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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-13
(45)【発行日】2022-09-22
(54)【発明の名称】揚げ物用陳列管理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20220914BHJP
   G06Q 30/06 20120101ALI20220914BHJP
【FI】
G06Q30/02
G06Q30/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022529403
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2021046012
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2020218304
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 涼平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嵜 郁人
(72)【発明者】
【氏名】柿本 健一
(72)【発明者】
【氏名】井上 賀美
【審査官】青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061057(WO,A1)
【文献】特開2002-293416(JP,A)
【文献】特開2013-31492(JP,A)
【文献】特開2019-152934(JP,A)
【文献】特開2020-194223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
店舗内に設置されたフライヤー内のフライ油で調理された複数の揚げ物の、該店舗内の陳列部に陳列位置を管理する揚げ物用陳列管理装置であって、
前記揚げ物の各々の賞味期限に関係するパラメータの状態としてのパラメータ状態を認識するパラメータ状態認識部と、
前記パラメータ状態認識部が認識した前記パラメータ状態に基づいて各揚げ物について賞味期限を判断し、該判断した賞味期限に基づいて前記陳列部からの各揚げ物の撤去期限を決定する撤去期限決定部と、
前記撤去期限決定部が決定した前記撤去期限の近い前記揚げ物ほど高くなるように、各揚げ物の販売優先度を決定する販売優先度決定部と、
前記陳列部の各陳列位置に割り当てた購入者の注目度を認識する注目度認識部と、
前記販売優先度が高い前記揚げ物ほど、前記販売優先度が低い前記揚げ物より前記注目度が高い陳列位置に陳列されるように、各揚げ物の陳列位置を決定する陳列位置決定部と、
を備えることを特徴とする揚げ物用陳列管理装置。
【請求項2】
前記パラメータは、前記揚げ物の種類、調理環境及び陳列環境の少なくとも1つに関係するパラメータであることを特徴とする請求項1記載の揚げ物用陳列管理装置。
【請求項3】
前記調理環境は、前記揚げ物を揚げた時の前記フライヤー内のフライ油の劣化度及びフライ油の種類の少なくとも1つを含むことを特徴とすると請求項2記載の揚げ物用陳列管理装置。
【請求項4】
前記陳列環境は、前記陳列部の各陳列位置の温度、湿度、通気性及び照度のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2又は3記載の揚げ物用陳列管理装置。
【請求項5】
さらに、陳列中の前記揚げ物について種類別に今後の予測販売数を予測する販売数予測部を備え、
前記販売優先度決定部は、前記販売数予測部が予測した前記予測販売数に基づいて陳列中の前記揚げ物がその撤去期限までの残り時間に販売できる可能性を判断し、可能性の低い前記揚げ物の前記販売優先度を、可能性の高い前記揚げ物の販売優先度よりも高くなるように、決定することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の揚げ物用陳列管理装置。
【請求項6】
陳列中の揚げ物について種類別に今後の販売数としての予測販売数を予測する販売数予測部と、
前記販売数予測部が予測した前記予測販売数に基づいて陳列中の前記揚げ物がその撤去期限までの残り時間に販売できる可能性を判断し、可能性の低い前記揚げ物の販売優先度を、可能性の高い前記揚げ物の販売優先度よりも高くなるように、決定する販売優先度決定部と、
陳列部の各陳列位置に割り当てた購入者の注目度を認識する注目度認識部と、
前記販売優先度が高い前記揚げ物ほど、前記販売優先度が低い前記揚げ物より前記注目度が高い陳列位置に陳列されるように、各揚げ物の陳列位置を決定する陳列位置決定部と、
を備えることを特徴とする揚げ物用陳列管理装置。
【請求項7】
前記予測販売数は、現時点までのPOSデータ並びに現時点が属する当日の天気、気温湿度及び店舗周辺でイベントの少なくとも1つに基づいて認識されることを特徴とする請求項5又は6記載の揚げ物用陳列管理装置。
【請求項8】
さらに、前記揚げ物の陳列管理者に前記陳列に関する情報としての陳列情報を通知する通知部を備え、
前記陳列位置決定部は、前記陳列部おける前記揚げ物の出し入れがあったときは、出し入れ後に陳列中の前記揚げ物の陳列位置を再度、決定し、
前記通知部は、前記陳列位置決定部の再決定した陳列位置を前記陳列情報に含めることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の揚げ物用陳列管理装置。
【請求項9】
前記注目度認識部が認識する前記注目度は、POSデータに基づいて設定されたものであることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の揚げ物用陳列管理装置。
【請求項10】
店舗内に設置されたフライヤー内のフライ油で調理した複数の揚げ物の、該店舗内の陳列部に陳列位置を管理する方法としてコンピュータが実行する揚げ物用陳列管理方法であって
