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特許7142140投影装置とその制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】投影装置とその制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 9/31 20060101AFI20220915BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20220915BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H04N9/31 820
H04N5/74 D
G03B21/00 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021501697
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2020001347
(87)【国際公開番号】W WO2020170662
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2019027524
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 和紀
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216481(JP,A)
【文献】特開2006-235158(JP,A)
【文献】特開2013-62760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 9/31
H04N 5/74
G03B 21/00
G09G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部からの画像を投影対象物に投影する光学系と、
前記光学系を通して前記光学系による前記画像の投影範囲を撮像する撮像素子と、
前記投影対象物を照明する照明部と、
前記画像を前記投影対象物に非投影の状態且つ前記照明部によって前記投影対象物を照明させた状態にて前記撮像素子により前記投影対象物を撮像させる制御を少なくとも行う撮像制御部と、
前記制御によって前記撮像素子から出力された第一の撮像画像と、記憶部に予め記憶されている情報とに基づいて、前記投影対象物が前記照明部によって非照明の状態且つテスト画像を前記投影対象物に投影した状態にて前記撮像素子により前記投影対象物を撮像して得られる第二の撮像画像を推定する画像推定部と、
前記テスト画像と前記第二の撮像画像との特性差に基づいて、前記投影対象物に投影すべき前記画像の色又は輝度の少なくとも一方の補正を行うための補正データを生成する補正データ生成部と、を備える投影装置。
【請求項2】
請求項1記載の投影装置であって、
前記記憶部に記憶された前記情報は、予め決められた基準投影対象物を前記照明部によって照明した状態且つ前記画像が前記基準投影対象物に非投影の状態にて前記撮像素子により前記基準投影対象物を撮像して得られる第三の撮像画像と、前記基準投影対象物が前記照明部によって非照明の状態且つ前記基準投影対象物に前記テスト画像が投影された状態にて前記撮像素子により前記基準投影対象物を撮像して得られる第四の撮像画像とに基づいて生成されたものである投影装置。
【請求項3】
請求項2記載の投影装置であって、
前記情報は、前記第三の撮像画像と前記第四の撮像画像の比である投影装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の投影装置であって、
前記撮像制御部は、前記制御を前記照明部からの照明光の明るさを変えて複数回行い、
前記画像推定部は、前記複数回の前記制御によって前記撮像素子から出力された複数の前記第一の撮像画像と、前記複数回の前記制御における前記照明光の明るさと、前記情報と、に基づいて前記第二の撮像画像を推定する投影装置。
【請求項5】
請求項4記載の投影装置であって、
前記画像推定部は、前記複数の第一の撮像画像と、前記複数回の前記制御における前記照明光の明るさとに基づいて、前記投影対象物からの反射光量と、前記投影装置の置かれた場所の環境光量とを算出し、前記反射光量を前記情報によって補正した値に、前記環境光量を加算して前記第二の撮像画像を推定する投影装置。
【請求項6】
請求項5記載の投影装置であって、
前記撮像制御部は、前記複数回の前記制御として、第一制御、第二制御、及び第三制御の3回の前記制御を行い、
前記画像推定部は、前記第一制御と前記第二制御によって前記撮像素子から出力された2つの前記第一の撮像画像と、前記第一制御と前記第二制御における前記照明光の明るさとに基づいて、第一の前記反射光量と第一の前記環境光量を算出し、前記第二制御と前記第三制御によって前記撮像素子から出力された2つの前記第一の撮像画像と、前記第二制御と前記第三制御における前記照明光の明るさとに基づいて、第二の前記反射光量と第二の前記環境光量を算出し、前記第一の反射光量と前記第二の反射光量との第一の差と、前記第一の環境光量と前記第二の環境光量との第二の差のいずれかが閾値を超える場合には、前記第二の撮像画像の推定を不可とする投影装置。
【請求項7】
請求項6記載の投影装置であって、
前記画像推定部は、前記第二の撮像画像の推定を不可とした場合には、前記照明光の明るさを変更した前記3回の前記制御を再度行わせる投影装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の投影装置であって、
前記情報を生成して前記記憶部に記憶するモードを有する投影装置。
【請求項9】
表示部からの画像を投影対象物に投影する光学系と、前記光学系を通して前記光学系による前記画像の投影範囲を撮像する撮像素子と、前記投影対象物を照明する照明部と、を有する投影装置の制御方法であって、
前記画像を前記投影対象物に非投影の状態且つ前記照明部によって前記投影対象物を照明させた状態にて前記撮像素子により前記投影対象物を撮像させる制御を少なくとも行う撮像制御ステップと、
前記制御によって前記撮像素子から出力された第一の撮像画像と、記憶部に予め記憶されている情報とに基づいて、前記投影対象物が前記照明部によって非照明の状態且つテスト画像を前記投影対象物に投影した状態にて前記撮像素子により前記投影対象物を撮像して得られる第二の撮像画像を推定する画像推定ステップと、
