(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】極低温流体循環式冷却システム及び極低温流体循環式冷却方法
(51)【国際特許分類】
F25B 9/06 20060101AFI20220914BHJP
F25B 11/02 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
F25B9/06 K
F25B11/02 A
(21)【出願番号】P 2019015641
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘川 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】長坂 徹
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-504574(JP,A)
【文献】特開2013-242138(JP,A)
【文献】特開平2-106688(JP,A)
【文献】国際公開第2013/154185(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/10
F25B 5/04
F25B 9/06
F25B 9/10
F25B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ガスを圧縮及び循環させる、直列に配置された第1の圧縮機及び第2の圧縮機と、
圧縮した前記冷媒ガスを戻りの前記冷媒ガスとの熱交換により冷却する主熱交換器と、
冷却した前記冷媒ガスを断熱膨張させる第1の膨張タービンと、
前記第1の膨張タービンを出た極低温の前記冷媒ガスと冷却液とを熱交換させる第1の副熱交換器と、
前記第1の副熱交換器を出た前記冷媒ガスを断熱膨張させる第2の膨張タービンと、
前記第2の膨張タービンを出た極低温の前記冷媒ガスと前記冷却液とを熱交換させる第2の副熱交換器と、
前記第2の副熱交換器で熱交換した後の前記冷媒ガスを、前記第1の副熱交換器及び前記主熱交換器を介して前記第1の圧縮機に循環させる第1の循環経路と、
前記第1の副熱交換器及び前記第2の副熱交換器で熱交換した後の前記冷却液を、循環させる第2の循環経路と、を備え、
前記第1の副熱交換器では、前記第1の膨張タービンを出た前記冷媒ガスと、前記第2の副熱交換器を出た前記冷媒ガスとが並行に流れ、前記冷却液と前記冷媒ガスとが対向して流れる、極低温流体循環式冷却システム。
【請求項2】
前記冷却液は、液体窒素である、請求項1に記載の極低温流体循環式冷却システム。
【請求項3】
前記冷媒ガスは、ネオンガス、ヘリウムガス、水素ガスまたはこれらのガスのうちの2種類、あるいは3種類を混合したガスのいずれかである、請求項1又は2に記載の極低温流体循環式冷却システム。
【請求項4】
前記第1の膨張タービンにおける前記冷媒ガスの膨張比が、前記第2の膨張タービンにおける前記冷媒ガスの膨張比より大きい、請求項1に記載の極低温流体循環式冷却システム。
【請求項5】
冷媒ガスを圧縮及び循環させる、直列に配置された第1の圧縮機及び第2の圧縮機と、
圧縮した前記冷媒ガスを戻りの前記冷媒ガスとの熱交換により冷却する主熱交換器と、
冷却した前記冷媒ガスを断熱膨張させる第1の膨張タービンと、
前記第1の膨張タービンを出た極低温の前記冷媒ガスと冷却液とを熱交換させる副熱交換器と、
前記副熱交換器を出た前記冷媒ガスを断熱膨張させる第2の膨張タービンと、
前記第2の膨張タービンを出て前記副熱交換器で熱交換した後の前記冷媒ガスを、前記主熱交換器を介して前記第1の圧縮機に循環させる第1の循環経路と、
前記副熱交換器で熱交換した後の前記冷却液を、循環させる第2の循環経路と、を備え、
前記副熱交換器では、前記第1の膨張タービンを出た前記冷媒ガスと、前記第2の膨張タービンを出た前記冷媒ガスとが並行に流れ、前記冷却液と前記冷媒ガスとが対向して流れ、
前記第1の膨張タービンにおける前記冷媒ガスの膨張比(A)と、前記第2の膨張タービンにおける前記冷媒ガスの膨張比(B)との膨張比率(A/B)が、1.08~1.43である、極低温流体循環式冷却システム。
【請求項6】
冷媒ガスを圧縮及び循環させる、直列に配置された第1の圧縮機及び第2の圧縮機と、
圧縮した前記冷媒ガスを戻りの前記冷媒ガスとの熱交換により冷却する主熱交換器と、
冷却した前記冷媒ガスを断熱膨張させる第1の膨張タービンと、
前記第1の膨張タービンを出た極低温の前記冷媒ガスと冷却液とを熱交換させる第1の副熱交換器と、
前記第1の副熱交換器を出た前記冷媒ガスを断熱膨張させる第2の膨張タービンと、
前記第2の膨張タービンを出た極低温の前記冷媒ガスと前記冷却液とを熱交換させる第2の副熱交換器と、
前記第2の副熱交換器で熱交換した後の前記冷媒ガスを、前記第1の副熱交換器及び前記主熱交換器を介して前記第1の圧縮機に循環させる第1の循環経路と、
前記第1の副熱交換器及び前記第2の副熱交換器で熱交換した後の前記冷却液を、循環させる第2の循環経路と、を備え、
前記第1の副熱交換器では、前記第1の膨張タービンを出た前記冷媒ガスと、前記第2の副熱交換器を出た前記冷媒ガスとが並行に流れ、前記冷媒ガスと前記冷却液とは対向して流れて熱交換し、
