(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-14
(45)【発行日】2022-09-26
(54)【発明の名称】プラスチック用離型剤
(51)【国際特許分類】
B29C 33/64 20060101AFI20220915BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20220915BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20220915BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20220915BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20220915BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220915BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B29C33/64
C08J7/04 Z
C08K5/098
C08K5/42
C08L71/02
C08L83/04
C09K3/00 R
(21)【出願番号】P 2021522732
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(86)【国際出願番号】 JP2020018204
(87)【国際公開番号】W WO2020241164
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2019097409
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 有子
(72)【発明者】
【氏名】生方 早央里
(72)【発明者】
【氏名】多和田 華子
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-032586(JP,A)
【文献】特表2010-505970(JP,A)
【文献】特開2004-018797(JP,A)
【文献】特開2002-086639(JP,A)
【文献】特開平11-140191(JP,A)
【文献】特開平08-188744(JP,A)
【文献】特開平07-070547(JP,A)
【文献】特開昭63-153108(JP,A)
【文献】特開昭60-217259(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132834(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/64
C08J 7/04-7/06
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(E)成分を含有し、平均粒径
100nm以下かつ25℃のpHが4.5~8.0であるものであることを特徴とするプラスチック用離型剤。
(A)下記一般式(1)で表される、25℃における粘度が100~100,000mm
2/sのオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】
(式中、R
1は同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、水素原子、炭素数1~32の直鎖の非置換のアルキル基、フェニル基のいずれかであり、Lは60から1500の整数である。また、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンのそれぞれの含有量は(A)オルガノポリシロキサン中で3%未満である。)
(B)アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキル酢酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、メチルタウリン酸、アラニネートおよびその塩から選択される1種又は2種以上のアニオン界面活性剤:0.1~15.0質量部、
(C)下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル:1.0~30.0質量部、
C
mH
2m+1(OCH
2CH
2)
nOH (2)
(mは12から20の整数であり、nは4~50の整数である。ただし、mが12~15の場合、nは8~50であり、mが16~20の場合、nは4~50の整数である)
(D)下記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:0.5~15.0質量部、
【化2】
(R
2は炭素数12から18のアルキル基である。a+b+cの合計は20である。)
(E)水:50~100,000質量部。
【請求項2】
さらに、(F)下記一般式(4)で表されるソルビタン脂肪酸エステルを、前記(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5.0質量部以下含有するものであることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック用離型剤。
【化3】
(R
3は炭素数12から22のアルキル基である。)
【請求項3】
前記(F)ソルビタン脂肪酸エステルの含有量が0.1~5.0質量部であることを特徴とする請求項2に記載のプラスチック用離型剤。
【請求項4】
前記(B)アニオン界面活性剤の含有量が0.1~10.0質量部であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のプラスチック用離型剤。
【請求項5】
前記プラスチック用離型剤は食品容器包装用のプラスチックに用いられるものであることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載のプラスチック用離型剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンのエマルジョン組成物であるプラスチック用離型剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鮮度や衛生面の観点から、食品はプラスチックのトレー、シート、フィルム等で保護をして販売している。食品の種類や保管温度によりPET,PP,PS等の種々の食品容器包装用のプラスチックが使用されている。
【0003】
食品容器包装用のプラスチックはその製造工程においてシートやフィルムに成型した後ロール状に巻き取っている。通常ロールに巻き取る際は、シートやフィルムの表面に離型剤を塗布し、シートやフィルム同士が接着しないようにしている。
【0004】
また、シートやフィルムを成型したケース、トレー、カップなどの成形品は重ねて保管されるが、そこに離型剤を塗工すると、ブロッキングすることなく1つ1つスムーズに取り外すことができる。
【0005】
離型性およびすべり性の観点から、食品容器包装用の合成樹脂の離型剤としては、粘度が100~100,000mm2/sのオルガノポリシロキサンのエマルジョン組成物が好適である。オルガノポリシロキサンのエマルジョン組成物を離型剤としてプラスチックに塗布する場合は、オルガノポリシロキサンの濃度を0.1~5.0%になるように水で希釈し、ロータリーダンプニング、グラビア方式もしくはスプレー方式で塗工する。
【0006】
ロータリーダンプニングのような強い撹拌を伴う塗工方法では、エマルジョン自体が破壊され、ゲルやオイル浮き等を生じるおそれがある。ゲルやオイル浮きが発生している状態でエマルジョンをプラスチックに塗工すると、濡れムラが生じ、プラスチック同士の接着や、外観の不均一といった問題が生じる。
【0007】
また、プラスチックにノニオン界面活性剤を多く含むオルガノポリシロキサンのエマルジョンを塗布すると、ノニオン界面活性剤がプラスチックに含浸することでクラックが生じ、成形体にひびが入るといった問題が生じることがある。このようなクラックはプラスチックの中でも、特にOPSやPSで生じやすい。
従って、希釈安定性、機械安定性、保存安定性に優れ、濡れ性が良好、かつプラスチックに対してクラックが生じないオルガノポリシロキサンのエマルジョン型離型剤が求められている。
【0008】
日本では、ポリオレフィン等衛生協議会が食品に直接接触する容器包装等のプラスチックに使用できる原料を定めており(ポジティブリスト制)、食品に直接接触する容器包装の用途では安全性が確認されている原料を使用することが推奨されている。
従って、食品容器包装向けプラスチック用離型剤にはポリオレフィン等衛生協議会のポジティブリストに掲載された原料を使用し、かつ上記の目的課題を解決しうるオルガノポリシロキサンのエマルジョンが望まれている。
【0009】
これまでに上記問題を解決するために様々な方法が検討されている。
【0010】
特許文献1は優れた濡れ性であり透明性も良好であるオルガノポリシロキサンエマルジョン離型剤組成物である。実施例では平均粒径がすべて200nm以上と大きいため、希釈安定性や機械安定性で劣る可能性がある。また、実施例ではアニオン界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムが使用されているが、それは環境負荷物質として懸念されているので、食品容器包装に用いるプラスチック用離型剤としての使用は推奨されない。
