(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】化合物、混合物、液晶組成物、硬化物、光学異方体、反射膜
(51)【国際特許分類】
C07C 69/92 20060101AFI20220914BHJP
C07C 69/773 20060101ALI20220914BHJP
C07C 43/20 20060101ALI20220914BHJP
C09K 19/56 20060101ALI20220914BHJP
C09K 19/38 20060101ALI20220914BHJP
C07D 321/10 20060101ALI20220914BHJP
C07D 321/00 20060101ALI20220914BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
C07C69/92 CSP
C07C69/773
C07C43/20 D
C09K19/56
C09K19/38
C07D321/10
C07D321/00
G02F1/13 500
(21)【出願番号】P 2020541271
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2019034809
(87)【国際公開番号】W WO2020050322
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018168305
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】小玉 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 峻也
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-055315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1
-2)で表される化合物。
【化1】
一般式(1
-2)中、
R
1
及びR
2
は、それぞれ独立に、アルコキシ基、アリールカルボニルオキシ基、シンナモイルオキシ基、下記一般式(2)で表される1価の置換基、又は下記一般式(4)で表される1価の置換基を表す。R
3
~R
6は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。但し、R
1~R
6のうち少なくとも1つは、下記一般式(2)で表される1価の置換基を表す
。R
1とR
2とは、互いに結合して環構造を形成してもよい。
R
1
とR
2
とが互いに結合して環構造を形成する場合、R
1
とR
2
とが結合することで形成される連結基は、*-O-CH
2
-O-*、*-O-CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
-O-*、*-O-CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
-O-*、*-O-CH
2
-Ph-CH
2
-O-*又は*-L
S2
-2価のベンゼン環基-L
S2
-*で表される基を表す。L
S2
は、-OCO-を表す。
【化2】
一般式(2)中、Ar
1は、n+1価の芳香族炭化水素環基を表す。C
Aは、炭素原子を表す。R
7及びR
8は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、置換ボリル基、置換シリル基、置換アルミニウム基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又は炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基を表す。R
iは、1価の置換基を表す。nは、0~5の整数を表す。L
1は、単結合、又は下記一般式(3)で表される2価の連結基を表す。*は、前記一般式(1
-2)中のビナフチル骨格との結合位置を表す。
なお、nが2以上である場合、複数存在するR
iは、各々同一であっても異なっていてもよい。
【化3】
一般式(3)中、L
2は、
-OCO-を表す。Ar
2は、2価の芳香族炭化水素環基を表す。*は、前記一般式(1
-2)中のビナフチル骨格との結合位置を表す。**は、前記一般式(2)中の前記C
Aとの結合部位を表す。
【化4】
一般式(4)中、Ar
3
は、m+1価の芳香族炭化水素環基を表す。C
B
は、炭素原子を表す。R
9
及びR
10
は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、置換ボリル基、置換シリル基、置換アルミニウム基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又は炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基を表す。R
j
は、1価の置換基を表す。mは、0~5の整数を表す。L
3
は、単結合、又は下記一般式(5)で表される2価の連結基を表す。*は、前記一般式(1-2)中のビナフチル骨格との結合位置を表す。
なお、mが2以上である場合、複数存在するR
j
は、各々同一であっても異なっていてもよい。
【化5】
一般式(5)中、Ar
4
は、2価の芳香族炭化水素環基を表す。L
4
は、単結合又は-OCO-を表す。*は、前記一般式(1)中のビナフチル骨格との結合位置を表す。**は、前記一般式(4)中の前記C
B
との結合部位を表す。
【請求項2】
前記L
1が、単結合を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記R
1、前記R
3、及び前記R
5からなる群より選ばれる1つ以上が、前記一般式(2)で表される1価の置換基を表し、且つ、前記R
2、前記R
4、及び前記R
6からなる群より選ばれる1つ以上が、前記一般式(2)で表される1価の置換基を表す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記R
1と前記R
2とが互いに結合して環構造を形成している、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記L
1が一般式(3)で表される2価の連結基を表すか、
前記R
iが*-L
S1-芳香族炭化水素環基を表すか、又は、
前記R
1と前記R
2が互いに結合し
、R
1
とR
2
とが結合することで形成される連結基は、*-O-CH
2
-O-*、*-O-CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
-O-*、*-O-CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
CH
2
-O-*、*-O-CH
2
-Ph-CH
2
-O-*又は*-L
S2
-2価のベンゼン環基-L
S2
-*で表される基を表す、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。なお、
L
S1
は、単結合又は2価の連結基を表し、
L
S2
は、-OCO-を表し、*は、結合位置を表す。
【請求項6】
前記R
7及び前記R
8が、水素原子を表す、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
前記Ar
1がベンゼン環基を表す、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記R
1
及び前記R
2
が、それぞれ独立に
、アルコキシ基、アリールカルボニルオキシ基、シンナモイルオキシ基、又は、前記一般式(2)で表される1価の置換基を表し、
前記R
3
~前記R
6が、いずれも、
前記一般式(4)で表される1価の置換基以外の1価
の基を表す、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項8に記載の化合物と、下記一般式(Y1)で表される化合物と、からなる混合物。
【化6】
一般式(Y1)中、R
11~R
16は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。但し、R
11~R
16のうち少なくとも1つは、下記一般式(6)で表される1価の置換基を表す。実線と破線が平行している部分は、一重結合、又は二重結合を表す。R
11とR
12とは、互いに結合して環構造を形成してもよい。
【化7】
一般式(6)中、Ar
5は、l+1価の芳香族炭化水素環基を表す。C
Cは、炭素原子を表す。R
17及びR
18は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、置換ボリル基、置換シリル基、置換アルミニウム基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又は炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基を表す。R
kは、1価の置換基を表す。lは、0~5の整数を表す。L
5は、単結合、又は下記一般式(7)で表される2価の連結基を表す。*は、前記一般式(Y1)中のビナフチル骨格との結合位置を表す。
なお、lが2以上である場合、複数存在するR
kは、各々同一であっても異なっていてもよい。
【化8】
一般式(7)中、Ar
6は、2価の芳香族炭化水素環基を表す。L
6は、単結合、又は2価の連結基を表す。*は、前記一般式(Y1)中のビナフチル骨格との結合位置を表す。**は、前記一般式(6)中の前記C
Cとの結合部位を表す。
【請求項10】
前記一般式(6)で表される1価の置換基の含有量に対する前記一般式(2)で表される1価の置換基の含有量の比が、5以上である、請求項9に記載の混合物。
【請求項11】
液晶性化合物と、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物又は請求項9若しくは請求項10に記載の混合物と、を含む、液晶組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の液晶組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項13】
請求項11に記載の液晶組成物を用いて形成される、光学異方体。
【請求項14】
請求項11に記載の液晶組成物を用いて形成される、反射膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、混合物、液晶組成物、硬化物、光学異方体、及び反射膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性を示す化合物(以後、「液晶性化合物」ともいう。)は、種々の用途に適用できる。例えば、液晶性化合物は、位相差膜に代表される光学異方体の製造、又はコレステリック液晶相を固定してなる反射膜の製造に適用される。
一般的に、コレステリック液晶相は、ネマチック液晶にキラル化合物を添加することにより形成される。なかでも、強い螺旋捻じり力(HTP:Helical twisting power)を有するキラル化合物として、ビナフチル誘導体が用いられる場合が多い。
特許文献1では、ビナフチル誘導体の中間体として、分子中に、スチルベン構造を含むビナフトール誘導体を開示している。なお、特許文献1の実施例欄に記載された合成方法では、スチルベン構造としてトランススチルベン構造のみを含むビナフトール誘導体が選択的に合成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年、紫外線等の光照射による露光によってHTPの強度を増加させるキラル化合物が望まれている。本発明者らは、特許文献1に記載された上記ビナフトール誘導体について検討したところ、露光によってHTPの強度が低減し、所望の要求を満足しないことを知見した。
【0005】
