IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ギガフォトン株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人九州大学の特許一覧

特許7140338レーザ照射方法、及びレーザ照射システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】レーザ照射方法、及びレーザ照射システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/22 20060101AFI20220913BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01L21/22 E
H01L21/268 G
H01L21/268 J
H01L21/268 T
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019559967
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2017045969
(87)【国際公開番号】W WO2019123611
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】池上 浩
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
(72)【発明者】
【氏名】老泉 博昭
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 輝
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-050624(JP,A)
【文献】特開2004-006703(JP,A)
【文献】特開2010-212530(JP,A)
【文献】特開2016-157911(JP,A)
【文献】特表2011-514664(JP,A)
【文献】特表2009-524523(JP,A)
【文献】特開2013-214657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/22
H01L 21/268
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともドーパントとしての不純物元素を含む不純物源膜が半導体基板上に形成されてなる被照射物に、前記半導体基板のバンドギャップエネルギよりも大きなフォトンエネルギを有するパルスレーザ光を照射するレーザ照射方法であって、以下を備える:
A.レーザドーピング用の第1の照射条件として、前記被照射物上に設定された矩形状の照射領域に照射されるパルスレーザ光の1パルス当たりのフルーエンスである第1のフルーエンスと、前記照射領域に照射される2以上の照射パルス数である第1の照射パルス数とを読み込むステップであって、前記第1のフルーエンスは、前記パルスレーザ光を前記第1の照射パルス数だけ前記被照射物に照射した場合に、前記不純物源膜にアブレーションが生じる閾値以上であって、かつ、前記半導体基板の表面に損傷が生じる閾値未満である;
B.前記照射領域のスキャン方向への幅をBx、前記第1の照射パルス数をNd、前記パルスレーザ光の繰り返し周波数をfとした場合に、下式(a)に基づいて第1のスキャン速度Vdxを算出するステップ
C.前記パルスレーザ光を前記照射領域に前記繰り返し周波数fで照射しながら、前記照射領域に対して相対的に前記被照射物を前記第1のスキャン速度Vdxで移動させるステップ;
Vdx=f・Bx/Nd ・・・(a)
D.ポストアニール用の第2の照射条件として、前記照射領域に照射されるパルスレーザ光の1パルス当たりのフルーエンスである第2のフルーエンスと、前記照射領域に照射される2以上の照射パルス数である第2の照射パルス数とを読み込むステップであって、前記第2のフルーエンスは、前記パルスレーザ光を前記第2の照射パルス数だけ前記被照射物に照射した場合に、前記半導体基板中の欠陥が修復され得るフルーエンスの閾値以上であって、かつ、前記半導体基板の表面に損傷が生じる閾値未満である;
E.前記第2の照射パルス数をNpとした場合に、下式(d)に基づいて第2のスキャン速度Vpxを算出するステップ;及び
F.前記パルスレーザ光を前記照射領域に前記繰り返し周波数fで照射しながら、前記照射領域に対して相対的に前記被照射物を前記第2のスキャン速度Vpxで移動させるステップ;
Vpx=f・Bx/Np ・・・(d)
さらに、
G.前記第1のフルーエンスをFd、第2のフルーエンスをFpとした場合に、下式(i)を満たす。
Fp<Fd ・・・(i)
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ照射方法であって、
前記照射領域のスキャン方向に直交する方向への幅をByとした場合、Byは、下式(b)を満たす。
By=n・Cy ・・・(b)
ここで、nは1以上の整数であり、Cyは、前記スキャン方向に直交する方向への前記半導体基板のダイシングピッチである。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ照射方法であって、
前記照射領域のスキャン方向に直交する方向への幅をByとした場合、By/Bxは、下式(c)を満たす。
10≦By/Bx≦1000 ・・・(c)
【請求項4】
請求項1に記載のレーザ照射方法であって、
前記半導体基板はSiCにより形成されており、前記パルスレーザ光の中心波長は270nm以下である。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ照射方法であって、
前記不純物源膜は、アルミニウム金属膜であり、第1のフルーエンスは、1.5J/cm以上10J/cm以下の範囲内である。
【請求項6】
請求項4に記載のレーザ照射方法であって、
前記不純物源膜の厚みは、50nm以上450nm以下の範囲内である。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザ照射方法であって、
前記第1の照射パルス数は、5以上40以下の範囲内である。
【請求項8】
請求項4に記載のレーザ照射方法であって、
前記不純物源膜は、SiN膜であり、第1のフルーエンスは、1.2J/cm以上10J/cm以下の範囲内である。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザ照射方法であって、
前記不純物源膜の厚みは、20nm以上300nm以下の範囲内である。
【請求項10】
請求項9に記載のレーザ照射方法であって、
前記第1の照射パルス数は、5以上40以下の範囲内である。
【請求項11】
請求項に記載のレーザ照射方法であって、
前記第1の照射パルス数Ndと前記第2の照射パルス数Npとは、Nd<Npの関係を満たす。
【請求項12】
請求項に記載のレーザ照射方法であって、
前記レーザドーピング時のスキャン方向と、前記ポストアニール時のスキャン方向とは同一方向である。
【請求項13】
請求項に記載のレーザ照射方法であって、
前記レーザドーピング時のスキャン方向と、前記ポストアニール時のスキャン方向とは逆方向である。
【請求項14】
レーザ照射システムであって、以下を備える:
A.少なくともドーパントとしての不純物元素を含む不純物源膜が半導体基板上に形成されてなる被照射物を、少なくとも1つのスキャン方向に移動させるステージ;
B.前記半導体基板のバンドギャップエネルギよりも大きなフォトンエネルギを有するパルスレーザ光を発生するレーザ装置;
C.前記パルスレーザ光のビーム形状を矩形状に整形し、前記被照射物上に設定された矩形状の照射領域に照射する光学システム;及び
D.前記ステージ及び前記レーザ装置を制御するレーザ照射制御部であって、以下の処理を行う;
D1.レーザドーピング用の第1の照射条件として、前記照射領域に照射される前記パルスレーザ光の1パルス当たりのフルーエンスである第1のフルーエンスと、前記照射領域に照射される2以上の照射パルス数である第1の照射パルス数とを読み込む処理であって、前記第1のフルーエンスは、前記パルスレーザ光を前記第1の照射パルス数だけ前記被照射物に照射した場合に、前記不純物源膜にアブレーションが生じる閾値以上であって、かつ、前記半導体基板の表面に損傷が生じる閾値未満である;
D2.前記照射領域のスキャン方向への幅をBx、前記第1の照射パルス数をNd、前記パルスレーザ光の繰り返し周波数をfとした場合に、下式(e)に基づいて第1のスキャン速度Vdxを算出する処理
D3.前記パルスレーザ光を前記照射領域に前記繰り返し周波数fで照射しながら、前記照射領域に対して相対的に前記被照射物を前記第1のスキャン速度Vdxで移動させる処理
Vdx=f・Bx/Nd ・・・(e)
D4.ポストアニール用の第2の照射条件として、前記照射領域に照射される前記パルスレーザ光の1パルス当たりのフルーエンスである第2のフルーエンスと、前記照射領域に照射される2以上の照射パルス数である第2の照射パルス数とを読み込む処理であって、前記第2のフルーエンスは、前記パルスレーザ光を前記第2の照射パルス数だけ前記被照射物に照射した場合に、前記半導体基板中の欠陥が修復され得るフルーエンスの閾値以上であって、かつ、前記半導体基板の表面に損傷が生じる閾値未満である;
D5.前記第2の照射パルス数をNpとした場合に、下式(f)に基づいて第2のスキャン速度Vpxを算出する処理;及び
D6.前記パルスレーザ光を前記照射領域に前記繰り返し周波数fで照射しながら、前記照射領域に対して相対的に前記被照射物を前記第2のスキャン速度Vpxで移動させる処理;
Vpx=f・Bx/Np ・・・(f)
さらに、
前記第1のフルーエンスをFd、第2のフルーエンスをFpとした場合に、下式(i)を満たす。
Fp<Fd ・・・(i)
【請求項15】
請求項1に記載のレーザ照射システムであって、さらに以下を備える:
E.透過率が可変であり、前記レーザ装置から出力された前記パルスレーザ光を前記透過率に応じて減光して出力するアッテネータ。
【請求項16】
請求項1に記載のレーザ照射システムであって、
前記レーザ照射制御部は、さらに以下の処理を行う:
D7.前記第1のフルーエンスをFd、前記レーザ装置から出力された前記パルスレーザ光のパルスエネルギをEt、前記照射領域のスキャン方向に直交する方向への幅をByとした場合に、レーザドーピング用の前記アッテネータの透過率Tdを、下式(g)に基づいて算出する処理;及び
D8.前記アッテネータの透過率を、下式(g)に基づいて算出した透過率Tdに設定する処理。
Td=(Fd/Et)(Bx・By) ・・・(g)
【請求項17】
請求項1に記載のレーザ照射システムであって、
前記レーザ照射制御部は、さらに以下の処理を行う:
D9.前記第2のフルーエンスをFpとした場合に、ポストアニール用の前記アッテネータの透過率Tpを、下式(h)に基づいて算出する処理;及び
D8.前記アッテネータの透過率を、下式(h)に基づいて算出した透過率Tpに設定する処理。
Tp=(Fp/Et)(Bx・By) ・・・(h)
【請求項18】
請求項1に記載のレーザ照射システムであって、
前記光学システムは、前記アッテネータを透過したパルスレーザ光を、ビーム形状を矩形状に整形するビームホモジナイザを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ照射方法、及びレーザ照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体は、集積回路、パワーデバイス、LED(Light-Emitting Diode)、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの能動素子を構成する材料であり、電子デバイスの製造には必要不可欠な材料である。このような能動素子を製造するためには、半導体基板にドーパントとしての不純物をドーピングした後、不純物を活性化して、その電気特性をn型またはp型に制御する必要がある。