前記第2の副熱交換器では、前記第2の膨張タービンを出た前記冷媒ガスと前記第1の副熱交換器で熱交換した後の前記冷却液とが対向して流れて熱交換する、極低温流体循環式冷却方法。
【請求項7】
冷媒ガスを圧縮及び循環させる、直列に配置された第1の圧縮機及び第2の圧縮機と、
圧縮した前記冷媒ガスを戻りの前記冷媒ガスとの熱交換により冷却する主熱交換器と、
冷却した前記冷媒ガスを断熱膨張させる第1の膨張タービンと、
前記第1の膨張タービンを出た極低温の前記冷媒ガスと冷却液とを熱交換させる副熱交換器と、
前記副熱交換器を出た前記冷媒ガスを断熱膨張させる第2の膨張タービンと、
前記第2の膨張タービンを出て前記副熱交換器で熱交換した後の前記冷媒ガスを、前記主熱交換器を介して前記第1の圧縮機に循環させる第1の循環経路と、
前記副熱交換器で熱交換した後の前記冷却液を、循環させる第2の循環経路と、を備え、
前記第1の膨張タービンにおける前記冷媒ガスの膨張比(A)と、前記第2の膨張タービンにおける前記冷媒ガスの膨張比(B)との膨張比率(A/B)が、1.08~1.43であり、
前記副熱交換器では、前記第1の膨張タービンを出た前記冷媒ガスと、前記第2の膨張タービンを出た前記冷媒ガスとが並行に流れ、前記冷却液と前記冷媒ガスとが対向して流れて熱交換する、極低温流体循環式冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温流体循環式冷却システム及び極低温流体循環式冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒ガスを圧縮、膨張させて冷却液(一般的には、液体窒素LN2)を冷却し、該冷却液を高温超電導送電ケーブル等の被冷却体に循環させることで被冷却体を冷却する代表的な極低温流体循環式冷却システムとしてブレイトンサイクル冷凍機が知られている。
【0003】
かかる冷却システムにおいては、冷媒ガスと液体窒素との間で熱交換を行う熱交換器により、液体窒素を冷却しているが、そのときの冷媒ガスの温度が液体窒素の凝固点(約63K)よりも低い場合には、熱交換器内で液体窒素が凝固して、液体窒素を循環させることができなくなるという不具合があった。
【0004】
そこで、この課題を解決すべく、膨張タービンで断熱膨張した低温の冷媒ガスを液体窒素と熱交換させることにより温度上昇した冷媒ガスをリサイクル(再循環)させて、膨張タービンで断熱膨張した低温の冷媒ガスと熱交換させることで、液体窒素と熱交換させる冷媒ガスの温度を液体窒素の凝固点よりも高い温度とする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、圧縮機を駆動するモータの動力を低減させるべく、膨張タービン、圧縮機およびモータを同軸上に配置して一体型とし、冷媒ガスが膨張タービンで断熱膨張することによって発生する動力を同軸上のターボ圧縮機の駆動動力として回収できるようにしたいわゆる“膨張タービン一体型圧縮機”を採用した冷却システムがある。
【0006】
さらに、かかる冷却システムにおいて、膨張タービン一体型圧縮機を多段で構成すれば、上流側と下流側の膨張タービンと圧縮機の駆動動力がそれぞれ等しくなり、膨張タービンと圧縮機のモータ、主軸、軸受、ケーシング等に同一部品を採用することが可能となり、共通部品として簡素化できるというメリットがあった。
【0007】
図5は、かかる従来の冷却システムを示した系統図である。
同図に示された従来の多段(2段)圧縮タービン式冷却システム100は、主熱交換器2と、第1の副熱交換器3aP及び第2の副熱交換器3bPと、2段を構成する第1のターボ圧縮機4a及び第2のターボ圧縮機4bと、第1の駆動モータ5a及び第2の駆動モータ5bと、第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bと、第1の水冷クーラー7a及び第2の水冷クーラー7bと、第1の循環経路L1Pと、第2の循環経路L2Pとで構成されている。
【0008】
ここで、第1のターボ圧縮機4a及び第2の膨張タービン6bは、第1の駆動モータ5aに対して同軸で設けられ、膨張タービン一体型圧縮機を構成している。第2のターボ圧縮機4b及び第1の膨張タービン6aは、第2の駆動モータ5bに対して同軸で設けられ、他の一つの膨張タービン一体型圧縮機を構成している。
【0009】
詳細には、第1の循環経路L1Pの経路上には、当該第1の循環経路L1Pに冷媒ガスを圧縮循環させるための第1のターボ圧縮機4a及び第2のターボ圧縮機4bが、下流方向に向かってこの順で設けられている。第2のターボ圧縮機4bを経た冷媒ガスは、主熱交換器2に供給されている。
【0010】
第1のターボ圧縮機4aと第2のターボ圧縮機4bとの間、第2のターボ圧縮機4bと主熱交換器2との間には、それぞれ、第1の水冷クーラー7a、第2の水冷クーラー7bが介在している。
【0011】
第2のターボ圧縮機4bから主熱交換器2に供給された冷媒ガスは、後述の熱交換の後、主熱交換器2から排出され、第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bにより断熱膨張される。ここで、第1の循環経路L1Pは、各膨張タービン6a、6bについて並列経路となっており、各膨張タービン6a、6bを経たのちは、再び合流して単一経路を構成している。
【0012】
