(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】エアクーラ、冷凍システム及びエアクーラの除霜方法
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20220913BHJP
F25D 17/02 20060101ALI20220913BHJP
F25D 21/06 20060101ALI20220913BHJP
F25D 19/00 20060101ALI20220913BHJP
F25B 47/02 20060101ALI20220913BHJP
F28F 3/06 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
F28F9/02 301J
F25D17/02 301
F25D21/06 D
F25D19/00 520A
F25D19/00 520F
F25B47/02 G
F28F3/06 Z
(21)【出願番号】P 2018102037
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西田 耕作
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅士
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-166457(JP,A)
【文献】特開2009-121708(JP,A)
【文献】国際公開第2015/005352(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/093235(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175411(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 13/00
F28F 1/00 - 99/00
F25B 39/02
F25B 47/02
F25D 1/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数の冷媒流路が形成され、互いに間隔を置いて互いに並列に配置された複数のプレートと、
前記複数の冷媒流路の各々に連通し、前記冷媒流路に冷媒を供給する入口ヘッダと、
前記複数の冷媒流路の各々に連通し、前記冷媒流路から前記冷媒が排出される出口ヘッダと、
を備え、
前記冷媒流路は、上下方向に沿って直線状に延在するように構成されると共に、前記入口ヘッダは前記冷媒流路の下部側に連通し、前記出口ヘッダは前記冷媒流路の上部側に連通
し、
フィン構成体により構成され、前記複数のプレート間に設けられるフィンを備え、
前記フィン構成体は、
前記プレートに接合される底板と、
前記底板と一体に形成された複数のフィンと、
を含み、
前記フィン構成体は、前記プレートとの間に前記プレートの表面と前記フィン構成体との間に閉空間が介在しないように前記プレートの表面と前記底板の表面とが接触した状態で、前記プレートの表面に固定された
ことを特徴とするエアクーラ。
【請求項2】
前記複数のプレートは、第1プレートと、該第1プレートと間隔を置いて配置される第2プレートと、を含み、
前記フィンは、一端が前記第1プレートに結合されて前記第1プレートから前記第2プレートに向かって延在し、他端が前記第2プレートに対向して配置されることを特徴とする請求項1に記載のエアクーラ。
【請求項3】
板状体で構成される複数の前記フィンが、互いに間隔を置いて前記板状体が形成する面に対して法線方向に沿って平行に配置されることを特徴とする請求項2に記載のエアクーラ。
【請求項4】
前記複数のフィンは、前記第1プレートに結合された複数の第1フィンと、前記第2プレートに結合された複数の第2フィンと、を含み、
前記複数の第1フィンの前記他端と前記複数の第2フィンの前記他端とは、前記板状体の配置方向と交差する方向において異なる位置に配置されることを特徴とする請求項3に記載のエアクーラ。
【請求項5】
前記複数のプレート間の間隔を通過する空気流を形成するための送風機を備え、
前記板状体は、前記空気流が流れる方向に沿って配置されることを特徴とする請求項3又は4に記載のエアクーラ。
【請求項6】
内部に複数の冷媒流路が形成され、互いに間隔を置いて互いに並列に配置された複数のプレートと、
前記複数の冷媒流路の各々に連通し、前記冷媒流路に冷媒を供給する入口ヘッダと、
前記複数の冷媒流路の各々に連通し、前記冷媒流路から前記冷媒が排出される出口ヘッダと、
を備え、
前記冷媒流路は、上下方向に沿って直線状に延在するように構成されると共に、前記入口ヘッダは前記冷媒流路の下部側に連通し、前記出口ヘッダは前記冷媒流路の上部側に連通し、
前記複数のプレートの各々において、
前記複数のプレート間の間隔を通過する空気流に対して上流側端から前記冷媒流路までの距離は、前記冷媒流路の流路間ピッチの1.5倍以上2.5倍以下となるように構成されることを特徴とす
るエアクーラ。
【請求項7】
前記複数のプレートは互いにフィンを介さずに前記間隔に形成される空気流通過空間を隔てて直接対向配置されることを特徴とする請求項
6に記載のエアクーラ。
【請求項8】
前記冷媒流路は、横断面の直径が2mm以下で構成されることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のエアクーラ。
【請求項9】
被冷却物が保管される冷凍庫と、
前記冷凍庫に設けられた請求項1乃至8の何れか一項に記載のエアクーラと、
前記冷媒流路に冷媒を循環させる冷媒循環路と、
を備えることを特徴とする冷凍システム。
【請求項10】
液化した前記冷媒を前記複数のプレートに付着した霜層の融解温度未満の温度を有する気化冷媒となるように加熱する熱交換器であって、前記エアクーラより下方に配置される熱交換器と、
デフロスト時に前記冷媒流路と共に閉回路を形成し、前記気化冷媒を前記出口ヘッダを介して前記冷媒流路に供給すると共に、前記冷媒流路で液化した前記冷媒を前記入口ヘッダを介して受け取る供給路と、
を備えることを特徴とする請求項9に記載の冷凍システム。
【請求項11】
前記供給路は、前記冷媒循環路から分岐した分岐管路で構成され、デフロスト時に前記冷媒流路と共に閉回路を形成するように構成されることを特徴とする請求項10に記載の冷凍システム。
【請求項12】
