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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/378 20110101AFI20220916BHJP
   H04N 5/341 20110101ALI20220916BHJP
   H04N 5/374 20110101ALI20220916BHJP
【FI】
H04N5/378
H04N5/341
H04N5/374
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020021383
(22)【出願日】2020-02-12
(62)【分割の表示】P 2017198053の分割
【原出願日】2013-08-21
(65)【公開番号】P2020099082
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-02-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綱井 史郎
【合議体】
【審判長】畑中 高行
【審判官】渡辺 努
【審判官】新井 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-80490(JP,A)
【文献】特開2004-363869(JP,A)
【文献】特開2008-85552(JP,A)
【文献】特開2013-161945(JP,A)
【文献】特開2013-31060(JP,A)
【文献】国際公開第2013/41924(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N5/225-5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行方向と列方向とにおいて並んで配置される複数の画素を有する単位ブロックが前記行方向と前記列方向とにおいてそれぞれ配置される撮像素子と、
前記複数の単位ブロックのうち、少なくとも前記列方向において隣りに並んで配置される第1単位ブロックおよび第2単位ブロックそれぞれにおいて、前記行方向に配置される画素ごとに前記列方向に向かって順次信号を読み出すための駆動部と、
前記列方向において互いに隣り合って配置される、前記第1単位ブロックの第1画素と前記第2単位ブロックの第2画素とからそれぞれ読み出される信号の相関を示す評価値を算出する相関算出部と、
前記相関算出部で算出された前記評価値により、前記第1単位ブロックの画素と前記第2単位ブロックの画素とからそれぞれ読み出される信号のうち、いずれか一方の信号に対して前記相関が大きくなるように補正する補正部と、
を備える撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、前記第1単位ブロックが有する前記画素から信号を読み出すための第1行制御部と、前記第2単位ブロックが有する前記画素から信号を読み出すための第2行制御部と、を有する撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置において、
前記第1行制御部は、前記第1単位ブロックの前記画素に駆動信号を出力し、
前記第2行制御部は、前記第2単位ブロックの前記画素に駆動信号を出力する撮像装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、前記複数の単位ブロックが配置される半導体基板を有する撮像チップと、前記第1行制御部と前記第2行制御部とが配置される半導体基板を有する信号処理チップと、を有する撮像装置。
【請求項5】
請求項4に記載の撮像装置において、
前記撮像チップは、前記信号処理チップにより積層される撮像装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、前記第1単位ブロックの前記画素からの信号を伝送する第1伝送路と、
前記第2単位ブロックの前記画素からの信号を伝送する第2伝送路と、を有し、
前記第1伝送路は、前記第1単位ブロックにおいて前記列方向において並んで配置される複数の前記画素に接続され、
前記第2伝送路は、前記第2単位ブロックにおいて前記列方向において並んで配置される複数の前記画素に接続される撮像装置。
【請求項7】
請求項6に記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、前記第1伝送路に接続され、前記第1単位ブロックの前記画素から読み出された信号をデジタル信号に変換する第1変換部と、前記第2伝送路に接続され、前記第2単位ブロックの前記画素から読み出された信号をデジタル信号に変換する第2変換部と、を有する撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の撮像装置において、
