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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】データベースを構築する方法
(51)【国際特許分類】
   G16B 25/00 20190101AFI20220914BHJP
【FI】
G16B25/00
【請求項の数】 43
(21)【出願番号】P 2017136368
(22)【出願日】2017-07-12
(65)【公開番号】P2019020838
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-06-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.発行日 2017年2月1日 刊行物 第14回日本乳癌学会九州地方会 プログラム・抄録集 2.開催日 2017年3月4日~2017年3月5日 集会名、開催場所 第14回日本乳癌学会九州地方会 九州大学医学部 百年講堂(住所:福岡県福岡市東区馬出3-1-1) 3.発行日 2017年3月5日 刊行物 がんと生殖に関するシンポジウム2017抄録集 4.開催日 2017年3月5日 集会名、開催場所 がんと生殖に関するシンポジウム2017 サンケイプラザ 4Fホール(住所:東京都千代田区大手町1-7-2) 5.発行日 2017年6月22日 刊行物 第24回アジア太平洋癌学会 APCC 2017 Abstract Book 6.開催日 2017年6月22日~2017年6月24日 集会名、開催場所 第24回アジア太平洋癌学会(APCC2017)ソウルCOEX展示コンベンションセンター(住所:大韓民国 ソウル特別市 江南区 三成洞159永東大路513) 7.発行日 2017年4月1日 刊行物 日本臨床75巻 増刊号3(通巻1119号) 8.ウェブサイトの掲載日 2017年6月29日 ウェブサイトのアドレス http://www2.convention.co.jp/25jbcs/ http://www2.convention.co.jp/25jbcs/syoroku.html http://www2.convention.co.jp/25jbcs/dl/Program_Syorokusyu.pdf
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 和希
(72)【発明者】
【氏名】澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】野口 眞三郎
(72)【発明者】
【氏名】直居 靖人
【審査官】田中 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-218150(JP,A)
【文献】特開2011-223957(JP,A)
【文献】特開2004-187562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16B 5/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実施する、 生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築する方法であって、
前記データベースが、新規マーカーの候補を探索するために使用されるものである、下記工程を含む、方法:
解析対象遺伝子を特定する情報を取得する工程、
解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得する工程、
前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報をデータベースに出力する工程、及び
非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報と、前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報とを前記データベースに記憶する工程。
【請求項2】
解析対象遺伝子は、疾患のリスク判定、スクリーニング、鑑別診断、予後予測、再発予測、薬効予測、及び疾患のモニタリングよりなる群から選択される少なくとも一つの解析に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マーカーが、疾患のバイオマーカー又は疾患の治療の標的分子である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患のバイオマーカーが、疾患のリスク判定、スクリーニング、鑑別診断、予後予測、及び再発予測よりなる群から選択される少なくとも一種に使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記生体試料が、血液試料、体液及び組織よりなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組織が、新鮮組織、凍結組織、固定組織、及び包埋剤に包埋された組織よりなる群から選択される少なくとも一種である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記生体試料が、所定の疾患、所定の疾患型及び所定の疾患の病期よりなる群から選択される少なくとも一種の病巣から採取されたものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記生体試料が、複数であり、前記複数の生体試料は異なる患者の同一疾患の病巣から採取されたものである、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子関連測定データが、RNAの発現量、DNAのメチル化量、DNAの塩基配列情報、RNAの塩基配列情報、タンパク質の存在量、及びタンパク質の糖鎖修飾情報からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記DNAのメチル化量が、さらにDNAのメチル化部位の位置情報を含み、
前記DNAの塩基配列情報が、さらにDNAの塩基配列の欠失、置換、融合、コピー数変異、又は挿入の有無と、その位置情報を含み、
前記タンパク質の糖鎖修飾情報が、さらにタンパク質の修飾位置と、糖鎖の種類の情報を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子関連測定データが、所定の測定方法により取得される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子関連測定データが、RNAの発現量、DNAのメチル化量、DNAの塩基配列情報、又はRNAの塩基配列情報である場合には、前記所定の測定方法が、塩基配列シーケンス及び/又はマイクロアレイによる測定方法であり、
前記遺伝子関連測定データが、タンパク質の存在量である場合には、前記所定の測定方法が、マイクロアレイ及び/又はELISAであり、
前記遺伝子関連測定データが、タンパク質の糖鎖修飾である場合には、前記所定の測定方法が、マイクロアレイ及び/又はELISAである
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子関連測定データが、単一の検査機関で取得される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記遺伝子関連情報が、遺伝子関連測定データの測定日、測定方法、測定試料の量、検査機関、生体試料の保存方法及び生体試料の保存期間よりなる群から選択される少なくとも一種と、各遺伝子関連測定データの遺伝子名、GenBankのアクセッション番号及び/又は遺伝子を特定するための符号と、前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料を特定するための符号とを含む、請求項1から13に記載の方法。
【請求項15】
前記生体試料関連情報が、生体試料を採取した患者の診療関連情報、及び治療関連情報よりなる群から選択される少なくとも一種と、生体試料を特定するための符号と、生体試料を採取した患者を特定するための符号と、生体試料の種類とを含む、請求項1から14に記載の方法。
【請求項16】
前記診療関連情報が、疾患名、疾患型名、疾患の病期、患者の性別、患者の年齢、患者の既往歴、患者の家族歴、再発履歴、転移履歴、問診情報、月経履歴及び遺伝子関連情報以外の検査情報よりなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記治療関連情報が、治療履歴の情報を含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記マーカーが、疾患のバイオマーカー又は疾患の治療の標的分子であり、 前記治療が、治療薬の投与、予防薬の投与、放射線治療及び外科的処置よりなる群から選択される少なくとも一種である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記治療が、治療薬の投与又は予防薬の投与である場合には、前記治療履歴に投与した薬剤の名称、用量、投与頻度、投与日及び投与期間を含み、
前記治療が放射線治療である場合には、前記治療履歴に1回あたりの放射線照射量、頻度、施術日及び総照射放射線量を含み、
前記治療が外科的処置である場合には、前記治療履歴に主な切除部位、術式、リンパ節等の切除部位周辺組織の郭清の有無、及び施術日を含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得する工程を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報をデータベースに出力する工程、及び
前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報をデータベースに記憶する工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報の報告書を作成する工程を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記報告書が、
疾患のリスク判定、スクリーニング、鑑別診断、予後予測、再発予測、薬効予測、及び疾患のモニタリングよりなる群より選択される少なくとも一つの判定結果と、
各遺伝子名及び/又は各遺伝子を特定するための符号と、
各遺伝子についての前記遺伝子関連測定データと、
前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料を特定するための符号と、
遺伝子関連測定データの測定日、測定方法、検査機関、生体試料の保存方法及び生体試料の保存期間よりなる群から選択される少なくとも一種と、
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記生体試料が、乳癌組織から採取されたものである、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記解析対象遺伝子が、Curebest(登録商標) 95GC Breast解析対象遺伝子、Oncotype(登録商標) DX解析対象遺伝子、MammaPrint解析対象遺伝子、BluePrint解析対象遺伝子、PAM50解析対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V6解析対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V6 + COSMIC解析対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V6 + UTR解析対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V5対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V5 + UTRs対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V5 + IncRNA対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V5 + Regulatory対象遺伝子、TruSight Cancer対象遺伝子、TruSight Tumor 15対象遺伝子、及びTruSight Tumor 170対象遺伝子よりなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1~24に記載の方法。
