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特許7141245経口皮膚紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤。
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  • 特許-経口皮膚紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】経口皮膚紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤。
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20220914BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20220914BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20220914BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220914BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20220914BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220914BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A23L33/135
A61K35/747
A61P17/16
A61P17/00
A23L2/38 G
A23L2/00 F
C12N1/20 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018102091
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019205371
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-09-08
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02287
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷井 勇介
(72)【発明者】
【氏名】砂田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】上原 和也
(72)【発明者】
【氏名】李 慈英
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0128675(KR,A)
【文献】特開2018-007645(JP,A)
【文献】特開2019-119689(JP,A)
【文献】特開2015-047120(JP,A)
【文献】日本農芸化学会2018年度大会講演要旨集(オンライン),2018年03月05日,講演番号:2B06a09
【文献】第63回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集,2009年,p. 158,2K-04a
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/135
A61K 35/747
A61P 17/16
A61P 17/00
A23L 2/38
A23L 2/52
C12N 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌又は当該乳酸菌の発酵物を有効成分とし、経口投与可能な皮膚の紫外線ダメージ軽減剤又は顔の肌色くすみ改善、顔のべとつき油感改善の両方の効果を有する皮膚状態改善剤であって、
前記乳酸菌は、ラクトバチルス・ガセリN320株(NITE BP-02287)である、皮膚の紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤。
【請求項2】
前記皮膚の紫外線ダメージ軽減は、紫外線照射部位の紫外線抵抗性向上、皮膚の赤み軽
減又は皮膚の色素沈着軽減のいずれかの効果を有する請求項1記載の皮膚の紫外線ダメー
ジ軽減剤又は皮膚状態改善剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の皮膚の紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤を有効成分として含むことを特徴とする、皮膚の紫外線ダメージ軽減用又は顔の肌色くすみ改善、顔のべとつき油感改善の両方の効果を有する皮膚状態改善用の飲食品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の皮膚の紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤を有効成分として含むことを特徴とする、皮膚の紫外線ダメージ軽減用又は顔の肌色・くすみ改善、顔のべとつき油感改善の両方の効果を有する皮膚状態改善用の医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳児腸内由来のラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌を有効成分として含有する紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤、当該紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤を有効成分として含む皮膚用医薬品、および皮膚用飲食品を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚の老化防止に関する研究が盛んに行われてきており、皮膚においては加齢による老化よりもむしろ紫外線による光老化の影響が支配的であるとも言われている。