前記第1変換部と前記第2変換部は、前記信号処理チップが有する半導体基板に配置される撮像装置。
【請求項9】
請求項に記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、前記第1単位ブロックの前記画素からの信号を伝送する第1伝送路と、
前記第2単位ブロックの前記画素からの信号を伝送する第2伝送路と、を有し、
前記第1伝送路は、前記第1単位ブロックにおいて前記列方向において並んで配置される複数の前記画素に接続され、
前記第2伝送路は、前記第2単位ブロックにおいて前記列方向において並んで配置される複数の前記画素に接続される撮像装置。
【請求項10】
請求項に記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、前記第1伝送路に接続され、前記第1単位ブロックの前記画素から読み出された信号をデジタル信号に変換する第1変換部と、前記第2伝送路に接続され、前記第2単位ブロックの前記画素から読み出された信号をデジタル信号に変換する第2変換部と、を有する撮像装置。
【請求項11】
請求項10に記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、前記複数の単位ブロックが配置される半導体基板を有する撮像チップと、前記第1変換部と前記第2変換部とが配置される半導体基板を有する信号処理チップと、を有する撮像装置。
【請求項12】
請求項11に記載の撮像装置において、
前記撮像チップは、前記信号処理チップにより積層される撮像装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記第1画素は、前記第1単位ブロックが有する前記複数の画素のうち、前記第1単位ブロックにおいて最後に読み出される、前記行方向において並んで配置される画素に含まれ、
前記第2画素は、前記第2単位ブロックが有する前記画素のうち、前記第2単位ブロックにおいて最初に読み出される前記行方向において並んで配置される前記複数の画素に含まれる撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
行列状に配された複数の画素を有する撮像素子について、いわゆるローリングシャッタ方式が知られている。当該ローリングシャッタ方式では、同一行の画素が選択されて画素信号が蓄積および読み出される動作が、行ごとに順次繰り返される。さらにローリングシャッタ方式に代えて、グローバルシャッタを用いることで、動体を撮像した場合に生じるローリング歪みを防ぐことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 再公表2010/023903
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、グローバルシャッタは配線のレイアウト等が複雑になる、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、撮像装置であって、行方向と列方向とにおいて並んで配置される複数の画素を有する単位ブロックが行方向と列方向とにおいてそれぞれ配置される撮像素子と、複数の単位ブロックのうち、少なくとも列方向において隣りに並んで配置される第1単位ブロックおよび第2単位ブロックそれぞれにおいて、行方向に配置される画素ごとに列方向に向かって順次信号を読み出すための駆動部と、列方向において互いに隣り合って配置される、第1単位ブロックの第1画素と第2単位ブロックの第2画素とからそれぞれ読み出される信号の相関を示す評価値を算出する相関算出部と、相関算出部で算出された評価値により、第1単位ブロックの画素と第2単位ブロックの画素とからそれぞれ読み出される信号のうち、いずれか一方の信号に対して相関が大きくなるように補正する補正部と、を備える。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態に係る裏面照射型の撮像素子の断面図である。
図2】撮像チップの画素配列と単位ブロックを説明する図である。
図3】画素に対応する回路図である。
図4】単位ブロックおよびその周辺回路並びにそれらの接続関係の概略を示す。
図5】本実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
図6】駆動部の具体的構成を示すブロック図である。
図7】演算回路の機能ブロックを示す。
