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特許7142713脱気システム、液体の脱気方法、脱気モジュール、脱気システムの製造方法、及び天然資源の産生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-15
(45)【発行日】2022-09-27
(54)【発明の名称】脱気システム、液体の脱気方法、脱気モジュール、脱気システムの製造方法、及び天然資源の産生方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20220916BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20220916BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20220916BHJP
【FI】
B01D19/00 H
B01D19/00 101
B01D61/00
B01D63/02
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020549483
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038373
(87)【国際公開番号】W WO2020067512
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-10-29
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018182342
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 航
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 克彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 賢治
(72)【発明者】
【氏名】大井 和美
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】宮部 裕一
【審判官】土屋 知久
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-502315(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012293(WO,A1)
【文献】特開平6-134210(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0091891(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00
B01D 63/00-63/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を脱気する複数の脱気モジュールが連結された脱気ユニットを備え、
前記複数の脱気モジュールのそれぞれは、
液体が供給される液体供給路の周囲に配される複数本の中空糸膜を有する中空糸膜束と、
前記中空糸膜束を収容し、前記液体を排出するための排出口が形成されたモジュール容器と、を有し、
前記脱気ユニットは、前記複数の脱気モジュールの前記液体供給路を直列に接続し、前記複数の脱気モジュールの前記中空糸膜束に前記液体が並列に供給されるように、前記液体を通過させる開口が前記複数の脱気モジュールに対応する位置に形成された連結供給管を有し、
前記複数の脱気モジュールは、上流側脱気モジュールと、前記上流側脱気モジュールの下流側に配置される下流側脱気モジュールと、を含み、
前記脱気ユニットは、前記連結供給管の前記液体が供給される供給口から前記下流側脱気モジュールの前記排出口までの前記液体の圧力損失が、前記供給口から前記上流側脱気モジュールの前記排出口までの前記液体の圧力損失よりも大きくなるように、構成されている、
脱気システム。
【請求項2】
前記脱気ユニットは、前記下流側脱気モジュールに対応する位置に形成された前記開口から前記下流側脱気モジュールの前記排出口までの前記液体の圧力損失が、前記上流側脱気モジュールに対応する位置に形成された前記開口から前記上流側脱気モジュールの前記排出口までの前記液体の圧力損失よりも大きくなるように、構成されている、
請求項1に記載の脱気システム。
【請求項3】
前記連結供給管は、前記下流側脱気モジュールに対応する位置における前記液体の圧力損失が、前記上流側脱気モジュールに対応する位置における前記液体の圧力損失よりも大きくなるように、構成されている、
請求項1又は2に記載の脱気システム。
【請求項4】
前記下流側脱気モジュールに対応する位置における前記連結供給管の内径は、前記上流側脱気モジュールに対応する位置における前記連結供給管の内径よりも小さい、
請求項1~3の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項5】
前記下流側脱気モジュールに対応する位置に形成された前記開口は、前記上流側脱気モジュールに対応する位置に形成された前記開口よりも前記液体の圧力損失が大きくなるように、構成されている、
請求項1~4の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項6】
前記下流側脱気モジュールに対応する位置に形成された前記開口の総面積は、前記上流側脱気モジュールに対応する位置に形成された前記開口の総面積よりも小さい、
請求項1~5の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項7】
前記下流側脱気モジュールに対応する位置に形成された前記開口の数は、前記上流側脱気モジュールに対応する位置に形成された前記開口の数よりも少ない、
請求項1~6の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項8】
前記下流側脱気モジュールに対応する位置に形成された前記開口の大きさは、前記上流側脱気モジュールに対応する位置に形成された前記開口の大きさよりも小さい、
請求項1~7の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項9】
前記複数の脱気モジュールのそれぞれは、前記中空糸膜束の内周側に配置されて、前記液体を通過させる内管開口が形成されたモジュール内管を更に有し、
前記下流側脱気モジュールの前記内管開口は、前記上流側脱気モジュールの前記内管開口よりも前記液体の圧力損失が大きくなるように、構成されている、
請求項1~8の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項10】
前記下流側脱気モジュールの前記中空糸膜束は、前記上流側脱気モジュールの前記中空糸膜束よりも前記液体の圧力損失が大きくなるように、構成されている、
請求項1~9の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項11】
前記下流側脱気モジュールにおける前記複数本の中空糸膜の密度は、前記上流側脱気モジュールにおける前記複数本の中空糸膜の密度よりも高い、
請求項1~10の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項12】
前記下流側脱気モジュールにおける前記中空糸膜束の厚さは、前記上流側脱気モジュールにおける前記中空糸膜束の厚さよりも厚い、
請求項1~11の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項13】
前記中空糸膜束は、緯糸である前記複数本の中空糸膜を縦糸で織った織物が、前記液体供給路の周囲に巻かれてなり、
前記下流側脱気モジュールにおける前記織物の巻き圧は、前記上流側脱気モジュールにおける前記織物の巻き圧よりも高い、
請求項1~12の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項14】
前記中空糸膜束は、緯糸である前記複数本の中空糸膜を縦糸で織った織物が、前記複数本の中空糸膜が前記液体供給路の軸線方向に延びるように前記液体供給路の周囲に巻かれてなり、
