で置換された亜リン酸ジエステル結合」は、亜リン酸ジエステル結合がヒドロキシ基を有するとき、当該ヒドロキシ基が基本保護基で置換されていることを意味し、「亜リン酸トリエステル結合」に包含される。
「基本保護基で置換されたチオリン酸ジエステル結合」は、チオリン酸ジエステル結合がヒドロキシ基又はスルファニル基を有するとき、当該ヒドロキシ基又はスルファニル基が基本保護基で置換されていることを意味し、それぞれ「チオリン酸トリエステル結合」、「チオリン酸-O,O,S-トリエステル結合」に包含される。
【0101】
本明細書中「4’位炭素原子に架橋する有機基」は、糖の2’位と4’位とを架橋する有機基を意味し、特に限定されないが、例えば、C2-6アルキレン基[該アルキレン基は無置換であるか、又はC1-6アルキル基で置換されている。ここで、該アルキレン基の1若しくは2つのメチレン基は、置き換えられていないか、又は-O-、-NR11-(R11は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCONR12-(R12は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)、-CONR13-(R13は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)及び-CSNR14-(R14は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)から選ばれる基で置き換えられている]である架橋基を意味する。
【0102】
〔オリゴヌクレオチドの製造方法〕
次に、本発明にかかるオリゴヌクレオチドの製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)について説明する。具体的には、擬似固相保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチド(以下、「n個重合オリゴヌクレオチド」ともいう)から、ヌクレオシド又はオリゴヌクレオチド(以下、「p個重合オリゴヌクレオチド」ともいう)で伸長され、擬似固相保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有するオリゴヌクレオチド(以下、「n+p個重合オリゴヌクレオチド」ともいう)を製造する方法について説明する。なお、n個重合オリゴヌクレオチドとは、n個のヌクレオシドがリン含有基を介して結合したオリゴヌクレオチドを意味し、n=1の場合、n個重合オリゴヌクレオチドはヌクレオシドと解され、p個重合オリゴヌクレオチドについても同様である。
【0103】
ここで、n個重合オリゴヌクレオチドが、2以上の核酸塩基部を有する場合、それぞれの核酸塩基部は同一であっても異なっていてもよく、n個重合オリゴヌクレオチドが、2以上の擬似固相保護基を有する場合、それぞれの擬似固相保護基は同一であっても異なっていてもよく、n個重合オリゴヌクレオチドが、2以上の基本保護基を有する場合、それぞれの基本保護基は同一であっても異なっていてもよく、n個重合オリゴヌクレオチドが、2以上の4’位炭素原子に架橋する有機基を有する場合、それぞれの4’位炭素原子に架橋する有機基は同一であっても異なっていてもよい。
p個重合オリゴヌクレオチドについても同様である。
【0104】
オリゴヌクレオチドの製造方法は、擬似固相保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、5’位又は3’位がヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの当該5’-ヒドロキシ基又は3’-ヒドロキシ基を、3’位又は5’位が反応性リン含有基で置換されたヒドロキシ基であるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの当該3’位又は5’位の反応性リン含有基と反応させる、カップリング工程を含む。
またオリゴヌクレオチドの製造方法は、前記カップリング工程を含む伸長反応サイクルを少なくとも1つ含む。
【0105】
オリゴヌクレオチドの製造方法は、H-ホスホネート法を用いても、ホスホロアミダイト法を用いてもよい。
【0106】
オリゴヌクレオチドの製造方法は、好ましくは以下の工程aから工程cを伸長反応サイクルに含む。なお、工程aから工程cの順番は、工程a、工程b、工程cの順か、工程a、工程c、工程bの順に行う。好ましい順は、工程a、工程b、工程cの順である。
【0107】
(工程a)
工程aは、擬似固相保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、かつ伸長末端のヒドロキシ基が一時保護基で置換されたヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの一時保護基を除去してヒドロキシ基とすることを含む脱一時保護基工程である。
【0108】
(工程b)
工程bは、前記一時保護基が除去されたヒドロキシ基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドに対して、反応性リン含有基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを添加して、そのヒドロキシ基を介して亜リン酸ジエステル結合又は亜リン酸トリエステル結合により縮合させることを含むカップリング工程である。
工程b1は、H-ホスホネート法の場合の工程bである。工程b1では、前記反応性リン含有基は、ヒドロキシホスフィニル基であり、亜リン酸ジエステル結合が形成される。
工程b2は、ホスホロアミダイト法の場合の工程bである。工程b2では、前記反応性リン含有基は、置換されたヒドロキシ(ジアルキルアミノ)ホスフィノ基であり、亜リン酸トリエステル結合が形成される。
【0109】
(工程c)
工程cは、前記形成された亜リン酸ジエステル結合又は亜リン酸トリエステル結合を、変換することを含む、変換工程である。
工程c1は、前記工程b1で形成された亜リン酸ジエステル結合を、リン酸ジエステル結合、チオリン酸ジエステル結合、アミノリン酸ジエステル結合、ボラノリン酸ジエステル結合、リン酸トリエステル結合又はチオリン酸-O,O,S-トリエステル結合等へと変換することを含む、亜リン酸ジエステル結合の変換工程である。
工程c2は、前記工程b2で形成された亜リン酸トリエステル結合を、リン酸トリエステル結合又はチオリン酸トリエステル結合等へと変換することを含む、亜リン酸トリエステル結合の変換工程である。
【0110】
ここで、前記アミノリン酸ジエステル結合のアミノ基は、1若しくは2個のC1-6アルキル基で置換されている。
前記リン酸トリエステル結合は、リン酸ジエステル結合の1つのヒドロキシ基の水素原子が基本保護基等によって置き換えられた基であり、例えば、C1-40アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C6-10アリール基、5-10員ヘテロアリール基、アラルキル基又はヘテロアラルキル基等によって置き換えられた結合が挙げられる。
前記亜リン酸トリエステル結合は、亜リン酸ジエステル結合の1つのヒドロキシ基の水素原子が基本保護基等によって置き換えられた基であり、例えば、C1-40アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C6-10アリール基、5-10員ヘテロアリール基、アラルキル基又はヘテロアラルキル基等によって置き換えられた結合が挙げられる。
チオリン酸-O,O,S-トリエステル結合は、チオリン酸ジエステル結合の1つのスルファニル基の水素原子が基本保護基等によって置き換えられた基であり、C1-40アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C6-10アリール基、5-10員ヘテロアリール基、アラルキル基又はヘテロアラルキル基等によって置き換えられた結合である。
ここで、前記リン酸トリエステル結合、前記亜リン酸トリエステル結合及びチオリン酸-O,O,S-トリエステル結合における前記C1-40アルキル基は、無置換であるか又は、ハロゲン原子、シアノ基等によって置換されている。前記C3-6シクロアルキル基、前記C6-10アリール基、前記5-10員ヘテロアリール基、前記アラルキル基及び前記ヘテロアラルキル基は、無置換であるか又は、C1-6アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基等によって置換されている。
【0111】
H-ホスホネート法の場合、オリゴヌクレオチドの製造方法は、工程a、工程b1及び工程c1を伸長反応サイクルに含む。工程a、工程b1及び工程c1の順は、この順か、又は工程a、工程c1、工程b1の順であり、好ましくは、工程a、工程b1、工程c1の順である。
ホスホロアミダイト法の場合、オリゴヌクレオチドの製造方法は、工程a、工程b2及び工程c2をこの順に伸長反応サイクルに含む。工程a、工程b2及び工程c2の順は、この順か、又は工程a、工程c2、工程b2の順であり、好ましくは、工程a、工程b2、工程c2の順である。
【0112】
工程aに用いる擬似固相保護基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドに含まれるヌクレオシド数nは、1以上の任意の整数であれば特に限定されないが、好ましくは、1から50であり、より好ましくは1から30であり、更に好ましくは1から10であり、更により好ましくは1から5であり、更により好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1、つまりヌクレオシドを用いることが特に好ましい。
工程bに用いる反応性リン含有基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドに含まれるヌクレオシド数pは、1以上の任意の整数であれば特に限定されないが、好ましくは、1から50であり、より好ましくは1から30であり、更に好ましくは1から5であり、更により好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1、つまりヌクレオシドを用いることが特に好ましい。
なお、工程cで得られた反応混合物を、そのまま工程aに使用することもできる。また、工程cの反応後に適宜昇温などを行うことで、同時に工程aを行うこともできる。
【0113】
オリゴヌクレオチドの製造方法は、更に、下記工程eを含むことにより、簡便かつ効果的に過剰原料や副生物を除去してヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを精製することができる。
(工程e)
工程eは、工程aから工程cのいずれかで得られた反応混合物と極性溶媒とを混合して、擬似固相保護基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを沈殿させて、固液分離により取得する分離工程である。
H-ホスホネート法の場合、工程a、工程b1及び工程c1のいずれかで得られた反応混合物と極性溶媒とを混合して、擬似固相保護基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを沈殿させて、固液分離により取得する。
ホスホロアミダイト法の場合、工程a、工程b2及び工程c2のいずれかで得られた反応混合物と極性溶媒とを混合して、擬似固相保護基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを沈殿させて、固液分離により取得する。
なお、工程eは、擬似固相保護基を用いない通常の液相合成法にも、固相合成法にも存在し得ない、擬似固相保護基を用いる液相合成法に特有の工程である。
【0114】
前記反応混合物と極性溶媒とを混合する際、反応混合物に極性溶媒を添加してもよく、極性溶媒に反応混合物を添加してもよい。好ましくは、極性溶媒に反応混合物を添加する。
【0115】
伸長反応サイクルに含まれる工程eの数は、特に制限されない。工程eは、工程aから工程cのいずれの工程の後にも、行うことができる。
工程eは、工程aから工程cの各工程の後に、それぞれ独立して、例えば0~5回含まれ、好ましくは0~3回含まれ、より好ましくは0~2回含まれ、さらに好ましくは0又は1回含まれる。ここで、工程a~cの後の少なくとも1つに、1回以上の工程eが含まれる。
伸長反応サイクルには、1から3回の工程eが含まれることが好ましい。工程eは、伸長反応サイクル中に、工程aの後、工程bの後及び工程cの後の少なくとも1つに、1回含まれることが、副生物発生を厳格に管理・制御でき、高純度のオリゴヌクレオチドに導けるという観点で好ましい。工程eは、伸長反応サイクル中に、工程aの後に1回含まれるか、工程cの後に1回含まれるか、又は工程a及び工程cの後にそれぞれ1回含まれることが、より好ましい。
【0116】
原料の当量管理と反応を制御することによって副生物の発生量を制御できる状況であれば、工程aから工程cを基本単位として実施した後、工程eを行うことが好ましい。
【0117】
オリゴヌクレオチドの製造方法は、更に、工程fを含んでいてもよい。これにより、所望のオリゴヌクレオチドを単離・製造することができる。
(工程f)
工程fは、工程aから工程c及び工程eで得られたオリゴヌクレオチドの基本保護基、一時保護基及び擬似固相保護基を除去する脱保護工程であり、全脱保護工程とも言うことができる。
【0118】
オリゴヌクレオチドの製造方法はオリゴヌクレオチドの伸長方向によって、主に方法A又は方法Bに分類される。方法Aでは、5’位のヒドロキシ基を工程aから工程cにより変換し、5’位にヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを伸長する。方法Bでは、3’位のヒドロキシ基を工程aから工程cにより変換し、3’位にヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを伸長する。
【0119】
方法Aは、
前記式(II)で表される擬似固相保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、3’位に基本保護基で置換されたヒドロキシ基を有し、5’位に一時保護基で置換されたヒドロキシ基を有する第一ヌクレオシド又は第一オリゴヌクレオチドの一時保護基を除去して5’-ヒドロキシ基を生成する反応を含む脱一時保護基工程(工程a)と、
生成した5’-ヒドロキシ基と、3’位に反応性リン含有基を有し、5’位に一時保護基で置換されたヒドロキシ基を有する第二ヌクレオシド又は第二オリゴヌクレオチドの3’-ヒドロキシ基を反応させて、亜リン酸ジエステル結合又は亜リン酸トリエステル結合を形成して、第一ヌクレオシド又は第一オリゴヌクレオチドと、第二ヌクレオシド又は第二オリゴヌクレオチドとの結合体を得る反応を含むカップリング工程(工程b)と、
結合体の亜リン酸ジエステル結合を、リン酸ジエステル結合、チオリン酸ジエステル結合、ボラノリン酸ジエステル結合、アミノリン酸ジエステル結合、リン酸トリエステル結合、又はチオリン酸-O,O,S-トリエステル結合に変換する反応、あるいは
結合体の亜リン酸トリエステル結合を、リン酸トリエステル結合、又はチオリン酸トリエステル結合に変換する反応を含む変換工程(工程c)と、を含むオリゴヌクレオチドの製造方法である。
【0120】
方法Bは、
前記式(II)で表される擬似固相保護基で置換された核酸塩基を少なくとも1つ有し、5’位に基本保護基で置換されたヒドロキシ基を有し、3’位に一時保護基で置換されたヒドロキシ基を有する第三ヌクレオシド又は第三オリゴヌクレオチドの一時保護基を除去して3’-ヒドロキシ基を生成する反応を含む脱一時保護基工程(工程a)と、
生成した3’-ヒドロキシ基と、5’位に反応性リン含有基を有し、3’位に一時保護基で置換されたヒドロキシ基を有する第四ヌクレオシド又は第四オリゴヌクレオチドの5’-ヒドロキシ基を反応させて、亜リン酸ジエステル結合又は亜リン酸トリエステル結合を形成して、第三ヌクレオシド又は第三オリゴヌクレオチドと、第四ヌクレオシド又は第四オリゴヌクレオチドとの結合体を得る反応を含むカップリング工程(工程b)と、
結合体の亜リン酸ジエステル結合を、リン酸ジエステル結合、チオリン酸ジエステル結合、ボラノリン酸ジエステル結合、アミノリン酸ジエステル結合、リン酸トリエステル結合、又はチオリン酸-O,O,S-トリエステル結合に変換する反応、あるいは
