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特許7140219露光装置及びフラットパネルディスプレイ製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】露光装置及びフラットパネルディスプレイ製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20220913BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220913BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
G03F9/00 Z
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L21/68 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021039694
(22)【出願日】2021-03-11
(62)【分割の表示】P 2017543537の分割
【原出願日】2016-09-29
(65)【公開番号】P2021103316
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2015195269
(32)【優先日】2015-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】白戸 章仁
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 敬
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/054690(WO,A1)
【文献】特開2011-049557(JP,A)
【文献】特開2007-129194(JP,A)
【文献】特表2011-516822(JP,A)
【文献】特開平10-318791(JP,A)
【文献】特開2009-252994(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073538(WO,A1)
【文献】特許第6958354(JP,B2)
【文献】特許第6958356(JP,B2)
【文献】特許第6299993(JP,B2)
【文献】特許第6443784(JP,B2)
【文献】特許第6838598(JP,B2)
【文献】特許第6958355(JP,B2)
【文献】特許第6855009(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/027、21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光学系を介して照明光で第1方向へ移動中の基板を露光する露光装置であって、
前記投影光学系の下方に配置され、前記基板を保持する第1移動体と、
前記投影光学系の光軸と直交する所定平面内で互いに直交する前記第1方向と第2方向とに関して前記第1移動体を移動可能な駆動系と、
前記投影光学系を支持するフレーム部材と、
前記光軸と平行な第3方向に関して、前記第1移動体と前記フレーム部材との間に設けられ、前記第2方向へ移動可能な第2移動体と、
前記第1方向に関して複数の格子領域が互いに離れて配置される格子部材と、前記格子部材に対してそれぞれ計測ビームを照射する複数の第1ヘッドとを有し、前記格子部材が前記第1移動体に設けられるとともに、前記複数の第1ヘッドが前記第2移動体に設けられる計測系であって、前記計測系は、前記第2移動体に第2ヘッドが設けられるとともに、スケール部材が前記フレーム部材に設けられ、前記第2ヘッドを介して前記スケール部材に計測ビームを照射し、前記第2方向に関する前記複数の第1ヘッドの位置情報を計測する計測装置を有し、前記複数の第1ヘッドのうち、前記計測ビームが前記複数の格子領域の少なくとも1つに照射される少なくとも3つの第1ヘッドの計測情報と、前記計測装置の計測情報と、に基づき、少なくとも前記所定平面内の3自由度方向に関する前記第1移動体の位置情報を計測し、
前記スケール部材と前記第2ヘッドとの少なくとも一方に起因して生じる前記計測装置の計測誤差を補償するための補正情報と、前記計測系で計測される位置情報と、に基づいて、前記駆動系を制御する制御系と、を備え、
前記複数の第1ヘッドはそれぞれ、前記第1方向への前記第1移動体の移動中、前記計測ビームが前記複数の格子領域の1つから外れるとともに、前記1つの格子領域に隣接する別の格子領域に乗り換える露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置において、
前記スケール部材は、前記第2方向に関して互いに離れて配置される複数の格子部を有し、
前記計測装置は、前記第2方向に関して前記計測ビームの位置が異なる少なくとも2つの前記第2ヘッドを含む複数の前記第2ヘッドを有し、
前記少なくとも2つの第2ヘッドは、前記第2方向に関して、前記複数の格子部のうち隣接する一対の格子部の間隔よりも広い間隔で配置される露光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の露光装置において、
前記複数の前記第2ヘッドは、前記第1方向と、前記所定平面と直交する第3方向との一方に関して、前記少なくとも2つの第2ヘッドの少なくとも1つと前記計測ビームの位置が異なる少なくとも1つの第2ヘッドを含む露光装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測装置は、前記スケール部材に対して互いに異なる位置に複数の前記計測ビームを照射し、前記第2方向と異なる方向に関する前記複数の第1ヘッドの位置情報を計測する露光装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記計測装置は、前記複数の第1ヘッドの回転と傾斜との少なくとも一方に関する位置情報を計測する露光装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記スケール部材は、反射型の2次元格子あるいは互いに配列方向が異なる2つの1次元格子の少なくとも一方を有する露光装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記補正情報は、前記スケール部材に形成された格子領域部の変形、変位、平坦性、および形成誤差の少なくもと1つに起因して生じる前記計測装置の計測誤差を補償する露光装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記補正情報は、前記第2ヘッドの変位と光学特性との少なくとも一方に起因して生じる前記計測装置の計測誤差を補償する露光装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記第2ヘッドは、前記第2方向を計測方向とし、
前記補正情報は、前記第2方向と異なる方向に関する前記第2ヘッドと前記スケール部材との相対運動に起因して生じる、前記第2方向に関する前記計測装置の計測誤差を補償する露光装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記複数の第1ヘッドはそれぞれ、前記所定平面内で互いに交差する2方向の一方を計測方向とし、
前記計測系で計測に用いられる前記少なくとも3つの第1ヘッドは、前記2方向の一方を計測方向とする少なくとも1つの第1ヘッドと、前記2方向の他方を計測方向とする少なくとも2つの第1ヘッドと、を含む露光装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記基板は、少なくとも一辺の長さ、または対角長が500mm以上であり、フラットパネルディスプレイ用である露光装置。
【請求項12】
フラットパネルディスプレイ製造方法であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
前記露光された基板を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及びフラットパネルディスプレイ製造方法に係り、更に詳しくは、液晶表示素子等のマイクロデバイスを製造するリソグラフィ工程で用いられる露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、マスク(フォトマスク)又はレチクル(以下、「マスク」と総称する)と、ガラスプレート又はウエハ(以下、「基板」と総称する)とを所定の走査方向(スキャン方向)に沿って同期移動させつつ、エネルギビームで照明されるマスクに形成されたパターンを基板上に転写するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置としては、基板ステージ装置が有するバーミラー(長尺の鏡)を用いて露光対象基板の水平面内の位置情報を求める光干渉計システムを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、光干渉計システムを用いて基板の位置情報を求める場合、いわゆる空気揺らぎの影響を無視することができない。また、上記空気揺らぎの影響は、エンコーダシステムを用いることにより低減できるが、近年の基板の大型化により、基板の全移動範囲をカバーすることができるスケールを用意することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2010/0018950号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、投影光学系を介して照明光で第1方向へ移動中の基板を露光する露光装置であって、前記投影光学系の下方に配置され、前記基板を保持する第1移動体と、前記投影光学系の光軸と直交する所定平面内で互いに直交する前記第1方向と第2方向とに関して前記第1移動体を移動可能な駆動系と、前記投影光学系を支持するフレーム部材と、前記光軸と平行な第3方向に関して、前記第1移動体と前記フレーム部材との間に設けられ、前記第2方向へ移動可能な第2移動体と、前記第1方向に関して複数の格子領域が互いに離れて配置される格子部材と、前記格子部材に対してそれぞれ計測ビームを照射する複数の第1ヘッドとを有し、前記格子部材が前記第1移動体に設けられるとともに、前記複数の第1ヘッドが前記第2移動体に設けられる計測系であって、前記計測系は、前記第2移動体に第2ヘッドが設けられるとともに、スケール部材が前記フレーム部材に設けられ、前記第2ヘッドを介して前記スケール部材に計測ビームを照射し、前記第2方向に関する前記複数の第1ヘッドの位置情報を計測する計測装置を有し、前記複数の第1ヘッドのうち、前記計測ビームが前記複数の格子領域の少なくとも1つに照射される少なくとも3つの第1ヘッドの計測情報と、前記計測装置の計測情報と、に基づき、少なくとも前記所定平面内の3自由度方向に関する前記第1移動体の位置情報を計測し、前記スケール部材と前記第2ヘッドとの少なくとも一方に起因して生じる前記計測装置の計測誤差を補償するための補正情報と、前記計測系で計測される位置情報と、に基づいて、前記駆動系を制御する制御系と、を備え、前記複数の第1ヘッドはそれぞれ、前記第1方向への前記第1移動体の移動中、前記計測ビームが前記複数の格子領域の1つから外れるとともに、前記1つの格子領域に隣接する別の格子領域に乗り換える露光装置が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る液晶露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1の液晶露光装置が備える基板ステージ装置の一例を示す図である。
図3図3(A)は、マスクエンコーダシステムの構成を概略的に示す図、図3(B)は、マスクエンコーダシステムの一部(図3(A)のA部)拡大図である。
図4図4(A)は、基板エンコーダシステムの構成を概略的に示す図、図4(B)及び図4(C)は、基板エンコーダシステムの一部(図4(A)のB部)拡大図である。
図5】基板エンコーダシステムが有するヘッドユニットの側面図である。
図6図5のC-C線断面図である。
図7】基板エンコーダシステムの概念図である。
図8】液晶露光装置の制御系を中心的に構成する主制御装置の入出力関係を示すブロック図である。
図9図9(A)は、露光動作時におけるマスクエンコーダシステムの動作を示す図(その1)であり、図9(B)は、露光動作時における基板エンコーダシステムの動作を示す図(その1)である。
図10図10(A)は、露光動作時におけるマスクエンコーダシステムの動作を示す図(その2)であり、図10(B)は、露光動作時における基板エンコーダシステムの動作を示す図(その2)である。
図11図11(A)は、露光動作時におけるマスクエンコーダシステムの動作を示す図(その3)であり、図11(B)は、露光動作時における基板エンコーダシステムの動作を示す図(その3)である。
図12図12(A)は、露光動作時におけるマスクエンコーダシステムの動作を示す図(その4)であり、図12(B)は、露光動作時における基板エンコーダシステムの動作を示す図(その4)である。
図13図13(A)は、露光動作時におけるマスクエンコーダシステムの動作を示す図(その5)であり、図13(B)は、露光動作時における基板エンコーダシステムの動作を示す図(その5)である。
図14図14(A)は、露光動作時におけるマスクエンコーダシステムの動作を示す図(その6)であり、図14(B)は、露光動作時における基板エンコーダシステムの動作を示す図(その6)である。
図15図15(A)は、露光動作時におけるマスクエンコーダシステムの動作を示す図(その7)であり、図15(B)は、露光動作時における基板エンコーダシステムの動作を示す図(その7)である。
図16図16(A)は、露光動作時におけるマスクエンコーダシステムの動作を示す図(その8)であり、図16(B)は、露光動作時における基板エンコーダシステムの動作を示す図(その8)である。
図17】第2の実施形態に係る液晶露光装置が有する基板ホルダ及び基板エンコーダシステムの一対のヘッドユニットを、投影光学系とともに示す平面図である。
図18図18(A)及び図18(B)は、基板ホルダの位置計測が行われる際の基板ホルダのX軸方向の移動範囲を説明するための図である。
図19図19(A)~図19(D)は、第2の実施形態において、基板ホルダがX軸方向に移動する過程における一対のヘッドユニットとスケールとの位置関係の状態遷移のうちの第1の状態~第4の状態を説明するための図である。
図20図20(A)~図20(C)は、第2の実施形態に係る液晶露光装置で行われる、基板ホルダの位置情報を計測する、基板エンコーダシステムのヘッドの切り換え時におけるつなぎ処理について説明するための図である。
図21】第3の実施形態に係る液晶露光装置が有する基板ホルダ及び基板エンコーダシステムの一対のヘッドユニットを、投影光学系とともに示す平面図である。
図22】第4の実施形態に係る液晶露光装置の特徴的構成について説明するための図である。
図23】ピッチング量θy=αにおけるZ位置の変化に対するエンコーダの計測誤差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態について、図1図16(B)を用いて説明する。
【0009】
図1には、第1の実施形態に係る液晶露光装置10の構成が概略的に示されている。液晶露光装置10は、例えば液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる矩形(角型)のガラス基板P(以下、単に基板Pと称する)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。
【0010】
液晶露光装置10は、照明系12、回路パターンなどが形成されたマスクMを保持するマスクステージ装置14、投影光学系16、装置本体18、表面(図1で+Z側を向いた面)にレジスト(感応剤)が塗布された基板Pを保持する基板ステージ装置20、及びこれらの制御系等を有している。以下、走査露光時に照明光ILに対してマスクMと基板Pとがそれぞれ相対走査される方向を、投影光学系16の光軸(本実施形態では照明系12の光軸と一致)と直交する所定平面(XY平面、図1では水平面)内のX軸方向とし、水平面内でX軸に直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。また、X軸、Y軸、及びZ軸方向に関する位置をそれぞれX位置、Y位置、及びZ位置として説明を行う。
【0011】
照明系12は、例えば米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。照明系12は、図示しない光源(例えば、水銀ランプ)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、およびh線(波長405nm)の少なくとも1つを含む光(本実施形態では、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。照明系12は、Y軸方向に関して位置が異なる複数の照明領域にそれぞれ照明光ILを照射する複数の光学系を有し、この複数の光学系は後述の投影光学系16の複数の光学系と同数である。
【0012】
マスクステージ装置14は、マスクMを、例えば真空吸着により保持するマスクホルダ(スライダ、可動部材とも呼ぶ)40、マスクホルダ40を走査方向(X軸方向)に所定の長ストロークで駆動するとともに、Y軸方向、及びθz方向に適宜微少駆動するためのマスク駆動系91(図1では不図示。図8参照)、及びマスクホルダ40の少なくともXY平面内の位置情報(X軸及びY軸方向とθz方向を含む3自由度方向の位置情報で、θz方向は回転(ヨーイング)情報)。以下、同じ)を計測するためのマスク位置計測系を含む。マスクホルダ40は、例えば米国特許出願公開第2008/0030702号明細書に開示されるような、平面視矩形の開口部が形成された枠状部材から成る。マスクホルダ40は、装置本体18の一部である上架台部18aに固定された一対のマスクガイド42上に、例えばエアベアリング(不図示)を介して載置されている。マスク駆動系91は、例えばリニアモータ(不図示)を含む。以下では、マスクホルダ40を移動するものとして説明を行うが、マスクMの保持部を有するテーブルあるいはステージを移動するものとしても良い。すなわち、マスクを保持するマスクホルダを、マスクテーブル又はマスクステージとは別に必ずしも設ける必要はなく、マスクテーブル又はマスクステージ上にマスクを真空吸着等により保持しても良く、その場合には、マスクを保持するマスクテーブル又はマスクステージがXY平面内の3自由度方向に移動されることとなる。
【0013】
マスク位置計測系は、一対のエンコーダヘッドユニット44(以下、単にヘッドユニット44と称する)と、ヘッドユニット44を介して計測ビームが照射される複数のエンコーダスケール46(図1では紙面奥行き方向に重なっている。図3(A)参照)との一方がマスクホルダ40に設けられ、エンコーダヘッド44と複数のエンコーダスケール46との他方がマスクホルダ40と対向するように設けられるマスクエンコーダシステム48を備える。本実施形態では、エンコーダヘッド44がエンコーダベース43を介して上架台部18aに設けられ、複数のエンコーダスケール46がそれぞれ一対のエンコーダヘッド44と対向するようにマスクホルダ40の下面側に設けられる。なお、上架台部18aではなく、例えば投影光学系16の上端側にエンコーダヘッド44を設けても良い。マスクエンコーダシステム48の構成については、後に詳しく説明する。
【0014】
投影光学系(投影系)16は、上架台部18aに支持され、マスクステージ装置14の下方に配置されている。投影光学系16は、例えば米国特許第6,552,775号明細書などに開示される投影光学系と同様な構成の、いわゆるマルチレンズ投影光学系であり、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成する複数(本実施形態では、例えば11本。図3(A)参照)の光学系(投影光学系)を備えている。
【0015】
液晶露光装置10では、照明系12からの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光により、投影光学系16を介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、基板P上の照明領域に共役な照明光の照射領域(露光領域)に形成される。そして、照明領域(照明光IL)に対してマスクMが走査方向に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pが走査方向に相対移動することで、基板P上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMに形成されたパターンが転写される。
【0016】
装置本体(本体部、フレーム構造などとも呼ぶ)18は、上記マスクステージ装置14、投影光学系16、及び基板ステージ装置20を支持しており、複数の防振装置19を介してクリーンルームの床11上に設置されている。装置本体18は、例えば米国特許出願公開第2008/0030702号明細書に開示される装置本体と同様に構成されている。本実施形態では、上記投影光学系16を支持する上架台部18a(光学定盤などとも称される)、基板ステージ装置20が配置される一対の下架台部18b(図1では、紙面奥行き方向に重なっているため一方は不図示。図2参照。)、及び一対の中架台部18cを有している。
【0017】
基板ステージ装置20は、走査露光において、投影光学系16を介して投影される、マスクパターンの複数の部分像(露光光IL)に対して基板Pを高精度に位置決めするためのものであり、基板Pを6自由度方向(X軸、Y軸及びZ軸方向とθx、θy及びθz方向)に駆動する。基板ステージ装置20の構成は、特に限定されないが、例えば米国特許出願公開第2008/129762号明細書、あるいは米国特許出願公開第2012/0057140号明細書などに開示されるような、ガントリタイプの2次元粗動ステージと、該2次元粗動ステージに対して微少駆動される微動ステージとを含む、いわゆる粗微動構成のステージ装置を用いることができる。この場合、粗動ステージによって基板Pが水平面内の3自由度方向に移動可能、かつ微動ステージによって基板Pが6自由度方向に微動可能となっている。
【0018】
図2には、本実施形態の液晶露光装置10で用いられる、いわゆる粗微動構成の基板ステージ装置20の一例が示されている。基板ステージ装置20は、一対のベースフレーム22、Y粗動ステージ24、X粗動ステージ26、重量キャンセル装置28、Yステップガイド30、微動ステージ32を備えている。
【0019】
ベースフレーム22は、Y軸方向に延びる部材から成り、装置本体18と振動的に絶縁された状態で、床11上に設置されている。また、装置本体18の一対の下架台部18bの間には、補助ベースフレーム23が配置されている。Y粗動ステージ24は、一対のベースフレーム22間に架設された一対(図2では一方は不図示)のXビーム25を有している。前述した補助ベースフレーム23は、Xビーム25の長手方向中間部を下方から支持している。Y粗動ステージ24は、基板Pを6自由度方向に駆動するための基板駆動系93(図2では不図示。図8参照)の一部である複数のYリニアモータを介して一対のベースフレーム22上でY軸方向に所定の長ストロークで駆動される。X粗動ステージ26は、一対のXビーム25間に架設された状態でY粗動ステージ24上に載置されている。X粗動ステージ26は、基板駆動系93の一部である複数のXリニアモータを介してY粗動ステージ24上でX軸方向に所定の長ストロークで駆動される。また、X粗動ステージ26は、Y粗動ステージ24に対するY軸方向への相対移動が機械的に制限されており、Y粗動ステージ24と一体的にY軸方向に移動する。
【0020】
重量キャンセル装置28は、一対のXビーム25間に挿入され、且つX粗動ステージ26に機械的に接続されている。これにより、重量キャンセル装置28は、X粗動ステージ26と一体的にX軸及び/又はY軸方向に所定の長ストロークで移動する。Yステップガイド30は、X軸方向に延びる部材から成り、Y粗動ステージ24に機械的に接続されている。これにより、Yステップガイド30は、Y粗動ステージ24と一体的にY軸方向に所定の長ストロークで移動する。上記重量キャンセル装置28は、複数のエアベアリングを介してYステップガイド30上に載置されている。重量キャンセル装置28は、X粗動ステージ26がX軸方向にのみ移動する場合、静止状態のYステップガイド30上をX軸方向に移動し、X粗動ステージ26がY軸方向に移動する場合(X軸方向への移動を伴う場合も含む)、Yステップガイド30と一体的に(Yステップガイド30から脱落しないように)Y軸方向に移動する。
【0021】
