(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】可変情報印刷物及びその作成方法
(51)【国際特許分類】
B42D 25/30 20140101AFI20220915BHJP
B42D 25/40 20140101ALI20220915BHJP
【FI】
B42D25/30
B42D25/40 100
(21)【出願番号】P 2019136524
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】中野 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 一矢
(72)【発明者】
【氏名】浅井 義則
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-67548(JP,A)
【文献】特開2006-123270(JP,A)
【文献】特開平9-131961(JP,A)
【文献】特開2004-174829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/00-25/485
B41M 1/00- 3/18
B41M 7/00- 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面の少なくとも一部の領域に形成された背景模様と、
前記背景模様に重複して、同一内容のものが連続的に形成された複数の第1の可変情報と、
前記背景模様に重複して又は重複することなく形成された第2の可変情報と、
を備えることを特徴とする可変情報印刷物。
【請求項2】
前記第1の可変情報は、前記背景模様の規則性に従って連続的に形成され、あるいは前記背景模様の一部として視認されるように連続的に形成され、
前記第2の可変情報は、前記背景模様の規則性とは無関係に、かつ、前記背景模様の一部として視認されないように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の可変情報印刷物。
【請求項3】
前記第1の可変情報は、前記背景模様に含まれる画線又は網点に沿って連続的に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可変情報印刷物。
【請求項4】
前記第1の可変情報は、前記背景模様の階調の変化に応じた濃度で前記第1の可変情報が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可変情報印刷物。
【請求項5】
前記第1の可変情報は、前記第2の可変情報の内容の少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の可変情報印刷物。
【請求項6】
前記第1の可変情報は、前記背景模様に含まれる少なくともいずれか一つの色と同一色を有し、前記第2の可変情報は前記背景模様と異なる色を有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の可変情報印刷物。
【請求項7】
前記背景模様は、画線、網点又は砂目のいずれかで構成された地紋模様、あるいは階調が連続的に変化する連続階調模様の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の可変情報印刷物。
【請求項8】
前記第1の可変情報は、通常光が照射された状態において肉眼で可読の大きさで形成されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載の可変情報印刷物。
【請求項9】
前記基材の表面には、前記背景模様及び前記第1の可変情報が形成され、かつ、前記第2の可変情報が形成されていない領域が存在することを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載の可変情報印刷物。
【請求項10】
前記背景模様に含まれる画線と前記第1の可変情報との間の少なくともいずれか一箇所に、隙間が存在することを特徴とする請求項1から9までのいずれか一項に記載の可変情報印刷物。
【請求項11】
前記第2の可変情報は個人情報であることを特徴とする請求項1から10までのいずれか一項に記載の可変情報印刷物。
【請求項12】
基材の表面の少なくとも一部の領域に形成された背景模様と、前記背景模様に重複して、同一内容のものが連続的に形成された複数の第1の可変情報と、前記背景模様に重複して又は重複することなく形成された第2の可変情報とを備える可変情報印刷物を作成する際に、前記背景模様と、前記第1の可変情報と、前記第2の可変情報とを同一工程で印刷することを特徴とする可変情報印刷物の作成方法。
【請求項13】
前記第1の可変情報は、前記背景模様の規則性に従って連続的に形成され、あるいは前記背景模様の一部として視認されるように連続的に形成され、
前記第2の可変情報は、前記背景模様の規則性とは無関係に、かつ、前記背景模様の一部として視認されないように形成されることを特徴とする請求項12に記載の可変情報印刷物の作成方法。
【請求項14】
前記第1の可変情報は、前記背景模様に含まれる画線又は網点に沿って連続的に配列されることを特徴とする請求項12又は13に記載の可変情報印刷物の作成方法。
【請求項15】
前記第1の可変情報は、前記第2の可変情報の内容の少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項12から14までのいずれか一項に記載の可変情報印刷物の作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変情報印刷物及びその作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景模様が印刷され、その表面上に印刷物ごとに異なる可変情報として、例えば個人情報等が印刷された印刷物が用いられている。このような可変情報印刷物には、例えばパスポート、免許証、住民票、戸籍謄本等の各種証明書、あるいは商品券、証券等の金券、クレジットカード等が含まれる。
