(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-12
(45)【発行日】2022-09-21
(54)【発明の名称】全固体二次電池用負極層、それを含む全固体二次電池、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20220913BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220913BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220913BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220913BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20220913BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20220913BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/66 A
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/0585
H01M4/1395
(21)【出願番号】P 2020186411
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0143001
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】李 ミンソク
(72)【発明者】
【氏名】柳 永 均
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-100088(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109841817(CN,A)
【文献】特開2018-206469(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117547(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化物系固体電解質を含む全固体二次電池用負極層であり、
前記全固体二次電池用負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、
前記第1負極活物質層は、リチウム金属と前記リチウム金属の表面上をコーティングしている
LiFからなるSEI膜とのリチウム金属複合体を含
む、全固体二次電池用負極層。
【請求項2】
前記リチウム金属複合体において、
前記リチウム金属の含量は、
前記リチウム金属複合体100重量部を基準にし、70ないし99重量部である、請求項1に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項3】
前記負極集電体と前記第1負極活物質層との間に、金属薄膜または準金属薄膜がさらに含まれる、請求項1又は2に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項4】
前記金属薄膜または前記準金属薄膜は、金(Au)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、シリコン(Si)、スズ(Sn)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、またはこれらの組み合わせを含み、
前記金属薄膜または前記準金属薄膜の厚みは、1ないし800nmである、請求項3に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項5】
前記全固体二次電池用負極層は、第2負極活物質層をさらに含み、
前記第2負極活物質層は、リチウムと合金を形成することができる金属、準金属元素、またはこれらの組み合わせを含み、
前記第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である、請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の全固体二次電池用負極層。
【請求項6】
正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された硫化物系固体電解質を含む固体電解質層と、を含む全固体二次電池であり、
前記負極層は、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の負極層である、全固体二次電池。
【請求項7】
前記負極層は、
前記負極集電体と
前記第1負極活物質層とを含み、
前記第1負極活物質層上部に、第2負極活物質層が配置される、請求項6に記載の全固体二次電池。
【請求項8】
前記負極層は、
前記負極集電体と
前記第1負極活物質層とを含み、
前記第1負極活物質層と、
前記硫化物系固体電解質を含む固体電解質層との間にカーボン層がさらに含まれる、請求項6に記載の全固体二次電池。
【請求項9】
前記硫化物系固体電解質は、Li
2S-P
2S
5、Li
2S-P
2S
5-LiX(Xは、ハロゲン元素である)、Li
2S-P
2S
5-Li
2O、Li
2S-P
2S
5-Li
2O-LiI、Li
2S-SiS
2、Li
2S-SiS
2-LiI、Li
2S-SiS
2-LiBr、Li
2S-SiS
2-LiCl、Li
2S-SiS
2-B
2S
3-LiI、Li
2S-SiS
2-P
2S
5-LiI、Li
2S-B
2S
3、Li
2S-P
2S
5-Z
mS
n(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち一つである)、Li
2S-GeS
2、Li
2S-SiS
2-Li
3PO
4、Li
2S-SiS
2-Li
pMO
q(p、qは、正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち一つである)、Li
7-xPS
6-xCl
x(0≦x≦2)、Li
7-xPS
6-xBr
x(0≦x≦2)及びLi
7-xPS
6-xI
x(0≦x≦2)からなる群から選択された1以上である、請求項6ないし8のうちいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項10】
前記硫化物系固体電解質が、Li
6PS
5Cl、Li
6PS
5Br及びLi
6PS
5Iからなる群から選択された1以上を含むアルジロダイト型の固体電解質である、請求項6ないし9のうちいずれか1項に記載の全固体二次電池。
【請求項11】
前記アルジロダイト型の固体電解質の密度が1.5ないし2.0g/ccである、請求項10に記載の全固体二次電池。
【請求項12】
負極集電体と第1負極活物質層とを含む負極層を提供する段階と、
正極層を提供する段階と、
前記負極層と前記正極層との間に硫化物系固体電解質を含む固体電解質層を提供し、積層体を準備する段階と、
前記積層体を加圧する段階と、を含み、
前記第1負極活物質層は、リチウム金属と前記リチウム金属の表面上をコーティングしている
LiFからなるSEI膜とのリチウム金属複合体を含み、
前記負極層を
提供する段階は、負極集電体上にリチウムをメッキする段階と、メッキされたリチウム膜を加圧する段階と、を含み、負極集電体
と、リチウム金属複合体を含む第1負極活物質層を含む負極層
とを製造する
段階である、全固体二次電池の製造方法。
【請求項13】
前記負極集電体上にリチウムをメッキする段階を実施する以前、
負極集電体上に、リチウム核化用金属コーティング膜を形成する段階を実施して、前記金属コーティング膜上部にリチウムをメッキして
、負極集電体
と、リチウム核化用金属コーティング膜
と、リチウム金属複合体を含む第1負極活物質層
とを含む負極層を製造する、請求項12に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項14】
前記リチウムをメッキする段階が、リチウム塩と有機溶媒とを含む液体電解質と、リチウムプレートとを利用して実施する、請求項12又は13に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項15】
前記有機溶媒は、グライム系溶媒と、フッ素化されたエーテル系溶媒とを含む混合溶媒であり、
前記フッ素化されたエーテル系溶媒は、混合溶媒の総体積を基準にし、10ないし95体積%である、請求項14に記載の全固体二次電池の製造方法。
【請求項16】
前記グライム系溶媒は、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、ジエチルテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)からなる群から選択された1以上であり、
前記フッ素化されたエーテル系溶媒は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、またはその混合物である、請求項15に記載の全固体二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池用負極層、それを含む全固体二次電池、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリチウム二次電池は、使用される液体電解質が空気中の水分に触れると発火しやすく、安定性問題が常に提起されていた。そのような安定性問題は、電気自動車の登場により、さらに深刻な問題になっている。そこで、最近、安全性向上を目的に、無機材料を含む固体電解質を利用した全固体二次電池(all-solid-state secondary battery)の研究が活発になされている。該全固体二次電池は、安定性、高エネルギー密度、高出力、長寿命、製造工程の単純化、並びに電池の大型化・コンパクト化及び低価格化などの観点において、次世代二次電池として注目されている。