微動ステージ32は、平面視矩形の板状(あるいは箱形)の部材から成り、中央部が球面軸受け装置29を介してXY平面に対して揺動自在な状態で重量キャンセル装置28に下方から支持されている。微動ステージ32の上面には、基板ホルダ34が固定され、該基板ホルダ34上に基板Pが載置される。なお、基板を保持する基板ホルダを、基板の保持部が設けられたテーブル又はステージ、ここでは微動ステージ32とは別に必ずしも設ける必要はなく、テーブル又はステージ上に基板を真空吸着等により保持しても良い。微動ステージ32は、X粗動ステージ26が有する固定子と微動ステージ32が有する可動子とを含み、上記基板駆動系93(図2では不図示。図8参照)の一部を構成する複数のリニアモータ33(例えば、ボイスコイルモータ)により、X粗動ステージ26に対して6自由度方向に微少駆動される。また、微動ステージ32は、上記複数のリニアモータ33を介してX粗動ステージ26から付与される推力により、該X粗動ステージ26とともにX軸及び/又はY軸方向に所定の長ストロークで移動する。以上説明した基板ステージ装置20の構成(ただし、計測系を除く)は、例えば米国特許出願公開第2012/0057140号明細書に開示されている。
【0022】
また、基板ステージ装置20は、微動ステージ32(すなわち基板ホルダ34、及び基板P)の6自由度方向の位置情報を計測するための基板位置計測系を有している。基板位置計測系は、図8に示されるように、基板PのZ軸、θx、θy方向(以下、Z・チルト方向と称する)の位置情報を求めるためのZ・チルト位置計測系98、及び基板PのXY平面内の3自由度方向の位置情報を求めるための基板エンコーダシステム50を含む。Z・チルト位置計測系98は、図2に示されるように、微動ステージ32の下面に取り付けられたプローブ36aと、重量キャンセル装置28に取り付けられたターゲット36bとを含むZセンサ36を複数備えている。複数のZセンサ36は、例えば微動ステージ32の中心を通るZ軸に平行な軸線回りに所定間隔で、例えば4つ(少なくとも3つ)配置されている。主制御装置90(図8参照)は、上記複数のZセンサ36の出力に基づいて、微動ステージ32のZ位置情報、及びθx、及びθy方向の回転量情報を求める。上記Zセンサ36を含み、Z・チルト位置計測系98の構成については、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に詳しく開示されている。基板エンコーダシステム50の構成は、後述する。
【0023】
次に、図3(A)及び図3(B)を用いてマスクエンコーダシステム48の構成について説明する。図3(A)に模式的に示されるように、マスクホルダ40におけるマスクM(より詳細には、マスクMを収容するための不図示の開口部)の+Y側、及び-Y側の領域には、それぞれ複数のエンコーダスケール46(格子部材、格子部、グリッド部材などとも呼ぶが、以下、単にスケール46と称する)が配置されている。なお、理解を容易にするために、図3(A)では、複数のスケール46が実線で図示され、マスクホルダ40の上面に配置されているように図示されているが、複数のスケール46は、実際には、図1に示されるように、複数のスケール46それぞれの下面のZ位置と、マスクMの下面(パターン面)のZ位置とが一致するように、マスクホルダ40の下面側に配置されている。複数のスケール46はそれぞれ、反射型の2次元格子または配列方向(周期方向)が異なる(例えば直交する)2つの反射型の1次元格子が形成される格子領域(格子部)を有し、マスクホルダ40の下面側でY軸方向に関してマスクMの載置領域(前述の開口部を含む)の両側にそれぞれ、X軸方向に関して格子領域が互いに離れて配置されるように複数のスケール46が設けられる。なお、X軸及びY軸方向ともスケール46の全域に渡って格子を形成しても良いが、スケール46の端部で精度良く格子を形成するのが困難であるため、本実施形態ではスケール46において格子領域の周囲が余白部となるように格子を形成する。このため、X軸方向に関して隣接する一対のスケール46の間隔よりも格子領域の間隔の方が広くなっており、計測ビームが格子領域外に照射されている間は位置計測が不能な非計測期間(非計測区間とも呼ぶが、以下では非計測期間と総称する)となる。
【0024】
本実施形態のマスクホルダ40において、マスクMの載置領域の+Y側、及び-Y側の領域には、それぞれスケール46がX軸方向に所定間隔で、例えば3つ配置されている。すなわち、マスクホルダ40は、合計で、例えば6つのスケール46を有している。複数のスケール46それぞれは、マスクMの+Y側と-Y側とで紙面上下対称に配置されている点を除き、実質的に同じものである。スケール46は、例えば石英ガラスにより形成されたX軸方向に延びる平面視矩形の板状(帯状)の部材から成る。マスクホルダ40は、例えばセラミックスにより形成され、複数のスケール46は、マスクホルダ40に固定されている。本実施形態では、X軸方向に関して互いに離れて配置される複数のスケール46の代わりに1つ(単一)のスケールをマスクホルダ用スケールとして用いても良い。この場合、格子領域も1つで良いが、複数の格子領域をX軸方向に離して1つのスケールに形成しても良い。
【0025】
図3(B)に示されるように、スケール46の下面(本実施形態では、-Z側を向いた面)における、幅方向一側(図3(B)では、-Y側)の領域には、Xスケール47xが形成されている。また、スケール46の下面における、幅方向他側(図3(B)では、+Y側)の領域には、Yスケール47yが形成されている。Xスケール47xは、X軸方向に所定ピッチで形成された(X軸方向を周期方向とする)Y軸方向に延びる複数の格子線を有する反射型の回折格子(Xグレーティング)によって構成されている。同様に、Yスケール47yは、Y軸方向に所定ピッチで形成された(Y軸方向を周期方向とする)X軸方向に延びる複数の格子線を有する反射型の回折格子(Yグレーティング)によって構成されている。本実施形態のXスケール47x、及びYスケール47yにおいて、複数の格子線は、例えば10nm以下の間隔で形成されている。なお、図3(A)及び図3(B)では、図示の便宜上、格子間の間隔(ピッチ)は、実際よりも格段に広く図示されている。その他の図も同様である。
【0026】
また、図1に示されるように、上架台部18aの上面には、一対のエンコーダベース43が固定されている。一対のエンコーダベース43は、一方が+X側のマスクガイド42の-X側、他方が-X側のマスクガイド42の+X側(すなわち一対のマスクガイド42の間の領域)に配置されている。また、上記投影光学系16の一部が、一対のエンコーダベース43の間に配置されている。エンコーダベース43は、図3(A)に示されるように、X軸方向に延びる部材から成る。一対のエンコーダベース43それぞれの長手方向中央部には、エンコーダヘッドユニット44(以下、単にヘッドユニット44と称する)が固定されている。すなわち、ヘッドユニット44は、エンコーダベース43を介して装置本体18(図1参照)に固定されている。一対のヘッドユニット44は、マスクMの+Y側と-Y側とで紙面上下対称に配置されている点を除き、実質的に同じものであるので、以下、一方(-Y側)についてのみ説明する。
【0027】
図3(B)に示されるように、ヘッドユニット44は、X軸方向に配置される複数のスケール46の少なくとも1つに照射される計測ビームの位置がX軸及びY軸方向の少なくとも一方に関して異なる複数のヘッドを有し、平面視矩形の板状部材から成るユニットベース45を有している。ユニットベース45には、X軸方向に関して隣接する一対のXスケール47x(格子領域)の間隔よりも広い間隔で計測ビームを照射し、互いに離間して配置された一対のXヘッド49x、及びX軸方向に関して隣接する一対のYスケール47y(格子領域)の間隔よりも広い間隔で計測ビームを照射し、互いに離間して配置された一対のYヘッド49yが固定されている。すなわち、マスクエンコーダシステム48は、Xヘッド49xを、例えばY軸方向に関してマスクホルダ40のマスクMの載置領域の両側にそれぞれ一対ずつ、計4つ有するとともに、Yヘッド49yを、例えばY軸方向に関してマスクMの載置領域の両側にそれぞれ一対ずつ、計4つ有している。なお、一対のXヘッド49x又は一対のYヘッド49yはそれぞれ、一対のXスケール49x又は一対のYスケール49yの間隔よりも広く離間して配置されている必要はなく、スケール間隔と同程度以下の間隔で配置されていても、あるいは互いに接触して配置されていても良く、要はX軸方向に関して一対の計測ビームがスケール間隔よりも広い間隔で配置されていれば良い。また、図3(B)では、一方のXヘッド49xと一方のYヘッド49yとが1つの筐体内に収容され、他方のXヘッド49xと他方のYヘッド49yとが別の1つの筐体内に収容されているが、上記一対のXヘッド49x、及び一対のYヘッド49yは、それぞれ独立して配置されていても良い。また、図3(B)では、理解を容易にするため、一対のXヘッド49xと一対のYヘッド49yとがスケール46の上方(+Z側)に配置されたように図示されているが、実際には、一対のXヘッド49xは、Xスケール47yの下方に、一対のYヘッド49yは、Yスケール47yの下方にそれぞれ配置されている(図1参照)。
【0028】
一対のXヘッド49x、及び一対のYヘッド49yは、例えば振動などに起因して一対のXヘッド49x(計測ビーム)の少なくとも一方の位置(特に計測方向(X軸方向)の位置)あるいはヘッド(計測ビーム)間隔、及び一対のYヘッド49y(計測ビーム)の少なくとも一方の位置(特に計測方向(Y軸方向)の位置)あるいはヘッド(計測ビーム)間隔が変化しないように、ユニットベース45に対して固定されている。また、ユニットベース45自体も、一対のXヘッド49xの位置や間隔、及び一対のYヘッド49yの位置や間隔が、例えば温度変化などに起因して変化しないように、熱膨張率がスケール46より低い(あるいはスケール46と同等の)材料で形成されている。
【0029】
Xヘッド49x、及びYヘッド49yは、例えば米国特許出願公開第2008/0094592号明細書に開示されるような、いわゆる回折干渉方式のエンコーダヘッドであり、対応するスケール(Xスケール47x、Yスケール47y)に計測ビームを照射し、そのスケールからのビームを受光することにより、マスクホルダ40(すなわち、マスクM。図3(A)参照)の変位量情報を主制御装置90(図8参照)に供給する。すなわち、マスクエンコーダシステム48では、例えば4つのXヘッド49xと、該Xヘッド49xに対向するXスケール47x(マスクホルダ40のX位置によって異なる)とによって、マスクMのX軸方向の位置情報を求めるための、例えば4つのXリニアエンコーダ92x(図3(B)では不図示。図8参照)が構成され、例えば4つのYヘッド49yと、該Yヘッド49yに対向するYスケール47y(マスクホルダ40のX位置によって異なる)とによって、マスクMのY軸方向の位置情報を求めるための、例えば4つのYリニアエンコーダ92y(図3(B)では不図示。図8参照)が構成される。本実施形態では、XY平面内の異なる2方向(本実施形態ではX軸及びY軸方向と一致)の一方を計測方向とするヘッドを用いているが、計測方向がX軸及びY軸方向の一方と異なるヘッドを用いても良い。例えば、XY平面内でX軸又はY軸方向に対して45度回転した方向を計測方向とするヘッドを用いても良い。また、XY平面内の異なる2方向の一方を計測方向とする1次元ヘッド(Xヘッド又はYヘッド)の代わりに、例えばX軸及びY軸方向の一方とZ軸方向との2方向を計測方向とする2次元ヘッド(XZヘッド又はYZヘッド)を用いても良い。この場合、上記3自由度方向(X軸及びY軸方向とθz方向)と異なる3自由度方向(Z軸方向とθx及びθy方向を含み、θx方向はローリング情報、θy方向はピッチング情報)に関するマスクホルダ40の位置情報も計測可能となる。
【0030】
主制御装置90は、図8に示されるように、例えば4つのXリニアエンコーダ92x、及び、例えば4つのYリニアエンコーダ92yの出力に基づいてマスクホルダ40(図3(A)参照)のX軸方向、及びY軸方向の位置情報を、例えば10nm以下の分解能で求める。また、主制御装置90は、例えば4つのXリニアエンコーダ92x(あるいは、例えば4つのYリニアエンコーダ92y)のうちの少なくとも2つの出力に基づいてマスクホルダ40のθz位置情報(回転量情報)を求める。主制御装置90は、上記マスクエンコーダシステム48の計測値から求められたマスクホルダ40のXY平面内の3自由度方向の位置情報に基づき、マスク駆動系91を用いてマスクホルダ40のXY平面内の位置を制御する。
【0031】
ここで、図3(A)に示されるように、マスクホルダ40には、上述したように、マスクMの+Y側、及び-Y側の領域それぞれにスケール46がX軸方向に所定間隔で、例えば3つ配置されている。また、少なくとも基板Pの走査露光において、上記X軸方向に所定間隔で配置された、例えば3つのスケール46のうち、最も+X側のスケール46にヘッドユニット44(一対のXヘッド49x、一対のYヘッド49y(それぞれ図3(B)参照)の全て)が対向する位置と、最も-X側のスケール46にヘッドユニット44が対向する位置との間で、マスクホルダ40がX軸方向に駆動される。なお、マスクMの交換動作とプリアライメント動作との少なくとも一方において、X軸方向に関して照明光ILが照射される照明領域から離れるようにマスクホルダ40を移動し、ヘッドユニット44の少なくとも1つのヘッドがスケール46から外れる場合には、X軸方向に関してヘッドユニット44から離れて配置される少なくとも1つのヘッドを設け、交換動作やプリアライメント動作においてもマスクエンコーダシステム48によるマスクホルダ40の位置計測を継続可能としても良い。
【0032】
そして、本実施形態のマスクステージ装置14では、図3(B)に示されるように、1つのヘッドユニット44が有する一対のXヘッド49x、及び一対のYヘッド49yそれぞれの間隔が、複数のスケール46のうち隣接する一対のスケール46の間隔よりも広く設定されている。これにより、マスクエンコーダシステム48では、一対のXヘッド49xのうち常に少なくとも一方がXスケール47xに対向するとともに、一対のYヘッド49yのうちの少なくとも一方が常にYスケール47yに対向する。従って、マスクエンコーダシステム48は、マスクホルダ40(図3(A)参照)の位置情報を途切れさせることなく主制御装置90(図8参照)に供給することができる。
【0033】
具体的に説明すると、例えばマスクホルダ40(図3(A)参照)が+X側に移動する場合、マスクエンコーダシステム48は、隣接する一対のXスケール47xのうちの+X側のXスケール47xに対して一対のヘッド49xの両方が対向する第1の状態(図3(B)に示される状態)、-X側のXヘッド49xが上記隣接する一対のXスケール47xの間の領域に対向し(いずれのXスケール47xにも対向せず)、+X側のXヘッド49xが上記+X側のXスケール47xに対向する第2の状態、-X側のXヘッド49xが-X側のXスケール47xに対向し、且つ+X側のXヘッド49xが+X側のXスケール47xに対向する第3の状態、-X側のXヘッド49xが-X側のスケール47xに対向し、+X側のXヘッド49xが一対のXスケール47xの間の領域に対向する(いずれのXスケール47xにも対向しない)第4の状態、及び-X側のXスケール47xに対して一対のヘッド49xの両方が対向する第5の状態、を上記順序で移行する。従って、常に少なくとも一方のXヘッド49xがXスケール47xに対向する。
【0034】
主制御装置90(図8参照)は、上記第1、第3、及び第5の状態では、一対のXヘッド49xの出力の平均値に基づいてマスクホルダ40のX位置情報を求める。また、主制御装置90は、上記第2の状態では、+X側のXヘッド49xの出力のみに基づいてマスクホルダ40のX位置情報を求め、上記第4の状態では、-X側のXヘッド49xの出力のみに基づいてマスクホルダ40のX位置情報を求める。したがって、マスクエンコーダシステム48の計測値が途切れることがない。なお、第1、第3、第5の状態でも一対のXヘッド49xの一方の出力のみを用いてX位置情報を求めても良い。ただし、第2、第4の状態では、一対のヘッドユニット44の両方において一対のXヘッド49xの一方および一対のYヘッド49yの一方がスケール46から外れてマスクホルダ40のθz方向の位置情報(回転情報)を取得できなくなる。そこで、マスクMの載置領域に対して+Y側に配置される3つのスケール46と-Y側に配置される3つのスケール46とで、隣接する一対のスケール46の間隔(格子が形成されていない非格子領域)がX軸方向に関して重ならないように互いにずらして配置し、+Y側に配置される3つのスケール46と-Y側に配置される3つのスケール46との一方で、Xヘッド49xおよびYヘッド49yがスケール46から外れても、他方でXヘッド49xおよびYヘッド49yがスケール46から外れないようにすることが好ましい。または、X軸方向に関して一対のヘッドユニット44を、隣接する一対のスケール46の間隔(非格子領域の幅)よりも広い距離だけずらして配置しても良い。これにより、+Y側に配置される一対のXヘッド49xおよび-Y側に配置される一対のXヘッド49xの計4つのヘッドにおいて、X軸方向に関して計測ビームがスケール46の格子領域から外れる(計測不能な)非計測期間が重ならず、少なくとも走査露光においてマスクホルダ40のθz方向の位置情報を常時計測可能となる。なお、一対のヘッドユニット44の少なくとも一方において、一対のXヘッド49xおよび一対のYヘッド49yの少なくとも一方に対してX軸方向に関して離れて配置される少なくとも1つのヘッドを配置し、第2、第4の状態でもXヘッド49xおよびYヘッド49yの少なくとも一方で2つのヘッドがスケール46と対向するようにしても良い。
【0035】
次に、基板エンコーダシステム50の構成について説明する。基板エンコーダシステム50は、図1に示されるように、基板ステージ装置20に配置された複数のエンコーダスケール52(図1では紙面奥行き方向に重なっている。図4(A)参照)、上架台部18aの下面に固定されたエンコーダベース54、エンコーダベース54の下面に固定された複数のエンコーダスケール56、及び一対のエンコーダヘッドユニット60を備えている。
【0036】
図4(A)に模式的に示されるように、本実施形態の基板ステージ装置20において、基板P(基板載置領域)の+Y側、及び-Y側の領域には、それぞれエンコーダスケール52(以下、単にスケール52と称する)がX軸方向に所定間隔で、例えば5つ配置されている。すなわち、基板ステージ装置20は、合計で、例えば10のスケール52を有している。複数のスケール52それぞれは、基板Pの+Y側と-Y側とで紙面上下対称に配置されている点を除き、実質的に同じものである。スケール52は、上記マスクエンコーダシステム48のスケール46(それぞれ図3(A)参照)と同様に、例えば石英ガラスにより形成されたX軸方向に延びる平面視矩形の板状(帯状)の部材から成る。また、複数のスケール52はそれぞれ、反射型の2次元格子または配列方向(周期方向)が異なる(例えば直交する)2つの反射型の1次元格子が形成される格子領域(格子部)を有し、Y軸方向に関して基板載置領域の両側にそれぞれ、X軸方向に関して格子領域が互いに離れて配置されるように5つのスケール52が設けられる。
【0037】
なお、図1及び図4(A)では、理解を容易にするために、複数のスケール52が基板ホルダ34の上面に固定されているように図示されているが、複数のスケール52は、実際には、図2に示されるように、基板ホルダ34とは離間した状態で、微動ステージ32にスケールベース51を介して固定されている(なお、図2には、複数のスケール52が基板Pの+X側及び-X側に配置される場合が示されている)。ただし、場合によっては、実際に基板ホルダ34上に複数のスケール52が固定されても良い。以下の説明では、複数のスケール52が基板ホルダ34上に配置されているのものとして説明を行う。なお、複数のスケール52は、基板ホルダ34を有し、少なくともZ軸方向とθxおよびθy方向に関して微動可能な基板テーブルの上面、あるいは基板テーブルを微動可能に支持する基板ステージの上面などに配置しても良い。
【0038】
図4(B)に示されるように、スケール52の上面における、幅方向一側(図4(B)では、-Y側)の領域には、Xスケール53xが形成されている。また、スケール52の上面における、幅方向他側(図4(B)では、+Y側)の領域には、Yスケール53yが形成されている。Xスケール53x、及びYスケール53yの構成は、上記マスクエンコーダシステム48のスケール46(それぞれ図3(A)参照)に形成されたXスケール47x、及びYスケール47y(それぞれ図3(B)参照)と同じであるので説明を省略する。
【0039】
エンコーダベース54は、図5及び図6から分かるように、上架台部18aの下面に固定されたY軸方向に延びる板状の部材から成る第1部分54aと、第1部分54aの下面に固定されたY軸方向に延びるXZ断面U字状の部材から成る第2部分54bとを備え、全体的にY軸方向に延びる筒状に形成されている。図4(A)に示されるように、エンコーダベース54のX位置は、投影光学系16の中心のX位置と概ね一致しているが、エンコーダベース54と投影光学系16とが接触しないように配置されている。なお、エンコーダベース54は、投影光学系16と+Y側と-Y側とで分離して配置されていても良い。エンコーダベース54の下面には、図6に示されるように、一対Yリニアガイド63aが固定されている。一対のYリニアガイド63aは、それぞれY軸方向に延びる部材から成り、X軸方向に所定間隔で互いに平行に配置されている。
【0040】
エンコーダベース54の下面には、複数のエンコーダスケール56(以下、単にスケール56と称する)が固定されている。本実施形態において、スケール56は、図1に示されるように、投影光学系16よりも+Y側の領域に、例えば2つ、投影光学系16よりも-Y側の領域に、例えば2つ、それぞれY軸方向に離間して配置されている。すなわち、エンコーダベース54には、合計で、例えば4つのスケール56が固定されている。複数のスケール56それぞれは、実質的に同じものである。スケール56は、Y軸方向に延びる平面視矩形の板状(帯状)の部材から成り、基板ステージ装置20に配置されたスケール52と同様に、例えば石英ガラスにより形成されている。複数のスケール56はそれぞれ、反射型の2次元格子または配列方向(周期方向)が異なる(例えば直交する)2つの反射型の1次元格子が形成される格子領域(格子部)を有しており、本実施形態ではスケール46、52と同様、X軸方向を配列方向(周期方向)とする1次元格子が形成されるXスケールと、Y軸方向を配列方向(周期方向)とする1次元格子が形成されるYスケールを有し、Y軸方向に関して投影光学系16の両側にそれぞれ、Y軸方向に関して格子領域が互いに離れて2つのスケール56が設けられる。なお、理解を容易にするために、図4(A)では、複数のスケール56が実線で図示され、エンコーダベース54の上面に配置されているように図示されているが、複数のスケール56は、実際には、図1に示されるようにエンコーダベース54の下面側に配置されている。なお、本実施形態では投影光学系16の+Y側と-Y側にそれぞれ2つのスケール56を設けるものとしたが、2つではなく1つあるいは3つ以上のスケール56を設けても良い。また、本実施形態では格子面を下方に向けて(格子領域がXY平面と平行になるように)スケール56を設けるものとしたが、例えば格子領域がYZ平面と平行になるようにスケール56を設けても良い。
【0041】
図4(C)に示されるように、スケール56の下面における、幅方向一側(図4(C)では、+X側)の領域には、Xスケール57xが形成されている。また、スケール56の下面における、幅方向他側(図4(C)では、-X側)の領域には、Yスケール57yが形成されている。Xスケール57x、及びYスケール57yの構成は、上記マスクエンコーダシステム48のスケール46(それぞれ図3(A)参照)に形成されたXスケール47x、及びYスケール47y(それぞれ図3(B)参照)と同じであるので説明を省略する。
【0042】
図1に戻り、一対のエンコーダヘッドユニット60(以下、単にヘッドユニット60と称する)は、エンコーダベース54の下方にY軸方向に離間して配置されている。一対のヘッドユニット60それぞれは、図1で紙面左右対称に配置されている点を除き実質的に同じものであるので、以下一方(-Y側)について説明する。ヘッドユニット60は、図5に示されるように、Yスライドテーブル62、一対のXヘッド64x、一対のYヘッド64y(図5では一対のXヘッド64xの紙面奥側に隠れているため不図示。図4(C)参照)、一対のXヘッド66x(図5では一方のXヘッド66xは不図示。図4(B)参照)、一対のYヘッド66y(図5では一方のYヘッド66yは不図示。図4(B)参照)、及びYスライドテーブル62をY軸方向に駆動するためのベルト駆動装置68を備えている。なお、本実施形態の一対のヘッドユニット60は、90度回転している点を除き、マスクエンコーダシステム48の一対のヘッドユニット44と同一構成となっている。
【0043】
