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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
G01N35/04 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021515852
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009422
(87)【国際公開番号】W WO2020217732
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019084989
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】安居 晃啓
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸丸 武
(72)【発明者】
【氏名】清川 哲宜
(72)【発明者】
【氏名】深谷 昌史
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-036666(JP,A)
【文献】特開2005-037171(JP,A)
【文献】特開2012-141246(JP,A)
【文献】国際公開第2018/135384(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168632(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/089966(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00~35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項18】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記反応容器に前記試薬を分注する、複数の回転軸を有する試薬分注機構を更に備えた
ことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿等の生体試料を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンパクトで多種類の分析ができ、かつ希釈/前処理を必要とする項目と、一般反応測定項目の混在時においても高い処理能力と分注精度を有する自動分析装置の一例として、特許文献1には、独立に駆動可能な複数の試料分注機構を有し、複数の試料分注機構はそれぞれ、試料採取位置と、試料を採取する試料ノズルと、試料ノズルを洗浄する洗浄槽を有し、複数の試料採取位置から採取し、それぞれ独立に動作し反応ディスク上の反応容器に対して試料分注可能であり、希釈/前処理を必要とする試料と、希釈/前処理を必要としない試料各々に、少なくとも一つの試料分注機構を有し、各々が専用で動作するよう制御する制御手段と、を備え、反応容器に空きを作らずに試料の分注を行う、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2013/058170号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血液、尿等の生体試料に含まれる特定成分の定量あるいは定性分析を行う自動分析装置は、分析結果の再現性、処理速度の高さ等から現在の診断には欠かせないものとなっている。
【0005】
なお、本明細書における「試料」とは、入院或いは通院患者の血液、または尿等および、健康診断等における被検者の血液、または尿等の生体試料の双方を含むものとする。
【0006】
自動分析装置の測定方法は、試料中の分析対象成分と反応し、反応液の色が変わるような試薬を用い、この色の変化を測定部で測定する分析法(比色分析)と、対象成分と直接あるいは間接的に特異的に結合する物質に標識体を付加した試薬を用い、標識体をカウントする分析法(免疫分析)と、に大別される。
【0007】
一般的に比色分析を行う自動分析装置では、回転可能なディスク上に環状に配置された複数の反応容器を有する反応ディスクの回転動作と停止動作とを繰り返して、生体試料と試薬の反応を連続的かつサイクリックに分析するように構成されている。
【0008】
このような自動分析装置では、コンパクトで多種類の項目が測定可能であることが求められる。
【0009】
自動分析装置では、反応ディスクに加えて、生体試料と反応させるための試薬の入った試薬容器を保持する少なくとも1つの試薬ディスクを備えており、これら反応ディスクと試薬ディスクとが平面状に配置されることが多い。
【0010】
近年、分析項目の増加に伴い、試薬ディスク内の試薬容器の設置数は増加傾向にある。反応ディスクは単位時間当たりの装置の処理能力に応じて設置される反応容器の数が変わるため、反応ディスクの大きさは装置の処理能力に応じたものとなる。
【0011】
したがって、試薬ディスクと反応ディスクとを平面状に配置する場合、これらが装置の面積の大部分を占めることになる。
【0012】
実際の自動分析装置では、試薬ディスクや反応ディスクの周辺にその他のユニットを配置する必要があり、ユニットのレイアウトによっては装置がより大型化する傾向がある。これら装置の大型化を防ぐため、装置の構成についてさまざまな方法が考案されている。
【0013】
自動分析装置では、試薬ディスクにより内部に複数の試薬が入った試薬容器を10度程度に保冷し、試薬を吸引する位置に試薬容器を回転移動させている。また、反応ディスクが回転している間に試薬容器から試薬プローブにより試薬を吸引し、反応ディスクが停止している間に試薬を反応容器に吐出する。その上で、反応ディスクの周囲に備える測定部により、回転と停止を繰り返す反応ディスクの回転中に測定部前を通過する反応容器内の反応液の色の変化を測定する。
【0014】
ここで、測定部は反応液の微小な色の変化を捉えるため、電気ノイズ、機械振動、温度変化などの外乱ノイズを嫌う、という特性がある。
【0015】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の技術では、測定部の近くに反応容器の洗浄機構や試料の搬送装置系、あるいは撹拌装置の洗浄槽等の各種可動機器が配置されており、これらの外乱ノイズの影響をより軽減する余地があることが明らかとなった。
【0016】
また、自動分析装置では、装置の前面側から吸気した空気によって内部機器や基板の冷却を行い、背面側から排気している。
【0017】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のうち、特に特許文献1の図15示すような構成では、測定部は装置背面側に位置している。このようなレイアウトでは、前面側を冷却して排熱により温度が上昇した後の空気に曝される恐れがあり、より簡易な構成で温度変化の影響を受けないようにする余地があることが本発明者らの検討により明らかとなった。
