(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】マレイミド樹脂、非対称ビスマレイミド化合物、硬化性組成物、硬化物、半導体封止材料、半導体封止装置、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 12/08 20060101AFI20220913BHJP
C08F 22/40 20060101ALI20220913BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220913BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20220913BHJP
C07D 207/448 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C08G12/08
C08F22/40
H01L23/30 R
C07D207/448 CSP
(21)【出願番号】P 2022536593
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2021042356
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2020212256
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】下野 智弘
(72)【発明者】
【氏名】林原 瞳
(72)【発明者】
【氏名】太田黒 庸行
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-031464(JP,A)
【文献】特開昭51-030290(JP,A)
【文献】特開昭52-125161(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0002953(KR,A)
【文献】国際公開第2020/217679(WO,A1)
【文献】特開平02-300223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 12/00 -12/46
C07D207/448
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の芳香族モノアミン化合物(A)と、結合剤(B)との反応生成物であるポリアミン化合物(C)のマレイミド化物であることを特徴とするマレイミド樹脂であり、前記芳香族モノアミン化合物(A)の少なくとも一種がアニリンの2,6-位に
炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基を有する化合物であるマレイミド樹脂。
【請求項2】
前記結合剤(B)が、アルデヒド化合物(B-1)、ケトン化合物(B-2)、下記一般式(B-3)で表される芳香族化合物(B-3)、下記一般式(B-4)で表される芳香族化合物(B-4)、下記一般式(B-5)で表される芳香族化合物(B-5)、下記一般式(B-6)で表される芳香族化合物(B-6)、下記一般式(B-7)で表される芳香族化合物(B-7)、下記一般式(B-8)で表される芳香族化合物(B-8)のいずれか一種以上である請求項1記載のマレイミド樹脂。
【化1】
[一般式(B-3)~(B-8)中、Ar
1はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい芳香環を表す。R
1はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基である。R
2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である。R
3はそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基のいずれかであり、lは0~3の整数である。Xは水酸基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基のいずれかである。Yは単結合、炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。]
【請求項3】
異なる2種の芳香族モノアミン化合物(A)が結合剤(B)で結合された非対称ジアミン化合物(C-1)のマレイミド化物を含有する請求項1又は2記載のマレイミド樹脂。
【請求項4】
異なる2種の芳香族モノアミン化合物(A)が結合剤(B)で結合された非対称ジアミン化合物(C-1)のマレイミド化物である非対称ビスマレイミド化合物
であり、前記芳香族モノアミン化合物(A)の少なくとも一種がアニリンの2,6-位に
炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基を有する化合物である
非対称ビスマレイミド化合物。
【請求項5】
下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項4記載の非対称ビスマレイミド化合物。
【化1】
[式中Zは炭素原子数1~200の二価の有機基である。R
4はそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基のいずれかである。式中にR
4が複数存在する場合、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。mは0又は1~4の整数である。式中破線で囲われた構造部位αと構造部位βとは互いに異なる構造を有する。]
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一つに記載のマレイミド樹脂、或いは請求項4又は5記載の非対称ビスマレイミド化合物を含有する硬化性組成物。
【請求項7】
請求項6記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項6記載の硬化性組成物を用いた半導体封止材料。
【請求項9】
請求項8記載の半導体封止材料を用いた半導体装置。
【請求項10】
請求項6記載の硬化性組成物を用いたプリプレグ。
【請求項11】
請求項10記載のプリプレグを用いた回路基板。