Yスライドテーブル62は、平面視矩形の板状の部材から成り、エンコーダベース54の下方に、該エンコーダベース54に対して所定のクリアランスを介して配置されている。また、Yスライドテーブル62のZ位置は、基板ステージ装置20が有する基板ホルダ34(それぞれ図1参照)のZ・チルト位置に関わらず、該基板ホルダ34よりも+Z側となるように設定されている。
【0044】
Yスライドテーブル62の上面には、図6に示されるように、上記Yリニアガイド63aに対して不図示の転動体(例えば循環式の複数のボール)を介してY軸方向にスライド自在に係合するYスライド部材63bが複数(1本のYリニアガイド63aに対して、例えば2つ(図5参照))固定されている。Yリニアガイド63aと、該Yリニアガイド63aに対応するYスライド部材63bとは、例えば米国特許第6,761,482号明細書に開示されるように機械的なYリニアガイド装置63を構成しており、Yスライドテーブル62は、一対のYリニアガイド装置63を介してエンコーダベース54に対してY軸方向に直進案内される。
【0045】
ベルト駆動装置68は、図5に示されるように、回転駆動装置68a、プーリ68b、及びベルト68cを備えている。なお、-Y側のYスライドテーブル62駆動用と+Y側のYスライドテーブル62(図5では不図示。図4(A)参照)駆動用とで、独立してベルト駆動装置68が配置されても良いし、ひとつのベルト駆動装置68で一対のYスライドテーブル62を一体的に駆動しても良い。
【0046】
回転駆動装置68aは、エンコーダベース54に固定され、不図示の回転モータを備えている。該回転モータの回転数、回転方向は、主制御装置90(図8参照)により制御される。プーリ68bは、回転駆動装置68aによりX軸に平行な軸線回りに回転駆動される。また、不図示であるが、ベルト駆動装置68は、上記プーリ68bに対してY軸方向に離間して配置され、X軸に平行な軸線回りに回転自在の状態でエンコーダベース54に取り付けられた別のプーリを有している。ベルト68cは、一端、及び他端がYスライドテーブル62に接続されるとともに、長手方向の中間部の2箇所が上記プーリ68b、及び上記別のプーリ(不図示)に所定の張力が付与された状態で巻き掛けられている。ベルトの68cの一部は、エンコーダベース54内に挿通されており、例えばベルト68cからの粉塵がスケール52、56に付着することなどが抑制されている。Yスライドテーブル62は、プーリ68bが回転駆動されることにより、ベルト68cに牽引されてY軸方向に所定のストロークで往復移動する。
【0047】
主制御装置90(図8参照)は、一方(+Y側)のヘッドユニット60を投影光学系16よりも+Y側に配置された、例えば2つのスケール56の下方で、他方(-Y側)のヘッドユニット60を投影光学系16よりも-Y側に配置された、例えば2つのスケール56の下方で、Y軸方向に所定のストロークで適宜同期駆動する。ここで、基板ステージ装置20のY軸方向への移動に同期して一対のヘッドユニット60をそれぞれ移動しても良いが、本実施形態では、一対のヘッドユニット60でそれぞれ、Y軸方向に関して一対のXヘッド66xおよび一対のYヘッド66yの計測ビームが全てスケール52の格子領域から外れない(少なくとも1つの計測ビームの格子領域への照射が維持される)ように一対のヘッドユニット60を移動する。なお、Yスライドテーブル62を駆動するアクチュエータとして、本実施形態では、歯付きのプーリ68bと、歯付きのベルト68cとを含むベルト駆動装置68が用いられているが、これに限られず、歯無しプーリとベルトとを含む摩擦車装置が用いられても良い。また、Yスライドテーブル62を牽引する可撓性部材は、ベルトに限られず、例えばロープ、ワイヤ、チェーンなどであっても良い。また、Yスライドテーブル62を駆動するためのアクチュエータの種類は、ベルト駆動装置68に限られず、例えばリニアモータ、送りネジ装置などの他の駆動装置であっても良い。
【0048】
Xヘッド64x、Yヘッド64y(図5では不図示。図6参照)、Xヘッド66x、及びYヘッド66yそれぞれは、上述したマスクエンコーダシステム48が有するXヘッド49x、Yヘッド49yと同様の、いわゆる回折干渉方式のエンコーダヘッドであり、Yスライドテーブル62に固定されている。ここで、ヘッドユニット60において、一対のYヘッド64y、一対のXヘッド64x、一対のYヘッド66y、及び一対のXヘッド66xは、それぞれの相互間の距離が、例えば振動などに起因して変化しないように、Yスライドテーブル62に対して固定されている。また、Yスライドテーブル62自体も、一対のYヘッド64y、一対のXヘッド64x、一対のYヘッド66y、及び一対のXヘッド66xそれぞれの相互間の距離が、例えば温度変化に起因して変化しないように、熱膨張率がスケール52、56より低い(あるいはスケール52、56と同等の)材料で形成されている。
【0049】
図7に示されるように、一対のXヘッド64xそれぞれは、Xスケール57xの上のY軸方向に互いに離間した2箇所(2点)に計測ビームを照射し、一対のYヘッド64yそれぞれは、Yスケール57y上のY軸方向に互いに離間した2箇所(2点)に計測ビームを照射する。基板エンコーダシステム50では、上記Xヘッド64x、及びYヘッド64yが対応するスケールからのビームを受光することにより、Yスライドテーブル62(図7では不図示。図5及び図6参照)の変位量情報を主制御装置90(図8参照)に供給する。すなわち、基板エンコーダシステム50では、例えば4つのXヘッド64xと、該Xヘッド64xに対向するXスケール57x(Yスライドテーブル62のY位置によって異なる)とによって、一対のYスライドテーブル62(すなわち一対のヘッドユニット60(図1参照))それぞれのY軸方向の位置情報を求めるための、例えば4つのXリニアエンコーダ96x(図7では不図示。図8参照)が構成され、例えば4つのYヘッド64yと、該Yヘッド64yに対向するYスケール57y(Yスライドテーブル62のY位置によって異なる)とによって、一対のYスライドテーブル62それぞれのY軸方向の位置情報を求めるための、例えば4つのYリニアエンコーダ96y(図7では不図示。図8参照)が構成される。
【0050】
主制御装置90は、図8に示されるように、例えば4つのXリニアエンコーダ96x、及び、例えば4つのYリニアエンコーダ96yの出力に基づいて、一対のヘッドユニット60(図1参照)それぞれのX軸方向、及びY軸方向の位置情報を、例えば10nm以下の分解能で求める。また、主制御装置90は、一方のヘッドユニット60に対応する、例えば2つのXリニアエンコーダ96x(あるいは、例えば2つのYリニアエンコーダ96y)の出力に基づいて該一方のヘッドユニット60のθz位置情報(回転量情報)を、他方のヘッドユニット60に対応する、例えば2つのXリニアエンコーダ96x(あるいは、例えば2つのYリニアエンコーダ96y)の出力に基づいて該他方のヘッドユニット60のθz位置情報(回転量情報)をそれぞれ求める。主制御装置90は、一対のヘッドユニット60それぞれのXY平面内の位置情報に基づき、ベルト駆動装置68を用いてヘッドユニット60のY軸方向の位置を制御する。
【0051】
ここで、図4(A)に示されるように、エンコーダベース54には、上述したように、投影光学系16の+Y側、及び-Y側の領域それぞれにスケール56がY軸方向に所定間隔で、例えば2つ配置されている。また、上記Y軸方向に所定間隔で配置された、例えば2つのスケール56のうち、+Y側のスケール56にヘッドユニット60(一対のXヘッド64x、一対のYヘッド64y(それぞれ図4(C)参照)の全て)が対向する位置と、-Y側のスケール56にヘッドユニット60が対向する位置との間で、Yスライドテーブル62がY軸方向に駆動される。
【0052】
そして、上記マスクエンコーダシステム48と同様に、基板エンコーダシステム50においても、ひとつのヘッドユニット60が有する一対のXヘッド64x、及び一対のYヘッド64yそれぞれの間隔は、図4(C)に示されるように、隣接するスケール56間の間隔よりも広く設定されている。これにより、基板エンコーダシステム50では、一対のXヘッド64xのうち常に少なくとも一方がXスケール57xに対向するとともに、一対のYヘッド64yのうちの少なくとも一方が常にYスケール57yに対向する。従って、基板エンコーダシステム50は、計測値を途切れさせることなくYスライドテーブル62(ヘッドユニット60)の位置情報を求めることができる。
【0053】
また、図7に示されるように、一対のXヘッド66xそれぞれは、Xスケール53xの上のX軸方向に互いに離間した2箇所(2点)に計測ビームを照射し、一対のYヘッド66yそれぞれは、Yスケール53y上のX軸方向に互いに離間した2箇所(2点)に計測ビームを照射する。基板エンコーダシステム50では、上記Xヘッド66x、及びYヘッド66yが対応するスケールからのビームを受光することにより、基板ホルダ34(図7では不図示。図2参照)の変位量情報を主制御装置90(図8参照)に供給する。すなわち、基板エンコーダシステム50では、例えば4つのXヘッド66xと、該Xヘッド66xに対向するXスケール53x(基板ホルダ34のX位置によって異なる)とによって、基板PのX軸方向の位置情報を求めるための、例えば4つのXリニアエンコーダ94x(図7では不図示。図8参照)が構成され、例えば4つのYヘッド66yと、該Yヘッド66yに対向するYスケール53y(基板ホルダ34のX位置によって異なる)とによって、基板PのY軸方向の位置情報を求めるための、例えば4つのYリニアエンコーダ94y(図7では不図示。図8参照)が構成される。
【0054】
主制御装置90は、図8に示されるように、例えば4つのXリニアエンコーダ94x、及び、例えば4つのYリニアエンコーダ94yの出力、並びに上記4つのXリニアエンコーダ96x、及び、例えば4つのYリニアエンコーダ96yの出力(すなわち、一対のヘッドユニット60それぞれのXY平面内の位置情報)に基づいて基板ホルダ34(図2参照)のX軸方向、及びY軸方向の位置情報を、例えば10nm以下の分解能で求める。また、主制御装置90は、例えば4つのXリニアエンコーダ94x(あるいは、例えば4つのYリニアエンコーダ94y)のうちの少なくとも2つの出力に基づいて基板ホルダ34のθz位置情報(回転量情報)を求める。主制御装置90は、上記基板エンコーダシステム50の計測値から求められた基板ホルダ34のXY平面内の位置情報に基づき、基板駆動系93を用いて基板ホルダ34のXY平面内の位置を制御する。
【0055】
また、図4(A)に示されるように、基板ホルダ34には、上述したように、基板Pの+Y側、及び-Y側の領域それぞれにスケール52がX軸方向に所定間隔で、例えば5つ配置されている。また、上記X軸方向に所定間隔で配置された、例えば5つのスケール52のうち、最も+X側のスケール52にヘッドユニット60(一対のXヘッド66x、一対のYヘッド66y(それぞれ図4(B)参照)の全て)が対向する位置と、最も-X側のスケール52にヘッドユニット60が対向する位置との間で、基板ホルダ34がX軸方向に駆動される。
【0056】
そして、上記マスクエンコーダシステム48と同様に、ひとつのヘッドユニット60が有する一対のXヘッド66x、及び一対のYヘッド66yそれぞれの間隔は、図4(B)に示されるように、隣接するスケール52間の間隔よりも広く設定されている。これにより、基板エンコーダシステム50では、一対のXヘッド66xのうち常に少なくとも一方がXスケール53xに対向するとともに、一対のYヘッド66yのうちの少なくとも一方が常にYスケール53yに対向する。従って、基板エンコーダシステム50は、計測値を途切れさせることなく基板ホルダ34(図4(A)参照)の位置情報を求めることができる。
【0057】
なお。基板エンコーダシステム50の一対のヘッドユニット60のそれぞれが有する一対のYヘッド64y、一対のXヘッド64x、一対のYヘッド66y、及び一対のXヘッド66x、並びにこれらのヘッドからの計測ビームが照射されるスケール56、52について、前述したマスクエンコーダシステム48を構成するヘッド、スケールに関して説明した全ての説明(なお書き含む)の構成を同様に適用することができる。
【0058】
図6に戻り、防塵カバー55は、XZ断面U字状に形成されたY軸方向に延びる部材から成り、一対の対向面間に上述したエンコーダベース54の第2部分54b、及びYスライドテーブル62が所定のクリアランスを介して挿入されている。防塵カバー55の下面には、Xヘッド66x、及びYヘッド66yを通過させる開口部が形成されている。これにより、Yリニアガイド装置63、ベルト68cなどから発生する粉塵がスケール52に付着することが抑制される。また、エンコーダベース54の下面には、一対の防塵板55a(図5では不図示)が固定されている。スケール56は、一対の防塵板55a間に配置されており、Yリニアガイド装置63などから発生する粉塵がスケール56に付着することが抑制される。
【0059】
図8には、液晶露光装置10(図1参照)の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置90の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置90は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、液晶露光装置10の構成各部を統括制御する。
【0060】
上述のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、主制御装置90(図8参照)の管理の下、不図示のマスクローダによって、マスクステージ装置14上へのマスクMのロードが行われるとともに、不図示の基板ローダによって、基板ステージ装置20(基板ホルダ34)上への基板Pのロードが行われる。その後、主制御装置90により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測(基板Pの複数のアライメントマークの検出)が実行され、そのアライメント計測の終了後、基板P上に設定された複数のショット領域に逐次ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われる。なお、アライメント計測動作においても基板エンコーダシステム50によって基板ホルダ34の位置情報が計測される。
【0061】
次に、露光動作時におけるマスクステージ装置14、及び基板ステージ装置20の動作の一例を、図9(A)~図16(B)を用いて説明する。なお、以下の説明では、1枚の基板P上に4つのショット領域が設定された場合(いわゆる4面取りの場合)を説明するが、1枚の基板P上に設定されるショット領域の数、及び配置は、適宜変更可能である。
【0062】
図9(A)には、アライメント動作が完了した後のマスクステージ装置14が、図9(B)には、アライメント動作が完了した後の基板ステージ装置20(ただし基板ホルダ34以外の部材は不図示。以下、同じ)がそれぞれ示されている。露光処理は、一例として、図9(B)に示されるように、基板Pの-Y側かつ+X側に設定された第1ショット領域Sから行われる。マスクステージ装置14では、図9(A)に示されるように、照明系12からの照明光IL(それぞれ図1参照)が照射される照明領域(ただし、図9(A)に示される状態では、まだマスクMに対し照明光ILは照射されていない)よりもマスクMの+X側の端部が幾分-X側に位置するように、マスクエンコーダシステム48(図8参照)の出力に基づいてマスクMの位置決めがされる。具体的には、例えば、照明領域に対してマスクMのパターン領域の+X側の端部が、所定の速度で走査露光するために必要な助走距離(すなわち、所定の速度に達するために必要な加速距離)だけ-X側に配置され、その位置においてマスクエンコーダシステム48によりマスクMの位置が計測できるようにスケール46が設けられている。また、基板ステージ装置20では、図9(B)に示されるように、投影光学系16からの照明光IL(図1参照)が照射される露光領域(ただし、図9(B)に示される状態では、まだ基板Pに対し照明光ILは照射されていない)よりも第1ショット領域Sの+X側の端部が幾分-X側に位置するように、基板エンコーダシステム50(図8参照)の出力に基づいて基板Pの位置決めがされる。具体的には、例えば、露光領域に対して基板Pの第1ショット領域Sの+X側の端部が、所定の速度で走査露光するために必要な助走距離(すなわち、所定の速度に達するために必要な加速距離)だけ-X側に配置され、その位置において基板エンコーダシステム50により基板Pの位置が計測できるようにスケール52が設けられている。なお、ショット領域の走査露光を終えてマスクMおよび基板Pをそれぞれ減速する側においても、同様に走査露光時の速度から所定の速度まで減速させるために必要な減速距離だけマスクMおよび基板Pをさらに移動させるまでマスクエンコーダシステム48、基板エンコーダシステム50によりそれぞれマスクM、基板Pの位置を計測可能なようにスケール46,52が設けられている。あるいは、加速中および減速中の少なくとも一方の動作中には、マスクエンコーダシステム48、基板エンコーダシステム50とは別の計測系によってマスクMおよび基板Pの位置をそれぞれ計測できるようにしても良い。
【0063】
次いで、図10(A)に示されるように、マスクホルダ40が+X方向に駆動(加速、等速駆動、及び減速)されるとともに、該マスクホルダ40に同期して、図10(B)に示されるように、基板ホルダ34が+X方向に駆動(加速、等速駆動、及び減速)される。マスクホルダ40が駆動される際、主制御装置90(図8参照)は、マスクエンコーダシステム48(図8参照)の出力に基づいてマスクMの位置制御を行うとともに、基板エンコーダシステム50(図8参照)の出力に基づいて基板Pの位置制御を行う。基板ホルダ34がX軸方向に駆動される際、一対のヘッドユニット60は、静止状態とされる。マスクホルダ40、及び基板ホルダ34がX軸方向に等速駆動される間、基板Pには、マスクM及び投影光学系16を通過した照明光IL(それぞれ図1参照)が照射され、これによりマスクMが有するマスクパターンがショット領域Sに転写される。
【0064】
基板P上の第1ショット領域Sに対するマスクパターンの転写が完了すると、基板ステージ装置20では、図11(B)に示されるように、第1ショット領域Sの+Y側の設定された第2ショット領域Sへの露光動作のために、基板ホルダ34が-Y方向に所定距離(基板Pの幅方向寸法のほぼ半分の距離)、基板エンコーダシステム50(図8参照)の出力に基づいて駆動(Yステップ)される。上記基板ホルダ34のYステップ動作時において、マスクホルダ40は、図11(A)に示されるように、マスクMの-X側の端部が照明領域(ただし、図11(A)に示される状態では、マスクMは照明されない)よりも幾分+X側に位置した状態で静止している。
【0065】
ここで、図11(B)に示されるように、上記基板ホルダ34のYステップ動作時において、基板ステージ装置20では、一対のヘッドユニット60が、基板ホルダ34に同期してY軸方向に駆動される。すなわち、主制御装置90(図8参照)は、基板エンコーダシステム50(図8参照)のうち、Yリニアエンコーダ94yの出力に基づいて、基板ホルダ34を基板駆動系93(図8参照)を介して目標位置までY軸方向に駆動しつつ、Yリニアエンコーダ96y(図8参照)の出力に基づいて、一対のヘッドユニット60を対応するベルト駆動装置68(図8参照)を介してY軸方向に駆動する。この際、主制御装置90は、一対のヘッドユニット60と基板ホルダ34とを同期して(一対のヘッドユニット60が基板ホルダ34に追従するように)駆動する。従って、基板ホルダ34のY位置(基板ホルダ34の移動中も含む)に関わらず、Xヘッド66x、Yヘッド66y(それぞれ図7参照)から照射される計測ビームそれぞれが、Xスケール53x、Yスケール53y(それぞれ図7参照)から外れることがない。換言すると、基板ホルダ34をY軸方向に移動中(Yステップ動作中)にXヘッド66x、Yヘッド66yから照射される計測ビームそれぞれがXスケール53x、Yスケール53yから外れない程度、すなわちXヘッド66x、Yヘッド66yからの計測ビームによる計測が途切れない(計測を継続できる)程度に、一対のヘッドユニット60と基板ホルダ34とをY軸方向へ移動させれば良い。すなわち、一対のヘッドユニット60と基板ホルダ34とのY軸方向への移動は、同期、追従移動でなくても良い。
【0066】
基板ホルダ34のYステップ動作が完了すると、図12(A)に示されるように、マスクエンコーダシステム48(図8参照)の出力に基づいてマスクホルダ40が-X方向に駆動されるとともに、該マスクホルダ40に同期して、図12(B)に示されるように、基板エンコーダシステム50(図8参照)の出力に基づいて基板ホルダ34が-X方向に駆動される。これにより、第2ショット領域Sにマスクパターンが転写される。この際も一対のヘッドユニット60は、静止状態とされる。
【0067】
第2ショット領域Sへの露光動作が完了すると、マスクステージ装置14では、図13(A)に示されるように、マスクホルダ40が+X方向に駆動され、照明領域よりもマスクMの-X側の端部が幾分+X側に位置するように、マスクエンコーダシステム48(図8参照)の出力に基づいてマスクMの位置決めがされる。また、基板ステージ装置20では、図13(B)に示されるように、第2ショット領域Sの-X側に設定された第3ショット領域Sへの露光動作のために、基板ホルダ34が+X方向に駆動され、露光領域よりも第3ショット領域Sの-X側の端部が幾分+X側に位置するように、基板エンコーダシステム50(図8参照)の出力に基づいて基板Pの位置決めがされる。図13(A)及び図13(A)に示されるマスクホルダ40、及び基板ホルダ34の移動動作時において、照明系12(図1参照)からは、照明光ILがマスクM(図13(A)参照)及び基板P(図13(B)参照)に対して照射されない。すなわち、図13(A)及び図13(B)に示されるマスクホルダ40、及び基板ホルダ34の移動動作は、単なるマスクM、及び基板Pの位置決め動作(Xステップ動作)である。
【0068】
マスクM、及び基板PのXステップ動作が完了すると、マスクステージ装置14では、図14(A)に示されるように、マスクエンコーダシステム48(図8参照)の出力に基づいてマスクホルダ40が-X方向に駆動されるとともに、該マスクホルダ40に同期して、図14(B)に示されるように、基板エンコーダシステム50(図8参照)の出力に基づいて基板ホルダ34が-X方向に駆動される。これにより、第3ショット領域Sにマスクパターンが転写される。この際も一対のヘッドユニット60は、静止状態とされる。
【0069】
第3ショット領域Sへの露光動作が完了すると、基板ステージ装置20では、図15(B)に示されるように、第3ショット領域Sの-Y側の設定された第4ショット領域Sへの露光動作のために、基板ホルダ34が+Y方向に所定距離、駆動(Yステップ駆動)される。この際、図11(B)に示される基板ホルダ34のYステップ動作時と同様に、マスクホルダ40は静止状態とされる(図15(A)参照)。また、一対のヘッドユニット60は、基板ホルダ34に同期して(基板ホルダ34に追従するように)+Y方向に駆動される。
【0070】
基板ホルダ34のYステップ動作が完了すると、図16(A)に示されるように、マスクエンコーダシステム48(図8参照)の出力に基づいてマスクホルダ40が+X方向に駆動されるとともに、該マスクホルダ40に同期して、図16(B)に示されるように、基板エンコーダシステム50(図8参照)の出力に基づいて基板ホルダ34が+X方向に駆動される。これにより、第4ショット領域Sにマスクパターンが転写される。この際も一対のヘッドユニット60は、静止状態とされる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態に係る液晶露光装置10によれば、マスクMのXY平面内の位置情報を求めるためのマスクエンコーダシステム48、及び基板PのXY平面内の位置情報を求めるための基板エンコーダシステム50(それぞれ図1参照)それぞれは、対応するスケールに対して照射される計測ビームの光路長が短いので、例えば従来の干渉計システムに比べて空気揺らぎの影響を低減できる。従って、マスクM、及び基板Pの位置決め精度が向上する。また、空気揺らぎの影響が小さいので、従来の干渉計システムを用いる場合に必須となる部分空調設備を省略でき、コストダウンが可能となる。
【0072】
さらに、干渉計システムを用いる場合には、大きくて重いバーミラーをマスクステージ装置14、及び基板ステージ装置20に備える必要があったが、本実施形態に係るマスクエンコーダシステム48、及び基板エンコーダシステム50では、上記バーミラーが不要となるので、マスクホルダ40を含む系(例えば、マスクステージ装置)、及び基板ホルダ34を含む系(例えば、基板ステージ装置)それぞれが小型・軽量化するとともに重量バランスが良くなり、これによりマスクM、基板Pの位置制御性が向上する。また、干渉計システムを用いる場合に比べ、調整箇所が少なくて済むので、マスクステージ装置14、及び基板ステージ装置20のコストダウンし、さらにメンテナンス性も向上する。また、組み立て時の調整も容易(あるいは不要)となる。
【0073】