【0018】
更に、特許文献1の図15に示すような構成では、メンテナンス時にユーザがアクセスすることが多い領域(分注ノズル交換や反応ディスク等)の多くが装置の背面側に配置されるため、メンテナンス性をより改善する余地があることも明らかとなった。
【0019】
本発明は、測定部が従来の装置に比べて外乱の影響を受けにくい構造となっている自動分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、自動分析装置であって、試料と試薬とを反応させるための反応容器をその円周上に複数有する反応ディスクと、前記試薬を収容した試薬容器を複数保管する試薬ディスクと、前記反応容器に保持された液体を撹拌する撹拌機構と、前記反応容器に保持された前記液体の物性を測定する測定部と、測定後の前記反応容器を洗浄する洗浄機構と、を備え、前記自動分析装置を構成する筐体を上面側から見たときに、前記反応ディスクは、ユーザがアクセスする前記筐体の前面側の第1の辺の両端部に位置する2つの角のうちのいずれかである第1角側に配置され、前記試薬ディスクは、前記第1の辺と対向する前記筐体の背面側であって、第2の辺の両端部に位置する2つの角のうち、前記第1角と対角に位置する第2角側に配置され、前記測定部は、前記試薬ディスクの回転軸と前記反応ディスクの回転軸を通る直線上であって、かつ、前記反応ディスクの周囲のうち、前記反応ディスクの回転軸より前記第1角側に配置され、前記反応ディスクの回転軸を通り、前記直線に対して直交する直交線を引いたときに、前記撹拌機構及び前記洗浄機構は、前記直交線の前記試薬ディスク側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、測定部が従来の装置に比べて外乱の影響を受けにくい構造とすることができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施例に係る自動分析装置の全体概略構成図である。
図2】実施例の自動分析装置に用いられている分光光度計の一例を示す図である。
図3】実施例に係る自動分析装置を構成する反応ディスク内に格納される複数の反応容器の配置と試薬ディスクと測定部の配置を説明する図である。
図4図3に示す自動分析装置における反応ディスクの詳細を説明する図である。
図5】実施例に係る自動分析装置を構成する反応ディスクと試薬ディスクと測定部の筐体内における配置を説明する図である。
図6】実施例に係る自動分析装置を構成するベースの構成を説明する図である。
図7】本発明の他の実施例に係る自動分析装置を構成する反応ディスク内に格納される複数の反応容器の配置と試薬ディスクと測定部の配置を説明する図である。
図8図7に示す自動分析装置における反応ディスクの詳細を説明する図である。
図9】実施例の自動分析装置における分析工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の自動分析装置の実施例について図1乃至図9を用いて説明する。
【0024】
最初に、図1および図2を用いて本実施例に係る自動分析装置の全体的な構成の概略について説明する。図1に、本発明の一実施例に係る自動分析装置の全体概略構成図を示す。また、図2に分光光度計の構成の一例を示す。
【0025】
図1に示すように自動分析装置100は試料および試薬を反応させた液体を測定する装置であり、主として、試料搬送機構17、反応ディスク1、試薬ディスク9、試料分注機構11、試薬分注機構7、撹拌機構5、測定部、電解質測定部341、洗浄機構3、コントローラ21を備えている。
【0026】
試料搬送機構17は、試料ラック投入部(図示省略)から投入された、試料を収容する複数の試料容器15を搭載するラック16を所望の分注位置まで搬送する装置である。
【0027】
反応ディスク1には、その周方向に沿って(円周状に)所定の間隔にて相互に離間した状態で、試料と試薬とを反応させるための反応容器2が複数格納されている。反応ディスク1の近くには試料容器15を載せたラック16が搬入される試料搬送機構17が設置されている。
【0028】
試薬ディスク9は、その中に試薬が収容された試薬ボトル10が複数個、円周状に格納可能となっている保管庫である。試薬ディスク9は保冷されている。
【0029】
試料分注機構11は、反応ディスク1と試料搬送機構17との間に設置されており、円弧状に回転および上下動可能に構成されている。その先端には、試料ノズル11aが設けられている。試料ノズル11aには試料用ポンプ18cが接続されており、試料ノズル11aは試料分注機構11の回転軸を中心に円弧を描きながら移動して試料容器15或いは反応容器2から試料を吸引し、反応ディスク1上の他の反応容器2へ試料を吐出し、試料分注を行う。ここで、試料用ポンプ18cとして、例えば、シリンジポンプ等が用いられる。
【0030】
試薬分注機構7は、反応ディスク1と試薬ディスク9とに隣接して設置されており、円弧状に回転および上下動可能に構成されている。その先端には、試薬ノズル7aが設けられており、試薬ノズル7aには試薬用ポンプ18aが接続されている。ここで、試薬用ポンプ18aとしては、例えば、シリンジポンプ等が用いられる。
【0031】
撹拌機構5は、例えば先端に設けられた撹拌翼或いはへら状の棒(図示省略)を備えており、撹拌翼或いは棒を反応容器2内の試料と試薬との混合液である反応液に浸潤させて回転することにより撹拌する。なお、撹拌機構5は、このような機構に限られるものではなく、超音波によるものとすることができる。
【0032】
測定部は、反応容器2内の試料と試薬とを反応させた反応液2Aの反応過程や反応後の光学特性を測定する装置であり、反応ディスク1の内側に配置される光源4Aと、反応容器2を挟むよう光源4Aに対向して配置される分光光度計4Bを備えている。
【0033】
より具体的には、図2に示すように、本実施例の分光光度計4Bは、光源4Aから反応容器2に向けて照射され、反応容器2に保持された反応液2Aを通過した光を検出する機器であり、集光レンズ4B1,4B2と、スリット4B3と、凹面回折格子4B4と、多波長検出器4B5と、を有している。
【0034】
分光光度計4Bでは、光源4Aからの光が集光レンズ4B1により集光され、反応容器2に入れられた反応液2Aに照射される。反応液2Aから透過してくる透過光は集光レンズ4B2によりスリット4B3の開口部上に集光される。スリット4B3を通過した光は凹面回折格子4B4によって波長分散されスペクトルを形成する。形成されたスペクトルが多波長検出器4B5で検出され、コントローラ21に送られる。
【0035】
