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特許7141109熱および灰分の回収装置、ならびに、回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】熱および灰分の回収装置、ならびに、回収方法
(51)【国際特許分類】
   F23J 3/04 20060101AFI20220914BHJP
   F23J 15/00 20060101ALN20220914BHJP
【FI】
F23J3/04
F23J15/00 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019007250
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020118309
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】堀田 幹則
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 彰紘
(72)【発明者】
【氏名】且井 宏和
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-228368(JP,A)
【文献】特開2017-181008(JP,A)
【文献】特開2002-013892(JP,A)
【文献】特開昭59-105817(JP,A)
【文献】特開平07-180915(JP,A)
【文献】特開2000-167337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 3/04
F23J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉における燃焼により生じた燃焼排ガスを流す燃焼排ガス流路に設置され、上記燃焼排ガスの熱および灰分を回収する回収装置であって、
上記燃焼排ガス流路は、上記燃焼炉の炉本体にて生じた上記燃焼排ガスを上方に導く第1流路と、上記第1流路の上端部と連通し上記燃焼排ガスを下方に導く第2流路と、上記第2流路の下端部と連通し上記燃焼排ガスと熱交換を行う熱交換部を備える第3流路と、を有しており、
上記回収装置は、上記第2流路に設置されており、
上記回収装置は、複数のセラミックボールを備えており、上記燃焼排ガスの熱を上記複数のセラミックボールへ蓄熱させるとともに、上記燃焼排ガス中の灰分を上記複数のセラミックボールに付着させることにより、上記燃焼排ガスの熱および灰分を回収するように構成されている、
回収装置。
【請求項2】
上記燃焼炉は、廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉である、請求項1に記載の回収装置。
【請求項3】
上記複数のセラミックボールをバッチ式にて入れ替え可能に構成されている、請求項1または2に記載の回収装置。
【請求項4】
上記複数のセラミックボールを保持する保持部材を有しており、
上記保持部材にて保持された上記複数のセラミックボールにより、上記燃焼排ガスの熱および灰分を回収するように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の回収装置。
【請求項5】
上記保持部材により保持された上記複数のセラミックボールを上記燃焼排ガス流路の側面から出し入れ可能に構成されている、請求項に記載の回収装置。
【請求項6】
上記複数のセラミックボールを連続的に入れ替え可能に構成されている、請求項1または2に記載の回収装置。
【請求項7】
上記複数のセラミックボールを転がす転がし部材を有しており、
上記転がし部材にて上記複数のセラミックボールを転がしながら、上記燃焼排ガスの熱および灰分を回収するように構成されている、請求項1、2のいずれか1項に記載の回収装置。
【請求項8】
上記複数のセラミックボールを上記燃焼排ガス流路の側面から上記燃焼排ガス流路内に設けられた上記転がし部材に供給可能に構成されている、請求項に記載の回収装置。
【請求項9】
上記燃焼排ガスの熱を蓄熱させるとともに上記燃焼排ガス中の灰分を付着させた上記複数のセラミックボールに蓄熱された上記燃焼排ガスの熱を回収する熱回収部を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の回収装置。
【請求項10】
上記燃焼排ガスの熱を蓄熱させるとともに上記燃焼排ガス中の灰分を付着させた上記複数のセラミックボールに蓄熱された上記燃焼排ガスの熱と、上記複数のセラミックボールに付着した上記燃焼排ガス中の灰分と、を回収する熱・灰分回収部を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の回収装置。
【請求項11】
上記燃焼排ガスの熱を蓄熱させるとともに上記燃焼排ガス中の灰分を付着させた上記複数のセラミックボールを振動させることにより、灰分を分離回収するように構成されている、請求項10に記載の回収装置。
【請求項12】
上記燃焼排ガスの熱を蓄熱させるとともに上記燃焼排ガス中の灰分を付着させた上記複数のセラミックボールに気流を当てることにより、熱を回収するように構成されている、請求項11のいずれか1項に記載の回収装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の回収装置を用いた上記燃焼排ガスの熱および灰分の回収方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の上記回収装置を用いて、上記燃焼炉における燃焼により生じた上記燃焼排ガスの熱を蓄熱させるとともに上記燃焼排ガス中の灰分を付着させ上記複数のセラミックボールを準備し、
当該複数のセラミックボールに蓄熱された上記燃焼排ガスの熱と、上記複数のセラミックボールに付着した上記燃焼排ガス中の灰分と、を回収し、
当該熱および灰分を回収した後の上記複数のセラミックボールを上記燃焼排ガスの熱および灰分の回収に再利用する、
セラミックボールの熱および灰分の回収方法。
【請求項15】
上記複数のセラミックボールに蓄熱された上記燃焼排ガスの熱を回収した後、上記複数のセラミックボールに付着した上記燃焼排ガス中の灰分を回収する、請求項14に記載のセラミックボールの熱および灰分の回収方法。
【請求項16】
燃焼炉における燃焼により生じた燃焼排ガスの熱を蓄熱させるとともに上記燃焼排ガス中の灰分を付着させた複数のセラミックボールを準備し、
当該複数のセラミックボールに蓄熱された上記燃焼排ガスの熱と、上記複数のセラミックボールに付着した上記燃焼排ガス中の灰分と、を回収し、