【請求項12】
請求項6記載の硬化性組成物を用いたビルドアップフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融点や軟化点が低くハンドリング性に優れるとともに、硬化物が高い耐熱性を有し、半導体封止材料等に好適に用いることができるマレイミド樹脂やマレイミド化合物、これらを含有する硬化性組成物とその硬化物、半導体封止材料、半導体封止装置、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
マレイミド樹脂は硬化物における耐熱性が非常に高いことから、パワー半導体用封止材料等、特に高い耐熱性が要求される分野の樹脂材料としてその利用が検討されているが、現在市場に流通しているマレイミド樹脂は融点や軟化点が高く、材料としてのハンドリング性の低さが課題となっている。
【0003】
従来知られているマレイミド樹脂としては、例えば、4,4‘-ジフェニルメタンビスマレイミド型の化合物が広く知られているが、前述の通り、当該化合物は融点が高く、材料としてのハンドリング性に劣るものであった(例えば特許文献1参照)。また、比較的ハンドリング性の高いマレイミド樹脂として、2,2-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン型の化合物が知られているが、当該化合物は耐熱性等の硬化物物性において、昨今の市場要求を満たすものではなかった(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-269716号公報
【文献】特開平6-128225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、融点や軟化点が低くハンドリング性に優れるとともに、硬化物が高い耐熱性を有し、半導体封止材料等に好適に用いることができるマレイミド樹脂やマレイミド化合物、これらを含有する硬化性組成物とその硬化物、半導体封止材料、半導体封止装置、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、複数種の芳香族モノアミン化合物と、結合剤との反応生成物であるポリアミン化合物をマレイミド化して得られるマレイミド樹脂が、融点や軟化点が低くハンドリング性に優れるとともに、硬化物が高い耐熱性を有し、半導体封止材料等に好適に用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、複数種の複数種の芳香族モノアミン化合物(A)と、結合剤(B)との反応生成物であるポリアミン化合物(C)のマレイミド化物であることを特徴とするマレイミド樹脂に関する。
【0008】
本発明は更に、異なる2種の芳香族モノアミン化合物(A)が結合剤(B)で結合された非対称ジアミン化合物(C-1)のマレイミド化物である非対称ビスマレイミド化合物に関する。
【0009】
本発明は更に、前記マレイミド樹脂又は前記非対称ビスマレイミド化合物を含有する硬化性組成物に関する。
【0010】
本発明は更に、前記硬化性組成物の硬化物に関する。
【0011】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いた半導体封止材料に関する。
【0012】
本発明は更に、前記半導体封止材料を用いた半導体装置に関する。
【0013】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いたプリプレグに関する。
【0014】
本発明は更に、前記プリプレグを用いた回路基板に関する。
【0015】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いたビルドアップフィルムに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、融点や軟化点が低くハンドリング性に優れるとともに、硬化物が高い耐熱性を有し、半導体封止材料等に好適に用いることができるマレイミド樹脂やマレイミド化合物、これらを含有する硬化性組成物とその硬化物、半導体封止材料、半導体封止装置、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1で得られたマレイミド樹脂(1)のGPCチャート図である。
【
図2】実施例2で得られたマレイミド樹脂(2)のGPCチャート図である。
【
図3】実施例3で得られたマレイミド樹脂(3)のGPCチャート図である。
【
図4】実施例4で得られたマレイミド樹脂(4)のGPCチャート図である。
【
図5】実施例5で得られたマレイミド樹脂(5)のGPCチャート図である。
【
図6】実施例6で得られたマレイミド樹脂(6)のGPCチャート図である。
【
図7】実施例1で得られたマレイミド樹脂(1)の示差走査熱量測定(DSC)チャート図である。
【
図8】実施例2で得られたマレイミド樹脂(2)の示差走査熱量測定(DSC)チャート図である。
【
図9】実施例3で得られたマレイミド樹脂(3)の示差走査熱量測定(DSC)チャート図である。
【
図10】実施例4で得られたマレイミド樹脂(4)の示差走査熱量測定(DSC)チャート図である。
【
図11】実施例5で得られたマレイミド樹脂(5)の示差走査熱量測定(DSC)チャート図である。
【
図12】実施例6で得られたマレイミド樹脂(6)の示差走査熱量測定(DSC)チャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のマレイミド樹脂は複数種の芳香族モノアミン化合物(A)と、結合剤(B)との反応生成物であるポリアミン化合物(C)のマレイミド化物であることを特徴とする。
【0019】
前記芳香族モノアミン化合物(A)は、芳香環上にNH2を一つ有する化合物であれば、その他の具体構造は特に限定なく、多種多様な化合物を用いることができる。具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族化合物の芳香環上にNH2基を一つ有する化合物や、NH2基に加えて更にその他の置換基を一つ乃至複数有する化合物等が挙げられる。前記その他の置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、水酸基等が挙げられる。