なお、測定部は、分光光度計による吸光度の測定に限られるものではなく、例えば、透過光や散乱光を検出する検出器を用いることができる。
【0036】
電解質測定部341は、イオン選択電極を用いて試料中の電解質、例えばNa、K、Cl等の濃度を測定する測定部である。
【0037】
洗浄機構3は測定が終了した後に反応容器2を洗浄する装置であり、洗浄用ポンプ20および真空ポンプ22が接続されている。
【0038】
また、反応ディスク1と試薬ディスク9の間には、試薬分注機構7の試薬ノズル7aを洗浄するための洗浄槽13が設置されている。反応ディスク1と試料搬送機構17との間には、試料分注機構11の試料ノズル11aを洗浄するための洗浄槽30が設置されている。
【0039】
更に、反応ディスク1と撹拌機構5の間には、撹拌機構5の撹拌翼或いはへら状の棒を洗浄するための洗浄槽32が設置されており、コンタミ防止が図られている。
【0040】
コントローラ21は、上述された自動分析装置100内の各機構に接続されており、その動作を制御する。このコントローラ21は、測定する試料に対して測定する測定項目をオーダーする操作画面、測定した結果を確認する操作画面を表示するディスプレイやプリンタ等の出力部(図示省略)や、各種指示を入力する入力部(図示省略)等のユーザインターフェースを有しており、自動分析装置全体のユニットの情報を統括する役割を担っている。
【0041】
このコントローラ21は、CPUやメモリなどを備えたコンピュータであり、上記の各部材の様々な動作を制御するとともに、分光光度計4Bの検出結果から検体中の所定成分の濃度を求める演算処理を行う。コントローラ21による各機器の動作の制御は、記憶部(図示省略)に記録された各種プログラムに基づき実行される。
【0042】
なお、コントローラ21で実行される動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていても良い。
【0043】
以上が自動分析装置100の全体的な構成である。
【0044】
なお、図1に示すように、自動分析装置がラック16を所望の位置へ搬送する試料搬送機構17を備える場合を一例として説明するが、試料の搬送機構の構成はこれに限られない。
【0045】
例えば、その周方向に沿って(円周状に)複数の試料容器15を格納するディスク上の構成の試料ディスクを用いても良く、また、同心円状に内周側および外周側に周方向に沿って複数の試料容器15を格納するディスク状としても良い。
【0046】
また、自動分析装置100に対して、分析対象である血液や尿などの生体試料を収容した一つ以上の試料容器が搭載されたラック16を自動分析装置100内へ投入、回収を行うとともに、自動分析装置100への搬送を行うための搬送ユニットを接続することができる。
【0047】
この搬送ユニットは、例えば、図1に示す試料搬送機構17にラック16を供給するためのユニットであり、例えば、ラック16の投入部、緊急試料容器投入部、ラックID読取部、搬送ライン、ラック待機ディスク、ラック収納部等を備えるものである。
【0048】
このような搬送ユニットを備える場合、搬送ユニットに対して図1に示すような自動分析装置を接続する。この時には、図1に示すような生化学分析を行う装置を1台以上複数搬送ユニットに接続することができる。また、生化学分析を行う分析装置以外に、免疫分析を行う分析装置などを搬送ユニットに接続することができる。
【0049】
上述のような自動分析装置100による試料の分析処理は、一般的に以下の順に従い実行される。
【0050】
まず、ラック16が搬入部等に設置され、試料搬送機構17によって自動分析装置100の試料分取位置まで搬入される。
【0051】
試料分取位置に到着したラック16は、試料分注機構11によって試料を反応ディスク1の反応容器2に分取される。試料分注機構11により、当該試料に依頼された分析項目に応じて、必要回数だけ試料の分取を行う。
【0052】
また、分析に使用する試薬を、試薬ディスク9上の試薬ボトル10から試薬分注機構7により先に試料を分取した反応容器2に対して分取する。続いて、撹拌機構5で反応容器2内の試料と試薬とを混合して調製した反応液2Aの撹拌を行う。
【0053】
その後、光源4Aから発生させた光を撹拌後の反応液2Aの入った反応容器2を透過させ、透過光の光度を分光光度計4Bにより測定する。分光光度計4Bにより測定された光度を、コントローラ21に送信する。そしてコントローラ21によって演算を行い、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度を求め、結果を表示装置等にて表示させたり、記憶部に記憶させたりする。
【0054】
次に、本実施例に係る自動分析装置100内の各機器の配置構成の詳細について図3乃至図9以降を用いて説明する。
【0055】
最初に図3および図4を用いて反応ディスク1の構成やその動作方法の一例について説明する。図3は、反応ディスク内に格納される複数の反応容器の配置と試薬ディスクと測定部の配置を説明する図である。図4は、図3の反応ディスク1の概略を表した図である。
【0056】
図3に示すように、本実施例の自動分析装置100では、反応ディスク1に周方向に沿って(円周状に)所定の間隔にて相互に離間するよう29個の反応容器2-1~2-29が格納されている。
【0057】
なお、本明細書では、反応ディスク1に格納される特定の反応容器を示す場合、反応容器2-1~2-29のうちの何れかを示し、任意の反応容器或いは反応容器を総称する場合、反応容器2と称する。
【0058】
反応ディスク1は円周状に配置された反応容器2を回転移動させるための第1回転軸301を有しており、図3中の矢印にて示すように、1サイクルで時計回りに反応容器2で6個分の回転と停止を繰り返し、5サイクルで反応容器2が6×5=30個分移動した位置で停止する。
【0059】
すなわち、5サイクル後には、反応容器2の総数29個×1周+1個=30個分だけ、反応ディスク1は1回転+反応容器2が1個分移動した位置で停止する。
【0060】
ここで、1サイクルとは、1つの反応容器2に試料容器15から測定用の試料を試料分注機構11が分注してから反応ディスク1が回転、および停止して、次の反応容器2に試料を分注するまでの時間と定義する。
【0061】
従って、図3に示す例では、試料分注機構11により試料容器15から反応容器2へ試料が分注されるポジションが試料吐出位置41であることから、5サイクル後の時点で、反応容器2-1、反応容器2-24、反応容器2-18、反応容器2-12、および反応容器2-6に試料容器15から測定用の試料が試料分注機構11により分注された状態となる。上記の動作を繰り返すことで反応容器は29サイクルで同一の位置に戻ることになる。
【0062】