【0011】
特許文献2はフィルムの白化が少ないシリコーン離型剤組成物である。特許文献2の組成にはプロピレングリコールが含まれる。また、実施例ではノニオン系乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルを単独で使用しているが、ノニオン系乳化剤を単独で使用した場合、平均粒径は細かくならず、また安定性が悪い恐れがある。また、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの中でも、ポリオキシエチレン鎖が1~6のものは、合成樹脂、特にPSやOPSに対してクラックを生じさせる恐れがあるため、特許文献2の実施例のエマルジョンでもPSやOPSの離型剤として使用した場合にクラックを発生させる恐れがある。
【0012】
特許文献3は乳化する際にフェノキシエタノール類を配合した、粒度分布が狭く、安定性の優れたエマルジョンであるが、実施例の平均粒径はすべて1μm以上と大きく、希釈安定性や機械安定性が低いことが予想される。
【0013】
特許文献4はアルミダイキャスト向けアルキルアラルキル共変性シリコーンエマルジョン離型剤である。アルキルアラルキル共変性シリコーンは、プラスチックに対してジメチルポリシロキサンより離型性が低く、プラスチック用離型剤には適していない。
【0014】
特許文献5はアクリルゴムの加硫成型時に好適に用いられるソルビタン高級アルキルエステルおよびその他のノニオン界面活性剤を併用したシリコーン水分散型離型剤組成物である。シリコーンエマルジョンではアニオン界面活性剤を配合すると、エマルジョンのゼータ電位のマイナスの値が大きくなり、エマルジョン粒子同士の電子反発が強くなるため凝集しにくく、機械安定性が向上すると言われている。特許文献5ではアニオン界面活性剤の配合はなく、機械安定性が低いことが予想される。
【0015】
特許文献6はHLB10以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルによりオルガノポリシロキサンを乳化したエマルジョンである。特許文献5と同様にアニオン界面活性剤の配合はなく、機械安定性が低いことが予想される。
【0016】
特許文献7はオルガノポリシロキサンをアルキル鎖の炭素数が8~11であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとアニオン界面活性剤からなるシリコーンエマルジョン組成物である。炭素数が8~11であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含むエマルジョンではプラスチックに塗工するとクラックを生じる恐れがある。
【0017】
特許文献8はオルガノポリシロキサンをポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびショ糖脂肪酸エステルで乳化したシリコーンエマルジョン組成物である。実施例にはポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてポリオキシエチレン(3)デシルエーテルを使用しているが、アルキル基の炭素数が10以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルはプラスチックに対してクラックを生じさせる恐れがある。
【0018】
特許文献9はオルガノポリシロキサンをポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテルまたはポリオキシエチレンイソステアリルエーテルにより乳化したシリコーンエマルジョンである。実施例では平均粒径が約400nmであり比較的大きく、希釈安定性や機械安定性が悪い恐れがある。
【0019】
特許文献10はオルガノポリシロキサンをアニオン界面活性剤および多価アルコールにより乳化したエマルジョンである。一般的にアニオン界面活性剤や多価アルコールは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン界面活性剤より表面張力を下げる機能は低い。特許文献10のエマルジョンは50倍に水で希釈したものの表面張力(25℃)が45dyne/cm以上と高く、また、ノニオン界面活性剤を含まないため、プラスチックに塗布した場合、濡れ性が悪くハジキを生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特許第3106079号公報
【文献】特開2005-281409号公報
【文献】特開2000-169705号公報
【文献】特許第4722542号公報
【文献】特開平8-283771号公報
【文献】特許第3638087号公報
【文献】特開2004-331784号公報
【文献】特開2004-035820号公報
【文献】特許第4828054号公報
【文献】特許第3835646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、希釈安定性、機械安定性に優れ、濡れ性が良好で、かつプラスチックに対してクラックが生じにくいオルガノポリシロキサンのエマルジョンであるプラスチック用離型剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を達成するために、本発明では、下記(A)~(E)成分を含有し、平均粒径200nm以下であるものであることを特徴とするプラスチック用離型剤を提供する。
(A)下記一般式(1)で表される、25℃における粘度が100~100,000mm
2/sのオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】
(式中、R
1は同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、水素原子、炭素数1~32の直鎖の非置換のアルキル基、フェニル基のいずれかであり、Lは60から1500の整数である。また、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンのそれぞれの含有量は(A)オルガノポリシロキサン中で3%未満である。)
(B)アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキル酢酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、メチルタウリン酸、アラニネートおよびその塩から選択される1種又は2種以上のアニオン界面活性剤:0.1~15.0質量部、
(C)下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル:1.0~30.0質量部、
C
mH
2m+1(OCH
2CH
2)
nOH (2)
(mは12から20の整数であり、nは4~50の整数である。ただし、mが12~15の場合、nは8~50であり、mが16~20の場合、nは4~50の整数である)
(D)下記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:0.5~15.0質量部、
【化2】
(R
2は炭素数12から18のアルキル基である。a+b+cの合計は20である。)
(E)水:50~100,000質量部。
【0023】
本発明のプラスチック用離型剤であれば、希釈安定性、機械安定性に優れ、濡れ性が良好で、かつプラスチックに対してクラックが生じにくいオルガノポリシロキサンのエマルジョンであるプラスチック用離型剤を提供することが可能となる。
【0024】
本発明のプラスチック用離型剤は、さらに、(F)下記一般式(4)で表されるソルビタン脂肪酸エステルを、前記(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5.0質量部以下含有することが好ましい。
【化3】
(R
3は炭素数12から22のアルキル基である。)
【0025】
上記のようなソルビタン脂肪酸エステルを配合することにより、プラスチックに対してストレスクラックを更に生じさせにくくすることができる。また、プラスチック用離型剤の安定性が向上し、起泡性が低下し、取扱いが容易になるといった効果を得ることができる。
【0026】
前記(F)ソルビタン脂肪酸エステルの含有量が0.1~5.0質量部であることが好ましい。
(F)ソルビタン脂肪酸エステルの含有量がこの範囲内であると、本発明のプラスチック用離型剤を塗工した際にクラックがより生じにくくなる。
【0027】
また、前記(B)アニオン界面活性剤の含有量が0.1~10.0質量部であることが好ましい。
前記(B)アニオン界面活性剤の含有量がこの範囲内であると、本発明のプラスチック用離型剤の機械安定性や離型性がより高くなる傾向がある。
【0028】
また、前記プラスチック用離型剤の平均粒径が100nm以下であることが好ましい。
このようなプラスチック用離型剤であれば、希釈安定性および機械安定性がともに良好となる傾向があり、希釈や撹拌の際にオイル浮き等が生じにくくなる。
【0029】
また、前記プラスチック用離型剤は25℃のpHが4.0~10.0であることが好ましい。
このようなプラスチック用離型剤であれば、高温で保管しても、(A)成分の構造が変化し、プラスチックに対する離型性に与える影響が少ないからである。
【0030】
前記プラスチック用離型剤は食品容器包装用のプラスチックに特に好適に用いることができる。