【0020】
前記脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。前記アルキルオキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記アルケニルオキシ基は、アリルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。
【0021】
前記芳香族モノアミン化合物(A)の中でも、得られるマレイミド樹脂の融点や軟化点が低くハンドリング性に優れるものとなることから、アニリン又はアニリンの芳香核上に前記その他の置換基を一つないし複数有する化合物が好ましい。更に、アニリン、アニリンの2位に置換基を有する化合物、アニリンの2,6-位に置換基を有する化合物が特に好ましい。また、アニリンの2位に置換基を有する化合物及びアニリンの2,6-位に置換基を有する化合物の置換基の種類としては、硬化物における耐熱性に優れるマレイミド樹脂となることから、炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基がより好ましい。
【0022】
本発明では、前記芳香族モノアミン化合物(A)として複数種を併用する。これにより、マレイミド樹脂の特徴である高い耐熱性を維持しながらも、融点や軟化点が低くハンドリング性に優れるマレイミド樹脂となる。用いる前記芳香族モノアミン化合物(A)の化合物数は複数種、すなわち2種以上であればよく、上限は特に限定されないが、比較的簡便に製造可能となることから、2~5種の範囲で用いることが好ましく、2種又は3種を併用することがより好ましい。また、各芳香族モノアミン化合物(A)の使用量は、融点や軟化点が低くハンドリング性に優れる効果が十分に発揮されることから、前記芳香族モノアミン化合物(A)の合計に対し、少なくとも10質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。また、その上限値としては、90%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましい。前記芳香族モノアミン化合物(A)として2種を併用する場合には、両者の質量比が10/90~90/10の範囲であることが好ましく。20/80~80/20の範囲であることがより好ましい。
【0023】
前記結合剤(B)は、前記芳香族モノアミン化合物(A)と反応して、前記芳香族モノアミン化合物(A)の芳香環同士を結合する化合物であればその具体構造は特に限定なく、様々な化合物を用いることができる。また、前記結合剤(B)は一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記結合剤(B)の具体例としては、アルデヒド化合物(B-1)、ケトン化合物(B-2)、下記一般式(B-3)で表される芳香族化合物(B-3)、下記一般式(B-4)で表される芳香族化合物(B-4)、下記一般式(B-5)で表される芳香族化合物(B-5)、下記一般式(B-6)で表される芳香族化合物(B-6)、下記一般式(B-7)で表される芳香族化合物(B-7)、下記一般式(B-8)で表される芳香族化合物(B-8)等が挙げられる。
【0024】
【化1】
[一般式(B-3)~(B-8)中、Ar
1はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい芳香環を表す。R
1はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基である。R
2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である。R
3はそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基のいずれかであり、lは0~3の整数である。Xは水酸基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基のいずれかである。Yは単結合、炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。]
【0025】
前記アルデヒド化合物(B-1)は、例えば、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物、ベンズアルデヒドやナフトアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
前記ケトン化合物(B-2)は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の脂肪族ケトン化合物、アセトフェノン等の芳香族ケトン化合物等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
前記一般式(B-3)~(B-6)中、Ar1はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい芳香環を表す。具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、及びこれらの芳香環上に各種の置換基を一つ乃至複数有する構造部位が挙げられる。前記置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、水酸基等が挙げられる。前記脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。前記アルキルオキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記アルケニルオキシ基は、アリルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。
【0028】
前記一般式(B-4)、(B-6)中、R2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である。前記炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基等が挙げられる。
【0029】