【0003】
このような可変情報印刷物を、従来は基材上に、地紋模様等の背景模様を印刷して共通に使用する証明書台紙(以下「ブランク印刷物」という。)を作成して保管しておき、その表面上に加刷により罫線等の固定情報と、個人情報等の可変情報とを印刷することで作成していた。
【0004】
しかしながら、このような可変情報印刷物は、背景模様によって偽造防止機能が付与されている。よって、保管されていたブランク印刷物を盗み、その表面上に可変情報を印刷することで容易に偽造することができるため、十分な偽造防止効果が得られていなかった。さらに、ブランク印刷物が盗難されないように保管管理することが困難であり、コストの増加も招いていた。
【0005】
また、基材の表面に1層目の印刷層として背景模様を形成した後、その表面上に2層目の印刷層として固定情報と可変情報とを形成していた。このため、2層目の印刷層に含まれる可変情報を除去して1層目の背景模様は残した状態とし、他の可変情報を印刷することで偽造することが比較的容易であった。
【0006】
従来の証明書の印刷方法として、例えば特開2000-037976号に記載されたものがあった。
【0007】
この特許文献1には、基材の一部に、角度で色彩が変わる色彩可変印刷層が設けられ、その領域に可変情報が印刷された印刷媒体が記載されている。この印刷媒体は、媒体基材の一部領域である真偽品判別領域上に色彩可変印刷層が形成され、この色彩可変印刷層に可変情報が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された印刷媒体においても、可変情報に対する偽造防止効果を色彩可変印刷層にのみ依存しており、色彩可変印刷層が形成されていない領域では偽造防止効果を得ることができず、対策として十分ではないという問題があった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、可変情報印刷物の偽造防止を、コストの低減とともにより有効に実現することが可能な可変情報印刷物及びその作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の可変情報印刷物は、基材の表面の少なくとも一部の領域に形成された背景模様と、背景模様に重複して、同一内容のものが連続的に形成された複数の第1の可変情報と、背景模様に重複して又は重複することなく形成された第2の可変情報とを備えることを特徴とする。
【0012】
第1の可変情報は、背景模様の規則性に従って連続的に形成され、あるいは背景模様の一部として視認されるように連続的に形成され、第2の可変情報は、背景模様の規則性とは無関係に、かつ、背景模様の一部として視認されないように形成されたものであってもよい。
【0013】
第1の可変情報は、背景模様に含まれる画線又は網点に沿って連続的に配列されていてもよい。
【0014】
第1の可変情報は、背景模様の階調の変化に応じた濃度で第1の可変情報が形成されていてもよい。
【0015】
第1の可変情報は、第2の可変情報の内容の少なくとも一部を含むものであってもよい。
【0016】
第1の可変情報は、背景模様に含まれる少なくともいずれか一つの色と同一色を有し、第2の可変情報は背景模様と異なる色を有するものであってもよい。
【0017】
背景模様は、画線、網点又は砂目のいずれかで構成された地紋模様、あるいは階調が連続的に変化する連続階調模様の少なくともいずれか一つを含むものであってもよい。
【0018】
第1の可変情報は、通常光が照射された状態において肉眼で可読の大きさで形成されているものであってもよい。
【0019】
基材の表面には、背景模様及び第1の可変情報が形成され、かつ、第2の可変情報が形成されていない領域が存在してもよい。
【0020】
背景模様に含まれる画線と第1の可変情報との間の少なくともいずれか一箇所に、隙間が存在してもよい。
【0021】
第2の可変情報は個人情報であってもよい。
【0022】
本発明の可変情報印刷物の作成方法は、基材の表面の少なくとも一部の領域に形成された背景模様と、背景模様に重複して、同一内容のものが連続的に形成された複数の第1の可変情報と、背景模様に重複して又は重複することなく形成された第2の可変情報とを備える可変情報印刷物を作成する際に、背景模様と、第1の可変情報と、第2の可変情報とを同一工程で印刷することを特徴とする。
【0023】
第1の可変情報は、背景模様の規則性に従って連続的に形成され、あるいは背景模様の一部として視認されるように連続的に形成され、第2の可変情報は、背景模様の規則性とは無関係に、かつ、背景模様の一部として視認されないように形成されたものであってもよい。
【0024】
第1の可変情報は、背景模様に含まれる画線又は網点に沿って連続的に配列されたものであってもよい。
【0025】
第1の可変情報は、第2の可変情報の内容の少なくとも一部を含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の可変情報印刷物及びその作成方法によれば、可変情報印刷物の偽造防止を、コストの低減とともにより有効に実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】比較例による可変情報印刷物の構成及びその作成方法を示す説明図。
【
図2】比較例による可変情報印刷物が偽造される場合の手順を示す説明図。
【
図3】比較例による真正な可変情報印刷物に偽造を加える場合の印刷層の構成を示した縦断面図。
【