【0003】
一般的に、半導体基板への不純物のドーピング及び活性化は、熱拡散法やイオン注入法により行われている。熱拡散法とは、不純物を含むガス中で基板を高温に加熱することにより、半導体基板の表面より半導体基板の内部に不純物を熱拡散させ、さらに不純物を活性化させる方法である。
【0004】
イオン注入法は、イオン注入工程と熱アニール工程とを含む。イオン注入工程は、高速に加速した不純物のイオンビームを半導体基板に照射することにより、半導体基板の内部に不純物を注入する工程である。熱アニール工程は、半導体基板に熱エネルギを付与することにより、不純物注入により生じた半導体内部の欠陥を修復し、不純物を活性化する工程である。イオン注入法は、レジストなどのマスクを用いることでイオン注入領域の局所的な設定が可能であることや、不純物濃度の深さ制御を精密に行うことが可能であることなどの優れた特徴を有する。このため、イオン注入法は、シリコン(Si)を用いた集積回路の製造技術として広く用いられている。
【0005】
シリコンカーバイド(SiC)は、次世代パワーデバイス材料として、開発が進められている。SiCは、半導体材料として従来使用されているSiと比較して、大きいバンドギャップ、Siのおよそ10倍程度の高い絶縁破壊電界特性、優れた熱伝導率などを有している。また、SiCは、熱化学的に安定していることが特徴である。
【0006】
SiCを用いてトランジスタを構成するためには、SiCに不純物をドーピングすることが必要である。しかし、Siに対して用いられている従来のイオン注入法により不純物をドーピングすると、SiCに熱ダメージが加わり、欠陥が形成され、電気特性が低下するという課題がある。
【0007】
このため、SiCに対する不純物のドーピング方法として、レーザドーピング法が検討されている。レーザドーピング法とは、半導体基板の表面に、ドーパントを含む不純物源膜を形成し、この不純物源膜にレーザ光を照射することにより、不純物源膜に含まれる不純物を半導体基板中に導入する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平5-55259号公報
【文献】特開平8-139048号公報
【文献】特開平8-264468号公報
【文献】米国公開2016/0247681号公報
【文献】国際公開第2016/151723号
【概要】
【0009】
本開示の1つの観点に係るレーザ照射方法であって、少なくともドーパントとしての不純物元素を含む不純物源膜が半導体基板上に形成されてなる被照射物に、半導体基板のバンドギャップエネルギよりも大きなフォトンエネルギを有するパルスレーザ光を照射するレーザ照射方法は、以下を備える:
A.レーザドーピング用の第1の照射条件として、被照射物上に設定された矩形状の照射領域に照射されるパルスレーザ光の1パルス当たりのフルーエンスである第1のフルーエンスと、照射領域に照射される2以上の照射パルス数である第1の照射パルス数とを読み込むステップであって、第1のフルーエンスは、パルスレーザ光を第1の照射パルス数だけ被照射物に照射した場合に、不純物源膜にアブレーションが生じる閾値以上であって、かつ、半導体基板の表面に損傷が生じる閾値未満である;
B.照射領域のスキャン方向への幅をBx、第1の照射パルス数をNd、パルスレーザ光の繰り返し周波数をfとした場合に、下式(a)に基づいて第1のスキャン速度Vdxを算出するステップ;及び
C.パルスレーザ光を照射領域に繰り返し周波数fで照射しながら、照射領域に対して相対的に被照射物を第1のスキャン速度Vdxで移動させるステップ。
Vdx=f・Bx/Nd ・・・(a)
【0010】
本開示の1つの観点に係るレーザ照射システムであって、以下を備える:
A.少なくともドーパントとしての不純物元素を含む不純物源膜が半導体基板上に形成されてなる被照射物を、少なくとも1つのスキャン方向に移動させるステージ;
B.半導体基板のバンドギャップエネルギよりも大きなフォトンエネルギを有するパルスレーザ光を発生するレーザ装置;
C.パルスレーザ光のビーム形状を矩形状に整形し、被照射物上に設定された矩形状の照射領域に照射する光学システム;及び
D.ステージ及びレーザ装置を制御するレーザ照射制御部であって、以下の処理を行う;
D1.レーザドーピング用の第1の照射条件として、照射領域に照射されるパルスレーザ光の1パルス当たりのフルーエンスである第1のフルーエンスと、照射領域に照射される2以上の照射パルス数である第1の照射パルス数とを読み込む処理であって、第1のフルーエンスは、パルスレーザ光を第1の照射パルス数だけ被照射物に照射した場合に、不純物源膜にアブレーションが生じる閾値以上であって、かつ、半導体基板の表面に損傷が生じる閾値未満である;
D2.照射領域のスキャン方向への幅をBx、第1の照射パルス数をNd、パルスレーザ光の繰り返し周波数をfとした場合に、下式(e)に基づいて第1のスキャン速度Vdxを算出する処理;及び
D3.パルスレーザ光を照射領域に繰り返し周波数fで照射しながら、照射領域に対して相対的に被照射物を第1のスキャン速度Vdxで移動させる処理。
Vdx=f・Bx/Nd ・・・(e)
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、比較例に係るレーザ照射システムの構成を概略的に示す図である。
図2図2Aは、第1の実施形態におけるステップ・アンド・リピート方式の照射制御を説明する図であり、図2Bは、照射領域の形状を示す図である。
図3図3は、レーザ照射制御部によるレーザドーピング制御の処理を示すフローチャートである。
図4図4は、照射条件の読み込みを行う処理の詳細を示すサブルーチンである。
図5図5は、レーザ装置に調整発振を行わせる処理の詳細を示すサブルーチンである。
図6図6は、レーザドーピング用のパラメータを算出する処理の詳細を示すサブルーチンである。
図7図7は、レーザドーピング用のパラメータを設定する処理の詳細を示すサブルーチンである。
図8図8は、比較例の課題を説明する図(その1)である。
図9図9は、比較例の課題を説明する図(その2)である。
図10図10は、比較例の課題を説明する図(その3)である。
図11図11は、第1の実施形態に係るレーザ照射システムの構成を概略的に示す図である。
図12図12は、フライアイレンズの構成を示す斜視図である。
図13図13Aは、ウエハ状に形成された被照射物の平面図であり、図13Bは、照射領域の形状を示す図である。
図14図14は、レーザ照射制御部によるレーザドーピング制御の処理を示すフローチャートである。
図15図15は、照射条件の読み込みを行う処理の詳細を示すサブルーチンである。
図16図16は、レーザドーピング用のパラメータを算出する処理の詳細を示すサブルーチンである。
図17図17は、レーザドーピング用のパラメータを設定する処理の詳細を示すサブルーチンである。
図18図18は、X軸方向にスキャン照射する処理の詳細を示すサブルーチンである。
図19図19Aは、第2の実施形態におけるスキャン照射制御を説明する図であり、図19Bは、照射領域の形状を示す図である。
図20図20は、第1のフルーエンスFdと第2のフルーエンスFpとの設定値について説明する図である。
図21図21は、レーザ照射制御部によるレーザドーピング制御及びポストアニール制御の処理を示すフローチャートである。
図22図22は、第1及び第2の照射条件の読み込みを行う処理の詳細を示すサブルーチンである。
図23図23は、レーザドーピング用及びポストアニール用のパラメータを算出する処理の詳細を示すサブルーチンである。
図24図24は、レーザドーピング用のパラメータを設定する処理の詳細を示すサブルーチンである。
図25図25は、ポストアニール用のパラメータを設定する処理の詳細を示すサブルーチンである。
図26図26は、第1の変形例におけるスキャン経路を示す図である。
図27図27は、レーザ照射制御部によるレーザドーピング制御及びポストアニール制御の処理を示すフローチャートである。
図28図28は、第2の変形例に係るレーザ照射システムの構成を概略的に示す図である。
図29図29は、レーザ装置の変形例を示す図である。
図30図30は、レーザ照射装置のその他の変形例を示す図である。
図31図31は、照射シールドの変形例を示す図である。
【実施形態】
【0012】
<内容>
1.概要
2.比較例
2.1 レーザ照射システムの構成
2.2 レーザ照射制御
2.3 アッテネータの透過率の設定値
2.4 レーザ照射システムの動作
2.4.1 メインフロー
2.4.2 S110の詳細
2.4.3 S120の詳細
2.4.4 S150の詳細
2.4.5 S160の詳細
2.5 課題
3.第1の実施形態
3.1 構成
3.2 スキャン照射制御
3.3 パルスレーザ光のフルーエンスの設定値
3.4 レーザ照射システムの動作
3.4.1 メインフロー
3.4.2 S210の詳細
3.4.3 S250の詳細
3.4.4 S260の詳細
3.4.5 S270の詳細
3.5 効果
3.6 半導体基板がSiCの具体例
4.第2の実施形態
4.1 構成
4.2 スキャン照射制御
4.3 パルスレーザ光のフルーエンスの設定値
4.4 アッテネータの透過率の設定値
4.5 レーザ照射システムの動作
4.5.1 メインフロー
4.5.2 S310の詳細
4.5.3 S350の詳細
4.5.4 S360の詳細
4.5.5 S410の詳細
4.6 効果
4.7 パラメータの具体例
4.8 照射領域のアスペクト比
4.9 レーザ装置の種類
5.第1の変形例
5.1 スキャン照射制御
5.2 レーザ照射システムの動作
5.3 効果
6.第2の変形例
7.レーザ装置の変形例
8.その他の変形例
【0013】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0014】
1.概要
本開示は、不純物源膜が半導体基板上に形成されてなる被照射物にパルスレーザ光を照射することによって、半導体基板中への不純物のドーピングを行うレーザ照射システムに関する。
【0015】
2.比較例
2.1 レーザ照射システムの構成
図1は、比較例に係るレーザ照射システム2の構成を概略的に示す。レーザ照射システム2は、レーザ装置3と、レーザ照射装置4と、を含む。レーザ装置3とレーザ照射装置4は、光路管5によって接続されている。
【0016】
レーザ装置3は、マスターオシレータMOと、モニタモジュール11と、シャッタ12と、レーザ制御部13と、を含む。レーザ装置3は、F2、ArF、KrF、XeCl、またはXeFを含むレーザガスをレーザ媒質として、紫外領域のパルスレーザ光を発生する放電励起式レーザ装置である。
【0017】
レーザ装置3がF2レーザ装置である場合、パルスレーザ光の中心波長は約157nmである。レーザ装置3がArFエキシマレーザ装置である場合、パルスレーザ光の中心波長は約193.4nmである。レーザ装置3がKrFエキシマレーザ装置である場合、パルスレーザ光の中心波長は約248.4nmである。レーザ装置3がXeClエキシマレーザ装置である場合、パルスレーザ光の中心波長は約308nmである。レーザ装置3がXeFエキシマレーザ装置である場合、パルスレーザ光の中心波長は約351nmである。
【0018】
マスターオシレータMOは、レーザチャンバ20と、リアミラー21a及び出力結合ミラー21bと、充電器23と、パルスパワーモジュール(PPM)24と、を含む。図1には、レーザ光の進行方向にほぼ垂直な方向から見たレーザチャンバ20の内部構成が示されている。
【0019】
レーザチャンバ20は、レーザガスが封入されるチャンバであり、内部に一対の電極22a及び22bが配置されている。一対の電極22a及び22bは、レーザ媒質を放電により励起するための放電電極である。
【0020】