また、本実施形態に係る基板エンコーダシステム50では、Y軸方向への基板Pの移動(例えばステップ動作)において、一対のヘッドユニット60をY軸方向に駆動することにより、基板PのY位置情報を求める構成であるため、基板ステージ装置20側にY軸方向に延びるスケールを配置する、またはX軸方向に延びるスケールの幅をY軸方向に広げる必要(あるいは装置本体18側にY軸方向に複数のヘッドを配列する必要)がない。従って、基板位置計測系の構成をシンプルにすることができ、コストダウンが可能となる。
【0074】
また、本実施形態に係るマスクエンコーダシステム48では、隣接する一対のエンコーダヘッド(Xヘッド49x、Yヘッド49y)の出力をマスクホルダ40のX位置に応じて適宜切り換えながら該マスクホルダ40のXY平面内の位置情報を求める構成であるので、複数のスケール46をX軸方向に所定間隔で(互いに離間して)配置しても、マスクホルダ40の位置情報を途切れることなく求めることができる。従って、マスクホルダ40の移動ストロークと同等の長さ(本実施形態のスケール46の約3倍の長さ)のスケールを用意する必要がなく、コストダウンが可能であり、特に本実施形態のような大型のマスクMを用いる液晶露光装置10に好適である。本実施形態に係る基板エンコーダシステム50も同様に、複数のスケール52がX軸方向に、複数のスケール56がY軸方向に、それぞれ所定間隔で配置されるので、基板Pの移動ストロークと同等の長さのスケールを用意する必要がなく、大型の基板Pを用いる液晶露光装置10に好適である。
【0075】
なお、上記第1の実施形態では、一対のヘッドユニット60が、それぞれ基板ホルダ34の位置を計測するための4つのヘッド(各一対のXヘッド66x及びYヘッド66y)を有し、合計で8つの基板ホルダ位置計測用のヘッドが設けられた場合について説明したが、基板ホルダ位置計測用のヘッドの数は、8つより少なくても良い。以下では、このような実施形態について説明する。
【0076】
《第2の実施形態》
次に、第2の実施形態について図17図20(C)に基づいて説明する。本第2の実施形態に係る液晶露光装置の構成は、基板エンコーダシステム50の一部の構成を除き、前述の第1の実施形態と同じなので、以下、相違点についてのみ説明し、第1の実施形態と同じ構成及び機能を有する要素については、第1の実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0077】
図17には、本第2の実施形態に係る基板ホルダ34及び基板エンコーダシステム50の一対のヘッドユニット60が、投影光学系16とともに平面図にて示されている。図17では、説明をわかり易くするため、エンコーダベース54等の図示が省略されている。また、図17では、ヘッドユニット60(Yスライドテーブル62)が点線で図示されるとともに、Yスライドテーブル62の上面に設けられたXヘッド64x、Yヘッド64yの図示も省略されている。
【0078】
本第2の実施形態に係る液晶露光装置では、図17に示されるように、基板ホルダ34の基板載置領域を挟む+Y側、及び-Y側の領域に、それぞれエンコーダスケール152(以下、単にスケール152と称する)がX軸方向に関して格子領域が互いに離れて配置されるようにX軸方向に所定間隔で、例えば5つ配置されている。基板載置領域の+Y側に配置された5つのスケール152と、-Y側の領域に配置された5つのスケール152では、隣接するスケール152(格子領域)間の間隔は、同じであるが、その配置位置が、+Y側の5つのスケール152に対して、-Y側の5つのスケール152が全体的に、所定距離D(隣接するスケール152(格子領域)の間隔より幾分大きな距離)+X側にずれて配置されている。これは、基板ホルダ34の位置情報を計測する後述する2つのXヘッド66x及び2つのYヘッド66yの合計4つのヘッドのうちの2つ以上がいずれのスケールにも対向しない状態が発生しない(すなわち、4つのヘッドで計測ビームがスケールから外れる非計測期間が重ならない)ようにするためである。
【0079】
各スケール152は、例えば石英ガラスにより形成されたX軸方向に延びる平面視矩形の板状(帯状)の部材から成る。各スケール152の上面には、X軸方向及びY軸方向を周期方向とする所定ピッチ(例えば1μm)の反射型の2次元回折格子(2次元グレーティング)RGが形成されている。以下では、前述の格子領域を単に2次元グレーティングRGとも呼ぶ。なお、図17では、図示の便宜上、2次元グレーティングRGの格子線間の間隔(ピッチ)は、実際よりも格段に広く図示されている。以下で説明するその他の図においても同様である。以下では、基板ホルダ34の+Y側の領域に配置された5つのスケール152を、第1格子群と称し、基板ホルダ34の-Y側の領域に配置された5つのスケール152を、第2格子群と称するものとする。
【0080】
+Y側に位置する一方のヘッドユニット60のYスライドテーブル62の下面(-Z側の面)には、スケール152にそれぞれ対向する状態で、Xヘッド66xとYヘッド66yがX軸方向に所定間隔(隣接するスケール152の間隔より大きな距離)離れて固定されている。同様に、-Y側に位置する他方のヘッドユニット60のYスライドテーブル62の下面(-Z側の面)には、スケール152にそれぞれ対向する状態で、Yヘッド66yとXヘッド66xがX軸方向に所定間隔離れて固定されている。すなわち、第1格子群と対向するXヘッド66xおよびYヘッド66yと、第2格子群と対向するXヘッド66xおよびYヘッド66yはそれぞれ、隣接するスケール152の格子領域の間隔よりも広い間隔で計測ビームをスケール152に照射する。以下では、説明の便宜上、一方のヘッドユニット60が有するXヘッド66x、Yヘッド66yを、それぞれヘッド66a、ヘッド66bと呼び、他方のヘッドユニット60が有するYヘッド66y、Xヘッド66xを、それぞれヘッド66c、ヘッド66dとも呼ぶものとする。
【0081】
この場合、ヘッド66aとヘッド66cが、同一のX位置(Y軸方向と平行な同一直線上)に配置され、ヘッド66bとヘッド66dが、ヘッド66aとヘッド66cのX位置と異なる、同一のX位置(Y軸方向と平行な同一直線上)に配置されている。ヘッド66a、66dとそれぞれ対向する2次元グレーティングRGとによって、一対のXリニアエンコーダが構成され、ヘッド66b、66cとそれぞれ対向する2次元グレーティングRGとによって、一対のYリニアエンコーダが構成されている。
【0082】
本第2の実施形態に係る液晶露光装置では、ヘッドユニット60の残りの部分を含み、その他の部分の構成は、主制御装置90の基板エンコーダシステムを用いた基板ホルダ34の駆動制御(位置制御)を除き、前述した第1の実施形態に係る液晶露光装置10と同様になっている。
【0083】
本第2の実施形態に係る液晶露光装置では、図18(A)に示される、基板ホルダ34の+X端部に一対のヘッドユニット60が対向する第1位置と、図18(B)に示される、基板ホルダ34の-X端部に一対のヘッドユニット60が対向する第2位置との間で、基板ホルダ34がX軸方向に移動する範囲内で、一対のヘッドユニット60のヘッド66a~66d、すなわち一対のXリニアエンコーダ及び一対のYリニアエンコーダによる基板ホルダ34の位置計測が可能である。図18(A)は、ヘッド66bのみがいずれのスケール152にも対向していない状態を示し、図18(B)は、ヘッド66cのみがいずれのスケール152にも対向していない状態を示している。
【0084】
図18(A)に示される第1位置と図18(B)に示される第2位置との間で基板ホルダ34がX軸方向に移動する過程で、一対のヘッドユニット60とスケール152との位置関係は、図19(A)~図19(D)にそれぞれ示される第1の状態~第4の状態と、4つのヘッド66a~66dの全てが、いずれかのスケール152の2次元グレーティングRGに対向する(すなわち、4つのヘッド66a~66dの全てで計測ビームが2次元グレーティングRGに照射される)第5の状態との5つの状態の間で遷移する。以下では、ヘッドがスケール152の2次元グレーティングRGに対向する、あるいは計測ビームがスケール152の2次元グレーティングRGに照射されると言う代わりに、単にヘッドがスケールに対向すると表現する。
【0085】
ここでは、説明の便宜上、6つのスケール152を取り上げ、各スケールにそれぞれ識別のための記号a~fを付して、スケール152a~152fと表記する(図19(A)参照)。
【0086】
図19(A)の第1状態は、ヘッド66aがスケール152bに対向し、且つヘッド66c、66dがスケール152eに対向し、ヘッド66bのみが、いずれのスケールにも対向しない状態を示し、図19(B)の第2状態は、図19(A)の状態から基板ホルダ34が+X方向に所定距離移動してヘッド66a、66bがスケール152bに対向し、且つヘッド66dがスケール152eに対向し、ヘッド66cのみがいずれのスケールにも対向しなくなった状態を示す。図19(A)の状態から図19(B)の状態に遷移する過程で、ヘッド66a、66bがスケール152bに対向し、且つヘッド66c,66dが、スケール152eに対向する第5の状態を経由する。
【0087】
図19(C)の第3の状態は、図19(B)の状態から基板ホルダ34が+X方向に所定距離移動してヘッド66aのみがいずれのスケールにも対向しなくなった状態を示す。図19(B)の状態から図19(C)の状態に遷移する過程で、ヘッド66a、66bがスケール152bに対向し、且つヘッド66cがスケール152dに対向し、且つヘッド66dがスケール152eに対向する第5の状態を経由する。
【0088】
図19(D)の第4の状態は、図19(C)の状態から基板ホルダ34が+X方向に所定距離移動してヘッド66dのみがいずれのスケールにも対向しなくなった状態を示す。図19(C)の状態から図19(D)の状態に遷移する過程で、ヘッド66aがスケール152aに対向し、且つヘッド66bがスケール152bに対向し、且つヘッド66cがスケール152dに対向し、且つヘッド66dがスケール152eに対向する第5の状態を経由する。
【0089】
図19(D)の状態から、基板ホルダ34が所定距離+X方向に移動すると、ヘッド66aがスケール152aに対向し、且つヘッド66bがスケール152bに対向し、且つヘッド66c、66dがスケール152dに対向する第5の状態を経由した後、ヘッド66aがスケール152aに対向し、且つヘッド66c、66dがスケール152dに対向し、ヘッド66bのみが、いずれのスケールにも対向しない第1の状態となる。
【0090】
以上は、基板ホルダ34の±Y側にそれぞれ5つ配置されたスケール152のうちの各3つのスケール152と、一対のヘッドユニット60との間の状態(位置関係)の遷移についての説明であるが、10のスケール152と一対のヘッドユニット60との間でも、基板ホルダ34の±Y側にそれぞれ配置された5つのスケールのうちの隣接する各3つのスケール152について見れば、一対のヘッドユニット60との位置関係は、上述と同様の順序で遷移する。
【0091】
このように、本第2の実施形態では、基板ホルダ34がX軸方向に移動されても、2つのXヘッド66x、すなわちヘッド66a、66dと2つのYヘッド66y、すなわちヘッド66b、66cとの合計4つのうちの少なくとも3つが、常にいずれかのスケール152(2次元グレーティングRG)に対向する。さらに、基板ホルダ34がY軸方向に移動されても、4つのヘッドともY軸方向に関して計測ビームがスケール152(2次元グレーティングRG)から外れないように一対のYスライドテーブル62がY軸方向に駆動されるため、4つのヘッドの少なくとも3つが常にいずれかのスケール152に対向する。したがって、主制御装置90は、常時、ヘッド66a~66dのうちの3つを用いて、基板ホルダ34のX軸方向、Y軸方向及びθz方向の位置情報を管理することが可能である。以下、この点についてさらに説明する。
【0092】
Xヘッド66x、Yヘッド66yの計測値を、それぞれCX、CYとすると、計測値C,Cは、それぞれ、次式(1a)、(1b)で表すことができる。
【0093】
= (p-X)cosθz+(q-Y)sinθz ……(1a)
=-(p-X)sinθz+(q-Y)cosθz ……(1b)
ここで、X、Y、θzは、それぞれ基板ホルダ34のX軸方向、Y軸方向及びθz方向の位置を示す。また、pi、は、ヘッド66a~66dそれぞれのX位置(X座標値)、Y位置(Y座標値)である。本実施形態では、ヘッド66a、66b、66c、66dそれぞれのX座標値p及びY座標値q(i=1、2、3、4)は、前述の4つのXリニアエンコーダ96xと、4つのYリニアエンコーダ96yの出力から算出される一対のヘッドユニット60(図1参照)それぞれのX軸方向、及びY軸方向の位置情報(Yスライドテーブル62の中心のX軸方向、及びY軸方向の位置)から、各ヘッドのYスライドテーブル62の中心に対する既知の位置関係に基づいて簡単に算出することができる。
【0094】
したがって、基板ホルダ34と一対のヘッドユニット60とが図18(A)に示されるような位置関係にあり、このとき基板ホルダ34のXY平面内の3自由度方向の位置が(X、Y、θz)であるものとすると、3つのヘッド66a、66c、66dの計測値は、理論上、次の式(2a)~(2c)(アフィン変換の関係とも呼ぶ)で表すことができる。
【0095】
= (p-X)cosθz+(q-Y)sinθz ……(2a)
=-(p-X)sinθz+(q-Y)cosθz ……(2b)
= (p-X)cosθz+(q-Y)sinθz ……(2c)
基板ホルダ34が座標原点(X,Y、θz)=(0,0,0)にある基準状態では、連立方程式(2a)~(2c)より、C=p,C=q,C=pとなる。基準状態は、例えば投影光学系16による投影領域の中心に、基板ホルダ34中心(基板Pの中心にほぼ一致)が一致し、θz回転がゼロの状態である。したがって、基準状態では、ヘッド66bによる基板ホルダ34のY位置の計測も可能となっており、ヘッド66bによる計測値Cは、式(1b)に従い、C=qとなる。
【0096】
従って、基準状態において、3つのヘッド66a、66c、66dの計測値を、それぞれp,q,pと初期設定すれば、以降基板ホルダ34の変位(X,Y,θz)に対して、3つのヘッド66a、66c、66dは、式(2a)~(2c)で与えられる理論値を提示することになる。
【0097】
なお、基準状態において、ヘッド66a、66c、66dのいずれか1つ、例えばヘッド66cに代えて、ヘッド66bの計測値Cを、qに初期設定しても良い。
【0098】
この場合には、以降基板ホルダ34の変位(X,Y,θz)に対して、3つのヘッド66a、66b、66dは、式(2a)、(2c)、(2d)で与えられる理論値を提示することになる。
【0099】
= (p-X)cosθz+(q-Y)sinθz ……(2a)
= (p-X)cosθz+(q-Y)sinθz ……(2c)
=-(p-X)sinθz+(q-Y)cosθz ……(2d)
連立方程式(2a)~(2c)及び連立方程式(2a)、(2c)、(2d)では、変数が3つ(X,Y,θz)に対して3つの式が与えられている。従って、逆に、連立方程式(2a)~(2c)における従属変数C,C,C、あるいは連立方程式(2a)、(2c)、(2d)における従属変数C,C,Cが与えられれば、変数X,Y,θzを求めることができる。ここで、近似sinθz≒θzを適用すると、あるいはより高次の近似を適用しても、容易に方程式を解くことができる。従って、ヘッド66a、66c、66d(又はヘッド66a、66b、66d)の計測値C,C,C(又はC,C,C)よりウエハステージWSTの位置(X,Y,θz)を算出することができる。
【0100】
次に、本第2の実施形態に係る液晶露光装置で行われる、基板ホルダ34の位置情報を計測する、基板エンコーダシステムのヘッドの切り換え時におけるつなぎ処理、すなわち計測値の初期設定について、主制御装置90の動作を中心として説明する。
【0101】
本第2の実施形態では、前述の如く、基板ホルダ34の有効ストローク範囲では常に3つのエンコーダ(Xヘッド及びYヘッド)が基板ホルダ34の位置情報を計測しており、エンコーダ(Xヘッド又はYヘッド)の切り換え処理を行う際には、例えば図20(B)に示されるように、4つのヘッド66a~66dのそれぞれが、いずれかのスケール152に対向し、基板ホルダ34の位置を計測可能な状態(前述の第5の状態)となる。図20(B)は、図20(A)に示されるように、ヘッド66a、66b及び66dで基板ホルダ34の位置を計測していた状態から、基板ホルダ34が+X方向に移動して、図20(C)に示されるように、ヘッド66b、66c、66dで基板ホルダ34の位置を計測する状態に遷移する途中で出現する第5の状態の一例を示す。すなわち、図20(B)は、基板ホルダ34の位置情報の計測に用いられる3つのヘッドが、ヘッド66a、66b、66dからヘッド66b、66c、66dに切り換えられている最中の状態を示す。
【0102】
基板ホルダ34のXY平面内の位置制御(位置情報の計測)に用いられるヘッド(エンコーダ)の切り換え処理(つなぎ)を行おうとする瞬間において、図20(B)に示されるように、ヘッド66a、66b、66c及び66dが、それぞれスケール152b、152b、152d、152eに対向している。図20(A)から図20(C)を一見すると、図20(B)においてヘッド66aからヘッド66cに切り換えようとしているように見えるが、ヘッド66aとヘッド66cとでは、計測方向が異なることからも明らかなように、つなぎを行おうとするタイミングにおいてヘッド66aの計測値(カウント値)をそのままヘッド66cの計測値の初期値として与えても何の意味もない。
【0103】
そこで、本実施形態では、主制御装置90が、3つのヘッド66a、66b及び66dを用いる基板ホルダ34の位置情報の計測(及び位置制御)から、3つのヘッド66b、66c、66dを用いる基板ホルダ34の位置情報の計測(及び位置制御)に切り換えるようになっている。すなわち、この方式は通常のエンコーダつなぎの概念とは異なり、あるヘッドから別のヘッドにつなぐというのではなく、3つのヘッド(エンコーダ)の組み合わせから別の3つのヘッド(エンコーダ)の組み合わせにつなぐものである。
【0104】
主制御装置90は、まず、ヘッド66a、66d及び66bの計測値C,C,Cに基づいて、連立方程式(2a)、(2c)、(2d)を解き、基板ホルダのXY平面内の位置情報(X,Y,θz)を算出する。
【0105】
次に、主制御装置90は、次式(3)のアフィン変換の式に、上で算出したX,θzを代入して、ヘッド66cの計測値の初期値(ヘッド66cが計測すべき値)を求める。
【0106】
=-(p-X)sinθz+(q-Y)cosθz ……(3)
上式(3)において、p,qは、ヘッド66cの計測点のX座標値、Y座標値である。本実施形態では、X座標値p及びY座標値qは、前述した通り、4つのXリニアエンコーダ96xと、4つのYリニアエンコーダ96yの出力から算出される一対のヘッドユニット60それぞれのYスライドテーブル62の中心のX軸方向、及びY軸方向の位置から、ヘッド66cのYスライドテーブル62の中心に対する既知の位置関係に基づいて算出された値が用いられる。
【0107】
上記初期値Cをヘッド66cの初期値として与えることで、基板ホルダ34の3自由度方向の位置(X,Y,θz)を維持したまま、矛盾なくつなぎが完了することになる。それ以降は、切り換え後に使用するヘッド66b、66c、66dの計測値C,C,Cを用いて、次の連立方程式(2b)~(2d)を解いて、ウエハステージWSTの位置座標(X,Y,θz)を算出する。
【0108】
=-(p-X)sinθz+(q-Y)cosθz ……(2b)
= (p-X)cosθz+(q-Y)sinθz ……(2c)
=-(p-X)sinθz+(q-Y)cosθz ……(2d)
なお、上では、3つのヘッドから、この3つのヘッドと異なる別のヘッドを1つ含む異なる3つのヘッドへの切り換えについて説明したが、これは切り換え前の3つのヘッドの計測値から求まる基板ホルダ34の位置(X、Y、θz)を用いて、切り換え後に用いられる別のヘッドで計測すべき値を、アフィン変換の原理に基づいて、算出し、その算出した値を、切り換え後に用いられる別のヘッドの初期値として設定しているため、このように説明した。しかしながら、切り換え後に用いられる別のヘッドで計測すべき値の算出等の手順には触れず、切り換え及びつなぎ処理の直接の対象である2つのヘッドにのみ注目すれば、切り換え前に使用している3つのヘッドのうちの1つのヘッドを別の1つのヘッドに切り換えているとも言える。いすれにしても、ヘッドの切り換えは、切り換え前に基板ホルダの位置情報の計測及び位置制御に用いられているヘッドと、切り換え後に用いられるヘッドとが、ともに、いずれかのスケール152に同時に対向している状態で行われる。
【0109】
なお、上の説明は、ヘッド66a~66dの切り換えの一例であるが、いずれの3つのヘッドから別の3つのヘッドへの切り換え、あるいはいずれのヘッドから別のヘッドへの切り換えにおいても、上記の説明と同様の手順でヘッドの切り換えが行われる。
【0110】
ところで、本第2の実施形態のように、格子部を複数のスケール(2次元グレーティングRG)で構成する場合、それぞれ計測ビームが照射されるスケール同士が、より厳密には各スケールに形成された格子(2次元グレーティングRG)が相互にずれると、エンコーダシステムの計測誤差が発生する。
【0111】
また、本第2の実施形態では、基板ホルダ34のX位置に応じて、基板ホルダ34の位置情報計測及び位置制御に用いられる少なくとも3つのヘッドの計測ビームが照射される少なくとも2つのスケール152の組み合わせが異なり、いわば、これら少なくとも2つのスケールの組み合わせ毎に座標系が存在すると考えることができ、例えば少なくとも2つのスケールの相対位置変動などによって、これらの座標系間にずれ(グリッド誤差)が生じると、エンコーダシステムの計測誤差が発生する。なお、少なくとも2つのスケールの相対位置関係は長期的に変化するため、グリッド誤差、すなわち計測誤差も変動する。
【0112】
しかるに、本第2の実施形態では、ヘッドの切り換えに際し、切り換え後のヘッドの初期値を設定する時点では、4つのヘッド66a~66dの全てが同時に少なくとも2つのスケール152のいずれかに対向する第5の状態が発生する。この第5の状態では、4つのヘッド全てで基板ホルダ34の位置情報の計測が可能であるが、基板ホルダの位置座標(X、Y、θz)の計測のためには、ヘッドは3つしか必要がないので、1つは冗長となる。そこで、主制御装置90は、この冗長ヘッドの計測値を利用することで、座標系間のずれ(グリッド誤差)に起因するエンコーダシステムの計測誤差の補正情報(グリッド又は格子補正情報)の取得、及びグリッド誤差に起因するエンコーダシステムの計測誤差が補償されるような基板ホルダ34の駆動(位置制御)を行うこととしている。
【0113】
例えば4つのヘッド66a~66dのそれぞれが、同時に少なくとも2つのスケールに対向しているときに、2組の3つ1組のヘッドによる基板ホルダの位置座標(X、Y、θz)の計測を行い、その計測により得られた、具体的には、前述のアフィン変換の式を利用した連立方程式を解くことで得られた位置(X、Y、θz)の差、すなわちオフセットΔx、Δy、Δθzを求め、このオフセットを、そのとき4つのヘッド66a~66dが対向している少なくとも2つのスケールの組み合わせから成る座標系のオフセットとする。このオフセットは、その少なくとも2つのスケールに対向する4つのヘッドのうちの3つのヘッドによる基板ホルダ34の位置情報の計測及び基板ホルダ34の位置の制御で用いられる。なお、前述したヘッドの切り換え及びつなぎ処理が行われる前後では、切り換え前に基板ホルダ34の位置情報の計測及び位置の制御に用いられていた3つのヘッドが対向する少なくとも2つのスケールの組み合わせと、切り換え後に基板ホルダ34の位置情報の計測及び位置の制御に用いられていた3つのヘッドが対向する少なくとも2つのスケールの組み合わせとは、当然異なるので、ヘッドの切り換えが行われる前と後では、異なるオフセットが、基板ホルダ34の位置情報の計測及び位置の制御でグリッド又は格子補正情報として用いられる。
【0114】
ここで、一例として、基板ホルダ34が+X方向に移動している過程で、図20(A)の状態の直前に現れる、次のような第5の状態(ケース1の状態と呼ぶ)を考える。すなわち、ヘッド66a、66bがスケール152bに対向し、ヘッド66c、66dがスケール152eに対向する状態である。この状態では、ヘッド66a~66dのうち、いずれの3つヘッドの組み合わせから成る2組のヘッドを用いても、オフセットを求めることはできる。しかるに、図20(A)の状態では、ヘッド66cが計測不能となり、このヘッド66cの計測を復帰させるために、図20(B)に示され第5の状態において、3つのヘッド66a、66b、66dの計測値から算出される基板ホルダの位置座標(X、Y、θz)が用いられる。また、基板ホルダ34が+X方向に移動している過程で、ケース1の状態に先立ち、計測不能状態となっていたヘッド66bの復帰が行われる。このヘッド66bの復帰には、3つのヘッド66a、66c、66dの計測値から算出される基板ホルダの位置座標(X、Y、θz)が用いられる。そこで、ケース1の状態では、3つのヘッド66a、66b、66dの組及び3つのヘッド66a、66c、66dの組を除く、3つのヘッドの組、すなわち、3つのヘッド66a、66b、66cの組と、3つのヘッド66b、66c、66dを用いてスケール152b、152eの組み合わせから成る座標系の格子補正情報を取得するものとする。