内部に複数の冷媒流路が形成され、互いに間隔を置いて互いに並列に配置された複数のプレートと、前記複数の冷媒流路の各々に連通し、前記冷媒流路に冷媒を供給する入口ヘッダと、前記複数の冷媒流路の各々に連通し、前記冷媒流路から前記冷媒が排出される出口ヘッダと、を備え、前記冷媒流路は、上下方向に沿って延在するように構成されると共に、前記入口ヘッダは前記冷媒流路の下部側に連通し、前記出口ヘッダは前記冷媒流路の上部側に連通するように構成されたエアクーラの昇華デフロスト方法であって、
前記冷媒流路より下方に設けられた熱交換器で、前記冷媒流路を流れる前記冷媒を前記複数のプレートに付着した霜層の融解温度未満の温度を有する気化冷媒に加熱する冷媒加熱ステップと、
前記冷媒流路に前記気化冷媒を供給して前記霜層を昇華させ、液化した前記冷媒を前記冷媒流路から前記熱交換器に戻す昇華ステップと、
を備え
、
前記昇華ステップでは、環状の霜層ブリッジを形成しない態様で前記複数のプレートに付着した前記霜層の根元側領域を昇華させ、前記根元側領域の付着面積が減少した前記霜層を剥離する
ことを特徴とするエアクーラの昇華デフロスト方法。
【請求項13】
前記昇華ステップにおいて、
前記気化冷媒を前記出口ヘッダから前記冷媒流路に供給すると共に、前記霜層を昇華して液化した前記冷媒を前記冷媒流路から前記入口ヘッダを介して排出することを特徴とする請求項12に記載のエアクーラの昇華デフロスト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアクーラ、該エアクーラを備える冷凍システム及び該エアクーラの昇華デフロスト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍庫などに設けられるエアクーラは、一例として、冷媒が流れるチューブと、該チューブの外表面に狭い間隔で並列に固定されたフィンと、を備えるフィンチューブ式熱交換器が使用される。
エアクーラは、冷却面が零度より低くなる場合には着霜が生じ、伝熱性能が低下するため、デフロスト運転が必要になる。特に、フィンを備える場合、着霜によってフィン間が閉塞され、伝熱性能が低下するため、頻繁にデフロスト運転を行う必要がある。
【0003】
着霜を融解させて除去するデフロスト運転では、一旦エアクーラの運転を止め、運転を止めた状態で着霜を融解させ、融解水をドレンパンで受け外部に除去する必要がある。
そこで、最近では、着霜を融解せずに昇華させて除去する昇華デフロスト法が考えられている。この昇華デフロスト法では、0℃未満の温度を有する冷媒を冷媒流路に流し、フィンなどに付着した霜層を融解せずに昇華させる方法である。昇華した水蒸気を空気流と共に外部に排出できるため、融解水の処理を必要としない利点がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、エアクーラを構成する伝熱管の着霜を昇華デフロスト法で除霜する手段が開示されている。
また、本発明者等は、伝熱管に付着した霜層の根本部を霜層の融点未満の温度で加熱し、霜層の根本部と先端部との間で温度勾配を形成させることで、根本部の昇華を優先的に促進させ、これによって、霜層の付着面に対する付着力を低減させ、霜層全体が昇華する前に霜層を剥離させるようにした省エネ可能な剥離式昇華デフロスト法を提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5944058号公報
【文献】国際公開第2017/175411号
【文献】特願2017-090326号の明細書及び図面(未公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアクーラにフィンチューブ式熱交換器を用いた場合、チューブ表面に環状の霜層ブリッジができると、剥離式昇華デフロスト法を用いて霜層をチューブ表面から剥離させても、環状に形成された霜層ブリッジはチューブから取り除くことができない。
そこで、本発明者等は、フィン及びチューブを用いずに、複数のプレートを空気流通過空間を隔てて並列に配置し、かつ各プレートの内部に微小径の冷媒流路を形成したエアクーラを提案している(特許文献3)。このエアクーラは、フィンを用いずに空気側伝熱面積を確保するため、各プレートに1パスで複数の微小径流路を形成している。そのため、微小径流路に液状の冷媒が滞留しやすくなり、デフロスト時に液状の冷媒が滞留した部分ではほとんど伝熱が行われないため、伝熱がエアクーラ全体で均一にならず、デフロストにムラが生じるおそれがある。また、通常運転時においても、微小径流路に液状冷媒が滞留すると、空気の冷却ムラが生じるおそれがある。
【0007】
一実施形態に係る第1の目的は、昇華デフロスト方法によって支障なく除霜できると共に、通常運転時及びデフロスト時に伝熱ムラが起こらないエアクーラを提案することにある。
一実施形態に係る第2の目的は、昇華デフロストで除霜する場合に、デフロストムラを生じさせず、かつ省エネ及び低コスト化が可能なエアクーラの昇華デフロスト方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)一実施形態に係るエアクーラは、
内部に複数の冷媒流路が形成され、互いに間隔を置いて互いに並列に配置された複数のプレートと、
前記複数の冷媒流路の各々に連通し、前記冷媒流路に冷媒を供給する入口ヘッダと、
前記複数の冷媒流路の各々に連通し、前記冷媒流路から前記冷媒が排出される出口ヘッダと、
を備え、
前記冷媒流路は、上下方向に沿って直線状に延在するように構成されると共に、前記入口ヘッダは前記冷媒流路の下部側に連通し、前記出口ヘッダは前記冷媒流路の上部側に連通する。
【0009】
本明細書で、「冷媒」とは、例えばNH3、CO2等の冷媒のみならず、ブライン、その他熱交換に用いられる冷却媒体をすべて含む。また、「上下方向に沿って延在する」とは、鉛直方向に対して30度以内の角度で延在することを意味する。
【0010】
