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特許7140118含フッ素弾性共重合体およびその製造方法、含フッ素弾性共重合体組成物ならびに架橋ゴム物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】含フッ素弾性共重合体およびその製造方法、含フッ素弾性共重合体組成物ならびに架橋ゴム物品
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/26 20060101AFI20220913BHJP
   C08F 6/16 20060101ALI20220913BHJP
   C08F 16/12 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C08F214/26
C08F6/16
C08F16/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019526849
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2018023666
(87)【国際公開番号】W WO2019004059
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017124890
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 裕紀子
(72)【発明者】
【氏名】巨勢 丈裕
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/082633(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/086323(WO,A1)
【文献】国際公開第99/050319(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057512(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106317290(CN,A)
【文献】特表2013-532766(JP,A)
【文献】特開平11-240918(JP,A)
【文献】国際公開第2018/089256(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 214/00-214/28
C08F 6/16
C08F 16/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素原子を有すると共に、テトラフルオロエチレンに基づく単位である単位a、重合性不飽和結合を1個有する単量体(ただしテトラフルオロエチレンを除く。)に基づく単位である単位bおよび重合性不飽和結合を2個以上有する含フッ素単量体に基づく単位である単位cを有し、金属含有量が0.3質量ppm以上20.0質量ppm以下である、含フッ素弾性共重合体。
【請求項2】
前記単位bが、下記式(1)で表される化合物に基づく単位、下記式(2)で表される化合物に基づく単位、エチレンに基づく単位およびプロピレンに基づく単位から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の含フッ素弾性共重合体。
CF=CFORf1 (1)
(ただし、Rf1は、炭素数1~10のペルフルオロアルキル基である。)
CF=CF(OCFCF-(OCF-ORf2(2)
(ただし、Rf2は、炭素数1~4のペルフルオロアルキル基であり、nは、0~3の整数であり、mは、0~4の整数であり、n+mは、1~7の整数である。)
【請求項3】
前記単位bが、Rf1の炭素数が1~3である前記式(1)で表される化合物に基づく単位、下記式で表されるいずれかの化合物である前記式(2)で表される化合物に基づく単位およびプロピレンに基づく単位から選ばれる少なくとも一種である、請求項2に記載の含フッ素弾性共重合体。
CF=CF-OCFCF-OCF-OCF-OCF-OCF-OCF
CF=CF-OCFCF-OCF-OCF-OCF
CF=CF-OCFCF-OCFCF-OCFCF
【請求項4】
前記単位cが、下記式(3)で表される化合物に基づく単位である、請求項1~3のいずれか一項に記載の含フッ素弾性共重合体。
CF=CFORf3OCF=CF(3)
(ただし、Rf3は、炭素数1~25のペルフルオロアルキレン基、または炭素数2~25のペルフルオロアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に1個以上のエーテル性酸素原子を有する基である。)
【請求項5】
前記単位cが、下記式で表されるいずれかの化合物に基づく単位である、請求項4に記載の含フッ素弾性共重合体。
CF=CFO(CFOCF=CF
CF=CFO(CFOCF=CF
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の含フッ素弾性共重合体と、架橋剤とを含む、含フッ素弾性共重合体組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の含フッ素弾性共重合体または請求項6に記載の含フッ素弾性共重合体組成物を架橋してなる、架橋ゴム物品。
【請求項8】
ラジカル重合開始剤および下式(4)で表される化合物の存在下で、テトラフルオロエチレンと、重合性不飽和結合を1個有する単量体(ただしテトラフルオロエチレンを除く。)と、重合性不飽和結合を2個以上有する含フッ素単量体とを乳化重合させて含フッ素弾性共重合体を含むラテックスを得て、前記ラテックス中の含フッ素弾性共重合体を、金属元素を含有しない酸を用いて凝集させる、請求項1~5のいずれか一項に記載の含フッ素弾性共重合体を製造する方法。
f4 (4)
ただし、Rf4は、炭素数1~16のポリフルオロアルキレン基である。
【請求項9】
前記凝集の後に、金属元素の含有量が2質量ppm以下である液状媒体を用いて洗浄する、請求項8に記載の含フッ素弾性共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素弾性共重合体およびその製造方法、前記含フッ素弾性共重合体を含む含フッ素弾性共重合体組成物、ならびに前記含フッ素弾性共重合体または前記含フッ素弾性共重合体組成物を架橋してなる架橋ゴム物品に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素弾性共重合体を架橋した架橋ゴム物品は、耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性等に優れることから、過酷な環境で用いられる半導体製造装置用シール材として好適である。半導体製造装置用シール材には、半導体製品に影響を与える金属成分をできるだけ放出しないことが求められる。よって、半導体製造装置用シール材には、金属元素の含有量が少ないものを用いる必要がある。
【0003】
金属元素の含有量が少ない含フッ素弾性共重合体としては、下記のものが提案されている。
金属化合物を用いない乳化重合法によって含フッ素弾性共重合体を含むラテックスを得て、ラテックス中の含フッ素弾性共重合体を、金属元素を含まない酸を用いて凝集させ、凝集した含フッ素弾性共重合体を非水溶性溶媒で洗浄して得られた含フッ素弾性共重合体(特許文献1)。