レーザチャンバ20には開口が形成され、この開口を電気絶縁部25が塞いでいる。電極22aは電気絶縁部25に支持され、電極22bはリターンプレート20dに支持されている。このリターンプレート20dは、図示しない配線によりレーザチャンバ20の内面と接続されている。電気絶縁部25には、導電部が埋め込まれている。導電部は、PPM24から供給される高電圧を電極22aに印加する。
【0021】
充電器23は、PPM24の中の図示しない充電コンデンサに所定の電圧で充電する直流電源装置である。PPM24は、レーザ制御部13によって制御されるスイッチ24aを含んでいる。スイッチ24aがOFFからONになると、PPM24は、充電器23に保持されていた電気エネルギからパルス状の高電圧を生成し、この高電圧を一対の電極22a及び22b間に印加する。
【0022】
一対の電極22a及び22b間に高電圧が印加されると、一対の電極22a及び22b間の絶縁が破壊され、放電が生じる。この放電のエネルギにより、レーザチャンバ21内のレーザ媒質が励起されて高エネルギ準位に移行する。励起されたレーザ媒質が、その後低エネルギ準位に移行するとき、そのエネルギ準位差に応じた光を放出する。
【0023】
レーザチャンバ20の両端には、ウインドウ20a及び20bが設けられている。レーザチャンバ20内で発生した光は、ウインドウ20a及び20bを介してレーザチャンバ20の外部に出射する。
【0024】
リアミラー21a及び出力結合ミラー21bは、光共振器を構成している。リアミラー21aには高反射膜がコートされており、出力結合ミラー21bには部分反射膜がコートされている。レーザチャンバ20は、光共振器の光路上に配置されている。したがって、リアミラー21aは、レーザチャンバ20内からウインドウ20aを介して出力された光を高反射し、ウインドウ20aを介してレーザチャンバ20内に戻す。また、出力結合ミラー21bは、レーザチャンバ20内からウインドウ20bを介して出力された光のうちの一部を透過させ、他の一部を反射させてレーザチャンバ20内に戻す。
【0025】
したがって、レーザチャンバ20から出射された光は、リアミラー21aと出力結合ミラー21bとの間で往復し、電極22aと電極22bとの間の放電空間を通過する度に増幅される。増幅された光の一部が、出力結合ミラー27を介して、パルスレーザ光として出力される。
【0026】
モニタモジュール11は、マスターオシレータMOを出射したパルスレーザ光の光路上に配置されている。モニタモジュール11は、例えば、ビームスプリッタ11aと、光センサ11bとを含む。ビームスプリッタ11aは、マスターオシレータMOから出力されたパルスレーザ光を高い透過率でシャッタ12に向けて透過させるとともに、パルスレーザ光の一部を光センサ11bに向けて反射する。光センサ11bは、入射したパルスレーザ光のパルスエネルギを検出し、検出したパルスエネルギのデータをレーザ制御部13に出力する。
【0027】
レーザ制御部13は、レーザ照射装置4に含まれるレーザ照射制御部31との間で各種信号を送受信する。例えば、レーザ制御部13は、レーザ照射制御部31から、発光トリガTr、目標パルスエネルギEtのデータ等を受信する。また、レーザ制御部13は、充電器23に対して充電電圧の設定信号を送信し、かつ、PPM24に対してスイッチ24aのONまたはOFFの指令信号を送信する。
【0028】
レーザ制御部13は、モニタモジュール11からパルスエネルギのデータを受信し、受信したパルスエネルギのデータを参照して充電器23の充電電圧を制御する。充電器23の充電電圧を制御することにより、パルスレーザ光のパルスエネルギが制御される。
【0029】
シャッタ12は、モニタモジュール11のビームスプリッタ11aを透過したパルスレーザ光の光路に配置されている。レーザ制御部13は、レーザ発振の開始後、モニタモジュール11から受信するパルスエネルギと目標パルスエネルギEtとの差が許容範囲内となるまでの間は、シャッタ12を閉状態とする。レーザ制御部13は、モニタモジュール11から受信するパルスエネルギと目標パルスエネルギEtとの差が許容範囲内となった場合に、シャッタ12を開状態とする。レーザ制御部13は、シャッタ12の開信号と同期して、パルスレーザ光の発光トリガTrの受け付けが可能となったことを表す準備完了信号Rdを、レーザ照射制御部31に送信する。
【0030】
レーザ照射装置4は、筐体30と、レーザ照射制御部31と、テーブル32と、XYZステージ33と、フレーム34と、照射シールド35と、光学システム40と、を含む。筐体30内には光学システム40が配置されている。フレーム34には、筐体30と、XYZステージ33と、照射シールド35とが固定されている。
【0031】
テーブル32上には、レーザ照射装置4によるパルスレーザ光が照射される被照射物50が載置される。被照射物50は、SiC、ダイヤモンド、GaN等のようなパワーデバイスに使用される半導体材料である。SiCの結晶構造は、特に限定されないが、例えば、4H-SiCである。被照射物50は、これらの半導体材料により形成された半導体基板51と、半導体基板51の表面上に形成された不純物源膜52とを含む。不純物源膜52は、少なくともドーパントとしての不純物元素を含む膜である。
【0032】
半導体基板51をドーピングによりp型とする場合には、例えば、不純物源膜52として、p型ドーパントとしてのアルミニウム元素を含むアルミニウム金属膜が用いられる。また、半導体基板51をドーピングによりn型とする場合には、例えば、不純物源膜52として、n型ドーパントとしての窒素元素を含む窒化膜、例えばSiN膜が用いられる。
【0033】
XYZステージ33は、テーブル32を移動自在に支持している。XYZステージ33は、レーザ照射制御部31から入力される制御信号に応じて、テーブル32を、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させる。XYZステージ33によりテーブル32の位置を、X軸方向またはY軸方向に変更することにより、被照射物50の表面上のパルスレーザ光の照射領域が変更される。なお、Z軸方向は、光学システム40から出力されるパルスレーザ光の光軸に平行である。X軸方向とY軸方向とは、互いに直交し、かつ、それぞれZ軸方向と直交する。
【0034】
光学システム40は、高反射ミラー41a~41cと、アッテネータ42と、ビームホモジナイザ43と、転写光学系44と、を含む。高反射ミラー41a~41cは、紫外領域のパルスレーザ光を高い反射率で反射する。高反射ミラー41aは、レーザ装置3から光路管5を介して入射したパルスレーザ光を反射し、反射したパルスレーザ光がアッテネータ42を通過して高反射ミラー41bに入射するように配置されている。高反射ミラー41a~41cは、例えば、合成石英やフッ化カルシウム(CaF2)結晶で形成された透明基板の表面に、パルスレーザ光を高反射する反射膜がコートされたものである。
【0035】
アッテネータ42は、高反射ミラー41aと高反射ミラー41bの間の光路上に配置されている。アッテネータ42は、2枚の部分反射ミラー42a及び42bと、回転ステージ42c及び42dとを含み、透過率が可変に構成されている。回転ステージ42cは、部分反射ミラー42aを保持し、部分反射ミラー42aへのパルスレーザ光の入射角度を変更するように回転させる。回転ステージ42dは、部分反射ミラー42bを保持し、部分反射ミラー42bへのパルスレーザ光の入射角度を変更するように回転させる。
【0036】
部分反射ミラー42a及び42bは、それぞれパルスレーザ光の入射角度に応じて透過率が変化する光学素子である。部分反射ミラー42aと部分反射ミラー42bとは、パルスレーザ光の入射角度が互いに一致し、かつ、所望の透過率となるように、回転ステージ42c及び42dによって傾斜角度が調整される。
【0037】
アッテネータ42は、レーザ照射制御部31から入力される制御信号によって回転ステージ42c及び42dが駆動され、透過率が制御される。アッテネータ42に入射したパルスレーザ光は、制御信号に基づいて制御される透過率に応じて減光されてアッテネータ42から出力される。
【0038】
高反射ミラー41bは、アッテネータ42から入射したパルスレーザ光を反射し、反射したパルスレーザ光がビームホモジナイザ43を通過して高反射ミラー41cに入射するように配置されている。
【0039】
ビームホモジナイザ43は、高反射ミラー41bと高反射ミラー41cの間の光路上に配置されている。ビームホモジナイザ43は、フライアイレンズ45と、コンデンサレンズ46と、を含む。フライアイレンズ45は、コンデンサレンズ46の上流側に配置される。高反射ミラー41bから入射したパルスレーザ光は、フライアイレンズ45とコンデンサレンズ46とを透過することによって、コンデンサレンズ46の焦点面において、ケーラ照明され、光強度分布が所定のビーム形状内で均一化される。また、フライアイレンズ45は、パルスレーザ光の光軸に垂直な断面のビーム形状を、矩形状に整形する。このようにフライアイレンズ45から出力されたパルスレーザ光は、コンデンサレンズ46を介して、コンデンサレンズ46の焦点面においてケーラ照明され、高反射ミラー41cに入射する。
【0040】
転写光学系44は、高反射ミラー41cにより反射されたパルスレーザ光の光路上に配置されている。転写光学系44は、複数のレンズが組み合わされて構成されている。転写光学系44は、縮小投影光学系であってもよい。転写光学系44は、ビームホモジナイザ43により形成された矩形状のビームを、ウインドウ36を介して被照射物50の表面上に転写する。
【0041】
ウインドウ36は、転写光学系44と被照射物50との間の光路上に配置されており、筐体30に形成された開口に、図示しないOリングによってシールされた状態で固定されている。ウインドウ36は、合成石英やCaF2結晶で形成された透明基板であり、両面に反射抑制膜がコートされていてもよい。
【0042】
筐体30には、第1のパージガスを筐体30内に吸入する吸入ポート30aと、筐体30内から第1のパージガスを排出する排出ポート30bとが設けられている。第1のパージガスは、例えば、窒素(N2)ガスである。吸入ポート30a及び排出ポート30bには、図示しない吸気管や排出管が接続される。吸入ポート30a及び排出ポート30bは、吸気管や排出管を接続した状態において、筐体30内に外気が混入するのを抑制するように、図示しないOリングによってシールされている。吸入ポート30aには、第1のパージガスを供給する第1のパージガス供給源37が接続されている。筐体30の内部は、第1のパージガスによりパージされる。
【0043】
光路管5とレーザ照射装置4の接続部分と、光路管5とレーザ装置3との接続部分とは、それぞれ図示しないOリングでシールされている。光路管5内も第1のパージガスによりパージされる。
【0044】
照射シールド35は、テーブル32に支持された被照射物50を囲う。照射シールド35は、テーブル32及びXYZステージ33の全体を囲う大きさを有しており、フレーム34に固定されている。照射シールド35の上面には、筐体30に設けられたウインドウ36と接続される開口が形成されている。この開口とウインドウ36との間は、図示しないOリングによってシールされている。
【0045】
照射シールド35は、ウインドウ36と被照射物50との間を第2のパージガスで満たすことが可能な構成である。照射シールド35には、第2のパージガスを照射シールド35内に吸入する吸入ポート35aと、照射シールド35内から第2のパージガスを排出する排出ポート35bとが設けられている。第2のパージガスは、酸素を殆ど含まない不活性ガスであって、例えば、アルゴンガス(Ar)やヘリウムガス(He)である。第2のパージガスは、半導体材料にレーザ光を照射した場合に、半導体表面に酸化物を生成することのない酸素濃度以下の不活性ガスであればよい。吸入ポート35aには、第2のパージガスを供給する第2のパージガス供給源38が接続されている。照射シールド35の内部は、第2のパージガスによりパージされる。
【0046】