上記(1)の構成によれば、チューブを用いないので、環状の霜層ブリッジは生じない。従って、省エネが可能な剥離式昇華デフロスト法を用いたデフロストが可能になる。また、通常運転時、ポンプによって液状の冷媒はエアクーラに供給される。冷媒は、エアクーラの流路の下部側に配置された入口ヘッダからプレートに供給され、プレート周囲の空気を冷却しながら気化し、気液二相流となって冷媒流路の上部側に設けられた出口ヘッダから排出される。このため、伝熱に寄与しない気化冷媒の滞留による伝熱不良領域がなくなるため、伝熱ムラが起こらず、伝熱面全体で均一な熱伝達が可能になる。デフロスト時には、出口ヘッダから霜層の融点未満の温度を有する冷媒蒸気が供給され、冷媒蒸気は凝縮潜熱を放出することにより凝縮液となり、プレート周囲に着霜した霜層を昇華させる。このとき、冷媒回路はサーモサイフォンとなっており、エアクーラ内の冷媒流路は、上下方向に沿って直線状に配置されているため、凝縮した冷媒液は重力落下し、入口ヘッダから速やかに排出されるため、デフロスト時において伝熱ムラは発生しない。
【0011】
また、各プレートに複数の微小径をもつ冷媒流路をほぼ一様に形成することで、冷却時やデフロスト時の伝熱ムラを抑えることができる。さらに、冷媒の圧力が高くなっても、微小径の冷媒流路にすることで、板厚が薄いプレートで対応できる。
【0012】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記複数のプレート間に設けられるフィンを備え、
前記複数のプレートは、第1プレートと、該第1プレートと間隔を置いて配置される第2プレートと、を含み、
前記フィンは、一端が前記第1プレートに結合されて前記第1プレートから前記第2プレートに向かって延在し、他端が前記第2プレートに対向して配置される。
上記(2)の構成によれば、上記構成のフィンは霜層が滞留しやすい閉空間を形成しないため、昇華デフロスト法によって霜層を容易に除去できる。
【0013】
(3)一実施形態では、前記(2)の構成において、
板状体で構成される複数の前記フィンが、互いに間隔を置いて前記板状体が形成する面に対して法線方向に沿って平行に配置される。
上記(3)の構成によれば、空気流を板状体が形成する面に沿って流すことで、空気流の圧力損失を増加させずにフィンの伝熱面積を増加できる。
【0014】
(4)一実施形態では、前記(3)の構成において、
前記複数のフィンは、前記第1プレートに結合された複数の第1フィンと、前記第2プレートに結合された複数の第2フィンと、を含み、
前記複数の第1フィンの前記他端と前記複数の第2フィンの前記他端とは、前記板状体の配置方向と公差する方向において異なる位置に配置される。
上記(4)の構成によれば、第1フィンの他端と第2フィンの他端とが、上記板状体の配置方向(板状体が形成する面に沿う方向)と交差する方向において異なる位置に配置されるため、フィン間で霜層が滞留しやすい閉空間を形成しない。従って、昇華デフロスト法を用いてフィンに付着した霜層を容易に除去できる。
【0015】
(5)一実施形態では、前記(3)又は(4)の構成において、
前記複数のプレート間の間隔を通過する空気流を形成するための送風機を備え、
前記板状体は、前記空気流が流れる方向に沿って配置される。
上記(5)の構成によれば、空気流が流れる方向に沿って板状体が配置されるので、空気流の圧力損失を増加させずに伝熱面積を増加でき、これによって、冷媒と空気流との熱伝達を促進できる。
【0016】
(6)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記複数のプレートは互いにフィンを介さずに前記間隔に形成される空気流通過空間を隔てて直接対向配置される。
上記(6)の構成によれば、霜層が付着しやすいフィンをなくすことで、従来の融解式デフロストにおける霜層の融け残りやフィン間に滞留した融水の凍結を考慮した余分なデフロスト運転を低減できる。従って、定常運転を停止させる頻度を低減できる。また、フィンを設けないために、複数のプレートを並べた簡単な構成とすることができ、これによって、エアクーラの製造コストを節減できると共に、保守点検時の洗浄効果を向上できる。
【0017】
(7)一実施形態では、前記(1)~(6)の何れかの構成において、
前記複数のプレートの各々において、
前記複数のプレート間の前記間隔を通過する空気流に対して上流側端から前記冷媒流路までの距離は、前記冷媒流路の流路間ピッチ(流路間距離)の1.5倍以上2.5倍以下となるように構成される。
プレートの上流側端部は、プレート表面に形成される温度境界層が薄くなり、熱伝達が促進されるため、通常運転時に霜の付着量が増えることが想定される。上流側端部にU字形のような閉空間を形成する霜が発生すると、剥離が起こり難くなる。上流側端から冷媒流路までの距離が冷媒流路の流路間ピッチの1.5倍未満であると、プレート先端の熱伝達が増加して着霜促進し、頻繁なデフロストが必要となり、省エネにならない。また、上流側端から冷媒流路までの距離が冷媒流路の流路間ピッチの2.5倍を超えると、デフロスト時に着霜の根元を昇温するための熱が伝わりにくくなるため、デフロスト時間が長くなり、省エネとならない。
【0018】
(8)一実施形態では、前記(1)~(7)の何れかの構成において、
前記冷媒流路は、横断面の直径が2mm以下で構成される。
上記(8)の構成によれば、冷媒流路を微小化することで、各プレートに複数の冷媒流路を形成できる。これによって、冷却時やデフロスト時の伝熱ムラを抑えることができる。また、冷媒流路を微小化することで、冷媒が高圧になっても、板厚の薄いプレートを用いた構造で対応できる。
【0019】
(9)一実施形態に係る冷凍システムは、
被冷却物が保管される冷凍庫と、
前記冷凍庫に設けられた前記(1)~(8)の何れかの構成を有するエアクーラと、
前記冷媒流路に冷媒を循環させる冷媒循環路と、
を備える。
【0020】
本明細書において、「冷凍庫」とは、冷蔵庫、その他密閉された冷却空間を形成し、該冷却空間に収容された被冷却物を常温以下の温度に冷却・保冷可能なものをすべて含む。上記「密閉された冷却空間」には、コンベアで搬送される食品を連続的に冷却又は凍結するフリーザの内部に形成される冷却空間を含む。従って、上記「エアクーラ」はフリーザに設けられるエアクーラを含む。
【0021】
上記(9)の構成によれば、上記構成を有するエアクーラは、冷媒循環用のチューブを備えないため、環状の霜層ブリッジは生じない。従って、省エネが可能な剥離式昇華デフロスト法を用いたデフロストが可能になる。また、上述のように、通常運転時及びデフロスト時に伝熱ムラが発生せず、伝熱面全体で均一な熱伝達が可能になると共に、比較的簡易な構成で冷媒の高圧化に耐え得る構成とすることができる。また、昇華デフロスト方法を用いてデフロストを行う場合に、霜層を昇華して凝縮した液冷媒は、重力降下して入口ヘッダから速やかに排出できるため、伝熱ムラが起こらない。