【請求項26】
非解析対象遺伝子が複数である、請求項1から25に記載の方法。
【請求項27】
前記解析対象遺伝子は、疾患のリスク判定、スクリーニング、鑑別診断、予後予測、再発予測、薬効予測、及び疾患のモニタリングよりなる群から選択される少なくとも一つの解析に使用され、 前記疾患のバイオマーカーが、前記生体試料が採取された患者が患う疾患とは異なる疾患のバイオマーカーである、請求項2から26に記載の方法。
【請求項28】
前記解析対象遺伝子は、疾患のリスク判定、スクリーニング、鑑別診断、予後予測、再発予測、薬効予測、及び疾患のモニタリングよりなる群から選択される少なくとも一つの解析に使用され、 前記疾患のバイオマーカーが、前記生体試料が採取された患者が患う疾患と同じ疾患のバイオマーカーである、請求項2から26に記載の方法。
【請求項29】
コンピュータが実施する、 生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報に基づき、新規マーカーの候補を探索する方法であって、下記工程を含む方法:
解析対象遺伝子を特定する情報を取得する工程、
解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得する工程、
非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報をデータベースに出力する工程、
非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報と、前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報とを前記データベースに記憶する工程、
前記遺伝子関連情報と、前記生体試料関連情報とを対応させる工程、
前記遺伝子関連情報に含まれる遺伝子関連測定データと、前記生体試料関連情報との関連性の強さを示す数値を遺伝子ごとに取得する工程、及び
前記数値に基づいて、前記生体試料関連情報と関連の強い遺伝子を新規マーカーの候補を決定する工程。
【請求項30】
前記非解析対象遺伝子の前記遺伝子関連測定データを取得した後、かつ前記数値を取得する前に、各遺伝子関連測定データの値を正規化又は標準化する工程を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記遺伝子関連情報に含まれる遺伝子関連測定データと、前記生体試料関連情報との関連性の強さを示す数値が、RNA量(コピー数)、タンパク質量、DNAメチル化量又はメチル化の割合、RNAの塩基配列の変化率、DNAの塩基配列の変化率、タンパク質の糖鎖修飾の割合、有意確率、尤度又はZスコアである、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記生体試料関連情報と関連の強い遺伝子を新規マーカーの候補を決定する工程が、請求項29で取得された数値その絶対数に応じて並べ替える工程と、前記絶対数が高い遺伝子について前記生体試料関連情報との関連性が強いと決定する工程を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記新規マーカーの候補が複数である、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項34】
生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築するシステムであって、
前記データベースが、新規マーカーの候補を探索するために使用されるものであり、
前記システムは、検査機関情報処理装置と、検査機関データベース記憶装置とを備え、
前記検査機関情報処理装置は、
解析対象遺伝子を特定する情報を取得し、
解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、
前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報を前記検査機関データベース記憶装置に出力し、
前記検査機関データベース記憶装置は、
非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報と、前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報とを受け付け、記憶する、
システム。
【請求項35】
前記生体試料関連情報は、生体試料を採取した医療機関において生成される、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築するシステムであって、
前記データベースが、新規マーカーの候補を探索するために使用されるものであり、
前記システムは、医療機関情報処理装置と、検査機関情報処理装置と、医療機関データベース記憶装置とを備え、
前記検査機関情報処理装置は、
解析対象遺伝子を特定する情報を取得し、
解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、
前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報を前記医療機関データベース記憶装置に出力し、
前記医療機関情報処理装置は、
前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報を前記医療機関データベース記憶装置に出力し、
前記医療機関データベース記憶装置は、
前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報と、前記生体試料関連情報とを受け付け、記憶する、
システム。
【請求項37】
前記検査機関情報処理装置は、
解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、
前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報を前記医療機関データベース記憶装置に出力し、
前記医療機関データベース記憶装置は、
前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報を受け付け、記憶する、
請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築するシステムであって、
前記データベースが、新規マーカーの候補を探索するために使用されるものであり、
前記システムは、医療機関情報処理装置と、検査機関情報処理装置と、データベース記憶装置とを備え、
前記検査機関情報処理装置は、
解析対象遺伝子を特定する情報を取得し、
解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、
前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報を前記データベース記憶装置に出力し、
前記医療機関情報処理装置は、
前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報を前記データベース記憶装置に出力し、
前記データベース記憶装置は、
前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報と、前記生体試料関連情報とを受け付け、記憶する、
システム。
【請求項39】
前記検査機関情報処理装置は、
解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、
前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報を出力する、
請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
コンピュータが実施する、 生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築する方法であって、
前記データベースに記憶されたデータが、新規マーカーを探索するための人工知能の訓練データ又は検証データとして使用される、下記工程を含む、方法:
解析対象遺伝子を特定する情報を取得する工程、
前記解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得する工程、
前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報をデータベースに記憶する工程、及び
前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報を前記データベースに記憶する工程。
【請求項41】
析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得する工程、及び
記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報をデータベースに記憶する工程をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
コンピュータが実施する、 生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築する方法であって、
前記データベースが、新規マーカーの候補を探索するために使用されるものである、下記工程を含む、方法:
解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子を含む複数の遺伝子について取得された前記遺伝子関連情報を、検査機関情報処理装置及び/又は医療機関情報処理装置から取得する工程、
前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報を、検査機関情報処理装置及び/又は医療機関情報処理装置から取得する工程、及び
前記遺伝子関連情報と、前記生体試料関連情報とを前記データベースに記憶する工程。
【請求項43】
生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築するシステムであって、
前記データベースが、新規マーカーの候補を探索するために使用されるものであり、
前記システムは、データベース記憶装置を備え、
前記データベース記憶装置は、
解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子を含む複数の遺伝子について取得された前記遺伝子関連情報を、検査機関情報処理装置及び/又は医療機関情報処理装置から取得し、
前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報を、検査機関情報処理装置及び/又は医療機関情報処理装置から取得し、
前記遺伝子関連情報と、前記生体試料関連情報とを記憶する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データベースを構築する方法、及びデータベースを構築するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乳癌を中心に、遺伝子発現レベル等の患者の分子レベルに基づいて治療方針を決定することが試みられている。例えば、特許文献1には、95個の遺伝子発現に基づいて、リンパ節転移陰性かつエストロゲン受容体陽性の乳癌の予後を予測する方法が記載されている。
【0003】
このような予後予測が可能となった背景には、全遺伝子にわたって遺伝子の発現を網羅的に解析するための、次世代シーケンシングやマイクロアレイ等による検出技術及び解析技術が急速に発展したことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開第2011-223957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
次世代シーケンシング解析やマイクロアレイ解析により、現代では、膨大な数の遺伝子の発現量やDNAの塩基配列変異を解析することが可能である。また、NCBI Gene Expression Omnibus等、パブリックドメインで使用できるデータベースも構築されている。しかし、その一方で、各データベースに蓄積されているデータは、必ずしも一定の条件でサンプルが採取され解析が行われたものではなく解析誤差等を含むため、純粋にサンプルの遺伝子発現等の状態を反映しているデータベースであるということは難しい。また、サンプルを採取した個体の状態も臨床的な背景も均質ではない。
【0006】
さらに、疾患の予後予測や、薬剤の治療効果の予測に使用される遺伝子の数は限られているのに対して、次世代シーケンシング解析やマイクロアレイ解析では、測定の必要のない遺伝子やタンパク質までも大量に解析されるという問題も含んでいる。