前記揚げ物の各々の賞味期限に関係するパラメータの状態としてのパラメータ状態を認識するパラメータ状態認識ステップと、
前記パラメータ状態認識ステップにおいて認識した前記パラメータ状態に基づいて各揚げ物について賞味期限を判断し、該判断した賞味期限に基づいて前記陳列部からの各揚げ物の撤去期限を決定する
撤去期限決定ステップと、
前記撤去期限決定ステップにおいて決定した前記撤去期限の近い前記揚げ物ほど高くなるように、各揚げ物の販売優先度を決定する販売優先度決定ステップと、
前記陳列部の各陳列位置に割り当てた購入者の注目度を認識する注目度認識ステップと、
前記販売優先度が高い前記揚げ物ほど、前記販売優先度が低い前記揚げ物より前記注目度が高い陳列位置に陳列されるように、各揚げ物の陳列位置を決定する陳列位置決定ステップと、
を備えることを特徴とする揚げ物用陳列管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗内で揚げ物を調理、販売する際の揚げ物用陳列管理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア等では、揚げ物を店舗内に置いたフライヤーで調理し、調理した揚げ物を店内のホッターに陳列して顧客に販売している。
【0003】
特許文献1は、商品(例:揚げ物)を店舗内で調理、販売する場合に、商品を調理した時刻に、該商品に販売期限として登録された時間を加算した時刻を販売終了時刻とし、現在時刻が販売終了時刻になると、該商品を廃棄する商品販売データ登録装置を開示する。
【0004】
特許文献2は、店舗内の商品陳列棚における陳列商品の陳列領域(同一商品に割り当てられた陳列位置が連なる領域)を棚割として検出し、棚割別の販売関連情報をPOSデータに基づいて生成し、表示部に表示することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-119277号公報
【文献】特開2018-151842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
揚げ物のような店内調理品は、賞味期限が短いので、該賞味期限より所定時間前の期限として設定した、陳列部からの撤去期限までに売れない揚げ物は、廃棄する必要がある。揚げ物の廃棄量の増大は、店舗の利益を低下させる。
【0007】
特許文献1は、販売期限切れとなった店内調理品を廃棄する管理を適切に実施することを開示するものの、店内調理品について販売期限切れを抑制する管理については、言及していない。
【0008】
特許文献2は、商品陳列棚における棚割別の販売関連情報をPOSデータに基づいて生成し、提示することを開示するものの、店内調理品の管理について販売関連情報を具体的にどのように活用すれば、撤去期限切れとなる店内調理品の数を減らすことができる管理を行えるかについては、まったく言及していない。
【0009】
本発明の目的は、店舗内で調理、販売する揚げ物を撤去期限内に売り切れるように管理する揚げ物用陳列管理装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の揚げ物用陳列管理装置は、
店舗内に設置されたフライヤー内のフライ油で調理された複数の揚げ物の、該店舗内の陳列部に陳列位置を管理する揚げ物用陳列管理装置であって、
前記揚げ物の各々の賞味期限に関係するパラメータの状態としてのパラメータ状態を認識するパラメータ状態認識部と、
前記パラメータ状態認識部が認識した前記パラメータ状態に基づいて各揚げ物について賞味期限を判断し、該判断した賞味期限に基づいて前記陳列部からの各揚げ物の撤去期限を決定する撤去期限決定部と、
前記撤去期限決定部が決定した前記撤去期限の近い前記揚げ物ほど高くなるように、各揚げ物の販売優先度を決定する販売優先度決定部と、
前記陳列部の各陳列位置に割り当てた購入者の注目度を認識する注目度認識部と、
前記販売優先度が高い前記揚げ物ほど、前記販売優先度が低い前記揚げ物より前記注目度が高い陳列位置に陳列されるように、各揚げ物の陳列位置を決定する陳列位置決定部と、
を備える。
【0011】
本発明の揚げ物用陳列管理装置によれば、揚げ物の賞味期限に関係するパラメータの状態を認識して、パラメータ状態から賞味期限に関係する各揚げ物についての撤去期限を決定し、さらに、撤去期限に基づいて販売優先度を決定する。そして、陳列部の揚げ物は、販売優先度が高いものほど、購入者の注目度の高い陳列位置に陳列される。この結果、撤去期限の迫った揚げ物の販売が促進され、陳列部の揚げ物を撤去期限までに売り切るように、陳列を管理することができる。
【0012】
好ましくは、本発明の揚げ物用陳列管理装置において、
前記パラメータは、前記揚げ物の種類、調理環境及び陳列環境の少なくとも1つに関係するパラメータである。
【0013】
揚げ物の賞味は、揚げ物の性質上、揚げ物の種類、調理環境及び陳列環境から影響を受け易い。この構成によれば、パラメータを揚げ物の種類、調理環境及び陳列環境の少なくとも1つに関係するパラメータとすることにより、各揚げ物の賞味期限に基づいて決定する撤去期限の決定精度を高めることができる。
【0014】
好ましくは、本発明の揚げ物用陳列管理装置において、
前記調理環境は、前記揚げ物を揚げた時の前記フライヤー内のフライ油の劣化度及びフライ油の種類の少なくとも1つを含む。
【0015】
フライヤー内のフライ油は、該フライ油での揚げ物の調理に伴い、徐々に劣化する。揚げ物が揚げられた時のフライ油の劣化度は、該フライ油で揚げられた揚げ物の賞味期限に影響を与える。また、フライ油の種類も、該フライ油で揚げられた揚げ物の賞味期限に影響を与える。
【0016】
この構成によれば、揚げ物を揚げた時のフライヤー内のフライ油の劣化度及び種類の少なくとも1つを調理環境のパラメータとすることにより、各揚げ物の撤去期限の決定精度を高めることができる。
【0017】
好ましくは、本発明の揚げ物用陳列管理装置において、
前記陳列環境は、前記陳列部の各陳列位置の温度、湿度、通気性及び照度のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