【0003】
該全固体二次電池は、正極層、固体電解質層及び負極層によって構成され、そのうち、固体電解質層は、高イオン伝導度及び低電子伝導度が要求される。該全固体二次電池の固体電解質層には、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などがある。そのうち、硫化物系固体電解質は、高温及び高圧条件において、加圧によって活性化される。ところで、加圧時、温度が低いか、あるいは圧力が低ければ、セル抵抗が高くなり、電池性能が低下することがある。そのような高温・高圧工程において、負極活物質としてリチウム金属を適用するのには限界がある。リチウム金属は、温度と圧力が高ければ、ゲルのように挙動する。それにより、初期の電極板形状が変形され、それにより、セル作製後、または充電中、短絡が発生する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面は、新規の全固体二次電池用負極層を提供することである。
本発明の他の側面は、前述の負極層を含み、性能が改善された全固体二次電池、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一側面により、硫化物系固体電解質を含む全固体二次電池用負極層であり、前記負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、前記第1負極活物質層は、リチウム金属及び無機負極活物質を含むリチウム金属複合体(lithium metal composite)を含む全固体二次電池用負極層が提供される。
【0006】
他の側面により、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された硫化物系固体電解質を含む固体電解質層と、を含む全固体二次電池であり、前記負極層は、前述の負極層である全固体二次電池が提供される。
【0007】
さらに他の側面により、負極集電体と第1負極活物質層とを含む負極層を提供する段階と、正極層を提供する段階と、前記負極層と前記正極層の間に、硫化物系固体電解質を含む固体電解質層を提供し、積層体を準備する段階と、前記積層体を加圧(press)する段階と、を含み、該第1負極活物質層は、リチウム金属及び無機負極活物質を含むリチウム金属複合体を含む全固体二次電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
一具現例による全固体二次電池は、負極集電体上に、リチウム金属複合体を含む負極活物質層を形成し、負極層として、リチウム金属を適用するとき、加圧中で発生する液化現象を抑制することができる。また、そのような負極層を利用すれば、初期充電中に発生する負極層のリチウム損失と、電池動作中、界面副反応によるリチウム損失を補充することできるリチウムを提供し、高容量、高電圧、高エネルギー密度、及び改善された寿命特性を有する全固体二次電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】負極集電体上にリチウムをメッキする過程について説明するための図面である。
【
図1B】
図1Aの結果物を加圧した後のリチウム金属複合体膜が形成された過程について説明する図面である。
【
図2】製造例1によってメッキされたリチウム表面形状を示した電子走査顕微鏡写真である。
【
図3】加圧後、リチウム金属複合体膜の表面と断面とを示した透過電子顕微鏡写真である。
【
図4】製造例1によって得られたリチウム金属複合体膜の断面を拡大したイメージである。
【
図5】製造例1及び比較製造例1によって得られた負極層に対するXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)分析結果を示した図面である。
【
図6】製造例1及び比較製造例1によって得られた負極層に対するヤング率分析結果を示した図面である。
【
図7】一具現例による全固体二次電池の構造を示した図面である。
【
図8】他の一具現例による全固体二次電池の構造を示した図面である。
【
図9】実施例8及び比較例5によって作製された全固体二次電池において、寿命特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照しながら、以下において、例示的な全固体二次電池用負極層、それを含む全固体二次電池、及びその製造方法について、さらに詳細に説明する。
【0011】
硫化物系固体電解質を含む全固体二次電池用負極層であり、この負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、この第1負極活物質層は、リチウム金属及び無機負極活物質を含むリチウム金属複合体(LMC:lithium metal composite)を含む全固体二次電池用負極層が提供される。
【0012】
この無機負極活物質は、フッ化リチウム、酸化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、またはこれらの組み合わせである。
【0013】
このリチウム金属複合体(LMC)において、リチウム金属含量は、リチウム金属複合体100重量部を基準にし、70ないし99重量部、例えば、80ないし99重量部、例えば、95ないし98重量部である。該リチウム金属の含量がこの範囲であるとき、リチウム金属複合体の弾性及び硬度にすぐれる。
【0014】
硫化物系固体電解質を含む全固体二次電池において、負極活物質として、リチウム金属を使用すれば、リチウム金属の柔らかい特性により、負極層/電解質層/正極積層体に対する高温加圧適用時、リチウムの液化現象により、極板が変形することがある。そして、リチウムの一部が硫化物系固体電解質内部に侵透し、充電時の短絡や、内部クラック及び短絡による電池の寿命短縮が起きる可能性がある。そのような問題点を解決するために、負極活物質層として、負極活物質として、Liフリー(free)高分子あるいはカーボン層を導入する方法が提案された。ところで、その方法によれば、電池製造工程中に短絡は、発生しないが、電池内Li含量限界のために、全固体二次電池の長寿命を期待することができない。
【0015】
それにより、本発明者らは、前述の問題点を解決するために、正極層外リチウム貯蔵庫(Li reservoir)を、負極層に、高弾性と高硬度とを有するリチウム金属複合体形態に導入し、セル寿命を改善させた全固体二次電池に係る発明を完成した。
【0016】
一具現例による全固体二次電池用負極層は、リチウム金属複合体を含んでおり、電池製造のための高加圧過程において、液化が起こらず、短絡発生が起こらないことが期待できる。そして、一具現例による負極層は、硫化物系固体電解質に対し、電気化学的に安定し、負極層にリチウム貯蔵庫を配置し、初充電の非可逆反応のリチウム損失が補充され、放電容量を上げることが可能である。また、充電/放電ごとの副反応によるリチウムの損失が補充されれば、電池寿命をさらに改善させることができる。
【0017】
該第1負極活物質層の厚みは、1~20μm、例えば、1~10μm、例えば、2~8μm、例えば、4~6μmである。
【0018】
負極集電体と第1負極活物質層との間に、金属薄膜または準金属薄膜がさらに含まれもする。金属薄膜または準金属薄膜は、金(Au)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、シリコン(Si)、スズ(Sn)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、またはこれらの組み合わせを含み、金属薄膜または準金属薄膜の厚みは、1ないし800nm、例えば、10ないし30nmである。
【0019】
第1負極活物質層は、多孔性構造を有することができる。該第1負極活物質層の断面形状において、気孔の長軸長は、50nmないし5μm、例えば、100nmないし3μm、例えば、100nmないし2μmである。そして、該気孔の短軸長は、10nmないし1μm、例えば、50nmないし500nm、例えば、50nmないし250nmである。該第1負極活物質層の断面において、単位面積当たり気孔面積は、50%未満、例えば、30%未満、例えば、5ないし15%である。単位面積当たり気孔面積が、この範囲であるとき、高電圧、高容量であり、寿命特性にすぐれる全固体二次電池を製造することができる。
【0020】
一具現例による負極層は、第2負極活物質層をさらに含んでもよい。該第2負極活物質層は、第1負極活物質層上部にも形成される。
【0021】
該第2負極活物質層は、リチウムと合金を形成することができる金属、準金属元素、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。該第2負極活物質層は、例えば、リチウム、またはリチウム合金を含む金属層でもある。一具現例によれば、該第2負極活物質層の表面は、フッ化リチウム(LiF)を含んでもよい。
【0022】
該第2負極活物質層は、全固体二次電池の初期状態または放電後、リチウム金属またはリチウム合金を含まないリチウムフリー領域でもある。充電前、負極層は、負極集電体、リチウム核化用コーティング層(金属または準金属膜)、及び第1負極活物質層を含む構造を有することができる。そのような負極層を充電した後、第1負極活物質層上部に、第2負極活物質層が形成されうる。該第2負極活物質層は、非多孔性でもある。
【0023】