図8】単位ブロックの各行の電荷蓄積、読み出し等の動作のタイミングチャートを示す。
図9】撮像素子に入射する被写体像の一例を示す。
図10】補正前の撮像画像を示す。
図11】演算回路の動作を示すフローチャートである。
図12】補正後の撮像画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係る裏面照射型の撮像素子100の断面図である。撮像素子100は、入射光に対応した画素信号を出力する撮像チップと113と、画素信号を処理する信号処理チップ111と、画素信号を記憶するメモリチップ112とを備える。これら撮像チップ113、信号処理チップ111およびメモリチップ112は積層されており、Cu等の導電性を有するバンプ109により互いに電気的に接続される。
【0009】
なお、図示するように、入射光は主に白抜き矢印で示すZ軸プラス方向へ向かって入射する。本実施形態においては、撮像チップ113において、入射光が入射する側の面を裏面と称する。また、座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面右方向をX軸プラス方向、Z軸およびX軸に直交する紙面手前方向をY軸プラス方向とする。以降のいくつかの図においては、図1の座標軸を基準として、それぞれの図の向きがわかるように座標軸を表示する。
【0010】
撮像チップ113の一例は、裏面照射型のMOSイメージセンサである。PD層は、配線層108の裏面側に配されている。PD層106は、二次元的に配された複数のPD(フォトダイオード)104、および、PD104に対応して設けられたトランジスタ105を有する。
【0011】
PD層106における入射光の入射側にはパッシベーション膜103を介してカラーフィルタ102が設けられる。カラーフィルタ102は、互いに異なる波長領域を透過する複数の種類を有しており、PD104のそれぞれに対応して特定の配列を有している。カラーフィルタ102の配列については後述する。カラーフィルタ102、PD104およびトランジスタ105の組が一つの画素を形成する。
【0012】
カラーフィルタ102における入射光の入射側には、それぞれの画素に対応して、マイクロレンズ101が設けられる。マイクロレンズ101は、対応するPD104へ向けて入射光を集光する。
【0013】
配線層108は、PD層106からの画素信号を信号処理チップ111に伝送する配線107を有する。配線107は多層であってもよく、また、受動素子および能動素子が設けられてもよい。
【0014】
配線層108の表面には複数のバンプ109が配される。当該複数のバンプ109が信号処理チップ111の対向する面に設けられた複数のバンプ109と位置合わせされて、撮像チップ113と信号処理チップ111とが加圧等されることにより、位置合わせされたバンプ109同士が接合されて、電気的に接続される。
【0015】
同様に、信号処理チップ111およびメモリチップ112の互いに対向する面には、複数のバンプ109が配される。これらのバンプ109が互いに位置合わせされて、信号処理チップ111とメモリチップ112とが加圧等されることにより、位置合わせされたバンプ109同士が接合されて、電気的に接続される。
【0016】
なお、バンプ109間の接合には、固相拡散によるCuバンプ接合に限らず、はんだ溶融によるマイクロバンプ結合を採用しても良い。また、バンプ109は、例えば後述する一つの出力配線に対して一つ程度設ければ良い。したがって、バンプ109の大きさは、PD104のピッチよりも大きくても良い。また、画素が配列された画素領域以外の周辺領域において、画素領域に対応するバンプ109よりも大きなバンプを併せて設けても良い。
【0017】
信号処理チップ111は、表裏面にそれぞれ設けられた回路を互いに接続するTSV(シリコン貫通電極)110を有する。TSV110は、周辺領域に設けられることが好ましい。また、TSV110は、撮像チップ113の周辺領域、メモリチップ112にも設けられて良い。
【0018】
図2は、撮像チップ113の画素配列と単位ブロック131を説明する図である。特に、撮像チップ113を裏面側から観察した様子を示す。撮像チップ113は、2000万個以上もの画素がマトリックス状に配列された撮像部を有する。図2の例において、隣接する4画素×4画素の16画素が一つの単位ブロック131を形成する。図の格子線は、隣接する画素がグループ化されて単位ブロック131を形成する概念を示す。
【0019】