陳列位置の温度、湿度及び通気性は、陳列中の揚げ物の素材の鮮度、すなわち賞味に影響を与える。また、陳列位置の揚げ物に対して光を照射する照明は、強くなるほど、陳列中の揚げ物を被覆している油脂の酸化を促進して、酸化臭の発生原因になって、賞味を悪化させる。この構成によれば、これら陳列位置等を陳列環境のパラメータとすることにより、各揚げ物の撤去期限の決定精度を高めることができる。
【0019】
好ましくは、本発明の揚げ物用陳列管理装置は、
さらに、陳列中の前記揚げ物について種類別に今後の予測販売数を予測する販売数予測部を備え、
前記販売優先度決定部は、前記販売数予測部が予測した前記予測販売数に基づいて陳列中の前記揚げ物がその撤去期限までの残り時間に販売できる可能性を判断し、可能性の低い前記揚げ物の前記販売優先度を、可能性の高い前記揚げ物の販売優先度よりも高くなるように、決定する。
【0020】
この構成によれば、陳列中の揚げ物について種類別に販売数を予測し、予測販売数に基づいて各揚げ物が撤去期限までに販売できる可能性を判断する。そして、販売可能性が低いと判断された揚げ物は、注目度の高い陳列位置に決定される。この結果、予測販売数から撤去期限内に売り切る可能性が低いと判断される揚げ物の販売が促進され、揚げ物が撤去期限まで売れ残る可能性を低下させることができる。
【0021】
別の本発明の揚げ物用陳列管理装置は、
陳列中の揚げ物について種類別に今後の販売数としての予測販売数を予測する販売数予測部と、
前記販売数予測部が予測した前記予測販売数に基づいて陳列中の前記揚げ物がその撤去期限までの残り時間に販売できる可能性を判断し、可能性の低い前記揚げ物の前記販売優先度を、可能性の高い前記揚げ物の販売優先度よりも高くなるように、決定する販売優先度決定部と、
陳列部の各陳列位置に割り当てた購入者の注目度を認識する注目度認識部と、
前記販売優先度が高い前記揚げ物ほど、前記販売優先度が低い前記揚げ物より前記注目度が高い陳列位置に陳列されるように、各揚げ物の陳列位置を決定する陳列位置決定部と、
を備える。
【0022】
該別の本発明によれば、陳列中の揚げ物について種類別に販売数を予測し、予測販売数に基づいて各揚げ物が撤去期限までに販売できる可能性を判断する。そして、販売可能性が低いと判断された揚げ物は、注目度の高い陳列位置に決定される。この結果、予測販売数から撤去期限内に売り切る可能性が低いと判断される揚げ物の販売が促進され、揚げ物が撤去期限まで売れ残る可能性を低下させることができる。
【0023】
好ましくは、本発明の揚げ物用陳列管理装置において、
前記予測販売数は、現時点までのPOSデータ並びに現時点が属する当日の天気、気温湿度及び店舗周辺でイベントの少なくとも1つに基づいて認識される。
【0024】
POSデータは、現在までの揚げ物の種類別の販売時刻の情報を含んでいる。したがって、POSデータの分析により揚げ物の種類別の将来の販売数を予測することができる。また、揚げ物の種類別の将来の販売数は、天気、気温及び湿度からも影響を受け易い。
【0025】
この構成によれば、揚げ物の種類別の予測販売数が、POSデータ、天気、気温及び湿度の少なくとも1つに基づいて認識されることにより、予測販売数に応じた販売優先度を決定することができる。
【0026】
好ましくは、本発明の揚げ物用陳列管理装置は、
さらに、前記揚げ物の陳列管理者に前記陳列に関する情報としての陳列情報を通知する通知部を備え、
前記陳列位置決定部は、前記陳列部おける前記揚げ物の出し入れがあったときは、出し入れ後に陳列中の前記揚げ物の陳列位置を再度、決定し、
前記通知部は、前記陳列位置決定部の再決定した陳列位置を前記陳列情報に含める。
【0027】
パラメータ状態は、揚げ物の陳列中に変化する。この構成によれば、陳列部における揚げ物の出し入れがあるごとに、揚げ物の陳列位置が決定される。これにより、陳列中の揚げ物の陳列位置を、パラメータ状態に変化に応じて動的に変更することができる。
【0028】
好ましくは、本発明の揚げ物用陳列管理装置において、
前記注目度認識部が認識する前記注目度は、POSデータに基づいて設定されたものである。
【0029】
POSデータは、現在までの揚げ物の種類別の販売時刻の情報を含むので、POSデータに基づいて揚げ物の陳列位置と販売数との相関関係を認識できる。そして、売行きの良い陳列位置は、購入者からの注目度が高い陳列位置と推測することができる。
【0030】
この構成によれば、注目度がPOSデータに基づいて設定されることにより、陳列位置に対する注目度を精確に設定することができる。
【0031】
本発明の揚げ物用陳列管理方法は、
店舗内に設置されたフライヤー内のフライ油で調理した複数の揚げ物の、該店舗内の陳列部に陳列位置を管理する方法としてコンピュータが実行する揚げ物用陳列管理方法であって
前記揚げ物の各々の賞味期限に関係するパラメータの状態としてのパラメータ状態を認識するパラメータ状態認識ステップと、
前記パラメータ状態認識ステップにおいて認識した前記パラメータ状態に基づいて各揚げ物について賞味期限を判断し、該判断した賞味期限に基づいて前記陳列部からの各揚げ物の撤去期限を決定する撤去期限決定ステップと、
前記撤去期限決定ステップにおいて決定した前記撤去期限の近い前記揚げ物ほど高くなるように、各揚げ物の販売優先度を決定する販売優先度決定ステップと、
前記陳列部の各陳列位置に割り当てた購入者の注目度を認識する注目度認識ステップと、
前記販売優先度が高い前記揚げ物ほど、前記販売優先度が低い前記揚げ物より前記注目度が高い陳列位置に陳列されるように、各揚げ物の陳列位置を決定する陳列位置決定ステップと、
を備える。
【0032】
本発明の揚げ物用陳列管理方法によれば、揚げ物の賞味期限に関係するパラメータの状態を認識して、認識したパラメータ状態から各揚げ物の賞味期限を決定し、さらに、陳列部からの各揚げ物の撤去期限を賞味期限に基づいて決定する。そして、陳列部の揚げ物は、撤去期限に応じて、販売優先度が高いものが低いものより購入者の注目度の高い陳列位置に陳列される。この結果、撤去期限の迫った揚げ物の販売が促進され、陳列部の揚げ物を撤去期限までに売り切るように、陳列を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】揚げ物を調理、販売する店舗のレイアウトの一例の平面図である。