レーザ照射制御部31は、所定の繰り返し周波数fで、レーザ制御部13に発光トリガTrを出力する。これに応じて、マスターオシレータMOは、繰り返し周波数fでレーザ発振を行う。また、レーザ照射制御部31は、レーザドーピング用ビームの照射条件を記憶した図示しない記憶部を含む。この照射条件には、レーザドーピング時に被照射物50に照射するパルスレーザ光であるレーザドーピング用ビームの1パルス当たりのフルーエンスFdが含まれる。レーザ照射制御部31は、フルーエンスFdの値に基づき、レーザドーピング用のアッテネータ42の透過率Tdを算出する。
【0047】
詳しくは後述するが、レーザ照射制御部31は、XYZステージ33を制御し、ステップ・アンド・リピート方式により、1つのチップ形成領域毎に1パルスのレーザ照射を行う。
【0048】
2.2 レーザ照射制御
次に、レーザ照射制御部31により行われるステップ・アンド・リピート方式のレーザ照射制御について説明する。図2Aは、前述の半導体基板51がウエハ状に形成された被照射物50を示す。半導体基板51には、複数のチップ形成領域53がX軸方向及びY軸方向に2次元配列されている。各チップ形成領域53は矩形状である。なお、チップ形成領域53は、半導体基板51を切断してチップ化する際の最小領域である。
【0049】
図2Aにおいて、符号Aは、ビームホモジナイザ43から高反射ミラー41c及び転写光学系44を介して被照射物50に照射されるパルスレーザ光のビーム形状、すなわち照射領域を示す。図2Bに示すように、照射領域Aの形状は、矩形状であり、X軸方向へ第1のビーム幅Bxを有し、Y軸方向へ第2のビーム幅Byを有する。第1のビーム幅Bxは、チップ形成領域53のX方向軸への長さに等しい。第2のビーム幅Byは、チップ形成領域53のY方向軸への長さに等しい。
【0050】
レーザ照射制御部31は、XYZステージ33を制御し、被照射物50を相対的にX軸方向及びY軸方向に移動させることにより、所望のチップ形成領域53にパルスレーザ光の照射領域Aをセットする。符号SRは、XYZステージ33を制御して被照射物50を移動させることにより、照射領域Aが移動する経路を示す。レーザ照射制御部31は、ステップ・アンド・リピート方式により、各チップ形成領域53に照射領域Aが位置決めされるたびに、レーザ装置3に1パルスのレーザ照射を行わせる。
【0051】
2.3 アッテネータの透過率の設定値
次に、パルスレーザ光のフルーエンスを所定値とするためのアッテネータ42の透過率の設定値について説明する。まず、アッテネータ42の透過率をTとし、アッテネータ42から被照射物50までの光路における透過率をT’とする。また、アッテネータ42に入射するパルスレーザ光のパルスエネルギをEtとし、被照射物50の表面上におけるパルスレーザ光のフルーエンスをFとする。この場合、フルーエンスFは、下式(1)で表される。
【0052】
F=T・T’・Et/(Bx・By) ・・・(1)
【0053】
なお、本比較例では、例えば、透過率T’を100%、すなわちT’=1と仮定する。この場合、アッテネータ42の透過率Tは、下式(2)で表される。
【0054】
T=(F/Et)(Bx・By) ・・・(2)
【0055】
レーザ照射制御部31は、前述の照射条件に含まれるフルーエンスFdの値を上式(2)に代入することにより、レーザドーピング用の透過率Tdを算出する。なお、透過率T’が1未満の一定値である場合には、下式(3)に基づいて透過率Tを算出してもよい。
【0056】
T=(F/(Et・T’))(Bx・By) ・・・(3)
【0057】
2.4 レーザ照射システムの動作
2.4.1 メインフロー
図3は、レーザ照射制御部31によるレーザドーピング制御の処理を示すフローチャートである。レーザ照射制御部31は、以下の処理により、レーザ照射システム2を動作させる。
【0058】
レーザ照射制御部31は、テーブル32上に被照射物50がセットされる(ステップS100)と、記憶部からレーザドーピング用の照射条件を読み込む(ステップS110)。この照射条件には、レーザドーピング用のフルーエンスFdが含まれる。
【0059】
次に、レーザ照射制御部31は、レーザ装置3に調整発振を行わせる(ステップS120)。調整発振が完了すると、レーザ照射制御部31は、XYZステージ33を制御し、パルスレーザ光の照射領域Aを、図2Aに示す1つのチップ形成領域53である初期位置に設定する(ステップS130)。また、レーザ照射制御部31は、被照射物50の表面が、ビームホモジナイザ43のコンデンサレンズ46の焦点面において矩形状に整形されたビームが転写光学系44によって転写される位置となるように、XYZステージ33をZ軸方向に調整する(ステップS140)。
【0060】
次に、レーザ照射制御部31は、レーザドーピング用のパラメータを算出する(ステップS150)。レーザドーピング用のパラメータには、アッテネータ42のレーザドーピング用の透過率Tdが含まれる。
【0061】
レーザ照射制御部31は、レーザ照射装置4に、レーザドーピング用のパラメータを設定する(ステップS160)。そして、レーザ照射制御部31は、レーザ装置3に発光トリガTrを送信し、レーザ装置3にパルスレーザ光をの出力を行わせる(ステップS170)。レーザ照射制御部31は、照射領域Aにパルスレーザ光が1パルス照射されるたびに、全てのチップ形成領域53への照射が終了したか否かを判定する(ステップS180)。
【0062】
レーザ照射制御部31は、全てのチップ形成領域53への照射が終了していない場合(ステップS180でNO)には、XYZステージ33を制御し、照射領域Aを経路SRに沿って次のチップ形成領域53に移動させる(ステップS190)。レーザ照射制御部31は、全てのチップ形成領域53への照射が終了するまで、ステップS170~S190を繰り返す。レーザ照射制御部31は、全てのチップ形成領域53への照射が終了すると(ステップS180でYES)、レーザドーピング制御を終了する。
【0063】
2.4.2 S110の詳細
図4は、図3に示されるメインフローにおいて照射条件の読み込みを行う処理(ステップS110)の詳細を示すサブルーチンである。本比較例では、ステップS110において、レーザ照射制御部31は、記憶部から、レーザドーピング用の照射条件としてのフルーエンスFdを読み込む(ステップS111)。この後、レーザ照射制御部31は、処理をメインフローに戻す。
【0064】
2.4.3 S120の詳細
図5は、図3に示されるメインフローにおいてレーザ装置3に調整発振を行わせる処理(ステップS120)の詳細を示すサブルーチンである。ステップS120では、まず、レーザ照射制御部31は、目標パルスエネルギEtのデータ等をレーザ制御部13に送信する(ステップS121)。ここで、目標パルスエネルギEtは、例えば1Jである。
【0065】
この後、レーザ照射制御部31は、レーザ制御部13に繰り返し周波数fで発光トリガTrを出力する(ステップS122)。そして、レーザ制御部13から準備完了信号Rdを受信したか否かを判定する(ステップS123)。レーザ照射制御部31は、準備完了信号Rdを受信しなかった場合(ステップS123でNO)には、ステップS122に戻る。レーザ照射制御部31は、準備完了信号Rdを受信すると(ステップS122でYES)、処理をメインフローに戻す。ここで、繰り返し周波数fは、ステップ・アンド・リピート方式で露光する際の繰り返し周波数とほぼ同じであって、たとえば、0.5Hz以上5Hz以下の範囲であって、固定値である。
【0066】
2.4.4 S150の詳細
図6は、図3に示されるメインフローにおいてレーザドーピング用のパラメータを算出する処理(ステップS150)の詳細を示すサブルーチンである。本比較例では、ステップS150において、レーザ照射制御部31は、ステップS111で読み込んだフルーエンスFdのデータを用い、上式(2)に基づいてレーザドーピング用のアッテネータ42の透過率Tdを算出する(ステップS151)。この後、レーザ照射制御部31は、処理をメインフローに戻す。
【0067】
2.4.5 S160の詳細
図7は、図3に示されるメインフローにおいてレーザドーピング用のパラメータを設定する処理(ステップS160)の詳細を示すサブルーチンである。本比較例では、ステップS160において、レーザ照射制御部31は、アッテネータ42の透過率を、ステップS151で算出した透過率Tdに設定する(ステップS161)。具体的には、レーザ照射制御部31は、アッテネータ42の透過率が透過率Tdとなるように、アッテネータ42に含まれる回転ステージ42c及び42dを設定する。この後、レーザ照射制御部31は、処理をメインフローに戻す。
【0068】
2.5 課題
次に、比較例に係るレーザ照射システム2の課題を、図8図10を参照しながら説明する。図8図10は、被照射物50の表面上に設定された照射領域Aに、半導体基板51のバンドギャップエネルギよりも高いフォトンエネルギを有するパルスレーザ光を1パルス照射した場合に、ドーピング領域51aが形成される様子を示している。
【0069】
図8は、不純物源膜52に照射されるパルスレーザ光の光強度の均一性が高く、フルーエンスが最適範囲内である場合に形成されるドーピング領域51aを示す。この場合、照射領域Aにおける不純物源膜52は、1パルスのパルスレーザ光でアブレーションが生じ、完全に除去される。これにより、半導体基板51中には、照射領域Aに対応する領域に、均一に不純物がドーピングされ、均一なドーピング領域51aが形成される。
【0070】
図9は、不純物源膜52に照射されるパルスレーザ光の光強度が均一でなく、パルスレーザ光の一部のフルーエンスが最適範囲よりも低い場合に形成されるドーピング領域51aを示す。図9において破線で示される矢印は、最適範囲よりも低いフルーエンスを有するパルスレーザ光を表している。この場合、フルーエンスが低い部分では、不純物源膜52の一部がアブレーションされずに残る。これにより、ドーピング領域51a中のドーピング深さが部分的に浅くなる。この結果、形成されたチップは、デバイスとして正常に機能しない恐れがある。
【0071】
図10は、不純物源膜52に照射されるパルスレーザ光の光強度が均一でなく、パルスレーザ光の一部のフルーエンスが最適範囲よりも高い場合に形成されるドーピング領域51aを示す。図10において太い実線で示される矢印は、最適範囲よりも高いフルーエンスを有するパルスレーザ光を表している。この場合、フルーエンスが高い部分では、不純物源膜52がアブレーションにより除去され、さらにパルスレーザ光が半導体基板51の表面に照射される。これにより、半導体基板51の表面が部分的に損傷する。この結果、形成されたチップは、デバイスとして正常に機能しない恐れがある。
【0072】
また、照射領域Aにおける不純物源膜52を完全に除去するために、照射領域Aに複数パルスのパルスレーザ光を照射することも考えられるが、この場合には、2パルス目以降のパルスレーザ光によって、半導体基板51の表面が損傷する恐れがある。
【0073】
以上のように、比較例に係るレーザ照射システム2でレーザドーピングを行う場合には、1パルスのパルスレーザ光で効率よく不純物源膜52を除去しなければならないため、以下の課題がある。例えば、半導体基板51がパワー半導体である場合には、レーザドーピングに最適なフルーエンスは、数J/cm2程度である。照射領域全体を上記フルーエンスで照射するには、1J以上のパルスエネルギを有するパルスレーザ光を出力可能なレーザ装置が必要となる。したがって、レーザドーピングを適正に行うためには、従来のようなパルスエネルギが30mJ~400mJと小さいレーザ装置を使用することはできない。
【0074】
また、レーザドーピングを適正に行うためには、パルスエネルギの安定性が高いレーザ装置が必要である。さらに、照射領域における光強度の均一性を高めるには、ビーム形状が安定したパルスレーザ光を出力するレーザ装置と、ビームを均一化するレーザ照射装置とが必要となる。また、低繰り返し周波数でパルスエネルギの安定性が高いレーザ装置が必要となる。
【0075】
以下で説明される実施形態においては、この課題を解決するために、パルスレーザ光を照射領域に一定の繰り返し周波数で照射しながら、照射領域に対して相対的に被照射物を一定のスキャン速度で移動させることにより、レーザドーピングを行う。
