(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】内視鏡用照明光学系
(51)【国際特許分類】
A61B 1/07 20060101AFI20220914BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20220914BHJP
【FI】
A61B1/07 733
A61B1/07 732
G02B23/26 B
G02B23/26
(21)【出願番号】P 2021542640
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028348
(87)【国際公開番号】W WO2021039221
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2019154577
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】森本 美範
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-139435(JP,A)
【文献】特開2012-120635(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217188(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/15996(WO,A1)
【文献】特開2012-50607(JP,A)
【文献】特開2015-223462(JP,A)
【文献】特開平8-122663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部の先端部でライトガイドの端面に接して設けられる内視鏡用照明光学系であって、
前記ライトガイドの前記端面に設けられ、前記ライトガイドからの光を、拡散する拡散板、を有し、
前記拡散板は、前記ライトガイド側の面に形成される拡散面と、前記拡散面で拡散された光を導光する導光部と、を有し、
前記拡散面が、ホログラフィック拡散板からなり、
前記導光部が、サファイアガラスからな
り、
前記拡散板の前記導光部の、前記拡散面とは反対側の面に垂直な方向から見た際に、前記導光部の前記拡散面とは反対側の出射面が、前記ライトガイドの前記端面を包含しており、
前記出射面の面内方向における、前記出射面の端辺と、前記ライトガイドの前記端面の端辺との最短距離をLとし、
前記拡散板の、前記出射面に垂直な方向の厚さをtとすると、
t/L≦1.6を満たす、内視鏡用照明光学系。
【請求項2】
前記最短距離Lと前記厚さtとが、0.5≦t/L≦1.6を満たす、請求項
1に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項3】
前記厚さtが、0.2mm以上0.5mm以下である、請求項
2に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項4】
前記拡散板の半値拡散角度が30°以上である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項5】
前記ライトガイドの配光角度が80°以上である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項6】
前記導光部は、側面が前記内視鏡の前記挿入部の前記先端部に接着剤で接着されているあるいはろう付けされている、請求項1~
5のいずれか一項に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項7】
前記拡散板の前記導光部の出射面に垂直な方向から見た際に、前記導光部の前記出射面の形状が円形状であり、
かつ、前記ライトガイドの前記端面の形状が円形状である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項8】
前記ライトガイドの前記端面の直径が0.5mm~2.0mmである、請求項
7に記載の内視鏡用照明光学系。
【請求項9】
前記導光部の出射面が空気層と接している、請求項1~