特許文献1には、TFE(テトラフルオロエチレン)と、CFCFCFO(CF(CF)CFO)CF=CFで示されるPNVEと、ICHCFCFOCF=CFで示されるIMとの共重合体(実施例1、3)、TFEと、PMVE(パーフルオロメチルビニル)との共重合体(実施例2)、TFEと、PMVEと、IMとの共重合体(実施例4、5)、またはTFEと、PMVEと、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCNで示されるCNVEとの共重合体(実施例6)において、金属元素の含有量を低減した実施例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第1999/050319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の実施例に記載されている含フッ素弾性共重合体は架橋性に劣るため、含フッ素弾性共重合体を架橋して得られる架橋ゴム物品の物性が充分ではない。
本発明は、金属元素の含有量が少なく、架橋性に優れる含フッ素弾性共重合体およびその製造方法、金属元素の含有量が少なく、架橋性に優れる含フッ素弾性共重合体を用いた含フッ素弾性共重合体組成物ならびに架橋ゴム物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
<1>ヨウ素原子を有すると共に、テトラフルオロエチレンに基づく単位である単位a、重合性不飽和結合を1個有する単量体(ただしテトラフルオロエチレンを除く。)に基づく単位である単位bおよび重合性不飽和結合を2個以上有する含フッ素単量体に基づく単位である単位cを有し、金属含有量が0.3質量ppm以上20.0ppm以下である、含フッ素弾性共重合体。
<2>前記単位bが、下記式(1)で表される化合物に基づく単位、下記式(2)で表される化合物に基づく単位、エチレンに基づく単位およびプロピレンに基づく単位から選ばれる少なくとも一種である、<1>に記載の含フッ素弾性共重合体。
CF=CFORf1 (1)
(ただし、Rf1は、炭素数1~10のペルフルオロアルキル基である。)
CF=CF(OCFCF-(OCF-ORf2 (2)
(ただし、Rf2は、炭素数1~4のペルフルオロアルキル基であり、nは、0~3の整数であり、mは、0~4の整数であり、n+mは、1~7の整数である。)
<3>前記単位bが、Rf1の炭素数が1~3である前記式(1)で表される化合物に基づく単位、下記式で表されるいずれかの化合物である前記式(2)で表される化合物に基づく単位およびプロピレンに基づく単位から選ばれる少なくとも一種である、<2>に記載の含フッ素弾性共重合体。
CF=CF-OCFCF-OCF-OCF-OCF-OCF-OCF
CF=CF-OCFCF-OCF-OCF-OCF
CF=CF-OCFCF-OCFCF-OCFCF
<4>前記単位cが、下記式(3)で表される化合物に基づく単位である、<1>~<3>のいずれかに記載の含フッ素弾性共重合体。
CF=CFORf3OCF=CF (3)
(ただし、Rf3は、炭素数1~25のペルフルオロアルキレン基、または炭素数2~25のペルフルオロアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に1個以上のエーテル性酸素原子を有する基である。)
<5>前記単位cが、下記式で表されるいずれかの化合物に基づく単位である、<4>に記載の含フッ素弾性共重合体。
CF=CFO(CFOCF=CF
CF=CFO(CFOCF=CF
【0007】
<6>前記<1>~<5>のいずれかに記載の含フッ素弾性共重合体と、架橋剤とを含む、含フッ素弾性共重合体組成物。
<7>前記<1>~<5>のいずれかに記載の含フッ素弾性共重合体または<6>に記載の含フッ素弾性共重合体組成物を架橋してなる、架橋ゴム物品。
<8>ラジカル重合開始剤および下式(4)で表される化合物の存在下で、テトラフルオロエチレンと、重合性不飽和結合を1個有する単量体(ただしテトラフルオロエチレンを除く。)と、重合性不飽和結合を2個以上有する含フッ素単量体とを乳化重合させて含フッ素弾性共重合体を含むラテックスを得て、前記ラテックス中の含フッ素弾性共重合体を、金属元素を含有しない酸を用いて凝集させる、<1>~<5>のいずれかに記載の含フッ素弾性共重合体を製造する方法。
f4 (4)
ただし、Rf4は、炭素数1~16のポリフルオロアルキレン基である。
<9>前記凝集の後に、金属元素の含有量が2質量ppm以下である液状媒体を用いて洗浄する、<8>に記載の含フッ素弾性共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の含フッ素弾性共重合体は、金属元素の含有量が少なく、架橋性に優れる。
本発明の含フッ素弾性共重合体組成物は、金属元素の含有量が少なく、架橋性に優れる。
本発明の架橋ゴム物品は、金属元素の含有量が少なく、物性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
本明細書における以下の用語の意味は、以下の通りである。
「単量体に基づく単位」は、単量体1分子が重合して直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。本明細書において、単量体に基づく単位を、単に、単量体単位とも記す。
液状媒体における金属元素の含有量は、誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて、絶対検量線法により測定した29種類の金属元素(Fe、Na、K、Li、Be、Mg,Al,Ca,Ti,V,Cr,Mn、Co、Ni,Cu,Zn,Ga,Rb,Sr,Zr,Mo,Ag,Cd,In,Sn,Cs,Ba,Pb,Bi)の含有量の合計値である。
含フッ素弾性共重合体における金属元素の含有量は、測定対象の含フッ素弾性共重合体を白金ルツボに入れて高温電気加熱炉で灰化した後、硫酸白煙処理を行い希硝酸に溶解した液について、誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて、絶対検量線法により測定した29種類の金属元素(Fe、Na、K、Li、Be、Mg,Al,Ca,Ti,V,Cr,Mn、Co、Ni,Cu,Zn,Ga,Rb,Sr,Zr,Mo,Ag,Cd,In,Sn,Cs,Ba,Pb,Bi)の含有量の合計値である。
【0010】
<含フッ素弾性共重合体>
本発明の含フッ素弾性共重合体における金属元素の含有量は、20.0質量ppm以下であり、10.0質量ppm以下が好ましく、5.0質量ppm以下がより好ましい。金属元素の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、含フッ素弾性共重合体からなる架橋ゴム物品を半導体製造装置用シール材としたときに、半導体製品に影響を与える金属成分の放出を充分に抑制できる。金属元素の含有量の下限値は0.3質量ppmである。金属元素の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、架橋剤を添加して含フッ素弾性共重合体組成物としたときに、架橋性がより優れるとともに、充填剤や補強材の分散性も向上する。
【0011】
本発明の含フッ素弾性共重合体は、ヨウ素原子を有すると共に、単位a、単位bおよび単位cを有する。
単位aは、テトラフルオロエチレン(以下、TFEとも記す。)に基づく単位(以下、TFE単位とも記す。)である。
