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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】冊子
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/24 20140101AFI20220915BHJP
   B42D 25/47 20140101ALI20220915BHJP
   B42D 25/346 20140101ALI20220915BHJP
【FI】
B42D25/24
B42D25/47
B42D25/346
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019081399
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020175630
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】新免 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】丸山 博
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0355045(US,A1)
【文献】特開2018-089872(JP,A)
【文献】特表2009-532241(JP,A)
【文献】特開2018-008479(JP,A)
【文献】特表2009-514708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00-25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも複数のシートとデータページ部が、前記データページ部から突出した第一の材料から成るヒンジ部を介して冊子綴じ部により一体化された冊子であって、
前記ヒンジ部の上層又は下層の前記シートの間に、第二の材料により形成された識別層を有し、
前記ヒンジ部の一部、前記識別層及び前記シートの一部が接着された接合部と、前記識別層と前記シートの一部が接着された未接合部が隣接して形成され、
前記接合部における前記ヒンジ部と前記識別層との接着力が、前記識別層と前記シートとの接着力より強いことを特徴とする冊子。
【請求項2】
前記識別層は、前記データページ部の抜き取り等による偽変造を防止するための剥離防止機能を備えていることを特徴とする請求項1記載の冊子。
【請求項3】
前記剥離防止機能は、前記接合部に積層されたヒンジ部の一部が窓空き部を有することを特徴とする請求項2記載の冊子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ部に差替え防止機能を形成した冊子に関する。
【背景技術】
【0002】
国際交流の進展によって、人材の移動が活発化している。それに伴って、個人を特定し、身元を証明するためのパスポートの必要性及び重要性が高まっている。
【0003】
個人を特定する手段としては、IDカードを使用するケースが多くあり、IDカードと類似する仕様をパスポートに付与するために、パスポートの所持人情報を記載したデータページをプラスチック基材とする国が多くなっている。パスポートにプラスチック基材のデータページ部を綴じる手段として、可撓性を有し、綴じた後は引裂け難いヒンジ部を介してプラスチック基材のデータページをパスポートに保持させている。
【0004】
その一例として、網状の構造のヒンジ部分をデータページ部の上面又は下面に隣接する近傍部において、データページの中に侵入するように配置されていることを特徴とする冊子が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、データページをセキュリティドキュメントに取り付けるため、可撓性で曲げ抵抗があるヒンジ部分を有し、ヒンジ部分がデータページ部分の少なくとも2つのシートの間のプラスチック材料内に突き出していることを特徴とする冊子が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、ヒンジ部を形成する繊維の延伸方向と、ヒンジ部形成体の縁部を形成する辺とがなす角が非直角(5~85°)としたヒンジ層を備えたヒンジ部形成体と複数枚のシートを綴じこんだ冊子が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4990906号公報
