(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20220913BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101D
H05H1/46 C
(21)【出願番号】P 2018166773
(22)【出願日】2018-09-06
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】一野 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩平
(72)【発明者】
【氏名】中本 和則
(72)【発明者】
【氏名】横川 賢悦
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-055100(JP,A)
【文献】特開2011-009351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
C23C 16/505
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、
前記真空容器の内部で被処理試料を載置する電極基材と前記電極基材の外周部分を覆う絶縁性の材料で形成されたサセプタリングと前記サセプタリングに覆われて前記電極基材の外周を囲むように配置され
た絶縁リングであって上面と前記電極基材の外周と対向する
内周面の
少なくとも一部
とにわたってこれらの面の上面を覆う薄膜電極が形成された絶縁リングとを備えた載置台と、
前記載置台の前記電極基材に第1の高周波電力を印加する第1の高周波電力印加部と、
前記絶縁リングに形成された前記薄膜電極に第2の高周波電力を印加する第2の高周波電力印加部と、
前記真空容器の内部で前記載置台の上部にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、
前記第1の高周波電力印加部と前記第2の高周波電力印加部と前記プラズマ発生手段とを制御する制御部と
を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、前記薄膜電極は、表面を誘電体の膜で覆われていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項2記載のプラズマ処理装置であって、前記薄膜電極はタングステンの膜で形成されており、前記誘電体の膜がアルミナで形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項3記載のプラズマ処理装置であって、前記薄膜電極の前記タングステンの膜は、タングステンを前記絶縁リングの表面に溶射することにより成形されたものであることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項3記載のプラズマ処理装置であって、前記薄膜電極の表面を覆う前記アルミナの膜は、前記絶縁リングの前記タングステンの膜が形成された部分を覆ってアルミナを溶射することにより成形されたものであることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載のプラズマ処理装置であって、前記絶縁リングの前記薄膜電極が形成された部分のうち前記絶縁リングの上面と前記電極基材の外周と対向する面とが交わる部分は、丸みを帯びた面で接続されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、前記載置台は、中央部分に対して周辺部分が凹んだ段差形状を有しており、前記絶縁リングは、前記載置台の周辺部の凹んだ段差形状部分に搭載された状態で前記サセプタリングに覆われていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、前記プラズマ発生手段は、
前記真空容器の上部に前記載置台と対抗して配置されて誘電体材料で形成された誘電体窓と、
前記真空容器の上部から前記誘電体窓を介して前記真空容器の内部に高周波電力を供給する電力供給部と、
前記真空容器の外部に配置されて前記真空容器の内部に磁界を発生させる磁界発生部と、
を備えていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に係り、特に、プラズマを発生させて半導体基板などをエッチング処理するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの集積度の向上に伴い、回路構造が微細化し、製造プロセスが複雑化している。このような状況で、半導体デバイスの単価の上昇を抑えるために、1枚のウェハから取れる半導体デバイスの収率を上げることが要求され、被処理ウェハの外周縁まで性能の良い半導体デバイスが歩留まりよく製造できるようにすることが求められている。