【0076】
3.第1の実施形態
3.1 構成
図11は、本開示の第1の実施形態に係るレーザ照射システム2aの構成を概略的に示す。第1の実施形態に係るレーザ照射システム2aは、比較例に係るレーザ照射システム2に含まれるレーザ装置3に代えてレーザ装置3aを含み、レーザ照射装置4に代えてレーザ照射装置4aを含む。なお、以下では、比較例に係るレーザ照射システム2の構成要素と略同じ部分については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0077】
レーザ装置3aは、マスターオシレータMOとモニタモジュール11との間におけるパルスレーザ光の光路上に配置された光学パルスストレッチャ(OPS)10を含む。OPS10は、ビームスプリッタ10yと、凹面ミラー10a~10dとを含む。OPS10は、マスターオシレータMOから出力されるパルスレーザ光の光路上にビームスプリッタ10yが位置するように配置されている。凹面ミラー10a~10dは、遅延光学系を構成している。
【0078】
凹面ミラー10a~10dの各々は、互いに略等しい焦点距離Fを有する凹面ミラーである。焦点距離Fは、例えば、ビームスプリッタ10yから凹面ミラー10aまでの距離に相当する。凹面ミラー10a~10dは、ビームスプリッタ10yで部分反射された光を、ビームスプリッタ10yに導き、ビームスプリッタ10yに正転写するように配置されている。OPS10は、マスターオシレータMOから入力されたパルスレーザ光を、パルスストレッチし、パルス時間幅が伸張されたパルスレーザ光を出力する。
【0079】
本実施形態では、モニタモジュール11には、OPS10によりパルス時間幅が伸張されたパルスレーザ光が入射する。
【0080】
なお、レーザ装置3aは、フォトンエネルギが、半導体材料のバンドギャップエネルギよりも大きなパルスレーザ光を出力することが好ましい。
【0081】
レーザ照射装置4aは、光学システム40aにおいて、比較例のビームホモジナイザ43に代えて、ビームホモジナイザ43aを含む。ビームホモジナイザ43aは、比較例のフライアイレンズ45に代えて、図12に示すフライアイレンズ60を含む。同図において、I軸方向は、パルスレーザ光の進行方向を示す。V軸方向及びH軸方向は、互いに直交し、かつ、それぞれパルスレーザ光の進行方向に直交する方向である。
【0082】
フライアイレンズ60は、合成石英やフッ化カルシウム(CaF2)結晶で形成された透明基板を加工することにより形成されている。フライアイレンズ60のパルスレーザ光が入射する第1の面には、V軸方向に第1の曲率半径を有し、H軸方向に延伸した凹状の複数の第1のシリンドリカル面61が、V軸方向に第1のピッチLvで配列されている。フライアイレンズ60の第1の面と反対側の第2の面には、H軸方向に第2の曲率半径を有し、V軸方向に延伸した凹状の複数の第2のシリンドリカル面62が、H軸方向に第2のピッチLhで配列されている。第1のピッチLvは、第2のピッチLhよりも小さい。
【0083】
また、第1のシリンドリカル面61の第1の曲率半径と第2のシリンドリカル面62の第2の曲率半径とは、それぞれ第1のシリンドリカル面61による凹レンズの焦点位置と第2のシリンドリカル面62による凹レンズの焦点位置とがほぼ一致するように設定されている。
【0084】
本実施形態では、レーザ照射制御部31の記憶部には、レーザドーピング用ビームの照射条件として、レーザドーピング時に被照射物50に照射するパルスレーザ光であるレーザドーピング用ビームのフルーエンスFd及び照射パルス数Ndが記憶される。記憶部に記憶された照射条件は、図示しない外部装置により適宜書き換えが可能である。
【0085】
詳しくは後述するが、レーザ照射制御部31は、レーザドーピング時に、XYZステージ33を制御し、被照射物50をXY面内で移動させながら、パルスレーザ光を照射するスキャン照射を行う。レーザ照射制御部31は、レーザドーピング用ビームの照射条件に基づき、レーザドーピング時に設定するアッテネータ42の透過率Tdとスキャン速度Vdxとを算出する。
【0086】
3.2 スキャン照射制御
次に、本実施形態においてレーザ照射制御部31により行われるスキャン照射制御について説明する。図13Aは、前述の半導体基板51がウエハ状に形成された被照射物50を示す。半導体基板51には、複数のチップ形成領域53がX軸方向及びY軸方向に2次元配列されている。各チップ形成領域53は矩形状である。
【0087】
図13Aにおいて、符号Aは、ビームホモジナイザ43aから高反射ミラー41c及び転写光学系44を介して被照射物50に照射されるパルスレーザ光のビーム形状、すなわち照射領域を示す。図13Bに示すように、照射領域Aの形状は、矩形状であり、スキャン方向であるX軸方向へ第1のビーム幅Bxを有し、Y軸方向へ第2のビーム幅Byを有する。ここで、第2のビーム幅Byは第1のビーム幅Bxより大きい。すなわち、パルスレーザ光のビーム形状は、ほぼライン状である。なお、第2のビーム幅Byは、第1のビーム幅Bxの5倍より大きく1000倍より小さいことが好ましい。
【0088】
第2のビーム幅Byは、チップ形成領域53のY軸方向への幅Cyとほぼ同一である。なお、幅Cyは、半導体基板51をチップ形成領域53ごとに切断してチップ化する際のY軸方向への最小幅、すなわちY軸方向へのダイシングピッチを表す。なお、第2のビーム幅Byは、幅Cyと一致している場合に限定されず、下式(4)を満たす値であればよい。
【0089】
By=n・Cy ・・・(4)
ここで、nは1以上の整数である。
【0090】
レーザ照射制御部31は、XYZステージ33を制御し、パルスレーザ光の照射領域Aに対して被照射物50を相対的にX軸方向に一定の速度で等速直線移動させながら、照射領域Aにパルスレーザ光を照射させるスキャン照射を行う。ここで、レーザドーピング時の被照射物50の移動速度が前述のスキャン速度Vdxである。また、符号Sdは、レーザドーピング時のスキャン経路を示している。
【0091】
スキャン速度Vdxは、チップ形成領域53中の各位置に照射されるパルスレーザ光のパルス数が前述の照射パルス数Ndとなるように、レーザ照射制御部31により算出される。具体的には、レーザ照射制御部31は、照射パルス数Nd、繰り返し周波数f、及び第1のビーム幅Bxのデータを用い、下式(5)に基づいてスキャン速度Vdxを算出する。
【0092】
Vdx=f・Bx/Nd ・・・(5)
【0093】
レーザ照射制御部31は、レーザドーピングを開始する場合に、第1行目の端部に位置する第1のチップ形成領域53aの近傍の初期位置IPに照射領域Aを設定し、スキャン経路Sdに沿って、X軸正方向にスキャン速度Vdxでスキャン照射を開始させる。レーザ照射制御部31は、照射領域Aが第1行目の最終端に位置する第2のチップ形成領域53bを通過すると、照射領域AをY軸正方向に移動させる。次に、レーザ照射制御部31は、第2行目の端部に位置する第3のチップ形成領域53cからX軸負方向にスキャン照射を実行させる。そして、レーザ照射制御部31は、照射領域Aが2行目の最終端に位置する第4のチップ形成領域53dを通過すると、照射領域AをY軸正方向に1行分だけ移動させる。
【0094】
レーザ照射制御部31は、以上のスキャン照射を繰り返し実行させ、照射領域Aが最終行の最終端に位置する第5のチップ形成領域53eを通過すると、照射領域Aを被照射物50外に移動させ、スキャン照射制御を終了する。
【0095】
3.3 パルスレーザ光のフルーエンスの設定値
次に、レーザドーピング時におけるパルスレーザ光のフルーエンスについて説明する。ここで、フルーエンスとは、被照射物50の表面上におけるパルスレーザ光の1パルス当たりのエネルギ密度(J/cm2)である。レーザ照射制御部31は、アッテネータ42の透過率を制御することにより、レーザドーピング用のフルーエンスFdを設定する。
【0096】
フルーエンスFdは、下式(6)を満たす範囲内に設定される。
【0097】
Fath≦Fd<Fdth ・・・(6)
【0098】
ここで、Fathは、被照射物50に第1の照射パルス数Ndだけパルスレーザ光を照射した場合に、半導体基板51の表面上に形成された不純物源膜52にアブレーションが生じるフルーエンスの閾値である。また、Fdthは、被照射物50に第1の照射パルス数Ndだけパルスレーザ光を照射した場合に、半導体基板51の表面に損傷が生じ得るフルーエンスの閾値である。例えば、Fdthは、半導体基板51が昇華温度となるフルーエンスである。
【0099】
フルーエンスFdを上式(6)の範囲内に設定することにより、半導体基板51の表面に損傷を生じさせずに、不純物源膜52をアブレーションさせ、不純物を半導体基板51内にドーピングすることができる。
【0100】
また、照射パルス数Ndは2以上である。さらに、パルスレーザ光の照射むらを抑制するために、照射パルス数Ndを5以上40以下の範囲内とすることが好ましい。
【0101】
3.4 レーザ照射システムの動作
3.4.1 メインフロー
図14は、レーザ照射制御部31によるレーザドーピング制御の処理を示すフローチャートである。レーザ照射制御部31は、以下の処理により、レーザ照射システム2aを動作させる。
【0102】
レーザ照射制御部31は、テーブル32上に被照射物50がセットされる(ステップS200)と、記憶部からレーザドーピング用の照射条件を読み込む(ステップS210)。この照射条件には、レーザドーピング用のフルーエンスFdと照射パルス数Ndとが含まれる。
【0103】
次に、レーザ照射制御部31は、レーザ装置3に調整発振を行わせる(ステップS220)。調整発振が完了すると、レーザ照射制御部31は、XYZステージ33を制御し、パルスレーザ光の照射領域Aを、図13Aに示す初期位置IPに設定する(ステップS230)。また、レーザ照射制御部31は、被照射物50の表面が、ビームホモジナイザ43aのコンデンサレンズ46の焦点面において矩形状に整形されたビーム像の転写位置となるように、XYZステージ33をZ軸方向に調整する(ステップS240)。
【0104】
次に、レーザ照射制御部31は、レーザドーピング用のパラメータを算出する(ステップS250)。このパラメータには、アッテネータ42の透過率Tdと、スキャン速度Vdxとが含まれる。次に、レーザ照射制御部31は、レーザ照射装置4aに、レーザドーピング用のパラメータを設定する(ステップS260)。
【0105】
そして、レーザ照射制御部31は、照射領域Aを前述のスキャン経路Sdに沿ってX軸方向に一定速度で移動させながら、被照射物50にパルスレーザ光を照射するスキャン照射を行う(ステップS270)。レーザ照射制御部31は、X軸方向への1行分のスキャン照射が終了するたびに、全てのチップ形成領域53への照射が終了したか否かを判定する(ステップS280)。
【0106】
レーザ照射制御部31は、全てのチップ形成領域53への照射が終了していない場合(ステップS280でNO)には、照射領域AをY軸方向に移動させ、次の行のスキャン照射開始位置にセットする(ステップS290)。この後、レーザ照射制御部31は、処理をステップS270に戻し、X軸方向へのスキャン照射を実行する。レーザ照射制御部31は、全てのチップ形成領域53への照射が終了するまで、ステップS270~S290を繰り返す。レーザ照射制御部31は、全てのチップ形成領域53への照射が終了すると(ステップS280でYES)、レーザドーピング制御を終了する。
【0107】
3.4.2 S210の詳細
図15は、図14に示されるメインフローにおいて照射条件の読み込みを行う処理(ステップS210)の詳細を示すサブルーチンである。本実施形態では、ステップS210において、レーザ照射制御部31は、記憶部から、照射条件としてのレーザドーピング用のフルーエンスFdと照射パルス数Ndとを読み込む(ステップS211)。この後、レーザ照射制御部31は、処理をメインフローに戻す。
【0108】
3.4.3 S250の詳細