図4】本発明の実施の形態1による可変情報印刷物の構成及びその作成方法を示す説明図。
【
図5】同実施の形態1による可変情報印刷物に対する偽造が困難であることを示す説明図。
【
図6】同実施の形態1による可変情報印刷物の一部を拡大した部分拡大図。
【
図7】同実施の形態1による真正な可変情報印刷物に偽造を加える場合の印刷層の構成を示した縦断面図。
【
図8】本発明の実施の形態2による可変情報印刷物の構成及びその作成方法を示す説明図。
【
図9】同実施の形態2による可変情報印刷物に対する偽造が困難であることを示す説明図。
【
図10】同実施の形態2による可変情報印刷物の一部を拡大した部分拡大図。
【
図11】本発明の実施の形態3による可変情報印刷物の構成及びその作成方法を示す説明図。
【
図12】同実施の形態3による可変情報印刷物に対する偽造が困難であることを示すその一部を拡大した部分拡大図。
【
図13】本発明の実施の形態4による可変情報印刷物の構成を示すとともに、偽造困難であることを示すその一部を拡大した部分拡大図。
【
図14】同実施の形態5による可変情報印刷物における背景模様と可変情報との間の接点の一例を示す説明図。
【
図15】同実施の形態5による可変情報印刷物における背景模様と可変情報との間の接点の他の例を示す説明図。
【
図16】本発明の実施の形態6による可変情報印刷物の構成を示すとともに、紫外線を照射した場合の視認状態を示す説明図。
【
図17】同実施の形態6による可変情報印刷物の構成を示すとともに、IRカメラで撮影した場合の視認状態を示す説明図。
【
図18】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物において、通常光が照射された状態で肉眼により、可変情報に可読性、判読性がない場合を示した説明図。
【
図19】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物において、通常光が照射された状態で肉眼により、可変情報に可読性、判読性がある場合を示した説明図。
【
図20】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報に使用可能な文字群の一例を示した説明図。
【
図21】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報に使用可能な文字群のイタリック体を示した説明図。
【
図22】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報に使用可能な文字群に連続性がある場合と非連続性がある場合とを示した説明図。
【
図23】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報に使用可能な文字群に連続性がある場合と非連続性がある場合とを示した説明図。
【
図24】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報に使用可能な文字群に連続性がある場合と非連続性がある場合とを示した説明図。
【
図25】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報に使用可能な文字群に連続性がある場合と非連続性がある場合とを示した説明図。
【
図26】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報に使用可能な文字群に連続性がある場合と非連続性がある場合とを示した説明図。
【
図27】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報に使用可能な文字群に連続性がある場合と非連続性がある場合とを示した説明図。
【
図28】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報に使用可能な文字群に規則性がある場合と不規則性がある場合とを示した説明図。
【
図29】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報を背景模様に「なじませる」ための手法を示した説明図。
【
図30】上記実施の形態1~6による可変情報印刷物における背景模様の一例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態による可変情報印刷物及びその作成方法について、図面を用いて説明する。
【0029】
まず、比較例としての可変情報印刷物の構成について説明する。
【0030】
図1(a)に示されたように、基材101の表面に、背景模様102と、各印刷物に共通する固定された内容を有する罫線等の固定情報103と、個人情報等を含み各印刷物ごとに異なる内容を有する情報として、例えば身分証明書番号等の可変情報104a、個人名等の可変情報104bとが印刷により形成されている。
【0031】
このような比較例による可変情報印刷物は、
図1(b)に示されたように、基材101の表面にあらかじめ背景模様102が形成されたブランク印刷物が用意され保管される。
【0032】
そして、
図1(c)に示されたような固定情報103と可変情報104a、104bとが、ブランク印刷物の表面にいわゆる加刷により印刷されて
図1(a)に示されたような可変情報印刷物が作成される。
【0033】
このような比較例による可変情報印刷物が偽造される場合の手順について、
図2を用いて説明する。
【0034】
まず、
図2(a)に示されたように、基材101の表面に背景模様102が形成された後、固定情報103、可変情報104a、104bが形成された真正な可変情報印刷物が存在すると仮定する。
【0035】
このような可変情報印刷物に対して、