また、図3において反応ディスク1の外周側にカッコ内に示した数、すなわち、[1]~[29]は、試料分注機構11による試料吐出位置41において試料分注が行われた反応容器2-1をサイクル[1]の反応容器とした際に、サイクル[1]~[29]において反応容器2-1がどの位置に停止しているかを示す数字である。試料吸引位置42は前処理済み試料を試料分注機構11により反応容器2から吸引する位置である。
【0063】
更に、試薬分注機構7による第1試薬吸引位置321、第2試薬吸引位置322、第1試薬吐出位置43、第2試薬吐出位置44や、第1試薬吐出後の反応容器2内の試料と第1試薬との混合液である反応液を撹拌機構5により撹拌を行う第1撹拌位置45、第2試薬吐出後の反応容器2内の試料と第1試薬と第2試薬との混合液である反応液を撹拌機構5により撹拌を行う第2撹拌位置46、反応液の吸光度測定を行う測定部の分光光度計4Bによる吸光度測定位置47がそれぞれ配置されている。
【0064】
このうち、試料吐出位置41や試料吸引位置42は、反応ディスク1が分光光度計4Bから試薬ディスク9側へ回転移動する間に設けられている。また、第1撹拌位置45,第2撹拌位置46は、反応ディスク1が試薬ディスク9から分光光度計4B側へ回転移動する間に設けられている。
【0065】
図3および図4に示すように、反応容器2-1に着目した場合、1サイクル目(サイクル[1])で、試料分注機構11により試料容器15から所定量の試料が反応容器2-1に分注される。
【0066】
なお、図4中、試料分注(吐出)位置を1とした場合の反応容器位置番号を1とし、[1]は試料分注(吐出)位置を1とした場合の反応経過サイクルを示しており、1サイクル目であることを表している。
【0067】
次に、2サイクル目(サイクル[2])で、既に所定量の試料が分注された反応容器2-1は第1試薬吐出位置43に移動し、試薬分注機構7により所定量の第1試薬が分注される。
【0068】
3サイクル目(サイクル[3])で、試料と第1試薬の混合液である反応液を収容する反応容器2-1が第1撹拌位置45に移動し、撹拌機構5により反応容器2-1内の試料と第1試薬の混合液である反応液が撹拌混合される。続いて、反応容器2-1は4サイクル目(サイクル[4])へ移動する。
【0069】
その後、4サイクル目から5サイクル目(サイクル[5])へ移動する間に、反応容器2-1は吸光度測定位置47を通過する。このとき分光光度計4Bにより吸光度測定位置47の吸光度が測定される。
【0070】
6サイクル目(サイクル[6])では、反応容器2-1は試料吸引位置42まで移動して停止する。
【0071】
その後、12サイクル目(サイクル[12])で、既に所定量の試料が分注された反応容器2-1は第2試薬吐出位置44に移動し、試薬分注機構7により所定量の第2試薬が分注される。
【0072】
13サイクル目(サイクル[13])で、試料と第2試薬の混合液である反応液を収容する反応容器2-1が第2撹拌位置46に移動する。第2撹拌位置46にて、撹拌機構5により反応容器2-1内の試料と第1試薬と第2試薬の混合液である反応液が撹拌混合され、続いて、反応容器2-1は14サイクル目(サイクル[14])へ移動する。
【0073】
以降、20サイクル目(サイクル[20])まで、反応容器2-1は分光光度計4Bの吸光度測定位置47前を通過する際に吸光度が測定される。
【0074】
21サイクル目、および26サイクル目にて洗浄機構3により反応容器2-1は洗浄され、その後29サイクル目(サイクル[29])まで反応容器2-1は順次移動し、反応容器2-1は再び試料吐出位置41である1サイクル目(サイクル[1])まで移動する。
【0075】
ここで、本発明の自動分析装置100では、試薬ディスク9は反応ディスク1の近傍にその垂直方向に重なることなく配置される。この試薬ディスク9は、円周状に配置された試薬ボトル10を回転移動させるための第2回転軸302を有している。本発明では、上述の反応ディスク1の第1回転軸301と試薬ディスク9の第2回転軸302とを結ぶ線を直線311とする。
【0076】
また、試薬分注機構7は試薬ディスク9の第1試薬吸引位置321または第2試薬吸引位置322から試薬を吸引し、第1試薬吐出位置43または第2試薬吐出位置44に停止している反応容器2に試薬を分注する。
【0077】
したがって、試薬分注機構7が実施例のような上下、回転動作をする機構の場合、試薬分注機構7は、反応ディスク1と試薬ディスク9の外周に隣接して位置していることが望ましい。また、試薬分注機構7の試薬ノズル7aを洗浄するための洗浄槽13についても、反応ディスク1と試薬ディスク9の外周に隣接して位置していることが望ましい。
【0078】
また、試薬ノズル7aの移動距離は、極力短い方が機構の小型化、処理能力向上の点から望ましい。したがって、第1試薬吸引位置321、第2試薬吸引位置322は反応ディスク1の第1回転軸301と試薬ディスク9の第2回転軸302を結ぶ直線311上に位置することが望ましい。
【0079】
同様の理由から、第1試薬吐出位置43または第2試薬吐出位置44についても、直線311上、またはその近傍、例えば、反応ディスク1の第1回転軸301を原点とし、直線311に対して、±60°程度の範囲にあることが望ましい。
【0080】
また、本実施例の自動分析装置100では、自動分析装置100を上面側から見たときに、反応ディスク1の第1回転軸301と試薬ディスク9の第2回転軸302を結ぶ直線311上に測定部が配置される。
【0081】
なお、測定部のうち、少なくとも分光光度計4Bが直線311上に配置されていることが望ましく、特には図2に示された分光光度計4Bを構成する各機器のうち、凹面回折格子4B4、多波長検出器4B5が直線311上に配置されていることが望ましい。集光レンズ4B2やスリット4B3についても直線311上に配置されていることが望ましい。
【0082】
なお、「直線311上に配置」とは、自動分析装置100を上面側から見たときに、対象の機器の少なくとも一部分を仮想上の直線311が通過していればよいものであるが、望ましくはその機器の大部分を直線311が通過していることが望ましい。
【0083】
更に、本実施例では、試薬ディスク9の第2回転軸302と分光光度計4Bとの間に反応ディスク1の第1回転軸301が配置されるように分光光度計4Bや光源4Aを配置する。また、分光光度計4Bは、反応ディスク1の周囲に配置する。
【0084】
このように、反応ディスク1の第1回転軸301に対して、試薬ディスク9の第2回転軸302と分光光度計4Bは対称方向に配置することで、試薬ディスク9や試薬分注機構7による電気ノイズ、機械振動、温度変化などの外乱ノイズから分光光度計4Bを最大限に遠ざけることが可能となる。
【0085】
なお、反応ディスク1は温調されているが、温度変化を避けるためにも分光光度計4Bはこの反応ディスク1と同じような温度であることが望ましいことから、分光光度計4Bを反応ディスク1の周囲に配置することでより安定かつ正確な測定が可能となる。