そこで、本発明は、紫外線等の光照射による露光によってHTPの強度を増加させる化合物、及び上記化合物を含む混合物を提供することを課題とする。
また、本発明は、液晶組成物、硬化物、光学異方体、及び反射膜を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、後述する一般式(1)で表される化合物によれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を解決することができることを見出した。
【0007】
〔1〕 後述する一般式(1)で表される化合物。
〔2〕 上記L1が、単結合を表す、〔1〕に記載の化合物。
〔3〕 上記R1、上記R3、及び上記R5からなる群より選ばれる1つ以上が、上記一般式(2)で表される1価の置換基を表し、且つ、上記R2、上記R4、及び上記R6からなる群より選ばれる1つ以上が、上記一般式(2)で表される1価の置換基を表す、〔1〕又は〔2〕に記載の化合物。
〔4〕 上記R1と上記R2とが互いに結合して環構造を形成している、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の化合物。
〔5〕 上記L1が一般式(3)で表される2価の連結基を表すか、上記Riが*-LS1-芳香族炭化水素環基を表すか、又は上記R1及び上記R2が互いに結合して*-LS2-2価の芳香族炭化水素環基-LS2-*を表す、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の化合物。なお、LS1及びLS2は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、*は、結合位置を表す。
〔6〕 上記R7及び上記R8が、水素原子を表す、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の化合物。
〔7〕 上記Ar1がベンゼン環基を表す、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の化合物。
〔8〕 上記R1~上記R6が、いずれも、後述する一般式(4)で表される1価の置換基以外の1価の置換基を表す、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の化合物。
〔9〕 〔8〕に記載の化合物と、後述する一般式(Y1)で表される化合物と、からなる混合物。
〔10〕 上記一般式(6)で表される1価の置換基の含有量に対する上記一般式(2)で表される1価の置換基の含有量の比が、5以上である、〔9〕に記載の混合物。
〔11〕 液晶性化合物と、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の化合物又は〔9〕若しくは〔10〕に記載の混合物と、を含む、液晶組成物。
〔12〕 〔11〕に記載の液晶組成物を硬化してなる硬化物。
〔13〕 〔11〕に記載の液晶組成物を用いて形成される、光学異方体。
〔14〕 〔11〕に記載の液晶組成物を用いて形成される、反射膜。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紫外線等の光照射による露光によってHTPの強度を増加させる化合物、及び上記化合物を含む混合物を提供できる。
また、本発明によれば、液晶組成物、硬化物、光学異方体、及び反射膜を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0010】
[一般式(1)で表される化合物]
一般式(1)で表される化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)の特徴点として、R1~R6のうち少なくとも1つが、後述する一般式(2)で表される1価の置換基を含む点が挙げられる。言い換えると、特定化合物は、後述する一般式(2)で表される1価の置換基を含むことにより、分子中にシススチルベン誘導体構造が導入されている。後述する一般式(2)で表される1価の置換基は、紫外線等のエネルギー照射を受けるとトランススチルベン誘導体構造に光異性化し、この結果として、特定化合物のHTPの強度が増加する。
また、後述するように、特定化合物中のR1及びR2が互いに結合して環構造を形成している場合、特定化合物は、ビナフチル骨格の回転が抑制されるため、HTPの温度依存性が低く(言い換えると、HTPが温度に依存して変化しにくく)、更に、露光後のHTPが高い。
なお、本明細書中、「ビナフチル骨格」とは、後述する一般式(1)中のR1~R6以外の構造部位(以下に示す構造部位)を意図する。つまり、後述する一般式(1-1)及び一般式(1-2)中のR1~R6以外の構造部位を総称したものに該当する。
【0011】
【0012】
以下、特定化合物について詳述する。
【0013】
【0014】
一般式(1)中、R1~R6は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。但し、R1~R6のうち少なくとも1つは、後述する一般式(2)で表される1価の置換基を表す。
【0015】
R1~R6で表される1価の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、及びシンナモイルオキシ基等の1価の置換基;後述する一般式(2)で表される1価の置換基;後述する一般式(4)で表される1価の置換基等が挙げられる。
【0016】
上記R1~R6で表されるアルキル基、及びアルキルカルボニルオキシ基中のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、例えば、炭素数1~10(好ましくは、炭素数1~6)のアルキル基が挙げられる。
上記R1~R6で表されるアルコキシ基、及びアルコキシカルボニル基中のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、例えば、炭素数1~10(好ましくは、炭素数1~6)のアルコキシ基が挙げられる。
上記R1~R6で表されるアリール基、並びに、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、及びアリールアミド基中のアリール基としては、例えば、炭素数6~18のアリール基(例えば、フェニル基)が挙げられる。
【0017】
上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、及びシンナモイルオキシ基等の1価の置換基は、更に置換基を有していてもよい。
置換基としては特に制限されないが、例えば、炭素数1~10のアルコキシ基、フェノキシ基、及び、以下に示す重合性基を含む基等が挙げられる。
【0018】
上記重合性基を含む基における重合性基としては、公知の重合性基が挙げられ、反応性の点から、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基又は環重合性基がより好ましい。重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニル基、マレイミド基、アセチル基、スチリル基、アリル基、エポキシ基、オキセタン基、及び、これらの基を含む基等が挙げられる。なお、上記各基中の水素原子は、ハロゲン原子等他の置換基で置換されていてもよい。
重合性基の好適な具体例としては、以下の一般式(P-1)~(P-21)で表される基が挙げられる。なお、以下式中の*は結合位置を表す。また、Raは、水素原子又はメチル基を表す。また、Meはメチル基、Etはエチル基を表す。
【0019】
【0020】
【0021】
上記重合性基を含む基は、上述した重合性基を有していれば特に制限されず、例えば、下記一般式(PA)で表される基が挙げられる。
*-LA-P (PA)
一般式(PA)中、LAは、単結合又は2価の連結基を表す。Pは、上述した一般式(P-1)~(P-21)で表される基を表す。*は、結合位置を表す。
上記LAで表される2価の連結基としては、例えば、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基における1つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-CO-、-OCO-、及び、-COO-からなる群から選択される1種以上の基で置換された2価の連結基が好ましい。
LAで表される2価の連結基としては、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基において1つ以上の-CH2-が-O-で置換された基がより好ましい。
一般式(PA)で表される基としては、「*-O-(CH2)k-P(kは、1~10の整数を表す)」で表される基が好ましい。
【0022】
なお、例えば、R1~R6で表される、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、又はアリールアミド基が、置換基を有する場合、置換基を有するアリールカルボニルオキシ基、置換基を有するアリールオキシカルボニル基、及び置換基を有するアリールアミド基としては、例えば、下記一般式(T1)で表される基が挙げられる。
【0023】
【0024】
一般式(T1)中、L11は、-O-CO-、-CO-O-、-N(Rb)-CO-、又は-CO-N(Rb)-を表す。Rbは、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。
LA及びPは、上述した一般式(PA)中のLA及びPと各々同義であり、好適態様も同じである。
R11は、1価の置換基を表す。R11で表される1価の置換基としては、例えば、炭素数1~3のアルコキシ基等が挙げられる。
S11及びS12は、それぞれ独立して、0~5の整数を表す。但し、1≦S11+S12≦5である。
【0025】
R1~R6で表される1価の置換基としては、なかでも、アルコキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、又は上述した一般式(2)で表される1価の置換基が好ましい。また、後述するように、R1とR2は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0026】
以下、上記一般式(2)で表される1価の置換基、及び上記一般式(4)で表される1価の置換基について説明する。
まず、上記一般式(2)で表される1価の置換基について説明する。
【0027】
特定化合物は、一般式(2)で表される1価の置換基を含むことにより、分子中にシススチルベン誘導体構造が導入されている。具体的には、一般式(2)で表される1価の置換基中のL1が単結合を表す場合、一般式(2)中に明示されるオレフィン二重結合部位(CA=C)において、一般式(2)中に明示されるAr1と一般式(1)中のビナフチル骨格中に含まれるベンゼン環(一般式(2)で表される1価の置換基が結合するベンゼン環を意図する。)とがシス型配置となり、シススチルベン誘導体構造が形成される。また、一般式(2)で表される1価の置換基中のL1が一般式(3)で表される2価の連結基を表す場合、一般式(2)中に明示されるオレフィン二重結合部位(CA=C)において、一般式(2)中に明示されるAr1と一般式(3)に明示されるAr2とがシス型配置となり、シススチルベン誘導体構造が形成される。
【0028】
【0029】
一般式(2)中、Ar1は、n+1価の芳香族炭化水素環基を表す。
上記芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環としては特に制限されないが、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素環が挙げられ、炭素数6~10の芳香族炭化水素環が好ましく、なかでも、ベンゼン環が好ましい(つまり、Ar1は、ベンゼン環基が好ましい)。
【0030】
CAは、炭素原子を表す。
【0031】