図2(b)に示されたように可変情報104a、104bのみを消去し、真正な可変情報104a、104bとは異なる可変情報204a、204bが
図2(c)に示されたように印刷される。
【0036】
このような偽造の手順について、
図3を用いてより詳細に説明する。
図3(a)に示されたように、基材101の表面に1層目の印刷層として背景模様102が形成される。この後、1層目の印刷層としての背景模様102が形成された基材101の表面上に、2層目の印刷層として固定情報103、可変情報104aが印刷される。
【0037】
図3(b)に示されたように、1層目の印刷層としての背景模様102、2層目の印刷層としての固定情報103が残った状態で、2層目の印刷層としての可変情報104aのみが除去される。
【0038】
図3(c)に示されたように、1層目の印刷層としての背景模様102、2層目の印刷層としての固定情報103が残された基材101の表面上に、2層目の印刷層として、真正ではない可変情報204aが形成されることにより偽造される。
【0039】
(実施の形態1)
このように、比較例による可変情報印刷物では、1層目の印刷層として背景模様102があらかじめ印刷された後に2層目の印刷層として可変情報104aが印刷されているため、2層目の印刷層としての可変情報104aのみを除去し、その表面上に真正でない可変情報204aを2層目の印刷層として印刷することにより、容易に偽造することが可能であった。
【0040】
これに対し、本発明の実施の形態1による可変情報印刷物は、
図4(b)に示されたように何も印刷されていない基材1の表面に、
図4(c)に示されたように背景模様2、固定情報3、可変情報4a、4b、更には背景模様2に含まれる可変情報2-4a、2-4bを含む全ての情報が同一工程で印刷されて、
図4(a)に示されたような可変情報印刷物が作成される。
【0041】
背景模様2は基材1の表面の少なくとも一部の領域に形成されており、可変情報2-4a、2-4bは、背景模様2に重複して同一の内容のものが複数連続的に形成されている。本発明の実施の形態1ではより詳細には、背景模様2の規則性に従って、例えば背景模様2に含まれる画線に沿って連続的に配置されている。可変情報4a、4bは、背景模様2に重複して又は重複することなく形成されている。本発明の実施の形態1ではより詳細には、背景模様2の規則性とは無関係に、かつ、背景模様2の一部として視認されないように配置されている。可変情報2-4a、2-4bは、可変情報4a、4bの内容の少なくとも一部を含んでいる。また可変情報2-4a、2-4bは、背景模様2に含まれる少なくともいずれか一つの色と同一色を有し、可変情報4a、4bは背景模様2と異なる色を有する。
【0042】
このような本発明の実施の形態1による可変情報印刷物に対して偽造しようとした場合について考察する。
【0043】
まず、
図5(a)に示されたように、背景模様2、固定情報3、可変情報4a、4b、可変情報2-4a、2-4bが形成された可変情報印刷物に対して偽造しようとする場合は、偽造者は
図5(b)に示されたように背景模様2や固定情報3を残し、真正な可変情報4a、4bを除去しようとする。あるいは、
図5(c)に示されたように、背景模様2を残し、真正な可変情報4a、4b、固定情報3を除去しようとする。
【0044】
しかしながら、この本発明の実施の形態1による可変情報印刷物に形成された背景模様2には、
図5(c)に示されたように、可変情報2-4a、2-4bが含まれている。
【0045】
このため、偽造する場合には、背景模様2に含まれる、例えば身分証明書番号等の可変情報2-4a、個人名等の可変情報2-4bの全てを除去し、偽造しようとする可変情報に変更しなければならない。
【0046】
この結果、偽造者は偽造が困難であることを発見し偽造の意欲がくじかれることとなり、高い偽造防止効果が得られる。
【0047】
より詳細には、本発明の実施の形態1による可変情報印刷物における背景模様2には、
図6(a)に示されたように、地紋模様等に含まれる画線に沿って、例えば身分証明書番号等の可変情報2-4aと個人名等の可変情報2-4bとが配置されている。このため、背景模様2の画線に沿って配置された可変情報2-4a、2-4bを真正でない他の可変情報に置き換える必要が生じることとなり、より偽造が困難なものとなる。
【0048】
また、従来と異なりブランク印刷物を用いないため、盗難にあわないように管理する必要がなく管理コストを削減することができる。
【0049】
本発明の実施の形態1による真正な可変情報印刷物に対して偽造を行う際の手順について、
図7を用いて説明する。
図7(a)に示されたように、基材1の表面に、1層目の印刷層として、背景模様2、固定情報3、可変情報4aが同時に印刷されている。
【0050】
この状態で、
図7(b)に示されたように、偽造者は背景模様2、固定情報3を残した状態で、可変情報4aを除去しようとする。しかしながら、本発明の実施の形態1では背景模様2、固定情報3、可変情報4aが同じ1層目の印刷層として形成されている。よって、背景模様2、固定情報3を残して可変情報4aのみを除去することは困難である。特に、可変情報4aと背景模様2とが接触している部分は、領域5として示されたように、可変情報4aのみを除去しようとしてインキが残存する場合がある。また、本発明の実施の形態1による可変情報印刷物では、上述したように、同じ1層目の印刷層として、背景模様2に沿って可変情報2-4a、2-4bが配置されており、背景模様2を残した状態で、可変情報4aのみならず可変情報2-4a、2-4bまでを除去して他の可変情報に書き換えることは極めて困難である。したがって、本発明の実施の形態1による可変情報印刷物によれば、高い偽造防止効果が得られる。
【0051】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2による可変情報印刷物について、