当該熱および灰分を回収した後の上記複数のセラミックボールを上記燃焼排ガスの熱および灰分の回収に再利用する際に、
上記複数のセラミックボールに蓄熱された上記燃焼排ガスの熱の回収と、上記複数のセラミックボールに付着した上記燃焼排ガス中の灰分の回収とを同時に行う
ラミックボールの熱および灰分の回収方法。
【請求項17】
上記燃焼排ガスの灰分を付着させた上記複数のセラミックボールを振動させることにより、灰分を分離回収する、請求項1416のいずれか1項に記載のセラミックボールの熱および灰分の回収方法。
【請求項18】
上記燃焼排ガスの熱を蓄熱させた上記複数のセラミックボールに気流を当てることにより、熱を回収する、請求項1417のいずれか1項に記載のセラミックボールの熱および灰分の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱および灰分の回収装置、ならびに、回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼炉における燃焼により生じた燃焼排ガスを流す燃焼排ガス流路には、一般に、熱交換器が設置され、燃焼排ガスとの熱交換により回収された熱は、発電等に利用されている。また、特許文献1等に開示されるように、燃焼排ガス流路にて、燃焼排ガス中に含まれる物質を除去することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-279012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃焼排ガス中には不燃性の灰分が含まれている。灰分は、燃焼排ガス流路内へ付着したり、熱交換器等の燃焼炉部品を腐食させたりする原因となる。この問題の改善を図るため、流路壁を利用して燃焼排ガスを冷却し、燃焼排ガス中に飽和している灰分を析出させ、燃焼排ガスから分離することが行われている。しかしながら、この方法では、燃焼排ガスの熱の回収が十分でなく、燃焼排ガス中の灰分も十分に除去することができない。燃焼排ガス中から分離されずに残った微細な灰分は、燃焼排ガスにのって燃焼排ガス流路内を下流に流れ、熱交換器に付着した場合には、熱交換器の能力を低下させる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、燃焼排ガス流路における燃焼排ガスの熱の回収と同時に、燃焼排ガス中の灰分を十分に除去することができる回収装置、また、熱および灰分の回収方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、燃焼炉における燃焼により生じた燃焼排ガスを流す燃焼排ガス流路に設置され、上記燃焼排ガスの熱および灰分を回収する回収装置であって、
上記燃焼排ガス流路は、上記燃焼炉の炉本体にて生じた上記燃焼排ガスを上方に導く第1流路と、上記第1流路の上端部と連通し上記燃焼排ガスを下方に導く第2流路と、上記第2流路の下端部と連通し上記燃焼排ガスと熱交換を行う熱交換部を備える第3流路と、を有しており、
上記回収装置は、上記第2流路に設置されており、
上記回収装置は、複数のセラミックボールを備えており、上記燃焼排ガスの熱を上記複数のセラミックボールへ蓄熱させるとともに、上記燃焼排ガス中の灰分を上記複数のセラミックボールに付着させることにより、上記燃焼排ガスの熱および灰分を回収するように構成されている、
回収装置にある。
【0007】
本発明の他の態様は、上記回収装置を用いた、
燃焼排ガスの熱および灰分の回収方法にある。
【0008】
本発明のさらに他の態様は、上記回収装置を用いて、上記燃焼炉における燃焼により生じた上記燃焼排ガスの熱を蓄熱させるとともに上記燃焼排ガス中の灰分を付着させ上記複数のセラミックボールを準備し、
当該複数のセラミックボールに蓄熱された上記燃焼排ガスの熱と、上記複数のセラミックボールに付着した上記燃焼排ガス中の灰分と、を回収し、
当該熱および灰分を回収した後の上記複数のセラミックボールを上記燃焼排ガスの熱および灰分の回収に再利用する、
セラミックボールの熱および灰分の回収方法にある。
また、本発明のさらに別の態様は、
燃焼炉における燃焼により生じた燃焼排ガスの熱を蓄熱させるとともに上記燃焼排ガス中の灰分を付着させた複数のセラミックボールを準備し、
当該複数のセラミックボールに蓄熱された上記燃焼排ガスの熱と、上記複数のセラミックボールに付着した上記燃焼排ガス中の灰分と、を回収し、
当該熱および灰分を回収した後の上記複数のセラミックボールを上記燃焼排ガスの熱および灰分の回収に再利用する際に、
上記複数のセラミックボールに蓄熱された上記燃焼排ガスの熱の回収と、上記複数のセラミックボールに付着した上記燃焼排ガス中の灰分の回収とを同時に行う、
セラミックボールの熱および灰分の回収方法にある。
【発明の効果】
【0009】
上記回収装置では、燃焼排ガス流路内に流入した燃焼排ガスとの接触によって複数のセラミックボールが加熱され、燃焼排ガスの熱が複数のセラミックボールに蓄熱される。これにより、燃焼排ガス流路内を流れる燃焼排ガスから熱が回収される。また、複数のセラミックボールがフィルターや吸着材として機能し、燃焼排ガス中の固形の灰分が複数のセラミックボールに付着する。さらに、上記熱回収によって燃焼排ガスは冷却されるため、当該冷却によって燃焼排ガスから析出した灰分も複数のセラミックボールに付着する。
【0010】
よって、上記回収装置によれば、燃焼排ガス流路における燃焼排ガスの熱の回収と同時に、燃焼排ガス中の灰分を十分に除去することができる。
【0011】
上記燃焼排ガスの熱および灰分の回収方法は、上記回収装置を用いているので、燃焼排ガス流路における燃焼排ガスの熱の回収と同時に、燃焼排ガス中の灰分を十分に除去することができる。
【0012】
上記セラミックボールの熱および灰分の回収方法は、上述したステップを有する。そのため、上記セラミックボールの熱および灰分の回収方法によれば、燃焼炉における燃焼により生じた燃焼排ガスよりセラミックボールにて回収した熱および灰分を、さらに回収することができ、当該回収後、燃焼排ガスの熱および灰分の回収に、再びセラミックボールを再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係る回収装置を廃棄物燃焼炉の燃焼排ガス流路に適用した例を模式的に示した説明図である。
図2図1に示した燃焼排ガス流路の変形例を模式的に示した説明図である。
図3】実施形態1に係る回収装置の基本形態を模式的に示した説明図である。
図4】実施形態1に係る回収装置の第1の変形例を模式的に示した説明図である。
図5】実施形態1に係る回収装置の第2の変形例を模式的に示した説明図である。