図16は、図14に示されるメインフローにおいてレーザドーピング用のパラメータを算出する処理(ステップS250)の詳細を示すサブルーチンである。本実施形態では、ステップS250において、レーザ照射制御部31は、ステップS211で読み込んだフルーエンスFdのデータを用い、上式(2)に基づいてレーザドーピング用のアッテネータ42の透過率Tdを算出する(ステップS251)。そして、レーザ照射制御部31は、照射パルス数Nd、繰り返し周波数f、及び第1のビーム幅Bxのデータを用い、上式(5)に基づいてレーザドーピング用の第1のスキャン速度Vdxを算出する(ステップS252)。この後、レーザ照射制御部31は、処理をメインフローに戻す。
【0109】
3.4.4 S260の詳細
図17は、図14に示されるメインフローにおいてレーザドーピング用のパラメータを設定する処理(ステップS260)の詳細を示すサブルーチンである。本実施形態では、ステップS260において、レーザ照射制御部31は、アッテネータ42の透過率を、ステップS251で算出した透過率Tdに設定する(ステップS261)。具体的には、レーザ照射制御部31は、アッテネータ42の透過率が透過率Tdとなるように、アッテネータ42に含まれる回転ステージ42c及び42dを設定する。
【0110】
次に、レーザ照射制御部31は、スキャン照射の速度を、ステップS252で算出したスキャン速度Vdxに設定する(ステップS262)。具体的には、レーザ照射制御部31は、被照射物50に対する照射領域Aの移動速度がスキャン速度VdxとなるようにXYZステージ33を設定する。この後、レーザ照射制御部31は、処理をメインフローに戻す。
【0111】
3.4.5 S270の詳細
図18は、図14に示されるメインフローにおいてX軸方向にスキャン照射する処理(ステップS270)の詳細を示すサブルーチンである。ステップS270では、まず、レーザ照射制御部31は、XYZステージ33を制御し、照射領域AのX軸方向への移動を開始させる(ステップS271)。なお、照射領域Aの移動には、加速運動、等速直線運動、減速運動が含まれるが、等速直線運動の速度がスキャン速度VdxとなるようにXYZステージ33を設定する。
【0112】
レーザ照射制御部31は、照射領域Aの移動が開始すると、繰り返し周波数fで、レーザ制御部13に発光トリガTrを出力する(ステップS272)。ここで、繰り返し周波数fは、例えば、6000Hzである。そして、レーザ照射制御部31は、照射領域AのX軸方向への移動が終了するまでの間(ステップS273でNOの間)、ステップS272を実行し、レーザ制御部13に発光トリガTrを出力する。レーザ照射制御部31は、照射領域AのX軸方向への移動が終了すると(ステップS273でYES)、レーザ制御部13への発光トリガTrの出力を停止する(ステップS274)。この後、レーザ照射制御部31は、処理をメインフローに戻す。
【0113】
なお、ステップS270では、照射領域Aの移動開始から移動終了までの間、パルスレーザ光の照射を行っているが、等速直線運動以外の加速運動及び減速運動の期間中には、パルスレーザ光の照射は行わなくてもよい。
【0114】
また、メインフローのステップS220の詳細は、比較例で説明したステップS120の詳細と同様であるので、説明は省略する。
【0115】
3.5 効果
本実施形態によれば、上式(6)を満たすフルーエンスFdを有するパルスレーザ光を被照射物に照射するので、不純物源膜52の同じ位置に複数のパルスレーザ光を照射することができる。
【0116】
例えば、本実施形態では、不純物源膜52に照射されるパルスレーザ光の一部のフルーエンスが低く、半導体基板51の表面に不純物源膜52の一部が残渣として残ったとしても、後続のパルスレーザ光の照射によって残渣がアブレーションして除去され得る。この後続のパルスレーザ光は、上式(6)の範囲内であるため、半導体基板51の表面に対する損傷は抑制される。一方、不純物源膜52に照射されるパルスレーザ光の一部のフルーエンスが高い場合であっても、このフルーエンスは上式(6)の範囲内であるため、半導体基板51の表面に対する損傷は抑制される。
【0117】
また、本実施形態によれば、被照射物50に対して照射領域Aを相対的に移動させながらスキャン照射を行い、被照射物50の表面における各位置に複数のパルスレーザ光を照射するので、被照射物50の表面上における各位置の照射量の均一性が向上する。
【0118】
また、本実施形態によれば、パルスレーザ光のビーム形状をBy<Bxとし、チップ形成領域53よりも面積が小さい照射領域Aによりスキャン照射を行っている。このため、本実施形態では、パルスエネルギが小さなパルスレーザ光を発するレーザ装置3aであっても、レーザドーピングに適したフルーエンスを得ることができる。
【0119】
3.6 半導体基板がSiCの具体例
次に、被照射物50の半導体基板51の結晶構造が4H-SiCである場合の各種パラメータの具体例を示す。この場合、レーザ装置3aとして、中心波長が約248.4nmのパルスレーザ光を出力するKrFエキシマレーザ装置を用いることが好ましい。この場合、パルスレーザ光のパルス幅TISは、20ns以上500ns以下の範囲内であることが好ましい。パルス幅TISは、下式(7)により定義される。ここで、tは時間、I(t)は時間tにおける光強度を表している。
【0120】
【数1】
【0121】
TIS<20nsの場合には、レーザドーピングにより半導体基板51内に形成されるドーピング領域は、拡散長が短くなりドーピング層としての機能が抑制される。一方、TIS>500nsの場合には、不純物源膜52がアルミニウム金属膜であると、不純物源膜52に凝集が生じ、ドーピング領域の均一性が低下する。
【0122】
また、パルス幅TISが20ns以上500ns以下の範囲内である場合には、レーザドーピング時に半導体基板51の表面に損傷が生じ得るフルーエンスの閾値Fdthは、3.5J/cm2以上10J/cm2以下の範囲内となる。
【0123】
また、不純物源膜52にアブレーションが生じるフルーエンスの閾値Fthは、不純物源膜52がアルミニウム金属膜である場合には、1.5J/cmとなる。この場合、不純物源膜52の厚みは、50nm以上450nm以下の範囲内であることが好ましい。不純物源膜52の厚みが50nmより薄い場合には、不純物源膜52のアブレーション時に、半導体基板51の表面に損傷が生じる恐れがある。
【0124】
また、閾値Fthは、不純物源膜52がSiN膜である場合には、1.2J/cmとなる。この場合、不純物源膜52の厚みは、20nm以上であることが好ましい。不純物源膜52がSiN膜である場合には、凝集は生じないため、厚みの上限は、ドーピングの特性上特に制限はない。しかし、不純物源膜52は、厚みが厚すぎるとスループットが低下するため、厚みは300nm以下であることが好ましい。したがって、不純物源膜52は、SiN膜である場合、厚みは100nm程度であることが好ましい。
【0125】
4.第2の実施形態
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、不純物源膜が半導体基板上に形成されてなる被照射物にパルスレーザ光を照射することによって、半導体基板中への不純物のドーピングと、不純物を活性化させるためのポストアニール処理とを行うレーザ照射システムに関する。
【0126】
4.1 構成
第2の実施形態に係るレーザ照射システムの構成は、第1の実施形態に係るレーザ照射システム2aと同様である。本実施形態では、レーザ照射制御部31は、レーザドーピング制御に加えて、ポストアニール制御を行う。
【0127】
本実施形態では、レーザ照射制御部31の記憶部には、レーザドーピング用ビームの第1の照射条件と、ポストアニール用ビームの第2の照射条件とが記憶される。第1の照射条件は、レーザドーピング時に被照射物50に照射するパルスレーザ光であるレーザドーピング用ビームのフルーエンスFd及び照射パルス数Ndを含む。また、第2の照射条件は、ポストアニール時に被照射物50に照射するパルスレーザ光であるポストアニール用ビームのフルーエンスFp及び照射パルス数Npを含む。
【0128】
以下、フルーエンスFdを第1のフルーエンスFdという。照射パルス数Ndを第2の照射パルス数Ndという。フルーエンスFpを第2のフルーエンスFpという。照射パルス数Npを第2の照射パルス数Npという。記憶部に記憶された第1及び第2の照射条件は、図示しない外部装置により適宜書き換えが可能である。
【0129】
詳しくは後述するが、レーザ照射制御部31は、レーザドーピング時及びポストアニール時において、XYZステージ33を制御し、被照射物50をXY面内で移動させながら、パルスレーザ光を照射するスキャン照射を行う。レーザ照射制御部31は、第1の照射条件に基づき、レーザドーピング時に設定するアッテネータ42の第1の透過率Tdと第1のスキャン速度Vdxとを算出する。また、レーザ照射制御部31は、第2の照射条件に基づき、ポストアニール時に設定するアッテネータ42の第2の透過率Tpと第2のスキャン速度Vpxとを算出する。
【0130】
4.2 スキャン照射制御
次に、本実施形態において、レーザ照射制御部31により行われるスキャン照射制御について説明する。図19A及び図19Bは、被照射物50及び照射領域Aを示す。本実施形態における照射領域Aの形状は、第1の実施形態と同様である。
【0131】
レーザ照射制御部31は、XYZステージ33を制御し、パルスレーザ光の照射領域Aに対して被照射物50を相対的にX軸方向に一定の速度で等速直線移動させることによりスキャン照射を行う。ここで、レーザドーピング時の被照射物50の移動速度が前述の第1のスキャン速度Vdxであり、ポストアニール時の被照射物50の移動速度が前述の第2のスキャン速度Vpxである。また、符号Sdは、レーザドーピング時の第1のスキャン経路を示している。符号Spは、ポストアニール時の第2のスキャン経路を示している。本比較例では、第1のスキャン経路Sdと第2のスキャン経路Spとは同一である。
【0132】
第1のスキャン速度Vdxは、チップ形成領域53中の各位置に照射されるパルスレーザ光のパルス数が前述の第1の照射パルス数Ndとなるように、レーザ照射制御部31により算出される。具体的には、レーザ照射制御部31は、前述の式(5)に基づいて第1のスキャン速度Vdxを算出する。
【0133】
第2のスキャン速度Vpxは、チップ形成領域53中の各位置に照射されるパルスレーザ光のパルス数が前述の第2の照射パルス数Npとなるように、レーザ照射制御部31により算出される。具体的には、レーザ照射制御部31は、第2の照射パルス数Np、繰り返し周波数f、及び第1のビーム幅Bxのデータを用い、下式(8)に基づいて第2のスキャン速度Vpxを算出する。
【0134】
Vpx=f・Bx/Np ・・・(8)
【0135】
レーザ照射制御部31は、レーザドーピング時には、第1の実施形態と同様に、第1のスキャン速度Vdxで、初期位置IPから第1のスキャン経路Sdに沿って照射領域Aを移動させる。レーザ照射制御部31は、照射領域Aが最終行の最終端に位置する第5のチップ形成領域53eを通過すると、照射領域Aを初期位置IPに戻す。この後、レーザ照射制御部31は、第2のスキャン経路Spに沿って第2のスキャン速度Vpxでポストアニール用のスキャン照射を実行させる。
【0136】
4.3 パルスレーザ光のフルーエンスの設定値
図20は、第1のフルーエンスFdと第2のフルーエンスFpとの設定値について説明する図である。第1のフルーエンスFdは、第1の実施形態と同様に、前述の式(6)を満たす範囲内に設定される。
【0137】
第2のフルーエンスFpは、原理的には、下式(9)を満たす範囲内に設定されればよいが、下式(10)を満たす範囲内に設定されることがより好ましい。
【0138】
Fpth≦Fp<Fdth ・・・(9)
Fpth≦Fp<Fd ・・・(10)
【0139】
