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特許7142892物体検出装置、物体検出方法、ならびに物体取出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】物体検出装置、物体検出方法、ならびに物体取出装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20220920BHJP
【FI】
G06T7/00 300D
G06T7/00 350D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018059164
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019174886
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】張 逸
(72)【発明者】
【氏名】游 梦博
(72)【発明者】
【氏名】三好 扶
(72)【発明者】
【氏名】津田 保之
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 正勝
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】Junya Sato et al.,Frontal Face Detection with Evolutionary Template Matching,SICE Annual Conference 2012,2012年,pp.1930-1933,https://ieeexplore.ieee.org/document/6318326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を入力する入力部と、
前記画像のうち処理対象となる候補領域画像を複数色に分割した分割画像を生成する前処理部と、
前処理を行った候補領域の画像に対してテンプレートを用いてマッチングを行うことにより物体の位置を検出する物体検出部とを備え、
前記テンプレートが、物体の輪郭である全体領域の中に、候補領域画像を分割した複数色に対応する各色で区分けされた副領域が設定されていて、
前記物体検出部は、遺伝的アルゴリズムを用いて、
物体の各色と副領域との重なりが大きいこと、
候補領域とテンプレートの全体領域の重なりが大きいこと、
同じ色に対応する複数の副領域の平均画素値の差が小さいこと、
異なる色の副領域の平均画素値の差が大きいこと、
の少なくとも1つを含む評価ルールを用いて物体を検出することを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記テンプレートには、色の評価を行わない曖昧領域も副領域として区分けされていることを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記検出対象の物体は魚のひらきの内臓側であって、
前記テンプレートは少なくとも、身が切断された白い範囲に対応する副領域と、内臓が入っていた黒い範囲に対応する副領域に区分けされていることを特徴とする請求項1または2に記載の物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝的アルゴリズムを用いたテンプレートマッチングによる物体検出装置、物体検出方法、ならびに物体取出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば、魚介類や農産物等からなる物体を容器等に包装する際、複数の物体をベルトコンベヤ等で搬送している状態から、所定の物体を取り出すことが行われる。
【0003】
例えば、図15に示すように、物体Wとしてのサンマ蒲焼片の缶詰を製造するラインにおいては、頭を切断したサンマの開きを腹側片W(H)と尾側片W(T)に分割切断し、これらを焼成し、それから、腹側片W(H)と尾側片W(T)とを所定の重量範囲内入るように組合せて、缶Cに入れ、その後封をして加熱などの所定の処理を行っている。缶Cへの投入においては、焼成した腹側片W(H)及び尾側片W(T)を順次コンベアで流し、作業員が、これら腹側片W(H)及び尾側片W(T)を組み合わせて缶Cに投入している。
【0004】
この腹側片W(H)及び尾側片W(T)の取り出し作業を自動化しようとした場合、物体の位置を機械的に特定する必要がある。特に、腹側片W(H)と尾側片W(T)を平均的に包装しようとする場合、少なくともいずれか一方を識別する必要がある。
【0005】
特許文献1には、位置確認システム(画像処理)によって食品の位置、向き、幾何学的構造及び寸法を識別し、センサーの位置決めをし、センサーによって食品を分類する自動化方法が提案されている。具体例として食品は魚(サバ)であり、位置とは生殖腺の位置であり、分類とは雌雄の分類である。特許文献1の位置確認システムでは、各画像画素をいくつかのガウス分布に適応させ、期待最大化(EM)アルゴリズムによって食品の固定境界(輪郭)を定めている。