【0022】
(10)一実施形態では、前記(9)の構成において、
液化した前記冷媒を前記複数のプレートに付着した霜層の融解温度未満の温度を有する気化冷媒となるように加熱する熱交換器であって、前記エアクーラより下方に配置される熱交換器と、
デフロスト時に前記冷媒流路と共に閉回路を形成し、前記気化冷媒を前記出口ヘッダを介して前記冷媒流路に供給すると共に、前記冷媒流路で液化した前記冷媒を前記入口ヘッダを介して受け取る供給路と、
を備える。
【0023】
上記(10)の構成によれば、上記熱交換器はエアクーラより下方に配置されるため、デフロスト時に、熱交換器で加熱された気化冷媒はサーモサイフォン作用によって自然上昇する。冷媒流路で霜層に昇華潜熱を与えて液化した冷媒は重力によって冷媒流路を自然下降し、速やかに供給路に排出される。供給路に排出された液冷媒は供給路を自然下降して熱交換器に戻る。このように、液化した冷媒は冷媒流路から速やかに排出されるので、冷媒流路に伝熱ムラが発生しない。また、デフロスト時に冷媒が供給路を自然循環するので、冷媒を循環させるための装置及び動力が不要になり低コスト化できる。
【0024】
(11)一実施形態では、前記(10)の構成において、
前記供給路は、前記冷媒循環路から分岐した分岐管路で構成され、デフロスト時に前記冷媒流路と共に閉回路を形成するように構成される。
上記(11)の構成によれば、上記供給路が冷媒循環路から分岐した分岐管路で構成されるため、供給路の設置を低コスト化できる。
【0025】
(12)一実施形態に係るエアクーラの昇華デフロスト方法は、
内部に複数の冷媒流路が形成され、互いに間隔を置いて互いに並列に配置された複数のプレートと、前記複数の冷媒流路の各々に連通し、前記冷媒流路に冷媒を供給する入口ヘッダと、前記複数の冷媒流路の各々に連通し、前記冷媒流路から前記冷媒が排出される出口ヘッダと、を備え、前記冷媒流路は、上下方向に沿って延在するように構成されると共に、前記入口ヘッダは前記冷媒流路の下部側に連通し、前記出口ヘッダは前記冷媒流路の上部側に連通するように構成されたエアクーラの除霜方法であって、
前記冷媒流路より下方に設けられた熱交換器で、前記冷媒流路を流れる前記冷媒を前記複数のプレートに付着した霜層の融解温度未満の温度を有する気化冷媒に加熱する冷媒加熱ステップと、
前記冷媒流路に前記気化冷媒を供給して前記霜層を昇華させ、液化した前記冷媒を前記冷媒流路から前記熱交換器に戻す昇華ステップと、
を備える。
【0026】
霜層を融点未満の温度に加熱した気化冷媒を用いて霜層を融解せずに昇華させる昇華デフロスト法では、冷媒と霜層との温度差が小さいために、霜層に気化冷媒の熱が伝わりにくい。そのため、霜層を均一に加熱することで、デフロストムラを生じさせないことが課題となる。
上記冷媒加熱ステップにおいて、冷媒流路より下方に設けられた熱交換器で加熱され、霜層の融点未満の温度となった気化冷媒は、サーモサイフォン作用によって自然上昇し、冷媒流路の上部側と連通した出口ヘッダから冷媒流路に流入し、冷媒流路で霜層に昇華潜熱を与えて昇華させる。液化した冷媒は重力によって冷媒流路を自然下降する。
このように、デフロスト時に、液化した冷媒が冷媒流路から速やかに排出されるので、冷媒流路で伝熱ムラは発生しない。従って、冷媒流路中の気化冷媒によって霜層を均一に加熱できるため、デフロストムラをなくすことができる。また、デフロスト時に冷媒が熱交換器と冷媒流路との間を自然循環するので、冷媒を循環させるための装置及び動力が不要になり、省エネ及び低コスト化が可能になる。
【0027】
(13)一実施形態では、前記(12)の方法において、
前記昇華ステップにおいて、
前記気化冷媒を前記出口ヘッダから前記冷媒流路に供給すると共に、前記霜層を昇華して液化した前記冷媒を前記冷媒流路から前記入口ヘッダを介して排出する。
上記(13)の方法によれば、冷媒流路の上部側に連通する出口ヘッダから気化冷媒を供給することで、霜層を昇華して液化した冷媒を自重で冷媒流路を速やかに降下させることができる。また、冷媒流路を降下した液化冷媒を冷媒流路の下部側に連通した入口ヘッダから速やかに排出できる。そのため、冷媒流路は気化冷媒のみが充満するため、この気化冷媒によって冷媒流路を均一に加熱でき、これによって、デフロストムラをなくすことができる。
【発明の効果】
【0028】
幾つかの実施形態に係るエアクーラは、昇華デフロスト方法、特に剥離式昇華デフロスト方法で除霜が可能になると共に、通常運転時及びデフロスト時に伝熱ムラが起こらず、伝熱面全体で均一な伝熱が可能になる。また、幾つかの実施形態に係るエアクーラの除霜方法は、昇華デフロスト方法で除霜する場合に、デフロストムラを生じさせず、かつ省エネ及び低コスト化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】一実施形態に係るエアクーラの正面図である。
【
図2】一実施形態に係るエアクーラの側面図である。
【
図3】エアクーラの構成部品である一実施形態に係るプレートの正面図である。
【
図5】一実施形態に係るエアクーラの一部の側面図である。
【
図6A】エアクーラの構成部品である一実施形態に係るフィン構成体の斜視図である。
【
図6B】エアクーラの構成部品である一実施形態に係るフィン構成体の斜視図である。
【
図6C】エアクーラの構成部品である比較例としてのフィン構成体の斜視図である。
【
図7】一実施形態に係る冷凍システムの系統図である。
【
図8】一実施形態に係るエアクーラの除霜方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0031】
図1~
図5は、一実施形態に係るエアクーラ10を示す。エアクーラ10は、例えば、
図7に示すように、冷凍庫42の内部に設けられ、冷凍庫42の内部を冷却するために用いられる。
図1及び
図2に示すように、複数のプレート12が互いに間隔を置いて互いに並列に配置されている。各プレート12には、内部に複数の冷媒流路14が形成されている(
図3及び
図4参照)。各プレート12に形成された複数の冷媒流路14の各々に連通する入口ヘッダ16及び出口ヘッダ18が設けられている。冷媒流路14には入口ヘッダ16を介して冷媒が供給され、冷媒流路14の冷媒は出口ヘッダ18を介して外部に排出される。
複数の冷媒流路14の各々は、上下方向に沿って直線状に延在するように構成される。入口ヘッダ16は各冷媒流路14の下部側に連通し、出口ヘッダ18は冷媒流路14の上部側に連通する。