【0115】
具体的には、主制御装置90は、ケース1の状態で、ヘッド66a、66b,66cの計測値を用いて基板ホルダ34の位置座標(便宜上、(X、Y、θz)とする)を算出するとともに、ヘッド66b、66c、66dの計測値を用いて基板ホルダ34の位置座標(便宜上、(X、Y、θz)とする)を算出する。そして、2つの位置の差ΔX=X-X、ΔY=Y-Y、Δθz=Δθz-Δθzを求め、このオフセットを格子補正情報として、例えば内部メモリ(記憶装置)に記憶する。
【0116】
また、例えば、図20(B)に示される第5の状態では、基板ホルダ34の位置制御に用いられるヘッドが、ヘッド66aからヘッド66cへ切り換えられ、その際に、3つのヘッド66a、66b、66dの計測値を用いて前述のアフィン変換の式により基板ホルダ34の位置座標の算出が行われる。このとき、主制御装置90は、この位置座標の算出ととともに、このヘッドの切り換えのための基板ホルダ34の位置座標の算出に用いられる3つのヘッド66a、66b、66dの組と、次のヘッドの切換時に切り換え後のヘッドの計測値の設定のために用いられる3つのヘッド66b、66c、66dの組とを除く、例えば3つのヘッド66a、66b、66cの組と、3つのヘッド66a、66b、66dの組とを用いて、スケール152b、152eの組み合わせと同様に、上記のヘッドの切り換え後において基板ホルダ34の位置計測および位置制御に用いられるヘッド66b、66c、66dが対向する3つのスケール152b,152d及び152eの組み合わせから成る座標系の格子補正情報(オフセット)を取得する。
【0117】
本実施形態では、主制御装置90は、図18(A)に示される第1位置から図18(B)に示される第2位置へ基板ホルダ34が+X方向又は-X方向に移動する過程で、順次切り換えられる、基板ホルダ34の位置制御に用いられる3つのヘッドが対向する少なくとも2つのスケール152の全ての組み合わせに対応する複数の座標系について、上述した手順で、オフセットΔX、ΔY、Δθzを求め、格子補正情報として記憶装置に記憶している。
【0118】
また、例えば、主制御装置90は、図19(A)に示される第1の状態から図19(B)に示される第2の状態に遷移する過程で、ヘッド66a、66bがスケール152bに対向し、且つヘッド66c,66dが、スケール152eに対向する第5の状態で、前述のヘッドの切り換え及びつなぎ処理を行った後、復帰したヘッド66bを含む3つのヘッド66a、66b、66dの計測値を位置制御に用いながら、ヘッド66cの計測が不能となるまでの基板ホルダ34の移動中に、複数の位置でそれぞれ、前述した手順で、スケール152bとスケール152eとから成る座標系の格子補正情報(オフセット)を取得しても良い。すなわち、基板ホルダ34の位置計測及び位置制御に用いる3つのヘッドが対向する少なくとも2つのスケール152の組み合わせ毎に1つの格子補正情報ではなく、複数の格子補正情報を取得しても良い。また、基板ホルダ34の位置計測及び位置制御に用いる3つのヘッドと、冗長な1つのヘッドと、を含む4つのヘッドが同じ組み合わせの少なくとも2つのスケール152と対向している間、上記手法を用いて実質的に連続して格子補正情報を取得しても良い。この場合、組み合わせが同じ少なくとも2つのスケール152において4つのヘッドが対向する期間(区間)の全域に渡って格子補正情報を取得することが可能となる。なお、基板ホルダ34の位置計測及び位置制御に用いる3つのヘッドが対向する少なくとも2つのスケール152の組み合わせ毎に取得する格子補正情報は同数でなくても良く、例えばスケールの組み合わせによって取得する格子補正情報の数を異ならせても良い。例えば、露光動作において3つのヘッドが対向する少なくとも2つのスケール152の組み合わせと、露光動作以外(アライメント動作、基板交換動作など)において3つのヘッドが対向する少なくとも2つのスケール152の組み合わせで、格子補正情報の数を異ならせても良い。また、本実施形態では、一例として、基板ホルダ34への基板のロード前、あるいはロード後かつ基板処理動作(露光動作やアライメント動作などを含む)前に、基板ホルダ34の位置計測及び位置制御に用いる3つのヘッドが対向する少なくとも2つのスケール152の全ての組み合わせについて格子補正情報を取得して記憶装置に記憶しておき、定期的または随時、格子補正情報の更新を行っていく。格子補正情報の更新は、例えば基板処理動作を行える状態であれば、基板処理動作中も含めて任意のタイミングで行って良い。
【0119】
なお、実際には、一度必要な全ての格子補正情報(オフセットΔX、ΔY、Δθz)を取得した後は、ヘッドの切り換えが行われる度にオフセットΔX、ΔY、Δθzの更新を行っても良いが、必ずしもこのようにする必要はなく、所定回数のヘッドの切り換えが行われる毎、あるいは所定枚数の基板の露光終了毎など、予め定めたインターバルでオフセットΔX、ΔY、Δθzの更新を行うこととしても良い。ヘッドの切り換えが行われない期間中に、オフセットの取得、更新を行っても良い。また、上述のオフセット更新は露光動作前に行っても良いし、必要であれば、露光動作中に行っても良い。
【0120】
なお、上記の各オフセットを用いて、基板エンコーダシステム50の計測情報(位置座標)ではなく、例えば基板ホルダ34の駆動の際の位置決め又は位置制御の目標値を補正することとしても良く、この場合には、基板ホルダ34の位置誤差(目標値の補正が行われなかった場合に発生するグリッド誤差に起因する位置誤差)を補償することが可能になる。
【0121】
ところで、スケール(格子領域)とヘッドとを用いるエンコーダシステムでは、スケール又はヘッド、あるいは計測方向以外の方向(非計測方向)に関する両者の相対運動などに起因して計測誤差が生じることが知られている。スケールに起因する計測誤差(以下、スケール起因誤差と呼ぶ)としては、スケールに形成された格子領域の変形、変位、平坦性、あるいは形成誤差などに起因する計測誤差がある。また、ヘッドに起因する誤差(以下、ヘッド起因誤差と呼ぶ)としては、ヘッドの変位(計測方向の変位の他、回転、倒れなども含む)又は光学特性に起因する計測誤差がある。この他、アッベ起因誤差も生じることが知られている。
【0122】
本第2の実施形態に係る液晶露光装置では、上述のようなエンコーダシステムの計測誤差を補償するため、補正情報が用いられる。ここで、エンコーダの計測誤差を求めれば、その計測誤差をそのまま補正情報として用いることができる。
【0123】
最初に、一対のヘッドユニット60の下端側に設けられた各2つのヘッド66a、66b、及び66c、66dとこれらが対向するスケール152とから構成されるエンコーダシステム(以下、ホルダエンコーダシステムと呼ぶ)の計測誤差について説明する。
【0124】
〈スケール起因誤差〉〈スケールの凹凸(平坦性)に起因する計測誤差の補正情報〉
ホルダエンコーダシステムの各ヘッドの光軸がZ軸にほぼ一致しており、かつ基板ホルダ34のピッチング量、ローリング量及びヨーイング量が、全てゼロの場合には、基板ホルダ34の姿勢に起因する各エンコーダの計測誤差は生じない筈である。しかし、実際には、このような場合であっても各エンコーダの計測誤差はゼロとはならいない。これは、スケール152の格子面(例えば表面)が理想的な平面ではなく、多少の凹凸が存在するからである。スケールの格子面に凹凸があると、基板ホルダ34がXY平面と平行に動いた場合でも、ヘッドに対してスケール格子面はZ軸方向に変位したり(上下動したり)、傾斜したりすることになる。これは、結果的にヘッドとスケールとに非計測方向に関する相対運動が生じることに他ならず、このような相対運動は、計測誤差の要因となることは、前述したとおりである。
【0125】
そこで、本第2の実施形態に係る液晶露光装置では、例えば、メンテナンス時等に、主制御装置90は、基板ホルダ34を、そのピッチング量、ローリング量及びヨーイング量を全てゼロに維持した状態で、測長の基準となる計測装置、例えば干渉計システムで基板ホルダ34のX位置を計測しつつ、基板ホルダ34が固定された微動ステージ32(以下、適宜、「基板ホルダ34」と略記する)を、+X方向又は-X方向に移動させる。かかる計測を実現するため、本実施形態では、メンテナンス時等には、基板ホルダ34に、平坦度の高い所定面積の反射面を有する反射部材が必要な数取付けられる。これに限らず、干渉計システムの使用を想定して、基板ホルダ34の各端面の所定位置に平坦度の高い所定面積の反射面を予め形成しても良い。
【0126】
上記の基板ホルダ34のX軸方向の移動中に、主制御装置90は、高い計測分解能を有するセンサを用いてスケール152表面のZ位置計測を行い、センサの計測値と干渉計システムの計測値とを所定のサンプリング間隔で取り込み、記憶装置に保存する。ここで、基板ホルダ34の移動は、干渉計システムの空気揺らぎに起因する計測誤差が無視できる程度の低い速度で行うことが望ましい。そして、主制御装置90は、その取り込んだ各計測値に基づいてセンサの計測値と干渉計の計測値との関係を求める。この関係として、例えばスケール格子面(2次元グレーティングRGの格子面)の凹凸を表す関数Z=f(x)を求めることができる。ここで、xは、干渉計で計測される基板ホルダ34のX位置である。なお、スケール格子面の凹凸をx,yの関数として求める必要がある場合には、例えば、Yヘッド66yの計測値に基づいて、所定ピッチで基板ホルダ34をY軸方向に移動して位置決めし、上述したように基板ホルダ34をX軸方向に移動させながら、干渉計の計測値とセンサの計測値とを同時に取り込むことを、位置決め位置毎に繰り返せば良い。これにより、スケール152表面の凹凸を表す関数Z=g(x,y)が求められる。ここで、iは、複数のスケール152の識別のための番号である。
【0127】
なお、例えば米国特許第8,675,171号明細書に開示されるように、ホルダエンコーダシステムそのものを用いて、スケール格子面の凹凸を表す関数Z=f(x)、又はZ=g(x,y)を求めても良い。具体的には、ホルダエンコーダシステムのいずれかのエンコーダヘッドについて、上記米国特許明細書に開示される手法で基板ホルダ34のチルト動作に対して感度を持たない点、すなわち基板ホルダ34のXY平面に対する傾斜角度によらず、エンコーダの計測誤差がゼロになる特異点を見つける動作を、スケール上の複数の計測点について行うことにより、スケール格子面の凹凸を表す関数Z=f(x)、又はZ=g(x,y)を求めても良い。なお、スケール格子面の凹凸情報は、関数に限らず、マップの形式で記憶しても良い。
【0128】
〈スケールの格子ピッチの補正情報及び格子変形の補正情報〉
エンコーダのスケールは、使用時間の経過と共に熱膨張その他により回折格子が変形したり、回折格子のピッチが部分的は又は全体的に変化したりする等、機械的な長期安定性に欠ける。このため、その計測値に含まれる誤差が使用時間の経過と共に大きくなるので、これを補正する必要がある。
【0129】
スケールの格子ピッチの補正情報及び格子変形の補正情報は、例えば、液晶露光装置のメンテナンス時等に、例えば次のようにして取得される。この取得動作に先立って、上述した各スケールの格子面の凹凸情報の計測が行われ、凹凸を表す関数Z=f(x)、又はZ=g(x,y)が、記憶装置内に記憶されているものとする。
【0130】
主制御装置90は、まず、記憶装置内に記憶されている関数Z=f(x)(又はZ=g(x,y))を、内部メモリに読み込む。
【0131】
次に、主制御装置90は、基板ホルダ34を、そのピッチング量、ローリング量及びヨーイング量を全てゼロに維持した状態で、例えば前述の干渉計システムで基板ホルダ34のX位置を計測しつつ基板ホルダ34を+X方向又は-X方向に移動させる。この基板ホルダ34の移動も、干渉計システムの空気揺らぎに起因する計測誤差が無視できる程度の低い速度で行うことが望ましい。この移動中に、主制御装置90は、上述の関数z=f(x)を用いてヘッド66aと取得対象のスケール152とによって構成されるXリニアエンコーダ(以下、適宜、Xエンコーダと略記する)の計測値(出力)を補正しながら、その補正後の計測値と干渉計の計測値とを、所定のサンプリング間隔で取り込み、その取り込んだ各計測値に基づいてXリニアエンコーダの計測値(Xエンコーダの出力-関数f(x)に対応する計測値)と干渉計の計測値との関係を求める。すなわち、このようにして、主制御装置90は、基板ホルダ34の移動に伴ってヘッド66aに順次対向配置されるスケール152の2次元グレーティングRGのX軸方向を周期方向とする回折格子(X回折格子)の格子ピッチ(隣接する格子線の間隔)及び該格子ピッチの補正情報を求める。この格子ピッチの補正情報としては、例えば、横軸が干渉計の計測値、縦軸がエンコーダの計測値(スケール面の凹凸に起因する誤差が補正された計測値)とした場合の両者の関係を曲線で示す補正マップなどを求めることができる。
【0132】
上述の格子ピッチ及び該格子ピッチの補正情報の取得を、第1格子群を構成する隣接する複数のスケール152について行う場合、ヘッド66aからの計測ビームが最初のスケール152に当たらなくなった後、隣接するスケールに当たり始め、ヘッドからの検出信号の出力が再開された時点でヘッド66aと取得対象のスケール152とによって構成されるXリニアエンコーダの計測値の初期値を、その時点の干渉計の計測値に設定して、その隣接するスケール152についての計測を開始する。このようにして、第1格子群を構成するスケール152の列に対する計測が行われる。
【0133】
第2格子群を構成する各スケール152についても上記と同様にして(ただし、ヘッド66aに代えて、ヘッド66dを用いて)格子ピッチ及び該格子ピッチの補正情報の取得が行われる。
【0134】
上記の格子ピッチの補正情報の取得と並行して、ヘッド66bの計測値と干渉計の計測値との取り込みを所定のサンプリング間隔で行い、取り込んだ各計測値に基づいてヘッド66bの計測値と干渉計の計測値との関係を求めても良い。ヘッド66bの計測値の取り込みに際し、ヘッド66b(ヘッド66bと対向するスケール152とによって構成されるYリニアエンコーダ(以下、適宜、Yエンコーダと略記する)の初期値を所定の値、例えば零として、計測を開始する。これにより、ヘッド66bが対向するスケール152の2次元グレーティングRGのY軸方向を周期方向とする回折格子(Y回折格子)の格子線曲がり及びその補正情報を得ることができる。この格子線曲がりの補正情報としては、例えば、横軸が干渉計の計測値、縦軸がヘッド66bの計測値とした場合の両者の関係を曲線で示す補正マップなどを求めることができる。上述の格子線曲がりの補正情報の取得を、第1格子群を構成する隣接する複数のスケール152について行う場合、ヘッド66bからの計測ビームが最初のスケール152に当たらなくなった後、隣接するスケールに当たり始めヘッドからの検出信号の出力が再開された時点でヘッド66bの計測値の初期値を、所定の値、例えば零として、計測を再開する。
【0135】
第2格子群を構成する各スケール152についても上記と同様にして(ただし、ヘッド66bに代えて、ヘッド66cを用いて)格子線曲がりの補正情報の取得が行われる。なお、スケール毎に2次元グレーティングRGを撮像して得られる格子情報(ピッチ、変形など)に基づいて補正情報を取得しても良い。
【0136】
〈非計測方向に関するヘッドとスケールとの相対運動に起因する計測誤差〉
ところで基板ホルダ34が計測方向、例えばX軸方向(又はY軸方向)とは異なる方向に移動し、ヘッド66x(又はヘッド66y)とスケール52との間に計測したい方向以外の相対運動(非計測方向の相対運動)が生じると、殆どの場合、それによってXエンコーダ(又はYエンコーダ)に計測誤差が生じる。
【0137】
そこで、本実施形態では、上述した非計測方向へのヘッドとスケールとの相対運動に起因する各エンコーダの計測誤差を補正する補正情報を、例えば露光装置の立ち上げ時、あるいはメンテナンス時などに次のようにして取得している。
【0138】
a. まず、主制御装置90は、補正情報の取得対象のエンコーダシステムとは異なる計測システム、例えば前述の干渉計システムなどの計測値をモニタしつつ、基板駆動系93を介して基板ホルダ34を駆動し、ヘッド66aを、第1格子群の任意のスケール152の任意の領域(便宜上、キャリブレーション領域と呼ぶ)に対向させる。
【0139】
b. そして、主制御装置90は干渉計システムの計測値に基づいて、基板ホルダ34のローリング量θx及びヨーイング量θzをともにゼロ、且つピッチング量θyが所望の値α0(ここでは、α0=200μradであるものとする。)となるように、基板ホルダ34を駆動し、その駆動後にヘッド66aからスケール152のキャリブレーション領域に計測ビームを照射し、その反射光を受光したヘッド66aからの光電変換信号に応じた計測値を内部メモリに記憶する。
【0140】
c. 次に、主制御装置90は、干渉計システムの計測値に基づいて基板ホルダ34の姿勢(ピッチング量θy=α0、ヨーイング量θz=0、ローリング量θx=0)を維持しつつ、基板ホルダ34を所定範囲内、例えば-100μm~+100μmの範囲内でZ軸方向に駆動し、その駆動中にヘッド66aからスケール152のキャリブレーション領域に検出光を照射しつつ、所定のサンプリング間隔で、その反射光を受光したヘッド66aからの光電変換信号に応じた計測値を順次取り込み、内部メモリに記憶する。なお、上記の計測に際し、基板ホルダ34のZ軸方向、θx方向及びθy方向の位置を、Z・チルト位置計測系98で計測することも可能である。
【0141】
d. 次いで、主制御装置90は、干渉計システムの計測値に基づいて基板ホルダ34のピッチング量θyを(α=α0-Δα)に変更する。
【0142】
e. 次いで、その変更後の姿勢について、上記c.と同様の動作を繰り返す。
f. その後、上記d.とeとの動作を交互に繰り返して、ピッチング量θyが例えば-200μrad<θx<+200μradの範囲について、Δα(rad)、例えば40μrad間隔で上記Z駆動範囲内のヘッド66aの計測値を取り込む。
【0143】
g. 次に、上記b.~e.の処理によって得られた内部メモリ内の各データを、横軸をZ位置、縦軸をエンコーダカウント値とする2次元座標系上にプロットし、ピッチング量が同じときのプロット点を順次結び、ピッチング量がゼロのライン(中央の横のライン)が、原点を通るように、縦軸方向に関して横軸をシフトすることで、基板ホルダ34のZレベリングに応じたエンコーダ(ヘッド)の計測値の変化特性を示す図23のグラフが得られる。
【0144】
この図23のグラフ上の各点の縦軸の値は、ピッチング量θy=αにおける、各Z位置におけるエンコーダの計測誤差に他ならない。そこで、主制御装置90では、このグラフ上の各点のピッチング量θy、Z位置、エンコーダ計測誤差をテーブルデータとし、そのテーブルデータを、そのヘッド66aとスケール152のX回折格子とによって構成されるXエンコーダのホルダ位置起因誤差補正情報としてメモリに記憶する。あるいは、主制御装置90は、計測誤差を、Z位置z、ピッチング量θyの関数とし、例えば最小二乗法により未定係数を算出することでその関数を求め、その関数をホルダ位置起因誤差補正情報として記憶装置に記憶する。
【0145】
h. 次に、主制御装置60は、干渉計システムの計測値をモニタしつつ、基板駆動系93を介して基板ホルダ34を駆動し、ヘッド66d(もう一つのXヘッド66x)を、第2格子群の任意のスケール152の任意の領域(キャリブレーション領域)に対向させる。
【0146】
i. そして、主制御装置90は、そのヘッド66dについて、上述と同様の処理を行い、そのヘッド66dとスケール152のX回折格子とによって構成されるXエンコーダの補正情報を、記憶装置に記憶する。
【0147】
j. 以後同様にして、ヘッド66bと第1格子群の任意のスケール152のY回折格子とによって構成されるYエンコーダ、及びヘッド66cと第2格子群の任意のスケール152のY回折格子とによって構成されるYエンコーダの補正情報を、それぞれ求め、記憶装置に記憶する。
【0148】
次に、主制御装置90は、上述のピッチング量を変化させた場合と同様の手順で、基板ホルダ34のピッチング量及びローリング量をともにゼロに維持したまま、基板ホルダ34のヨーイング量θzを-200μrad<θz<+200μradの範囲について順次変化させ、各位置で、基板ホルダ34を所定範囲内、例えば-100μm~+100μmの範囲内でZ軸方向に駆動し、その駆動中に所定のサンプリング間隔で、ヘッドの計測値を、順次取り込み、内部メモリに記憶する。このような計測を、全てのヘッド66a~66dについて行い、前述と同様の手順で、内部メモリ内の各データを、横軸をZ位置、縦軸をエンコーダカウント値とする2次元座標上にプロットし、ヨーイング量が同じときのプロット点を順次結び、ヨーイング量がゼロのライン(中央の横のライン)が、原点を通るように、横軸をシフトすることで、図23と同様のグラフを得る。そして、主制御装置90は、得られた図23と同様のグラフ上の各点のヨーイング量θz、Z位置z、計測誤差をテーブルデータとし、そのテーブルデータを補正情報として記憶装置に記憶する。あるいは、主制御装置90は、計測誤差を、Z位置z、ヨーイング量θzの関数とし、例えば最小二乗法により未定係数を算出することでその関数を求め、その関数を補正情報として記憶装置に記憶する。
【0149】
ここで、基板ホルダ34のピッチング量がゼロでなく、かつヨーイング量がゼロでない場合における、基板ホルダ34のZ位置zのときの、各エンコーダの計測誤差は、そのZ位置zのときの、上記のピッチング量に応じた計測誤差と、ヨーイング量に応じた計測誤差との単純な和(線形和)であると考えて差し支えない。
【0150】
以下では、説明の簡略化のため、各XエンコーダのXヘッド(ヘッド66a、66d)について、次式(4)で示されるような、計測誤差Δxを表す、基板ホルダのピッチング量θy、ヨーイング量θz、Z位置zの関数が求められ、記憶装置内に記憶されているものとする。また、各YエンコーダのYヘッド(ヘッド66b、66c)について、次式(5)で示されるような、計測誤差Δyを表す、基板ホルダ34のローリング量θx、ヨーイング量θz、Z位置zの関数が求められ、記憶装置内に記憶されているものとする。
【0151】
Δx=f(z,θy,θz)=θy(z-a)+θz(z-b) ……(4)
Δy=g(z,θx,θz)=θx(z-c)+θz(z-d) ……(5)
上式(4)において、aは、Xエンコーダの補正情報の取得のためにピッチング量を変化させた場合の図23のグラフの、ピッチング量が同じときのプロット点をそれぞれ結んだ各直線が交わる点のZ座標であり、bは、Xエンコーダの補正情報の取得のためにヨーイング量を変化させた場合の図23と同様のグラフの、ヨーイング量が同じときのプロット点をそれぞれ結んだ各直線が交わる点のZ座標である。また、上式(5)において、cは、Yエンコーダの補正情報の取得のためにローリング量を変化させた場合の図23と同様のグラフの、ローリング量が同じときのプロット点をそれぞれ結んだ各直線が交わる点のZ座標であり、dは、Yエンコーダの補正情報の取得のためにヨーイング量を変化させた場合の図23と同様のグラフの、ヨーイング量が同じときのプロット点をそれぞれ結んだ各直線が交わる点のZ座標である。
【0152】
なお、上記のΔxやΔyは、Xエンコーダ又はYエンコーダの非計測方向(例えばθy方向又はθx方向、θz方向及びZ軸方向)に関する基板ホルダ34の位置が、Xエンコーダ又はYエンコーダの計測値に影響する度合いを示すものであるから、本明細書では、ホルダ位置起因誤差と呼び、このホルダ位置起因誤差をそのまま補正情報として用いることができるので、この補正情報をホルダ位置起因誤差補正情報と呼ぶものとする。
【0153】
〈ヘッド起因誤差〉
ヘッド起因誤差としては、代表的にヘッドの倒れに起因するエンコーダの計測誤差が挙げられる。ヘッド66x(又は66y)の光軸がZ軸に対して傾いている(ヘッド66x(又は66y)が傾いている)状態から、基板ホルダ34がZ軸方向に変位した場合(ΔZ≠0,ΔX=0(又はΔY=0))について考える。この場合、ヘッドが傾いていることにより、Z変位ΔZに比例して位相差φ(X回折格子又はY回折格子)からの2つの戻り光束間の位相の差)に変化が生じ、結果として、エンコーダの計測値が変化する。なお、ヘッド66x(66y)に倒れが生じていなくても、例えばヘッドの光学特性(テレセントリシティなど)などによっては、2つの戻り光束の光路の対称性が崩れ、同様にカウント値が変化する。すなわち、エンコーダシステムの計測誤差の発生要因となるヘッドユニットの特性情報はヘッドの倒れだけでなくその光学特性なども含む。
【0154】
本実施形態に係る液晶露光装置では、一対のYスライドテーブル62のそれぞれに一対のヘッド66a、66b、及び一対のヘッド66c、66dが固定されているので、Yスライドテーブル62のθx方向及びθy方向の傾斜量を、干渉計その他の変位センサにより計測することで、ヘッドの倒れを計測することができる。