前記テスト画像と前記第二の撮像画像との特性差に基づいて、前記投影対象物に投影すべき前記画像の色又は輝度の少なくとも一方の補正を行うための補正データを生成する補正データ生成ステップと、を備える投影装置の制御方法。
【請求項10】
請求項9記載の投影装置の制御方法であって、
前記記憶部に記憶された前記情報は、予め決められた基準投影対象物を前記照明部によって照明した状態且つ前記画像が前記基準投影対象物に非投影の状態にて前記撮像素子により前記基準投影対象物を撮像して得られる第三の撮像画像と、前記基準投影対象物が前記照明部によって非照明の状態且つ前記基準投影対象物に前記テスト画像が投影された状態にて前記撮像素子により前記基準投影対象物を撮像して得られる第四の撮像画像とに基づいて生成されたものである投影装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10記載の投影装置の制御方法であって、
前記情報は、前記第三の撮像画像と前記第四の撮像画像の比である投影装置の制御方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項記載の投影装置の制御方法であって、
前記撮像制御ステップは、前記制御を前記照明部からの照明光の明るさを変えて複数回行い、
前記画像推定ステップは、前記複数回の前記制御によって前記撮像素子から出力された複数の前記第一の撮像画像と、前記複数回の前記制御における前記照明光の明るさと、前記情報と、に基づいて前記第二の撮像画像を推定する投影装置の制御方法。
【請求項13】
請求項12記載の投影装置の制御方法であって、
前記画像推定ステップは、前記複数の第一の撮像画像と、前記複数回の前記制御における前記照明光の明るさとに基づいて、前記投影対象物からの反射光量と、前記投影装置の置かれた場所の環境光量とを算出し、前記反射光量を前記情報によって補正した値に、前記環境光量を加算して前記第二の撮像画像を推定する投影装置の制御方法。
【請求項14】
請求項13記載の投影装置の制御方法であって、
前記撮像制御ステップは、前記複数回の前記制御として、第一制御、第二制御、及び第三制御の3回の前記制御を行い、
前記画像推定ステップは、前記第一制御と前記第二制御によって前記撮像素子から出力された2つの前記第一の撮像画像と、前記第一制御と前記第二制御における前記照明光の明るさとに基づいて、第一の前記反射光量と第一の前記環境光量を算出し、前記第二制御と前記第三制御によって前記撮像素子から出力された2つの前記第一の撮像画像と、前記第二制御と前記第三制御における前記照明光の明るさとに基づいて、第二の前記反射光量と第二の前記環境光量を算出し、前記第一の反射光量と前記第二の反射光量との第一の差と、前記第一の環境光量と前記第二の環境光量との第二の差のいずれかが閾値を超える場合には、前記第二の撮像画像の推定を不可とする投影装置の制御方法。
【請求項15】
請求項14記載の投影装置の制御方法であって、
前記画像推定ステップは、前記第二の撮像画像の推定を不可とした場合には、前記照明光の明るさを変更した前記3回の前記制御を再度行わせる投影装置の制御方法。
【請求項16】
表示部からの画像を投影対象物に投影する光学系と、前記光学系を通して前記光学系による前記画像の投影範囲を撮像する撮像素子と、前記投影対象物を照明する照明部と、を有する投影装置の制御プログラムであって、
前記画像を前記投影対象物に非投影の状態且つ前記照明部によって前記投影対象物を照明させた状態にて前記撮像素子により前記投影対象物を撮像させる制御を少なくとも行う撮像制御ステップと、
前記制御によって前記撮像素子から出力された第一の撮像画像と、記憶部に予め記憶されている情報とに基づいて、前記投影対象物が前記照明部によって非照明の状態且つテスト画像を前記投影対象物に投影した状態にて前記撮像素子により前記投影対象物を撮像して得られる第二の撮像画像を推定する画像推定ステップと、
前記テスト画像と前記第二の撮像画像との特性差に基づいて、前記投影対象物に投影すべき前記画像の色又は輝度の少なくとも一方の補正を行うための補正データを生成する補正データ生成ステップと、をコンピュータに実行させるための投影装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影装置とその制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置と投影装置とを組み合わせたシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、投影部からの光を透過してスクリーンに導き、且つスクリーンからの光を撮像部に導くハーフミラーと、このハーフミラーと投影部の間に配置されたレンズと、このハーフミラーと撮像部の間に配置されたレンズと、を有するプロジェクタが記載されている。
【0003】
特許文献2には、投影ユニットと、投影ユニットから光が投影される投影面を撮像するカラー撮像素子と、を同一筐体内に備えるプロジェクタが記載されている。このプロジェクタでは、カラー撮像素子によって投影面を撮像して得られる撮像画像を複数の領域に分割し、その領域毎の画像に基づいてその領域に対応する投影面の色を検出し、投影すべき画像の色補正を行うことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2016-149618号公報
【文献】日本国特開2006-349792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されているように、投影面の状態に応じて投影像の補正を行う場合、投影面の状態を検出するためには、白色画像等の基準となる画像を投影面に投影した状態にて、その投影面の撮像を行う必要がある。しかし、特許文献1に記載されているような撮像と投影とを共通の光学系を用いて行うシステムにおいては、投影面に画像を投影している状態では、光源からの強い光が光学系を通る状態となる。この状態において投影面を撮像すると、投影用の強い光が撮像素子に混入し、撮像画像にゴーストが発生する可能性がある。