(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】回転篩装置
(51)【国際特許分類】
B07B 1/22 20060101AFI20220913BHJP
B07B 1/00 20060101ALI20220913BHJP
B07B 1/06 20060101ALI20220913BHJP
B03B 5/00 20060101ALI20220913BHJP
B03B 7/00 20060101ALI20220913BHJP
B07B 1/46 20060101ALI20220913BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
B07B1/22 Z
B07B1/00 B
B07B1/06
B03B5/00 Z
B03B7/00
B07B1/46 A
C22B23/00 101
(21)【出願番号】P 2021047610
(22)【出願日】2021-03-22
(62)【分割の表示】P 2017085992の分割
【原出願日】2017-04-25
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】川口 洋一
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-173967(JP,A)
【文献】特開2004-041986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B 1/00-13/06
B07B 1/00-15/00
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
C22B 1/00-61/00
E03F 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯を中心にして回転可能な円錐台筒状または円筒状のスクリーンが設けられる回転篩装置であって、
前記スクリーンは、分級対象物が導入される導入側と、分級後に残った該分級対象物が排出される排出側とを有し、
前記スクリーンは、前記導入側に金属製グレーチングを備え、
該金属製グレーチングの前記排出側の先端には、該排出側からさらに延在するように格子状の樹脂製スクリーンを設けることを特徴とする、回転篩装置。
【請求項2】
前記金属製グレーチングは、前記軸芯方向における前記スクリーンの長さの0.25倍~0.5倍の範囲まで延在していることを特徴とする、請求項1記載の回転篩装置。
【請求項3】
前記樹脂製スクリーンの外周面に沿ってパンチングメタルがさらに設けられ、
前記パンチングメタルの目開きは、前記樹脂製スクリーンの目開きよりも大きいことを特徴とする、請求項1または請求項2記載の回転篩装置。
【請求項4】
前記金属製グレーチングの厚みは、少なくとも5mm以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の回転篩装置。
【請求項5】
前記金属製グレーチングは、炭素鋼またはステンレス鋼で形成されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項
4のいずれか1項記載の回転篩装置。
【請求項6】
前記樹脂製スクリーンは、ポリウレタン樹脂で形成されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項
5のいずれか1項記載の回転篩装置。
【請求項7】
湿式精錬プラントにおけるニッケル原料鉱石の篩別において、ドラムウォッシャーに接続されて使用されることを特徴とする、請求項1ないし請求項
6のいずれか1項記載の回転篩装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転篩装置に関し、より詳しくはHPALプラントで使用するニッケル原料鉱石を篩別するドラムウォッシャーに付帯するトロンメルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ニッケル酸化鉱の湿式製錬方法として、硫酸を用いた高圧加圧酸浸出法(High Pressure Acid Leach)が注目されている。この方法は、従来の一般的なニッケル酸化鉱石の製錬方法である乾式製錬方法とは異なり、還元および乾燥工程等の乾式工程を含まず、一貫した湿式工程からなるので、エネルギー的及びコスト的に有利となる。また、ニッケル品位を50質量%程度まで向上させたニッケルを含む硫化物(以下、「ニッケル硫化物」ともいう)を得ることが出来るという利点も有している。