第1負極活物質層と硫化物系固体電解質含有固体電解質層との間にカーボン層がさらに含まれてもよい。該カーボン層は、例えば、カーボンブラック、炭素ファイバ、グラファイト、炭素ナノチューブ、グラフェン、またはこれらの組み合わせを利用して形成する。そのようにカーボン層を形成すれば、第1負極活物質層と固体電解質層との抵抗を低くし、初期均一核形成の一助となり、リチウム金属複合体と炭素との間でリチウムが成長されるので、リチウムデンドライトを抑制することができる。従って、カーボン層がさらに形成された負極層を具備した全固体二次電池は、カーボン層が形成されていない負極層を具備した全固体二次電池と比較し、寿命特性がさらに改善されうる。
【0024】
図1A及び
図1Bを参照し、一具現例による全固体二次電池用負極層の製造方法について説明する。
負極集電体21上に形成された負極活物質であるリチウム金属複合体(LMC)膜28を形成する。
図1Aに図示されているように、負極集電体21上に、リチウム核化用金属コーティング膜25をまず形成する。リチウム核化用金属コーティング膜25は、省略可能である。
リチウム核化用金属コーティング膜25は、メッキ時、Li核化を均一なものにし、リチウムメッキの促進及び均一なメッキ層形成の一助となる。リチウム核化用金属コーティング膜25は、例えば、亜鉛(Zn)、金(Au)、銀(Ag)のような金属を利用し、厚みを、約1ないし50nm、例えば、5ないし20nmに形成し、サーマル蒸着機(thermal evaporator)などを利用して形成することができる。
【0025】
次に、このリチウム核化用金属コーティング膜25上部に、リチウムをメッキする。リチウムメッキ時、電解液、及びリチウムソースとしてのリチウムプレートを利用する。リチウムメッキ時、電気メッキ、無電解メッキまたはガルバニックメッキを利用することができ、例えば、ガルバニックメッキを有することができる。該ガルバニックメッキは、2つの電極と、リチウム塩と有機溶媒を含む電解液とが入れられたバスを利用し、リチウムソースとしてリチウムプレートを利用し、2端子にガルバニック電流を供給すれば、負極集電体にリチウムがリチウム多孔体状にもメッキされる。
【0026】
リチウムメッキ時、リチウム核化用金属コーティング膜にメッキされたリチウムの形状は、メッキ条件によって異なる。例えば、紐状(string)、苔状(moss)、枝状(branch)、球状(sphere)のような形状を有することができる。
【0027】
図1Aのように、Li粒子は、集電体21に垂直に成長する傾向を有する。
図1Bのように、メッキ時、分離膜を、集電体とリチウムプレートとの間に配置し、その分離膜に一定加圧が印加されれば、Li 26は、水平に成長する。そのとき、Li 26それぞれの表面上に、SEI(solid electrolyte interface)膜27が形成される。SEI膜27は、電解液が分解されて形成されたものであり、電解液組成により、SEI膜27の組成と厚みとが異なる。
【0028】
SEI膜27の組成及び厚みは、メッキ時に使用された電解液の組成によっても異なる。SEI膜27は、例えば、主成分として、LiFを含んでもよい。メッキ時、電解液のリチウム塩として、LiFSIを利用すれば、SEI膜27は、主成分として、フッ化リチウム(LiF)を含んでもよい。フッ化リチウム(LiF)は、メッキ中、Li表面に自体形成されるSEI膜であり、緻密であり、ヤング率(Young’s modulus)が約65GPaであり、硬度が1.3GPaであり、高弾性及び硬度を有し、イオン伝導性を有する。従って、Li 26が高弾性と硬度とを有したLiFからなるSEI膜27で取り囲まれれば、Li/Li+対比で、0~6.5Vの広い電気化学的安定性を有することができる。
【0029】
前述のように、リチウム金属複合体膜は、純粋Li金属26が、LiFを含むSEI膜27によって取り囲まれており、高圧に対する安定性にすぐれる。SEI膜27の厚みは、例えば、100nm未満、例えば、1ないし80nm、例えば、1ないし60nm、例えば、1ないし50nm、例えば、1ないし30nm、例えば、1ないし20nmである。
【0030】
次に、この過程により、SEI膜27にコーティングされたリチウム多孔体に対する加圧を実施する。該加圧は、例えば、ロールプレスを実施する。加圧時の圧力は、例えば、500MPa以上、例えば、加圧時の圧力は、500MPa以上、例えば、550MPa以上、例えば、500MPaないし700MPa、例えば、550ないし600MPaでもある。そのような加圧過程を経れば、Li多孔体は、全体的に厚みが薄くなり、すべすべしならが、該Li多孔体は、SEI膜27内によって囲まれているので、加圧中、純粋Liが抜け出ない。該Li多孔体は、加圧後、例えば、初期厚みの約20%まで薄くなりうる。
【0031】
この過程によって得られたリチウム金属複合体(LMC)膜28は、500MPa以上の高圧で作製されるために、400~550MPaの加圧が要求される硫化物系全固体二次電池の負極活物質として非常に適する。このリチウム金属複合体膜は、加圧前の厚みは、5~50μmであり、加圧後、その厚みは、1~10μm、例えば、4~6μmである。そして、リチウム金属複合体膜の表面粗度(Rmax)は、150ないし300nmである。リチウム金属複合体膜の表面粗度がこの範囲であるとき、セル加圧中、固体電解質層内クラック発生及び短絡現象があらかじめ予防されうる。
【0032】
リチウム金属複合体膜は、SEI産物を含んでもよい。例えば、該リチウム金属複合体膜は、LiF、Li2O、Li2CO3、LiOH、またはこれらの組み合わせを含んでもよく、LiFが約80重量%以上を占めることができる。該リチウム金属複合体膜内LiFの含量がこの範囲であるとき、酸素を含むSEI産物が多くなる場合、発生しうる固体電解質層の酸化、それによる電子伝導度の上昇、及びイオン伝導度の低下により、固体電解質層の性能が低下することを防止することができる。
【0033】
リチウムメッキ時に使用された電解液は、リチウム塩と有機溶媒とを含んでもよい。
リチウム塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiC2F5SO3、Li(FSO2)2N(LiFSI)、LiC4F9SO3、LiN(SO2CF2CF3)2、及び下記化学式に表示される化合物からなる群から選択された1以上を含んでもよい。
【0034】
【0035】
【0036】
この電解質において、リチウム塩の濃度は、0.01ないし5.0M、例えば、0.05ないし5.0M、例えば、0.1ないし5.0M、例えば、0.1ないし2.0Mである。該リチウム塩の濃度がこの範囲であるとき、薄膜化、均一性及び高圧適用が可能なリチウム金属複合体層を製造することができる。
【0037】
有機溶媒としては、グライム系溶媒と、フッ素化されたエーテル系溶媒との混合溶媒を使用することができる。該グライム系溶媒は、ジメチルエーテル(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)からなる群から選択された少なくとも1以上であってよい。
【0038】
このフッ素化されたエーテル系溶媒は、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(商品名:HFE-458)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルエーテル(商品名:HFE-6512)、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(商品名:HFE-347)、またはその混合物を使用することができる。
【0039】
このフッ素化されたエーテル系溶媒の含量は、10ないし95体積%、例えば、20ないし90体積%、例えば、30ないし85体積%、例えば、50ないし80体積%である。
【0040】
このグライム系溶媒は、LiFSIのようなリチウム塩に対する溶解性があり、フッ素化されたエーテル系溶媒は、リチウム塩に対する溶解度特性がない。フッ素化されたエーテル系溶媒は、希釈用であり、局所的に高濃度リチウム塩電解液を作ることができる。従って、そのような混合溶媒を利用すれば、局所的に、高濃度において、Liメッキが均一に望ましく形成される。
【0041】
前述の混合溶媒を利用すれば、リチウム膜が、均一に薄膜形態で得られるだけではなく、高圧力に加圧することが可能である。
【0042】
このメッキされたリチウム膜を加圧する段階は、メッキされたLi膜を、5℃ないし90℃の温度で、500MPa以上の圧力でロールプレスする。
この過程により、負極集電体上部に形成されたLiメッキ膜は、多孔性であり、リチウム電着密度は、0.2g/cm3以下、例えば、0.05ないし0.15g/cm3である。
【0043】
図1Bのように、加圧により、メッキされたリチウム膜の多孔性が消え、平坦化され、SEI(LiF)とLiとが圧着され、Li間において、電気的連結が改善され、負極集電体21上部に、リチウム核化用金属コーティング膜25及びリチウム金属複合体膜28が順次に積層された構造を有する負極層20が形成される。
この過程により、負極集電体21及びリチウム金属複合体を含むリチウム金属複合体膜28(第1負極活物質層)を含む負極層20を製造する。負極集電体21と第1負極活物質層との間には、リチウム核化用コーティング層25がさらに形成されうる。
【0044】
一具現例によるリチウム金属複合体膜は、通常のLi金属とは、機械的物性が非常に異なる。このリチウム金属複合体膜のヤング率は、10ないし25GPa、例えば、12ないし22GPaである。リチウム膜のヤング率は、4ないし7GPaであり、一具現例によるリチウム金属複合体膜は、リチウム膜と比較し、ヤング率に非常にすぐれ、機械的物性が非常に優秀である。
【0045】