【0007】
本発明は、次世代シーケンシング解析やマイクロアレイ解析におけるこのような問題に鑑み、次世代シーケンシング解析やマイクロアレイ解析で取得される、測定対象の遺伝子及び測定対象以外の遺伝子の発現、又は前記遺伝子産物の機能を反映するデータを有効活用することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決するための第1の実施形態は、生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築する方法であって、前記データベースが、新規マーカーの候補を探索するために使用されるものである、下記工程を含む、方法:解析対象遺伝子を特定する情報を取得する工程、解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得する工程、前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報をデータベースに出力する工程、及び非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報と、前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報とを前記データベースに記憶する工程である。
【0009】
本発明の課題を解決するための第2の実施形態は、生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報に基づき、新規マーカーの候補を探索する方法であって、下記工程を含む方法:解析対象遺伝子を特定する情報を取得する工程、解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得する工程、非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報をデータベースに出力する工程、非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報と、前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報とを前記データベースに記憶する工程、前記遺伝子関連情報と、前記生体試料関連情報とを対応させる工程、前記遺伝子関連情報に含まれる遺伝子関連測定データと、前記生体試料関連情報との関連性の強さを示す数値を遺伝子ごとに取得する工程、及び前記数値に基づいて、前記生体試料関連情報と関連の強い遺伝子を新規マーカーの候補を決定する工程である。
【0010】
本発明の課題を解決するための第3-1の実施形態は、生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築するシステム500であって、前記データベースが、新規マーカーの候補を探索するために使用されるものであり、前記システムは、検査機関情報処理装置20と、検査機関データベース記憶装置100とを備え、前記検査機関情報処理装置20は、解析対象遺伝子を特定する情報を取得し、解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報を前記検査機関データベース記憶装置に出力し、前記検査機関データベース記憶装置100は、非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報と、前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報とを受け付け、記憶する、システムである。
【0011】
本発明の課題を解決するための第3-2の実施形態は、生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築するシステム600であって、前記データベースが、新規マーカーの候補を探索するために使用されるものであり、前記システムは、医療機関情報処理装置50と、検査機関情報処理装置20と、医療機関データベース記憶装置101とを備え、前記検査機関情報処理装置20は、解析対象遺伝子を特定する情報を取得し、解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報を前記医療機関データベース記憶装置101に出力し、前記医療機関情報処理装置50は、前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報を前記医療機関データベース記憶装置101に出力し、前記医療機関データベース記憶装置は、前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報と、前記生体試料関連情報とを受け付け、記憶する、システムである。
【0012】
本発明の課題を解決するための第3-3の実施形態は、生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築するシステム700であって、前記データベースが、新規マーカーの候補を探索するために使用されるものであり、前記システムは、医療機関情報処理装置50と、検査機関情報処理装置20と、データベース記憶装置102とを備え、前記検査機関情報処理装置20は、解析対象遺伝子を特定する情報を取得し、解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報を前記データベース記憶装置に出力し、前記医療機関情報処理装置50は、前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報を前記データベース記憶装置に出力し、前記データベース記憶装置102は、前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報と、前記生体試料関連情報とを受け付け、記憶する、システムである。
【0013】
第1、第2、第3-1、第3-2、第3-3の実施形態によれば、次世代シーケンシング解析やマイクロアレイ解析で取得される、測定対象の遺伝子及び測定対象以外の遺伝子の発現、又は前記遺伝子産物の機能を反映するデータを有効活用することができる。
【0014】
本発明の課題を解決するための第4の実施形態は、生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築する方法であって、前記データベースに記憶されたデータが、新規マーカーを探索するための人工知能の訓練データ又は検証データとして使用される、下記工程を含む、方法:測定対象遺伝子を特定する情報を取得する工程、測定対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得する工程、前記測定対象遺伝子の遺伝子関連情報をデータベースに記憶する工程、及び前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報を前記データベースに記憶する工程である。
本発明によれば、大量の人工知能の訓練データ又は検証データを提供することができる。
【0015】
本発明の課題を解決するための第5の実施形態は、生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築する方法であって、前記データベースが、新規マーカーの候補を探索するために使用されるものである、下記工程を含む、方法:解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子を含む複数の遺伝子について取得された前記遺伝子関連情報を、検査機関情報処理装置及び/又は医療機関情報処理装置から取得する工程、前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報を、検査機関情報処理装置及び/又は医療機関情報処理装置から取得する工程、及び前記遺伝子関連情報と、前記生体試料関連情報とを前記データベースに記憶する工程である。
【0016】
本発明の課題を解決するための第6の実施形態は、生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報のデータベースを構築するシステム500,600,700であって、前記データベースが、新規マーカーの候補を探索するために使用されるものであり、前記システムは、データベース記憶装置100,101,102を備え、前記データベース記憶装置は、解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子を含む複数の遺伝子について取得された前記遺伝子関連情報を、検査機関情報処理装置20及び/又は医療機関情報処理装置50から取得し、前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報を、検査機関情報処理装置20及び/又は医療機関情報処理装置50から取得し、前記遺伝子関連情報と、前記生体試料関連情報とを記憶する、システムである。
第5、第6の実施形態によれば、次世代シーケンシング解析やマイクロアレイ解析で取得される、測定対象の遺伝子及び測定対象以外の遺伝子の発現、又は前記遺伝子産物の機能を反映するデータを有効活用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、次世代シーケンシング解析やマイクロアレイ解析で取得される、測定対象の遺伝子及び測定対象以外の遺伝子の発現、又は前記遺伝子産物の機能を反映するデータを有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1の実施形態の概要を示す図である。
図2図2は、生体試料の採取から測定用試料の前処理までの流れを示す図である。
図3図3は、測定用試料の前処理産物を用いてデータベースを構築するまでを示すフローチャートである。
図4図4は、Curebest(登録商標)95GC Breastの解析対象遺伝子の一部を示す図である。
図5図5は、Curebest(登録商標)95GC Breastの図4に示された解析対象遺伝子以外の解析対象遺伝子を示す図である。
図6図6は、遺伝子関連情報の例を示す図である。
図7図7は、生体試料関連情報の例を示す図である。
図8図8は、報告書の例を示す図である。
図9図9は、測定用試料の前処理産物を用いて訓練データ又は検証データのデータベースを構築するまでを示すフローチャートである。
図10図10は、第3-1の実施形態のデータベース構築システムの概要を示す図である。
図11図11は、第3-2の実施形態のデータベース構築システムの概要を示す図である。
図12図12は、第3-3の実施形態のデータベース構築システムの概要を示す図である。
図13図13は、検査機関情報処理装置のブロック図である。
図14図14は、医療機関情報処理装置のブロック図である。
図15図15は、第1から第3のデータベース記憶装置のブロック図である。
図16図16は、新規マーカーの候補の探索方法を示すフローチャートである。
図17図17は、新規マーカー候補探索装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明におけるデータベースを構築する方法、データベースを構築するためのシステム、及びデータベース記憶装置は、以下に説明する具体的な実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明において同一の構成には、同一の符号を付す。したがって、同一符号が付された各構成についての説明は、同一符号間で共有され得る。さらに、各実施形態において共通して使用される用語については、各実施形態における用語の説明は、他の実施形態にも援用される。
【0020】
[1.データベースの構築方法]
初めに、図1を用いて本発明の一実施形態の概要を説明する。本実施形態は、生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を指標として疾患の診断や疾患の予後の予測、投薬の要否を判定する検査において、前記検査の目的を達成するために測定される解析対象遺伝子以外の、非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を記憶したデータベースを構築する。例えば、生体試料として乳癌組織を用いて、Curebest(登録商標)95GC Breast(シスメックス株式会社)による検査を行う際、一般的には、検査項目に含まれる解析対象遺伝子(95GC)についてRNAの発現量等の遺伝子関連測定データを取得する。本発明においては、95GCのRNAの発現量を測定するのと同様の方法により、95GC以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連測定データ含む遺伝子関連情報をデータベース化する。これらのデータベースは、疾患のバイオマーカーや疾患の治療標的分子等の新規マーカーを探索するために、例えば前記新規マーカーの再解析(リプロファイリング)に使用することができる。
