(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】硬さ試験機
(51)【国際特許分類】
G01N 3/42 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
G01N3/42 E
(21)【出願番号】P 2018187835
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】川添 勝
(72)【発明者】
【氏名】和泉 直樹
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-340656(JP,A)
【文献】特開2000-105182(JP,A)
【文献】特開2003-50189(JP,A)
【文献】特開2003-161684(JP,A)
【文献】特開2009-47427(JP,A)
【文献】特開2007-218712(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0260427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷することによって前記試料の硬さを測定する硬さ試験機であって、
前記圧子を備えた荷重アームと、
その一端が前記荷重アームに固定されている板ばね部と、
前記板ばね部を撓ませつつ前記荷重アームを移動させて、前記圧子を前記試料に押し付ける駆動部と、
前記板ばね部の変位量を検出するばね変位検出部と、
前記荷重アームの変位量を検出するアーム変位検出部と、
前記板ばね部の変位量を前記ばね変位検出部が検出し、前記荷重アームの変位量を前記アーム変位検出部が検出したことに応じて、所定の処理を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記圧子を前記試料に押し付けるように前記駆動部が作動している状態において、前記ばね変位検出部と前記アーム変位検出部がそれぞれ検出した前記板ばね部の変位量と前記荷重アームの変位量とに基づき、前記試料の硬さを算出する処理を実行し、
前記駆動部が作動していない状態において、前記ばね変位検出部と前記アーム変位検出部がそれぞれの対象物の変位量を検出した場合、前記ばね変位検出部と前記アーム変位検出部がそれぞれ検出している対象物の変位量をゼロに補正する初期化を行うべき旨をユーザーに対して報知する処理を実行することを特徴とする硬さ試験機。
【請求項2】
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷することによって前記試料の硬さを測定する硬さ試験機であって、
前記圧子を備えた荷重アームと、
その一端が前記荷重アームに固定されている板ばね部と、
前記板ばね部を撓ませつつ前記荷重アームを移動させて、前記圧子を前記試料に押し付ける駆動部と、
前記板ばね部の変位量を検出するばね変位検出部と、
前記荷重アームの変位量を検出するアーム変位検出部と、
前記板ばね部の変位量を前記ばね変位検出部が検出し、前記荷重アームの変位量を前記アーム変位検出部が検出したことに応じて、所定の処理を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記圧子を前記試料に押し付けるように前記駆動部が作動している状態において、前記ばね変位検出部と前記アーム変位検出部がそれぞれ検出した前記板ばね部の変位量と前記荷重アームの変位量とに基づき、前記試料の硬さを算出する処理を実行し、
前記駆動部が作動していない状態において、前記ばね変位検出部と前記アーム変位検出部がそれぞれの対象物の変位量を検出した場合、前記ばね変位検出部と前記アーム変位検出部がそれぞれ検出している対象物の変位量をゼロに補正する初期化処理を実行することを特徴とする硬さ試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬さ試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧子を用いて試料(ワーク)の表面に所定の試験力を負荷してくぼみを形成させることによって、試料の硬さを測定する硬さ試験機が知られている。例えば、ロックウェル硬さ試験機は、試料の表面に円錐形ダイヤモンド圧子又は球圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみ形成時の圧子の押込み深さを計測するようにして試料の硬さを測定する試験機である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この硬さ試験機では、サーボモータの駆動力を、板バネを介して荷重アームに伝達して荷重アームを回動させて、荷重アームの先端側に配設されている圧子を試料に押し付けてくぼみを形成させるようになっている。