単位aの割合は、含フッ素弾性共重合体を構成するすべての単位のうち、35~75モル%が好ましく、40~75モル%がより好ましく、50~75モル%がさらに好ましい。
【0012】
単位bは、重合性不飽和結合を1個有する単量体(ただしテトラフルオロエチレンを除く。)に基づく単位である。
単位bの具体例としては、後述の化合物(1)に基づく単位(以下、PAVE単位とも記す。)、後述の化合物(2)に基づく単位(以下、POAVE単位とも記す。)、エチレンに基づく単位、プロピレンに基づく単位、フッ素原子およびフッ素原子以外のハロゲン原子を有する単量体(ブロモトリフルオロエチレン、ヨードトリフルオロエチレン等)に基づく単位、フッ素原子およびニトリル基を有する単量体(CF=CFO(CFCN、ペルフルオロ(8-シアノ-5-メチル-3,6-ジオキサ-1-オクテン)等)に基づく単位が挙げられる。
【0013】
PAVE単位は化合物(1)に基づく単位であり、POAVE単位は化合物(1)に基づく単位である。
CF=CFORf1 (1)
ただし、Rf1は、炭素数1~10のペルフルオロアルキル基である。
CF=CF(OCFCF-(OCF-ORf2 (2)
ただし、Rf2は、炭素数1~4のペルフルオロアルキル基であり、nは、0~3の整数であり、mは、0~4の整数であり、n+mは、1~7の整数である。
【0014】
化合物(1)において、Rf1であるペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。Rf1の炭素数は、含フッ素弾性共重合体の生産性が向上する点から、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
化合物(1)の具体例としては、下記のものが挙げられる。なお、式の後の記載は、その化合物の略称である。
CF=CFOCF :PMVE
CF=CFOCFCF :PEVE
CF=CFOCFCFCF :PPVE
CF=CFOCFCFCFCF
化合物(1)としては、含フッ素弾性共重合体の生産性が向上する点から、PMVE、PEVE、PPVEが好ましい。
【0015】
化合物(2)において、Rf2であるペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。Rf2の炭素数は、1~3が好ましい。
nが0のとき、mは3または4が好ましい。
nが1のとき、mは2~4の整数が好ましい。
nが2または3のとき、mは0が好ましい。
nは、1~3の整数が好ましい。
f2の炭素数、nおよびmが前記範囲内であれば、含フッ素弾性共重合体を架橋ゴム物品としたときの低温特性がさらに優れ、また、含フッ素弾性共重合体の生産性が向上する。
【0016】
化合物(2)の具体例としては、下記のものが挙げられる。なお、式の後の記載は、その化合物の略称である。
CF=CF-OCFCF-OCF-OCF-OCF-OCF-OCF :C9PEVE
CF=CF-OCFCF-OCF-OCF-OCF :C7PEVE
CF=CF-OCFCF-OCFCF-OCFCF :EEAVE
CF=CF-OCF-OCF
CF=CF-OCF-OCFCF
CF=CF-O(CFCF(CF)O)CFCFCF
CF=CF-OCF-OCF-OCF
化合物(2)としては、含フッ素弾性共重合体を架橋ゴム物品としたときの低温特性がさらに優れ、また、含フッ素弾性共重合体の生産性が向上する点から、C9PEVE、C7PEVE、EEAVEが好ましい。
【0017】
単位bの割合は、含フッ素弾性共重合体を構成するすべての単位のうち、3~57モル%が好ましい。
単位bがPAVE単位を含む場合、PAVE単位の割合は、含フッ素弾性共重合体を構成するすべての単位のうち、3~57モル%が好ましく、5~50モル%がより好ましく、10~40モル%がさらに好ましい。
単位bがPOAVE単位を含む場合、POAVE単位の割合は、含フッ素弾性共重合体を構成するすべての単位のうち、3~57モル%が好ましく、5~40モル%がより好ましく、8~30モル%がさらに好ましい。
単位bがエチレンに基づく単位およびプロピレンに基づく単位の少なくとも一方を含む場合、これらの単位の合計の割合は含フッ素弾性共重合体を構成するすべての単位のうち、3~57モル%が好ましく、5~50モル%がより好ましく、10~45モル%がさらに好ましい。
単位bがフッ素原子およびフッ素原子以外のハロゲン原子を有する単量体に基づく単位、ならびにフッ素原子およびニトリル基を有する単量体に基づく単位の少なくとも一方を含む場合、これらの単位の合計の割合は含フッ素弾性共重合体を構成するすべての単位のうち、0.001~5モル%が好ましく、0.001~3モル%がより好ましく、0.001~2モル%がさらに好ましい。
【0018】
単位cは、重合性不飽和結合を2個以上有する含フッ素単量体に基づく単位である。
重合性不飽和結合としては、炭素原子-炭素原子間の二重結合(C=C)、三重結合(C≡C)等が挙げられ、二重結合が好ましい。重合性不飽和結合の数は、2~6個が好ましく、2または3個がより好ましく、2個が特に好ましい。
重合性不飽和結合を2個以上有する含フッ素単量体は、ぺルフルオロ化合物であることが好ましい。
【0019】
重合性不飽和結合を2個以上有する含フッ素単量体としては、含フッ素弾性共重合体を架橋ゴム物品としたときのゴム物性を維持しつつ低温特性がさらに優れる点から、化合物(3)が好ましい。
CF=CFORf3OCF=CF (3)
ただし、Rf3は、炭素数1~25のペルフルオロアルキレン基、または炭素数2~25のペルフルオロアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に1個以上のエーテル性酸素原子を有する基である。
f3において、ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。Rf3の炭素数は、含フッ素弾性共重合体を架橋ゴム物品としたときのゴム物性を維持しつつ低温特性がさらに優れる点から、3または4が好ましい。
【0020】
化合物(3)の具体例としては、下記のものが挙げられる。なお、式の後の記載は、その化合物の略称である。
CF=CFO(CFOCF=CF
CF=CFO(CFOCF=CF :C3DVE
CF=CFO(CFOCF=CF :C4DVE
CF=CFO(CFOCF=CF
CF=CFO(CFOCF=CF
CF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CF
CF=CFO(CFO(CF(CF)CFO)CF=CF
CF=CFOCFO(CFCFO)CF=CF
CF=CFO(CFO)O(CF(CF)CFO)CF=CF
CF=CFOCFCF(CF)O(CFOCF(CF)CFOCF=CF
CF=CFOCFCFO(CFO)CFCFOCF=CF
化合物(3)としては、含フッ素弾性共重合体を架橋ゴム物品としたときのゴム物性を維持しつつ低温特性がさらに優れる点から、C3DVE、C4DVEが特に好ましい。
【0021】
含フッ素弾性共重合体を構成するすべての単位のうち、単位cの割合は0.01~1モル%が好ましく、0.05~0.5モル%がより好ましく、0.05~0.3モル%がさらに好ましい。
単位cの割合が前記範囲の下限値以上であれば、架橋反応性が優れ、架橋後の架橋ゴムは引張り強度および高温下での圧縮永久歪がより優れる。前記範囲の上限値以下であれば、架橋後の架橋ゴムとしての優れた物性を維持しつつ、高温下で折り曲げ等の応力が加えられた場合の割れをより低減できる。
【0022】