図2】ホッターを前面側から見た斜視図である。
図3】フライヤーの斜視図である。
図4】チェーンストア管理システムの構成図である。
図5】揚げ物用陳列管理装置のブロック図である。
図6】揚げ物用陳列管理方法のフローチャートである。
図7】フライヤーの油槽におけるフライ油の交換時からのフライ油の劣化度の変化を示すグラフである。
図8】揚げ物がフライヤーで調理された時の油槽のフライ油の劣化度と、揚げ物がホッターに陳列開始された時から賞味期限及び撤去期限までの残り時間との関係を示す図である。
図9】揚げ物の種類別にそれが調理された時のフライ油の劣化度と撤去期限までの陳列開始時の残り時間との関係を示す図である。
図10】ホッターにおいて陳列された陳列開始時期の異なる複数の揚げ物の劣化度の変化と共に陳列期間中の販売状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好ましい実施態様について説明する。本発明は、以下の実施態様に限定されないことは言うまでもない。本発明は、明細書に開示した技術的思想の範囲内で種々に変形した態様を包含する。
【0035】
(店舗)
図1は、揚げ物35を調理、販売する店舗10のレイアウトの一例の平面図である。店舗10は、例えばコンビニエンスストアである。
【0036】
出入口14は、店舗10が道路に面する箇所に設置される。店舗10の顧客(購入者)は、出入口14を通って、店舗10に出入りして、店舗10内に陳列されている揚げ物35(図2)等の商品を購入する。購入者が購入する商品について支払いを行う支払いカウンタ15は、出入口14の近くに配置される。
【0037】
調理室16は、店舗10内の奥に配置され、店舗10の調理関係者が出入り可能になっている。複数の陳列棚17は、店舗10内の顧客の通路に沿って配置され、商品が陳列される。ホッター18は、この例では、支払いカウンタ15の近傍に配置されている。調理関係者が調理室16で揚げた揚げ物35(図2)を、陳列管理者がホッター18内に陳列する。なお、調理関係者と陳列管理者とは、同一人であっても、一部のみ重複した人であっても、まったく別の人であってもよい。
【0038】
POSレジ20は、各支払いカウンタ15に1つずつ配備され、店舗10の店員により操作される。フライヤー21は、調理室16内に配備される。複数の監視カメラ24は、店舗10内に死角が生じないように、店舗10内に分布して、天井及び側壁に取り付けられている。監視カメラ24は、店舗10内の顧客の様子や陳列商品を監視する。
【0039】
一部の監視カメラ24は、顧客の監視以外の情報の収集の用途にも使用される。例えば、調理室16に配備された監視カメラ24は、フライヤー21における揚げ物35の調理状態(例:調理中の揚げ物35の種類や個数)を検出することができる。ホッター18を監視する監視カメラ24は、ホッター18内の揚げ物35の陳列状態や揚げ物35の出し入れを検出することができる。
【0040】
(ホッター)
図2は、ホッター18を前面側から見た斜視図である。ホッター18は、前面側及び後面側をそれぞれ店舗10の通路側及び壁側に向けて配置される。ホッター18への揚げ物35の出し入れは、ホッター18の後面側から行われる。
【0041】
図2において、35a-35eは、異なる種類の揚げ物35であることを示している。揚げ物35の種類には、例えば、フランクフルト、鶏の唐揚げ、ポテト及びコロッケ等がある。揚げ物35a-揚げ物35eの総称とするとき、揚げ物35を使用する。
【0042】
ホッター18は、上下方向に陳列棚を複数段、有する。ホッター18は、陳列中の食べ物を保温する。揚げ物35は、種類別にトレイ36に入れられて、いずれかの陳列棚の所定の水平方向位置に陳列される。ホッター18における各揚げ物35の陳列位置は、上下方向位置がトレイ36の置かれた陳列棚の位置により定義され、水平方向位置が、各陳列棚においてトレイ36が置かれた横方向の位置により定義される。なお、揚げ物35は、ホッター18内に陳列されることなく、常温の什器に入れられた状態で陳列棚に直接、陳列することもある。
【0043】
調理担当者は、調理室16のフライヤー21で揚げ物35を種類別に調理し、調理後の揚げ物35を種類別にトレイ36に載せてホッター18に運び、ホッター18の決められた陳列位置に陳列する。厳密には、揚げ物35がフライヤー21において調理終了した時刻(調理時刻)とホッター18に陳列開始した時刻(陳列開始時刻)とは、異なるが、実施形態では、同一時刻として取り扱う。
【0044】
(フライヤー)
図3は、フライヤー21の斜視図である。フライヤー21は、上方において開口する油槽40を備える。フライ油41は、油槽40内に所定のレベルまで満たされる。バスケット43は、複数の揚げ物35を投入可能になっている。油温調節ダイアル45は、フライヤー21の前面に装備され、揚げ物35の調理時のフライ油41の温度の調整に使用される。
【0045】
調理担当者は、油温調節ダイアル45でフライ油41の油温を調節してから、調理前の複数の揚げ物35をバスケット43に投入する。一度に投入する揚げ物35は、通常、種類が同一となっている。そして、所定時間が経過すると、バスケット43を油槽40から取り出す。
【0046】
フライヤー21において揚げ物35を油槽40に沈めてから引き上げる時間(調理時間)は、揚げ物35の重量や食材によって相違する。このため、揚げ物35の種類ごとに相違する時間を設定可能なタイマーをフライヤー21に装備することもできる。調理担当者は、調理開始時にタイマーをセットし、所定時間が経過すると、ブザーが鳴り、調理が終了したことが分かる。
【0047】
(システム構成図)