【0003】
低品位ニッケル鉱を利用するHPALプラントにおいては、原料であるニッケル原料鉱石が鉱山から運搬、供給される。この中には大粒径鉱石が含まれており、ポンプ等で流送する際に障害となる。また、大粒径鉱石のニッケル品位は低く、浸出もこの鉱石の表面のみとなるため、浸出率が低く除去する必要がある。その為、HPALプラントにニッケル原料鉱石を調整するニッケル原料調整工程では大粒径鉱石を除去するため、洗浄、および篩別装置が設置されている。
【0004】
洗浄および篩別装置としては、大粒径鉱石を除去するドラムとトロンメルから構成されるドラムウォッシャーが使用される。トロンメルは、横向き(軸芯が水平または水平に近い傾斜状態)に設置される円筒形の篩網を備え、この篩網を軸芯まわりに回転駆動することにより、篩網に投入された被処理物の分級処理(種々の大きさの被処理物をその大きさによって分ける処理)を行う装置である。このようなトロンメルの用途の一つとして、ニッケル酸化鉱の分級処理を行うものがある。
【0005】
例えば、ニッケル原料鉱石を調整するのに解砕や分級する際の効率を大幅に低下することを防止するため、トロンメルの内面のトロンメル回転軸に対する垂直断面の同一円周上に、所定の要件を満足する突起物が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されたトロンメルをHPALプラントで使用した場合に、ドラムから排出または回転により鉱石スラリーに含まれる大粒径鉱石が持ち上げられ、回転の途中で落下する大粒径鉱石の衝撃により、トロンメルのスクリーンが磨耗、または破損し、操業中の補修が必要となる。操業中の補修は、後段設備の稼働率に影響を与える原因となり、生産効率も低くなるおそれがある。
【0008】
また、このような事態を避けるため、一般的なエキスパンドメタルを利用したトロンメルのスクリーンが使用されてきたが、操業中に常時点検を行い破損が確認された場合にはその都度、設備を停止して補修を実施しており、寿命が短いため頻繁に停止する必要があった。
【0009】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、ニッケル原料鉱石の篩別性能を維持しながら、寿命を延長することが可能な、新規かつ改良された回転篩装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、上記目的を達成するために、本発明の一態様では、軸芯を中心にして回転可能な円錐台筒状または円筒状のスクリーンが設けられる回転篩装置であって、前記スクリーンは、分級対象物が導入される導入側と、分級後に残った該分級対象物が排出される排出側とを有し、前記スクリーンは、前記導入側に金属製グレーチングを備え、該金属製グレーチングの前記排出側の先端には、該排出側からさらに延在するように格子状の樹脂製スクリーンを設けることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様では、前記金属製グレーチングは、前記軸芯方向における前記スクリーンの長さの0.25倍~0.5倍の範囲まで延在していることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様では、前記樹脂製スクリーンの外周面に沿ってパンチングメタルがさらに設けられ、前記パンチングメタルの目開きは、前記樹脂製スクリーンの目開きよりも大きいことが好ましい。
【0013】
本発明の一態様では、前記金属製グレーチングの厚みは、少なくとも5mm以上であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様では、前記金属製グレーチングは、炭素鋼またはステンレス鋼で形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様では、前記樹脂製スクリーンは、ポリウレタン樹脂で形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明の一態様では、前記ドラムウォッシャーは、湿式精錬プラントにおいてニッケル原料鉱石を篩別するのに使用されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、HPALプラントで使用するニッケル原料鉱石の篩別性能を維持し寿命を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法による湿式製錬方法の工程図である。