R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、置換ボリル基、置換シリル基、置換アルミニウム基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又は炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基を表す。
【0032】
R7及びR8で表される置換ボリル基としては、例えば、*-BRX1RX2(RX1及びRX2は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。但し、RX1及びRX2のうち1つ以上は1価の置換基を表す。なお、RX1及びRX2が互いに結合して環構造を形成していてもよい。)で表される基が挙げられる。
RX1及びRX2で表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、炭素数1~10のアルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。)フェニル基、又は炭素数1~10のアルコキシ基等が挙げられる。
【0033】
R7及びR8で表される置換シリル基としては、例えば、*-SiRX3RX4RX5(RX3~RX5は、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。)で表される基が挙げられる。
RX3~RX5で表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、炭素数1~10のアルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。)、及びフェニル基等が挙げられる。
【0034】
R7及びR8で表される置換アルミニウム基としては、*-AlRX5RX6(RX5及びRX6は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の置換基を表す。但し、RX5及びRX6のうち1つ以上は1価の置換基を表す。なお、RX5及びRX6が互いに結合して環構造を形成していてもよい。)で表される基が挙げられる。
RX5及びRX6で表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、炭素数1~10のアルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。)、及びフェニル基等が挙げられる。
【0035】
R7及びR8で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0036】
R7及びR8で表されるアルコキシカルボニル基中のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、例えば、炭素数1~10(好ましくは、炭素数1~6)のアルキル基が挙げられる。上記アルコキシカルボニル基は、置換基を更に有していてもよい。
【0037】
R7及びR8で表されるアルキルカルボニル基中のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、例えば、炭素数1~10(好ましくは、炭素数1~6)のアルキル基が挙げられる。上記アルキルカルボニル基は、置換基を更に有していてもよい。
【0038】
R7及びR8で表される炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
上記炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4)のアルキル基、炭素数2~10(好ましくは炭素数2~6、より好ましくは炭素数2~4)のアルケニル基、及び炭素数2~10(好ましくは炭素数2~6、より好ましくは炭素数2~4)のアルキニル基が挙げられる。また、上記炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基は、置換基を更に有していてもよい。
【0039】
R7及びR8としては、なかでも、水素原子が好ましい。
【0040】
Riは、1価の置換基を表す。
Riで表される1価の置換基としては特に制限されず、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、及びシンナモイルオキシ基等の1価の置換基等が挙げられる。
【0041】
上記Riで表されるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、及びアルキルカルボニルオキシ基は、各々、上述した一般式(1)中のR1~R6で表されるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、及びアルキルカルボニルオキシ基と同義であり、好適態様も同じである。
【0042】
Riで表される1価の置換基としては、アルコキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、又はアルコキシカルボニル基が好ましい。
【0043】
一般式(2)中、nが2以上である場合、複数存在するRiは、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
nは、0~5の整数を表す。
nの数は特に制限されないが、0~3の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましい。
【0045】
L1は、単結合、又は下記一般式(3)で表される2価の連結基を表す。また、*は、一般式(1)中のビナフチル骨格との結合位置を表す。
なお、L1が単結合を表す場合、CAで表される炭素原子が、上記一般式(1)中のビナフチル骨格との結合部位を表す。
L1としては、なかでも、HTP増加率がより大きい点で、単結合が好ましい。
【0046】
以下、上記一般式(3)で表される2価の連結基を説明する。
【0047】
【0048】
一般式(3)中、L2は、単結合、又は2価の連結基を表す。
L2で表される2価の連結基としては特に制限されないが、例えば、2価の脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、炭素数1~20であることが好ましく、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基が挙げられる。)、-O-、-S-、-SO2-、-NRA-、-CO-(-C(=O)-)、-COO-(-C(=O)O-)、-OCO-(-OC(=O)-)、-NRA-CO-、-CO-NRA-、-SO3-、-SO2NRA-、-NRASO2-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、及びこれらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、RAは、水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。
なお、上記2価の連結基中の水素原子は、ハロゲン原子等の他の置換基で置換されていてもよい。
L2で表される2価の連結基としては、なかでも、-O-、-CO-、-COO-、又は-OCO-が好ましく、-COO-、又は-OCO-がより好ましい。
【0049】
Ar2は、2価の芳香族炭化水素環基を表す。
上記芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環としては特に制限されないが、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素環が挙げられ、炭素数6~10の芳香族炭化水素環が好ましく、なかでも、ベンゼン環がより好ましい。
【0050】
一般式(3)中、*は、上記一般式(1)中のビナフチル骨格との結合位置を表す。**は、上記一般式(2)中の上記CAで表される炭素原子との結合部位を表す。
【0051】
次に、上記一般式(4)で表される1価の置換基について説明する。
【0052】
特定化合物は、一般式(4)で表される1価の置換基を含むことにより、分子中にトランススチルベン誘導体構造が導入され得る。具体的には、一般式(4)で表される1価の置換基中のL3が単結合を表す場合、一般式(4)中に明示されるオレフィン二重結合部位(CB=C)において、一般式(4)中に明示されるAr3と一般式(1)中のビナフチル骨格中に含まれるベンゼン環(一般式(4)で表される1価の置換基が結合するベンゼン環を意図する。)とがトランス型配置となり、トランススチルベン誘導体構造が形成される。また、一般式(4)で表される1価の置換基中のL3が一般式(5)で表される2価の連結基を表す場合、一般式(4)中に明示されるオレフィン二重結合部位(CB=C)において、一般式(4)中に明示されるAr3と一般式(5)に明示されるAr4とがトランス型配置となり、トランススチルベン誘導体構造が形成される
【0053】
【0054】
一般式(4)中、Ar3は、m+1価の芳香族炭化水素環基を表す。
上記芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環としては特に制限されないが、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素環が挙げられ、炭素数6~10の芳香族炭化水素環が好ましく、なかでも、ベンゼン環がより好ましい。
【0055】
CBは、炭素原子を表す。
R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、置換ボリル基、置換シリル基、置換アルミニウム基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又は炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基を表す。
R9及びR10で表される置換ボリル基、置換シリル基、置換アルミニウム基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、及び炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基としては、一般式(2)中のR7及びR8で表される置換ボリル基、置換シリル基、置換アルミニウム基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、及び炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられ、その好適態様も同じである。
R9及びR10としては、なかでも、水素原子が好ましい。
【0056】
Rjは、1価の置換基を表す。
Rjで表される1価の置換基としては、一般式(2)中のRiで表される1価の置換基と同様のものが挙げられ、その好適態様も同じである。
【0057】
一般式(4)中、なお、mが2以上である場合、複数存在するRjは、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
mは、0~5の整数を表す。
mの数は特に制限されないが、0~3の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましい。
【0059】
L3は、単結合、又は下記一般式(5)で表される2価の連結基を表す。また、*は、一般式(1)中のビナフチル骨格との結合位置を表す。
なお、L3が単結合を表す場合、CBで表される炭素原子が、上記一般式(1)中のビナフチル骨格との結合部位を表す。
L3としては、なかでも、単結合が好ましい。
【0060】
以下、上記一般式(5)で表される2価の連結基を説明する。
【0061】
【0062】
一般式(5)中、L4は、単結合、又は2価の連結基を表す。
L4で表される2価の連結基としては、一般式(3)中のL2で表される2価の置換基と同様のものが挙げられ、その好適態様も同じである。