ヤング率は、通称「引っ張り弾性率(tensile modulus)」と同一意味を有する。引っ張り弾性率は、dynamic mechanical analysis system(DMA800、TA Instruments社)を利用して測定し、保護膜試片は、ASTM standard D412(Type V specimens)を介して準備する。そして、該保護膜の引っ張り弾性率は、25℃、約30%の相対湿度で、分当たり5mmの速度で、応力に対する変形変化を測定する。そのように得られた応力ひずみ曲線(stress-strain curve)の傾きから、引っ張り弾性率を評価する。
【0046】
一具現例による保護膜のヤング率は、前述のヤング率を測定する方法及び使用装置を、当業者が、電池の保護膜を分離し、すなわち、分離された保護膜(isolated protective layer)について容易に測定することができる。
【0047】
他の側面により、正極層と、一具現例による負極層と、正極層と負極層との間に配置された硫化物系固体電解質を含む固体電解質層と、を含む全固体二次電池が提供される。
以下において、例示的な具現例による全固体二次電池について、さらに詳細に説明する。
【0048】
一具現例による全固体二次電池は、正極層と、負極層と、正極層と負極層との間に配置された固体電解質層と、を含み、この正極層が、正極集電体、及び正極集電体上に配置された正極活物質層を含み、この負極層が、負極集電体、及び負極集電体上に配置され、リチウム金属複合体を含む第1負極活物質層を含む。
【0049】
[全固体二次電池]
図7を参照すれば、全固体二次電池1は、正極層10、負極層20、及び正極層10と負極層20との間に配置された固体電解質層30を含み、正極層10が、正極集電体11、及び正極集電体11上に配置された正極活物質層12を含み、負極層20が、負極集電体21、及び負極集電体21上に配置され、リチウム金属複合体を含む第1負極活物質層22を含む。
【0050】
[正極層:正極集電体]
正極集電体11は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)、またはそれらの合金からなる板状体(plate)またはホイル(foil)などを使用する。正極集電体11は、省略可能である。
【0051】
[正極層:正極活物質]
正極活物質層12は、例えば、正極活物質及び固体電解質を含む。正極層10に含まれた固体電解質は、固体電解質層30に含まれる固体電解質と類似していても、異なっていてもよい。該固体電解質に係わる詳細な内容は、固体電解質層30部分を参照する。
【0052】
該正極活物質は、リチウムイオンを、可逆的に吸蔵したり(absorb)放出(desorb)したりすることができる正極活物質である。該正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケル酸化物(lithium nickel oxide)、リチウムニッケルコバルト酸化物(lithium nickel cobalt oxide)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、リチウムマンガン酸化物(lithium manganate)、リチウムリン酸鉄酸化物(lithium iron phosphate)のようなリチウム遷移金属酸化物;硫化ニッケル;硫化銅;硫化リチウム;酸化鉄;または酸化バナジウム(vanadium oxide)でもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、正極活物質として使用するものであるならば、いずれも可能である。該正極活物質は、それぞれ単独であるか、あるいは2種以上の混合物である。
【0053】
該リチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiaA1-bB’bD2(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0≦b≦0.5である)、LiaE1-bB’bO2-cDc(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である)、LiE2-bB’bO4-cDc(前記化学式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である)、LiaNi1-b-cCobB’cDα(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である)、LiaNi1-b-cCobB’cO2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、LiaNi1-b-cCobB’cO2-αF’2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、LiaNi1-b-cMnbB’cDα(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である)、LiaNi1-b-cMnbB’cO2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、LiaNi1-b-cMnbB’cO2-αF’2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、LiaNibEcGdO2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である)、LiaNibCocMndGeO2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である)、LiaNiGbO2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である)、LiaCoGbO2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である)、LiaMnGbO2(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である)、LiaMn2GbO4(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である)、QO2、QS2、LiQS2、V2O5、LiV2O5、LiI’O2、LiNiVO4、Li3-fJ2(PO4)3(0≦f≦2)、Li3-fFe2(PO4)3(0≦f≦2)、LiFePO4の化学式のうちいずれか一つによって表現される化合物である。そのような化合物において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。そのような化合物表面に、コーティング層が付加された化合物の使用も可能であり、前述の化合物と、コーティング層が付加された化合物との混合物の使用も可能である。そのような化合物の表面に付加されるコーティング層は、例えば、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含む。そのようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。該コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの混合物である。該コーティング層の形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内において選択される。該コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング法、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当該分野の当業者に周知されている内容であるので、詳細な説明は、省略する。
【0054】
該正極活物質は、例えば、前述のリチウム遷移金属酸化物において、層状岩塩型(layered rock salt type)構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含む。「層状岩塩型構造」は、例えば、立方晶岩塩型(cubic rock salt type)構造の<111>方向に酸素原子層と金属原子層とが相互に規則的に配列され、それにより、それぞれの原子層が二次元平面を形成している構造である。「立方晶岩塩型構造」は、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型(NaCl type)構造を示し、具体的には、陽イオン及び陰イオンがそれぞれ形成する面心立方格子(fcc;face centered cubic lattice)が、互いに単位格子(unit lattice)のリッジ(ridge)の1/2ほどずれて配置された構造を示す。そのような層状岩塩型構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiNixCoyAlzO2(NCA)またはLiNixCoyMnzO2(NCM)(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)のような三元系リチウム遷移金属酸化物である。該正極活物質が層状岩塩型構造を有する三元系リチウム遷移金属酸化物を含む場合、全固体二次電池1のエネルギー密度及び熱安定性がさらに向上する。
【0055】
該正極活物質は、前述のように、被覆層によって覆われてもいる。該被覆層は、全固体二次電池の正極活物質の被覆層として公知されたものであるならば、いずれでもよい。該被覆層は、例えば、Li2O-ZrO2(LZO)などである。
【0056】
該正極活物質が、例えば、NCAまたはNCMのような三元系リチウム遷移金属酸化物としてニッケル(Ni)を含む場合、全固体二次電池1の容量密度を上昇させ、充電状態において、正極活物質の金属溶出低減が可能である。結果として、全固体二次電池1の充電状態でのサイクル特性が向上する。
【0057】