【
図3】第1の実施形態に係るトロンメルの概略説明図である。
【
図4】第1の実施形態に係るトロンメルに備わる樹脂スクリーンの外側にパンチングメタルを設けた概略断面図である。
【
図5】第2の実施形態に係るトロンメルの概略説明図である。
【
図6】実施例1に基づくトロンメルの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0021】
[1.概要]
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスは、例えば高圧酸浸出法(HPAL法)を用いて、ニッケル酸化鉱石からニッケルを浸出させて回収する製錬プロセスである。
【0022】
図1は、ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法による湿式製錬方法の工程図である。ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスは、
図1に示すように、ニッケル酸化鉱石をスラリー化する鉱石スラリー化工程S1と、鉱石スラリーに含まれる水分を除去して鉱石成分を濃縮する鉱石スラリー濃縮工程S2と、製造された鉱石スラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施す浸出工程S3と、得られた浸出スラリーを多段洗浄しながら残渣(浸出残渣)を分離してニッケルと共に不純物元素を含む浸出液を得る固液分離工程S4と、浸出液に石灰石を中和剤として添加することで浸出液のpHを調整して不純物元素を含む中和澱物を分離しニッケルを含む中和終液を得る中和工程S5と、中和終液に硫化剤を添加することでニッケルを含む硫化物(ニッケル硫化物)を生成させる硫化工程S6とを有する。
【0023】
さらに、この湿式製錬方法では、固液分離工程S4にて分離された浸出残渣や硫化工程S6にて排出された貧液を回収して無害化する最終中和工程S7を有する。この最終中和工程S7は、石灰石を中和剤として用いた第1段階の中和処理(第1の最終中和工程)と、消石灰を中和剤として用いた第2段階の中和処理(第2の最終中和工程)とからなる段階的な中和処理を行う。このような2段階の中和処理を施すことによって、中和処理残渣が生成され、テーリングダムに貯留される(テーリング残渣)。
【0024】
HPALプラントにおいて、鉱石スラリー化工程S1でニッケル原料鉱石から鉱石スラリーを得る過程で、大粒径鉱石を除去するのに、洗浄装置が設置されている。洗浄装置は、上述した浸出工程S3において鉱石を酸浸出するため、ニッケル原料鉱石を選別する機能を有するものである。この洗浄装置は、ドラムウォッシャー(ドラム型洗浄機)と篩別機とから構成されるものである。ドラムウォッシャーは、ニッケル原料鉱石を水で洗浄することにより、鉱石スラリー内のニッケル品位を高める機能を有する。
【0025】
図2は、ドラムウォッシャーの概略説明図である。ドラムウォッシャー1は、
図2に示すように、ドラム10とトロンメル20とを備え、ドラム10のトロンメル20との連結側には、回収羽根11が設けられている。ドラム10は、ニッケル酸化鉱石を解砕し、レパルプし(解きほぐし)て鉱石スラリーSとする機能を有する。回収羽根11は、鉱石スラリーSに含まれる鉱石をドラム10内から掻き揚げる機能を有する。トロンメル20は、鉱石スラリーSに含まれる鉱石を篩別する機能を有する。
【0026】
ドラムウォッシャー1では、ドラム10の入口側(上流側)に設けられた投入口(不図示)から水およびニッケル酸化鉱石を供給し、ドラム10内において大粒径鉱石から必要なニッケル原料鉱石を水でスラリー状にして、大型分級装置であるトロンメル20に送り、このトロンメル20のスクリーンで鉱石スラリーSに含まれる粒径25mm以上の鉱石を除去する。さらに、トロンメル20のスクリーンの下に配置された篩別機により、スクリーンを通過した鉱石スラリーSに含まれる粒径1.4mm以上の鉱石を除去する。
【0027】
そのため、ドラム10の出口側(下流側)には、鉱石スラリーSと大粒径鉱石を篩い分けするために、トロンメル20という大型分級装置が設置されている。このトロンメル20のスクリーンは、エキスパンドメタル、金網、または樹脂製スクリーンが円筒状または円錐状からなり、トロンメル20は、ドラム10と連結されることでドラム10と一緒に回転しつつ装入物を篩別することができる構成となっている。
