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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】具材入り液状調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220920BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20220920BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L27/10 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017137570
(22)【出願日】2017-07-14
(65)【公開番号】P2019017282
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-07-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.電気通信回線発表:平成29年1月18日 掲載アドレス:http://www.mizkan.co.jp/company/newsrelease/2017news/170118-00.html 2.店舗への販売:平成29年2月3日 販売場所:株式会社池原商事(沖縄県浦添市西州2-4-1)
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大池 正樹
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-099317(JP,A)
【文献】特開2017-061431(JP,A)
【文献】特開昭61-067458(JP,A)
【文献】特開2006-254817(JP,A)
【文献】香川芳子,七訂 食品成分表2016 資料編,女子栄養大学出版,2016年04月01日,116頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも加熱処理タマネギ具材と有機酸を含む原料を75~95℃で煮込み加熱処理してなる具材入り液状調味料であって、該加熱処理タマネギ具材が乾燥タマネギ、茹でタマネギ、蒸しタマネギ、炒めタマネギ、及びカラメル化タマネギから選ばれる少なくとも1種であること、調味液中で膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリインの含有量が0.30質量%以上で、かつ具材入り液状調味料中のシクロアリインの含有量が0.12質量%以上であること、及びpHが2.5~4.5であることを特徴する、具材入り液状調味料(ただし、前記加熱処理タマネギ具材は、有機酸の存在下で加熱処理したタマネギ具材を除く)
【請求項2】
前記有機酸が、酢酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、及びコハク酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項に記載の具材入り液状調味料。
【請求項3】
前記有機酸が、食酢、果汁、及び有機酸系調味料から選ばれる少なくとも1種の有機酸含有物中の有機酸である、請求項1又は2に記載の具材入り液状調味料。
【請求項4】
前記具材入り液状調味料中のグルタミン酸の含有量が、70~3000質量ppmである、請求項1~のいずれか1項に記載の具材入り液状調味料。
【請求項5】
前記具材入り液状調味料が、加熱調理用又は加熱料理用である、請求項1~のいずれか1項に記載の具材入り液状調味料。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の具材入り液状調味料を製造する方法であって、少なくとも乾燥タマネギ、茹でタマネギ、蒸しタマネギ、炒めタマネギ、及びカラメル化タマネギから選ばれる少なくとも1種の加熱処理タマネギ具材と有機酸を含む原料を、75~95℃で煮込み加熱処理する工程と、加熱処理後、常温になるまで放置又は冷却する工程を含む、具材入り液状調味料の製造方法(ただし、前記加熱処理タマネギ具材は、有機酸の存在下で加熱処理したタマネギ具材を除く)
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の具材入り液状調味料を使用した加熱調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タマネギ特有の煮込み感、旨味、及び食感が増強された具材入り液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サラダや調理食品には、様々な味や形態の調味料が使用されている。なかでも、調味液中におろし野菜や細かくカットした野菜などの具材を含有する形態の液状調味料は、調味液に予め具材が加えられているため、具材を別途準備し、調味液と混ぜ合わせて加熱等の調理をするなどの手間が省け、また、具材のバリエーションにより、多様化する消費者の嗜好に応えるものである。
【0003】