撮像部の部分拡大図に示すように、単位ブロック131は、緑色画素Gb、Gr、青色画素Bおよび赤色画素Rの4画素から成るいわゆるベイヤー配列を、上下左右に4つ内包する。緑色画素Gb、Grは、カラーフィルタ102として緑色フィルタを有し、入射光のうち緑色波長帯の光を受光する。同様に、青色画素Bは、カラーフィルタ102として青色フィルタを有し、青色波長帯の光を受光し、赤色画素Rは、カラーフィルタ102として赤色フィルタを有し、赤色波長帯の光を受光する。
【0020】
図2においては、説明の簡略化を目的として、単位ブロック131が4画素×4画素の16画素からなる例を説明した。行数および列数に特に制限はないが、撮像部の画素全体が2000万画素程度ある場合に、例えば64行32列等である。また、撮像部に含まれる単位ブロック131の行の個数および列の個数の制限はないが、例えば48行114列配される。
【0021】
図3は、画素150に対応する回路図である。図3において、代表的に点線で囲む矩形が、1つの画素150に対応する回路を表す。なお、以下に説明する各トランジスタの少なくとも一部は、図1のトランジスタ105に対応する。
【0022】
PD104は、転送トランジスタ154に接続される。転送トランジスタ154のゲートは、転送パルスが供給される配線Tx_jに接続される。添え字jは、単位ブロック131内の行番号を識別する、単位ブロック131内の通し番号である。
【0023】
転送トランジスタ154のドレインは、リセットトランジスタ152のソースに接続される。これにより、転送トランジスタ154のドレインとリセットトランジスタ152のソース間にいわゆるFD(フローティングディフュージョン)156が形成される。リセットトランジスタ152のドレインは電源電圧が供給される配線Vddに接続され、そのゲートはリセットパルスが供給される配線Rst_jに接続される。
【0024】
FD156の一端はさらに、増幅トランジスタ162のゲートに接続される。増幅トランジスタ162のドレインは電源電圧が供給される配線Vddに接続される。増幅トランジスタ162のソースは、対応する選択トランジスタ164のドレインに接続される。選択トランジスタ164のゲートは、選択パルスが供給される配線Sel_jに接続される。
【0025】
選択トランジスタ164のソースは、列伝送路170に接続される。負荷電流源166は、列伝送路170に電流を供給する。すなわち、選択トランジスタ164に対する列伝送路170は、ソースフォロアにより形成される。
【0026】
図4は、単位ブロック131およびその周辺回路133、並びにそれらの接続関係の概略を示す。図4の単位ブロック131において、画素150がL行P列で合計(P×L)個配列されている。
【0027】
配線Rst_l(ただし、lは1からLの整数)は、行制御部200に接続されていると共に、単位ブロック131内におけるl行目のP個の画素150に共通に接続されている。同様に、配線Tx_l、配線Sel_lも行制御部200に接続されていると共に、単位ブロック131内におけるl行目のP個の画素150に共通に接続されている。
【0028】
行制御部200は、行選択部、垂直走査回路等と呼ばれることもある。行制御部200は、単位ブロック131ごとに設けられている。行制御部200は信号処理チップ111側に設けられてもよい。
【0029】
列伝送路170は、同一列の画素150ごとに設けられている。これら列伝送路170_p(ただし、pは1からPの整数)は、単位ブロック131内におけるp列目のL個の画素150に共通に接続されている。これにより、列伝送路170は単位ブロック131内の同一列の画素150で共有され、当該列に含まれる画素150からの信号を伝送する。
【0030】
これら列伝送路170_pは撮像チップ113側から、バンプ109を介して、信号処理チップ111側に設けられた周辺回路133へ接続されている。周辺回路133は単位ブロック131ごとに設けられており、積層方向から見て撮像チップ113における単位ブロック131に重なるように配されている。
【0031】
周辺回路133は、列伝送路170_pごとに直列に接続されたCDS回路202およびA/D変換回路204を有する。図4に示す例において、単位ブロック131あたり、CDS回路202とA/D変換回路204との組がP個設けられている。CDS回路202は、画素信号からノイズを除去する。A/D変換回路204は、CDS回路202でノイズが除去された画素信号をデジタル信号に変換する。
【0032】
周辺回路133はさらに、上記P個のA/D変換回路204の出力側に配されたシフトレジスタ206を有する。図4の例において、単位ブロック131ごとにシフトレジスタ206が一つ配される。シフトレジスタ206の出力は、列バスライン172を介して画素メモリ414に接続される。シフトレジスタ206は、水平走査回路、マルチプレクサ等と呼ばれることもある。
【0033】