【0028】
ドラム10から送り出される鉱石スラリーSは、ドラム10の連結部付近に設置された堰(不図示)からオーバーフローし、鉱石スラリーSに含まれる鉱石は、ドラム10内に設けられる回収羽根11によって掬い上げられ、トロンメル20に移送される。ここで、回収羽根11をドラム10に設けたことにより、ドラム10の系内から鉱石が掻き揚げられるので、ドラム10からトロンメル20に鉱石スラリーに含まれる鉱石が滞りなく移送される。その結果、鉱石含有率が安定して鉱石スラリーが得られるうえ、ドラム10内に大粒径鉱石が滞留されにくくなることから、ドラム10自体の磨耗も抑制でき、ドラム10の駆動に要するエネルギーも軽減される。
【0029】
しかしながら、鉱石スラリーSに含まれる大粒径鉱石が回収羽根11によってトロンメル20に移送された場合、この大粒径鉱石がトロンメル20のスクリーンへ落下する形となって衝撃が非常に大きく、短期間でスクリーンの磨耗や損傷が顕著となる。
【0030】
ここで、トロンメル20のスクリーンが破損した場合、大粒径鉱石が後段の篩別機に持ち込まれ、篩別機にかかる負荷が上がり、篩別機が破損しやすくなる。篩別機が破損した場合、それ以降でポンプやバルブの狭隘部に大粒径鉱石が詰まって鉱石スラリーの流路を塞ぎ、詰まりを除去するために、長期間の設備を停止することを余儀なくされる。篩別機の破損や流路の詰まりを未然に防ぐため、トロンメル20のスクリーンの磨耗、または破損が確認された場合は、HPALプラントの操業中であっても設備を停止して、スクリーンの補修や交換を行う必要があり、設備の稼働率を低下させる要因となっていた。
【0031】
スクリーンの磨耗や破損を抑制するため、例えば、全てのスクリーンに肉厚の金属製グレーチングを設けることができる。しかし、スクリーンの強度を確保する代償に、篩い分けするための開口面積が不足してしまい、原料となる鉱石スラリーがトロンメル20の系外へと過剰に排出されてしまうほか、設備の重量も増加して運転が難しくなる。一方、全てのスクリーンを樹脂製スクリーンにした場合には、ある程度の耐衝撃性や耐摩耗性を有しているが、樹脂製スクリーン自体の強度が不足してしまい、操業中に樹脂製スクリーンの目開きが徐々に広がり、所望の粒径サイズよりも大きい鉱石を除外することができない。
【0032】
そこで、本発明者は、HPALプラントで使用するニッケル原料鉱石を篩別する際に使用されているドラムウォッシャー1に付帯するトロンメル20のスクリーンの篩別性能を維持するため、ドラム10との連結部の周辺に格子状の金属製グレーチングを備えることによって、トロンメル20の寿命を延長できることを見出し、本発明を完成した。
【0033】
[2.トロンメル]
次に、本実施形態に係るトロンメルについて図面を用いて説明する。
【0034】
[2-1.第1の実施形態]
図3は、第1の実施形態に係るトロンメルの概略説明図である。第1の実施形態に係るトロンメル100は、
図3に示すように、軸芯を中心にして回転可能な円錐状(円錐台筒状)のスクリーン110が設けられている。スクリーン110は、ドラムから移送された鉱石を所望の粒径に篩い分ける機能を有する。スクリーン110が円錐状であるので、ドラムウォッシャーに備わるドラムから回収羽根で移送された、鉱石スラリーに含まれる大粒径鉱石がスクリーン110上を傾斜に沿って転がり排出される。以下、各構成要素を説明する。
【0035】
第1の実施形態では、スクリーン110は、ドラムとの連結部から軸芯方向に沿って延在するように格子状の金属製グレーチング111を備え、金属製グレーチング111を延在した先端には、軸芯方向に沿って延在するように格子状の樹脂製スクリーン112を設ける。なお、この金属製グレーチング111は、一体化された構成からなるものでもよく、あるいは複数に分画された構成からなるものでもよい。この分画された構成とは、複数の金属製グレーチングのパーツから構成されるものをいう。
【0036】
これにより、第1の実施形態では、ドラムから回収羽根で移送された、鉱石スラリーに含まれる大粒径鉱石がスクリーン110に直接落下しても、最初に打撃される落下地点が耐衝撃性の高い金属製グレーチング111の領域となるので、直接落下による磨耗や損傷が抑制される。そして、この大粒径鉱石が金属製グレーチング111に衝撃を与えた後、傾斜に沿ってさらに樹脂製スクリーン112へ転がっても、最初に与える衝撃よりも弱いので、従来のスクリーンと比べて樹脂製スクリーン112は磨耗や損傷が抑制される。このように、格子状の金属製グレーチング111と格子状の樹脂製スクリーン112とが有する良好な篩別性能を維持することができる。したがって、HPALプラントにおける操業は、スクリーン110の補修や交換のために停止することなく、長期間安定して行うことができる。