【0032】
エアクーラ10の通常運転中に、冷媒流路14を流れる冷媒によってプレート12の周囲の空気が冷却され、空気中に含まれる水蒸気がプレート12などの機器に付着し、
図4に示すような霜層Iが形成される。
【0033】
上記構成によれば、エアクーラ10はチューブを用いないので、環状の霜層ブリッジは形成されない。従って、省エネが可能な剥離式昇華デフロスト法を用いたデフロストが可能になる。また、通常運転時、液ポンプ66によって液状の冷媒はエアクーラ10に供給される。冷媒は、エアクーラの流路の下部側に配置された入口ヘッダ16からプレートに供給され、プレート周囲の空気を冷却しながら気化し、気液二相流となって冷媒流路の上部側に設けられた出口ヘッダ18から排出される。このため、伝熱に寄与しない気化冷媒の滞留による伝熱不良領域がなくなるため、伝熱ムラが起こらず、伝熱面全体で均一な熱伝達が可能になる。デフロスト時には、出口ヘッダ18から霜層の融点未満の温度を有する冷媒蒸気が供給され、冷媒蒸気は凝縮潜熱を放出することにより凝縮液となり、プレート周囲に着霜した霜層を昇華させる。このとき、冷媒回路は、
図7に示すようにサーモサイフォンとなっており、エアクーラ内の冷媒流路は、上下方向に沿って直線状に配置されているため、凝縮した冷媒液は重力落下し、入口ヘッダ16から速やかに排出されるため、デフロスト時において伝熱ムラは発生しない。
【0034】
また、複数のプレート12に複数の微小径をもつ冷媒流路14をほぼ一様に形成することで、冷却時やデフロスト時の伝熱ムラを抑えることができる。さらに、冷媒の圧力が高くなっても、冷媒を微小径の冷媒流路14にすることで、板厚が薄いプレート12を用いた比較的簡易な構成で対応できる。
【0035】
一実施形態では、プレート12は上下方向に沿って配置される。プレート12を上下方向に沿って配置することで、冷媒流路14を上下方向に沿って配置できる。
一実施形態では、プレート12の表面は平坦面を形成する。また、平坦面とすることで、プレート12に付着した霜層Iの成長を幾分抑制できる。
一実施形態では、
図3に示すように、複数の冷媒流路14は互いに平行に配置される。複数の冷媒流路14が平行に配置されることで、伝熱ムラを抑えることができる。
【0036】
一実施形態では、
図1及び
図2に示すように、入口ヘッダ16及び出口ヘッダ18は、冷媒管(不図示)に接続される管接手20及び24と、プレート12の間に挿入されるスペーサ22及び26とを備える。管接手20及び24は、筒状に形成され、内部に冷媒が流れる貫通孔20a及び24aを有している。スペーサ22及び26は、プレート間に挿入されてプレート間の間隔を規定し、冷媒が流れる貫通孔22a及び26aが形成されている。
一実施形態では、管接手20及び24は円筒形を有し、スペーサ22及び26は四角形の板で構成される。
【0037】
一実施形態では、
図1に示すように、複数のプレート12間の間隔を通過する空気流aを形成するための送風機27を備える。送風機27を稼働することで、プレート12間に空気流通過空間Sa(
図5参照)を形成できる。各プレート間に空気流通過空間Saを形成することで、空気流aと冷媒間の熱伝達を促進できる。
【0038】
一実施形態では、
図1及び
図2に示すように、プレート12、入口ヘッダ16及び出口ヘッダ18は、ケーシング28に収容される。ケーシング28は、少なくとも空気が流入する面及び空気が流出する面は開放され、プレート間に形成される空気流通過空間Saに空気流aが形成される。一実施形態では、ケーシング28の空気流入面と空気流出面とは互いに対向する位置に配置されている。
一実施形態では、ケーシング28は直方体を構成する。
一実施形態では、
図1に示すように、送風機27はケーシング28の側面(空気流aに対して上流側面となる空気流入面)に設けられた押込み式ファンで構成され、下流側に設けられた空気流通過空間Saへ空気流aを送るように構成される。
【0039】
一実施形態では、
図3に示すように、各プレート12において、冷媒流路14の両端に、複数の冷媒流路14のすべてに連通する集合孔13a及び13bが形成され、集合孔13aは入口ヘッダ16に連通し、集合孔13bは出口ヘッダ18に連通している。
一実施形態では、
図4に示すように、プレート12は、一対の薄板状のプレート構成体12a及び12bで構成される。プレート構成体12a及び12bは、軸方向に沿って冷媒流路14を形成する凹部30が形成され、凹部30が向かい合わせになるように配置されて、互いに接合される。これによって、プレート12の内部に冷媒流路14が形成される。
一実施形態では、プレート12は、例えば、銅又はステンレス鋼等で構成され、拡散接合で接合される。スペーサ22は、プレート12に対してろう付けで接合される。
一実施形態では、凹部30はエッチングで形成される。
【0040】
一実施形態では、
図2に示すように、スペーサ22及び24によって互いに間隔を置いて重ねられた複数のプレート12の両側にさらに端板32及び34が重ねて配置される。端板32には管接手20及び24が結合され、かつ冷媒が流れる貫通孔が形成される。端板34は密閉された面を有する。
【0041】
一実施形態では、
図5に示すように、各プレート12の間にフィン36が設けられる。フィン36は、プレート間において、一端が一方のプレート12に結合されて該プレートから隣り合うプレート12に向かって延在し、他端が隣り合うプレート12に対向して配置される。
この実施形態によれば、フィン36は霜層が滞留しやすい閉空間を形成しないため、昇華デフロスト法によって霜層を容易に除去できる。
【0042】
一実施形態では、
図5に示すように、複数のフィン36が板状体で構成され、互いに間隔を置いて配置され、かつ複数のフィン36は、該板状体が形成する面に対して法線方向に沿って平行に配置される。
この実施形態によれば、空気流a(
図1参照)を板状体が形成する面に沿って流すことで、空気流aの圧力損失を増加させずにフィン36の伝熱面積を増加できる。これによって、冷媒と空気流aとの熱伝達を促進できる。
【0043】
一実施形態では、複数のフィン36が各プレート12に設けられ、隣り合うプレート12の間に設けられる複数のフィン36のうち、隣り合う一方のプレート12に結合された複数のフィン36と、隣り合う他方のプレート12に結合された複数のフィン36とは、フィン36を構成する板状体の配置方向と交差する方向において異なる位置に配置される。即ち、隣り合うプレート12に夫々配置された複数のフィン36は、上記板状体の配置方向(板状体が形成する面に沿う方向)に対し法線方向に互い違いに配置される。