前記一般式(B-7)、(B-8)中、R3はそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基のいずれかであり、lは0~3の整数である。前記脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。前記アルキルオキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記アルケニルオキシ基は、アリルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。
【0030】
前記一般式(B-4)、(B-6)、(B-8)中、Xは水酸基、ハロゲン原子、アルキルオキシ基のいずれかである。前記アルキルオキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0031】
前記一般式(B-5)、(B-6)中、Yは単結合、炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。前記炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。
【0032】
前記芳香族モノアミン化合物(A)と、前記結合剤(B)とを反応させてポリアミン化合物(C)を得る反応工程は、例えば、複数種の前記芳香族モノアミン化合物(A)と前記結合剤(B)とを酸性触媒条件下で反応させる方法等が挙げられる。特に、反応制御が容易になることから、前記芳香族モノアミン化合物(A)中に、前記結合剤(B)を分割添加することが好ましい。当該反応は、適宜溶媒中で行ってもよい。また、50~200℃程度に加熱することで、効率的に反応を進行させることができる。反応終了後はアルカリ水溶液や蒸留水等で洗浄するなどし、中間体であるポリアミン化合物(C)を得ることができる。
【0033】
前記酸性触媒は、例えば、パラトルエンスルホン酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、硫酸、塩酸、シュウ酸、活性白土等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記酸性触媒の添加量は、前記芳香族モノアミン化合物化合物(A)2モルに対し、酸触媒が0.01~0.5モルの範囲となる割合が好ましく、0.1~0.3モルの範囲となる割合がより好ましい。モル数が定義できない場合は、アニリン化合物(A)と結合剤(B)と溶媒と酸性触媒の総量に対して1wt%~50wt%の範囲となる割合が好ましい。
【0034】
前記溶媒は、例えば、蒸留水、やトルエンキシレン等の有機溶剤等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上の混合溶媒としてもよい。前記溶媒の使用量は、前記芳香族モノアミン化合物(A)と前記結合剤(B)との合計質量に対し、5~100質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0035】
前記ポリアミン化合物(C)のマレイミド化反応は、例えば、前記ポリアミン化合物(C)と酸無水物とを酸性触媒条件下で反応させる方法が挙げられる。特に、反応制御が容易になることから、前記ポリアミン化合物(C)中に、前記酸無水物を分割添加するか、或いは、前記酸無水物を適当な溶剤に溶解させて滴下することが好ましい。当該反応は適宜溶媒中で行ってもよい。より好ましい反応手順としては、初めに前記ポリアミン化合物(C)と前記酸無水物とを室温で撹拌し、アミック酸中間体を得る。その後、酸触媒を添加し、50~200℃、より好ましくは70~150℃に加熱し反応を進行させる。この時、系内の水分を除去することが好ましい。反応終了後はアルカリ水溶液や蒸留水などで洗浄するなどし、目的のマレイミド樹脂を得ることができる。
【0036】
前記酸無水物は、例えば、無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物等が挙げ得られる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
前記酸性触媒は、例えば、p-トルエンスルホン酸、ヒドロキシ-p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記酸性触媒の添加量は、前記ポリアニリン化合物(C)のアミノ基当量1g/molに対して通常0.01~10mol、好ましくは0.03~3molである。
【0038】
前記溶媒は、前記ポリアミン化合物(C)や前記酸無水物を溶解し得るものであればよい。特に、前記ポリアミン化合物(C)や前記酸無水物の溶解性が高く、反応が効率的に進行することから、トルエン等の非極性溶媒と、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒との混合溶媒を用いることが好ましい。前記非極性溶媒は、トルエンの他、キシレン、クロロベンゼン等が挙げられる。また、前記非プロトン性極性溶媒は、ジメチルホルムアルデヒドの他、メチルエチルケトン等が挙げられる。両者の配合比及び溶剤の使用量は、前記ポリアミン化合物(C)や前記酸無水物の溶剤溶解性等によって適宜調整される。一例として、前記非極性溶媒と非プロトン性溶媒との質量比を1/99~99/1の範囲とし、全溶媒量を前記ポリアミン化合物(C)と前記酸無水物と全溶媒量の合計に対し、0.5~80%の範囲とする方法が挙げられる。
【0039】
本発明のマレイミド樹脂の分子量は特に限定されず、用途等に応じて適宜反応条件等を変更し、好ましい値に調節することが可能である。中でも、半導体封止材料用途に用いる場合には、硬化物における高い耐熱性を維持しながらも、融点や軟化点が低くハンドリング性に優れる樹脂となることから、下記式(1)で表されるような2核体成分、下記構造式(2)で表されるような3核体成分、下記式(3-1)や(3-2)で表される4核体成分等、比較的低分子量の成分を含有することが好ましい。
【0040】
【化2】
[式中Aは前記芳香族モノアミン化合物(A)に由来し、また、マレイミド基を有する構造部位であり、Bは前記結合剤(B)に由来する構造部位である。式中のA及びBはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。]
