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特許7140235熱硬化性組成物、熱硬化性樹脂改質剤、その硬化物、半導体封止材料、プリプレグ、回路基板及びビルドアップフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】熱硬化性組成物、熱硬化性樹脂改質剤、その硬化物、半導体封止材料、プリプレグ、回路基板及びビルドアップフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20220913BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20220913BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20220913BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20220913BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220913BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20220913BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220913BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220913BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220913BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220913BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08L67/00
C08L75/04
C08G59/40
H01L23/30 R
C08J5/24 CFC
B32B27/36
B32B27/40
H05K1/03 630H
H05K1/03 610S
C08L101/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021092206
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2019561594の分割
【原出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2021165388
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2017249402
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】松村 優佑
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭文
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-227748(JP,A)
【文献】特開2015-017247(JP,A)
【文献】国際公開第2017/195304(WO,A1)
【文献】特開2019-019231(JP,A)
【文献】特開2009-138116(JP,A)
【文献】特開2000-063638(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073309(WO,A1)
【文献】特表2011-528387(JP,A)
【文献】林 安男,接着方法と試験方法 プラスチックと他の材料,日本ゴム協会誌,1972年,第45巻, 第11号,第999頁-第1010頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08G059/00-59/72
H01L23/29
C08J5/24
B32B27/36
B32B27/40
H05K1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂、熱硬化剤及び改質樹脂を含む熱硬化性組成物からなる半導体封止材料であって、
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂であり、
前記熱硬化剤が、活性エステル樹脂、フェノール樹脂及びシアネート樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むもの(1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤を除く。)であり、
前記改質樹脂が、水酸基及びカルボキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する熱可塑性樹脂であり、
前記改質樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記改質樹脂のガラス転移温度が、-100℃以上50℃以下であり、
前記改質樹脂の数平均分子量が、600以上50,000以下であり、
前記改質樹脂の含有量が、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上60質量部以下であることを特徴とする半導体封止材料
【請求項2】
熱硬化性樹脂、熱硬化剤及び改質樹脂を含む熱硬化性組成物と補強基材とを有する含浸基材の半硬化物であるプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂であり、
前記熱硬化剤が、活性エステル樹脂、フェノール樹脂及びシアネート樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むもの(1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤を除く。)であり、
前記改質樹脂が、水酸基及びカルボキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する熱可塑性樹脂であり、
前記改質樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記改質樹脂のガラス転移温度が、-100℃以上50℃以下であり、
前記改質樹脂の数平均分子量が、600以上50,000以下であり、
前記改質樹脂の含有量が、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上60質量部以下であることを特徴とするプリプレグ。
【請求項3】
熱硬化性樹脂、熱硬化剤及び改質樹脂を含む熱硬化性組成物の板状賦形物と銅箔とを含む回路基板であって、
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂であり、
前記熱硬化剤が、活性エステル樹脂、フェノール樹脂及びシアネート樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むもの(1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤を除く。)であり、
前記改質樹脂が、水酸基及びカルボキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する熱可塑性樹脂であり、