皮膚が紫外線に曝露されると炎症が誘導され、細胞およびDNAさらには細胞外マトリックスに障害が生じ、皮膚の肥厚化や色素沈着などに起因するシワやシミ、いわゆる光老化が引き起される(非特許文献1)。慢性的な紫外線の曝露ではDNAの損傷が完全に修復できず皮膚がんのリスクも増大する(非特許文献2)。したがって、皮膚の老化防止の観点では紫外線の影響をいかに軽減するかが重要であると言える。
【0003】
紫外線ダメージの分かりやすい例として日焼けがある。日焼けは地表に降り注ぐ紫外線の中でも主として高エネルギーのUVBに皮膚が曝露されることによって生じる。多くの日本人では炎症によるサンバーンを経て、色素沈着によるサンタンを生じるが、皮膚の紫外線抵抗性は個々人によって異なり、その応答には個人差があることも知られている。従って、紫外線ダメージの軽減には紫外線に対する抵抗力を高めることや、紫外線による炎症を抑制することが有効であると言える。また、紫外線による炎症を抑制することで結果的に色素沈着も抑制されるものと考えられる。
【0004】
紫外線の影響を少なくする手段としてはサンスクリーン剤による紫外線の遮断や、化粧品類によるシミ・そばかす対策など、皮膚に直接塗布する方法が主流である。食品や飲料などにより経口摂取で紫外線の影響を軽減する手段は増加しているもののまだ発展途上にある。
【0005】
一方で乳酸菌の摂取による健康効果は古くから研究されてきたが、近年では整腸作用に留まらず全身や腸管以外の臓器への有効性も次々と明らかになってきている(非特許文献3)。しかし、人体最大の臓器とも言える皮膚への効果についての有効な報告は他の臓器に比べるとまだ少なく、特に皮膚への紫外線ダメージへの効果についてはほとんど報告がない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】John D’Orazio et al., UV Radiation and the Skin, Int. J. Mol. Sci., 14, 12222-12248, 2013
【文献】Skotarczak K et al., Photoprotection: facts and controversies, Eur. Rev. Med. Pharmacol. Sci., 19, 98-112, 2015
【文献】Linares DM et al., Lactic Acid Bacteria and Bifidobacteria with Potential to Design Natural Biofunctional Health-Promoting Dairy Foods, Front Microbiol., 8(846), 1-10, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、乳児腸内由来のラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌を有効成分として含有する紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤、当該紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤を有効成分として含む皮膚用医薬品、および皮膚用飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、皮膚の保湿力向上にはヒアルロン酸が必要不可欠である点に着目し、多数の乳酸菌についてスクリーニングを行った結果、乳児腸内由来のラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌、特にラクトバチルス・ガセリN320株(NITE BP-02287)には高いヒアルロン酸産生促進能力があり、例えば、乾燥による、皮膚の水分量の低下、頬や背中、頸の乾燥状態の悪化、洗顔後のつっぱり感、皮膚のつやの低下を含む、皮膚状態の改善に有効であることをこれまでに見出している。