この実施形態によれば、隣り合う一方のプレート12に設けられたフィン36と、他方のプレート12に設けられたフィン36との間で霜層が滞留しやすい閉空間を形成しない。これによって、昇華デフロスト法を用いてフィン36に付着した霜層を容易に除去できる。
【0044】
図6A及び
図6Bは、夫々一実施形態に係るフィン構成体38(38a、38b)を示し、
図6Cは比較例としてのフィン構成体38(38c)を示す。
フィン構成体38(38a)は、複数の直線状のフィン36(36a)が互いに平行に配置されて、底板39と一体に形成されている。フィン構成体38(38b)は、複数の波形に形成されたフィン36(36b)が互いに平行に配置されて、底板39と一体に形成されている。底板39がプレート12に接合される。フィン36(36a、36b)は、送風機27によって形成される空気流aに沿う方向に配置される。
上記構成により、フィン構成体38(38a、38b)は、空気流aに対する伝熱面積を拡大でき、空気流aと冷媒との熱伝達を促進できる。また、フィン構成体38(38b)は、フィン36(36b)が空気流aに沿う方向に波形に形成されているため、フィン間を通る空気流aが乱入を形成しやすくなる。これによって、空気流aと冷媒との熱伝達をさらに促進できる。
【0045】
図6Cに示す比較例としてのフィン構成体38(38c)は、プレート表面に固定されたとき、閉空間Scを形成する。そのため、閉空間Scに霜層ブリッジが形成されると、昇華デフロスト法によるデフロストが難しくなる。
【0046】
一実施形態では、複数のプレート12は互いにフィンを介さずにプレート間に形成された間隔に形成される空気流通過空間Saを隔てて直接対向配置される。
この実施形態によれば、霜層が付着しやすいフィンをなくすことで、従来の融解式デフロストにおける霜層の融け残りやフィン間に滞留した融水の凍結を考慮した余分なデフロスト運転を低減できる。これによって、定常運転を停止させる頻度を低減できる。また、フィンを設けないために、主として複数のプレート12のみを並べた簡単な構成とすることができ、これによって、エアクーラの製造コストを節減できると共に、保守点検時の洗浄効果を向上できる。
【0047】
この実施形態では、フィンを設けないことによる伝熱面積の減少を、空気流通過空間Saを狭め、プレート12の数を増やしたり、あるいは各プレート12の面積を増やし、あるいは各プレート12に形成される冷媒流路14の数を増やすことで補うことができる。
【0048】
一実施形態では、
図4に示すように、複数のプレート12の各々において、空気流通過空間Saを通過する空気流aに対して上流側端から直近の冷媒流路14までの距離Xは、冷媒流路14の流路間ピッチ(流路間距離)Yの1.5倍から2.5倍となるように構成される。
プレート12の上流側端部は、プレート表面に温度境界層Tbが形成され、温度境界層Tbの内部ではプレート表面に近づくほど、温度が徐々に高くなる温度勾配が形成される。温度境界層Tbは、上流側に行くほど薄くなり、これによって、熱伝達が促進されるため、通常運転時に霜の付着量が増えることが想定される。上流側端部にU字形のような閉空間を形成する霜が発生すると、剥離が起こり難くなる。
【0049】
この実施形態によれば、プレート12の上流側端部に冷媒流路14の流路間ピッチYの1.5倍から2.5倍の距離Xを有するプレート面を設けることで、該上流側端部における霜層の成長を抑制でき、その結果、デフロストの頻度を低減できるので省エネが可能になる。冷媒流路14が受持つ伝熱の範囲は、冷媒流路のピッチによって決まる。距離Xが狭すぎると、プレート先端の熱伝達が増加して着霜が促進することになり、先端部に霜が集中する結果閉塞しやすくなる。そのため、頻繁な昇華デフロストが必要となり、省エネ等の経済性が悪化する。一方、距離Xの幅が広すぎると、霜層の根元を昇温するための熱が伝わりにくいためデフロスト時間が長くなる。そのため、同様に省エネ等の経済性が悪化する。
【0050】
一実施形態では、冷媒流路14は横断面の直径が2mm以下となるように構成される。
上記構成によれば、冷媒流路14の横断面の直径を2mm以下の微小径とすることで、プレート12に形成する冷媒流路14の合計長さを増加できると共に、プレート12における冷媒流路14の配置の自由度を広げることができる。これによって、冷却時やデフロスト時の伝熱ムラを抑えることができる。また、冷媒流路14を微小化することで、冷媒の高圧化に対して、板厚の薄いプレート12を用いた構造で対応可能になる。
なお、好ましくは、冷媒流路14の伝熱面積を増加させるために、冷媒流路14の横断面の径を1.0mm以下とする。他方、冷媒流路14の加工の容易さの観点から、好ましくは、冷媒流路14の横断面の径を0.1mm以上とする。
【0051】
図7は、一実施形態に係る冷凍システム40を示す系統図である。
図7において、冷凍システム40は、被冷却物が保管される冷凍庫42を備え、冷凍庫42の内部にエアクーラ10が設けられている。また、複数のプレート12に夫々形成された冷媒流路14に連通し、冷媒流路14に冷媒を循環させる二次冷媒回路44(冷媒循環路)を備える。
上記構成によれば、幾つかの上記実施形態に係るエアクーラ10は、冷媒循環用のチューブを備えないため、環状の霜層ブリッジは生じない。従って、省エネが可能な剥離式昇華デフロスト法を用いたデフロストが可能になる。また、通常運転時及びデフロスト時に冷媒とプレート周囲の空気との間で伝熱ムラが発生せず、伝熱面全体で均一な熱伝達が可能になる。また、板厚が薄いプレート12などを用いた比較的簡易な構成で冷媒の高圧化に耐え得る構成とすることができる。さらに、昇華デフロスト方法を用いてデフロストを行う場合に、霜層を昇華して凝縮した液冷媒は、重力降下して入口ヘッダから速やかに排出できるため、伝熱ムラが起こらない。
【0052】
一実施形態では、冷凍庫42の保冷空間Sfを冷却する定常運転時に二次冷媒回路44を介して冷媒流路14に冷媒を循環させるための冷凍機50を備える。
冷凍機50は、一次冷媒が循環し、冷凍サイクル構成機器が設けられた一次冷媒回路52と、二次冷媒が循環し、エアクーラ10まで延設される二次冷媒回路44とを有している。二次冷媒回路44は一次冷媒回路52と液化器54を介して接続される。