前記改質樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記改質樹脂のガラス転移温度が、-100℃以上50℃以下であり、
前記改質樹脂の数平均分子量が、600以上50,000以下であり、
前記改質樹脂の含有量が、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上60質量部以下であることを特徴とする回路基板。
【請求項4】
熱硬化性樹脂、熱硬化剤及び改質樹脂を含む熱硬化性組成物の硬化物と基材フィルムとを含むビルドアップフィルムであって、
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂であり、
前記熱硬化剤が、活性エステル樹脂、フェノール樹脂及びシアネート樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むもの(1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤を除く。)であり、
前記改質樹脂が、水酸基及びカルボキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する熱可塑性樹脂であり、
前記改質樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記改質樹脂のガラス転移温度が、-100℃以上50℃以下であり、
前記改質樹脂の数平均分子量が、600以上50,000以下であり、
前記改質樹脂の含有量が、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上60質量部以下であることを特徴とするビルドアップフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性組成物、熱硬化性樹脂改質剤、その硬化物並びにこれを用いた半導体封止材料、プリプレグ、回路基板及びビルドアップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂は、コンデンサ、ダイオード、トランジスタ、サイリスタ等の半導体素子及びIC、LSI等の集積回路を保護する封止材料として用いられている。電子部品の小型化・薄膜化に伴い、プリント配線板の高密度化及び高集積化が要求されており、これに伴って、半導体封止材料には低熱膨張性等が求められている。
【0003】
前記半導体封止材料として、芳香族アミン化合物と、脂肪族アミン化合物と、シロキサン化合物と、マレイミド化合物とを含む熱硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、シアネートエステル樹脂と、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂を含む樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-178991号公報
【文献】特開2016-006187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らの検討によれば、従来の熱硬化性樹脂組成物から形成される硬化物では、低熱膨張性は良好であるものの、良好な銅箔密着性、弾性率、耐熱性及び靱性を十分満足できるバランスで達成できるものではなかった。
【0006】
本発明の課題は、得られるその硬化物において、良好な銅箔密着性、弾性率、耐熱性及び靱性をバランスよく達成することが可能な熱硬化性組成物、熱硬化性樹脂改質剤、その硬化物、半導体封止材料、プリプレグ、回路基板及びビルドアップフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱硬化性樹脂、熱硬化剤及び改質樹脂を含む熱硬化性組成物であって、前記改質樹脂が、水酸基及びカルボキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する熱可塑性樹脂であり、前記改質樹脂のガラス転移温度が、-100℃以上50℃以下であり、前記改質樹脂の数平均分子量が、600以上50,000以下であることを特徴とする熱硬化性組成物を用いる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱硬化性組成物によれば、得られるその硬化物において優れた耐熱性、銅箔密着性、靭性を発現させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1の硬化物の破断面の原子間力顕微鏡像である。
図2図2は、実施例2の硬化物の破断面の原子間力顕微鏡像である。
図3図3は、実施例3の硬化物の破断面の原子間力顕微鏡像である。
図4図4は、実施例4の硬化物の破断面の原子間力顕微鏡像である。
図5図5は、比較例1の硬化物の破断面の原子間力顕微鏡像である。
図6図6は、比較例2の硬化物の破断面の原子間力顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱硬化性組成物は、熱硬化性樹脂(A)、熱硬化剤(B)及び改質樹脂(C)を含む。前記熱硬化性組成物は、無機充填材(D)を含んでいてもよく、さらに難燃剤(E)等を含んでいてもよい。
【0011】
前記熱硬化性樹脂(A)としては、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン構造含有樹脂、マレイミド樹脂、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、スチレンとマレイン酸無水物の共重合物等が挙げられ、少なくともエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0012】
前記エポキシ樹脂としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ジグリシジルオキシナフタレン化合物(1,6-ジグリシジルオキシナフタレン、2,7-ジグリシジルオキシナフタレン等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、1,1-ビス(2,7-ジグリシジルオキシ-1-ナフチル)アルカン等のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、これら各種のエポキシ樹脂にリン原子を導入したリン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0013】
中でも、前記エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂や、ナフタレン骨格を含有するナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂や、結晶性のビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂や、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック型エポキシ樹脂(ホルムアルデヒドでグリシジル基含有芳香環及びアルコキシ基含有芳香環が連結された化合物)等が耐熱性に優れる硬化物が得られる点から特に好ましい。
【0014】
前記熱硬化性樹脂(A)中、エポキシ樹脂の含有率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0015】