図8を用いて説明する。
【0052】
本発明の実施の形態2による可変情報印刷物は、
図8(b)に示されたように何も印刷されていない基材1の表面に、
図8(c)に示されたように背景模様2、固定情報3、可変情報4a、4b、可変情報2-4aを含む全ての情報が同一工程で印刷されて、
図8(a)に示されたような可変情報印刷物が作成される。ここで、可変情報2-4aは、背景模様2の規則性に従ってはいない。より具体的には、可変情報2-4aは背景模様2に含まれる画線に沿って配列されていない。しかしながら、可変情報2-4aは背景模様2の一部として視認されるように一定方向に連続的に配置されている。可変情報4a、4bは、背景模様2の規則性とは無関係に、かつ、背景模様2の一部として視認されないように配置されている。
【0053】
このような構成を備える本発明の実施の形態2による可変情報印刷物に対して、偽造しようとした場合について考察する。
【0054】
まず、
図9(a)に示されたように、背景模様2、固定情報3、可変情報4a、4b、可変情報2-4aが形成された可変情報印刷物に対して偽造しようとする場合は、偽造者は
図9(b)に示されたように、背景模様2、固定情報3を残して可変情報4a、4bを除去しようとする。あるいは、
図9(c)に示されたように、背景模様2を残して可変情報4a、4b、固定情報3を除去しようとする。
【0055】
しかしながら、この本発明の実施の形態2による可変情報印刷物に形成された背景模様2には、
図10(b)に拡大して示されたように、背景模様2に含まれるように形成された可変情報2-4aが含まれている。
【0056】
このため、偽造する場合には、可変情報4a、4bのみならず、背景模様2に含まれる例えば身分証明書番号等の可変情報2-4aまでを含めて、偽造しようとする可変情報に合わせて変更しなければならない。
【0057】
この結果、偽造者は偽造が困難であることを発見し偽造の意欲がくじかれることとなり、偽造が防止される。
【0058】
上記本発明の実施の形態1による可変情報印刷物は、背景模様2に含まれる可変情報2-4a、2-4bが、背景模様2に含まれ意匠性を有する地紋模様の曲画線となじむように沿って配置されており、偽造者にとってこの可変情報2-4a、2-4bの存在に気が付かない可能性がある。
【0059】
よって、背景模様2に含まれる可変情報2-4a、2-4bに気が付かずに可変情報4a、4bのみを置き換えて偽造した場合には、真正な可変情報印刷物と同一の可変情報2-4a、2-4bが残存し、偽造した可変情報4a、4bとの間で明確な相違が生じて容易に真偽判別が可能となる。
【0060】
一方、本発明の実施の形態2による可変情報印刷物では、背景模様2に含まれる可変情報2-4aが、背景模様2の地紋模様等に含まれる曲画線に沿って配置されておらず、曲画線とはなじむことなく意図的に独立した存在で形成されている。このため、偽造者は可変情報2-4aの存在に容易に気が付いて、偽造の意欲が明確にくじかれて高い偽造防止効果が得られる。
【0061】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3による可変情報印刷物は、
図11(b)に示されたように何も印刷されていない基材1の表面に、
図11(c)に示されたように背景模様2A及び2B、固定情報3、可変情報4a、4b、更には背景模様2にそれぞれ含まれる可変情報2-4a、2-4bを含む全ての情報が同一工程で印刷され形成されて、
図11(a)に示されたような可変情報印刷物が作成される。ここで、本発明の実施の形態3による可変情報印刷物では、背景模様として、相互に異なる背景模様2A及び2Bが形成されている。
【0062】
また、可変情報2-4aは、背景模様2Aの規則性に従って、画線に沿うように連続的に配置されており、可変情報2-4bは、背景模様2Bの規則性に従ってはいないが、背景模様2Bの一部として視認されるように一定方向に連続的に配列されている。可変情報4a、4bは、背景模様2A、2Bの規則性とは無関係に、背景模様2A、2Bの一部として視認されないように配置されている。
【0063】
本発明の実施の形態3による可変情報印刷物に対して、偽造しようとした場合について考察する。
【0064】
図12(a)に示された、背景模様2、固定情報3、可変情報4a、4b、可変情報2-4a、2-4bが形成された可変情報印刷物に対して偽造しようとする場合は、偽造者は可変情報4a、4bのみを除去して他の情報は残そうとする。
【0065】
しかしながら、この本発明の実施の形態3による可変情報印刷物に形成された背景模様2には、
図12(b)において拡大して示されたように、可変情報2-4a、2-4bが含まれている。さらに、上述したように、背景模様として相互に異なる2種類の背景模様2A及び2Bが形成され、それぞれに可変情報2-4a、2-4bが形成されている。
【0066】
このため、偽造する場合には、可変情報4a、4bのみならず、2種類の背景模様2A、2Bにそれぞれ含まれる可変情報2-4a、2-4bまでを含めて、偽造しようとする可変情報に合わせて変更しなければならない。この結果、偽造者は偽造が極めて困難であることを発見し偽造の意欲がくじかれることとなり、高い偽造防止効果が得られる。
【0067】
さらに本発明の実施の形態3による可変情報印刷物では、背景模様2Aに含まれる可変情報2-4aが、背景模様2Aに含まれ意匠性を有する地紋模様の曲画線となじむように沿って配置されている。しかし、背景模様2Bに含まれる可変情報2-4bは、背景模様2Bに含まれ意匠性を有する地紋模様の曲画線に沿って配置されておらず、なじむことなく意図的に独立した存在で形成されている。このように、異なる態様で形成された可変情報2-4a、2-4bが異なる背景模様2A、2Bにおいてそれぞれ存在しており、偽造の意欲をより効果的にくじくことができる。