【0021】
また、これらのデータベースは、人工知能を用いて前記新規マーカーの探索等を行う際に、人工知能に機械学習を行わせるための訓練データ、検証データを提供するために使用することが可能である。さらに、前記データベースは、統計学的な手法を用いて、新規マーカーの探索を行う際の検証データを提供するために使用することが可能である。
【0022】
[1-1.リプロファイリング用データベースの構築]
本発明の第1の実施形態は、新規マーカーの候補を探索するリプロファイリングに使用されるデータベースの構築方法に関する。具体的には、前記データベースは、生体試料における、遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報を不揮発性に記憶したものである。
【0023】
前記新規マーカーは、例えば、疾患のバイオマーカー又は疾患の治療の標的分子である。前記疾患のバイオマーカーは、疾患のリスク判定、スクリーニング、鑑別診断、予後予測、再発予測等に使用することができる。また、前記疾患の治療の標的分子は、前記標的分子の機能を制御することにより、疾患を予防、治療、又は疾患の進行を遅延させることができる分子である。さらに、前記標的分子は、治療効果を予測するために用いられてもよい。
【0024】
(1)生体試料の採取から測定用試料の前処理
次に、図2を用いてデータベース構築に使用される生体試料の採取から遺伝子関連情報を取得するまでの工程を説明する。
【0025】
本実施形態において、生体試料としては、生体から採取されたものである限り制限されない。例えば、前記生体試料は、血液試料(全血、血漿、血清等)、尿、体液(汗、皮膚からの分泌液、涙液、唾液、髄液、腹水及び胸水)及び組織(新鮮組織、凍結組織、固定組織、及びパラフィン等の包埋剤に包埋された組織)であり得る。
【0026】
また、生体試料は、所定の疾患、所定の疾患型及び所定の疾患の病期よりなる群から選択される少なくとも一種の病巣から採取されたものであることが好ましい。前記疾患は制限されないが、疾患として、好ましくは腫瘍(良性上皮性腫瘍、良性非上皮性腫瘍、悪性上皮性腫瘍、悪性非上皮性腫瘍)であり、より好ましくは悪性上皮性腫瘍、又は悪性非上皮性腫瘍であり、さらに好ましくは悪性上皮性腫瘍であり、さらにより好ましくは乳癌である。最も好ましくはリンパ節転移陰性かつエストロゲン受容体(ER)陽性乳癌である。
【0027】
前記生体試料は、好ましくは複数であり、前記複数の生体試料は異なる患者の病巣から採取されたものである。より好ましくは前記複数の生体試料は、異なる患者の同一疾患の病巣から採取されたものであり、さらに好ましくは異なる患者の同一病期の病巣から採取されたものである。
【0028】
また、生体試料は、前記病巣部位に対する陰性対照となりうる、正常と思われる組織を採取しても良い。この場合、前記正常と思われる組織は、前記病巣部位が属する組織の正常部位であることが好ましい。前記病巣部位が属する組織の正常部位は、複数の患者又は前記病巣を有していない者から採取されてもよい。
【0029】
生体試料は、患者が属する医療機関等において、手術時又は生検時に採取することができる。採取された生体試料は、チューブ等の容器に収容される。前記容器には、サーモフィッシャー・サイエンティフィック(ThermoFisherScientific)社製、商品名:RNAlater(登録商標)等の保存液又はホルムアルデヒド等の固定液が入っていてもよい。容器に収容された生体試料は、冷蔵、冷凍してもよい。前記保存液又は固定液は公知のものを使用することができるが、保存又は輸送中の生体試料内の分子の分解や構造変化を防ぎ、生体試料をある程度一定の状態に保つ観点から、市販のキット又は市販の試薬を使用することが好ましい。例えば、生体試料の採取及び生体試料の収容容器としては、Curebest(登録商標)95GC Breast(シスメックス株式会社)に付属の容器を使用することができる。
容器に収容された生体試料は、医療機関、又は検査を受託する検査機関で遺伝子関連測定データを取得するために、前処理される。
【0030】
ここで、遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データとしては、例えば、各遺伝子についてのRNA(mRNA及び/又はmicroRNA)の発現量、RNAの塩基配列情報、DNA(ゲノムDNA及び/又はミトコンドリアDNA)のメチル化量、DNA(ゲノムDNA及び/又はミトコンドリアDNA)の塩基配列情報、又は遺伝子産物であるタンパク質(単量体タンパク質、複合体タンパク質、単量体ペプチド及び複合体ペプチドを含む)の存在量、タンパク質(単量体タンパク質、複合体タンパク質、単量体ペプチド及び複合体ペプチドを含む)の糖鎖修飾情報等を挙げることができる。例えば、遺伝子関連測定データがDNAのメチル化量である場合には、前記遺伝子関連測定データには、各遺伝子におけるDNAのメチル化量の他、少なくともそのDNAのメチル化部位の位置情報が含まれる。また、遺伝子関連測定データがDNAの塩基配列情報である場合には、遺伝子関連測定データには、塩基配列情報の他、少なくとも各遺伝子のDNAの塩基配列の欠失、置換、融合、コピー数変異、又は挿入の有無と、その位置の情報が含まれる。前記DNAの配列情報には、1塩基多型、2塩基多型、3塩基多型等の遺伝子多型の情報も含まれる。さらに、遺伝子関連測定データがタンパク質の糖鎖修飾情報である場合には、前記遺伝子関連測定データには、各タンパク質の修飾の有無の他、各タンパク質の修飾位置と、前記タンパク質を修飾している糖鎖の種類の情報が含まれる。
【0031】
したがって、遺伝子関連測定データを取得するための生体試料の前処理は、上記遺伝子関連測定データを取得するために、RNA、DNA又はタンパク質等の測定用試料を抽出できる限り制限されない。
【0032】
例えば、遺伝子関連測定データを取得するためにRNAを使用する場合には、公知の方法によって生体試料からRNAを取得することができる。生体試料からのRNA抽出には、キアゲン(Qiagen)社製、商品名:Qiagen RNeasy kit(登録商標)等の市販のキットを使用することもできる。また、遺伝子関連測定データを取得するためにDNAを取得する場合にも、公知の方法によって生体試料からDNAを取得することができる。生体試料からのDNA抽出には、キアゲン(Qiagen)社製、商品名:QIAamp DNA Mini Kit(登録商標)等の市販のキットを使用することもできる。さらに遺伝子関連測定データを取得するためにタンパク質を使用する場合にも、公知の方法によって生体試料からタンパク質を抽出することができる。生体試料からのタンパク質の抽出は、GEヘルスケア・ジャパン株式会社、商品名:Mammalian Protein Extraction Buffer等の市販試薬を使用することもできる。また、生体試料がパラフィン包埋されたものである場合には、キアゲン(Qiagen)社製、商品名:QIAamp DNA FFPE Tissue Kit(登録商標)等を使用して生体試料からDNAを抽出することができる。
【0033】
生体試料の前処理は、その工程でのRNAやDNAの分解やタンパク質の構造変化等を防ぎ、測定用試料の均質化を図る点から、市販のキット又は市販の試薬を使用することが好ましい。
【0034】
次に、遺伝子関連測定データを取得する前に、前記測定用試料は必要に応じて、前処置されてもよい。前記前処理には、遺伝子関連測定データを取得する際の検出に必要な蛍光標識やビオチン標識等を測定用試料のRNA、DNA又はタンパク質又は以下で述べる測定用試料の前処理産物に施すことを含む。例えば、測定用試料がRNAである場合には、測定用試料の前処理には、前記測定用試料のRNAを鋳型として、cDNA又はcRNAを合成することが含まれてもよい。さらに、前記cDNA又はcRNAをPCRによって増幅することが含まれてもよい。また、測定用試料がDNAである場合には、測定用試料の前処理には、必要に応じて前記測定用試料のDNAをPCRによって増幅することが含まれてもよい。さらに、測定用試料の前処理には、測定用試料のDNA又は測定用試料のDNAを鋳型として増幅されたPCR産物を制限酵素で切断することが含まれてもよい。測定用試料がタンパク質である場合には、必要に応じてドデシル硫酸ナトリウム、NP-40、Triton X-100、Tween-20等の界面活性剤及び/又はβ-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール等の還元剤で変性することが含まれてもよい。前記前処理方法は、公知である。
【0035】
測定用試料のRNA、DNA又はタンパク質又は以下で述べる測定用試料の前処理産物に蛍光やビオチンを標識する方法も、公知である。例えば、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製、商品名:3’IVT PLUS Reagent Kitを使用することができる。
【0036】
上記の方法により測定用試料を前処理した前処理産物は、遺伝子関連測定データを取得するための測定に供される。
【0037】
上述した生体試料の採取、生体試料からの測定用試料の抽出及び測定用試料の前処理は、均質化されたデータベースを構築する目的から、それぞれの工程における品質を管理するため、市販のキット、又は市販の試薬等を統一して使用することが望ましい。
【0038】
次に、図3を用いて遺伝子関連測定データを取得するための各工程を説明する。遺伝子関連測定データの取得は、後述する第3の実施形態に係る検査機関情報処理装置20によって行ってもよい。
【0039】
(2)遺伝子関連測定データの取得
初めに医療機関が記入するする検査依頼書から、検査者、又は後述する検査機関情報処理装置20の処理部21が解析対象遺伝子を特定するための情報を取得する(ステップS1)。例えば、解析対象遺伝子は、疾患のリスク判定、スクリーニング、鑑別診断、予後予測、再発予測、薬効予測、及び疾患のモニタリングからなる群より選択される少なくとも一つの解析に使用される1又は複数の遺伝子を挙げることができる。さらに、前記解析対象遺伝子は、予め検査機関及び/又は医療機関等において、どの遺伝子について解析を行うか、例えば疾患ごと、疾患の病期ごとに応じて定められていることが好ましい。例えば、Curebest(登録商標)95GC Breastを例にして説明すると、Curebest(登録商標)95GC Breastには、専用の検査依頼書が貼付されている。必要事項が記入された検査依頼書は、医療機関から検査機関に郵送又はオンライン等で送付される。検査機関の検査者は、前記検査依頼書を受領することにより、検査項目がCurebest(登録商標)95GC Breastを把握し、必要に応じて、処理部21がCurebest(登録商標)95GC Breastの検査を開始するための情報の入力を受け付ける。Curebest(登録商標)95GC Breastは、図4及び図5に記載される95個の遺伝子を解析対象遺伝子とするように規定されている。したがって、検査者、あるいは処理部21は、Curebest(登録商標)95GC Breastの解析対象遺伝子が図4及び図5に記載される95遺伝子であると特定することができる。
【0040】
ここで図4及び図5に記載の「プローブセット.ID」は、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製のマイクロアレイ〔商品名:GeneChip(登録商標) System〕において、基材上に固定されたプローブの11~20個をまとめたプローブセットそれぞれにつけられているID番号を示す。前記プローブセット.IDで示された核酸(プローブセット)の塩基配列は、ウェブページhttps://www.affymetrix.com/analysis/netaffx/index.affxにより容易に入手することができる(2009年6月30日更新のデータベース)。「UniGene.ID」は、NCBIが公開しているデータベースであるUniGeneのID番号を示す。GenBankアクセッション番号は、前記サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製のマイクロアレイ(商品名:GeneChip(登録商標) System)において、基材上に固定されたプローブそれぞれの配列の設計に用いられた公開データベースGenBankのアクセッション番号を示す。前記GenBankアクセッション番号は、2009年6月30日時点での番号を示す。