前記マレイミド樹脂としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、以下の構造式のいずれかで表される樹脂が挙げられる。
【0016】
【化1】
【0017】
[式(1)中、R1はa1価の有機基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基又は炭素原子数6~20のアリール基を表し、a1は1以上の整数を表す。]
【0018】
【化2】
【0019】
[式(2)中、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、ハロゲン原子、水酸基又は炭素原子数1~20のアルコキシ基を表し、L1及びL2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~5の飽和炭化水素基、炭素原子数6~10の芳香族炭化水素基又は飽和炭化水素基と芳香族炭化水素基とを組み合わせた炭素原子数6~15の基を表す。a3、a4及びa5は、それぞれ独立に、1~3の整数を表し、nは、0~10の整数を表す。]
【0020】
前記熱硬化性樹脂(A)の含有率は、前記熱硬化性組成物の不揮発分中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
【0021】
前記熱硬化剤(B)は、加熱により前記熱硬化性樹脂(A)と反応して、熱硬化性組成物を硬化しうる化合物であればよく、1種又は2種以上を用いることができ、アミン化合物、アミド化合物、活性エステル樹脂、酸無水物、フェノ-ル樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられる。中でも、熱硬化剤(B)としては、活性エステル樹脂、フェノール樹脂及びシアネート樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0022】
前記アミン化合物としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
【0023】
前記アミド化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる
【0024】
前記活性エステル樹脂としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。前記活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物又はそのハライドとヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物又はそのハライドと、フェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等、又はそのハライドが挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールフタレイン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂等が挙げられる。
【0025】
酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0026】
前記フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェニロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)、ナフタレン骨格含有フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)等の多価フェノール性水酸基含有樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物、ビフェニル、テトラメチルビフェニル等のビフェニル化合物;トリフェニロールメタン、テトラフェニロールエタン;ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型樹脂、これら各種のフェノール水酸基含有化合物にリン原子を導入したリン変性フェノール化合物などが挙げられる。
【0027】
前記シアネートエステル樹脂としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0028】
これらのシアネートエステル樹脂の中でも、特に耐熱性に優れる硬化物が得られる点においては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂が好ましい。
【0029】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに硬化促進剤(B1)を含んでいてもよい。前記硬化促進剤(B1)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0030】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに、マレイミド化合物(B2)を含んでいてもよい。ただし、マレイミド化合物(B2)は、前記マレイミド樹脂とは異なる。前記マレイミド化合物(B2)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド等のN-脂肪族マレイミド;N-フェニルマレイミド、N-(P-メチルフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド等のN-芳香族マレイミド;4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルホンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3、5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン等のビスマレイミド類が挙げられる。
【0031】
中でも、マレイミド化合物(B2)としては、硬化物の耐熱性が良好なものとなる点からビスマレイミド類が好ましく、特に4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3、5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタンが好ましい。
【0032】
前記マレイミド化合物(B2)を用いる場合、必要に応じて、前記アミン化合物、前記フェノール化合物、前記酸無水物系化合物、イミダゾール化合物、有機金属塩等を含んでいてもよい。
【0033】
前記改質樹脂(C)は、水酸基及びカルボキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する熱可塑性樹脂であり、水酸基を有するものであることが好ましい。
前記改質樹脂(C)の水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは15mgKOH/g以上、さらに好ましくは18mgKOH/g以上であり、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、さらに好ましくは120mgKOH/g以下である。
【0034】
前記改質樹脂(C)に含まれる水酸基及びカルボキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種(好ましくは水酸基)の数は、1分子あたり、好ましくは2個以上であり、好ましくは6個以下、より好ましくは4個以下、さらに好ましくは3個以下であり、特に好ましくは2個である。