各膨張タービン6a、6bにより断熱膨張された冷媒ガスは、第2の副熱交換器3bP、第1の副熱交換器3aPの順に導入され、第1の副熱交換器3aPを出た冷媒ガスは、第2の副熱交換器3bPに戻されて、再び、第2の副熱交換器3bP、第1の副熱交換器3aPの順に導入されている。
【0013】
かかる構成により、各膨張タービン6a、6bにより断熱膨張された最も低温の冷媒ガスと、該冷媒ガスが第2の循環経路L2Pを流れる冷却液と熱交換した後の温度上昇した冷媒ガスとを、冷却液と熱交換する前に冷媒ガス同士で熱交換させている。これにより、冷却液と熱交換させる冷媒ガスの温度を、冷却液の凝固点よりも上昇させている(なお、冷媒ガスと冷却液の温度変化の例については、特許文献1の表1を参照)。
【0014】
第1の副熱交換器3aPにおいて、第2の循環経路L2Pを流れる冷却液と熱交換した後の冷媒ガスは、主熱交換器2に戻され、そこで、前述の第2のターボ圧縮機4bで圧縮された冷媒ガスを冷却するために利用される。その熱交換処理を終えて、主熱交換器2から排出された冷媒ガスは、第1の循環経路L1Pに基づく循環ループを形成すべく、第1のターボ圧縮機4aに戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に開示された冷却システムや
図5に記載の冷却システムは、液体窒素を冷却する前に冷媒ガス同士で互いに熱交換させているため、当該冷却システムにおける冷却効率が低いという課題があった。
【0017】
次に、
図5に記載の従来の冷却システムに関し、膨張タービンの効率について考察する。
そこで、まず、膨張タービンの比速度について考える。
比速度N
SPは、式(1)で定義される。
N
SP=(ω√Q
2)/H
0.75 ・・・(1)
ここで、
ω:回転角速度(rad/sec)
Q
2:膨張タービン出口の体積流量(m
3/sec)
H:断熱ヘッド(J/kg)
である。
【0018】
なお、断熱ヘッドHは膨張タービンの入口温度、入口圧力、出口圧力の関数である。従って、膨張タービンの入口温度が同じであれば膨張比が小さくなるほど断熱ヘッドHは小さくなるため、比速度は大きくなる。式(1)において、タービン効率が最も高くなる最適比速度は約0.6である。
【0019】
そこで、
図5に示した従来の冷却システムは、2つの膨張タービン、すなわち第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bが、並列構成をなしている。従って、主熱交換器2から出た冷媒ガスは2つに分岐し、それにより、膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bに流れる流量は、ともに、分岐前の圧縮機等を流れる量の半分、すなわち50%となる。
【0020】
ゆえに、式(1)から比速度N
SPは、比較的小さくなってしまい、
図5に記載の従来の冷却システムでは、比速度の観点から、膨張タービンの効率が低いという課題があった。
【0021】
加えて、膨張タービンのインペラを流れる冷媒ガスの漏れ(インペラ羽根高さ)による膨張タービンの効率への影響についても考える。
上述のように、膨張タービンで処理する流量が少なくなると(50%)、処理する流量に合わせて、膨張タービンにおけるインペラ羽根高さを低くすることとなる。インペラ羽根高さが低くなると、インペラのクリアランスとインペラ羽根高さの比率(クリアランス/インペラ羽根高さ)が大きくなる。この比率(クリアランス/インペラ羽根高さ)が大きくなると、インペラ通路内での冷媒ガスの内部漏れ流れが大きくなり、膨張タービンの効率が低下する。
【0022】
なお、インペラのクリアランスとは、膨張タービンのインペラを取り囲む固定壁と、高速で回転する膨張タービンのインペラとの間の隙間を意味する。クリアランスは、膨張タービンの機械的な精度(使用する軸受や組み立ての精度)により決まり、膨張タービンの大小には無関係に決まる。大きな膨張タービンでも、小さな膨張タービンでも、クリアランスはそれ程変らない。
【0023】
ゆえに、
図5に記載の従来の冷却システムでは、冷却ガスの漏れ(羽車の高さ)の観点からも、膨張タービンの効率が低いという課題があった。
【0024】
更に、
図5に記載の従来の冷却システムに関し、圧力損失個所について考察する。
同図に示すように、従来の冷却システムにおける冷媒ガスの圧力損失個所は第1の副熱交換器3aPで2個所、第2の副熱交換器3bPで2個所、合計すると4個所ある。ゆえに、従来の冷却システムでは圧力損失個所が比較的多いという課題があった。
【0025】
本発明は上述のような事情から為されたものであり、冷却システムの冷却効率が高く、膨張タービンの効率が高い、かつ圧力損失個所の少ない極低温流体循環式冷却システム及び極低温流体循環式冷却方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
かかる課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
[1] 冷媒ガスを圧縮及び循環させる、直列に配置された第1の圧縮機及び第2の圧縮機と、
圧縮した前記冷媒ガスを戻りの前記冷媒ガスとの熱交換により冷却する主熱交換器と、
冷却した前記冷媒ガスを断熱膨張させる第1の膨張タービンと、