本発明のプラスチック用離型剤はノニルフェノールやオクチルフェノールといった環境負荷物質を含んでおらず、また、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準」に認可された原料のみで本発明のプラスチック用離型剤の組成を構成することが可能であり、そのようなプラスチック用離型剤は食品トレーや卵のパック用の離型剤として好適だからである。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明によれば、エマルジョンの粒径が細かいため希釈安定性、機械安定性、保存安定性が良好であり、プラスチックに対する濡れ性に優れ、プラスチックに対しストレスクラックが生じにくいプラスチック用離型剤を提供できる。また本発明のプラスチック用離型剤はポリオレフィン等衛生協議会が提供するポジティブリストに記載された原料で構成することが可能であり、食品容器包装向けに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上述のように、希釈安定性、機械安定性、保存安定性に優れ、濡れ性が良好、かつプラスチックに対してクラックが生じないオルガノポリシロキサンのエマルジョン型離型剤が求められている。
【0033】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、25℃における粘度が100~100,000mm2/sのオルガノポリシロキサンを、アニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよび必要によりソルビタン脂肪酸エステルで乳化することにより平均粒径200nm以下のエマルジョン型のプラスチック用離型剤を調製することが可能であり、得られた離型剤は、希釈安定性、機械安定性、保存安定性に優れ、プラスチックに対する濡れ性が良好であり、またストレスクラックが生じにくい特長を有することを見出し、本発明を完成させた。また、本発明のプラスチック用離型剤はポリオレフィン等衛生協議会のポジティブリストに掲載された原料で構成することが可能であり、食品に直接接触する容器包装等にも安心して使用することができるものである。
【0034】
以下、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[プラスチック用離型剤]
本発明のプラスチック用離型剤は、下記(A)~(E)成分を含有し、平均粒径200nm以下であるものであることを特徴とするプラスチック用離型剤である。
(A)下記一般式(1)で表される、25℃における粘度が100~100,000mm
2/sのオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化4】
(式中、R
1は同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、水素原子、炭素数1~32の直鎖の非置換のアルキル基、フェニル基のいずれかであり、Lは60から1500の整数である。また、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンのそれぞれの含有量は(A)オルガノポリシロキサン中で3%未満である。)
(B)アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキル酢酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、メチルタウリン酸、アラニネートおよびその塩から選択される1種又は2種以上のアニオン界面活性剤:0.1~15.0質量部、
(C)下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル:1.0~30.0質量部、
C
mH
2m+1(OCH
2CH
2)
nOH (2)
(mは12から20の整数であり、nは4~50の整数である。ただし、mが12~15の場合、nは8~50であり、mが16~20の場合、nは4~50の整数である)
(D)下記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:0.5~15.0質量部、
【化5】
(R
2は炭素数12から18のアルキル基である。a+b+cの合計は20である。)
(E)水:50~100,000質量部。
【0035】
[(A)オルガノポリシロキサン]
(A)下記一般式(1)で表される、25℃における粘度が100~100,000mm
2/sのオルガノポリシロキサン:100質量部。
【化6】
(式中、R
1は同一もしくは異なってもよく、ヒドロキシ基、水素原子、炭素数1~32の直鎖の非置換のアルキル基、フェニル基のいずれかであり、Lは60から1500の整数である。また、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンのそれぞれの含有量は(A)オルガノポリシロキサン中で3%未満である。)
【0036】
上記式(1)において、R1は同一もしくは異なってもよく、炭素数1~32の直鎖の非置換のアルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、および水素原子のいずれかである。Lは60から1500の整数であり、好ましくは、150から1200である。炭素数1~32の直鎖の非置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、エイコシル基等のアルキル基が挙げられる。好ましくは炭素数1~20の直鎖の非置換のアルキル基、又はフェニル基であり、汎用性の観点からより好ましくはメチル基もしくはフェニル基である。また、離型性の観点から1分子中のケイ素原子に結合する有機基の少なくとも50モル%がメチル基であることが好ましい。
【0037】
(A)オルガノポリシロキサン中にオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンが多く含まれると、乳化しにくくなる、もしくは平均粒径が大きくなる、もしくは保存安定性、希釈安定性、機械安定性が低下する恐れがある。(A)オルガノポリシロキサン中のオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量はそれぞれ3%未満である。好ましくはそれぞれ1%未満、より好ましくはそれぞれ0.1%未満である。なお、各含有量の下限に制限はないが、例えば、0.001%とすることができる。
【0038】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は100~100,000mm2/sである。粘度が100mm2/sより低いと、得られる組成物は充分な離型性を示さない。また、ポリオレフィン等衛生協議会のポジティブリストに登録されているジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサンの最低粘度は100mm2/sである。一方で、(A)成分のオルガノポリシロキサンの粘度が100,000mm2/sよりも大きいと、フィルム等に塗布した場合、該表面にベタツキが生じる恐れがある。好ましくは200~50,000mm2/sであり、より好ましくは300~10,000mm2/sである。
(A)成分のオルガノポリシロキサンは25℃における粘度が上記の範囲であればよく、単独で用いても2種類以上混合しても良い。
【0039】
[(B)アニオン界面活性剤]
(B)アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキル酢酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、メチルタウリン酸、アラニネートおよびその塩から選択される1種又は2種以上のアニオン界面活性剤:0.1~15.0質量部。
【0040】
上記のアニオン界面活性剤のうち以下の構造のものは、ポリオレフィン等衛生協議会のポジティブリストに記載されたものである。本発明のプラスチック用離型剤を食品容器包装用のプラスチックに使用する場合は、以下の構造のものから選択することがより好ましい。アルキルスルホン酸塩はアルキル基の炭素数が10~20であり、塩としてはナトリウム、カリウム、アンモニウムである。炭素数としては好ましくは10~15である。炭素数が10~15の範囲だと本発明のプラスチック用離型剤であるエマルジョンが小粒径化しやすく、保存安定性が良好である。アルキルベンゼンスルホン酸塩はアルキル基の炭素数が9~20であり、塩としてはナトリウム、カリウム、アンモニウムである。炭素数としては好ましくは9~15である。炭素数が9~15の範囲だと本発明のプラスチック用離型剤は小粒径化しやすく、保存安定性が良好である。アルキルエーテル硫酸塩はアルキル基の炭素数が12~16であり、塩としてはナトリウム塩である。アルキルスルホコハク酸塩はアルキル基の炭素数が4~16である。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩はアルキル基の炭素数が12~20であり、塩としてはナトリウムおよびアンモニウムである。炭素数としては好ましくは12~16である。炭素数が12~16の範囲だと本発明のプラスチック用離型剤は小粒径化しやすく、保存安定性が良好である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩はアルキル基の炭素数が12~13であり、ポリオキシエチレン基の炭素数が4~10である。アルキル酢酸塩はアルキル基の炭素数が8~22であり、塩としてはナトリウム、カリウム、アンモニウムである。