結合体の亜リン酸トリエステル結合を、リン酸トリエステル結合、又はチオリン酸トリエステル結合に変換する反応を含む変換工程(工程c)と、を含むオリゴヌクレオチドの製造方法である。
【0121】
方法A、Bいずれにおいても、カップリング工程が亜リン酸ジエステル結合を形成する場合(即ち、H-ホスホネート法の場合)、該亜リン酸ジエステル結合は、変換工程においてリン酸ジエステル結合、チオリン酸ジエステル結合、ボラノリン酸ジエステル結合、アミノリン酸ジエステル結合、リン酸トリエステル結合、又はチオリン酸-O,O,S-トリエステル結合に変換される。カップリング工程が亜リン酸トリエステル結合を形成する場合(即ち、ホスホロアミダイト法の場合)、該亜リン酸トリエステル結合は、リン酸トリエステル結合、又はチオリン酸トリエステル結合に変換される。
【0122】
以下に、工程aから工程c、工程e及び工程fについて順に詳細に説明する。
【0123】
(工程a)(脱一時保護基工程)
まず、方法A又は方法Bのそれぞれの場合の工程aをスキーム1又は2に示す。
方法Aにおける工程aは、低極性溶媒中において、5’位ヒドロキシ基がフッ素試薬、酸又は塩基で除去可能な一時保護基Rで置換されたn個重合オリゴヌクレオチド(ia)(式中、nは、1以上の任意の整数を示し、n=1の場合は、ヌクレオシドを示す。)の一時保護基Rを、フッ素試薬、酸又は塩基の添加により除去する工程(脱一時保護基工程)である(スキーム1)。
【0124】
【0125】
スキーム中、nは、1以上の任意の整数を示し、Basezは、それぞれ独立して、核酸塩基、基本保護基で置換された核酸塩基又は擬似固相保護基で置換された核酸塩基を示し、Rは、一時保護基を示し、Xは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、無置換若しくは置換されたヒドロキシ基又は4’位炭素原子に架橋する有機基を示し、Vは、それぞれ独立して、酸素原子又は硫黄原子を示し、Yは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換されたヒドロキシ基、無置換若しくは置換されたスルファニル基、水素化ホウ素基、置換されたアミノ基を示し、Zは、基本保護基を示す。ここで、Vが硫黄原子のとき、該硫黄原子が結合するリン原子に結合するYは、置換されたヒドロキシ基を示す。
ここで、少なくとも1つのBaseZは、擬似固相保護基で置換された核酸塩基である。
ここで、スキーム1中化合物(ia)又は(iia)が、2以上の核酸塩基部を有する場合、それぞれの核酸塩基部は同一であっても異なっていてもよく、(ia)又は(iia)が、2以上の擬似固相保護基を有する場合、それぞれの擬似固相保護基は同一であっても異なっていてもよく、(ia)又は(iia)が、2以上の基本保護基を有する場合、それぞれの基本保護基は同一であっても異なっていてもよく、n個重合オリゴヌクレオチドが、2以上の4’位炭素原子に架橋する有機基を有する場合、それぞれの4’位炭素原子に架橋する有機基は同一であっても異なっていてもよい。
【0126】
方法Bにおける工程aは、低極性溶媒中において、3’位ヒドロキシ基がフッ素試薬、酸又は塩基で除去可能な一時保護基Rで置換されたn個重合オリゴヌクレオチド(ib)(式中、nは、1以上の任意の整数を示し、n=1の場合は、ヌクレオシドを示す。)の一時保護基Rを、フッ素試薬、酸又は塩基の添加により除去する工程(脱一時保護基工程)である(スキーム2)。なお、スキーム中、n、Basez、R、X、V、Y及びZは、スキーム1における定義に同じである。
【0127】
【0128】
擬似固相保護基は、少なくとも1つのBaseZに含まれることが好ましい。
【0129】
Base
zに含まれる本発明の擬似固相保護基は、下記式(II)で表される基である。
【化11】
式中、*は、核酸塩基との結合位置を示し、
R
1は、それぞれ独立して、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基又はC2-40アルキニル基であり、sは、1から5の整数であり、
L
1及びL
3は、それぞれ独立して、単結合、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基又はC2-6アルキニレン基であり、
L
2及びL
4は、それぞれ独立して、単結合、-COO-若しくは-OCO-、-CON(R
2)-若しくは-N(R
2)CO-(式中R
2は、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基又はC2-6ハロアルケニル基を示す)、-C(O)-又は-O-であり、
L
5及びL
6は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6ハロアルケニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0130】
擬似固相保護基は、好ましくは下記式(IIa)で表される基である。
【化12】
【0131】
式中、*は、核酸塩基部との結合位置を示し、R1は、それぞれ独立して、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基又はC2-40アルキニル基であり、sは、1から5の整数であり、L5及びL6は、それぞれ独立して、水素原子又はC1-6アルキル基である。
【0132】
Base
zに含まれる擬似固相保護基は、さらにより好ましくは、下記式(III)で表される基である。
【化13】
【0133】
式中、*は、核酸塩基との結合位置を示し、R1は、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基又はC2-40アルキニル基であり、sは、1から5の整数である。
【0134】
Basezに含まれる、式(II)、式(IIa)又は式(III)で表される擬似固相保護基のR1は、好ましくは、C10-30アルキル基又はC10-30アルケニル基であり、より好ましくはC10-30アルキル基であり、さらに好ましくは、C15-25アルキル基であり、さらにより好ましくはC15-20アルキル基であり、特に好ましくは、オクタデシル基である。
Basezに含まれる、式(II)、式(IIa)又は式(III)で表される擬似固相保護基のsは、好ましくは、2から4の整数であり、より好ましくは3である。
式(II)、式(IIa)又は式(III)において、sが2から5であるとき、それぞれのR1は、同一であっても異なっていてもよい。
【0135】
本発明の擬似固相保護基は、チミン又はウラシルに導入された場合に、特に有用である。
【0136】
Basezにおける、核酸塩基、基本保護基で置換された核酸塩基又は擬似固相保護基で置換された核酸塩基の核酸塩基は、好ましくは、シトシン、ウラシル、チミン、5-メチルシトシン、アデニン及びグアニンから独立して選択され、より好ましくは、チミン又はウラシルから独立して選択され、特に好ましくはチミンである。
【0137】
オリゴヌクレオチドの伸長末端のヒドロキシ基に用いることができる一時保護基Rは、フッ素試薬、酸又は塩基で脱保護可能であり、ヒドロキシ基の保護基として用いられるものであれば、特に限定はされない。フッ素試薬で脱保護可能な一時保護基Rとしては、シリル基(tert-ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリメチルシリル基等)が挙げられる。酸で脱保護可能な一時保護基Rとしては、キサンテニル基(9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基等)、C1-6アルコキシC1-6アルキル基(1-メトキシ-1-メチルエチル基、1,3-ジオキソラン-2-イル基、1,3-ベンゾジオキソール-2-イル基等)、アルキルチオアルキル基(1,3-ジチオラン-2-イル基、1,3-ベンゾジチオール-2-イル基)、C1-6アルコキシカルボニル基(tert-ブチルオキシカルボニル基等)、及びトリアリールメチル基(トリチル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基等)等が挙げられる。塩基で脱保護可能な一時保護基Rとしては、レブリニル基、3-ベンゾイルプロピオニル基が挙げられる。好ましくは、tert-ブチルジメチルシリル基、トリチル基、9-(9-フェニル)キサンテニル基、9-フェニルチオキサンテニル基、1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1-フェニルメチル基(ジメトキシトリチル基)、1-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジフェニルメチル基(モノメトキシトリチル基)である。これらの中でも、脱保護のしやすさ、入手の容易さの観点から、tert-ブチルジメチルシリル基、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基であることが好ましく、tert-ブチルジメチルシリル基、ジメトキシトリチル基がより好ましく、ジメトキシトリチル基が特に好ましい。
【0138】
Xは、好ましくは水素原子、無置換若しくは置換されたヒドロキシ基又は4’位炭素原子に架橋する有機基である。Xにおける「置換されたヒドロキシ基」は、好ましくは基本保護基で置換されたヒドロキシ基である。「基本保護基で置換されたヒドロキシ基」の基本保護基としては、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY & SONS)出版(1999年)等に記載されている保護基を挙げることができる。具体的には、C1-6アルキル基(メチル基、tert-ブチル基等)、C6-10アリールメチル基(ベンジル基、p-メトキシベンジル基等)、ジC6-10アリールメチル基(ジフェニルメチル基等)、C1-6アルコキシC1-6アルキル基(メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、シアノエトキシメチル基等)、2-テトラヒドロピラニル基、シアノエチル基、カルバモイル基(フェニルカルバモイル基、1,1-ジオキソチオモルホリン-4-チオカルバモイル基等)、アシル基(アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、レブリニル基、3-ベンゾイルプロピオニル基等)、シリル基(トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基等)、[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル(Tom)基、1-(4-クロロフェニル)-4-エトキシピペリジン-4-イル(Cpep)基等を挙げることができる。これらの中でもtert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、又はtert-ブチルジフェニルシリル基であることが好ましく、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基であることがより好ましい。その他の態様として、レブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基が好ましく、レブリニル基がより好ましい。
【0139】
Xは、より好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基、又はC1-6アルキル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基若しくはtert-ブチルジフェニルシリル基で置換されたヒドロキシ基であり、さらに好ましくは水素原子、又はC1-6アルキル基若しくはトリイソプロピルシリル基で置換されたヒドロキシ基である。ここで、前記C1-6アルキル基は、無置換であるか、C1-6アルコキシカルボニル基、モノC1-6アルキルアミノカルボニル基、ジC1-6アルキルアミノカルボニル基からなる群から選ばれる基で置換されている。Xは、特に好ましくは、水素原子である。
その他の態様として、Xはより好ましくは、C2-6アルキレン基(該アルキレン基は無置換であるか、又はメチル基で置換されている。ここで、該アルキレン基の1若しくは2つのメチレン基は、置き換えられていないか、又は-O-、-NR11-(R11は水素原子又はメチル基を示す)、-CO-、-CS-、-COO-、-OCONR12-(R12は水素原子又はメチル基を示す)、-CONR13-(R13は水素原子又はメチル基を示す)及び-CSNR14-(R14は水素原子又はメチル基を示す)から選ばれる基で置き換えられている)で表される4’位炭素原子に架橋する有機基である。Xはより好ましくは、エチレン基(該エチレン基の1若しくは2つのメチレン基は、置き換えられていないか、又は-O-、-CONR13-(R13は水素原子又はメチル基を示す)及び-CSNR14-(R14は水素原子又はメチル基を示す)から選ばれる基で置き換えられている)で表される4’位炭素原子に架橋する有機基である。
【0140】
Zにおける基本保護基としては、Xにおける「基本保護基で置換されたヒドロキシ基」の基本保護基として挙げられたものが挙げられる。
中でもtert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、レブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基が好ましく、レブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基がより好ましく、レブリニル基が更に好ましい。
【0141】
X及びZにおける基本保護基には、一時保護基を脱保護する条件で脱保護されない保護基を用いることができる。例えば、酸で脱保護される一時保護基を用いる場合、前記一時保護基に挙げられたものの内、酸では脱保護されず塩基又はフッ素試薬で脱保護される保護基を、基本保護基として用いることができる。逆に、塩基で脱保護される一時保護基を用いる場合、前記一時保護基に挙げられたものの内、塩基では脱保護されず酸又はフッ素試薬で脱保護される保護基を、基本保護基として用いることができる。また、フッ素試薬で脱保護される一時保護基を用いる場合、前記一時保護基に挙げられたものの内、フッ素試薬では脱保護されず酸又は塩基で脱保護される保護基を、基本保護基として用いることができる。当業者は上記保護基を適宜選択することができる。
【0142】
例えば、X及びZにおける基本保護基がレブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基等である場合、一時保護基は、tert-ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基等のシリル基、又はトリチル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基等のトリアリールメチル基であることが好ましい。
一時保護基がレブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基等である場合、X及びZにおける基本保護基は、tert-ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基等のシリル基、又はトリチル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基等のトリアリールメチル基であることが好ましい。特に方法Bの場合に、レブリニル基又は3-ベンゾイルプロピオニル基等が一時保護基として用いられる。
【0143】
nは、工程aに用いる擬似固相保護基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドに含まれるヌクレオシド数nとも言うことができ、その好ましい態様は、前述の通りである。
【0144】
Vは、好ましくは酸素原子である。
【0145】
Yは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換されたヒドロキシ基、無置換若しくは置換されたスルファニル基、水素化ホウ素基、又は置換されたアミノ基を示す。置換されたヒドロキシ基は、後述する工程cで変換される「リン酸トリエステル結合」においてヒドロキシ基を置き換える基と同様である。置換されたスルファニル基は、後述する工程cで変換される「チオリン酸-O,O,S-トリエステル結合」においてスルファニル基を置き換える基と同様である。置換されたアミノ基は、後述する工程cで変換される「アミノリン酸ジエステル結合」においてアミノ基を置き換える基と同様である。