具体的には、この硬さ試験機では、サーボモータが板バネを変形させることで試験力を発生させており、硬さ試験機が圧子を試料に押し付けてくぼみを形成するにあたり、試験力に対応する板バネの変形量をバネ変位量センサが測り、その変形量をサーボモータによって制御するとともに、アーム位置センサが荷重アームの移動量に基づいて試料への圧子の押込み深さを計測するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の硬さ試験機が高温環境下や低温環境下に置かれたことで、荷重アームや板バネが熱膨張したり熱収縮したりすることがある。この熱膨張や熱収縮に伴う荷重アームや板バネの変形をアーム位置センサやバネ変位量センサが検知した場合に、不具合が生じるおそれがあった。
例えば、動作停止中の硬さ試験機において、アーム位置センサやバネ変位量センサが検知した荷重アームや板バネの変形を、試験開始のトリガーと誤認してしまうおそれがあった。
また、熱膨張や熱収縮に伴う荷重アームや板バネの変形をアーム位置センサやバネ変位量センサが検知している状態で、硬さ試験を実行してしまうと、誤差を含んだ測定結果が得られてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、環境温度変化に影響されず、好適に硬さ試験を行うことができる硬さ試験機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷することによって前記試料の硬さを測定する硬さ試験機であって、
前記圧子を備えた荷重アームと、
その一端が前記荷重アームに固定されている板ばね部と、
前記板ばね部を撓ませつつ前記荷重アームを移動させて、前記圧子を前記試料に押し付ける駆動部と、
前記板ばね部の変位量を検出するばね変位検出部と、
前記荷重アームの変位量を検出するアーム変位検出部と、
前記板ばね部の変位量を前記ばね変位検出部が検出し、前記荷重アームの変位量を前記アーム変位検出部が検出したことに応じて、所定の処理を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記圧子を前記試料に押し付けるように前記駆動部が作動している状態において、前記ばね変位検出部と前記アーム変位検出部がそれぞれ検出した前記板ばね部の変位量と前記荷重アームの変位量とに基づき、前記試料の硬さを算出する処理を実行し、
前記駆動部が作動していない状態において、前記ばね変位検出部と前記アーム変位検出部がそれぞれの対象物の変位量を検出した場合、(前記荷重アームと前記板ばね部が環境温度変化に伴い変形したものと判断し、)前記ばね変位検出部と前記アーム変位検出部がそれぞれ検出している対象物の変位量をゼロに補正する初期化を行うべき旨をユーザーに対して報知する処理を実行することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷することによって前記試料の硬さを測定する硬さ試験機であって、
前記圧子を備えた荷重アームと、
その一端が前記荷重アームに固定されている板ばね部と、
前記板ばね部を撓ませつつ前記荷重アームを移動させて、前記圧子を前記試料に押し付ける駆動部と、
前記板ばね部の変位量を検出するばね変位検出部と、
前記荷重アームの変位量を検出するアーム変位検出部と、
前記板ばね部の変位量を前記ばね変位検出部が検出し、前記荷重アームの変位量を前記アーム変位検出部が検出したことに応じて、所定の処理を実行する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記圧子を前記試料に押し付けるように前記駆動部が作動している状態において、前記ばね変位検出部と前記アーム変位検出部がそれぞれ検出した前記板ばね部の変位量と前記荷重アームの変位量とに基づき、前記試料の硬さを算出する処理を実行し、
前記駆動部が作動していない状態において、前記ばね変位検出部と前記アーム変位検出部がそれぞれの対象物の変位量を検出した場合、(前記荷重アームと前記板ばね部が環境温度変化に伴い変形したものと判断し、)前記ばね変位検出部と前記アーム変位検出部がそれぞれ検出している対象物の変位量をゼロに補正する初期化処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、環境温度変化に対応させて、好適に硬さ試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の硬さ試験機の要部構成を示した側面図である。
【
図2】本実施形態の硬さ試験機の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】硬さ試験機の荷重アームと板ばね部が硬さ試験に伴い作動した状態を模式的に示す説明図(a)(b)である。
【
図4】硬さ試験機の荷重アームと板ばね部が熱膨張した状態を模式的に示す説明図(a)(b)である。
【