【0063】
Ar4は、2価の芳香族炭化水素環基を表す。
Ar4で表される2価の芳香族炭化水素環基としては、一般式(3)中のAr2で表される2価の芳香族炭化水素環基と同様のものが挙げられ、その好適態様も同じである。
【0064】
一般式(5)中、*は、上記一般式(1)中のビナフチル骨格との結合位置を表す。**は、上記一般式(4)中の上記CBで表される炭素原子との結合部位を表す。
【0065】
一般式(1)中、R1~R6で表される1価の置換基としては、HTP増加率がより大きくなる点で、上記一般式(4)で表される1価の置換基以外の基であることが好ましい。
【0066】
また、露光後HTPが大きく、且つHTP増加率がより大きくなる点で、一般式(1)においてR1~R6のうち2以上が、上記一般式(2)で表される1価の置換基であることが好ましい。なかでも、R1、R3、及びR5からなる群より選ばれる1つ以上が一般式(2)で表される1価の置換基を表し、且つ、R2、R4、及びR6からなる群より選ばれる1つ以上が一般式(2)で表される1価の置換基を表すことが好ましい。
【0067】
また、露光後HTPがより大きくなる点で、特定化合物は、下記態様(A)、下記態様(B)、及び下記態様(C)から選ばれる1つ以上の態様を満たすことが好ましい。
態様(A):上記一般式(2)で表される1価の置換基において、L1が一般式(3)で表される2価の連結基を表す。
態様(B):上記一般式(2)で表される1価の置換基において、Riが、*-LS1-1価の芳香族炭化水素環基を表す。
態様(C):一般式(1)中のR1及びR2が互いに結合して、*-LS2-2価の芳香族炭化水素環基-LS2-*を表す。
【0068】
LS1及びLS2は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。LS1及びLS2で表される2価の連結基は、一般式(3)中のL2で表される2価の連結基と同義である。LS1及びLS2としては、単結合、2価の脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、炭素数1~20であることが好ましく、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基が挙げられる。)、-O-、-CO-、-NH-CO-、-CO-NH-、-COO-、又は-OCO-が好ましい。
【0069】
態様(B)にて示す1価の芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環としては特に制限されないが、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素環が挙げられ、炭素数6~10の芳香族炭化水素環が好ましく、なかでも、ベンゼン環がより好ましい。
態様(C)にて示す2価の芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環としては特に制限されないが、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素環が挙げられ、炭素数6~10の芳香族炭化水素環が好ましく、なかでも、ベンゼン環がより好ましい。
【0070】
特に、露光後HTPがより大きくなる点で、特定化合物は、後述する一般式(1-2)で表され、且つ、上記態様(A)、上記態様(B)、及び上記態様(C)から選ばれる1つ以上の態様を満たすことが好ましい。
上記構成とした場合、特定化合物は、芳香族炭化水素環基が単結合又は2価の連結基を介して3つ以上連結している(但し、ビナフチル骨格中のナフタレン環同士の連結は含まない)構造を含み、この構造が露光後のHTPをより大きくする要因の一つであると推測される。
詳細には、態様(A)の特定化合物は、ビナフチル骨格中に含まれるナフタレン環と、一般式(3)中に明示されるAr2と、一般式(2)中に明示されるAr1とが、単結合又は2価の連結基を介して連結されている構造を含む。また、態様(B)の特定化合物は、ビナフチル骨格中に含まれるナフタレン環と、一般式(2)中に明示されるAr1と、上記Ri中の芳香族炭化水素環とが、単結合又は2価の連結基を介して連結されている構造を含む。また、態様(C)の特定化合物は、ビナフチル骨格中に含まれる2つのナフタレン環と、R1及びR2が互いに結合して形成される*-LS2-2価の芳香族炭化水素環基-LS2-*中の芳香族炭化水素環とが、単結合又は2価の連結基を介して連結されている構造を含む。
【0071】
また、露光後HTPが大きく、且つHTPの温度依存性がより小さい点で、一般式(1)中、R1とR2とが互いに結合して環構造を形成していることが好ましい。
上記環構造としては特に制限されないが、芳香族環及び非芳香族環のいずれであってもよいが、非芳香環であることが好ましく、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
上記環構造の環員数は特に制限されず、例えば、5~12である。なお、上記環員数は、一般式(1)中に明示される4つの炭素原子を含めた数である。
【0072】
一般式(1)中、実線と破線が平行している部分は、一重結合、又は二重結合を表す。実線と破線が平行している部分が一重結合の場合には、特定化合物は、下記一般式(1-1)で表される化合物に相当し、実線と破線が平行している部分が二重結合の場合には、特定化合物は、下記一般式(1-2)で表される化合物に相当する。特定化合物は、本発明の効果がより優れる点で、なかでも、下記一般式(1-2)で表される化合物であることが好ましい。
なお、下記一般式(1-1)及び下記一般式(1-2)中のR1~R6は、一般式(1)中のR1~R6とそれぞれ同義であり、また好適な態様も同じである。
【0073】
【0074】
特定化合物としては、なかでも、下記一般式(X1)で表される化合物が好ましい。
【0075】
【0076】
一般式(X1)中、RX1~RX6は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。但し、RX1~RX6のうち少なくとも1つは、上述した一般式(2)で表される1価の置換基を表す。また、RX1~RX6は、上述した一般式(4)で表される1価の置換基を有さない。
【0077】
RX1~RX6で表される1価の置換基としては、例えば、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、及びシンナモイルオキシ基等の1価の置換基;上述した一般式(2)で表される1価の置換基;等が挙げられる。
上記RX1~RX6で表されるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、及びアルキルカルボニルオキシ基は、各々、上述した一般式(1)中のR1~R6で表されるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、及びアルキルカルボニルオキシ基と同義であり、好適態様も同じである。
【0078】
RX1~RX6で表される1価の置換基としては、なかでも、アルコキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、又は上述した一般式(2)で表される1価の置換基が好ましい。また、後述するように、RX1とRX2は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0079】
露光後HTPが大きく、且つHTP増加率がより大きくなる点で、一般式(X1)においてRX1~RX6のうち2以上が、上記一般式(2)で表される1価の置換基であることが好ましい。なかでも、RX1、RX3、及びRX5からなる群より選ばれる1つ以上が一般式(2)で表される1価の置換基を表し、且つ、RX2、RX4、及びRX6からなる群より選ばれる1つ以上が一般式(2)で表される1価の置換基を表すことが好ましい。
【0080】
また、露光後HTPがより大きくなる点で、一般式(X1)で表される化合物は、下記態様(A)、下記態様(B)、及び下記態様(C)から選ばれる1つ以上の態様を満たすことが好ましい。
態様(A):上記一般式(2)で表される1価の置換基において、L1が上述した一般式(3)で表される2価の連結基を表す。
態様(B):上記一般式(2)で表される1価の置換基において、Riが、*-LS1-1価の芳香族炭化水素環基を表す。
態様(C):一般式(1)中のR1及びR2が互いに結合して、*-LS2-2価の芳香族炭化水素環基-LS2-*を表す。
【0081】
LS1及びLS2は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。LS1及びLS2で表される2価の連結基は、一般式(3)中のL2で表される2価の連結基と同義である。LS1及びLS2としては、単結合、2価の脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、炭素数1~20であることが好ましく、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基が挙げられる。)、-O-、-CO-、-NH-CO-、-CO-NH-、-COO-、又は-OCO-が好ましい。
【0082】
態様(B)にて示す1価の芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環としては特に制限されないが、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素環が挙げられ、炭素数6~10の芳香族炭化水素環が好ましく、なかでも、ベンゼン環がより好ましい。
態様(C)にて示す2価の芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環としては特に制限されないが、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素環が挙げられ、炭素数6~10の芳香族炭化水素環が好ましく、なかでも、ベンゼン環がより好ましい。
【0083】
特に、露光後HTPがより大きくなる点で、一般式(X1)で表される化合物は、上述した一般式(1-2)で表される構造と同様の構造を有し(言い換えると、一般式(X1)中の実線と破線が平行している部分がいずれも二重結合を表し)、且つ、上記態様(A)、上記態様(B)、及び上記態様(C)から選ばれる1つ以上の態様を満たすことが好ましい。
上記構成とした場合、一般式(X1)で表される化合物は、芳香族炭化水素環基が単結合又は2価の連結基を介して3つ以上連結している(但し、ビナフチル骨格中のナフタレン環同士の連結は含まない)構造を含み、この構造が露光後のHTPをより大きくする要因の一つであると推測される。詳細には、態様(A)の一般式(X1)で表される化合物は、ビナフチル骨格中に含まれるナフタレン環と、一般式(3)中に明示されるAr2と、一般式(2)中に明示されるAr1とが、単結合又は2価の連結基を介して連結されている構造を含む。また、態様(B)の一般式(X1)で表される化合物は、ビナフチル骨格中に含まれるナフタレン環と、一般式(2)中に明示されるAr1と、上記Ri中の芳香族炭化水素環とが、単結合又は2価の連結基を介して連結されている構造を含む。また、態様(C)の一般式(X1)で表される化合物は、ビナフチル骨格中に含まれる2つのナフタレン環と、R1及びR2が互いに結合して形成される*-LS2-2価の芳香族炭化水素環基-LS2-*中の芳香族炭化水素環とが、単結合又は2価の連結基を介して連結されている構造を含む。
【0084】
また、露光後HTPが大きく、且つHTPの温度依存性がより小さい点で、一般式(X1)中、RX1とRX2とが互いに結合して環構造を形成していることが好ましい。
上記環構造としては特に制限されないが、芳香族環及び非芳香族環のいずれであってもよいが、非芳香環であることが好ましく、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