Yを含めたリン含有基は、例えば以下の構造(又は、以下の構造に塩を付した構造)を有する。
【0146】
【0147】
Vが酸素原子であるとき、該酸素原子が結合するリン原子に結合するYは、それぞれ独立して、好ましくは、水素原子、無置換若しくは置換されたヒドロキシ基、又は無置換若しくは置換されたスルファニル基であり、より好ましくは、水素原子、又は無置換若しくは置換されたヒドロキシ基であり、さらに好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基又は2-シアノエトキシ基であり、さらにより好ましくは、ヒドロキシ基又は2-シアノエトキシ基である。
Vが硫黄原子であるとき、該硫黄原子が結合するリン原子に結合するYは、それぞれ独立して、好ましくは、置換されたヒドロキシ基であり、より好ましくは、2-シアノエトキシ基である。
【0148】
工程aは、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。当該溶媒における溶解度が高い程、優れた反応性が期待できるため、目的とする化合物の溶解度の高い低極性溶媒を選択することが好ましい。具体的には、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロヘキサン等の脂肪族系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。また、上記低極性溶媒に、ピリジンなどの含窒素芳香族系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等の極性溶媒を、n個重合オリゴヌクレオチドが溶解し得る限り、任意の割合で混合して用いてもよい。中でも、工程aに用いる溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、ノナン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、又は、これらの組合せが好ましく、ジクロロメタン、テトラヒドロフランがより好ましく、テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0149】
工程aにおけるn個重合オリゴヌクレオチドの溶媒中の濃度は、溶解していれば特に限定されないが、好ましくは1から30重量%である。
【0150】
工程aに使用されるフッ素試薬、酸又は塩基としては、一時保護基の良好な脱保護が達成できれば特に限定されない。当業者は、一時保護基の種類に応じて、適切なフッ素試薬、酸又は塩基を選択できる。
フッ素試薬としては、フッ化水素のピリジン塩、テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化水素のトリエチルアミン塩、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化アンモニウムのフッ化水素付加体、フッ化カリウム又はフッ化カリウムのフッ化水素付加体が好ましく、中でも、フッ化水素のピリジン塩又はテトラブチルアンモニウムフルオリドがより好ましく、テトラブチルアンモニウムフルオリドが特に好ましい。
酸としては、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、塩酸、酢酸、硝酸アンモニウムセリウム、ホスホン酸又はリン酸が好ましく、中でも、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、塩酸、酢酸又は硝酸アンモニウムセリウムがより好ましく、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸又は酢酸がさらに好ましく、酢酸が特に好ましい。また、塩化水素(水溶液、1,4-ジオキサン溶液等)も好ましく、塩化水素-1,4-ジオキサン溶液が特に好ましい。
塩基としては、ヒドラジン誘導体(ヒドラジン一水和物、ヒドラジン酢酸塩、硫酸ヒドラジニウム、メチルヒドラジン、イソプロピルヒドラジン塩酸塩、tert-ブチルヒドラジン、アセトヒドラジド、メチルカルバゼート、フェニルヒドラジン、p-トルエンスルホニルヒドラジン、シクロペンチルヒドラジン塩酸塩、シクロヘキシルヒドラジン塩酸塩、ベンジルヒドラジン塩酸塩、2,2,2-トリフルオロエチルヒドラジン(70%水溶液)及び2-シアノエチルヒドラジン等)、ジアミン誘導体(エチレンジアミン等のエチレンジアミン誘導体等)、ヒドロキシルアミン誘導体(ヒドロキシルアミン塩酸塩等)、アミノアルコール誘導体(エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン等のエタノールアミン誘導体等)、及び無機塩基(炭酸カリウム等)等が挙げられる。塩基としては、ヒドラジン誘導体が好ましく、ヒドラジン一水和物又はメチルヒドラジンがより好ましい。
これらフッ素試薬、酸及び塩基は、上記低極性溶媒で希釈して使用することができる。 また、フッ素試薬、酸及び塩基以外では、Chirazyme L-2、Chirazyme L-5等の酵素により脱保護することも可能である。
【0151】
工程aにおけるフッ素試薬、酸又は塩基の使用量は、n個重合オリゴヌクレオチド1モルに対し、1から100モル使用することができ、好ましくは1から40モルであり、より好ましくは1から20モルであり、さらに好ましくは1から10モルであり、さらにより好ましくは、1から8モルである。中でも下限は、好ましくは、2モルであり、より好ましくは、3モルであり、さらにより好ましくは、4モルである。
【0152】
工程aの反応温度は、反応が進行すれば特に限定されないが、-30℃から60℃が好ましく、-10℃から50℃がより好ましく、20℃から40℃がさらに好ましい。反応時間は、使用するn個重合オリゴヌクレオチドの種類、フッ素試薬、酸又は塩基の種類、溶媒の種類、反応温度等により異なるが、5分間から50時間が好ましく、5分間から12時間がより好ましく、30分間から6時間がより好ましい。
【0153】
脱保護剤として使用されるフッ素試薬、酸又は塩基が、後述する工程bのカップリング反応中に存在すると、p個重合オリゴヌクレオチド(iii)又は(v)の5’位若しくは3’位ヒドロキシ基の一時保護基Rの脱保護を誘発するため、クエンチ処理によって除去されることが必要である。クエンチ処理は、脱保護剤がフッ素試薬又は酸である場合、ケイ素試薬又は有機塩基により行い、脱保護剤が前記塩基である場合、ケトン化合物により行う。
【0154】
クエンチ処理に使用されるケイ素試薬としては、前記フッ素試薬をクエンチすることができるものであれば特に限定されないが、ヘキサメチルジシロキサン[TMS2O]、トリメチルシリルクロリド[TMSCl]、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルヨージド、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、トリエチルシリルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド、tert-ブチルジメチルシリルクロリド、tert-ブチルジフェニルシリルクロリド、フェニルジメチルシリルクロリド、ジフェニルメチルシリルクロリド、トリフェニルシリルクロリドが好ましく、TMS2O、TMSClがより好ましく、TMS2Oが特に好ましい。
【0155】
クエンチ処理に使用される有機塩基としては、前出の酸を中和することができるものであれば特に限定されないが、ピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、ベンズイミダゾール、1,2,4-トリアゾール、N-フェニルイミダゾール、2-アミノ-4,6-ジメチルピリミジン、1,10-フェナントロリン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、2-クロロベンズイミダゾール、2-ブロモベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、N-フェニルベンズイミダゾール、5-ニトロベンズイミダゾールが好ましく、ピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、ベンズイミダゾール、1,2,4-トリアゾール、N-フェニルイミダゾール、N-メチルイミダゾール、2-アミノ-4,6-ジメチルピリミジン、1,10-フェナントロリンがより好ましく、ピリジンが特に好ましい。
【0156】
クエンチ処理に使用されるケトン化合物としては、前出の塩基を消費することができるものであれば特に限定されないが、アセチルアセトン、アセトン等が挙げられ、好ましくは、アセチルアセトンである。
【0157】
工程aにおけるクエンチ処理に使用されるケイ素試薬、有機塩基又はケトン化合物の使用量は、フッ素試薬、酸又は塩基1モルに対し、例えば0.01から100モルであり、好ましくは0.1から50モルであり、より好ましくは1から20モルであり、さらに好ましくは1から3モルである。
【0158】
工程a、それに続く工程b(工程b1又は工程b2)又は工程c(工程c1又は工程c2)を液相で連続化して行うためには、工程aにおける一時保護基Rの脱保護反応中、又は脱保護反応後に、カチオン捕捉剤を添加することが好ましい。工程aと、工程b又は工程cを連続化しない場合には、カチオン捕捉剤を添加してもよく、しなくてもよい。
【0159】
カチオン捕捉剤としては、除去された保護基Rによる再保護(原料戻り)や脱保護された官能基への副反応が進行しなければ、特に限定されないが、ピロール、2-メチルピロール、3-メチルピロール、2,3-ジメチルピロール、2,4-ジメチルピロール等のピロール誘導体;インドール、4-メチルインドール、5-メチルインドール、5-メトキシインドール、6-メチルインドール、7-メチルインドール、5,6-ジメチルインドール、6,7-ジメチルインドール等のインドール誘導体を使用することができる。良好なカチオン捕捉効果が得られるという観点で、ピロール、3-メチルピロール、2,4-ジメチルピロール、インドール、4-メチルインドール、5-メチルインドール、6-メチルインドール、7-メチルインドール、5,6-ジメチルインドール、6,7-ジメチルインドールが好ましく、ピロール、3-メチルピロール、インドールがより好ましく、ピロール、インドールが更に好ましく、インド―ルが特に好ましい。
【0160】
前記カチオン捕捉剤の使用量は、n個重合オリゴヌクレオチド(ia又はib)1モルに対し、例えば1から50モルであり、好ましくは1から15モルであり、より好ましくは、1から5モルである。
【0161】
工程aの後に、工程b又は工程cが実施される。工程b又は工程cの前に、必要に応じて分液処理、溶媒留去によって、工程bで用いられる溶媒への置換、工程eを行いn個重合オリゴヌクレオチドの5’位ヒドロキシ基の脱保護体(iia)若しくは3’位ヒドロキシ基の脱保護体(iib)の単離等を行うことができる。
【0162】
(工程b)(カップリング工程)
まず、方法A又は方法Bのそれぞれの場合について、H-ホスホネート法の工程b(工程b1)及びホスホロアミダイト法の工程b(工程b2)をスキーム3から6に示す。
【0163】
方法AのH-ホスホネート法における工程b1は、前記方法Aにおける工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチドの5’位ヒドロキシ基体(iia)と、5’位ヒドロキシ基が一時保護基Rにより保護され、かつ3’位にヒドロキシホスフィニル基で置換されたヒドロキシ基を持つp個重合オリゴヌクレオチド(iiia)(式中、pは、1以上の任意の整数を示し、p=1の場合は、ヌクレオシドを示す。)と、を縮合させる工程である(スキーム3)。工程c1の後の場合は、前記方法Aにおける工程c1で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(viia)の5’位ヒドロキシ基体と、前記p個重合オリゴヌクレオチド(iiia)と、を縮合させる工程である。
【0164】
【0165】
式中、pは、1以上の任意の整数を示し、化合物(iiia)におけるBaseは、それぞれ独立して、核酸塩基又は基本保護基で置換された核酸塩基を意味し、他の記号は前記定義と同義である。2以上の核酸塩基部を有する場合、及び2以上の基本保護基を有する場合も前記定義と同様である。
【0166】
方法Aのホスホロアミダイト法における工程b2は、前記方法Aにおける工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチドの5’位ヒドロキシ基体(iia)と、5’位ヒドロキシ基が一時保護基Rにより保護され、かつ3’位に、置換されたヒドロキシ(ジアルキルアミノ)ホスフィノ基で置換されたヒドロキシ基を持つp個重合オリゴヌクレオチド(va)(式中、pは、1以上の任意の整数を示し、p=1の場合は、ヌクレオシドを示す。)と、を縮合させる工程である(スキーム4)。工程c2の後の場合は、前記方法Aにおける工程c2で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(viiia)の5’位ヒドロキシ基体と、前記p個重合オリゴヌクレオチド(va)と、を縮合させる工程である。
【化16】
【0167】
スキーム4中、n、Basez、R、X、V、Y、Z、p及びBaseは、スキーム3における定義に同じであり、Prは、ジアルキルアミノ基を示す。ここで、該2つのアルキル基は、それらが結合する窒素原子と一緒に3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基を形成してもよい。
【0168】
方法BのH-ホスホネート法における工程b1は、前記方法Bにおける工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチドの3’位ヒドロキシ基体(iib)と、3’位ヒドロキシ基が一時保護基Rにより保護され、かつ5’位にヒドロキシホスフィニル基で置換されたヒドロキシ基を持つp個重合オリゴヌクレオチド(iiib)(式中、pは、1以上の任意の整数を示し、p=1の場合は、ヌクレオシドを示す。)と、を縮合させる工程である(スキーム5)。なお、スキーム5中、各記号は、スキーム3中の定義に同義である。工程c1の後の場合は、前記方法Bにおける工程c1で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(viib)の3’位ヒドロキシ基体と、前記p個重合オリゴヌクレオチド(iiib)と、を縮合させる工程である。
【0169】
【0170】
方法Bのホスホロアミダイト法における工程b2は、前記方法Bにおける工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチドの3’位ヒドロキシ基体(iib)と、3’位ヒドロキシ基が一時保護基Rにより保護され、かつ5’位に、置換されたヒドロキシ(ジアルキルアミノ)ホスフィノ基で置換されたヒドロキシ基を持つp個重合オリゴヌクレオチド(vb)(式中、pは、1以上の任意の整数を示し、p=1の場合は、ヌクレオシドを示す。)と、を縮合させる工程である(スキーム6)。なお、スキーム6中、各記号は、スキーム4中の定義に同義である。工程c2の後の場合は、前記方法Bにおける工程c2で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(viiib)の3’位ヒドロキシ基体と、前記p個重合オリゴヌクレオチド(vb)と、を縮合させる工程である。
【化18】
【0171】
スキーム3から6において、pは、工程bに用いる反応性リン含有基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドに含まれるヌクレオシド数pと言うことができ、その好ましい態様は、前述の通りである。
スキーム3から6において、Baseにおける、核酸塩基又は基本保護基で置換された核酸塩基の核酸塩基は、好ましくは、シトシン、ウラシル、チミン、5-メチルシトシン、アデニン及びグアニンから独立して選択され、より好ましくは、チミン又はウラシルから独立して選択され、特に好ましくはチミンである。