【0006】
特許文献2には、個別特徴量抽出手段(画像処理)によって複数の物体を撮像し、形状に係る個別特徴量(例えば高さ寸法,面積,体積)を抽出し、例えば形状,重量,組合せの重量範囲などによってラベル付けを行う物体の識別装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5481391号公報
【文献】特願2017-068282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では分析する物体と背景であるベルトコンベアとを、画像のコントラストによって判別している。すると、物体そのものに白い部分と黒い部分があるような場合には、前景の抽出の精度が低下するという問題がある。また特許文献1の技術において用いているEMアルゴリズムは、収束にいたるまでの反復回数が多いため、処理に時間がかかる。するとベルトコンベアの速度を上げることができず、処理量に限りがあるという問題がある。
【0009】
また物体同士の間隔が狭い場合や、くっついてしまっている場合、さらには物体が他の物体の上に重なっている場合には、物体の輪郭がつながってしまう。これらの場合、特許文献1の技術では輪郭を取ることができなくなり、特許文献2の技術でも特徴量の抽出ができないという問題がある。なお特許文献2では、ベルトコンベアに物体を載せるときに整列作業を行っている。
【0010】
そこで本発明は、物体に白い領域と黒い領域があっても位置を検出することができ、高速に処理可能であるとともに、物体が他の物体の上に重なった状態であっても検出することが可能な物体検出装置、物体検出方法、ならびに物体取出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る物体検出装置の代表的な構成は、画像を入力する入力部と、画像に含まれる検出対象の物体が複数の色を含むように前処理を行う前処理部と、前処理を行った画像に対してテンプレートを用いてマッチングを行うことにより物体の位置を検出する物体検出部とを備え、テンプレートが、物体の輪郭である全体領域の中に、各色に対応する副領域が区分けされていて、物体検出部は、遺伝的アルゴリズムを用いて、少なくとも各副領域間の画素値の統計的な特徴量に関する評価を含む評価ルールを用いて物体を検出することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、物体の輪郭だけでなく色で区分けされた副領域を備えたテンプレートを用いることにより、形や大きさがまちまちな物体を検出することができる。特に、各副領域間の画素値の統計的な特徴量に関する評価を含む評価ルールを用いることにより、物体に白い領域と黒い領域があっても位置を検出することができる。そして遺伝的アルゴリズムを用いることにより、高速に処理可能である。また、区分けされたテンプレートを用いてマッチングを行うことにより、物体同士の間隔が狭い場合や、くっついてしまっている場合、さらには物体が他の物体の上に重なっている場合であっても検出することができる。
【0013】
物体検出部が用いる評価ルールは、物体の各色と副領域との重なりが大きいこと、候補領域とテンプレートの全体領域の重なりが大きいこと、同じ色に対応する複数の副領域の平均画素値の差が小さいこと、異なる色の副領域の平均画素値の差が大きいこと、の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0014】
テンプレートには、色の評価を行わない曖昧領域も副領域として区分けされていてもよい。曖昧領域を設けることにより、形や大きさがまちまちな物体においても各副領域に他の色が入り込む量を減らすことができ、評価の精度を向上させることができる。
【0015】
検出対象の物体は魚のひらきの内臓側であって、テンプレートは少なくとも、身が切断された白い範囲に対応する副領域と、内臓が入っていた黒い範囲に対応する副領域に区分けされていてもよい。一例として、腹側サンマ蒲焼片に対して、身が切断された両端の白い領域(2ヵ所)、中央の内臓が入っていた黒い領域、白い領域と黒い領域の間の曖昧領域の4領域を副領域として、位置を検出することができる。
【0016】