図6】実施形態1に係る回収装置の第3の変形例を模式的に示した説明図である。
図7】実施形態1に係る回収装置の第4の変形例を模式的に示した説明図である。
図8】実施形態1に係る回収装置の第5の変形例を模式的に示した説明図である。
図9】実施形態1に係る回収装置の第6の変形例を模式的に示した説明図である。
図10】実施形態2に係る回収装置の基本形態を模式的に示した説明図である。
図11】実施形態2に係る回収装置の基本形態におけるセラミックボールの供給および回収方法の一例を模式的に示した説明図である。
図12図11の回収装置におけるセラミックボールの供給部の構成例を模式的に示した説明図である。
図13】実施形態2に係る回収装置の第1の変形例を模式的に示した説明図である。
図14】実施形態2に係る回収装置の第2の変形例を模式的に示した説明図である。
図15】実施形態3に係る回収装置の基本形態を模式的に示した説明図である。
図16】実施形態3に係る回収装置の第1の変形例を模式的に示した説明図である。
図17】実施形態5に係るセラミックボールの熱および灰分の回収方法・回収装置の一例を模式的に示した説明図である。
図18】実施形態5に係るセラミックボールの熱および灰分の回収方法・回収装置の第1の変形例を模式的に示した説明図である。
図19】実施形態5に係るセラミックボールの熱および灰分の回収方法・回収装置における、灰分回収の一例を模式的に示した説明図である。
図20】実施形態5に係るセラミックボールの熱および灰分の回収方法・回収装置の第2の変形例を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
実施形態1の回収装置について、図1図9を用いて説明する。
【0015】
図1に例示されるように、本実施形態の回収装置1は、燃焼炉(不図示)における燃焼により生じた燃焼排ガスGを流す燃焼排ガス流路2に設置され、燃焼排ガスGの熱および灰分を回収する装置である。図1では、燃焼排ガス流路2に設けられた回収装置1よりも下流側に、燃焼排ガスGと熱交換を行う熱交換部3が設けられている例が示されている。また、図1では、燃焼排ガス流路2の一端部が、燃焼炉からの燃焼排ガスG(図中、矢印Y1)が流入する流入口210とされ、燃焼排ガス流路2の他端部が、燃焼排ガス流路2内を流れた燃焼排ガスG(図中、矢印Y3)が流出する流出口230とされている例が示されている。
【0016】
燃焼炉としては、例えば、廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉、工業炉一般(熱処理炉、溶解炉、焼成炉等)などを例示することができる。燃焼炉が廃棄物焼却炉である場合には、次の利点がある。廃棄物焼却炉は、各種ごみ等の廃棄物を焼却するため、燃焼排ガスG中に、シリカ成分、アルカリ成分、塩化物成分等の廃棄物に由来する腐食性のガスや灰分が多く含まれる。そのため、廃棄物焼却炉では、灰分が、燃焼排ガス流路2内へ付着したり、ガスや灰分が、熱交換部3等の燃焼炉部品を腐食させたりする問題が顕著である。上記構成によれば、例えば、燃焼排ガス流路2における回収装置1よりも下流に熱交換部3が設置されている場合でも、熱交換部3よりも上流側にて、熱回収により燃焼排ガスGの温度をより低く冷却することができるとともに、燃焼排ガスG中の灰分量を十分に低減させることができる。そのため、上記構成によれば、熱交換部3の高温腐食、灰分付着による熱交換能力の低下を抑制しやすくなる。なお、廃棄物燃焼炉は、特に種類が限定されるものではなく、例えば、ストーカー式燃焼炉などを例示することができる。また、燃焼排ガス流路2は、例えば、廃棄物燃焼炉等の炉本体に接続される流路などとすることができる。
【0017】
図1に例示されるように、燃焼排ガス流路2は、具体的には、第1流路21と、第2流路22と、第3流路23と、を有する構成とすることができる。第1流路21は、燃焼炉の炉本体(不図示)にて生じた燃焼排ガスGを上方に導く。第2流路22は、第1流路21の上端部と連通し、燃焼排ガスGを下方に導く。本実施形態では、第2流路22に回収装置1が設置されている。第3流路23は、第2流路22の下端部と連通し、燃焼排ガスGと熱交換を行う熱交換部3を備えている。なお、熱交換部3は、例えば、蒸気配管式の熱交換部3(ボイラー)等とすることができる。
【0018】
したがって、燃焼炉の炉本体(不図示)で生じた燃焼排ガスGは、炉本体から燃焼排ガス流路2の流入口210より流入し、第1流路21内を上方に向かって流れた後、矢印Y12のように第1流路21の上端部より第2流路22の上端部に流入し、第2流路22内を下方に向かって流れる。この際、燃焼排ガスGは、第2流路22の途中に設けられた回収装置1を通る。そして、燃焼排ガスGは、矢印Y23のように第2流路22の下端部より第3流路23の下端部に流入し、第3流路23内を上方に向かって流れ、燃焼排ガス流路2の流出口230より流出する。この際、燃焼排ガスGは、第3流路23の途中に設けられた熱交換部3を通る。なお、図1では、矢印Y1の方向と反対の方向が、鉛直方向の下向きとされる。
【0019】
上記構成によれば、本実施形態の回収装置1は、熱交換部3より燃焼排ガスGの温度が高い上流側の位置における燃焼排ガスGの気流中に設置される。燃焼排ガスGの気流中に回収装置1が設置されている場合には、より高温の燃焼排ガスGで回収装置1のセラミックボール10(後述する)を加熱し蓄熱させることにより、効率的に熱回収を行うことができる。燃焼排ガスGはセラミックボール10の加熱により冷却される。さらに、燃焼排ガスG中の灰分を、固形状態の灰分はセラミックボール10表面に付着させ、気流中にガス化した状態の灰分はセラミックボール10により冷却して析出させ、これをセラミックボール10表面に付着させることにより、効率的に回収することができる。また、回収装置1にて回収しきれなかった灰分や、回収装置1にて回収された後に脱落した灰分などは、第2流路22の下端部に落下させることができる。なお、第2流路22の下端部に堆積した灰分は、第2流路22の下端部から燃焼排ガス流路2外へ取り出されるように構成することができる(図1中、矢印Y4)。
【0020】
そのため、上記構成によれば、第3流路23の熱交換部3に過度に高温な燃焼排ガスGが流れるのを抑制することができるので高温腐食を抑制しやすくなる上、熱交換部3に到達する灰分量を低減させやすくなる。
【0022】