前記第1の膨張タービンを出た極低温の前記冷媒ガスと冷却液とを熱交換させる第1の副熱交換器と、
前記第1の副熱交換器を出た前記冷媒ガスを断熱膨張させる第2の膨張タービンと、
前記第2の膨張タービンを出た極低温の前記冷媒ガスと前記冷却液とを熱交換させる第2の副熱交換器と、
前記第2の副熱交換器で熱交換した後の前記冷媒ガスを、前記第1の副熱交換器及び前記主熱交換器を介して前記第1の圧縮機に循環させる第1の循環経路と、
前記第1の副熱交換器及び前記第2の副熱交換器で熱交換した後の前記冷却液を、循環させる第2の循環経路と、を備え、
前記第1の副熱交換器では、前記第1の膨張タービンを出た前記冷媒ガスと、前記第2の副熱交換器を出た前記冷媒ガスとが並行に流れ、前記冷却液と前記冷媒ガスとが対向して流れる、極低温流体循環式冷却システム。
[2] 前記冷却液は、液体窒素である、[1]に記載の極低温流体循環式冷却システム。
[3] 前記冷媒ガスは、ネオンガス、ヘリウムガス、水素ガスまたはこれらのガスのうちの2種類、あるいは3種類を混合したガスのいずれかである、[1]又は[2]に記載の極低温流体循環式冷却システム。
[4] 前記第1の膨張タービンにおける前記冷媒ガスの膨張比が、前記第2の膨張タービンにおける前記冷媒ガスの膨張比より大きい、[1]に記載の極低温流体循環式冷却システム。
[5] 冷媒ガスを圧縮及び循環させる、直列に配置された第1の圧縮機及び第2の圧縮機と、
圧縮した前記冷媒ガスを戻りの前記冷媒ガスとの熱交換により冷却する主熱交換器と、
冷却した前記冷媒ガスを断熱膨張させる第1の膨張タービンと、
前記第1の膨張タービンを出た極低温の前記冷媒ガスと冷却液とを熱交換させる副熱交換器と、
前記副熱交換器を出た前記冷媒ガスを断熱膨張させる第2の膨張タービンと、
前記第2の膨張タービンを出て前記副熱交換器で熱交換した後の前記冷媒ガスを、前記主熱交換器を介して前記第1の圧縮機に循環させる第1の循環経路と、
前記副熱交換器で熱交換した後の前記冷却液を、循環させる第2の循環経路と、を備え、
前記副熱交換器では、前記第1の膨張タービンを出た前記冷媒ガスと、前記第2の膨張タービンを出た前記冷媒ガスとが並行に流れ、前記冷却液と前記冷媒ガスとが対向して流れ、
前記第1の膨張タービンにおける前記冷媒ガスの膨張比(A)と、前記第2の膨張タービンにおける前記冷媒ガスの膨張比(B)との膨張比率(A/B)が、1.08~1.43である、極低温流体循環式冷却システム。
[6] 冷媒ガスを圧縮及び循環させる、直列に配置された第1の圧縮機及び第2の圧縮機と、
圧縮した前記冷媒ガスを戻りの前記冷媒ガスとの熱交換により冷却する主熱交換器と、
冷却した前記冷媒ガスを断熱膨張させる第1の膨張タービンと、
前記第1の膨張タービンを出た極低温の前記冷媒ガスと前記冷却液とを熱交換させる第1の副熱交換器と、
前記第1の副熱交換器を出た前記冷媒ガスを断熱膨張させる第2の膨張タービンと、
前記第2の膨張タービンを出た極低温の前記冷媒ガスと前記冷却液とを熱交換させる第2の副熱交換器と、
前記第2の副熱交換器で熱交換した後の前記冷媒ガスを、前記第1の副熱交換器及び前記主熱交換器を介して前記第1の圧縮機に循環させる第1の循環経路と、
前記第1の副熱交換器及び前記第2の副熱交換器で熱交換した後の前記冷却液を、循環させる第2の循環経路と、を備え、
前記第1の副熱交換器では、前記第1の膨張タービンを出た前記冷媒ガスと、前記第2の副熱交換器を出た前記冷媒ガスとが並行に流れ、前記冷媒ガスと前記冷却液とは対向して流れて熱交換し、
前記第2の副熱交換器では、前記第2の膨張タービンを出た前記冷媒ガスと前記第1の副熱交換器で熱交換した後の前記冷却液とが対向して流れて熱交換する、極低温流体循環式冷却方法。
[7] 冷媒ガスを圧縮及び循環させる、直列に配置された第1の圧縮機及び第2の圧縮機と、
圧縮した前記冷媒ガスを戻りの前記冷媒ガスとの熱交換により冷却する主熱交換器と、
冷却した前記冷媒ガスを断熱膨張させる第1の膨張タービンと、
前記第1の膨張タービンを出た極低温の前記冷媒ガスと冷却液とを熱交換させる副熱交換器と、
前記副熱交換器を出た前記冷媒ガスを断熱膨張させる第2の膨張タービンと、
前記第2の膨張タービンを出て前記副熱交換器で熱交換した後の前記冷媒ガスを、前記主熱交換器を介して前記第1の圧縮機に循環させる第1の循環経路と、
前記副熱交換器で熱交換した後の前記冷却液を、循環させる第2の循環経路と、を備え、
前記第1の膨張タービンにおける前記冷媒ガスの膨張比(A)と、前記第2の膨張タービンにおける前記冷媒ガスの膨張比(B)との膨張比率(A/B)が、1.08~1.43であり、
前記副熱交換器では、前記第1の膨張タービンを出た前記冷媒ガスと、前記第2の膨張タービンを出た前記冷媒ガスとが並行に流れ、前記冷却液と前記冷媒ガスとが対向して流れて熱交換する、極低温流体循環式冷却方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明の極低温流体循環式冷却システム及び極低温流体循環式冷却方法によれば、冷却システムの冷却効率を高くし、膨張タービンの効率を高くし、かつ圧力損失個所を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の極低温流体循環式冷却システム及び極低温流体循環式冷却方法における第1実施形態の構成を示す系統図である。