【0041】
次に、ステップS2では、検査者、あるいは処理部21が、遺伝子関連測定データを所定の測定方法により取得する。遺伝子関連測定データの取得方法は制限されない。遺伝子関連測定データが、RNAの発現量、RNAの塩基配列情報、DNAのメチル化量、又はDNAの塩基配列情報である場合には、塩基配列シーケンス及び/又はマイクロアレイにより測定することができる。より具体的には、RNAの発現量を測定するためには、次世代シーケンサーを使用したRNA-seq解析(Illumina, Inc.)、RNA発現解析が可能なマイクロアレイであるサーモフィッシャー・サイエンティフィック社製、商品名:Human Genome U133 Plus 2.0 Array等を使用することができる。またDNAのメチル化量を測定するためには、マイクロアレイを利用するInfinium MethylationEPIC Kit(Illumina, Inc.)等を使用することができる。また、DNAの塩基配列情報を測定(あるいは検出)するためには、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製、商品名:Genome-Wide Human SNP Array 6.0又はGeneChip(登録商標) Human Genome U133 Plus 2.0 Array等を用いたマイクロアレイ測定、次世代シーケンサーによるエクソンシーケンスや全ゲノムシーケンス等を使用することができる。
【0042】
また、遺伝子関連測定データが、タンパク質の存在量である場合には、マイクロアレイ及び/又はELISA(EIAを含む)により測定することができる。より具体的には、RayBiotech社製の抗体アレイ(C-シリーズ、G-シリーズ、L-シリーズ、Quantibody)及びProtein Arrayシリーズ等を用いて測定することができる。
【0043】
さらに、遺伝子関連測定データが、タンパク質の糖鎖修飾である場合には、マイクロアレイ及び/又はELISA(EIAを含む)により測定することができる。より具体的には、RayBiotech社製のレクチンアレイ等を用いて測定することができる。
【0044】
ステップS2では、測定用試料又はこれを前処理して得られた産物が核酸である場合には、上記測定行う前に、これらの核酸を熱変性することを含んでもよい。
【0045】
上記測定方法は、取得される遺伝子関連測定データの均質性を保つ観点から、遺伝子関連測定データの再現性が担保される測定方法を選択することが好ましい。例えばマイクロアレイやその他の測定試薬は、一定のものを使用することが好ましい。このように、測定方法の均質化を図ることにより、上記測定試料及び/又は測定試料の前処理産物の均質化とあわせて、遺伝子関連測定データの品質を一定に保つことができる。また、遺伝子関連測定データの品質さらに一定に保つために、遺伝子関連測定データを取得する検査機関は、単一の機関(一定の検査精度を保ったブランチラボも含む)であるか、一定の検査精度を保った1又は複数の機関であることが好ましい。前記検査機関は、医療機関内に設置されていてもよい。
【0046】
上記測定方法による遺伝子関連測定データの取得は、上記各測定方法において蛍光等のシグナルを測定するために適した後述する測定装置10が、上記測定においてシグナルを取得し、上記処理部21が当該シグナルの強度を算出することにより行われる。また前記シグナルの強度はRNA量(コピー数)、タンパク質量、DNAメチル化量又はメチル化の割合、RNAの塩基配列の変化率、DNAの塩基配列の変化率、タンパク質の糖鎖修飾の割合等に換算されて、遺伝子関連測定データとして取得されてもよい。
【0047】
上記測定方法により取得された遺伝子関連測定データは、図4又は図5に示すように、少なくとも遺伝子名(あるいはGenBankのアクセッション番号)又は遺伝子を特定するための符号(例えば、GeneChip(登録商標) Systemのプローブセット.ID)と紐付けられている。したがって、遺伝子名又は遺伝子を特定するための符号から、検査者又は処理部21は、どの遺伝子関連測定データが非解析対象遺伝子のものであるかを特定することができ(ステップS3)、検査者、又は処理部21が、非解析対象遺伝子の遺伝子関連測定データを取得することができる(ステップS4)。
【0048】
上記遺伝子関連測定データの取得は、解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子についてのみ行ってもよいが、例えば、マイクロアレイ上に搭載されている全ての解析対象や、全RNA、全DNA又は全タンパク質に対して測定を行い、例えば遺伝子関連測定データに非解析対象遺伝子の遺伝子関連測定データのみを抽出してもよい。
【0049】
取得された遺伝子関連測定データは、図3のステップS5において、図6に示すように遺伝子名(あるいはGenBankのアクセッション番号)又は遺伝子を特定するための符号に加え、遺伝子関連測定データの測定日、測定方法、測定試料の量、検査機関、生体試料の保存方法及び生体試料の保存期間よりなる群から選択される少なくとも一種、及び生体試料を特定するための符号(例えばID)等の他の遺伝子関連情報と紐付けられ、検査者、又処理部21によって後述する第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101、又は第3のデータベース記憶装置102に出力される(ステップS6)。
【0050】
上記遺伝子関連測定データは、複数の非解析対象遺伝子及び/又は複数の解析対象遺伝子について取得されることが好ましい。前記複数の非解析対象遺伝子は、例えば解析対象遺伝子としては選択されなかったものの、所定の疾患、所定の疾患型又は所定の疾患の病期との関連が示唆された遺伝子を選択してもよい。非解析対象遺伝子は、解析対象遺伝子以外であって、かつ上記各測定方法において解析可能な遺伝子としてもよい。
【0051】
さらに、上記方法により、検査者、あるいは処理部21は、解析対象遺伝子の遺伝子関連測定データをさらに取得してもよい(ステップS9)。また、解析対象遺伝子の遺伝子関連測定データは、非解析対象遺伝子の遺伝子関連測定データと同様に、他の遺伝子関連情報と紐付けられて(ステップS10)、第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101、又は第3のデータベース記憶装置102に出力されてもよい(ステップS10)。
【0052】
上記遺伝子関連データは、正規化又は標準化されて第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101、又は第3のデータベース記憶装置102に記憶されてもよい。正規化の方法としては、例えば測定方法がマイクロアレイの場合には、総インテンシティ正規化、Lowess正規化等の大域的正規化及び/又は局所的正規化を挙げることができる。より具体的には、RMAアルゴリズム、MAS5アルゴリズム、PLIERアルゴリズム等によって正規化することができる。前記RMAアルゴリズムを使用した解析ソフトウェアとしては、商品名:Affymetrix Expression Consoleソフトウェア(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社)等を挙げることができる。また、測定方法が次世代シーケンサーを使用する方法である場合には、Reads Per Million mapped reads (RPM)、Read per kilobase of exon model per million mapped reads (RPKM)、Trimmed mean of M values (TMM)法等を挙げることができる。
【0053】
上記遺伝子関連データの標準化は、生体試料の内部標準であるハウスキーピング遺伝子(GAPDH:glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、β-アクチン、β2-マイクログロブリン、HPRT 1:hypoxanthine phosphoribosyltransferase 1等)又はその遺伝子産物の発現量に基づいて遺伝子関連測定データの値を相対化する方法、マイクロアレイ実験の遺伝子発現情報データベースNCBI Gene Expression Omnibus (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)に登録されているDataSet Record GDS3834 (Multiple normal tissues)等のデータを基準値として、Zスコア、有意確率(p値)、又は尤度等を求める統計学的処理により行うことができる。また、前記基準値となるデータも、均質化された方法で取得されたものであることが好ましい。
【0054】
ここで、複数の解析対象遺伝子の組み合わせとしては、例えば、Curebest(登録商標) 95GC Breast解析対象遺伝子、Oncotype(登録商標) DX解析対象遺伝子、MammaPrint解析対象遺伝子、BluePrint解析対象遺伝子、PAM50解析対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V6解析対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V6 + COSMIC解析対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V6 + UTR解析対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V5対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V5 + UTRs対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V5 + IncRNA対象遺伝子、SureSelect Human All Exon V5 + Regulatory対象遺伝子、TruSight Cancer対象遺伝子、TruSight Tumor 15対象遺伝子、及びTruSight Tumor 170対象遺伝子よりなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0055】
上記解析対象遺伝子は、20遺伝子から100遺伝子程度であることが一般的である。しかし、実際にマイクロアレイ等で測定される遺伝子は、38,500遺伝子程度であり、遺伝子産物のバリアント等も含めると50,000以上の遺伝子産物について解析が行われている。したがって、上記解析対象遺伝子を測定する際に、取得した非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報や、これに対応する生体試料関連情報は非常に膨大なもとなる。したがって、これらの情報を集めたデータベースは、非常に膨大な情報を有し有用である。
【0056】
また、上記遺伝子関連測定データを取得するにあたり、どのような疾患や病期の患者から生体試料を採取するか、どのような測定方法で遺伝子関連測定データを取得するか、生体試料についてどのような部位を採取するか、どのくらいの試料を採取するか、生体試料をどのように採取するか、測定まで採取された生体試料をどのように保存するか等の検査基準を予め定めておき、この基準に適合する生体試料について遺伝子関連測定データを取得してもよい。前記検査基準としては、前記診療関連情報、前記治療関連情報、生体試料の種類、測定方法、測定される前記生体試料の量、生体試料の採取方法、生体試料の保管方法よりなる群から選択される少なくとも一つに対して設定されている基準を挙げることができる。当該基準は、検査機関及び/又は医療機関が定めてもよい。
【0057】
(3)データベースの構築