【0155】
ただし、本実施形態に係る液晶露光装置では、次の点に留意する必要がある。
【0156】
ホルダエンコーダシステムによる計測では、前述のヘッド66a~66dのうちの3つの計測値を用いて基板ホルダ34の位置(X、Y、θz)が算出されるが、この算出に用いられるヘッド66a、66b、66c、66dそれぞれのX座標値p及びY座標値q(i=1、2、3、4)は、前述の4つのXリニアエンコーダ96xと、4つのYリニアエンコーダ96yの出力から算出される一対のヘッドユニット60(図1参照)それぞれのX軸方向、及びY軸方向の位置情報(Yスライドテーブル62の中心のX軸方向、及びY軸方向の位置)から、各ヘッドのYスライドテーブル62の中心に対する既知の位置関係に基づいて算出される。以下では、4つのXリニアエンコーダ96xと、4つのYリニアエンコーダ96yとから成るエンコーダシステムを、ヘッドエンコーダシステムと呼ぶ。したがって、ヘッドエンコーダシステムの計測誤差は、ホルダエンコーダシステムの各ヘッドのX変位、Y変位に起因する計測誤差の要因となる。
【0157】
また、一対のYスライドテーブル62のそれぞれに一対のヘッド66a、66b、及び一対のヘッド66c、66dが固定されているので、Yスライドテーブル62にθz方向の回転誤差が発生すれば、ヘッド66a~66dに、対向する2次元グレーティングRGに対するθz回転誤差が発生する。これにより、前述の式(4)、(5)から明らかなように、ヘッド66a~66dに計測誤差が発生する。したがって、Yスライドテーブル62のθz回転を、干渉計その他の変位センサで計測しておくことが望ましい。本実施形態では、ヘッドエンコーダシステムにより、Yスライドテーブル62のθz方向の回転量(ヨーイング量)、すなわちヘッド66a~66dの対向する2次元グレーティングRGに対するθz回転誤差を検出することができる。
【0158】
〈アッベ起因誤差〉
ところで、基板ホルダ34上の各スケール格子面(2次元グレーティング表面)の高さ(Z位置)と、露光中心(前述の露光領域の中心)を含む基準面の高さとに誤差(又はギャップ)があると、基板ホルダ34のXY平面と平行な軸(Y軸又はX軸)回りの回転(ピッチング又はローリング)の際にエンコーダの計測値にいわゆるアッベ誤差が生じるので、この誤差を補正することが必要である。ここで、基準面とは、基板ホルダ34のZ軸方向の位置制御のための基準となる面(基板ホルダ34のZ軸方向の変位の基準となる面)、あるいは基板Pの露光動作において基板Pが一致する面であって、本実施形態では、投影光学系16の像面に一致しているものとする。
【0159】
上記の誤差の補正のためには、基準面に対する各スケール152表面(2次元グレーティング表面)の高さの差(いわゆるアッベ外し量)を正確に求めておく必要がある。これは、上記のアッベ外し量に起因するアッベ誤差を補正することが、エンコーダシステムを用いて基板ホルダ34のXY平面内の位置を正確に制御するためには必要だからである。かかる点を考慮して、本実施形態では、主制御装置90が、例えば露光装置の立ち上げ時に次のような手順で上記アッベ外し量を求めるためのキャリブレーションを行っている。
【0160】
まず、このキャリブレーション処理の開始に当たり、主制御装置90は、基板ホルダ34を駆動して、第1格子群の1つのスケール152をヘッド66aの下方に位置させると同時に、第2格子群の1つのスケール152をヘッド66dの下方に位置させる。例えば、図20(A)に示されるように、スケール152bをヘッド66aの下方に位置させると同時に、スケール152eをヘッド66dの下方に位置させる。
【0161】
次に、主制御装置90は、前述した干渉計システムの計測結果に基づき、基板ホルダ34のXY平面に対するθy方向の変位(ピッチング量)Δθyが零でない場合には、干渉計システムの計測結果に基づき、そのピッチング量Δθyが零となるように基板ホルダ34を、露光中心を通る、Y軸に平行な軸回りに傾斜させる。このとき、干渉計システムは、各干渉計(各計測軸)について必要な全ての補正が完了しているので、このような基板ホルダ34のピッチング制御は可能である。
【0162】
そして、このような基板ホルダ34のピッチング量の調整後、ヘッド66a、66dと、これらが対向するスケール152b、152eとでそれぞれ構成される2つのXエンコーダの計測値xb0,xe0を取得する。
【0163】
次に、主制御装置90は、干渉計システムの計測結果に基づき、基板ホルダ34を角度φだけ露光中心を通るY軸に平行な軸回りに傾斜させる。そして、上記2つのXエンコーダの計測値の計測値xb1,xe1を取得する。
【0164】
そして、主制御装置90は、上で取得した2つのエンコーダの計測値xb0,xe0及びxb1,xe1、並びに上記角度φに基づいて、スケール152b、152eのいわゆるアッベ外し量hb,heを算出する。この場合、φは微小角であるから、sinφ=φ、cosφ=1が成立する。
【0165】
b=(xb1-xb0)/φ ……(6)
e=(xe1-xe0)/φ ……(7)
主制御装置90は、上述と同様の手順で、第1格子群の1つのスケール152と、これにY軸方向でほぼ対向する第2格子群の1つのスケール152とを組として、残りのスケールについても、アッベ外し量を、それぞれ取得する。なお、第1格子群の1つのスケール152と、第2格子群の1つのスケール152とについて、必ずしも同時にアッベ外し量の計測を行う必要はなく、各スケール152について、別々にアッベ外し量を計測しても良い。
【0166】
上式(6)、(7)からわかるように、基板ホルダ34のピッチング量をφyとすると、基板ホルダ34のピッチングに伴う、各Xエンコーダのアッベ誤差Δxabbは、次式(8)で表せる。
【0167】
Δxabb=h・φy ……(8)
式(8)において、hは、Xエンコーダを構成するXヘッドが対向するスケール152のアッベ外し量である。
【0168】
同様に、基板ホルダ34のローリング量をφxとすると、基板ホルダ34のローリングに伴う、各Yエンコーダのアッベ誤差Δyabbは、次式(9)で表せる。
【0169】
Δybb=h・φx ……(9)
式(9)において、hは、Yエンコーダを構成するYヘッドが対向するスケール152のアッベ外し量である。
【0170】
主制御装置90は、上述のようにして求めたそれぞれのスケール152のアッベ外し量hを記憶装置に記憶する。これにより、主制御装置90は、ロット処理中などの実際の基板ホルダ34の位置制御に際して、ホルダエンコーダシステムによって計測されたXY平面(移動面)内における基板ホルダ34の位置情報に含まれるアッベ誤差、すなわちスケール152格子面(2次元グレーティングRG表面)の前述の基準面に対するアッベ外し量hに起因する、基板ホルダ34のピッチング量に応じた各Xエンコーダの計測誤差、又はスケール152格子面(2次元グレーティングRG表面)の前述の基準面に対するアッベ外し量hに起因する、基板ホルダ34のローリング量に応じた各Yエンコーダの計測誤差を、式(8)又は式(9)に基づいて補正しつつ、XY平面内の任意の方向に関して基板ホルダ34を高精度に駆動(位置制御)することが可能になる。
【0171】
前述したように、ヘッドエンコーダシステムの計測誤差は、ホルダエンコーダシステムの各ヘッドのX変位、Y変位に起因する計測誤差の要因となる。したがって、ヘッドエンコーダシステムについても、スケール起因誤差、非計測方向に関するヘッドとスケールとの相対運動に起因する計測誤差、及びヘッド起因誤差を、露光装置の立ち上げ時、あるいはメンテナンス時などに取得しておくことが望ましい。ヘッドエンコーダシステムの上述の各種の計測誤差及びその補正情報は、基本的には、前述したホルダエンコーダシステムの計測誤差及びその補正情報と同様にして取得できるので、詳細説明は省略する。
【0172】
本第2の実施形態では、ロット処理中などの実際の基板ホルダ34の位置制御に際して、主制御装置90は、基板ホルダ34のX軸方向の位置の変化に伴い、ホルダエンコーダシステムのヘッド66a~66dの切り換えを行いつつ、ヘッド66a~66d、該ヘッド66a~66dのうちの3つが対向する少なくとも2つのスケール、及び基板ホルダ34の移動の少なくもと1つに起因して生じる基板位置計測系(Z・チルト位置計測系98及び基板エンコーダシステム50を含む)の計測誤差を補償するための補正情報(便宜上、第1の補正情報と呼ぶ)、スケール56と、該スケール56のXスケール及びYスケールにそれぞれ対向する各一対のXヘッド64x及びYヘッド64yとの一方に起因して生じるヘッドエンコーダシステムの計測誤差を補償するための補正情報(便宜上、第2の補正情報と呼ぶ)と、基板位置計測系で計測される位置情報と、に基づいて、基板駆動系93を制御する。
【0173】
ここで、基板位置計測系で計測される位置情報には、Z・チルト位置計測系98による微動ステージ32の位置(Z、θx、θy)の計測情報、基板エンコーダシステム50の一部を構成するヘッドエンコーダシステムによるYスライドテーブル62(すなわちヘッド66a~66d)の位置(X、Y、θz)の計測情報、及び基板エンコーダシステム50の一部を構成するホルダエンコーダシステムによる基板ホルダ34の位置(X、Y、θz)の計測情報が含まれる。第1補正情報には、前述したホルダエンコーダシステムの各種の計測誤差(スケール起因誤差、非計測方向に関するヘッドとスケールとの相対運動に起因する計測誤差(ホルダ位置起因誤差)、ヘッド起因誤差、及びアッベ誤差)の補正情報が含まれる。第2補正情報には、前述したヘッドエンコーダシステムの各種の計測誤差(スケール起因誤差、非計測方向に関するヘッドとスケールとの相対運動に起因する計測誤、ヘッド起因誤差)の補正情報が含まれる。
【0174】
したがって、例えば基板Pの露光時などに、基板ホルダ34のX軸方向と異なる方向の位置情報(傾斜情報を含み、例えばθy方向の回転情報など)と、Xヘッドが対向するスケール152の特性情報(例えば、2次元グレーティングRGの格子面の平面度、及び/又は格子形成誤差など)と、スケール152(2次元グレーティングRGの格子面)のアッベ外し量に起因するアッベ誤差の補正情報と、に基づいて、補正された基板ホルダ34のX位置を計測するXエンコーダ(ヘッド66a、66d)の計測値C、Cが、前述の基板ホルダ34の位置座標(X,Y,θz)を算出するために用いられる。より具体的には、主制御装置90により、基板ホルダ34のX軸方向とは異なる方向(非計測方向)の位置情報、例えばZ・チルト位置計測系98で計測される基板ホルダ34のθy方向、θz方向及びZ軸方向の位置情報に応じたホルダ位置起因誤差の補正情報(前述した式(4)で算出される補正情報)と、2次元グレーティングRGのX回折格子の格子ピッチの補正情報(これはスケール格子面(2次元グレーティングRGの表面)の凹凸(平面度)が考慮された補正情報である)と、2次元グレーティングRGのX回折格子の格子線の曲がり(形成時の誤差及び経時的変化など)の補正情報と、スケール52(2次元グレーティングRGの格子面)のアッベ外し量に起因するアッベ誤差の補正情報と、に基づいて、X軸方向に関する基板ホルダ34の位置情報を計測するXエンコーダ(ヘッド66a、66d)の計測値が補正され、その補正後の計測値C、Cが、前述の基板ホルダ34の位置座標(X,Y,θz)を算出するために用いられる。
【0175】
同様に、基板ホルダ34のY軸方向と異なる方向の位置情報(傾斜情報を含み、例えばθx方向の回転情報など)と、Yヘッドが対向するスケール152の特性情報(例えば、2次元グレーティングRGの格子面の平面度、及び/又は格子形成誤差など)と、スケール152(2次元グレーティングRGの格子面)のアッベ外し量に起因するアッベ誤差の補正情報と、に基づいて、補正された基板ホルダ34のY位置を計測するYエンコーダ(ヘッド66b、66c)の計測値C、Cが、前述の基板ホルダ34の位置座標(X,Y,θz)を算出するために用いられる。より具体的には、主制御装置90により、基板ホルダ34のY軸方向とは異なる方向(非計測方向)の位置情報、例えばZ・チルト位置計測系98で計測され、基板ホルダ34のθx方向、θz方向及びZ軸方向の位置情報に応じたホルダ位置起因誤差の補正情報(前述した式(5)で算出される補正情報)と、2次元グレーティングRGのY回折格子の格子ピッチの補正情報(これはスケール格子面(2次元グレーティングRGの表面)の凹凸(平面度)が考慮された補正情報である)と、2次元グレーティングRGのY回折格子の格子線の曲がり(形成時の誤差及び経時的変化など)の補正情報と、スケール52(2次元グレーティングRGの格子面)のアッベ外し量に起因するアッベ誤差の補正情報と、に基づいて、Y軸方向に関する基板ホルダ34の位置情報を計測するYエンコーダ(ヘッド66b、66c)の計測値が補正され、その補正後の計測値C、Cが、前述の基板ホルダ34の位置座標(X,Y,θz)を算出するために用いられる。
【0176】
また、本実施形態では、ヘッドエンコーダシステムの各ヘッド64x、64yと、各ヘッドが対向するスケール56とによって構成されるXリニアエンコーダ、Yリニアエンコーダのそれぞれについても、スケール起因誤差、非計測方向に関するヘッドとスケールとの相対運動に起因する計測誤差、及びヘッド起因誤差を、それぞれの補正情報を用いて補正することができるので、結果的に、その補正後のヘッドエンコーダシステムの各エンコーダの計測値を用いて算出されるホルダエンコーダシステムの各ヘッドの位置座標(p、q)に誤差が極力含まれないこととなる。
【0177】
したがって、本実施形態では、上述の補正後のXエンコーダ(ヘッド66a、66d)の計測値及び補正後のYエンコーダ(ヘッド66b、66c)の計測値のうちの3つを用いて、かつ上述のようにして算出される誤差が極力含まれない、ホルダエンコーダシステムの各ヘッドの位置座標(p、q)を用いて、基板ホルダ34の位置座標(X,Y,θz)が算出されつつ、その基板ホルダ34の移動が制御される。これにより、基板ホルダの位置制御に用いられる3つのヘッド(ヘッド66a~66dのうちの3つ)と対向するスケール152とから成る3つのエンコーダの、前述したスケール起因誤差、ホルダ位置起因誤差、ヘッド起因誤差及びアッベ誤差の全てを補償するように、基板ホルダ34が駆動(位置制御)される。
【0178】
ただし、前述した切り換え後に用いられるエンコーダ(ヘッド)がヘッド66cであるとすると、該ヘッド66cの計測値の初期値を求める際には、前述のアフィン変換の式(3)で求められるCは、前述した各種のエンコーダの計測誤差が補正された補正済みのエンコーダの計測値であるから、主制御装置90は、前述したホルダ位置起因誤差補正情報、スケールの格子ピッチの補正情報(及び格子変形の補正情報)、アッベ外し量(アッベ誤差補正情報)などを用いて、計測値Cを逆補正し、補正前の生値C’を算出し、その生値C’をエンコーダ(ヘッド66c)の計測値の初期値として求める。
【0179】
ここで、逆補正とは、何ら補正を行わないエンコーダの計測値C’を、前述のホルダ位置起因誤差補正情報、スケール起因誤差補正情報(例えば、スケールの格子ピッチの補正情報(及び格子変形の補正情報)など)、及びアッベ外し量(アッベ誤差補正情報)などを用いて補正した補正後のエンコーダの計測値がCであるとの仮定の下、計測値Cに基づいて計測値C’を算出する処理を意味する。
【0180】
以上説明した本第2の実施形態に係る液晶露光装置は、前述した第1の実施形態と同等の作用効果を奏する。これに加え、本第2の実施形態に係る液晶露光装置によると、基板ホルダ34の駆動中に、基板エンコーダシステム50のXヘッド66x(Xリニアエンコーダ)とYヘッド66y(Yリニアエンコーダ)とを少なくとも各1つ含む3つのヘッド(エンコーダ)によりXY平面内における基板ホルダ34の位置情報(θz回転を含む)が計測される。そして、主制御装置90により、XY平面内における基板ホルダ34の位置が切り換えの前後で維持されるように、XY平面内における基板ホルダ34の位置情報の計測に用いるヘッド(エンコーダ)が、切り換え前に基板ホルダ34の位置計測及び位置制御に用いられていた3つのヘッド(エンコーダ)のうちのいずれかのヘッド(エンコーダ)から別のヘッド(エンコーダ)に切り換えられる。このため、基板ホルダ34の位置の制御に用いるエンコーダの切り換えが行われているにもかかわらず、切り換えの前後で基板ホルダ34のXY平面内の位置が維持され、正確なつなぎが可能になる。したがって、複数のヘッド(エンコーダ)間でヘッドの切り換え及びつなぎ(計測値のつなぎ処理)を行いながら、所定の経路に沿って正確に基板ホルダ34(基板P)をXY平面に沿って移動させることが可能になる。
【0181】
また、本第2の実施形態に係る液晶露光装置によると、例えば基板の露光中、主制御装置90により、基板ホルダ34の位置情報の計測結果と該位置情報の計測に用いられた3つのヘッドのXY平面内における位置情報((X,Y)座標値)とに基づいて、XY平面内で基板ホルダ34が駆動される。この場合、主制御装置90は、アフィン変換の関係を利用してXY平面内における基板ホルダ34の位置情報を算出しながらXY平面内で基板ホルダ34を駆動する。これにより、複数のYヘッド66y又は複数のXヘッド66xをそれぞれ有するエンコーダシステムを用いて基板ホルダ34の移動中に制御に用いるヘッド(エンコーダ)を切り換えながら、基板ホルダ34(基板P)の移動を精度良く制御することが可能になる。
【0182】
また、本第2の実施形態に係る液晶露光装置によると、基板ホルダ34のX位置に応じて異なる、基板ホルダ34の位置情報計測及び位置制御に用いられるヘッドが対向するスケールの組み合わせ毎に、前述したオフセットΔX、ΔY、Δθz(格子補正情報)が取得され、必要に応じて更新される。したがって、基板ホルダ34のX位置に応じて異なる基板ホルダ34の位置情報計測及び位置制御に用いられるヘッドが対向するスケールの組み合わせ毎の座標系間のグリッド誤差(X,Y位置誤差及び回転誤差)に起因するエンコーダの計測誤差、又は基板ホルダ34の位置誤差が補償されるように、基板ホルダ34を駆動(位置制御)することが可能となる。したがって、この点においても、基板ホルダ(基板P)を精度良く位置制御することが可能になる。
【0183】
また、本第2の実施形態に係る液晶露光装置によると、ロット処理中などの実際の基板ホルダ34の位置制御に際して、主制御装置90により、ホルダエンコーダシステムのヘッド66a~66d、該ヘッド66a~66dのうちの3つが対向する少なくとも2つのスケール、及び基板ホルダ34の移動に起因して生じる基板位置計測系(Z・チルト位置計測系98及び基板エンコーダシステム50を含む)の計測誤差を補償するための補正情報(前述の第1の補正情報)、スケール56と、該スケール56のXスケール及びYスケールにそれぞれ対向する各一対のXヘッド64x及びYヘッド64y及び両者の相対運動に起因して生じるヘッドエンコーダシステムの計測誤差を補償するための補正情報(前述の第2の補正情報)と、基板位置計測系で計測される位置情報と、に基づいて、基板駆動系93が制御される。したがって、ヘッドエンコーダシステム及びホルダエンコーダシステムをそれぞれ構成する各Xエンコーダ、Yエンコーダの前述した各種の計測誤差を補償するような基板ホルダ34の駆動制御が可能となる。この点においても、基板ホルダ(基板P)を精度良く位置制御することが可能になる。
【0184】
なお、上記第2の実施形態では、主制御装置90により、ホルダエンコーダシステムのヘッド66a~66d、該ヘッド66a~66dのうちの3つが対向する少なくとも2つのスケール、及び基板ホルダ34(微動ステージ32)の移動に起因して生じる基板位置計測系の計測誤差を補償するための補正情報(第1の補正情報)と、ヘッドエンコーダシステムの前述の計測誤差を補償するための補正情報(第2の補正情報)と、基板位置計測系で計測される位置情報と、に基づいて、基板駆動系93が制御されるものとした。しかしながら、これに限らず、主制御装置90は、基板位置計測系で計測される位置情報と、上記第1の補正情報及び第2補正情報の一方と、に基づいて、基板駆動系93が制御することとしても良い。かかる場合であっても、基板位置計測系で計測される位置情報のみに基づいて、基板駆動系を制御する場合に比べて、精度の高い基板ホルダ34の駆動(位置制御)が可能となる。
【0185】
また、上記第2の実施形態では、第1の補正情報に、ホルダエンコーダシステムのヘッド66a~66dに起因して生じる基板位置計測系の計測誤差を補償するための補正情報(ヘッド起因誤差の補正情報)、ヘッド66a~66dのうちの3つが対向する少なくとも2つのスケールに起因する基板位置計測系の計測誤差(スケール起因誤差)を補償するための補正情報(スケール起因誤差の補正情報)、及び基板ホルダ34の移動に起因して生じる基板位置計測系の計測誤差(ホルダ位置起因誤差)を補償するための補正情報の全てが含まれるもとした。しかしながら、これに限らず、ホルダエンコーダシステムについては、ヘッド起因誤差、スケール起因誤差、及びホルダ位置起因誤差の少なくとも1つを補償する補正情報を用いることとしても良い。なお、アッベ誤差(アッベ起因誤差)は、スケール起因誤差及びホルダ位置起因誤差のいずれか、又は両方に含まれる。また、スケール起因誤差の補正情報として、スケールの凹凸に起因する計測誤差の補正情報、スケールの格子ピッチの補正情報及び格子変形の補正情報の全てが、基板ホルダの34の位置制御に用いられるものとしたが、これらのスケール起因誤差のうちの少なくとも1つの補正情報を用いるのみでも良い。同様に、ヘッド起因誤差として、ヘッドの変位(傾斜、回転を含む)に起因する計測誤差と、ヘッドの光学特性に起因する計測誤差とを取り上げたが、これらのヘッド起因誤差の少なくとも1つの補正情報のみを、基板ホルダ34の位置制御に用いても良い。
【0186】
また、上記第2の実施形態では、第2の補正情報に、スケール56に起因して生じるヘッドエンコーダシステムの計測誤差(スケール起因誤差)を補償するための補正情報、スケール56のXスケール及びYスケールにそれぞれ対向する各一対のXヘッド64x及びYヘッド64yに起因して生じるヘッドエンコーダシステムの計測誤差(ヘッド起因誤差)を補償するための補正情報、及びスケール56とヘッド64x、64yとの相対運動に起因して生じる計測誤差(Yスライドテーブル位置起因誤差と呼ぶことができる)を補償するための補正情報の全てが含まれるもとした。しかしながら、これに限らず、ヘッドエンコーダシステムについては、ヘッド起因誤差、スケール起因誤差、及びYYスライドテーブル位置起因誤差の少なくとも1つを補償する補正情報を用いることとしても良い。ヘッドエンコーダシステムに関しても、スケール起因誤差の補正情報として、スケールの凹凸に起因する計測誤差の補正情報、スケールの格子ピッチの補正情報及び格子変形の補正情報のうちの少なくとも1つの補正情報を、基板ホルダ34の位置制御に用いるのみでも良い。また、ヘッド起因誤差として、ヘッドの変位(傾斜、回転を含む)に起因する計測誤差と、ヘッドの光学特性に起因する計測誤差の少なくとも1つの補正情報のみを、基板ホルダ34の位置制御に用いても良い。また、ヘッド起因誤差、スケール起因誤差、ホルダ起因誤差などについて個別に補正情報を取得しても良いし、少なくとも2つの計測誤差について1つの補正情報を取得しても良い。
【0187】
また、基板ホルダ34の位置情報を計測するエンコーダシステムの各エンコーダと同様に、マスクエンコーダシステムの各ヘッド(エンコーダ)についても各エンコーダの計測方向とは異なる方向に関する各ヘッドと該各ヘッドが対向するスケールとの相対運動に起因するヘッド(エンコーダ)の計測誤差の補正情報を、前述と同様にして求め、該補正情報を用いてそのヘッド(エンコーダ)の計測誤差を補正するようにしても良い。
【0188】
なお、上記第2の実施形態に係る液晶露光装置において、前述したメンテナンス時等に行われる、ホルダエンコーダシステムのスケール起因誤差(及びその補正情報)等の取得に用いられた干渉計システムと同様の干渉計システムを、装置内に設けても良い。かかる場合には、メンテナンス時等のみでなく、装置の稼働中においても、適宜ホルダエンコーダシステムのスケール起因誤差の補正情報等の取得、更新を行うことが可能になる。同様に、ヘッドエンコーダシステムのスケール起因誤差(及びその補正情報)等の取得に用いられる干渉計等の計測装置を、装置内に設けても良い。また、上記補正情報についてエンコーダシステムとは別の計測装置(干渉計など)を用いて取得するものとしたが、別の計測装置を用いず、エンコーダシステムを用いる、あるいは計測用ウエハを用いる露光処理などによって同様に補正情報を取得しても良い。
【0189】