【0037】
金属製グレーチング111は、前記軸芯方向におけるスクリーン110の長さの0.25倍~0.5倍の範囲まで延在していることが好ましく、0.3倍~0.4倍の範囲であることがさらに好ましい。このような範囲にすることにより、トロンメル100の駆動に要するエネルギーを抑制しつつ、ドラムから移送された大粒径鉱石の落下地点が、金属製グレーチング111を設けた領域となるので、衝突による衝撃にも耐えることができる。
このため、HPALプラントの操業中にトロンメル100が短期間に損傷することなく、トロンメル100の鉱石を篩別する機能を維持することができ、トロンメル100自体の寿命を延長することがより確実となる。
【0038】
金属製グレーチング111が0.3倍未満までのみ延在している場合には、ドラムから移送された大粒径鉱石が金属製グレーチング111を飛び越えて樹脂製スクリーン112に落下することが考えられ、その際にトロンメル100が短期間に損傷するおそれがある。特に金属製グレーチング111が0.25倍未満までのみ延在している場合には、大粒径鉱石が掻き揚げられたり跳ね飛ばされたりする動きのほかに、大粒径鉱石が互いに積み重なった後に崩れ落ちる動きによっても樹脂製スクリーン112に落下するおそれがある。一方、金属製グレーチング111が0.4倍を超えて延在している場合には、スクリーン110における金属製グレーチング111の範囲が大きくなり回転させるのに多くのエネルギーを要する。特に金属製グレーチング111が0.5倍を超えて延在している場合には、トロンメル100がドラム側から離れるに従い広がる形状(ラッパ形)であると、トロンメル100の平均半径より大きな位置に(樹脂性に比して重い)金属製グレーチング111を配置することになる。その結果、慣性モーメントが半径の2乗に比例し、さらに密度に比例して、トロンメル100を回転させるのに、特に多くのエネルギーを要することになる。
【0039】
金属製グレーチング111は、金属や合金等で形成されていれば特に限定されないが、耐水性や耐衝撃性に優れた炭素鋼またはステンレス鋼等で形成されていることが好ましい。
【0040】
金属製グレーチング111の厚みは、少なくとも5mm以上であることが好ましい。厚みを5mm以上にすることにより、金属製グレーチング111が頑丈になり寿命を延ばすことができ、摩耗の進み具合を目視で確認することも容易となる。この厚みが5mm未満である場合には、鉱石スラリーに含まれる大粒径鉱石が落下し衝突すると、衝撃を受けて格子の目開きが所望の範囲より広がってしまうおそれがある。
【0041】
また、格子状の金属製グレーチング111としては、四角穴を備えたグレーチングを用いるが、これに限定されるものではなく、四角穴の替わりに六角穴、三角穴、および丸穴のいずれかを備える金属製グレーチング111であっても差し支えなく用いることができる。
【0042】
第1の実施形態では、スクリーン110を補強するために補強フレーム120a,120bが装着されている。具体的には、補強フレーム120aは、金属製グレーチング111と樹脂製スクリーン112とを連結するよう装着されている。また、スクリーン110の外周面には、長手方向に沿って補強フレーム120bが装着されている。さらに、スクリーン110の基端(ドラム側の端)には補強リング121aが装着され、スクリーン110の先端(ドラムとは反対側の端)には補強リング121bが装着されている。
【0043】
なお、金属製グレーチング111を複数のグレーチング部品で区画するように予め構成しておき、HPALプラントにおける操業に伴い金属製グレーチング111が損傷や磨耗した場合などには、金属製グレーチング111の全体を交換するのではなく、損傷した領域に該当する部分のみを交換すればよい。このため、従来の金網製スクリーンのように全面を交換する必要がなく、コストや手間が最小限で済む。
【0044】
樹脂製スクリーン112は、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、およびポリアミド樹脂のいずれか1種類以上で形成されていることが好ましく、中でも外部からの衝撃に優れたポリウレタン樹脂で形成されていることがより好ましい。