このような具材入り液状調味料では、風味及び旨みの増強を目的とする工夫がなされている。例えば、特許文献1では、醤油と糖類を含むベース液を加熱することによって、3-メチル-ブタナール量を増加させたベース液に、おろし野菜や果実等の具材を混合する調味料の製造方法が提案されている。しかしながら、この方法は、具材に煮込み感を付与するものではなく、調味液において具材の旨味を高めるものではない。また、特許文献2では、加熱処理されたネギ科野菜と油脂(ジアシルグリセロール)を配合することによって、ネギ科野菜の風味と旨味を増強した液体調味料が提案されているが、具材のネギ科野菜は、単独で加熱処理されており、調味液とは別に具材だけの風味や旨味が高まるだけである。また、特許文献3では、乾燥タマネギなどの乾燥野菜を具材に用いる液体調味料において、乾燥野菜の雑味を低減するために、予め乾燥野菜を有機酸水溶液中で加熱処理する工程を含む酸性液体調味料の製造方法が提案されている。しかしながら、この方法では調味液に具材の旨味が十分に付与されるものではなく、また具材の煮込み感も得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-229623号公報
【文献】特開2009-189324号公報
【文献】特開2011-125298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、具材であるタマネギの煮込み感と、調味液におけるタマネギの旨味が向上し、調味料全体にタマネギ由来の風味とコクが付与された具材入り液状調味料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、タマネギを主とする具材と有機酸を含む原料を特定の条件にて加熱処理することによって、タマネギの旨味成分であるシクロアリインの含有量が具材と調味液の両方で増加すること、タマネギの煮込み感と調味液におけるタマネギの旨味が向上すること、その結果、調味料全体にタマネギ由来の風味とコクを付与されることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)少なくともタマネギ具材と有機酸を含む原料を加熱処理してなる具材入り液状調味料であって、調味液中で膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリインの含有量が0.30質量%以上で、かつpHが2.5~4.5であることを特徴する、具材入り液状調味料。
(2)前記具材入り液状調味料中のシクロアリインの含有量が0.12質量%以上である、(1)に記載の具材入り液状調味料。
(3)前記タマネギが、加熱処理タマネギである、(1)又は(2)に記載の具材入り液状調味料。
(4)前記加熱処理タマネギが乾燥タマネギ、茹でタマネギ、蒸しタマネギ、炒めタマネギ、及びカラメル化タマネギから選ばれる少なくとも1種である、(3)に記載の具材入り液状調味料。
(5)前記有機酸が、酢酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、及びコハク酸から選ばれる少なくとも1種である、(1)~(4)のいずれかに記載の具材入り液状調味料。
(6)前記有機酸が、食酢、果汁、及び有機酸系調味料から選ばれる少なくとも1種の有機酸含有物中の有機酸である、(1)~(5)のいずれかに記載の具材入り液状調味料。
(7)前記タマネギ具材と有機酸を含む原料の加熱処理が、75~120℃の加熱処理である、(1)~(6)のいずれかに記載の具材入り液状調味料。
(8)前記具材入り液状調味料中のグルタミン酸の含有量が、70~3000質量ppmである、(1)~(7)のいずれかに記載の具材入り液状調味料。
(9)前記具材入り液状調味料が、加熱調理用又は加熱料理用である、(1)~(8)のいずれかに記載の具材入り液状調味料。
(10)(1)~(9)のいずれかに記載の具材入り液状調味料を製造する方法であって、少なくともタマネギ具材と有機酸を含む原料を、75~120℃で加熱処理する工程と、加熱処理後、常温になるまで放置又は冷却する工程を含む、具材入り液状調味料の製造方法。
(11)(1)~(9)のいずれかに記載の具材入り液状調味料を使用した加熱調理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タマネギたっぷりの具材感と、じっくり煮込んだタマネギのコクと旨みが十分に感じられる、具材入り液状調味料が提供される。本発明の具材入り液状調味料は、タマネギを別に刻んで用意する必要がなく、そのままで、または、他の食材を混合するだけで調理感の高いソースやたれとして様々な料理に簡便にかつ汎用的に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の具材入り液状調味料(以下、「本発明の液状調味料」という)は、少なくともタマネギ具材と有機酸を含む原料を加熱処理してなる具材入り液状調味料であって、調味液中で膨潤後のタマネギ具材中のシクロアリインの含有量とpHが所定の範囲であることを特徴とする。
【0010】
(タマネギ)
本発明の液状調味料において主たる具材として使用するタマネギは、品種や産地は限定されない。本明細書において、「タマネギ」とは通常食用される鱗茎葉を所定の大きさにカットしたタマネギ片(カットタマネギ)をいう。本発明に使用するタマネギは、加熱処理したタマネギが好ましく、具体的には乾燥タマネギ、茹でタマネギ、炒めタマネギ、蒸しタマネギ、カラメル化タマネギのいずれでもよく、これらの一種又は二種以上を使用することができる。これらの加熱処理タマネギのうち、調味液が浸透しやすく高い煮込み感が得られる点において、乾燥タマネギが好ましい。また乾燥タマネギは、冷蔵や冷凍を必ずしも必要としないという利点がある。
【0011】
上記乾燥タマネギは、所定の大きさにカットした後に乾燥又は乾燥後にカットすることにより製造できる。乾燥方法としては、熱風乾燥、減圧加熱乾燥、マイクロウェーブ乾燥、天日乾燥、自然乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。当該乾燥タマネギの水分量は、余分な水分を調味液に移行させない点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0012】