該正極活物質の形状は、例えば、真球形、楕円球形のような粒子状である。該正極活物質の粒径は、特別に制限されるものではなく、従来の全固体二次電池の正極活物質に適用可能な範囲である。正極層10の正極活物質の含量も、特別に制限されるものではなく、従来の全固体二次電池の正極に適用可能な範囲である。
【0058】
[正極層:固体電解質]
正極活物質層12は、例えば、固体電解質を含んでもよい。正極層10が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質と同一であっても、異なっていてもよい。該固体電解質に係わる詳細な内容は、固体電解質層30部分を参照する。
【0059】
正極活物質層12が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質に比べ、D50平均粒径が小さいのである。例えば、正極活物質層12が含む固体電解質のD50平均粒径は、固体電解質層30が含む固体電解質のD50平均粒径の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または20%以下でもある。
【0060】
[正極層:バインダ]
正極活物質層12は、バインダを含んでもよい。該バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどである。
【0061】
[正極層:導電剤]
正極活物質層12は、導電剤を含んでもよい。該導電剤は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェン(Ketjen)ブラック、炭素ファイバ、金属粉末などである。
【0062】
[正極層:その他添加剤]
正極層10は、前述の正極活物質、固体電解質、バインダ、導電剤以外に、例えば、フィラ(filler)、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤のような添加剤をさらに含んでもよい。
正極層10が含むフィラ、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などとしては、一般的に、全固体二次電池の電極に使用される公知の材料を使用することができる。
【0063】
[固体電解質層]
[固体電解質層:硫化物系固体電解質]
図7及び
図8を参照すれば、固体電解質層30は、正極層10と負極層20との間に配置された硫化物系固体電解質を含む。
【0064】
硫化物系固体電解質は、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiX(Xは、ハロゲン元素である)、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn(m、nは、正数であり、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち一つである)、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LipMOq(p、qは、正数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち一つである)、Li7-xPS6-xClx(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBrx(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-xIx(0≦x≦2)からなる群から選択された1以上である。該硫化物系固体電解質は、例えば、Li2S、P2S5のような出発原料を、溶融急冷法や機械的ミリング(mechanical milling)法などによって処理して作製される。また、そのような処理後、熱処理を行うことができる。該固体電解質は、非晶質でもあり、結晶質でもあり、それらが混合された状態でもある。また、該固体電解質は、例えば、前述の硫化物系固体電解質材料において、少なくとも構成元素として、硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含むものでもある。例えば、該固体電解質は、Li2S-P2S5を含む材料でもある。該固体電解質を形成する硫化物系固体電解質材料として、Li2S-P2S5を含むものを利用する場合、Li2SとP2S5との混合モル比は、例えば、Li2S:P2S5=50:50ないし90:10ほどの範囲である。
【0065】
該硫化物系固体電解質は、例えば、Li7-xPS6-xClx(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBrx(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-xIx(0≦x≦2)からなる群から選択された1以上を含むアルジロダイト型(Argyrodite-type)の化合物でもある。特に、該硫化物系固体電解質は、Li6PS5Cl、Li6PS5Br及びLi6PS5Iからなる群から選択された1以上を含むアルジロダイト型の化合物でもある。
【0066】
該アルジロダイト型の固体電解質の密度が1.5ないし2.0g/ccでもある。該アルジロダイト型の固体電解質が1.5g/cc以上の密度を有することにより、全固体二次電池の内部抵抗が低減し、Liによる固体電解質の貫通(penetration)を効果的に抑制することができる。
この固体電解質の弾性係数は、例えば、15ないし35GPaである。
【0067】
[固体電解質層:バインダ]
固体電解質層30は、例えば、バインダを含んでもよい。固体電解質層30に含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどでもあるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されるものであるならば、いずれも可能である。固体電解質層30のバインダは、正極活物質層12と負極活物質層22とが含むバインダと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0068】
[負極層]
[負極層構造]
第1負極活物質層22の厚みは、例えば、正極活物質層厚の50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下または5%以下である。第1負極活物質層22の厚みは、例えば、1μmないし20μm、2μmないし10μm、または3μmないし7μmである。第1負極活物質層20の厚みが過度に薄ければ、第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが、第1負極活物質層22を崩壊させ、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の厚みが過度に増大すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22による全固体二次電池1の内部抵抗が増大し、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0069】
第1負極活物質層22の厚みが薄くなれば、例えば、第1負極活物質層22の充電容量も減少する。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べ、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下または2%以下である。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べ、0.1%ないし50%、0.1%ないし40%、0.1%ないし30%、0.1%ないし20%、0.1%ないし10%、0.1%ないし5%、または0.1%ないし2%である。第1負極活物質層22の充電容量が過度に小さければ、第1負極活物質層22の厚みが非常に薄くなるので、反復される充放電過程において、第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが、第1負極活物質層22を崩壊させ、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の充電容量が過度に増大すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22による全固体二次電池1の内部抵抗が増大し、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0070】
正極活物質層12の充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、正極活物質層12中の正極活物質の質量を乗じて得られる。該正極活物質がさまざまな種類使用される場合、該正極活物質ごとに、充電容量密度×質量値を計算し、その値の総合が、正極活物質層12の充電容量である。第1負極活物質層22の充電容量も、同じ方法によって計算される。すなわち、第1負極活物質層22の充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に、第1負極活物質層22中の負極活物質の質量を乗じて得られる。該負極活物質がさまざまな種類使用される場合、該負極活物質ごとに、充電容量密度×質量値を計算し、その値の総合が、第1負極活物質層22の容量である。ここで、該正極活物質及び該負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体半電池(half-cell)を利用して推定された容量である。全固体半電池を利用した充電容量測定により、正極活物質層12と第1負極活物質層22との充電容量が直接測定される。測定された充電容量を、それぞれ活物質の質量で除算すれば、充電容量密度が得られる。代案として、正極活物質層12と第1負極活物質層22との充電容量は、初期充電時に測定される初期充電容量でもある。