8のいずれか一項に記載の内視鏡用照明光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用照明光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部の観察や治療等を行うための医療用内視鏡を始めとする内視鏡装置においては、内視鏡挿入部の先端に照明窓と観察窓が設けられ、照明窓から照明光を出射して観察窓を通じて観察画像を取得するようになっている。照明窓には、例えば、キセノンランプ、レーザ光源および発光ダイオード(LED)等の光源装置からの光が光ファイバ等のライトガイドによって導かれ、出射するようになっている。
【0003】
内視鏡のライトガイドの先端部には、照明光学系が配置されている。ライトガイドによって導かれた光がそのまま出射された場合、光の出射角度の範囲が狭く、光の照射範囲が狭くなってしまう。そのため、ライトガイドの先端部に照明光学系を配置して、光を拡散して、光の照射範囲を拡大することが行われている。
このような照明光学系としては、複数のレンズを組み合わせたもの、および、光を拡散する部材を配置したもの等が利用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、光伝送損失を検出する機能を備えた内視鏡装置であって、第1の光源と、第1の光源の出力光を導入して被検体内に挿入される挿入部の先端まで導光する第1の導光部材と、第1の導光部材の光出射端に配置された波長変換部材と、第2の光源と、第2の光源の出力光を導入して挿入部の先端まで導光する第2の導光部材と、第2の導光部材の光出射端に配置された光拡散部材と、第1の光源及び第2の光源それぞれについて設定された目標光量に応じた駆動信号を生成し、第1の光源及び第2の光源を駆動する光源駆動手段と、波長変換部材及び光拡散部材からの発熱による温度を検出する温度センサと、第1の光源の駆動信号の強度に対応した波長変換部材の発熱による第1の温度変化率、及び第2の光源の駆動信号の強度に対応した光拡散部材の発熱による第2の温度変化率を記憶する記憶手段と、温度センサにより検出された温度の第3の温度変化率を、第1の温度変化率、及び第2の温度変化率と比較し、第3の温度変化率が第1の温度変化率と一致する場合は第2の導光部材に光伝送損失が発生したと判定し、第3の温度変化率が第2の温度変化率と一致する場合は第1の導光部材に光伝送損失が発生したと判定する光伝送損失検出手段と、を備えた内視鏡装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、内視鏡の先端部に設けられ、被検体に向けて照明光を照射する内視鏡用投光ユニットにおいて、所定波長の光の一部を吸収して波長変換することにより蛍光を生成し、残りの光を透過することにより、所定波長の光と蛍光を含む照明光を出射する波長変換部材と、波長変換部材を出射した照明光を散乱させて照明光の広がり角を拡大する広がり角拡大部とを備える内視鏡用投光ユニットが記載されている。
特許文献2には、広がり角拡大部は、樹脂にフィラーを混入させた部材であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-213562号公報
【文献】特開2012-232108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らの検討によれば、ライトガイドによって導かれ出射される光を、特許文献2に記載されるような、樹脂にフィラーを混入させた拡散部材を用いて拡散する場合には、光の利用効率が十分でないことがわかった。光の利用効率が低いと発熱量が大きくなるという問題が生じる。
具体的には、フィラーは等方散乱体であるため、フィラーに入射した光はあらゆる方向に拡散される。そのため、出射方向以外の方向に散乱される光も多くなり、効率が低下してしまう。また、出射面以外の面に反射板を設けて、出射方向以外の方向に散乱された光を反射させることも行われているが、その光は再度フィラーに当たり等方散乱する。このような反射板による反射とフィラーによる等方散乱を繰り返して、外部に光が出射されるが、何度も反射および散乱を繰り返すため効率が悪くなってしまう。
【0008】
本発明の課題は、上記の従来技術に基づく問題点を解消し、光の利用効率が高い内視鏡用照明光学系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
【0010】
[1] 内視鏡の挿入部の先端部でライトガイドの端面に接して設けられる内視鏡用照明光学系であって、
ライトガイドの端面に設けられ、ライトガイドからの光を、拡散する拡散板、を有し、