含フッ素弾性共重合体はヨウ素原子を有する。含フッ素弾性共重合体は、高分子鎖の末端に結合しているヨウ素原子を有することが好ましい。高分子鎖の末端とは、主鎖の末端および分岐鎖の末端の両方を含む概念とする。
含フッ素弾性共重合体中のヨウ素原子は、後述の化合物(4)に由来するヨウ素原子を含むことが好ましい。化合物(4)に由来するヨウ素原子は高分子鎖の末端に導入される。さらに、単位bである、フッ素原子およびヨウ素原子を有する単量体に基づく単位中のヨウ素原子を含んでもよい。
ヨウ素原子の含有量は、含フッ素弾性共重合体のうち、0.01~1.5質量%が好ましく、0.01~1.0質量%がより好ましい。ヨウ素原子の含有量が前記範囲内であれば、含フッ素弾性共重合体の架橋性がさらに優れ、また、架橋ゴム物品のゴム物性がさらに優れる。
【0023】
(作用機序)
以上説明した本発明の含フッ素弾性共重合体にあっては、単位cに由来する分岐鎖を有し、金属元素の含有量が20質量ppm以下であるため、金属元素の含有量が少なく、架橋性に優れる。そのため、本発明の含フッ素弾性共重合体を架橋して得られる架橋ゴム物品は、半導体製造装置用シール材として好適である。
【0024】
<含フッ素弾性共重合体の製造方法>
本発明の含フッ素弾性共重合体の製造方法は、ラジカル重合開始剤および化合物(4)の存在下で、単量体成分を乳化重合させて含フッ素弾性共重合体を含むラテックスを得て、該ラテックス中の含フッ素弾性共重合体を、金属元素を含有しない酸を用いて凝集させる方法である。前記単量体成分は、TFEと、前記重合性不飽和結合を1個有する単量体(TFEを除く。)と、前記重合性不飽和結合を2個以上有する含フッ素単量体である。
f4 (4)
ただし、Rf4は、炭素数1~16のポリフルオロアルキレン基である。
【0025】
化合物(4)は連鎖移動剤として機能する。Rf4であるポリフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。Rf4としては、ペルフルオロアルキレン基が好ましい。
化合物(4)としては、1,4-ジヨードペルフルオロブタン、1,6-ジヨードペルフルオロヘキサン、1,8-ジヨードペルフルオロオクタン等が挙げられ、重合反応性に優れる点から、1,4-ジヨードペルフルオロブタンが好ましい。
化合物(4)は、単量体成分100質量部に対して、0.005~10質量部が好ましく、0.02~5質量部が好ましく、0.05~2質量部がより好ましい。
【0026】
含フッ素弾性共重合体を含むラテックスは、乳化重合法によって得られる。
乳化重合法においては、例えば、ラジカル重合開始剤、乳化剤および化合物(4)を含む水性媒体中で、単量体成分を重合させる。
【0027】
ラジカル重合開始剤としては、水溶性開始剤が好ましい。水溶性開始剤としては、過硫酸類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)、過酸化水素、水溶性有機過酸化物(ジコハク酸ペルオキシド、ジグルタル酸ペルオキシド、tert-ブチルヒドロキシペルオキシド等)、有機系開始剤(アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩等)、過硫酸類または過酸化水素と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤との組合せからなるレドックス系開始剤、レドックス系開始剤に少量の鉄、第一鉄塩、硫酸銀等をさらに共存させた系の無機系開始剤等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の量は、単量体成分の100質量部に対して、0.0001~5質量部が好ましく、0.001~2質量部がより好ましい。
【0028】
水性媒体としては、水、水と水溶性有機溶媒との混合物等が挙げられる。
水溶性有機溶媒としては、tert-ブタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコール等が挙げられ、単量体の重合速度が低下しない点から、tert-ブタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
水性媒体が水溶性有機溶媒を含むと、単量体の分散性および含フッ素弾性共重合体の分散性に優れ、また、含フッ素弾性共重合体の生産性に優れる。
水溶性有機溶媒の含有量は、水の100質量部に対して、1~40質量部が好ましく、3~30質量部がより好ましい。
【0029】
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤等が挙げられ、ラテックスの機械的および化学的安定性がさらに優れる点から、アニオン性乳化剤が好ましい。
アニオン性乳化剤としては、炭化水素系乳化剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、含フッ素系乳化剤(ペルフルオロオクタン酸アンモニウム、ペルフルオロオクタン酸ナトリウム、ペルフルオロヘキサン酸アンモニウム、化合物(5)等)等が挙げられる。
F(CFO(CF(X)CFO)CF(Y)COOA (5)
ただし、XおよびYは、それぞれフッ素原子または炭素数1~3の直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキル基であり、Aは、水素原子、アルカリ金属またはNHであり、pは、2~10の整数であり、qは、0~3の整数である。
【0030】
化合物(5)としては、下記のものが挙げられる。
OCFCFOCFCOONH
F(CFO(CF(CF)CFO)CF(CF)COONH
F(CFOCFCFOCFCOONH
F(CFO(CFCFO)CFCOONH
F(CFOCFCFOCFCOONH
F(CFO(CFCFO)CFCOONH
F(CFOCFCFOCFCOONa、
F(CFO(CFCFO)CFCOONa
F(CFOCFCFOCFCOONa
F(CFO(CFCFO)CFCOONa
F(CFOCFCFOCFCOONH
F(CFO(CFCFO)CFCOONH
F(CFOCFCFOCFCOONa
F(CFO(CFCFO)CFCOONa
【0031】
アニオン性乳化剤としては、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム、COCFCFOCFCOONH、F(CFOCFCFOCFCOONH、F(CFOCFCFOCFCOONHが好ましい。
乳化剤の量は、水性媒体の100質量部に対して、0.01~15質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0032】
ラジカル重合の重合条件は、単量体組成、ラジカル重合開始剤の分解温度によって適宜選択される。
重合圧力は、0.1~20MPa[gauge]が好ましく、0.3~10MPa[gauge]がより好ましく、0.3~5MPa[gauge]がさらに好ましい。
重合温度は、0~100℃が好ましく、10~90℃がより好ましく、20~80℃がさらに好ましい。
重合時間は、1~72時間が好ましく、1~24時間がより好ましく、1~12時間がさらに好ましい。
【0033】
水性媒体のpHの調整には、pH緩衝剤を用いることが好ましい。pH緩衝剤としては、無機塩類などが挙げられる。無機塩類としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのリン酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩などが挙げられる。リン酸塩のより好ましい具体例としては、リン酸水素二ナトリウム2水和物、リン酸水素二ナトリウム12水和物等が挙げられる。