【0003】
このような要求に対して、プラズマ処理装置においては、プラズマ処理装置で処理されることにより被処理ウェハ上に形成される半導体デバイスの性能が、被処理ウェハの面内で中心から周辺部にかけて均一であることが求められている。
【0004】
プラズマ処理装置であるエッチング装置においては、回路パターンの微細化に伴って、ナノメートル、サブナノメートルオーダーの加工均一性の精度が要求されている。このような、ナノメートル、サブナノメートルオーダーの加工均一性の精度を被処理ウェハの全面に渡って確保できるようにするためには、加工精度が低下しやすい被処理ウェハの外周部近傍におけるプラズマ処理の精度を向上させることが重要になる。
【0005】
エッチング処理装置においては、被処理ウェハの外周部近傍で、電磁気学的、熱力学的な要因により、処理されるパターンの加工形状精度などのエッチング処理の特性が、被処理ウェハの中央部分に対して外周部近傍のほうがばらつきが大きくなりやすい。このことは、被処理ウェハのサイズ(外径)が大きくなるほど顕著に現れる。その結果、プラズマエッチング処理による被処理ウェハの外周部近傍の加工形状が中央部近傍の加工精度に対してばらつきの許容範囲を超えてしまい、被処理ウェハの外周部近傍に形成された半導体デバイスを製品として出荷することができなくなってしまうようなケースが発生する。
【0006】
このような、被処理ウェハの外周部近傍の加工形状が中央部近傍の加工精度に対してばらつきの許容範囲を超えてしまうことを防止するための手段として、特許文献1には、被処理ウェハを載せる基板電極の周囲に、基板電極と同電位の高周波リングを設置して、高周波バイアス電力の変更の影響を低減し、被処理ウェハの外周部近傍の加工特性を改善して処理の均一性を向上させることのできるプラズマ処理装置について記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、被処理ウェハを載せる試料台の基材の周囲に、試料台の基材とは電気的に絶縁された状態で導体リングを設置し、試料台の基材に印加する高周波電力とは別の電源から導体リングに高周波電力を供給する構成が記載されている、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-17292号公報
【文献】特開2016-225376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
エッチング処理装置においては、被処理ウェハをプラズマで処理するときに、被処理ウェハを載置する基板電極の外周部近傍に形成される電界の形状がプラズマ処理の均一性に影響を及ぼす。特許文献1に記載された方法では、基板電極と高周波リングとが同電位であるために、基板電極に印加する高周波電力がある条件の場合には基板電極の外周部近傍に形成される電界を理想的に状態に調整できても、基板電極に印加する高周波電力の条件を変えた場合には、基板電極の外周部近傍に形成される電界を高周波リングで調整することが難しく、被処理ウェハを外周部近傍まで均一に処理を施すことは難しい。
【0010】
一方、ウェハ外周部の電界が歪むと、ウェハの表面とその上のプラズマ領域との境界のシース領域に形成される電界の等電位面に不均一や形状の傾きが生じる。シース領域において、イオンは問う電位面に対して直角な方向に力を受けるので、等電位面がウェハの面に対して傾いていると、ウェハに入射するイオンが等電位面の傾きに応じた斜め方向の力を受けた状態でウェハに入射する。その結果、ウェハ上に形成されるパターンの形状に分布が生じてしまったり、ウェハ外周部の絶縁体で形成されたリングの消耗が加速する等の問題が生じる。
【0011】
これに対して、特許文献2に記載された構成では、試料台の基材(基板電極)の外周部に発生するシース領域における電界の傾きを補正する為に、試料台の基材の外周部に配置した絶縁体のリングの上に導体リング(高周波リング電極)を配置し、この導体リングに試料台の基材に印加する高周波電力とは別の制御された高周波電力を印加する構成となっている。
【0012】
しかし、誘電体を挟んで試料台の基材と導体リングとにそれぞれ異なる電源から高周波電力を印加した場合、試料台の基材と導体リングとの間に発生する容量結合によっては、試料台の基材に印加する高周波電力と導体リングに印加する高周波電力との間に干渉が発生して、比較的電力が小さい導体リングに印加する高周波電力が制御不能になってしまい、試料台の基材に載置されたウェハ外周部の電界が歪んでしまう可能性がある。