【
図3】本発明の極低温流体循環式冷却システム及び極低温流体循環式冷却方法における第2実施形態の構成を示す系統図である。
【
図4】比較例1、実施例、及び比較例2の結果をグラフに示した図である。
【
図5】従来の極低温流体循環式冷却システムの一例を示した系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
第1実施形態及び第2実施形態は、いずれも、従来技術に対して、冷却システムの冷却効率が高く、膨張タービンの効率が高い、かつ圧力損失個所の少ない技術を提供するものである。第1実施形態と第2実施形態の差異は、第1実施形態が最大限に冷却効率を高くするものであるのに対し、第2実施形態は、冷却効率をある程度維持しつつ、圧力損失個所を減らすことと構成の簡略化を重視したものである。
【0030】
なお、冷媒ガスの例としては、ネオンガス、ヘリウムガス、水素ガス、またはこれらのガスのうちの2種類あるいは3種類を混合したガスのいずれかである。また、冷却液の典型例としては、液体窒素(LN2)である。
【0031】
<第1実施形態>
図1は、本発明の極低温流体循環式冷却システム及び極低温流体循環式冷却方法における第1実施形態の構成を示す系統図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る極低温流体循環式冷却システム1Aは、主熱交換器2と、第1の副熱交換器3a及び第2の副熱交換器3bと、2段を構成する第1のターボ圧縮機(第1の圧縮機)4a及び第2のターボ圧縮機(第2の圧縮機)4bと、第1の駆動モータ5a及び第2の駆動モータ5bと、第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bと、第1の水冷クーラー7a及び第2の水冷クーラー7bと、第1の循環経路L1Aと、第2の循環経路L2Aとを有する。
【0032】
ここで、第1のターボ圧縮機4a及び第2の膨張タービン6bは、第1の駆動モータ5aに対して同軸で設けられ、膨張タービン一体型圧縮機を構成する。第2のターボ圧縮機4b及び第1の膨張タービン6aは、第2の駆動モータ5bに対して同軸で設けられ、他の一つの膨張タービン一体型圧縮機を構成する。
【0033】
詳細には、第1の循環経路L1Aの経路上には、当該第1の循環経路L1Aに冷媒ガスを圧縮循環させるための第1のターボ圧縮機4a及び第2のターボ圧縮機4bが、下流方向に向かってこの順で位置する。第2のターボ圧縮機4bを経た冷媒ガスは、主熱交換器2に供給される。
【0034】
また、第1のターボ圧縮機4aと第2のターボ圧縮機4bとの間、第2のターボ圧縮機4bと主熱交換器2との間には、それぞれ、第1の水冷クーラー7a、第2の水冷クーラー7bが位置する。
【0035】
第2のターボ圧縮機4bから主熱交換器2に供給された冷媒ガスは、後述の熱交換の後、主熱交換器2から排出され、第1の膨張タービン6aにより断熱膨張して温度が低下する。第1の膨張タービン6aにより断熱膨張した冷媒ガスは、第1の副熱交換器3aでの後述の熱交換を経由した後、第2の膨張タービン6bに導かれて断熱膨張して温度が低下する。すなわち、第1の膨張タービン6aと第2の膨張タービン6bとは、第1の副熱交換器3aを挟んで直列に配置されている。
【0036】
第2の膨張タービン6bにより断熱膨張して温度が低下した冷媒ガスは、第2の副熱交換器3b、第1の副熱交換器3aの順に導入され、順に後述の熱交換が行われ、第1の副熱交換器3aを出た冷媒ガスは、主熱交換器2に戻る。
【0037】
一方、第2の循環経路L2Aを流れる冷却液は、第1の副熱交換器3a、第2の副熱交換器3bの順に導入され、後述の熱交換が行われる。なお、第2の循環経路L2Aには、図示しない冷却液を循環させるためのポンプおよび高温超電導送電ケーブル等の被冷却体が接続されている。
【0038】
第1の副熱交換器3aでは、第1の膨張タービン6aを出た冷媒ガスと、第2の副熱交換器3bを出た冷媒ガスとが並行(同じ方向)に流れている。さらに、第1の副熱交換器3aでは、第2の循環経路L2Aを流れる冷却液と、上述した2つの冷媒ガスとが対向するように流れている。かかる構成により、第1の副熱交換器3aにおいては、第1の膨張タービン6aから排出された冷媒ガスと、第2の副熱交換器3bにおいて熱交換した後の冷媒ガスと、第2の循環経路L2Aを流れる冷却液との3者の間で相互に熱交換が行われる。
【0039】
詳細には、第1の膨張タービン6aから排出された極低温の冷媒ガスは、第2の副熱交換器3bにおいて熱交換した後の冷媒ガスにより昇温される。また、第2の循環経路L2Aを流れる冷却液は、第1の膨張タービン6aから排出された冷媒ガスと、第2の副熱交換器3bにおいて熱交換した後の冷媒ガスとの双方により冷却される。
【0040】
第2の副熱交換器3bでは、第1の副熱交換器3aにおいて熱交換された冷却液と、第2の膨張タービン6bから排出された極低温の冷媒ガスとが対向するように流れている。かかる構成により、第2の副熱交換器3bにおいては、第1の副熱交換器3aにおいて熱交換した後の冷却液と、第2の膨張タービン6bから排出された極低温の冷媒ガスとの間で熱交換が行われる。
【0041】