【0034】
乳化重合に用いられる化合物(単量体成分、重合開始剤、乳化剤、連鎖移動剤、pH調整剤等。ただし、水性媒体を除く。)としては、金属元素の含有量が少ない含フッ素弾性共重合体を得やすい点から、金属元素を有する化合物を用いないことが好ましい。
【0035】
乳化重合に用いられる水性媒体は、金属元素の含有量が少ない含フッ素弾性共重合体を得やすい点から、金属元素の含有量が2.0質量ppm以下であることが好ましい。金属元素の含有量は、1.0質量ppm以下がより好ましく、0.5質量ppm以下がさらに好ましい。金属元素の含有量の下限値は0質量ppbである。水性媒体としては、超純水が特に好ましい。
【0036】
含フッ素弾性共重合体は、酸による凝集によってラテックスから分離される。
凝集処理に用いる酸としては、金属元素の含有量が少ない含フッ素弾性共重合体を得る点から、金属元素を有しない酸を用いる。
金属元素を有しない酸としては、硝酸、硫酸、シュウ酸、塩酸、フッ酸、トリフルオロ酢酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸等が挙げられる。金属元素を有しない酸としては、金属に対する腐食性がより低い点から、硝酸および硫酸が好ましく、最終的に得られる含フッ素弾性共重合体に残留する、酸に由来する陰イオンの量が少なく、架橋ゴム物品のゴム物性を低下させにくい点から、硝酸が特に好ましい。
【0037】
酸による凝集処理は、例えば、含フッ素弾性共重合体を含むラテックスと、酸を含む水溶液(以下、酸水溶液とも記す。)とを混合することによって行われる。
酸水溶液中の酸の濃度は、0.1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。酸の濃度が前記範囲の下限値以上であれば、含フッ素弾性共重合体が凝集しやすい。酸の濃度が前記範囲の上限値以下であれば、含フッ素弾性共重合体の製造に用いる金属製機器(凝集槽、洗浄槽、乾燥機等)の腐食が抑えられ、また、最終的に得られる含フッ素弾性共重合体に残留する、酸に由来する陰イオンの量が少なく、架橋ゴム物品のゴム物性を低下させにくい。
【0038】
酸水溶液の調製に用いる水は、金属元素の含有量が少ない含フッ素弾性共重合体を得やすい点から、金属元素の含有量が2.0質量ppm以下であることが好ましい。金属元素の含有量は、1.0質量ppm以下がより好ましく、0.5質量ppm以下がさらに好ましい。金属元素の含有量の下限値は0質量ppbである。水としては、超純水が特に好ましい。
【0039】
酸水溶液の量は、含フッ素弾性共重合体の100質量部に対して10質量部以上が好ましく、50~1000質量部がより好ましく、100~500質量部がさらに好ましい。酸水溶液の量が前記範囲の下限値以上であれば、含フッ素弾性共重合体が凝集しやすい。酸水溶液の量が前記範囲の上限値以下であれば、凝集処理によって発生する排水の量が抑えられる。
【0040】
凝集した含フッ素弾性共重合体は、ろ過等によって回収された後、さらに液状媒体で洗浄してもよい。
洗浄に用いる液状媒体としては、金属元素の含有量が少ない含フッ素弾性共重合体を得る点から、金属元素の含有量が2.0質量ppm以下であるものを用いる。金属元素の含有量は、1.0質量ppm以下がより好ましく、0.5質量ppm以下がさらに好ましい。金属元素の含有量の下限値は0質量ppbである。
洗浄に用いる液状媒体としては、水、金属元素を有しない酸水溶液が挙げられる。金属元素を有しない酸水溶液としては、硝酸水溶液等が挙げられる。酸水溶液中の酸の濃度は、0.1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。
金属元素の含有量が0.3~20.0質量ppmである含フッ素弾性共重合体が得られやすい点からは、水が好ましく、超純水がより好ましい。
【0041】
洗浄された含フッ素弾性共重合体は、ろ過等によって回収される。洗浄の回数は、1回であってもよく、2回以上であってもよい。
洗浄に用いる液状媒体の合計量は、含フッ素弾性共重合体の100質量部に対して10質量部以上が好ましく、50~1000質量部がより好ましく、100~500質量部がさらに好ましい。液状媒体の合計量が前記範囲の下限値以上であれば、含フッ素弾性共重合体に残留する、酸に由来する陰イオンの量が少なくなり、後段の乾燥機等の腐食が抑えられ、また、架橋ゴム物品のゴム物性を低下させにくい。液状媒体の合計量が前記範囲の上限値以下であれば、洗浄によって発生する排水の量が抑えられる。
【0042】
洗浄された含フッ素弾性共重合体は、熱による含フッ素弾性共重合体の劣化を抑え、架橋ゴム物品のゴム物性の低下を抑える点から、100℃未満の温度で減圧乾燥(真空乾燥)することが好ましい。
乾燥温度は、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましい。乾燥温度は、乾燥機内の雰囲気の温度である。
乾燥時の圧力は、50kPa以下が好ましく、30kPa以下がより好ましく、10kPa以下がさらに好ましい。乾燥時の圧力を前記範囲の上限値以下とすることによって、乾燥温度を低くしても含フッ素弾性共重合体を充分に乾燥できる。
【0043】
含フッ素弾性共重合体中の金属含有量は、重合時のpH緩衝剤やラジカル重合開始剤、重合に用いる水性媒体、酸による凝集処理における酸水溶液、含フッ素弾性共重合体の洗浄に用いる液状媒体等として、金属元素を含むものを使用することにより、含フッ素弾性共重合体に含まれる金属量を調整できる。重合時のpH緩衝剤として、金属塩である無機塩類を用いることにより、含フッ素弾性共重合体の金属量を調整することが好ましい。
【0044】
乾燥した後の含フッ素弾性共重合体における金属元素の含有量は、20.0質量ppm以下であり、10.0質量ppm以下がより好ましく、5.0質量ppm以下がさらに好ましい。金属元素の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、含フッ素弾性共重合体からなる架橋ゴム物品を半導体製造装置用シール材としたときに、半導体製品に影響を与える金属成分の放出を充分に抑制できる。金属元素の含有量の下限値は0.3質量ppmである。金属元素の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、含フッ素弾性共重合体の架橋性がより優れるとともに、充填剤や補強材の分散性も向上する。
【0045】
(作用機序)
以上説明した本発明の含フッ素弾性共重合体の製造方法にあっては、重合性不飽和結合を2個以上有する含フッ素単量体を含む単量体成分を乳化重合させ、得られたラテックス中の含フッ素弾性共重合体を、金属元素を有しない酸を用いて凝集させるため、金属元素の含有量が少なく、架橋性に優れる含フッ素弾性共重合体が得られる。
【0046】
<含フッ素弾性共重合体組成物>
含フッ素弾性共重合体組成物は、本発明の含フッ素弾性共重合体と、架橋剤とを含む。含フッ素弾性共重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて架橋助剤、他の添加剤等を含んでいてもよい。
【0047】
架橋剤としては、有機過酸化物、ポリオール、アミン、トリアジン等が挙げられ、架橋ゴム物品の生産性、耐熱性、耐薬品性に優れる点から、有機過酸化物が好ましい。