【0068】
また、
図12(a)で示されたように、本発明の実施の形態3による可変情報印刷物には、背景模様2及び可変情報2-4a、2―4bが形成されているが、可変情報4a、4bが形成されていない空き領域6a、6bが存在する。この空き領域6a、6bが存在することで、背景模様2A、2Bに可変情報2-4a、2-4bがそれぞれ配置されていることが明確に視認される。これにより、偽造の意欲を明確にくじくことができる。
【0069】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4による可変情報印刷物について、
図13を用いて説明する。
【0070】
本発明の実施の形態4による可変情報印刷物は、例えばパスポート等の具体的な製品形態の構成を有し、
図13(a)に示されたように、基材1の全面に背景模様2、空き領域6a、6b、6cを除く領域に固定情報3、可変情報4a、4b、4cが同一工程で印刷されている。例えば可変情報4aは身分証明書番号等を表し、可変情報4bは個人名等を表し、可変情報4cは顔写真を表す。可変情報4cと背景模様2との間には、境界部分7が存在する。境界部分7の外周には可変情報2-4aが形成されている。
【0071】
ここで、可変情報2-4aは、背景模様2の規則性に従ってはいないが、境界部分7に沿って配置されている。可変情報2-4bは、背景模様2の規則性に従って画線に沿うように連続的に配列されている。可変情報4a、4bは、背景模様2の規則性とは無関係に、背景模様の一部として視認されないように配置されている。
【0072】
この境界部分7は、可変情報4cの楕円形の周囲と背景模様2との間に設けられ、この境界部分7にぼかしが形成されている。このようなぼかしが可変情報4cと背景模様2との間に存在することにより、可変情報4cと背景模様2との境界線、あるいは可変情報4aと背景模様2との境界線が不明確となる。これにより、可変情報4cを楕円形に切り取って他の顔写真に変更することが困難になる。
【0073】
また、可変情報2-4a、2-4bが、
図13(b)に示されたように、背景模様2に含まれる曲画線に沿ってなじむように配置されている。
【0074】
このような構成を備えたことにより、本発明の実施の形態4による可変情報印刷物によれば、より有効に偽造を防止することができる。
【0075】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5による可変情報印刷物の構成について、
図14、
図15を用いて説明する。
図14(a)には、本発明の実施の形態5による可変情報印刷物における背景模様と可変情報との間の接点の一例が示されており、
図14(b)にその接点Aが部分的に拡大されて示されている。この例では、接点Aにおいて背景模様2と可変情報4aとが接続されるように形成されている。ここで、可変情報2-4aは、背景模様2の規則性に従ってはいないが、背景模様2の一部として視認されるように連続的に配置されている。
【0076】
図15(a)には、本発明の実施の形態5による可変情報印刷物における背景模様と可変情報との間の接点の他の例が示されており、
図15(b)にその接点Bが部分的に拡大されて示されている。この例では、背景模様2と可変情報4aとの間に隙間が存在し分離されるように形成されている。
【0077】
この
図14に示された背景模様2と可変情報4aとが接続された構成と、
図15に示された背景模様2と可変情報4aとが分離された構成とは、視認性及び意匠性において相違する。
図15に示された構成では、接点Bにおいて隙間が存在することにより、背景模様2に対する可変情報4aの差別化が図られて視認性が向上する。
【0078】
また、背景模様2と可変情報4aとの間に隙間が存在する場合には、例えば「3」という可変情報4aが存在する領域のみを消去し、例えば「4」、「5」等の他の文字に変更しようとすると変更後の文字と背景模様2との間の相対的位置関係が変化し、背景模様2の一部を延在させたり消去したりする必要が生じる。このように、本来の隙間の間隔を維持しながら他の文字に変更することは非常に困難である。よって、
図15に示されたように背景模様2と可変情報4aとの間に隙間を設けることによって、より高い偽造防止効果を得ることができる。この隙間は、背景模様2と可変情報4aとの間の全てに形成してもよいが、少なくともいずれか一箇所に形成されていてもよい。背景模様2と可変情報4aとの間の限られた箇所にのみ隙間が存在する場合には、偽造者が隙間の存在に気が付き難く偽造が困難になる、
【0079】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6による可変情報印刷物について、
図16、
図17を用いて説明する。本発明の実施の形態6による可変情報印刷物は、例えば自治体の証明書等の具体的な製品形態としての構成を備える。
図16、
図17に示された可変情報印刷物は同一の構成を備え、
図16では紫外線を照射した場合の視認状態を示し、
図17では赤外線を用いるIRカメラにより撮影した場合の視認状態を示す。
【0080】
図16(a)、
図17(a)に示されたように、基材1の表面においてあらかじめ可変情報4a、4bが形成されない空いた領域に、偽造防止技術の一例として、例えば赤外線吸収材料である銀インキで自治体のマーク9が形成され、通常光が照射された状態では肉眼で視認されないが、紫外線を照射されると発光する無色蛍光インキ等の機能性材料により自治体のマーク9に重複するように「証明」という文字が形成され、さらに可変情報が形成される中央領域に無色蛍光インキ等の機能性材料により自治体のマーク10が形成されている。
【0081】
このような基材1の表面に、上記本発明の実施の形態1~5と同様に、