スキーム4及び6において、Prは、ジアルキルアミノ基であり、該2つのアルキル基は、それらが結合する窒素原子と一緒に3-11員含窒素非芳香族ヘテロ環基を形成してもよい。Prは、好ましくは、ジC1-6アルキルアミノ基又はモルホリノ基であり、より好ましくはジイソプロピルアミノ基である。
【0172】
次に、H-ホスホネート法によるカップリング工程である、工程b1について、説明する。
【0173】
工程b1で用いられる溶媒は、具体的には、前記工程aと同様の溶媒が挙げられる。中でも、ピリジン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン等が好ましく、ピリジンが特に好ましい。
【0174】
工程b1でピリジンなどの含窒素芳香族系溶媒以外の溶媒を用いる場合は、ピリジンなどの求核剤を添加することが好ましい。求核剤としては、良好なカップリング反応が達成できれば特に限定されないが、具体的には、ピリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、2-ピコリン、3-ピコリン、4-ピコリン、3,4-ルチジン,2,6-ルチジン、2,4-ルチジン、3,5-ルチジン、2,4,6-コリジン、4-アセチルピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、2-シアノピリジン、3-シアノピリジン、4-シアノピリジン、2-クロロピリジン、3-クロロピリジン、4-クロロピリジン、2-メトキシピリジン、3-メトキシピリジン、4-メトキシピリジン、ピコリン酸エチル、ニコチン酸エチル、イソニコチン酸エチルなどのピリジン系求核剤;(S,S)-2,6-ビス(4-イソプロピル-2-オキサゾリン-2-イル)ピリジン、(R,R)-2,6-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン-2-イル)ピリジンなどのPybox系求核剤、キノリン、キニン、キニジン、シンコニンなどのキノリン系求核剤、N-メチルイミダゾール、ピリミジン、2-メチルピラジン、3-メチルピリダジン、1,10-フェナントロリンなどの含窒素芳香族系求核剤(上記ピリジン系求核剤は除く);4-メトキシピリジン-N-オキシドなどのN-オキシド系求核剤;N,N-ジメチルアニリンなどのアニリン系求核剤;1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジメシチルイミダゾール-2-イリデンなどのN-ヘテロサイクリックカルベン系求核剤;トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリメチルなどのリン系求核剤;トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどの脂肪族アミン系求核剤などが挙げられる。中でも、ピリジン、2-ピコリン、4-ピコリン、3,4-ルチジン,2,6-ルチジン、2,4,6-コリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、3-メトキシピリジン、4-メトキシピリジン、(S,S)-2,6-ビス(4-イソプロピル-2-オキサゾリン-2-イル)ピリジン、(R,R)-2,6-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン-2-イル)ピリジン、キノリン、キニジン、N-メチルイミダゾール、3-メチルピリダジン及び4-メトキシピリジン-N-オキシドが好ましく、ピリジン、2-ピコリン、4-ピコリン、3,4-ルチジン,2,6-ルチジン、2,4,6-コリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、3-メトキシピリジン及び4-メトキシピリジンがより好ましく、ピリジンが特に好ましい。
【0175】
工程b1に使用される前記求核剤は、工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチドのヒドロキシ体(iia又はiib)1モル又は工程c1で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(viia又はviib)のヒドロキシ体1モルに対し、例えば1~100モル、好ましくは1~20モル、さらに好ましくは1~10モルである。
【0176】
工程b1に使用されるp個重合オリゴヌクレオチド(iiia又はiiib)の使用量は、工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチドのヒドロキシ体(iia又はiib)1モル又は工程c1で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(viia又はviib)のヒドロキシ体1モルに対し、好ましくは1から10モルであり、より好ましくは1から5モルであり、さらに好ましくは1から3モルであり、特に好ましくは1から1.6モルである。
【0177】
工程b1に使用される縮合剤は、カップリング反応が良好に進行すれば特に限定されないが、H-ホスホネート法において通常使用される縮合剤を挙げることができ、具体的には、2,2-ジメチルブチリルクロリド、イソブチリルクロリド、ピバロイルクロリド、アセチルクロリド、1-アダマンチルクロリド、クロロリン酸ジフェニル、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド、2-(ベンゾイルトリアゾール-1-イルオキシ)-1,3-ジメチル-2-ピロリジン-1-イル-1,3,2-ジアザホスホリジリニウム ヘキサフルオロホスフェート[BOMP]、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド[BopCl]、ベンゾイルクロリド、無水安息香酸、炭酸ジフェニル、炭酸ジ-p-ニトロフェニル、炭酸ビスペンタフルオロフェニル等が挙げられる。中でも、2,2-ジメチルブチリルクロリド、イソブチリルクロリド、1-アダマンチルクロリド、クロロリン酸ジフェニル、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド又は炭酸ビスペンタフルオロフェニルが好ましく、2,2-ジメチルブチリルクロリド、イソブチリルクロリドがより好ましく、2,2-ジメチルブチリルクロリドが特に好ましい。
【0178】
工程b1に使用される縮合剤は、工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチドのヒドロキシ体(iia又はiib)1モル又は工程c1で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(viia又はviib)のヒドロキシ体1モルに対し、例えば1から200モルであり、好ましくは1から50モルであり、より好ましくは1から10モルであり、さらに好ましくは4から6モルである。
【0179】
工程b1の反応温度は、反応が進行すれば特に限定されないが、-10℃から60℃が好ましく、0℃から50℃がより好ましく、0℃から30℃がさらに好ましく、20℃から30℃がさらにより好ましい。反応時間は、使用するn個重合オリゴヌクレオチドの種類、溶媒の種類、求核剤の種類、縮合剤の種類、反応温度等により異なるが、1分間から12時間が好ましく、2分間から6時間がより好ましく、5分間から3時間が更に好ましい。
【0180】
工程b1の反応の後に、スキーム3又は5中、式(iia又はiib)で表される化合物又はその塩が残存している場合には、必要に応じて、得られた溶液をキャッピング反応に付してもよい。キャッピング反応は、無水酢酸、無水安息香酸などの酸無水物を用いて、又は前述の縮合剤に加えて、メチル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩、エチル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩、イソプロピル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩及び2-シアノエチル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩などのアルキル-H-ホスホネートのアンモニウム塩を用いて、通常の方法により実施することができる。
【0181】
なお、キャッピング反応とは、カップリング反応、酸化反応後に残存したヒドロキシ基を有する化合物のヒドロキシ基を、ヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを伸長できない置換基に変換する反応である。
【0182】
キャッピング反応は、後述する工程c1の後に実施してもよい。キャッピング反応は、工程b1又は工程c1の後に実施することが好ましい。
【0183】
工程b1の後には、工程c1又は工程aが実施される。工程c1又は工程aの前に、必要に応じて分液処理、溶媒留去によって、工程c1又は工程aで用いられる溶媒への置換、工程eを行いn+p個重合オリゴヌクレオチド(iva又はivb)の単離等を行うことができる。また、工程b1の反応溶液をそのまま、次の工程c1に用いることもできる。
【0184】
次に、ホスホロアミダイト法によるカップリング工程である、工程b2について、説明する。
【0185】
工程b2で用いられる溶媒は、具体的には、前記工程aと同様の低極性溶媒が挙げられる。中でも、ジクロロメタン、トルエン等が好ましく、ジクロロメタンが特に好ましい。
また、上記低極性溶媒に、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;アセトン、2-ブタノン等のケトン系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等の極性エーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒を、5’位又は3’位ヒドロキシ基の一時保護基Rが除去されたn個重合オリゴヌクレオチド(iia又はiib)が溶解し得る限り、適宜の割合で混合して用いてもよい。 この場合、極性溶媒としては、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、及びこれらの組合せが好ましく、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピペリドン、及びこれらの組合せがより好ましく、アセトニトリルが特に好ましい。
極性溶媒は、3’位又は5’位ヒドロキシ基がホスホロアミダイト化され、かつ5’位又は3’位ヒドロキシ基が一時保護基Rにより置換されたp個重合オリゴヌクレオチド(va又はvb)、及び縮合剤等の溶液として添加してもよい。
【0186】
工程b2に使用されるp個重合オリゴヌクレオチド(va又はvb)の使用量は、工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチドの脱保護体(iia又はiib)1モル又は工程c2で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(viiia又はviiib)のヒドロキシ体1モルに対し、好ましくは1から10モルであり、より好ましくは1から5モルであり、さらに好ましくは1から3モルであり、さらにより好ましくは1から1.6モルである。
【0187】
工程b2に使用される縮合剤は、カップリング反応が良好に進行すれば特に限定されないが、ホスホロアミダイト法において通常使用される縮合剤を挙げることができ、具体的には、1H-テトラゾール、ジイソプロピルアンモニウムテトラゾール、5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール、5-ベンゾイルメルカプト-1H-テトラゾール、4,5-ジシアノイミダゾール、4,5-ジクロロイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-6-ニトロベンゾトリアゾール、ピリジン・トリフルオロ酢酸塩及びイミダゾリニウム・トリフルオロメタンスルホン酸塩等が挙げられる。中でも、1H-テトラゾールが好ましい。
【0188】
工程b2に使用される縮合剤は、工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチドの脱保護体(iia又はiib)1モル又は工程c2で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(viiia又はviiib)のヒドロキシ体1モルに対し、例えば1から200モルであり、好ましくは1から100モルであり、より好ましくは1から50モルであり、さらにより好ましくは2から10モルである。
【0189】
工程b2の反応温度は、反応が進行すれば特に限定されないが、-10℃から60℃が好ましく、0℃から50℃がより好ましく、0℃から30℃がさらに好ましく、20℃から30℃がさらにより好ましい。反応時間は、使用するn個重合オリゴヌクレオチドの種類、溶媒の種類、求核剤の種類、縮合剤の種類、反応温度等により異なるが、1分間から48時間が好ましく、2分間から36時間がより好ましく、5分間から24時間が更に好ましい。
【0190】
工程b2の反応の後に、スキーム4又は6中、式(iia又はiib)で表される化合物又はその塩が残存している場合には、必要に応じて、得られた溶液をキャッピング反応に付してもよい。キャッピング反応は、無水酢酸、無水安息香酸などの酸無水物を用いて、又は前述の縮合剤に加えて、メチル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩、エチル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩、イソプロピル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩及び2-シアノエチル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩などのアルキル-H-ホスホネートのアンモニウム塩を用いて、通常の方法により実施することができる。
【0191】
工程b2の後には、工程c2又は工程aが実施される。工程c2又は工程aの前に、必要に応じて分液処理、溶媒留去によって、工程c2又は工程aで用いられる溶媒への置換や、工程eを行いn+p個重合オリゴヌクレオチド(via又はvib)の単離等を行うことができる。また、工程b2の反応溶液をそのまま、次の工程c2に用いることもできる。
【0192】
(工程c)(変換工程)
カップリング工程がH-ホスホネート法の場合、変換工程は工程c1であり、カップリング工程がホスホロアミダイト法の場合、変換工程は工程c2である。
工程c1は、工程b1で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(iva又はivb)又は工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチドに、リン原子を修飾する試薬を反応させることにより、該n+p個重合オリゴヌクレオチド(iva又はivb)の亜リン酸ジエステル結合をリン酸ジエステル結合、チオリン酸ジエステル結合、アミノリン酸ジエステル結合、ボラノリン酸ジエステル結合、リン酸トリエステル結合又はチオリン酸-O,O,S-トリエステル結合へと変換する工程である。
【0193】
工程c2は、工程b2で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(via又はvib)又は工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチドに、リン原子を修飾する試薬を反応させることにより、該n+p個重合オリゴヌクレオチド(via又はvib)の亜リン酸トリエステル結合をリン酸トリエステル結合又はチオリン酸トリエステル結合へと変換する工程である。
【0194】
方法AのH-ホスホネート法における工程c1は下記スキーム7(スキーム7中、各記号は、前記定義と同義であるが、工程a後の場合、Rは水素原子である)で表される。
【0195】
【0196】
方法Aのホスホロアミダイト法における工程c2は下記スキーム8(スキーム8中、各記号は、前記定義と同義であるが、工程a後の場合、Rは水素原子である)で表される。
【化20】