撮像画像にゴーストが発生していると、基準となる画像が投影された投影面の状態を精度よく認識することができなくなり、投影像の補正を高精度に行うことができなくなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、撮像画像のゴーストの影響を受けることなく投影面に合わせた投影像の補正を行うことのできる投影装置とその制御方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の投影装置は、表示部からの画像を投影対象物に投影する光学系と、上記光学系を通して上記光学系による上記画像の投影範囲を撮像する撮像素子と、上記投影対象物を照明する照明部と、上記画像を上記投影対象物に非投影の状態且つ上記照明部によって上記投影対象物を照明させた状態にて上記撮像素子により上記投影対象物を撮像させる制御を少なくとも行う撮像制御部と、上記制御によって上記撮像素子から出力された第一の撮像画像と、記憶部に予め記憶されている情報とに基づいて、上記投影対象物が上記照明部によって非照明の状態且つテスト画像を上記投影対象物に投影した状態にて上記撮像素子により上記投影対象物を撮像して得られる第二の撮像画像を推定する画像推定部と、上記テスト画像と上記第二の撮像画像との特性差に基づいて、上記投影対象物に投影すべき上記画像の色又は輝度の少なくとも一方の補正を行うための補正データを生成する補正データ生成部と、を備えるものである。
【0008】
本発明の投影装置の制御方法は、表示部からの画像を投影対象物に投影する光学系と、上記光学系を通して上記光学系による上記画像の投影範囲を撮像する撮像素子と、上記投影対象物を照明する照明部と、を有する投影装置の制御方法であって、上記画像を上記投影対象物に非投影の状態且つ上記照明部によって上記投影対象物を照明させた状態にて上記撮像素子により上記投影対象物を撮像させる制御を少なくとも行う撮像制御ステップと、上記制御によって上記撮像素子から出力された第一の撮像画像と、記憶部に予め記憶されている情報とに基づいて、上記投影対象物が上記照明部によって非照明の状態且つテスト画像を上記投影対象物に投影した状態にて上記撮像素子により上記投影対象物を撮像して得られる第二の撮像画像を推定する画像推定ステップと、上記テスト画像と上記第二の撮像画像との特性差に基づいて、上記投影対象物に投影すべき上記画像の色又は輝度の少なくとも一方の補正を行うための補正データを生成する補正データ生成ステップと、を備えるものである。
【0009】
本発明の投影装置の制御プログラムは、表示部からの画像を投影対象物に投影する光学系と、上記光学系を通して上記光学系による上記画像の投影範囲を撮像する撮像素子と、上記投影対象物を照明する照明部と、を有する投影装置の制御プログラムであって、上記画像を上記投影対象物に非投影の状態且つ上記照明部によって上記投影対象物を照明させた状態にて上記撮像素子により上記投影対象物を撮像させる制御を少なくとも行う撮像制御ステップと、上記制御によって上記撮像素子から出力された第一の撮像画像と、記憶部に予め記憶されている情報とに基づいて、上記投影対象物が上記照明部によって非照明の状態且つテスト画像を上記投影対象物に投影した状態にて上記撮像素子により上記投影対象物を撮像して得られる第二の撮像画像を推定する画像推定ステップと、上記テスト画像と上記第二の撮像画像との特性差に基づいて、上記投影対象物に投影すべき上記画像の色又は輝度の少なくとも一方の補正を行うための補正データを生成する補正データ生成ステップと、をコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮像画像のゴーストの影響を受けることなく投影面に合わせた投影像の補正を行うことのできる投影装置とその制御方法及び制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の投影装置の一実施形態であるプロジェクタ100の外観構成を示す模式図である。
図2図1に示すプロジェクタ100の内部構成を示す模式図である。
図3図2に示す表示部1の構成例を示す模式図である。
図4図3に示すシステム制御部8の機能ブロック図である。
図5】補正係数の生成処理を説明するためのフローチャートである。
図6】画像推定部82による第二の撮像画像の推定処理を説明するためのフローチャートである。
図7】画像推定部82による第二の撮像画像の推定処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の投影装置の一実施形態であるプロジェクタ100の外観構成を示す模式図である。プロジェクタ100は、本体部100Aと、本体部100Aによって支持された光学ユニット100Bと、を備える。光学ユニット100Bは、本体部100Aに着脱可能に構成されていてもよい。
【0013】
図2は、図1に示すプロジェクタ100の内部構成を示す模式図である。図3は、図2に示す表示部1の構成例を示す模式図である。プロジェクタ100は、投影対象物の1つであるスクリーンSCに画像を投影すると共に、スクリーンSCにおける画像が投影される範囲である投影範囲を少なくとも撮像可能に構成されている。
【0014】
図2に示すように、プロジェクタ100は、表示部1と、投影光学系2と、光学系を構成する共通光学系3と、光学部材4と、撮像光学系5と、撮像素子6と、照明部7と、システム制御部8と、を備える。表示部1及びシステム制御部8は、例えば本体部100Aに収容されている。投影光学系2、共通光学系3、光学部材4、撮像光学系5、及び撮像素子6は例えば光学ユニット100Bに収容されている。
【0015】
表示部1は、入力される画像データに基づいて投影用の画像を表示するものである。図3に示すように、表示部1は、光源ユニット40と、光変調素子44と、を備える。
【0016】
光源ユニット40は、白色光を出射する光源41と、カラーホイール42と、照明光学系43と、を備える。光源41は、レーザ又はLED(Light Emitting Diode)等の発光素子を含んで構成される。カラーホイール42は、光源41と照明光学系43の間に配置されている。カラーホイール42は、円板状の部材であり、その周方向に沿って、赤色光を透過するRフィルタ、緑色光を透過するGフィルタ、及び青色光を透過するBフィルタが設けられている。カラーホイール42は軸周りに回転され、光源41から出射される白色光を時分割にて赤色光、緑色光、及び青色光に分光して照明光学系43に導く。照明光学系43から出射された光は光変調素子44に入射される。
【0017】
光変調素子44は、照明光学系43から出射された光を画像データに基づいて空間変調し、空間変調した光を投影光学系2(図2参照)に出射する。