図16(b)、
図17(b)に示されたように背景模様2、背景模様2内になじむように形成された可変情報2-4a、2-4b、固定情報3、可変情報4a、4bが同一工程で印刷されている。なお可変情報4a、4bは、赤外線吸収材料として例えばカーボンブラックを含む材料により形成されている。
【0082】
この可変情報印刷物の表面上に紫外線照射具11を用いて紫外線を照射すると、
図16(c)に示されたように、自治体のマーク9に重複して形成された「証明」という文字と、自治体のマーク10が発光することにより、真偽判別が可能となる。なお、他の背景模様2、可変情報2-4a、2-4b、固定情報3、可変情報4a、4bは、無色蛍光インキ等の機能性材料とは異なる通常のインキで印刷されており、紫外線を照射されても発光しない。また自治体のマーク9も銀インキで形成されているため、紫外線により発光しない。
【0083】
一方、この可変情報印刷物の表面上にIRカメラ12を用いて赤外線を照射して撮影すると、
図17(c)に示されたように赤外線吸収材料で形成された可変情報4a、4b及び自治体のマーク9が黒く視認される。
【0084】
このような自治体の証明書等に本発明を適用した本発明の実施の形態6によれば、自治体のマーク9、10による偽造防止効果のみならず、背景模様2に含まれるように形成された可変情報2-4a、2-4bが形成されていることにより、高い偽造防止効果が得られる。
【0085】
上記本発明の実施の形態1~6による可変情報印刷物において、背景模様2内に形成された可変情報には、可読性、判読性がある場合とない場合とが存在する。
【0086】
図18に、可変情報に可読性、判読性がない場合の一例を示す。
図18(a)に示されたように、基材1の表面に形成された可変情報2-4a、2-4bを、光源14から通常光が照射された状態で肉眼13で観察した場合に、
図18(b)に一部を拡大して示したように、可変情報2-4a、2-4bの視認が困難な大きさに形成されている。
【0087】
図19に、可変情報に可読性、判読性がある場合の一例を示す。
図19(b)に示されたように、基材1の表面に形成された可変情報2-4a、2-4bを、光源14から通常光が照射された状態で肉眼13で観察した場合に、
図19(b)に一部を拡大して示したように、可変情報2-4a、2-4bの視認が可能な大きさに形成されている。
【0088】
図20に、上記本発明の実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報に使用可能な文字群の一例を示す。
図20(a)~(f)にそれぞれ、アラビア数字、漢数字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、漢字を示す。
【0089】
図21に、上記本発明の実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報に使用可能な文字群のイタリック体の一例を示す。
図21(a)に通常のアラビア数字を示し、(b)~(g)にそれぞれ、傾斜角度の大きさや傾斜方向が異なるアラビア数字のイタリック体を示す。他の漢数字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、漢字においても同様に、傾斜角度の大きさや傾斜方向が異なるイタリック体を用いることができる。
【0090】
図22~
図27に、上記本発明の実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報が連続性を有する場合と非連続性を有する場合とを示す。
【0091】
図22(a)にアラビア数字が間隔を空けずに配列され連続性を有する場合、
図22(b)にアラビア数字が間隔を所定距離空けて配列されているが連続性を有する場合、
図22(c)にアラビア数字が所定距離を超えて間隔を空けて配列され非連続性を有する場合をそれぞれ示す。
【0092】
同様に、
図23(a)に漢数字が間隔を空けずに配列され連続性を有する場合、
図23(b)に漢数字が間隔を所定距離空けて配列されているが連続性を有する場合、
図23(c)に漢数字が所定距離を超えて間隔を空けて配列され非連続性を有する場合をそれぞれ示し、
図24(a)にひらがなが間隔を空けずに配列され連続性を有する場合、
図24(b)にひらがなが間隔を所定距離空けて配列されているが連続性を有する場合、
図24(c)にひらがなが所定距離を超えて間隔を空けて配列され非連続性を有する場合をそれぞれ示し、
図25(a)にカタカナが間隔を空けずに配列され連続性を有する場合、
図25(b)にカタカナが間隔を所定距離空けて配列されているが連続性を有する場合、
図25(c)にカタカナが所定距離を超えて間隔を空けて配列され非連続性を有する場合をそれぞれ示す。さらに、
図26(a)にアルファベットが間隔を空けずに配列され連続性を有する場合、
図26(b)にアルファベットが間隔を所定距離空けて配列されているが連続性を有する場合、
図26(c)にアルファベットが所定距離を超えて間隔を空けて配列され非連続性を有する場合をそれぞれ示し、
図27(a)に漢字が間隔を空けずに配列され連続性を有する場合、
図27(b)に漢字が間隔を所定距離空けて配列されているが連続性を有する場合、
図27(c)に漢字が所定距離を超えて間隔を空けて配列され非連続性を有する場合をそれぞれ示す。
【0093】
このように、それぞれの文字が連続性、非連続性のいずれを有する場合であっても、上記本発明の実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報として用いることができる。
【0094】
図28に、上記本発明の実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報に用いることができる規則性を有する文字と不規則性を有する文字とを示す。