上記遺伝子関連情報を記憶する第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101、又は第3のデータベース記憶装置102の処理部101は、図3のステップ6で出力された遺伝子関連情報を取得し(ステップS7)、取得した前記遺伝子関連情報と、ステップ12で医療機関から提供され取得した生体試料関連情報5とを不揮発性に記憶する(ステップS8)。前記生体試料関連情報5には、図7に示すように、少なくとも生体試料を特定するための符号が含まれる。また生体試料を特定するための符号(例えばID)には、前記生体試料を採取した患者を特定するための符号(例えば患者ID)と、生体試料の種類が紐付けられる。さらに、生体試料関連情報5には、前記患者の診療関連情報、及び治療関連情報よりなる群から選択される少なくとも一種が含まれる。前記診療関連情報には、疾患名、疾患型名、疾患の病期、患者の性別、患者の年齢、患者の既往歴、患者の家族歴、再発履歴、転移履歴、問診情報、月経履歴及び遺伝子関連情報以外の検査情報よりなる群から選択される少なくとも一種が含まれる。また、前記治療関連情報には、例えば、図7に示すように、治療薬の投与、予防薬の投与、放射線治療及び外科的処置よりなる群から選択される少なくとも一種の治療履歴が含まれる。より具体的には、前記治療が、治療薬の投与又は予防薬の投与である場合には、前記治療履歴には、投与した薬剤の名称、用量、投与頻度、投与日、投与期間等が含まれる。また、前記治療が放射線治療である場合には、前記治療履歴には、1回あたりの放射線照射量、頻度、施術日、総照射放射線量等が含まれる。前記治療が外科的処置である場合には、前記治療履歴には、主な切除部位、術式、リンパ節等の切除部位周辺組織の郭清の有無、施術日等が含まれる。
【0058】
前記遺伝子関連情報と前記生体試料関連情報5は、生体試料を特定するための符号をキーとして対応させることが可能である。このため、第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101、又は第3のデータベース記憶装置102において、前記遺伝子関連情報と前記生体試料関連情報5とは、一つのファイルに結合される必要はないが、一つのファイルに結合されてもよい。また、別の態様として、前記遺伝子関連情報と前記生体試料関連情報5とは、ネットワークを介して例えばデータベースのユーザの端末から呼び出し可能に接続された2つのデータベース記憶装置にそれぞれが個別に記憶されていてもよい。
【0059】
さらに、本実施形態において構築されたデータベースは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記憶媒体に記憶されていてもよい。前記記憶媒体へのデータベースの記憶形式は、前記提示装置が前記データベースを読み取り可能である限り制限されない。前記記憶媒体への記憶は、不揮発性であることが好ましい。この場合、前記データベースの構築方法は、前記データベースを記憶した記憶媒体の製造方法と読み替えることができる。
【0060】
(4)その他の態様
上記データベースの構築方法においては、上記1-1.(2)で取得された解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2、又は解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2と非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を医療機関に報告するための報告書3,4を作成する工程を含んでいてもよい。前記報告書3,4には、例えば図8に示すように、各遺伝子の名称(あるいはGenBankのアクセッション番号)及び/又は各遺伝子を特定するための符号と、各遺伝子についての前記遺伝子関連測定データと、前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料を特定するための符号と、遺伝子関連測定データの測定日、測定方法、検査機関の名称、生体試料の保存方法及び生体試料の保存期間よりなる群から選択される少なくとも一種とが含まれる。さらに、報告書3,4は、例えば疾患のリスク判定、スクリーニング、鑑別診断、予後予測、再発予測、薬効予測、及び疾患のモニタリングよりなる群より選択される少なくとも一つの判定結果を含んでいてもよい。Curebest(登録商標) 95GC Breastでは、乳癌の術前化学療法に対する感受性、リンパ節転移陰性かつエストロゲン受容体(ER)陽性乳癌患者について乳癌の再発伴う予後を予測することができる。さらには、前記予後予測から、手術後にホルモン療法を適用するのみでよいか、化学療法を併用すべきかの予測を行うこともできる。例えば、Curebest(登録商標) 95GC Breastでは、報告書3には、リンパ節転移陰性かつエストロゲン受容体(ER)陽性乳癌患者について、乳癌再発の予後予測結果がH(再発High-risk群)又はL(再発Low-risk群)として表示される。また、報告書3,4には、生体試料に検査に必要な量の癌細胞が含まれていたかを示すための癌細胞の含有率(有無)を示す値を表示してもよい。
【0061】
本実施形態において、検査機関情報処理装置20の処理部21が行う各ステップ(ステップS1からステップS6、又はステップS1からステップS6、ステップS9及びステップS10)は、コンピュータプログラムによって実行される。第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101、又は第3のデータベース記憶装置102の処理部101が行う各ステップ(ステップS7、ステップS12及びステップS8)もまた、コンピュータプログラムによって実行される。前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記憶媒体に記憶されていてもよい。前記記憶媒体へのプログラムの記憶形式は、前記提示装置が前記プログラムを読み取り可能である限り制限されない。前記記憶媒体への記憶は、不揮発性であることが好ましい。
【0062】
また、本実施形態の一例において、リプロファイリングにより探索される疾患のバイオマーカーは、前記生体試料が採取された患者が患う疾患とは異なる疾患のバイオマーカーであっても、前記生体試料が採取された患者が患う疾患と同じ疾患のバイオマーカーであってもよい。
【0063】
本実施形態によれば、生体試料の採取からデータベース構築までの工程を均質化するよう、測定試料、遺伝子関連測定データの品質を管理した条件で行うことも可能である。このように品質が管理された条件で取得される遺伝子関連測定データは、生体試料の保存状態による測定試料の品質不良等を考慮する必要がないため、生体試料を採取した患者の病変組織の状態を反映する。したがって、第1の実施形態に従って構築されるデータベースは、患者の病変組織の状態を反映するという点において、他のデータベースよりも信頼性が高い。
【0064】
[1-2.訓練データ、検証データ用のデータベースの構築]
本発明の第2の態様は、人工知能を用いて前記新規マーカーの探索等を行う際に、人工知能に判別式、決定木、最近傍法、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク、深層学習等の機械学習を行わせるための訓練データ(教師データ、学習データともいう)、構築した学習モデルが有効か否かを判定するための検証データ(テストデータ)を提供するためのデータベースの構築方法に関する。また、本実施形態において構築されるデータベースは、回帰分析、重回帰分析、分散分析、主成分分析などの統計学的手法によって求められる数理モデルの検証(バリデーション)に使用することができる。
【0065】
本発明のデータベースの構築方法においては、第1の実施形態で述べたように、生体試料の採取からデータベース構築までの工程を均質化するよう、測定試料、遺伝子関連測定データの品質を管理した条件で行うことも可能である。このため、上記第1の実施形態に記載の生体試料の採取、生体試料の前処理、前記前処理によって取得された測定試料の前処理方法、及び遺伝子関連測定データの取得方法にしたがって取得された解析対象遺伝子及び非解析対象遺伝子の遺伝子関連測定データは、患者の病変組織の状態を反映するという点において、他のデータベースよりも信頼性が高い。このため、訓練データ、又は構築した学習モデルが有効か否かを判定するための検証データとして、信頼性の高いデータを提供することができる。
【0066】
具体的には、第2の実施形態は、図9に示すように、検査者、又は検査機関情報処理部20の処理部21が解析対象遺伝子を特定する情報を取得するステップS21と、検査者、又は処理部21が、解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得するステップS22と、前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2を第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101、又は第3のデータベース記憶装置102に出力するステップS23を含む。また、第2の実施形態は、第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101、又は第3のデータベース記憶装置102の処理部101が、ステップ23で出力された遺伝子関連情報を取得し(ステップS24)、取得した前記遺伝子関連情報と、ステップS26で医療機関から提供され取得した生体試料関連情報5とを不揮発性に記憶するステップS25を含む。
【0067】
さらに、本実施形態において構築されたデータベースは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記憶媒体に記憶されていてもよい。前記記憶媒体へのデータベースの記憶形式は、前記提示装置が前記データベースを読み取り可能である限り制限されない。前記記憶媒体への記憶は、不揮発性であることが好ましい。この場合、前記データベースの構築方法は、前記データベースを記憶した記憶媒体の製造方法と読み替えることができる。
【0068】
また、第2の実施形態ではさらに、検査者、又は処理部21が、ステップ22において、非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、ステップ23において、前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101、又は第3のデータベース記憶装置102に出力し、ステップ24において、前記非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101、又は第3のデータベース記憶装置102に記憶してもよい。また、第2の実施形態では、ステップS22からステップS25において非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1のみからデータベースを構築してもよい。
【0069】
本実施形態において、検査機関情報処理装置20の処理部21が行う各ステップ(ステップS21からステップS23、又はステップS1からステップS23、ステップS26及びステップS27)は、コンピュータプログラムによって実行される第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101、又は第3のデータベース記憶装置102の処理部101が行う各ステップ(ステップS24、ステップS26及びステップS25)もまた、コンピュータプログラムによって実行される。前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記憶媒体に記憶されていてもよい。前記記憶媒体へのプログラムの記憶形式は、前記提示装置が前記プログラムを読み取り可能である限り制限されない。前記記憶媒体への記憶は、不揮発性であることが好ましい。
【0070】
上記方法により構築されたデータベースは、人工知能に学習させるために、又は人工知能が構築したモデルを検証するために使用することができる。データベースに記憶された解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1は、目的に応じて一方又は両方を人工知能に学習させるために使用してもよい。例えば1疾患について、データベースに記憶されている解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2とこれらに対応する生体資料関連情報5を2群に分け、一方を訓練データとして使用し、もう一方を検証データとして使用してもよい。また、1疾患について、データベースに記憶されている解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2を全て訓練データとして使用し、Leave-One-Out Cross-Validationを行う場合にも、Leave-One-Out Cross-Validationに使用される解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2とこれらに対応する生体資料関連情報5は、検証データとして扱うことができる。本段落において、解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2は、非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1と置き換えることができる。