拡散板は、ライトガイド側の面に形成される拡散面と、拡散面で拡散された光を導光する導光部と、を有し、
拡散面が、ホログラフィック拡散板からなり、
導光部が、サファイアガラスからなる、内視鏡用照明光学系。
[2] 拡散板の導光部の、拡散面とは反対側の面に垂直な方向から見た際に、導光部の拡散面とは反対側の出射面が、ライトガイドの端面を包含しており、
出射面の面内方向における、出射面の端辺と、ライトガイドの端面の端辺との最短距離をLとし、
拡散板の、出射面に垂直な方向の厚さをtとすると、
t/L≦1.6を満たす、[1]に記載の内視鏡用照明光学系。
[3] 最短距離Lと厚さtとが、0.5≦t/L≦1.6を満たす、[2]に記載の内視鏡用照明光学系。
[4] 厚さtが、0.2mm以上0.5mm以下である、[2]または[3]に記載の内視鏡用照明光学系。
[5] 拡散板の半値拡散角度が30°以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の内視鏡用照明光学系。
[6] ライトガイドの配光角度が80°以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の内視鏡用照明光学系。
[7] 導光部は、側面が内視鏡の挿入部の先端部に接着剤で接着されているあるいはろう付けされている、[1]~[6]のいずれかに記載の内視鏡用照明光学系。
[8] 拡散板の導光部の出射面に垂直な方向から見た際に、導光部の出射面の形状が円形状であり、
かつ、ライトガイドの端面の形状が円形状である、[1]~[7]のいずれかに記載の内視鏡用照明光学系。
[9] ライトガイドの端面の直径が0.5mm~2.0mmである、[8]に記載の内視鏡用照明光学系。
[10] 導光部の出射面が空気層と接している、[1]~[9]のいずれかに記載の内視鏡用照明光学系。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光の利用効率が高い内視鏡用照明光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の内視鏡用照明光学系を有する内視鏡システムの一例を表す模式図である。
【
図2】本発明の内視鏡用照明光学系を有する内視鏡の先端部を模式的に表す斜視図である。
【
図3】本発明の内視鏡用照明光学系を有する照明ユニットを模式的に表す側面図である。
【
図4】
図3に示す照明ユニットをa方向から見た上面図である。
【
図7】導光部内での光の角度分布を表すグラフである。
【
図8】拡散板から出射された光の角度分布を表すグラフである。
【
図9】ライトガイドの配向角度を説明するための図である。
【
図10】ライトガイドの配向角度を説明するための図である。
【
図11】本発明の内視鏡用照明光学系の作用を説明するための図である。
【
図12】出射面の端辺とライトガイドの端面の端辺との最短距離Lと、導光部の厚さtとの関係を説明するための図である。
【
図13】本発明の内視鏡用照明光学系の他の例を有する照明ユニットを模式的に表す上面図である。
【
図15】実施例における評価系の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の内視鏡用照明光学系を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値α~数値βとは、εの範囲は数値αと数値βを含む範囲であり、数学記号で示せばα≦ε≦βである。
また、「全面」等は、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
【0014】
本発明の内視鏡用照明光学系は、
内視鏡の挿入部の先端部でライトガイドの端面に接して設けられる内視鏡用照明光学系であって、
ライトガイドの端面に設けられ、ライトガイドからの光を、拡散する拡散板、を有し、
拡散板は、ライトガイド側の面に形成される拡散面と、拡散面で拡散された光を導光する導光部と、を有し、
拡散面が、ホログラフィック拡散板からなり、
導光部が、サファイアガラスからなる、内視鏡用照明光学系である。
【0015】
[内視鏡システム]
まず、本発明の内視鏡用照明光学系を有する内視鏡を有する内視鏡システムについて説明する。
図1は本発明の内視鏡用照明光学系を有する内視鏡を有する内視鏡システムの一例を示す模式図である。