【0035】
前記改質樹脂(C)は、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ポリエステル樹脂であることがより好ましい。
【0036】
前記ポリエステル樹脂としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応して得られるポリエステル樹脂;環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステル樹脂;これらを共重合して得られるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0037】
前記ポリエステル樹脂の製造に用いるポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族ポリオール;シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造を有するポリオール;ビスフェノールA及びビスフェノールF等の芳香族構造を有するポリオール;前記芳香族構造を有するポリオールをアルキレンオキシド変性したポリオールなどが挙げられる。
中でも、前記脂環式構造を有するポリオール、前記芳香族構造を有するポリオール及び前記芳香族構造を有するポリオールをアルキレンオキシド変性したポリオールが好ましく、前記芳香族構造を有するポリオールをアルキレンオキシド変性したポリオールがより好ましい。
【0038】
前記ポリオールの分子量は、好ましくは50以上であり、好ましくは1,500以下、より好ましくは1,000以下、さらに好ましくは700以下である。
本明細書において、数平均分子量は水酸基価に基づいて算出した値を意味するものとする。
【0039】
前記芳香族構造を有するポリオールの変性に用いられるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等の炭素原子数2以上4以下(好ましくは2以上3以下)のアルキレンオキシドが挙げられる。前記アルキレンオキシドの付加モル数は、前記芳香族構造を有するポリオール1モルに対して、好ましくは2モル以上、より好ましくは4モル以上であり、好ましくは20モル以下、より好ましくは16モル以下である。
【0040】
前記ポリカルボン酸としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;それらの無水物またはエステル化物などが挙げられる。
中でも、脂肪族ポリカルボン酸を含むことが好ましい。前記脂肪族ポリカルボン酸の含有率は、前記ポリカルボン酸の合計中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、好ましくは100モル%以下である。
前記ポリカルボン酸として、脂肪族ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸を含むことも好ましい態様である。前記芳香族ポリカルボン酸及び脂肪族ポリカルボン酸の含有量比は、モル基準で、好ましくは1/99以上、より好ましくは30/70以上、さらに好ましくは50/50以上であり、好ましくは99/1以下、より好ましくは90/10以下、さらに好ましくは85/15以下である。
【0041】
前記ポリエステル樹脂の製造に用いるポリオールと前記ポリカルボン酸との含有量比(ポリオール/ポリカルボン酸)は、質量基準で、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上、さらに好ましくは40/60以上であり、好ましくは99/1以下、より好ましくは90/10以下、さらに好ましくは85/15以下である。
【0042】
前記環状エステル化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、ε-メチルカプロラクトン、ε-エチルカプロラクトン、ε-プロピルカプロラクトン、3-ペンテン-4-オリド、12-ドデカノリド、γ-ドデカノラクトンが挙げられる。
【0043】
前記ポリエステル樹脂に含まれる炭素原子数4以上のオキシアルキレン単位の含有率は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
【0044】
前記ポリエステル樹脂は、例えば、前記ポリオールと前記ポリカルボン酸とを反応させることにより製造することができる。反応温度は、好ましくは190℃以上、より好ましくは200℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。反応時間は、好ましくは1時間以上100時間以下である。
【0045】
前記反応の際は、触媒を共存させてもよい。前記触媒としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;ジブチル錫オキサイド等のスズ系触媒;p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸系触媒などが挙げられる。
前記触媒の量は、前記ポリオール及び前記ポリカルボン酸の合計100質量部に対して、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.0005質量部以上であり、好ましくは0.01質量部以下、より好ましくは0.005質量部以下である。
【0046】
前記ポリウレタン樹脂は、ポリオール及びポリイソシアネートの反応物であり、末端にヒドロキシ基を有する。
【0047】
前記ポリウレタン樹脂の製造に用いるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0048】
前記ポリエーテルポリオールとしては、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、アルキレンオキシドを付加重合(開環重合)させたもの等が挙げられる。
【0049】
前記開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-プロパンジオ-ル、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖状ジオール;ネオペンチルグリコール、1,2-プロパンジオ-ル、1,3-ブタンジオール等の分岐鎖状ジオール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ピロガロール等のトリオール;ソルビトール、蔗糖、アコニット糖等のポリオール;アコニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸等のトリカルボン酸;リン酸;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミン;トリイソプロパノールアミン;ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタル酸等のフェノール酸;1,2,3-プロパントリチオールなどが挙げられる。
【0050】
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0051】
前記ポリエーテルポリオールとしては、前記開始剤にテトラヒドロフランを付加重合(開環重合)させたポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。