図5は、本実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。撮像装置500は、撮影光学系としての撮影レンズ520を備え、撮影レンズ520は、光軸OAに沿って入射する被写体光束を撮像素子100へ導く。撮影レンズ520は、撮像装置500に対して着脱できる交換式レンズであっても構わない。撮像装置500は、撮像素子100、システム制御部501、駆動部502、測光部503、ワークメモリ504、記録部505、および表示部506を主に備える。
【0034】
撮影レンズ520は、複数の光学レンズ群から構成され、シーンからの被写体光束をその焦点面近傍に結像させる。なお、図5では瞳近傍に配置された仮想的な1枚のレンズで代表して表している。駆動部502は、システム制御部501からの指示に従って撮像素子100の電荷蓄積制御、画素信号の読み出し制御等を実行する。
【0035】
撮像素子100は、画素信号をシステム制御部501の画像処理部511へ引き渡す。画像処理部511は、ワークメモリ504をワークスペースとして種々の画像処理を施し、画像データを生成する。例えば、JPEGファイル形式の画像データを生成する場合は、ホワイトバランス処理、ガンマ処理等を施した後に圧縮処理を実行する。生成された画像データは、記録部505に記録されるとともに、表示信号に変換されて予め設定された時間の間、表示部506に表示される。
【0036】
測光部503は、画像データを生成する一連の撮影シーケンスに先立ち、シーンの輝度分布を検出する。測光部503は、例えば100万画素程度のAEセンサを含む。システム制御部501の演算部512は、測光部503の出力を受けてシーンの領域ごとの輝度を算出する。演算部512は、算出した輝度分布に従ってシャッタ速度、絞り値、ISO感度を決定する。なお、上記AEセンサに用いられる画素を撮像素子100内に設けてもよく、この場合には当該撮像素子100とは別個の測光部503を設けなくてもよい。
【0037】
図6は、駆動部502の具体的構成を示すブロック図である。駆動部502は、分担化された制御機能としてのセンサ制御部441、ブロック制御部442、同期制御部443、信号制御部444、画素メモリ414、演算回路415と、これらの各制御部を統括制御する駆動制御部420とを含む。駆動部502は、さらに、駆動制御部420と撮像装置500本体のシステム制御部501と間のI/F回路418を含む。
【0038】
駆動制御部420は、タイミングメモリ430を参照して、システム制御部501からの指示を、各制御部が実行可能な制御信号に変換してそれぞれに引き渡す。タイミングメモリ430は、フラッシュRAM等により形成される。
【0039】
センサ制御部441は、撮像チップ113へ送出する、各画素の電荷蓄積、電荷読み出しに関わる制御パルスの送出制御を担う。具体的には、センサ制御部441は、各単位ブロック131の行制御部200へリセットパルスおよび転送パルスを送出することにより、対象画素の電荷蓄積の開始と終了を制御し、読み出し画素に対して選択パルスを送出することにより、画素信号を列伝送路170へ出力させる。
【0040】
ブロック制御部442は、撮像チップ113へ送出する、制御対象となる単位ブロック131を特定する特定パルスの送出を実行する。各画素が配線Tx_j等を介して受ける転送パルス等は、センサ制御部441が送出する各パルスとブロック制御部442が送出する特定パルスの論理積となる。このように、各領域を互いに独立したブロックとして制御することができる。なお、複数の単位ブロック131で同期したパルスを用いる場合、および、複数の単位ブロック131にまたがった動作を行う場合には、ブロック制御部442は、これら複数の単位ブロックのそれぞれを特定する特定パルスを同時に送出する。
【0041】
同期制御部443は、同期信号を撮像チップ113へ送出する。各パルスは、同期信号に同期して撮像チップ113においてアクティブとなる。例えば、同期信号を調整することにより、同一の単位ブロック131に属する画素の特定画素のみを制御対象とするランダム制御、間引き制御等を実現する。また、信号制御部444は、CDS回路202、A/D変換回路204、シフトレジスタ206に対するタイミング制御を担う。
【0042】
演算回路415は、画素メモリ414に格納された画素信号に基づいて、AE評価値等を演算する。演算回路415は、当該演算結果を駆動制御部420に出力する。
【0043】
画素メモリ414は、撮像部の画素150からの画素信号を格納できるメモリ空間を有し、各画素から読み出しされてデジタル化されたそれぞれの画素信号を格納する。画素メモリ414は、各単位ブロック131に対応して設けられることが好ましい。
【0044】