【0018】
図3に示す表示部1は、光変調素子44としてDMD(Digital Micromirror Device)を用いた例であるが、光変調素子44としては、例えば、LCOS(Liquid crystal on silicon)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子、又は液晶表示素子等を用いることも可能である。
【0019】
表示部1は、自発光型の有機EL(electro-luminescence)表示素子を用いて画像を表示し、表示した画像を投影光学系2に入射させるものであってもよい。また、レーザ光を走査することで画像の表示を行うものを用いてもよい。
【0020】
投影光学系2は、表示部1からの光が入射されるものであり、少なくとも1つのレンズを含む例えばリレー光学系によって構成されている。投影光学系2を通過した光は光学部材4に入射され、光学部材4にて反射されて共通光学系3に入射される。
【0021】
共通光学系3は、投影光学系2を通過した光をスクリーンSCに投影し、且つ、スクリーンSC側の被写体を結像させるものであり、例えばリレー光学系によって構成されている。
【0022】
図1の例では、共通光学系3は、少なくとも1つのレンズを含むレンズ群31と、光学部材32と、少なくとも1つのレンズを含むレンズ群33と、少なくとも1つのレンズを含むレンズ群34と、を備える。レンズ群31、光学部材32、レンズ群33、及びレンズ群34は、スクリーンSC側からこの順番にて光路上に配置されている。図1に示すように、レンズ群31の最もスクリーンSC側に位置するレンズ31aは、光学ユニット100Bの筐体から露出されている。
【0023】
光学部材32は、共通光学系3の光路を屈曲させるための部材であり、例えばハーフミラー、ビームスプリッタ―、又は偏光部材等が用いられる。
【0024】
投影光学系2を通過した表示部1からの画像は、投影光学系2、光学部材4、共通光学系3の順に通過してスクリーンSCに投影される。スクリーンSCにおいて、共通光学系3から画像が投影される範囲をスクリーンSCの投影範囲という。
【0025】
スクリーンSC側からレンズ群31に入射した被写体光は、レンズ群31を通過し、光学部材32にて反射されて、レンズ群33に入射される。このレンズ群33によって、レンズ群33とレンズ群34の間の位置IGに、被写体光によって形成される中間像が結像される。この中間像は、レンズ群34を通過して光学部材4に入射し、光学部材4を透過して撮像光学系5に入射される。
【0026】
撮像光学系5は、位置IGに結像された中間像を撮像素子6に結像させるためのものである。撮像光学系5は、撮像素子6の前方に配置されており、光学部材4を透過した被写体光を集光して撮像素子6に結像させる。撮像光学系5は、少なくとも1つのレンズを含んで構成されている。
【0027】
撮像素子6は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等が用いられる。
【0028】
光学部材4は、例えばハーフミラー、ビームスプリッタ―、又は偏光部材等によって構成されている。光学部材4は、投影光学系2を通過した表示部1からの画像を反射させて共通光学系3に導き、且つ、共通光学系3のレンズ群33によって位置IGに結像された被写体光に基づく中間像を、撮像光学系5を通して撮像素子6に導く。このように、撮像素子6は、表示部1からの画像をスクリーンSCに投影するための共通光学系3を通して、この共通光学系3による画像の投影範囲を撮像するものとなっている。
【0029】
照明部7は、スクリーンSC等の投影対象物を照明するためのものであり、一例として図1に示すように、レンズ31aの光軸の周囲に円状に並べて配置された複数の発光素子7aと、これらを駆動するドライバと、によって構成されている。
【0030】
システム制御部8は、表示部1から投影光学系2に入射させる画像の制御、撮像素子6による被写体の撮像制御、及び照明部7の発光制御等を行うものであり、プロセッサと、記憶部を構成するROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を備える。
【0031】
プロセッサとしては、プログラムを実行して各種処理を行う汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。これらプロセッサの構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0032】
システム制御部8のプロセッサは、上述した各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ又はCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。
【0033】
以上の構成のプロジェクタ100は、所望の投影対象物に所望の画像を投影する際には、投影モードが使用される。この投影モードにおいては、表示部1からの画像を投影対象物に投影させ且つ照明部7によって投影対象物を照明させない状態(以下、“投影あり/照明なし状態”という)にて画像の表示が行われる。
【0034】
ここで、投影モードが設定されたときの全体的な流れについて説明する。スクリーンSCの前にプロジェクタ100が設置され、その状態にて、投影モードが設定されると、まず、システム制御部8は、スクリーンSCが照明部7によって非照明の状態且つテスト画像(例えば白色画像等)をスクリーンSCに投影した状態(以下、“照明なし/テスト画像投影状態”ともいう)を形成することなく、その状態にて撮像素子6によりスクリーンSCを撮像して得られるであろう第二の撮像画像を演算によって推定する。その後、システム制御部8は、推定した第二の撮像画像と上記テスト画像とに基づいて、投影画像を補正するための補正データを生成する。この補正データの生成が完了すると、システム制御部8は、投影対象となる画像を補正データに基づいて補正し、補正後の画像を表示部1からスクリーンSCに投影させる。これにより、所望の画像の表示が行われる。
【0035】
図4は、図3に示すシステム制御部8の機能ブロック図である。システム制御部8のプロセッサは、投影装置の制御プログラムを含むプログラムを実行することにより、撮像制御部81、画像推定部82、補正データ生成部83、及び画像投影制御部84として機能する。
【0036】