前記下流側脱気モジュールにおける前記縦糸のピッチは、前記上流側脱気モジュールにおける前記縦糸のピッチよりも長い、
請求項1~13の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項15】
前記下流側脱気モジュールにおける前記中空糸膜の外径は、前記上流側脱気モジュールにおける前記中空糸膜の外径よりも大きい、
請求項1~14の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項16】
前記下流側脱気モジュールにおける前記中空糸膜は、前記上流側脱気モジュールにおける前記中空糸膜よりも高い親水性を有する、
請求項1~15の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項17】
前記下流側脱気モジュールの前記排出口は、前記上流側脱気モジュールの前記排出口よりも前記液体の圧力損失が大きくなるように、構成されている、
請求項1~16の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項18】
前記下流側脱気モジュールの前記排出口の総面積は、前記上流側脱気モジュールの前記排出口の総面積よりも小さい、
請求項1~17の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項19】
前記下流側脱気モジュールの前記排出口の数は、前記上流側脱気モジュールの前記排出口の数よりも少ない、
請求項1~18の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項20】
前記下流側脱気モジュールの前記排出口の大きさは、前記上流側脱気モジュールの前記排出口の大きさよりも小さい、
請求項1~19の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項21】
脱気ユニットを収容して、外部から液体が供給される入口と、外部に液体を排出する出口と、が形成された筐体と、
前記複数本の中空糸膜の内側を吸引するために、前記複数の脱気モジュールの前記複数本の中空糸膜の内側に連通された吸引管と、を更に備える、
請求項1~20の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項22】
請求項1~21の何れか一項に記載の脱気システムにおいて、前記連結供給管から前記複数の脱気モジュールの液体供給路に液体を供給するとともに、前記複数の脱気モジュールのそれぞれの前記複数本の中空糸膜の内側を減圧することで、前記液体を脱気する、
液体の脱気方法。
【請求項23】
請求項1~21の何れか一項に記載の脱気システムに用いられる脱気モジュールであって、
液体が供給される液体供給路の周囲に配される複数本の中空糸膜を有する中空糸膜束と、
前記中空糸膜束を収容し、前記液体を排出するための排出口が形成されたモジュール容器と、を備える、
脱気モジュール。
【請求項24】
液体が供給される液体供給路の周囲に配される複数本の中空糸膜を有する中空糸膜束と、前記中空糸膜束を収容し、前記液体を排出するための排出口が形成されたモジュール容器と、をそれぞれ有する複数の脱気モジュールと、前記液体を通過させる複数の開口が形成された連結供給管と、を用意し、
前記連結供給管を前記複数の脱気モジュールの前記液体供給路に挿入して、前記連結供給管により前記複数の脱気モジュールの前記液体供給路を直列に接続するとともに、前記複数の脱気モジュールの前記中空糸膜束に前記液体が並列に供給されるように、前記複数の開口を前記複数の脱気モジュールに対応する位置に配置し、
前記複数の脱気モジュールのうちの一つを上流側脱気モジュールとし、前記複数の脱気モジュールのうちの前記上流側脱気モジュールの下流側に配置される一つを下流側脱気モジュールとした場合、前記連結供給管の前記液体が供給される供給口から前記下流側脱気モジュールの前記排出口までの前記液体の圧力損失を、前記供給口から前記上流側脱気モジュールの前記排出口までの前記液体の圧力損失よりも大きくする、
脱気システムの製造方法。
【請求項25】
請求項1~21の何れか一項に記載の脱気システムにおいて、前記連結供給管から前記複数の脱気モジュールの液体供給路に液体を供給するとともに、前記複数の脱気モジュールのそれぞれの前記複数本の中空糸膜の内側を減圧することで、前記液体を脱気する脱気工程と、前記脱気工程で脱気された前記液体を天然資源の採掘現場に圧入する圧入工程と、を備える、
天然資源の産生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、複数の脱気モジュールが連結された脱気ユニットを備える脱気システム、この脱気システムを用いた液体の脱気方法、この脱気システムに用いられる脱気モジュール、この脱気システムの製造方法、及び天然資源の産生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、中空糸膜を用いて液体を脱気する脱気モジュールが知られている。また、大型化又は大流量化に対応するために、複数の脱気モジュールを連結した脱気システムも知られている。
【0003】
特許文献1には、中空糸膜を備える複数の流体接触器が連結されたアセンブリが開示されている。このアセンブリでは、複数の流体接触器として同じものが用いられている。また、このアセンブリでは、液体を供給する入口マニホルドが、複数の流体接触器に対応して分岐することで、複数の流体接触器に対して個別に接続されている。このため、入口マニホルドに供給された液体は、複数の流体接触器に並列に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4593719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、1本の脱気モジュールに液体を流した場合と、N本の脱気モジュールを連結した脱気システムにN倍の液体を流した場合とでは、脱気性能は同じであると思われていた。しかしながら、本発明者らが研究したところ、脱気システムとして、複数の脱気モジュールのそれぞれの液体供給路を直列に接続して、複数の脱気モジュールの中空糸膜に液体を並列に供給するものを用いた場合、1本の脱気モジュールに液体を流した場合に比べて、脱気性能が低下するとの知見を得た。
【0006】
そこで、本発明の一側面は、全体の脱気性能を向上することができる脱気システム、この脱気システムを用いた液体の脱気方法、この脱気システムに用いられる脱気モジュール、この脱気システムの製造方法、及び天然資源の産生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために、更に研究を進めたところ、次の知見を得た。
【0008】
複数の脱気モジュールを連結した脱気システムでは、各脱気モジュールに同じ量の液体が流れると思われていた。しかしながら、実際には、複数の脱気モジュールのそれぞれの液体供給路を直列に接続して、複数の脱気モジュールの中空糸膜に液体を並列に供給する脱気システムでは、各脱気モジュールを流れる液体の流量が、上流側と下流側とで異なっていた。これは、次の理由によるものと考えられる。
【0009】
すなわち、このような脱気システムでは、液体が液体供給路から中空糸側に流れ出ていくため、上流側から下流側に向かって液体の流速が低くなる。すると、上流側から下流側に向かって液体の圧力が高くなる。このため、下流に向かうほど脱気モジュールに流れる液体の流量が多くなり、上流に向かうほど脱気モジュールに流れる液体の流量が少なくなる。脱気モジュールの脱気性能は、液体の流量によって大きく変動するため、上流側の脱気モジュールと下流側の脱気モジュールとで液体の流量に乖離が生じることにより、脱気システム全体の脱気性能が低下したものと考えられる。
【0010】
このようなことから、上流側の脱気モジュールと下流側の脱気モジュールとで液体の流量の乖離を小さくすることで、脱気システム全体の脱気性能を向上することができるとの結論に至った。
【0011】