内視鏡システム10は、観察対象である生体内(被検体内)の観察部位に照明光を照射し、観察部位を撮像して、撮像により得られた画像信号に基づいて観察部位の表示画像を生成し、表示画像を表示するものである。
内視鏡システム10は、本発明の内視鏡用照明光学系を有する以外は、従来公知の内視鏡システムと同様の構成を有する。
【0016】
図1に示すように、内視鏡システム10は、観察対象である生体内(被検体内)の観察部位を撮像する内視鏡12と、撮像により得られた画像信号に基づいて観察部位の表示画像を生成するプロセッサ装置16と、観察部位に照射する照明光を内視鏡12に供給する内視鏡用光源装置(以下、単に光源装置という)14と、表示画像を表示するモニタ18とを備えている。プロセッサ装置16には、キーボードおよびマウス等の操作入力部19が接続されている。
【0017】
内視鏡12は、患者の体内等の被検体内に挿入する挿入部12aと、挿入部12aの基端部分に設けた操作部12bとを備える。内視鏡12では、挿入部12a側が先端側である。内視鏡12の操作部12bと、プロセッサ装置16とは信号線17により接続されている。内視鏡12は、例えば、腹腔鏡等の直視型の硬性内視鏡である。
プロセッサ装置16は、内視鏡12の撮像部から出力される画像信号を信号線17により受信して映像信号を生成し、モニタ18に出力する。これにより、モニタ18に、例えば、体内等の観察部位の表示画像が映し出される。
内視鏡12の操作部12bと、光源装置14とはライトガイド22により接続されている。光源装置14から光がライトガイド22に供給され、内視鏡12の先端から光が出射される。
【0018】
図2に内視鏡12の先端部12dを拡大した斜視図を示す。
図2示すように、内視鏡12の先端部12d(先端面)には、一例として、撮像光学系の観察窓43、照明光学系の照明窓47、鉗子チャンネル83、送気送水ノズル85に連通する送気送水チャンネルが配置されている。
図2に示す例では、照明窓47を2つ有し、2つの照明窓47は、観察窓43を挟んだ両脇側に配置されている。
本発明の内視鏡用照明光学系は、このような照明窓47に配置されており、ライトガイド22によって導光された光を伝搬して、照明窓から出射する。
【0019】
[内視鏡用照明光学系]
図3に、本発明の内視鏡用照明光学系およびライトガイドを有する照明ユニットを模式的に表す側面図である。
図3に示す照明ユニット20は、ライトガイド22と、ライトガイド22の端面に配置される内視鏡用照明光学系23とを有する。
【0020】
ライトガイド22は、光伝送部材であり、例えば、複数本の光ファイバ素線を束ねたもので構成されている。上述のようにライトガイド22は、光源装置14から供給された光を導光して、ライトガイド22の端面から出射する。ライトガイド22の端面には、内視鏡用照明光学系23が配置されているため、ライトガイド22の端面から出射された光は内視鏡用照明光学系23に入射する。
【0021】
図4に、
図3の照明ユニット20をa方向から見た上面図を示し、
図5に、
図4のB-B線断面図を示す。
図4および
図5に示すように、内視鏡用照明光学系23は、拡散板24を有する。
拡散板24は、ライトガイド22の端面から出射された光を拡散して、光の照射範囲を広げるためのものである。
【0022】
図5に示すように、拡散板24は、導光部26と拡散面28とを有している。
拡散面28は、拡散板24の、ライトガイド22と接する側の面に形成されている。拡散面28は、ホログラフィック拡散板からなり、ライトガイド22の端面から出射された光を拡散して透過する。
【0023】
ホログラフィック拡散板は、再生光が任意の角度範囲で拡散する拡散光となるように形成された表面凹凸構造を有するものである。一例として、Holographic diffuser by use of a silver halide sensitized gelatin process, APPLIED OPTICS Vol. 42, No. 14 10 May 2003のFig.10 (a)に示されるような形状である。
ホログラフィック拡散板は、このような表面凹凸構造を有することで、ライトガイド22から出射された光を所定の角度範囲で拡散する。
本発明においては、導光部26を基板として、導光部26上にホログラフィック拡散板が形成されている。
【0024】
ホログラフィック拡散板の形成方法としては、特に制限はなく、従来公知の形成方法が利用できる。