【0086】
その上で、測定部、特に分光光度計4Bは、自動分析装置100のユーザがアクセスする前面側に配置、図3図5であれば図面下側に配置されているものとする。
【0087】
さらに、吸光度測定位置47は、反応ディスク1の回転動作開始時および停止時の振動に伴うノイズを避けるため、より望ましくは、吸光度の測定が終了し、洗浄機構3による洗浄が開始された洗浄中、あるいは洗浄後となる、20サイクル目(サイクル[20])以降の反応容器2が停止する位置とすることが望ましい。
【0088】
図3の例では24サイクル目(サイクル[24])と29サイクル目(サイクル[29])の反応容器2の間に吸光度測定位置47を設置している例を示している。
【0089】
なお、図3では、吸光度測定位置47を直線311上に配置したが、吸光度測定位置47は直線311の近傍に配置することができる。
【0090】
上述のように第1回転軸301と第2回転軸302と測定部とが直線311上に位置するとともに、第1回転軸301に対して第2回転軸302と測定部が対称方向に配置すると、反応ディスク1の周囲に、直線311によって2つの半円331と半円332の両側に機構を設置するための纏まった領域を確保することが可能となる。
【0091】
図3のように、反応容器2に対して、測定用の試料を試料分注機構11が分注の後に、当該反応容器に測定用の試薬を試薬分注機構7が分注を行い、試料と試薬の混合液である反応液を撹拌機構5により撹拌を行う自動分析装置を考える。
【0092】
このような装置構成において反応ディスク1が時計方向に回転する場合、反応ディスク1が分光光度計4Bから試薬ディスク9へ回転移動する半円331上に試料分注機構11と試料吐出位置41、試料を収容する複数の試料容器15を搭載するラック16と、ラック16を所望の位置へ搬送する試料搬送機構17が位置していることが、反応容器2に試料を添加した直後に試薬を添加できる点から望ましい。
【0093】
また、反応容器2の試料に対して試薬を添加した後に試料と試薬との反応は開始するが、均一な反応のためにできる限り早く反応容器2内の試料と試薬を撹拌することが望まれる。このため、反応ディスク1が時計方向に回転する場合は、反応ディスク1が試薬ディスク9から分光光度計4Bへ回転移動する半円332上に撹拌機構5が位置していることが望ましい。
【0094】
洗浄機構3は、洗浄が可能な20サイクル目(サイクル[20])以降の反応容器であればどこで洗浄を行ってもよいので、2つの半円331と半円332の両側のうち都合が良い位置に配置すればよい。
【0095】
また、電解質測定部341を備える場合は、測定用の試料を試料分注機構11が電解質測定部341に直接分注する必要があるため、電解質測定部341は半円331側に位置していることが望ましい。
【0096】
以上のように、反応ディスク1の第1回転軸301と試薬ディスク9の第2回転軸302を結ぶ直線311上に分光光度計4Bが位置し、反応ディスク1の第1回転軸301に対して、試薬ディスク9の第2回転軸302と分光光度計4Bは対称方向に配置することで、反応ディスク1は直線311によって2つの半円331と半円332の両側に機構を設置するためのまとまった領域を確保することが可能となり、機構の配置を最適化することが可能となる。
【0097】
図5図3に示したような構成を持つ自動分析装置100の各機器を筐体351にコンパクトに配置する一実施例である。
【0098】
自動分析装置100を構成する筐体351を上面側から見ると、4つの辺391,392,393,394を持つ長方形形状をしており、第1角352、第2角353、第3角354、第4角355が存在する。
【0099】
反応ディスク1や試薬ディスク9といった円形の機構を持つ自動分析装置100を筐体351に収める場合、円形の機構の同心円に外接するように筐体の辺を取ることでフットプリントを小さくすることが可能であるが、この時、円形の機構の同心円に外接する2つの辺がなす筐体351の角部は孤立した領域となるため、機構を配置することが難く、デットスペースになりがちである。
【0100】
しかし、他の機構から受けるノイズを低減するために、分光光度計4Bについてはあえて孤立させたい、との事情がある。
【0101】
そこで、分光光度計4Bは、自動分析装置100を上面側から見たときに、4つの角のうち、例えば筐体351の第1角352の周辺に配置することが望ましい。
【0102】
この場合、反応ディスク1の第1回転軸301と試薬ディスク9の第2回転軸302を結ぶ直線311上に分光光度計4Bが位置し、反応ディスク1の第1回転軸301に対して試薬ディスク9の第2回転軸302と分光光度計4Bとは対称方向に配置する都合から、試薬ディスク9は、自動分析装置100を上面側から見たときに、第1角352の対角となる第3角354側に配置することが望ましい。
【0103】
このような配置関係とするために望まれ、且つ装置の大型化を避けるためには、上述した直線311は、図5に示すように、筐体351の4つの辺391,392,393,394のうちいずれとも平行でなく、かつ垂直の関係にもなっていないものとすることが望ましい。
【0104】
このように、反応ディスク1と試薬ディスク9という2つの円形の機構を、四角形の筐体351に納めることで、デットスペースを有効利用し、コンパクトな設計が可能となる。また、第2角353、第4角355周辺にまとまった領域を確保できるため、他機構の配置を無理なく行うことができる。
【0105】
図6では図5の自動分析装置100を側面から見たときの断面を示している。
【0106】
図6に示すように、本実施例の自動分析装置100では、反応ディスク1と分光光度計4Bは、同じ第1ベース361に固定されている。
【0107】
この他に第1ベース361に固定される機構としては、望ましくは分光光度計4Bによる測定タイミグ中は停止しており、測定タイミング以外のタイミング中に動作する機構が挙げられる。
【0108】
例えば洗浄機構3は、反応ディスク1が停止中に反応容器の洗浄を行うため、反応ディスク1が回転動作している分光光度計4Bによる吸光度測定中は動作しない。そこで、第1ベース361に固定されていても支障はないことから、第1ベース361に固定されることができるが、第2ベース362に固定されていてもよい。
【0109】
また、図6に示すように、試料搬送機構17、試料分注機構11、電解質測定部341、試薬分注機構7、撹拌機構5は、第1ベース361とは異なる第2ベース362に固定されている。
【0110】
さらに、基本的に大型で、また回転駆動する試薬ディスク9は、第1ベース361および第2ベース362とは異なる第3ベース363に固定されている。
【0111】
これら第2ベース362や第3ベース363に固定される機構は、基本的には、分光光度計4Bによる測定タイミグ中に動作する機構が挙げられる。
【0112】