本発明の一側面に係る脱気システムは、液体を脱気する複数の脱気モジュールが連結された脱気ユニットを備え、複数の脱気モジュールのそれぞれは、液体が供給される液体供給路の周囲に配される複数本の中空糸膜を有する中空糸膜束と、中空糸膜束を収容し、液体を排出するための排出口が形成されたモジュール容器と、を有し、脱気ユニットは、複数の脱気モジュールの液体供給路を直列に接続し、複数の脱気モジュールの中空糸膜束に液体が並列に供給されるように、液体を通過させる開口が複数の脱気モジュールに対応する位置に形成された連結供給管を有し、複数の脱気モジュールは、上流側脱気モジュールと、上流側脱気モジュールの下流側に配置される下流側脱気モジュールと、を含み、脱気ユニットは、連結供給管の液体が供給される供給口から下流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失が、供給口から上流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失よりも大きくなるように、構成されている。
【0012】
この脱気システムでは、複数の脱気モジュールの液体供給路を直列に接続する連結供給管により、複数の脱気モジュールの中空糸膜束に液体が並列に供給される。しかしながら、連結供給管の供給口から下流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失が、連結供給管の供給口から上流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失よりも大きい。このため、この圧力損失の差が、液体の流れ方向における流速及び圧力の差を相殺するように働く。その結果、上流側脱気モジュールと下流側脱気モジュールとで液体の流量の乖離が小さくなるため、脱気システム全体の脱気性能を向上することができる。
【0013】
脱気ユニットは、下流側脱気モジュールに対応する位置に形成された開口から下流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失が、上流側脱気モジュールに対応する位置に形成された開口から上流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失よりも大きくなるように、構成されていてもよい。下流側脱気モジュールに対応する位置に形成された開口からモジュール容器の排出口までの液体の圧力損失を、上流側脱気モジュールに対応する位置に形成された開口からモジュール容器の排出口までの液体の圧力損失よりも大きくすることで、上流側脱気モジュールよりも下流側脱気モジュールの方が、液体が流れにくくなる。これにより、脱気システム全体の脱気性能を向上することができる。
【0014】
連結供給管は、下流側脱気モジュールに対応する位置における液体の圧力損失が、上流側脱気モジュールに対応する位置における液体の圧力損失よりも大きくなるように、構成されていてもよい。連結供給管の下流側脱気モジュールに対応する位置における液体の圧力損失を、連結供給管の上流側脱気モジュールに対応する位置における液体の圧力損失よりも大きくすることで、連結供給管の供給口から下流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失を、連結供給管の供給口から上流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失よりも大きくすることができる。これにより、脱気システム全体の脱気性能を向上することができる。
【0015】
下流側脱気モジュールに対応する位置における連結供給管の内径は、上流側脱気モジュールに対応する位置における連結供給管の内径よりも小さくてもよい。このようにすることで、連結供給管の下流側脱気モジュールに対応する位置における液体の圧力損失が、連結供給管の上流側脱気モジュールに対応する位置における液体の圧力損失よりも大きくなるため、脱気システム全体の脱気性能を向上することができる。
【0016】
下流側脱気モジュールに対応する位置に形成された開口は、上流側脱気モジュールに対応する位置に形成された開口よりも液体の圧力損失が大きくなるように、構成されていてもよい。下流側脱気モジュールに対応する位置に形成された開口における液体の圧力損失を、上流側脱気モジュールに対応する位置に形成された開口における液体の圧力損失よりも大きくすることで、連結供給管の供給口から下流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失を、連結供給管の供給口から上流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失よりも大きくすることができる。
【0017】
下流側脱気モジュール対応する位置に形成された開口の総面積は、上流側脱気モジュール対応する位置に形成された開口の総面積よりも小さくてもよい。また、下流側脱気モジュール対応する位置に形成された開口の数は、上流側脱気モジュール対応する位置に形成された開口の数よりも少なくてもよい。また、下流側脱気モジュール対応する位置に形成された開口の大きさは、上流側脱気モジュール対応する位置に形成された開口の大きさよりも小さくてもよい。このようにすることで、下流側脱気モジュール対応する位置に形成された開口における液体の圧力損失が、上流側脱気モジュール対応する位置に形成された開口における液体の圧力損失よりも大きくなるため、脱気システム全体の脱気性能を向上することができる。
【0018】
複数の脱気モジュールのそれぞれは、中空糸膜束が周囲に配置されて、液体を通過させる内管開口が形成されたモジュール内管を更に有し、下流側脱気モジュールの内管開口は、上流側脱気モジュールの内管開口よりも液体の圧力損失が大きくなるように、構成されていてもよい。複数の脱気モジュールのそれぞれがモジュール内管を有する場合、下流側脱気モジュールの内管開口における液体の圧力損失を、上流側脱気モジュールの内管開口における液体の圧力損失よりも大きくすることで、連結供給管の供給口から下流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失を、連結供給管の供給口から上流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失よりも大きくすることができる。
【0019】
下流側脱気モジュールの中空糸膜束は、上流側脱気モジュールの中空糸膜束よりも液体の圧力損失が大きくなるように、構成されていてもよい。下流側脱気モジュールの中空糸膜束における液体の圧力損失を、上流側脱気モジュールの中空糸膜束における液体の圧力損失よりも大きくすることで、連結供給管の供給口から下流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失を、連結供給管の供給口から上流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失よりも大きくすることができる。これにより、脱気システム全体の脱気性能を向上することができる。
【0020】
下流側脱気モジュールにおける複数本の中空糸膜の密度は、上流側脱気モジュールにおける複数本の中空糸膜の密度よりも高くてもよい。また、下流側脱気モジュールにおける中空糸膜束の厚さは、上流側脱気モジュールにおける中空糸膜束の厚さよりも厚くてもよい。また、中空糸膜束は、緯糸である複数本の中空糸膜を縦糸で織った織物が、液体供給路の周囲に巻かれてなり、下流側脱気モジュールにおける織物の巻き圧は、上流側脱気モジュールにおける織物の巻き圧よりも高くてもよい。また、中空糸膜束は、緯糸である複数本の中空糸膜を縦糸で織った織物が、複数本の中空糸膜が液体供給路の軸線方向に延びるように液体供給路の周囲に巻かれてなり、下流側脱気モジュールにおける縦糸のピッチは、上流側脱気モジュールにおける縦糸のピッチよりも長くてもよい。また、下流側脱気モジュールにおける中空糸膜の外径は、上流側脱気モジュールにおける中空糸膜の外径よりも大きくてもよい。また、下流側脱気モジュールにおける中空糸膜は、上流側脱気モジュールにおける中空糸膜よりも高い親水性を有してもよい。このようにすることで、下流側脱気モジュールの中空糸膜束における液体の圧力損失が、上流側脱気モジュールの中空糸膜束における液体の圧力損失よりも大きくなるため、脱気システム全体の脱気性能を向上することができる。