【0041】
乳化剤である(B)成分アニオン界面活性剤は(A)成分であるオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~15.0質量部である。好ましくは0.1~10.0質量部、より好ましくは0.1~8.0質量部である。0.1質量部より少ないと、本発明のプラスチック用離型剤の機械安定性が低下する恐れがある。一方で、15.0質量部より多いと、離型性が低下する恐れがある。
【0042】
[(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル]
(C)下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル:1.0~30.0質量部
CmH2m+1(OCH2CH2)nOH (2)。
(mは12から20の整数であり、nは4~50の整数である。ただし、mが12~15の場合、nは8~50であり、mが16~20の場合、nは4~50の整数である。)
【0043】
上記式(2)の(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル基のmは12~20の整数であり、好ましくは13~18の整数であり、より好ましくは13~16の整数である。mが12より小さいと、本発明のプラスチック用離型剤を塗工したプラスチックにクラックが生じる恐れがある。一方で、20より大きいと本発明のプラスチック用離型剤の粒径が細かくなりにくく、保存安定性、希釈安定性、機械安定性が低下する恐れがある。また、アルキル基は分岐でも直鎖でもどちらでも使用可能であり、成分(A)のオルガノポリシロキサンの乳化のしやすさやプラスチックに塗工した際のクラックの生じにくさにより選択すればよい。
【0044】
上記式(2)の(C)成分ポリオキシエチレンアルキルエーテルのnは4~50の整数である。好ましくは4~30であり、より好ましくは4~25である。nが4より小さいと、本発明のプラスチック用離型剤を塗工したプラスチックにクラックが生じる恐れがある。一方で、nが50より大きいと上記式(2)のポリオキシエチレンアルキルエーテルが固体となり、取扱いが難しくなる。
また、アルキル基が短く、かつポリオキシエチレン鎖が短いと、プラスチックにクラックがより生じやすくなる。従って、アルキル基の短いポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用する際は、ポリオキシエチレン鎖の短いものは避けるべきである。具体的には、mが12~15の場合、nは8~50の整数が好ましく、mが16~20の場合、nは4~50の整数が好ましい。
【0045】
(C)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルは単独で使用しても2種類以上使用してもよい。(C)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLBは8~18とすることができ、好ましくは10~17であり、より好ましくは13~16である。保存安定性、機械安定性、希釈安定性が得られない場合はHLBの15~18の高いものとHLBの8~12の低いものをHLB13~16になるように組み合わせて使用することにより、保存安定性、機械安定性、希釈安定性が向上する。一方で、HLBの8~12の(C)成分ポリオキシエチレンアルキルエーテルを多く含む場合、本発明のプラスチック用離型剤はプラスチックにクラックを生じさせる恐れがあるため、そのような構造の(C)成分の配合量は少ない方が好ましい。
【0046】
(C)成分ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量は1.0~30.0質量部である。好ましくは2.0~25.0質量部であり、より好ましくは3.0~21.0質量部である。1.0質量部より少ないと本発明のプラスチック用離型剤の保存安定性、希釈安定性、機械安定性の低下およびプラスチックに対する濡れ性の低下の恐れがある。一方で、30.0質量部より多いと、本発明のプラスチック用離型剤をプラスチックに塗工した際にクラックが生じる恐れがある。
【0047】
成分(C)のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、下記で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル。
【0049】
[(D)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル]
(D)下記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:0.5~15.0質量部。
【化7】
(R
2は炭素数12から18のアルキル基である。a+b+cの合計は20である。)
【0050】
R2は炭素数12から18のアルキル基であり、かつa+b+cの合計は20である。その中でも炭素数が12、16、18であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートは食品添加物として認められていることから、本発明の食品容器包装用のプラスチック離型剤への使用に好適である。
【0051】
(D)成分であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは(A)成分であるオルガノポリシロキサンに対し、比較的高い乳化力を示す一方で、プラスチックに塗工した際にクラックが生じにくいといった特長がある。また、(C)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルと成分(D)であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよび後述する成分(F)であるソルビタン脂肪酸エステルを併用することで、(A)成分であるオルガノポリシロキサンを乳化したエマルジョンの安定性を向上することができるといった特長がある。
【0052】
(D)成分であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの配合量は0.5~15.0質量部である。好ましくは0.5~10.0質量部、より好ましくは2.0~10.0質量部である。(D)成分の配合がない又は(D)成分の配合量が0.5質量部より少ないと、(A)成分であるオルガノポリシロキサンを乳化したエマルジョンの安定性が低下する恐れがある。一方で、15.0質量部より多いと、本発明のプラスチック用離型剤をプラスチックに塗工した際にクラックが生じる恐れがある。
【0053】
[(E)水]
(E)水:50~100,000質量部。
【0054】
(E)成分である水の配合量は50~100,000質量部である。好ましくは500~20,000質量部、より好ましくは2,000~10,000質量部である。(E)水が50質量部未満であると、本発明のプラスチック用離型剤をプラスチックに塗工した際にべたつき、塗工ムラ、クラックが生じる恐れがある。一方で、(E)水が100,000質量部より多いと、機械安定性が低下し、希釈、撹拌後にオイル浮き等が生じる恐れがある。
【0055】
[(F)ソルビタン脂肪酸エステル]
本発明のプラスチック用離型剤は、さらに、(F)下記一般式(4)で表されるソルビタン脂肪酸エステルを、前記(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5.0質量部以下含有することが好ましい。
【化8】
(R
3は炭素数12から22のアルキル基である。)
【0056】
R3は炭素数12から22のアルキル基である。乳化性の観点から、好ましくは12~20であり、より好ましくは12~18である。R3のアルキル基の炭素数が12以上であると、合成樹脂に塗工した際にクラックが生じる恐れがない。一方で、R3のアルキル基の炭素数が22以下であると、塗工した合成樹脂が白化することもない。ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステルは食品添加剤としても使用を認可されおり、かつポリオレフィン等衛生協議会の食品容器包装等に関する自主基準のポジティブリストに認可されている化合物であり、本発明の用途に最適である。
【0057】
(F)成分であるソルビタン脂肪酸エステルの配合量は0.1~5.0質量部とすることができる。好ましくは0.1~3.0質量部、より好ましくは0.2~3.0質量部である。(F)成分であるソルビタン脂肪酸エステルが5.0質量部以下であれば、本発明のプラスチック用離型剤を塗工した際にクラックが生じにくくなる。
【0058】
前述した通り、本発明のプラスチック用離型剤の保存安定性、機械安定性、希釈安定性を向上するためには高HLBと低HLBの(C)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを組み合わせて使用することが有効であるが、一方で8~12のHLBの(C)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを多く含むプラスチック用離型剤はプラスチックにストレスクラックを生じさせる恐れがある。(F)成分であるソルビタン脂肪酸エステルのHLBは一般的に3.0~10.0と低いが、同程度のHLBの(C)成分よりもプラスチックに対してストレスクラックを生じさせにくく、また、(D)成分と(F)成分を組み合わせてプラスチック用離型剤のHLBを13~16とすることで、プラスチック用離型剤の安定性が一層向上する。また、(F)成分を配合することで起泡性が低下し、取扱いが容易になる場合がある。