【0048】
有機過酸化物としては、ジアルキルペルオキシド類(ジtert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α,α-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン-3等)、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゼン、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルオキシマレイン酸、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。有機過酸化物としては、ジアルキルペルオキシド類が好ましい。
【0049】
架橋剤の配合量は、含フッ素弾性共重合体の100質量部に対して、0.3~10質量部が好ましく、0.3~5質量部がより好ましく、0.5~3質量部がさらに好ましい。架橋剤の配合量が前記範囲内であれば、架橋ゴム物品の強度と伸びのバランスに優れる。
【0050】
含フッ素弾性共重合体組成物が架橋助剤をさらに含む場合、架橋効率がより高くなる。
架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、トリアリルトリメリテート、m-フェニレンジアミンビスマレイミド、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシム、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、N,N’,N’’,N’’’-テトラアリルテレフタールアミド、ビニル基含有シロキサンオリゴマー(ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルビニルシロキサン等)等が挙げられる。架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートが好ましく、トリアリルイソシアヌレートが特に好ましい。
【0051】
架橋助剤の配合量は、含フッ素弾性共重合体の100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。架橋助剤の配合量が前記範囲内であれば、架橋ゴム物品の強度と伸びのバランスに優れる。
【0052】
他の添加剤としては、金属酸化物、顔料、充填剤、補強材、加工助剤等が挙げられる。
【0053】
含フッ素弾性共重合体組成物が金属酸化物をさらに含む場合、架橋反応が速やかにかつ確実に進行する。
金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化鉛等の2価金属の酸化物が挙げられる。
金属酸化物の配合量は、含フッ素弾性共重合体の100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。金属酸化物の配合量が前記範囲内であれば、架橋ゴム物品の強度と伸びのバランスに優れる。
【0054】
充填剤または補強材としては、カーボンブラック、酸化チタン、二酸化珪素、クレー、タルク、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、TFE/エチレン共重合体、TFE/プロピレン共重合体、TFE/フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。
【0055】
加工助剤としては、公知のものが挙げられる。滑剤としての機能を発現する加工助剤としては、脂肪酸金属塩(ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム等)、合成ワックス(ポリエチレンワックス等)、脂肪酸エステル(グリセリンモノオレエート等)等が挙げられる。
【0056】
含フッ素弾性共重合体組成物は、2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の公知の混練装置を用いる混練方法によって、含フッ素弾性共重合体、架橋剤、必要に応じて架橋助剤、他の添加剤を混練することによって得られる。
【0057】
<架橋ゴム物品>
架橋ゴム物品は、本発明の含フッ素弾性共重合体または含フッ素弾性共重合体組成物を架橋したものである。
架橋ゴム物品としては、架橋ゴムシート、Oリング、シートガスケット、オイルシール、ダイヤフラム、V-リング、半導体製造装置用部品、耐薬品性シール材、塗料、電線被覆材等が挙げられる。
【0058】
架橋ゴム物品は、金属元素の含有量が少ないことから、半導体製造装置用部品として好適に用いることができる。
架橋ゴム物品からなる半導体製造装置用部品としては、シール材(Oリング、角リング、ガスケット、パッキン、オイルシール、ベアリングシール、リップシール等)、チューブ、ホース、各種ゴムロール、ダイアフラム、ライニング等が挙げられる。
半導体製造装置としては、エッチング装置(ドライエッチング装置、プラズマエッチング装置、反応性イオンエッチング装置、反応性イオンビームエッチング装置、スパッタエッチング装置、イオンビームエッチング装置、ウェットエッチング装置、アッシング装置等)、洗浄装置(乾式エッチング洗浄装置、UV/O洗浄装置、イオンビーム洗浄装置、レーザービーム洗浄装置、プラズマ洗浄装置、ガスエッチング洗浄装置、抽出洗浄装置、ソックスレー抽出洗浄装置、高温高圧抽出洗浄装置、マイクロウェーブ抽出洗浄装置、超臨界抽出洗浄装置等)、露光装置(ステッパー、コータ・デベロッパー等)、研磨装置(CMP装置等)、成膜装置(CVD装置、スパッタリング装置等)、拡散・イオン注入装置(酸化拡散装置、イオン注入装置等)等が挙げられる。
【0059】
架橋ゴム物品は、公知の方法により、本発明の含フッ素弾性共重合体または含フッ素弾性共重合体組成物を適宜成形し、架橋することによって得られる。
【0060】
架橋方法としては、加熱による方法、電離性放射線照射による方法等が挙げられる。
成形方法としては、射出成形法、押出成形法、共押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、インフレーション成形法、トランスファー成形法、カレンダー成形法等が挙げられる。
【0061】
含フッ素弾性共重合体組成物が架橋剤として有機過酸化物を含有する場合、加熱による架橋が好ましい。
加熱架橋による架橋ゴム物品の具体的な製造方法としては、例えば、熱プレス成形法が挙げられる。熱プレス成形法では、加熱した金型を用い、目的の形状を有する金型のキャビティに含フッ素弾性共重合体組成物を充填して、加熱することによって成形と同時に架橋(熱プレス架橋)することで架橋ゴム物品が得られる。加熱温度は、130~220℃が好ましく、140~200℃がより好ましく、150~180℃がさらに好ましい。
【0062】
熱プレス成形法を用いる場合、熱プレス架橋(一次架橋とも記す。)で得られた架橋ゴム物品を、必要により、電気、熱風、蒸気等を熱源とするオーブン等でさらに加熱して、架橋を進行させること(二次架橋とも記す。)も好ましい。二次架橋時の温度は、150~280℃が好ましく、180~260℃がより好ましく、200~250℃がさらに好ましい。二次架橋時間は、1~48時間が好ましく、4~24時間がより好ましい。充分に二次架橋することによって、架橋ゴム物品のゴム物性が向上する。また、架橋ゴム物品に含まれる過酸化物の残渣が分解、揮散して、低減される。熱プレス成形法は、シール材等の成形に適用することが好ましい。