さらに、本菌株について皮膚に対する新たな機能を探索し、例えば、紫外線曝露部位の紫外線抵抗性向上、皮膚の赤み軽減、皮膚の色素沈着軽減を含む紫外線ダメージ軽減や、顔の肌色・くすみ改善、顔のべとつき・油感改善を含む皮膚状態の改善に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本願第一の発明は、ラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌又は当該乳酸菌の発酵物を有効成分とする、経口投与可能な紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤であり、本願第二の発明は、紫外線照射部位の紫外線抵抗性向上、皮膚の赤み軽減又は皮膚の色素沈着軽減のいずれかの効果を含む紫外線ダメージ軽減や、顔の肌色、くすみ改善、顔のべとつき又は油感改善のいずれかの効果を含む本願第一の発明に記載の紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤であり、本願第三の発明は、乳酸菌が、ラクトバチルス・ガセリN320株(NITE BP-02287)である、本願第一の発明または本願第二の発明に記載の紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤である。さらに、本出願人は、当該ラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌を含む紫外線ダメージ軽減又は皮膚状態を改善するための皮膚用医薬品、皮膚用飲食品も意図している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、日常的に経口摂取して皮膚の乾燥を改善することが可能な紫外線ダメージ軽減剤、皮膚状態改善剤、前記紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤を有効成分とする皮膚用医薬品、又は皮膚用飲食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の菌株と比較菌株のスキムミルク培地増殖性を比較した図である。
図2図2は、被験食群とプラセボ群について、摂取前後のMED変化量を比較した図である。
図3図3は、被験食群とプラセボ群について、摂取前後のL*値変化量を未照射、照射1日後、照射7日後で比較した図である。
図4図4は、被験食群とプラセボ群について、摂取前後のa*値変化量を未照射、照射1日後、照射7日後で比較した図である。
図5図5は、被験食群とプラセボ群について、使用感アンケートによる「顔の肌色・くすみ」の摂取前からのスコア変化量を比較した図である。
図6図6は、被験食群とプラセボ群について、使用感アンケートによる「顔のべとつき・油感」の摂取前からのスコア変化量を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.ラクトバチルス・ガセリN320株(NITE BP-02287)
本発明において利用する乳酸菌は、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)である。特にラクトバチルス・ガセリに属する乳酸菌のうち、ラクトバチルス・ガセリN320株(NITE BP-02287)である。本発明にいうN320の記号は日清食品ホールディングス株式会社で独自に菌株に付与した番号であり、本ラクトバチルス・ガセリN320株は本発明者によって初めて分離されたものである。
【0013】
本発明のラクトバチルス・ガセリN320株は、下記条件で寄託されている。
(1)寄託機関名:独立行政法人製品技術基盤機構 特許微生物寄託センター
(2)連絡先:〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室
(3)受託番号:NITE BP-02287
(4)識別のための表示:N320
(5)原寄託日:2016年6月14日
(6)ブダペスト条約に基づく寄託への移管日:2017年4月10日
本発明において利用するラクトバチルス・ガセリN320株の菌学的性質は、以下の表1及び2に示す通りである。本菌学的性質は、Bergey’s manual of systematic bacteriology Vol.2(1986)に記載の方法による。表1は本菌株に関する形状等を、表2はアピ50CH及びアピCHL(ビオメリュー製)により、糖資化性を試験した結果を示す。表2において、「+」は発酵性あり、「-」は発酵性なしを示す。
【0014】
【表1】



【0015】
【表2】
【0016】
2.スキムミルク培地での増殖性試験
<スキムミルク培地増殖性試験>
前培養液を10%スキムミルク培地に接種し、これを37℃ ・24時間培養した上で、乳酸菌生菌数によってミルク培地での増殖性を評価した。
【0017】
3.紫外線ダメージ軽減剤
本発明においては、前記ラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌を有効成分とする紫外線ダメージ軽減剤とすることができる。ここで、本発明にいう紫外線ダメージ軽減とは紫外線照射部位の紫外線抵抗性向上、皮膚の赤み軽減又は皮膚の色素沈着軽減のいずれかの効果を奏するものをいう。
当該紫外線ダメージ軽減剤は、前記乳酸菌を発酵後の乳酸菌の菌体そのものであってもよいし、当該乳酸菌を発酵後に濃縮や分離等でエキス化及び粉末化したものであってもよい。さらに、前記乳酸菌菌体に他の成分(例えば、糖類、タンパク質、アミノ酸、脂質、水分、ビタミン、ミネラル等)を含んでいてもよい。さらに、当該紫外線ダメージ軽減剤は、含水形態であっても乾燥形態であっても良いことは勿論である。

【0018】
4.皮膚状態改善剤
本発明においては、前記ラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌を有効成分とする皮膚状態改善剤とすることができる。ここで、本発明にいう皮膚状態改善とは顔の肌色、くすみ改善、顔のべとつき又は油感改善のいずれかの効果を奏するものをいう。