【0197】
方法BのH-ホスホネート法おける工程c1は下記スキーム9(スキーム9中、各記号は、前記定義と同義であるが、工程a後の場合、Rは水素原子である)で表される。
【0198】
【0199】
方法Bのホスホロアミダイト法における工程c2は下記スキーム10(スキーム10中、各記号は、前記定義と同義であるが、工程a後の場合、Rは水素原子である)で表される。
【0200】
【0201】
次に、H-ホスホネート法における、亜リン酸ジエステル結合の変換工程である、工程c1について説明する。
【0202】
工程c1は、工程b1で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(iva又はivb)又は工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチド(iia又はiib)を単離することなく、工程c又は工程a後の反応混合物に、リン原子を修飾する試薬を直接添加するだけで行うことができる。リン原子を修飾する試薬としては、酸化剤、硫化剤、アミダイト化剤又はホウ素化剤が使用される。酸化剤又は硫化剤を使用して、リン酸ジエステル結合、チオリン酸ジエステル結合、リン酸トリエステル結合、又はチオリン酸-O,O,S-トリエステル結合へ変換することが好ましく、リン酸ジエステル結合又はチオリン酸ジエステル結合へ変換することがより好ましく、リン酸ジエステル結合へ変換することがさらに好ましい。工程c1は、工程b1で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(iva又はivb)又は工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチド(iia又はiib)を単離して行ってもよい。
【0203】
工程c1で用いられる溶媒は、具体的には、前記工程aと同様の溶媒が挙げられ、使用する酸化剤、硫化剤、アミダイト化剤又はホウ素化剤によって適宜選択される。
【0204】
工程c1に使用される「酸化剤」は、他の部位を酸化することなく、亜リン酸ジエステル結合をリン酸ジエステル結合に酸化する能力があれば、特に限定されないが、ヨウ素、(1S)-(+)-(10-カンファニルスルホニル)オキサジリジン、tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、2-ブタノンペルオキシド、1,1-ジヒドロペルオキシシクロドデカン、ビス(トリメチルシリル)ペルオキシド、m-クロロ過安息香酸が好ましい。収率又は反応速度が良好な酸化反応を達成できるという観点で、ヨウ素、tert-ブチルヒドロペルオキシド、2-ブタノンペルオキシドがより好ましく、ヨウ素が特に好ましい。かかる酸化剤は、0.05から2Mの濃度になるように適当な溶媒で希釈して使用することができる。かかる希釈溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、ピリジン、テトラヒドロフラン[THF]、ジクロロメタン、水、又はこれらの混合溶媒を挙げることができる。中でも、例えば、ヨウ素/水/ピリジンの混合溶液若しくはヨウ素/水/ピリジン/THFの混合溶液を用いることが好ましい。
工程c1で前記酸化剤を使用する場合、工程c1の反応溶媒は、前記希釈溶媒と同様である。
【0205】
工程c1に使用される「硫化剤」は、亜リン酸ジエステル結合をチオリン酸ジエステル結合に変換しうる能力があれば、特に限定されないが、単体硫黄、3-アミノ-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン(ADTT)、3-((N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、N-(ベンゾイルチオ)-スクシンイミドが好ましい。収率又は反応速度が良好な反応が進行しうるという観点で、単体硫黄、ADTTがより好ましく、単体硫黄が特に好ましい。かかる硫化剤は、0.05から2Mの濃度になるように適当な溶媒で希釈して使用することができる。かかる希釈溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、ピリジン又はこれらの混合溶媒が挙げられる。
工程c1で前記硫化剤を使用する場合、工程c1の反応溶媒は、前記希釈溶媒と同様である。
【0206】
亜リン酸ジエステル結合を、「リン酸トリエステル結合」へ変換する際の試薬は、その変換能力を有していれば、特に限定されないが、対応するアルコール化合物と、四塩化炭素、ヨウ素、臭化三塩化炭素、N-クロロコハク酸イミド、トリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸ナトリウム、3,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、N,N’-ジクロロビス(2,4,6-トリクロロフェニル)尿素などの酸化剤が好ましい。前記変換反応の溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、ジクロロメタン、ピリジン又はこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくはジクロロメタン又はピリジンであり、より好ましくはピリジンである。
【0207】
亜リン酸ジエステル結合を、「チオリン酸-O,O,S-トリエステル結合」へ変換する際の試薬は、その変換能力を有していれば、特に限定されないが、フタルイミド系硫化剤、含コハク酸系硫化剤及びモルホリンジオン系硫化剤等が挙げられる。前記変換反応の溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、ジクロロメタン、ピリジン又はこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくはジクロロメタン又はピリジンであり、より好ましくはピリジンである。
【0208】
フタルイミド系硫化剤としては、目的の「チオリン酸-O,O,S-トリエステル結合」に対応する、N-(C1-40アルキルチオ)フタルイミド、N-(C3-6シクロアルキルチオ)フタルイミド、N-(C6-10アリールチオ)フタルイミド、N-(5-10員ヘテロアリールチオ)フタルイミド、N-(アラルキルチオ)フタルイミド及びN-(ヘテロアラルキルチオ)フタルイミド等が挙げられる。ここで、目的の「チオリン酸-O,O,S-トリエステル結合」が、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基等の置換基を含む場合、前記N-(C1-40アルキルチオ)フタルイミド、N-(C3-6シクロアルキルチオ)フタルイミド、N-(C6-10アリールチオ)フタルイミド、N-(5-10員ヘテロアリールチオ)フタルイミド、N-(アラルキルチオ)フタルイミド及びN-(ヘテロアラルキルチオ)フタルイミドの対応する部分にそれらの置換基を含む硫化剤を使用することができる。フタルイミド系硫化剤としては、具体的には、N-{(2-シアノエチル)チオ}フタルイミド、N-(メチルチオ)フタルイミド、N-(エチルチオ)フタルイミド、N-(プロピルチオ)フタルイミド、N-(イソプロピルチオ)フタルイミド、N-(ブチルチオ)フタルイミド、N-(tert-ブチルチオ)フタルイミド、N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド、N-(ドデシルチオ)フタルイミド、N-(ベンジルチオ)フタルイミド、N-(フェニルチオ)フタルイミド、N-{(p-クロロフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(p-メチルフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(2-ベンゾチアゾリル)チオ}フタルイミド、N-{(2-メチルフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(2-エチルフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(2-イソプロピルフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(2-tert-ブチルフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(3-tert-ブチルフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(4-tert-ブチルフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(2-メチル-5-tert-ブチルフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(2-メトキシフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(3-メトキシフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(4-メトキシフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(2,5-ジメトキシフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(3,4-ジメトキシフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(2-フルオロフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(2-クロロフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(2-ブロモフェニル)チオ}フタルイミド、N-{(2,6-ジメチルフェニル)チオ}フタルイミド及びN-{(2,6-ジクロロフェニル)チオ}フタルイミド等が挙げられる。
【0209】
コハク酸系硫化剤としては、目的の「チオリン酸-O,O,S-トリエステル結合」に対応する、N-(C1-40アルキルチオ)コハク酸イミド、N-(C3-6シクロアルキルチオ)コハク酸イミド、N-(C6-10アリールチオ)コハク酸イミド、N-(5-10員ヘテロアリールチオ)コハク酸イミド、N-(アラルキルチオ)コハク酸イミド及びN-(ヘテロアラルキルチオ)コハク酸イミド等が挙げられる。ここで、目的の「チオリン酸-O,O,S-トリエステル結合」が、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基等の置換基を含む場合、前記N-(C1-40アルキルチオ)コハク酸イミド、N-(C3-6シクロアルキルチオ)コハク酸イミド、N-(C6-10アリールチオ)コハク酸イミド、N-(5-10員ヘテロアリールチオ)コハク酸イミド、N-(アラルキルチオ)コハク酸イミド及びN-(ヘテロアラルキルチオ)コハク酸イミドの対応する部分にそれらの置換基を含む硫化剤を使用することができる。含コハク酸イミド硫化剤としては、具体的には、N-{(2-シアノエチル)チオ}コハク酸イミド、N-(メチルチオ)コハク酸イミド、N-(エチルチオ)コハク酸イミド、N-(プロピルチオ)コハク酸イミド、N-(イソプロピルチオ)コハク酸イミド、N-(ブチルチオ)コハク酸イミド、N-(tert-ブチルチオ)コハク酸イミド、N-(シクロヘキシルチオ)コハク酸イミド、N-(ドデシルチオ)コハク酸イミド、N-(ベンジルチオ)コハク酸イミド、N-(フェニルチオ)コハク酸イミド、N-{(p-クロロフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(p-メチルフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(2-ベンゾチアゾリル)チオ}コハク酸イミド、N-{(2-メチルフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(2-エチルフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(2-イソプロピルフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(2-tert-ブチルフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(3-tert-ブチルフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(4-tert-ブチルフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(2-メチル-5-tert-ブチルフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(2-メトキシフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(3-メトキシフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(4-メトキシフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(2,5-ジメトキシフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(3,4-ジメトキシフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(2-フルオロフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(2-クロロフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(2-ブロモフェニル)チオ}コハク酸イミド、N-{(2,6-ジメチルフェニル)チオ}コハク酸イミド及びN-{(2,6-ジクロロフェニル)チオ}コハク酸イミド等が挙げられる。
【0210】