一次冷媒回路52に、冷凍サイクル構成機器として、圧縮機56、凝縮器58、受液器60、膨張弁62及び液化器54が設けられる。二次冷媒回路44には、液化器54で液化された二次冷媒液が一時貯留される受液器64と、受液器64に貯留された二次冷媒液を二次冷媒回路44を介して冷媒流路14に循環させる液ポンプ66とが設けられている。
【0053】
液化器54と受液器64との間に二次冷媒循環路68が設けられ、受液器64から二次冷媒循環路68を介して液化器54に導入された二次冷媒ガスは、液化器54で一次冷媒によって冷却され液化して受液器64に戻る。受液器64に貯留される二次冷媒液は二次冷媒回路44を介してエアクーラ10のプレート12に形成された冷媒流路14に送られる。エアクーラ10では、冷媒流路14を循環する二次冷媒によって庫内空気が冷却される。
【0054】
凝縮器58と冷却塔70との間に冷却水回路72が設けられ、凝縮器58で一次冷媒は冷却水回路72を循環する冷却水によって冷却される。凝縮器58で一次冷媒を冷却した冷却水は冷却塔70で冷却される。
【0055】
一実施形態では、一次冷媒はNH3であり、二次冷媒はCO2である。冷凍システム40の冷却運転時(定常運転時)、庫内温度は例えば-25~-35℃に冷却され、二次冷媒は庫内温度以下の温度でエアクーラ10に供給される。
【0056】
冷却水回路72から分岐する分岐回路74が設けられ、分岐回路74は熱交換器76を介して冷凍庫42に導設されたブライン回路77と接続される。ブライン回路77を循環するブラインは、凝縮器58で一次冷媒を冷却した冷却水の保有熱を吸収する。ブライン回路77の往路にブラインを一時貯留するレシーバ78及びブラインを循環させるブラインポンプ79が設けられる。
【0057】
一実施形態では、冷凍庫42に熱交換器84とデフロスト回路82(供給路)とを備える。熱交換器84は、エアクーラ10より下方に配置され、液状冷媒をプレート12に付着した霜層の融解温度未満の温度を有する気化冷媒となるように加熱する。デフロスト回路82は、デフロスト時に冷媒流路14と共に閉回路を形成する。デフロスト回路82は、熱交換器84で加熱された気化冷媒を冷媒流路14の上部側に連通する出口ヘッダ18を介して冷媒流路14に供給する。冷媒流路14で霜層を昇華して液化した冷媒は冷媒流路14の下部側に連通する入口ヘッダ16を介してデフロスト回路82に排出される。液化冷媒はデフロスト回路82から熱交換器84に送られ、熱交換器84で再び霜層の融解温度未満の温度を有する気化冷媒となるように加熱される。
【0058】
この実施形態によれば、熱交換器84はエアクーラ10より下方に配置されるため、デフロスト時に、熱交換器84で加熱された気化冷媒はサーモサイフォン作用によって自然上昇する。冷媒流路14で霜層に昇華潜熱を与えて液化した冷媒は重力によって冷媒流路14を自然下降し、速やかにデフロスト回路82に排出される。デフロスト回路82に排出された液冷媒はデフロスト回路82を自然下降して熱交換器84に戻る。このように、液化した冷媒は冷媒流路14から速やかに排出されるので、冷媒流路14に伝熱ムラが発生しない。また、デフロスト時に冷媒がデフロスト回路82を自然循環するので、冷媒を循環させるための装置及び動力が不要になり低コスト化できる。
【0059】
一実施形態では、エアクーラ10の入口及び出口において二次冷媒回路44に電磁開閉弁80a及び80bが設けられ、電磁開閉弁80a及び80bとエアクーラ10との間の二次冷媒回路44にデフロスト回路82が接続される。
冷却運転時(定常運転時)に電磁開閉弁80a及び80bは開放され、デフロスト回路82に設けられた電磁開閉弁81が閉じられる。デフロスト時に電磁開閉弁80a及び80bが閉じ、電磁開閉弁81が開放されることで、デフロスト回路82は各プレート12に形成された冷媒流路14と共に閉回路を形成する。
【0060】
熱交換器84にはデフロスト回路82及びブライン回路77が導設され、デフロスト時に、デフロスト回路82を循環する二次冷媒は、熱交換器84においてブライン回路77を循環するブラインによって加熱される。
こうして、デフロスト時に、ブラインによって加熱され、プレート12に付着する霜層の融解温度未満の温度を有する二次冷媒を加熱媒体として冷媒流路14に循環させることで、霜層を加熱昇温させ昇華させて除去する昇華デフロストが可能になる。
【0061】
一実施形態では、霜層I(
図4参照)の融解温度未満の温度を有する二次冷媒を冷媒流路14に流すことで、以下説明する剥離式昇華デフロストが可能になる。剥離式昇華デフロストは、霜層Iの根本側領域Irと先端側領域Itとの間に温度勾配を形成し、根本側領域Irを優先して加熱昇温させて昇華を促進させ、根本側領域Irの付着面積を減少させる。付着面積が減少してプレート表面に対する付着力が低減した霜層Iに対して物理的な力、例えば空気流aの力を加えて霜層Iを剥離させる。
先端側領域Itの温度は、冷凍庫42においてエアクーラ10の空気流aの温度に近い。先端側領域Itと根本側領域Irの間で温度勾配を形成するために、根本側領域Irの温度を先端側領域Itの温度以上で融解温度未満の温度範囲で調整すればよい。
【0062】
これによって、霜層Iを根本側領域Irから根こそぎ除去できると共に、除霜時間を短縮できる。また、全部の霜層Iを昇華させる必要がないので、必要熱量を削減できる。
また、ドレインが発生しないので、ドレインを外部に排出する手間を省くことができる。さらに、昇華した水蒸気は空気流aと共に飛散するので、冷却運転中にデフロスト処理が可能になる。従って、冷却運転を止めずに継続できる。
【0063】
一実施形態では、
図7に示すように、冷凍システム40は圧力調整部86を備える。圧力調整部86は、冷却運転時に、圧力センサ88で検出された冷媒流路14を循環する二次冷媒の圧力が制御部92に入力され、制御部92は圧力調整弁90の開度を制御して冷媒流路14を循環する冷媒の圧力及び温度を制御する。
また、圧力調整部86は、デフロスト運転時に、冷媒流路14及びデフロスト回路82を含む閉回路を循環する二次冷媒の圧力を調整可能であり、該閉回路を循環する二次冷媒は霜層の融点(氷点)未満の凝縮温度を有するように圧力調整される。即ち、圧力センサ88によって検出された上記閉回路を循環する二次冷媒の圧力が制御部92に入力され、制御部92は、上記閉回路を循環する二次冷媒の凝縮温度が霜層Iの氷点未満の温度になるように、デフロスト回路82に設けられた圧力調整弁83の開度を制御する。