画素メモリ414には、引渡要求に従って画素信号を伝送するデータ転送インタフェースが設けられている。データ転送インタフェースは、画像処理部511と繋がるデータ転送ラインと接続されている。データ転送ラインは例えばバスラインのうちのデータバスによって構成される。この場合、システム制御部501から駆動制御部420への引渡要求は、アドレスバスを利用したアドレス指定によって実行される。
【0045】
データ転送インタフェースによる画素信号の伝送は、アドレス指定方式に限らず、さまざまな方式を採用しうる。例えば、データ転送を行うときに、各回路の同期に用いられるクロック信号の立ち上がり・立ち下がりの両方を利用して処理を行うダブルデータレート方式を採用し得る。また、アドレス指定などの手順を一部省略することによってデータを一気に転送し、高速化を図るバースト転送方式を採用し得る。また、制御部、メモリ部、入出力部を並列に接続している回線を用いたバス方式、直列にデータを1ビットずつ転送するシリアル方式などを組み合わせて採用することもできる。
【0046】
このように構成することにより、画像処理部511は、必要な画素信号に限って受け取ることができるので、特に低解像度の画像を形成する場合などにおいて、高速に画像処理を完了させることができる。なお、駆動部502、図4の行制御部200および周辺回路133が、複数の単位ブロック131にまたがって、撮像部に含まれる画素150の画素信号を順次読み出す読出部として機能する。
【0047】
図7は、演算回路415の機能ブロックを示す。演算回路415は、上記した各機能に加えて、相関算出部472と、補正部474とを有する。相関算出部472は、画素メモリ414から画素信号を読み出し、同一列で隣接する単位ブロック131の境界の行同士で、画素信号の相関を算出する。補正部474は、相関算出部472により算出された相関に基づいて、同一列で隣接する単位ブロック131における画素信号を補正し、画素メモリ414に書き込む。
【0048】
図8は、単位ブロック131A等の各行の電荷蓄積、読み出し等の動作のタイミングチャートを示す。各単位ブロック内では、同一行の画素150が選択されて画素信号が蓄積および読み出される動作が、行ごとに順次繰り返される、いわゆるローリングシャッタ方式で動作する。
【0049】
駆動部502は、行制御部200を介して1行目の画素150に対する配線Rst_1およびTx_1に駆動信号を与えることにより、1行目の画素150の電荷蓄積を開始する。さらに、 駆動部502は、蓄積期間後に、行制御部200を介して1行目の画素150に対する配線Sel_1に駆動信号を与えることにより、1行目の画素150の画素信号の読み出しを開始する。読み出し期間は、1行目の各画素150から画素信号が読み出されて、CDS回路202およびA/D変換回路204で処理されてシフトレジスタ206から順次、画素メモリ414に書き込まれるまでの時間を含む。
【0050】
同様に、2行目の画素150に対する配線Rst_2、Tx_2およびSel_2に駆動信号が与えられて、蓄積および読出が行われる。2行目の画素150に対する蓄積期間の長さは1行目の画素150と同じであるが、時間的には、ほぼ読出期間分だけ遅れている。3行目以降、L行目まで、配線Rst_l、Tx_lおよびSel_lに駆動信号が与えられて、順次、蓄積および読出が行われる。
【0051】
複数の単位ブロック131A、131Bのいずれに対しても、選択される行の順序は同じである。図8の例であれば、いずれに対しても、-Y側の行から+Y側の行に向けて一行ずつ選択される。さらに、複数の単位ブロック131A、131Bの間で、同一行の蓄積および読出のタイミングは同期している。ただし、 複数の単位ブロック131A、131Bの間で、同一行の蓄積および読出の少なくとも一方のタイミングが同期していなくてもよい。
【0052】
図9は、撮像素子100に入射する被写体像300の一例を示す。なお、説明のため撮像素子100に入射する直前の像光を、+Z側から見て描いている。
【0053】
図9に示す例においては、被写体像300には、X方向に移動するY方向に長い2つの動体像302、306、および、静止しているY方向に長い1つの静止体像304が含まれている。さらに、動体像302の方が動体像306よりも早く移動している。
【0054】
図10は、補正前の撮像画像を示す。なお、説明のため撮像画像として出力、表示等される向きで示している。また、図9の被写体像300が4つの単位ブロック131A、131B、131C、131Dに入射したとして説明する。
【0055】