撮像制御部81は、表示部1からの画像を投影対象物に非投影の状態且つ照明部7によって投影対象物を照明させた状態(以下、“投影なし/照明あり状態”という)にて、撮像素子6により投影対象物を撮像させる制御(以下、第一の撮像制御という)を少なくとも行う。“投影なし/照明あり状態”は、例えば、表示部1をオフ状態に制御し、照明部7から光を発光させることにて実現される。
【0037】
また、撮像制御部81は、表示部1からの画像を投影対象物に投影させ且つ照明部7によって投影対象物を照明させない状態にて、撮像素子6により投影対象物を撮像させる第二の撮像制御も行う。
【0038】
画像推定部82は、撮像制御部81の第一の撮像制御によって撮像素子6から出力された第一の撮像画像と、システム制御部8内のROMに予め記憶されている情報(以下、補正係数という)とに基づいて、“照明なし/テスト画像投影状態”にて撮像素子6によりスクリーンSCを撮像して得られる上記の第二の撮像画像を推定する。
【0039】
この第二の撮像画像を実際に取得するためには、テスト画像をスクリーンSCに投影した状態にて、撮像素子6によりスクリーンSCを撮像する必要がある。しかし、この状態では、撮像素子6から出力される撮像画像にゴーストが発生する可能性がある。そのため、本形態では、画像推定部82が、テスト画像の投影を行うことなく、演算によって第二の撮像画像を推定することで、ゴーストの影響を排除することを可能にしている。
【0040】
以下では、画像推定部82による第二の撮像画像の推定方法の詳細について説明するが、その前に、第二の撮像画像の推定に用いられる補正係数の詳細について説明する。
【0041】
プロジェクタ100には、補正係数を生成してROMに記憶するキャリブレーションモードが搭載されている。図5は、補正係数の生成処理を説明するためのフローチャートである。プロジェクタ100がキャリブレーションモードに設定される前に、まず、基準投影対象物が準備される。基準投影対象物は、例えば、模様のない白色などの単色のスクリーン(以下、基準スクリーンという)が用いられる。
【0042】
プロジェクタ100の前に基準スクリーンが設置され、キャリブレーションモードが設定されると、撮像制御部81が、表示部1及び照明部7を制御して“投影なし/照明あり状態”を形成し、この状態にて、撮像素子6により基準スクリーンの撮像を実行させる(ステップS1)。ステップS1は上述した第一の撮像制御に相当する。
【0043】
システム制御部8は、ステップS1の撮像によって撮像素子6から出力された撮像画像における投影範囲の撮像画像Gaを取得し、RAMに記憶する(ステップS2)。撮像画像Gaは、第三の撮像画像を構成する。
【0044】
次に、撮像制御部81が、表示部1を制御してテスト画像を基準スクリーンに投影させ、更に、照明部7を制御して基準スクリーンを非照明の状態に制御し、この状態(以下、“テスト画像投影あり/照明なし状態”という)にて、撮像素子6により基準スクリーンの撮像を実行させる(ステップS3)。ステップS3は上述した第二の撮像制御に相当する。なお、このステップS3においては、プロジェクタ100と同種の別のプロジェクタを準備し、このプロジェクタからテスト画像を投影させ、その状態にて、プロジェクタ100によって基準スクリーンを撮像させてもよい。これにより、ゴーストの影響受けずに撮像画像を得ることができる。
【0045】
システム制御部8は、ステップS3の撮像によって撮像素子6から出力された撮像画像における投影範囲の撮像画像Gbを取得し、RAMに記憶する(ステップS4)。撮像画像Gbは、第四の撮像画像を構成する。
【0046】
次に、システム制御部8は、撮像画像Gaの座標(x,y)の画素値ga(x,y)と、撮像画像Gbの座標(x,y)の画素値gb(x,y)との比β(x,y)を算出する処理を、全ての座標について行い、この比β(x,y)を補正係数としてROMに記憶する(ステップS5)。
【0047】
ステップS5において、具体的には、システム制御部8は、以下の式(A)の演算によって、座標(x,y)毎の補正係数を生成する。
【0048】
β(x,y)={画素値gb(x,y)}/{画素値ga(x,y)} (A)
【0049】
以上でキャリブレーションモードが終了される。次に、第二の撮像画像の推定処理の詳細について説明する。
【0050】
図6は、画像推定部82による第二の撮像画像の推定処理を説明するためのフローチャートである。図6に示す処理は、スクリーンSCの前にプロジェクタ100が設置され、その状態にて、投影モードが設定された場合に開始される。
【0051】
まず、撮像制御部81は、表示部1と照明部7を制御し、“投影なし/照明あり状態”を形成する。なお、ここでは、撮像制御部81は、照明部7の発光量を第一の光量L1に制御する。そして、この“投影なし/照明あり状態”にて、撮像制御部81は、撮像素子6によりスクリーンSCの撮像を実行させる(ステップS11)。
【0052】
画像推定部82は、ステップS11の撮像によって撮像素子6から出力された撮像画像における投影範囲の撮像画像C1を取得し、RAMに記憶する(ステップS12)。撮像画像C1は第一の撮像画像を構成する。
【0053】
次に、撮像制御部81は、“投影なし/照明あり状態”を継続させたまま、照明部7の発光量を第一の光量L1とは異なる第二の光量L2に変更し、その状態にて、撮像素子6によりスクリーンSCの撮像を実行させる(ステップS13)。
【0054】
画像推定部82は、ステップS13の撮像によって撮像素子6から出力された撮像画像における投影範囲の撮像画像C2を取得し、RAMに記憶する(ステップS14)。撮像画像C2は第一の撮像画像を構成する。
【0055】
次に、画像推定部82は、第一の光量L1と第二の光量L2の比αを求め、この比αと、撮像画像C1と、撮像画像C2とに基づいて、撮像画像C1と撮像画像C2の各々の座標(x,y)の画素値に含まれる、スクリーンSCからの反射光量成分RL(x,y)と、プロジェクタ100の置かれている場所の環境光量成分EL(x,y)とを算出する(ステップS15)。
【0056】
なお、撮像画像C1の座標(x,y)の画素値をC1(x,y)とし、撮像画像C2の座標(x,y)の画素値をC2(x,y)とし、α=L2/L1とすると、以下の式(B)と式(C)の関係が成り立つ。
【0057】
C1(x,y)=RL(x,y)+EL(x,y) (B)
C2(x,y)=α×RL(x,y)+EL(x,y) (C)
【0058】