【0063】
電離性放射線照射による方法における電離性放射線としては、電子線、γ線等が挙げられる。電離性放射線照射により架橋する場合には、あらかじめ含フッ素弾性共重合体または含フッ素弾性共重合体組成物を、目的の形状に成形した後、電離性放射線を照射して架橋させる方法が好ましい。成形方法としては、含フッ素弾性共重合体もしくは含フッ素弾性共重合体組成物を適当な溶媒中に溶解分散した懸濁溶液を塗布し、乾燥し塗膜とする方法、または含フッ素弾性共重合体もしくは含フッ素弾性共重合体組成物を押出成形し、ホースや電線の形状に成形する方法等が挙げられる。電離性放射線の照射量は、適宜設定され、1~300kGyが好ましく、10~200kGyがより好ましい。
【実施例
【0064】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
例1、2は実施例であり、例3~5は比較例である。
【0065】
<測定、評価>
含フッ素弾性共重合体における各単位の割合は、19F-NMR分析、フッ素含有量分析、赤外吸収スペクトル分析から求めた。
【0066】
含フッ素弾性共重合体中のヨウ素原子の含有量は、自動試料燃焼装置(イオンクロマトグラフ用前処理装置)(ダイアインスツルメンツ社製、AQF-100)とイオンクロマトグラフとを組み合わせた装置で定量した。
【0067】
超純水における金属元素の含有量は、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS 7500cs(製品名)、Agilent Technologies社製)を用いて、絶対検量線法により測定した29種類の金属元素(Fe、Na、K、Li、Be、Mg,Al,Ca,Ti,V,Cr,Mn、Co、Ni,Cu,Zn,Ga,Rb,Sr,Zr,Mo,Ag,Cd,In,Sn,Cs,Ba,Pb,Bi)の含有量を合計して求めた。
【0068】
含フッ素弾性共重合体における金属元素の含有量は、白金ルツボに入れて高温電気加熱炉で灰化した後、硫酸白煙処理を行い希硝酸に溶解した液について、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS 7500cs(製品名)、Agilent Technologies社製)を用いて、絶対検量線法により測定した29種類の金属元素(Fe、Na、K、Li、Be、Mg,Al,Ca,Ti,V,Cr,Mn、Co、Ni,Cu,Zn,Ga,Rb,Sr,Zr,Mo,Ag,Cd,In,Sn,Cs,Ba,Pb,Bi)の含有量を合計して求めた。
【0069】
含フッ素弾性共重合体含有成形体における金属元素の含有量は、含フッ素弾性共重合体含有О―リングを100mLの3.4% 塩酸に室温で24時間浸漬させた液について、誘導結合プラズマ質量分析装置(Agilent Technologies社製、ICP-MS 7500cs)を用いて、絶対検量線法によって測定した29種類の金属元素(Fe、Na、K、Li、Be、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Cs、Ba、Pb、Bi)の含有量を合計して求めた。
【0070】
<含フッ素弾性共重合体の製造>
以下の例において、超純水としては、金属元素の含有量が0.1質量ppmのものを使用した。
(例1)
アンカー翼を備えた内容積2100mLのステンレス製耐圧反応器を脱気した後、超純水の804g、COCFCFOCFCOONHの30質量%溶液の80.1g、C3DVEの0.72g、リン酸水素二ナトリウム・12水和物の5質量%水溶液の1.8g、1,4-ジヨードペルフルオロブタンの0.87gを仕込み、気相を窒素置換した。アンカー翼を用いて600rpmの速度で撹拌しながら、内温が80℃になってからTFEの13g、PMVEの65gを容器内に圧入した。反応器内圧は0.90MPa[gauge]であった。過硫酸アンモニウムの1質量%水溶液の20mLを添加し、重合を開始した。重合開始前に圧入する単量体(以下、初期単量体と記す。)の添加比をモル比で表すと、TFE:PMVE:C3DVE=25:75:0.19であった。
【0071】
重合の進行に伴い、反応器内圧が0.89MPa[gauge]に低下した時点でTFEを圧入し、反応器内圧を0.90MPa[gauge]に昇圧させた。これを繰り返し、TFEの8gを圧入するたびにPMVEの7gも圧入した。
TFEの総添加質量が80gとなった時点で、重合開始後に圧入する単量体(以下、「後添加単量体」と記す。)の添加を停止し、反応器内温を10℃に冷却させ、重合反応を停止させ、含フッ素弾性共重合体を含むラテックスを得た。重合時間は185分間であった。また、後添加単量体の総添加質量は、TFEが80g、PMVEが63gであり、これをモル比に換算すると、TFE:PMVE=65:35であった。
【0072】
硝酸(関東化学株式会社製、特級グレード)を超純水に溶解して硝酸の3質量%水溶液を調製した。ラテックスを、TFE/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)製容器内の硝酸水溶液に添加して、含フッ素弾性共重合体を凝集させた。ラテックス中の含フッ素弾性共重合体100質量部に対して硝酸水溶液の量は150質量部であった。
【0073】
凝集した含フッ素弾性共重合体をろ過によって回収し、PFA製容器内の超純水に投入し、200rpmで30分間撹拌して洗浄した。含フッ素弾性共重合体100質量部に対して超純水の量は100質量部であった。前記洗浄を10回繰り返した。
【0074】
洗浄した含フッ素弾性共重合体をろ過によって回収し、50℃、10kPaで減圧乾燥させ、白色の含フッ素弾性共重合体を得た。含フッ素弾性共重合体における各単位のモル比は、TFE単位:PMVE単位:C3DVE単位=65.9:34.0:0.1であり、ヨウ素原子の含有量は、0.15質量%であった。
含フッ素弾性共重合体における金属元素の含有量は1.0ppmであった。
【0075】
(例2)
アンカー翼を備えた内容積3200mLのステンレス製耐圧反応器を脱気した後、超純水の1500g、リン酸水素二ナトリウム・12水和物の59g、水酸化ナトリウムの0.7g、tert-ブタノールの197g、ラウリル硫酸ナトリウムの9g、1,4-ジヨードペルフルオロブタンの9g、C3DVEの9.8gおよび過硫酸アンモニウムの6gを加えた。さらに、100gの超純水に0.4gのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(以下、EDTAと記す。)および0.3gの硫酸第一鉄7水和物を溶解させた水溶液を、反応器に加えた。反応器内の水性媒体のpHは9.5であった。
ついで、25℃で、TFEとプロピレン(以下、Pとも記す。)の混合ガス(TFE/P=88/12(モル比))を、反応器の内圧が2.50MPa[gauge]になるように圧入した。アンカー翼を300rpmで回転させ、水酸化ナトリウムでpHを10.0に調整したヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(以下、ロンガリットと記す。)の2.5質量%水溶液(以下、ロンガリット2.5質量%水溶液と記す。)を反応器に加え、重合反応を開始させた。以降、ロンガリット2.5質量%水溶液を連続的に反応器に加えた。
【0076】