第2の副熱交換器3b、第1の副熱交換器3aの順で熱交換して、主熱交換器2に戻された冷媒ガスは、そこで、前述の第2のターボ圧縮機4bで圧縮された冷媒ガスを冷却するために利用される。その熱交換処理を終えて、主熱交換器2から排出された冷媒ガスは、第1の循環経路L1Aに基づく循環ループを形成すべく、第1のターボ圧縮機4aに戻される。
【0042】
(イ)冷却効率の向上
第1の副熱交換器3aは、第1の膨張タービン6aから排出された冷媒ガスと、第2の副熱交換器3bから排出された冷媒ガスの両方(従来に比して、2倍流量)で、対向して流れてくる冷却液を冷却しているため、冷却効率が向上している。
【0043】
また、第1の膨張タービン6aで断熱膨張した極低温の冷媒ガスと冷却液とを熱交換させ、それにより温度上昇した冷媒ガスを、第2の膨張タービン6bで更に断熱膨張させているため、従来技術のように1段で断熱膨張させるよりもタービンのトータル熱落差が大きくなり、冷却システムの冷凍能力が向上することで冷却効率が向上している。
【0044】
図2は、当該実施形態に係るT-S線図である。同図において、主熱交換器2から排出された冷媒ガス(温度T
0)は、第1の膨張タービン6aにより断熱膨張して温度が降下し、状態が点Cに遷移する。次に、第1の副熱交換器3aにより圧力一定(P
1)で昇温されて点Dに遷移する。次に、第2の膨張タービン6bにより断熱膨張して温度が降下し、点Eに遷移する。次に、第2及び第1の副熱交換器3b、3aにより圧力一定(P
2)で順に昇温されて点Fに遷移する。なお、ここでは圧力損失を考慮していない。
【0045】
図2に示すように、第1実施形態の冷却熱量(
図2のW1(ABEFGの面積)及びW2(BCDEの面積))は、従来技術の冷却熱量(
図2のW1(ABEFGの面積))と比較して、二段膨張(第1の膨張タービン→第1の副熱交換器→第2の膨張タービン)させて冷媒ガスを降温させるため、冷却熱量W2分だけ増加することで、冷凍効率(COP)が向上している。
【0046】
(ロ)冷媒ガスの温度が、冷却液の凝固点を下回らないための保証
上述のように、本発明に係る実施形態は、冷却効率を向上させた構成であり、第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bの各々から排出された冷媒ガスがそのまま冷却液を冷却する構成となっている。したがって、各膨張タービン6a、6bの出口の冷媒ガス温度が、冷却液の凝固点を下回らないことが好ましい。
【0047】
そこで、第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bの膨張比(入口圧力と出口圧力の比率)を、それぞれ、膨張比(A)及び膨張比(B)とすると、膨張比率(A/B)を所定の範囲とすることで、各膨張タービンの出口温度が、冷却液の凝固点を下回らないようにすることができる。
【0048】
具体的には、後述の実施例で示されるように、膨張比率(A/B)が、1.08~1.43の範囲であれば、第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bの出口温度は、ともに、冷却液の凝固点(63K)を下回ることはないので、冷却液と熱交換する際の冷媒ガスの温度が、冷却液の凝固点を下回ることはない。また、逆に、このように各膨張タービン6a、7bの出口温度が、ともに冷却液の凝固点以上であっても、上述の冷却効率により、膨張比率(A/B)を所定の範囲とすることで、冷却液を所定の温度(例えば65K)まで冷却できるとも言える。
【0049】
なお、この第1実施形態においては、第2の膨張タービン6bの出口温度よりも第1の膨張タービン6aの出口温度が高く、かつ、膨張タービン6a、6bの出口温度が冷却液の凝固点(63K)を下回らないような膨張比率が望ましい。従って、前述の1.08~1.43の範囲の膨張比率のうち、1.08~1.30が好ましく、特に、冷凍能力の高くなる1.08~1.22がより好ましく、1.08~1.19が特に好ましい。
【0050】
よって、この第1実施形態においては、後述の実施例で確認されるように、相対的に、第1の膨張タービン6aよりも第2の膨張タービン6bの出口温度が低くなるが、第2の副熱交換器3bを設けて、第1の副熱交換器3aと共に、効率的に冷却液との熱交換を行うことができる。
【0051】
(ハ)膨張タービンの効率
直列に配置された各膨張タービン6a、6bの体積流量Q2は、従来の並列配置の2倍(100%)に増加し、膨張比が減少することで断熱ヘッドHが小さくなり、式(1)で表される比速度NSPが大きくなってタービン効率が最も高くなる最適比速度に近づく。よって、各膨張タービン6a、6bの効率は相対的に高くなる。
【0052】
また、同様に、各膨張タービン6a、6bの体積流量は、従来の並列配置の2倍(100%)であるので、各膨張タービン6a、6bのインペラ羽根高さが2倍に増加し、インペラのクリアランスとインペラ羽根高さの比率(クリアランス/インペラ羽根高さ)は小さくなる。従って、インペラ通路内での冷媒ガスの内部漏れ流れを少なくでき、膨張タービンの効率を向上できる。
【0053】
(ニ)圧力損失個所
図1に示すように、副熱交換器を流れる冷媒ガスの圧力損失の箇所は、第1の副熱交換器3aで2個所、第2の副熱交換器3bで1個所の、合計3個所であるので、