また、燃焼排ガス流路2は、図1の流路形態に限定されるものではない。例えば、図2に示される燃焼排ガス流路2において、第3流路23は、上流流路部231と、中流流路部232と、下流流路部233とを有している。上流流路部231は、第2流路部22の下端部と連通し、燃焼排ガスGを上方へ導く。中流流路部232は、上流流路部231の上端部と連通し、燃焼排ガスGを下方に導く。図2の例では、第3流路23における中流流路部232の途中に熱交換部3が設けられている。また、下流流路部233は、中流流路部232の下端部と連通し、燃焼排ガスGを上方に導く。図1に示した燃料排ガス流路2では、第3流路23の上端部に燃焼排ガス流路2の流出口230が設けられていたが、この例では、下流流路部233の上端部に燃焼排ガス流路2の流出口230が設けられている。
【0023】
したがって、この場合には、燃焼排ガスGは、上述したように上流流路部231内を上方に向かって流れた後、矢印Y31のように上流流路部231の上端部より中流流路部232の上端部に流入し、中流流路部232内を下方に向かって流れる。そして、燃焼排ガスGは、矢印Y32のように中流流路部232の下端部より下流流路部233の下端部に流入し、下流流路部233内を上方に向かって流れ、燃焼排ガス流路2の流出口230より流出する。なお、熱交換部3は、図示はしないが、下流流路部233の途中に設けることも可能である。このように、燃焼排ガス流路2の流路形態は、種々変更することが可能である。
【0024】
図3に示されるように、回収装置1は、複数のセラミックボール10を備えている。なお、図3は、燃焼排ガス流路2の断面の一部を簡略化して示したものであり、第2流路22への燃焼排ガスGの流入部分、第2流路22からの燃焼排ガスGの流出部分は省略されている。後述する図3以降の図面も同様の省略がなされている。
【0025】
セラミックボール10を構成するセラミックとしては、具体的には、アルミナ(例えば、高純度アルミナ、液相焼結アルミナ等)、ムライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。セラミックボール10の材質は、燃焼炉内の条件(廃棄物等の燃焼させる物の種類や燃焼ガスの温度等)に合わせて種々変更することができる。なお、例えば、高純度アルミナは、耐食性、耐固着性、耐摩耗性などに優れる。また、液相焼結アルミナは、耐熱衝撃性、コストなどに優れる。ムライトは、耐熱衝撃性、軽量性、コストなどに優れる。炭化ケイ素は、耐熱衝撃性、軽量性などに優れる。窒化ケイ素は、耐摩耗性などに優れる。
【0026】
また、セラミックボール10の気孔率は、耐摩耗性、耐食性、耐熱衝撃性などの観点から、0%以上20%以下、好ましくは、0%以上15%以下とすることができる。セラミックボール10の気孔率が低いと耐摩耗性や耐食性に優れるが、耐熱衝撃性に劣る。セラミックボール10の気孔率が高くなると、耐熱衝撃性は向上するが、耐摩耗性や耐食性が低下する。セラミックボール10の気孔率が15%を超えると耐摩耗性が低下し、20%を超えると耐摩耗性が大きく低下する。したがって、これらを考慮し、燃焼炉内の条件等に合わせてセラミックボール10の気孔率を選択することができる。
【0027】
セラミックボール10の形状は、セラミックボール10からの灰分の回収性向上、セラミックボール10に回転や振動を与えやすくなるなどの観点から、好ましくは、球状とすることができる。なお、セラミックボール10は、後述するように貫通孔101を有することもできる。セラミックボール10の直径は、セラミックボール10間の隙間形成性、軽量化、耐熱衝撃性などの観点から、10mm以上100mm以下とすることができる。セラミックボール10の直径が小さ過ぎると、セラミックボール10間の隙間を燃焼排ガスGが流れ難くなり、圧力損失が上昇する。一方、セラミックボール10の直径が大き過ぎると、セラミックボール10が重くなったり、耐熱衝撃性が低下したりする。セラミックボール10の直径は、好ましくは、15mm以上40mm以下、より好ましくは、15mm以上30mm以下とすることができる。
【0028】
回収装置1は、燃焼排ガスGの熱を複数のセラミックボール10へ蓄熱させるとともに、燃焼排ガスG中の灰分を複数のセラミックボール10に付着させることにより、燃焼排ガスGの熱および灰分を回収するように構成されている。
【0029】
そのため、回収装置1では、燃焼排ガス流路2内に流入した燃焼排ガスGとの接触によって複数のセラミックボール10が加熱され、燃焼排ガスGの熱が複数のセラミックボール10に蓄熱される。これにより、燃焼排ガス流路2内を流れる燃焼排ガスGから熱が回収される。また、複数のセラミックボール10がフィルターや吸着材として機能し、燃焼排ガスG中の固形の灰分が複数のセラミックボール10に付着する。さらに、上記熱回収によって燃焼排ガスGは冷却されるため、当該冷却によって燃焼排ガスGから析出した灰分も複数のセラミックボール10に付着する。本実施形態では、具体的には、燃焼排ガスGが複数のセラミックボール10間の隙間を抜ける際に、セラミックボール10が加熱により蓄熱され、燃焼排ガスGが冷却される。そして、燃焼排ガスGが複数のセラミックボール10間の隙間を抜ける際に、固形の灰分がセラミックボール10に付着し、上記冷却により燃焼排ガスGから析出した灰分もセラミックボール10に付着する。よって、回収装置1によれば、燃焼排ガス流路2における燃焼排ガスGの熱の回収と同時に、燃焼排ガスG中の灰分を十分に除去することができる。
【0030】
以下、燃焼排ガスGの熱および灰分を回収する具体的な構成例について、図3図9を用いて説明する。
【0031】
図3図9に例示されるように、本実施形態において、回収装置1は、複数のセラミックボール10をバッチ式にて入れ替え可能に構成されている。この構成によれば、複数のセラミックボール10間の隙間を燃焼排ガスGがすり抜けるため、灰分の回収効率を向上させやすくなる。もっとも、この構成によると、燃焼排ガスGの圧力損失は大きくなる傾向が見られる。以下、図3図9の形態について順に説明する。
【0032】
図3に回路装置1の基本形態を示す。図3では、回収装置1は、複数のセラミックボール10を保持する保持部材11を有しており、保持部材11にて保持された複数のセラミックボール10により、燃焼排ガスGの熱および灰分を回収するように構成されている。この構成によれば、複数のセラミックボール10を燃焼排ガス流路2内の任意の位置にかためて配置することができ、また、バッチ式にて複数のセラミックボール10をまとめて入れ替えしやすい。なお、保持部材11は、複数のセラミックボール10を充填状態で保持することができる。
【0033】
保持部材11は、例えば、耐食性を有するステンレス等のFe基合金、Ni基合金等の金属材料より構成することができる。保持部材11は、燃焼排ガスGを通気可能な形状に形成されることができる。保持部材11の形状としては、網状、かご状、容器状(トレイ状含む)などが挙げられる。図3では、具体的には、保持部材11が金網より構成されている例が示されている。