上記乾燥タマネギは、乾燥前に糖類と混合、あるいは糖類含有溶液に浸漬して加熱混合することにより調製したものでも良い。具体的には、糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、澱粉分解物等が挙げられ、二種以上を用いてもよい。糖類の添加量、混合時間、及び糖類含有溶液に浸漬する場合の濃度、加熱混合温度及び時間、ならびに続く乾燥の温度及び時間は、タマネギのサイズ等により任意に選択すればよいが、糖類と混合する場合の糖類の添加量は乾燥タマネギに対して5~30質量%が好ましく、糖類含有溶液に浸漬する場合の糖類の濃度は5~30質量%が好ましく、溶液中での加熱混合条件は50~80℃で10分~12時間が好ましい。
【0013】
また、上記乾燥タマネギは、カットしたタマネギをカルシウム塩溶液中で加熱混合した後、乾燥したものでも良い。カルシウム塩溶液の濃度、加熱混合温度及び時間、ならびに続く乾燥の温度及び時間は、タマネギのサイズ等により任意に選択すればよい。具体的には、カットしたタマネギを、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム等のカルシウム塩を水に0.5~5質量%となるように溶解した水溶液中で50~80℃で1~120分攪拌した後に、処理液と分離し、液切りを行った後、65~80℃で3~12時間乾燥すれば良い。上記カルシウム水溶液に、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、澱粉分解物等の糖類を5~30質量%含有させることもできる。
【0014】
上記茹でタマネギは、例えばタマネギの外皮を取り除き、カットせずにそのまま熱水中で加熱した後、引き上げて特定の大きさにカットしたものか、特定の大きさにカットした後、熱水中で加熱したものを用いることができる。上記蒸しタマネギは、例えば特定の大きさにカットした後、加圧下で蒸気によって加熱したものを用いることができる。上記炒めタマネギは、特定の大きさにカットした後、釜などを用いて必要に応じて食用油脂、離型油等と共に加熱したものを用いることができる。上記カラメル化タマネギは、炒めタマネギを更にあめ色になるまで炒めたものを用いることができる。
【0015】
タマネギ片の大きさは、調味液中で膨潤後のタマネギ片の最長辺の長さが、好ましくは1~60mmであり、より好ましくは2~50mmであり、さらに好ましくは2~40mmであり、最も好ましくは4~40mmである。膨潤後のタマネギ片の大きさが1mm未満の場合には、タマネギの煮込み感を感じる程度の食感が得られない。また60mmを超えると、調味液がタマネギ片に浸透しづらく、煮込み感が十分に得られず、調理時の作業性も悪くなる。
【0016】
本発明の液状調味料におけるタマネギ具材(以下、単に「具材」ともいう)の含有量は、湿重量で調味料全体の20~80質量%、好ましくは30~80質量%、より好ましくは40~70質量%、さらに好ましくは45~60質量%である。具材の含有量が、湿重量で20質量%未満であると、タマネギ本来の良好な風味と、タマネギを調味液中で加熱することによって生じるタマネギ由来の良好な風味が十分に得られない。よって、液状調味料全体の風味が弱く満足できるものでない。また具材の含有量が、湿重量で80質量%を超えると、タマネギそのもの及び液状調味料の風味は良好になるものの、調味液が少なすぎて調理に使用する際の作業性が悪くなる。
【0017】
本発明の液状調味料において、タマネギ具材以外の野菜類を含有してもよい。野菜の種類は特に限定されないが、加熱調理して食されるものが好ましく、例えばキャベツ、白菜、ニンジン、ピーマン、大根、大根葉、ビート、レンコン、ゴボウ、ネギ、シソ、セロリ、パセリ、パプリカ、トマト、きゅうり、とうもろこし(スイートコーン)、カリフラワー、なす、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ヤマイモ、カボチャ、シイタケ、マイタケ、ヒラタケ、エリンギ、エノキダケ、シメジ、マッシュルーム等が挙げられる。これらの野菜は、一種又は二種以上を用いることができる。上記タマネギ具材以外の野菜類は、本発明の効果を妨げない限りにおいて使用することができ、例えばタマネギ具材と野菜類の合計量のうち5割以上がタマネギ具材であればよい。
【0018】
(有機酸)
本発明の液状調味料に使用する有機酸としては、例えば、酢酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、及びコハク酸等が挙げられる。これらの有機酸は、一種を単独で使用してもよいが二種以上を併用してもよい。上記の有機酸のなかでも、タマネギの煮込み感とタマネギの旨味を高める上で、酢酸、リンゴ酸が好ましい。有機酸は、有機酸そのものを使用してもよいが、有機酸含有物の形態で使用することもできる。有機酸含有物、好ましくは、酢酸及び/又はリンゴ酸含有物としては、例えば、食酢、果汁、又は有機酸系調味料等が挙げられる。
【0019】
上記食酢には、米や麦などの穀物や果汁を主原料として生産される醸造酢と、氷酢酸や酢酸の希釈液に砂糖等の調味料を加えるか、又はそれに醸造酢を加えた合成酢があり、いずれも使用できる。醸造酢としては、例えば、穀物酢(米酢、玄米酢、黒酢、粕酢、麦芽酢、はと麦酢、大豆酢等)、果実酢(りんご酢、ぶどう酢、レモン酢、カボス酢、梅酢、ワイン酢、バルサミコ酢等)、エタノールを原料とした酢酸発酵によって製造される酒精酢、中国酢などが挙げられ、また、合成酢としては、氷酢酸又は酢酸を水で適宜希釈したものなどが挙げられる。これらのうち、酢酸含有量が高く、原料に由来する風味が弱い、高酢酸濃度の酒精酢や合成酢が好ましい。また、これらの食酢は、一種を単独で使用してもよいが二種以上を併用してもよい。