したがって、画像推定部82は、式(B)と、式(C)と、ステップS12にて取得済みのC1(x,y)と、ステップS14にて取得済みのC2(x,y)と、比αと、から、反射光量成分RL(x,y)と環境光量成分EL(x,y)を導出することができる。
【0059】
このようにして算出された反射光量成分RL(x,y)と環境光量成分EL(x,y)は、“投影なし/照明あり状態”における情報である。一方、ROMに記憶されている補正係数は、“投影なし/照明あり状態”にて得られる撮像画像(図5の撮像画像Ga)と、“テスト画像投影あり/照明なし状態”にて得られる撮像画像(図5の撮像画像Gb)との比である。また、環境光量成分EL(x,y)については、“投影なし/照明あり状態”と“テスト画像投影あり/照明なし状態”とで変化はしない。このため、反射光量成分RL(x,y)のみを、この補正係数を用いて“テスト画像投影あり/照明なし状態”のときの値に補正することで、“テスト画像投影あり/照明なし状態”にて得られる第二の撮像画像の各画素値を推定することができる。
【0060】
具体的には、ステップS15の後、画像推定部82は、推定する第二の撮像画像の座標(x,y)の画素値G(x,y)を下記式(D)の演算によって算出し、第二の撮像画像を推定する。
【0061】
G(x,y)=β(x,y)×RL(x,y)+EL(x,y) (D)
【0062】
以上が画像推定部82による第二の撮像画像の推定処理の詳細である。
【0063】
図4に示す補正データ生成部83は、画像推定部82によって推定された第二の撮像画像と、上記のキャリブレーションモードにて用いられたテスト画像との特性差に基づいて、投影モードにてスクリーンSCに投影すべき画像の色又は輝度の補正を行うための補正データを生成する。生成された補正データは、システム制御部8のROMに記憶される。
【0064】
テスト画像と第二の撮像画像との特性差とは、具体的には、画像同士の色又は輝度の差である。
【0065】
補正データ生成部83は、例えば、テスト画像と第二の撮像画像とを比較して、色の差が所定値以上となる領域を投影範囲内の模様と認識し、この模様の部分に画像を投影した場合に、この模様を視認させにくくするための色補正データを生成する。または、補正データ生成部83は、テスト画像と第二の撮像画像とを比較して、輝度の差が所定値以上となる領域を投影範囲内の模様と認識し、この模様の部分に画像を投影した場合に、この模様を視認させにくくするための輝度補正データを生成する。補正データ生成部83は、輝度補正データと色補正データの両方を生成してROMに記憶してもよい。
【0066】
図4に示す画像投影制御部84は、投影モードにおいては、光変調素子44に入力すべき画像データの色又は輝度、或いはその両方を、ROMに記憶された補正データに基づいて補正し、補正後の画像データを光変調素子44に入力して、この補正後の画像データに基づく画像をスクリーンSCに投影させる。
【0067】
画像投影制御部84による補正処理によって、スクリーンSCに模様があった場合でも、この模様を消した状態にて、画像を視認させることができる。
【0068】
以上のように、プロジェクタ100によれば、投影モードにおいて、テスト画像をスクリーンSCに投影することなく、このテスト画像をスクリーンSCに投影した状態における投影範囲の撮像画像の推定を行うことができる。このため、ゴーストの影響を排除することができ、補正データ生成部83によって生成される補正データの精度を高めることができる。したがって、スクリーンSCに模様がある場合でも、この模様を高い精度にて消して画像を表示させることができ、投影画像の品質を高めることができる。
【0069】
また、プロジェクタ100では、第二の撮像画像の推定に必要な補正係数を生成してROMに記憶するキャリブレーションモードを搭載している。表示部1、撮像素子6、その他光学系等の構成部材は、経年劣化又は使用環境温度等によって特性が変化し得る。そのため、例えば、ユーザが、投影モードを設定する直前に、キャリブレーションモードを設定して補正係数を生成して記憶させることで、プロジェクタ100の状態又は使用状況に応じた補正係数の最適化が可能になる。この結果、プロジェクタ100の状態又は使用状況によらずに、補正データを用いた投影像の補正を高精度に行うことができる。
【0070】
図7は、画像推定部82による第二の撮像画像の推定処理の変形例を説明するためのフローチャートである。図7に示すフローチャートは、ステップS11からステップS14までは図6と同じであるため、説明を省略する。なお、図7に示したステップS11からステップS14のうち、ステップS11にて行われる制御は第一制御を構成し、ステップS13にて行われる制御は第二制御を構成する。
【0071】
図7のステップS14の後、撮像制御部81は、“投影なし/照明あり状態”を継続させたまま、照明部7の発光量を第一の光量L1及び第二の光量L2とは異なる第三の光量L3に変更し、その状態にて、撮像素子6によりスクリーンSCの撮像を実行させる(ステップS21)。ステップS21にて行われる制御は第三制御を構成する。
【0072】
画像推定部82は、ステップS21の撮像によって撮像素子6から出力された撮像画像における投影範囲の撮像画像C3を取得し、RAMに記憶する(ステップS22)。撮像画像C3は第一の撮像画像を構成する。
【0073】
次に、画像推定部82は、第一の光量L1と第二の光量L2の比α1を求め、この比α1と、撮像画像C1と、撮像画像C2とに基づいて、撮像画像C1と撮像画像C2の各々の座標(x,y)の画素値に含まれる、スクリーンSCからの反射光量成分RL1(x,y)と、プロジェクタ100の置かれている場所の環境光量成分EL1(x,y)とを算出する(ステップS23)。
【0074】
撮像画像C1の座標(x,y)の画素値をC1(x,y)とし、撮像画像C2の座標(x,y)の画素値をC2(x,y)とし、α1=L2/L1とすると、以下の式(B1)と式(C1)の関係が成り立つ。
【0075】
C1(x,y)=RL1(x,y)+EL1(x,y) (B1)
C2(x,y)=α1×RL1(x,y)+EL1(x,y) (C1)
【0076】
したがって、画像推定部82は、式(B1)と、式(C1)と、ステップS12にて取得済みのC1(x,y)と、ステップS14にて取得済みのC2(x,y)と、比α1と、から、反射光量成分RL1(x,y)と環境光量成分EL1(x,y)が導出することができる。
【0077】