これら第1ベース361と第2ベース362とは、複数の柱371で連結されている。また、第2ベース362は複数の柱372で第3ベース363に固定されている。このため、第1ベース361と第3ベース363とは第2ベース362を挟んで連結されることになる。更に、第3ベース363は複数の柱373で筐体351と連結されている。
【0113】
なお、第3ベース363と柱373を使用せずに試薬ディスク9を筐体351に固定して、第2ベース362は複数の柱372で筐体351に固定する構成としてもよい。また、試薬ディスク9を第2ベース362に固定し、第2ベース362は複数の柱372で筐体351に直接固定し、第3ベース363と柱373を使用しない構成とすることができる。
【0114】
また、処理能力が比較的小さく、また装置サイズが小さい自動分析装置の場合、第1ベース361にすべての機構を固定して複数の柱371で第1ベース361を筐体351に固定する構成としてもよい。
【0115】
一般的に、自動分析装置では、サイクリックに分析を進めるために、反応ディスク1は、例えばステッピングモータ、またはパルスモータ(図示省略)により回転駆動される。
【0116】
コントローラ21は、反応ディスク1に格納される反応容器2の総数をN、B(B≧1)サイクル後に反応ディスク1がC(C≧1)回転±1個の反応容器分移動し、反応ディスク1が1サイクルで移動する反応容器2の数をA(N+1≧A)としたとき、A×B=N×C±1の関係が成り立つよう、1サイクルで反応容器2がA個移動するよう、換言すれば、毎サイクルのピッチ数がAとなるよう反応ディスク1の駆動系に制御信号(制御指令)を出力し、反応ディスク1を回転駆動する。なお、反応容器2の総数Nと1サイクルで移動する反応容器2の数Aとは互いに素であり、かつBとCは互いに素となる。
【0117】
図3では、反応ディスク1に格納される反応容器2の総数Nが29個、1サイクルで移動する反応容器2の数A(N+1≧A)が6個、B(B≧1)サイクル後(5サイクル後)にC(C≧1)回転(1回転)+1個の反応容器分移動し、上述のA×B=N×C±1の関係を満たし、NとAは互いに素であり、BとCは互いに素となっている。
【0118】
反応容器2-1の停止位置を基準にB分割、図3ではサイクル数Bが奇数の一例として5としたことから5分割され、それぞれ、サイクル[1]~[5](1サイクル目から5サイクル目)の反応容器2-1から5サイクル飛びで反応容器2が反時計方向に隣接して並んでいることが分かる。
【0119】
以下、B(B≧1)は偶数より奇数が望ましいことを図7および図8にて説明する。図7はBを偶数(4)とした場合の反応ディスク内に格納される複数の反応容器の配置と試薬ディスクと測定部の配置を説明する図である。図8は、図7の反応ディスク1の概略を表した図である。
【0120】
図7および図8では、図3等と同様に上述の図1に示したコントローラ21の表記を省略している。
【0121】
上述のように、本実施例の自動分析装置100では、29個の反応容器2-1~2-29が格納されている。
【0122】
図7に示すように、反応ディスク1は円周状に配置された反応容器2を回転移動させるための第1回転軸301を備え、矢印にて示すように、1サイクルで時計回りに反応容器2にして7個分の回転と停止を繰り返し、4サイクルで反応容器2が7×4=28個分、すなわち、反応容器2の総数29個×1周-反応容器2を1個分=28個と、4サイクル後に反応ディスク1は1回転-反応容器2が1個分移動した位置で停止する。
【0123】
従って、図7では、試料吐出位置41の位置から、4サイクル後の時点では、反応容器2-1、反応容器2-23、反応容器2-16、反応容器2-9に試料容器15から測定用の試料が分注された状態となる。上記の動作を繰り返すことで反応容器は29サイクルで同一の位置に戻ることになる。
【0124】
図7においても、反応ディスク1の外周側にカッコ内に示した数、すなわち、[1]~[29]は、試料分注機構11による試料吐出位置41において試料分注が行われた反応容器2-1をサイクル[1]の反応容器とした際に、サイクル[1]~[29]において反応容器2-1がどの位置に停止しているかを示す数字である。
【0125】
試料吸引位置42Aは前処理済み試料を試料分注機構11により反応容器2から吸引する位置であり、試薬分注機構7による第1試薬吸引位置321、第2試薬吸引位置322、第1試薬吐出位置43A、第2試薬吐出位置44A、第1撹拌位置45A、第2撹拌位置46A、吸光度測定位置47がそれぞれ配置されている。
【0126】
図7および図8に示すように、反応容器2-1に着目した場合、1サイクル目(サイクル[1])で、試料分注機構11により試料容器15から所定量の試料が反応容器2-1に分注される。
【0127】
次に、2サイクル目(サイクル[2])では、既に所定量の試料が分注された反応容器2-1は第1試薬吐出位置43Aに移動し、試薬分注機構7により所定量の第1試薬が分注される。
【0128】
3サイクル目(サイクル[3])では、試料と第1試薬の混合液である反応液を収容する反応容器2-1が第1撹拌位置45Aに移動する。第1撹拌位置45Aにて、撹拌機構5により反応容器2-1内の試料と第1試薬の混合液である反応液が撹拌混合され、続いて、反応容器2-1は4サイクル目(サイクル[4])へ移動する。
【0129】
反応容器2-1は5サイクル目(サイクル[5])へ移動する間に、吸光度測定位置47を通過する。このとき分光光度計4Bにより吸光度測定位置47の吸光度が測定され、反応容器2-1は試料吸引位置42Aまで移動し停止する。
【0130】
10サイクル目(サイクル[10])で、既に所定量の試料が分注された反応容器2-1は第2試薬吐出位置44Aに移動し、試薬分注機構7により所定量の第2試薬が分注される。
【0131】
11サイクル目(サイクル[11])で、試料と第2試薬の混合液である反応液を収容する反応容器2-1が第2撹拌位置46Aに移動する。第2撹拌位置46Aにて、撹拌機構5により反応容器2-1内の試料と第1試薬と第2試薬の混合液である反応液が撹拌混合され、続いて、反応容器2-1は12サイクル目(サイクル[12])へ移動する。
【0132】
以降、22サイクル目(サイクル[22])まで、反応容器2-1は分光光度計4Bの吸光度測定位置47前を通過する際に吸光度が測定され、22サイクル目、および26サイクル目にて洗浄機構3により反応容器2-1は洗浄され、その後29サイクル目(サイクル[29])まで、反応容器2-1は順次移動し、反応容器2-1は再び試料吐出位置41である1サイクル目(サイクル[1])まで移動する。
【0133】
図7に示すような形態の場合、第1試薬吐出位置43Aまたは第2試薬吐出位置44Aが直線311上、またはその近傍、例えば反応ディスク1の第1回転軸301を原点とし、直線311に対して±60°程度の範囲にあることが望ましい。
【0134】