【0071】
[負極層:負極集電体]
負極集電体21は、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない材料によって構成される。負極集電体21を構成する材料は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)でもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、電極集電体として使用するものであるならば、いずれも可能である。負極集電体の厚みは、1ないし20μm、例えば、5ないし15μm、例えば、7ないし10μmである。
【0072】
負極集電体21は、前述の金属のうち1種によって構成されるか、あるいは2種以上の金属の合金または被覆材料によっても構成される。負極集電体21は、例えば、板状またはホイル(foil)の形態である。
【0073】
図8を参照すれば、全固体二次電池1は、例えば、負極集電体21上に、リチウムと合金を形成することができる元素を含む薄膜24をさらに含む。薄膜24は、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置される。薄膜24は、例えば、リチウムと合金を形成することができる元素を含む。リチウムと合金を形成することができる元素は、例えば、金、銀、亜鉛、スズ、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビズマスでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウムと合金を形成することができる元素であるならば、いずれも可能である。薄膜24は、それら金属のうち一つによって構成されるか、あるいはさまざまな種類の金属の合金によって構成される。薄膜24が負極集電体21上に配置されることにより、例えば、薄膜24と第1負極活物質層22との間に析出される第2負極活物質層(図示せず)の析出形態がさらに平坦化され、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0074】
薄膜の厚み(d24)は、例えば、1nmないし800nm、10nmないし700nm、50nmないし600nm、または100nmないし500nmである。薄膜の厚み(d24)が1nm未満になる場合、薄膜24による機能が発揮され難くなる。薄膜の厚み(d24)が過度に厚ければ、薄膜24自体がリチウムを吸蔵し、負極層においてリチウム析出量が低減し、全固体電池のエネルギー密度が低下し、全固体二次電池1のサイクル特性が低下することがある。薄膜24は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などによっても負極集電体21上に配置されるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、当該技術分野において、薄膜24を形成することができる方法であるならば、いずれも可能である。
【0075】
[負極層:負極活物質]
第1負極活物質層22は、リチウム金属及び無機負極活物質を含むリチウム金属複合体を含む。
【0076】
[負極層:析出層]
図5を参照すれば、全固体二次電池1は、充電により、例えば、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置される第2負極活物質層23をさらに含む。図面に図示されないが、全固体二次電池1は、充電により、固体電解質層30と第1負極活物質層22との間に配置される第2負極活物質層23をさらに含むか、単独で含む構成も可能である。第2負極活物質層23は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。該金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む。従って、第2負極活物質層23は、リチウムを含む金属層であるので、例えば、リチウム貯蔵庫として作用する。該リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などでもあるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、リチウム合金として使用するものであるならば、いずれも可能である。第2負極活物質層23は、そのような合金のうち一つ、またはリチウムによってもなるが、あるいはさまざまな種類の合金によってもなる。
【0077】
第2負極活物質層の厚み(d23)は、特別に制限されるものではないが、例えば、1μmないし1,000μm、1μmないし500μm、1μmないし200μm、1μmないし150μm、1μmないし100μm、または1μmないし50μmである。第2負極活物質層の厚み(d23)が過度に薄ければ、第2負極活物質層23によるリチウム貯蔵庫の役割を遂行し難い。第2負極活物質層の厚み(d23)が過度に厚ければ、全固体二次電池1の質量及び体積が増大し、サイクル特性がかえって低下してしまう可能性がある。第2負極活物質層23は、例えば、そのような範囲の厚みを有する金属ホイルでもある。
【0078】
全固体二次電池1において、第2負極活物質層23は、例えば、全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置されるか、あるいは全固体二次電池1の組み立て後、充電により、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に析出される。
【0079】
全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に第2負極活物質層23が配置される場合、第2負極活物質層23がリチウムを含む金属層であるので、リチウム貯蔵庫として作用する。第2負極活物質層23を含む全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。例えば、全固体二次電池1の組み立て前、負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムホイルが配置される。
【0080】
全固体二次電池1の組み立て後、充電により、第2負極活物質層23が配置される場合、全固体二次電池1の組み立て時、第2負極活物質層23を含まないので、全固体二次電池1のエネルギー密度が上昇する。例えば、全固体二次電池1の充電時、第1負極活物質層22の充電容量を超えて充電する。すなわち、第1負極活物質層22を過充電する。充電初期には、第1負極活物質層22に、リチウムが吸蔵される。すなわち、第1負極活物質層22が含む負極活物質は、正極層10から移動して来たリチウムイオンと、合金または化合物を形成する。第1負極活物質層22の容量を超えて充電を行えば、例えば、第1負極活物質層22の背面、すなわち、負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムが析出され、析出されたリチウムにより、第2負極活物質層23に該当する金属層が形成される。第2負極活物質層23は、主に、リチウム(すなわち、金属リチウム)によって構成される金属層である。そのような結果は、例えば、第1負極活物質層22に含まれる負極活物質が、リチウムと合金または化合物を形成する物質によって構成されることによって得られる。放電時には、第1負極活物質層22及び第2負極活物質層23、すなわち金属層のリチウムがイオン化され、正極層10側に移動する。従って、全固体二次電池1において、リチウムを負極活物質として使用することが可能である。また、第1負極活物質層22は、第2負極活物質層23を被覆するために、第2負極活物質層23、すなわち金属層保護層の役割を行う同時に、リチウムデンドライトの析出成長を抑制する役割も遂行する。従って、全固体二次電池1の短絡及び容量低下を抑制し、結果として、全固体二次電池1のサイクル特性を向上させる。また、全固体二次電池1の組み立て後、充電により、第2負極活物質層23が配置される場合、負極集電体21、第1負極活物質層22、及びそれら間の領域は、例えば、全固体二次電池の初期状態、または放電後の状態において、リチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域である。
【0081】
次に、一具現例による全固体二次電池の製造方法について説明する。
一具現例による負極層を提供する段階と、正極層を提供する段階と、負極層と正極層との間に固体電解質層を提供し、積層体を準備する段階と、この積層体を加圧(press)する段階と、を含む。
【0082】
この加圧は、25ないし90℃の範囲で実施し、圧力は、550MPa以下、例えば、500MPa以下、例えば、400ないし500MPaの範囲で加圧し、全固体二次電池を完成する。加圧時間は、温度及び圧力などによっても異なり、例えば、30分未満である。そして、該加圧は、例えば、静水圧(Isostatic press)、ロール加圧(roll press)または平板加圧(plate press)でもある。
【0083】
一具現例による全固体二次電池は、中大型電池または電力保存装置(ESS:energy storage system)に適用可能である。
【実施例】
【0084】
以下の実施例及び比較例を介し、さらに詳細に説明される。ただし、該実施例は、例示するためのものであり、それらだけによって限定されるものではない。
【0085】
(負極層の製造)
(製造例1:(Zn-coated Ni/LMC))
負極集電体である厚み10μmのニッケル集電体上に、亜鉛を30nm厚にコーティングし、コーティング層である亜鉛層を形成し、亜鉛層上にメッキを施し、Li多孔層を形成した。