なお、上記第2実施形態において、隣接する一対のスケールの1つから外れて計測ビームが他方のスケールに乗り換えるヘッド(上記別のヘッドに相当)を用いて基板ホルダの移動を制御するための補正情報(前述した別のヘッドの初期値)を、少なくとも1つのスケール152と対向する3つのヘッドで計測される位置情報に基づいて取得するものとしたが、この補正情報は、別のヘッドの計測ビームが他方のスケールに乗り換えた後で、少なくとも1つのスケール152と対向する3つのヘッドの1つが2次元グレーティングRGから外れる前までに取得すれば良い。また、少なくとも1つのスケール152と対向する3つのヘッドを、上記別のヘッドを含む異なる3つのヘッドに切り換えて基板ホルダの位置計測あるいは位置制御を行う場合、その切換は、上記補正情報が取得された後で、少なくとも1つのスケール152と対向する3つのヘッドの1つが2次元グレーティングRGから外れる前までに行えば良い。なお、補正情報の取得と切換とを実質的に同時に行っても良い。
【0190】
なお、上記第2の実施形態では、X軸方向(第1方向)に関して、第1格子群の2次元グレーティングRGがない領域(非格子領域)が第2格子群の2次元グレーティングRGがない領域(非格子領域)と重ならないように、言い換えれば、計測ビームが2次元グレーティングRGから外れる非計測期間が4つのヘッドで重ならないように、第1格子群、第2格子群の各5つのスケール152が基板ホルダ34上に配置されている。この場合、+Y側のヘッドユニット60が有するヘッド66a、66bは、X軸方向に関して第1格子群の2次元グレーティングRGのない領域の幅よりも広い間隔で配置され、-Y側のヘッドユニット60が有するヘッド66c、66dは、X軸方向に関して第2格子群の2次元グレーティングRGのない領域の幅よりも広い間隔で配置されている。しかしながら、複数の2次元格子を含む格子部とこれに対向可能な複数のヘッドとの組み合わせがこれに限定されるものではない。要は、X軸方向への移動体の移動中、2次元グレーティングRGから計測ビームが外れる(計測不能な)非計測期間が4つのヘッド66a、66b、66c、66dで重ならないように、ヘッド66a、66bの間隔及びヘッド66c、66dの間隔、位置、第1、第2格子群の格子部の位置や長さ又は格子部の間隔やその位置を設定すれば良い。例えば、第1格子群と第2格子群とで、X軸方向に関して非格子領域の位置および幅が同一であっても、第1格子群の少なくとも1つのスケール152(2次元グレーティングRG)と対向する2つのヘッドと、第2格子群の少なくとも1つのスケール152(2次元グレーティングRG)と対向する2つのヘッドを、X軸方向に関して非格子領域の幅よりも広い距離だけずらして配置しても良い。この場合、第1格子群と対向する2つのヘッドのうち+X側に配置されるヘッドと、第2格子群と対向する2つのヘッドのうち-X側に配置されるヘッドとの間隔を、非格子領域の幅よりも広い間隔としても良いし、第1格子群と対向する2つのヘッドと、第2格子群と対向する2つのヘッドを、X軸方向に関して交互に配置し、かつ隣接する一対のヘッドの間隔を非格子領域の幅よりも広く設定しても良い。
【0191】
また、上記第2の実施形態では、基板ホルダ34の+Y側の領域に第1格子群が配置され、かつ基板ホルダ34の-Y側の領域に第2格子群が配置される場合について説明したが、第1格子群及び第2格子群の一方、例えば第1格子群に代えて、X軸方向に延びる2次元格子が形成された単一のスケール部材を用いても良い。この場合において、その単一のスケール部材には、1つのヘッドが常時対向することとしても良い。この場合には、第2格子群に対向して3つのヘッドを設け、該3つのヘッドのX軸方向の間隔(計測ビームの照射位置間の間隔)を、隣接するスケール152上の2次元グレーティングRG間の間隔より広くすることで、基板ホルダ34のX軸方向の位置によらず、第2格子群に対向する3つのヘッドのうちの少なくとも2つが第2格子群の少なくとも1つの2次元グレーティングRGに対向可能な構成としても良い。あるいは、基板ホルダ34のX軸方向の位置によらず、上記の単一のスケール部材に常時少なくとも2つのヘッドが対向可能な構成を採用し、併せて第2格子群の少なくとも1つの2次元グレーティングRGに少なくとも2つのヘッドが対向可能な構成としても良い。この場合には、その少なくとも2つのヘッドはそれぞれ、X軸方向への基板ホルダ34の移動中、計測ビームが複数のスケール152(2次元グレーティングRG)の1つから外れるととともに、1つのスケール152(2次元グレーティングRG)に隣接する別のスケール152(2次元グレーティングRG)に乗り換えることになる。しかしながら、少なくとも2つのヘッドのX軸方向の間隔を、隣接するスケール152の2次元グレーティングRGの間隔より広くすることで、少なくとも2つのヘッドで非計測期間が重ならない、すなわち常に少なくとも1つのヘッドで計測ビームがスケール152に照射される。これらの構成では常に少なくとも3つのヘッドが少なくとも1つのスケール152と対向して3自由度方向の位置情報を計測可能である。
【0192】
なお、第1格子群と第2格子群とで、スケールの数、隣接するスケールの間隔などが異なっても良い。この場合、第1格子群と対向する少なくとも2つのヘッドと第2格子群と対向する少なくとも2つのヘッドで、ヘッド(計測ビーム)の間隔、位置などが異なっても良い。
【0193】
なお、上記第2の実施形態では、ヘッド66a~66dのX軸方向及びY軸方向の位置は、4つのXリニアエンコーダ96xと、4つのYリニアエンコーダ96yの出力から算出される一対のヘッドユニット60それぞれのYスライドテーブル62の中心のX軸方向、及びY軸方向の位置から、各ヘッドのYスライドテーブル62の中心に対する既知の位置関係に基づいて算出されるものとした。すなわち、ヘッド66a~66dのX軸方向及びY軸方向の位置の計測に、エンコーダシステムが用いられるものとした。しかしながら、これに限らず、ヘッド66a~66d(一対のヘッドユニット60)は、Y軸方向にのみ移動可能であるから、ヘッド66a~66dのY軸方向の位置情報のみをエンコーダシステム等を用いて計測しても良い。すなわち、上記第2の実施形態では、4つのXリニアエンコーダ96xは、必ずしも設けなくても良い。この場合、ヘッド66a~66dについて、前述の式(2a)~(2d)等の適用に際して、p~P(X位置)として設計値(固定値)が用いられ、q~q(Y位置)は、4つのYリニアエンコーダ96yの出力から算出される値が用いられる。なお、アフィン変換の関係を利用しない場合、ヘッド66b、66cにより基板ホルダ34のY軸方向に関する位置情報を計測するに際して、4つのYリニアエンコーダ96yの計測情報が用いられ、ヘッド66a、66dにより基板ホルダ34のX軸方向に関する位置情報を計測する際には、4つのYリニアエンコーダ96yの計測情報を用いなくても良い。
【0194】
なお、上記第2の実施形態では、単一の2次元グレーティングRG(格子領域)がそれぞれ形成された複数のスケール152を用いることとしたが、これに限らず、2つ以上の格子領域が、X軸方向に離れて形成されたスケール152を、第1格子群又は第2格子群の少なくとも一方に含んでいても良い。
【0195】
なお、上記第2の実施形態では、常に3つのヘッドにより基板ホルダ34の位置(X、Y、θz)を計測、制御するため、同一構成の各5つのスケール152を含む第1格子群と第2格子群とで、X軸方向に関して所定距離ずらして配置する場合について説明したが、これに限らず、第1格子群と第2格子群とで、X軸方向に関してずらすことなく(互いにほぼ完全に対向してスケール152の列を配置し)、一方のヘッドユニット60と他方のヘッドユニット60とで、基板ホルダ34の位置計測用のヘッド(ヘッド66x、66y)の配置をX軸方向に関して異ならせても良い。この場合にも、常に3つのヘッドにより基板ホルダ34の位置(X、Y、θz)を計測、制御することが可能になる。
【0196】
なお、上記第2の実施形態では、ヘッド66a、66bとヘッド66c、66dとの合計4つのヘッドを用いる場合について説明したが、これに限らず、5つ以上のヘッドを用いることとしても良い。すなわち、第1格子群、第2格子群にそれぞれ対向する各2つのヘッドの少なくとも一方に、少なくとも1つの冗長ヘッドを加えても良い。この構成について以下の第3の実施形態で説明する。
【0197】
《第3の実施形態》
次に、第3の実施形態にについて図21に基づいて説明する。本第3の実施形態に係る液晶露光装置の構成は、基板エンコーダシステム50の一部の構成を除き、前述の第1及び第2の実施形態と同じなので、以下、相違点についてのみ説明し、第1及び第2の実施形態と同じ構成及び機能を有する要素については、第1及び第2の実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0198】
図21には、本第3の実施形態に係る基板ホルダ34及び基板エンコーダシステム50の一対のヘッドユニット60が、投影光学系16とともに平面図にて示されている。図21では、説明をわかり易くするため、エンコーダベース54等の図示が省略されている。また、図21では、ヘッドユニット60(Yスライドテーブル62)が点線で図示されるとともに、Yスライドテーブル62の上面に設けられたXヘッド64x、Yヘッド64yの図示も省略されている。
【0199】
本第3の実施形態に係る液晶露光装置では、図21に示されるように、基板ホルダ34の基板載置領域を挟んで+Y側、及び-Y側の領域に、それぞれスケール152がX軸方向に所定間隔で、例えば5つ配置されている。基板載置領域の+Y側に配置された5つのスケール152と、-Y側の領域に配置された5つのスケール152では、隣接するスケール152間の間隔は、同じであり、かつ基板載置領域の+Y側、及び-Y側の各5つのスケール152同士は、互いに対向して同一のX位置に配置されている。したがって、隣接するスケール152間の隙間の位置が、ほぼ同一のY軸方向の所定線幅の直線上に位置している。
【0200】
+Y側に位置する一方のヘッドユニット60のYスライドテーブル62の下面(-Z側の面)には、スケール152にそれぞれ対向する状態で、Yヘッド66y、Xヘッド66x及びYヘッド66yの合計3つのヘッドが-X側から順にX軸方向に所定間隔(隣接するスケール152相互の間隔より大きな距離)離れて固定されている。-Y側に位置する他方のヘッドユニット60のYスライドテーブル62の下面(-Z側の面)には、スケール152にそれぞれ対向する状態で、Yヘッド66yとXヘッド66xがX軸方向に所定間隔離れて固定されている。以下では、説明の便宜上、一方のヘッドユニット60が有する3つのヘッドを、-X側から順にそれぞれヘッド66e、ヘッド66a、ヘッド66bと呼び、他方のヘッドユニット60が有するYヘッド66y、Xヘッド66xを、それぞれヘッド66c、ヘッド66dとも呼ぶものとする。
【0201】
この場合、ヘッド66aとヘッド66cが、同一のX位置(同一のY軸方向の直線上)に配置され、ヘッド66bとヘッド66dが、同一のX位置(同一のY軸方向の直線上)に配置されている。ヘッド66a、66dとそれぞれ対向する2次元グレーティングRGとによって、一対のXリニアエンコーダが構成され、ヘッド66b、66c、66eとそれぞれ対向する2次元グレーティングRGとによって、3つのYリニアエンコーダが構成されている。
【0202】
本第3の実施形態に係る液晶露光装置では、その他の部分の構成は、前述の第2の実施形態に係る液晶露光装置と同様になっている。
【0203】
本第3の実施形態では、+Y側と-Y側のスケール152の列の配置を、X軸方向に関してずらしていないにも拘らず、一対のヘッドユニット60が基板ホルダ34に同期してY軸方向に移動している(又は一対のヘッドユニット60とスケール152の列とが対向する位置で基板ホルダ34のY位置が維持されている)限り、ヘッド66a~66eのうちの3つが、基板ホルダ34のX位置によらず、常にスケール152(2次元グレーティングRG)に対向する。
【0204】
以上説明した本第3の実施形態に係る液晶露光装置は、前述した第2の実施形態に係る液晶露光装置と同様の作用効果を奏する。
【0205】
なお、上記第3の実施形態は、基板ホルダ34の位置情報計測用の複数のヘッドは、ヘッドの切り換えに必要な4つのヘッド、例えばヘッド66e、66b、66c、66dに加え、その4つのヘッドのうちの1つのヘッド66cと非計測期間が一部重なる1つのヘッド66aを含んでいるとも捉えることができる。そして、本第3の実施形態では、基板ホルダ34の位置情報(X、Y、θz)の計測において、4つのヘッド66e、66b、66c、66dと、1つのヘッド66cと、を含む5つのヘッドのうち、計測ビームが複数の格子領域(2次元グレーティングRG)の少なくとも1つに照射される少なくとも3つのヘッドの計測情報が用いられる。
【0206】
なお、上記第3の実施形態は、複数のヘッドのうち、少なくとも2つのヘッドで非計測期間が重なる場合、例えば2つのヘッドが同時にスケール152(格子領域、例えば2次元グレーティングRG)から外れ、同時に隣接するスケール152(格子領域、例えば2次元グレーティングRG)に乗り換える場合の一例である。この場合、少なくとも2つのヘッドの計測が切れても、計測を継続するために少なくとも3つのヘッドが格子部の格子領域(2次元グレーティング)と対向している必要がある。しかも、その少なくとも3つのヘッドは、計測が切れた少なくとも2つのヘッドの1つ以上が隣接する格子領域に乗り換えるまでは計測が切れないことが前提である。すなわち、非計測期間が重なる少なくとも2つのヘッドがあっても、それに加えて少なくとも3つのヘッドがあれば、格子領域が間隔を空けて配置されていても計測を継続できる。
【0207】
《第4の実施形態》
次に、第4の実施形態について図22に基づいて説明する。本第4の実施形態に係る液晶露光装置の構成は、図22に示されるように、基板ホルダ34の基板載置領域の+Y側と-Y側にそれぞれ配置されたスケール52の列が、第3の実施形態と同様に対向配置され、且つ-Y側に位置する一方のヘッドユニット60が、前述の第1の実施形態と同様に各2つのXヘッド66x、Yヘッド66yを有している点が、前述の第2の実施形態に係る液晶露光装置の構成と相違するが、その他の部分の構成は第2の実施形態に係る液晶露光装置と同様になっている。
【0208】
一方のヘッドユニット60のYスライドテーブル62の下面(-Z側の面)には、Yヘッド66y(ヘッド66c)の-Y側に隣接してXヘッド66x(以下、適宜、ヘッド66eと呼ぶ)が設けられるとともに、Xヘッド66x(ヘッド66d)の-Y側に隣接してYヘッド66y(以下、適宜、ヘッド66fと呼ぶ)が設けられている。
【0209】
本実施形態に係る液晶露光装置では、一対のヘッドユニット60がY軸方向に移動している状態(又は一対のヘッドユニット60とスケール152の列とが対向する位置で基板ホルダ34のY位置が維持されている状態)において、基板ホルダ34のX軸方向の移動に伴い、3つのヘッド66a、66c、66e(第1グループのヘッドと称する)及び3つのヘッド66b,66d、66f(第2グループのヘッドと称する)の一方が、いずれのスケールにも対向しなくなる場合があるが、そのときには、必ず第1グループのヘッドと第2グループのヘッドとの他方が、スケール152(2次元グレーティングRG)に対向する。すなわち、本第4の実施形態に係る液晶露光装置では、+Y側と-Y側のスケール152の列の配置を、X軸方向に関してずらしていないにも拘らず、基板ホルダ34のX軸方向への移動において、一対のヘッドユニット60がY軸方向に移動している(又は一対のヘッドユニット60とスケール152の列とが対向する位置で基板ホルダ34のY位置が維持されている)限り、第1グループのヘッドと第2グループのヘッドの少なくとも一方に含まれる3つのヘッドによって、基板ホルダ34のX位置によらず、基板ホルダ34の位置(X、Y、θz)の計測が可能になっている。
【0210】
ここで、例えば第1グループのヘッド(ヘッド66a、66c、66e)がいずれのスケールにも対向しなくなって計測不能となった後に、再度、スケール152に対向した場合に、それらのヘッド66a、66c、66eを復帰させる(計測を再開させる)場合について考える。この場合、第1グループのヘッド(ヘッド66a、66c、66e)による計測が再開される前の時点では、第2グループのヘッド(ヘッド66b,66d、66f)によって、基板ホルダ34の位置(X、Y、θz)の計測、制御が続行されている。そこで、主制御装置90は、図22に示されるように、一対のヘッドユニット60が、+Y側、-Y側にそれぞれ配置された隣接する2つのスケール152を跨ぎ、第1グループのヘッドと第2グループのヘッドとが、隣接する2つのスケール152の一方と他方に対向した時点で、前述した第2実施形態で詳述した手法により、第2グループのヘッド(ヘッド66b,66d、66f)の計測値に基づき、基板ホルダの位置(X、Y、θz)を算出し、この算出した基板ホルダの位置(X、Y、θz)を、前述したアフィン変換の式に代入することで、第1のグループのヘッド(ヘッド66a、66c、66e)の初期値を同時に算出して設定する。これにより、簡単に、第1グループのヘッドを復帰させて、これらのヘッドによる基板ホルダ34の位置の計測、制御を再開させることができる。
【0211】
以上説明した本第4の実施形態に係る液晶露光装置によると、前述した第2の実施形態に係る液晶露光装置と同様の作用効果を奏する。
【0212】
《第4の実施形態の変形例》
この変形例は、第4の実施形態に係る液晶露光装置において、+Y側に位置する他方のヘッドユニット60として、一方のヘッドユニット60と同じ構成(又は紙面上下方向に関して対称な構成)のヘッドユニットが用いられる場合である。
【0213】
この場合、上述と同様に、同一のY軸方向の直線状に配置された各4つのヘッドが属する第1グループのヘッドと、第2グループのヘッドとに8つのヘッドをグループ分けする。
【0214】
第1グループのヘッドがいずれのスケールにも対向しなくなって計測不能となった後に、再度、スケール152に対向した場合に、第1グループのヘッドを復帰させ、それらのヘッドによる計測を再開させる場合について考える。
【0215】
この場合、第1グループのヘッドによる計測が再開される前の時点では、第2グループのヘッドのうちの3つのヘッドによって、基板ホルダ34の位置(X、Y、θz)の計測、制御が続行されている。そこで、主制御装置90は、前述と同様、一対のヘッドユニット60が、+Y側、-Y側にそれぞれ配置された隣接する2つのスケール152を跨ぎ、第1グループのヘッドと第2グループのヘッドとが、隣接する2つのスケール152の一方と他方に対向した時点で、第1グループのヘッドそれぞれの計測値の初期値を算出するが、この場合は、第1グループの4つのヘッドの全ての初期値を同時に算出することはできない。その理由は、計測に復帰させるヘッドが3つ(XヘッドとYヘッドとを合わせた数)であれば、前述と同様の手順でそれら3つのヘッドの計測値の初期値を設定した場合に、それらの初期値を前述の計測値C、C、C等として、前述の連立方程式を解くことで、基板ホルダの位置(X、Y、θ)が一意に定まるので、特に問題はない。しかし、基板ホルダの位置(X、Y、θ)を一意に定めることのできる、4つのヘッドの計測値を用いる、アフィン変換の関係を利用した連立方程式を観念できないからである。
【0216】
そこで、本変形例では、復帰させる第1グループを、別のヘッドをそれぞれ含む3つヘッドが属する、2つのグループにグループ分けし、グループ毎に前述と同様の手法で、3つのヘッドについて、初期値を同時に算出して設定する。初期値の設定後は、いずれかのグループの3つのヘッドの計測値を、基板ホルダ34の位置制御に用いれば良い。位置制御に用いない方のグループのヘッドによる基板ホルダ34の位置計測を、基板ホルダ34の位置制御と並行して実行しても良い。なお、復帰させる第1のグループの各ヘッドの初期値を、前述の手法により、順次個別に算出することも可能である。
【0217】
なお、以上説明した第1~第4実施形態の構成は、適宜変更が可能である。例えば、上記第1実施形態のマスクエンコーダシステム48、基板エンコーダシステム50において、エンコーダヘッド、及びスケールの配置は逆であっても良い。すなわち、例えばマスクホルダ40の位置情報を求めるためのXリニアエンコーダ92x、Yリニアエンコーダ92yは、マスクホルダ40にエンコーダヘッドが取り付けられ、エンコーダベース43にスケールが取り付けられる構成であっても良い。また、基板ホルダ34の位置情報を求めるためのXリニアエンコーダ94x、Yリニアエンコーダ94yは、基板ホルダ34にエンコーダヘッドが取り付けられ、Yスライドテーブル62にスケールが取り付けられても良い。その場合、基板ホルダ34に取り付けられるエンコーダヘッドは、例えばX軸方向に沿って複数配置され、相互に切り換え動作可能に構成されると良い。また、基板ホルダ34に設けられるエンコーダヘッドを可動にし、かつそのエンコーダヘッドの位置情報を計測するセンサを設け、エンコーダベース43にスケールを設けても良い。この場合、エンコーダベース43に設けられるスケールは、は固定となる。同様に、Yスライドテーブル62の位置情報を求めるためのXリニアエンコーダ96x、Yリニアエンコーダ96yは、Yスライドテーブル62にスケールが取り付けられ、エンコーダベース54(装置本体18)にエンコーダヘッドが取り付けられても良い。その場合、エンコーダベース54に取り付けられるエンコーダヘッドは、例えばY軸方向に沿って複数配置され、相互に切り換え動作可能に構成されると良い。基板ホルダ34、及びエンコーダベース54にエンコーダヘッドが固定される場合、Yスライドテーブル62に固定されるスケールを共通化しても良い。
【0218】
また、基板エンコーダシステム50において、基板ステージ装置20側にX軸方向に延びるスケール52が複数固定され、装置本体18(エンコーダベース54)側にY軸方向に延びるスケール56が複数固定される場合について説明したが、これに限られず、基板ステージ装置20側にY軸方向に延びるスケール、装置本体18側にX軸方向に延びるスケールがそれぞれ複数固定されても良い。この場合、ヘッドユニット60は、基板Pの露光動作などにおける基板ホルダ34の移動中にX軸方向に駆動される。
【0219】
また、マスクエンコーダシステム48では、例えば3つのスケール46がX軸方向に離間して配置され、基板エンコーダシステム50では、例えば2つのスケール52がY軸方向、例えば5つのスケール56がX軸方向にそれぞれ離間して配置される場合を説明したが、スケールの数は、これに限られず、例えばマスクM、基板Pの大きさ、あるいは移動ストロークに応じて適宜変更が可能である。また、必ずしも複数のスケールが離間して配置されていなくても良く、例えばより長いひとつのスケール(上記実施形態の場合では、例えばスケール46の約3倍の長さのスケール、スケール52の約2倍の長さのスケール、スケール56の約5倍の長さのスケール)を用いても良い。また、長さの異なる複数のスケールを用いても良いし、X軸方向又はY軸方向に並んで配置された複数の格子領域をそれぞれの格子部に含むのであれば、格子部を構成するスケールの数は、特に問わない。
【0220】
また、Yスライドテーブル62、ベルト駆動装置68は、装置本体18の上架台部18aの下面(図4参照)に設けるよう構成しているが、下架台部18bや中架台部18cに設けるようにしても良い。
【0221】
また、上記第1の実施形態では、スケール46、52、56それぞれの表面にXスケールとYスケールとが独立に形成された場合を説明したが、これに限られず、前述の第2なし第4の実施形態と同様に、2次元グレーティングが形成されたスケールを用いても良い。この場合、エンコーダヘッドもXY2次元ヘッドを用いることができる。また、基板ホルダ34上に形成されているスケール52内において、Xスケール53xとYスケール53yとがX軸方向に同一長さで形成されているが、これらの長さを互いに異ならせるようにしても良い。また両者をX軸方向に相対的にずらして配置するようにしても良い。また、回折干渉方式のエンコーダシステムを用いる場合について説明したが、これに限られず、いわゆるピックアップ方式、磁気方式などの他のエンコーダも用いることができ、例えば米国特許第6,639,686号明細書などに開示されるいわゆるスキャンエンコーダなども用いることができる。また、Yスライドテーブル62の位置情報は、エンコーダシステム以外の計測システム(例えば光干渉計システム)により求められても良い。
【0222】
なお、上記第2~第4の実施形態及びその変形例(以下、第4の実施形態と略記する)では、ヘッドを少なくとも4つ設ける場合について説明したが、かかる場合、第1方向に関して並んで配置された複数の格子領域を格子部に含むのであれば、格子部を構成するスケール152の数は、特に問わない。その複数の格子領域は、基板ホルダ34の基板Pを挟むY軸方向の一側及び他側の両方に配置する必要はなく、一方にのみ配置されていても良い。ただし、少なくとも基板Pの露光動作中、基板ホルダ34の位置(X、Y、θz)を継続して制御するためには、以下の条件を満足する必要がある。
【0223】
すなわち、少なくとも4つのヘッドのうち1つのヘッドで計測ビームが複数の格子領域(例えば、前述の2次元グレーティングRG)から外れている間、残りの少なくとも3つのヘッドは計測ビームが複数の格子領域の少なくとも1つに照射されるとともに、X軸方向(第1方向)への基板ホルダ34の移動によって、上述の少なくとも4つのヘッドの中で計測ビームが複数の格子領域から外れる上記1つのヘッドが切り換わる。この場合において、少なくとも4つのヘッドは、X軸方向(第1方向)に関して互いに計測ビームの位置(照射位置)が異なる2つのヘッドと、Y軸方向(第2方向)に関して前記2つのヘッドの少なくとも一方と計測ビームの位置が異なるととともに、X軸方向に関して互いに計測ビームの位置(照射位置)が異なる2つのヘッドと、を含み、前記2つのヘッドは、X軸方向に関して、複数の格子領域のうち隣接する一対の格子領域の間隔よりも広い間隔で計測ビームを照射する。