【0045】
また、樹脂製スクリーン112の厚みは、金属製グレーチング111との境目の段差がなくなる厚みとするのがよく、段差がある場合には、鉱石粒子の径より小さな段差となる厚みとするのがよい。特に、25mm以下の段差となる厚みとするのが妥当であり、たとえば段差が25mmを超える場合は、樹脂製スクリーン112を更新(張替え)したり、樹脂製スクリーン112または金属製グレーチング111の取り付け位置を変更して、段差が25mm以下となるようにするのが望ましい。
【0046】
金属製グレーチング111から樹脂製スクリーン112へ鉱石が乗り移る際に生じる衝撃を軽減するため、金属製グレーチング111と樹脂製スクリーン112は等しい角度で取り付けることが望ましい。
【0047】
また、第1の実施形態では、樹脂製スクリーン112には、樹脂製スクリーン112に補強材が設けられることが好ましい。
図4は、第1の実施形態に係るトロンメルに備わる樹脂スクリーンの外側にパンチングメタルを設けた概略断面図である。第1の実施形態では、樹脂製スクリーン112の外側には、
図4に示すように、樹脂製スクリーン112の外周面に沿ってパンチングメタル113が設けられる。また、パンチングメタル113の目開きW2は、スクリーン110としての鉱石を篩い分ける機能を確保するため、樹脂製スクリーン112の目開きW1よりも大きい。
【0048】
これにより、ドラムから移送された大粒径鉱石が金属製グレーチング111に衝突による衝撃を与えた後に、傾斜に沿って転がった大粒径鉱石が樹脂製スクリーン112に衝突による衝撃を与えても、樹脂製スクリーン112だけでなくパンチングメタル113にも衝撃が伝わるので、パンチングメタル113が樹脂製スクリーン112を補強することができ、樹脂製スクリーン112が外部からの衝撃に耐えることができる。このように、パンチングメタル113は、樹脂製スクリーン112が補強材として機能を有する。したがって、トロンメル100の寿命をより確実に維持することができ、さらにトロンメル100の鉱石を篩別する機能を維持することができる。
【0049】
[2-2.第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係るトロンメルの概略説明図である。第2の実施形態に係るトロンメル200は、
図5に示すように、軸芯を中心にして回転可能な円筒状のスクリーン210が設けられ、このスクリーン210を補強するため、補強フレーム220a,220bおよび補強リング221a,221bが装着されている。以下、各構成要素を説明する。なお、第1の実施形態と重複するものは説明を割愛する。
【0050】
第2の実施形態では、スクリーン210は、ドラムとの連結部から軸芯方向に沿って延在するように格子状の金属製グレーチング211を備え、金属製グレーチング211を延在した先端には、軸芯方向に沿って延在するように格子状の樹脂製スクリーン212を設ける。
【0051】
ドラムウォッシャーにこのトロンメル200を使用する場合には、円筒状のスクリーン210はドラムの出口側と横向きに連結された状態で、ドラムとともに水平方向に対して所定の角度(例えば、1°~20°)に傾斜している。このとき、ドラムウォッシャーに備わるドラムから回収羽根で掻き揚げることで移送された鉱石スラリーに含まれる大粒径鉱石がスクリーン210上を傾斜に沿って転がり排出される。
【0052】
[3.まとめ]
以上より、第1の実施形態および第2の実施形態に係るトロンメルは、ドラムウォッシャーに備わるドラムに連結され、軸芯を中心にして回転可能な筒状のスクリーンが設けられる。そして、スクリーンは、ドラムとの連結部から軸芯方向に沿って延在するように格子状の金属製グレーチングを備え、金属製グレーチングを延在した先端には、軸芯方向に沿って延在するように格子状の樹脂製スクリーンを設けることを特徴とする。
【0053】
これにより、ドラム内に設けられる回収羽根により鉱石スラリーに含まれる大粒径鉱石を掻き揚げることで、ドラムからトロンメルに移送された大粒径鉱石の落下地点が、金属製グレーチングを設けた領域となるので、トロンメルに備わるスクリーンは、強い衝撃にも耐えることができる。このため、HPALプラントの操業中に短期間でトロンメルのスクリーンが損傷することなく、トロンメル自体の寿命を延長することができる。その結果、頻繁に操業を停止して、トロンメルのスクリーンを補修または交換する必要がなくなる。さらに、トロンメルに連結されたドラムを備えるドラムウォッシャーは、停止頻度が少なく効率的にHPALプラントの操業を行うことができるので、湿式精錬プラントにおけるニッケル原料鉱石の篩別に最適である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例または比較例に限定されるものではない。