【0034】
図4に、回収装置1の第1の変形例を示す。図4(a)では、保持部材11により保持された複数のセラミックボール10を燃焼排ガス流路2の側面20から出し入れ可能に構成した例(片側入れ替え式)が示されている。この構成によれば、複数のセラミックボールを容易に入れ替えることができる。
【0035】
図4(b)に示されるように、保持部材11は、具体的には、枠部110と、枠部110の底部に設けられた金網部111とを有する構成とすることができる。なお、金網部111は、枠体110から取り外し可能とされており、腐食した場合には、容易に交換できるようになっている。複数のセラミックボール10は、枠部110の内側、かつ、金網部111の上方に充填されることができる。図4(a)では、保持部材11は、燃焼排ガス流路2の側面20に設けられた開口部201より出し入れ可能とされている。なお、ここでは、保持部材11が燃焼排ガス流路2の中に入れられた際に、枠部110の一部が燃焼排ガス流路2の開口部201を塞いで蓋をするように構成した例が示されているが、別途、開口部201に開閉自在に構成されたスライドドア等を設けることもできる。
【0036】
図5に、回収装置1の第2の変形例を示す。図5では、燃焼排ガス流路2の一方の側面20のみならず、一方の側面20に対向する他方の側面20からも、保持部材11により保持された複数のセラミックボール10を出し入れ可能に構成した例(交互入れ替え式)が示されている。この構成によれば、複数のセラミックボール10を両方の側面20から交互に入れ替えることができる。
【0037】
図5では、保持部材11が燃焼排ガス流路2の中に入れられた際に、枠部110が、両方の側面20にそれぞれ形成された開口部201を塞いで蓋をするように構成されている。また、図5では、開閉自在に構成されたスライドドア201aを備えたチャンバー202内に、保持部材11に保持されたセラミックボール10が収容されるように構成されている。この構成によれば、保持部材11に保持されたセラミックボール10の入れ替え時に、燃料排ガス流路2内の燃焼排ガスGが外部に流出するのを抑制しやすくなる。
【0038】
なお、上述したチャンバー202は、複数のスライドドア201aを備えている。チャンバー202は、燃焼排ガス流路2側に配置されたスライドドア201aの開閉により、チャンバー202と燃焼排ガス流路2とを連通または非連通状態とすることができ、保持部材11により保持された複数のセラミックボール10を燃焼排ガス流路2とチャンバー202との間で出し入れ可能に構成されている。また、チャンバー202は、燃焼排ガス流路2側に配置されたスライドドア201aとは反対側に配置された別のスライドドア201aを介して、保持部材11ごと複数のセラミックボール10を出し入れ可能に構成されている。
【0039】
図6に、回収装置1の第3の変形例を示す。図6では、燃焼排ガス流路2内に、複数のセラミックボール10が1段ではなく、複数段配置されている例が示されている(多段入れ替え式)。つまり、この構成によれば、燃焼排ガスGの流れの上流側に配置されたセラミックボール10にて回収しきれなかった熱および灰分を、下流側に配置されたセラミックボール10にて回収することができる。そのため、この構成によれば、燃焼排ガスGから熱および灰分を十分に回収しやすくなる。なお、上流側に配置されたセラミックボール10の充填量と、下流側に配置されたセラミックボール10の充填量とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
図7に、回収装置1の第4の変形例を示す。図7では、上述した第3の変形例と同様に、燃焼排ガス流路2内に、複数のセラミックボール10が複数段配置されている例が示されている。また、複数段にわたって配置された複数のセラミックボール10は、一方の側面20および他方の側面20から出し入れ可能に構成されている。但し、図7では、燃焼排ガス流路2における燃焼排ガスGの上流から下流に向かう流れ方向に垂直な断面領域の全体にわたって複数のセラミックボール10が配置されておらず、上記断面領域の一部に複数のセラミックボール10が配置されるように構成されている。具体的には、複数のセラミックボール10をそれぞれ保持する複数の保持部材11は、一方の側面20と他方の側面20とから交互に突出するように配置されている。そして、各保持部材11の突出側先端部は、各保持部材11の基端側端部とは反対側の側面20に当接しないように配置されている。この構成によれば、燃焼排ガスGの上流側から下方側への流れを妨げ難くなり、圧力損失の低減を図りやすくなる。なお、複数のセラミックボール10は、一段ずつ入れ替えされてもよいし、一度に入れ替えされてもよい。
【0041】
図8に、回収装置1の第5の変形例を示す。図8に示されるように、第5の変形例は、第4の変形例において、複数の保持部材11を、燃焼排ガスGの上流から下流に向かう流れ方向に垂直な方向に対し、下流側に傾斜させて配置した例である。この構成によれば、燃焼排ガスGの上流側から下方側への流れをよりスムーズにすることが可能になる。
【0042】
図9に、回収装置1の第6の変形例を示す。図9に示されるように、セラミックボール10は、貫通孔101を有している。そして、複数のセラミックボール10は、各貫通孔101に棒状の保持部材11が挿通されることによって保持されている。棒状の保持部材11の材質としては、上述した金属材料などを例示することができる。図9では、棒状の保持部材11により保持された複数のセラミックボール10が、燃焼排ガス流路2の両側面20から交互に出し入れ可能とされている例が示されている。このような構成によっても、燃焼排ガスGの熱および灰分を回収することができる。
【0043】
-比較形態-
本実施形態に対する比較形態は、例えば、炉本体に燃焼排ガス流路2が接続された廃棄物焼却炉とされる。比較形態の廃棄物焼却炉は、具体的には、上述した図1に示される燃料排ガス流路2に回収装置1を備えておらず、燃焼排ガスGと熱交換を行う蒸気配管式の熱交換部3(ボイラー)が第3流路23内に設置されている。
【0044】
比較形態の廃棄物焼却炉は、各種ごみ等の廃棄物を焼却するため、燃焼排ガスG中に廃棄物に由来する、シリカ成分、アルカリ成分、塩化物成分等を含む腐食性のガスや灰分が多く含まれる。そのため、比較形態の廃棄物焼却炉では、灰分が、燃焼排ガス流路2内へ付着したり、ガスや灰分が、熱交換部3等の燃焼炉部品を腐食させたりする問題が顕著である。比較形態の廃棄物焼却炉では、第2流路22の流路壁等に冷却部(不図示)を設けることで、第2流路22を流れる燃焼排ガスGを冷却して温度を下げ、燃焼排ガスGからの灰分の析出を促進させている。また、析出した灰分が下降する気流により第2流路22の底部に落下されて堆積される。この灰分は第2流路22の下端部から燃焼排ガス流路2外へ取り出される。第2流路22を通った後も燃焼排ガスGに残留する灰分は、第3流路23内を上昇し、熱交換部3の表面に付着し、あるいは、熱交換される際に冷却されて析出し付着する。そのため、比較形態の廃棄物焼却炉は、熱交換部3への灰分付着により、高温腐食や熱交換能力の低下が生じる。