しかしながら、B(B≧1)が偶数となる場合においては、反応容器2-1の停止位置を基準にB分割、図4ではサイクル数Bが4であることから4分割され、それぞれ、1サイクル目から4サイクル目の反応容器2-1から4サイクル飛びで反応容器2が反時計方向に隣接して並んでいることが分かる。
【0135】
このため、反応ディスク1の回転動作開始時および停止時の振動に伴うノイズを避けるため、吸光度の測定が終了し、洗浄機構3による洗浄が開始可能となる、22サイクル目以降の反応容器2が停止する位置(25サイクル目と29サイクル目)の反応容器2の間に吸光度測定位置47を設置すると、反応ディスク1と試薬ディスク9が隣接する位置には既に測定が終了し、試薬を添加する必要のない、23サイクル目と27サイクル目の反応容器が停止することになる。
【0136】
このように、B(B≧1)が偶数の場合、直線311付近に洗浄機構3による洗浄が開始可能な反応容器が固まってしまうため、B(B≧1)は奇数とし、試薬ディスク9側の直線311付近に試薬を添加することが可能な測定中の反応容器2が配置されるようにすることが望ましい。
【0137】
次に、各サイクルにて実施される分析工程について説明する。
【0138】
図9に示すように1サイクル目において試料分注機構11により試料吐出位置41に停止した反応容器2、例えば図3における反応容器2-1に、コントローラ21からの試料の種別および分析項目に応じた試料の分注量(液量)が分注される。
【0139】
反応ディスク1は試料分注終了後、コントローラ21からの制御信号(制御指令)に基づき時計回りに反応容器2にして6個分移動し、第1試薬吐出位置43に停止する。
【0140】
2サイクル目において、試薬分注機構7は、試薬ディスク9に格納された試薬ボトル10より、コントローラ21からの分析項目に応じた第1試薬の分注量(液量)を吸引する。そして、試薬分注機構7は、第1試薬吐出位置43に位置する反応容器2-1に第1試薬を吐出する。
【0141】
試薬吐出後、反応ディスク1は、コントローラ21からの制御信号(制御指令)に基づき時計回りに反応容器2にして6個分移動し、第1撹拌位置45に停止する。
【0142】
3サイクル目において、第1撹拌位置45に停止する反応容器2-1内に収容される試料と第1試薬を、コントローラ21からの所定の撹拌強度に基づき撹拌する。撹拌後は、反応ディスク1はコントローラ21からの制御信号(制御指令)に基づき時計回りに反応容器2にして6個分移動する。
【0143】
5サイクル目において、反応容器2-1は分光光度計4Bが設置された吸光度測定位置47を通過し、試料と第1試薬の混合液である反応液の吸光度が測定され、吸光度の測定値はコントローラ21を構成する記憶部の所定の記憶領域に格納される。
【0144】
その後のサイクルにおいても吸光度測定位置47を反応容器2-1が通過するたびに反応液の吸光度の測定値がコントローラ21の記憶部に格納される。
【0145】
反応ディスク1は回転と停止を繰り返し、6サイクル目で反応容器2-1は試料吐出位置41に隣接する試料吸引位置42に停止する。
【0146】
ここで、分析項目が、例えばヘモグロビンA1c測定のように、測定前に血球の前処理等が必要な分析項目の場合には、試料吸引位置42から試料分注機構11が前処理済みの試料を吸引し、隣接する試料吐出位置41に停止の反応容器2-29に前処理済みの試料を吐出し、この前処理済み試料の分析を行うことが可能となる。
【0147】
これに対し、前処理を必要としない試料で第2試薬の添加が必要となる分析項目では、12サイクル目において、反応容器2-1は第2試薬吐出位置44に停止する。試薬分注機構7が試薬ディスク9に格納された試薬ボトル10より第2試薬の分注量(液量)を吸引し、第2試薬吐出位置44に位置する反応容器2-1に第2試薬を吐出する。
【0148】
第2試薬吐出後、13サイクル目において、反応ディスク1はコントローラ21からの制御信号(制御指令)に基づき時計回りに反応容器2にして6個分移動し、第2撹拌位置46に停止する。撹拌機構5は、第2撹拌位置46に位置する反応容器2-1に収容される試料と第1試薬および第2試薬を所定の撹拌強度に基づき撹拌する。撹拌後は、反応ディスク1は、コントローラ21からの制御信号に基づき時計回りに反応容器2にして6個分移動する。
【0149】
分析は20サイクル目にて終了し、21サイクル目以降は、分光光度計4Bによる測定は行われず、反応容器2-1の洗浄が可能となる。
【0150】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0151】
上述した本実施例の自動分析装置100は、試料と試薬とを反応させるための反応容器2をその円周状に複数有する反応ディスク1と、試薬を収容した試薬ボトル10を複数保管する試薬ディスク9と、反応容器2内の液体の物性を測定する測定部と、を備え、反応ディスク1の第1回転軸301、試薬ディスク9の第2回転軸302、および測定部が自動分析装置100を上面側から見たときに同一の直線311上に配置され、試薬ディスク9の第2回転軸302と測定部との間に反応ディスク1の第1回転軸301が配置され、測定部は、自動分析装置100のユーザがアクセスする前面側に配置されている。
【0152】
これによって、試薬ディスク9から測定部を最大限に遠ざけることが可能となり、試薬ディスク9やそれに付随する機構からの電気ノイズ、機械振動、温度変化などの外乱ノイズが測定部に及ぶことを従来に比べて低減可能である。
【0153】
また、反応ディスク1や試薬ディスク9、測定部の配置に制約を設けた状態において測定部を自動分析装置100のユーザがアクセスする前面側に配置したことで、簡易な構成により排熱による温度変化の影響を受けにくくすることができ、より安定した分析を実現することができる。
【0154】
更に、反応ディスク1の第1回転軸301と試薬ディスク9の第2回転軸302と測定部を結ぶ直線311により、反応ディスクは2つの等しい領域に分けられ、両方の領域にまとまったスペースを確保できることから、試料分注機構11や試料搬送機構17、試薬分注機構7等の分析に必要な各機構を無理なく配置することが可能となる。
【0155】
その上、メンテナンス時にユーザがアクセスすることが多い領域(分注ノズル交換や反応ディスク)が、装置の後面側よりは前面側に近い領域に配置されるようになるため、メンテナンスをより容易に行うことができる、との効果も奏する。
【0156】
また、直線311は、自動分析装置100を構成する筐体351の辺391,392,393,394のうちいずれとも平行でなく、かつ垂直でもないため、サイズ面で大きな比重を占める試薬ディスク9や反応ディスク1を装置内に効率的に配置することができ、装置をよりコンパクトにすることができる。
【0157】