本発明に係る物体検出方法の代表的な構成は、画像を取得し、画像に含まれる検出対象の物体が複数の色を含むように前処理を行い、前処理を行った画像に対して、物体の輪郭である全体領域の中に各色に対応する副領域が区分けされたテンプレートを用いて、遺伝的アルゴリズムにより、少なくとも各副領域間の画素値の統計的な特徴量に関する評価を含む評価ルールを用いてマッチングを行うことにより物体の位置を検出することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る物体取出装置の代表的な構成は、対象となる複数の物体から、予め設定された条件を満たす物体を取出す物体取出装置において、上記の物体検出装置と、物体検出装置が検出した位置に基づいて物体を取り出す物体取出し機構とを備えたことを特徴とする。これにより、物体に白い領域と黒い領域があっても、物体が他の物体の上に重なっていた場合であっても位置を検出することができ、物体取出し機構のロボットハンドが物体群の中から所定の物体を把持することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、物体に白い領域と黒い領域があっても位置を検出することができ、高速に処理可能であるとともに、物体が他の物体の上に重なった状態であっても検出することが可能な物体検出装置、物体検出方法、ならびに物体取出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】物体取出装置の例を示す図である。
図2】物体検出装置の概略構成を説明するブロック図である。
図3】物体検出装置の動作を説明するフローチャートである。
図4】二値化処理を説明するフローチャートおよび画像例である。
図5】前景抽出を説明するフローチャートおよび画像例である。
図6】テンプレートTを説明する図である。
図7】前処理部が候補領域画像Ikから分割画像Ibを生成する前処理を説明する図である。
図8】物体検知に使用する材料を説明する図である。
図9】制約1を説明する図である。
図10】制約2を説明する図である。
図11】制約3を説明する図である。
図12】制約4を説明する図である。
図13】遺伝的アルゴリズムの適応度関数Rを説明する図である。
図14】物体Wの検出例を示す図である。
図15】本発明が適用される物体の一例(サンマの蒲焼片)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0021】
図1は物体取出装置100の例を示す図である。図1に示す物体取出装置100は、対象となる複数の物体Wから、予め設定された条件を満たす物体Wを取り出す装置である。本実施形態において取り出す対象の物体W(すなわち検出対象の物体)は、図15に示したサンマ蒲焼片を例に用いて説明する。物体Wは、腹側片W(H)と尾側片W(T)に分割切断されている。本実施形態においては、主に腹側片W(H)を検出し、これを取り出した後に、残った尾側片W(T)を取り出す。なお、取出されなかった物体Wは、例えば、コンベア102から排出して回収し、再度コンベア102上に供給することができる。
【0022】
物体取出装置100は、物体Wを搬送するコンベア102と、容器Cを搬送するコンベア104と、物体検出装置200と、物体検出装置200が検出した位置に基づいて物体Wを取り出す物体取出し機構110とを備えている。物体取出し機構110はロボットハンドを備えていて、コンベア102上の所定の物体Wを把持して取り出し、コンベア104上の容器Cに収容する。
【0023】
図2は物体検出装置200の概略構成を説明するブロック図である。物体検出装置200は、カメラ120から画像を入力する入力部202と、二値化部204、前景抽出部206、画像に含まれる検出対象の物体が複数の色を含むように前処理を行う前処理部208、および前処理を行った画像に対してテンプレートを用いてマッチングを行うことにより物体の位置を検出する物体検出部210とを備えている。物体検出部210が把持すべき物体Wの位置を出力し、これに基づいて物体取出し機構110のロボットハンドが物体Wを把持する。
【0024】
図3は物体検出装置200の動作を説明するフローチャートである。以下、図3のフローチャートに沿って、図4以降の図を参照しながら物体検出装置200の動作について説明する。
【0025】
本実施形態においてコンベア102は金網であり、物体Wは金網の上に乗って搬送される。本実施形態における二値化部204と前景抽出部206は、この横方向に細長い金属部分を多く含む形状の金網に適した処理が例示されている。まず入力部202は、カメラ120によって撮影した画像を取得する(ステップ302)。本実施形態では背景差分法などで用いられるフレーム間画像は使用しないため、静止画を取得できればよい。そこでカメラ120は、間欠的に静止画を撮影してもよいし、動画を撮影してもよい。カメラ120が動画を撮影する場合には、入力部202が所定時間ごとにフレーム画像(静止画)を抽出する。
【0026】
二値化部204は、まず画像をグレースケール化し(ステップ304)、次に二値化処理を行う(ステップ306)。図4は二値化処理を説明するフローチャートおよび画像例である。図4(a)に示すように、二値化部204は、まず図4(b)に示すグレースケール画像Igに対して横方向に走査し、図4(c)に示すように横方向エッジIrの画像を抽出する(ステップ320)。次に二値化部204は、図4(b)に示すグレースケール画像Igに対して縦方向に走査し、図4(d)に示すように縦方向エッジIcの画像を抽出する(ステップ322)。そして横方向エッジIrと縦方向エッジIcの合成ベクトルが所定以上の長さを有していること、および横方向エッジIrと縦方向エッジIcのなす角が±90°近傍であることを条件として、そのエッジを残す。これにより図4(e)に示すような二値化画像Inを得る。二値化画像Inには、まだ金網の輪郭が残っている。