【文献】特許第5367945号公報
【文献】特開2018-8479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術は、データページ部から突出したヒンジ部と複数枚のシートを綴じ込み部により綴じこんで一体化させた旅券冊子を構成することができるが、綴じこみ部からヒンジ部を切り離すことによりデータページ部を旅券冊子から取り外し、他人のデータページ部に差替えられるおそれがあるという問題があった。
【0009】
また、特許文献3の技術は、ヒンジ部の繊維方向に角度を設け、切断時にヒンジ部の切断面から繊維のほつれを防止することができるが、繊維方向に角度を設けているため、ヒンジ部の切断面が毛羽立ちすることにより外観品質(見た目の品質)が低下するとともに、長期の使用によりヒンジ部繊維がほどけてしまうおそれがあるという問題があった。
【0010】
本発明は、前述した問題の解決を目的としたものであり、ヒンジ部を隣接したシート部に接着することで、綴じこみ部からヒンジ部を切り離すことによりデータページ部を旅券冊子から取りはずされるおそれがなく、ヒンジ部の旅券冊子に対する結合強度を高くすることができるIC旅券冊子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも複数のシートとデータページ部が、データページ部から突出した熱可塑性樹脂から成るヒンジ部を介して冊子綴じ部により一体化された冊子であって、ヒンジ部の上層又は下層のシートの間に、所定の材料により形成された識別層を有し、識別層は、少なくともヒンジ部の一部及シートの少なくとも一部を接着した接合部を備え、接合部の前記ヒンジ部と前記識別層との接着力が、前記識別層とシートとの接着力より大きいことを特徴とする冊子である。
【0012】
また、本発明の冊子は、識別層が、データページ部の抜き取り等による偽変造を防止するための剥離防止機能を備えていることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の冊子における剥離防止機能は、接合部に積層されたヒンジ部の一部が、窓空き部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ヒンジ部を隣接したシートに接着することで、冊子綴じ部からヒンジ部を切り離してデータページ部を冊子から取りはずされた際に、識別層とヒンジ部に剥離の痕跡が残るため、データページ部を冊子から取り外す偽造に対する牽制効果が高くなる。
【0015】
本発明は、ヒンジ端部をレーザー加工によって溶着させることにより、ヒンジ部の繊維のほつれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の冊子の一例図。
図2】ヒンジ端部の加工例を示す一例図
図3】本発明の実施の形態を示す一例図。
図4】本発明の効果を示す一例図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0018】
(冊子)
図1に、本実施形態における冊子(A1)の一例を示す。図1(a)は、冊子(A1)を開いた状態の模式図であり、図1(b)は、冊子(A1)の平面図であり、図1(c)は、冊子(A1)のA-A´断面図である。
【0019】
図1(a)及び図1(b)に示すように、本発明の冊子(A1)は、少なくとも複数のシートにより形成された中身シート(4)と、表紙シート(3)に貼付した見返しシート(2)と、複数枚の中身シート(4)を熱可塑性樹脂から成るシートを複数積層して形成されたデータページ部(1)から突出した第一の材料から成るヒンジ部(5)により、データページ部(1)を冊子綴じ部(7)により一体化された冊子(A1)である。
【0020】
図1(c)に示すように、ヒンジ部(5)に隣接する見返しシート(2)は、冊子綴じ部(7)に隣接、かつ、第二の材料により形成された識別層(6)を有している。識別層(6)についての詳細は後述するが、ヒンジ部(5)と識別層(6)と見返しシート(2)が積層している冊子綴じ部(7)に隣接する領域を接合部(8)といい、その接合部(8)に隣接して、ヒンジ部(5)はなく、識別層(6)と見返しページ(2)のみが積層されている領域を未接合部(9)という。
【0021】