【0071】
[2.データベースを構築するシステム]
本発明の第3の実施形態は、上記第1の実施形態及び第2の実施形態で説明したデータベースを構築するためのシステムに関する。
【0072】
第3の実施形態の実施形態には、検査機関においてデータベースを構築する第3-1の実施形態、医療機関においてデータベースを構築する第3-2の実施形態、及び検査機関及び医療機関が協働でデータベースを構築する第3-3の実施形態を含む。
以下、図10から図12に示すシステムの概略図と、図13から図15を用いて各実施形態について説明する。
【0073】
[2-1.各ハードウェアの構成]
図13に記載の検査機関情報処理装置20、図14に記載の医療機関情報処理装置50、図15に記載の第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101及び第3のデータベース記憶装置102は、ハードウェア構成の一例である。ハードウェアは、パーソナルコンピュータ、タブレット型端末でありうる。また、第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101及び第3のデータベース記憶装置102を構成するハードウェアは、いわゆるサーバとしての役割を有するものであってもよく、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-processing unit)であり、例えば、Linux(登録商標)、UNIX(登録商標)、マイクロソフト ウインドウズ サーバ(登録商標)等のサーバ オペレーティングシステム(Operating System:OS)を使って前記記憶装置100、101、102を制御する。
【0074】
検査機関情報処理装置20は、処理部(CPU)21、主記憶部22、ROM(read only memory)23;補助記憶部24;通信I/F(interface)25;入力I/F26;出力I/F27;メディアI/F28;バス29を備える。また、検査機関情報処理装置20は、入力部30、及び表示部31を備える。また、検査機関情報処理装置20は、記憶媒体32を備えていてもよい。
【0075】
医療機関情報処理装置50は、処理部(CPU)51、主記憶部52、ROM53;補助記憶部54;通信I/F55;入力I/F56;出力I/F57;メディアI/F58;バス59を備える。また、医療機関情報処理装置50は、入力部60、及び表示部61を備える。また、医療機関情報処理装置50は、記憶媒体62を備えていてもよい。
【0076】
第1のデータベース記憶装置(検査機関データベース記憶装置)100、第2のデータベース記憶装置(医療機関データベース記憶装置)101及び第3のデータベース記憶装置102は、処理部(CPU)201、主記憶部202、ROM203;補助記憶部204;通信I/F205;入力I/F206;出力I/F207;メディアI/F208;バス209を備える。また、第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101及び第3のデータベース記憶装置102は、入力部210、及び表示部211を備える。また、第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101及び第3のデータベース記憶装置102は、記憶媒体212を備えていてもよい。
【0077】
CPU21、51、201は、ROM23、53、203、及び補助記憶部24、54、204に記憶されたプログラムに基づいて、各部を制御する。CPU21、51、201はMPU21、51、201としてもよい。
【0078】
ROM23、53、203は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成され、検査機関情報処理装置10、医療機関情報処理装置50、第1のデータベース記憶装置100、第2のデータベース記憶装置101及び第3のデータベース記憶装置102の起動時に、CPU21、51、201によって実行されるブートプログラムや前記装置のハードウェアの動作に関連するプログラムや設定を記憶する。
【0079】
主記憶部22、52、202は、SRAM又はDRAMなどのRAMから構成され、入力部30、60、210から受け付けた情報を揮発性に記憶する。補助記憶部24、54、204はアプリケーションソフトや、前記各装置20、50、100、101,102の動作中に入力又は生成される情報を不揮発性に記憶する(不揮発性の記憶は、「記録」ともいう)。補助記憶部24、54、204は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等によって構成される。
【0080】
通信I/F25、55、205は、外部機器からの情報を受信し、また各装置20、50、100、101,102が保存又は生成する情報を外部に送信する。通信I/F25、55、205は、USB、IEEE1394、RS-232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェース、ネットワークインタフェースコントローラ(Network interface controller:NIC)等から構成される。
【0081】
入力I/F26、56、206は、入力部30、60、210からの文字入力、クリック、音声入力等を受け付ける。例えば入力I/F26、56、206は、USB、IEEE1394、RS-232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成される。受け付けた入力内容は、主記憶部22、52、202又は補助記憶部24、54、204に記憶される。
【0082】
出力I/F27、57、207は、例えば、入力I/F26、56、206と同様のインタフェースから構成され、CPU21、51、201が生成した情報を表示部31、51、211に出力する。出力I/F27、57、207は、CPU21、51、201が生成し、補助記憶部24、54、204に記憶した情報を、表示部31、51、211に出力する。ここで表示部31、51、211は、ディスプレイ又はプロジェクタであってもよいが、プリンターであってもよい。
【0083】
メディアI/F28、58、208は、記憶媒体32、62、212に記憶された例えばアプリケーションソフト等を読み出す。読み出されたアプリケーションソフト等は、主記憶部22、52、202又は補助記憶部24、54、204に記憶される。また、メディアI/F28、58、208は、CPU21、51、201が生成した情報を記憶媒体32、62、212に書き込む。メディアI/F28、58、208は、CPU21、51、201が生成し、補助記憶部24、54、204に記憶した情報を、記憶媒体32、62、212に書き込む。記憶媒体32、62、212は、フレキシブルディスク、CD-ROM、又はDVD-ROM等で構成される。記憶媒体32、62、212は、フレキシブルディスクドライブ、CD-ROMドライブ、又はDVD-ROMドライブ等によってメディアI/F28、58、208と接続される。
CPU21、51、201による各ハードウェア構成の制御は、バス29、59、209によって各ハードウェア構成に伝達される。
【0084】
[2-2.検査機関においてデータベースを構築するシステム]
第3-1の実施形態に係るシステム500は、図10に示すように、検査機関情報処理装置20と、第1のデータベース記憶装置100とを備える。また、本実施形態に係るシステム500は、医療機関情報処理装置50を備えていてもよい。検査機関情報処理装置20は、測定装置10と直接、又はネットワークを介して接続され、測定システム300を構築してもよい。前記システムにおいて、少なくとも検査機関情報処理装置20と第1のデータベース記憶装置100とは、ネットワークを介して接続されていてもよい。また、検査機関情報処理装置20と医療機関情報処理装置50とは、ネットワークを介して接続されていてもよい。
【0085】
前記検査機関情報処理装置20の処理部21は、例えば入力部30からの入力により、あるいは通信I/F25又はメディアI/F28を介して解析対象遺伝子を特定する情報を取得し、主記憶部22、ROM23又は補助記憶部24に記憶する。また、処理部21は、測定装置10から遺伝子関連測定データを取得する。次に処理部21は、解析対象遺伝子及び/又は解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、各遺伝子について遺伝子関連情報を生成する。続いて、処理部21は、前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を通信I/F25を介して、前記第1のデータベース記憶装置100に出力する。
【0086】
前記第1のデータベース記憶装置100の処理部201は、解析対象遺伝子及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を、通信I/F205を介して取得する。また、第1のデータベース記憶装置100の処理部201は、入力部210からの入力により、あるいは通信I/F205又はメディアI/F208を介して前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報5を取得する。第1のデータベース記憶装置100の処理部201は取得した前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1と前記生体試料関連情報5を補助記憶部204に記憶する。
【0087】
ここで、検査機関情報処理装置20の処理部21は、前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を前記第1のデータベース記憶装置100に出力するために、記憶媒体32に記憶してもよい。前記第1のデータベース記憶装置100の処理部201は、前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1をメディアI/F208を介して取得してもよい。また、検査機関情報処理装置20の処理部21は、前記生体試料関連情報5を取得して、前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1とともに、前記第1のデータベース記憶装置100に出力してもよい。
前記[1-1.リプロファイリング用データベースの構築]の各工程の説明は、ここに援用される。
【0088】
[2-3.医療機関においてデータベースを構築するシステム]
第3-2の実施形態に係るシステム600は、図11に示すように、検査機関情報処理装置20と、医療機関情報処理装置50と、第2のデータベース記憶装置101とを備える。前記システム600において、検査機関情報処理装置20と、医療機関情報処理装置50及び/又は第2のデータベース記憶装置101とは、ネットワークを介して接続されていてもよい。
【0089】
前記検査機関情報処理装置20の処理部21は、例えば入力部30からの入力により、あるいは通信I/F25又はメディアI/F28を介して解析対象遺伝子を特定する情報を取得し、主記憶部22、ROM23又は補助記憶部24に記憶する。また、処理部21は、測定装置10から遺伝子関連測定データを取得する。次に処理部21は、解析対象遺伝子及び/又は解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、各遺伝子について遺伝子関連情報を生成する。続いて、処理部21は、前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を通信I/F25を介して、前記第2のデータベース記憶装置101に出力する。
【0090】
前記医療機関情報処理部50の処理部51は、医療機関において医師等により入力部60から入力された前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報5を受け付け、前記生体試料関連情報5を通信I/F55を介して、前記第2のデータベース記憶装置101に出力する。
【0091】
前記第2のデータベース記憶装置101の処理部201は、解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を、通信I/F205を介して取得する。また、第2のデータベース記憶装置101の処理部201は、通信I/F205又を介して前記生体試料関連情報5を取得する。第2のデータベース記憶装置101の処理部201は取得した前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1と前記生体試料関連情報5を補助記憶部204に記憶する。