図4は、チェーンストア管理システム49の構成図である。チェーンストア管理システム49は、本部55のサーバ56と、インターネット53で本部55と接続された各店舗10の端末50とを備える。チェーンストア管理システム49は、本部55が加盟店の店舗10の様々な管理を行う。本発明の実施形態の揚げ物用陳列管理方法は、この管理の1つに含まれている。なお、サーバ56及び端末50は、情報処理装置が当然備える基本のハードウェア素子として、相互に接続されている演算部(例:CPU、RAM及びROMを含む。)と不揮発性記憶装置(例:HDD及び/又はSSD)とを備える。OSや各種アプリケーションプログラム(揚げ物用陳列管理方法を実行するプログラムを含む。)は、サーバ56及び端末50のどちらかの不揮発性記憶装置に又は両者に分散してストアされている。
【0048】
店舗10において、端末50は、POSレジ20、フライヤー21、監視カメラ24及びディスプレイ25等の店舗10内の情報機器を集中管理する。端末50がこれら情報機器から収集した情報は、サーバ56に送信される。これに対し、サーバ56は、各店舗10の端末50から受信した情報に基づいて各店舗10において揚げ物35の陳列管理に必要な制御機器の制御情報及び店舗関係者への通知情報を生成し、生成した情報を端末50に送信する。
【0049】
(揚げ物用陳列管理装置)
図5は、揚げ物用陳列管理装置60のブロック図である。揚げ物用陳列管理装置60は、パラメータ状態認識部61、撤去期限決定部62、販売優先度決定部63、注目度認識部64、陳列位置決定部65、販売数予測部66及び通知部71を備える。この例では、揚げ物用陳列管理装置60の構成要素のうち、パラメータ状態認識部61、撤去期限決定部62、販売優先度決定部63、注目度認識部64、陳列位置決定部65及び販売数予測部66は、サーバ56に装備され、通知部71は、端末50に装備される。揚げ物用陳列管理装置60の作用については、図6のフローチャートで説明する。
【0050】
(作用)
図6は、揚げ物用陳列管理方法のフローチャートである。揚げ物用陳列管理方法は、コンピュータが所定のソフトウェアを使って実行する。該所定のソフトウェアは、相互に接続されている複数のコンピュータに分散して、実装されてもよい。複数のコンピュータで、該揚げ物用陳列管理方法を実行するときは、分散処理となる。端末50及びサーバ56は、該コンピュータとして機能する。
【0051】
図6の揚げ物用陳列管理方法は、ホッター18における揚げ物35の陳列、販売中は、所定のイベント(プログラミング上のイベントであり、後述の予測販売数の算定の基礎とされる行事や催事のイベントとは区別される。)の発生に伴って、繰り返し実行される。所定の(プログラミング上の)イベントとして、所定時間の経過、ホッター18への揚げ物35の出し入れ、及びPOSレジ20における揚げ物35の購入者による支払い登録等を選択することができる。
【0052】
STEP101では、パラメータ状態認識部61は、店舗10内に設置されたフライヤー21のフライ油41で調理されてホッター18に陳列する複数の揚げ物35について各揚げ物35の賞味期限に関係するパラメータの状態としてのパラメータ状態を認識する。
【0053】
パラメータは、揚げ物35の種類、調理環境及び陳列環境の少なくとも1つに関係するパラメータである。
【0054】
揚げ物35の品質は、揚げ物35の賞味に関係し、該賞味は、揚げ物35の性質上、揚げ物35の種類、調理環境及び陳列環境に関係する。揚げ物35の賞味は、調理終了後、徐々に低下し、これに伴い、揚げ物35の劣化度(賞味とは、高低関係が反対の関係にある。)は、上昇する。
【0055】
図7は、フライヤー21の油槽40におけるフライ油41の交換時からのフライ油41の劣化度dの変化を示すグラフである。図7では、説明の便宜上、油槽40においてフライ油41を交換した時(使用開始時)のフライ油41の劣化度dを0と定義している。劣化度dは、揚げ物35の揚げ量の増大に連れて、上昇していく。上昇の態様は、フライヤー21における揚げ物35の調理の状況に関係する。図7において、特性線の傾き、すなわちフライ油41の劣化度dの増大量/単位経過時間は、劣化速度を意味する。図7では、横軸前半の傾きは小さく、後半の傾きは大きくなっている。このことは、図7の例は、調理作業が、前半は比較的暇であり、後半は繁忙になっていることを意味する。
【0056】
フライヤー21において揚げられる、すなわち調理される揚げ物35は、調理時の劣化度dが低いものほど、賞味期限が増大する。図7において、劣化度d=Dlは、フライ油41の上限の劣化度dを示す。劣化度dは、例えば、フライ油41の酸価、粘度、粘度上昇率、色、アニシジン価又は極性化合物等から検出することができる。図7では、経過時間t=Tlの時に劣化度d=Dlになっている。店舗10の関係者は、劣化度d=Dlになる前に、油槽40のフライ油41を新しいフライ油41に交換する。
【0057】
図8は、揚げ物35がフライヤー21で調理された時の油槽40のフライ油41の劣化度dと、揚げ物35がホッター18に陳列開始された時から賞味期限までの残り時間u及び撤去期限までの残り時間vとの関係を示している。賞味期限及び撤去期限は、期限の日だけでなく、時刻も含んで定義される。残り時間v及び残り時間uは、典型的には、時間又は分を単位で定義される(例:残り時間=2時間又は120分)。購入者は、揚げ物35を、店舗10を出てから自宅等で食べることが多いので、残り時間vは、例えば、揚げ物35の種類に関係なく残り時間uより所定時間短い値に一律に設定される。
【0058】
各揚げ物35は、撤去期限までに販売できなかったときは、ホッター18から撤去される。なお、図8のDlは、図7のDlと一致している。
【0059】
図9は、揚げ物35の種類別にそれが調理された時のフライ油41の劣化度dと撤去期限までの陳列開始時における残り時間vとの関係を示している。フライヤー21のフライ油41は、劣化度dがDlに達する以前に新しいフライ油41に交換されるので、図9では、劣化度d>Dlの範囲の残り時間vの図示は、省略している。
【0060】