図5に記載の従来の冷却システムにおける圧力損失個所(4個所)よりも少なくなり、圧力損失を減らすことができる。
【0054】
<第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態に対して、所定条件のもとで、第2の副熱交換器3bを不要とし、圧力損失個所を更に削減し、冷却システムの構成を簡略化した形態である。
図3は、極低温流体循環式冷却システム及び極低温流体循環式冷却方法における第2実施形態の構成を示す系統図である。ここで、第1実施形態と同一の構成については、同符号を付し、以下、重複した説明を省略する。
【0055】
第2実施形態は、第1実施形態と同様に、冷却システムの冷却効率が高く、膨張タービンの効率が高い極低温流体循環式冷却システムの技術を提供することができる。
また、膨張比率を少なくとも1.08~1.43の範囲とすることにより、冷媒ガスの温度が、冷却液の凝固点を下回らないように保証することは第1実施形態と同様であるが、とりわけ、この第2実施形態においては、第2の膨張タービン6bの出口温度が、比較的高いことを優先している。すなわち、前述の1.08~1.43の範囲の膨張比率のうち、1.19~1.43が好ましい。特に、第2の膨張タービン6bの出口温度が、第1の膨張タービン6aの出口温度よりも高くなる膨張比率の範囲、すなわち、1.30~1.43がより好ましい。
【0056】
なお、膨張比率が1.43を超えると、後述の実施例で示されるように、第1の膨張タービン6aの出口温度が冷却液の凝固点を下回ってしまう。しかるに、
図1に示すように、第1の副熱交換器3aにおいては、第2の循環経路L2Aを流れる冷却液は、第1の膨張タービン6aから排出された冷媒ガスと、第2の副熱交換器3bにおいて熱交換された冷媒ガスとの双方により冷却されるものの、それらの冷媒ガス間でも熱交換が行われて、第1の膨張タービン6aから排出された冷媒ガスは冷却液の凝固点よりも高い温度まで昇温されるので、結果として、冷却液は、凝固点温度以下で冷却されることはなくなる。従って、第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bの出口温度が、ともに、冷却液の凝固点(63K)を下回らない膨張比率の範囲は前述のように、1.08~1.43の範囲であるが、実際に冷却液を凝固させない範囲という意味では、膨張比率の範囲の上限側には余裕があることになる。
【0057】
以上の第2実施形態においては、後述の実施例で示される通り、第1実施形態と比較して、冷凍能力は若干低下するが、その代わり、第2の副熱交換器3bが不要となり、それに伴って、圧力損失の個所も2つに減る。
【0058】
なお、従来技術と比較した場合の冷却システムの冷却効率の向上の概念や各膨張タービンの効率の向上に関しては、第1実施形態と同様である。
【0059】
ところで、各膨張タービンに係る全膨張比(C)は、次式で定義される。
全膨張比(C)=第1の膨張タービンの6a膨張比(A)×第2の膨張タービン6bの膨張比(B) ・・・(2)
【0060】
一方、上述の各実施形態においては、ターボ圧縮機の数が2つの、いわゆる2段圧縮の場合について説明したが、ターボ圧縮機の圧力比は、圧力比が大きいと断熱圧縮による冷媒ガスの温度上昇が大きくなって圧縮機の効率が低下し、小さいとより多くの圧縮段数が必要となるため、通常、圧縮機の1段当たりの圧力比は1.5付近とされる。したがって、2段圧縮では圧力比はおよそ2となり、前述した膨張タービンの全膨張比(C)は、便宜上、2とする。
【0061】
従って、逆に、膨張比率(A/B)が決まれば、式(2)との関係から、各膨張タービンの膨張比(AおよびB)が一意に決定されることとなる。
【0062】
なお、ターボ圧縮機の数が増えても、すなわち、圧縮段数が増加しても同様に適用され、例えば3段圧縮では膨張タービンの全膨張比(C)は、便宜上、3とすればよい。
【実施例】
【0063】
図5の従来例の2台並列膨張構成の場合(比較例1)と、本発明の実施形態に係る、いわゆる2段直列膨張構成の場合(実施例)と、その2台並列膨張構成で一方の膨張タービンの膨張比を2とし、他方の膨張タービンの膨張比を1として従来例と擬した場合(比較例2)について、ターボ圧縮機及び膨張タービンの運転条件(温度、圧力、流量、効率など)や熱交換器の条件(圧力損失や熱交換効率)を同じとして、プロセスシミュレーションを行った。なお、冷却液としては、液体窒素を採用した。
【0064】
(比較例1)
図5の従来例の構成において、液体窒素を65Kに冷却するために必要な冷媒ガスの最低温度(膨張タービン出口の冷媒ガス温度)は、59.84Kであった。つまり、この温度の冷媒ガスをリサイクル(再循環)させて冷媒ガス同士で熱交換することで冷媒ガスの温度を65Kまで上昇させ、この温度で液体窒素と熱交換するため、液体窒素は凝固しないというプロセスシミュレーション結果を得た。
しかしながら、冷凍能力は、10.93kWであった。
【0065】
(実施例1)
第1の膨張タービン6aの膨張比(A)及び第2の膨張タービン6bの膨張比(B)が、それぞれ、1.47及び1.36のとき、すなわち、膨張比率(A/B)が、1.08のとき、第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bの出口温度は、それぞれ、65.91K及び63.38Kであった。