【0020】
上記果汁としては、例えば、レモン、ゆず、すだち、ライム、みかん、グレープフルーツ、りんご、桃、ぶどう、いちご、梨、バナナ、メロン、キウイ、パイナップル、カシス、アセロラ、ブルーベリー、アプリコット、グアバ、プラム、マンゴー、パパイヤ、ライチ等に由来する果汁が挙げられる。これらのうち、レモン、ゆず、すだち、ライム、みかん、グレープフルーツ等の柑橘類、りんごの果汁がより好ましい。これらの果汁は、一種を単独で使用してもよいが二種以上を併用してもよい。
【0021】
上記有機酸系調味料としては、例えば、酢酸ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム等が挙げられる。これらの有機酸系調味料は、一種を単独で使用してもよいが二種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明の液状調味料中の有機酸の含有量(有機酸含有物の場合は、有機酸量に換算)は、0.1~5.0質量%が好ましく、0.2~4.5質量%がより好ましく、0.5~4.0質量%がさらに好ましい。
【0023】
(シクロアリイン)
本発明の液状調味料が含有するシクロアリインは、タマネギを水中で加熱することによって、前駆体の含硫成分から生成され、グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウム等との共存によってコク味が感じられることが知られている。本発明の液状調味料において、調味液中で膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリインの含有量は、0.30質量%以上が好ましく、0.32質量%以上がより好ましく、0.38質量%以上がさらに好ましい。調味液中で膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリインの含有量が0.30質量%未満であると、タマネギの煮込み感や旨味が得られにくい。また調味液中で膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリインの含有量の上限は特に限定はされないが、2.0質量%より多く含有しても効果は大きく変わらないことから、2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。また、本発明の液状調味料中のシクロアリインの含有量は、0.12質量%以上が好ましく、0.15質量%以上がより好ましく、0.20質量%以上がさらに好ましい。液状調味料中のシクロアリインの含有量が、0.12質量%未満であると、タマネギの煮込み感や旨味が不十分となる。液状調味料中のシクロアリインの含有量の上限は特に限定はされないが、0.5質量%より多く含有しても効果は大きく変わらないことから、0.5質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましい。
【0024】
(pH)
本発明の液状調味料中の調味液のpHは、2.5~4.5が好ましく、2.7~3.8がより好ましい。pHが上記の範囲で加熱すると、シクロアリインが調味液中で増加しタマネギの煮込み感が得られやすく好ましい。pHが4.5より高いとシクロアリインが調味液中で増加しにくく、タマネギの煮込み感が十分にえられないので好ましくなく、また、2.5より低いと、酸味が強すぎるので好ましくない。
【0025】
(加熱処理)
タマネギ具材と有機酸を含む原料の加熱処理(煮込み加熱)は、シクロアリインが上記の特定量以上となるような条件にて行う。加熱温度は、具体的には、75~120℃が好ましく、85~120℃がより好ましく、85~95℃がさらに好ましい。加熱時間は加熱温度により異なり、適宜調整できるが、例えば、75℃以上85℃未満で180分~240分、または85℃以上105℃未満で90分~240分、105℃以上120℃未満で10分~90分が好ましく、85℃以上105℃未満で90分~180分、または105℃以上120℃未満で10分~60分がより好ましく、85℃以上95℃未満で90分~180分がさらに好ましい。加熱温度及び加熱時間が上記の範囲であると、煮込み感が得られて旨味が増すので好ましい。加熱温度が、120℃より高いとタマネギの食感が弱くなるので好ましくなく、また、75℃より低いと、長時間加熱してもシクロアリインが特定の含有量になりにくく、煮込み感が得られにくいので好ましくない。
【0026】
(グルタミン酸)
本発明の液状調味料中のグルタミン酸の含有量は、70~3000質量ppmが好ましく、80~2500質量ppmがより好ましく、120~2000質量ppmがさらに好ましい。
【0027】
また、本発明の液状調味料は、タマネギ由来の風味成分として硫化アリルを含有することが好ましく、タマネギ特有の風味やコクが得られる。また、硫化アリル類は、血栓予防、血中コレステロールの増加抑制、免疫機能の向上、がんの予防などに役立つと言われている。
【0028】
(その他の原料)
本発明の液状調味料には、上記原料のほか、その種類に応じて通常の液状調味料において用いられる調味等のための原料を含有させることができる。一般的に、水、食酢、糖類(高甘味度甘味料を含む)、食塩が基本原料となる。本発明の液状調味料には、このような基本原料に加えて、例えば、香辛料、香辛料抽出物、香味オイル、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、発酵調味料(風味原料、旨味調味料)、酒類、フレーバーなどの呈味・風味成分、粘度調整剤、安定剤、着色料、カルシウム塩等などの添加剤などを用いることができる。これらの成分の含有量は、特に限定はされず、用途に応じて適宜決定することができる。