図5】硬さ試験機の荷重アームと板ばね部が熱収縮した状態を模式的に示す説明図(a)(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る硬さ試験機の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
本実施形態の硬さ試験機は、試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷することによって、試料の硬さを測定するロックウェル硬さ試験機である。
【0012】
本実施形態の硬さ試験機100は、例えば、
図1、
図2に示すように、圧子1を備えた荷重アーム11と、その一端が荷重アーム11に固定されている板ばね部11aと、板ばね部11aを撓ませつつ荷重アーム11を移動させて、圧子1を試料Sに押し付ける駆動部12と、板ばね部11aの変位量を検出するばね変位検出部13と、荷重アーム11の変位量を検出するアーム変位検出部14と、その上面に試料Sが載置される試料台15と、操作部17と、記憶部18と、制御部19等を備えて構成されている。
なお、この硬さ試験機100では、
図2に示す制御部19により、各部の動作制御が行われる。
【0013】
荷重アーム11は、試験機本体100aに回動可能に備えられており、先端側に各種圧子が交換可能に配設されるようになっている。
この荷重アーム11に取り付けられる各種圧子には、試料表面にくぼみを形成するための圧子1と、対象の試料を傷付けることなく押圧するための平圧子(図示省略)などがある。
【0014】
板ばね部11aは、荷重アーム11に一体的に設けられている試験力発生ばねであり、弾性変形することで試験力を発生させる。
【0015】
駆動部12は、駆動源12aとして、例えばステッピングモータやサーボモータなどを備えており、その駆動源12aが発生する力を板ばね部11aを介して荷重アーム11に伝達し、その荷重アーム11を回動させることで、荷重アーム11の先端側を試料台15に近接させ、圧子1や平圧子を試料台15に載置されている試料Sに押し付ける。
また、駆動部12は、荷重アーム11を試料台15から離間する方向に回動させて、荷重アーム11を所定の退避位置に移動させる。この退避位置とは、各種圧子と試料台15との間に距離をとって、圧子1や試料Sの交換を行ったり、所定の測定準備を行ったりするための配置である。
【0016】
ばね変位検出部13は、荷重アーム11における板ばね部11aの変位量を検出する。
具体的には、ばね変位検出部13は、例えば、ガラススケールを光学的に読み取る変位センサユニット(リニアスケール)を備えて構成されており、駆動部12(駆動源12a)が発生する力を板ばね部11aが荷重アーム11に伝達する際における、板ばね部11aの変位量を検出するようになっている。
ばね変位検出部13により検出された板ばね部11aの変位量は、常時、制御部19に出力される。これにより、圧子1に負荷される試験力が、常時、検出可能となっている。
【0017】
アーム変位検出部14は、荷重アーム11の変位量を検出する。
具体的には、アーム変位検出部14は、例えば、ガラススケールを光学的に読み取る変位センサユニット(リニアスケール)を備えて構成されており、荷重アーム11が回動した変位量を検出するようになっている。
アーム変位検出部14により検出された荷重アーム11の変位量は、制御部19に出力される。
【0018】
試料台15は、荷重アーム11に配設される各種圧子の下方に備えられており、各種圧子を押し付ける試料Sが載置される。
【0019】
試料台高さ調整部16は、外周面に雄ネジが形成された支柱部16aと、内周面に雌ネジが形成されたハンドル部16bとを有しており、支柱部16aの雄ネジとハンドル部16bの雌ネジとが歯合している。そして、ハンドル部16bを回すことで、支柱部16aをその長手方向に沿って上下方向に移動させ、支柱部16aの上端に配設されている試料台15を上下に移動させて、試料台15の高さ位置を調整することができる。
【0020】
操作部17は、表示部17a及び入力部17bを備えている。
表示部17aは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成され、制御部19から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
入力部17bは、例えば、表示部17aの表示画面上を覆うように形成されたタッチパネルや、数字ボタン、スタートボタン等の各種操作ボタンを備え、ユーザーの操作に基づく操作信号を制御部19に出力する。
【0021】
記憶部18は、不揮発性の半導体メモリやハードディスク等の記憶装置からなり、各種処理に関するデータ等を記憶する。
【0022】
制御部19は、CPU19a、RAM19b、ROM19cを備えて構成されており、硬さ試験機100の各部を統括制御する。
【0023】
CPU19aは、ROM19cに格納された処理プログラム等を読み出して、RAM19bに展開して実行することにより、硬さ試験機100全体の制御を行う。
【0024】