図9では、揚げ物35の種類は添え字のka-kcで区別される。すなわち、揚げ物35ka-揚げ物35kcは、揚げ物35の種類が異なることを意味している。揚げ物35の種類が相違すると、食材(揚げ物35の性質)が相違することになり、食材は、賞味期限に関係する。したがって、フライヤー21において同一の劣化度dのフライ油41に調理されても、フライヤー21における調理終了時(=ホッター18における陳列開始時)の揚げ物35の賞味期限に関係する残り時間vは、種類ごとに異なることになる。
【0061】
揚げ物35の種類を、揚げ物35の賞味期限に関係するパラメータとすることにより、撤去期限の決定精度を高めることができる。
【0062】
陳列環境のパラメータには、例えば、ホッター18の各陳列位置の温度、湿度通気性及び照度のうちの少なくとも1つが含まれる。揚げ物35は、ヒータ付きのホッター18内で陳列される。しかしながら、ホッター18内の陳列位置間には、温度、湿度及び通気性にむらがある。一般に、ホッター18内では、上側の陳列棚ほど温度が高くなる。また、湿度は、温度が高いほど、低下する。さらに、ホッター18における揚げ物35の陳列密度は、通気性に影響を与える。
【0063】
ホッター18内の温度及び湿度は、サーモセンサや湿度センサから検出可能である。ホッター18における揚げ物35の陳列密度は、監視カメラ24の撮像画像から検出される。
【0064】
揚げ物35の賞味、したがって賞味期限は、揚げ物35の性質上、これらの陳列環境のむらから影響を受け易い。陳列環境のパラメータとして陳列位置の温度、湿度及び通気性の少なくとも1つとすることにより賞味期限の決定精度を高めることができる。
【0065】
STEP102では、撤去期限決定部62は、パラメータ状態認識部61が認識したパラメータ状態に基づいて各揚げ物35について賞味期限を判断し、該賞味期限に基づいてホッター18からの各揚げ物35の撤去期限を決定する。
【0066】
STEP103では、販売数予測部66は、陳列中の揚げ物35について種類別に今後の販売数としての予測販売数を予測する。予測販売数を予測する意義については、図10において詳説する。
【0067】
STEP104では、販売優先度決定部63は、撤去期限決定部62が決定した撤去期限に基づいて該撤去期限の近い揚げ物35ほど高くなる販売優先度を決定する。予測販売数と販売優先度との関係については、図10において後述する。
【0068】
STEP105では、注目度認識部64は、ホッター18の各陳列位置に割り当てた購入者の注目度を認識する。注目度認識部64が認識する注目度は、例えばPOSデータに基づいて認識することができる。
【0069】
POSデータは、現在までの揚げ物の種類別の販売時刻の情報を含むので、POSデータに基づいて揚げ物の陳列位置と販売数との相関関係を認識できる。そして、売行きの良い陳列位置は、購入者からの注目度が高い陳列位置と推測することができる。
【0070】
STEP106では、陳列位置決定部65は、販売優先度が高い揚げ物35が、販売優先度が低い揚げ物35より注目度が高い陳列位置に陳列されるように各揚げ物の陳列位置を決定する。
【0071】
STEP107では、通知部71は、揚げ物35の陳列管理者に陳列に関する情報としての陳列情報を通知する。陳列情報には、陳列位置決定部65の決定した陳列位置を陳列情報に含められる。
【0072】
具体的には、通知部71は、店舗10の関係者が携帯するタブレットやホッター18の近傍に配備されたディスプレイ25に陳列情報を表示する。
【0073】
STEP107の処理の終了後、揚げ物用陳列管理方法は、一旦、終了する。しかしながら、揚げ物用陳列管理方法は、前述したように、時間間隔を空けて発生する(プログラミング上の)イベントのたびに、再実行される。すなわち、各揚げ物35は、陳列期間中、各陳列時刻に最適な陳列位置に動的に決定される。
【0074】
陳列位置の動的な変更の意義を、予測販売数と販売優先度との関係と共に以下に説明する。図10は、ホッター18において陳列された陳列開始時期の異なる複数の揚げ物35k1-揚げ物35k5の劣化度eの変化と共に陳列期間中の販売状態を示している。
【0075】
揚げ物35k1-揚げ物35k5は、それぞれ陳列時刻n=N1-N4,N6にホッター18に陳列開始されている。各揚げ物35は、陳列期間中、劣化度eが増大していく。EIは、揚げ物35がホッター18から撤去する時、すなわち陳列期限時の劣化度eに対応する。したがって、各揚げ物35は、劣化度e=Elに到達すると、ホッター18から撤去されることになる。
【0076】
図10において、「〇」は、予測販売数を加味しないで各揚げ物35の陳列位置を決定したときの販売を示す。「●」は、予測販売数を加味しないで各揚げ物35の陳列位置を決定したときに売れ残りのために撤去したことを示す。「☆」は、予測販売数を加味して各揚げ物35の陳列位置を決定したときの販売を示す。Taは、「●」の撤去の陳列時刻nより前の所定期間を意味する。
【0077】
前述したように、図6の揚げ物用陳列管理方法は、所定の(プログラミング上の)イベントの発生に伴って、繰り返し実行される。図10の例では、所定の(プログラミング上の)イベントとして、ホッター18への揚げ物35の出し入れが選択される。具体的には、ホッター18への揚げ物35の出し入れは、揚げ物35の陳列開始時、現在時刻が撤去期限になったことによる撤去、及び購入者による揚げ物35の購入時に行われる。ホッター18への揚げ物35の出し入れは、ホッター18を監視する監視カメラ24の撮像画像から検出することができる。
【0078】
最初に、「〇」及び「●」を参照して、予測販売数を加味しない販売優先度で決定した陳列位置に各揚げ物35を陳列するときの陳列位置の決定の仕方について説明する。
【0079】
N4,N7,N9は、それぞれ揚げ物35k3,35k2,35k4が販売された陳列時刻nである。N8,N10は、それぞれ揚げ物35k1,35k5が撤去された陳列時刻nである。
【0080】
ホッター18内の揚げ物35の陳列位置の決定は、図10の例では、N1-N10において行われる。N1-N10のうち、代表的な陳列時刻nとしてN3,N6,N8について説明する。