【0041】
特に、マレイミド樹脂が2核体成分(ビスマレイミド化合物)を含むことが好ましい。マレイミド樹脂中の2核体成分(ビスマレイミド化合物)の割合は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
【0042】
本発明において、マレイミド樹脂中の2核体の含有量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のチャート図の面積比から算出される値である。また、本発明においてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件は実施例に記載したものである。なお、発明において「核体数」とは、前記式(1)~(3-2)に示す通り、分子中の前記芳香族モノアミン化合物(A)に由来する構造部位の数のことである。
【0043】
また、2核体成分(ビスマレイミド化合物)の中でも、硬化物における高い耐熱性を維持しながらも、融点や軟化点が低くハンドリング性に優れる樹脂となることから、異なる2種の芳香族モノアミン化合物(A)が結合剤(B)で結合された非対称ジアミン化合物(C-1)のマレイミド化物である非対称ビスマレイミド化合物が好ましい。更に、前記芳香族モノアミン化合物(A)としてアニリン化合物を用いたものが好ましく、下記構造式(4)で表される非対称ビスマレイミド化合物がより好ましい。本発明においては、当該非対称マレイミド化合物を単離精製して用いてもよい。
【0044】
【化3】
[式中Zは炭素原子数1~200の二価の有機基である。R
4はそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基のいずれかである。式中にR
4が複数存在する場合、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。mは0又は1~4の整数である。式中破線で囲われた構造部位αと構造部位βとは互いに異なる構造を有する。]
【0045】
前記構造式(4)中のZは前記結合剤(B)に由来する構造部位である。Zは炭素原子数1~200の二価の有機基であるが、炭素原子数が1~200の範囲であれば、酸素原子やハロゲン原子等、その他の原子を含む構造部位であってもよい。中でも、炭素原子数1~20の二価の有機基であることがより好ましい。前記Zの具体例としては、例えば、下記一般式(Z-1)~(Z-8)で表される構造部位等が挙げられる。
【0046】
【化4】
[一般式(Z-1)~(X-8)中、Ar
1はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい芳香環を表す。R
3はそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基のいずれかであり、lは0~3の整数である。R
5はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香環を表す。R
6はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基を表す。R
7は一般式(Z-1)で表されるもの以外の二価の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもいい芳香族基、またはその組み合わせのいずれかである。Yは単結合、炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。nは1以上の整数である。]
【0047】
前記一般式(Z-1)中のR5はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香環を表す。前記炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基等が挙げられる。前記置換基を有していてもよい芳香環は、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、及びこれらの芳香環上に各種の置換基を一つ乃至複数有する構造部位が挙げられる。前記置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基、水酸基等が挙げられる。前記脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。前記アルキルオキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記アルケニルオキシ基は、アリルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。
【0048】
前記一般式(Z-2)、(Z-3)、(Z-8)中のAr1はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい芳香環を表す。その具体例は前記一般式(B-3)~(B-6)中のAr1と同様のものが挙げられる。
【0049】
前記一般式(Z-2)、(Z-3)中のR6はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基を表す。前記炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基等が挙げられる。
【0050】
前記一般式(Z-3)中のYは単結合、炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。前記炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。
【0051】
前記一般式(Z-4)中のR3はそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基のいずれかであり、lは0~3の整数である。その具体例は前記一般式(B-7)、(B-8)中のR3と同様のものが挙げられる。
【0052】