ここで、Fpthは、ドーピング後の半導体基板51に第2の照射パルス数Npだけパルスレーザ光を照射した場合に、ドーピングにより半導体基板51中に生じた欠陥が修復され得るフルーエンスの閾値である。第2のフルーエンスFpを上式(9)または上式(10)の範囲内に設定することにより、半導体基板51の表面に損傷を生じさせずに、ポストアニール処理を行い、不純物を活性化することができる。
【0140】
また、第1の照射パルス数Ndと第2の照射パルス数Npとは、下式(11)の関係を満たすことが好ましい。
【0141】
2≦Nd<Np ・・・(11)
【0142】
4.4 アッテネータの透過率の設定値
次に、パルスレーザ光のフルーエンスを所定値とするためのアッテネータ42の透過率の設定値について説明する。本実施形態では、レーザ照射制御部31は、前述の第1のフルーエンスFd及び第2のフルーエンスFpを前述の式(2)に代入することにより、前述の第1の透過率Td及び第2の透過率Tpをそれぞれ算出する。なお、透過率T’が1未満の一定値である場合には、前述の式(3)に基づいて第1の透過率Td及び第2の透過率Tpを算出してもよい。
【0143】
4.5 レーザ照射システムの動作
4.5.1 メインフロー
図21は、レーザ照射制御部31によるレーザドーピング制御及びポストアニール制御の処理を示すフローチャートである。レーザ照射制御部31は、以下の処理により、レーザ照射システム2aを動作させる。
【0144】
レーザ照射制御部31は、テーブル32上に被照射物50がセットされる(ステップS300)と、記憶部からレーザドーピング用の第1の照射条件とポストアニール用の第2の照射条件とを読み込む(ステップS310)。第1の照射条件には、第1のフルーエンスFd及び第1の照射パルス数Ndが含まれる。第2の照射条件には、第2のフルーエンスFp及び第2の照射パルス数Npが含まれる。
【0145】
次に、レーザ照射制御部31は、レーザ装置3aに調整発振を行わせる(ステップS320)。調整発振が完了すると、レーザ照射制御部31は、XYZステージ33を制御し、パルスレーザ光の照射領域Aを、図19Aに示す初期位置IPに設定する(ステップS330)。また、レーザ照射制御部31は、被照射物50の表面が、前述の転写位置となるように、XYZステージ33をZ軸方向に調整する(ステップS340)。
【0146】
次に、レーザ照射制御部31は、レーザドーピング用及びポストアニール用のパラメータを算出する(ステップS350)。レーザドーピング用のパラメータには、アッテネータ42の第1の透過率Tdと、第1のスキャン速度Vdxとが含まれる。ポストアニール用のパラメータには、アッテネータ42の第2の透過率Tpと、第2のスキャン速度Vpxとが含まれる。
【0147】
レーザ照射制御部31は、レーザ照射装置4aに、レーザドーピング用のパラメータを設定する(ステップS360)。そして、レーザ照射制御部31は、照射領域Aを前述の第1のスキャン経路Sdに沿ってX軸方向に一定速度で移動させながら、被照射物50にパルスレーザ光を照射するスキャン照射を行う(ステップS370)。この後のステップS380及びS390については、第1の実施形態のステップS280及びS290と同様である。レーザ照射制御部31は、全てのチップ形成領域53への照射が終了すると(ステップS380でYES)、レーザドーピング制御を終了し、照射領域Aを初期位置IPに戻す(ステップ400)。
【0148】
次に、レーザ照射制御部31は、レーザ照射装置4に、ポストアニール用のパラメータを設定する(ステップS410)。そして、レーザ照射制御部31は、照射領域Aを前述の第2のスキャン経路Spに沿ってX軸方向に一定速度で移動させながら、被照射物50にパルスレーザ光を照射するスキャン照射を行う(ステップS420)。この後のステップS430及びS440については、上記ステップS380及びS390と同様である。レーザ照射制御部31は、全てのチップ形成領域53への照射が終了すると(ステップS430でYES)、ポストアニール制御を終了する。
【0149】
4.5.2 S310の詳細
図22は、図21に示されるメインフローにおいて第1及び第2の照射条件の読み込みを行う処理(ステップS310)の詳細を示すサブルーチンである。ステップS310では、まず、レーザ照射制御部31は、記憶部から、第1の照射条件としての第1のフルーエンスFd及び第1の照射パルス数Ndを読み込む(ステップS311)。そして、レーザ照射制御部31は、記憶部から、第2の照射条件としての第2のフルーエンスFp及び第2の照射パルス数Npを読み込む(ステップS312)。この後、レーザ照射制御部31は、処理をメインフローに戻す。
【0150】
4.5.3 S350の詳細
図23は、図21に示されるメインフローにおいてレーザドーピング用及びポストアニール用のパラメータを算出する処理(ステップS350)の詳細を示すサブルーチンである。ステップS350では、まず、レーザ照射制御部31は、第1のフルーエンスFdのデータを用い、上式(2)に基づいてレーザドーピング用の第1の透過率Tdを算出する(ステップS351)。そして、レーザ照射制御部31は、第1の照射パルス数Nd、繰り返し周波数f、及び第1のビーム幅Bxのデータを用い、上式(5)に基づいてレーザドーピング用の第1のスキャン速度Vdxを算出する(ステップS352)。
【0151】
次に、レーザ照射制御部31は、第2のフルーエンスFpのデータを用い上式(2)に基づいてポストアニール用の第2の透過率Tpを算出する(ステップS353)。そして、レーザ照射制御部31は、第2の照射パルス数Np、繰り返し周波数f、及び第1のビーム幅Bxのデータを用い、上式(8)に基づいてポストアニール用の第2のスキャン速度Vpxを算出する(ステップS354)。この後、レーザ照射制御部31は、処理をメインフローに戻す。
【0152】
4.5.4 S360の詳細
図24は、図21に示されるメインフローにおいてレーザドーピング用のパラメータを設定する処理(ステップS360)の詳細を示すサブルーチンである。ステップS360では、まず、レーザ照射制御部31は、アッテネータ42の透過率を、ステップS351で算出した第1の透過率Tdに設定する(ステップS361)。具体的には、レーザ照射制御部31は、アッテネータ42の透過率が第1の透過率Tdとなるように、アッテネータ42に含まれる回転ステージ42c及び42dを設定する。
【0153】
次に、レーザ照射制御部31は、スキャン照射の速度を、ステップS352で算出した第1のスキャン速度Vdxに設定する(ステップS362)。具体的には、レーザ照射制御部31は、被照射物50に対する照射領域Aの移動速度が第1のスキャン速度VdxとなるようにXYZステージ33を設定する。この後、レーザ照射制御部31は、処理をメインフローに戻す。
【0154】
4.5.5 S410の詳細
図25は、図21に示されるメインフローにおいてポストアニール用のパラメータを設定する処理(ステップS410)の詳細を示すサブルーチンである。ステップS410では、まず、レーザ照射制御部31は、アッテネータ42の透過率を、ステップS353で算出した第2の透過率Tpに設定する(ステップS411)。具体的には、レーザ照射制御部31は、アッテネータ42の透過率が第2の透過率Tpとなるように、アッテネータ42に含まれる回転ステージ42c及び42dを設定する。
【0155】
次に、レーザ照射制御部31は、スキャン照射の速度を、ステップS354で算出した第2のスキャン速度Vpxに設定する(ステップS412)。具体的には、レーザ照射制御部31は、被照射物50に対する照射領域Aの移動速度が第2のスキャン速度VpxとなるようにXYZステージ33を制御する。この後、レーザ照射制御部31は、処理をメインフローに戻す。
【0156】
なお、メインフローのステップS370及びS420の詳細は、それぞれ上記ステップS270の詳細と同様であるので、説明は省略する。
【0157】
4.6 効果
本実施形態によれば、アッテネータ42の透過率とスキャン照射の速度とを制御することにより、パルスレーザ光のフルーエンス及び照射パルス数を、それぞれレーザドーピング及びポストアニールに適した値とすることができる。したがって、本実施形態によれば、1つのレーザ照射システムによりレーザドーピングとポストアニールとを行うことができる。
【0158】
4.7 パラメータの具体例
下表1は、第2の実施形態において、Et=100mJとした場合のレーザドーピング時とポストアニール時とにおける各パラメータの具体例を示す。下表2は、第2の実施形態において、Et=40mJとした場合のレーザドーピング時とポストアニール時とにおける各パラメータの具体例を示す。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【0161】
表1及び表2から、本実施形態では、パルスレーザ光のパルスエネルギが100mJや40mJと低い場合であってもレーザドーピング及びポストアニールが可能であることが分かる。前述のように、レーザドーピング時のフルーエンスFdとポストアニール時のフルーエンスFpは、アッテネータ42の透過率を調節することによって設定可能である。表1及び表2中のアッテネータ42の透過率Td,Tpの値は、十分に調節可能な値である。
【0162】
また、レーザドーピング時の照射パルス数Ndとポストアニール時の照射パルス数Npは、スキャン速度Vdx,Vpxを調節することによって、それぞれ設定可能である。表1及び表2中のスキャン速度Vdx,Vpxの値は、十分に調節可能な値である。
【0163】
また、照射領域Aのアスペクト比By/Bxは、表1の場合には60であり、表2の場合には100である。パルスレーザ光のビーム形状は、ほぼライン状である。
【0164】
なお、第2の実施形態では、アッテネータ42の透過率を変更することによってフルーエンスを設定しているが、フルーエンスの設定方法はこれに限定されない。例えば、レーザ装置3aが出力するパルスレーザ光のパルスエネルギの安定性が高い場合には、目標パルスエネルギEtを変更することによりフルーエンスを設定してもよい。
【0165】
4.8 照射領域のアスペクト比
次に、被照射物50の表面上における照射領域Aのアスペクト比By/Bxの適正範囲について説明する。照射領域Aにパルスレーザ光が照射されると、被照射物50には、照射領域Aにのみ局所的に熱エネルギが付与され、照射領域Aとその周辺領域とで温度差が生じることになる。このため、被照射物50の表面上において、照射領域Aのみが熱膨張することにより、照射領域Aの周囲が損傷する恐れがある。特に、照射領域Aの頂角周辺は、X軸方向への熱膨張とY軸方向への熱膨張との差異により、損傷が生じる恐れが高い。
【0166】
このような損傷を抑制するためには、照射領域Aのアスペクト比By/Bxが高く、照射領域Aの熱膨張の方向がほぼ一次元的とみなせる程度であることが好ましい。例えば、アスペクト比By/Bxは、下式(12)の範囲内であることが好ましい。
【0167】
10≦By/Bx≦1000 ・・・(12)
【0168】
ここで、上限のアスペクト比By/Bxである1000は、By=24mm、Bx=0.024mm、Fd=6J/cm2の場合に必要なパルスレーザ光のパルスエネルギが34mJとなる値である。このことは、パルスエネルギが34mJのパルスレーザ光でスキャン照射を行うことにより、ドーピングが可能であることを示している。
【0169】
第1のビーム幅Bxは、下式(13)の範囲内であることが好ましい。
【0170】
3mm≦By≦24mm ・・・(13)
【0171】
ここで、下限の第1のビーム幅Bxである3mmは、チップ形成領域53のY軸方向への幅Cyの最小値である。
【0172】
4.9 レーザ装置の種類
次に、レーザドーピングとポストアニールとの両方に適したレーザ装置の種類について説明する。表3は、被照射物50の半導体基板51を形成する半導体材料の種類と、レーザドーピングとポストアニールとの両方に使用可能なレーザ装置の種類との関係を示す。ポストアニールを可能とするためには、レーザ装置が出力するパルスレーザ光が半導体材料に吸収される必要がある。このため、レーザドーピングとポストアニールとの両方に適したレーザ装置は、フォトンエネルギが、半導体材料のバンドギャップエネルギよりも大きなパルスレーザ光を出力することが好ましい。