【0013】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決して、基板電極に印加する高周波電力を変化させても高周波リング電極に印加する高周波電力を安定して制御できるようにして、基板電極の外周部近傍のシース領域に形成される電界の形状がプラズマ処理の均一性に及ぼす影響を小さくし、被処理ウェハの外周部近傍までプラズマ処理の均一性を向上させて、1枚のウェハから製造できる良品デバイスの数をより多くすることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するために、本発明では、プラズマ処理装置を、真空容器と、この真空容器の内部で被処理試料を載置する電極基材とこの電極基材の外周部分を覆う絶縁性の材料で形成されたサセプタリングとこのサセプタリングに覆われて電極基材の外周を囲むように配置された絶縁リングであって上面と電極基材の外周と対向する内周面の少なくとも一部とにわたってこれらの面の上面を覆う薄膜電極が形成された絶縁リングとを備えた載置台と、この載置台の電極基材に第1の高周波電力を印加する第1の高周波電力印加部と、絶縁リングに形成された薄膜電極に第2の高周波電力を印加する第2の高周波電力印加部と、真空容器の内部で載置台の上部にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、第1の高周波電力印加部と第2の高周波電力印加部とプラズマ発生手段とを制御する制御部とを備えて構成した。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被処理ウェハの中心部分から外周部近傍までプラズマ処理の均一性を向上させることができ、1枚のウェハから取得できる良品デバイスの数(良品の歩留まり)をより多くすることができるようになった。
【0016】
また、本発明によれば、ウェハ外周部に配置されたリング状部材の寿命を延ばすことが出来、部品交換の頻度を少なくしてプラズマ処理装置の装置稼働率を上げることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例に係るプラズマ処理装置の概略の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施例に係るプラズマ処理装置のウェハ載置用電極の構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施例に係るプラズマ処理装置のウェハ載置用電極の周辺部の詳細な構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施例に係るプラズマ処理装置のウェハ載置用電極の絶縁リングとリング電極の構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施例に係るプラズマ処理装置のウェハ載置用電極の周辺部におけるプラズマシースの状態を示すウェハ載置用電極の周辺部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、基板電極の周囲を取り囲むようにして設置したリング電極の制御性を向上させるために、リング電極を、誘電体の表面に薄膜で形成して基板電極からの距離をできるだけ大きく設定して基板電極とリング電極との間に発生する容量結合を小さくするようにした。その結果、基板電極とリング電極とに別々の電源からそれぞれ高周波電力を印加したときに、比較的距離が近い基板電極とリング電極との間に発生する容量結合による高周波電力の干渉の程度を小さくすることができ、リング電極による表面電位の制御性を向上させることを可能にした。
【0019】
これにより、基板電極の外周部近傍に形成されるシース領域がプラズマ処理の均一性に及ぼす影響を小さくし、被処理ウェハの外周部近傍まで均一にプラズマ処理ができるようにして、1枚のウェハから取得できる良品デバイスの数をより多くすることができるようにしたものである。
【0020】
また、本発明では、基板電極とリング電極との間の距離をできるだけ大きくして、2つの電極の間の容量結合を低減するために、リング電極を、基板電極を取り巻く絶縁性の材料で形成したリング状部材の表面に導電性の膜を溶射して形成したが、プラズマ処理中にこの導電性の溶射膜で異常放電が発生するのを防ぐ為に、この導電性の溶射膜の上に絶縁性材料の膜を溶射して形成し、この絶縁性材料の膜で導電性の溶射膜を覆った構造とした。
【0021】