【0021】
下流側脱気モジュールのモジュール容器の排出口は、上流側脱気モジュールのモジュール容器の排出口よりも液体の圧力損失が大きくなるように、構成されていてもよい。下流側脱気モジュールの排出口における液体の圧力損失を、上流側脱気モジュールの排出口における液体の圧力損失よりも大きくすることで、連結供給管の供給口から下流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失を、連結供給管の供給口から上流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失よりも大きくすることができる。これにより、脱気システム全体の脱気性能を向上することができる。
【0022】
下流側脱気モジュールの排出口の総面積は、上流側脱気モジュールの排出口の総面積よりも小さくてもよい。また、下流側脱気モジュールの排出口の数は、上流側脱気モジュールの排出口の数よりも少なくてもよい。また、下流側脱気モジュールの排出口の大きさは、上流側脱気モジュールの排出口の大きさよりも小さくてもよい。このようにすることで、下流側脱気モジュールの排出口における液体の圧力損失が、上流側脱気モジュールの排出口における液体の圧力損失よりも大きくなるため、脱気システム全体の脱気性能を向上することができる。
【0023】
本発明の一側面に係る脱気システムは、脱気ユニットを収容して、外部から液体が供給される入口と、外部に液体を排出する出口と、が形成された筐体と、複数本の中空糸膜の内側を吸引するために、複数の脱気モジュールの複数本の中空糸膜の内側に連通された吸引管と、を更に備える。このような筐体及び吸引管を備えることで、脱気ユニットにおいて液体を適切に脱気することができるとともに、脱気ユニットにおいて脱気された液体を適切に回収することができる。
【0024】
本発明の一側面に係る液体の脱気方法は、上記の何れかの脱気システムにおいて、連結供給管から複数の脱気モジュールの液体供給路に液体を供給するとともに、複数の脱気モジュールのそれぞれの複数本の中空糸膜の内側を減圧することで、液体を脱気する。
【0025】
本発明の一側面に係る脱気モジュールは、上記の何れかの脱気システムに用いられる脱気モジュールであって、液体が供給される液体供給路の周囲に配される複数本の中空糸膜を有する中空糸膜束と、中空糸膜束を収容し、液体を排出するための排出口が形成されたモジュール容器と、を備える。
【0026】
本発明の一側面に係る脱気システムの製造方法は、液体が供給される液体供給路の周囲に配される複数本の中空糸膜を有する中空糸膜束と、中空糸膜束を収容し、液体を排出するための排出口が形成されたモジュール容器と、をそれぞれ有する複数の脱気モジュールと、液体を通過させる複数の開口が形成された連結供給管と、を用意し、連結供給管を複数の脱気モジュールの液体供給路に挿入して、連結供給管により複数の脱気モジュールの液体供給路を直列に接続するとともに、複数の脱気モジュールの中空糸膜束に液体が並列に供給されるように、複数の開口を複数の脱気モジュールに対応する位置に配置し、複数の脱気モジュールのうちの一つを上流側脱気モジュールとし、複数の脱気モジュールのうちの上流側脱気モジュールの下流側に配置される一つを下流側脱気モジュールとした場合、連結供給管の液体が供給される供給口から下流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失を、供給口から上流側脱気モジュールの排出口までの液体の圧力損失よりも大きくする。
【0027】
本発明の一側面に係る天然資源の産生方法は、上記の何れかの脱気システムにおいて、連結供給管から複数の脱気モジュールの液体供給路に液体を供給するとともに、複数の脱気モジュールのそれぞれの複数本の中空糸膜の内側を減圧することで、液体を脱気する脱気工程と、脱気工程で脱気された液体を天然資源の採掘現場に圧入する圧入工程と、を備える。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一側面によれば、脱気システム全体の脱気性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係る脱気システムの概略断面図である。
図2図1に示すII-II線における概略断面図である。
図3】脱気モジュールの概略正面図である。
図4】脱気モジュールの概略断面図である。
図5】中空糸膜束の端部の概略断面図である。
図6図1に示す脱気ユニットを抽象化した模式図である。
図7】参考例の脱気システムにおいて、各脱気モジュールに流れる液体の流量の一例を示す表である。
図8】各脱気ユニットにおける液体の流速及び圧力を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて説明するにあたり、同一の要素、又は同一の機能を有する類似する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0031】
本実施形態の脱気システムは、液体を脱気するためのシステムである。脱気システムが脱気する液体としては、例えば、水が挙げられる。図1及び図2に示すように、本実施形態の脱気システム1は、複数の脱気モジュール2が連結された脱気ユニット3と、脱気ユニット3を収容する筐体4と、吸引管5と、を備える。
【0032】
[脱気モジュール]
図1図4に示すように、脱気モジュール2は、モジュール内管11と、中空糸膜束12と、モジュール容器13と、を備える。
【0033】
モジュール内管11は、内周側に水等の液体が供給される液体供給路10を形成する管である。モジュール内管11は、例えば、直線状に延びる円管状に形成されている。モジュール内管11には、複数の内管開口11aが形成されている。内管開口11aは、モジュール内管11の液体供給路10に供給された液体を通過させるためのものである。内管開口11aの数、位置、大きさ等は特に限定されるものではない。
【0034】
中空糸膜束12は、モジュール内管11の周囲に配される複数本の中空糸膜14を有する。このため、液体供給路10は、中空糸膜束12の内周側に配置される。中空糸膜束12は、例えば、複数本の中空糸膜14が円筒状等の筒状に束ねられて構成される。中空糸膜14は、気体は透過するが液体は透過しない中空糸状の膜である。そして、中空糸膜束12は、中空糸膜14の内側が減圧されることで、モジュール内管11の内管開口11aから流れ出した液体を脱気する。
【0035】
中空糸膜14の素材、膜形状、膜形態等は、特に制限されない。中空糸膜14の素材としては、例えば、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン-1)などのポリオレフィン系樹脂、ポリジメチルシロキサンその共重合体などのシリコン系樹脂、PTFE、フッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、が挙げられる。中空糸膜14の膜形状(側壁の形状)としては、例えば、多孔質膜、微多孔膜、多孔質を有さない均質膜(非多孔膜)、が挙げられる。中空糸膜14の膜形態としては、例えば、膜全体の化学的あるいは物理的構造が均質な対称膜(均質膜)、膜の化学的あるいは物理的構造が膜の部分によって異なる非対称膜(不均質膜)、が挙げられる。非対称膜(不均質膜)は、非多孔質の緻密層と多孔質とを有する膜である。この場合、緻密層は、膜の表層部分又は多孔質膜内部等、膜中のどこに形成されていてもよい。不均質膜には、化学構造の異なる複合膜、3層構造のような多層構造膜も含まれる。
【0036】
中空糸膜束12は、例えば、緯糸である複数本の中空糸膜14を経糸で織った織物(不図示)により形成することができる。この織物は、中空糸膜シートとも呼ばれ、複数本の中空糸膜14が簾状に織られている。この織物は、例えば、1インチ当たり30本~90本の中空糸膜14で構成される。そして、この織物が、複数本の中空糸膜14がモジュール内管11(液体供給路10)の軸線方向に延びるようにモジュール内管11(液体供給路の周囲)に巻かれることで、円筒状の中空糸膜束12を構成することができる。
【0037】