【0029】
本発明においては、食酢は有機酸含有物の形態で使用することもあり、種類としては前記に挙げたものと同じである。
【0030】
上記糖類としては、例えば、ショ糖、麦芽糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、水あめ、デキストリンやソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール類等が挙げられる。これらの糖類は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0031】
上記高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、甘草抽出物、ステビアやその酵素処理物等が挙げられる。これらの高甘味度甘味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよく、糖類と併用することもできる。
【0032】
上記食塩はそのものでもよいが、食塩を含有する食品でも良い。食塩を含有する食品は特に限定はないが、例として、醤油、味噌、出汁等が挙げられる。
【0033】
上記醤油としては特に限定されるものではないが、例えば濃口醤油、淡口醤油、白醤油、溜り醤油、再仕込み醤油等が挙げられる。これらの醤油は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0034】
上記味噌としては特に限定されるものではないが、例えば麦味噌、米味噌、豆味噌、調合味噌などに加えて、その製法に起因する色の違いによって命名される赤味噌・白味噌・淡色味噌等が挙げられる。これらの味噌は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0035】
上記香辛料とは、特有の香り、刺激的な呈味、色調を有し、香り付け、消臭、調味、着色等の目的で飲食品に配合する植物体の一部(植物の果実、果皮、花、蕾、樹皮、茎、葉、種子、根、地下茎など)をいい、香辛料にはスパイス又はハーブが含まれる。スパイスとは香辛料のうち、利用部位として茎と葉と花を除くものをいい、例えば、胡椒(黒胡椒、白胡椒、赤胡椒)、ニンニク、ショウガ、ごま(ごまの種子)、唐辛子、ホースラディシュ(西洋ワサビ)、マスタード、ケシノミ、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、オールスパイス、クローブ、山椒、オレンジピール、ウイキョウ、カンゾウ、フェネグリーク、ディルシード、カショウ、ロングペパー、オリーブの実などが挙げられる。また、ハーブとは香辛料のうち、茎と葉と花を利用するものをいい、例えば、クレソン、コリアンダー、シソ、セロリ、タラゴン、チャイブ、チャービル、セージ、タイム、ローレル、ニラ、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ミョウガ、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ディル、ワサビ葉、山椒の葉などが挙げられる。これらの香辛料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0036】
上記香辛料抽出物としては、一般的に「香辛料」又は「スパイス」と表示される食品の抽出物であれば何でもよく、例えば、唐辛子抽出物、マスタード抽出物、ジンジャー抽出物、ワサビ抽出物、ペパー抽出物、ガーリック抽出物、オニオン抽出物、サンショウ抽出物等が挙げられる。これらの香辛料抽出物は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0037】
上記香味オイルとしては、例えば、ジンジャーオイル、ガーリックオイル、マスタードオイル、オニオンオイル、ゴマ油、ねぎオイル、ニラオイル、セリオイル、しそオイル、わさびオイル、レモンオイル、魚介オイル、畜肉オイル等が挙げられる。これらの香味オイルは、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0038】
上記アミノ酸系調味料としては、例えば、L-グルタミン酸ナトリウム、DL-アラニン、グリシン、L-又はDL-トリプトファン、L-フェニルアラニン、L-又はDL-メチオニン、L-リシン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アルギニン等が挙げられる。これらのアミノ酸系調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0039】
上記核酸系調味料としては、例えば、5’-イノシン酸二ナトリウム、5’-グアニル酸二ナトリウム、5’-ウリジル酸二ナトリウム、5’-シチジル酸二ナトリウム、5’-リボヌクレオチドカルシウム、5’-リボヌクレオチド二ナトリウム等が挙げられる。これらの核酸系調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0040】
上記風味原料としては、例えば、鰹だし、昆布だし、野菜エキス、鰹エキス、昆布エキス、魚介エキス、畜肉エキス、果汁等が挙げられる。これらの風味原料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0041】
上記旨味調味料としては、例えば、たん白加水分解物、酵母エキス等が挙げられる。これらの旨味調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0042】