また、このリング電極が絶縁リングの表面の試料台、ウェハと平行な面だけでなく、ウェハ外周部に設けられた絶縁性のリングとウェハに対して対向する斜めの部分まで延びていることを特徴とする。
【0022】
このような構造とすることにより、ウェハ外周部のシース領域の電界の歪を低減することが出来るようにして、被処理ウェハの外周部近傍までプラズマ処理の均一性を向上させて、1枚のウェハから製造できる良品デバイスの数をより多くすることができるようにしたものである。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。
【0024】
ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【実施例1】
【0025】
図1に、本実施例に係るプラズマ処理装置として、ECR(Eectron Cyclotron Resonance)条件を満たす磁場中にマイクロ波を供給して高密度のプラズマを発生させて被処理ウェハを処理するプラズマ処理装置であるプラズマエッチング装置100の例を示す。プラズマエッチング装置100は、プラズマが形成される処理室104を内部に備えた真空容器101、この真空容器101の上部を密閉する誘電体窓103を備え、誘電体窓103で密封された真空容器101の内部に処理室104が形成される。誘電体窓103は、石英などで形成されている。
【0026】
真空容器101の下部には排気口110が配置され、図示していない真空排気手段と接続している。一方、真空容器101の上部を密閉する誘電体窓103の下方には、処理室104の天井を構成する円板状のシャワープレート102が設けられている。誘電体窓103とシャワープレート102との間に、図示していないガス供給手段からエッチング処理用のガスを供給するガス供給部102aが配置されている。シャワープレート102には、ガス供給部102aから供給されたエッチング処理用のガスを処理室104に供給するための複数のガス導入穴102bが形成されている。シャワープレート102は、例えば石英などの誘電体で形成されている。
【0027】
また、真空容器101の外部には、真空容器101の内部に供給するマイクロ波電力を発生させるためのマイクロ波電源106と、このマイクロ波電源106と真空容器101の上部とを接続して、マイクロ波電源106で発生したマイクロ波を真空容器101まで搬送する搬送経路を形成する導波管105が取り付けられている。マイクロ波電源106で発生するマイクロ波としては、例えば周波数2.45GHzのマイクロ波を使用する。
【0028】
真空容器101の外部で真空容器101の上方、及び真空容器101の外周で誘電体窓103が設置された部分の周辺には、それぞれ磁場を形成する磁場発生コイル107が配置されている。磁場発生コイル107は、磁場発生コイル用電源107aに接続している。
【0029】
真空容器101の内部で、処理室104の下部には、試料台を形成するウェハ載置用電極(第1の電極)120が設けられている。ウェハ載置用電極120は、図示していない懸架手段により真空容器101の内部で支持されている。
【0030】
ウェハ載置用電極120の詳細を、
図2に示す。ウェハ載置用電極120は、導電性の材料で形成された電極基材108、誘電体材料で形成された絶縁プレート151、導電性の材料で形成された接地プレート152が積み重ねられた状態になっている。電極基材108の上面は、中央部分に対して周辺部分が1段低くなっており、中央部分の上面120aに対して、1段低い周辺部分には面120bが形成されている。
【0031】
電極基材108と絶縁プレート151の周囲及び電極基材108の面120bは、誘電体材料で形成された下部サセプタリング113、上部サセプタリング138、絶縁リング139で覆われている。上部サセプタリング138は、電極基材108の面120bに設置された絶縁リング139の上面および側面を覆っている。
【0032】
絶縁プレート151、下部サセプタリング113、上部サセプタリング138、絶縁リング139を形成する誘電体材料としては、セラミックス、又は石英などが用いられる。
【0033】
電極基材108の上面120aは誘電体膜140で被覆されており、誘電体膜140の表面が、処理対象である試料(半導体ウェハ)109を載置する載置面140aとなっている。載置面140aは、
図1に示すように、シャワープレート102及び誘電体窓103と対向している。
【0034】
ウェハ載置用電極120の上面120aに形成された誘電体膜140の内部には、