【0059】
ノニオン界面活性剤である(C)成分、(D)成分、および(F)成分の合計は(A)成分100質量部に対して2.5~50.0質量部とすることができる。好ましくは、2.5~35.0質量部、より好ましくは3.0~30.0質量部である。2.5質量部以上であれば、本発明のプラスチック用離型剤の安定性が低下せず、濃淡分離やオイル浮き等を生じにくい。また、プラスチックに塗工した際に、ハジキが発生しにくくなる。一方で、50.0質量部以下であれば、プラスチック離型剤を塗工した際に、プラスチックにストレスクラックが生じにくい。
【0060】
[組成物の調製]
本発明のプラスチック用離型剤の具体的な調製方法の一例は、主に以下に示す通りである。
(A)オルガノポリシロキサン、(B)アニオン界面活性剤、(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、(D)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、必要に応じて(F)ソルビタン脂肪酸エステル、および(E)水の一部を撹拌し、乳化した後に、残りの(E)水で希釈する。(A)成分の乳化が起こりにくい場合は、(A)~(D)成分、(F)成分のそれぞれの一部と(E)成分の一部を加えて撹拌した後、残りの(A)~(D)成分、(F)成分を加えてさらに撹拌することにより、容易に乳化をすることができる。特に(A)成分の粘度が1,000mm2/s未満の場合、(A)成分の乳化が起こりにくくなる場合がある。そのような場合は上述したように(A)~(D)成分、(F)成分を分割して加えることで、容易に乳化することができる。乳化処方の詳細の一例は以下の通りである。
【0061】
コンビミックス(プライミクス社)に(A)オルガノポリシロキサン、(B)アニオン界面活性剤、(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、(D)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び必要に応じて(F)ソルビタン脂肪酸エステル、および(E)水の一部を配合し、ホモミキサー(ステーター内のローターの回転による攪拌機)2,000rpmもしくはディスパー(歯形の羽根の回転による攪拌機)2,000rpm、およびアンカー20rpmで乳化する。全体が乳化した後、ディスパー2,000rpm、アンカー30rpmで所定の粒径になるまで15~180分攪拌した後、残りの(E)水を加えてホモミキサー2,000~3,000rpmにより希釈し、本発明のプラスチック用離型剤を調製する。
【0062】
乳化する際の温度について、好ましくは0~80℃、より好ましくは10~60℃である。10℃~80℃の温度では乳化しやすく、製造した乳化物がより安定になる傾向がある。乳化する際、圧力は常圧だけでなく減圧もしくは加圧でもよい。減圧もしくは加圧下で乳化する場合、泡が混入しにくくなり効果的に乳化できることがある。減圧にする場合の圧力は、原料が揮発しないよう原料の蒸気圧より高いことが好ましい。また、乳化時間は、特に指定はなく目的の粒径になった時間とすればよいが、一般的には30~360分間とすることが好ましい。
【0063】
乳化する際の乳化機は、原料や乳化組成物を攪拌することができるものであれば、特に制限はない。ローターとステーターからなる攪拌部を有するコロイドミル(IKA社、PUC社、日本精機製作所、イワキ社)やハイシェアミキサー(silverson社、プライミクス社)、ホモディスパー(プライミクス社)、アジホモミキサー(プライミクス社)、ホモミキサーとホモディスパーとアンカーミキサーを組み合わせた3軸型分散混練機であるコンビミックス(プライミクス社)、同方向スクリューもしくは異方向スクリューを有する2軸混合機であるHAAKE Mini LabII(Thermo scientific社)やMC15、MC5(レオ・ラボ社)等を使用することが可能である。
【0064】
本発明のプラスチック用離型剤には、本発明の目的に応じて、界面活性剤の他に保護コロイド剤ないし増粘剤としてポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸塩、キサンタン・ガム、アクリル酸重合体などの水溶性高分子を配合してもよい。さらにオキサゾリン系化合物や芳香族カルボン酸塩などの抗菌剤ないし防腐剤、香料、酸化防止剤、防錆剤、染料、充填剤、硬化触媒、有機粉体、無機粉体などを配合してもよい。
【0065】
本発明のプラスチック用離型剤の平均粒径は200nm以下である。好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。200nmより平均粒径が大きいと、希釈安定性および機械安定性が低下し、希釈や撹拌の際にオイル浮き等が生じる恐れがある。また、長期に保存した場合、濃淡分離を生じる恐れもある。なお、平均粒径の下限としては特に制限はないが、例えば、10nmとすることができる。(株)堀場製作所製LA920もしくはLA960、又はベックマンコールター社製N4 PLUSにより測定することができるが、本明細書においてはLA960で測定した平均粒径を示している。
【0066】
本発明のプラスチック用離型剤のpHは25℃において4.0~10.0であることが望ましい。好ましくは4.5~9.0、より好ましくは4.5~8.0である。pHが4.0~10.0の範囲内であれば、高温で保管した際に、(A)成分の構造が変化し、プラスチックに対する離型性に与える影響は少ない。
【0067】
上記の如くして得られたエマルジョンは、食品包装用のプラスチックシート等に用いる離型剤として極めて有用である。例えば(A)成分の含有量が0.1~2.0重量%である本発明のプラスチック用離型剤をローターダンプニング、グラビア方式もしくはスプレー方式で塗工できる。その塗布量は一般に乾燥基準で0.01~1.0g/m2、特に0.02~0.2g/m2が好適である。0.01g/m2以上であれば十分な離型性が得られ、また、1.0g/m2以下であれば、透明性およびベタつき感の観点から好ましい。
【0068】
食品容器包装用のプラスチックとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレンテトラシクロドデセン、エチレン2-ノルボルネン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリルスチレン、メタクリル樹脂、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、および塩化ビニル等が挙げられる。
【0069】
本発明によれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよび必要に応じてソルビタン脂肪酸エステルを特定の割合で配合し、オルガノポリシロキサンを乳化することで、優れた離型性を有し、かつ希釈安定性、機械安定性が良好で、さらにストレスクラックを生じにくいプラスチック用離型剤を提供することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、粘度はBM型もしくはBH型回転粘度計又はオストワルド粘度計により測定した25℃における値である。
【0071】
[実施例1]
【化9】
上記式で示される(A)成分[1]オルガノポリシロキサン(1a)(L1は約550、粘度10,000mm
2/s)30質量部(90g)、(B)成分[1]エマール270J(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 70%水溶液)0.2質量部(0.6g)、(C)成分[1]レオコールTDN90-80(2a)(ライオン製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル80%水溶液)6.0質量部(18g)、(D)成分[1]ノニオンLT-221(日油製、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)1.6質量部(4.8g)、(F)成分ノニオンLP-20R(日油製、モノラウリン酸ソルビタン)0.4質量部(1.2g)および(E)-1成分である水1.5質量部(4.5g)をホモディスパー2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら1,500rpmで20分撹拌した後、(E)-2成分である水を60.15質量部(180.45g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物1を調製した。
【0072】
[実施例2]