モルホリンジオン系硫化剤としては、目的の「チオリン酸-O,O,S-トリエステル結合」に対応する、N-(C1-40アルキルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(C3-6シクロアルキルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(C6-10アリールチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(5-10員ヘテロアリールチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(アラルキルチオ)モルホリン-3,5-ジオン及びN-(ヘテロアラルキルチオ)モルホリン-3,5-ジオン等が挙げられる。ここで、目的の「チオリン酸-O,O,S-トリエステル結合」が、ハロゲン原子、シアノ基、C1-6アルキル基等の置換基を含む場合、前記N-(C1-40アルキルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(C3-6シクロアルキルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(C6-10アリールチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(5-10員ヘテロアリールチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(アラルキルチオ)モルホリン-3,5-ジオン及びN-(ヘテロアラルキルチオ)モルホリン-3,5-ジオンの対応する部分にそれらの置換基を含む硫化剤を使用することができる。モルホリンジオン系硫化剤としては、具体的には、N-{(2-シアノエチル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-(メチルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(エチルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(プロピルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(イソプロピルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(ブチルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(tert-ブチルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(シクロヘキシルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(ドデシルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(ベンジルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-(フェニルチオ)モルホリン-3,5-ジオン、N-{(p-クロロフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(p-メチルフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(2-ベンゾチアゾリル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(2-メチルフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(2-エチルフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(2-イソプロピルフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(2-tert-ブチルフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(3-tert-ブチルフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(4-tert-ブチルフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(2-メチル-5-tert-ブチルフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(2-メトキシフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(3-メトキシフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(4-メトキシフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(2,5-ジメトキシフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(3,4-ジメトキシフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(2-フルオロフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(2-クロロフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(2-ブロモフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン、N-{(2,6-ジメチルフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン及びN-{(2,6-ジクロロフェニル)チオ}モルホリン-3,5-ジオン等が挙げられる。
【0211】
当業者は、フタルイミド系硫化剤、コハク酸イミド系硫化剤及びモルホリンジオン系硫化剤を、公知の合成法(フタルイミド系硫化剤及びモルホリンジオン系硫化剤:Tetrahedron,1997年,53巻, 14411頁-14416頁、コハク酸イミド系硫化剤:J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 2002年, 2619頁-2633頁)を利用して、同様に製造できる。
【0212】
亜リン酸ジエステル結合を、「チオリン酸-O,O,S-トリエステル結合」へ変換する際の試薬は、好ましくは、フタルイミド系硫化剤であり、特に好ましくは、N-{(2-シアノエチル)チオ}フタルイミドである。
【0213】
工程c1に使用する「アミダイト化剤」は、亜リン酸ジエステル結合をアミノリン酸ジエステル結合に変換しうる能力があれば、特に限定されないが、対応するアミン化合物と、四塩化炭素、ヨウ素、臭化三塩化炭素、N-クロロコハク酸イミド、トリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸ナトリウム、3,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、N,N’-ジクロロビス(2,4,6-トリクロロフェニル)尿素などの酸化剤が好ましい。前記変換反応の溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、ジクロロメタン、ピリジン又はこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくはジクロロメタン又はピリジンであり、より好ましくはピリジンである。
【0214】
工程c1に使用する「ホウ素化剤」は、亜リン酸ジエステル結合をボラノリン酸ジエステル結合に変換しうる能力があれば、特に限定されないが、水素化ホウ素(BH3)、BH3-THF錯体、BH3-ジメチルスルフィド錯体、BH3-ピリジン錯体などが好ましい。前記変換反応の溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、ジクロロメタン、ピリジン又はこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくはジクロロメタン又はピリジンであり、より好ましくはピリジンである。
【0215】
リン原子を修飾する試薬の使用量は、工程b1で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(iva若しくはivb)1モル又は工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチド(iia又はiib)1モルに対し、1から50モルが好ましく、より好ましくは1から15モルであり、さらに好ましくは1から10モルであり、さらにより好ましくは1から7モルである。
【0216】
反応温度は、反応が進行すれば特に限定されないが、-10℃から60℃が好ましく、0℃から50℃がより好ましく、20℃から30℃がさらに好ましい。反応時間は、工程b1で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(iva若しくはivb)又は工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチド(iia又はiib)の種類、使用するリン原子を修飾する試薬の種類、反応温度等によって異なるが、好ましくは1分間から24時間であり、より好ましくは、10分間から12時間であり、更に好ましくは、30分間から6時間である。
【0217】
酸化剤や硫化剤を用いる場合、該酸化剤及び硫化剤は反応後又は次工程以降で望まない副反応を誘発する可能性があり、該副反応を抑制するため、反応後に還元剤を用いてクエンチ処理を行うことができる。具体的には、還元剤として、3価のリン試薬(例えば、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン等の亜リン酸トリアルキル;亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチルなどの亜リン酸ジアルキル)、又はチオ硫酸ナトリウム等の還元剤を用いる。前記クエンチ処理は、省略することも可能である。
【0218】
工程b1の後に工程c1を行う際、工程c1の反応の後に、スキーム3又は5中、式(iia又はiib)で表される化合物又はその塩が残存している場合には、必要に応じて、得られた溶液をキャッピング反応に付してもよい。キャッピング反応は、無水酢酸、無水安息香酸などの酸無水物を用いて、又は前述の縮合剤に加えて、メチル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩、エチル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩、イソプロピル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩及び2-シアノエチル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩などのアルキル-H-ホスホネートのアンモニウム塩を用いて、通常の方法により実施することができる。
キャッピング反応は、前述する工程b1の後に実施してもよい。
工程aの後に工程c1を行う際には、工程c1の後には、前記キャッピング反応を実施しない。
【0219】
次に、ホスホロアミダイト法における、亜リン酸トリエステル結合の変換工程である、工程c2について、説明する。
【0220】
工程c2は、工程b2で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(via又はvib)又は工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチド(iia又はiib)を単離することなく、工程b2又は工程a後の反応混合物に、リン原子を修飾する試薬を直接添加するだけで行うことができる。リン原子を修飾する試薬としては、酸化剤又は硫化剤が使用される。酸化剤又は硫化剤を使用して、リン酸トリエステル結合、チオリン酸トリエステル結合変換することができる。工程c2は、工程b2で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(via又はvib)又は工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチド(iia又はiib)を単離して行ってもよい。
【0221】
工程c2で用いられる溶媒は、具体的には、前記工程aと同様の溶媒が挙げられ、使用する酸化剤、硫化剤によって適宜選択される。
【0222】
工程c2に使用される「酸化剤」は、他の部位を酸化することなく、亜リン酸トリエステル結合をリン酸トリエステル結合に酸化する能力があれば、特に限定されないが、ヨウ素、(1S)-(+)-(10-カンファニルスルホニル)オキサジリジン、tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、2-ブタノンペルオキシド、1,1-ジヒドロペルオキシシクロドデカン、ビス(トリメチルシリル)ペルオキシド、m-クロロ過安息香酸が好ましい。収率又は反応速度が良好な酸化反応を達成できるという観点で、ヨウ素、tert-ブチルヒドロペルオキシド、2-ブタノンペルオキシドがより好ましく、ヨウ素が特に好ましい。かかる酸化剤は、0.05から2Mの濃度になるように適当な溶媒で希釈して使用することができる。かかる希釈溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、ピリジン、テトラヒドロフラン[THF]、ジクロロメタン、水、又はこれらの混合溶媒を挙げることができる。中でも、例えば、ヨウ素/水/ピリジンの混合溶媒若しくはヨウ素/水/ピリジン/THFの混合溶媒を用いることが好ましい。
工程c2で前記酸化剤を使用する場合、工程c2の反応溶媒は、前記希釈溶媒と同様である。
【0223】
工程c2に使用される「硫化剤」は、亜リン酸トリエステル結合をチオリン酸トリエステル結合に変換しうる能力があれば、特に限定されないが、単体硫黄、3-アミノ-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン(ADTT)、3-((N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、N-(ベンゾイルチオ)-スクシンイミドが好ましい。収率又は反応速度が良好な反応が進行しうるという観点で、単体硫黄、ADTTがより好ましく、単体硫黄が特に好ましい。かかる硫化剤は、0.05から2Mの濃度になるように適当な溶媒で希釈して使用することができる。かかる希釈溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、ピリジン又はこれらの混合溶媒が挙げられる。
工程c2で前記硫化剤を使用する場合、工程c2の反応溶媒は、前記希釈溶媒と同様である。
【0224】
リン原子を修飾する試薬の使用量は、工程b2で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(via若しくはvib)1モル又は工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチド(iia又はiib)1モルに対し、1から50モルが好ましく、より好ましくは1から15モルであり、さらに好ましくは1から10モルであり、さらにより好ましくは1から7モルである。
【0225】
反応温度は、反応が進行すれば特に限定されないが、-10℃から60℃が好ましく、0℃から50℃がより好ましく、20℃から30℃がさらに好ましい。反応時間は、工程b2で得られたn+p個重合オリゴヌクレオチド(via若しくはvib)又は工程aで得られたn個重合オリゴヌクレオチド(iia又はiib)の種類、使用するリン原子を修飾する試薬の種類、反応温度等によって異なるが、好ましくは1分間から24時間であり、より好ましくは、10分間から12時間であり、更に好ましくは、30分間から6時間である。
【0226】
該酸化剤及び硫化剤は反応後又は次工程以降で望まない副反応を誘発する可能性があり、該副反応を抑制するため、反応後に還元剤を用いてクエンチ処理を行うことができる。還元剤としては、例えば、3価のリン試薬(例えば、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン等の亜リン酸トリアルキル;亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル等の亜リン酸ジアルキル)、チオ硫酸ナトリウム等が用いられる。前記クエンチ処理は、省略することも可能である。
【0227】
工程b2の後に工程c2を行う際、工程c2の反応の後に、スキーム4又は6中、式(iia又はiib)で表される化合物又はその塩が残存している場合には、必要に応じて、得られた溶液をキャッピング反応に付してもよい。キャッピング反応は、無水酢酸、無水安息香酸などの酸無水物を用いて、又は前述の縮合剤に加えて、メチル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩、エチル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩、イソプロピル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩及び2-シアノエチル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩などのアルキル-H-ホスホネートのアンモニウム塩を用いて、通常の方法により実施することができる。
キャッピング反応は、前述する工程b2の後に実施してもよい。
工程aの後に工程c2を行う際には、工程c2の後には、前記キャッピング反応を実施しない。
【0228】
(工程e)(沈殿化及び固液分離工程)
工程eは、工程aから工程cのいずれかで得られた反応溶液と極性溶媒とを混合することによりオリゴヌクレオチドを沈殿させて、固液分離により取得する工程である。
【0229】
工程eにおける極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールn-ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;アセトン、2-ブタノン等のケトン系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピペリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;水、ならびにこれら2種以上の混合溶媒が用いられる。工程eにおける極性溶媒は、好ましくはアルコール系溶媒、ニトリル系溶媒であり、より好ましくは、炭素数1から6のアルコール溶媒又は炭素数1から6のニトリル溶媒であり、特に好ましくはメタノール又はアセトニトリルである。