モジュール容器13は、中空糸膜束12を収容する容器である。モジュール内管11とモジュール容器13との間の領域が、中空糸膜束12により液体を脱気する脱気領域Aとなる。モジュール容器13は、例えば、モジュール内管11(液体供給路10)の軸線方向に延びる円筒状に形成されており、その両端が開口している。モジュール容器13には、複数の排出口13aが形成されている。排出口13aは、脱気領域Aにおいて中空糸膜束12を通過した液体をモジュール容器13(脱気モジュール2)から排出するためのものである。排出口13aの数、位置、大きさ等は特に限定されるものではない。
【0038】
図5に示すように、中空糸膜束12の両側の端部12aが、封止部15によりモジュール内管11及びモジュール容器13に固定されている。
【0039】
封止部15は、例えば樹脂により形成されている。封止部15に用いる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、紫外線硬化型樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。封止部15は、モジュール内管11とモジュール容器13との間の、中空糸膜14の内側以外の全領域に充填されている。つまり、封止部15は、中空糸膜14間、中空糸膜束12とモジュール内管11との間、中空糸膜14とモジュール容器13との間に充填されているが、中空糸膜14の内側には充填されていない。このため、中空糸膜14の内側は、封止部15から脱気モジュール2の両端側に開放されており、脱気モジュール2の両端側から、中空糸膜14の内側を吸引することが可能となっている。つまり、モジュール容器13の両端の開口は、中空糸膜14の内側を吸引して減圧させることを可能とするために、中空糸膜14の内側を開放又は露出させる吸気開口となっている。
【0040】
[脱気ユニット]
図1図6に示すように、脱気ユニット3は、複数の脱気モジュール2の液体供給路10を直列に接続する連結供給管6を有する。連結供給管6は、複数の脱気モジュール2に接続される1本の長い管であり、その内周側に、複数の脱気モジュール2の液体供給路10を形成する。このため、複数の脱気モジュール2は、外観上、連結供給管6により直列に接続されている。脱気ユニット3を構成する脱気モジュール2の数は、特に限定されるものではないが、以下では、一例として、4個の脱気モジュール2が連結されているものとして説明する。4個の脱気モジュール2を、連結供給管6における液体の流れ方向の順に、脱気モジュール2A、脱気モジュール2B、脱気モジュール2C、脱気モジュール2Dとよぶ。脱気モジュール2Aは、最も上流側に配置される脱気モジュール2であり、脱気モジュール2Dは、最も下流側に配置される脱気モジュール2である。脱気ユニット3は、例えば、連結供給管6において液体が下方から上方に流れていくように、鉛直方向に立設されている。この場合、最も上流側に配置される脱気モジュール2Aは、最も下側に配置され、最も下流側に配置される脱気モジュール2Dは、最も上側に配置される。
【0041】
連結供給管6の上流端には、連結供給管6に液体が供給される供給口6aが形成されている。連結供給管6の下流端は、封止されている。複数の脱気モジュール2の液体供給路10を形成する連結供給管6の内周側は、上流側から下流側まで貫通されている。このため、連結供給管6(各脱気モジュール2のモジュール内管11)の内周側に、液体の流れの抵抗となる部材は配置されていてもよいが、連結供給管6を封止して液体の流れを遮断する部材は配置されていない。そして、供給口6aから供給された液体は、連結供給管6により、複数の脱気モジュール2の液体供給路10に直列的に供給される。
【0042】
連結供給管6には、複数の脱気モジュール2の中空糸膜束12に液体が並列に供給されるように、液体を通過させる開口6bが複数の脱気モジュール2に対応する位置に形成されている。このため、連結供給管6の供給口6aに供給された液体は、各脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bから、各脱気モジュール2の脱気領域Aに供給される(流れ出す)。これにより、複数の脱気モジュール2の中空糸膜束12に液体が並列に供給される。
【0043】
各脱気モジュール2と連結供給管6とは、密接していてもよく、離間していてもよい。各脱気モジュール2と連結供給管6とが密接している場合は、各脱気モジュール2の内管開口11aと連結供給管6の開口6bとが、少なくとも一部において重なる位置に形成されていることで、連結供給管6から各脱気モジュール2の脱気領域Aに液体を供給することができる。一方、各脱気モジュール2と連結供給管6とが離間している場合は、その間の空間に液体が流れる流路が形成されるため、各脱気モジュール2の内管開口11aと連結供給管6の開口6bとの位置関係によらず、連結供給管6から各脱気モジュール2の脱気領域Aに液体を供給することができる。
【0044】
図1及び図2に示すように、筐体4には、筐体4の外部から液体が供給される入口4aと、筐体4から液体が排出される出口4bと、が形成されている。
【0045】
入口4aは、例えば、筐体4の下端部に形成されている。入口4aは、連結供給管6の供給口6aと連通されている。このため、入口4aから供給された液体は、供給口6aから連結供給管6に供給される。
【0046】
出口4bは、例えば、筐体4の上端部に形成されている。出口4bは、モジュール容器13の各排出口13aと連通されている。このため、各排出口13aから排出された液体は、筐体4の出口4bから排出される。
【0047】
筐体4には、筐体封止部7と、脱気ユニット支持部8と、が設けられている。
【0048】
筐体封止部7は、連結供給管6の上流端部を、筐体4の内周面に固定する。また、筐体封止部7は、脱気ユニット3を介して、筐体4の内部領域を入口4a側の上流側領域Bと出口4b側の下流側領域Cとを仕切る。筐体封止部7としては、例えば、ステンレスなどの金属、繊維強化樹脂(FRP)、鉄などの金属をライニングした樹脂が用いられる。
【0049】
筐体封止部7は、連結供給管6と筐体4との間の、連結供給管6の内側以外の全領域に充填されている。つまり、筐体封止部7は、連結供給管6と筐体4との間に充填されているが、連結供給管6の内側には充填されていない。このため、連結供給管6の内側は、供給口6aから上流側領域Bに開放されており、入口4aから上流側領域Bに供給された液体は、供給口6aからのみ連結供給管6の内側に供給され、更に、開口6b及び内管開口11aから各脱気モジュール2の脱気領域Aに供給される。
【0050】
また、筐体封止部7は、連結供給管6を流れる液体の流れ方向において、全ての排出口13aよりも上流側に配置されている。このため、モジュール容器13の内側は、排出口13aから下流側領域Cに開放されており、開口6b及び内管開口11aから脱気領域Aに供給された液体は、排出口13aからのみ下流側領域Cに排出され、更に出口4bから筐体4外に排出される。
【0051】
脱気ユニット支持部8は、脱気ユニット3の上端部と筐体4とに固定されて、脱気ユニット3の上端部を支持する。脱気ユニット支持部8は、例えば、脱気ユニット3から筐体4に延びる棒状に形成されており、脱気ユニット3と筐体4との間を封止するものではない。このため、排出口13aから下流側領域Cに排出された液体は、脱気ユニット支持部8に阻止されることなく、出口4bから筐体4外に排出される。
【0052】
吸引管5は、複数本の中空糸膜14の内側を吸引(真空引き)するために、複数の脱気モジュール2の複数本の中空糸膜14の内側に連通されている。また、吸引管5は、筐体4の外部に設けられた真空ポンプなどの吸引ポンプにより吸引するために、筐体4を貫通して、筐体4の外部まで延びている。上述したように、中空糸膜14の内側は、封止部15から脱気モジュール2の両端側に開放されている。このため、吸引管5は、中空糸膜14の内側が開放された脱気モジュール2の両端に接続されている。これにより、吸引管5を吸引することで、脱気モジュール2の両端側から、中空糸膜14の内側を吸引することが可能となっている。
【0053】
また、上述したように、複数の脱気モジュール2は、外観上、連結供給管6により直列に接続されているため、連結供給管6に沿って互いに隣り合う脱気モジュール2間では、相手側の端面が対向して配置される。このため、この対向端面に、1つの吸引管5を接続してもよい。