【0095】
図28(a)、(b)、(c)に文字の配列に規則性がある場合を示し、
図28(d)に文字の配列に不規則性がある場合を示す。
【0096】
図28(a)に示された例では、1行目に数字「12345」が配列され、2行目に文字「いんさつきょく たろう」が配列され、3行目以降は1行目、2行目の繰り返しで配列されている。
【0097】
図28(b)に示された例では、1行目に数字「12345」と文字「いんさつきょく たろう」が交互に配列され、2行目は1行目と順序が入れ替わって配列されている。3行目以降は1行目、2行目の繰り返しで配列されている。
【0098】
図28(c)に示された例では、1行目に数字「12345」が2つ配列され、文字「いんさつきょく たろう」が1つ配列され、数字「12345」が2つ配列され、2行目に文字「いんさつきょく たろう」が1つ配列され、数字「12345」が2つ配列されている。3行目以降は1行目、2行目の繰り返しになる。
【0099】
一方で、
図28(d)に示された例では、数字「12345」と文字「いんさつきょく たろう」とが不規則に配列されている。
【0100】
このように、上記本発明の実施の形態1~6による可変情報印刷物における可変情報の配列には規則性がある場合と不規則性がある場合とがあり、いずれの配列であってもよい。
【0101】
上記本発明の実施の形態1~6による可変情報印刷物において、可変情報に用いる文字を、背景模様になじませる手法の一例について、
図29を用いて説明する。
【0102】
図29(a)に示されたアラビア数字は、曲率が大きい曲画線に沿って配置されることで、可変情報を背景模様になじませることができる。
図29(b)に示されたアラビア数字は、
図29(a)に示された曲画線より曲率の小さい曲画線に沿って配置されることで、可変情報を背景模様になじませることができる。
図29(c)に示されたアラビア数字は、直線の向きが折れ線状に小さく変化する画線に沿って配置されることで、可変情報を背景模様になじませることができる。
図29(d)に示されたアラビア数は、
図29(c)と比較し直線の向きが折れ線状により大きく変化する画線に沿って配置されることで、可変情報を背景模様になじませることができる。
【0103】
また、
図29(f)に示されたアラビア数字は、
図29(e)に示されたように同心円状に配置された画線に沿って配置されることで、可変情報を背景模様になじませることができる。
【0104】
また、
図29(h)に示されたアラビア数字は、
図29(g)に示されたように波型状に凹凸のある同心円に配置された画線に沿って配置されることで、可変情報を背景模様になじませることができる。
【0105】
このような手法を用いることにより、可変情報を背景模様に含まれる画線になじませることができる。しかし可変情報を背景模様になじませる手法は、
図29に示されたものには限定されない。
【0106】
上記本発明の実施の形態1~6による可変情報印刷物における背景模様には、例えば、画線で構成された地紋模様、網点で構成された地紋模様等、様々な模様が含まれる。地紋模様とは、文字や絵柄の背景に印刷される淡色の網点、砂目、線画等の模様であり、階調が連続的に変化する連続階調模様も含まれる。背景模様が連続階調模様である場合には、第1の可変情報は、背景模様の階調の変化に応じた濃度に形成される。
図30に、上記本発明の実施の形態1~6による可変情報印刷物における背景模様の一例を示す。
【0107】
図30(a)に示された背景模様は線画模様の一例であり、同一の模様が連続的に繰り返される平坦な調子を基調としており、階調は一定であり変化していない。しかし、階調を連続的に変化させた模様であってもよい。
【0108】
図30(b)に示された背景模様は連続階調模様の一例であり、網点の面積率が連続的に変化して階調が連続的に変化している。このような連続階調模様に含まれる網点の形状は、三角形、四角形、五角形以上の多角形等の直線形状、円形、楕円形等の曲線形状を有する。
【0109】
図30(c)に示された背景模様は、
図30(b)に示された背景模様と同様に連続階調模様の一例であり、網点の面積率が連続的に変化して階調が連続的に変化している。この連続階調模様に含まれる網点の形状は、円形、楕円形等の曲線形状を有する。
【0110】
図30(d)に示された背景模様は砂目状の網点模様の一例であり、不規則に配置された微小な点の密度の濃淡で階調が表現され、ランダム網点又はFM(Frequency Modulation)スクリーンと称されるものである。この他の網点模様には、規則的に配置された微小な点の密度の濃淡で階調を表現するAMスクリーン(Amplitude Modulation)と称されるものがある。
【0111】
背景模様は、基材の表面における少なくとも一部に形成されていればよく、複数の領域に形成されてもよくあるいは全面に形成されていてもよい。
【0112】
色ごとに版を変えて重ね刷りを行うと正確な刷り合わせが困難であるが、一つの版面に多色インキを盛ることで細密画線においても正確な刷り合わせが可能となるザンメル印刷を用いて波形模様を形成してもよい。
【0113】
本発明の実施の形態について説明したが、上記実施の形態は例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記本発明の実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
1 基材
2、2A 、2B 背景模様
3 固定情報
4a、4b、4c、2-4a、2-4b 可変情報
5 領域
6a、6b、6c 空き領域
7 境界部分
8 輪郭可変情報
9、10 自治体のマーク
11 紫外線照射具
12 IRカメラ
13 肉眼
14 光源
A、B 接点