図3に示すように、複数の静電吸着用電極(導電体膜)111が形成されている。この静電吸着用電極111は、給電線1261により、真空容器101の外部に配置された高周波フィルタ125を介して、直流電源126と接続されている。給電線1261は、接地プレート152の部分では絶縁パイプ1262の内部を通り、電極基材108の部分では絶縁パイプ1263の内部を通ることで、接地プレート152及び電極基材108と絶縁されている。
【0035】
図3に示した構成では、静電吸着用電極111は、高周波フィルタ125を介して一つの直流電源126と接続された単極の構成になっているが、直流電源126を複数用いて複数の静電吸着用電極(導電体膜)111に異なる極性の電位を与える双極の構成にしても良い。
【0036】
ウェハ載置用電極120の電極基材108は、給電線1241により、整合器129を介して第1の高周波電源124と接続している。第1の高周波電源124の一端は、接地されている。給電線1241は、接地プレート152の部分では絶縁パイプ1242の内部を通ることで、接地プレート152と絶縁されている。
【0037】
また、電極基材108の内部には、電極基材108を冷却するために、図示していない冷媒供給手段から供給される冷媒を流すための冷媒流路153が、電極基材108の中心軸周りに螺旋状に形成されている。冷媒流路153に、図示していない冷媒供給手段から配管154を介して冷媒が供給、及び回収されることにより、冷媒が冷媒流路153の内部を循環する。
【0038】
ウェハ載置用電極120の上面120a(電極基材108の上面)の外径は、載置面140aに載置する試料(半導体ウェハ)109の外径寸法よりも少し小さめに形成されている。その結果、
図2及び
図3に示すように、試料(半導体ウェハ)109を載置面140aに載置した状態では、試料(半導体ウェハ)109の外周部分が少し載置面140aよりもはみ出すようになる。
【0039】
また、ウェハ載置用電極120の上面120aの周りの外周部の面120bは、上面120aよりも一段低く形成されている。この外周部の面120bには、
図2に示すように、上部サセプタリング138と絶縁リング139が載っている。また、ウェハ載置用電極120の側面から、その下側の絶縁プレート151の側面に渡って、下部サセプタリング113で覆われている。上部サセプタリング138と下部サセプタリング113とで、電極基材108の外周面と外周部の面120bとを覆っている。
【0040】
また、上部サセプタリング138と絶縁リング139とで囲まれた領域には、絶縁リング139が、ウェハ載置用電極120の外周部の面120b上に、ウェハ載置用電極120の側面を取り囲むように配置されている。絶縁リング139の上面と内側の面の一部には、リング電極170が形成されている。
【0041】
リング電極170の詳細を、
図4に示す。リング電極170は、絶縁リング139の上面及び基材電極108の側に面した内側の面の一部に形成された薄膜電極171と、この薄膜電極171の表面を覆う誘電体膜172の薄膜とで構成されている。薄膜電極171は、給電線1271により、
図2及び
図3に示すように、負荷インピーダンス可変ボックス130と整合器128を介して第2の高周波電源127と接続している。給電線1271は、接地プレート152の部分では絶縁パイプ1272の内部を通り、電極基材108の部分では絶縁パイプ1273の内部を通ることで、接地プレート152及び電極基材108と絶縁されている。
【0042】
マイクロ波電源106、磁場発生コイル用電源107a、第1の高周波電源124、直流電源126、第2の高周波電源127は、それぞれ制御部160に接続しており、制御部160に記憶されたプログラムに従って制御される。
【0043】
このような構成において、まず、ウェハ載置用電極120の上面120aに、図示していない試料供給手段を用いて、試料(半導体ウェハ)109を載置する。次に、真空容器101を密閉した状態で、制御部160で図示していない排気手段を動作させて排気口110から真空容器101の内部を真空排気する。
【0044】
真空排気することにより真空容器101の内部が所定に圧力に到達したら、制御部160で図示していないガス供給手段を動作させて、ガス供給部102aから誘電体窓103とシャワープレート102との間の空間にエッチング処理用のガスを所定の流量で供給する。誘電体窓103とシャワープレート102との間の空間に供給されたエッチング処理用のガスは、シャワープレート102に形成された複数のガス導入穴102bを通って、処理室104に流れる。
【0045】
次に、エッチング処理用のガスが供給されて処理室104の内部が所定の圧力に維持された状態で、制御部160で直流電源126を制御して、給電線1261を介して静電吸着用電極(導電体膜)111に直流の電圧を印加する。これにより静電吸着用電極(導電体膜)111を覆う誘電体膜140の表面(載置面140a)に静電気が発生し、試料(半導体ウェハ)109が誘電体膜140の表面(載置面140a)に静電吸着される。