【0054】
次に、脱気システム1による液体の脱気方法について説明する。
【0055】
まず、筐体4の入口4aから筐体4の上流側領域Bに水等の液体を供給する。すると、上流側領域Bに供給された液体は、供給口6aから連結供給管6に供給され、連結供給管6の開口6b及び各脱気モジュール2の内管開口11aを通って、各脱気モジュール2の脱気領域Aに供給される。これにより、液体が、各脱気モジュール2の中空糸膜束12に並列的に供給される。脱気領域Aでは、内管開口11aから供給された液体は、中空糸膜束12における複数本の中空糸膜14の間を通過した後、排出口13aから排出される。このとき、吸引管5を吸引して複数本の中空糸膜14の内側を減圧することで、複数本の中空糸膜14の間を通過する液体の溶存気体、気泡などが脱気される。そして、脱気された液体は、排出口13aから下流側領域Cに排出され、更に、出口4bから筐体4の外部に排出される。
【0056】
ここで、4個の脱気モジュールが連結された参考例の脱気システムについて、各脱気モジュールに流れる液体の流量を解析した。各脱気モジュールは、全く同じものとし、液体の流れ方向の順に、第一脱気モジュール、第二脱気モジュール、第三脱気モジュール、第四脱気モジュールとした。解析ソフトウェアには、ANSYS Fleunt Ver. 18.2を用いた。液体は、海水をモデルとして、密度を1025.5kg/m、粘度を0.001164Pa・sとした。中空糸膜束は、多孔質(圧力抵抗のある流路)をモデルとして、圧力係数を、1個の脱気モジュールの解析値から1.9×1010とした。圧力係数を求める解析では、DIC株式会社製のEF-040Pを用いた。参考例の脱気システムに供給する液体の総流量は、4m/h及び24m/hの2種類とした。解析結果を図7に示す。
【0057】
図7に示すように、何れの総流量の場合も、下流側に行くほど脱気モジュールに流れる液体の流量が多くなり、上流側に行くほど脱気モジュールに流れる液体の流量が少なくなった。また、総流量が多くなるほど、各脱気モジュールに流れる液体の流量の乖離率が大きくなった。乖離率は、各脱気モジュールに流れる液体の理想流量に対する正側及び負側の最大乖離率である。各脱気モジュールに流れる液体の理想流量は、総流量を脱気モジュールの数(参考例では4)で割った値である。
【0058】
更に、各脱気モジュールに流れる液体の流速及び圧力も解析した。解析条件は上記と同じである。解析結果をモデル化した図を図8に示す。図8に示す脱気ユニットは、図6に示す脱気ユニット3に対応するものである。図8に示すように、連結供給管に供給された液体は、上流側から順次脱気モジュールの脱気領域に流れ出ていくため、上流側から下流側に向かって連結供給管を流れる液体の流速が低くなる。すると、上流側から下流側に向かって連結供給管を流れる液体の圧力が高くなる。換言すると、下流側から上流側に向かって連結供給管を流れる液体の圧力が低くなる。このため、下流に向かうほど脱気モジュールに流れる液体の流量が多くなり、上流に向かうほど脱気モジュールに流れる液体の流量が少なくなる。脱気モジュールの脱気性能は、液体の流量によって大きく変動する。参考例の脱気システムでは、上流側の脱気モジュールと下流側の脱気モジュールとの間で、液体の流量の乖離が大きいため、脱気システム全体の脱気性能が、単体の脱気モジュールの脱気性能に比べて大幅に低くなる。
【0059】
そこで、本実施形態では、液体の圧力損失を適切に設定することで、上流側の脱気モジュール2と下流側の脱気モジュール2とで液体の流量の乖離を小さくして、脱気システム1全体の脱気性能を向上させるものとした。
【0060】
具体的に説明すると、複数の脱気モジュール2において、任意の一つの脱気モジュール2を上流側の脱気モジュール2(上流側脱気モジュール)とし、この上流側モジュールよりも下流側の脱気モジュール2を下流側の脱気モジュール2(下流側脱気モジュール)とする。例えば、脱気モジュール2Aを上流側の脱気モジュール2とした場合、脱気モジュール2B、脱気モジュール2C、脱気モジュール2Dの何れか一つが、下流側の脱気モジュール2となる。そして、脱気ユニット3は、連結供給管6の供給口6aから下流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失が、供給口6aから上流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失よりも大きくなるように構成されている。なお、本明細書において、圧力損失は、脱気システム1を流れる液体の圧力損失をいう。この場合、脱気ユニット3は、下流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bから下流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失が、上流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bから下流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失よりも大きくなるように構成されていてもよい。
【0061】
複数の脱気モジュール2において、何れか2つの脱気モジュールが上記の関係を満たしていれば良い。例えば、連結供給管6に沿って隣り合う脱気モジュール2間で、上記の圧力損失が同じ(実質的に同じ)であってもよい
【0062】
供給口6aから各脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失は、例えば、供給口6aの液体の圧力と各脱気モジュール2の排出口13aの液体の圧力とを圧力計などによって計測し、その差分を計算することにより求めることができる。
【0063】
このように、本実施形態に係る脱気システム1では、複数の脱気モジュール2の液体供給路10を直列に接続する連結供給管6により、複数の脱気モジュール2の中空糸膜束12に液体が並列に供給される。しかしながら、連結供給管6の供給口6aから下流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失が、連結供給管6の供給口6aから上流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失よりも大きい。このため、この圧力損失の差が、液体の流れ方向における流速及び圧力の差を相殺するように働く。その結果、上流側の脱気モジュール2と下流側の脱気モジュール2とで液体の流量の乖離が小さくなるため、脱気システム1全体の脱気性能を向上することができる。
【0064】
また、下流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bから下流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失を、上流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bから上流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失よりも大きくすることで、上流側の脱気モジュール2よりも下流側の脱気モジュール2の方が、液体が流れにくくなる。これにより、脱気システム1全体の脱気性能を向上することができる。
【0065】
ここで、供給口6aから各脱気モジュール2の排出口13aまでの圧力損失は、例えば、[1]連結供給管6における液体の圧力損失と、[2]連結供給管6の開口6bにおける液体の圧力損失と、[3]モジュール内管11の内管開口11aにおける液体の圧力損失と、[4]中空糸膜束12における液体の圧力損失と、[5]モジュール容器13の排出口13aにおける液体の圧力損失と、の総和となる。このため、例えば、これらの一部又は全てを調整することで、供給口6aから下流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの圧力損失を、供給口6aから上流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの圧力損失よりも大きくすることができる。
【0066】