【0052】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール(例えば、分子量50以上300以下のポリオール)とポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;これらの共重合ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0053】
前記低分子量ポリオールとしては、分子量が50以上300以下程度のポリオールを用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール等の炭素原子数2以上6以下の脂肪族ポリオール;1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造含有ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキシド付加物等の芳香族構造含有ポリオールなどが挙げられる。
【0054】
前記ポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;並びに前記脂肪族ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸の無水物又はエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0055】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとの反応物;ホスゲンとビスフェノールA等との反応物などが挙げられる。
【0056】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0057】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば、上記低分子量ポリオールとして例示したポリオール;ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ポリエステルポリオール(ポリヘキサメチレンアジペート等)等の高分子量ポリオール(数平均分子量500以上5,000以下)などが挙げられる。
【0058】
前記ポリウレタン樹脂の製造に用いるポリオールの数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは700以上であり、好ましくは3,000以下、より好ましくは2,000以下である。
【0059】
前記ポリイソシアネートとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式構造含有ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0060】
前記ウレタン樹脂の製造に用いるポリオールが有する水酸基と、前記ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の当量割合[イソシアネート基/水酸基]は、モル基準で、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.7以下である。
【0061】
前記ポリウレタン樹脂の製造に用いるポリオールとポリイソシアネートとを反応させることによりポリウレタン樹脂を製造することができる。得られたポリウレタン樹脂の末端がイソシアネート基である場合、さらにヒドロキシ基を有する鎖伸長剤を反応させてもよい。
【0062】
前記ヒドロキシ基を有する鎖伸長剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール化合物;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール化合物;水などが挙げられる。
【0063】
前記改質樹脂(C)の溶解度パラメータは、好ましくは9.0(cal/cm30.5以上、より好ましくは9.7(cal/cm30.5以上であり、好ましくは10.5(cal/cm30.5以下、より好ましくは10.3(cal/cm30.5以下である。
【0064】
前記熱硬化性樹脂(A)及び熱硬化剤(B)との混合物と改質樹脂(C)との溶解度パラメータの差(前記混合物-改質樹脂(C))は、好ましくは-2(cal/cm30.5以上、より好ましくは-1.5(cal/cm30.5以上、さらに好ましくは-1(cal/cm30.5以上、よりいっそう好ましくは0(cal/cm30.5以上、特に好ましくは0.2(cal/cm30.5以上であり、好ましくは2(cal/cm30.5以下、より好ましくは1.5(cal/cm30.5以下、さらに好ましくは0.8(cal/cm30.5以下である。混合物と改質樹脂(C)との溶解度パラメータの差が適度な範囲にあることで、熱硬化前は相溶することが可能であるとともに、熱硬化(すなわち熱硬化性樹脂(A)と熱硬化剤(B)との反応)にともなって前記混合物(反応過程のものも含む)と改質樹脂(C)との相溶性が低下し、熱硬化後には熱硬化性樹脂(A)及び熱硬化剤(B)の反応物と改質樹脂(C)とを相分離させることが可能になると考えられる。
【0065】
前記前記混合物の溶解度パラメータは、Fedorsの方法(Polymer Engineering and Science,1974,vol.14,No.2)に基づき、硬化性樹脂(A)及び熱硬化剤(B)に含まれる各化合物の溶解度パラメータを算出し、各化合物の質量基準の比率に基づき、加重平均値として求めることができる。また、前記改質樹脂(C)の溶解度パラメータは、Fedorsの方法に基づき、改質樹脂(C)の原料として用いた各化合物由来の単位の溶解度パラメータを算出し、各化合物由来の単位の質量基準の比率に基づき、加重平均値として求めることができる。
【0066】
前記改質樹脂(C)のガラス転移温度は、-100℃以上であり、好ましくは-80℃以上、より好ましくは-70℃以上であり、50℃以下であり、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。
【0067】
前記改質樹脂(C)の数平均分子量は、500以上であり、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上であり、50,000以下であり、好ましくは30,000以下、より好ましくは20,000以下、さらに好ましくは15,000以下である。
前記改質樹脂(C)の数平均分子量は、前記官能基価に基づいて算出することができる。
【0068】
前記改質樹脂(C)(エポキシ樹脂改質剤)は、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であり、水酸基を有するものであり、ガラス転移温度が、-100℃以上50℃以下であり、数平均分子量が、600以上50,000以下であることが好ましい。
【0069】
前記熱硬化性組成物は、熱硬化反応前は相溶状態にあるものの、熱硬化反応後は、熱硬化性樹脂(A)と改質樹脂(C)とが相分離するものであることが好ましい。前記熱硬化反応後の相分離状態において、熱硬化性樹脂(A)及び熱硬化剤(B)の反応物が海部を形成し、改質樹脂(C)が島部を形成して、海島型相分離構造を形成することが好ましい。熱硬化性樹脂(A)と熱硬化剤(B)との反応物と、改質樹脂(C)とが共連続構造を形成していてもよい。熱硬化反応前に相溶状態にあることで、熱硬化性樹脂(A)及び熱硬化剤(B)の混合物中に改質樹脂(C)を均一に分散することが可能である一方、熱硬化反応後に熱硬化性樹脂(A)及び熱硬化剤(B)の反応物と改質樹脂(C)とが相分離することで、改質樹脂(C)自体の化学的・機械的特性を維持することが可能であるため、得られる硬化物において、熱硬化性樹脂(A)及び熱硬化剤(B)の反応物中に改質樹脂(C)のドメインを均一に分散することが可能となり、より優れた耐熱性、銅箔密着性、靭性を併せ持つ硬化物を提供可能になると考えられる。