上記環構造の環員数は特に制限されず、例えば、5~12である。なお、上記環員数は、一般式(X1)中に明示される4つの炭素原子を含めた数である。
【0085】
特定化合物において、上述した一般式(2)で表される1価の置換基の含有量(以下「X1(モル)」ともいう。)、及び上述した一般式(4)で表される1価の置換基の含有量(以下「Y1(モル)」ともいう。)は、1H NMR(核磁気共鳴)により求めることができる。特定化合物が、上述した一般式(2)で表される1価の置換基と上述した一般式(4)で表される1価の置換基とを含む場合、X1/Y1は、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
【0086】
特定化合物は、公知の方法に準じて合成できる。例えば、トラン構造を有するビナフトール誘導体を接触還元によって還元する工程を含む製法、及びトラン構造を有するビナフトール誘導体をヒドロメタル化によって置換アルケンとする工程を含む製法等により合成できる。
【0087】
また、特定化合物は、R体であってもS体であってもよく、R体とS体との混合物であってもよい。
【0088】
以下に、上記特定化合物の具体例を示すが、これに限定されるものではない。なお、以下の化合物については、R体のみ、又はS体のみを例示することがあるが、対応するS体、及びR体も用いることができる。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
〔用途〕
上記特定化合物は、いわゆるキラル剤として、種々の用途に適用できる。例えば、特定化合物と液晶性化合物とを混合して得られる液晶組成物を用いることにより、コレステリック液晶相を形成できる。
【0106】
[混合物]
本発明の混合物は、上述した一般式(X1)で表される化合物と、下記一般式(Y1)で表される化合物と、からなる。
以下、下記一般式(Y1)で表される化合物について詳述する。
【0107】
【0108】
一般式(Y1)中、R11~R16は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。但し、R11~R16のうち少なくとも1つは、後述する一般式(6)で表される1価の置換基を表す。
【0109】
R11~R16で表される1価の置換基としては、例えば、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、及びシンナモイルオキシ基等の1価の置換基;上述した一般式(2)で表される1価の置換基;後述する一般式(6)で表される1価の置換基;等が挙げられる。
上記R11~R16で表されるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、及びアルキルカルボニルオキシ基は、各々、上述した一般式(1)中のR1~R6で表されるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、アルコキシカルボニル基、及びアルキルカルボニルオキシ基と同義であり、好適態様も同じである。
R11~R16で表される1価の置換基としては、なかでも、アルコキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールアミド基、又は上述した一般式(6)で表される1価の置換基が好ましい。また、後述するように、R11とR12は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0110】
以下、上記一般式(6)で表される1価の置換基について説明する。
一般式(Y1)で表される化合物は、一般式(6)で表される1価の置換基を含むことにより、分子中にトランススチルベン誘導体構造が導入される。具体的には、一般式(6)で表される1価の置換基中のL5が単結合を表す場合、一般式(6)中に明示されるオレフィン二重結合部位(CC=C)において、一般式(6)中に明示されるAr5と一般式(Y1)中のビナフチル骨格中に含まれるベンゼン環(一般式(6)で表される1価の置換基が結合するベンゼン環を意図する。)とがトランス型配置となり、トランススチルベン誘導体構造が形成される。また、一般式(6)で表される1価の置換基中のL5が一般式(7)で表される2価の連結基を表す場合、一般式(6)中に明示されるオレフィン二重結合部位(CC=C)において、一般式(6)中に明示されるAr5と一般式(7)に明示されるAr6とがトランス型配置となり、トランススチルベン誘導体構造が形成される。
【0111】
【0112】
一般式(6)中、Ar5は、l+1価の芳香族炭化水素環基を表す。
上記芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環としては特に制限されないが、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素環が挙げられ、炭素数6~10の芳香族炭化水素環が好ましく、なかでも、ベンゼン環が好ましい。
CCは、炭素原子を表す。
R17及びR18は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、置換ボリル基、置換シリル基、置換アルミニウム基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又は炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基を表す。
R17及びR18で表される置換ボリル基、置換シリル基、置換アルミニウム基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、又は炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基としては、一般式(2)中のR7及びR8で表される置換ボリル基、置換シリル基、置換アルミニウム基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、及び炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられ、その好適態様も同じである。
R17及びR18としては、なかでも、水素原子が好ましい。
【0113】
Rkは、1価の置換基を表す。
Rkで表される1価の置換基としては、一般式(2)中のRiで表される1価の置換基と同様のものが挙げられ、その好適態様も同じである。
【0114】
一般式(6)中、lが2以上である場合、複数存在するRkは、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0115】
lは、0~5の整数を表す。
lの数は特に制限されないが、0~3の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましい。
【0116】
L5は、単結合、又は下記一般式(7)で表される2価の連結基を表す。また、*は、上記一般式(Y1)中のビナフチル骨格との結合位置を表す。
なお、L5が単結合を表す場合、CCで表される炭素原子が、上記一般式(Y1)中のビナフチル骨格との結合部位を表す。
L5としては、なかでも、単結合が好ましい。
【0117】
以下、上記一般式(7)で表される2価の連結基を説明する。
【0118】
【0119】
一般式(7)中、L6は、単結合、又は2価の連結基を表す。
L6で表される2価の連結基としては、一般式(3)中のL2で表される2価の置換基と同様のものが挙げられ、その好適態様も同じである。
【0120】
Ar6は、2価の芳香族炭化水素環基を表す。
Ar6で表される2価の芳香族炭化水素環基としては、一般式(3)中のAr2で表される2価の芳香族炭化水素環基と同様のものが挙げられ、その好適態様も同じである。
【0121】
一般式(7)中、*は、上記一般式(Y1)中のビナフチル骨格との結合位置を表す。**は、上記一般式(6)中の上記CCとの結合部位を表す。
【0122】
また、一般式(Y1)においてR11~R16のうち2以上が、上記一般式(6)で表される1価の置換基であることが好ましい。なかでも、R11、R13、及びR15からなる群より選ばれる1つ以上が一般式(6)で表される1価の置換基を表し、且つ、R12、R14、及びR16からなる群より選ばれる1つ以上が一般式(6)で表される1価の置換基を表すことが好ましい。
【0123】
また、HTPの温度依存性がより小さい点で、一般式(Y1)中、R11とR12とが互いに結合して環構造を形成していることが好ましい。
上記環構造としては特に制限されないが、芳香族環及び非芳香族環のいずれであってもよいが、非芳香環であることが好ましく、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
上記環構造の環員数は特に制限されず、例えば、5~12である。なお、上記環員数は、一般式(Y1)中に明示される4つの炭素原子を含めた数である。
【0124】
一般式(Y1)中、実線と破線が平行している部分は、一重結合、又は二重結合を表す。実線と破線が平行している部分が一重結合の場合には、一般式(Y1)で表される化合物は、下記一般式(Y1-1)で表される化合物に相当し、実線と破線が平行している部分が二重結合の場合には、一般式(Y1)で表されるキラル化合物は、下記一般式(Y1-2)で表される化合物に相当する。
なお、下記一般式(Y1-1)及び下記一般式(Y1-2)中のR11~R16は、一般式(Y1)中のR11~R16とそれぞれ同義であり、また好適な態様も同じである。
【0125】
【0126】
混合物中、上記一般式(X1)で表される化合物と、上記一般式(Y1)で表される化合物との混合比は特に制限されず、所望の初期HTP及びHTP増加率になるように任意の比率で混合すればよい。言い換えると、上記混合物は、上記一般式(X1)で表される化合物と上記一般式(Y1)で表される化合物との混合比を調整することにより、所望の初期HTP及びHTP増加率を設定できる。
なかでも、HTP増加率がより大きくなる点で、混合物における一般式(2)で表される1価の置換基の含有量(以下「X2(モル)」ともいう。)と一般式(6)で表される1価の置換基の含有量(以下「Y2(モル)」ともいう。)との含有比(一般式(6)で表される1価の置換基の含有量に対する一般式(2)で表される1価の置換基の含有量(X2/Y2))は、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。
なお、混合物において、一般式(2)で表される1価の置換基の含有量及び一般式(6)で表される1価の置換基の含有量は、1H NMR(核磁気共鳴)により求めることができる。
【0127】
また、混合物中、上記一般式(X1)で表される化合物と上記一般式(Y1)で表される化合物との組み合わせとしては、下記要件(A)及び下記要件(B)を何れも満たす組み合わせであることが好ましい。
【0128】
要件(A):
混合物中、上記一般式(X1)中及び上記一般式(Y1)中において実線と破線が平行している部分がいずれも二重結合を表すか、又は上記一般式(X1)中及び上記一般式(Y1)中において実線と破線が平行している部分がいずれも一重結合を表す。
【0129】
要件(B):
・上記一般式(X1)で表される化合物において、RX1とRX2とが互いに結合して環構造を形成しない場合:
混合物中、上記一般式(X1)で表される化合物においてRX1が一般式(2)で表される1価の置換基を表す場合、上記一般式(Y1)で表される化合物においてR11が一般式(6)で表される1価の置換基を表し、上記一般式(X1)で表される化合物においてRX2が一般式(2)で表される1価の置換基を表す場合、上記一般式(Y1)で表される化合物においてR12が一般式(6)で表される1価の置換基を表し、上記一般式(X1)で表される化合物においてRX3が一般式(2)で表される1価の置換基を表す場合、上記一般式(Y1)で表される化合物においてR13が一般式(6)で表される1価の置換基を表し、上記一般式(X1)で表される化合物においてRX4が一般式(2)で表される1価の置換基を表す場合、上記一般式(Y1)で表される化合物においてR14が一般式(6)で表される1価の置換基を表し、上記一般式(X1)で表される化合物においてRX5が一般式(2)で表される1価の置換基を表す場合、上記一般式(Y1)で表される化合物においてR15が一般式(6)で表される1価の置換基を表し、上記一般式(X1)で表される化合物においてRX6が一般式(2)で表される1価の置換基を表す場合、上記一般式(Y1)で表される化合物においてR16が一般式(6)で表される1価の置換基を表す。
更に、上記態様において、一般式(2)中のL1、R7、R8、Ar1、Ri及びnは、一般式(6)中のL5、R17、R18、Ar5、Rk、及びlと各々同一であり、且つ、上記一般式(X1)で表される化合物における一般式(2)で表される1価の置換基以外を表すRX1~RX6は、上記一般式(Y1)で表される化合物における一般式(6)で表される1価の置換基以外を表すR11~R16と各々同一であることが好ましい。
【0130】
・上記一般式(X1)で表される化合物において、RX1とRX2とが互いに結合して環構造を形成する場合:
混合物中、上記一般式(X1)で表される化合物においてRX3が一般式(2)で表される1価の置換基を表す場合、上記一般式(Y1)で表される化合物においてR13が一般式(6)で表される1価の置換基を表し、上記一般式(X1)で表される化合物においてRX4が一般式(2)で表される1価の置換基を表す場合、上記一般式(Y1)で表される化合物においてR14が一般式(6)で表される1価の置換基を表し、上記一般式(X1)で表される化合物においてRX5が一般式(2)で表される1価の置換基を表す場合、上記一般式(Y1)で表される化合物においてR15が一般式(6)で表される1価の置換基を表し、上記一般式(X1)で表される化合物においてRX6が一般式(2)で表される1価の置換基を表す場合、上記一般式(Y1)で表される化合物においてR16が一般式(6)で表される1価の置換基を表し、且つ、上記一般式(Y)で表される化合物においてR11とR12とが互いに結合して環構造を表す。
更に、上記態様において、一般式(2)中のL1、R7、R8、Ar1、Ri及びnは、一般式(6)中のL5、R17、R18、Ar5、Rk、及びlと各々同一であり、上記一般式(X1)で表される化合物における一般式(2)で表される1価の置換基以外を表すRX3~RX6は、上記一般式(Y1)で表される化合物における一般式(6)で表される1価の置換基以外を表すR13~R16と各々同一であり、且つ、上記一般式(X1)で表される化合物におけるRX1とRX2とが互いに結合して形成される環構造と、上記一般式(Y)で表される化合物におけるR11とR12とが互いに結合して形成される環構造とが同一であることが好ましい。
【0131】
〔用途〕
上記混合物は、いわゆるキラル剤として、種々の用途に適用できる。例えば、上記混合物と液晶性化合物とを混合して得られる液晶組成物を用いることにより、コレステリック液晶相を形成することができる。
【0132】
[液晶組成物]
次に、本発明の液晶組成物について説明する。
本発明の液晶組成物は、液晶性化合物と、上述した特定化合物又は上述した混合物を含む。
以下に、本発明の液晶組成物に含まれる各成分について説明する。
【0133】
〔液晶性化合物〕
上記液晶性化合物は、液晶性を示す化合物を意味する。なお、化合物が液晶性を示すとは、温度を変化させたときに、結晶相(低温側)と等方相(高温側)の間に中間相を発現する性質を化合物が有することを意図する。具体的な観察方法としては、メトラートレド社製ホットステージシステムFP90等で化合物を加熱又は降温しながら、偏光顕微鏡下で観察することで、液晶相に由来する光学性異方性と流動性を確認できる。
【0134】
液晶性化合物としては、液晶性を有していれば特に限定されず、例えば、棒状ネマチック液晶性化合物等が挙げられる。
棒状ネマチック液晶性化合物としては、例えば、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が挙げられる。なお、低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
【0135】
液晶性化合物は、重合性であっても非重合性であってもよい。
重合性基を有しない棒状液晶性化合物については、様々な文献(例えば、Y. Goto et.al., Mol. Cryst. Liq. Cryst. 1995, Vol. 260, pp.23-28)に記載がある。
一方、重合性棒状液晶性化合物は、重合性基を棒状液晶性化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基等が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基がより好ましい。重合性基は種々の方法で、棒状液晶性化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶性化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個である。2種類以上の重合性棒状液晶性化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶性化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0136】
液晶性化合物としては、コレステリック液晶相を固定できる点で、少なくとも1つ以上の重合性基を有する液晶性化合物が好ましく、少なくとも2つ以上の重合性基を有する液晶性化合物がより好ましい。
【0137】
液晶性化合物としては、下記一般式(LC)で表される化合物が好ましい。
【0138】
【0139】
一般式(LC)中、P11及びP12は、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。ただし、P11及びP12の少なくとも一方が重合性基を表す。L11及びL12は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。A11~A15は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。Z11~Z14は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。m3及びm4は、それぞれ独立に、0又は1の整数を表す。
【0140】
一般式(LC)中、P11及びP12で表される重合性基としては特に限定されないが、例えば、上述した一般式(P-1)~(P-21)で表される重合性基が挙げられる。
【0141】
P11及びP12は、少なくともいずれか1つ以上が重合性基を表し、いずれも重合性基を表すことが好ましい。
【0142】
一般式(LC)中、L11及びL12で表される2価の連結基としては特に限定されないが、例えば、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、及び炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基において1つ又は2つ以上の-CH2-が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-CO-、-OCO-、又は-COO-で置換された基からなる群から選択される連結基が挙げられる。L11及びL12で表される2価の連結基としては、炭素数1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基において1つ又は2つ以上の-CH2-が-O-で置換された基が好ましい。
【0143】
一般式(LC)中、A11~A15は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。
【0144】
上記芳香族炭化水素環基の環員数は特に制限されないが、例えば5~10である。
芳香族炭化水素環基を構成する芳香族炭化水素環としては、単環構造及び多環構造のいずれであってもよい。
上記芳香族炭化水素環の炭素数は特に限定されないが、6~18が好ましく、6~10がより好ましい。芳香族炭化水素環の具体例としては、例えば、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、及びフルオレン環が挙げられる。なかでも、ベンゼン環が好ましい。なお、上記芳香族炭化水素環は、環上の水素原子が2つ除かれることにより、芳香族炭化水素環基を構成する。
【0145】
上記芳香族複素環基の環員数としては、例えば、5~10である。
芳香族複素環基を構成する芳香族複素環としては、単環構造及び多環構造のいずれであってもよい。
上記芳香族複素環基が含むヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。芳香族複素環の炭素数は特に限定されないが、5~18が好ましい。上記芳香族複素環の具体例としては、例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、チオフェン環、チアゾール環、及びイミダゾール環が挙げられる。なお、上記芳香族複素環は、環上の水素原子が2つ除かれることにより、芳香族複素環基を構成する。
芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の種類は特に制限されず、公知の置換基が挙げられる。例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N-スルホニルアミド基、アシル基、アシルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、及びアルコキシカルボニル基が挙げられる。上記各基は、更に置換基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基中の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。また、置換基の数は特に制限されず、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基は1つの置換基を有していてもよいし、複数の置換基を有していてもよい。
なかでも、一般式(LC)で表される化合物の溶解性がより向上する点で、置換基が、フッ素原子、塩素原子、フルオロアルキル基、アルコキシ基、又はアルキル基であることが好ましく、フルオロアルキル基、アルコキシ基、又はアルキル基であることがより好ましい。
上記フルオロアルキル基及びアルキル基中の炭素数、並びに、アルコキシ基中のアルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましく、1が特に好ましい。
なお、フルオロアルキル基とは、アルキル基中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された基であり、全ての水素原子がフッ素原子で置換されていることが好ましい(いわゆる、ペルフルオロアルキル基が好ましい)。
【0146】
A11~A15は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基が好ましく、1位と4位とで結合するフェニレン基がより好ましい。
【0147】