[1]連結供給管6における液体の圧力損失に関しては、連結供給管6を、連結供給管6の下流側の脱気モジュール2に対応する位置における液体の圧力損失が、連結供給管6の上流側の脱気モジュール2に対応する位置における液体の圧力損失よりも大きくなるように、構成する。
【0067】
連結供給管6の下流側の脱気モジュール2に対応する位置における液体の圧力損失を、連結供給管6の上流側の脱気モジュール2に対応する位置における液体の圧力損失よりも大きくすることで、連結供給管6の供給口6aから下流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失を、連結供給管6の供給口6aから上流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失よりも大きくすることができる。
【0068】
具体的には、例えば、下流側の脱気モジュール2に対応する位置における連結供給管6の内径は、上流側の脱気モジュール2に対応する位置おける連結供給管6の内径よりも小さくてもよい。この場合、例えば、連結供給管6として、上流側から下流側に向けて内径がテーパ状に狭くなるものを用いてもよく、上流側から下流側に向けて内径が段階的に狭くなるものを用いてもよい。このようにすることで、連結供給管6の下流側の脱気モジュール2に対応する位置における液体の圧力損失を、連結供給管6の上流側の脱気モジュール2に対応する位置における液体の圧力損失よりも大きくすることができる。
【0069】
[2]連結供給管6の開口6bにおける液体の圧力損失に関しては、下流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bを、上流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bよりも液体の圧力損失が大きくなるように、構成する。
【0070】
このように、下流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bにおける液体の圧力損失を、上流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bにおける液体の圧力損失よりも大きくすることで、連結供給管6の供給口6aから下流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失を、連結供給管6の供給口6aから上流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失よりも大きくすることができる。
【0071】
具体的には、例えば、下流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bの総面積は、上流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bの総面積よりも小さくてもよい。また、例えば、下流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bの数は、上流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bの数よりも少なくてもよい。また、例えば、下流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bの大きさは、上流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bの大きさよりも小さくてもよい。このようにすることで、下流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bにおける液体の圧力損失を、上流側の脱気モジュール2に対応する位置に形成された開口6bにおける液体の圧力損失よりも大きくすることができる。
【0072】
[3]モジュール内管11の内管開口11aにおける液体の圧力損失に関しては、下流側の脱気モジュール2の内管開口11aを、上流側の脱気モジュール2の内管開口11aよりも液体の圧力損失が大きくなるように、構成する。
【0073】
このように、下流側の脱気モジュール2の内管開口11aにおける液体の圧力損失を、上流側の脱気モジュール2の内管開口11aにおける液体の圧力損失よりも大きくすることで、連結供給管6の供給口6aから下流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失を、連結供給管6の供給口6aから上流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失よりも大きくすることができる。
【0074】
具体的には、例えば、下流側の脱気モジュール2の内管開口11aの総面積は、上流側の脱気モジュール2の内管開口11aの総面積よりも小さくてもよい。また、例えば、下流側の脱気モジュール2の内管開口11aの数は、上流側の脱気モジュール2の内管開口11aの数よりも少なくてもよい。また、例えば、下流側の脱気モジュール2の内管開口11aの大きさは、上流側の脱気モジュール2の内管開口11aの大きさよりも小さくてもよい。このようにすることで、下流側の脱気モジュール2の内管開口11aにおける液体の圧力損失を、上流側の脱気モジュール2の内管開口11aにおける液体の圧力損失よりも大きくすることができる。
【0075】
[4]中空糸膜束12の液体の圧力損失に関しては、下流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12を、上流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12よりも圧力損失が高くなるように、構成する。
【0076】
下流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失を、上流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失よりも大きくすることで、連結供給管6の供給口6aから下流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失を、連結供給管6の供給口6aから上流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失よりも大きくすることができる。
【0077】
具体的には、例えば、下流側の脱気モジュール2における複数本の中空糸膜14の密度は、上流側の脱気モジュール2における複数本の中空糸膜14の密度よりも高くてもよい。複数本の中空糸膜14の密度を高くすることで、複数本の中空糸膜14の間の隙間が狭められて、中空糸膜束12に対する液体の通過抵抗が大きくなる。このため、下流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失が、上流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失よりも大きくなる。
【0078】
また、例えば、下流側の脱気モジュール2における中空糸膜束12の厚さは、上流側の脱気モジュール2における中空糸膜束12の厚さよりも厚くてもよい。中空糸膜束12の厚さを厚くすることで、中空糸膜束12に対する液体の通過抵抗が大きくなる。このため、下流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失が、上流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失よりも大きくなる。
【0079】
また、中空糸膜束12が、緯糸である複数本の中空糸膜14を縦糸で織った織物が、モジュール内管11(液体供給路10の周囲)に巻かれてなる場合、例えば、下流側の脱気モジュール2における織物の巻き圧が、上流側の脱気モジュール2における織物の巻き圧よりも高くてもよい。この場合、織物は、複数本の中空糸膜14がモジュール内管11(液体供給路10)の軸線方向に延びるように、モジュール内管11(液体供給路10の周囲)に巻かれてもよい。巻物の巻き圧を高くすることで、複数本の中空糸膜14の間の隙間が狭められて、中空糸膜束12に対する液体の通過抵抗が大きくなる。このため、下流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失が、上流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失よりも大きくなる。