(A)成分[1]オルガノポリシロキサン(1a)(L1は約550、粘度10,000mm2/s)30質量部(90g)、(B)成分[1]エマール270J(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 70%水溶液)1.3質量部(3.9g)、(C)成分[1]レオコールTDN90-80(2a)(ライオン製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル80%水溶液)6.0質量部(18g)、(D)成分[1]ノニオンLT-221(日油製、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)1.6質量部(4.8g)、(F)成分ノニオンLP-20R(日油製、モノラウリン酸ソルビタン)0.4質量部(1.2g)および(E)-1成分である水1.0質量部(3.0g)をホモディスパー2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら1,500rpmで20分撹拌した後、(E)-2成分である水を59.55質量部(178.65g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物2を調製した。
【0073】
[実施例3]
【化10】
上記式で示される(A)成分[2]オルガノポリシロキサン(1b)(L2は約200、粘度1,000mm
2/s)30質量部(90g)、(B)成分[1]エマール270J(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 70%水溶液)1.3質量部(3.9g)、(C)成分[1]レオコールTDN90-80(2a)(ライオン製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル80%水溶液)6.0質量部(18g)、(D)成分[1]ノニオンLT-221(日油製、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)1.6質量部(4.8g)、(F)成分ノニオンLP-20R(日油製、モノラウリン酸ソルビタン)0.4質量部(1.2g)および(E)-1成分である水1.0質量部(3.0g)をホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し全体が乳化したら、ホモディスパーII1,500rpmで20分撹拌した後、(E)-2成分である水を59.55質量部(178.65g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物3を調製した。
【0074】
[実施例4]
(A)成分[2]オルガノポリシロキサン(1b)(L2は約200、粘度1,000mm2/s)30質量部(90g)、(B)成分[1]エマール270J(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 70%水溶液)1.3質量部(3.9g)、(B)成分[2]ニューコール291M(日本乳化剤製、ジオクチルスルホサクシネート・ナトリウム 70%水溶液)1.0質量部(3.0g)、(C)成分[1]レオコールTDN90-80(2a)(ライオン製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル80%水溶液)1.25質量部(3.75g)、(D)成分[2]レオドールTW-O120V(花王製、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)1.6質量部(4.8g)、(F)成分ノニオンLP-20R(日油製、モノラウリン酸ソルビタン)0.4質量部(1.2g)および(E)-1成分である水1.5質量部(4.5g)をホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら、ホモディスパーII、1,500rpmで20分撹拌した後、(E)-2成分である水を62.8質量部(188.4g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物4を調製した。
【0075】
[実施例5]
(A)成分[1]オルガノポリシロキサン(1a)(L1は約550、粘度10,000mm2/s)30質量部(90g)、(B)成分[1]エマール270J(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 70%水溶液)1.3質量部(3.9g)、(C)成分[1]レオコールTDN90-80(2a)(ライオン製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル80%水溶液)6.0質量部(18g)、(D)成分[2]レオドールTW-O120V(花王製、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)2.0質量部(6.0g)、および(E)-1成分である水1.0質量部(3.0g)をホモディスパー2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら1,500rpmで20分撹拌した後、(E)-2成分である水を59.55質量部(178.65g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物5を調製した。
【0076】
[実施例6]
(A)成分[1]オルガノポリシロキサン(1a)(L1は約550、粘度10,000mm2/s)30質量部(90g)、(B)成分[1]エマール270J(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 70%水溶液)1.3質量部(3.9g)、(C)成分[1]レオコールTDN90-80(2a)(ライオン製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル80%水溶液)6.0質量部(18g)、(D)成分[2]レオドールTW-O120V(花王製、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)1.6質量部(4.8g)、(F)成分ノニオンLP-20R(日油製、モノラウリン酸ソルビタン)0.4質量部(1.2g)および(E)-1成分である水1.0質量部(3.0g)をホモディスパー2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら1,500rpmで20分撹拌した後、(E)-2成分である水を59.55質量部(178.65g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物6を調製した。
【0077】
[比較例1]
(A)成分[1]オルガノポリシロキサン(1a)(L1は約550、粘度10,000mm2/s)30質量部(90g)、(B)成分[1]エマール270J(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 70%水溶液)1.3質量部(3.9g)および(C)成分[1]レオコールTDN90-80(2a)(ライオン製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル80%水溶液)8.5質量部(25.5g)、(E)-1成分である水1.5質量部(4.5g)をホモディスパー2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら1,500rpmで20分撹拌した後、(E)-2成分である水を58.55質量部(175.65g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物7を調製した。
【0078】
[比較例2]
(A)成分[1]オルガノポリシロキサン(1a)(L1は約550、粘度10,000mm2/s)30質量部(90g)、(B)成分[1]エマール270J(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 70%水溶液)1.3質量部(3.9g)、界面活性剤[2]エマルゲン104P(2b)(花王製、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル)4.8質量部(14.4g)、(D)成分[2]レオドールTW-O120V(花王製、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)1.6質量部(4.8g)、(F)成分ノニオンLP-20R(日油製、モノラウリン酸ソルビタン)0.4質量部(1.2g)および(E)-1成分である水2.0質量部(6.0g)をホモディスパー2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら1,500rpmで20分撹拌した後、(E)-2成分である水を59.75質量部(179.25g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物8を調製した。
【0079】
[比較例3]