【0092】
ここで、検査機関情報処理装置20の処理部21は、前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を前記第2のデータベース記憶装置101に出力するために、記憶媒体32に記憶してもよい。医療機関情報処理装置50の処理部51は、前記生体試料関連情報5を前記第2のデータベース記憶装置101に出力するために、記憶媒体52に記憶してもよい。前記第2のデータベース記憶装置101の処理部201は、前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1及び前記生体試料関連情報5をメディアI/F208を介して取得してもよい。
前記[1-1.リプロファイリング用データベースの構築]の各工程の説明は、ここに援用される。
【0093】
[2-4.検査機関及び医療機関が協働でデータベースを構築するシステム]
第3-3の実施形態に係るシステム700は、図12に示すように、検査機関情報処理装置20と、医療機関情報処理装置50と、第3のデータベース記憶装置102とを備える。前記システム700において、前記検査機関情報処理装置20と第3のデータベース記憶装置102、及び/又は、医療機関情報処理装置50と第3のデータベース記憶装置102とは、ネットワークを介して接続されていてもよい。
【0094】
前記検査機関情報処理装置20の処理部21は、例えば入力部30からの入力により、あるいは通信I/F25又はメディアI/F28を介して解析対象遺伝子を特定する情報を取得し、主記憶部22、ROM23又は補助記憶部24に記憶する。また、処理部21は、測定装置10から遺伝子関連測定データを取得する。次に処理部21は、解析対象遺伝子及び/又は解析対象遺伝子以外の非解析対象遺伝子について前記遺伝子関連測定データを取得し、各遺伝子について遺伝子関連情報を生成する。続いて、処理部21は、前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を通信I/F25を介して、前記第3のデータベース記憶装置102に出力する。
【0095】
前記医療機関情報処理部50の処理部51は、医療機関において医師等により入力部60から入力された前記遺伝子関連測定データを取得した生体試料に関連する情報である生体試料関連情報5を受け付け、前記生体試料関連情報5を通信I/F55を介して、前記第3のデータベース記憶装置102に出力する。
【0096】
前記第3のデータベース記憶装置102の処理部201は、解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を、通信I/F205を介して取得する。また、第3のデータベース記憶装置102の処理部201は、通信I/F205又を介して前記生体試料関連情報5を取得する。第3のデータベース記憶装置102の処理部201は取得した前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1と前記生体試料関連情報5を補助記憶部204に記憶する。
【0097】
ここで、検査機関情報処理装置20の処理部21は、前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1を前記第3のデータベース記憶装置102に出力するために、記憶媒体32に記憶してもよい。医療機関情報処理装置50の処理部51は、前記生体試料関連情報5を前記第3のデータベース記憶装置102に出力するために、記憶媒体52に記憶してもよい。前記第3のデータベース記憶装置102の処理部201は、前記解析対象遺伝子の遺伝子関連情報2及び/又は非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1及び前記生体試料関連情報5をメディアI/F208を介して取得してもよい。
前記[1-1.リプロファイリング用データベースの構築]の各工程の説明は、ここに援用される。
【0098】
上記第3-1の実施形態、第3-2の実施形態、及び第3-3の実施形態において、検査機関情報処理装置20の処理部21は、解析対象遺伝子及び/又は非解析対象遺伝子についての報告書3、4を生成してもよい。
【0099】
[3.新規マーカーの候補を探索する方法]
本発明の第4の実施形態は、第1の実施形態により構築されたデータベースを使用して、生体試料における遺伝子の発現、又は遺伝子産物の機能を反映する遺伝子関連測定データを含む遺伝子関連情報をリプロファイリングし、新規マーカーの候補を探索する方法に関する。したがって、本実施形態において第1の実施形態と共通する用語や説明は、第1の実施形態の記載を援用する。また、第4の実施形態は、後述する第5の実施形態に係る新規マーカー探索装置80によって実施してもよい。
【0100】
本実施形態では、図16に示すように、検査者、又は新規マーカー探索装置80の処理部81は、第1の実施形態において、非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1と、前記生体試料関連情報5とを記憶したデータベースから非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1と、前記生体試料関連情報5を取得し、例えば、双方の情報に含まれる生体試料を特定するための情報をキーとして、各非解析対象遺伝子の遺伝子関連情報1と、前記生体試料関連情報5とを対応させる(ステップS31)。次に、検査者、又は新規マーカー探索装置80の処理部81は、前記遺伝子関連情報に含まれる遺伝子関連測定データと前記生体試料関連情報5との関連性の強さを示す数値を各遺伝子について取得する(ステップS32)。例えば、前記数値は、RNA量(コピー数)、タンパク質量、DNAメチル化量又はメチル化の割合、RNAの塩基配列の変化率、DNAの塩基配列の変化率、タンパク質の糖鎖修飾の割合等であり得る。前記数値は、RNA量(コピー数)、タンパク質量、DNAメチル化量又はメチル化の割合、RNAの塩基配列の変化率、DNAの塩基配列の変化率、タンパク質の糖鎖修飾の割合等の値を統計学的に処理して、標準化したデータを前記数値としてもよい。具体的には、前記標準化は、有意確率(p値)、尤度、又はZスコア等である。前記統計学的処理は、公知の方法に従って行うことができる。例えば有意確率(p値)は、ステューデントt検定、ウェルチのt検定、ウィルコクソンの符号順位検定及びこれらの改良方法から選択される有意差検定等で求めることができる。尤度は、最尤推定法、尤度検定等で求めることができる。zスコアを求める場合には、統計解析用ソフトウェア「R」で用いられる追加パッケージ集「BioConductor」ver.2.4に含まれるパッケージ「GeneMeta v1.16.0」(http://www.bioconductor.org/packages/2.4/bioc/html/GeneMeta.html)を用い、ジュン・キョン・チェ(Jung Kyoon Choi)らの文献〔「複数のマイクロアレイ研究の統合及び研究間バリデーションのモデリング(Combining multiple microarray studies and modeling interstudy variation)」バイオインフォマティックス(Bioinformatics)、第19巻、補遺1、2003年、p.i84-i90〕にしたがって、求めることができる。
【0101】
また、前記統計学的処理において、健常組織の基準データが必要な場合には、例えば、DataSet Record GDS3834 (Multiple normal tissues)等のデータを使用することができる。また、統計学的な解析において疾患の基準となるデータが必要な場合には、NCBI Gene Expression Omnibus (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)に登録されているデータを使用することができる。また、好ましくは、均質化したデータを得るために、上記第1の実施形態における遺伝子関連測定データの取得方法にしたがって、健常組織、又は疾患の病巣を有する組織の基準データを取得してもよい。
【0102】
続いて、検査者、又は新規マーカー探索装置80の処理部81は、前記数値に基づいて、各生体試料関連情報と関連の強い遺伝子を新規マーカーの候補を決定する。具体的には、検査者、又は新規マーカー探索装置80の処理部81は、上記数値について、例えば、その絶対値をとり、その絶対値に基づいて当該絶対値に対応する遺伝子関連測定データを並べ変え(ステップS33)、いずれの遺伝子の絶対値が高いかを決定する(ステップS34)。そして、検査者、又は新規マーカー探索装置80の処理部81は、絶対値が高い遺伝子を新規マーカーの候補として決定し(ステップS35)、絶対値が低い遺伝子を新規マーカーの候補ではないと決定することができる(ステップS36)。前記新規マーカーは複数であってもよい。
【0103】
各生体試料関連情報と、複数の遺伝子との関連性を求める場合には、前記数値に対して、総計学的処理等を施して関連性を求めることができる。例えば、ステップS33において前記数値の絶対値に基づいて並べられた遺伝子について最上位から所定の順位までの複数の遺伝子について、FALSE DISCOVERY RATEやファミリーワイズエラー率、Bonferroni法、Holm法等の多重比較;Permutation test、Bootstrap法、Cross Validation等のリサンプリング法等によって生体資料関連情報を関連性のある(有意差が認められる)遺伝子を推定する方法を挙げることができる。
【0104】
また、各遺伝子を生体内での機能(例えばアポトーシス関連遺伝子等)ごとに分類し、前記生体内の機能と各診療関連情報又は各治療関連情報等との関連性を求めてもよい。このような関連は、Gene Set Enrichment Analysis等により求めることができる。あるいは、超幾何分布等により、生体試料関連情報との関連性が強い遺伝子群を選出した後で、各遺伝子を生体内機能に基づいて分類された遺伝子群との重なり度合を指標に各遺伝子と生体試料関連情報との関連性を求めることができる。
【0105】
さらに、例えば家族歴の有無等の診療関連情報、又は疾患の予後が良好であるか否か等の治療関連情報と遺伝子関連測定データの関連の強さに基づいて、新規マーカーの候補を探索してもよい。このような探索は、取得された前記遺伝子関連測定データと生体試料関連情報との関連性を示す数値を使って、回帰分析、分散分析、主成分分析等の統計学的処理により;又は階層的クラスタリング、k-means、mean-shift等のクラスタ解析により、数理モデルを求め、得られた数理モデルを、前記数値の一部を使って検証(バリデーション)し、その検証データから生体試料関連情報と関連性の強い複数の遺伝子を決定することができる。
【0106】
本実施形態において、新規マーカー探索装置80の処理部81が行う各ステップ(ステップS31からステップS36)を行う場合には、コンピュータプログラムによって実行される。前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記憶媒体に記憶されていてもよい。前記記憶媒体へのプログラムの記憶形式は、前記提示装置が前記プログラムを読み取り可能である限り制限されない。前記記憶媒体への記憶は、不揮発性であることが好ましい。
【0107】
[4.新規マーカーの候補を探索装置]
図17に記載の新規マーカー探索装置80は、ハードウェア構成の一例である。ハードウェアは、パーソナルコンピュータ、タブレット型端末でありうる。
【0108】
新規マーカー探索装置80は、処理部(CPU)81、主記憶部82、ROM83;補助記憶部84;通信I/F85;入力I/F86;出力I/F87;メディアI/F88;バス89を備える。また、新規マーカー探索装置80は、入力部90、及び表示部91を備える。また、新規マーカー探索装置80は、記憶媒体92を備えていてもよい。各構成の説明は、[2-1.ハードウェアの構成]の記載をここに援用する。
【符号の説明】
【0109】
20 検査機関情報処理装置
50 医療機関情報処理装置
100 第1のデータベース記憶装置
101 第2のデータベース記憶装置
102 第3のデータベース記憶装置
500,600,700 システム
図1
図2
図3
図4
図5
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図17