【0173】
【表3】
【0174】
表4は、レーザ装置の種類と、パルスレーザ光の中心波長及びフォトンエネルギとの関係を示す。半導体材料が4H-SiC,ZnO,GaN,またはZnSである場合には、レーザ装置から出力されるパルスレーザ光の中心波長は、270nm以下であることが好ましい。すなわち、この場合には、レーザ装置として、KrFエキシマレーザ装置、ArFエキシマレーザ装置、またはF2エキシマレーザ装置を用いることが好ましい。特に、発振効率が高くパルスエネルギが高いKrFエキシマレーザ装置を用いることが好ましい。
【0175】
【表4】
【0176】
また、半導体材料がAlNやCの場合には、バンドギャップエネルギが大きいため、レーザ装置として、ArFエキシマレーザ装置またはF2エキシマレーザ装置を用いることが好ましい。
【0177】
5.第1の変形例
次に、第1の変形例について説明する。第2の実施形態では、図19を用いて説明したように、被照射物50上の全ての照射領域Aに対してレーザドーピング用のスキャン照射を行った後、ポストアニール用のスキャン照射を行っている。これに代えて、レーザドーピング用のスキャン照射と、ポストアニール用のスキャン照射とを交互に行うことも可能である。すなわち、第2の実施形態では、レーザドーピング時とポストアニール時とでスキャン方向が同一であるのに対して、本変形例では、レーザドーピング時とポストアニール時とで逆方向とする。以下、第2の実施形態のスキャン照射制御に関する変形例について説明する。
【0178】
5.1 スキャン照射制御
図26は、本変形例におけるレーザドーピング時の第1のスキャン経路Sd’と、ポストアニール時の第2のスキャン経路Sp’とを示す。第1のスキャン経路Sd’は、X軸正方向である。第2のスキャン経路Sp’は、X軸負方向である。すなわち、レーザドーピング時には、被照射物50に対して照射領域AがX軸正方向に移動する。一方、ポストアニール時には、被照射物50に対して照射領域AがX軸負方向に移動する。照射領域Aは、図19Bに示される形状を有する。
【0179】
レーザ照射制御部31は、レーザドーピングを開始する場合に、第1行目の端部に位置する第1のチップ形成領域53fの近傍の初期位置IPに照射領域Aを設定し、第1のスキャン経路Sd’に沿って、X軸正方向に第1のスキャン速度Vdxでスキャン照射を開始させる。レーザ照射制御部31は、照射領域Aが第1行目の最終端に位置する第2のチップ形成領域53gを通過すると、第2のチップ形成領域53gの近傍に照射領域Aを設定する。そして、レーザ照射制御部31は、第2のチップ形成領域53gからX軸負方向に第2のスキャン速度Vpxでスキャン照射を実行させる。
【0180】
次に、レーザ照射制御部31は、照射領域Aが第1のチップ形成領域53fを通過すると、照射領域AをY軸正方向に1行分だけ移動させる。そして、レーザ照射制御部31は、第3のチップ形成領域53hの近傍に照射領域Aを設定する。レーザ照射制御部31は、以上のスキャン照射を繰り返し実行させ、照射領域Aが最終行の端部に位置する第4のチップ形成領域53iを通過すると、照射領域Aを初期位置IPに戻す。そして、レーザ照射制御部31は、スキャン照射制御を終了する。この後、被照射物50が新しい被照射物50に交換されてもよい。
【0181】
5.2 レーザ照射システムの動作
図27は、レーザ照射制御部31によるレーザドーピング制御及びポストアニール制御の処理を示すフローチャートである。本実施形態のステップS500~S550は、第2の実施形態のステップS300~S350と同様である。本実施形態では、レーザ照射制御部31は、ステップS560においてレーザドーピング用のパラメータを設定した後、X軸正方向に第1のスキャン速度Vdxで1行分のスキャン照射を実行する(ステップS570)。
【0182】
次に、レーザ照射制御部31は、X軸正方向への1行分のスキャン照射が終了すると、レーザ照射装置4aに、ポストアニール用のパラメータを設定する(ステップS580)。そして、レーザ照射制御部31は、X軸負方向に第2のスキャン速度Vpxで1行分のスキャン照射を実行する(ステップS590)。レーザ照射制御部31は、X軸正方向及びX軸負方向への1行分のスキャン照射が終了するたびに、全てのチップ形成領域53への照射が終了したか否かを判定する(ステップS600)。
【0183】
レーザ照射制御部31は、全てのチップ形成領域53への照射が終了していない場合(ステップS600でNO)には、照射領域をY軸方向に移動させ、次の行のスキャン照射開始位置に照射領域をセットする(ステップS610)。そして、レーザ照射制御部31は、処理をステップS560に戻し、同様の処理を繰り返し実行する。レーザ照射制御部31は、全てのチップ形成領域53への照射が終了すると(ステップS600でYES)、スキャン照射制御を終了する。
【0184】
5.3 効果
本変形例に係るスキャン照射制御では、第2の実施形態に比べて、Y軸方向へのXYZステージ33の移動距離が短縮されるため、スループットが向上する。また、レーザドーピング用のスキャン照射とポストアニール用のスキャン照射とを、1行ずつ実行するので、レーザドーピング時とポストアニール時との照射領域AのY軸方向への重なり精度が向上する。
【0185】
6.第2の変形例
次に、第2の変形例について説明する。第1の実施形態では、図11に示したように、ビームホモジナイザ43aを高反射ミラー41bと高反射ミラー41cとの間の光路上に配置しているが、ビームホモジナイザ43aを配置する位置はこれに限られない。
【0186】
図28は、本変形例に係るレーザ照射システム2bの構成を概略的に示す。レーザ照射システム2bは、レーザ照射装置4bに含まれる光学システム40bの構成のみが、第1の実施形態に係るレーザ照射システム2の構成と異なる。光学システム40bでは、前述の転写光学系44に代えて、ビームホモジナイザ43aが、高反射ミラー41cとウインドウ36の間の光路上に配置されている。
【0187】
第1の実施形態と同様に、ビームホモジナイザ43aは、フライアイレンズ60と、コンデンサレンズ46と、を含む。本変形例では、コンデンサレンズ46は、その焦点面が被照射物50の表面に一致するように配置されている。コンデンサレンズ46は、被照射物50の表面にケーラ照明を行う。
【0188】
本変形例に係るレーザ照射システム2bのその他の構成は、第1の実施形態に係るレーザ照射システム2の構成と同様である。
【0189】
なお、本変形例に係るレーザ照射システム2bを、第2の実施形態に適用することも可能である。
【0190】
7.レーザ装置の変形例
第1実施形態のレーザ装置3aは、種々の変形が可能である。以下に、レーザ装置3aの1つの変形例を説明する。図29は、本変形例に係るレーザ装置3bの構成を示す。レーザ装置3bは、第1実施形態のレーザ装置3aに、マスターオシレータMOから出力されたパルスレーザ光のエネルギを増幅する増幅器PAを追加したものである。増幅器PAは、マスターオシレータMOとOPS10との間のパルスレーザ光の光路上に配置されている。増幅器PAは、光共振器を有しないこと以外は、マスターオシレータMOと同様の構成である。増幅器PAは、レーザチャンバ20、充電器23、及びPPM24を含む。
【0191】
レーザ制御部13は、レーザ照射制御部31から目標パルスエネルギEt等のデータを受信すると、目標値でレーザ発振するように、マスターオシレータMO及び増幅器PAの各充電器23の充電電圧を制御する。
【0192】
レーザ制御部13は、レーザ照射制御部31から発光トリガTrを受信すると、マスターオシレータMOから出力されたパルスレーザ光が増幅器PAの放電空間内に入射したときに放電が生じるように、マスターオシレータMO及び増幅器PAを制御する。具体的には、レーザ制御部13は、上記放電が生じるように、マスターオシレータMO及び増幅器PAの各スイッチ24aに、発光トリガTrと同期した信号を入力させ、両スイッチ24aのオンタイミングを調整する。この結果、マスターオシレータMOから増幅器PAに入射したパルスレーザ光は、増幅器PAにおいて増幅発振される。
【0193】
増幅器PAで増幅されて出力されたパルスレーザ光は、OPS10を介してモニタモジュール11に入射し、モニタモジュール11においてパルスエネルギが計測される。レーザ制御部13は、パルスエネルギの計測値が目標パルスエネルギEtに近づくように、マスターオシレータMO及び増幅器PAの各充電器23の充電電圧を制御する。シャッタ12が開くと、モニタモジュール11のビームスプリッタ11aを透過したパルスレーザ光が、レーザ照射装置4aに入射する。
【0194】
このように、増幅器PAを設けることにより、レーザ装置3bは、高いパルスエネルギのレーザ光を出力することができる。
【0195】
8.その他の変形例
図30は、レーザ照射装置のその他の変形例を示す。本変形例に係るレーザ照射装置4cに含まれる光学システム40cは、高反射ミラー41cに代えて、ビームスプリッタ100が設けられている点が、第1の実施形態の光学システム40aと異なる。また、レーザ照射装置4cは、コンデンサレンズ101と、光センサ102とを、さらに含む。
【0196】
ビームスプリッタ100は、ビームホモジナイザ43aから入射するパルスレーザ光の一部を反射させて転写光学系44に導き、一部を透過させてコンデンサレンズ101に導く。コンデンサレンズ101は、ビームスプリッタ100の透過光を集光して光センサ102に入射させる。光センサ102は、入射光に基づきパルスレーザ光のパルスエネルギを計測して計測値をレーザ照射制御部31に入力する。ここで、光の利用効率の低下を抑制するため、ビームスプリッタ100の反射率は、98%以上100%未満の範囲内であることが好ましい。
【0197】
レーザ照射制御部31は、光センサ102から入力されたパルスエネルギの計測値に基づいてアッテネータ42の透過率を制御することにより、高精度にフルーエンスを制御することができる。
【0198】
また、本変形例では、照射シールド110は、第1の実施形態の照射シールド35のようにテーブル32及びXYZステージ33を全体的に囲うものではなく、被照射物50の照射位置を含む一部分のみを囲う。照射シールド110には、吸入ポート111が設けられている。吸入ポート111には、第2のパージガスを供給する第2のパージガス供給源38が接続されている。照射シールド110の形状は、例えば、円筒形状である。照射シールド110には、下端部の一部に、被照射物50の表面との間に、僅かな隙間が設けられている。この隙間が照射シールド110内のガスを排出する排出ポートとして機能する。
【0199】
また、照射シールドの形状は、円筒形状に限られない。図31に示すように、円筒形状の照射シールド110に代えて、円錐形状の照射シールド120を用いてもよい。照射シールド120は、下端部に向かって径が次第に細くなる。
【0200】
なお、照射シールドは、必ずしも必要ではなく、被照射物50を、真空チャンバ内に配置することにより酸化物の生成を抑制してもよい。
【0201】
また、上記各実施形態では、レーザ装置内にOPSを設けているが、レーザ装置から出力されるパルスレーザ光のパルス時間幅が、レーザドーピングが可能な範囲であれば、OPSは必ずしも必要ではない。
【0202】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の各実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0203】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」または「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」または「1またはそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31