成分[3]オルガノポリシロキサン(1c)(L1は約550、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンそれぞれの含有量は3.3%、粘度7,000mm2/s)30質量部(90g)、(B)成分[1]エマール270J(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 70%水溶液)1.3質量部(3.9g)、(C)成分[1]レオコールTDN90-80(2a)(ライオン製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル80%水溶液)6.0質量部(18.0g)、(D)成分[1]ノニオンLT-221(日油製、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)1.6質量部(4.8g)、(F)成分ノニオンLP-20R(日油製、モノラウリン酸ソルビタン)0.4質量部(1.2g)および(E)-1成分である水2.0質量部(6.0g)をホモディスパー2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら1,500rpmで15分撹拌した後、(E)-2成分である水を58.55質量部(175.65g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物9を調製した。
【0080】
[比較例4]
(A)成分[1]オルガノポリシロキサン(1a)(L1は約550、粘度10,000mm2/s)30質量部(90g)、(C)成分[1]レオコールTDN90-80(2a)(ライオン製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル80%水溶液)6.0質量部(18g)、(D)成分[1]ノニオンLT-221(日油製、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)1.6質量部(4.8g)、(F)成分ノニオンLP-20R(日油製、モノラウリン酸ソルビタン)0.4質量部(1.2g)および(E)-1成分である水1.5質量部(4.5g)をホモディスパー2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら1,500rpmで20分撹拌した後、(E)-2成分である水を60.35質量部(181.05g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物10を調製した。
【0081】
[比較例5]
(A)成分[1]オルガノポリシロキサン(1a)(L1は約550、粘度10,000mm2/s)30質量部(90g)、(B)成分[1]エマール270J(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 70%水溶液)1.3質量部(3.9g)、界面活性剤[3]ポリオキシエチレンアルキルエーテル(2d)(CmH2m+1(OCH2CH2)nOH、mは10、nは3)2.0質量部(6.0g)、界面活性剤[4]ポリオキシエチレンアルキルエーテル65%水溶液(2e)(CmH2m+1(OCH2CH2)nOH、mは10、nは40)4.3質量部(12.9g)、(D)成分[1]ノニオンLT-221(日油製、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)1.6質量部(4.8g)、(F)成分ノニオンLP-20R(日油製、モノラウリン酸ソルビタン)0.4質量部(1.2g)および(E)-1成分である水1.0質量部(3.0g)をホモディスパー2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら1,500rpmで20分撹拌した後、(E)-2成分である水を59.25質量部(177.75g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物11を調製した。
【0082】
[比較例6]
オクタメチルシクロテトラシロキサン29.914質量部(89.742g)、ヘキサメチルジシロキサン0.086質量部(0.258g)の混合物に、(B)成分[3]エマール2FG 1質量部(3g)を(E)-1成分である水9質量部(27g)に溶解した水溶液を配合し、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら、5,000rpmに上げて約15分間高速攪拌した後、(E)-2成分である水49.35質量部(148.05g)を加えてホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した。次いでこのエマルジョンを高圧ホモジナイザーにより300kg/cm2の圧力で二次乳化した後、50℃で20時間加熱した後、約15℃で10時間冷却し、10%炭酸ナトリウム水溶液2質量部(6g)を加えて中和し、ジメチルポリシロキサンのエマルジョンを得た。このエマルジョン100質量部に対して、同量のイソプロピルアルコールを添加してジメチルポリシロキサンの抽出を行ない、抽出油を水洗後、105℃で乾燥して得たジメチルポリシロキサンの粘度は25℃において約10,000mm2/sであった。また、このエマルジョン中にはオクタメチルシクロテトラシロキサンが1.9%、デカメチルシクロペンタシロキサンが0.8%、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンが0.15%含まれていた。この乳化重合したエマルジョン91.35質量部(274.05g)に対して(C)成分[1]レオコールTDN90-80(2a)(ライオン製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル80%水溶液)8.5質量部(25.5g)および安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、碇型の撹拌棒で100rpm、30分混合し、乳化組成物12を調製した。
【0083】
[比較例7]
オクタメチルシクロテトラシロキサン29.914質量部(89.742g)、ヘキサメチルジシロキサン0.086質量部(0.258g)の混合物に、(B)成分[3]エマール2FG 1質量部(3g)を(E)-1成分である水9質量部(27g)に溶解した水溶液を配合し、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら、5,000rpmに上げて約15分間高速攪拌した後、(E)-2成分である水54.85質量部(164.55g)を加えてホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した。次いでこのエマルジョンを高圧ホモジナイザーにより、300kg/cm2の圧力で二次乳化した後、50℃で20時間加熱した後、約15℃で10時間冷却し、10%炭酸ナトリウム水溶液2質量部(6g)を加えて中和し、ジメチルポリシロキサンのエマルジョンを得た。このエマルジョン100質量部に対して、同量のイソプロピルアルコールを添加してジメチルポリシロキサンの抽出を行ない、抽出油を水洗後、105℃で乾燥して得たジメチルポリシロキサンの粘度は25℃において約10,000mm2/sであった。また、このエマルジョン中にはオクタメチルシクロテトラシロキサンが1.9%、デカメチルシクロペンタシロキサンが0.8%、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンが0.15%含まれていた。この乳化重合したエマルジョン96.95質量部(290.85g)に対してグリセリン3質量部(9g)および安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、碇型の撹拌棒で100rpm、30分混合し、乳化組成物13を調製した。
【0084】
[比較例8]
(A)成分[1]オルガノポリシロキサン(1a)(L1は約550、粘度10,000mm2/s)30質量部(90g)、(B)成分[1]エマール270J(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 70%水溶液)1.3質量部(3.9g)、(C)成分[1]レオコールTDN90-80(2a)(ライオン製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル80%水溶液)12.0質量部(36g)、(D)成分[1]ノニオンLT-221(日油製、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)1.6質量部(4.8g)、(F)成分ノニオンLP-20R(日油製、モノラウリン酸ソルビタン)0.4質量部(1.2g)および(E)-1成分である水1.0質量部(3.0g)をホモディスパー2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら1,500rpmで20分撹拌した後、(E)-2成分である水を53.55質量部(160.65g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物14を調製した。
[比較例9]