【0055】
HPAL(高圧酸浸出法)プラントにおいて、ニッケル酸化鉱石を酸浸出する前処理としてニッケル酸化鉱石をスラリー化するのに、ドラムにトロンメルが連結するドラムウォッシャーを用いて、下記の実施例1の条件で行い、下記の比較例1の条件で行った。
【0056】
(実施例1)
図6は、実施例1に基づくトロンメルの概略説明図である。実施例1では、
図6に示すように、ドラムウォッシャーのドラムユニットから排出される鉱石が最初に落下する円錐状のトロンメル300のスクリーン310の基端(ドラム側の端。本態様では、ドラムとの連結部を兼ねている。)側の第1列目スクリーン311は耐衝撃性を考慮し、平鋼(横の長さ24mm×厚み5.0mm)を格子状に組んだ金属製グレーチング(幅800mm×横の長さ1250mm×厚み25mm)を設けた。第2列目スクリーン312および第3列目スクリーン313は、厚さ30mmのウレタンスクリーン(目開き25mm)を設け、このウレタンスクリーンの外周面に沿って補強目的で板厚6mmの穴あき鉄板をさらに取り付け、二重構造のスクリーンとした。さらに、スクリーンには、補強フレーム320a,320bと補強リング321a,321bをそれぞれ装着した。なお、第1列目スクリーン311~第3列目スクリーン313は等間隔に配列されている。また、ウレタンスクリーンとは、ポリウレタンで形成されたスクリーンをいう。
【0057】
HPALプラントを操業した結果、表1に示すように、第1列目スクリーン311の要補修時期と要交換時期がそれぞれ使用開始後から1年であった。また、第2列目スクリーン312および第3列目スクリーン313の要補修時期が使用開始から4~6ヶ月であり、要交換時期が使用開始から6~8ヶ月であった。
【0058】
【0059】
(比較例1)
比較例1では、第1列目スクリーン~第3列目スクリーンを厚さ30mmのウレタンスクリーン(目開き25mm)に変更したこと以外、実施例1と同様に操業した。
【0060】
操業した結果、表2に示すように、第1列目スクリーンの要補修時期が使用開始後から1~2ヶ月であり、要交換時期が使用開始後から2~4ヶ月であった。また、第2列目スクリーンおよび第3列目スクリーンの要補修時期が使用開始から2~4ヶ月であり、要交換時期が使用開始から4~6ヶ月であった。
【0061】
【0062】
(実施例に基づく考察)
表1および2を比較すると、実施例1は、比較例1よりもスクリーンの補修や交換を要する頻度が減っており、すなわちトロンメルが長期間使用できるようになった。その結果、実施例1に基づく本設備の稼働率が向上し、安定的な操業が可能となった。また、実施後の操業においても、篩上には大きさ25mm以下の鉱石のみが観察されており、スクリーンの目開きよりも狭い粒径の鉱石を含む鉱石スラリーを回収できていることが確認できた。
【0063】
このように、実施例1で使用されたドラムとの連結部(スクリーンの基端)から軸芯に沿って延在するように金属製グレーチングが設けられたことにより、比較例1で使用されたスクリーンの全面にウレタンスクリーンが設けられたトロンメルよりも要補修時期や要交換時期が延びたことが確認された。すなわち、実施例1に使用されたトロンメルは、トロンメルの入口側に金属製グレーチングが設けられたことにより、HPALプラントの操業におけるその寿命を延長できたと考えられる。
【符号の説明】
【0064】
1 ドラムウォッシャー、10 ドラム、11 回収羽根、20 トロンメル、100 トロンメル、110 スクリーン、111 金属製グレーチング、112 樹脂製スクリーン、113 パンチングメタル、120a,120b 補強フレーム、121a,121b 補強リング、200 トロンメル、210 スクリーン、211 金属製グレーチング、212 樹脂製スクリーン、220a,220b 補強フレーム、221a,221b 補強リング、300 トロンメル、310 スクリーン、311 第1列目スクリーン、312 第2列目スクリーン、313 第3列目スクリーン、320a,320b 補強フレーム、321a,321b 補強リング、S 鉱石スラリー