例えば、ホログラフィック拡散板はゾル-ゲル法を利用して形成することができる。具体的には、ホログラフィック拡散板の材料となるSiO2を含む溶液(ゾル)を調製し、基板上に塗布した後、ゲル化し、計算機合成ホログラムによって設計された表面凹凸構造を転写可能なマスター(モールド)を、ゲル化した塗膜に圧接したまま、塗膜を加熱して硬化させることでホログラフィック拡散板を形成することができる。
【0025】
ホログラフィック拡散板の基板としては、ガラスが利用可能である。また、ホログラフィック拡散板の材料は、ガラスを含む複合材料である。
【0026】
拡散面28で拡散された光は導光部26に入射する。
導光部26は、板状の部材で、拡散面28で拡散された光を導光し、拡散面28が形成された面とは反対側の出射面26aから出射するものである。導光部26は、屈折率が高いサファイアガラスからなり、出射面26aから出射する際に、外部との屈折率差によって、光を界面で屈折させて光の照射範囲をさらに広げる。具体的には、サファイアガラスの屈折率は、1.77程度である。例えば、出射面26aは、空気層と接しており、光が出射面26aから出射される際に、空気層との界面で、空気の屈折率(n=1)との関係によって、屈折される。
【0027】
また、サファイアガラスは、ビッカース硬度が22.5GPa程度と非常に硬い。そのため、導光部26の厚さを薄くすることが可能である。
【0028】
拡散板24(導光部26+拡散面28)の厚さは200μm~500μmが好ましく、200μm~400μmがより好ましく、200μm~300μmがさらに好ましい。なお、拡散面28(ホログラフィック拡散板)の厚さは非常に薄いため、導光部26の厚さは拡散板24の厚さに近似できる。
【0029】
図4に示す例においては、拡散板24の導光部26の、拡散面28とは反対側の出射面26aに垂直な方向から見た際に、すなわち、
図3のa方向から見た際に、ライトガイド22の端面の形状は円形状である。また、出射面26aに垂直な方向から見た際の、出射面26aの形状も円形状である。また、出射面26aに垂直な方向から見た際の、ライトガイド22の端面の中心と、出射面26aの中心は一致するように配置されている。
また、出射面26aの直径φ
1は、ライトガイド22の端面の直径φ
2よりも大きい。
従って、
図4に示す例では、出射面26aに垂直な方向から見た際に、出射面26aが、ライトガイド22の端面を包含している。
【0030】
ここで、本発明においては、出射面26aの面内方向における、出射面26aの端辺と、ライトガイド22の端面の端辺との最短距離をLとし、拡散板24の、出射面26aに垂直な方向の厚さをtとすると、t/L≦1.6を満たすのが好ましい。
図4に示す例では、最短距離Lは、(φ
1-φ
2)/2である。
【0031】
このような構成を有する内視鏡用照明光学系の作用を
図6~
図11を用いて説明する。
まず、拡散板24に対して、拡散面28側から拡散面28の表面に対して垂直に光が入射した場合を考える。
図6に示すように、入射した光は、拡散面28によって拡散されて導光部26内を広がりながら導光する。拡散された光、導光部26内での角度分布を
図7に示す。
図7に示すように、角度0°の方向(垂直方向)の光の強度(相対強度)が最も高く、角度が大きくなるにしたがって強度が小さくなる分布となる。
図6および
図7においては、一例として、拡散面28で拡散された光の強度の半値全角は20.8°とした。
【0032】
拡散面28で拡散された光は導光部26から出射される際に外部(空気)との屈折率差に応じて屈折されて出射される。そのため、
図6に示すように、光はさらに広がりをもって出射される。
図8に導光部26から出射される光の角度分布を示す。
図6および
図8に示す例では、導光部26から出射された光の強度の半値全角は40°となる。
【0033】
このように、拡散板24は、拡散面28での光の拡散と、導光部26から出射される際の屈折によって、角度分布を持つ光を出射させることができる。
【0034】
次に、ライトガイドから出射される光について説明する。
図9に示すように、ライトガイド22から出射される光は、所定の配光角度で出射される。例えば、空気(n=1)中に光が出射される場合に、ライトガイドから出射される光の配光角度は85°となる。
【0035】
ここで、ライトガイド22の端面に屈折率の異なる層を有する場合を考える。例えば、