【0046】
試料(半導体ウェハ)109が誘電体膜140の表面(載置面140a)に静電吸着された状態で、図示していないガス供給手段が制御部160により制御されて、ウェハ載置用電極120の表面に形成された誘電体膜140の表面(載置面140a)と試料(半導体ウェハ)109との間に、ウェハ載置用電極120の側から伝熱用のガス(例えばヘリウム(He)など)を供給する。
【0047】
また、制御部160で図示していない冷媒供給手段を制御して配管154から冷媒流路153に冷媒を供給し回収して冷媒流路153の内部に冷媒を循環させることにより、電極基材108が冷却される。
【0048】
この冷却された電極基材108の上に載置された試料(半導体ウェハ)109が誘電体膜140の表面に静電吸着され、エッチング処理用のガスが供給されて処理室104の内部が所定の圧力になった状態で、制御部160で磁場発生コイル用電源107aを制御して、処理室104の内部に所望の磁場を発生させる。更に、制御部160でマイクロ波電源106を制御してマイクロ波を発生させ、この発生させたマイクロ波を、導波管105を介して真空容器101の内部に供給する。
【0049】
ここで、磁場発生コイル用電源107aにより処理室104の内部に発生させた磁場は、マイクロ波電源106から供給されたマイクロ波に対してECR条件を満たすような強度に形成されている。これにより、処理室104の内部に供給されたエッチング処理用のガスが励起されて、エッチング処理用のガスの高密度なプラズマが生成される。
【0050】
一方、制御部160で第1の高周波電源124を制御して高周波電力を発生させ、整合器129を介して電極基材108に第1の高周波電力を印加することにより、プラズマ116に対して電極基材108にバイアス電位が発生する。制御部160で第1の高周波電源124を制御して電極基材108に発生するバイアス電位を調整することにより、比較的高い密度のプラズマ116から電極基材108の側に引き込まれるイオン化したエッチングガスなどの荷電粒子のエネルギーをコントロールすることができる。
【0051】
このエネルギーがコントロールされたエッチング処理用のガスによる荷電粒子が電極基材108の上に載置された試料(半導体ウェハ)109の表面に衝突する。ここで、試料(半導体ウェハ)109の表面は、エッチング処理用のガスに反応しない材料又は反応しにくい材料でマスクパターンが形成されており、試料(半導体ウェハ)109の表面のこのマスクパターンで覆われていない部分がエッチングされる。
【0052】
エッチング処理中は、処理室104の内部に導入されたエッチング処理用のガスやエッチング処理により発生した反応性生物の粒子が、図示していない真空排気手段により排気口110から外部に排気される。
【0053】
また、エッチング処理中、エッチング処理用のガスによる荷電粒子が表面に衝突した試料109は熱を発生する。試料109で発生した熱は、ウェハ載置用電極120の表面に形成された誘電体膜140と試料109との間に図示していないガス供給手段から供給された伝熱用のガスにより、試料109の裏面の側から、冷媒流路153の内部を流れる冷媒により冷却された電極基材108の側に伝達される。これにより、試料109の温度が所望の温度範囲内に調節される。この状態で、試料109の表面に対してエッチング処理が行われることにより、試料109に熱的なダメージを与えることなく試料109の表面に所望のパターンが形成される。
【0054】
この試料109の表面のエッチング処理は、プラズマ116から試料109の表面に入射するエッチング処理用のガスなどの荷電粒子の入射量及び入射方向が試料109の表面全体に亘って均一であれば、試料109の表面はほぼ均一に処理が行われる。
【0055】
しかし、実際には、ウェハ載置用電極120は、導電性の材料で形成された電極基材108がプラズマ116に曝されないようにするために、電極基材108の外周部分は、誘電体材料で形成された下部サセプタリング113、上部サセプタリング138、絶縁リング139で覆われており、電極基材108の中央部分と外周部分とでは、プラズマ116との間に形成されるシース領域117の形状や電界の分布に差異が生じる。
【0056】
このように、電極基材108の中央部分と外周部分とシース領域117の形状や電界の分布に差異が生じることにより、ウェハ載置用電極120に載置した試料109の上面には、上部サセプタリング138から比較的離れた中央部と上部サセプタリング138に比較的近い周辺部で、試料109とプラズマ116との間のシース領域117に発生する電界が一様ではなく、分布が生じてしまう。その結果、試料109の中心部付近と周辺部付近とでエッチング処理の条件(荷電粒子の入射量及び入射方向)が異なって均一なエッチング処理が行われず、試料109の面内で、エッチング処理に分布が生じてしまう。