次に、画像推定部82は、第二の光量L2と第三の光量L3の比α2を求め、この比α2と、撮像画像C2と、撮像画像C3とに基づいて、撮像画像C2と撮像画像C3の各々の座標(x,y)の画素値に含まれる、スクリーンSCからの反射光量成分RL2(x,y)と、プロジェクタ100の置かれている場所の環境光量成分EL2(x,y)とを算出する(ステップS24)。
【0078】
撮像画像C2の座標(x,y)の画素値をC2(x,y)とし、撮像画像C3の座標(x,y)の画素値をC3(x,y)とし、α2=L3/L2とすると、以下の式(B2)と式(C2)の関係が成り立つ。
【0079】
C2(x,y)=RL2(x,y)+EL2(x,y) (B2)
C3(x,y)=α2×RL2(x,y)+EL2(x,y) (C2)
【0080】
したがって、画像推定部82は、式(B2)と、式(C2)と、ステップS14にて取得済みのC2(x,y)と、ステップS22にて取得済みのC3(x,y)と、比α2と、から、反射光量成分RL2(x,y)と環境光量成分EL2(x,y)を導出することができる。
【0081】
次に、画像推定部82は、反射光量成分RL1(x,y)と反射光量成分RL2(x,y)の第一の差の絶対値AB1を求め、環境光量成分EL1(x,y)と環境光量成分EL2(x,y)の第二の差の絶対値AB2を求める。そして、画像推定部82は、予め定めた閾値THを超える絶対値AB1が存在し、且つ、閾値THを超える絶対値AB2が存在するか否かを判定する(ステップS25)。
【0082】
閾値THを超える絶対値AB1及び絶対値AB2が存在しない場合(ステップS25:NO)には、画像推定部82は、例えば下記式(D1)、(D2)、(D3)のいずれかの演算によって第二の撮像画像を推定する(ステップS28)。
【0083】
G(x,y)=β(x,y)×RL1(x,y)+EL1(x,y) (D1)
G(x,y)=β(x,y)×RL2(x,y)+EL2(x,y) (D2)
G(x,y)=β(x,y)×{RL1(x,y)+RL2(x,y)}/2+{EL1(x,y)+EL2(x,y)}/2 (D3)
【0084】
閾値THを超える絶対値AB1と絶対値AB2のいずれかが存在する場合(ステップS25:YES)には、画像推定部82は、推定不可と判断する(ステップS26)。そして、画像推定部82は、ステップS26の後、照明部7からの発光量(L1,L2,L3)の少なくとも1つの変更を撮像制御部81に指示する。この指示応じて、ステップS27にて、発光量(L1,L2,L3)の少なくとも1つが変更された上で、ステップS11以降の処理が再度行われる。
【0085】
以上の変形例によれば、第二の撮像画像の推定精度を高めることができ、補正データを用いた投影画像の補正をより高精度に行うことができる。
【0086】
なお、以上の説明では、プロジェクタ100がキャリブレーションモードを有するものとしたが、キャリブレーションモードは必須ではない。ROMに記憶すべき補正係数は、プロジェクタ100の製造時に工場にて生成して記憶しておくようにしてもよい。
【0087】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0088】
(1)
表示部からの画像を投影対象物に投影する光学系と、
上記光学系を通して上記光学系による上記画像の投影範囲を撮像する撮像素子と、
上記投影対象物を照明する照明部と、
上記画像を上記投影対象物に非投影の状態且つ上記照明部によって上記投影対象物を照明させた状態にて上記撮像素子により上記投影対象物を撮像させる制御を少なくとも行う撮像制御部と、
上記制御によって上記撮像素子から出力された第一の撮像画像と、記憶部に予め記憶されている情報とに基づいて、上記投影対象物が上記照明部によって非照明の状態且つテスト画像を上記投影対象物に投影した状態にて上記撮像素子により上記投影対象物を撮像して得られる第二の撮像画像を推定する画像推定部と、
上記テスト画像と上記第二の撮像画像との特性差に基づいて、上記投影対象物に投影すべき上記画像の色又は輝度の少なくとも一方の補正を行うための補正データを生成する補正データ生成部と、を備える投影装置。
【0089】
(2)
(1)記載の投影装置であって、
上記記憶部に記憶された上記情報は、予め決められた基準投影対象物を上記照明部によって照明した状態且つ上記画像が上記基準投影対象物に非投影の状態にて上記撮像素子により上記基準投影対象物を撮像して得られる第三の撮像画像と、上記基準投影対象物が上記照明部によって非照明の状態且つ上記基準投影対象物に上記テスト画像が投影された状態にて上記撮像素子により上記基準投影対象物を撮像して得られる第四の撮像画像とに基づいて生成されたものである投影装置。
【0090】
(3)
(2)記載の投影装置であって、
上記情報は、上記第三の撮像画像と上記第四の撮像画像の比である投影装置。
【0091】
(4)
(1)から(3)のいずれか1つに記載の投影装置であって、
上記撮像制御部は、上記制御を上記照明部からの照明光の明るさを変えて複数回行い、
上記画像推定部は、上記複数回の上記制御によって上記撮像素子から出力された複数の上記第一の撮像画像と、上記複数回の上記制御における上記照明光の明るさと、上記情報と、に基づいて上記第二の撮像画像を推定する投影装置。
【0092】
(5)
(4)記載の投影装置であって、
上記画像推定部は、上記複数の第一の撮像画像と、上記複数回の上記制御における上記照明光の明るさとに基づいて、上記投影対象物からの反射光量と、上記投影装置の置かれた場所の環境光量とを算出し、上記反射光量を上記情報によって補正した値に、上記環境光量を加算して上記第二の撮像画像を推定する投影装置。
【0093】
(6)
(5)記載の投影装置であって、
上記撮像制御部は、上記複数回の上記制御として、第一制御、第二制御、及び第三制御の3回の上記制御を行い、
上記画像推定部は、上記第一制御と上記第二制御によって上記撮像素子から出力された2つの上記第一の撮像画像と、上記第一制御と上記第二制御における上記照明光の明るさとに基づいて、第一の上記反射光量と第一の上記環境光量を算出し、上記第二制御と上記第三制御によって上記撮像素子から出力された2つの上記第一の撮像画像と、上記第二制御と上記第三制御における上記照明光の明るさとに基づいて、第二の上記反射光量と第二の上記環境光量を算出し、上記第一の反射光量と上記第二の反射光量との第一の差と、上記第一の環境光量と上記第二の環境光量との第二の差のいずれかが閾値を超える場合には、上記第二の撮像画像の推定を不可とする投影装置。