当該皮膚状態改善剤は、前記乳酸菌を発酵後の乳酸菌の菌体そのものであってもよいし、当該乳酸菌を発酵後に濃縮や分離等でエキス化及び粉末化したものであってもよい。さらに、前記乳酸菌菌体に他の成分(例えば、糖類、タンパク質、アミノ酸、脂質、水分、ビタミン、ミネラル等)を含んでいてもよい。
さらに、当該皮膚状態改善剤は、含水形態であっても乾燥形態であっても良いことは勿論である。
【0019】
5.皮膚用飲食品
本発明の紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤は飲食品に含有せしめて皮膚用飲食品として使用することができる。本発明の紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤は特に乳製品に好適に用いることができるが、例えば、乳酸菌入り発酵乳及び乳酸菌入り乳酸菌飲料が考えられる。現行の乳及び乳製品の成分規格等に関する省令では、成分規格として乳酸菌数は特に規定はされていないが、発酵乳(無脂乳固形分8.0%以上のもの)や乳酸菌飲料(無脂乳固形分3.0%以上のもの)であれば1.0×10 cfu/ml以上、乳酸菌飲料(無脂乳固形分3.0%未満のもの)であれば1.0×10 cfu/ml以上が好ましく、乳などで増殖させたり、最終製品の形態で増殖させたりすることによって上記の菌数を実現することができる。
また、乳酸菌入り発酵乳及び乳酸菌入り乳酸菌飲料以外にも、バター等の乳製品、マヨネーズ等の卵加工品、バターケーキ等の菓子パン類等にも利用することができる。また、即席麺やクッキー等の加工食品にも好適に利用することができる。上記の他、本発明の食品は、前記乳酸菌と共に、必要に応じて適当な担体及び添加剤を添加して製剤化された形態(例えば、粉末、顆粒、カプセル、錠剤等)であってもよい。
【0020】
本発明において利用する乳酸菌は、一般の飲料や食品以外にも特定保健用食品、栄養補助食品等に含有させることも有用である。
【0021】
また、本発明の皮膚用飲食品は本発明の紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤を有効成分して含有していればよく、当該紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤以外に他の成分(例えば、糖類、タンパク質、アミノ酸、脂質、水分、ビタミン、ミネラル等)を含有していても良いことは勿論である。
【0022】
6.皮膚用医薬品
本発明の紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤は、発酵後に濃縮や分離等でエキス化及び粉末化して調製した後に、当該紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤を有効成分とする皮膚用医薬品として使用することができる。例えば、エキス化したものを瓶等に詰めたものや、発酵液乾燥粉末を賦形剤なども用いて顆粒やカプセル化、打錠し錠剤の形態として提供が可能である。
また、本発明の皮膚用医薬品は本発明の紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤を有効成分して含有していればよく、当該紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤以外に他の成分(例えば、糖類、タンパク質、アミノ酸、脂質、水分、ビタミン、ミネラル等)を含有していても良いことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に利用する乳酸菌(ラクトバチルス・ガセリN320株)は当該乳酸菌を有効成分として含有する紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤として利用することができる。また、当該紫外線ダメージ軽減剤又は皮膚状態改善剤を有効成分とする皮膚用医薬品、又は皮膚用飲食品を日常的に摂取することで、例えば、紫外線曝露部位の紫外線抵抗性向上、皮膚の赤み軽減、皮膚の色素沈着軽減を含む紫外線ダメージの軽減や、顔の肌色・くすみ改善、顔のべとつき・油感改善を含む皮膚状態を改善することができる。
【実施例
【0024】
<試験例1>スキムミルク培地増殖性試験
本発明のラクトバチルス・ガセリN320株と、自社保有の3つのラクトバチルス・ガセリ比較菌株(N219、N220、N313)について、スキムミルク培地増殖性試験を実施した。
【0025】
10%スキムミルク培地に各菌株を接種し、これを37℃ ・24時間培養した上で、乳酸菌の生菌数を測定することによってスキムミルク培地での増殖性を評価した。
【0026】
結果を表3及び図1に示す。
【0027】
【表3】
【0028】
本発明の菌株(ラクトバチルス・ガセリN320株)の生菌数は22×107 cfu/mlであり、他の比較菌株と比べて増殖性が高く、乳酸菌入り発酵乳及び乳酸菌入り乳酸菌飲料を生産する上で問題のないレベルであった。
【0029】
<試験例2>ヒト被験者に対する有効性評価試験
被験者として年齢30歳以上49歳以下で日本人の主要な肌タイプであるフィッツパトリックスキンタイプIIあるいはIIIに属する各群35名、合計70名を選抜し有効性評価試験を行った。スクリーニング時に性別、年齢、最小紅斑量(MED)、肌の明るさ(L*値)、肌の赤み(a*値)などが各群間でできるだけ同一になるように乱数を用いて割り付けを行った。