【0064】
一実施形態では、二次冷媒がCO2であり、CO2冷媒を3.0MPa(凝縮温度-5℃)まで昇圧する。これによって、プレート12に付着した霜層をCO2冷媒の凝縮潜熱(-5℃/3.0MPaで249kJ/kg)で昇華除去できる。
【0065】
一実施形態では、
図7に示すように、ブライン回路77を循環するブラインの温度を調整する温度調整部94を備える。温度調整部94は、ブライン回路77の往路及び復路に設けられた温度センサ96及び98と、レシーバ78とブラインポンプ79との間の往路と復路とに接続されたバイパス路100と、バイパス路100と復路との接続部に設けられた三方弁102と、温度センサ96の検出値が入力され、この検出値が設定温度になるように三方弁102を制御する制御部104と、を備える。
温度調整部94によって、デフロスト時に熱交換器84に流入するブラインの温度が設定温度に制御されることで、閉回路を循環する二次冷媒の温度を霜層Iの氷点未満の温度に制御できる。
なお、圧力調整部86及び温度調整部94は、夫々単独に用いてもよく、あるいは両者を併用してもよい。
【0066】
一実施形態では、デフロスト回路82は、二次冷媒回路44から分岐した分岐管路で構成され、デフロスト時に冷媒流路14と共に閉回路を形成するように構成される。
この実施形態によれば、デフロスト回路82が二次冷媒回路44から分岐した分岐管路で構成されるため、デフロスト回路82の設置を低コスト化できる。
【0067】
一実施形態では、エアクーラ10を複数のブロックに分け、1個のブロックでは冷媒流路14に霜層の融点未満の温度を有する気化冷媒を供給するデフロスト運転を行い、他のブロックでは定常運転を行うようにする。デフロスト運転を行うブロックを順々に切り替えることで、冷凍システム40の定常運転を停止させずにデフロストが可能になる。
【0068】
図7に示す実施形態では、デフロスト時に二次冷媒を昇華させる熱源として、冷却水回路72を循環する冷却水の保有熱を利用するようにしているが、代わりに、受液器60に貯留された一次冷媒の保有熱を利用するようにしてもよい。この実施形態では、熱交換器76の代わりに、受液器60に貯留された一次冷媒とブライン回路77を循環するブラインとを熱交換する熱交換器を設けるようにする。
【0069】
一実施形態に係るエアクーラ10の昇華デフロスト方法は、
図8に示すように、冷媒加熱ステップS10と、昇華ステップS12とを含む。冷媒加熱ステップS10においては、冷媒流路14より下方に設けられた熱交換器84で、冷媒流路14を流れる冷媒を複数のプレート12などに付着した霜層の融解温度未満の温度を有する気化冷媒に加熱する。昇華ステップS12では、冷媒流路14に上記気化冷媒を供給し、プレート12などに付着した霜層を昇華させる。霜層に昇華潜熱を与えて液化した冷媒は冷媒流路14から熱交換器84に戻され、再び霜層の融解温度未満の温度を有する気化冷媒に加熱される。
【0070】
霜層を融点未満の温度に加熱した気化冷媒を用いて霜層を融解せずに昇華させる昇華デフロスト法では、冷媒と霜層との温度差が小さいために、霜層に気化冷媒の熱が伝わりにくい。そのため、霜層を均一に加熱することで、デフロストムラを生じさせないことが課題となる。
冷媒加熱ステップS10において、冷媒流路14より下方に設けられた熱交換器84で加熱され、霜層の融点未満の温度となった気化冷媒は、サーモサイフォン作用によってデフロスト回路82を自然上昇する。自然上昇して冷媒流路14に流入した気化冷媒は、冷媒流路14で霜層を融点未満の温度で加熱して昇華させる。昇華潜熱を奪われて液化した冷媒は重力によって冷媒流路14を自然下降し、冷媒流路14から排出される。
【0071】
このように、デフロスト時に、液化した冷媒が冷媒流路14から速やかに排出されるので、冷媒流路14で伝熱ムラは発生しない。従って、冷媒流路中の気化冷媒によって霜層を均一に加熱できるため、デフロストムラをなくすことができる。また、デフロスト時に冷媒が熱交換器84と冷媒流路14との間を自然循環するので、冷媒を循環させるための装置及び動力が不要になり、省エネ及び低コスト化が可能になる。
【0072】
一実施形態では、昇華ステップS12において、気化冷媒を出口ヘッダ18から冷媒流路14に供給すると共に、霜層を昇華して液化した冷媒を冷媒流路14から入口ヘッダ16を介して排出する。
この実施形態によれば、冷媒流路14の上部側に連通する出口ヘッダ18から気化冷媒を供給することで、霜層を昇華して液化した冷媒を自重で冷媒流路を速やかに降下させることができる。また、冷媒流路14を降下した液化冷媒を冷媒流路14の下部側に連通した入口ヘッダ16から速やかに排出できる。そのため、冷媒流路14は気化冷媒のみが充満するため、この気化冷媒によって冷媒流路14を均一に加熱でき、これによって、デフロストムラをなくすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
幾つかの実施形態によれば、昇華デフロスト、特に剥離式昇華デフロストで支障なく除霜できると共に、通常運転時及びデフロスト時に伝熱ムラが起こらないエアクーラを実現できると共に、デフロストムラを生じさせず、かつ省エネ及び低コスト化が可能なエアクーラの昇華デフロスト方法を実現できる。
【符号の説明】
【0074】
10 エアクーラ
12 プレート
12a、12b プレート構成体
13a、13b 集合孔
14 冷媒流路
16 入口ヘッダ
18 出口ヘッダ
20、24 管接手
22、26 スペーサ
27 送風機
28 ケーシング
30 凹部
32、34 端板
36(36a、36b、36c) フィン
38(38a、38b) フィン構成体
39 底板
40 冷凍システム
42 冷凍庫
44 二次冷媒回路(冷媒循環路)
50 冷凍機
52 一次冷媒回路
54 液化器
56 圧縮機
58 凝縮器
60、64 受液器
66 液ポンプ
68 二次冷媒循環路
70 冷却塔
72 冷却水回路
76、84 熱交換器
78 レシーバ
79 ブラインポンプ
87 ブライン回路
80a、80b、81 電磁開閉弁
82 デフロスト回路
83、90 圧力調整弁
86 圧力調整部
88 圧力センサ
92、104 制御部
94 温度調整部
96、98 温度センサ
100 バイパス路
102 三方弁
I 霜層
Ir 根本側領域
It 先端側領域
Sa 空気流通過空間
Sc 閉空間
Tb 温度境界層
a 空気流