図10に示すように、ライトガイド22の端面に屈折率が1.5の第1層128(拡散性を有さない拡散面28に相当)が配置され、第1層128の表面に、屈折率が1.77の第2層126(導光部26に相当)が配置されている場合、ライトガイド22の端面から出射された光は、ライトガイド22と第1層128との屈折率の差によって53.5°の配光角度となって第1層128内を導光されて第2層126に到達する。光が第1層128から第2層126に入射する際に、光は、第1層128と第2層126との屈折率の差によって44.9°の配光角度となって第2層126内を導光されて第2層126の表面から出射される。光が第2層126の表面から出射される際に、光は、第2層126と空気との屈折率の差によって85°の配光角度となって出射される。すなわち、ライトガイド22の端面と空気層との間に他の層を有していても、空気中に出射される光の配光角度は、ライトガイドから直接出射される光の配光角度と同じになる。
なお、拡散面28(ホログラフィック拡散板)はガラスを含む複合材料からなるため、屈折率は1.5程度である。
【0036】
本発明のように、光を拡散する機能を有する拡散板24をライトガイド22の端面に配置した場合には、
図11に示すように、上述したライトガイド22の配向特性と、拡散板24の散乱特性とを積算されて、出射される光の配光特性が決まる。
このように、本発明の内視鏡用照明光学系は、拡散面28と導光部26とを有する拡散板24を用いることで、出射される光の照射範囲を、ライトガイドから直接出射される光の配光角度よりも広くすることができる。
なお、
図11等に示す例では、拡散による光の広がり角を40°としたが、
図8に示すように、これは半値全角であり、実際にはより広い角度範囲で光を照射できる。例えば、
図8に示す例では、光の強度が5%程度になる角度は±42°程度であるため、ライトガイド22の配光特性と組み合わせると、約170°の範囲に5%以上の強度の光を照射することができる。
【0037】
ここで、
図12に示すように、内視鏡の先端から出射される光の出射角θ
2としては、最大で85°程度あれば充分である。
本発明の内視鏡用照明光学系から出射される光の出射角θ
2が85°となる場合の入射角θ
1は、サファイアガラスの屈折率n
1=1.77と、空気層の屈折率n
2=1.0とから、θ
1=34.3°と算出される。
【0038】
図12にL
2で示すように、ライトガイド22の端面の端辺位置から出射され、拡散板24に入射した光L
2が、出射面26aの端辺位置で出射する場合、t/L=1/tanθ
1を満たす。前述のとおり、出射面26aから出射される光の出射角θ
2が85°となる入射角θ
1は、34.3°であるため、t/Lは1.47となる。
【0039】
t/Lが1.6より大きいと、導光部26内を導光される光が、導光部26の側面に到達する。導光部26の側面は、例えば、内視鏡の挿入部の先端部に接着剤30、ろう付け等により接着されているため、導光部26の側面に到達した光は全反射されず、接着剤30等により吸収される。そのため、出射面26aから出射される光量が低下して、光の利用効率が低下してしまう。
【0040】
これに対して、本発明では、t/L≦1.6を満たすことで、ライトガイド22から拡散板24に入射した光が、導光部26の側面に到達するのを防止でき、側面で接着剤30等に吸収されるの防止できるため、光の利用効率が低下することを防止できる。また、光の利用効率を高くできるため、発熱量が大きくなることを抑制できる。
【0041】
ここで、ライトガイド22の直径φ2が決まっている場合、t/Lを小さくするには、拡散板24の厚さtを小さくする、および/または、拡散板24の出射面26aの直径φ1を大きくする必要がある。
内視鏡の先端部は細くすることが望まれるため、拡散板24の出射面26aの直径φ1を大きくすることは難しい。一方、拡散板24の厚さtを小さくすると、拡散板24の割れなど耐久性が問題となる。
これに対して、本発明では、拡散板24の導光部26に、硬度の高いサファイアガラスを用いているため、厚さtを小さくしても割れることを抑制できる。そのため、拡散板24を小型化、薄型化することができる。また、導光部26を薄型化することで、導光部26で光のロスが発生して利用効率が低下することを抑制できる。
【0042】
ライトガイド22の端面が円形の場合、端面の直径φ2は、光源装置からの光を高い効率で導光できる、内視鏡挿入部の可撓性を確保する等の観点から、0.5mm~2.0mmが好ましい。
【0043】