【0030】
尚、フィッツパトリックスキンタイプとは、皮膚色のタイプの分類をいい、特にタイプIIは日光(紫外線)に当った場合、皮膚が紅くなる反応を示す(サンバーン)と共に、しばらくして黒くなる反応を時々示す(サンタン)皮膚タイプをいう。また、タイプIIIは日光(紫外線)に当った場合、皮膚が紅くなる反応を示すと共にしばらくして黒くなる反応を示す皮膚タイプをいう。
【0031】
<試験食の作製>
試験食としてラクトバチルス・ガセリN320株を1日当たり20 mg含有するハードカプセルと、プラセボ食として、賦形剤のみを含有するハードカプセルを作製した。なお、試験食が含有する本菌株は死菌体である。
【0032】
<試験方法>
上記被験者を対象にプラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験を実施した。各被験者には、1日に1回、被験食あるいはプラセボ食を8週間摂取後、検査期間1週間を含む計9週間(63日間)摂取させた。試験期間中の被験者には下記の制限事項を守るよう指導した。なお、被験者には倫理的配慮のもと同意を得た上で実施した。
(1)試験期間中は、日常生活を越えて過度に紫外線を浴びないように注意する。外出する際、紫外線照射評価部位が露出しないような衣服を着用する。
(2)試験期間中は、試験参加前から食事、運動、飲酒、睡眠時間等の生活習慣を変えずに維持する。(制限事項)
(3)試験期間中は、日常範囲を大きく逸脱する過度な運動、睡眠不足、ダイエットおよび暴飲暴食(宴会、食べ放題、バイキング等)を避ける。(制限事項)
(4)試験期間中は、やむを得ない場合を除き、医薬品を摂取しない。医薬品を摂取する場合は日誌に医薬品名と摂取量を記録する。(制限事項)
(5)試験期間中は、美容医療や特別なスキンケア施術(エステなど)を受けることを禁止する。(禁止事項)
(6)評価部位に対して、本試験で検討する有効性と同様もしくは関連する効果効能(美白・美肌効果)を標榜あるいは強調した化粧品(スキンケア製品を含む)、医薬部外品(薬用化粧品を含む)あるいは健康食品(特にヨーグルト、乳酸菌製剤、ビタミン類、ポリフェノール類などを含むもの)などの摂取を禁止する。(禁止事項)
(7)検査日前3日間は夜更かし、徹夜および激しい運動(息が上がるようなランニング、水泳、登山など)を禁止する。(禁止事項)
(8)検査日前日は就寝前までに入浴し、検査当日は、起床後から検査終了まで入浴(シャワーを含む)を禁止する。(禁止事項)
(9)検査日前日は禁酒とし、十分に睡眠をとり、体調を整える。
【0033】
なお、上記被験者管理事項については遵守することを原則とするが、医療上の必要、その他生命身体の安全に危険を及ぼす場合はこの限りではないものとした。被験者管理事項に反する事項が生じた場合には、被験者は試験実施機関へ直ちに連絡をすることとした。被験者は、摂取前、摂取後8~9週目に、紫外線照射部位のMED、L*値、a*値を評価した。また、摂取0週目、摂取4週目、摂取9週目に使用感アンケートを実施した。
【0034】
MEDは、被験者背部に6段階公比1.2のエネルギー量の紫外線を照射し、1日後に照射部位を観察して紅班を生じた最も小さいエネルギー量と判定した。MEDが大きいほど紫外線への抵抗性が高いことを示している。
【0035】
L*値およびa*値は、摂取前検査で判定されたMEDの1.5倍量の紫外線を被験者背部に照射し、照射1日後、照射7日後の照射部位について分光測色計で評価した。L*値が大きいほど色素沈着が抑えられ、a*値が小さいほど炎症が抑えられていることを示している。
【0036】
使用感アンケートは、被験者の肌状態あるいはトラブルについて、1:非常に気になる、2:少し気になる、3:どちらとも言えない、4:あまり気にならない、5:まったく気にならない、の5段階のスコアとして評価した。
【0037】
<結果>
試験期間中の脱落者を除く、被験食群33名、プラセボ群32名を解析に用いた。
紫外線への感受性が高い(紫外線による色素沈着の程度が被験者平均よりも大きい)被験者について解析を行ったところ、図2に示すように、試験食摂取前後のMED変化量が有意に増加した。プラセボ群では有意差はなかった。
【0038】
また、同じく紫外線への感受性が高い被験者について解析を行ったところ、図3図4に示すように、被験食群でプラセボ群に比較して、紫外線照射7日後のL*値変化量が有意傾向で上昇し、a*値変化量が有意に抑制された。
【0039】
使用感アンケートを解析したところ、図5図6に示すように、「顔の肌色・くすみ」「顔のべとつき・油感」の項目においてスコアの変化量で、摂取0週目と比較して摂取4週目、9週目ともに被験食群で有意なスコア改善が見られた。プラセボ群では有意差はなかった。
【0040】
プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験の結果、ラクトバチルス属ガセリ種の乳酸菌を主成分とする紫外線ダメージ軽減剤および皮膚状態改善組成物には、紫外線への感受性が高い被験者において、紫外線抵抗性の向上、紫外線照射部位の炎症および色素沈着の抑制、顔の肌色・くすみの改善効果、顔のべとつき・油感の改善効果があることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6