【0081】
陳列時刻n=N3では、ホッター18には、揚げ物35k1-揚げ物35k3の3個の揚げ物35が陳列されている。この時、撤去期限までの残り時間vは、短い方から順に揚げ物35k2,35k3,35k1になっている。この結果、販売優先度は、高い方から順に揚げ物35k2,35k3,35k1となる。そして、ホッター18では、購入者からの注目度が高い方の陳列位置から順に揚げ物35k2,35k3,35k1が陳列される。
【0082】
陳列時刻n=N6では、揚げ物35k3が販売済みとなっているため、ホッター18には、揚げ物35k3以外の揚げ物35k1,35k2,35k4,35k5の4個の揚げ物35が陳列されている。この時、撤去期限までの残り時間vは、短い方から順に揚げ物35k2,35k1,35k4,35k5になっている。この結果、販売優先度は、高い方から順に揚げ物35k2,35k1,35k4,35k5になる。そして、ホッター18では、購入者からの注目度が高い方の陳列位置から順に揚げ物35k2,35k1,35k4,35k5が陳列される。
【0083】
陳列時刻n=N8では、揚げ物35k1がホッター18から撤去されたため、ホッター18には、揚げ物35k4,35k5の2個の揚げ物35が陳列されている。この時、撤去期限までの残り時間vは、短い方から順に揚げ物35k4,35k5になっている。この結果、販売優先度は、高い方から順に揚げ物35k4,35k5になる。そして、ホッター18では、購入者からの注目度が高い方の陳列位置から順に揚げ物35k4,35k5が陳列される。
【0084】
次に、「☆」を参照して、予測販売数を加味した販売優先度で決定した陳列位置に各揚げ物35を陳列するときの陳列位置の決定の仕方について説明する。予測販売数を加味した販売優先度で陳列位置を決定することにより、予測販売数を加味しない販売優先度で陳列位置を決定したときには、「●」の撤去となってしまう事態を抑制することができる。
【0085】
ホッター18内の揚げ物35の陳列位置の決定は、図10の例では、代表的な陳列時刻nとしてN6について説明する。
【0086】
陳列時刻n=N6では、ホッター18には、揚げ物35k1,35k2,35k4,35k5の4個の揚げ物35が陳列されている。すなわち、売れ残っている。そのうち、揚げ物35k1,35k2の2個については、所定時間Ta以内に撤去期限が来る。
【0087】
販売数予測部66は、撤去期限が所定時間Ta以内にある揚げ物35k1,35k2の2個についての販売数を予測販売数として予測する。販売数予測部66は、予測販売数を、POSデータ、天気、気温及び湿度の少なくとも1つに基づいて認識する。POSデータは、揚げ物35の種類別に現在時刻までの販売時刻の情報が含まれるので、予測販売数も、揚げ物35の種類別に認識される。
【0088】
POSデータは、現在の時刻まで揚げ物35の種類別の販売時刻及び個数の情報を含むので、POSデータに基づいて現在時刻から将来の或る時刻までの揚げ物35の種類別の販売数を予測することができる。具体的には、例えば、過去のPOSデータによる揚げ物の過去の販売数と、過去の天気、気温、湿度及び店舗周辺でのイベント(行事や催事のイベント)の個々と又はそれら2以上の組み合わせとに対する揚げ物35の種類別販売数の相関関係を過去の統計から分析して予め作成しておく。次に、予測販売数を予測する時点としての予測時点において該予測時点より所定時間過去の時点から該予測時点までの揚げ物35の種類別販売数をPOSデータから調べる。そして、調べた種類別販売数と予め作成しておいた相関関係とに基づいて予測時点から揚げ物35の賞味期限までの揚げ物35の種類別販売数(例:=調べた種類別販売数×予め作成しておいた相関関係の相関値)を予測する。
【0089】
販売優先度決定部63は、揚げ物35k1,35k2についてそれぞれの撤去期限までの残り時間v内に販売できる確率αを揚げ物35の種類別の予測販売数に基づいて算出する。揚げ物35k1,35k2についての確率αがα1,α2とし、α1<α2とする。すなわち、残り時間vの長い揚げ物35k1の方が、残り時間vの短い揚げ物35k2より確率αが低いとする。なお、このことは、予測販売数は、揚げ物35k1の方が揚げ物35k2より低いことを意味する。
【0090】
販売優先度決定部63は、撤去期限が所定時間Ta以内にある揚げ物35については、撤去期限までの残り時間vよりも残り時間v内に販売できる確率αの低い順の方を優先して、販売優先度を決定し、これにより、各揚げ物35が残り時間v内の売れ残るのを回避する。
【0091】
経過時間t=N6について具体的に説明すると、販売優先度決定部63は、撤去期限が所定時間Ta以内にある揚げ物35間では、確率αの低い揚げ物35から順に、販売優先度を高い方から順に割り当てる。この例では、販売優先度の1番を揚げ物35k1にし、2番を揚げ物35k2とする。
【0092】
また、販売優先度決定部63は、経過時間t=N6において、撤去期限が所定時間Taより長い揚げ物35については、予測販売数を加味しない販売優先度で陳列位置を決定したときと同様に、撤去期限までの残り時間vの短い順に、販売優先度を高い方から順に割り当てる。すなわち、撤去期限が所定時間Taより長い揚げ物35については、販売優先度は、揚げ物35k4,35k5の順になる。
【0093】
こうして、経過時間t=N6では、陳列中の揚げ物35の全体では、揚げ物35の販売優先度は、揚げ物35k1,35k2,35k4,35k5の順になる。この結果、販売優先度の高い方から順に、すなわち、揚げ物35k1,35k2,35k4,35k5の順に、ホッター18内の目立つ陳列位置に陳列される。
【0094】
こうして、陳列時刻n=N6では、揚げ物35k1の撤去期限までの残り時間vは、揚げ物35k2より長いにもかかわらず、トレイ36k1は、トレイ36k2より注目度の高い陳列位置に陳列される。この結果、トレイ36k1は、「●」の撤去を回避され、撤去期限内の「☆」の陳列時刻nで販売される。一方、トレイ36k2は、トレイ36k1より注目度の低い陳列位置に陳列時刻n=N6で変更されるため、販売時刻が「〇」から「☆」になる。しかし、トレイ36k2はトレイ36k1より予測販売数が高いので、撤去されることなく、撤去期限前の「☆」の陳列時刻nに販売される。