(A)成分[1]オルガノポリシロキサン(1a)(L1は約550、粘度10,000mm2/s)30質量部(90g)、(B)成分[1]エマール270J(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 70%水溶液)1.3質量部(3.9g)、界面活性剤[5]ポリオキシエチレンアルキルエーテル(2f)(CmH2m+1(OCH2CH2)nOH、mは22、nは20)4.8質量部(14.4g)、(D)成分[1]ノニオンLT-221(日油製、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)1.6質量部(4.8g)、(F)成分ノニオンLP-20R(日油製、モノラウリン酸ソルビタン)0.4質量部(1.2g)および(E)-1成分である水2.5質量部(7.5g)をホモディスパー2.5型(プライミクス製)500rpmで撹拌し、全体が乳化したら1,500rpmで20分撹拌した後、(E)-2成分である水を59.25質量部(177.75g)加え、ホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで3分撹拌し希釈した後に安息香酸ナトリウム0.1質量部(0.3g)、クエン酸0.05質量部(0.15g)を加え、さらにホモミクサーMARKII 2.5型(プライミクス製)1,500rpmで1分撹拌し、乳化組成物15を調製した。
【0085】
上記実施例、比較例について、平均粒径、pH、遠心分離安定性、水希釈安定性、機械安定性、プラスチック(PET)に対する濡れ性、プラスチック(OPS)に対するストレスクラックの評価を行った。これらの結果を表1~3に示す。
【0086】
平均粒径:
乳化組成物1~15を水で約10倍に希釈し、HORIBA LA960で測定した値である。
【0087】
pH:
乳化組成物1~15を25℃でpHメーター(HORIBA製 LAQUA)にて測定した値である。
【0088】
遠心分離安定性:
乳化組成物1~15を約15mL専用のチューブに入れて、遠心分離器H-19FM(コクサン社製)で3,000rpm、15分間回転させた後、チューブの上層部1.0gと下層部1.0gの不揮発分(105℃×3時間)を測定する。
上層部の不揮発分/下層部の不揮発分=0.95~1.05を合格とする。それ以外の場合は、経時で保管した際に濃淡分離する可能性がある。
【0089】
水希釈安定性:
各乳化組成物1~15の2gと水98gを混合し、それぞれプラスチック用離型剤1を調製した。200mLビーカーに全量入れて、1日静置し、プラスチック用離型剤1の表面を観察した。
○:濃淡分離することなく、プラスチック用離型剤が分散。
表面にオイルスポットや干渉膜なし、もしくは表面に1~3割程度干渉膜が生じる。
△:濃淡分離することなく、プラスチック用離型剤が分散。
表面にオイルスポットや干渉膜なし、もしくは表面に3~6割程度干渉膜が生じる。
×:プラスチック用離型剤が不均一に分散。
もしくは、表面に6割以上の干渉膜もしくはオイルスポットが生じる。
○および△を合格とする。
【0090】
機械安定性:
各乳化組成物1~15の10gと水90gを混合し、それぞれプラスチック用離型剤2を調製した。プラスチック用離型剤2を200mLビーカーに入れ、ホモミクサーMARKIIで3,000rpm、10分間撹拌した後1日静置し、液面を観察した。
○:濃淡分離することなく、プラスチック用離型剤が分散。
表面にオイルスポットや干渉膜なし、もしくは表面に1~3割程度干渉膜が生じる。
△:濃淡分離することなく、プラスチック用離型剤が分散。
表面にオイルスポットや干渉膜なし、もしくは表面に3~6割程度干渉膜が生じる。
×:プラスチック用離型剤が濃淡分離する。
もしくは、表面に6割以上の干渉膜もしくはオイルスポットが生じる。
○および△を合格とする。
【0091】
濡れ性:
上記プラスチック用離型剤2をワイヤーバーNO.3(R.D.Specialties,U.S.A製)によりPETフィルムに塗工する。目視ではじきを観察する。
○:全体に濡れる
△:一部にはじきを生じる
×:塗工後すぐに全体がはじく
○および△を合格とする。
【0092】
クラック性:
上記プラスチック用離型剤1をガーゼでOPSシートに塗工する。直径37mmの筒にOPSシートを巻き付け、クラックが生じるか目視で確認する。
○:筒に巻き付け後75秒以内にクラックは生じない
×:筒に巻き付け後75秒以内にクラックが生じる
○を合格とする。
【0093】
(成分(A)および比較用オルガノポリシロキサン)
成分(A)[1]:オルガノポリシロキサン(1a)
(L1は約550、粘度10,000mm2/s)
成分(A)[2]:オルガノポリシロキサン(1b)
(L2は約200、粘度1,000mm2/s)
上記成分(A)[1],[2]のオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンそれぞれの含有量は0.1%未満である。
成分[3]:オルガノポリシロキサン(1c)
(L1は約550、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンそれぞれの含有量は3.3%、粘度7,000mm2/s)
オルガノポリシロキサン(1c)は成分(A)オルガノポリシロキサン(1a)にオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンがそれぞれ3.3%になるように配合したものである。
成分[4]:オルガノポリシロキサン(1d)
(L1は約550)
オルガノポリシロキサン(1d)は乳化重合により調製したものであり、オルガノポリシロキサン(1d)100質量部中にオクタメチルシクロテトラシロキサン6.3%、デカメチルシクロペンタシロキサン2.7%、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン0.5%含まれている。
【0094】
(成分(B))
成分(B)[1]:エマール270J(花王製)
ポリオキシエチレン(2)アルキルエーテル硫酸ナトリウム70%水溶液
成分(B)[2]:ニューコール291M(日本乳化剤製)
ジオクチルスルホサクシネート・ナトリウム70%水溶液
成分(B)[3]:エマール2FG(花王製)
ラウリル硫酸Na
【0095】
(成分(C)および比較用界面活性剤)
成分(C)[1]:レオコールTDN90-80(ライオン製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル 80%水溶液)(2a)
(CmH2m+1(OCH2CH2)nOHの80%水溶液、mは13、nは9)
界面活性剤[2]:エマルゲン104P(花王製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(2b)
(CmH2m+1(OCH2CH2)nOH、mは12、nは4)
界面活性剤[3]:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(2d)
(CmH2m+1(OCH2CH2)nOH、mは10、nは3)
界面活性剤[4]:ポリオキシエチレンアルキルエーテル 65%水溶液(2e)
(CmH2m+1(OCH2CH2)nOH、mは10、nは40)
界面活性剤[5]:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(2f)
(CmH2m+1(OCH2CH2)nOH、mは22、nは20)
【0096】
(成分(D))
成分(D)[1]:ノニオンLT-221(日油製)
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン
成分(D)[2]:レオドールTW-O120V(花王製)
モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン
【0097】
(成分(E))
成分(E)-1、成分(E)-2:水
【0098】
(成分(F))
成分(F):ノニオンLP-20R(日油製)モノラウリン酸ソルビタン
【0099】
【0100】
【0101】
【表3】
比較例6、7では10%ラウリル硫酸水溶液1.0質量部と10%炭酸ナトリウム水溶液2質量部が反応し、最終的な乳化組成物ではラウリル硫酸ナトリウム1.1質量部となる。
【0102】
表1から、本発明のプラスチック用離型剤は希釈安定性、機械安定性に優れ、濡れ性が良好で、かつプラスチックに対してクラックが生じにくいオルガノポリシロキサンのエマルジョンであるプラスチック用離型剤であることがわかる。
【0103】
これに対して、本発明における成分(D)も(F)も含有しない比較例1、6では、機械安定性とクラック性が劣っていた。
また、比較例2、6、7では、離型剤の平均粒径が200nmより大きく、このため機械安定性が低下したとも考えられる。
【0104】
本発明の成分(C)と異なり、CmH2m+1(OCH2CH2)nOH中、mは12であるがnが4である比較例2においては、クラックが生じやすくなった。
また、本発明の成分(C)におけるCmH2m+1(OCH2CH2)nOH中、mもnも下限を下回る界面活性剤[3]を使用した比較例5でも、クラックが生じやすくなった。
さらに、本発明の成分(C)と異なり、CmH2m+1(OCH2CH2)nOH中、nは20であるがmが22である比較例9においては、機械安定性が低下した。
【0105】
オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量がそれぞれ3%を超える比較例3では、機械安定性が低下した。
【0106】
本発明の成分(B)を含有しない比較例4では、機械安定性が低下した。
【0107】
本発明における成分(C)、(D)、(F)を含有していない比較例7では、ノニオン界面活性剤は使用されてなく、はじきが発生し、濡れ性が劣る結果となった。
【0108】
また、成分(C)を、本発明における成分(A)に対する配合量の範囲の上限を超えて含有した比較例8では、クラックが生じやすくなった。
【0109】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。