【0070】
硬化物における相分離の有無は、硬化物の白濁の有無、原子間力顕微鏡(AFM)により硬化物破断面を観察した際、海部と島部とが存在することにより確認することができる。
【0071】
前記改質樹脂の含有量は、前記熱硬化性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは60質量部以下、より好ましくは45質量部以下である。また、35質量部以下、さらには15質量部以下、特に10質量部以下であってもよい。
【0072】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに、無機充填材(D)を含んでいてもよい。無機充填材(D)を含むことで、絶縁層の熱膨張率をいっそう低下することができる。前記無機充填材としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、シリカ(溶融シリカ、結晶シリカ等)、窒化ケイ素、アルミナ、粘土鉱物(タルク、クレー等)、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられ、シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。また、前記シリカの形状は、破砕状及び球状のいずれでもよく、配合量を高めつつ熱硬化性組成物の溶融粘度を抑制する観点から、球状であることが好ましい。
特に、本発明の熱硬化性組成物を半導体封止材(好ましくはパワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材)に用いる場合、シリカ(溶融シリカ、結晶シリカが挙げられ、好ましくは結晶シリカ)、アルミナ、窒化ケイ素が好ましい。
【0073】
前記無機充填材の含有率は、熱硬化性組成物中、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、よりいっそう好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。無機充填材の含有率を高めると、難燃性や耐湿熱性、耐ハンダクラック性を高め、熱膨張率を低くすることが容易である。
【0074】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに、難燃剤(E)を含んでいてもよい。前記難燃剤(E)は、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系であることが好ましい。前記難燃剤(E)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。
【0075】
前記リン系難燃剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物等の無機系含窒素リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン=10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン=10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン=10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物などが挙げられる。
【0076】
前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0077】
前記赤リンは、表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0078】
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン化合物等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0079】
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0080】
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0081】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、熱硬化性組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱硬化性組成物100質量部中、0.05~10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1~5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0082】
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0083】
前記無機系難燃剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等の金属水酸化物;モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等の金属酸化物;炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等の金属炭酸塩化合物;アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等の金属粉;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物;シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2-MgO-H2O、PbO-B23系、ZnO-P25-MgO系、P25-B23-PbO-MgO系、P-Sn-O-F系、PbO-V25-TeO2系、Al23-H2O系、ホウ珪酸鉛系等低融点ガラスなどが挙げられる。
【0084】
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0085】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに、有機溶剤(F)を含んでいてもよい。熱硬化性組成物が有機溶剤(F)を含むことで、粘度を下げることができ、特にプリント回線基板の製造に適したものとなる。
【0086】
有機溶剤(F)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶剤などが挙げられる。
【0087】
特に、本発明の熱硬化性組成物をプリント配線基板用に用いる場合、前記有機溶剤(F)としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート等の酢酸エステル溶剤;メチルセロソルブ等のカルビトール溶剤;ジメチルホルムアミド等のアミド溶剤などが好ましい。
【0088】