上記酒類としては、清酒、合成清酒、みりん、焼酎、ワイン、リキュール、紹興酒等が挙げられる。これらの酒類は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0043】
上記フレーバーとしては、例えば、ジンジャーフレーバー、ガーリックフレーバー、マスタードフレーバー、オニオンフレーバー、ゴマフレーバー、ねぎフレーバー、ニラフレーバー、しそフレーバー、わさびフレーバー、レモンフレーバー等が挙げられる。これらのフレーバーは、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0044】
上記粘度調整剤としては、例えば、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、カラヤガム、寒天、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グァーガム、ジェランガム、セルロース、タマリンドシードガム、タラガム、トラガントガム、プルラン、ペクチン、キチン、キトサン、加工澱粉等が挙げられる。これらの粘度調整剤は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0045】
(具材入り液状調味料の製造方法)
本発明の液状調味料は、少なくともタマネギ具材と有機酸を含む原料を加熱処理(煮込み加熱)する工程と、加熱処理後、常温になるまで放置又は冷却する工程を含む方法によって製造することができる。加熱処理に供する原料はタマネギ具材と有機酸を少なくとも含んでいればよく、全ての原料であってもよい。原料の種類によっては、加熱処理後に添加してもよい。加熱処理は、定温加熱処理(ある一定の温度まで加熱した後、一定の温度で保持する加熱処理)により行うことが好ましい。加熱温度は、具体的には、75~120℃が好ましく、85~120℃がより好ましく、85~95℃がさらに好ましい。加熱時間は加熱温度により異なり、適宜調整できるが、例えば、75℃以上85℃未満で180分~240分、または85℃以上105℃未満で90分~240分、105℃以上120℃未満で10分~90分が好ましく、85℃以上105℃未満で90分~180分、または105℃以上120℃未満で10分~60分がより好ましく、85℃以上95℃未満で90分~180分がさらに好ましい。加熱処理は、例えば、湯煎加熱、蒸気加熱、レトルト加熱、ヒーター加熱、高周波電磁誘導加熱、チューブ式高温加熱、又はジュール加熱等の方法により行うことができる。これらの方法による加熱は、例えばバッチ式の攪拌機能付きジャケットタンク、レトルト殺菌装置、若しくはオートクレーブ、又はプレート式熱交換機、チューブ式熱交換機、若しくはスチームインジェクション式熱交換機等の各種熱交換機等、従来公知の機器が使用できる。加熱処理する際の圧力は特に限定されないが、具材の食感保持の観点から常圧で行うことが好ましい。
【0046】
上記の工程を経て得られた液状調味料は、そのまま、あるいは、加熱殺菌や加圧殺菌などの殺菌処理に供した後、一般の液状調味料と同様に、容器に充填する。本発明の液状調味料に使用する容器としては、材質や形状は特に限定はされないが、例えば、プラスチック製容器、パウチ(ポリエチレンパウチ、アルミパウチ)、ペットボトル、スチール缶、アルミ缶、瓶容器などが挙げられる。また、本発明の液状調味料は容器に充填した後で、加熱殺菌、あるいはレトルト殺菌などの殺菌処理に供して液状調味料とすることもできる。
【0047】
(具材入り液状調味料の使用態様)
本発明の液状調味料は、煮込み感を有するタマネギを含有する液状調味料であることから、煮込み料理用調味料、ハンバーグ用調味料、ステーキ用調味料、焼肉用調味料、惣菜用調味料、パスタ用調味料、チャーハン用調味料、スープ用調味料、餃子用調味料、鍋用調味料、麺用調味料、米飯用調味料、釜飯用調味料、あんかけ用調味料、豆腐用調味料、天丼用調味料、和え物用調味料、ソテー用調味料、電子レンジ用調味料、スンドゥブ用調味料、炒め用調味料、炊き込みご飯用調味料、五目ご飯用調味料、キムチ用調味料、揚げ物用調味料、ラーメン用調味料、しゃぶしゃぶ用調味料、ディップ用調味料等に用いることができる。特に加熱調理時に添加する、あるいは加熱調理後にかけて使用する加熱調理用調味料として本発明の液状調味料は有用であり、煮込み料理用調味料、ハンバーグ用調味料、ステーキ用調味料、焼肉用調味料、惣菜用調味料、パスタ用調味料、チャーハン用調味料、スープ用調味料、餃子用調味料として使用するのが特に好ましい。
【実施例
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
(試験例1)具材の加熱加工及びpHの検討
(1)試験品の調製(実施例1~3、及び比較例1~2)
表1に示す配合量(質量%)にて、有機酸(酢酸又はリンゴ酸)、砂糖、食塩を水に混合し、均一になるように攪拌し、調味液を調製した。なお、酢酸として醸造酢(酸度10%)を用いた。
【0050】
タマネギを5mm角にカットし、そのまま加工しない生タマネギ、熱風処理により乾燥した乾燥タマネギ、熱水中で加熱した茹でタマネギ(95℃30分)の3種のタマネギ具材を調製した。これらのタマネギ具材を、液状調味料全量に対して調味液中で膨潤後のタマネギ具材の含有量(湿重量)が40質量%となるように、上記調味液に投入し、撹拌して均一にした後、湯煎で90℃120分の加熱処理を行った。その後、ボトルに充填し、自然放冷により試験品の具材入り液状調味料を調製した。
【0051】
(2)成分の分析試験
(液状調味料中のシクロアリイン含有量(質量%)の測定)