【0045】
これに対し、本実施形態のように、熱交換部3より燃焼排ガスGの温度が高い上流側の位置における燃焼排ガスGの気流中に回収装置1が設置されている場合には、より高温の燃焼排ガスGで回収装置1のセラミックボール10を加熱し蓄熱させることにより、効率的に熱回収を行うことができる。燃焼排ガスGはセラミックボール10の加熱により冷却される。さらに、燃焼排ガスG中の灰分を、固形状態の灰分はセラミックボール10表面に付着させ、気流中にガス化した状態の灰分はセラミックボール10により冷却して析出させ、これをセラミックボール10表面に付着させることにより、効率的に回収することができる。
上述した比較形態の廃棄物焼却炉のように、第2流路22での冷却だけに比べ、本実施形態では、燃焼排ガスGの気流中に回収装置1を設置するため、より効率的に灰分を回収できる。加えて、回収装置1の下流に熱交換部3が設置される場合、回収装置1により熱と灰分の回収をおこなうため、熱交換部3に到達する灰分量を低減させやすくなる。これにより、熱交換部3の高温腐食、灰分付着による熱交換能力の低下を抑制しやすくなる。
【0046】
(実施形態2)
実施形態2の回収装置について、図10図14を用いて説明する。なお、実施形態2以降において用いられる符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0047】
図10に例示されるように、本実施形態の回収装置1は、本実施形態1の回収装置1と同様に、基本的には、燃焼排ガスGの熱を複数のセラミックボール10へ蓄熱させるとともに、燃焼排ガスG中の灰分を複数のセラミックボール10に付着させることにより、燃焼排ガスGの熱および灰分を回収するように構成されている。そのため、本実施形態の回収装置1によれば、本実施形態1の回収装置1と同様に、燃焼排ガス流路2における燃焼排ガスGの熱の回収と同時に、燃焼排ガスG中の灰分を十分に除去することができる。但し、本実施形態では、具体的には、燃焼排ガスGが複数のセラミックボール10に当たる際に、セラミックボール10が加熱により蓄熱され、燃焼排ガスGが冷却される。そして、燃焼排ガスGが複数のセラミックボール10に当たる際に、固形の灰分がセラミックボール10に付着し、上記冷却により燃焼排ガスGから析出した灰分もセラミックボール10に付着する。なお、実施形態1にて述べた構成および作用効果は、実施形態2の構成および作用効果として必要に応じて参酌することができる。
【0048】
以下、燃焼排ガスGの熱および灰分を回収する具体的な構成例について、図10図14を用いて具体的に説明する。
【0049】
図10図14に例示されるように、本実施形態において、回収装置1は、複数のセラミックボール10を連続的に入れ替え可能に構成されている。この構成によれば、連続的に供給される複数のセラミックボール10に燃焼排ガスGを当てることができるため、燃焼排ガスGの圧力損失を小さくしやすくなる。もっとも、この構成によると、燃焼排ガスGがセラミックボール10に当たるだけであるため、灰分の回収効率は低くなる傾向が見られる。以下、図10図14の形態について順に説明する。
【0050】
図10に回路装置1の基本形態を示す。図10では、回収装置1は、複数のセラミックボール10を転がす転がし部材12を有しており、転がし部材12にて複数のセラミックボール10を転がしながら、燃焼排ガスGの熱および灰分を回収するように構成されている。この構成によれば、転がし部材12によって燃焼排ガス流路2内を転がりながら移動するセラミックボール10にて連続的に燃焼排ガスGの熱および灰分を回収することができる。
【0051】
転がし部材12には、例えば、耐食性を有するステンレス等のFe基合金、Ni基合金等の金属材料より構成することができる。転がし部材12は、燃焼排ガスGを通気可能な形状に形成されることができる。転がし部材12の形状としては、網状、樋状などが挙げられる。図10では、具体的には、転がし部材12が金網より構成されている例が示されている。また、図10では、燃焼排ガス流路2の一方の側面20から他方の側面20にわたって、セラミックボール10が斜め下方に転がるように、転がし部材12が傾斜して配置されている。
【0052】
回収装置1において、転がし部材12へのセラミックボール10の供給方法、転がし部材12からのセラミックボール10の回収方法は、特に限定されない。例えば、図11に示されるように、回収装置1は、複数のセラミックボール10を燃焼排ガス流路2の一方の側面20から燃焼排ガス流路2内に設けられた転がし部材12に供給可能に構成することができる。また、回収装置1は、燃焼排ガス流路2内に設けられた転がし部材12上を転がった複数のセラミックボール10を、燃焼排ガス流路2の他方の側面20から回収可能に構成することができる。
【0053】
図11では、具体的には、燃焼排ガス流路2の一方の側面20側に、複数のセラミックボール10を入れる樋状のボール供給容器410を有するボール供給部41が設けられ、燃焼排ガス流路2の他方の側面20側に、複数のセラミックボール10を入れる樋状のボール回収容器420を有するボール回収部42が設けられている例が示されている。複数のセラミックボール10は、例えば、図11および図12(a)に示されるように、燃焼排ガス流路2の一方の側面20に設けた開閉自在のスライドドア201aを開き、ボール供給容器410を傾けることで、転がし部材12に供給されることができる。また、転がし部材12上を転がった複数のセラミックボール10は、例えば、図11に示されるように、燃焼排ガス流路2の他方の側面20に設けた開閉自在のスライドドア201aを開き、ボール回収容器420に回収されることができる。なお、図11では、樋状のボール供給容器410を用いた例を示したが、これ以外にも、例えば、図12(b)に例示するように、回転羽根411等で複数のセラミックボール10を転がし部材12に供給することも可能である。
【0054】