RAM19bは、CPU19aにより実行された処理プログラム等を、RAM19b内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
【0025】
ROM19cは、CPU19aが硬さ試験機100全体を制御する機能を実現させるための各種データ、各種処理プログラム等を記憶する。具体的には、ROM19cは、例えば、硬さ試験実行プログラム191、環境温度対応プログラム192等を格納している。
【0026】
次に、この硬さ試験機100の制御部19が実行する処理について説明する。
【0027】
本実施形態の硬さ試験機100の制御部19は、板ばね部11aの変位量をばね変位検出部13が検出し、荷重アーム11の変位量をアーム変位検出部14が検出したことに応じて、所定の処理を実行する。
具体的には、この制御部19は、圧子1を試料Sに押し付けるように駆動部12が作動している状態において、ばね変位検出部13とアーム変位検出部14がそれぞれ検出した板ばね部11aの変位量と荷重アーム11の変位量とに基づき、試料Sの硬さを算出する処理を実行する。
また、この制御部19は、駆動部12が作動していない状態において、ばね変位検出部13とアーム変位検出部14がそれぞれの対象物(板ばね部11aと荷重アーム11)の変位量を検出した場合に、荷重アーム11と板ばね部11aが環境温度変化に伴い変形したと判断する処理を実行する。
【0028】
例えば、操作部17を介してユーザーから硬さ試験の実行指示が入力されたことをトリガーとして、制御部19のCPU19aは硬さ試験実行プログラム191をRAM19bに展開して実行することによって、圧子1を試料Sに押し付ける向きに荷重アーム11を回動させるように駆動部12を作動させる。
そして、圧子1を試料Sに押し付ける際の板ばね部11aの変位量をばね変位検出部13が検出するとともに、圧子1が試料Sに押し付けられる際の荷重アーム11の変位量をアーム変位検出部14が検出し、それら検出した変位量に基づいて試料Sの硬さを算出するロックウェル硬さ試験を実行する。なお、算出された試料Sの硬さの値は、表示部17aに表示されるようになっている。
【0029】
また、ユーザーから硬さ試験の実行指示が入力されておらず、駆動部12が作動していない状態において、ばね変位検出部13とアーム変位検出部14がそれぞれの対象物の変位量を検出したことをトリガーとして、制御部19のCPU19aは環境温度対応プログラム192をRAM19bに展開して実行することによって、荷重アーム11と板ばね部11aが環境温度変化に伴い変形したと判断する処理を実行する。
つまり、硬さ試験が実行されていない硬さ試験機100において、ばね変位検出部13が板ばね部11aの変位量を検出し、アーム変位検出部14が荷重アーム11の変位量を検出した場合には、荷重アーム11と板ばね部11aが環境温度変化に伴い変形したと判断するようになっている。
【0030】
ここで、本発明者らの検討事項であった、荷重アーム11や板ばね部11aの環境温度変化に伴う変形について、硬さ試験実行時の荷重アーム11や板ばね部11aの変位と比較して説明する。
【0031】
まずは、硬さ試験実行時の荷重アーム11や板ばね部11aの変位について説明する。
硬さ試験機100にて硬さ試験を行う際、例えば、
図3(a)(b)に示すように、圧子1を試料Sの表面に当接させた状態から、その圧子1を試料Sに押し付ける方向に荷重アーム11を回動させるように、駆動部が板ばね部11aを下方に引き付ける。
このとき、ばね変位検出部13は、板ばね部11aが広がる方向(プラス方向)の変位を検出し、アーム変位検出部14は、荷重アーム11の先端側が下方(プラス方向)に移動する変位を検出する。
【0032】
これに対し、硬さ試験機100が設置されている試験室などの環境の温度が上昇すると(例えば10~20℃上昇すると)、金属製の荷重アーム11や板ばね部11aは熱膨張する。
このとき、硬さ試験実行時とは異なり、圧子1は試料Sに当接しておらず、荷重アーム11はフリーに回動できる状態にあるので、熱膨張した荷重アーム11や板ばね部11aは周囲の規制を受けずに変形する。
そして、
図4(a)(b)に示すように、荷重アーム11や板ばね部11aが熱膨張した場合、ばね変位検出部13が、板ばね部11aが広がる方向(プラス方向)の変形を検出し、アーム変位検出部14が、荷重アーム11の先端側が下方(プラス方向)に移動する変形を検出するように、その熱膨張を捉えていることを本発明者らは確認した。
なお、荷重アーム11や板ばね部11aが熱膨張した場合に、ばね変位検出部13やアーム変位検出部14が検出するそれらの変形の方向が、硬さ試験実行時にばね変位検出部13やアーム変位検出部14が検出する板ばね部11aや荷重アーム11の変位の方向と同じプラス方向であるので、従来技術の硬さ試験機が熱膨張した場合において、アーム位置センサ(アーム変位検出部14)やバネ変位量センサ(ばね変位検出部13)が検知した荷重アームや板バネの変形を、硬さ試験開始のトリガーと誤認するような事象が発生したものと推認できる。