試験品の具材入り液状調味料をミキサーで均一化したサンプルを0.05M リン酸緩衝液(pH2.6)で20倍希釈(1g採取して20mlにフィルアップ)し、0.45μmフィルターでろ過したものをサンプルとし、下記の条件にてHPLC分析をおこなった。標品としては、シクロアリイン塩酸塩一水和物を使用した。
【0052】
分析条件
カラム 関東化学 Mightysil RP-18 GP250-4.6(5μm)
移動相 0.05M リン酸緩衝液(pH2.6):メタノール=85:15
カラム温度 40℃
流速 0.5ml/min
検出器 UV検出器 210nm
分析時間 35分
注入量 10μL
【0053】
(膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリイン含有量(質量%)の算出)
膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリイン含有量(質量%)(C)を、上記で測定した液状調味料中のシクロアリイン含有量(質量%)(A)と調味液中で膨潤後のタマネギ含有量(質量%)(B)から、下記の式に従い計算した。
(C)=(A)/(B)×100
【0054】
(グルタミン酸の測定)
試験品の具材入り液状調味料を、水とクエン酸リチウム緩衝液(pH2.2)で希釈した後、0.45μmフィルターでろ過し、得られたろ液中のグルタミン酸をアミノ酸分析機(日本電子社製 JCL-500/V)で分析した。
【0055】
(3)官能評価試験
試験品の具材入り液状調味料を50℃まで熱した後、「タマネギの旨み」、「具材の煮込み感」、「具材の食感」の官能評価を行った。官能評価は訓練された官能検査員のべ4名にて、下記基準により行った。各評価項目の評価点の算出方法は、4名の評価を加重平均し、小数点以下を四捨五入した。総合評価は、各評価項目の評価点を加重平均し、5点評価の中間点である3点を基準とし、3点よりも高い4点を良好な効果があるものとし、5点がより良好な効果があるものとした。
【0056】
(タマネギの旨み)
5:タマネギの旨味が充分感じられる。
4:タマネギの旨味が感じられる。
3:タマネギの旨味が多少感じられる。
2:タマネギの旨味が弱い。
1:タマネギの旨味が感じられない。
(具材の煮込み感)
5:とても煮込まれている感じがする。
4:煮込まれている感じがする。
3:ある程度煮込まれている感じがする。
2:煮込まれている感じが弱い。
1:煮込まれている感じがしない。
(具材の食感)
5:ほどよい食感があり、十分食べ応えがある。
4:ほどよい食感がり、食べ応えがある。
3:ある程度食感があり、多少食べ応えがある。
2:やや硬くて食感が悪い、又はやや軟らかく食べ応えがない。
1:硬くて食感が悪い、又はべちゃついて食べ応えがない。
【0057】
(4)試験結果
pH、膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリイン含有量(質量%)、液状調味料中シクロアリイン含有量(質量%)、グルタミン酸(質量ppm)、官能評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示されるように、乾燥タマネギ又は茹でタマネギを使用し、有機酸の存在下で加熱処理(90℃120分)した試験品は、調味液中で膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリインの含有量が、0.30質量%以上、液状調味料中のシクロアリインの含有量が0.12質量%以上であり、pHが2.5~4.5の範囲となった(実施例1~3)。これらの実施例の試験品については、「タマネギの旨み」、「具材の煮込み感」、「具材の食感」について良好な評価が得られた。具体的には、具材のタマネギの適度な硬さと特有の風味によって、煮込み感と食感がよく、調味液にもタマネギの旨味が十分に感じられた。これに対し、生タマネギを使用した試験品は、調味液中で膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリインの含有量が0.30質量%未満、液状調味料中のシクロアリインの含有量が0.12質量%未満であり(比較例1、2)、pHが2.5未満となった(比較例2)。これらの比較例の試験品については、「タマネギの旨み」、「具材の煮込み感」、「具材の食感」が満足できるものではなかった。
【0060】
(試験例2)加熱処理(時間及び温度)条件の検討
(1)試験品の調製(実施例4~7、及び比較例3~7)
実施例1と同じ調味料処方にて調味液を調製し、具材として乾燥タマネギを調味液に膨潤後40質量%(B)となるように使用し、加熱処理の条件を表2に示すように変更する以外は、試験例1と同様にして、実施例4~6及び比較例3~7の具材入り液状調味料を調製した。また、密閉式ガラス瓶に均一にした調味料を充填し、シリコン栓により密閉した後、オートクレーブ(三洋電機社製 MLS-3780)により表2に示す条件下で加熱を行い、自然放冷により実施例7の具材入り液状調味料を調製した。
【0061】
(2)成分分析及び官能評価試験
試験品の具材入り液状調味料について、試験例1と同様にして成分分析及び官能評価を行った。
【0062】
(3)試験結果