前記一般式(Z-7)中のR7は一般式(Z-1)で表されるもの以外の二価の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもいい芳香族基、またはその組み合わせのいずれかである。前記二価の脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。
【0053】
前記構造式(4)中のR4は、それぞれ独立して脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基のいずれかである。前記脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。前記アルキルオキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記アルケニルオキシ基は、アリルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香環上に前記アルキル基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。式中にR4が複数存在する場合、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
中でも、得られるマレイミド樹脂の融点や軟化点が低くハンドリング性に優れるものとなることから、マレイミド基が置換している炭素原子に隣接する炭素原子の片方又は両方に置換基を有することが好ましい。また、当該置換基は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基がより好ましい。
【0055】
本願発明の硬化性組成物は、前記マレイミド樹脂又は前記非対称ビスマレイミド化合物を含有する。本発明の硬化性組成物は、硬化性成分として前記マレイミド樹脂或いは前記非対称ビスマレイミド化合物を単独で用いてもよいし、その他の硬化性化合物を1つないし複数併用してもよい。
【0056】
前記その他の硬化性化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミン化合物、活性エステル樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和結合含有化合物等が挙げられる。
【0057】
前記エポキシ樹脂は、例えば、各種のビスフェノール型エポキシ樹脂、各種のビフェニル型エポキシ樹脂、各種のノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
前記フェノール樹脂は、例えば、各種のビスフェノール、各種のビフェニル、各種のノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型樹脂、フェノールアラルキル型樹脂、各種のアリーレンエーテル樹脂等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
本発明の硬化性組成物は必要に応じて硬化促進剤、難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0060】
前記硬化促進剤は、例えば、リン系化合物、過酸化物、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。中でも、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、過酸化物ではジクミルパーオキサイド、第3級アミンでは1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)、イミダゾール化合物では2-エチル-4-メチルイミダゾール、ピリジン化合物では4-ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0061】
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10―(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性組成物の樹脂固形分に対し0.1~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0062】
前記無機質充填材は、例えば、本発明の硬化性組成物を半導体封止材料用途に用いる場合などに配合される。前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性組成物の100質量部中、0.5~95質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0063】
本発明の硬化性組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0064】
本発明の硬化性組成物は、融点や軟化点が低くハンドリング性に優れるとともに、硬化物が高い耐熱性を有することから、特に半導体封止材料等に好適に用いることができるが、この他、プリント配線基板やレジスト材料等の電子材料用途、塗料や接着剤、成型品等の用途にも広く利用することができる。
【0065】
本発明の硬化性組成物を半導体封止材料用途に用いる場合、一般には無機質充填材を配合することが好ましい。半導体封止材料は、例えば、押出機、ニーダー、ロール等を用いて配合物を混合して調製することができる。得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50~250℃の温度条件下で1~10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【0066】
本発明の硬化性組成物をプリント配線基板用途やビルドアップ接着フィルム用途に用いる場合、一般には有機溶剤を配合して希釈して用いることが好ましい。前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶剤の種類や配合量は硬化性組成物の使用環境に応じて適宜調整できるが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、不揮発分が40~80質量%となる割合で使用することが好ましい。ビルドアップ接着フィルム用途では、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、不揮発分が30~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0067】