さらに、図1(d)及び図1(e)の断面図に示すように、接合部(8)を識別層(6)と見返しシート(2)に形成して、ヒンジ部(5)を熱溶着してもよい。あるいは、接合部(8)を識別層(6)と見返しシート(2)によりヒンジ部(5)を挟み込み、未接合部(9)で熱溶着してもよい(図示せず)。なお、本明細書における隣接とは、隣り合う二つの領域、又はシートの少なくとも一部が接する又は交差していることをいう。
【0022】
(冊子綴じ部)
冊子綴じ部(7)は、ヒンジ部(5)を見返しシート(2)、表紙シート(3)、中身シート(4)をミシン綴により糸綴じ、接着剤、熱圧着又はそれらと糸綴じを併用して形成され、データページ部(1)とを一体化されて成る。
【0023】
次に、図2にヒンジ端部(11)の加工例を示す。図2(a)に示すように、未接合部(9)に隣接するヒンジ端部(11)は、例えば、レーザー光(14)などを用いた高熱を伴う切断加工(13)を施されており、図2(b)に示すように、メッシュを形成する繊維の交点が溶着(15)している。そのため、従来のメッシュと比較してヒンジ端部(11)からのほつれが発生しづらくなる。
【0024】
(識別層)
識別層(6)は、第二の材料によりヒンジ部(5)に隣接するシートに形成される層である。具体的には、ヒンジ部とそのヒンジ部の上層の中味シート(4)の間、又はヒンジ部とそのヒンジ部の下層の見返しシート(2)との間に設けられる。第二の材料は、蛍光インキ、熱や圧力による変色性を有するインキ、セキュリティシール、熱可塑性フィルム、脆質フィルム、ボンド、アラビア糊、接着剤等が挙げられる。この識別層(6)は、一方の面にヒンジ部(5)、他方の面に見返しシート(2)が積層されている領域の接合部(8)と、他方の面のみの見返しシート(2)が積層されている未接合部(9)に区分けされる。
【0025】
また、識別層(6)は、データページ部(1)の抜き取り等による偽変造を防止する剥離防止機能を備えている。本発明における識別層(6)の剥離防止機能とは、識別層(6)の端部の形状や文字を半割にしてヒンジ部(5)と識別層(6)にそれぞれ配置したり、文字、図形等をかたどった窓空き形状とすることで、剥離された際に痕跡を残させる技術をいう。
【0026】
この識別層(6)の形成は、印刷による付与や熱プレスによる貼付、粘着層を介した接着等の公知の手段により形成される。識別層(6)の形状は、データページ部(1)から突出したヒンジ部(5)が全面積層可能であれば、特に限定されない。図1に示されるような矩形形状の識別層(6)は最も単純な例であるが、裏見返しシートに隣接する識別層(6)の端部には文字や記号や幾何形状といった任意の形状を付与したり、未接合部(9)に窓空き形状を付与することも可能である。
【0027】
(ヒンジ部と接合部)
接合部(8)は、識別層(6)と識別層(6)に積層されたヒンジ部(5)が接着された領域である。ヒンジ部(5)は、熱プレスにより識別層(6)と接着され、接合部(8)を形成する。識別層(6)をインキやボンド等の流動性の高い材料で形成する場合には、高圧によって接着させることも可能である。なお、本明細書における接着とは、熱溶着による固着、溶剤の溶解による固着、又は接着剤による接着等も含む意味である。
【0028】
(接着力)
ヒンジ部(5)と識別層(6)を接合部(8)で熱溶着させることで、ヒンジ端部(11)からのほつれの発生を抑制する。本発明の冊子における特徴点として、接合部(8)におけるヒンジ部(5)と識別層(6)との接着力は、見返しシート(2)と識別層(6)との接着力よりも強いことである。本発明における「接着力が強い」とは、ヒンジ部(5)と識別層(6)と見返しシート(2)が積層されている接合部(8)において、その接着状態を壊して外力による引き剥がしをした際に、必ずヒンジ部(5)と識別層(6)との接着状態は維持されたままで、識別層(6)と見返しシート(2)の接着状態が壊れて剥がれることをいう。したがって、ヒンジ部(5)を剥がそうとした際には識別層(6)も一緒にシートから剥がれ、一部の識別層(6)はシート上に残留する。そのため、冊子綴じ部(7)を破壊してデータページ部(1)の差し替えを行った際に、ヒンジ部(5)の接合部(8)上に識別層(6)の一部が付着し、剥離した痕跡が残る。また、識別層(6)にもヒンジ部(5)を剥離した痕跡が残るため、識別層(6)を有するシートが再利用されたものかを容易に鑑定できる。
【0029】
(ヒンジ部)