更に、測定部は、反応容器2内の反応液2Aを通過した光を回折させるスリット4B3、スリット4B3を通過した光を分光する凹面回折格子4B4、凹面回折格子4B4によって分光された光を検出する多波長検出器4B5、を有しており、少なくとも凹面回折格子4B4および多波長検出器4B5が直線311上に配置されていることで、測定部のうち、測定に最も影響するとともにアナログな部分を試薬ディスク9等から遠ざけて配置することができるため、より外乱ノイズに強い構成とすることができる。
【0158】
また、測定部は、自動分析装置100を上面側から見たときに、装置外周の第1角352の周辺に配置されることにより、孤立させたい測定部を2つの辺391,392で強固に保持される角部に配置することができ、より振動などの外乱ノイズに強い配置構成とすることができる。
【0159】
更に、試薬ディスク9は、自動分析装置100を上面側から見たときに、第1角352とは異なる、装置外周の第3角354の周辺に配置される。特に、第1角352と第3角354とは、装置の対角に位置する。
【0160】
このような配置とすると、試薬ディスク9についても同様に2つの辺393,394で強固に保持される角部に配置することができ、より振動などの外乱ノイズに強い配置構成とすることができる。更に、装置のデットスペースに分光光度計4Bおよび試薬ディスク9を配置することができ、不要な装置面積の拡大を確実に防ぐことが可能となる。
【0161】
すなわち、一般的な自動分析装置は四角形であり、1カ所の対角線上に分光光度計4B、反応ディスク1、試薬ディスク9が配置されることになるので、他方の対角エリアにまとまったスペースを確保することが可能となり、装置を肥大化させずに反応ディスク1の周辺に試料分注機構11、試料搬送機構17、試薬分注機構7、撹拌機構5、洗浄機構3、電解質測定部341等を配置することが可能となる。
【0162】
更に、試薬分注機構7は、反応ディスク1および試薬ディスク9の外周に隣接する位置に配置されていることで、試薬ノズル7aの可動範囲が必要以上に広くなることを確実に抑制することができ、機構の小型化および処理能力の向上を確実に図ることができる。
【0163】
また、試料分注機構11による試料の分注中や試薬分注機構7による試薬の分注中に停止している反応ディスク1の反応容器2のうち、測定部による測定位置に最も近い位置に配置されるのは、洗浄機構3により洗浄中か、あるいは洗浄後の反応容器2であることにより、反応ディスク1の回転移動の加速初期或いは停止直前に吸光度測定位置47を通過する反応容器を測定に影響がない反応容器とすることができるため、分析に影響がおよぶ要因を確実に減らし、分析精度の向上を確実に図ることができる。
【0164】
更に、第1試薬吸引位置321,第2試薬吸引位置322が直線311上に配置されていることで、試薬ノズル7aの可動範囲が必要以上に広くなることをより確実に抑制することができ、機構の小型化および処理能力の向上を確実に図ることができる。
【0165】
また、反応ディスク1が測定部から試薬ディスク9側へ回転移動する間に試料分注機構11の試料吐出位置41や試料吸引位置42が設けられていることにより、反応容器2に試料を添加した直後に試薬を添加できるようになり、反応を効率的に行うことができるため、分析の迅速化に寄与することができる。
【0166】
更に、反応ディスク1が試薬ディスク9から測定部側へ回転移動する間に撹拌機構5の第1撹拌位置45,第2撹拌位置46が設けられていることで、試薬を添加直後の反応容器を撹拌位置に移動させることができるため、同様に反応を効率的に行うことができる。
【0167】
また、反応容器2の総数をN、反応ディスク1が1サイクルで移動する反応容器2の数をA(N+1≧A)、B(B≧1)サイクル後に反応ディスク1がC(C≧1)回転±1個の反応容器2分だけ回転移動する、としたときに、NとAとは互いに素であり、BとCとは互いに素であり、Bは奇数であり、A×B=N×C±1の関係が成り立つよう、1サイクルで反応容器2が周方向にAだけ移動するよう反応ディスク1が回転制御されることとする。
【0168】
この場合、試薬を添加することが可能な第2試薬吐出位置44に測定中の反応容器2が配置されることになり、試薬ノズル7aの移動距離を極力短くすることができる。
【0169】
更に、反応ディスク1と測定部とは、同じ第1ベース361に固定されていることで、必要以上に異なるベースに各機構を配置する必要がなくなり、装置の大型化を確実に抑制することができる。
【0170】
また、反応容器2に試料を分注する試料分注機構11、反応容器2に試薬を分注する試薬分注機構7、液体を撹拌する撹拌機構5を更に備え、試料分注機構11、試薬分注機構7、および撹拌機構5は、第1ベース361とは異なる第2ベース362に固定されていることにより、反応ディスク1と分光光度計4Bを他の機構と別のベースに固定することができ、反応ディスク1と分光光度計4Bに対する直接的な電気、機械振動、温度変化に伴うノイズを低減することが可能である。
【0171】
更に、試薬ディスク9は、第1ベース361および第2ベース362とは異なる第3ベース363に固定され、第1ベース361と第3ベース363とは第2ベース362を挟んで連結されていることで、第1ベース361に固定された反応ディスク1と分光光度計4Bに対して、試薬ディスク9からの直接的な電気、機械振動、温度変化に伴うノイズを低減することが可能であり、より高精度な分析を確実かつ容易に実現することができる。
【0172】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0173】
1…反応ディスク
2…反応容器
2A…反応液
3…洗浄機構
4A…光源
4B…分光光度計
4B1,4B2…集光レンズ
4B3…スリット
4B4…凹面回折格子
4B5…多波長検出器
5…撹拌機構
7…試薬分注機構
7a…試薬ノズル
9…試薬ディスク
10…試薬ボトル
11…試料分注機構
11a…試料ノズル
13,30,32…洗浄槽
15…試料容器
16…ラック
17…試料搬送機構
18a…試薬用ポンプ
18c…試料用ポンプ
20…洗浄用ポンプ
21…コントローラ
22…真空ポンプ
41…試料吐出位置
42,42A…試料吸引位置
43,43A…第1試薬吐出位置
44,44A…第2試薬吐出位置
45,45A…第1撹拌位置
46,46A…第2撹拌位置
47…吸光度測定位置
100…自動分析装置
301…第1回転軸
302…第2回転軸
311…直線
321…第1試薬吸引位置
322…第2試薬吸引位置
331,332…半円
341…電解質測定部
351…筐体
352…第1角
353…第2角
354…第3角
355…第4角
361…第1ベース
362…第2ベース
363…第3ベース
371,372,373…柱
391,392,393,394…辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9