【0027】
前景抽出部206は、二値化画像Inから前景領域を抽出する(ステップ308)。図5は前景抽出を説明するフローチャートおよび画像例である。図5(a)に示すように、前景抽出部206は、まず図5(b)に示す二値化画像Inにおいて、上下方向に走査して物体の領域を抽出する(ステップ330)。具体例として、上から下に走査することを、左右方向に1ピクセル間隔で行い、上下方向に35ピクセル以上金網が存在しない場合に前景領域であると判断する。この前景領域に対して、図5(c)に示すように左右方向に走査してノイズを除去する(ステップ332)。具体例として、左から右に走査することを、上下方向に1ピクセル間隔で行い、左右方向に20ピクセル未満の前景領域はノイズであるとして除去する。これにより図5(d)に示すような前景領域を得る。なお図5(d)は、グレースケール画像Igに前景領域をマスクしたものであり、前景領域にグレースケール画像Igが表れた候補領域画像Ikである。
【0028】
図6はテンプレートTを説明する図である。図6(a)に示すように、サンマの蒲焼片の腹側片W(H)は背開きであって、両側に身が切断された白い領域があり、中央に内臓が入っていた黒い領域がある。これに対し図6(b)に示すテンプレートTは各色に対応する副領域が区分けされていて、身が切断された白い範囲に対応する副領域(以下、白い領域T1,T2という)と、内臓が入っていた黒い範囲に対応する副領域(以下、黒い領域T3という)に区分けされている。さらに、白い領域T1,T2と黒い領域T3の間に、色の評価を行わない曖昧領域T4(2カ所)が区分けされている。このテンプレートTのスケーリングS(拡大・縮小)と、回転R、変位Tを用いて、マッチングを行う。
【0029】
複数色を含むテンプレートを用いてマッチングを行うために、処理対象となる候補領域画像Ikを複数色に分割した分割画像Ibを生成する必要がある。
【0030】
図7は前処理部208が候補領域画像Ikから分割画像Ibを生成する前処理(ステップ310)を説明する図である。まず図7(a)に示す候補領域画像Ikに対し、図7(b)に示すように判別分析法(いわゆる大津の二値化)を用いて二値化画像を生成する。判別分析法を用いた場合、内臓が入っていた黒い領域は、真っ黒ではないため、白い点と黒い点が入り交じって表現される。これに図7(c)に示すように収縮をかけると、広い白い領域が残り、白い点と黒い点が入り交じっていた内臓の領域は黒くなる。この白い領域は、身が切断された領域のみが残っていることになる。
【0031】
次に内臓の領域を取得する。前処理部208は、図7(a)に示す候補領域画像Ikに対し、しきい値を用いて二値化を行う。すると図7(d)に示すように、身の部分も内臓の部分も白い画像が得られる。これに対し図7(b)に示した二値化画像を引くことにより、図7(e)に示すように、図7(b)の二値化画像で白かった画素が黒くなった二値化画像が得られる。言い換えると、図7(e)の二値化画像は、図7(b)の二値化画像の前景領域が白黒反転した画像である。
【0032】
図7(e)の二値化画像では、身の部分は黒く、内臓の部分は白い点と黒い点が入り交じった状態となっている。そこで図7(f)に示すように膨張させることによって内臓の部分が広い白い領域となり、ふたたび収縮させることによって図7(g)に示すように白い領域が本来の内臓の部分の大きさとなる。ここで残った領域は、内臓が入っていた領域のみが残っていることになる。
【0033】
そして図7(g)に示す内臓領域の画像を図7(c)の身の領域の画像に足し合わせる。図7(g)の内臓領域の画像は、区別のためにあらかじめ画素値をグレーにしている。どの程度の画素値にするかは適宜定めて良いが、白と黒の中間値(例えば8ビット256階調のグレースケールであれば128)にすることができる。これにより、図7(h)に示すような分割画像Ibを得ることができる。
【0034】
物体検出部210(図2参照)は、遺伝的アルゴリズムを用いて、少なくとも各副領域間の画素値の統計的な特徴量に関する評価を含む評価ルールを用いて物体を検出する(ステップ312)。評価ルールは、具体的には、物体の各色と副領域との重なりが大きいこと(制約1)、候補領域とテンプレートの全体領域の重なりが大きいこと(制約2)、同じ色に対応する複数の副領域の平均画素値の差が小さいこと(制約3)、異なる色の副領域の平均画素値の差が大きいこと(制約4)、を含んでいる。
【0035】
図8は物体検知に使用する材料を説明する図である。図6で説明したテンプレートT、図5で説明した候補領域画像Ik、図7で説明した分割画像Ibである。テンプレートTの中の任意の点をpとし、候補解の中の対応の点をpσとする。
【0036】
図9は制約1を説明する図である。制約1では分割画像Ibを用いて、副領域T1,T2と分割画像Ibの白い領域Ibの重なった領域と、副領域T3と分割画像Ibのグレー領域Ibとをそれぞれ算出し、pを変化させた値の積算を評価R1とする。評価R1は、大きいほどよい。