ヒンジ部(5)は、第一の材料から形成されたメッシュ状のシートであり、素材としては縮合重合プラスチック類や重合プラスチック類が好適である。例としてポリエステル、PET、PET-G、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリカーボネート、ポリアクリルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂が挙げられ、それらを組み合わせて用いてもよい。データページ部(1)からのヒンジ部(5)の突出は、短すぎると冊子綴じ部(7)で縫合ができないため、データページ部(1)の熱可塑性樹脂層の端部から3mm以上突出する形態が好適である。
【0030】
次に、ヒンジ端部(11)について説明する。ヒンジ端部(11)の形状は、特に限定されず、図3(a)に示す、幾何形状を施してもよい。また、図3(b)に示すように、前述の接合部(8)に積層されるヒンジ部(5)の一部に窓空き部(10)を形成してもよい。窓空き部(10)の形状は、冊子におけるヒンジ部(5)の機能を損なわない引っ張り強度、耐折性、柔軟性を維持できる範囲において限定されない。また、図3(a)に示すヒンジ端部(11)への幾何形状付与と並行してもよい。図3(b)の例では、窓空き部(10)によりアルファベットの文字「JPN」を形成しているが、特に限定れさるものではなく、単純な円形、四角形等でもよい。
【0031】
ヒンジ部(5)の窓空き部(10)は、識別層(6)と接合部(8)で接着されないため、ヒンジ部(5)の剥離を試みた場合、窓空き部(10)の形状で識別層(6)がシート残留するため、剥離の痕跡を確認することが容易である。
【0032】
図3(c)は、ヒンジ端部(11)に任意の文字や記号の形状の一部を形成した一例である。一例として、ヒンジ端部(11)の形状を漢字の「日本」という文字を縦に半割した形で加工している。文字は漢字に限定されず、ひらがな、カタカナ、アルファベットなど様々な文字や記号を用いることができる。またヒンジ端部(11)に付与する文字の形状も半割形状に限定されず、配置方向も任意に設定してよい。漢字の「日本」のように形成されたヒンジ端部(11)の形状が、左右対称の文字である場合、ヒンジ部(5)を俯瞰した際や、ヒンジ部(5)が剥離して識別層(6)が残留した際に文字の形状を認識しやすい。
【0033】
図3(d)は、ヒンジ端部(11)に形成された形状と、ヒンジ端部(11)に隣接する未接合部(8)に形成された形状が合わさることによって、任意の文字や記号を一体形成している。一例として、ヒンジ端部(11)の形状を、漢字の「日本」という文字の左半分の形状で加工し、ヒンジ端部(11)に隣接する識別層(6)の未接合部(8)には、漢字の「日本」という文字の右半分の形状を加工した。文字は漢字に限定されず、ひらがな、カタカナ、アルファベットなど様々な文字・記号を用いることができる。偽変造のために一度剥離した後で、再度ヒンジ端部(11)の形状と未接合部(8)の形状の位置を合わせることが困難であるため、偽変造の難易度を向上させることができる。
【0034】
図4は、識別層(6)の接合部(8)上に、熱溶着をした際にヒンジ部(5)に印刷インキを用いて浸透又は転写により印刷部(12)を形成している。一例として、識別層(6)の接合部(8)上に印刷部(12)を有しており、接合部(8)においてヒンジ部(5)と熱溶着している。熱によって流動性を増した印刷部(12)のインキがヒンジ部(5)に転写され、ヒンジ部(5)を剥がした際に剥離の痕跡としてヒンジ部(5)の接合部(8)に残留する。メッシュ状のヒンジ部(5)を用いることで、メッシュ開口部にインキが入り込むため、剥がしたものを再度利用しようとした場合、ヒンジ部(5)に残留する痕跡を完全に取り除くことは難しく、偽変造が行われたデータページ部(1)において再利用を鑑定する要素になる。
【0035】
また、識別層(6)にインキを用いる場合、印刷部(12)を含めて複数色のインキで模様を形成することで、熱溶着後のインキの模様がその冊子固有のものに変化する。剥がしたヒンジ部(5)を再度利用しようとした場合、ヒンジ部(5)に残留する痕跡を完全に取り除き、元の接合部(8)のデザインと完全に合致させることは困難なため、偽変造の防止につながる。
【0036】
(データページ部)