【0057】
これに対して、本実施例においては、
図4に示したように、電極基材108の周囲に配置した絶縁リング139の表面の上面と内側の面の一部に薄膜電極171を形成し、これに第2の高周波電源127から整合器128と負荷インピーダンス可変ボックス130を介して高周波電力を印加することにより、試料109の表面の中央部と周辺部で発生する電界の分布の差異をできるだけ小さくするようにした。
【0058】
第2の高周波電源127は、電極基材108に高周波電力を印加する第1の高周波電源124とは異なる電源であり、薄膜電極171へは、電極基材108に印加する高周波電力とは独立した電力が印加される。
【0059】
ここで、特許文献2には、誘電体で形成されたサセプタリングで表面が覆われた導体リングに高周波電源から高周波電力を印加することにより、ウェハの外周部分または外周縁部に高周波を効率よく寄与させることが記載されている。
【0060】
しかし、導体リングと金属製の基材との間には、容量結合が発生する。この導体リングと基材との間の容量結合により発生する結合容量Cは、その間に介在する絶縁体の誘電率及び厚さによって変わるが、導体リングにある程度の厚みを与えて形成しているので、導体リングに高さ方向の位置が限定されている場合、導体リングの厚み分だけ介在する絶縁体の厚さを薄くしなければならない。従って、導体リングと基材との間の結合容量Cを小さくするには、絶縁体の厚みに起因する限界がある。
【0061】
その結果、特許文献2の構成では、導体リングと電極である基材とに別々の高周波電源から高周波電力を独立して印加した場合、導体リングに印加される比較的小さい高周波電力は、導体リングと基材との間の容量結合により電極である基材に印加される比較的大きい高周波電力の影響を受けてしまい、導体リングの周囲に形成する電界の制御性が低下して、所望の電界分布を得られなくなってしまう可能性がある。
【0062】
これに対して、本実施例では、
図4に示すように、特許文献2に記載されている導体リングに相当する機能を、誘電体で形成された絶縁リング139の表面に形成したリング電極170で実現させるようにした。即ち、本実施例では、絶縁リング139の表面に、リング電極170として薄膜電極171を形成してその表面を誘電体膜172で覆う構成としたことにより、特許文献2に記載された構成に対して、特許文献2の導体リングの厚さに相当する分だけ、本実施例では電極基材108の外周部の面120bとの間隔を大きく取れるような構成にした。
【0063】
これにより、本実施例における薄膜電極171と電極基材108の外周部の面120bとの間の結合容量Cを、特許文献2に記載された構成における導体リングと基材の本実施例における面120bに相当する部分との間の結合容量よりも小さくすることができる。
【0064】
その結果、本実施例においては、薄膜電極171と電極基材108とに、別々の高周波電源から高周波電力を独立して印加した場合、薄膜電極171に印加される比較的小さい高周波電力において、薄膜電極171と電極基材108との間の容量結合による電極基材108に印加される比較的大きい高周波電力の影響を小さくすることができるので、薄膜電極171の周囲に形成する電界を安定して制御することが可能になる。
【0065】
また、薄膜電極171の表面を誘電体膜172で覆うことにより、処理室104の内部にプラズマを発生させ、薄膜電極171に第1の高周波電源127から第2の高周波電力を印加したときに、薄膜電極171で異常放電が発生するのを防止することができ、試料109の周辺部におけるシース領域の形状やシース領域の電界の分布に乱れの発生を防止できる。
【0066】
薄膜電極171は、絶縁リング139の表面に、タングステン(W)を溶射してタングステンの薄膜を形成する。また、誘電体膜172は、絶縁リング139の表面のタングステンの薄膜が溶射された部分を覆うようにしてアルミナを溶射してアルミナの薄膜により形成する。
【0067】
また、絶縁リング139の上面とこの上面に接続する内側の側面が交わる部分173を、
図4に示すように角部に丸みをつけたR形状にした。薄膜電極171を、この角部に丸みをつけたR形状にした部分を含んで絶縁リング139の上面とこの上面に接続する内側の側面に形成したことにより、薄膜電極171に高周波電力を印加したときに、角部に丸みをつけたR形状にした部分に電界が集中するのを防ぐことができる。このように電界の集中を防いだことにより、試料109の周辺部におけるシース領域の形状やシース領域の電界の分布に影響を与えない、又は影響を少なくすることができる。