【0230】
工程cで得られた反応溶液を用いて工程eを行う場合、前述の還元剤を、沈殿化溶媒であるメタノールやアセトニトリルに加えた溶液として使用することにより、リン原子を修飾する試薬のクエンチ処理と同時に工程eを行うことができる。
【0231】
本発明のオリゴヌクレオチドの製造方法は、上記工程aから工程c及び工程eを所望の回数繰返すことで高純度かつ高収率で目的のオリゴヌクレオチドを得ることができる。
【0232】
(工程f)(脱保護・オリゴヌクレオチド単離工程)
オリゴヌクレオチドの製造方法においては、工程eの後に、基本保護基、一時保護基及び擬似固相保護基の種類と性質に応じて、脱保護を行い、オリゴヌクレオチドを単離することができる。脱保護の方法としては、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY & SONS)出版(1999年)等に記載されている脱保護方法に従い、オリゴヌクレオチドの保護基を除去する工程を行うことができる。具体的には、擬似固相保護基、ならびに基本保護基であるベンゾイル基、イソブチリル基、フェノキシアセチル基、アセチル基、レブリニル基等、亜リン酸ジエステル結合、リン酸ジエステル結合又はチオリン酸ジエステル結合を保護している基本保護基である2-シアノエチル基等は、アンモニア水、アンモニア水/エタノール溶液、又はアンモニア水とメチルアミン水溶液の混合液で処理することにより、除去することができる。また、5’位又は3’位ヒドロキシ基の一時保護基は、工程aで使用されるフッ素試薬、酸又は塩基、又はそれらを適宜希釈した溶液で処理することにより除去することができる。また、ジャーナルオブザケミカルソサイエティー パーキントランザクション1、2002年、2619頁-2633頁に記載されている脱保護方法に従い、DBU[1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン]及びトリメチルシリルクロリドで処理して、リン酸ジエステル結合又はチオリン酸ジエステル結合を保護している2-シアノエチル基等を除去した後に、アンモニア水で擬似固相保護基、ならびに基本保護基であるベンゾイル基、イソブチリル基、フェノキシアセチル基、アセチル基、レブリニル基等を除去する方法を用いることもできる。また、無機塩基(炭酸カリウム等)で基本保護基であるベンゾイル基、イソブチリル基、フェノキシアセチル基、アセチル基、レブリニル基等を除去する方法を用いることもできる。
基本保護基で置換されたリン酸ジエステル結合は、例えば、ジャーナルオブザケミカルソサイエティー パーキントランザクション1、1999、1477頁-1486頁に記載されている方法((E)-2-ニトロベンズアルドキシム、ピリジン-2-アルドキシムなどのオキシム化合物及び、1、1、3、3-テトラメチルグアニジン、DBU等の塩基で処理する方法)で脱保護することにより、リン酸ジエステル結合へ変換することができる。2-シアノエチル基等、β脱離によって脱保護可能な基本保護基で置換されたチオリン酸ジエステル結合は、前記塩基性条件下での脱保護により、チオリン酸ジエステル結合へ変換できる。その他の基本保護基で置換されたチオリン酸ジエステル結合のうち、チオリン酸-O,O,S-トリエステル結合に包含される結合は、例えば、ジャーナルオブザケミカルソサイエティー パーキントランザクション1、1999、1477頁-1486頁に記載されている方法(前記オキシム化合物及び前記塩基で処理する方法等)で脱保護することにより、リン酸ジエステル結合へ変換できる。
保護基を有しないオリゴヌクレオチドは、酵素により容易に分解されやすいため、空気清浄度管理下でオリゴヌクレオチドを単離することが好ましい。
【0233】
基本保護基のうちC6-10アリールアミノカルボニル基、5-10員ヘテロアリールアミノカルボニル基、C6-10アリールスルホニルアミノカルボニル基、モノC1-6アルキルアミノカルボニル基、アラルキルアミノカルボニル基等は、水存在下加熱することで除去することができる。この時、アンモニア水を用いてもよい。
【0234】
上記工程aから工程c及び工程fにおける反応の進行の確認は、いずれも一般的な液相有機合成反応と同様の方法を適用できる。すなわち、薄層シリカゲルクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を用いて反応を追跡することができる。
【0235】
工程e又は工程fより得られたオリゴヌクレオチドは、更に有機合成反応を施すことにより、所望のオリゴヌクレオチド誘導体へと導くこともできる。H-ホスホネート法の方法A、ホスホロアミダイト法の方法A、H-ホスホネート法の方法B及びホスホロアミダイト法の方法Bのいずれかを使用して製造されたオリゴヌクレオチドを用いて、H-ホスホネート法の方法A、ホスホロアミダイト法の方法A、H-ホスホネート法の方法B及びホスホロアミダイト法の方法Bのいずれかを使用してオリゴヌクレオチドを製造することもできる。
【0236】
前記カップリング工程後の亜リン酸ジエステル結合又は亜リン酸トリエステル結合による縮合体(iva、via、ivb又はvib)、又はその亜リン酸ジエステル結合又は亜リン酸トリエステル結合の変換体(viia、viiia、viib又はviiib)を、スキーム1又は2中、式(ia又はib)で表される化合物として用い、方法A又は方法Bにおける工程aを実施することができる。
【0237】
製造されたオリゴヌクレオチドは、各種人体用又は動物用の医薬品(RNA、DNA、オリゴヌクレオチド医薬、等)、機能性食品、特定保健食品、食品、化成品、生体用高分子材料、工業用高分子材料等の各種用途に使用することができる。
【0238】
オリゴヌクレオチドの製造方法における出発物質は、既存の酸化、還元、加水分解、エステル化反応、アミド縮合等、一般的に知られている官能基変換法(例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ第2版(Comprehensive Organic Transformations, Second Edition)、ラロック(R. C. Larock)著、ワイリー-ブイシーエイチ(Wiley-VCH)(1999年)など参照)を行うことにより製造できる。
例えば、2’位と4’位が-CSNR14-(R14は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)で架橋したリボースに、核酸塩基が結合したヌクレオシドは、対応する-CONR13-(R13は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)で架橋した構造を有するヌクレオシド等から、チオカルボニル化試薬(例えばローソン試薬等)を用いて、必要に応じて保護反応及び脱保護反応を行って、合成することができる。
【0239】
擬似固相保護基が導入されたヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドは以下に示す方法によって製造することができるが、下記製造方法は一般的な製造方法の一例を示すものであり、本実施形態に係る擬似固相保護基が導入されたヌクレオシド等の製造方法を限定するものではない。
【0240】
前記式(I)に示される擬似固相保護基が導入されたヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドは、例えば、下記式(X-1)に示されるアルキルハライドと、ヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの核酸塩基とを溶媒中で反応させることにより得ることができる。
【0241】
【0242】
式(X-1)中、Wは、ハロゲン原子を意味し、その他の記号は前記定義に同じである。
【0243】
前記式(X-1)に示されるアルキルハライドと、ヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドの反応には、塩基(炭酸カリウム、トリエチルアミン等)が用いられる。溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロヘキサン等の脂肪族系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等が挙げられる。
【0244】
前記式(X-1)に示されるアルキルハライドは、下記式(X-2)
【化24】
に示されるカルボン酸とクロロメタンスルホン酸クロリドを溶媒中で反応させることにより(国際公開第2014-144285号に記載の方法)、また前記式(X-2)に示されるカルボン酸、パラホルムアルデヒド及び塩化亜鉛を溶媒中で反応させることにより(ジャーナルオブメディシナルケミストリー、2009年、52巻、771頁-778頁の方法)、製造できる。
また、L
1とL
2の間の結合、L
2とL
3の間の結合、L
3とL
4の間の結合の内、任意の結合を、上記官能基変換法等を用いて形成させ、段階的に擬似固相保護基を導入することもできる。また、L
2が、-COO-、-CON(R
2)-、OCO-又は-N(R
2)CO-である場合、L
2が含むエステル結合又はアミド結合を、上記官能基変換法等を用いて形成させ、段階的に擬似固相保護基を導入することもできる。L
4が、-COO-、-CON(R
2)-、OCO-又は-N(R
2)CO-である場合も同様である。ここで、R
2は前記定義に同じである。
【0245】
当該カルボン酸若しくは酸ハライドは、既存の酸化、還元、加水分解等、一般的に知られている官能基変換法(例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ第2版(Comprehensive Organic Transformations, Second Edition)、ラロック(R. C. Larock)著、ワイリー-ブイシーエイチ(Wiley-VCH)(1999年)など参照)を行うことにより製造できる。
【0246】
カップリング工程で使用されるp個重合オリゴヌクレオチドである、スキーム3から6中、(iiia)、(iiib)、(va)又は(vb)で表されるヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドは、公知の方法に従い、合成できる。
ヒドロキシホスフィニル基で置換されたヒドロキシ基を有する化合物(iiia)又は(iiib)は、それぞれ、(iiia)の5’位がヒドロキシ基である化合物又は(iiib)の3’位がヒドロキシ基である化合物に、溶媒中、H-ホスホネート化試薬を反応させる公知の方法(Colin B. Reese et al., J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 2002, 2619-2633.)に従い、製造することができる。溶媒としては工程aと同様の溶媒が挙げられ、H-ホスホネート化試薬としては、亜リン酸、亜リン酸ジアリール(亜リン酸ジフェニルなど)、アリール-H-ホスホネートのアンモニウム塩(フェニル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩、p-トルイル-H-ホスホネートのトリエチルアンモニウム塩など)、ハロゲン化リン(2-クロロ-4H-1,3,2-ベンゾジオキサホスホリン-4-オン、三塩化リンなど)などが挙げられる。
3’位又は5’位が置換されたヒドロキシ(ジアルキルアミノ)ホスフィノ基で置換されたヒドロキシ基を有する化合物(va)又は(vb)は、それぞれ、(va)の5’位がヒドロキシ基である化合物又は(vb)の3’位がヒドロキシ基である化合物に、溶媒中、ホスホロアミダイト化試薬を反応させる公知の方法(M. H. Caruthers et al., Method in Enzymology 1987, 154, 287-313; S. L. Beaucage and M. H. Caruthers, Tetrahedron Letters 1981, 22, 1859-1862.)に従い、製造することができる。溶媒としては工程aと同様の溶媒が挙げられ、ホスホロアミダイト化試薬としては、2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト、2-シアノエチル-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト等が挙げられる。
pが1である(iiia)、(iiib)、(va)又は(vb)で表されるヌクレオシドは、購入することもできる。
【実施例】
【0247】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中、NMRは核磁気共鳴スペクトルを、MSは質量分析を意味する。
【0248】
1H-NMRデータが記載されている場合には、300MHz(JNM-ECP300;日本電子(JEOL)社製、又はJNM-ECX300;日本電子(JEOL)社製)で測定し、テトラメチルシランを内部標準としたシグナルの化学シフトδ(単位:ppm)(分裂パターン、積分値)を表す。「s」はシングレット、「d」はダブレット、「t」はトリプレット、「q」はカルテット、「m」はマルチプレット、「br s」はブロード、「CDCl3」は重クロロホルムを意味する。
31P-NMRデータが記載されている場合には、JNM-ECX300;日本電子(JEOL)社製)で測定したシグナルの化学シフトδ(単位:ppm)を表す。
【0249】
MSは、特に記述がない場合は、以下の条件1で、ESI(エレクトロスプレーイオン化)法を用いて測定した。「ESI+」はESI正イオンモード、「ESI-」はESI負イオンモードを意味する。
条件1:
装置:AB SCIEX TripleTOF 5600
カラム:Kinetex PFP(2.6μm、2.1×75mm)
カラム温度:40℃
溶離液組成:
有機層:テトラヒドロフラン/アセトニトリル=1/1(体積比)
水層:10mM ギ酸アンモニウム水溶液
有機層と水層の混合比を50/50で測定開始後、10分間で90/10に直線的に変えた。その後5分間、有機層と水層の混合比を90/10に固定した。
流速:0.50mL/min、
検出波長:260nm
【0250】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーでの精製は、特に記述がない場合は、山善製Hi-Flashカラムを用いた。
【0251】
参考合成例1 (5’-O-tert-ブチルジメチルシリル-3’-O-レブリニルデオキシチミジンの合成)
【0252】
【0253】
窒素雰囲気下、5’-O-tert-ブチルジメチルシリルデオキシチミジン(Apollo Scientific Ltd社製)(5.3g、15mmol)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.17g、1.4mmol)及びレブリン酸(2.8g、24mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(38g)溶液に、室温で1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(WSC・HCl)(4.6g、24mmol)を加え、15時間13分撹拌した。次いで反応混合物に酢酸(1.5g、26mmol)及びトリエチルアミン(2.6g、19mmol)の水(38g)溶液を加えて5分間撹拌し、酢酸エチル(37g)を加えて14分間撹拌し、分液した。得られた有機層の溶媒を減圧下留去し、5’-O-tert-ブチルジメチルシリル-3’-O-レブリニルデオキシチミジン(6.9g、定量的)をうすいオレンジ色固体として得た。
1H-NMR:(300MHz;CDCl3)δ0.13(s,6H),0.93(s,9H),1.92(d,3H),2.05-2.15(m,1H),2.21(s,3H),2.39-2.45(m,1H),2.58-2.62(m,2H),2.76-2.81(m,2H),3.90-3.91(m,2H),4.099-4.103(m,1H),5.26(d、1H),6.37(q,1H),7.55(d,1H),9.34(br s,1H).