データページ部(1)は、複数の熱可塑性樹脂シートを積層した熱可塑性樹脂層から成る構成であり、本実施形態では、二種類の熱可塑性樹脂シートにより熱可塑性樹脂層を形成した例としているが、更に複数の熱可塑性樹脂シートで形成してもよい。熱可塑性樹脂シートの例としては、ICシート、レーザー発色シート、保護シート、コアシート、印刷シートやホログラムシート(光学変化素子層)等の公知の熱可塑性樹脂シートを使用することができる。更にデータページ部(1)は、データページ部(1)の中層又は下層に配置された第一の材料から成るヒンジ部(5)を有し、当該ヒンジ部(5)は、データページ部(1)から突出して成る。
【0037】
データページ部(1)を形成する熱可塑性樹脂シートの材料としては、ポリカーボネート(PC)又はポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリビニル塩化物(PVC)、アクリロニトリル-ブタジェン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等の公知の熱可塑性樹脂シートを使用することができる。データページ部(1)を形成する熱可塑性樹脂シートは、多層構造でもよく、両面が同系列の材質、好ましくは両面とも同じ材質であり、同系列の材料を2層、3層など複数層で形成してもよい。なお、データページ部(1)は、前述した構成の材料から成るシートを複数積層し、公知の熱プレス方式により一体成型されている。
【0038】
データページ部(1)は、ヒンジ部(5)に糸等を通すことによって、冊子綴じ部(7)により見返しシート(2)を貼付した表紙シート(3)及び中身シート(4)と綴じられる。これにより、ヒンジ部(5)に隣接するシートは、中身シート(4)の最終シートもしくは見返しシート(2)のいずれかである。なお、本実施形態では、ヒンジ部(5)に隣接するシートを見返しシート(2)として説明する。
【0039】
(表紙シート)
表紙シート(3)は、見返しシート(2)に貼付され、冊子の最外部を形成する。材料としては紙基材や樹脂基材など、公知の基材を用いることができるが、冊子の形態を保持するため、可撓性を有することが好ましい。
【0040】
(中身シート・見返しシート)
中身シート(4)及び見返しシート(2)に用いる基材の例として、一般紙、コート紙、和紙など公知の紙基材を用いることができる。識別層(6)との密着性を高めるため、一定の凹凸構造を有することが好ましい。
【0041】
(冊子の製造方法)
ヒンジ部(5)と識別層(6)の熱溶着は、データページ部(1)の丁合精度を高める上でも、冊子綴じ部(7)において中身シート(4)及び表紙シート(3)が綴じられる前が好ましい。シートへの識別層(6)の付与は、冊子の製造工程におけるヒンジ部(5)との熱溶着の前であれば、どの工程において付与されても構わない。
【実施例
【0042】
本発明の実施例について、前述の実施の形態と同様に図を用いて説明をする。なお、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
本実施例1は、製造例として図1(a)及び図4(a)に示すデータページ部(1)のヒンジ部(5)を、冊子綴じ部(7)において中身シート(4)及び見返しシート(2)と一体化し、見返しシート(2)の上層に設けられた識別層(6)が接合部(8)においてヒンジ部(5)と熱溶着された、IC内蔵冊子として形成したものである。
【0044】
(第一の材料)
第一の材料であるヒンジ部(5)には、メッシュシート(厚さ90μm、品番100S:日本特殊織物株式会社製)を使用した。メッシュシートは、CO2レーザー加工機を用いて矩形状に切断し、寸法を300mm(縦)×50mm(横)とした。
【0045】
(ヒンジ部を有するデータページ部)
データページ部(1)には、熱可塑性樹脂シートとして透明ポリカーボネート(PC:商品名「WC-020」、厚さ0.10mm、寸法100mm(縦)×300mm(横):三菱ガス化学社製)とIC内蔵ポリカーボネート(厚さ0.40mm、寸法100mm(縦)×300mm(横))を使用した。データページ部(1)の作製は、熱可塑性樹脂シートとメッシュシートを積層し、SD型成形プレス機(株式会社ダンベル社製「SDOP-1042-2HC-AT-WC1V-PG3」)を使用して、160℃から185℃まで、300秒、2.5MPaの機械設定で熱圧着を行い、熱溶着後50℃まで冷却して作製した。実施例1では、データページ部(1)の熱可塑性樹脂層の端部からを10mm突出させ、熱溶着を行った。
【0046】
(第二の材料)