【0224】
なお、X軸方向に並んだ格子領域(例えば2次元グレーティングRG)の列を、Y軸方向に関して3列以上配置しても良い。例えば、上記第4の実施形態では、-Y側の5つのスケール152に代えて、その5つのスケール152のそれぞれをY軸方向に2等分したような面積をそれぞれ有する10個の格子領域(例えば2次元グレーティングRG)から成る、Y軸方向に隣接した2つの格子領域(例えば2次元グレーティングRG)の列を設け、一方の列の2次元グレーティングRGにヘッド66e、66fが対向可能、且つ他方の列の2次元グレーティングRGにヘッド66c、66dが対向可能となるような構成を採用しても良い。また、上記第4の実施形態の変形例では、+Y側の5つのスケール152についても、上述と同様の10個の格子領域から成る、Y軸方向に隣接した2つの格子領域(例えば2次元グレーティングRG)の列を設け、一方の列の2次元グレーティングRGに一対のヘッドが対向可能、且つ他方の列の2次元グレーティングRGに残りの一対のヘッドが対向可能となるような構成を採用しても良い。
【0225】
なお、上記第2~第4の実施形態では、X軸方向(第1方向)への基板ホルダ34の移動において、少なくとも4つのヘッド相互間で、いずれの2つのヘッドについてみても、計測ビームがいずれの2次元グレーティングRGにも照射されない(格子領域から外れる)、すなわちヘッドでの計測が不能となる(非計測区間)が重ならないように、スケール及びヘッドの少なくとも一方の位置あるいは間隔、あるいは位置及び間隔などを設定することが重要である。
【0226】
なお、上記第2ないし第4の実施形態において、計測ビームが1つのスケールから外れて別のスケールに乗り換える別のヘッドの初期値を設定するものとしたが、これに限らず、別のヘッドの計測値の補正情報など、別のヘッドを用いて基板ホルダの移動を制御するための補正情報を取得しても良い。別のヘッドを用いて基板ホルダの移動を制御するための補正情報には、初期値は勿論含まれるが、これに限らず、その別のヘッドが計測を再開できるための情報であれば良く、計測再開後に計測すべき値からのオフセット値などでも良い。
【0227】
なお、上記第2ないし第4の実施形態において、基板ホルダ34の位置情報を計測する各Xヘッド66xに代えて、X軸方向及びZ軸方向を計測方向とするエンコーダヘッド(XZヘッド)を用いるとともに、各Yヘッド66yに代えて、Y軸方向及びZ軸方向を計測方向とするエンコーダヘッド(YZヘッド)を用いても良い。これらのヘッドとしては、例えば米国特許第7,561,280号明細書に開示される変位計測センサヘッドと同様の構成のセンサヘッドを用いることができる。かかる場合には、主制御装置90は、前述のヘッドの切り換え及びつなぎ処理に際して、切り換え前に基板ホルダ34の位置制御に用いられる3つのヘッドの計測値を用いて、所定の演算を行うことで、XY平面内の3自由度方向(X、Y、θz)に関する基板ホルダ34の位置の計測結果の連続性を保証するためのつなぎ処理に加えて、前述と同様の手法により、残りの3自由度方向(Z、θx、θy)に関する基板ホルダ34の位置の計測結果の連続性を保証するためのつなぎ処理をも行っても良い。代表的に第2の実施形態を例にとって具体的に説明すると、主制御装置90は、4つのヘッド66a、66b、66c、66dのうち、計測ビームが1つの2次元グレーティングRG(格子領域)から外れて別の2次元グレーティングRG(格子領域)に乗り換える1つのヘッドを用いて残りの3自由度方向(Z、θx、θy)に関する基板ホルダ34の移動を制御するための補正情報を、残りの3つのヘッドによるZ軸方向(第3方向)の計測情報、あるいはその残りの3つのヘッドを用いて計測される残りの3自由度方向(Z、θx、θy)に関する基板ホルダ34の位置情報に基づいて取得することとすれば良い。
【0228】
また、複数のスケール板152の高さと傾斜が相互にずれていると、前述の座標系間にずれが生じ、これによりエンコーダシステムの計測誤差が発生する。そこで、複数のスケール板152間の高さと傾斜のずれに起因するエンコーダシステムの計測誤差も補正することとしても良い。例えば、前述したように第2の実施形態では、ヘッドの切り換えに際し、切り換え後のヘッドの初期値を設定する時点では、4つのヘッド66a~66dの全てが同時にいずれかのスケール152に対向する第5の状態が発生する。そこで、主制御装置90は、この第5の状態における冗長ヘッドの計測値を利用することで、複数のスケール板152間の高さと傾斜のずれに起因する座標系間のずれをキャリブレーション(較正)することとしても良い。
【0229】
例えば、前述のオフセット(ΔX、ΔY、Δθz)の取得の際と同様に、第5の状態において、2組の3つ1組のヘッドによる基板ホルダ34の位置(Z、θx、θy)の計測を行い、その計測により得られた計測値同士の差、すなわちオフセットΔZ、Δθx、Δθyを求め、このオフセットをヘッドの切り換え前後の基板ホルダ34の位置情報の計測及び位置の制御に用いられる3つのヘッドと対向する少なくとも2つのスケールの組み合わせによってそれぞれ定まる座標系間のZ軸方向、θx、θy方向のずれのキャリブレーションに用いることができる。
【0230】
なお、上記第1~第4実施形態において、Z・チルト位置計測系98及び基板エンコーダシステム50によって基板位置計測系を構成するものとしたが、例えばX、Yヘッドの代わりにXZ、YZヘッドを用いることで、基板エンコーダシステム50のみで基板位置計測系を構成しても良い。
【0231】
また、上記第1~第4実施形態において、基板エンコーダシステム50の一対のヘッドユニット60とは別に、X軸方向に関してヘッドユニット60から離れて配置される少なくとも1つのヘッドを設けても良い。例えば、X軸方向に関して投影光学系16から離れて配置され、基板Pのアライメントマークを検出するマーク検出系(アライメント系)に対して±Y側にそれぞれヘッドユニット60と同じ可動のヘッドユニットを設け、基板マークの検出動作においてマーク検出系の±Y側に配置される一対のヘッドユニットを用いて基板ホルダ34の位置情報を計測しても良い。この場合、マーク検出動作において、一対のヘッドユニット60で全ての計測ビームがスケール152(又は52)から外れても、基板エンコーダシステム50(別の一対のヘッドユニット)による基板ホルダ34の位置情報の計測が継続可能となり、マーク検出系の位置など、露光装置の設計の自由度を高められる。なお、Z軸方向に関する基板Pの位置情報を計測する基板位置計測系をマーク検出系に近傍に配置することで、基板のZ位置の検出動作においても基板エンコーダシステム50による基板ホルダ34の位置情報の計測が可能となる。または、基板位置計測系を投影光学系16の近傍に配置し、基板のZ位置の検出動作において一対のヘッドユニット60で基板ホルダ34の位置情報を計測しても良い。また、本実施形態では、投影光学系16から離れて設定される基板交換位置に基板ホルダ34が配置されると、一対のヘッドユニット60の全てのヘッドで計測ビームがスケール152(又は52)から外れる。そこで、基板交換位置に配置される基板ホルダ34の複数のスケール152(又は52)の少なくとも1つと対向する少なくとも1つのヘッド(可動のヘッド又は固定のヘッドのいずれでも良い)を設け、基板交換動作においても基板エンコーダシステム50による基板ホルダ34の位置情報の計測を可能としても良い。ここで、基板ホルダ34が基板交換位置に到達する前、言い換えれば、基板交換位置に配置される少なくとも1つのヘッドがスケール152(又は52)に対向する前に、一対のヘッドユニット60の全てのヘッドで計測ビームがスケール152(又は52)から外れる場合は、基板ホルダ34の移動経路の途中に少なくとも1つのヘッドを追加で配置し、基板エンコーダシステム50による基板ホルダ34の位置情報の計測を継続可能としても良い。なお、一対のヘッドユニット60とは別に設けられる少なくとも1つのヘッドを用いる場合、一対のヘッドユニット60の計測情報を用いて前述のつなぎ処理を行っても良い。
【0232】
また、上記第1~第4実施形態において、マスクエンコーダシステム48の各Xヘッドに代えて、前述したXZヘッドを用いるとともに、各Yヘッドに代えて、前述のYZヘッドを用いても良い。あるいは、上記第1~第4実施形態において、マスクエンコーダシステムを、基板エンコーダシステム50の基板ホルダ34の位置計測用のエンコーダと同様に、複数のヘッドがY軸方向に関してスケール46に対して相対移動可能な構成しても良い。また、スケール46に代えて、前述したスケール152と同様の2次元グレーティングRGが形成されたスケールを用いても良い。
【0233】
同様に、上記第1~第4実施形態において、各Xヘッド64xに代えて、前述のXZヘッドを用いるとともに、各Yヘッド64yに代えて、前述のYZヘッドを用いても良い。かかる場合において、また、スケール56に代えて、前述したスケール152と同様の2次元グレーティングRGが形成されたスケールを用いても良い。かかる場合、一対のXZヘッドと一対のYZヘッドと、これらが対向可能なエンコーダシステムでは、複数のヘッド66x、66yの回転(θz)と傾斜(θx及びθyの少なくとも一方)との少なくとも一方に関する位置情報を計測することとしても良い。
【0234】
なお、スケール46,52,56,152などでは表面に格子が形成される(表面が格子面である)ものとしたが、例えば格子を覆うカバー部材(ガラス又は薄膜など)を設け、格子面をスケールの内部としても良い。
【0235】
なお、上記第1~第4の実施形態では、各一対のXヘッド64x及びYヘッド64yが、基板ホルダ34の位置を計測するためのヘッドとともに、Yスライドテーブル62に設けられる場合について説明したが、各一対のXヘッド64x及びYヘッド64yは、Yスライドテーブルを介することなく、基板ホルダ34の位置を計測するためのヘッドに設けられていても良い。
【0236】
なお、これまでの説明では、マスクエンコーダシステム、基板エンコーダシステムがそれぞれ備える各ヘッドのXY平面内における計測方向が、X軸方向又はY軸方向である場合について説明したが、これに限らず、例えば上記第2~第4の実施形態の場合、2次元グレーティングRGに代えて、XY平面内で、X軸方向及びY軸方向に交差し、かつ互いに直交する2方向(便宜上、α方向、β方向と呼ぶ)を周期方向とする2次元格子を用いても良く、これに対応して前述の各ヘッドとして、α方向(及びZ軸方向)又はβ方向(及びZ軸方向)をそれぞれの計測方向とするヘッドを用いることとしても良い。また、前述の第1の実施形態では、各Xスケール、Yスケールに代えて、例えばα方向、β方向を周期方向とする1次元格子を用いるとともに、これに対応して前述の各ヘッドとして、α方向(及びZ軸方向)又はβ方向(及びZ軸方向)をそれぞれの計測方向とするヘッドを用いることとしても良い。
【0237】
なお、上記第2~第4の実施形態において、第1格子群を前述のXスケールの列で構成し、第2格子群を前述のYスケールの列で構成し、これに対応して、Xスケールの列に対向可能に複数のXヘッド(又はXZヘッド)を所定の間隔(隣接するXスケール間の間隔より大きな間隔)で配置するとともに、Yスケールの列に対向可能に複数のYヘッド(又はYZヘッド)を所定の間隔(隣接するYスケール間の間隔より大きな間隔)で配置することとしても良い。
【0238】
なお、上記第1~第4の実施形態において、X軸方向又はY軸方向に並んで配置される各スケールとして、長さの異なる複数のスケールを用いても勿論良い。この場合において、周期方向が同じ、あるいは直交するスケールの列を2列以上、並んで設ける場合には、スケール間のスペースが、お互いに重ならないように設定可能な長さのスケールを選択することとしても良い。すなわち、一列のスケール列を構成するスケール間のスペースの配置間隔は、等間隔でなくても良い。また、例えば、基板ホルダ34上のスケール列において、X軸方向における両端部寄りにそれぞれ配置されるスケール(スケール列において、各端部に配置されるスケール)のX軸方向の長さよりも、中央部に配置されるスケールの方を物理的に長くしても良い。
【0239】
なお、上記第1~第4実施形態において、可動ヘッド用エンコーダは、少なくとも可動ヘッドの移動方向(上記実施形態ではY軸方向)の位置情報を計測すれば良いが、移動方向と異なる少なくとも1つの方向(X、Z、θx、θy、θzの少なくとも1つ)の位置情報も計測して良い。例えば、計測方向がX軸方向のヘッド(Xヘッド)のX軸方向の位置情報も計測し、このX情報とXヘッドの計測情報とでX軸方向の位置情報を求めても良い。ただし、計測方向がY軸方向のヘッド(Yヘッド)では、計測方向と直交するX軸方向の位置情報を用いなくても良い。同様に、Xヘッドでは、計測方向と直交するY軸方向の位置情報を用いなくても良い。要は、ヘッドの計測方向と異なる少なくとも1つの方向の位置情報を計測し、この計測情報とヘッドの計測情報とで計測方向に関する基板ホルダ34の位置情報を求めても良い。また、例えばX軸方向に関して位置が異なる2本の計測ビームを使って可動ヘッドのθz方向の位置情報(回転情報)を計測し、この回転情報を用いてX、Yヘッドの計測情報とでX軸、Y軸方向の位置情報を求めても良い。この場合、XヘッドとYヘッドとの一方を2つ、他方を1つ、計測方向が同じ2つのヘッドが計測方向と直交する方向に関して同一位置とならないように配置することで、X、Y、θz方向の位置情報を計測可能となる。もう1つのヘッドは、2つのヘッドと異なる位置に計測ビームを照射すると良い。さらに、可動ヘッド用エンコーダのヘッドがXZ又はYZヘッドであれば、例えばXZヘッドとYZヘッドの一方を2つ、他方を1つ、同一直線上とならないように配置することで、Z情報だけでなくθx及びθy方向の位置情報(傾斜情報)も計測できる。θx及びθy方向の位置情報の少なくとも一方と、X、Yヘッドの計測情報とでX軸、Y軸方向の位置情報を求めても良い。同様に、XZ又はYZヘッドでも、Z軸方向と異なる方向に関する可動ヘッドの位置情報を計測し、この計測情報とヘッド計測情報とでZ軸方向の位置情報を求めても良い。なお、可動ヘッドの位置情報を計測するエンコーダのスケールが単一のスケール(格子領域)であれば、XYθzもZθxθyも3つのヘッドで計測できるが、複数のスケール(格子領域)が離れて配置される場合は、X、Yヘッドを2つずつ、あるいはXZ、YZヘッドを2つずつ配置し、4つのヘッドで非計測期間が重ならないようにX軸方向の間隔を設定すれば良い。この説明は、格子領域がXY平面と平行に配置されるスケールを前提としたが、格子領域がYZ平面と平行に配置されるスケールでも同様に適用できる。
【0240】
また、上記第1~第4実施形態において、可動ヘッドの位置情報を計測する計測装置としてエンコーダを用いるものとしたが、エンコーダ以外、例えば干渉計などを用いても良い。この場合、例えば可動ヘッド(又はその保持部)に反射面を設け、Y軸方向と平行に計測ビームを反射面に照射すれば良い。特に可動ヘッドがY軸方向のみに移動される場合は反射面を大きくする必要がなく、空気揺らぎを低減するための干渉計ビームの光路の局所的な空調も容易となる。
【0241】
また、上記第1~第4実施形態において、基板ホルダのスケールに計測ビームを照射する可動ヘッドを、Y軸方向に関して投影系の両側に1つずつ設けるものとしたが、複数ずつ可動ヘッドを設けても良い。例えば、Y軸方向に関して複数の可動ヘッドで計測期間が一部重なるように隣接する可動ヘッド(計測ビーム)を配置すれば、基板ホルダがY軸方向に移動しても、複数の可動ヘッドによって位置計測を継続できる。この場合、複数の可動ヘッドでつなぎ処理が必要となる。そこで、投影系の±Y側の一方のみに配置され、少なくとも1つのスケールに計測ビームが照射される複数のヘッドの計測情報を用いて、計測ビームがスケールに入る別のヘッドに関する補正情報を取得しても良いし、±Y側の一方だけでなく他側に配置される少なくとも1つのヘッドの計測情報を用いても良い。要は、±Y側にそれぞれ配置される複数のヘッドのうち、スケールに計測ビームが照射されている少なくとも3つのヘッドの計測情報を用いれば良い。
【0242】
また、上記第1~第4実施形態の基板エンコーダシステム50において、走査露光において基板Pが移動される走査方向(X軸方向)に関して複数のスケール(格子領域)を互いに離して配置するとともに、複数のヘッドを基板Pのステップ方向(Y軸方向)に移動可能としたが、これとは逆に、ステップ方向(Y軸方向)に関して複数のスケールを互いに離して配置するとともに、複数のヘッドを走査方向(X軸方向)に移動可能としても良い。
【0243】
また、上記第1~第4実施形態において、マスクエンコーダシステム48および基板エンコーダシステム50のヘッドは、光源からのビームをスケールに照射する光学系の全てを有している必要はなく、光学系の一部、例えば射出部のみを有するものとしても良い。
【0244】
また、上記第2~第4実施形態において、一対のヘッドユニット60のヘッドは図17の配置(Xヘッド及びYヘッドが±Y側にそれぞれ配置されかつ±Y側の一方と他方とでX軸方向に関してX、Yヘッドの配置が逆)に限られるものではなく、例えばXヘッド及びYヘッドが±Y側にそれぞれ配置され、かつ±Y側の一方と他方とでX軸方向に関してX、Yヘッドの配置が同一でも良い。ただし、2つのYヘッドのX位置が同一であると、2つのXヘッドの一方で計測が切れると、θz情報が計測できなくなるため、2つのYヘッドのX位置を異ならせることが好ましい。
【0245】
また、上記第1~第4の実施形態において、エンコーダシステムのヘッドから計測ビームが照射されるスケール(スケール部材、格子部)を、投影光学系16側に設ける場合、投影光学系16を支持する装置本体18(フレーム部材)の一部に限らず、投影光学系16の鏡筒部分に設けても良い。
【0246】
また、上記第1~第4の実施形態では、走査露光時のマスクM及び基板Pの移動方向(走査方向)がX軸方向である場合について説明したが、走査方向をY軸方向としても良い。この場合、マスクステージの長ストローク方向をZ軸回りに90度回転させた向きに設定するとともに、投影光学系16の向きもZ軸回りに90度回転させるなどする必要がある。
【0247】
なお、上記第1~第4の実施形態において、基板ホルダ34上において、X軸方向に複数のスケールが、所定間隔の隙間を介しながら連なって配置されたスケール群(スケール列)を、複数列、互いにY軸方向に離れた異なる位置(例えば投影光学系16に対して一方の側(+Y側)の位置と、他方(-Y側)の位置)に配置する場合に、この複数のスケール群(複数のスケール列)を、基板上におけるショットの配置(ショットマップ)に基づいて使い分け出来るように構成しても良い。たとえば、複数のスケール列の全体としての長さを、スケール列間で互いに異ならせておけば、異なるショットマップに対応でき、4面取りの場合と6面取りの場合など、基板上に形成するショット領域の数の変化にも対応できる。またこのように配置すると共に、各スケール列の隙間の位置をX軸方向において互いに異なる位置にすれば、複数のスケール列にそれぞれ対応するヘッドが同時に計測範囲外になることがないので、繋ぎ処理において不定値とされるセンサの数を減らすことができ、繋ぎ処理を高精度に行うことができる。
【0248】
また、また基板ホルダ34上で、X軸方向に複数のスケールが、所定間隔の隙間を介しながら連なって配置されたスケール群(スケール列)において、1つのスケール(X軸計測用のパターン)のX軸方向の長さを、1ショット領域の長さ(基板ホルダ上の基板をX軸方向に移動させながらスキャン露光を行う際に、デバイスパターンが照射されて基板上に形成される長さ)分だけ連続して測定できるような長さにしても良い。このようにすれば、1ショット領域のスキャン露光中に、複数スケールに対するヘッドの乗継制御を行わずに済むため、スキャン露光中の基板P(基板ホルダ)の位置計測(位置制御)を容易にできる。
【0249】
また、上記第1~第4の実施形態において、基板エンコーダシステムは、基板ステージ装置20が基板ローダとの基板交換位置まで移動する間の位置情報を取得するために、基板ステージ装置20又は別のステージ装置に基板交換用のスケールを設け、下向きのヘッド(Xヘッド66xなど)を使って基板ステージ装置20の位置情報を取得しても良い。あるいは、基板ステージ装置20又は別のステージ装置に基板交換用のヘッドを設け、スケール56や基板交換用のスケールを計測することによって基板ステージ装置20の位置情報を取得しても良い。
【0250】
また、各実施形態に係るマスクエンコーダシステムは、マスクステージ装置14がマスクローダとのマスク交換位置まで移動する間の位置情報を取得するために、マスクステージ装置14又は別のステージ装置にマスク交換用のスケールを設け、ヘッドユニット44を使ってマスクステージ装置14の位置情報を取得しても良い。
【0251】
またエンコーダシステムとは別の位置計測系(たとえばステージ上のマークとそれを観察する観察系)を設けてステージの交換位置制御(管理)を行っても良い。
【0252】
また、上記各実施形態では、基板ホルダ34上にスケールを設けるように構成しているが、スケールを露光処理で基板Pに直接形成するようにしても良い。たとえばショット領域間のスクライブライン上に形成するようにしても良い。このようにすれば、基板上に形成されたスケールを計測し、その位置計測結果に基づいて、基板上の各ショット領域ごとの非線形成分誤差を求めることができ、またその誤差に基づいて露光の際の重ね精度を向上させることもできる。
【0253】
なお、基板ステージ装置20は、少なくとも基板Pを水平面に沿って長ストロークで駆動できれば良く、場合によっては6自由度方向の微少位置決めができなくても良い。このような2次元ステージ装置に対しても上記第1~第4の実施形態に係る基板エンコーダシステムを好適に適用できる。
【0254】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0255】
また、投影光学系16が複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、オフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。また、投影光学系16としては、拡大系、又は縮小系であっても良い。
【0256】
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば有機EL(Electro-Luminescence)パネル製造用の露光装置、半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。
【0257】
また、露光対象となる物体はガラスプレートに限られず、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。なお、本実施形態の露光装置は、一辺の長さ、又は対角長が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
【0258】
液晶表示素子(あるいは半導体素子)などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたマスク(あるいはレチクル)を製作するステップ、ガラス基板(あるいはウエハ)を製作するステップ、上述した各実施形態の露光装置、及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをガラス基板に転写するリソグラフィステップ、露光されたガラス基板を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ガラス基板上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【0259】
なお、上記実施形態で引用した露光装置などに関する全ての米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【産業上の利用可能性】
【0260】
以上説明したように、本発明の露光装置及び露光方法は、リソグラフィ工程において物体に照明光を照射して露光するのに適している。また、本発明のフラットパネルディスプレイ製造方法は、フラットパネルディスプレイの生産に適している。
【符号の説明】
【0261】
10…液晶露光装置、14…マスクステージ装置、20…基板ステージ装置、34…基板ホルダ、40…マスクホルダ、44…ヘッドユニット、46…スケール、48…マスクエンコーダシステム、50…基板エンコーダシステム、52…スケール、56…スケール、60…ヘッドユニット、90…主制御装置、M…マスク、P…基板。
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