図10の単位ブロック131A、131Bに示すように、動体像302は、当該単位ブロック内において、斜め方向に歪んでいる。この歪みは、A/D変換時間分だけ行毎に撮像時間が異なる為に、動体像302は移動方向である+X方向にずれる。このずれはローリング歪みと呼ばれる。同様に、単位ブロック131Dにおいても、動体像306が+X方向に歪んでいる。ただし、動体像306の速度が動体像302の速度よりも小さいことに対応して、歪みの量も小さい。一方、単位ブロック131C、131Dに示すように、静止体像304は歪んでいない。
【0056】
さらに、同一列で隣接する単位ブロック131A、131Bにおける境界の行の画素に注目する。すなわち、単位ブロック131Aの10行目および単位ブロック131Bの1行目に注目する。これらの2つの行は、蓄積期間のタイミングが最も離れている。これを反映して、一体として+X方向に移動する動体像302に対応する画素の位置が、これら二つの行の間で異なる列位置にずれている。一方、単位ブロック131Cの10行目と単位ブロック131Dの1行目とで、静止体像304に対応する画素の列位置はれていない。
【0057】
図11は、演算回路415の動作を示すフローチャートであり、図12は補正後の撮像画像を示す。図11のフローチャートは、図10の補正前の画素信号が取得されて画素メモリ414に格納されたときに開始される。
【0058】
相関算出部472は、同一列で隣接する単位ブロック131A、131B等における境界の行の画素信号を画素メモリ414から読み出す(S100)。例えば単位ブロック131A、131Bの組であれば、単位ブロック131Aの10行目の画素信号と単位ブロック131Bの1行目と画素信号が読み出される。
【0059】
相関算出部472は、境界の行の相関を算出する(S102)。相関の大きさは、一列の画素信号の一致度であるともいえる。相関を評価する評価値の一例として、相関算出部472は、単位ブロック131Aの10行目および単位ブロック131Bの1行目における、同一列の画素の画素信号の差分を2乗してそれらの和をとった残差2乗和を算出する。なお、残差2乗和が小さいほど相関が大きいという関係にある。以下、評価値として残差2乗和を用いる例で説明する。
【0060】
相関算出部472は、残差2乗和が閾値より大きいか否かを判断する(S104)。残差2乗和の大きさが閾値以下である場合に(S104:No)、同一列で隣接する当該単位ブロック131A、131B等における当該フローチャートを終了する。
【0061】
残差2乗和の大きさが閾値より小さい場合には、例えば、図10に示すように、単位ブロック131C側の10行目は、単位ブロック131Dの1行目よりも時間的に後から蓄積および読出が行われたにも関わらず、列位置のずれが小さいと推測される。よって、同一列で隣接する単位ブロック131C、131Dにおける、時間的に後から蓄積および読出が行われた10行目を有している単位ブロック131Cには、ローリング歪がない、または、あっても小さいと推測される。従って、単位ブロック131Cに対しては一旦、図11の補正の対象から除外される。ただし、同一列で隣接した単位ブロック131Aからの影響により補正が行われて補正ブロック132Cとなることがある。
【0062】
一方、残差2乗和の大きさが閾値より大きい場合に(S104:Yes)、相関算出部472は、単位ブロック131Aの10行目および単位ブロック131Bの1行目において、一方を他方に対して行方向に1画素分ずらして(S106)、すなわち1列ずれた画素同士について、残差2乗和を算出する(S108)。相関算出部472は、列の画素数pになるまで、さらに一画素分ずらして残差2乗和を算出する上記ステップS106およびS108を繰り返す(S110:No)。この場合に+X方向と-X方向のそれぞれに画素をずらす。
【0063】
相関算出部472は、p画素分ずらした後に(S110:Yes)、補正に用いる画素数を特定する(112)。この場合に、相関算出部472は、上記ステップS106からS110を繰り返して算出された複数の残差2乗和のうち、最も小さい残差2乗和となったときの画素ずれ数を補正に用いる画素数とする。最も小さい残差2乗和が複数ある場合には、画素ずれ数のより小さい画素数とすることが好ましい。
【0064】
図10に示す例において、単位ブロック131Aの10行目を単位ブロック131Bの1行目に対して、4画素分だけ-X方向にずらすと、残差2乗和が最も小さくなる。よって、相関算出部472は、補正に用いる画素数として「4」を特定する。
【0065】
補正部474は、上記ステップS112で特定された画素数を用いて、単位ブロック131Aの画素信号を補正する(S114)。ここで、同一列で隣接する単位ブロック131A、131Bのうち、時間的に後から蓄積および読出が行われた10行目を有している単位ブロック131Aの画素信号が補正される。この場合に、補正部474は、単位ブロック131A内において、1行目に対して10行目が4画素分ずれるように、すなわち4列ずれるように、ずれ分を各行に均等に割り振る。図10の例において、隣接する2行を一組として、隣接する組同士に対して1画素のずれが割り振られる。