また本発明の熱硬化性組成物をビルドアップフィルムに用いる場合、前記有機溶剤(F)としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶剤などが好ましい
【0089】
有機溶剤(F)を含む場合、その含有率は、熱硬化性組成物中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0090】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに導電性粒子を含んでいてもよい。導電性粒子を含むことで、導電ペーストとして用いることができ、異方性導電材料に適したものとなる。
【0091】
本発明の熱硬化性組成物は、さらにゴム、フィラー等を含んでいてもよい。ゴム、フィラー等を含むことで、ビルドアップフィルムに適したものとなる。
【0092】
本発明の熱硬化性組成物は、さらに、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0093】
本発明の熱硬化性組成物は、上記各成分を混合することにより得られ、熱硬化により硬化物とすることができる。硬化物の形状としては、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等が挙げられる。
【0094】
本発明の熱硬化性組成物の用途としては、半導体封止材料、プリント配線板材料、樹脂注型材料、接着剤、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等が挙げられる。前記用途のうち、プリント配線板や電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高耐熱性、低熱膨張性、及び溶剤溶解性といった特性からプリント配線板材料やビルドアップ用接着フィルムに用いることが好ましい。
【0095】
本発明の熱硬化性組成物から半導体封止材料を調製する方法としては、前記熱硬化性樹脂(A)、熱硬化剤(B)及び改質樹脂(C)及び必要に応じて用いる各成分を必要に応じて押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合して得ることができる。
【0096】
本発明の熱硬化性組成物を半導体封止材料に用いる場合、半導体パッケージ成形することができ、具体的には、該組成物を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50~200℃で2~10時間に加熱することにより成形物である半導体装置を得ることができる。
【0097】
また本発明の熱硬化性組成物を用いてプリント回路基板を製造するには、硬化性組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。前記補強基材としては、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。より詳細には、まず、前記熱硬化性組成物を、加熱(有機溶剤(F)の種類に応じ、好ましくは50~170℃)することによって、硬化物であるプリプレグを得ることができる。前記プリプレグ中、樹脂の含有率は、好ましくは20質量%以上60質量%以下である。次いで、前記プリプレグを積層し、銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着させることにより、目的とするプリント回路基板を得ることができる。
【0098】
本発明の熱硬化性組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、導電性粒子(微細導電性粒子)を該熱硬化性組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0099】
本発明の熱硬化性成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては例えば、熱硬化性組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該熱硬化性組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~300℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0100】
本発明の熱硬化性組成物からビルドアップフィルムを製造する方法は、例えば、本発明の熱硬化性組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用のビルドアップフィルムとする方法が挙げられる。
【0101】
本発明の熱硬化性組成物をビルドアップフィルムに用いる場合、該フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃~140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
【0102】
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1~0.5mm、深さは通常0.1~1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0103】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明の熱硬化性組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて熱硬化性組成物の層(X)を形成させることにより製造することができる。
【0104】
形成される層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0105】
なお、本発明における層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0106】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0107】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
【0108】
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0109】
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(X)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0110】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70~140℃、圧着圧力を好ましくは1~11kgf/cm2(9.8×104~107.9×104N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0111】
本発明の硬化物を得る方法としては、一般的な熱硬化性組成物の硬化方法に準拠すればよいが、例えば加熱温度条件は、組み合わせる硬化剤の種類や用途等によって、適宜選択すればよいが、上記方法によって得られた組成物を、20~300℃程度の温度範囲で加熱すればよい。
【実施例
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0113】
〔合成例1〕ポリエステル樹脂Aの合成