【0086】
作動(working)電極に基板を置き、カウンタ(counter)電極にリチウムプレート(Li plate:厚み1mm)を置き、その間に、通常のLIB分離膜17nmを配置し、2電極間にクリップ強度の圧力を印加し、LiFSI電解液(1M LiFSI(DME内):HFE-458=2:8、v/v)ガルバニックメッキ(0.38mA/cm2、4hr)を進め、リチウム多孔体を製造した。
【0087】
このリチウム多孔体をロールプレスすれば、負極集電体の上部に配置され、リチウム金属複合体を含む第1負極活物質層を含む負極層を製造した。ロールプレス時、通常の線圧1.5トンのロールプレスを使用した。2つのロールが当接する面積が、およそ0.2cmであるので、加圧圧力は、7.5tonf/cm2(=735MPa)である。
【0088】
(製造例2~4,6,7(Zn-coated Ni/LMC)及び製造例5(Ni/LMC))
下記表1に示されているように、集電体及びコーティング層を形成し、下記表1に示された組成を有する電解液を利用し、リチウムメッキをそれぞれ施したことを除いては、製造例1と同一方法によって実施し、負極層を製造した。
【0089】
(製造例8(Zn-coated/LMC/カーボン層))
下記表2に示されているように、第1負極活物質層上に、後述する方法によってカーボン層をさらに形成し、負極集電体として、厚み10μmのニッケル集電体を利用したことを除いては、製造例1と同一方法によって実施し、負極層を完成した。
【0090】
該カーボン層は、一次粒径が30nmほどであるカーボンブラック(CB)93重量%とPVDFバインダ(クレハ社の#9300)とが7重量%で構成された膜であり、加圧後の厚みは、約7μmである。PVDF 0.28gを、N-メチルピロリドン(NMP)4gに入れて溶かし、カーボンブラック(CB)3.72gを混合してスラリーを製造した。製造されたスラリーを、Niシートに、バーコータ(bar coater)を利用して塗布し、空気中で80℃で10分間乾燥させた。それによって得られた積層体を、40℃で10時間真空乾燥させた。乾燥された積層体を、300MPaの圧力で10ms間、ロール加圧し、カーボン層を第1負極活物質層上に転写させた。前述の方法で、カーボン層が第1負極活物質層上(リチウム金属複合体)に形成された負極層を製造した。
【0091】
(比較製造例1(蒸着リチウム負極層))
250℃で、Liタブレット(tablets)(日本HJ Metal)を利用し、リチウムをNi集電体上に蒸着し、厚みが約10μmである負極層(蒸着リチウム負極層)を形成した。
【0092】
(比較製造例2(圧延リチウム負極層))
Ni集電体上に、Liシリンダ(cylinder)で高圧に押出されたLiホイルに、25℃、圧力750MPaの条件で、ローリング(rolling)及び圧延を施し、約20μm厚の負極層を製造した。
【0093】
(比較製造例3(押出リチウム負極層))
Ni集電体上部に、固相のリチウムを、Liシリンダから、高圧(700ton)条件で押出し、約100μm厚の負極層を製造した。
下記表2に示された条件により、比較製造例4及び5の負極層を、下記過程によって準備した。
【0094】
(比較製造例4(Ni/リチウム合金粉末(LiAl)と、無機化合物であるヨウ化リチウム(LiI)とを含む複合材料))
負極集電体である厚み10μmのニッケル集電体上に、下記過程によって得られた複合材料を配置して負極層を製造した。
【0095】
リチウム合金粉末(LiAl)と、無機化合物であるヨウ化リチウム(LiI)とを、9:1体積比で混合し、それを約400℃で熱処理し、それを冷却させてリチウム合金粉末(LiAl)と、無機化合物であるヨウ化リチウム(LiI)とを含む複合材料を製造した。
【0096】
(比較製造例5(Ni/カーボン層))
負極集電体(Ni)上にカーボン層をコーティングし、負極層を準備した。該カーボン層は、製造例8と同一方法によって実施した。ここで、該カーボン層は、製造例8に記載されているところと同一方法によって実施して形成した。
【0097】
(比較製造例6)
負極集電体だけで負極層を準備した。
【0098】
【0099】
【0100】
(全固体二次電池の製造)
(実施例1)
製造例1の負極層を利用した。
固体電解質層の製造過程は、後述する通りである。
Li-アルジロダイト(Li6PS5Cl、D50=3μm、結晶質)99重量部、アクリル系バインダであるポリ(スチレン-co-ブチルアクリレート)1重量部、及び無水オクチルアセテート(octyl acetate)重量部を、シンキーミキサ(Thinky mixer)(1,300rpm、5min)で混合し、正極活物質スラリーを準備した。このスラリーを、離型PET(~75μm)上に、不織布(~15μm)上に、バーコータを利用して膜を作り、コンベクションオーブン(convection oven)(80℃、10分)で液体成分をなくし、真空オーブン(40℃、10hr)で乾燥させれば、固体電解質層(加圧前厚~90μm、WIP加圧後~45μm)を準備した。
【0101】
正極層は、下記過程によって製造した。
原料は、Li2O-ZrO2コーティングされた活物質(LiNi0.6Co0.2Mn0.2:NCM)84.2重量部、導電剤(カーボンナノファイバ、カーボンブラック)2.9重量部、LPSCl(Li6PS5Cl、D50=0.5μm、結晶質)11.5重量部、PTFE 1.4重量部及び無水p-キシレンを混合し、混錬ととローリングとの作業で一定厚にした後、真空オーブン(40℃、8hr)で真空乾燥させ、正極活物質を製造した。
この真空乾燥した正極層膜を、炭素コーティングされたAl(carbon-coated Al)集電体に積層し、ロールプレスで圧着し、正極層を準備した。
【0102】
負極層は、Liメッキとロールプレス加圧とで準備し、固体電解質層は、スラリーを、不織布上に、湿式コーティングを施して準備し、正極層は、材料の混錬及びローリング、並びにロールプレスで準備した。
負極層、固体電解質層及び正極層の順に積層し、それをパウチに真空包装し、400~550MPaの静水圧プレス(WIP:warm isotatic presse:WIP)で加圧し、負極層/固体電解質層/正極層の単位セルを製造した。
【0103】
(実施例2~8)
製造例1の負極層の代わりに、製造例2ないし8の負極層をそれぞれ利用したところを除いては、実施例1と同一に実施し、負極層/固体電解質層/正極層の単位セルを製造した。
【0104】
(比較例1)
製造例1の負極層の代わりに、比較製造例1の負極層を利用したことを除いては、実施例1と同一に実施し、負極層/固体電解質層/正極層の単位セルを製造した。
比較例1の負極層は、リチウム金属の柔らかい特性により、高温高圧が適用される硫化物系固体電解質を採用した全固体二次電池に適用させることができなかった。
【0105】
(比較例2~6)
製造例1の負極層の代わりに、比較製造例2ないし7の負極層をそれぞれ利用したことを除いては、実施例1と同一に実施し、負極層/固体電解質層/正極層の単位セルを製造した。
【0106】
(評価例1:電子走査顕微鏡及び透過電子顕微鏡の分析)
製造例1によって得られた負極層に対する電子走査顕微鏡及び透過電子顕微鏡の分析を実施した。該走査電子顕微鏡は、Hitachi社のSU 8030を利用し、集束イオンビーム電子顕微鏡は、FIB-Helios 450F1、FEI company社のHelios 450F1を利用した。サンプル断面は、Cooling Cross Section Polisher(IB-19520CCP、JOEL)を利用し、6kV、320μA、1hrの間ミリングし、前処理を施した。そして、該透過電子顕微鏡分析は、3keV条件で実施した。
【0107】
図2は、製造例1によってメッキされたリチウム表面形状を示した電子走査顕微鏡写真である。それを参照すれば、薄いリチウムストリング(string)が秩序なく寄り合っている構造を有している。
図3は、加圧後、リチウム金属複合体膜の表面と断面とを示した透過電子顕微鏡写真である。
それを参照すれば、加圧前のリチウム金属複合体膜の厚みが約30μmであり、加圧後、リチウム金属複合体膜の厚みは、約6.5μmに制御された。加圧後、リチウム金属複合体膜の表面は、非常にすべすべしている。
【0108】
この加圧後、リチウム金属複合体膜の表面粗度Rmaxを、走査型プローブ顕微鏡(AFM:atomic force microscope)を利用して測定した。リチウム金属複合体膜の表面粗度比較のために、比較例1により、リチウム蒸着で得たリチウム膜の表面粗度も、共に測定した。
【0109】
AFM測定結果、比較例1のリチウム蒸着で得たリチウム膜の表面粗度Rmaxは、約1.3μmであるところに反し、リチウム金属複合体膜のRmaxは、約0.27μmであり、比較例1の場合に比べ、表面粗度が低下した。
【0110】
図4は、加圧後、リチウム金属複合体膜の断面を示した透過電子顕微鏡写真である。それを参照すれば、リチウム金属複合体膜の断面を参照すれば、0.1ないし1μmサイズの気孔と微細チャンネルとが多数観察された。そのような気孔と微細チャンネルは、リチウム金属複合体膜の多孔性に起因し、リチウムストリングの表面に、フッ化リチウム成分のSEIでnm厚にコーティングされており、リチウム金属とフッ化リチウムとが複合化された生成物を含む。該リチウム金属複合体は、リチウムがしっかりしたフッ化リチウム膜に囲まれている構造を有しており、高圧力がリチウムが溶出されたり液化されたりすることが発生しない。
【0111】
(評価例2:膜特性)
製造例1~6、及び比較製造例1~3によって得られた負極層の薄膜化、均一性及び高圧適用有無の特性を、後述する方法によって評価し、その評価結果を下記表3に示した。各膜の厚み及び厚み偏差は、電子走査顕微鏡または透過電子顕微鏡分析を介して調査した。
【0112】
(1)薄膜化及び均一性