【0037】
図10は制約2を説明する図である。制約2では候補領域画像Ikを用いて、テンプレートTの全体領域(候補解Tσ)と候補領域Ikの重なりを算出し、pを変化させた値の積算を評価R2とする。評価R2は、大きいほどよい。
【0038】
図11は制約3を説明する図である。制約3では候補領域画像Ikを用いて、副領域T1と副領域T2の平均画素値の差を求める。同じ色の平均画素値の差は小さいほどよいが、計算の都合上、平均画素値の差をグレースケールの階調で割って割合に変換し、1から引いて評価R3とする。評価R3は、大きいほどよい。
【0039】
図12は制約4を説明する図である。制約4では候補領域画像Ikを用いて、白い領域である副領域T1,T2の平均画素値と、黒い領域である副領域T3の平均画素値を求め、これらの平均画素値の差を求める。異なる色の平均画素値の差は大きいほどよい。計算の都合上、平均画素値の差をグレースケールの階調で割って割合に変換し、評価R4とする。
【0040】
図13は遺伝的アルゴリズムの適応度関数Rを説明する図である。適応度関数Rは、上記の評価R1~R4に重みw1~w4をかけたものである。そして遺伝的アルゴリズムのロジックに則り、初期世代Gの染色体をランダムで生成し、パラメータσについて適応度関数Rの計算を行う。Rの値が小さいものを削除しつつ、交叉と突然変異を繰り返しながら、終了条件を満たすまで収束計算を行う。
【0041】
なお、複数物体の検出方法として、LWAS(Level-wise adaptive sampling)やDC法(Deterministic Crowding)を利用することができる。LWASは、論文 Junya Sato and Takuya Akashi, Deterministic Crowding Introducing the Distribution of Population for Template Matching, IEEJ Transactions on Electrical and Electronic Engineering, Vol.13, Issue3, pp.480-488, 2018に詳細に説明されている。またDC法については、Chao Zhang, Takuya Akashi, Robust Projective Template Matching, IEICE Transactions on Information and Systems, Vol.E99-D, No.9, pp.2341-2350, 2016に詳細に説明されている。
【0042】
図14は物体Wの検出例を示す図である。上記説明した物体検出装置200においては、物体の輪郭だけでなく色で区分けされた副領域T1~T4を備えたテンプレートTを用いることにより、形や大きさがまちまちな物体Wを検出することができる。また、区分けされたテンプレートTを用いてマッチングを行うことにより、物体W同士の間隔が狭い場合や、物体Wが他の物体Wの上に重なっている場合であっても検出することができる。
【0043】
特に、各副領域T1~T4間の画素値の差に関する評価R1~R4を含む評価ルールを用いることにより、物体Wに白い領域と黒い領域があっても位置を検出することができる。そして遺伝的アルゴリズムを用いることにより、高速に処理可能である。
【0044】
また、色の異なる副領域の間(T1とT3の間、およびT2とT3の間)に色の評価を行わない曖昧領域T4を設けることにより、形や大きさがまちまちな物体Wにおいても各副領域T1,T2,T3に他の色が入り込む量を減らすことができ、評価の精度を向上させることができる。
【0045】
そして物体取出装置100(図1参照)においては、上記の物体検出装置200を用いることにより、取り出す物体Wに白い領域と黒い領域があっても、物体Wが他の物体Wの上に重なっていた場合であっても位置を検出することができ、物体取出し機構110のロボットハンドが物体群の中から所定の物体を把持することが可能となる。なお本実施形態では腹側片W(H)しか検出していないが、腹側片W(H)を取り出せば残りは尾側片W(T)なのであるから、それぞれを区別して取り出すことが可能である。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、遺伝的アルゴリズムを用いたテンプレートマッチングによる物体検出装置、物体検出方法、ならびに物体取出装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
100…物体取出装置、102…コンベア、104…コンベア、110…物体取出し機構、120…カメラ、200…物体検出装置、202…入力部、204…二値化部、206…前景抽出部、208…前処理部、210…物体検出部、W…物体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15