【0095】
(変形例)
実施形態では、揚げ物用陳列管理方法の実質的な処理は、本部55のサーバ56で行われている。しかしながら、本発明では、揚げ物用陳列管理方法に係るコンピュータソフトウェアを各店舗10の端末50に実装して、各店舗10の端末50が単独で行うようにすることもできる。
【0096】
実施形態では、注目度認識部64が認識する注目度は、POSデータに基づいて設定している。しかしながら、店舗10の関係者は、自店のホッター18の陳列位置について、どこが注目度が高く(例:最上段の陳列棚の中央)、どこが低いか(例:最下段の陳列棚の右端)を経験上、認知している。したがって、注目度認識部64が認識する注目度について、該関係者が経験上、認知している注目度に基づいて設定することもできる。
【0097】
実施形態では、揚げ物用陳列管理装置60が決定したホッター18内の揚げ物35の陳列位置は、ホッター18のディスプレイ25に表示することにより陳列関係者に通知される。本発明では、これに代えて、店舗10の関係者が携帯するタブレット等の携帯情報端末に表示することもできる。
【0098】
(実施態様の効果)
揚げ物用陳列管理装置60の効果についてまとめると、次のとおりである。
【0099】
揚げ物用陳列管理装置60では、揚げ物35の賞味期限に関係するパラメータの状態としてのパラメータ状態を認識して、各揚げ物35の撤去期限に基づく販売優先度を決定する。そして、ホッター18内の揚げ物35は、販売優先度が高いものが低いものより購入者の注目度の高い陳列位置に陳列される。この結果、撤去期限の迫った揚げ物35の販売が促進され、揚げ物35について売れ残りに因る撤去及び廃棄を減らすことができる。
【0100】
揚げ物35の賞味期限は、揚げ物35の賞味に関係する。揚げ物35の賞味は、揚げ物35の性質上、揚げ物35の種類、調理環境及び陳列環境から影響を受け易い。揚げ物用陳列管理装置60によれば、パラメータを揚げ物35の種類、調理環境及び陳列環境の少なくとも1つに関係するパラメータとすることにより、各揚げ物35の撤去期限の決定精度を高めることができる。
【0101】
揚げ物用陳列管理装置60によれば、調理環境のパラメータは、揚げ物を揚げた時のフライヤー21内のフライ油41の劣化度dや、フライ油41の種類の少なくとも一方を含む。これにより、各揚げ物35の撤去期限の決定精度を高めることができる。なお、フライ油41の種類は、センサで検出してもよいが、典型的には、調理担当者を含む店舗関係者が、端末50に手操作で入力する。
【0102】
陳列中の揚げ物35の賞味は、ホッター18内の陳列位置の温度、湿度及び通気性から影響を受け易い。揚げ物用陳列管理装置60によれば、陳列位置の温度、湿度及び通気性のうちの少なくとも1つを陳列環境のパラメータとすることにより、各揚げ物35の撤去期限の決定精度を高めることができる。
【0103】
揚げ物用陳列管理装置60によれば、ホッター18内で陳列中の揚げ物35について種類別に販売数を予測し、予測販売数に基づいて各揚げ物35が撤去期限までに販売できる可能性を判断する。そして、可能性が低いと判断された揚げ物35は、注目度の高い陳列位置に決定される。この結果、予測販売数から撤去期限内に売り切ることが難しいと予測される揚げ物35の販売を促進して、揚げ物35について売れ残りに因る撤去を抑制することができる。
【0104】
POSデータは、現在までの揚げ物35の種類別の販売時刻の情報を含んでいる。したがって、POSデータの分析により揚げ物35の種類別の将来の販売数を予測することができる。また、揚げ物35の種類別の将来の販売数は、天気、気温及び湿度から影響を受ける。
【0105】
揚げ物用陳列管理装置60によれば、揚げ物35の種類別の予測販売数が、POSデータ、天気、気温及び湿度の少なくとも1つに基づいて認識されることにより、予測販売数に応じた販売優先度を決定することができる。
【0106】
パラメータ状態は、揚げ物35の陳列中、変化する。揚げ物用陳列管理装置60によれば、ホッター18における揚げ物の出し入れがあるごとに、揚げ物35の陳列位置が決定される。これにより、陳列中の揚げ物35の陳列位置を、パラメータ状態に変化に応じて動的に変更することができる。
【0107】
POSデータは、現在までの揚げ物35の種類別の販売時刻の情報を含むので、POSデータに基づいて揚げ物35の陳列位置と販売数との相関関係を認識できる。そして、売行きの良い陳列位置は、購入者からの注目度が高い陳列位置と推測することができる。
【0108】
揚げ物用陳列管理装置60によれば、注目度がPOSデータに基づいて設定されることにより、陳列位置に対する注目度を精確に設定することができる。
【符号の説明】
【0109】
10・・・店舗、18・・・ホッター(陳列部)、20・・・POSレジ、21・・・フライヤー、25・・・ディスプレイ(通知部)、35・・・揚げ物、40・・・油槽、41・・・フライ油、60・・・揚げ物用陳列管理装置、61・・・パラメータ状態認識部、62・・・撤去期限決定部、63・・・販売優先度決定部、64・・・注目度認識部、65・・・陳列位置決定部、66・・・販売数予測部、71・・・通知部。
【要約】
揚げ物用陳列管理装置60は、揚げ物35の各々の賞味期限に関係するパラメータの状態を認識するパラメータ状態認識部61と、パラメータ状態に基づいて各揚げ物35について陳列棚からの撤去期限を決定する撤去期限決定部62と、撤去期限の近い揚げ物ほど高くなる販売優先度を決定する販売優先度決定部63と、陳列位置に割り当てた購入者の注目度を認識する注目度認識部64と、販売優先度が高い揚げ物35ほど、販売優先度が高くなるように、各揚げ物の陳列位置を決定する陳列位置決定部65と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10