反応装置に、ビスフェノールA型グリコールエーテル(商標;DIC株式会社製、『ハイプロックス MDB-561』)を779.1質量部と、イソフタル酸(以下「iPA」という。)を132.9質量部と、セバシン酸(以下「SebA」という。)を40.4質量部仕込み、昇温と撹拌を開始した。
次いで、内温を230℃に上昇した後、TiPTを0.10質量部仕込み、230℃で24時間反応させポリエステル樹脂を合成した。
得られたポリエステル樹脂の水酸基価は36.9、数平均分子量は3,040、ガラス転移温度は-14℃であった。
【0114】
〔合成例2〕ポリエステル樹脂Bの合成
反応装置に、エチレングリコールを395.6質量部と、アジピン酸を838.8量部仕込み、昇温と撹拌を開始した。
次いで、内温を220℃に上昇した後、TiPTを0.03質量部仕込み、220℃で24時間縮合反応させポリエステル樹脂を合成した。
得られたポリエステル樹脂の水酸基価は56.2、数平均分子量は2,000、ガラス転移温度は示さなかった。
【0115】
〔合成例3〕ウレタン樹脂Aの合成
反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(商標;三菱化学株式会社製、『PTMG-1000』)を1000.0質量部加えて、トリレンジイソシアネート(商標;三井化学SKCポリウレタン株式会社製、『コスモネートT-80』)128.8質量部を仕込んだ。次いで、外温80℃に昇温した後、10時間反応を継続させ、ウレタン樹脂Aを合成した。
得られたウレタン樹脂の水酸基価は28.0、数平均分子量は4,010、ガラス転移温度は-22℃であった。
【0116】
〔実施例1〕
混合容器にエポキシ樹脂としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商標;DIC株式会社製、『EPICLON N-680』)を80部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商標;DIC株式会社製、『EPICLON 850-S』)を20部、硬化剤としてノボラック型フェノール樹脂(商標;DIC株式会社製、『フェノライト TD-2131』)を50部、合成例1で得られた両末端OH基ポリエステルを30部配合し、内温130℃で相溶するまで撹拌した。硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを1部添加し、20秒撹拌したあと、真空脱泡することで本発明の熱硬化性組成物であるエポキシ樹脂組成物(X1)を得た。
【0117】
〔実施例2、3〕
合成例1で得られた両末端OH基ポリエステル(ポリエステル樹脂A)45質量部(実施例2)、60質量部(実施例3)をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の熱硬化性組成物であるエポキシ樹脂組成物(X2)、(X3)を得た。
【0118】
〔実施例4〕
合成例1で得られた両末端OH基ポリエステル(ポリエステル樹脂A)30質量部の代わりに、合成例3で得られた両末端OH基ポリウレタン(ウレタン樹脂A)30質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の熱硬化性組成物であるエポキシ樹脂組成物(X4)を得た。
【0119】
〔比較例1〕
混合容器にエポキシ樹脂としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商標;DIC株式会社製、『EPICLON N-680』)を80部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商標;DIC株式会社製、『EPICLON 850-S』)を20部、硬化剤としてノボラック型フェノール樹脂(商標;DIC株式会社製、『フェノライト TD-2131』)を50部配合し、内温130℃で相溶するまで撹拌した。硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを1部添加し、20秒撹拌したあと、真空脱泡することで本発明のエポキシ樹脂組成物を得た(Y1)。
【0120】
〔比較例2〕
合成例1で得られた両末端OH基ポリエステル(ポリエステル樹脂A)30質量部の代わりに、合成例2で得られた両末端OH基ポリエステル(ポリエステル樹脂B)30質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物(Y2)を得た。
【0121】
得られたエポキシ樹脂組成物(X1)~(X4)、(Y1)、(Y2)について、以下の評価を行った。各エポキシ樹脂組成物に用いた改質樹脂(C)の溶解度パラメータとともに、結果を表1に示す。
【0122】
〔銅箔密着性の評価方法〕
実施例及び比較例で得たエポキシ樹脂組成物を130℃で、2mm厚のゴム製スペーサーを片面に銅箔を張ったガラス板で挟んだ注型板に流し込み、175℃で5時間熱硬化させた。得られた硬化物を幅10mm×長さ60mmの大きさに切り出し、剥離試験機を用いて90°ピール強度を測定した。
【0123】
測定機器 :島津オートグラフ(株式会社島津製作所製)
型式 :AG-1
試験速度 :50mm/m
【0124】
〔ガラス転移温度(Tg)、貯蔵弾性率(E')の評価方法〕
実施例及び比較例で得たエポキシ樹脂組成物を130℃で2mm厚のゴム製スペーサーをガラス板で挟んだ注型板に流し込み、175℃で5時間熱硬化させた。得られた硬化物を幅5mm×長さ55mmの大きさに切り出し、下記の条件にて、貯蔵弾性率(E')及び損失弾性率(E”)を測定した。
E'/E”をtanδとした場合、tanδが最大となる温度をガラス転移温度(Tg、単位;℃)とし、測定した。
また、25℃での貯蔵弾性率(E')を測定した。
測定機器 :動的粘弾性測定機(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)
型式 :DMA6100
測定温度範囲:0℃~300℃
昇温速度 :5℃/分
周波数 :1Hz
測定モード :曲げ
【0125】
〔破壊靱性の評価方法〕
実施例及び比較例で得たエポキシ樹脂組成物を130℃で4mm厚のゴム製スペーサーをガラス板で挟んだ注型板に流し込み、175℃で5時間熱硬化させた。
得られた硬化物を幅13mm×長さ80mm×厚さ4mmの大きさに切削し試験片として、ASTM D5045-93(ISO 13586)に従い加工し、破壊靱性(単位;MPa・m0.5)の測定を行った。
試験前における試験片へのノッチ(刻み目)の作成は、剃刀の刃を試験片にあて、ハンマーで剃刀の刃に衝撃を与えることで行った。
なお本発明の樹脂組成物を半導体封止材料として用いる場合、微視的な破壊靱性の向上が求められる場合が多く、本評価方法で評価されるような巨視的な破壊靱性までは必要とされない場合があり、本実施例における改質樹脂(C)の含有量よりも少ない含有量で、靱性向上効果が発揮される場合がある。
測定機器 :島津オートグラフ(株式会社島津製作所製)
型式 :AG-X plus
試験速度 :10mm/分
標線間距離 :50mm
【0126】
【表1】
【0127】
実施例1~4のエポキシ樹脂組成物(X1)~(X4)は、本発明の熱硬化性組成物であり、得られた硬化物において、優れた耐熱性、銅箔密着性、靭性を発現した。一方、比較例1は、改質樹脂(C)を含まない例であり、銅箔密着性、靱性に劣るものであった。比較例2は、ガラス転移温度を有しない樹脂を用いた例であり、銅箔密着性、耐熱性、靱性のいずれにも劣るものであった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6