第二の材料である識別層(6)には、セキュリティテープ(商品名:LB―SLTP50、寸法15mm(縦)×300mm(横):サンワサプライ社製)を使用し、見返しシート(2)(商品名:しらおい、寸法200mm(縦)×300mm(横):しらおい社製)上に接着した。セキュリティテープの接着位置は、見返しシート(2)のシート長辺の左端部から100mmの位置にセキュリティテープ長辺の左端部が重なり、かつ、シートとテープの各長辺同士と短辺同士が平行になるように配置した。
【0047】
(仮止めと中身シート丁合)
データページ部(1)から突出したヒンジ部(5)が識別層(6)であるセキュリティテープ上に7mmの幅で積層する形で配置した。積層後、超音波溶着機を使用してヒンジ部(5)を接合部(8)に仮止めした。
【0048】
(ヒンジ部と識別層の熱溶着)
仮止めしたヒンジ部(5)の上からアイロンを使用してヒンジ部(5)と識別層(6)を熱溶着した。アイロンの温度は100℃に設定し、未接合部(9)にアイロンが触れないように注意し熱溶着を行った。
【0049】
(中身シートとの丁合)
データページ部(1)の上に中身シート(4)を形成するシート(商品名:しらおい、寸法200mm(縦)×300mm(横):しらおい社製)を12枚積層し、見返しシート(2)と丁合を行った。
【0050】
(冊子綴じ)
積層した見返しシート(2)、データページ部(1)、中身シート(4)を冊子綴じ部(7)においてミシンを用いて縫合、一体化した。
【0051】
一体化した見返しシート(2)の裏に接着剤を使用して表紙シート(3)(商品名:クロスカーフ、寸法200mm(縦)×300mm(横):東洋クロス株式会社製)を張り付けた。その後、冊子綴じ部(7)を背にして山折りし、300mm(縦)×100mm(横)の二丁掛け冊子形状とした。
【0052】
断裁機を使用して、二丁掛け冊子を寸法125mm(縦)×88mm(横)に断裁し、IC内蔵の冊子(A1)を作製した。
【0053】
(実施例2)
実施例2は、図3(c)に示すようにデータページ部(1)のヒンジ端部(11)にCO2レーザー加工装置を用いて、漢字の「日本」を半割した形状を付与した例である。なお、実施例1と同様な箇所については省略し、異なる箇所のみを説明する。
【0054】
第一の材料であるヒンジ部(5)には、メッシュシート(厚さ90μm、品番100S:日本特殊織物株式会社製)を使用した。ヒンジ端部(11)に付与する形状は、Adobe Photoshop(Adobe社製、バージョン : 12.1)を用いて画像ファイルを作成した。レーザー加工機によって作成した画像ファイルの形状通りに切断し、寸法を300mm(縦)×50mm(横)とし、ヒンジ部(5)として作製した。さらに、実施例1と同様な方法によりIC内蔵の冊子(A1)を作製した。
【0055】
(評価)
実施例1及び実施例2のIC内蔵の冊子(A1)の識別層(6)からヒンジ部(5)の剥離についてピンセットを用いて行った。双方のIC内蔵の冊子(A1)とも、識別層(6)として用いたセキュリティテープが、熱プレスによってヒンジ部(5)のメッシュ間隙に溶け込んでいる様子が確認された。また、ヒンジ端部(11)をレーザー加工することによって、メッシュの交点が溶融し、一体化している様子が確認された。更に指やピンセットを用いてヒンジ端部(11)を引っ張ったが、ほつれは発生しなかった。
【0056】
ピンセットを用いた剥離評価において、図4(b)に示すように、実施例1では、識別層(6)の接合部(8)にメッシュの跡が残り、ヒンジ部(5)の接合部(8)の間隙には溶けた識別層(6)のセキュリティテープが残存していた。また、実施例2では、ヒンジ端部(11)に付与した形状のうち構造的に脆弱な部分が識別層(6)から剥離せずに残留し、ヒンジ端部(11)の構造が破壊された。これにより、識別層(6)の接合部(8)上にはヒンジ端部(11)の一部が残り、ヒンジ部(5)には剥離の痕跡が残った。このようにヒンジ端部(11)の構造が不可逆的に破壊されることによって、ヒンジ部(5)の再利用が不可能になるとともに、剥離の際に痕跡が残るため、データページ部(1)を冊子から取り外して偽造したことが容易に判明し、偽造防止効果が非常に高いことが確認できた。
【符号の説明】
【0057】
1 データページ部
2 見返しシート
3 表紙シート
4 中身シート
5 ヒンジ部
6 識別層
7 冊子綴じ部
8 接合部
9 未接合部
10 窓空き部
11 ヒンジ端部
12 印刷部
13 切断加工
14 レーザー光
15 溶着
A1 冊子
図1
図2
図3
図4