本発明の硬化性組成物を用いてプリント配線基板を製造する方法は、例えば、硬化性組成物を補強基材に含浸し硬化させてプリプレグを得、これと銅箔とを重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。前記補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。硬化性組成物の含浸量は特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【実施例】
【0068】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。本発明の実施例において、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)、アミン当量の各測定条件は以下の通りである。
【0069】
<ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0070】
<高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)の測定条件>
コントローラ:Agilent Technologies 1260 Infinity II
カラム:Agilent EC-C18(4.6×50mm、2.7μm)
カラム温度 :40℃
ポンプ流速 :1.0ml/分
溶離条件 :K1-水、K2-アセトニトリル
K1/K2=0/100→30/70(線形に濃度変化0-1.67分)
K1/K2=30/70(1.67-5分)
K1/K2=30/70→90/10(5-8分)
(比率は体積比)
検出波長 :UV254、275、300nm
MS :Agilent Technologies InfinityLab LC/MSD
【0071】
<アミン当量の測定>
500mL共栓付き三角フラスコに、試料であるポリアニリン化合物を約2.5g入れ、ピリジン7.5g、無水酢酸2.5g、トリフェニルホスフィン7.5gを精秤後、冷却管を装着し、120℃に設定したオイルバスにて150分加熱還流する。
混合物を冷却した後、蒸留水5.0mL、プロピレングリコールモノメチルエーテル100mL、テトラヒドロフラン75mL、0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液(~50mL)を加え、電位差滴定法により滴定した。同様の方法で空試験を行なって補正した。
アミン当量(g/eq.)=(S×2,000)/(Blank-A)
S:試料の量(g)
A:0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液の消費量(mL)
Blank:空試験における0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液の消費量(mL)
【0072】
(実施例1:マレイミド樹脂(1)の合成)
ロータリーエバポレーターに取り付けた500mLナスフラスコに、2,6-キシリジン52.40g(0.43mol)、2,6-ジエチルアニリン64.52g(0.43mol)、蒸留水22.14gおよびp-トルエンスルホン酸22.73gを仕込み、攪拌しながら70℃まで加熱した。70℃で30分間保持した後、37%ホルマリン溶液34.98g(0.43mol)を1時間かけて4分割投入し、4時間反応させた。反応後、室温まで空冷し、反応溶液を2Lのセパラブルフラスコに移し、トルエン140gで希釈した。希釈溶液は10%水酸化ナトリウム水溶液100gで1回、蒸留水100gで4回洗浄し、減圧濃縮してポリアニリン化合物(1)109.48gを得た。ポリアニリン化合物(1)のアミン当量は146eq/gであった。
【0073】
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにポリアニリン化合物(1)78.35g(アミン当量換算で0.54mol)、トルエン231.5g、ジメチルホルムアミド23.3gを仕込み室温で攪拌した。無水マレイン酸59.53g(0.61mol)を1時間かけて4分割投入し、室温でさらに1時間反応させた。p-トルエンスルホン酸一水和物2.3gを加え、反応液を加熱し還流下で共沸してくる水とトルエンを冷却・分離した後、トルエンだけを系内に戻して脱水反応を6時間行った。60℃まで放冷した溶液を、5%炭酸水素ナトリウム水溶液100gで2回、蒸留水150gで7回洗浄した。途中、分液能向上のためにトルエン200gを追加した。減圧濃縮してマレイミド樹脂(1)105.7gを得た。LC-MSスペクトルにて、M+=432、460、488のピークを確認した。それぞれのピークは下記化合物のアンモニア付加物に相当する。また、GPCチャート図の面積比から算出される2核体成分(ビスマレイミド化合物)の含有量は、96%であった。マレイミド樹脂(1)のGPCチャートを
図1に示す。
【0074】
【0075】
(実施例2:マレイミド樹脂(2)の合成)
ロータリーエバポレーターに取り付けた500mLナスフラスコに、2-エチルアニリン52.11g(0.43mol)、2,6-ジエチルアニリン64.17g(0.43mol)、蒸留水22.14gおよびp-トルエンスルホン酸22.73gを仕込み、攪拌しながら70℃まで加熱した。70℃で30分環保持した後、37%ホルマリン溶液34.98g(0.43mol)を1時間かけて4分割投入し、4時間反応させた。反応後、室温まで空冷し、反応溶液を2Lのセパラブルフラスコに移し、トルエン140gで希釈した。希釈溶液は10%水酸化ナトリウム水溶液100gで1回、蒸留水100gで4回洗浄し、減圧濃縮してポリアニリン化合物(2)119.02gを得た。ポリアニリン化合物(2)のアミン当量は165eq/gであった。
【0076】