製造例1~8のリチウム金属複合体層、及び比較製造例1~3によって得られた負極層の厚みを調査し、膜厚が5μmである場合には、薄膜化優秀(○)、膜厚が15μmである場合には、薄膜化不良(△)、かつ膜厚が20μmである場合には、薄膜化不可(X)と区分する。
【0113】
(2)均一性
製造例1~8のリチウム金属複合体層、及び比較製造例1~3によって得られた負極層の厚み偏差を調査し、その厚み偏差が5%以内である場合は、良好(○)、その厚み偏差が10%以内である場合は、不良(X)と区分する。
【0114】
(3)高圧適用
全固体二次電池製造過程において、加圧時、リチウムの溶出、または液化現状の発生の有無を調査し、リチウムの溶出現象または液化現象が発生しなければ、高圧適用可能(○)であり、もしリチウムの溶出現象または液化現象が発生すれば、高圧適用困難(X)と表示する。
【0115】
【0116】
表3を参照すれば、製造例1ないし8の負極層は、比較製造例1~3の場合と比較し、薄膜化及び均一化が可能であり、高圧適用条件で使用可能であるということが分かった。前述の結果が得られたのは、製造例1ないし8の負極層は、リチウム金属複合体層を含み、ヤング率が高く、加圧中、マイクロ短絡(microshort)が生じないが、比較製造例1ないし比較製造例3の負極層は、加圧中マイクロ短絡が発生したからである。
【0117】
(評価例3:X線光電子分光法(XPS)及びヤング率の分析)
製造例1及び比較製造例1によって得られた負極層に対するXPS分析を実施した。XPS分析は、Thermo Scientific社のK-alphaを利用した。
【0118】
XPS分析結果を
図5に示した。
図5において、0sがリチウム金属複合体膜のエッチング時間が0秒である場合、240sは、リチウム金属複合体膜のエッチング時間が240秒であり、600sは、リチウム金属複合体膜のエッチング時間が600秒である場合に係わるものである。
【0119】
図5を参照し、リチウム金属複合体膜をXPSで分析すれば、比較製造例1によって得られた蒸着LiにはないLiF成分が観察された。
図5において、AS-is膜においては、C-FとLiFとが観測されるが、内部には、LiFだけ観測される。
【0120】
エッチング時間が600秒であり、Arイオンエッチング後、比較製造例1のリチウム蒸着膜と、製造例1のリチウム金属複合体膜とにおいて、各元素の含量を分析すれば、下記表4の通りある。
【0121】
【0122】
表4に示されているように、製造例1のリチウム金属複合体膜は、比較製造例1の蒸着Li対比で、Liの含量が3at.%ほど低いが、Fが2.2at.%が含有されている。リチウム金属複合体膜内の気孔や微細チャンネル(micro-channel)などを勘案すれば、同一厚に対し、比較製造例1の蒸着Li対比のリチウム含量は、約5~10at.%ほど低い。
【0123】
製造例1及び比較製造例1によって得られた負極層に対するヤング率を測定した。ヤング率は、DMA Q800(TA Instruments社)を利用して測定し、負極層試片は、ASTM standard D412(Type V specimens)を介して準備した。ヤング率は、通称引っ張り弾性率(tensile modulus)と呼びもする。
【0124】
ヤング率分析結果を
図6に示した。
図6には、リチウム金属複合体膜とリチウム蒸着膜の膜との深みによる弾性係数を示したものである。
図6において、リチウム金属複合体層は、リチウム金属複合体膜に係わるものであり、evaporized Liがリチウム蒸着膜に係わるものである。
【0125】
それを参照すれば、リチウム金属複合体膜は、弾性係数が、蒸着Li対比で、平均約2倍ほど高い。商用Micro-indenter(iMicro、Nanomechanics Inc)を使用し、50μm間隔、3x3 points測定の平均値である。リチウム金属複合体膜が、弾性係数が高い理由は、高弾性のLiFが複合体(composite)形態で含有されているためである。
【0126】
この
図5の結果によれば、同一厚のLi含量と、薄型技術とだけを見るならば、比較製造例1の蒸着Li膜が、Li保存所候補として適する。しかし、製造工程中、高圧が要求される硫化物系全固体二次電池にそれぞれの負極層を利用するならば、Li保存所の弾性係数と硬度とを考慮しなければならないので、ヤング率特性が重要である。
図6に図示されているように、製造例1のリチウム金属複合体膜は、比較製造例1の蒸着リチウム膜と比較し、ヤング率特性が非常に優秀であり、硫化物系全固体二次電池の負極層として適切である。
【0127】
(評価例4:硬度分析)
製造例1のリチウム金属複合体膜、及び比較製造例1の蒸着リチウム膜の硬度を調査した。硬度は、Micro-indenter(iMicro、Nanomechanics Inc)を利用して評価した。
【0128】
評価結果、リチウム金属複合体膜は、蒸着Li膜と比較し、表面硬度が非常に高く、リチウム金属複合体膜の内部も、蒸着Liに比べて高い。平均を見るとき、約6倍ほど硬度上昇が確認される。膜硬度が低ければ、硫化物系との高温・高圧の加圧時、Li保存所が変形され、固体電解質層内に浸透され、クラック形成及び短絡発生のような問題点が引き起こされる可能性がある。しかし、製造例1のリチウム金属複合体膜を利用すれば、前述の問題点をあらかじめ予防することができる。
【0129】
(評価例5:効率及び寿命特性)
実施例8及び、比較例2ないし5によって作製された全固体二次電池において、充放電特性などを、充放電器(製造社:TOYO、モデル:TOYO-3100)で評価した。
【0130】
初期充放電は、0.1Cの電流で4.25Vに逹するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に逹するまで定電圧充電を実施した。充電完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.1Cの電流で、電圧が2.5Vに至るまで定電流放電を行った。2回目充放電サイクルは、0.2Cの電流で4.25Vに逹するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に逹するまで定電圧充電を実施した。充電完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.2Cの電流で、電圧が2.5Vに至るまで定電流放電を行った。
【0131】
寿命評価は、1Cの電流で4.25Vに逹するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に逹するまで定電圧充電を実施した。充電完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、1Cの電流で、電圧が2.5Vに至るまで定電流放電を実施するサイクルを200回反復的に実施して評価した。
【0132】
容量維持率(CRR:capacity retention ratio)は、下記数式1から計算され、充放電効率は、数式2から計算され、容量維持率及び充放電効率特性を調査し、下記表5に示した。
【0133】
(数式1)
容量維持率(寿命)[%]=[200回目サイクルの放電容量/初期サイクルの放電容量]×100
【0134】
(数式2)
充放電効率=[200回目サイクルの平均動作電圧/200回目サイクルの平均動作電圧]X100
【0135】
【0136】
表5を参照すれば、実施例8によって製造された全固体二次電池は、比較例5の場合と比較し、充放電効率及び寿命特性が改善されるということが分かった。また、比較例2ないし4の全固体二次電池は、初期充電時、マイクロ短絡が発生し、充放電効率及び収率特性を測定し難かった。
【0137】
(評価例6:寿命特性)
実施例8及び比較例5によって作製された全固体二次電池において、充放電特性などを充放電器(製造社:TOYO、モデル:TOYO-3100)で評価した。
【0138】
初期充放電は、0.1Cの電流で4.2Vに逹するまで充電を実施した。充電完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.1Cの電流で電圧が2.5Vに至るまで定電流放電を行った。2回目充放電サイクルは、0.2Cの電流で4.2Vに逹するまで充電を実施した。充電完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.2Cの電流で電圧が2.5Vに至るまで定電流放電を行った。
【0139】
寿命評価は、0.33Cの電流で4.2Vに逹するまで充電を実施した。充電完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、0.33Cの電流で、電圧が2.5Vに至るまで定電流放電を実施するサイクルを230回反復して実施して評価した。
【0140】
容量維持率(寿命)を評価し、
図9に示した。
図9を参照すれば、実施例8の全固体二次電池は、比較例5の全固体二次電池に比べ、容量維持率が改善されることを確認することができた。実施例8の全固体二次電池は、第1負極活物質層上にカーボン層をさらに形成した負極層を具備した。そのように、カーボン層を形成すれば、カーボン層を形成していない場合と比べ、均一Li核化と均一Li成長とにさらに一助となり、容量維持率がさらに改善された。
【0141】
以上、図面及び実施例を参照し、一具現例について説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野において当業者であるならば、それらから、多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。
【符号の説明】
【0142】
1 全固体二次電池
10 正極層
11 正極集電体
12 正極活物質
20 負極層
21 負極集電体
22 負極活物質層
23 金属層
30 固体電解質層