【0068】
このようにして形成したリング電極170の薄膜電極171に、制御部160で第2の高周波電源127を制御して、負荷インピーダンス可変ボックス130と整合器128を介して給電線1271により第2の高周波電力を印加する。同時に、第1の高周波電源124から整合器129を介して給電線1241により電極基材108に第1の高周波電力を印加する。
【0069】
ここで、薄膜電極171と電極基材108の外周部の面120bとの間の容量結合により発生する結合容量Cは、電極基材108の外周部の面120bに対向する薄膜電極171の面積に比例し、電極基材108の外周部の面120bと薄膜電極171との間隔に反比例する。
【0070】
図4に示したリング電極170の構成において、絶縁リング139の左側側面1391の上部にも薄膜電極171が形成されているが、この部分において薄膜電極171が電極基材108の側面と対向する部分の面積は、電極基材108の外周部の面120bと対向する部分の面積と比べて十分に小さいので、薄膜電極171と電極基材108との間に形成される容量結合は、薄膜電極171と電極基材108の外周部の面120bとの間の容量結合による結合容量Cで支配されると見做すことができる。
【0071】
このような構成にして制御部160で第2の高周波電源127を制御することにより、
図5に示すように、ウェハ載置用電極120の外周部近傍において、試料109の周辺部から上部サセプタリング138に亘る部分のプラズマ116領域と試料109との間に形成されるシース領域117を、第1の高周波電力の影響による形状の時間的変化を少なくして、安定して形成することができる。
【0072】
また、薄膜電極171は、絶縁リング139の角部が丸められた部分を含めて絶縁リング139の上面と内側の面に形成されているので、電界の集中を発生することがなく、ウェハ載置用電極120に載置された試料109の外周部簿電界のひずみを低減することができる。その結果、試料109の上面に形成されるプラズマ116のシース領域117の電界分布を、試料109の中心部分から周辺部分にかけてほぼ均一にすることができる。
【0073】
これにより、プラズマ116から試料109の中心部分から周辺部分にかけて入射する荷電粒子の入射方向をほぼ同じ方向にすることができ、試料109上でエッチングされて形成されるパターンの形状の、試料109中心部付近と周辺部付近とでのばらつきを抑えることができる。
【0074】
また、電界の集中をなくしたことにより、上部サセプタリング138の局部的な消耗が発生しなくなり、上部サセプタリング138の寿命を延ばすことができる用になった。その結果、上部サセプタリング138の交換の頻度を減らすことができ、プラズマエッチング装置100の装置稼働率を上げることができるようになった。
【0075】
上記した実施例においては、リング電極170を、誘電体で形成された絶縁リング139の表面に、タングステン(W)を溶射して導体薄膜を形成し、その上に、誘電体膜172をアルミナを溶射して形成する構成について説明したが、タングステン(W)を溶射して形成した導体薄膜に替えて、絶縁リング139の表面に沿って成形した薄い金属の板を用い、その表面にアルミナを溶射したものを用いても良い。
【0076】
本実施例によれば、ウェハ外周部まで均一にプラズマ処理を実施できるので、ウェハを面内で均一に処理することができるようになり、半導体素子の歩留まり向上を図ることができる。
【0077】
また、ウェハ載置用電極120の電極基材108の外周部に配置されてプラズマに直接曝される上部サセプタリング138において、電界の集中を防止できるので、上部サセプタリング138の寿命を延ばすことが出来る。
【0078】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、公知の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
100 プラズマエッチング装置
101 真空容器
102 シャワープレート
102a ガス供給部
103 誘電体窓
104 処理室
106 マイクロ波電源
107 磁場発生コイル
107a 磁場発生コイル用電源
108 電極基材
109 試料
110 排気口
111 静電吸着用電極
113 下部サセプタリング
120 ウェハ載置用電極
124 第1の高周波電源
127 第2の高周波電源
138 上部サセプタリング
139 絶縁リング
140 誘電体膜
160 制御部
170 リング電極
171 薄膜電極
172 誘電体膜