【0033】
また、硬さ試験機100が設置されている試験室などの環境の温度が下降すると(例えば10~20℃下降すると)、金属製の荷重アーム11や板ばね部11aは熱収縮する。
このとき、硬さ試験実行時とは異なり、圧子1は試料Sに当接しておらず、荷重アーム11はフリーに回動できる状態にあるので、熱収縮した荷重アーム11や板ばね部11aは周囲の規制を受けずに変形する。
そして、
図5(a)(b)に示すように、荷重アーム11や板ばね部11aが熱収縮した場合、ばね変位検出部13が、板ばね部11aが狭まる方向(マイナス方向)の変形を検出し、アーム変位検出部14が、荷重アーム11の先端側が上方(マイナス方向)に移動する変形を検出するように、その熱収縮を捉えていることを本発明者らは確認した。
【0034】
このように、硬さ試験機100が硬さ試験を実行していないタイミングに、ばね変位検出部13とアーム変位検出部14が板ばね部11aと荷重アーム11の変位を検出した場合、それは荷重アーム11や板ばね部11aが熱膨張したり熱収縮したり変形したことによるものであることが確認できた。
そこで、本発明者らは、硬さ試験機100が硬さ試験を実行しておらず、駆動部12が作動していない状態において、ばね変位検出部13とアーム変位検出部14がそれぞれの対象物(板ばね部11aと荷重アーム11)の変位量を検出した場合に、荷重アーム11と板ばね部11aが環境温度変化に伴い変形したと判断する処理を硬さ試験機100の制御部19に実行させるようにした。
【0035】
そして、本実施形態の硬さ試験機100の制御部19は、荷重アーム11と板ばね部11aが環境温度変化に伴い変形したと判断する処理を実行した後、ばね変位検出部13とアーム変位検出部14がそれぞれ検出している対象物の変位量をゼロに補正する初期化を行うべき旨をユーザーに対して報知する処理を実行する。
例えば、表示部17aに「センサをリセットするため、硬さ試験機を初期化して下さい。」などのメッセージを表示するようにして、ユーザーに対して硬さ試験機100を初期化すべきことを報知し、硬さ試験機100を初期化することを促すようにする。
その報知を確認したユーザーは、リセットボタンを押下するなど入力部17bを操作して、ばね変位検出部13とアーム変位検出部14を初期化するようにすればよい。
こうして、ばね変位検出部13とアーム変位検出部14を初期化しておけば、その環境温度に対応させた硬さ試験機100によって硬さ試験を実行することができる。
【0036】
また、本実施形態の硬さ試験機100の制御部19は、荷重アーム11と板ばね部11aが環境温度変化に伴い変形したと判断する処理を実行した後、ばね変位検出部13とアーム変位検出部14がそれぞれ検出している対象物の変位量をゼロに補正する初期化処理を実行する。
例えば、荷重アーム11と板ばね部11aが環境温度変化に伴い変形したと判断した制御部19は、自動的に内部処理を行うようにして、ばね変位検出部13やアーム変位検出部14を初期化する。なお、制御部19が自動的に初期化処理を行った場合、初期化した履歴を後日ユーザーが表示部17aなどで確認できるように、初期化処理を行った日時のデータを記憶部18に記憶しておく。
そして、ばね変位検出部13とアーム変位検出部14が初期化されていれば、その環境温度に対応させた硬さ試験機100によって硬さ試験を実行することができる。
【0037】
以上のように、本実施形態の硬さ試験機100であれば、荷重アーム11や板ばね部11aが環境温度変化に伴い変形するようなことがあっても、硬さ試験機100が設置されている試験室などの環境にあわせるように、ばね変位検出部13やアーム変位検出部14を初期化することができるので、環境温度に対応させた硬さ試験機100によって好適に硬さ試験を行うことができる。
【0038】
なお、以上の実施の形態においては、荷重アーム11や板ばね部11aが熱膨張した場合、ばね変位検出部13は、板ばね部11aが広がる方向(プラス方向)の変形を検出し、アーム変位検出部14は、荷重アーム11の先端側が下方(プラス方向)に移動する変形を検出するとし、また、荷重アーム11や板ばね部11aが熱収縮した場合、ばね変位検出部13は、板ばね部11aが狭まる方向(マイナス方向)の変形を検出し、アーム変位検出部14は、荷重アーム11の先端側が上方(マイナス方向)に移動する変形を検出するとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、荷重アーム11や板ばね部11aの変形は、荷重アーム11や板ばね部11aを構成する金属材料の種類や、荷重アーム11や板ばね部11aの形状に応じて異なるので、この限りではない。
【0039】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
1 圧子
11 荷重アーム
11a 板ばね部
12 駆動部
13 ばね変位検出部
14 アーム変位検出部
15 試料台
19 制御部
100 硬さ試験機
S 試料