【0080】
同様に、中空糸膜束12が、緯糸である複数本の中空糸膜14を縦糸で織った織物が、複数本の中空糸膜14がモジュール内管11(液体供給路10)の軸線方向に延びるようにモジュール内管11(液体供給路10の周囲)に巻かれてなる場合、例えば、下流側の脱気モジュール2における縦糸のピッチは、上流側の脱気モジュール2における縦糸のピッチよりも長くてもよい。織物をモジュール内管11に巻くと、内周側の隣り合う中空糸膜14の間に、外周側の中空糸膜14が入り込もうとする。この場合、脱気モジュール2における縦糸のピッチが短いと、外周側の中空糸膜14は、内周側の縦糸によって支持される間隔が狭くなるため、内周側の隣り合う中空糸膜14の間に入り込みにくくなる。その結果、中空糸膜14の密度が低くなる。一方、脱気モジュール2における縦糸のピッチが長いと、外周側の中空糸膜14は、内周側の縦糸によって支持される間隔が長くなるため、内周側の隣り合う中空糸膜14の間に入り込みやすくなる。その結果、中空糸膜14の密度が高くなる。このため、下流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失が、上流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失よりも大きくなる。
【0081】
また、例えば、下流側の脱気モジュール2における中空糸膜14の外径は、上流側の脱気モジュール2における中空糸膜14の外径よりも大きくてもよい。例えば、中空糸膜14の数が同じである場合、中空糸膜14の外径を大きくすることで、中空糸膜14間の隙間が狭められて、中空糸膜束12に対する液体の通過抵抗が大きくなる。このため、下流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失が、上流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失よりも大きくなる。
【0082】
また、例えば、下流側の脱気モジュール2における中空糸膜14は、上流側の脱気モジュール2における中空糸膜14よりも高い親水性を有してもよい。中空糸膜14の親水性が高くなると、中空糸膜14に対する液体の接触抵抗が大きくなる。このため、下流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失が、上流側の脱気モジュール2の中空糸膜束12における液体の圧力損失よりも大きくなる。
【0083】
[5]モジュール容器13の排出口13aにおける液体の圧力損失に関しては、下流側の脱気モジュール2の排出口13aを、上流側の脱気モジュール2の排出口13aよりも液体の圧力損失が大きくなるように、構成する。
【0084】
下流側の脱気モジュール2の排出口13aにおける液体の圧力損失を、上流側の脱気モジュール2の排出口13aにおける液体の圧力損失よりも大きくすることで、連結供給管6の供給口6aから下流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失を、連結供給管6の供給口6aから上流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失よりも大きくすることができる。
【0085】
具体的には、例えば、下流側の脱気モジュール2の排出口13aの総面積は、上流側の脱気モジュール2の排出口13aの総面積よりも小さくてもよい。また、例えば、下流側の脱気モジュール2の排出口13aの数は、上流側の脱気モジュール2の排出口13aの数よりも少なくてもよい。また、下流側の脱気モジュール2の排出口13aの大きさは、上流側の脱気モジュール2の排出口13aの大きさよりも小さくてもよい。このようにすることで、下流側の脱気モジュール2の排出口13aにおける液体の圧力損失を、上流側の脱気モジュール2の排出口13aにおける液体の圧力損失よりも大きくすることができる。
【0086】
[脱気システムの製造方法]
次に、脱気システム1の製造方法について説明する。
【0087】
まず、複数の脱気モジュール2と、連結供給管6と、を用意する。次に、連結供給管6を複数の脱気モジュール2の液体供給路10に挿入する。そして、連結供給管6により複数の脱気モジュール2の液体供給路10を直列に接続する。また、複数の脱気モジュール2の中空糸膜束12に液体が並列に供給されるように、連結供給管6の複数の開口6bを複数の脱気モジュール2に対応する位置に配置する。
【0088】
ここで、複数の脱気モジュール2において、任意の一つの脱気モジュール2を上流側の脱気モジュール2(上流側脱気モジュール)とし、この上流側モジュールよりも下流側の任意の一つの脱気モジュール2を下流側の脱気モジュール2(下流側脱気モジュール)とする。そして、連結供給管6の供給口6aから下流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失を、供給口6aから上流側の脱気モジュール2の排出口13aまでの液体の圧力損失よりも大きくする。このような液体の圧力損失の設定は、上述した様々な手法により行うことができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、脱気モジュールの構成について具体的に説明したが、脱気モジュールとしては、様々な形態のものを用いることができる。また、上記実施形態では、各脱気モジュールがモジュール内管を備えるものとして説明したが、このようなモジュール内管を備えなくてもよい。この場合、例えば、各脱気モジュールの中空糸膜束(織物)が、連結供給管に直接的に巻き付けられる。
【0090】
また、本発明の脱気システムの使用方法及び利用方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジェット・ボーリング法、インサイチュリーチング法(ISL)、水攻法などの天然資源を産生するための技術分野に用いることができる。具体的には、次のような天然資源の産生方法に用いてもよい。すなわち、この天然資源の産生方法は、本発明の脱気システムにおいて、前記連結供給管から前記複数の脱気モジュールの液体供給路に液体を供給するとともに、前記複数の脱気モジュールのそれぞれの前記複数本の中空糸膜の内側を減圧することで、前記液体を脱気する脱気工程と、前記脱気工程で脱気された前記液体を天然資源の採掘現場に圧入する圧入工程と、を備える。ここで、天然資源としては、例えば、銅、ウラン等の金属鉱物や、原油、天然ガス、シェールオイル、シェールガス等の燃料鉱物が挙げられる。液体としては、例えば、水が挙げられる。なお、天然資源が燃料鉱物である場合は、液体としては、例えば、海水、随伴水、フラクチャリング流体が挙げられる。随伴水は、天然資源を産生する際に生成される水である。本発明に使用する脱気ユニットは、あらかじめ、複数の脱気モジュールを連結して製造してから使用場所に移送することもできるし、また、個々に搬送した脱気モジュールを本発明の脱気システムの使用場所で連結して製造することもできる。万が一、いずれかの脱気モジュールに不具合が生じた場合には、該当する脱気モジュールのみを交換すればよく、製造する際の移送時の取り扱い性や、使用中のメンテンナンス性に優れる。このため、例えば、天然資源の採掘現場での使用にも好適である。
【符号の説明】
【0091】
1…脱気システム、2,2A,2B,2C,2D…脱気モジュール(上流側脱気モジュール、下流側脱気モジュール)、3…脱気ユニット、4…筐体、4a…入口、4b…出口、5…吸引管、6…連結供給管、6a…供給口、6b…開口、7…筐体封止部、8…脱気ユニット支持部、10…液体供給路、11…モジュール内管、11a…内管開口、12…中空糸膜束、12a…端部、13…モジュール容器、13a…排出口、14…中空糸膜、15…封止部、A…脱気領域、B…上流側領域、C…下流側領域。
図1
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図8