【0254】
実施例1(チミン3位に擬似固相保護基が結合したヌクレオシドの合成):化合物3の合成
【0255】
【0256】
工程1 化合物1の合成
窒素雰囲気下、3,4,5-トリス(オクタデシルオキシ)安息香酸(国際公開第2014-077292号に記載の方法に準じて合成した)(3.0g、3.2mmol)、炭酸ナトリウム(1.1g、10mmol)、及び硫酸水素テトラ-n-ブチルアンモニウム(0.13g、0.38mmol)のジクロロメタン(71g)/水(30g)混合溶液に、室温でクロロメチルスルホニルクロリド(0.39mL、3.9mmol)を加え、2時間42分撹拌した。さらにクロロメチルスルホニルクロリド(60μL、0.60mmol)を加えて18分間撹拌した後に、反応混合物を40℃に昇温して10分間撹拌した。撹拌を停止して分液し、得られた水層はジクロロメタンで再抽出を行った。得られた有機層を合わせて、溶媒を減圧下留去し、残渣にアセトニトリル(70g)を加えて析出した固体をろ過し、化合物1を白色固体(3.16g、定量的)として得た。
1H-NMR:(300MHz;CDCl3)δ0.86-0.90(m,9H),1.26-1.84(m,96H),3.99-4.05(m,6H),5.93-6.01(m,2H),7.27-7.36(m,2H).
【0257】
工程2 化合物2の合成
窒素雰囲気下、化合物1(1.0g、1.1mmol)、及び5’-O-tert-ブチルジメチルシリル-3’-O-レブリニルデオキシチミジン(0.71g、1.6mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(50mL)溶液に、70℃で炭酸カリウム(0.21g、1.5mmol)を加えて2時間5分撹拌し、さらに炭酸カリウム(0.91g、6.mmol)を加えて2時間44分撹拌した。その後、反応混合物をアセトニトリル(201g)に加え、析出した固体をろ過し、化合物3(1.01g、収率69%)を黄色固体として得た。
1H-NMR:(300MHz;CDCl3)δ0.14(s,6H),0.86-0.93(m,18H),1.26-1.81(m,96H),2.13-2.43(m,5H),2.56-2.60(m,2H),2.74-2.79(m,2H),3.92-4.12(m,9H),5.26(d,1H),6.22(q,2H),6.42(q,1H),7.22(s,2H),7.59(s,1H).
MS(ESI):[M+H]+ 1394.0827.
【0258】
工程3 化合物3の合成
窒素雰囲気下、化合物2(0.94g、0.67mmol)、及び酢酸(0.41mL、7.2mmol)のTHF(10mL)溶液に、30℃で1.0M テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)/THF溶液(3.5mL、3.5mmol)を加え、4時間2分撹拌した。その後、反応混合物をメタノール(100g)に加え、析出した固体をろ過し、化合物3(0.85g、収率99%)を黄色固体として得た。
1H-NMR:(300MHz;CDCl3)δ0.88(t,9H),1.26-1.81(m,96H),2.20(s,3H),2.39-2.44(m,2H),2.58-2.60(m,2H),2.76-2.78(m,2H),3.93(t,3H),3.96-4.01(m,6H),4.11(d、1H),5.34-5.38(m,1H),6.21(q,2H),6.32(t,1H),7.21(s,2H),7.61(d、1H).
MS(ESI):[M+H]+ 1279.9950.
【0259】
試験例 (チミン3位に擬似固相保護基を持つデオキシチミジンの安定性評価)
【0260】
【0261】
チミン3位に擬似固相保護基を持つデオキシチミジンとして、化合物3及び化合物4(それぞれ7mg;化合物4は国際公開第2014-077292号に記載の方法に準じて合成した)をピリジン(0.50mL)に溶解させ、水(60μL)を加えて、70℃で撹拌し、一定時間経過後にHPLC分析を行った。0時間の時点でのそれぞれの化合物のHPLC相対面積を100%としたときの、該化合物のHPLC相対面積の経時変化を、
図1に示す。なお、
図1中、「compound」は化合物を、「time」は時間を、「HPLC peak area」は、HPLC相対面積を意味する。
【0262】
図1から、化合物4と比較して、化合物3の方が安定であることが分かる。
【0263】
実施例2(ホスホロアミダイト法による合成):化合物5の合成
【0264】
【0265】
窒素雰囲気下、化合物3(51mg、0.040mmol)及び5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)デオキシチミジン-3’-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト)(Glen Research社製)(144mg、0.20mmol)のジクロロメタン(1.5mL)及びアセトニトリル(0.5mL)の混合溶液に、25℃で1H-テトラゾール(14mg、0.20mmol)を加え、1時間23分撹拌した。その後、0.1Mのヨウ素を含む、ピリジン、THF及び水の溶液(2.0mL、0.20mmol)を加え、46分間撹拌した。その後、反応混合物をアセトニトリル(25g)に加え、析出した固体をろ過し、化合物5(65mg、収率84%)を白色固体として得た。
1H-NMR:(300MHz;CDCl3)δ0.88(t,9H),1.20-2.00(m,98H),2.17-2.75(m,17H),3.37-3.41(m,1H),3.51-3.57(m,1H),3.78-3.79(m,6H),3.95-4.04(m,6H),4.08-4.38(m,6H),5.17-5.30(m,2H),6.15-6.25(m,2H),6.34-6.42(m,2H),6.80-7.41(m,15H),7.53-7.55(m,1H),8.32-8.37(m,2H).
31P-NMR:(300MHz;CDCl3)δ-2.00、-1.93.
MS(ESI):[M-H]- 1937.2006.
【0266】
実施例3(H-ホスホネート法による合成):化合物6の合成
【0267】
【0268】
窒素雰囲気下、化合物3(49mg、0.038mmol)及び5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)デオキシチミジン-3’-H-ホスホネートのトリエチルアミン塩(ChemGenes社製)(42mg、0.059mmol)のピリジン(1.0mL)溶液に、25℃で2,2-ジメチルブチリルクロリド(27μL、0.20mmol)を加え、27分間撹拌した。その後0.1Mのヨウ素を含む、ピリジン、THF及び水の溶液(0.59mL、0.059mmol)を加え、42分間撹拌した。その後、反応混合物をアセトニトリル(26g)に加え、析出した固体をろ過し、化合物6(62mg、収率88%)を淡いオレンジ色固体として得た。
1H-NMR:(300MHz;CDCl3)δ0.88(t,9H),1.20-1.83(m,96H),1.87(d,3H),1.95(d,3H),2.19(s,3H),2.23-2.79(m,8H),3.79(s,6H),3.81-4.30(m,12H),5.10-5.39(m,2H),6.09-6.45(m,4H)、6.79-7.35(m,15H)、7.50(s,1H)、7.62(s,1H).
31P-NMR:(300MHz;CDCl3)δ-1.02.
MS(ESI):[M-H]- 1884.1630.
【0269】
実施例4(H-ホスホネート法による合成):化合物7の合成
【0270】
【0271】
窒素雰囲気下、化合物3(39mg、0.030mmol)及び5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)デオキシチミジン-3’-H-ホスホネートのトリエチルアミン塩(33mg、0.047mmol)のピリジン(1.0mL)溶液に、25℃で2,2-ジメチルブチリルクロリド(20μL、0.15mmol)を加え、29分間撹拌した。その後0.05Mのヨウ素を含む、ピリジン及び水の溶液(3.0mL、0.15mmol)を加え、1時間12分撹拌した。その後、水(118μL、6.6mmol)を加えて70℃に昇温し、21時間50分撹拌した。室温に冷却し、反応混合物をアセトニトリル(21g)に加え、析出した固体をろ過し、化合物7(36mg、収率77%)を茶色固体として得た。
1H-NMR:(300MHz;CDCl3)δ0.88(t,9H)、1.08-2.00(m,102H),2.13-2.76(m,11H),3.79-4.50(m,12H),5.02(s,1H),5.38(s,1H),5.96-6.34(m,3H),6.41(s,1H),7.20(s,2H),7.53(s,1H),7.68(s,1H).
31P-NMR:(300MHz;CDCl3)δ-0.95.
MS(ESI):[M-H]- 1582.0378.
【産業上の利用可能性】
【0272】
核酸塩基部により安定性が高い擬似固相保護基を有するヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドを提供し、大量合成に対応できるオリゴヌクレオチドの新規製造方法を提供できるようになった。したがって、本発明は、siRNA、アンチセンス核酸、ワクチンのアジュバントなどのオリゴヌクレオチドの製造に適用することができ、ゲノム創薬や遺伝子診断・治療などの分野において極めて有用なものである。