TFE/Pの混合ガスの総添加質量が1000gとなった時点で、ロンガリット2.5質量%水溶液の添加を停止し、反応器の内温を10℃まで冷却して重合反応を停止させ、含フッ素弾性共重合体を含むラテックスを得た。ロンガリット2.5質量%水溶液の総添加質量は68gであった。重合時間は6時間であった。
【0077】
ラテックスを、例1と同様のPFA製容器内の硝酸水溶液に添加して、含フッ素弾性共重合体を凝集させた。ただし、硝酸水溶液の濃度は10質量%水溶液とした。ラテックス中の含フッ素弾性共重合体100質量部に対して硝酸水溶液の量は150質量部であった。
【0078】
凝集した含フッ素弾性共重合体をろ過によって回収し、PFA製容器内の超純水に投入し、200rpmで30分間撹拌して洗浄した。含フッ素弾性共重合体100質量部に対して超純水の量は100質量部であった。前記洗浄を10回繰り返した。
【0079】
洗浄した含フッ素弾性共重合体をろ過によって回収し、100℃で15時間乾燥させ、白色の含フッ素弾性共重合体を得た。含フッ素弾性共重合体における各単量体のモル比は、TFE単位:P単位:C3DVE単位=56.0:43.9:0.1であり、ヨウ素原子の含有量は、0.07質量%であった。
含フッ素弾性共重合体における金属元素の含有量は15.0ppmであった。
【0080】
(例3)
例1において、凝集した含フッ素弾性共重合体をろ過によって回収し、以下の方法で酸水溶液による洗浄と超純水による洗浄を行った。
回収した含フッ素弾性共重合体を、予め調製した酸水溶液(硝酸の0.5質量%水溶液)に投入し、200rpmで30分間撹拌して洗浄した。含フッ素弾性共重合体100質量部に対して酸水溶液の量は150質量部であった。この洗浄を3回繰り返した。
この後、PFA製容器内の超純水に投入し、200rpmで30分間撹拌して洗浄した。含フッ素弾性共重合体100質量部に対して超純水の量は100質量部であった。この洗浄を7回繰り返した。
洗浄した含フッ素弾性共重合体をろ過によって回収し、50℃、10kPaで減圧乾燥させ、白色の含フッ素弾性共重合体を得た。含フッ素弾性共重合体の組成は、例1と同じであった。含フッ素弾性共重合体における金属元素の含有量は0.2ppmであった。
【0081】
(例4)
例1において、ラテックスを凝集させる際に、硝酸水溶液に代えて硫酸アルミニウムカリウムの5質量%水溶液を用いた。ラテックス中の含フッ素弾性共重合体100質量部に対して硫酸アルミニウムカリウム水溶液の量は150質量部であった。
凝集した含フッ素弾性共重合体をろ過によって回収し、例1と同様にして洗浄した。
洗浄した含フッ素弾性共重合体をろ過によって回収し、例1と同様にして乾燥させ、白色の含フッ素弾性共重合体を得た。含フッ素弾性共重合体の組成は、例1と同じであった。含フッ素弾性共重合体における金属元素の含有量は120.0ppmであった。
【0082】
(例5)
本例では単位cを含まない含フッ素弾性共重合体を製造した。
アンカー翼を備えた内容積2100mLのステンレス製耐圧反応器を脱気した後、超純水の804g、COCFCFOCFCOONHの30質量%溶液の80.1g、リン酸水素二ナトリウム・12水和物の5質量%水溶液の1.8g、1,4-ジヨードペルフルオロブタンの0.87gを仕込み、気相を窒素置換した。アンカー翼を用いて600rpmの速度で撹拌しながら、内温が80℃になってからTFEの13g、PMVEの65gを容器内に圧入した。反応器内圧は0.90MPa[gauge]であった。過硫酸アンモニウムの1質量%水溶液の20mLを添加し、重合を開始した。重合開始前に圧入する単量体(以下、初期単量体と記す。)の添加比をモル比で表すと、TFE:PMVE=25:75であった。
【0083】
重合の進行に伴い、反応器内圧が0.89MPa[gauge]に低下した時点でTFEを圧入し、反応器内圧を0.90MPa[gauge]に昇圧させた。これを繰り返し、TFEの8gを圧入するたびにPMVEの7gも圧入した。
TFEの総添加質量が80gとなった時点で、重合開始後に圧入する単量体(以下、「後添加単量体」と記す。)の添加を停止し、反応器内温を10℃に冷却させ、重合反応を停止させ、含フッ素弾性共重合体を含むラテックスを得た。重合時間は180分間であった。また、後添加単量体の総添加質量は、TFEが80g、PMVEが63gであり、これをモル比に換算すると、TFE:PMVE=65:35であった。
【0084】
例1と同様にして、ラテックスを凝集させ、洗浄し、乾燥して、白色の含フッ素弾性共重合体を得た。含フッ素弾性共重合体における各単位のモル比は、TFE単位:PMVE単位=68.0/32.0であり、金属元素の含有量は1.0ppmであった。
【0085】
<含フッ素弾性共重合体組成物の製造>
例1の含フッ素弾性共重合体の100質量部、カーボンブラックの15質量部、トリアリルイソシアヌレートの3質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油社製、パーヘキサ(登録商標)25B)の1質量部、ステアリン酸カルシウムの1質量部の割合で、2本ロールで混練し、例1の含フッ素弾性共重合体組成物を得た。例2~5の含フッ素弾性共重合体についても、同様にして例2~5の含フッ素弾性共重合体組成物を得た。
【0086】
それぞれの含フッ素共重合体組成物について、架橋特性測定器(アルファーテクノロジーズ社製、RPA)を用いて、架橋性の評価を行ったところ、例1、例2の含フッ素共重合体組成物は良好な架橋を確認できた。例3については架橋特性が例1よりも低かった。
【0087】
<架橋ゴム物品の製造>
例1の含フッ素弾性共重合体の100質量部、トリアリルイソシアヌレートの0.5質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油社製、パーヘキサ(登録商標)25B)の0.5質量部の割合で、2本ロールで混練し、例1の含フッ素弾性共重合体組成物を得た。例1の含フッ素弾性共重合体組成物について、150℃で20分間の熱プレス(一次架橋)を行った後、250℃のオーブン内で4時間の二次架橋を行い、例1の含フッ素弾性共重合体組成物の架橋ゴムО―リング(P-26)を得た。
【0088】
上記で得られた架橋ゴムО―リングについて、ICP-MSにより金属元素含有量を調べたところ、金属元素含有量は合計で0.6ppmであった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の含フッ素弾性共重合体は、通常のゴム製品に用いることができる。耐蝕性ゴム塗料、耐ウレア系グリース用シール材等、ゴム塗料、接着ゴム、ホース、チューブ、カレンダーシート(ロール)、スポンジ、ゴムロール、石油掘削用部材、放熱シート、溶液架橋体、ゴムスポンジ、ベアリングシール(耐ウレアグリース等)、ライニング(耐薬品)、自動車用絶縁シート、電子機器向け絶縁シート、時計向けゴムバンド、内視鏡用パッキン(耐アミン)、蛇腹ホース(カレンダーシートからの加工)、給湯器パッキン/弁、防舷材(海洋土木、船舶)、繊維・不織布(防護服等)、基盤シール材、ゴム手袋、一軸偏心ねじポンプのステータ、尿素SCRシステム用部品、防振剤、制振剤、シーリング剤、他材料への添加剤、玩具の用途にも適用できる。
また、特に、金属元素の含有量が少なく、架橋性に優れることから、半導体製造装置用シール材に好適に用いることができる。
なお、2017年06月27日に出願された日本特許出願2017-124890号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。