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにポリアニリン化合物(2)87.45g(アミン当量換算で0.53mol)、トルエン231.5g、ジメチルホルムアミド23.3gを仕込み室温で攪拌した。無水マレイン酸59.53g(0.61mol)を1時間かけて4分割投入し、室温でさらに1時間反応させた。p-トルエンスルホン酸一水和物2.3gを加え、反応液を加熱し還流下で共沸してくる水とトルエンを冷却・分離した後、トルエンだけを系内に戻して脱水反応を6時間行った。60℃まで放冷した溶液を、5%炭酸水素ナトリウム水溶液100gで2回、蒸留水150gで7回洗浄した。途中分液能向上のためにトルエン200gを追加した。減圧濃縮してマレイミド樹脂(2)123.36gを得た。LC-MSスペクトルにて、M+=432、460、488のピークを確認した。それぞれのピークは下記化合物のアンモニア付加物に相当する。また、GPCチャート図の面積比から算出される2核体成分(ビスマレイミド化合物)の含有量は、56%であった。マレイミド樹脂(2)のGPCチャートを
図2に示す。
【0077】
【0078】
(実施例3:マレイミド樹脂(3)の合成)
ロータリーエバポレーターに取り付けた500mLナスフラスコに、2-エチルアニリン52.11g(0.43mol)、2,6-キシリジン52.11g(0.43mol)、蒸留水22.14gおよびp-トルエンスルホン酸22.73gを仕込み、攪拌しながら70℃まで加熱した。70℃で30分間保持した後、37%ホルマリン溶液34.98g(0.43mol)を1時間かけて4分割投入し、4時間反応させた。反応後、室温まで空冷し、反応溶液を2Lのセパラブルフラスコに移し、トルエン140gで希釈した。希釈溶液は10%水酸化ナトリウム水溶液100gで1回、蒸留水100gで4回洗浄し、減圧濃縮してポリアニリン化合物(4)106.11gを得た。アミン当量は147eq/gであった。
【0079】
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにポリアニリン化合物(3)77.91g(アミン当量換算で0.53mol)、トルエン231.5g、DMF23.3gを仕込み室温で攪拌した。無水マレイン酸59.53g(0.61mol)を1時間かけて4分割投入し、室温でさらに1時間反応させた。p-トルエンスルホン酸一水和物2.3gを加え、反応液を加熱し還流下で共沸してくる水とトルエンを冷却・分離した後、トルエンだけを系内に戻して脱水反応を6時間行った。60℃まで放冷した溶液を、5%炭酸水素ナトリウム水溶液100gで2回、蒸留水150gで7回洗浄した。途中分液能向上のためにトルエン200gを追加した。減圧濃縮してマレイミド樹脂(3)113.09gを得た。LC-MSスペクトルにて、M+=432のピークが確認された。当該ピークは下記化合物のアンモニア付加物に相当する。また、GPCチャート図の面積比から算出される2核体成分(ビスマレイミド化合物)の含有量は、58%であった。マレイミド樹脂(3)のGPCチャートを
図3に示す。
【0080】
【0081】
(実施例4~6:マレイミド樹脂(4)~(6)の合成)
アニリン化合物の種類とモル数を下記表1に示す通り変更した以外は、実施例1と同様の手順でマレイミド樹脂(4)~(6)を合成した。マレイミド樹脂(4)~(6)のGPCチャート図を
図4~6に示す。
GPCチャート図の面積比から算出される各マレイミド樹脂の2核体成分(ビスマレイミド化合物)の含有量を表1に示す。
また、各マレイミド樹脂のMSスペクトルから、それぞれ非対称ビスマレイミド化合物を含有していることを確認した。
【0082】
【0083】
(実施例7~12:マレイミド樹脂(1)~(6)の評価)
下記の要領で各マレイミド樹脂の融点、軟化点、硬化物のTd5、及び硬化物の熱膨張率を測定し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0084】
<融点の測定>
実施例1~6で得られたマレイミド樹脂について、示差走査熱量測定(DSC)を用い、以下の条件にて測定したDSC曲線における融解ピークの頂点を融点とした。マレイミド樹脂(1)~(6)の示差走査熱量測定(DSC)チャート図を
図7~12に示す。
測定装置 :メトラー・トレド株式会社製「DSC1」、
サンプル量:約5mg
温度条件 :10℃/分
【0085】
<軟化点の測定>
実施例1~6で得られたマレイミド樹脂について、軟化点をJIS K7234(環球法)に準拠して測定した。
【0086】
<硬化物のTd5の測定>
実施例1~6で得られたマレイミド樹脂を、それぞれ、11cm×5cm(×厚み約1mm)の型に流し込み、200℃で2時間、更に250℃で2時間硬化させて、硬化物を得た。
得られた硬化物について、メトラー・トレド株式会社製 TGA/DSCを用い、Td5を測定した。
測定機器:メトラー・トレド株式会社 TGA/DSC 1
測定範囲:40℃~150℃~600℃
昇温速度:20℃/分(40℃→150℃)
15分保持(150℃)
5℃/分 (150℃→600℃)
雰囲気 :窒素
【0087】
硬化物の熱膨張率の測定
先と同様の条件で硬化物を得、株式会社日立ハイテクサイエンス社製TMA/SS6100を用いて熱膨張率を測定した。
測定機器 :TMA/SS6100(株式会社日立ハイテクサイエンス)
プローブ :石英製膨張・圧縮プローブ
測定荷重 :88.8mN
測定温度 :1st run r.t.~270℃
2nd run 0~270℃
昇温速度 :3℃/分
雰囲気 :窒素
【0088】
(比較例1)
比較対象として4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成株式会社製「BMI-1000」)を用い、実施例と同様の方法にて、マレイミド樹脂の融点を測定した。融点は160℃であった。また、当該ビスマレイミド化合物は150℃では溶融しないことから、JIS K7234(環球法)に準拠しての軟化点は測定しなかった。
【0089】
【要約】
本発明は、複数種の芳香族モノアミン化合物(A)と、結合剤(B)との反応生成物であるポリアミン化合物(C)のマレイミド化物であることを特徴とするマレイミド樹脂やマレイミド化合物、これらを含有する硬化性組成物とその硬化物、半導体封止材料、半導体封止装置、プリプレグ、回路基板、及びビルドアップフィルムを提供する。これらマレイミド樹脂やマレイミド化合物は、融点や軟化点が低くハンドリング性に優れるとともに、硬化物が高い耐熱性を有し、半導体封止材料等に好適に用いることができる。