図13に、回収装置1の第1の変形例を示す。図13では、燃焼排ガス流路2内に、複数のセラミックボール10が1段ではなく、複数段配置されている例が示されている。つまり、本例では、燃焼排ガス流路2内に多段に配置された転がし部材12上を転がる複数のセラミックボール10により、燃焼排ガスGから熱および灰分の回収が多段で連続的に行われる。この構成によれば、燃焼排ガスGの流れの上流側で転がりながら移動するセラミックボール10にて回収しきれなかった熱および灰分を、下流側で転がりながら移動するセラミックボール10にて回収することができる。そのため、この構成によれば、燃焼排ガスGから熱および灰分を十分に回収しやすくなる。
【0055】
図13では、具体的には、回収装置1は、燃焼排ガス流路2の一方の側面20からだけではなく、他方の側面20からも複数のセラミックボール10を燃焼排ガス流路2内に設けられた転がし部材12に供給可能に構成されている。また、回収装置1は、燃焼排ガス流路2の他方の側面20からだけでなく、一方の側面20からも転がし部材12上を転がった複数のセラミックボール10を回収可能に構成されている。
【0056】
図14に、回収装置1の第2の変形例を示す。本例の回収装置1は、燃焼排ガスGからの熱および灰分の回収が多段で連続的に行われる点では、上述した第1の変形例と同じである。しかし、本例の回収装置1では、燃焼排ガスGの流れの上流側に配置された転がり部材12上を転がり終えたセラミックボール10が下流側に配置された転がり部材12上に落下等により移動し、再び転がり部材12上をセラミックボール10が転がり始めるように構成されている。この構成によれば、燃焼排ガスGの流れ方向の上流側から下流側に向かって、複数のセラミックボール10が燃焼排ガス流路2内を蛇行しながら連続的に移動する。そのため、この構成によれば、燃焼排ガスGとの接触時間をより長くすることが可能となり、燃焼排ガスGからの連続的な熱および回収に有利である。
【0057】
本例の回収装置1では、具体的には、上流側の転がり部材12の先端部は、転がり部材12の基端側とは反対側の側面20に達していない。そして、上流側の転がり部材12の先端部から落下等により移動したセラミックボール10が下流側の転がり部材12によって受けられるようになっている。また、本例の回収装置1では、燃焼排ガスGの流れ方向に向かって数えて一番最後(図14では2番目)に配置された転がり部材12を転がり終えたセラミックボール10は、第2流路22の下端部に落下し、第2流路22の下端部から回収されるように構成されている。この場合、セラミックボール10は、第2流路22の下端部に堆積した粗大な灰分と一緒に分離されることができる。なお、一緒に回収されたセラミックボール10と粗大な灰分とは、篩などを用いて容易に分離することができる。
【0058】
(実施形態3)
実施形態3の回収装置について、図15および図16を用いて説明する。
【0059】
図15に例示されるように、本実施形態の回収装置1は、燃焼排ガスGの熱を蓄熱させるとともに燃焼排ガスG中の灰分を付着させた複数のセラミックボール10に蓄熱された燃焼排ガスGの熱を回収する熱回収部13を有している。この構成によれば、燃焼排ガス流路2内にて複数のセラミックボール10により燃焼排ガスGの熱および灰分を回収するとともに、燃焼排ガスGの熱および灰分を回収した複数のセラミックボール10に蓄熱された燃焼排ガスGの熱を、燃焼排ガス流路2外にて熱回収部13により回収することができる。
【0060】
本実施形態の回収装置1を具体的に説明する。図15に示される回収装置1は、概略、本実施形態1の回収装置1に示した第2の変形例と同様の構成を有している。但し、第2の変形例にて示した燃焼排ガス流路2の両側面20側に設けられたチャンバー202が、燃焼排ガスGの熱を蓄熱させるとともに燃焼排ガスG中の灰分を付着させた複数のセラミックボール10に蓄熱された燃焼排ガスGの熱を回収する熱回収部13として機能するように改変されている。
【0061】
具体的には、図15に示される回収装置1では、燃焼排ガスGの熱を蓄熱させるとともに燃焼排ガスG中の灰分を付着させた複数のセラミックボール10に気流を当てることにより、熱を回収するように構成されている。より具体的には、図15に示されるように、回収装置1では、チャンバー202は、外部から気流Fを吹き込み可能に構成されるとともに、チャンバー202内に吹き込まれて複数のセラミックボール10に接して熱を回収した気流Fを外部に吹き出し可能に構成されている。なお、図15では、下方から上方に向かって気流Fを吹き込む例を示したが、上方から下方に向かって気流Fを吹き込むこともできる。また、本例では、セラミックボール10に付着した灰分の回収は、気流Fによるセラミックボール10からの熱回収後、チャンバー202の外にて行うことができる。
【0062】
なお、本例では、保持部材11が枠部110と金網部111とでトレイ状に構成されている例を用いて説明したが、保持部材11は、実施形態1の第6の変形例で例示したように、複数のセラミックボール10を貫通する棒状の保持部材11であってもよい。この場合には、棒状の保持部材11に串刺し状態に保持されたまま複数のセラミックボール10を熱回収部13に移動させることができる。
【0063】
図16に、回収装置1の第1の変形例を示す。図16では、回収装置は、上述した熱回収部13の代わりに、燃焼排ガスGの熱を蓄熱させるとともに燃焼排ガスG中の灰分を付着させた複数のセラミックボール10に蓄熱された燃焼排ガスGの熱と、複数のセラミックボール10に付着した燃焼排ガスG中の灰分と、を回収する熱・灰分回収部14を有している。この構成によれば、燃焼排ガス流路2内にて複数のセラミックボール10により燃焼排ガスGの熱および灰分を回収するとともに、燃焼排ガスGの熱および灰分を回収した複数のセラミックボール10に蓄熱された燃焼排ガスGの熱と、複数のセラミックボール10に付着した燃焼排ガスG中の灰分とを、燃焼排ガス流路2外にて熱・灰分回収部13により同時に回収することができる。
【0064】
具体的には、熱・灰分回収部13は、燃焼排ガスGの熱を蓄熱させるとともに燃焼排ガスG中の灰分を付着させた複数のセラミックボール10に、例えば、上下方向B1の振動、左右方向B2の振動、これらを組み合わせた振動、旋回振動等の振動を与えることにより、灰分を分離回収するように構成されている。ここでは、熱・灰分回収部14は、複数のセラミックボール10を収容する保持部材11を振動させることで、複数のセラミックボール10が振動するように構成されている。セラミックボール10に付着している灰分は、振動による衝撃と摩擦によりセラミックボール10から分離される。また、熱・灰分回収部14は、熱回収部13の説明にて上述したように、複数のセラミックボール10に気流Fを当てることにより、熱を回収するように構成されている。なお、図16に示すように、気流Fは、上方から下方に向かって吹き込むように構成されることが好ましい。この構成によれば、セラミックボール10から分離して下方に落下する灰分を、気流Fにのせてチャンバー202の外へ容易に移動させることができる。そのため、チャンバー202からの灰分の回収機構を新たに設ける必要がなくなり、回収装置1の簡素化を図ることができる。