pH、膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリイン含有量(質量%)、液状調味料中シクロアリイン含有量(質量%)、グルタミン酸(質量ppm)、官能評価結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示されるように、75~120℃で加熱処理した試験品は、調味液中で膨潤後の具材に対するシクロアリインの含有量が0.30質量%以上、液状調味料中のシクロアリインの含有量が0.12質量%以上であった(実施例4~7)。これらの実施例の試験品については、「タマネギの旨み」、「具材の煮込み感」、「具材の食感」について良好な評価が得られた。具体的には、具材のタマネギの適度な硬さと特有の風味によって、煮込み感と食感がよく、調味液にもタマネギの旨味が十分に感じられた。これに対し、加熱処理なしの液状調味料(比較例3)、60℃で加熱処理した試験品(比較例5、6)、75℃以上であっても、時間が温度との関係で所定時間に満たない試験品(比較例4、7)は、調味液中で膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリインの含有量が0.30質量%未満、液状調味料中のシクロアリインの含有量が0.12質量%未満であった。また、これらの比較例の試験品については、「タマネギの旨み」、「具材の煮込み感」、「具材の食感」が満足できるものではなかった。
【0065】
(試験例3)pH条件の検討
(1)試験品の調製(実施例8~11、及び比較例8)
具材として乾燥タマネギを調味液に膨潤後40質量%(B)となるように使用し、実施例1の処方の醸造酢(10%酢酸)の使用量を表3に示すように変更する以外は、試験例1と同様にして、試験品の具材入り液状調味料を調製した。
【0066】
(2)成分分析及び官能評価試験
試験品の具材入り液状調味料について、試験例1と同様にして成分分析及び官能評価を行った。
【0067】
(3)試験結果
pH、膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリイン含有量(質量%)、液状調味料中シクロアリイン含有量(質量%)、グルタミン酸(質量ppm)、官能評価結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
表3に示されるように、醸造酢(10%酢酸)を5~40質量%使用した試験品は、pHが2.5~4.5の範囲となり、調味液中で膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリインの含有量が0.30質量%以上、液状調味料中のシクロアリインの含有量が0.12質量%以上となった(実施例8~11)。これらの実施例の試験品については、「タマネギの旨み」、「具材の煮込み感」、「具材の食感」について良好な評価が得られた。具体的には、具材のタマネギの適度な硬さと特有の風味によって、煮込み感と食感がよく、調味液にもタマネギの旨味が十分に感じられた。これに対し、pHが4.5を超える試験品は、調味液中で膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリインの含有量が0.30質量%未満、液状調味料中のシクロアリインの含有量が0.12質量%未満となり(比較例8)、「タマネギの旨み」、「具材の煮込み感」、「具材の食感」が満足できるものではなかった。
【0070】
(試験例4)旨み成分添加の影響
(1)試験品の調製(実施例12~17)
表4に示す配合量(質量%)にて、醸造酢(酸度10%)、砂糖、食塩とともに、旨み成分(グルタミン酸ナトリウム、酵母エキス、ワイン)を水に混合し、試験例1と同様にして、試験品の具材入り液状調味料を調製した。
【0071】
(2)成分分析及び官能評価試験
試験品の具材入り液状調味料について、試験例1と同様にして成分分析及び官能評価を行った。
【0072】
(3)試験結果
pH、膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリイン含有量(質量%)、液状調味料中シクロアリイン含有量(質量%)、グルタミン酸(質量ppm)、官能評価結果を表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
表4に示されるように、旨味成分(グルタミン酸ナトリウム、酵母エキス、ワイン)を添加することにより、シクロアリインの含有量が特定量以上になるとともに、グルタミン酸の含有量が70~3000質量ppmの範囲となった(実施例12~17)。これらの実施例の試験品は、「タマネギの旨み」、「具材の煮込み感」、「具材の食感」について良好な評価が得られた。具体的には、具材のタマネギに適度な硬さと特有の風味によって。煮込み感と食感がよく、調味液にもタマネギの旨味が十分に感じられた。
【0075】
尚、実施例14において膨潤後のタマネギ具材に対するシクロアリイン含有量が2.0質量%になるようにシクロアリインの量を調整し、その他はすべて実施例14と同条件で試験し、評価したところ「タマネギの旨み」、「具材の煮込み感」、「具材の食感」について実施例14と同評価であったが、若干異味が感じられた。
【0076】
(試験例5)具材入り液状調味料を使用した加熱調理方法
ハンバーグ100gをフライパンで焼き皿に盛り付けた後、実施例5、比較例5の具材入り液状調味料をそれぞれ100gフライパンに入れ弱火で1分間加熱した後、ハンバーグにかけた。得られたハンバーグを喫食したところ、実施例5を使用したハンバーグは、「タマネギの旨み」、「具材の煮込み感」、「具材の食感」が付与され、満足できるものであった。一方、比較例5の具材入り液状調味料を使用したハンバーグは、「具材の煮込み感」が弱く、「タマネギの旨み」、「具材の食感」が十分付与されず、満足できるものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、具材であるタマネギの煮込み感と、調味液におけるタマネギの旨味が向上し、調味料全体にタマネギ由来の風味とコクが付与された具材入り液状調味料であり、加熱調理等に簡便に使用することできる液状調味料の製造分野において利用できる。