一般式(LC)中、Z11~Z14で表される2価の連結基としては特に限定されず、例えば、2価の脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、炭素数1~20であることが好ましく、例えば、アルキレン基が挙げられる。それ以外にも、アルケニレン基、アルキニレン基であってもよい。)、-O-、-S-、-SO2-、-NR1-、-CO-(-C(=O)-)、-COO-(-C(=O)O-)、-OCO-(-OC(=O)-)、-NR1-CO-、-CO-NR1-、-SO3-、-SO2NR1-、-NR1SO2-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、及びこれらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、R1は、水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。なお、上記2価の連結基中の水素原子は、ハロゲン原子等の他の置換基で置換されていてもよい。
Z11~Z14としては、なかでも、-COO-、-OCO-、又は-CH=CH-が好ましい。
【0148】
一般式(LC)中、m3及びm4は、それぞれ独立に、0又は1の整数を表し、0が好ましい。
【0149】
一般式(LC)で表される化合物は、公知の方法で合成できる。
以下に、上記一般式(LC)で表される化合物の具体例を示すが、これに限定されるものではない。
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
一般式(LC)で表される化合物は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
本発明の液晶組成物中の液晶性化合物の含有量は、液晶性組成物の全質量に対して、5~99質量%が好ましく、25~98質量%がより好ましく、65~98質量%が更に好ましく、70~98質量%が特に好ましい。
【0154】
〔特定化合物又は混合物〕
本発明の液晶組成物は、特定化合物又は混合物を含有する。特定化合物及び混合物は、上述したとおりである。なお、特定化合物は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
本発明の液晶組成物中の特定化合物又は混合物の含有量は、液晶性化合物の全質量に対して、1~20質量%が好ましく、2~15質量%がより好ましく、2~10質量%が更に好ましい。
【0155】
〔重合開始剤〕
液晶組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物、アシロインエーテル、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、フェナジン化合物、及びオキサジアゾール化合物が挙げられる。
液晶組成物中での重合開始剤の含有量は特に制限されないが、液晶性化合物の全質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましい。
【0156】
上記以外にも、液晶組成物は、溶剤、配向制御剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、安定剤、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、消泡剤、レべリング剤、増粘剤、難燃剤、界面活性剤、分散剤、重合性モノマー、並びに、染料及び顔料等の色材等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0157】
〔用途〕
上記液晶組成物は、種々の用途に適用できる。例えば、液晶組成物を用いて、スクリーン、光学異方体、又は反射膜を形成できる。なお、例えば、液晶性化合物が重合性基を有する場合、硬化処理(光照射処理又は加熱処理など)を液晶性組成物に施すことにより、硬化物が得られ、硬化物は光学異方体又は反射膜に好適に適用できる。
なお、光学異方体とは、光学異方性を有する物質を意図する。
また、反射膜とは、コレステリック液晶相を固定してなる層に相当し、所定の反射帯域の光を反射できる。反射膜は、例えば、透明スクリーンに好適に適用できる。
【0158】
以下に、液晶組成物の硬化方法について説明する。
液晶組成物を硬化(重合硬化)する方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、所定の基板と液晶組成物とを接触させて、基板上に組成物層を形成する工程Xと、組成物層に露光を行う工程Yと、組成物層に硬化処理を施す工程Zとを有する態様が挙げられる。
本態様によれば、液晶性化合物を配向させた状態で固定化することができ、いわゆる光学異方体、又はコレステリック液晶相を固定化してなる層を形成することができる。
以下、工程X~Zの手順について詳述する。
【0159】
工程Xは、基板と液晶組成物とを接触させて、基板上に組成物層を形成する工程である。使用される基板の種類は特に制限されず、公知の基板(例えば、樹脂基板、ガラス基板、セラミック基板、半導体基板、及び金属基板)が挙げられる。
基板と液晶組成物とを接触させる方法は特に制限されず、例えば、基板上に液晶組成物を塗布する方法、及び液晶組成物中に基板を浸漬する方法が挙げられる。
なお、基板と液晶組成物とを接触させた後、必要に応じて、基板上の組成物層から溶剤を除去するために、乾燥処理を実施してもよい。また、液晶性化合物の配向を促し液晶相の状態とするために、加熱処理を実施してもよい。
【0160】
工程Yは、組成物層に対して、i線等を用いた露光処理を行う工程である。
露光処理によって上述した特定化合物は光異性化を生じ、HTPが増加する。この結果として、組成物層中の液晶性化合物が配向してコレステリック液晶相が形成される。
なお、露光処理において、露光量及び/又は露光波長等を適宜調整することで、HTPの変化の程度も調整できる。また、露光後は、更に、液晶性化合物の配向を促し液晶相の状態とするために、加熱処理を実施してもよい。
【0161】
工程Zは、工程Yを経た組成物層に硬化処理を施す工程である。
硬化処理の方法は特に制限されず、例えば、光硬化処理及び熱硬化処理が挙げられる。中でも、光硬化処理が好ましい。
硬化処理として光硬化処理を行う場合、液晶組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光硬化処理における照射光の波長は、上述の露光処理における照射光の波長とは異なっていることが好ましい。
上記硬化処理により、コレステリック液晶相を固定化してなる層が形成される。なお、コレステリック液晶相を固定化してなる層は、もはや液晶性を示す必要はない。より具体的には、例えば、コレステリック液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶性化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。より具体的には、通常0~50℃、より過酷な条件下では-30~70℃の温度範囲において、層に流動性が無く、また外場又は外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態であることが好ましい。
【実施例】
【0162】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0163】
[実施例1]
〔化合物CD-1の合成〕
【0164】
【0165】
<中間体1の合成>
(R)-ビナフトール(関東化学製)65.0g、及び酢酸ブチル(和光純薬製)500mLを2L三口フラスコに入れた後、0℃にて臭素(和光純薬製)100gを滴下し5時間撹拌した。続いて、得られた反応液を、亜硫酸水素ナトリウム水(亜硫酸水素ナトリウム(和光純薬製)21.7g、水290mL)、水325mL、及び炭酸水素ナトリウム水(炭酸水素ナトリウム(和光純薬製)13.0g、水300mL)の順で洗浄した。洗浄後の溶液を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、三口フラスコに移した。
続いて、上記三口フラスコ内に、DMF(N,N-dimethylformamide、和光純薬製)80.2g、炭酸カリウム(和光純薬製)78.0g、酢酸ブチル(和光純薬製)75.0g、及びジブロモメタン(和光純薬製)43.5gを加え、90℃で4時間撹拌した。得られた反応液を室温に冷却した後、固体をろ別した。固体をろ別した後の溶液に、酢酸エチル(和光純薬製)170mL、及びメタノール(和光純薬製)550mLを加えて、生じた固体をろ取した。次いで、得られた固体を、40℃で12時間送風乾燥し、中間体1を得た(66.0g、収率:75%)。
【0166】
<中間体2の合成>
中間体1 20.0g、エチニルアニソール(東京化成製)17.4g、ヨウ化銅(和光純薬製)0.08g、トリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(東京化成製)0.22g、トリエチルアミン(和光純薬製)120mL、及びピリジン(和光純薬製)40mLを500mL三口フラスコに入れ、90℃にて3時間撹拌した。続いて、得られた反応液を0°に冷却した後、メタノール(和光純薬製)400mLを添加し、生じた固体をろ取した。次いで、得られた固体を、40℃で12時間送風乾燥し、中間体2を得た(22.0g、収率:90%)。
【0167】
<化合物CD-1の合成>
中間体2 20.0g、リンドラー触媒(東京化成製)10.0g、キノリン(和光純薬製)9.2g、及び1,4-ジオキサン(和光純薬製)100mLを300mL三口フラスコに入れ、水素置換し80℃にて6時間撹拌した。セライトろ過にて固体をろ別し、得られた溶液をカラムクロマトグラフィーにて精製後、40℃で12時間送風乾燥し、化合物CD-1を得た(18.0g、収率:90%)。
【0168】
化合物CD-1の1H NMR(重溶媒:DMSO(Dimethyl sulfoxide)-d6):δ8.01(2H、d)、7.94(2H、s)、7.52(2H、d)、7.16(8H、m)、6.76(4H、d)、6.67(4H、d)、5.70(2H、s)、3.57(6H、s)
化合物CD-1の1H NMRの測定結果から、化合物CD-1は、上述した一般式(2)で表される1価の置換基を含み、且つ上述した一般式(4)で表される1価の置換基を含んでいないことを確認した。
【0169】
〔初期HTP、露光後HTP、及び露光によるHTP増加率の評価〕
化合物CD-1を用いて、初期(未露光時)の螺旋捻じり力(初期HTP)、露光後の螺旋捻じり力(露光後HTP)、及び露光によるHTP増加率の評価を実施した。
【0170】
<試料溶液の調製>
下記構造で表される液晶性化合物LC-1と、化合物CD-1(キラル化合物)を混合した後、得られた混合物に溶剤を加えることにより、下記組成の試料溶液を調製した。
・下記構造で表される液晶性化合物LC 100質量部
・化合物CD-1 5質量部
・溶剤(MEK(メチルエチルケトン)/シクロヘキサノン=90/10(質量比))
溶質濃度が30質量%となる量
【0171】
【0172】
<液晶層1の作製>
次に、洗浄したガラス基板上にポリイミド配向膜SE-130(日産化学社製)を塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を焼成した後、ラビング処理することにより、配向膜付き基板を作製した。この配向膜のラビング処理面に、30μLの上記試料溶液を回転数1000rpm、10秒間の条件でスピンコートした後、90℃で1分間熟成して液晶層1を得た。
【0173】
<評価>
(初期HTP)
液晶層1の中心反射波長を測定し、下記式(1)により初期HTPを求めた。
式(1):HTP =(液晶性化合物の平均屈折率)/{(液晶性化合物に対するキラル化合物の濃度(質量%))×(中心反射波長(nm))}[μm-1]
なお、上記式(1)中、「液晶性化合物の平均屈折率」は、1.55であると仮定して計算した。また、「中心反射波長」は、分光器(島津製UV-3100)を用いて測定した。
【0174】
(露光後HTP)
液晶層1に対して、波長365nmの光を露光量が100mJ/cm2となるように照射した後、露光後の液晶層1の中心反射波長を測定した。次いで、上述した式(1)により露光後HTPを求めた。
【0175】
(HTP増加率)