【0065】
(実施形態4)
実施形態4に係る燃焼排ガスの熱および灰分の回収方法について説明する。本実施形態の回収方法は、上述した実施形態1~3のいずれかに記載に回収装置1を用いて燃焼排ガスGの熱および灰分を回収する方法である。本実施形態の回収方法によれば、上述した回収装置1を用いているので、燃焼排ガス流路2における燃焼排ガスGの熱の回収と同時に、燃焼排ガスG中の灰分を十分に除去することができる。
【0066】
(実施形態5)
実施形態5に係るセラミックボールの熱および灰分の回収方法について、図17図20を用いて説明する。本実施形態に係るセラミックボールの熱および灰分の回収方法では、燃焼炉における燃焼により生じた燃焼排ガスの熱を蓄熱させるとともに上記燃焼排ガス中の灰分を付着させた複数のセラミックボールが準備される。
【0067】
準備されるセラミックボールとしては、具体的には、例えば、上述した実施形態1~3のいずれかに記載の回収装置にて燃焼排ガスの熱を複数のセラミックボールへ蓄熱させるとともに、燃焼排ガス中の灰分を複数のセラミックボールに付着させることによって、燃焼排ガスの熱および灰分を回収したセラミックボールなどを挙げることができる。
【0068】
次いで、本実施形態に係るセラミックボールの熱および灰分の回収方法では、複数のセラミックボールに蓄熱された燃焼排ガスの熱と、複数のセラミックボールに付着した燃焼排ガス中の灰分と、が回収される。
【0069】
複数のセラミックボールに蓄熱された燃焼排ガスの熱の回収方法としては、例えば、燃焼排ガスの熱を蓄熱させたセラミックボールに気流(熱回収用の気流)を当てることにより、熱を回収する方法を例示することができる。この例を図17および図18に示す。
【0070】
図17では、燃焼排ガスの熱を回収した複数のセラミックボール10を容器5内に収容保持し、この複数のセラミックボール10に対して上方から下方に向かう気流f1または下方から上方に向かう気流f2のいずれかを当ててバッチ式にて熱を回収する例が示されている。なお、図17では、燃焼排ガス流路2から保持部材11ごと取り出された複数のセラミックボール10が容器5内に収容保持されるように構成されている例が示されている。また、別の保持部材11によって複数のセラミックボール10を容器5内に収容保持するように構成することもできる。なお、複数のセラミックボール10の入れ替え機構は、実施形態1と同様とすることができる。
【0071】
図18では、燃焼排ガスの熱を回収した複数のセラミックボール10を容器5内に配置した転がし部材110にて転がしながら、回転移動する複数のセラミックボール10に対して上方から下方に向かう気流f1または下方から上方に向かう気流f2のいずれかを当てて連続的に熱を回収する例が示されている。なお、図18に示した転がし部材110は、実施形態2で説明した転がし部材11と同様の構成とすることができる。なお、複数のセラミックボール10の入れ替え機構は、実施形態2と同様とすることができる。
【0072】
なお、熱回収用の気流は、腐食成分を含まない気流を用いることができる。この構成によれば、熱回収後に加熱された気流中の腐食性のガス濃度や灰分濃度は、燃焼排ガスG中の濃度に比べて低減されているため、加熱された気流の用途が広くなる。
【0073】
複数のセラミックボールに付着した燃焼排ガス中の灰分の回収方法としては、例えば、燃焼排ガスの灰分を付着させた複数のセラミックボールを振動させることにより、灰分を分離回収する方法を例示することができる。この例を図19に示す。図19(a)では、燃焼排ガスの灰分を付着させた複数のセラミックボール10を、ボールミルなどの回転容器BMに入れ、衝撃と摩擦によりセラミックボール10に固着した灰分を分離回収する例が示されている。また、図19(b)では、燃焼排ガスの灰分を付着させた複数のセラミックボール10を、振動篩FRに入れ、衝撃と摩擦によりセラミックボール10に固着した灰分を分離回収する例が示されている。なお、図19(b)では、上下方向B1の振動、左右方向B2の振動を付与している例が示されているが、振動は、上下方向B1の振動と左右方向B2の振動とを組み合わせた振動、旋回振動等など、特に限定されない。
【0074】
本実施形態に係るセラミックボールの熱および灰分の回収方法では、複数のセラミックボールに蓄熱された燃焼排ガスの熱を回収した後、複数のセラミックボールに付着した燃焼排ガス中の灰分を回収する構成とすることができる。この構成によれば、灰分を先に回収し、その後に熱を回収する場合に比べ、熱の回収効率が高くなる利点がある。
【0075】
また、本実施形態に係るセラミックボールの熱および灰分の回収方法では、他にも、複数のセラミックボールに蓄熱された燃焼排ガスの熱の回収と、複数のセラミックボールに付着した燃焼排ガス中の灰分の回収とを同時に行う構成とすることができる。この構成によれば、熱と灰分の回収が同時に行われるので、熱と灰分の回収を分けて行う場合に比べて、回収にかかる時間を少なくすることができる。
【0076】
複数のセラミックボールから熱および灰分を同時に回収する方法の一例を図20に示す。図20に示されるように、上述したボールミルなどの回転容器BMに複数のセラミックボール10を入れ、回転容器BMを回転させながら、回転容器BMに気流f3を吹き込む方法などを例示することができる。
【0077】
次いで、本実施形態に係るセラミックボールの熱および灰分の回収方法では、熱および灰分を回収した後の複数のセラミックボールが燃焼排ガスの熱および灰分の回収に再利用される。
【0078】
本実施形態に係るセラミックボールの熱および灰分の回収方法は、上述したステップを有する。そのため、本実施形態に係るセラミックボールの熱および灰分の回収方法によれば、燃焼炉における燃焼により生じた燃焼排ガスよりセラミックボールにて回収した熱および灰分を、さらに回収することができ、当該回収後、燃焼排ガスの熱および灰分の回収に、再びセラミックボールを再利用することができる。
【0079】
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、各実施形に示される各構成は、それぞれ任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 回収装置
10 セラミックボール
2 燃焼排ガス流路
G 燃焼排ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20