【0094】
(7)
(6)記載の投影装置であって、
上記画像推定部は、上記第二の撮像画像の推定を不可とした場合には、上記照明光の明るさを変更した上記3回の上記制御を再度行わせる投影装置。
【0095】
(8)
(1)から(7)のいずれか1つに記載の投影装置であって、
上記情報を生成して上記記憶部に記憶するモードを有する投影装置。
【0096】
(9)
表示部からの画像を投影対象物に投影する光学系と、上記光学系を通して上記光学系による上記画像の投影範囲を撮像する撮像素子と、上記投影対象物を照明する照明部と、を有する投影装置の制御方法であって、
上記画像を上記投影対象物に非投影の状態且つ上記照明部によって上記投影対象物を照明させた状態にて上記撮像素子により上記投影対象物を撮像させる制御を少なくとも行う撮像制御ステップと、
上記制御によって上記撮像素子から出力された第一の撮像画像と、記憶部に予め記憶されている情報とに基づいて、上記投影対象物が上記照明部によって非照明の状態且つテスト画像を上記投影対象物に投影した状態にて上記撮像素子により上記投影対象物を撮像して得られる第二の撮像画像を推定する画像推定ステップと、
上記テスト画像と上記第二の撮像画像との特性差に基づいて、上記投影対象物に投影すべき上記画像の色又は輝度の少なくとも一方の補正を行うための補正データを生成する補正データ生成ステップと、を備える投影装置の制御方法。
【0097】
(10)
(9)記載の投影装置の制御方法であって、
上記記憶部に記憶された上記情報は、予め決められた基準投影対象物を上記照明部によって照明した状態且つ上記画像が上記基準投影対象物に非投影の状態にて上記撮像素子により上記基準投影対象物を撮像して得られる第三の撮像画像と、上記基準投影対象物が上記照明部によって非照明の状態且つ上記基準投影対象物に上記テスト画像が投影された状態にて上記撮像素子により上記基準投影対象物を撮像して得られる第四の撮像画像とに基づいて生成されたものである投影装置の制御方法。
【0098】
(11)
(10)記載の投影装置の制御方法であって、
上記情報は、上記第三の撮像画像と上記第四の撮像画像の比である投影装置の制御方法。
【0099】
(12)
(9)から(11)のいずれか1つに記載の投影装置の制御方法であって、
上記撮像制御ステップは、上記制御を上記照明部からの照明光の明るさを変えて複数回行い、
上記画像推定ステップは、上記複数回の上記制御によって上記撮像素子から出力された複数の上記第一の撮像画像と、上記複数回の上記制御における上記照明光の明るさと、上記情報と、に基づいて上記第二の撮像画像を推定する投影装置の制御方法。
【0100】
(13)
(12)記載の投影装置の制御方法であって、
上記画像推定ステップは、上記複数の第一の撮像画像と、上記複数回の上記制御における上記照明光の明るさとに基づいて、上記投影対象物からの反射光量と、上記投影装置の置かれた場所の環境光量とを算出し、上記反射光量を上記情報によって補正した値に、上記環境光量を加算して上記第二の撮像画像を推定する投影装置の制御方法。
【0101】
(14)
(13)記載の投影装置の制御方法であって、
上記撮像制御ステップは、上記複数回の上記制御として、第一制御、第二制御、及び第三制御の3回の上記制御を行い、
上記画像推定ステップは、上記第一制御と上記第二制御によって上記撮像素子から出力された2つの上記第一の撮像画像と、上記第一制御と上記第二制御における上記照明光の明るさとに基づいて、第一の上記反射光量と第一の上記環境光量を算出し、上記第二制御と上記第三制御によって上記撮像素子から出力された2つの上記第一の撮像画像と、上記第二制御と上記第三制御における上記照明光の明るさとに基づいて、第二の上記反射光量と第二の上記環境光量を算出し、上記第一の反射光量と上記第二の反射光量との第一の差と、上記第一の環境光量と上記第二の環境光量との第二の差のいずれかが閾値を超える場合には、上記第二の撮像画像の推定を不可とする投影装置の制御方法。
【0102】
(15)
(14)記載の投影装置の制御方法であって、
上記画像推定ステップは、上記第二の撮像画像の推定を不可とした場合には、上記照明光の明るさを変更した上記3回の上記制御を再度行わせる投影装置の制御方法。
【0103】
(16)
表示部からの画像を投影対象物に投影する光学系と、上記光学系を通して上記光学系による上記画像の投影範囲を撮像する撮像素子と、上記投影対象物を照明する照明部と、を有する投影装置の制御プログラムであって、
上記画像を上記投影対象物に非投影の状態且つ上記照明部によって上記投影対象物を照明させた状態にて上記撮像素子により上記投影対象物を撮像させる制御を少なくとも行う撮像制御ステップと、
上記制御によって上記撮像素子から出力された第一の撮像画像と、記憶部に予め記憶されている情報とに基づいて、上記投影対象物が上記照明部によって非照明の状態且つテスト画像を上記投影対象物に投影した状態にて上記撮像素子により上記投影対象物を撮像して得られる第二の撮像画像を推定する画像推定ステップと、
上記テスト画像と上記第二の撮像画像との特性差に基づいて、上記投影対象物に投影すべき上記画像の色又は輝度の少なくとも一方の補正を行うための補正データを生成する補正データ生成ステップと、をコンピュータに実行させるための投影装置の制御プログラム。
【0104】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0105】
なお、本出願は、2019年2月19日出願の日本特許出願(特願2019-027524)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、投影面の色に合わせた投影像の補正を行うことのできる投影装置とその制御方法及び制御プログラムを提供することができる。
【符号の説明】
【0107】
100 プロジェクタ
100A 本体部
100B 光学ユニット
7a 発光素子
1 表示部
40 光源ユニット
41 光源
42 カラーホイール
43 照明光学系
44 光変調素子
2 投影光学系
3 共通光学系
31、33、34 レンズ群
32 光学部材
IG 位置
SC スクリーン
4 光学部材
5 撮像光学系
6 撮像素子
7 照明部
8 システム制御部
81 撮像制御部
82 画像推定部
83 補正データ生成部
84 画像投影制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7