また、このとき、冷凍能力は、11.54kWであった。従って、比較例1の冷凍能力に対する向上比率を表す冷凍能力比率は、105.58%であった。
【0066】
(実施例2)
第1の膨張タービン6aの膨張比(A)及び第2の膨張タービン6bの膨張比(B)が、それぞれ、1.54及び1.30のとき、すなわち、膨張比率(A/B)が、1.19のとき、第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bの出口温度が、それぞれ、64.97K及び64.31Kであった。
また、このとき、冷凍能力は、11.55kWであった。従って、比較例1の冷凍能力に対する向上比率を表す冷凍能力比率は、105.67%であった。
【0067】
(実施例3)
第1の膨張タービン6aの膨張比(A)及び第2の膨張タービン6bの膨張比(B)が、それぞれ、1.61及び1.24のとき、すなわち、膨張比率(A/B)が、1.30のとき、第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bの出口温度が、それぞれ、64.02K及び65.30Kであった。
また、このとき、冷凍能力は、11.53kWであった。従って、比較例1の冷凍能力に対する向上比率を表す冷凍能力比率は、105.49%であった。
【0068】
(実施例4)
第1の膨張タービン6aの膨張比(A)及び第2の膨張タービン6bの膨張比(B)が、それぞれ、1.69及び1.18のとき、すなわち、膨張比率(A/B)が、1.43のとき、第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bの出口温度が、それぞれ、63.02K及び66.35Kであった。
また、このとき、冷凍能力は、11.46kWであった。従って、比較例1の冷凍能力に対する向上比率を表す冷凍能力比率は、104.85%であった。
【0069】
以上の結果から、実施例1~実施例4のいわゆる2段直列膨張の冷却システムは、第1の膨張タービン6aで断熱膨張した冷媒ガスを冷却液と熱交換させ、それにより温度上昇した冷媒ガスを、第2の膨張タービン6bで更に断熱膨張させて冷却液と熱交換させているので、従来例の2台並列膨張の冷却システム(比較例1)と比較して、いずれの膨張比率においても、冷凍能力が向上することが分かった。
【0070】
また、膨張比率の所定の範囲、具体的には、1.08~1.43の範囲では、第1の膨張タービン6a及び第2の膨張タービン6bの各出口温度のどちらも、液体窒素の凝固点、すなわち63Kを下回らないことが判明した。
【0071】
更に、液体窒素の凝固点を下回らない1.08~1.43の範囲のうち、前半の領域内(実施例1~実施例2)を選択すれば、第1の膨張タービン6aの出口温度が比較的高いことを保証でき、逆に、後半の領域内(実施例3~実施例4)を選択すれば、第2の膨張タービン6bの出口温度が比較的高いことを保証できることが分かった。
【0072】
(比較例2)
比較例2として、2段直列膨張構成は実施例と同一とし、第1の膨張タービン6aの膨張比(A)及び第2の膨張タービン6bの膨張比(B)が、それぞれ、2.00及び1.00、すなわち、膨張比率(A/B)を2.00として検証した。これは、第1の膨張タービン6aのみで膨張し、第2の膨張タービン6bでは膨張させていない例である。
その結果は、第1の膨張タービン6aの出口温度は59.84Kで比較例1の出口温度と同じになり、第2の膨張タービン6bの出口温度は70.00Kとなった。また、冷凍能力は、比較例1と同じ10.93であった。
【0073】
上述の比較例1、実施例1~実施例4、及び比較例2の結果を表に表すと、表1のようになる。また、各データをグラフとして示すと
図4のようになる。
【0074】
図4によれば、第1の膨張タービン6aの各出口温度を繋いだ線は、ほぼ単調に減少する直線をなし、一方、第2の膨張タービン6bの各出口温度を繋いだ線は、ほぼ単調に増加する直線をなすことが分かった。そのとき、それらの2本の線は、膨張比率1.22近傍で交わることが分かった。
また、同図によれば、冷凍能力比率は、膨張比率1.19近傍で最大になることが分かった。
【0075】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の極低温流体循環式冷却システム及び極低温流体循環式冷却方法は、例えば、冷媒ガスを圧縮、膨張させて冷却液(例えば液体窒素LN2)を冷却し、該冷却液を高温超電導送電ケーブル等の被冷却体に循環させることで被冷却体を冷却するような場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1A、1B・・・極低温流体循環式冷却システム
2・・・主熱交換器
3a、3aP・・・第1の副熱交換器
3b、3bP・・・第2の副熱交換器
4a・・・第1のターボ圧縮機(第1の圧縮機)
4b・・・第2のターボ圧縮機(第2の圧縮機)
5a・・・第1の駆動モータ
5b・・・第2の駆動モータ
6a・・・第1の膨張タービン
6b・・・第2の膨張タービン
7a・・・第1の水冷クーラー
7b・・・第2の水冷クーラー
L1A、L1B、L1P・・・第1の循環経路
L2A、L2B、L2P・・・第2の循環経路
100・・・従来の極低温流体循環式冷却システム