ライトガイド22の端面から出射される光の配光角度は、80°以上であるのが好ましい。
ここで、配光角度とは、ライトガイド22の端面から空気中に光が出射された際の光の広がり角度である。
【0044】
拡散板24の半値拡散角度(拡散光の半値全角)は、30°以上とするのが好ましい。
ここで、半値拡散角度とは、前述の
図6で説明した拡散光の半値全角である。
【0045】
ここで、
図4および
図5に示す例では、ライトガイド22の端面の形状は円形状としたが、これに限定はされない。ライトガイド22の端面の形状は、楕円形状、多角形状、不定形状等の任意の形状とすることができる。
同様に、拡散板24の出射面26aの形状は円形状としたが、これに限定はされない。拡散板24の出射面26aの形状は、楕円形状、多角形状、不定形状等の任意の形状とすることができる。
【0046】
図4および
図5に示す例では、ライトガイド22の端面の形状と、拡散板24の出射面26aの形状とは相似形状としたがこれに限定はされず、互いに異なる形状であってもよい。
また、
図4および
図5に示す例では、ライトガイド22の端面と、拡散板24の出射面26aとは、面方向において、中心を一致させて配置される構成としたが、これに限定はされず、ライトガイド22の端面の中心と、拡散板24の出射面26aの中心とがずれていてもよい。
【0047】
例えば、
図13および
図14に、本発明の内視鏡用照明光学系の他の例を有する照明ユニットの一例を示す。
図13は、照明ユニットの上面図であり、
図14は、
図13のC-C線断面図である。
【0048】
図13に示す例では、ライトガイド22の端面、および、拡散板24の出射面26aはそれぞれ不定形状である。また、ライトガイド22の端面と、拡散板24の出射面26aとは非相似形である。また、ライトガイド22の端面の中心と、拡散板24の出射面26aの中心とは一致していない。また、
図8に示す例では、出射面26aに垂直な方向から見た際に、出射面26aが、ライトガイド22の端面を包含している。
【0049】
図13および
図14に示すような構成の場合には、出射面26aの面内方向における、出射面26aの端辺と、ライトガイド22の端面の端辺との距離は位置によって異なるが、本発明においては、出射面26aの端辺と、ライトガイド22の端面の端辺との距離が最も短くなり位置、
図8および
図9に示す例では、距離Lminとなる位置での距離を最短距離Lとすればよい。
【0050】
以上、本発明の内視鏡用照明光学系について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明についてより詳細に説明する。
【0052】
[実施例1]
図4および
図5に示すような内視鏡用照明光学系を有する照明ユニットを作製した。
ライトガイドとしては、長さ3m、直径0.9mmのファイババンドルを用いた。
前記ライトガイドの端部が空気と接している場合の、ライトガイドの配光角度は85°である。
【0053】
厚さ200μm、直径1.3mmのサファイアガラスを基板として、上述の方法でサファイアガラスの上に、ホログラフィック拡散板を作製し、拡散面と導光部を有する拡散板を作製した。
ホログラフィック拡散板は、ライトガイドから上記の配光角度で入射する光を100°(半値全角)の角度範囲に拡散するように設計した。
【0054】
作製した拡散板をライトガイドの端面に、拡散板の拡散面をライトガイドの端面に向けて配置した。拡散板の出射面の中心とライトガイドの中心は一致させた。以上によって、内視鏡用照明光学系を作製した。
Lは0.2mmであり、tは200μm(0.2mm)であるので、t/Lは1である。
【0055】
[評価]
作製した照明ユニットについて、光の利用効率を評価した。
図15に評価系の模式図を示す。ライトガイド22をキセノン光源100に接続し、拡散板24側の先端を配光測定装置にセットして、光の利用効率および出射角度分布を評価した。
【0056】
その結果、光の利用効率が高く、また、光が照射される角度も広くなることが確認された。
以上から本発明の効果は明らかである。
【符号の説明】
【0057】
10 内視鏡システム
12 内視鏡
12a 挿入部
12b 操作部
12d 先端部
14 内視鏡用光源装置(光源装置)
16 プロセッサ装置
17 信号線
18 モニタ
19 操作入力部
20 照明ユニット
22 ライトガイド
23 内視鏡用照明光学系
24 拡散板
26 導光部
26a 出射面
28 拡散面
30 接着剤