【0066】
図12に示すように、補正部474は、単位ブロック131Aの中央にある5、6行目を他の単位ブロック131B等に対して固定して、他の行の画素の画素信号を、列位置をずらした画素の画素信号に置き換えて補正ブロック132Aを生成する。同様に、単位ブロック131A、132Dの各行の列位置をずらして補正ブロック132B、132Dを生成する。
【0067】
補正部474はさらに、同一行で隣接する単位ブロック131A、131Cの境界の画素信号を補正する。図12に示すように、同一行で隣接する単位ブロック131A、131Cを補正して補正ブロック132A、132Cを生成すると、それらの境界に、空白画素140の領域および互いの画素が重複する重複画素142の領域が生じる。補正部474は、空白画素140の領域に対してその周辺からの画素信号を割り付ける。さらに、補正部474は、重複画素142に対してそれぞれの画素の画素信号の平均値を割り付ける。
【0068】
以上により、補正ブロック132A等が生成される。ここで、補正ブロック132Cは、単位ブロック131Cに対するステップS104の相関の判定により画素の置き換えはされないが、隣接する補正ブロック132Aからの補正の影響を受けて、その境界が補正されている。補正部474は、補正ブロック132A等の画素信号を画素メモリ414に出力して(S116)、本フローチャートを終了する。以上により、簡便な構成でローリング歪みを低減することができる。
【0069】
なお、上記ステップS102において、同一列で隣接する単位ブロック131A、131B等における境界の行の相関を算出するのに代えて、同一単位ブロック131A内における最初の行と最後の行の相関を算出してもよい。ステップS102、108のそれぞれにおいて、画素信号が輝度及び色の信号を有している場合に、輝度信号を用いて相関を算出してもよい。これに代えて、同一色の画素、例えば緑色の画素について相関を算出してもよい。相関の評価値として、残差2乗和に代えて、差の絶対値の和を用いてもよい。また、上記ステップS110でp画素分の繰り返しをすることに代えて、残差2乗和を算出することに比較して、極小値が現れたら繰り返しを停止する、いわゆる山登り方式を用いてもよい。
【0070】
単位ブロック131がベイヤー配列等のカラーフィルタを有している場合に、上記図11の動作は補間処理をする前に実行されることが好ましい。A/D変換された画素信号がJPEG等の予め定められたフォーマット形式に変換された撮像画像として出力される場合に、上記図11の動作はA/D変換後であって、当該フォーマット形式に変換する前に実行されることが好ましい。また、少なくとも上記相関算出部472および補正部474は、信号処理チップ111内に設けられることが好ましい。
【0071】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0072】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0073】
100 撮像素子、101 マイクロレンズ、102 カラーフィルタ、103 パッシベーション膜、104 PD、105 トランジスタ、106 PD層、107 配線、108 配線層、109 バンプ、110 TSV、111 信号処理チップ、112 メモリチップ、113 撮像チップ、131 単位ブロック、132 補正ブロック、133 周辺回路、140 空白画素、142 重複画素、150 画素、152 リセットトランジスタ、154 転送トランジスタ、156 FD、162 増幅トランジスタ、164 選択トランジスタ、166 負荷電流源、170 列伝送路、172 列バスライン、200 行制御部、202 CDS回路、204 A/D変換回路、206 シフトレジスタ、300 被写体像、302 動体像、304 静止体像、306 動体像、414 画素メモリ、415 演算回路、418 I/F回路、420 駆動制御部、430 タイミングメモリ、441 センサ制御部、442 ブロック制御部、443 同期制御部、444 信号制御部、472 相関算出部、474 補正部、500 撮像装置、520 撮影レンズ、501 システム制御部、502 駆動部、503 測光部、504 ワークメモリ、505 記録部、506 表示部、511 画像処理部、512 演算部
図1
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