得られた初期HTP及び露光後HTPの各値から、下記式(2)によりHTP増加率を算出した。
式(2):HTP増加率={(露光後のHTP)-(露光前のHTP)}/(露光前のHTP)×100[%]
【0176】
下記評価基準に基づいて、初期HTP、露光後HTP、及び露光によるHTP増加率の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0177】
≪評価基準(初期HTP)≫
「A」:初期HTPが50[μm-1]以上である。
「B」:初期HTPが25[μm-1]以上50[μm-1]未満である。
「C」:初期HTPが25[μm-1]未満である。
【0178】
≪評価基準(露光後HTP)≫
「AA」:露光後HTPが70[μm-1]以上である。
「A」: 露光後HTPが50[μm-1]以上70[μm-1]未満である。
「B」: 露光後HTPが30[μm-1]以上50[μm-1]未満である。
「C」: 露光後HTPが30[μm-1]未満である。
【0179】
≪評価基準(HTP増加率)≫
「AA」:HTP増加率が200%以上である。
「A」: HTP増加率が150%以上200%未満である。
「B」: HTP増加率が100%以上150%未満である。
「C」: HTP増加率が100%未満である。
「D」: HTPが増加しない。
【0180】
〔HTPの温度依存性評価〕
上述した式(1)により、液晶層1(未露光時)の40℃及び90℃における各HTPを算出した。
【0181】
なお、「各温度(40℃、90℃)における中心反射波長」は、作製した液晶層をホットステージ(メトラートレド社製、FP90/FP82HT)を用いて40℃及び90℃にそれぞれ加熱した状態で、顕微鏡(ニコン社製、ECLIPSE E600-POL)と分光光度計(OCEAN OPTICS社製、USB-4000/USB4H09800)を用いて中心反射波長を測定した。
【0182】
(HTPの温度変化率の算出)
下記式(3)によりHTPの温度変化率を算出することにより、HTPの温度依存性を評価した。
式(3):温度変化率={(40℃におけるHTP)-(90℃におけるHTP)}/(40℃におけるHTP)×100[%]
【0183】
上記式(3)から算出した値により、下記評価基準に基づいてHTPの温度依存性の評価を実施した。結果を表1に示す。
≪評価基準(HTP温度依存性)≫
「A」: 温度変化率が2%未満である。
「B」: 温度変化率が2%以上5%未満である。
「C」: 温度変化率が5%以上である。
【0184】
[実施例2]
上述した化合物CD-1と同様の手法にて化合物CD-2を合成した。以下に化合物CD-2の合成手法を示す。
【0185】
【0186】
化合物CD-2の1H NMR(DMSO-d6)の測定結果から、化合物CD-2は、上述した一般式(2)で表される1価の置換基と、上述した一般式(4)で表される1価の置換基をいずれも含んでおり、一般式(2)で表される1価の置換基の含有量(X1モル)と一般式(4)で表される1価の置換基の含有量(Y1モル)の含有比(X1/Y1)が1であることを確認した。
【0187】
次いで、上述した化合物CD-2を用いて、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0188】
[実施例3~13、比較例1~2]
上述した化合物CD-1と同様の手法にて化合物CD-3~CD-13、及び比較用化合物CCD-1~CCD-2を合成した。次いで、上述した各化合物を用いて、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表1に示す。
[実施例14]
〔化合物CD-14の合成〕
上述した化合物CD-1と同様の手法、及びAdvanced Synthesisand catalysis,356,179-188(2014)に記載の手法にて化合物CD-14を合成した。次いで、上述した各化合物を用いて、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0189】
【0190】
[実施例15]
〔化合物CD-15の合成〕
上述した化合物CD-1と同様の手法、Tetrahedron,72,1553-1540(2016)に記載の手法、及びOrganic Chemistry,9,1883-1890(2013)に記載の手法にて化合物CD-15を合成した。次いで、上述した各化合物を用いて、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0191】
【0192】
[実施例16~18]
〔化合物CCD-3の合成〕
上述した化合物CD-1及びCD-2と同様の手法にて化合物CCD-3を合成した。
【0193】
【0194】
化合物CCD-3の1H NMR(DMSO-d6)の測定結果から、化合物CCD-3は、上述した一般式(2)で表される1価の置換基を含んでおらず、且つ上述した一般式(6)で表される1価の置換基を含んでいることを確認した。なお、化合物CCD-3は、上述した一般式(Y1)で表される化合物に該当する。
【0195】
〔実施例16〕
<試料溶液の調製>
上述した化合物CD-1及び化合物CD-2を表1の配合比で混合することで、混合物を調製した。次いで、上述した液晶性化合物LC-1と、2種のキラル化合物からなる上記混合物を混合した後、得られた混合物に溶剤を加えることにより、下記組成の試料溶液を調製した。
・液晶性化合物LC-1 100質量部
・化合物CD-1及び化合物CD-2の混合物 5質量部
・溶剤(MEK(メチルエチルケトン)/シクロヘキサノン=90/10(質量比))
溶質濃度が30質量%となる量
【0196】
次いで、上述した試料溶液を用いた以外は実施例1の液晶層1の作製方法と同様の手法により液晶層を作製した。また、実施例1と同様の手法により評価を実施した。結果を表2に示す。
【0197】
〔実施例17〕
上述した化合物CD-1及び化合物CD-2を表1の配合比で混合した以外は、実施例16と同様の方法により液晶層を作製した。また、実施例1と同様の手法により評価を実施した。結果を表2に示す。
【0198】
〔実施例18〕
上述した化合物CD-1及び化合物CCD-3を表1の配合比で混合した以外は、実施例16と同様の方法により液晶層を作製した。また、実施例1と同様の手法により評価を実施した。結果を表2に示す。
【0199】
以下に、表1及び表2を示す。
表1中、「含有比X1/Y1」とは、化合物中における、一般式(2)で表される1価の置換基の含有量(X1モル)と一般式(4)で表される1価の置換基の含有量(Y1モル)の含有比であり、X1をY1で除した値を意図する。
【0200】
表1中、化合物CD-1、及び化合物CD-3~化合物CD-15は、上述した一般式(X1)に該当する。
【0201】
表2中、「含有比X2/Y2」とは、混合物中の、一般式(2)で表される1価の置換基の含有量(X2モル)と一般式(6)で表される1価の置換基の含有量(Y2モル)との含有比であり、X2をY2で除した値を意図する。
【0202】
表2中、化合物CD-1、及び化合物CD-2は、実施例1で使用されている化合物CD-1、及び実施例2で使用されている化合物CD-2を意図する。
【0203】
表2中、化合物CD-2及び化合物CCD-3は、上述した一般式(Y1)に該当する。
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
表1の結果から、実施例の化合物は、紫外線等の光照射による露光によってHTPの強度を増加させており、また、そのHTP増加率にも優れていることが確認された。
実施例1と実施例2の対比から、特定化合物が、一般式(4)で表される置換基を含まない場合、HTP増加率が大きいことが確認できる。
【0209】
また、実施例1と実施例6の対比から、特定化合物中、L1が単結合の場合、HTP増加率が大きいことが確認できる。
【0210】
また、実施例1と実施例7及び実施例8の対比から、特定化合物中、R1とR2が互いに結合して環構造を形成している場合、露光後HTPが大きく、また、HTPの温度依存性が小さいことが確認できる。なお、実施例1と実施例7~10の対比からも、特定化合物中、R1とR2が互いに結合して環構造を形成している場合、露光後HTPが大きく、また、HTPの温度依存性が小さいことが確認できる。
【0211】
また、実施例1と実施例11の対比から、特定化合物中、R1、R3及びR5からなる群より選ばれる1つ以上が一般式(2)で表される1価の置換基であり、且つ、R2、R4及びR6からなる群より選ばれる1つ以上が般式(2)で表される1価の置換基である場合、露光後HTPとHTP増加率が大きいことが確認できる。
【0212】
また、実施例1と実施例4~6の対比から、特定化合物において、芳香族炭化水素環基が単結合又は2価の連結基を介して3つ以上連結している(但し、ビナフチル骨格中のナフタレン環同士の連結は含まない)構造を含む場合、露光後HTPが大きいことが明らかである。
【0213】
また、実施例1と実施例13の対比から、一般式(2)中のAr1がベンゼン環である場合、HTP増加率が大きいことが確認できる。
【0214】
また、実施例1と実施例14及び実施例15の対比から、一般式(2)中のR7及びR8が水素原子である場合、露光後HTP及びHTP増加率が大きいことが確認できる。
【0215】
さらに、表2中の実施例16~18の対比から、混合物においてX2/Y2の値が5以上の場合(好ましくは10以上の場合)、HTP増加率が大きいことが確認できる。
一方で、混合物においてX2/Y2の値が小さいほど、混合物の露光前HTPは大きいことも明らかである。したがって、一般式(4)で表される置換基を含まない特定化合物(上述した一般式(X1)で表される化合物に該当する。)と、一般式(Y1)で表される化合物とを任意の比率で混合した場合、得られる混合物は、所望の初期HTPとHTP増加率に設定が可能となる。
【0216】
[実施例19:反射膜の作製]
〔液晶組成物の調製〕
下記に示す配合で、液晶組成物を調製した。
・上述した液晶性化合物LC-1 100質量部
・化合物CD-1 5質量部
・下記に示す界面活性剤S-1 0.1質量部
・IRGACURE 907(BASF製) 3質量部
・溶剤(MEK(メチルエチルケトン)/シクロヘキサノン=90/10(質量比))
溶質濃度が30質量%となる量
【0217】
界面活性剤S-1は特許第5774518号に記載された化合物であり、下記構造を有する。
【0218】
【0219】
〔反射膜の作製〕
洗浄したガラス基板上にポリイミド配向膜材料SE-130(日産化学社製)を塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を焼成した後、ラビング処理することにより、配向膜付き基板を作製した。この配向膜のラビング処理面に、上記液晶組成物40μLを回転数1500rpm、10秒間の条件でスピンコートすることにより、組成物層を形成し、90℃で1分間乾燥(熟成)して、組成物層中の液晶性化合物を配向させた(言い換えると、コレステリック液晶相の状態とした)。
次に、液晶性化合物を配向させた組成物層に対して、開口部を有するマスクを介して、光源(UVP社製、2UV・トランスイルミネーター)より波長365nmの光を3.0mW/cm2の照射強度で30秒間照射した(CD-1のHTPを増加させる処理に該当)。マスクの開口部と非開口部との差異によって、組成物層は、波長365nmの光を照射された箇所と、照射されていない箇所とが存在する状態である。
続いて、組成物層に対して、マスクを外した状態で、25℃、窒素雰囲気下で500mJ/cm2の照射量で紫外線(HOYA-SCHOTT製、EXECURE 3000-W)を照射して硬化処理を実施し、反射膜(コレステリック液晶相を固定化してなる層に該当)とした。
得られた反射膜は、波長365nmの光を照射された箇所が短波長、照射されていない箇所が長波長反射を示し、選択反射波長が異なること(コレステリック層の螺旋のピッチが異なること)が確認された。